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天の大輪

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●遠き追憶
 闇夜に、煌めく火花が舞う。やがて散っていく花火を見つめて、竜の角を生やした銀髪の美丈夫が小さく呟いた。
「……懐かしいな。なぁ、御影(みかげ)」
 傍らに置かれた盃は二つ。片方の盃を持って、注がれていた酒を飲み干した。
 目を閉じて、かつて存在した面影を想う。
 黒い髪に、漆黒の着物。陰の差した笑顔は、貧乏神という存在故ではあったかもしれないが……それでも美しかった。あの日共に見た花火と彼女の面影が重なる。
 純白の尾が翻る。煌(こう)、という名の白竜にして竜神は、そっと盃を窓辺の縁に置いた。
「やはり、お前しかいなかったよ。お前だけしか……」
 幸運を司る竜神は、他の妖怪たちからこう言われていた。『他人の運を吸い取る疫病神だ』と。
 散った花火、その次の花火が上がるその瞬間だ。眼前に瞬いた異なる輝きに、煌ははっ、と目を見開いた。
「……み、かげ?」
 暗黒に瞬く魂のオーラが、ふわり、と眼前に浮かんでいる。

 ―――煌。

 空気に溶けるような骸魂からの声と共に、煌がその骸魂を受け入れる。次第に変貌していく身体を見つめて、煌は静かに呟いた。
 これからはずっと一緒だ。もう、喪うことなどない。

「―――時よ止まれ、お前は美しい」

●滅びの言葉
「『時よ止まれ、お前は美しい』。それこそが、カクリヨファンタズムを崩壊させる滅びの言葉だ」
 集った猟兵たちに、アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)が事の次第を説明する。
「白竜にして竜神である『煌(こう)』と名乗る青年は、元々大切な人がいたらしい。貧乏神の『御影(みかげ)』という名の少女だ」
 幸運を司る白竜と、不運を司る貧乏神。正反対の二人だが、どこか共感できる部分があったのかもしれない。
「だが、御影はすでに亡くなって、煌は一人で生きてきたようだ。他の妖怪たちからは、煙たがられていたらしいな」
 幸運を司る白竜は、存在するだけで幸運を引き寄せる。そのため、他の妖怪たちから『こっちの運が吸い取られるから近づくな』と言われ続けていたようだ。
「そして今回……御影の骸魂がカクリヨファンタズムに辿り着いてしまった。骸魂と融合した煌は『『調律竜』フェンネル』に変貌し……カクリヨファンタズムは足元から崩壊を始めている」
 放置すれば、正真正銘のカタストロフとなる。何があっても阻止しなくてはいけない。
「煌には辛い結果になるだろうが……骸魂から煌を解放して、世界を元に戻さないといけない」
 とん、と杖を鳴らして現れた映像は、無数の乗り物が集うターミナルだった。
「文字通りの世界の崩壊から逃れるために、皆には乗り物に乗って煌の下に急いでもらう。自分の乗り物がある人はそれに乗ってくれて構わない」
 古代の乗り物から、現代の乗り物まで、無数の乗り物が置かれている妖怪ターミナルだ。崩壊を振り切り、白竜の竜神へ肉薄する。
「煌の救出が終わったら……そうだな、花火を打ち上げて元気づけてあげてくれ。きっと……すごく落ち込むだろうしな」
 杖が掲げられた。転移の輝きに包まれた猟兵たちに、アインは告げる。
「大切な人と何十年以上も経って巡り合う……素晴らしい話だが、それでも、世界を救わなきゃいけない。頼んだぞ、皆!」
 転移先は、妖怪ターミナル。置かれている乗り物を使って、崩壊を始めているカクリヨファンタズムを越えなくてはいけない。


夕陽
 カクリヨファンタズムの世界にいる存在だと、生きている時間もとんでもないものになりますね。
 OPをご覧頂きありがとうございます。初めましての方は初めまして、すでにお会いシている方はこんにちはこんばんは、夕陽です。
 滅びの言葉によって崩壊を始めたカクリヨファンタズムを救いましょう。

 以下、補足です。

 白竜の竜神『煌(こう)』:頭から竜の角を生やした銀髪の美丈夫、白い着物を着ています。自分の部屋から毎年上がる花火を見ることが趣味。御影との思い出にも関係しているようです。

 貧乏神『御影(みかげ』:漆黒のストレートの長髪に、漆黒の着物を着込んだ少女です。故人。不運を司る存在ではありましたが、煌と意気投合していました。
 今回、骸魂となり煌に吸収されました。

 第1章は、崩壊し続ける世界、その先にいる元凶へ到達するために、乗り物に乗って崩落する世界を突っ切って頂きます。乗り物は自由に選択可能です(車のみならず、別のものでも)。自分の乗り物があるならそれでも構いません。
 ただし、崩壊を始めている世界では、無数の瓦礫が降り注ぎ、障害物が行く手を遮っています。ちなみに直線道路です、乗り物に乗って気にせずUCなどで瓦礫を破壊しながら突き進むのも問題ありません。

 第2章は『調律竜』フェンネルとの戦闘になります。幸運と不運を操り、猟兵たちに不運を付与しながら戦いを仕掛けてきます。理性は残っていますので、御影との思い出について関わるようなプレイング、説得があればプレイングボーナスが発生します。

 第3章は、花火を作り、天に咲かせます。UCを使ってすごい花火を作ったりするのもあり。もちろん、落ち込む煌のフォローに回って頂いても構いません。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 冒険 『妖怪ターミナルを越えて』

POW   :    パワープレイで押し通る

SPD   :    テクニカルプレーで切り抜ける

WIZ   :    頭脳プレイで解決する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ターミナルに到着した猟兵たちが、周囲の状況を確認する。
 遠くから迫りくる崩壊。頭上に浮かぶ家屋の残骸が降りしきる。
 近くに停まっている乗り物は、過去や現代、全てが入り混じりそこに鎮座していた。
 エンジンも無事にかかるようだ。崩壊し続けるカクリヨファンタズムの道を潜り抜けて、この事態を引き起こした張本人、煌と名乗る竜神の下へ向かわなければいけない。
 先を見れば、降り注いだ瓦礫が道を阻害している。ユーベルコードを使用し道を拓くか、巧みなドライブテクニックで回避していくか。猟兵たちに判断が迫られる。
地籠・陵也
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
……幸運を司る故に疫病神と呼ばれた竜、か。俺たちも、そうだったな……
俺たちももしかしたらそうなっていたかもしれないと思うと、ますます放っておけないな。
彼に残酷を強いてしまうことになるが……世界を滅ぼさせるワケにはいかないから。

凌牙がUCで変身して俺を乗せていく話になっている。瓦礫もだいたいは回避していくつもりだが、俺がやるのはそれでも避けられない瓦礫の排除だ。
念の為に【結界術】と【オーラ防御】で被弾時のダメージを抑えられるようにしておいた上で【高速詠唱】【多重詠唱】で【指定UC】【属性攻撃(光)】を合わせて瓦礫を破壊していこう。
俺が防御してるからって無理はするなよ……?


地籠・凌牙
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
運が吸い取られるからって……不運を引き寄せるよか遥かにマシじゃねえか。
ったく……カクリヨファンタズムでもそういうのがあるってのは何ともやるせねえ気持ちになるぜ。
……同じ運に左右される身としちゃあ放っておくワケにはいかねえな!

【指定UC】で翼竜に変身して陵也を乗せて【ダッシュ】の要領で全速力で空中を突っ切るぜ!
……まあ、うん。俺はデフォルトで運が悪いから瓦礫を【おびき寄せ】そうなもんだが、それは【第六感】で把握できる範囲で瓦礫がどっから飛んでくるのかを把握して回避だ。
どうにもできねえのは陵也に任せる。
それでもどうしようもなくなったら【鎧砕き】の要領で捨て身タックルだ!



●運命の天秤
「……幸運を司る故に疫病神と呼ばれた竜、か。俺たちも、そうだったな……」
「運が吸い取られるからって……不運を引き寄せるよか遥かにマシじゃねえか」
 地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)と地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)が、今回カクリヨファンタズムを滅亡へ導いている張本人について思案する。
 幸運すぎるが故に、疫病神と呼ばれた竜神。それは、地籠兄弟にとっては他人事ではなかった。不運や呪いの原因となる“穢れ”を浄化する力を持つ兄と、不運や呪いの原因となる"穢れ"を喰う力を持つ弟。それ故に、両者には常に幸運と不運が付き纏う。
「俺たちももしかしたらそうなっていたかもしれないと思うと、ますます放っておけないな」
「カクリヨファンタズムでもそういうのがあるってのはな…………ああ、同じ運に左右される身としちゃあ放っておくワケにはいかねえな!」
 ターミナル上で、凌牙がユーベルコードの超常を発現させる。ばきり、と体が肥大化していく。背中に生えた翼は大気を切る翼へと形を変え、天を飛翔する翼竜の姿へと変貌していった。
 【伝承想起(?)・竜姿着装(ドラゴネス・インストーリング)】。自身の姿を特定の竜に変化させることができるユーベルコードだ。
 陵也がその背に乗ると、凌牙は瓦礫降りしきるカクリヨファンタズムの空へと羽撃いた。
『陵也、頼んだ!』
「俺が防御してるからって無理はするなよ……?」
『分かってる!』
 飛翔し、まるで滝のように降り注ぐ瓦礫を超えていく。身を捻る度に大気がかき乱されるために、軽い瓦礫はその風圧によって飛散して行くが……。

『―――!!』

 穢れを喰う力を持つ凌牙は、その特性故に無意識に不運を引き寄せる。大気の流れは転じて、瓦礫の落下を助長するようなものへと変化した。
 凌牙の背に乗っている陵也の『形見の杖』の先が瞬いた。術式によって幾何学模様の魔法陣が幾多にも重なって顕れる。回転する術式は、自分の力を昇華させる強化の魔法陣だ。

「……終告げる大いなる凍気よ」

 杖の先から迸った力の奔流は、エメラルドのように煌めく吹雪の束へと。天を蹂躙する瓦礫が、【氷天の白き逆鱗(フィンブルヴェド・ドラゴネスアウトレイジ)】の力によって裂かれ、微細な粒子となって天を覆った。
 光の雨が降り注ぐ中、陵也たちが目的地を視認する。広く開けた広場の中、白亜の龍鱗を纏った白竜がそこに鎮座している。

 二人がその対象を睨みつけて、さらに加速。

「彼に残酷を強いてしまうことになるが……世界を滅ぼさせるワケにはいかないから」
 こくり、と凌牙が頷いた。降り注ぐ巨大な瓦礫の前、凌牙の膂力によって岩そのものが粉々に打ち砕かれ―――天から飛来する敵対者に、白竜の目が細まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
アド連歓迎
どいたどいたどいたどいたーーっっ!!
(※事前に武器改造したスーパーカーでUC発動。高速詠唱のオーラ防御も展開し、文字通り走り屋のごとき運転で駆け抜ける。交通安全? 知らない言葉ですね。)

ええーいまどろっこしい!
もう全部破壊しちゃう!!
全力魔法の衝撃波でなぎ払い攻撃!

はい邪魔な瓦礫は念動力でぽーい! 空いた道を全力前進! 止まってる暇は一瞬たりとも無いよ!

たった二柱の一存で世界まるごと崩壊していいわけがあるかいな。ぶっちゃけ気持ちは良く分かるけれども!
待っとれ白竜~!



●頭文字S
 降りしきる瓦礫の中。直線の道を超速で駆け抜ける猟兵の姿があった。
「どいたどいたどいたどいたーーっっ!!はいそこ邪魔っっ!」
 ユーベルコード、【走り屋(ストリート・レーサー)】による魔改造ヒーローカーに乗って、絶賛世界崩壊中のカクリヨファンタズムを爆走中。
 鈴木・志乃(ブラック・f12101)がにこやかに微笑みながら恐れを知らぬ特攻運転をカマしていた。
 ヒーローカーの周囲に展開されているのは、志乃の圧倒的オーラ防御。交通安全?ここカクリヨファンタズム。標識?そこら辺に浮かんでるでしょ?今崩壊してるけど。なムーブ。
 降りしきる瓦礫や家屋の束が、オーラ防御によってどかぐちゃばきってなっているが、ヒーローカーに損壊なし。流石の聖者オーラである。
 しかし、やはりというべきか。降り掛かってくる瓦礫が多いわ、オーラに接触した時に凄い音を立てるわで相当耳に悪い。爆走中のエンジン音も相当なものだが、どっちかって言うと瓦礫の方が邪魔¥。
「ええーいまどろっこしい!もう全部破壊しちゃう!!」
 脚で運転しながら、志乃が両手を掲げた。ぱしゅっ、と軽い音なのだが、そこから迸った魔力の衝撃波が降ってくる瓦礫を弾き飛ばす!東○ドーム5個分ぐらいの範囲の瓦礫が消し飛んだ。
「はい邪魔な瓦礫は念動力でぽーい!全力ダッシュ!!」
 止まっている時間なんてない。絶賛世界滅亡中ですから。
「たった二柱の一存で世界まるごと崩壊していいわけがあるかいな。ぶっちゃけ気持ちは良く分かるけれども!」
 正論。ド正論であるが、正直走り屋というより破壊屋と言った方があっているように思える。
「待っとれ白竜~!」
 ……多分、今頃クシャミしている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

馬には乗った事がある故任せておけ…と
…絡繰りしかない…だと…?
探せば居るのやもしれんが時間もなかろうと覚悟を決め近くのバイクに跨ろう
…これは、これは鉄の馬…鉄の馬だ。そうだな、宵…?
後ろに乗ってくれた宵を振り返りながらもグリップを握りペダルに足を乗せる
動いたならば安堵の吐息を漏らすも、無意識に握っていたグリップを動かし爪先でなにかを蹴ると同時
加速した鉄の馬に驚けば【穢れの影】にて宵を支えんとしつつ必死で制御を試みよう
…い、行き成り加速するなと…!?
青ざめつつも『第六感』にて瓦礫を避け【穢れの影】にて払い飛ばしつつ進んで行こう
…本当に、絡繰りとは何故話が、通じぬのだろうな…!?


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

わぁ、ここまで時代さまざまな乗り物が揃うと壮観ですね
あたりを見渡しつつも、何やら震える相手に苦笑いを
ええ、鉄の馬です
きみは絡繰りを必ず爆発すると思っていませんか
最近は安全性が高くなってるので、大丈夫ですよ
……たぶん

タンデムできるバイクにかれが跨ったなら
僕もその後ろの座席に座ってかれの胴体に腕を回してしっかりとしがみつきましょう
動き出して少しの後、急加速したなら恐怖に引きつったかれの声を聞き笑って

降り注ぐ瓦礫は【ハイ・グラビティ】や『衝撃波』で『吹き飛ばし』ながら進路の安全を確保していきます
鉄の馬とは話を聞くのではなく、言うことを聞かせて乗りこなすものですよ……!!



●絡繰疾走
 世界が崩壊していく中、二つの転移の輝きがターミナルに現れる。
「わぁ、ここまで時代さまざまな乗り物が揃うと壮観ですね」
 夜色の髪に、深宵の瞳。瞳が周囲をきょろきょろと見渡す。逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)がそう言って、相棒のヤドリガミに顔を向けると、おや、と小さく声をあげる。
「絡繰りしかない…だと…?」
 青ざめた表情で立ち尽くすのは、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)だった。転移前、宵に、

「馬には乗った事がある故任せておけ」

 と自信満々に言った手前、見渡せば無数の機械。無数の絡繰。どこにも生物としての馬が存在しない。
 乾いた笑い、というべきか、若干の苦笑と共に、宵がそちらへ指差した。
「では、あれに乗りましょうか」
「絡繰だぞ!?」
 大声。絡繰に妙な縁(負の方向)があるようだ。
 二人で近づけば、かなり大型のバイクだ。タンデムも可能だろうが……
「…これは、これは鉄の馬…鉄の馬だ。そうだな、宵…?」
「ええ、鉄の馬です」
「木っ端微塵に吹き飛ぶぞ!?」
「きみは絡繰を必ず爆発すると思っていませんか。最近は安全性が高くなってるので、大丈夫ですよ」
「そ、そうか……」
「……たぶん」
「聴こえたぞ、宵!?」
 まあまあ、とザッフィーロを窘めて。
「さ、馬に乗ったことがあるザッフィーロにここは任せましょうか」
 どうぞ、と促す宵に、ザッフィーロが渋々バイクに跨る。爆音に近い音を立ててバイクのエンジンがかかり……すかさず宵がその後ろに跨った。
「さて……それではお手並み拝見と行きましょうか?」
「問題はない、いくぞ―――!?」
 ぐっ、とグリップが動く。その途端、バイクが急加速地面を連続で削り取るタイヤがゴムの焼けた匂いを放つ。
 ぐん、と発進したバイクに、ザッフィーロが大声。その様子に、後ろに座る宵がくすり、と笑う。
「なるほど、これが馬の扱いというものですかね?」
「い、いきなり加速するなと…!?とにかく、捕まっていろ!」
 駆け抜ける。落下してくる瓦礫の山を、ザッフィーロのバイクが駆けていく。卓越したテクニック……というより、“鉄の馬”に振り回されているように見えるが、見事に瓦礫を回避していった。
 眼前に巨大な瓦礫の壁。隙間はバイクの幅とほぼ同一。
 ザッフィーロの周囲に湧く【穢れの影】が、宵の体を固定する。火花を散らしてタイミングを調整し、その隙間潜り抜けた。
「…本当に、絡繰りとは何故話が、通じぬのだろうな…!?」
「いえ、良いテクニックだと思いますよ」
 『宵帝の杖』が掲げられる。天を摩す瓦礫の束は、到底避けられない程に飽和している。淀んだ空に向けられた杖の先端から発せられる魔法陣、それと同時に、不可視の波動が迸る。

「運転練習に邪魔なようなので……これで」

ばしり、と迸った衝撃波が、落下する瓦礫を押し戻し、そして周囲に弾け飛ぶ。【ハイ・グラビティ】によって、瓦礫の束が消え去った。
「それに、鉄の馬とは話を聞くのではなく、言うことを聞かせて乗りこなすものですよ……!!」
 ザッフィーロの胴体を掴んでいた宵の手が、バイクのグリップに当てられる。ぐぃ、と更に回されるエンジン。更に急加速した鉄の馬に、ザッフィーロの悲鳴が響き渡った。

 ……楽しそうにカクリヨファンタズムロードを走る宵の姿が眩しかったらしい。(とある一般妖怪の話)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リコ・エンブラエル
●SPD

幸運故に他者を不幸にする、か
人は他人の幸せをやっかむというが、それは妖怪も同じとはな
似た話だが、そいつだけを残して必ず部隊が全滅してしまう死神と呼ばれた男の話を知っているが、俺をして言わしめればそいつが単に『優秀すぎた』だけだ
くだらないジンクスを吹き飛ばしてやりたいのは山々であるが、問題はコイツをどうくぐり抜けるかだな
…仕方ない、さぁパーティーの時間だ
正面から突っ切るぞ


スロットルを全開にし、ローラー【ダッシュ】で最短コースを走らせて貰う
雨霰に降ってくるガレキを【見切り】ながら【ダンス】をするように躱してみるさ
『他人の運を吸い取る疫病神』とか言ってたな
それならば、俺を不運と踊らせてみせろ


ハイドラ・モリアーティ
滅んだものに想いを馳せるのは
俺としちゃ忘れちまったほうが楽じゃねえかと思うが
そういうのが恋愛のエッセンスにはちょうどいいのか?俺にゃわからん趣味だね
時が止まったって別れっていう終わりがねえのに他人を大事にできるもんか?
まあ、――思想は個人の自由だし。どーでもいいけど

俺は金のためにやることチャチャッとやるだけだしな
悪いけど、お前らの都合はどうでもいいし――明日にゃ忘れる
世界には明日も残ってもらなにゃ困るんでね

【SCHADENFREUDE】、何でか俺は「たまたま」都合よくバイクを見つけて「たどり着く」ってわけ
奴の気持ちを否定してやりてえわけじゃねェよ
ただ、「運」は自分で廻すもんだ。そうだろ?


カイム・クローバー
へぇ、乗り物は選り取り見取りってわけだ。…そうだな。バイクにでも乗ろうか。1000CCの大型。色は深い青のヤツが良い。

グリップを握って、感覚を確かめる。崩壊する世界を背景に感嘆の息が漏れちまう。――ハ、余裕だな、こいつは。
アクセルを全開にして、【運転】でカッ飛ばすぜ。
崩落する屋根やら瓦礫の山は【操縦】で避けつつ、全速力で風でも浴びようか。
景気よく走り続けて、途中で瓦礫に乗り上げて、スピードを殺さずにジャンプでも決めつつ。
ハハッ!良い気分だぜ!最高にハイってやつだ!
通行の邪魔になる瓦礫の山は片手でオルトロスの片割れを使ってUCで破壊する。
人が良い気分に浸ってんだぜ?邪魔するのは野暮ってモンさ。



●ハイウェイを征く
 ターミナルに転送された猟兵たちが、世界の様子を見上げて嘆息する。
 崩れ行く世界。全てが虚無へと還り、世界の色は失われていく。そんな中、口を開いたのは。
「幸運を引き寄せる竜神、そして幸運故に他者を不幸にする、か」
 作業用機械として、ボディスーツに似た服を着たテレビウムリコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)が、そう呟いた。
「滅んだものに想いを馳せるのは、俺としちゃ忘れちまったほうが楽じゃねえかと思うが……そういうのが恋愛のエッセンスにはちょうどいいのか?」
 その問いに答えようとした猟兵が口を噤む。黒髪が滅びの風に揺れて、ハイドラ・モリアーティ(Hydra・f19307)は全く、と銀の瞳が僅かに細める。
「俺にゃわからん趣味だね」
「そうだな。まああれだ、理解者のいない存在がどんな末路を辿るのか。それがこの世界の崩壊の理由だろうぜ」
 肩を竦めて、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は懐に持った銃のグリップに手を置いている。
 ほう、とハイドラが感心したように呟いた。
「けどよ、時が止まったって別れっていう終わりがねえのに他人を大事にできるもんか?」
「……できると思っているのだろうな。かの竜神は」
 遠くを見つめるリコの先、渦巻く因果の光が瞬き、そこに目的の人物がいることを告げている。
 踵を返して、ハイドラはターミナルの中にある一角へと歩を進めた。
「まあ、――思想は個人の自由だし。どーでもいいけど」
 遠ざかる背中に、カイムとリコが頷く。ハイドラの言う通り、永遠ではないからこそ人は絆を重んじる。カクリヨファンタズムの世界で竜神と神という立場に置かれた両者、その永遠は確定的だったはずだ。それが失われた竜神にとって再起の方法は、“これ”しかなかったのだろう。
「……似た話だが、そいつだけを残して必ず部隊が全滅してしまう死神と呼ばれた男の話を知っているが、俺をして言わしめればそいつが単に『優秀すぎた』だけだ」
「人のみならず、妖怪もまた順位をつけたがるってか?本当にバカバカしいぜ」
 カイムも同じく、ターミナルを見渡す。発見したのは、大型のバイク。深青に塗られたバイクだ。
 跨ってグリップを握る。前を見据えて、崩壊を続ける世界を見渡す。恐怖と、幻創の世界。カイムは深く息を漏らした。
「――ハ、余裕だな、こいつは」
 呟いたカイムの近くにバイクが止まった。ハイドラがグリップを握りしめて顎をくい、と動かす。
「さ、いくとするか。俺は金のためにやることチャチャッとやるだけだしな」
 ああ、とリコも同様に頷く。
「くだらないジンクスを吹き飛ばしてやりたいのは山々であるが、問題はコイツをどうくぐり抜けるかだな。……仕方ない、さぁパーティーの時間だ」
 リコの乗り込んでいるローラーが唸る。スロットルを全開して、勢いに任せてその道へと方向転換を行った。
 そして、三人の猟兵がその先を睨む。

「正面から突っ切るぞ」


 瓦礫が、数多の家屋が降ってくる。幻想のような、天地がひっくりかえるような崩落の世界の中、バイクのエンジンが鳴り響く。
 リコが、崩落する瓦礫を恐るべき反射神経で回避した。ローラーを巧みに操作して、まるで踊るような動作でその崩落の影響を受けてつけていない。
 ハイドラも同様だ。落下する瓦礫がまるで彼女を“避けるように”降ってくる。【SCHADENFREUDE(アマイミツ)】はハイドラの記憶を削りながら、立ち塞がる困難を打ち砕いていった。
「ハハッ!良い気分だぜ!最高にハイってやつだ!」
 眼前を覆い尽くすような巨大な瓦礫だ。いくらハイドラのユーベルコードでも、眼前のルート全てを覆い尽くす瓦礫を回避する術はない。そしてそれはリコも同様だ。
 がっ、とバイクのグリップに脚を下ろして、カイムは眼前に愛銃『オルトロス』を突きつける。

「人が良い気分に浸ってんだぜ?邪魔するのは野暮ってモンさ」

 【戦場の咆哮(ハウリング・ロアー)】。狼の遠吠えに似た紫電の銃弾が、巨大な瓦礫の中心を的確に撃ち砕く!
 砕かれた瓦礫の隙間を潜り抜け、そして猟兵たちはその袂へと到達する。
 バイクが地面を削って停止する。崩落を続ける世界、その開けた広場。瓦礫がまるで“避けるように”、その白竜の周りを飛び交っている。
「『他人の運を吸い取る疫病神』とか言ってたな。それならば、俺を不運と踊らせてみせろ」
 リコがローラーを停止させて、静かに呟いた。ハイドラの両腕に刻まれた魔術刻印『五つ目の首』が淡く光り輝く。
「悪いけど、お前らの都合はどうでもいいし――明日にゃ忘れる。世界には明日も残ってもらなにゃ困るんでね」
 ぐる、と白竜の喉が鳴った。それは、威嚇と憤怒に満ちた咆哮の一部だ。
「お前の気持ちを否定してやりてえわけじゃねェよ。ただ、「運」は自分で廻すもんだ。そうだろ?」
 紡がれた言葉に、白竜は口から白炎を漏らす。

『ならば、その運さえもワタシの掌中で繰り出そう。ワタシの全てを奪い取ろうとする猟兵たち。その“運”を呪うが良い―――!』

 竜は咆え―――カイムがオルトロスを突き付け、にやりと得意気に笑った。

「―――It's showtime、ってな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『調律竜』フェンネル』

POW   :    不運を招く黒布
【貧乏神の布切れに似た黒いオーラ】が命中した対象を切断する。
SPD   :    白炎の奔流
【白炎のブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    常時発動型UC『ホイール・オブ・フォーチュン』
【対象の肉体に不運を放ち、行動の失敗や】【ユーベルコードの不発を誘発させる。】【あらゆる行動の成功率を上げる幸運】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アイン・セラフィナイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●運を司る者
崩落する瓦礫が広場に降り注ぐ。しかし、その瓦礫は『調律竜』フェンネルを避けて降り注いでいた。
 両腕に存在する『運命の光球』が光り輝き、眼前に現れた猟兵たちから、無慈悲にもその運気を吸い取っていく。
『ワタシは、運命の調律者。御影と共に在る今、お前たちなど敵ではない!』
 猟兵たちがハッ、と頭上を見上げる。“不運”にも、降り注ぐ瓦礫が猟兵たちを無慈悲に襲い来る。
 常時発動型UC『ホイール・オブ・フォーチュン』。敵対する存在の運気を調律し、不運を付与する運命調律ユーベルコード、とでもいうべきか。
 フェンネルの周囲に纏う黒い布が周辺に拡散し、白炎のブレスが天を覆う。疫病神『御影』を吸収した竜神『煌』は今、周囲の運命を操作するオブリビオンへと変貌している。
 苦しい戦いにはなるが……彼を疫病神の骸魂から解放し、世界の破滅を防がなくてはいけない。
 飛来する瓦礫を避けながら、猟兵たちは武器を構える。

 疫病神の少女を想う竜神、救う術はきっとある。

【MSより】
 『調律竜』への攻撃は煌の生命を脅かしませんので、存分に戦ってください。貧乏神『御影』に関わる説得を行うとプレイングボーナスが発生します。
 もしくは、不運によって瓦礫の飛来やその他の要因によって戦闘に不利が生じます。それに対する対策を練って頂いても、同様にプレイングボーナスが発生しますので、説得のプレイングがなくても問題ありません。

 それでは、プレイングお待ちしております。
カイム・クローバー
待たせたな、白竜。――不運ってヤツと踊りに来たぜ?

バイクに跨ったまま、エンジンは勿論止めず。【運転】と【操縦】を行いつつ、瓦礫を躱す。気分は変わらずハイだ。世界を壊させるつもりは最初からねーし、煌もそのままにしとくつもりはねぇよ。
銃弾を撃ち放ちつつ、注意を引き付け【挑発】する。俺が操縦してるとはいえ、煌がバイクの動きに慣れて来るのは時間の問題だ。
白炎のブレスを放たれる前にUC。バイクは乗り捨てる覚悟で、バイクから跳躍。この一瞬だけは瓦礫も、ブレスも、不運も俺を邪魔するには届かねぇ。
魔剣を顕現。大上段からの兜割りを叩き込む。
勿体ねぇな。ま、バイクの弁償はアインに言って、報酬から差し引いて貰うさ。



●チョイス・オブ・フォーチュン
「待たせたな、白竜。――不運ってヤツと踊りに来たぜ?」
 双銃を突き付けて、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は得意気に微笑む。フェンネルの双腕、そこに浮かぶ『運命の光球』が光り輝き、周囲に存在する数多の確率に干渉していく。
 ぎゃり、と地面を削る音だ。フェンネルの周囲を廻るように、カイムのバイクが疾駆する。
 襲い来る瓦礫の雨にしかし、便利屋の猟兵は怯まない。
「ワタシの運命干渉を受けてなお、その表情を崩さないか……!」
「ハッ、運命の手綱は誰かに任せるもんじゃないぜ!俺の運命は俺だけのものだ!」
 片手で銃を構えて、フェンネルへ銃弾が発射された。精密な一撃にフェンネルは目を細めるが……運命調律ユーベルコード『ホイール・オブ・フォーチュン』は、フェンネルを―――煌を幸運たらしめている。的確に狙い撃たれた銃弾はしかし、降りしきる瓦礫の雨に遮られた。
「無駄だ!ワタシの体に指一本触れられると思うな!」
「そうかい、それなら指じゃなく、俺の剣を一発お見舞いしてやるよ」
 ぎゃり、と再びバイクが瓦礫の道を駆け抜ける。地面に積み上がる瓦礫の隙間を、恐ろしい程のドライビングテクニックで潜り抜けた。
 無駄なことを、と呟いたフェンネルの表情が、途端に変化する。落下する瓦礫が、法則性を持ったかのように、カイムの前に“積み上がった”からだ。
「―――ワタシの調律を、潜り抜けた、だと……!?」
 にっ、とカイムがもう一度不敵に笑った。バイクが瓦礫の山を駆けて飛んだ。こちらへと肉薄する猟兵に、煌はグル、と唸る。
 口腔を大きく開き、喉の奥に燻るは全てを融かす白炎の奔流。刹那放たれた破滅が、カイムをバイクごと覆い尽くした。
「ワタシの力の間隙を潜り抜けたところで、幸運は必定、お前の攻撃など―――」

「俺の攻撃が、なんだって?」

 頭上から聴こえた声に、フェンネルは大きく目を見開いた。『神殺しの魔剣』を構えたカイムは、フェンネルに静かに告げる。
「世界を壊させるつもりは最初からねーし、煌もそのままにしとくつもりはねぇよ。だからこそ……この“裏”は確定だ。いくらあんたが運を操ろうとな」
 フェンネルが持つ、黒く淀む『運命の光球』にばきり、とヒビが入る。【表か裏か(オール・イン)】は、全ての行動の先を確定化させるユーベルコード。いくら運を減少させようと、その効力に対抗する術はない。
 胴体に深く入った魔剣の刃が、黒い炎と共にフェンネルの身体を灼いた。
 苦痛の咆哮をあげる白竜から身を翻して、近くにあった瓦礫の山に着地する。ちっ、と舌打ちした後、やれやれと肩を竦めた。
「……勿体ねぇな。ま、バイクの弁償はアインに言って、報酬から差し引いて貰うさ」

 ―――代償なくして、成功はなく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

地籠・陵也
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
【指定UC】を説得と一緒に、攻撃は【オーラ防御】で受ける。

俺たちがあんたにしようとしていることを、許せとは絶対に言わない。
許されるなんて思ってない。
でもこんな形で一緒にいることを本当に望んでるとは思えない……!

彼女は本当にこれでいいと思ってるのか?
大事な人に、こんなことをさせたかったのか?
伝えたいことを骸魂になってしまったことで歪められてしまったんじゃないのか!
骸魂になってまでもう一度会いに行ったのは、あんたが自分がいなくても生きていけるように何かを残してやりたかったからじゃないのか!?

――もし、その想いが歪められてしまってるなら……
そんなもの、俺が断ち切ってやる!!


地籠・凌牙
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
【指定UC】で不運は俺が全部喰らう!
攻撃は【第六感】で急所狙いかどうかを感知して回避、他は受ける!

悪いがあんたに世界を滅ぼさせるワケにはいかねえ……!
世界が滅んだら彼女との思い出の景色も、彼女が大好きだったかもしれないモノだって消えちまうんだぞ!
あんたも彼女もそれで本当にいいって言い切れるのか!?

運を左右するから虐げられてきた気持ちはわかる……でもこの力で誰かを救うこともできる!
あんたの力で救われた人は絶対にいる……彼女だってそれで救われたから、自分の力であんたを支えてやれるから最後まで一緒だったんじゃないのか!?
彼女が伝えたいのは世界を滅ぼせなんて言葉じゃないハズだ!



●運命の天秤
 白竜はそれでも、運を操作する力を解放し続ける。飛来する瓦礫の中、現れた二人の猟兵に煌の目が細まる。
「……運命を奪われてなお、ワタシを倒そうとするのか」
「俺たちがあんたにしようとしていることを、許せとは絶対に言わない。許されるなんて思ってない。でもこんな形で一緒にいることを本当に望んでるとは思えない……!」
 苦しそうに、白い竜鱗を持つドラゴニアンである地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は煌に向かって鋭い視線を向けた。
「悪いがあんたに世界を滅ぼさせるワケにはいかねえ……!世界が滅んだら彼女との思い出の景色も、彼女が大好きだったかもしれないモノだって消えちまうんだぞ!あんたも彼女もそれで本当にいいって言い切れるのか!?」
 拳をぐっ、と握りしめて、弟の地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)もまた兄の言葉に賛同する。しかし、白竜は激昂に身を委ねるように咆哮する。
「……詭弁だな!この気配、ワタシには分かるぞ。幸運と不運の気配だ。兄が悪性を浄化し、弟が悪性を呑むか。お前たちもワタシたちと同じだろう!生まれ持った力が故に、他人が下劣にもそれを淘汰しようと囀り回る!異質を受け入れぬ性分は人も妖も同じよ!」
 ぶわ、とフェンネルの纏う黒布のオーラが迸る。中空に拡散した無数のオーラの帯が、敵対する兄弟を斬り刻もうとのたうち回った。
 襲いかかる黒布を回避し、陵也と凌牙はフェンネルへ駆け出した。降りかかる瓦礫を回避し、迸る石礫を打ち砕く。
「運を左右するから虐げられてきた気持ちはわかる……でもこの力で誰かを救うこともできる!」
「救うだと……?笑わせる!幸運を喚ぶ力が、他者の精神性を蝕む毒と化した!不運を喚ぶ力が、他者の悪性を露呈させる鏡と化した!救われた者など、誰一人として在りはしない!」
「そうじゃない、少なくとも一人いたはずだ!あんたを想ってた、貧乏神の御影は……!」
 目を微かに見開く。ぐ、とフェンネルが口を噤んだ。
「あんたの力で救われた人は絶対にいる……彼女だってそれで救われたから、自分の力であんたを支えてやれるから最後まで一緒だったんじゃないのか!?」
「黙れ……」
「大事な人に、こんなことをさせたかったのか?伝えたいことを骸魂になってしまったことで歪められてしまったんじゃないのか!骸魂になってまでもう一度会いに行ったのは、あんたが自分がいなくても生きていけるように何かを残してやりたかったからじゃないのか!?」
「黙れッ!!」
 黒布のオーラの波濤が迸る。眼前を埋め尽くすオーラの束、圧倒的な不運を内包する貧乏神の力の一端。しかし、その間隙を潜り抜けたのは。

「彼女が伝えたいのは世界を滅ぼせなんて言葉じゃないハズだ!」

 ぶわ、と凌牙から迸った力の奔流は、兄の陵也へと受け継がれる。
 【【喰穢】祝福の標(ファウルネシヴォア・セレブラール)】。フェンネルが操る不運の全てを引き付けた凌牙の身体から、暗黒のような黒霧が立ち昇った。周囲に存在する全ての不運に圧し潰されそうになる凌牙にオーラの波が襲いかかり、身体を悉く斬り裂かれるが……それでもその瞳の奥にある炎は掻き消えない。燻る瞳の灯は、彼のあり方を示すような黒檀の如き火だ。
 黒布が、まるで“避けるかのように”陵也の身体をすり抜ける。こちらへと肉薄してきた猟兵に、煌が咆えた。

「――もし、その想いが歪められてしまってるなら……そんなもの、俺が断ち切ってやる!!」

 片腕に顕現する、光に満ちた聖なる剣。振る度に光の軌跡が中空を奔り、そしてその一撃が煌の胸へと深々と突き刺さった。
「ぐ、ぬ……!」
 【【昇華】解放を刻みし聖光の楔剣(ピュリフィケイト・リベレーションズエクスカリバー)】によって、その身体に宿る悪が浄化されていく。
 身を揺らがせる白竜から距離を取り、倒れそうになっている凌牙の肩を支えた。
「……世界を滅ぼしてでも……それでもワタシは……彼女が彼女たりえる居場所を……作りたかったのだ……」
 小さく呟かれた言葉が、轟音に満ちる広場の音に掻き消された。二人の猟兵に聴こえたのかは……定かではない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

ザッフィーロ憂いある横顔を眺めつつ
かれの過去の離別と再会、そして再びの喪失のつらさ、痛みは経験した者にしかわからぬでしょう
けれど、想像することはできます
その衝撃と心を蝕む想いはいかほどか……

ふと視線がかち合ったなら、かれの考えが読み取れた気がして微笑みましょう
そして僕も同じです、と心の中で返しましょう

自分たちや周囲の猟兵たちに降る瓦礫を「衝撃波」で「吹き飛ばし」つつ
「野生の勘」「第六感」で降りかかるであろう『不幸』を察知し
可能な限り「見切り」で対処したく

「魔力溜め」「高速詠唱」「全力魔法」
「2回攻撃」「一斉発射」を付加した
【天響アストロノミカル】にて攻撃しましょう


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

亡くした者が戻って来る喜びも共に居たいと願う心持ちも経験がある故痛いほど解るが…
だが…己の前所有者がそうだったように大事な相手へ己が為に害を成す今の状況は望まぬだろう
如何にかして止められれば良いのだが…と
そう思いつつ自然と視線が向くのは愛しい相手の方で
宵の器物が朽ちる時も、何れ来るのだろう
だが…その時は迷わず俺も共に逝く故まあ、心配はないのだが、な

戦闘時はメイスで瓦礫を弾き『武器受け』しながら『盾受け』にて宵を護りつつ行動
防ぎきれぬ己へのそれは『オーラ防御』で軽減しながら説得を試みよう
間合いを詰められそうな場合は【穢れの影】にて敵を拘束、その隙に宵と共に間合いを取れればと思う



●比翼の鳥
 フェンネルの持つ運命の光球が再び活性化する。周囲の運命を掻き乱す不可視の余波によって、不運が周囲に蔓延した。
 妙な感覚に眉を顰め、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)はふう、と小さく息を吐いた。
「亡くした者が戻って来る喜びも共に居たいと願う心持ちも経験がある故痛いほど解るが…」
 消え失せたものとの再会。それは誰もが夢見る幻想だろう。だが、ここがカクリヨファンタズムである以上―――いや、オブリビオンという存在がいる以上、その夢は現実足り得る。
(だが…己の前所有者がそうだったように大事な相手へ己が為に害を成す今の状況は望まぬだろう。如何にかして止められれば良いのだが…)
 あらゆる穢れを内包するザッフィーロの器もまた、そのようにして在った。それは、隣でザッフィーロの表情の変化を覗く、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)が感じていることだった。
(……かれの過去の離別と再会、そして再びの喪失のつらさ、痛みは経験した者にしかわからぬでしょう)
 その痛みを、煌とザッフィーロは識っている。宵はその嘆きに同調することはできない。それをしてしまえば、ただの同情になってしまうからだ。
(けれど、想像することはできます。その衝撃と心を蝕む想いはいかほどか……)
 だからこそ、かれと共に在ろうと。ザッフィーロの視線と宵の視線が交差する。頷くまでもなく、両者はただ心の中で呟いた。
((朽ちる時は、共に))
 天空を浮遊する瓦礫の束。全てを穿つような岩の雨。それでも、二人の猟兵は止まらない。
 宵が『宵帝の杖』を眼前に構えたと同時に、その魔力を開放する。迸った衝撃波が身体を貫くだろう瓦礫を吹き飛ばし。
 ザッフィーロが次いで飛来する瓦礫を『明星』の名を持つメイスで叩き砕く。

 一歩前へ。

 自らの身に降りかかる不幸を察知するのは宵だ。敵の銃弾を避けるような精密な動きだった。肩を貫くはずだった瓦礫の弾丸、宵の第六感は危機を告げる。だが、避ける必要などない、と。眼前を見据えたまま動かない宵の前に、ザッフィーロが立ちはだかる。聖句の名を持つエネルギーの盾によって降りしきる瓦礫が砕け散る。
 見事な連携、完璧過ぎる護りに、煌が、ぐぬ、とうめき声をあげる。
「ワタシの不幸が……御影の不幸の力を超えるとは……ッ!」
「お前はその力を利用しているだけだろう。だが俺たちは違うぞ」
「その通り。あなたが夢見た理想は、このような滅亡の果てではないはずです」
 ザッフィーロの周囲に差す影から沸き立つ無数の腕。それが煌の身体を拘束していく。【穢れの影】はザッフィーロの本質の顕れだ。罪と穢れは形を成し、敵対者を無慈悲に束縛していった。
「ぐ……!ワタシは……ワタシは……ッ!」
「目を覚まして下さい。僕たちは……このような結末を望んでいません」
 魔法陣が周囲を覆う。あらゆる不幸を灼き尽くす天壌の破壊は、今此処に顕現する。

「流星群を、この空に」

 カクリヨファンタズムの滅亡の空が赤熱した。瓦礫を打ち砕き飛来する、隕石の驟雨。【天響アストロノミカル】によって宵の魔力を総動員した破滅の雨が、煌がいる地点を穿ち、削り取る―――!

 土煙の中、フェンネルは自己に付与した幸運によってある程度の隕石を躱せたようだが……その余波によって鱗が傷ついていた。
 激昂に顔を歪め―――だが、その覇気に鎮静の兆しが見られた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハイドラ・モリアーティ
おいおい、俺の無い運を取り上げないでくれよ
利子付きで返してくれるんだったらいいけどな。十秒で一割ってことで

あのさあ、巡り合ったってえならせめて
幸せになりますようにって思わせてくれねえか
【RESSENTIMENT】――お返しさせてもらうよ。これでイーブンだ
馬鹿な真似はすんな
お前の愛の重さはよォくわかってるつもりだぜ。貧乏神のお嬢ちゃんへの心も、まァ俺としちゃ汲んでやりたい
だが、世界と天秤にかけるのはナシだ

『煌』、お前
「この世界で出会った」んだろ
せめて愛した女と出会った世界は守る側につかねえか
お前の想いをさ。悪いことには使うなよ
――お前の幸運の女神にしてやれ
厄に憑かれてんじゃねーや



●叛逆の蛇
 タバコの火が、とぐろを巻いて世界の破滅の空に溶けて消える。調律者と化した煌を一瞥して、ハイドラは吸い殻を踏みにじる。降り注ぐ瓦礫の束が周囲に飛散するも、気にした様子もなく。
 2つ目を吸おうとしたところで、飛散した石礫によってタバコが宙を飛んだ。
 肩を竦めて、ハイドラ・モリアーティ(Hydra・f19307)は静かに口元を綻ばせる。
「おいおい、俺の無い運を取り上げないでくれよ」
「運気の全てを喪ってなお、その余裕……。お前の全ての運は、ワタシの掌中にある、だというのに……!」
「一方的に搾取されるのは割に合わねぇ。利子付きで返してくれるんだったらいいけどな。十秒で一割ってことで」
 白竜が激昂に身を委ね、その口腔内の炎を開放する。燻った火花のような白は転じて、空間を蹂躙する白炎の奔流へと形を変えた。
 やれやれ、と。ハイドラがその片腕を持ち上げる。それは、叛逆の意思にして、己の内に眠るオウガの力の具現化だ。
「あのさあ、巡り合ったってえならせめて、幸せになりますようにって思わせてくれねえか」
「―――!!なん、だ、それは……!!?」
 腕に絡みつく蛇のような怪物。無数の首を持つ、大蛇の群れ。ハイドラに降り掛かった運命搾取の力と、白炎の力の両方が、オウガの口腔の中へと消えていく。
「――お返しさせてもらうよ。これでイーブンだ」
 ばちり、とオウガ『ヒュドラ』の威嚇が“それ”を成した。白炎が大気そのものを焼き払い、運命の天秤は千切れ、煌の持つ『運命の光球』にびしり、と更にヒビが入っていく。
 【RESSENTIMENT】。叛逆と怒りを名に持つユーベルコードは、その運命さえも喰らい尽くす。
「ワタシの運命調律が、砕けた、だと……!」
「馬鹿な真似はすんな。お前の愛の重さはよォくわかってるつもりだぜ。貧乏神のお嬢ちゃんへの心も、まァ俺としちゃ汲んでやりたい。だが、世界と天秤にかけるのはナシだ」
「……世界はワタシたちを救わなかった。救いを与えてはくれなかった。なのに、この世界が存続する理由など……!」
 はぁ、とため息をついたハイドラは、その眼光を銀色に輝かせた。
「『煌』、お前「この世界で出会った」んだろ」
 白竜の双眸が見開かれる。ハイドラは続けて口を開いた。
「せめて愛した女と出会った世界は守る側につかねえか。お前の想いをさ。悪いことには使うなよ」
 タバコに火をつけて。再び虚空にかき消える紫煙が、フェンネルの鼻孔をくすぐった。
「――お前の幸運の女神にしてやれ。厄に憑かれてんじゃねーや」
 ぶるぶる、と手を震わせて顔を覆う白竜。悲嘆に暮れる煌にしかし、ハイドラは小さく呟いた。

「……怖いのは喪うことじゃねぇ、全てを忘れることさ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼面坊・羅剛
不運悪運何するものぞ。
そちらに幸運があるというならば、
己には御仏の加護と幽世の守護者としての意地がある。
瓦礫程度では己の足は止まらん。

目の前まで近付いたら錫杖を掲げて
指定UCにより、調律竜の動きを止める。
その間に説得を試みてみよう。

煌殿、お主の事情はよくわかった。
愛別離苦は八苦が一つ、親しいものとの別れは己が身を切られる以上の苦しみだ。

なれど、幽世を滅ぼすことは許されぬ。
この世界で生きる妖達もまた、お主と御影殿のようにお互いを大切に思い、生きているのだ。
誰よりも離別の苦しみを知るお主がその絆を滅びによって断ち切ってどうする。そんなことは御影殿も望むまい。

今ならまだ間に合うのだ。
踏み止まれ。



●普遍の守護者
 周囲を満たす不運の奔流を感じながら、カクリヨの猟兵はその先を見つめ続けた。鬼面の奥の眼は鋭く、筋骨隆々な四肢を動かして、巨大な錫杖を斬るように薙いだ。
「不運悪運何するものぞ。そちらに幸運があるというならば、己には御仏の加護と幽世の守護者としての意地がある」
「お前は……」
 顔を覆っていた白磁の如き双腕が開かれる。煌が視認した猟兵は、彼にも見覚えがあった。カクリヨの守護者として存在する悪霊にして破戒僧、鬼面坊・羅剛(幽世の修羅・f29378)が、杖の柄を力強く振り下ろす。
 降り注ぐ瓦礫が羅剛の足元を穿つが、それでも微動だにしない。
「瓦礫程度では己の足は止まらん。この程度ではな」
 駆け出す。崩落の如き瓦礫の雨に打たれ、それでも、その不運を弾いているのは―――。

「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」

 金剛界五仏に祈りを捧げる、光明真言。それは、我に光りあれ、と願う力持つ言葉だった。錫杖から放たれる光明、御仏の加護が全ての不運を弾き返していく。錫杖を中心として、不可視の力場が働いているかのように、全ての瓦礫が羅剛を避けるように飛んでくるのだ。
 『運命の光球』は回れど、それでもその力場を突破できない。廻っていた不運の光球が、さらにびしり、とひび割れた。
「煌殿、お主の事情はよくわかった。愛別離苦は八苦が一つ、親しいものとの別れは己が身を切られる以上の苦しみだ」
「ならば……」
「なれど、幽世を滅ぼすことは許されぬ」
 飛んできた瓦礫を錫杖の先で薙ぎ飛ばし、白竜の元へと接近する。しゃらん、と高い音を響かせた錫杖が振りかざされた。
「この世界で生きる妖達もまた、お主と御影殿のようにお互いを大切に思い、生きているのだ」
 守護者として存在する羅剛は、カクリヨファンタズムのそのあり方をずっと見てきた。傍観者であり、その営みを守護するものとして、煌の願いは許容できない。
「誰よりも離別の苦しみを知るお主がその絆を滅びによって断ち切ってどうする。そんなことは御影殿も望むまい」
「―――!!」
 呆然とする煌に、羅剛は振りかぶった錫杖をその竜の額に当てた。
「今ならまだ間に合うのだ。踏み止まれ」
 呟かれた言葉と共に、【御仏の威光】は拡散する。悪性を浄化する力によって、煌の意識が若干ではあるが引き戻されたようだ。
「ワタシは……俺は……」

 錫杖の音がまた響き渡る。ぶわり、と僧衣を翻して、羅剛はその場から立ち去っていく。
「己は守護者。カクリヨを護る者にして……煌殿、己はお主の願いもまた、守護する者でもある」
 最後に残る猟兵に、煌に宿る最後の悪性を断つことを譲って、羅剛はその場から去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコ・エンブラエル
●POW

ようやくご対面だな、白竜
友の死を嘆き、今はその友と一緒に居るか
だが、果たしてそれは本当の友か?
果たしてそれが友が願ったものか?
いいや、違う
お前は今や友を失った喪失感に付け込まれ、骸魂に魅せられた者に過ぎない
それを聞き届けないのであれば、荒治療をせねばな

迫りくる瓦礫をビームキャノンで迎撃しながら奴の元へ【ダッシュ】をかける
距離を詰め、射程内に入れば【ヘビーアームド・ウェポナイズ】を発動
急停止により不運を招くという黒布が襲いかかるだろうが、攻撃を一身に受けながら反動を利用して更に加速させたブーステッドハンマーを射出する
…不運だと?
いいや『狙った通り』に過ぎん
俺の獲物は…その手に持った珠だ



●別れの時
「ようやくご対面だな、白竜」
 『パワードギア』に搭乗して、リコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)は静かに告げた。幸運と不運の気配は薄くなっているが、煌のユーベルコードは依然として発動を続けている。
「……ワタシは……ただ共に在りたいと願っただけだ。彼女の居場所を作りたかった……それだけだ」
「……そうか。友の死を嘆き、今はその友と一緒に居るか」
 パワードギアがビームキャノンを構える。『運命の光球』の力が周囲に拡散し、リコ自身にも不運が降りかかる。飛び交う瓦礫が周囲へ降り注ぎ―――それでもリコは煌から視線を逸らさない。
「だが、果たしてそれは本当の友か?果たしてそれが友が願ったものか?」
「彼女は……ワタシと同じだった。不運を招くが故に居場所がなかった。だからこそ、ワタシは……!」
「確かにそれは正しい願望だろう。友の居場所は自分が作らなければならない……だが。―――違う。お前は今や友を失った喪失感に付け込まれ、骸魂に魅せられた者に過ぎない」
 パワードギアのエンジンが唸る。足元を削るように駆動したギアを急発進して、リコは煌へと近づいていく。
「違う……!ワタシは、骸魂に魅せられてなどいない!御影は戻ってきた、ならばワタシは成さねばならないッ!!」
 轟、と白竜が咆えた。降りかかる瓦礫にビームキャノンの光線が突き刺さり打ち砕かれる。石礫と化して降り注ぐ瓦礫の束を、リコは持ち前の操縦技術で華麗に回避していった。
「それを聞き届けないのであれば、荒治療をせねばな」
「ワタシは、御影と共に在るのだ!!」
 ぶわり、と煌が纏うオーラの波動が周辺に迸った。貧乏神の力の一端、黒布が一帯を蹂躙し―――それでもリコは止まらない。
 襲いかかる黒布はリコとパワードスーツを覆うも、風を避けるかの如く、リコはその技術を以て蛇行するように再び回避、大気を裂く黒布の間から飛び出した。しかし不運は降りかかる。黒布が崩壊の風に晒されて翻り、リコのパワードスーツを斬り裂いた。
「我が不運は御影の力!ワタシは絶対に負けない!」
「…不運だと?いいや『狙った通り』に過ぎん」
 地面を再び削り、パワードギアが急停止する。急停止したパワードスーツが持っていた『ブーストテッドハンマー』がふわ、と宙に浮く。いや、厳密には慣性の力によって真横へと飛んでいく。

「俺の獲物は…その手に持った珠だ」

「!?」
 突如として飛来した鉄球に煌は対処できない。『運命の光球』、不運を司る暗黒の光球が、飛んできた鉄球と接触、刹那甲高い音を立てて打ち砕かれる!
「み、かげ……!!」
 黒布が、不運の力が霧散していく。骸魂が宙へ昇り、小さく瞬いた。元の姿へと戻っていく煌の視線の先、御影だった骸魂は、空間の裏側へかき消えるかのように消え去ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『放て、弾幕大花火』

POW   :    弾幕はパワーだ!

SPD   :    弾幕は数よ!

WIZ   :    弾幕は論理(ロジック)ね!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●天の大輪
「すまない……どうやら自分を見失っていたようだ」
 ぺこり、と頭を下げた謝罪した竜神の美丈夫に、猟兵はおや、と首をひねる。予想以上に物分かりの良い煌の態度に拍子抜けしたのもあるだろう。
 カクリヨファンタズムの崩壊は、時が巻き戻るように収束し、元の日常へと戻ってきた。煌のいる建物から、花火を準備している妖怪たちの姿が小さいながらも確認できる。
「……御影は花火が好きだった。永遠を生きる俺たちと違って、たった数秒で散ってしまうからだろうか」
 遠くを見つめるように、煌はカクリヨファンタズムの薄暗がりの空を見つめている。
 心では納得しているようだが、それでも再び御影を喪ったのは事実だ。はぁ、と小さくため息をついた煌から距離をとって、猟兵たちはうん、と頷く。
 真下では花火を準備している妖怪たちと見物客の妖怪がひしめきあっている。煌の傷心を癒やすためにも、花火の打ち上げを手伝うのも良いかもしれない。
 ……もちろん、そこに『自分たちが楽しむため』、という理由も含んでいるようだが。
カイム・クローバー
人間の中には『永遠』なんてモンを欲する奴がゴマンと居る。永遠の若さ、永遠の美貌、永遠の命…――アンタを見てると『永遠』なんてモンがどれだけ下らねぇか良く分かる。
長いからこそ…会えねぇのは辛いよな。

煌の居る建物からは花火が見えるんだろ?それじゃあよ、酒でも飲みながら花火が始まるまで煌と御影の思い出でも語ってくれねぇか?
楽しかった事や喧嘩した事、悲しませた事――二人で見た花火の景色。
なぁ、きっと色褪せねぇだろ?今だって昨日の事のように思い返せるだろう。

――(花火を見つつ)もしも。泣きたいなら泣けば良いと思うぜ。見ないフリぐらいは出来る。
個人的にだが。誰かを想う男の涙はみっともなくないと思うぜ



●輝き散る
「人間の中には『永遠』なんてモンを欲する奴がゴマンと居る。永遠の若さ、永遠の美貌、永遠の命…――アンタを見てると『永遠』なんてモンがどれだけ下らねぇか良く分かる」
「ハハ……。全くだ。永遠の命なんて馬鹿馬鹿しい。いつかは散って、また新しい命を育む。花火のように瞬きの内に消える命の中で、人は悲しみに抗いながら前を向いて何度も立ち上がる。それがなにより素晴らしいものだ」
「だが長いからこそ…会えねぇのは辛いよな」
 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)の言葉に、煌は口を閉じた。宵闇の空に打ち上がる花火を、今かと待ちわびているようだった。
 その真横に、カイムが立つ。遠くを見つめる煌の横顔は、ただ無表情で―――銀の瞳が、悲しく灯っている。
「なぁ、酒でも飲みながら花火が始まるまでアンタと御影の思い出でも語ってくれねぇか」
「俺と御影の……?」
「楽しかった事や喧嘩した事、悲しませた事――二人で見た花火の景色。色々あるだろ?」
「……そうだな。あの日も、こんな空の下で、御影と共に花火を見ていた」
 甲高い音と共に、花火が打ち上がる。空に咲く大輪の花が、銀の瞳に映されて散っていく。
「金色に、朱赤に咲いて散る天の花、それを見て御影が言ってたな。『誰かのために、みんなのために散っていく者たちは、こんなにも輝かしい』って」
「きっと色褪せねぇだろ?今だって昨日の事のように思い返せるだろう」
「ああ。……ああ」
 小さく、ただ短い受け答え。静寂の中、花火の上がる音だけが響く。
「――もしも。泣きたいなら泣けば良いと思うぜ。見ないフリぐらいは出来る。個人的にだが。誰かを想う男の涙はみっともなくないと思うぜ」
「……そうか。そう、か」
 カイムが花火に目をやって、暗がりに咲いて散る天の大輪を見つめた。
 隣にいる煌の表情を見ることは叶わなかったが―――手に持った盃の中に、雫が一滴、零れ落ちた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

確かに駆け足の様に良き急ぐ人の一生は花火の様だからな
その一瞬の美しさと儚さに人々は魅了されるのだろう
器物が朽ちぬ限り生きられる俺達は沢山の花を見送るのだろうと見送って来た者達を、友らを想い瞳を伏せるも
宵の言葉を聞けば口元を緩めよう
…ああ、そうだな
今日見る花火の様にきっと、俺達の心の中に皆咲き続けるのだろう
そう頷きつつ花火の準備を手伝うも続いた声音には朽ちる時も朽ちた後も共に在るのだろう?
…遺されるつもりも残すつもりもないのだがと、揶揄う様な笑みを
空に花が咲いたならば宵と手を繋ぎ華やかなそれを見上げよう
…きっと何十何百の夏を経てもこの花火は覚えているのだろう
本当に美しいな、宵


逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と

僕たちヤドリガミも、半ば永遠に近いいのちを持ちます
これから訪れる日々は、年月は、とても長いものとなりましょう

けれど、見送った人々は……
自分が忘れない限り、心の中に住まい続ける限り、いまもこの世に生きているのです
かれを見あげて小さく微笑み
……まぁ、僕は自分もきみも独りきりにするつもりはありませんけれど
そう呟いたのち、かれの言葉に目を瞠り
それから嬉し気に微笑みましょう

花火の準備を手伝い
終わったならかれの手を引いて見晴らしのいい場所へ
夜空に大輪の光の花が咲いたなら
ええ、きみと見るものすべてが、かけがえのない思い出です
……ああ、本当に、綺麗だ



●悠久を生きる
「確かに駆け足の様に良き急ぐ人の一生は花火の様だからな。その一瞬の美しさと儚さに人々は魅了されるのだろう」
 花火玉を筒に入れる妖怪たちの作業を見つめて、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の言葉に頷く者が。
「僕たちヤドリガミも、半ば永遠に近いいのちを持ちます。これから訪れる日々は、年月は、とても長いものとなりましょう」
 そうして、逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)もまた、ザッフィーロの言葉に深く頷いた。
「……器物が朽ちぬ限り生きられる俺達は沢山の花を見送るのだろう」
 全ての命が過去となり消え失せてなお、ザッフィーロと宵は、煌同様に『無限』を見続ける存在となる。そして、今でもそうだったと。
 伏せられた目に、宵はにこりと口元を綻ばせた。
「けれど、見送った人々は……自分が忘れない限り、心の中に住まい続ける限り、いまもこの世に生きているのです」
「…ああ、そうだな。今日見る花火の様にきっと、俺達の心の中に皆咲き続けるのだろう」
 そっと頬に置かれた手の熱に、ザッフィーロもまた微笑んだ。
 妖怪たちが花火の玉をせっせと作っている。本来は花火打ち上げ前に仕込んでおくものではあるが、流石は妖怪と言ったところ。凄まじい速さで花火玉を作る様子に、二人が感心する。
「……まぁ、僕は自分もきみも独りきりにするつもりはありませんけれど」
「はは、当然だ。朽ちる時も朽ちた後も共に在るのだろう?」
「ええ、その誓いは破りませんよ。絶対に」
 にこり、と微笑み合う。散る時は同じ時、同じ場所で。ヤドリガミの一生は長すぎる故に、彼らはずっと共に在る。どれだけの時が流れようと。数多の命が大地に溶けて、全ての熱が置換された世界の果て、そこに在っても。
宵がザッフィーロの手を引いて、近くにあった丘の上で花火が打ち上がるのを待つ。煌と御影、永遠の命を生きようとした者たちは、煌が独りになったためにこのような悲劇が起こった。花火の如く散りゆく命、その理から外れた者たちは、片方を喪ったことで初めて『不変であることの非情さ』を思い知ったに違いない。
 夜空に大輪の花が咲く。金と朱赤。群青に似た青の光を拡散させて、たちまちに散っていく火の花。

「…きっと何十何百の夏を経てもこの花火は覚えているのだろう」
「ええ、きみと見るものすべてが、かけがえのない思い出です」

 夜空の闇を断つような鮮烈な大花が、散ってはまた打ち上がる。手を繋いで見つめる両者が、小さく呟いた。

「本当に美しいな、宵」
「……ああ、本当に、綺麗だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

地籠・陵也
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
(【指定UC】を使いつつ)
それじゃエインセル、頼んだぞ。凌牙が彼を連れてきたら教えてくれ。
(といって使い魔を派遣し)

……うーん、魔術で何かできればいいんだが。
打ち上げ花火自体はもう充分に準備されてるから、それに合わせて何か追加できるものが欲しいな……
そうだな、光の【属性攻撃】の応用で蛍が花火が上がる空を舞っているような演出でも入れておこうか?
せっかく見る花火だ、少しでも心が安らげるよう【祈り】を込めて。
俺たちが彼にしてやれることはきっとこれぐらいだろうからな……

彼に言葉をかけるのは全部凌牙に任せるよ。
俺よりあいつが話をした方がいいと思うから……


地籠・凌牙
【地籠兄弟】アドリブ歓迎
あんたは優しい奴だな。許されるとは思ってないっつったのに。

ちょいと一つわがままを聞いちゃくれねえか?
外へ見に行こうぜ?花火。お気に入りの場所とかあったら教えてくれよ。
大丈夫、妖怪共が何か言い出したら俺がぶっ飛ばしてやっから。

そういやさ、今の俺の状態って事故に遭ってもおかしくねえんだよな。周りを巻き込むぐらいの規模だぜ、これ。(酷く淀んだ黒い靄を纏っている)
なのに無事花火が見られてんのはあんたがいるからだ。
俺や彼女みたいなのはさ、普通に過ごせるようになるだけで救われるんだ。
だからよかったら、これからもそういった人をあんたの力で助けてやって欲しい。
って言いつつ【指定UC】。



●想いの為に
「あんたは優しいやつだな。許されるとは思ってないっつったのに」
 打ち上がる花火を見ながら、煌の横に並んで地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は口元を綻ばせた。
「優しくはないさ。ただ……ただ御影の居場所を……彼女の居場所を作りたかっただけなのだから」
 ぽつり、と。咲き乱れる火花をじっと見つめて、煌は凌牙に顔を向けずにただそう言った。
 そして、ちらり、と。凌牙に渦巻く“不運”を視る。
「恐ろしい程の悪性の収束だな。御影でさえもある程度コントロールはできていたようだが……お前のそれは異常だ」
 フェンネルに変貌した自分が付与した不運が、今も凌牙の体を取り巻いている。黒い霧となって周辺に蔓延る悪性の奔流に、煌が顔をしかめた。……その表情は、申し訳無さも入っているようだ。
「はは……まあな。……ちょいと一つわがままを聞いちゃくれねえか?」
「わがまま?」
「外へ見に行こうぜ?花火。お気に入りの場所とかあったら教えてくれよ」
 む、と煌が閉口する。無理もない。煌を見ただけで罵声を飛ばす妖怪がいるかもしれないのだから。その様子に凌牙がにっ、と笑う。
「大丈夫、妖怪共が何か言い出したら俺がぶっ飛ばしてやっから」
 行こうぜ、と。縁側から飛び出した白い影は、もう一つ。兄の使い魔であるエインセルが飛んでいく。

「……うーん、魔術で何かできればいいんだが」
 空に登る無数の大輪。地籠・陵也(心壊無穢の白き竜・f27047)は腕組みをして凌牙と煌が来るのを待っていた。
 と、そこでエインセルが飛んできたことに気がつく。
「にゃーん!こうがきたよー!」
「ああ、ありがとう、エインセル」
 振り向けば、暗黒の瘴気を纏った凌牙に、煌が渋々といった表情で付いて来ている。
「おお、いい眺めだな!」
「……全く、不運に圧し潰される状況で、なぜそんな笑顔を作れるのか」
「何言ってんだ。笑顔は作るもんじゃないぜ、俺は楽しい時には楽しむしな。もちろん、悲しかったら普通に悲しむ、当たり前のことだろ?」
 むう、と小さく煌が唸る。空を覆う光の束に、陵也の光属性の魔法が飛び交った。ホタルのように瞬く光の珠に、煌が微かに目を見開いた。
「そういやさ、今の俺の状態って事故に遭ってもおかしくねえんだよな。周りを巻き込むぐらいの規模だぜ、これ」
「……だろうな。俺がいなければ、今頃死んでいるかもしれないぞ」
「そうだ、無事花火が見られてんのはあんたがいるからだ」
 天に上がる花火をまたじっと見つめて、煌は凌牙の言葉を聞いていた。
「俺や彼女みたいなのはさ、普通に過ごせるようになるだけで救われるんだ。だからよかったら、これからもそういった人をあんたの力で助けてやって欲しい」
 【祝福の標】が具現化し、吉兆を齎す刻印が煌へと刻まれる。無言のまま花火を見つめていた煌の口が開かれた。
「御影は……良いと言ったんだ。たとえ自分に不幸が降り掛かっても、俺と共にいられるなら何でも良いと」
 小さな言葉を、陵也と凌牙がじっと身動きも取らずに聞いていた。聴こえるのは、天に昇る花火の音に、妖怪たちの喧騒。
「“不幸じゃなかった”と……彼女は、そう思いながら、死ぬことが……死ぬことができたのだろうか……!」
 ただそれだけが。それだけが心配だった。幸運を齎す自分と不幸を齎す貧乏神。試練にも思える不幸が次々と降りかかる中、彼女は―――御影の神としての一生は、“幸せ”だったのか。
 嗚咽を隠すように身を震わせて、地面に視線を落とす。その背中を陵也はじっと見つめていた。
「……ああ、きっと大丈夫だ」
 短く言葉を切って、凌牙は深く頷く。それは、凌牙だからこその確信であり―――凌牙だからこそ同情もなく言える、ただ一つの言葉だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハイドラ・モリアーティ
――まあ、正気に戻ってくれてなによりだわな
とはいえジメジメされちゃあ困る。蒸し暑いのは嫌いなもんでね
何でもそうさ、終わりの後味さえよけりゃあすべてヨシだ

とはいえ、花火ねえ――いや、弾幕か
俺こそ派手なのは得意じゃないが、【ADDICTION】
ヒュドラ。お前ならできるんだろ。力を貸せ
さすがに八首も頭がある竜がバンバン口から米粒みてーな弾幕と球体をぎゅんぎゅん回せば、派手なもんだろ
俺は体だけ貸せばいいわけ。背中からバーンっと羽みたいに奴らの頭が出るだけだし。俺は砲台、主演はヒュドラだ
ほら、テンポよくやれよ。俺らの弾幕は――美しさ勝負なんだから

数秒で散っても脳には焼き付くだろ
永遠を生きるなら、永遠にな



●記憶の大火
「――まあ、正気に戻ってくれてなによりだわな」
 他の猟兵たちが煌の話を聞いているその別の場所で。ハイドラ・モリアーティ(Hydra・f19307)がタバコを携えて、空に咲く大花火を見つめていた。
 カクリヨファンタズムは正常に戻り、妖怪たちが花火玉を連続で打ち上げている。遠目で、その花火を同じように見上げている煌の姿を確認し、ふぅ、と白煙が大気へと掻き消える。
 その様子は、また大切な者を喪った悲哀に満ちている。
「とはいえジメジメされちゃあ困る。蒸し暑いのは嫌いなもんでね。何でもそうさ、終わりの後味さえよけりゃあすべてヨシだ」
 そういうのは割に合わない。この仕事を引き受けた意味がない。
 やれやれ、とタバコを踏みにじって、ハイドラは小さく呟く。
「とはいえ、花火ねえ――いや、弾幕か。俺こそ派手なのは得意じゃないが―――」
 脳裏を灼くオウガの気配。ハイドラに意思に反応したのか、その内で身じろぎしたようだ。
「【ADDICTION(ヒュドラ)】。お前ならできるんだろ。力を貸せ」
 ぞわり、と。ハイドラの体に瞬く力の奔流は、生まれてきてからずっと共にあるヒュドラの解放を意味している。
 煌々と輝く銀の双眸が、爬虫類のように細まる。ぎちり、と体が揺らいだ刹那、その背からエネルギーの塊じみた八首の蛇が迸った。
 天を見る。今上がっている花火に負けない、記憶という名の激烈で華美な―――それでいて鮮烈な大花火を。
「ほら、テンポよくやれよ。俺らの弾幕は――美しさ勝負なんだから」
 暗黒の空に打ち上がった光の弾幕が、天を摩す大花火を覆うかの如く、凄まじい輝きを伴って拡散する。ちらりと煌がいる場所を見れば、驚きの表情。……しかしその口元は微かな笑みによって綻んでいる。
 やがて沈静化した光の弾幕と共に、ハイドラは髪を掻き上げる。
「数秒で散っても脳には焼き付くだろ。永遠を生きるなら、永遠にな」
 だから、絶対に忘れんなよ、と。再び灯ったタバコの矮小な灯火は、どんな大花火よりも―――存在感に満ちていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼面坊・羅剛
アドリブ・連携歓迎

花火か、己は指定UCで妖怪を集めよう
何事であれ、人手があるに越したことはあるまい

花火が上がったら宴の始まりだ
他の猟兵の飛入りも歓迎する

煌殿は強制参加
好いた女と一緒にいたくて世界を滅ぼしかけたのだ
そんな面白いやつを酔っ払いどもが放っておくわけもない
この機会に交流を深めるといい

場が落ち着いたら
己も話すとしよう

「煌殿、別れは辛いものだが、だからといってそれまでの日々が消えて無くなるわけではない。それらは思い出として残る」

「それを胸にこれから先も生きていけ。生きてさえいれば、前を向ける日もくるだろう」

「では、乾杯だ。皆、今一度杯を掲げよ」

出会いと別れと思い出と
これからの日々に
乾杯!



●天地を摩す
 天に咲いた光の束に、煌とその他の妖怪たちが驚きのまま硬直していた。なんだったんだ、と目を合わせる妖怪たち。再び暗闇に満ちた空を凝視して、煌は口をぐっ、と噤む。
「最後の余興だ」
 後ろから声がした。煌が振り向けば、そこには無数の妖怪たちが騒いでいる。声を駆けてきたのは、鬼の面を被った悪霊にしてカクリヨの妖怪たちの守護者、鬼面坊・羅剛(幽世の修羅・f29378)だ。
「その者たちは……」
「何事であれ、人手があるに越したことはあるまい。花火はまだまだあるだろう。宴を始めるぞ」
「し、しかし……」
 気まずそうに、集まった妖怪たちを見つめる。どこか困惑したような表情を浮かべていたが、一人の妖怪が煌に近づいた。
「なあ、お前。好きな奴のためにカクリヨ滅ぼそうとしたのか?」
 そんな何の遠慮もない質問。ぎょっ、と後ずさりした煌が、いや……まあ……と歯切れの悪い返答をしている。
 しかし、妖怪たちは煌を嫌悪するどころか。
 大笑いの渦。
「ハハハハハハハ!!すっげぇなおい!!俺もそんなことできねーぞ!」
「なんだよ、無口で無愛想なんて言ってた奴は!こんな面白いやつ、他の妖怪たちなんてメじゃねぇ!」
「ぐ、む……」
 大衆の大声に掻き消されて、煌が赤面したまま俯いている。その肩に、羅剛がとんと手を置いた。
「好いた女と一緒にいたくて世界を滅ぼしかけたのだ。そんな面白いやつを酔っ払いどもが放っておくわけもない。この機会に交流を深めるといい」
「う、む……そう、だな……」
 岩が無数に鎮座した場所は、妖怪たちが花火を見るための特等席だ。酒を持ってぎゃあぎゃあと騒ぎ出す妖怪たち。そして。
「面白そうなことしてるじゃねぇか、俺も混ぜてもらうぜ」
「宴会か?じゃあ俺たちも」
「ああ、……ってか俺たち未成年なんだけど、大丈夫か?」
 カイム(f08018)が残った岩に腰を下ろし、陵也(f27047)と凌牙(f26317)が、妖怪たちの輪に加わって。
「では、僕たちは料理を頂きましょうか」
「ふむ、見慣れぬ料理もあるようだな。俺ももらおうか」
 宵(f02925)とザッフィーロ(f06826)が、置かれている料理を取って互いに笑みを浮かべて。
「……ま、たまにはこういうのも悪くはねぇか」
 少し離れた場所で、ハイドラ(f19307)が木に寄りかかりながらタバコを吹かしている。
 打ち上がる花火はまた様々に形を成し、複数の喧騒が入り交じる場へと転じる。
「煌殿、別れは辛いものだが、だからといってそれまでの日々が消えて無くなるわけではない。それらは思い出として残る」
 盃に注がれた酒に波紋が広がっていく。ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる妖怪たち、その中心で、煌は困惑の表情を浮かべながら―――しかしそこに笑みを湛えて、羅剛の言葉へ耳を傾ける。
「それを胸にこれから先も生きていけ。生きてさえいれば、前を向ける日もくるだろう」
 天を覆うほどの大輪が咲いて。

「では、乾杯だ。皆、今一度杯を掲げよ」

 花火に捧げるように、妖怪たちが盃を掲げる。煌もそれに従って、自らの盃を天に差し出した。

「出会いと別れと思い出と、これからの日々に―――乾杯!」

 合いの手が飛び交い。
 天の大輪も―――そして地の大輪もまた、そこに咲き乱れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月22日


挿絵イラスト