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The Shamrock(作者 本多志信
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 まもなく陽が沈む。沈みゆく太陽に向かって、パトリックは歩き続けた。まだ視界には荒れた草原と岩場しか入ってこない。本当ならば既に拠点に帰り着いていたはずだ。ここは見覚えのある場所だから、そう遠くないところまでは来られたはず、ではあるが――暗くなればレイダー共が闊歩しはじめるし、モンスターじみた野犬たちも目を覚ます。かすかに聞こえた遠吠えに反応して、パトリックの足が無意識のうちに速くなった。
「主よ、どうか今日という一日を無事に終えられますよう――」
 何度目かの祈りを呟いた時、オレンジ色の眩しい光が途絶えた。ついに陽が沈みきったか、と顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。
「まだ人間はそのようなものに縋っているのですか」
「え……」
 日没直前の目を刺すような陽光が男のディティールを覆い隠す。声を聞く限りでは、まだ若い青年だろうということが伺えた。左手を目の上に翳して光を遮ると、相手が丈の長いコートを着ているらしいということも判った。そしてその右腕は――。
「その神が、この世界を一度でも救ってくれましたか?」
 男は再び、パトリックの十字架を嘲った。腕を広げ、人間が――いや、すべての生き物たちがやっとの思いでその日を生き、そして死に絶えようとも決して変わることのない空を示す。その指先はやけに長く、そしてナイフのように尖っている。
「地を這い泥水を啜るような暮らしをしてなお、あなたがたはそのまやかしにしがみついて生きるのですか」
「――……」
 パトリックは答えられない。それは、自分の心の内にも住み着きはじめていた疑念。誰にも言えず、自分でも直視できず、見て見ぬ振りをしてきた、神への反逆。
 男の爪が太陽の最後の雫を受けてギラリと光った。



「…………」
 浅黒い肌に鍛え抜いた肉体にはおよそ似つかわしくない華奢な十字架を手にして、アレクサンドラ・ルイス(サイボーグの戦場傭兵・f05041)は何事かを深く考え込んでいるようだった。猟兵の一人が遠慮がちに声をかけると、「ああ、すまない」と皆の方へと向き直る。そして、こう言った。
「おまえらは、“カミサマ”ってやつを信じるか?」
 猟兵の能力には様々な者がいる。信仰心の篤い者もいれば、無神論者もいるだろう。あるいは自分自身が神であるという者さえいて、それを目の当たりにすれば「信じるも信じないもなかろう」と、きっと誰もが思うのだろうが――。
「俺は信じてない。宇宙の真理だとか天国だとか、そんなのは鼻をかんだチリ紙以下だ」
 そう言ったところで、通りすがったヤドリガミと神の二人連れが顔をしかめた。それを見て、アレクサンドラは「いや、悪かった。あんたらのことじゃない」と大きな身体を申し訳なさそうに小さくした。
「俺自身に“信仰心”なんてものは残っちゃいないが、“信じるものがある人間の強さ”は信じている。仲間や家族、愛する人、――得体の知れないカミサマでもいい」
 生きることは大変なことだ。どれだけ踏ん張ろうとも、ある日突然心がぽっきりと折れてしまう。身体が保っても心が保たなければ人は生きてはゆけない。あるいは逆に、信じるもののために奇跡を起こすことだってできるのだ。

「アポカリプスヘルに、人々の信仰心をターゲットに暴れ回る連中が現れた」
 長い前置きがようやく終わって、いよいよ本題に入る。
「異端審問と称して、信仰心の象徴や祈りの言葉を目の敵に罪のない人間を襲う。俺が視たのは、十字架を持った若い奪還者だった。連中の言い分は、『おまえの信じるものはおまえを助けてくれたのか?』だ」
 ――俺なら『いいや』と即答するところだがね。アレクサンドラは自嘲気味に笑った。
 襲われる奪還者は信心深い人々の多い地域出身で、祖父から譲り受けた奪還者の仕事と十字架を誇りに思っていたらしい。手違いで人手に渡ってしまった十字架を買い戻しにブラックマーケットへ立ち寄り、その帰りに“異端審問官”に襲われてしまう。
「まず最初におまえらにやってもらうことは、『狙われる奪還者の支援』だ」
 ホワイトボードに任務内容をリストアップしながら、アレクサンドラは話を続けた。
 彼の予知によれば、奪還者はブラックマーケットに寄ったまではいいものの、一人では目当ての品を見つけ出すのにかなり時間がかかってしまう。そしてまだ若い身故に足元を見られて値段もだいぶ吹っかけられてしまうようだ。これを猟兵たちで手伝ってスムーズに帰還できるようにしてやってほしいという。
「それから、『異端審問官を誘き出すための準備』をここでやってもいい。連中は信仰に関わる品を持っている人間を狙うから、そういうものをここで買って身につけておけば誘い出せる」
 ブラックマーケットを散策しながら、“身につけていると信心深そうに見えるもの”を探すといいだろう。いくつもの拠点から様々な品が集まるマーケットで、『ブラック』と呼ばれるからにはいわくつきの品もある。掘り出し物を探すのも面白いはずだ。
「最後に、だが」
 神妙な顔をして、アレクサンドラが猟兵たちを見た。
「奪還者の護衛を頼みたい」
 異端審問官を名乗る敵は、厄介なことに複数いる。数そのものは多くはないから大乱闘のような規模の戦闘にはならないが、皆で囮になってそれぞれ誘い出しても最終的には奪還者も狙われてしまうという。彼を守るために、あらかじめブラックマーケットにいる段階で接触しておくのも方法だろう。

「さて、お祈りは済ませたか? ――冗談だ」
 小さな天使にも見えるグリモアが、アレクサンドラの掌で光を放つ。
「誰を信じようが、何を信じようが、それは自由だ。だが――」
「誰かが信じるものを踏みにじってはならない」
 アレクサンドラの言葉を、一人の猟兵が引き継いだ。
「“釈迦に説法”だったな」
 ――にやり、と笑ってアレクサンドラは荒れ果てた世界への道を開いた。





第2章 集団戦 『異端審問官』

POW ●邪教徒は祝福の爪で切り裂きます
【強化筋肉化した右手に装備した超合金製の爪】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD ●邪教徒は聖なる炎で燃やします
【機械化した左手に内蔵の火炎放射器の炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ ●邪教徒に相応しい末路でしょう?
自身が【邪教徒に対する狂った憎しみ】を感じると、レベル×1体の【今まで殺した戦闘能力の高い異教徒】が召喚される。今まで殺した戦闘能力の高い異教徒は邪教徒に対する狂った憎しみを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。