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砂漠の翼

#アポカリプスヘル #一人称リレー形式 #マルガリートカ

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#アポカリプスヘル
#一人称リレー形式
#マルガリートカ


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●アポカリプスヘル
「頼んだぜ、チャイニク!」
「気をつけてね」
「いい土産を期待してるぜ。エロ本とか」
「土産も大事だが、命も大事だ。生きて帰ってこいよ」
「そうそう。無事に帰ってこなかったら、ブっ殺すわよ!」
 拠点(ベース)の住人たちの声を背中に受けて、十数人の戦士たちが荒野に足を踏み出した。
 彼らは奪還者(ブリンガー)。廃墟を探索し、食料や資材や日用品などを拠点に持ち帰る者たちだ。
 先頭を行くリーダーは丸々と太った短躯の中年男。アサルトライフルや防弾ジャケットや防風ゴーグルや鉈といった、いかにもアポカリプスヘルといった装備を携えている一方、禿げあがった頭にコック帽を乗せて個性をアピールすることも忘れていない。
 彼の名はミハイル・マルィシェフ。拠点の仲間たちからは親しみを込めて『チャイニク(やかん)』と呼ばれている。
「俺、今回の仕事が終わったら――」
 コック帽と額の間に指を入れて汗を拭いながら、チャイニクは呟いた。
「――奪還者を引退するんだ」
 しかし、後ろに続く他の奪還者たちはリーダーの言葉を真に受けなかった。
「いやいやいやいや。毎回、同じこと言ってますよね?」
「てか、死亡フラグを立てないでくださいよぉ」
「引退したら、拠点から叩き出されますよ。無職のデブを食わせる余裕なんてないんだから」
 愛情に満ちた悪態をぶつける奪還者たちと、ただ苦笑するばかりのチャイニク。
 彼らは知らなかった。
 死亡フラグが本当に立ったことを。
 そして、そのフラグをへし折るために猟兵たちが行動を起こそうとしていることも。

●グリモアベースにて
「アポカリプスヘルの廃墟でコンビーフの缶詰を見つけちゃった。でも、賞味期限が過ぎてんだよねー。大丈夫かな?」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前でコンビーフの枕缶を開けていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 枕缶から姿を現したコンビーフの塊に鼻を近付けて臭いを嗅ぎつつ、JJは本題に入った。
「アポカリプスヘルに『マルガリートカ』という名の拠点がある。荒野のど真ん中に設けられた小さな拠点なんだが、豊富な地下水に恵まれてるもんだから、最近は灌漑農業に挑戦してるらしい。とはいえ、まだ軌道に乗ってないし、作物の大半は栄養豊富ながらも腹に貯まらないアルファルファだから、とても食料をまかなえなるような状況じゃない。大半の拠点がそうであるように奪還者頼りってわけだ」
 その奪還者たちの絶望的な未来をJJは予知した。
 彼らが不幸に遭うのは、マルガリートカを出発して二日後。砂漠に放置された複数のコンテナを発見して接近するも、地雷によって大きな被害を受けるのだという。
「たぶん、オブリビオン・ストームが起きる前の時代にそこで紛争があって、大量の地雷が埋められたんだと思う。負の遺産ってやつだわな」
 その地に埋設された地雷は対人用の爆風型地雷。リモコン等による遠隔操作ではなく、誰かが踏むことで反応する。鉄球などを撒き散らすタイプのものは(JJが予知で見た範囲では)ないらしい。確実な殺害よりも威嚇や足止めを目的としたものなのか、威力は低めに設定されているようだ。
「威力が低いとはいえ、アポカリプスヘルの荒野で足に重傷を負ったら、死んだも同然だ。しかも、予知の中で奪還者たちを襲った災難はそれだけじゃねえ。地雷で足止めを食らったところにオブリビオンの攻撃を受けちまったんだよ。奪還者たちのリーダーを務める『チャイニク』ってのはそこそこ優秀な奴みたいだが、さすがにオブリビオンには勝てやしねえ。あっという間に全滅だ」
 オブリビオンの詳細についてはJJも予知できなかった。しかし、地雷原で難なく戦っていた(というよりも一方的に奪還者たちを虐殺していた)ようだから、飛行タイプである可能性が高い。
「つーことで、その未来をおまえさんたちの力で変えてほしい。段取りはこうだ。まず、俺がおまえさんたちをコンテナの付近に転送する。で、おまえさんたちはなんらかの方法で地雷を突破し、コンテナに近づく。そうすりゃ、予知通りにオブリビオンが現れるだろうから、チャイニクたちが到着する前に返り討ちにしてくれ」
 任務の概要を語り終えると、JJはコンビーフにかぶりついた。賞味期限については問題ないと判断したらしい。
「マルガリートカは気の良い連中が多いみたいだ。仕事が無事に終わったら、おまえさんたちのために感謝と歓迎の宴を開いてくれるんじゃないかな。アポカリプスヘルとはいえ、御馳走を期待できるかもー」
 賞味期限切れのコンビーフを美味そうに頬張るJJ。
 彼にとっての『御馳走』のハードルがかなり低いものであることは間違いないだろう。


土師三良
 土師・三良(はじ・さぶろう)です。
 本件は、アポカリプスヘルの荒野で地雷に対処したり、オブリビオンと戦ったりした後、拠点で憩いの一時を過ごすシナリオです。

 第1章は冒険編。砂漠に埋設された地雷を回避あるいは除去して、コンテナを目指してください。

 第2章は集団戦編。敵はまだヒ、ミ、ツ♥ いや、シナリオタイトルやオープニング画像でバレバレだとは思いますが……。

 第3章は日常編。拠点『マルガリートカ』の人たちの歓待を受けたり、逆に楽しませてあげたりしてください。プレイングで言及されれば、JJも顔を出すかもしれません。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 冒険 『マイン・フィールド』

POW   :    大胆に地雷原を越えて行く

SPD   :    俊敏に地雷原を越えて行く

WIZ   :    慎重に地雷原を越えて行く

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 三つのコンテナを強引に繋いだ改造多連トレーラーが砂漠に横転していた。
 トラクターもコンテナも砂にまみれ、本来の色が判別できなくなっている。横転したのはかなり前のことらしい。
 猟兵たちが転送されたのは、そのトレーラーから二キロメートルほど離れた場所。建物や障害物がないので、ゴールであるトレーラーがよく見える。
 地面に埋められた物言わぬたち悪魔たちの姿は見えなかったが……。


========================================
●JJからのお知らせ。
 いや、コンテナ内部に転送することもできたのよ? でも、それだと予知した内容から行動が離れすぎて、オブリビオンが現れないかもしれないじゃん。オブリビオンを誘い出すためには外からコンテナに近付いてもらわにゃならんのよ。
 つーことで、そこら中にに埋まってる地雷を見つけて、避けたり、除去したりしながら、コンテナに向かってくれ。
 べつに急ぐ必要はないぜ。チャイニクたちが到着するのは二日後だから、地雷もオブリビオンもそれまでに片づければOK!

 Q:空を飛ぶユーベルコードとか使えば、一瞬で終わっちゃうんだけど?

 A:そだね。まあ、簡単にクリアして手持ち無沙汰になりそうなら、他の猟兵の手伝いをしたりとか、一足先にコンテナを物色したり、いっそのことすべての地雷を見つけて破壊したりとか……そんな感じで。
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エリー・マイヤー
地雷原ですか。
なんというか、文字通り死ぬほど迷惑ですね。
仕掛けた人達もやらざるを得ない理由があったんでしょうが、
もうちょっと迷惑のかからないようにしてほしかったですね…

まぁ、言ってても仕方ないのでちゃっちゃと除去してしまいますか。
こういう時は【TK-B】がいいでしょうかね。
【念動力】のソナーで地中の反応を探り、
金属っぽい反応があったら衝撃波で荷重をかけて爆破させます。
爆破させずに回収したとしても、
また仕掛けられて誰かが迷惑を被るオチが待ってそうですからね。
今のうちに徹底的に爆破しちゃいましょう。

うげっ、酷い砂ぼこり。
これは先に念動力で壁作っとくべきでしたね…


フライディ・ネイバー
ヘイヘイ、気持ちのよさそうな一団じゃねぇの。
そういうの好きだぜ俺はよ。

フライング・ベット(飛行ユニット)を起動、空中浮遊、空を飛ぶ!
渇いた砂漠と荒野だが、それでも空を飛ぶのは気持ちが良い!
生きてる奴らにも元気がある!まだまだ捨てたもんじゃねぇぜこの世界!
ひゃっほーう!!
脚部を地面に擦らせてブースターで地面捲りながらダッシュ。
爆発が起こるより先に残像残して駆け抜ける!

コンテナの上に着地。
さーて、着いちまったが、コンテナの中身にゃ興味ねぇ。
JJが言ってたように、地雷の撤去でもするかぁね!
再度空を飛び、『無口爆撃』
地面を等間隔に吹き飛ばし、地雷を誘爆。
爆撃跡という名の道を作る。


木霊・ウタ
心情
やかんだけじゃなくて
将来
誰かが犠牲になるなんて未来は御免だ
全部除去しようぜ

行動
傷つけた両掌から紅蓮の炎を噴出
遠距離・広範囲に周囲の砂漠を焼き払いながら
コンテナへ向かう

高熱で誘爆させたり
(直上ではなくて距離があるし
炎の壁も展開して爆風を防御するから大丈夫)
砂を払って地雷を露出させたりするぜ

トレーラーまで行ったら
仲間が未探索の範囲を焼き払いながら
またスタート地点まで戻る

地道だけど
繰り返し進めりゃ確実に除去できるだろ

幕間~事後
砂漠の夜は冷えるけど
夜空は綺麗だよな
明日も頑張ろうぜ
とギター爪弾く

もし早く処理が終わって
1日もたってない時は
オブリビオンが現れるまでの暫しの間
大空に思いを馳せた曲を奏でる


エメラ・アーヴェスピア
随分と危険な場所ね、アポカリプスヘルは本当に色々な物があるわ…
まぁ安心してちょうだい、受けた以上はしっかりと遂行するわ
時間ね、猟兵の仕事を始めましょう

まぁ、何も難しい事はせず正攻法で行きましょうか
まずはドローンを打ち上げ、そこから各種機能による金属探知や他の探知での【情報収集】で地雷の場所を特定
そして『我が工房に帳は落ちず』、工兵達で片っ端から撤去するわ
疲れることなく確実に遂行する機械の工兵よ、被弾しても影響は殆ど無いしね
それと得た地雷の場所は同僚さん達にも共有、効率よく行きましょう
…時間が無ければローラーで轢いて爆発を誘発、と言うのも考えたのだけれど…安全に行きましょう

※アドリブ・絡み歓迎


ニィナ・アンエノン
地雷かぁ、一個ずつ探して掘ってもいいし、一か八かバイクで飛び越えるのもいいけど……ちょっと地味だよね。
ここは一つ、もっと派手にやっちゃおう☆
この世界の地雷って言うのは地面に埋まってて爆薬が中に入ってる、地雷でございって感じのやつでいいのかな?
となるとこれだ!
ユーベルコードでガジェッティアレーザーをいっぱい複製して地面を【砲撃】!
辺り一面を【地形破壊】して地雷ごと【吹き飛ばし】ちゃうぞ☆
爆発の【衝撃波】が割と大きな【範囲攻撃】になって、いっぱい地雷を片付けられるんじゃないかな。
自分の事は【オーラ防御】で守っておけば大丈夫でしょー、多分!



●エリー・マイヤー(被造物・f29376)
 私たちは砂漠の片隅に並び、横転した多連トレーラーを眺めていました。
『砂漠』と聞くと、砂地が延々と広がっている光景や風紋が刻まれた幻想的な砂丘を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、ここは礫砂漠――石だらけの乾き切った大地です。
 聞こえてくるのは風の音だけ。生き物の姿も見当たりません。まあ、生き物がいるとしても毒蛇や蠍の類なのでしょうけれど。
 しかし、毒蛇や蠍のほうがまだ可愛げがあるというものです。
 石に覆われて、あるいは砂に隠されて、じっと息を潜めている無数の地雷に比べれば……。
「地雷原か……」
 煙草をくゆらせていた私の隣で、エメラがぽつりと呟きました。
「いかにもアポカリプスヘルらしい危険地帯……ってわけでもないのよね。UDCアースの紛争地にも地雷原は腐るほどあるから。悲しいことだけど」
 エメラの容貌と衣装は少女人形のように可憐なものなのですが、立ち居振る舞いには大人の女性の貫禄が感じられます。もしかしたら、二十余年前に作られた私よりも年上なのかもしれません。
「この世界の地雷も、地面に埋まってて爆薬が中に入ってるような、いかにも『地雷でござい!』って感じのやつなのかなー?」
 と、緑色の目が印象的なお嬢さん――ニィナが誰にともなく尋ねました。おそらく、彼女のほうは外見と実年齢に差異はないでしょう。
「はい。ごく普通の地雷だと思います」
 二本目の煙草に火を付けながら、私はニィナに言いました。
「しかし、仕掛けた人たちにもやらざるを得ない事情があったのでしょうが……仕掛けた後のことをもうちょっと考えてほしかったですね。文字通り、死ぬほど迷惑です」
「お? エリーちゃん、うまーい!」
 にっこり笑ったニィナではありますが、私が手にしている煙草を見ると、少しだけ眉を顰めました。
「煙草、ハイペースで吸いすぎじゃない? 余計なお世話かもしれないけど、健康に良くないよ」
「そうかもしれませんね」
 曖昧な返事でごましておきました。説明するのが面倒だったのです。これが煙草とは似て非なる汚染物質の塊であることも。清浄なる空気の中で生きられないフラスコチャイルドにとって、必要にして不可欠な代物であることも。
 ちなみにこの有害極まりない煙草モドキが周囲の皆様に悪影響を及ぼすことはありません。念動力で紫煙を操作していますから。
 分煙だけでなく、地雷の処理にも念動力は役立つはず。そう思って行動を起こそうとした矢先――
「いっちょ、飛んでみるか!」
 ――大きな影が進み出ました。
 ウォーマシンのフライディです。

●ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)
 白いマフラーなびかせて、青い巨体がすっくと立った! あれぞ、我らがフライディ! 地雷原をギロリと見やる、メインカメラに宿るのは、激しい怒りか悲しみか! べんべん!
 ……と、名調子で紹介したいところなんだけど、肝心の『青い巨体』が見え難いんだよねー。なんかゴチャゴチャしたでっかいオプションを装備してるから。
「フライング・ベット、起動!」
 フライディはオプションの名前らしきののを口にしたかと思うと――
「ひゃっほーう!」
 ――楽しそうに叫びながら、地雷原に突っ込んでった。オプションに備わってるブースターをぶいぶい言わせてるけど、空を飛んでるわけじゃないよ。脚で地面を擦ってるし。
 で、十メートルほど進んだところでドカーンと爆発が起きた。脚が地雷に触れちゃったんだね。
 こうして、フライディは木っ端微塵に吹き飛んじゃいましたとさ。さよなら。キミのことは忘れないよ。
 ……なーんて、ウソ!
 フライディはノーダメージ。なぜなら、地雷が爆発するより先に猛スピードで通過してるから。
 通過した先にも地雷はあるだろうけど……いや、あるからこそ、フライディは止まらない。地面を脚につけたまま、トレーラーめがけて一直線。その軌道上でドカーン! ドカーン! ドカーン! 次々と爆発が起こったけど、それらが消し飛ばしたのはフライディの残像だけ。
 そして、十何回目かの爆発の直後、フライディはトレーラーに到着ぅー。コンテナの上に陣取り、見得を切るようなアクションでこっちを振り返ったよ。『じゃーん!』とかいう効果音が聞こえてきそう。
「フライディってば、きっとドヤ顔を決めてるね。距離があるから、はっきりとは見えないけどー」
「……ウォーマシンのドヤ顔って、どんなのだ?」
 と、首をかしげたのはブレイズキャリバーのウタ。にぃなちゃんよりもいくつか年下に見える男の子だけど、使い込まれた鉄塊剣や前髪の間からチラチラと覗く傷跡が古強者っぽい雰囲気を醸し出しているような気がしないことも……ない?
 突然、その前髪が跳ね上がり、チラチラがモロ見えに変わった。ウタの傍でドローンが飛び立って、突風が巻き起こったから。
「さて、私たちも始めましょうか」
 地雷原を見据えて宣言したのはエメラ。どうやら、ドローンを操ってるのは彼女みたい。
「おいおい。あのドローン、大丈夫か?」
 ウタがドローンを不安げに見上げてる。
「ちょっと煙を吹いてるぞ。壊れてんじゃねえの?」
「あれが常態なのよ。魔導蒸気機関を動力にしてるんだから」
 エメラがウタの不安を打ち消している間にドローンは上昇をやめて、今度は前進を始めた。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「難しいことはせず、正攻法でいきましょうか」
 金髪、緑の目、白い肌……と、三拍子揃ったお人形さんみたいな顔をしたエメラがドローンを操ってるが、どこらへんが『正攻法』なのか判らねえ。ふらふらと飛ばしてるようにしか見えないぜ。
 そんな疑問が顔に出ちまってたのか、こっちが尋ねるまでもなく、エメラは教えてくれた。
「ドローンの各種センサーを使って、地雷が埋設されている位置を特定しているのよ」
 なるほど。お? エメラだけじゃなくて、ミレナリィドールのアヤメもドローンを飛ばしたぞ。
「エメラやアヤメが空から探知するのであれば――」
 と、エリーが口を開いた。
「――私は地中から探知しましょう」
 空の上と土の中から地雷群を挟み撃ちってわけか。こいつぁ、頼もしい……いや、エリーの奴、動こうとしねえぞ? 煙草をふかしながら、ぼーっと突っ立てるだけじゃん。
「ちょっと、エリーちゃん」
 ニィナがエリーの体を揺らした。
「もしかして、目を開けて立ったまま寝てる?」
「いえ、起きてますよ」
 エリーは煙草を口から離して、ニィナをちらりと見た。
「念動力をソナーにして、地中の反応を探ってるんです」
「で、見つかった?」
「はい。幾つか……念動力で加重して処理します」
 エリーは棒立ちのままだが、言葉通りに念動力を用いたらしく、あちこちで続け様に地雷が炸裂した。
 けっこう近いところでも爆発が起きたけども、怪我をした奴はいない。ただし、頭から砂煙を浴びることになったけどな。エリーも。そして、横にいた俺も。
「先に念動力で障壁を築いておくべきでしたね……」
 憮然とした面持ちで呟くエリー。顔が灰白色に染まってる。俺の顔も同じような有様なんだろうな。
 一方、ニィナは砂を一粒も被ってない。
「あはははははー! オーラの壁で防いだよー」
 そりゃよかったな。
 俺やエリーと同様、エメラも白い顔や綺麗なおべべが砂まみれになっている。
 だが、べつに気にしてないらしく――
「私も幾つか見つけたわ」
 ――澄まし顔のまま、指をパチンと鳴らした。
 召喚系のユーベルコードを使ったってことはすぐに判った。彼女の背後からロボットみたいな連中が湧いて出てきやがったからだ。ぞろぞろと何十体もな。
「こいつらも魔導蒸気機関とやらで動いてんのか?」
「ええ。疲れることなく、任務を確実に遂行する機械の工兵よ」
 エメラは俺の問いに答えると、凛とした声で工兵たちに命令した。
「各員、速やかに作業を開始しなさい」
 工兵たちは三体一組に分かれて荒野に散開し、エメラが見つけた地雷の処理を始めた。
「よし。俺も働くとするか。ロボットだけに任せておいちゃ、人間様の立場がねえもんな」
 俺は鉄塊剣の『焔摩天』を地面に突き刺し、刃を掴むようにして両の掌を切り裂いた。ニィナが『うわ!? いたそー!』とか言ってるが、俺が掌に感じているのは痛みじゃなくて熱さだ。
 傷口から地獄の炎が噴き出したからな。
「皆、俺から離れてろ。今度は砂煙だけでは済まないぜ」

●フライディ・ネイバー(ウォーマシンのスカイダンサー・f28636)
 俺はコンテナの上をえっちらおっちらと歩き(この程度の距離なら、フライングベットで飛ぶまでもねえ)、トラクターのほうに向かっていた。コンテナの中身なんぞに興味はねえが、ちょいと好奇心に駆られて、運転席を見たくなった次第。
 しっかし、多連型じゃないトラクターにコンテナを三両も繋げるたぁ、無茶なことをしやがる。オブリビオン・ストーム以前の時代なら、間違いなく違法だぜ……ってなことを考えているうちにトラクターに到着した。
 コンテナと同様にトラクターも横転してるから、サイドウインドーが天を仰いでいる。そこから運転席をひょいと覗いてみると、半ばミイラ化した死体が見えた。こいつが運転手か。一匹狼の奪還者(ブリンガー)もしくははぐれ者のレイダーってところかな。
 こんなデカブツのトレーラーがチンケな地雷を一発踏んづけただけで横転するとは思えねえ。たぶん、地雷を踏んじまった時に運転手がパニくって、ハンドルを切り損ねた末にコケちまったのかもな。で、運転手は首の骨を折るかなんかして死亡、と。
 まあ、成仏してくれや。おまえが貯めこんでたコンテナ三両分の物資は無駄にならないぜ。『マリガリートカ』とかいう拠点(ベース)の連中の糧になるんだから。
 運転手を拝んでいると、派手な爆発音が聞こえてきた。いや、最初の頃も聞こえてたんだけど、エメラの召喚した連中が作業を始めてからは止んでいたからな。
 爆発音を再開させたのはウタだった。両手から地獄の炎を噴出させて、地面を焼き払いながら、このトレーラーに向かってきている。炎の高熱で地雷を誘爆させてんだな。
 なんだかアグレッシブつーか、脳筋くさい方法に見えるが、攻めだけじゃなくて守りも考えてるみたいだ。地雷が爆発する度に炎の壁を素早く展開して、爆風を防いでるし(にもかかわらず、顔面が砂まみれなんだよな。この行進を始める前になにかあったのか?)。
 やがて、ウタはトレーラーにゴールインした。これで安全なルートが二つできたわけだ。俺が拓いたルートとウタが拓いたルート。
「ごくろーさん」
「サンキュー」
 労いの言葉に礼の言葉を返して、ウタはくるりと振り返った。
「また、スタート地点に戻るのか?」
「ああ」
 と、ウタは頷いた。
「別のルートを焼き払って、スタートに戻る。そして、また別のルートを焼き払いながら、こっちに来る。で、またまた別のルートを焼き払いながら、スタートに……ってのを何度も繰り返すつもりだ」
「すべての地雷を除去するために?」
「そうだ。今回はチャイトフとかいう奴が指揮してるグループを救えるだろう。でも、地雷を一つでも残してしまったら、将来、他の誰かが犠牲になっちまう」
 おー、感心感心。
 まあ、俺もそのつもりだったけどな。
 ってなわけで、再びフライング・ベット起動!
 青い空に向かって、急、上、昇!
 いやー、やっぱ、飛ぶのは気持ちがいいわー。見渡す限り、乾いた砂漠と荒野ばっかりだが……それでも、まだまだ捨てたもんじゃねえぜ、この世界は!
 そう、捨てたもんじゃねえ!

●エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)
「ひゃっほぉぉぉーう!」
 奇声を発して上昇していたフライディさんが急停止。
 数秒後、空の上から『ひゅるるるー』という音が聞こえ、地面のそこかしこで爆発が起きた。地雷が爆発したわけじゃない……いえ、地雷も爆発してるんだけど、それは誘爆に過ぎない。たぶん、沢山の爆弾が投下されたのね。
 なぜ、『たぶん』がつくのかというと、爆弾が一つも視認できなかったから。
「どうやら、透明の爆弾だったようですね」
 何本目かの煙草を灰にしながら、エリーさんが爆撃跡を見回した。凄まじい爆撃だったので、かなりの量の砂や土や石だのが飛んできたのだけれど、顔や体の汚れ具合は変化なし。今回は念動力でガードできたみたいね。
「そう、目に見えない高速飛行機爆弾の乱舞! 名付けて、『無口爆撃(サイレント・デトネイター)』だぜ!」
 空中でフライディさんがふんぞり返って、ガハハと笑ってる。無口ナントカというユーベルコードを使った当人が無口には程遠いというのも皮肉な話。
 あ? そういえば、無口という概念から何百光年も距離を置いてる仲間がもう一人いたわね。
「よーし! 次はにぃなちゃんのターン!」
 そう、ニィナさんよ。もの凄く大きなレーザー砲を担いで、砲口を地雷原に向けてるわ。
「その武器で地雷を破壊するのですか?」
「ううん」
 エリーさんの問いに対して、ニィナさんはかぶりを振った。
「この武器『だけ』では破壊しないよ」
 その言葉の意味を問い質すより早く、ニィナさんの周囲に同型のレーザー砲が何十個も出現した。武器を複製するユーベルコードを使ったのかしら?
「せぇーの、ばぁーん☆」
 元気いっぱいなかけ声とともにニィナさんはレーザー砲を発射。
 周りに浮かんでいた他のレーザー砲も同時に発射。
 無数の極太レーザーが地面を吹き飛ばし、その衝撃波によって、隠れていた地雷が次々と爆発していく。
 フライディさんの時もそうだったけど、私の魔導蒸気工兵たちは巻き込まれていない(こんな喧噪の中でも工兵たちは動じることなく黙々と作業を続けてる。さすがね)。アフガンハウンドのマクシムスさんと一緒に地雷を探しているアレクサンドラさん、それにフェアリーのウーナさんも無事。フライディさんもニィナさんも無差別に爆弾やレーザーをばらまいてるわけじゃなくて、手付かずのエリアだけを狙ってくれてるのね。
 とはいえ、効率的とは言えない。それに、この調子でいくと、辺り一面クレーターだらけになりそう。
「ちょっと荒っぽすぎませんか?」
 小首を傾げて、エリーが呟いた。私と同じことを思っていたみたい。
「しょうがねえだろ」
 と、話に加わったのはウタさん。トレーラーから戻ってきたの。地獄の炎で地面の炎を焼きながら。
「地雷の位置が判らないから、手当たり次第に焼いたり、爆撃したり、レーザーを撃ち込むしかねえんだよ」
「だったら、私が正確な位置を教えるわ。皆、ちょっと聞いてー!」
 私は手を何度か叩いて、フライディさんやニィナさんたちの意識をこっちに向けさせた。
「私やエリーさんやアヤメさんが地雷の位置を指示するから、そこだけをピンポイントで攻撃してちょうだい。判った?」
「おう!」
「はーい!」
 空中でフライティさんが大きく頷き、地上でニィナさんが元気に答えた。

 さあ、仕切り直していきましょうか。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウーナ・グノーメ
アドリブ・共闘◎

【心情】

「救える命は救うのです、それが猟兵の仕事なのです」

「地雷原はわたしの脅威にはなり得ないのです、さっさと片付けてオブリビオンとの戦いに備えるのです」

【行動】

【念動力】で常に浮遊しているわたしが地雷に引っかかることはないのです。よって離れた場所から地雷を念動力で誤作動させて、撤去しながら進むことを念頭に置いて進んでいくのです。地雷のある位置は【第六感】で大体わかるのです。

並行して、UCによって下級精霊を召喚して情報収集を行わせ、オブリビオンがどの方向から襲来しても対応できるように備えるのです。地雷の位置、撤去具合、UCから得た情報は、積極的に他の猟兵とも共有しておくのです。


御門・アヤメ
機械鎧を身に纏い、様々な武装を使いこなす戦闘用魔導人形の少女。
無感情で命令に忠実なロボットの印象を受ける。
「作戦地点到着。第一目標、地雷の除去を開始」

「鎧装召喚(コール・ヴェルフェン)」
召喚した機械鎧を身に纏い、多数のレーダーと各種ドローンを搭載したヤークトユニットを装着します。
「ユニットチェンジ『ヴェルフェン・ヤークト』」
複数のドローンを展開し、電磁波と超音波で地中をサーチします。
「ロックオン完了。目標を排除します」
空中へ上昇し【フルバースト・マキシマム】を使用。上空から、左腕で構えたビームガトリングユニットと右手のブラストライフルを乱れ撃ち、地雷を破壊していきます。
「全弾フルバースト」


アレクサンドラ・ルイス
マックス(f28856)を連れて、地雷探知を行う
いわゆる「ショート・リーシュ」で俺との二人三脚だが
金属探知機じゃ俺の身体にも反応しちまうから、マックスの鼻が頼りだ

…なんだ、結構うまくやるじゃないか
専用の訓練をしてきたわけでもないのに
やはり「賢い動物」と「猟兵」のポテンシャルがあるだけに
基礎能力が高いんだろう
(マックスをじっくり観察して、彼の能力や素質を考えている)

帰ったら真面目に地雷探知のトレーニングでもしてみるか
危機を察知できる能力を磨いておくに越したことはない
――そんな顔をするな
ちゃんとできれば、最高級のジャーキーをやろう
(嫌味とご褒美のアップグレード要求に片眉を上げて)
仕方のない奴だ


マクシムス・ルイス
…今日もアル(f05041)に現場へ連れて来られました
まあ、マスターと一緒ならどこでも楽しいワンダーランドではありますよ、ええ

地雷なんて、見つけるのは簡単なことです(胸を張ってドヤ顔
――嘘です
私はただの平凡なアフガンハウンドですから
専門に訓練してきた探知犬の皆さまには及びません
ただ、アポカリプスヘルでの暮らしも長かったので
火薬の臭いには敏感になっているかもしれません
それを嗅ぎ分けられるかどうかが、命運を分けますからね

…えぇ、トレーニングですか…
私はフリスビーの練習の方が
(おやつに釣られ尻尾を振る)
仕方ありませんね、「マスター」が言うのなら(ちょっとした嫌味)
ブラッシングもたくさんしてくださいね



●マクシムス・ルイス(賢い動物のレトロウィザード・f28856)
 私の名はマクシムス。通称、マックス。人間が言うところの『賢い動物』に属する犬です。これもまた人間に与えられた呼称ですが、『アフガン・ハウンド』なる犬種なのだとか。
『ハウンド』というからには先祖たちは猟犬だったのでしょう。彼らや彼女らの狩りの才能が私に受け継がれているかどうかは判りません。しかし、受け継がれていたとしても、今は役に立たないと思います。
 本日の獲物は動物ではなく、地中に潜む鋼の悪魔――地雷なのですから。はい、人間に倣って、修辞的な表現をしてみました。
「集中しろ、マックス」
 リードを手にしているアルが注意してきました。彼は我がマスターなのですが、『マスター』と呼ばれることを好みません。本名の『アレクサンドラ』で呼ばれることも好みません。人間特有の不条理な心理ですな。
 私がこうして地雷探しをしているのも、アルの指示によるもの。なぜだか判りませんが、彼はこの種の訓練が大好きなのです。まあ、いくらでもおつき合いしますがね。アルと一緒なら、たとえ地雷原でも楽しいワンダーランドですよ。ええ、そうですとも。
 ただ、この『ワンダーランド』は少しばかり騒がしいです。エリーが念動力を用いて、次々と地雷を爆発させてますから(『彼女や他の皆に任せておけばいいのでは?』とアルに提案したのですが、即却下されました)。
 ああ、そうだ。念動力で地雷を爆発させているかたは他にもいました。
 フェアリーのウーナです。
 羽を上下に動かして、人間の頭の位置くらいの高度を飛んでますよ。時折、近くで地雷が爆発して(彼女がやったのかエリーがやったのか、私には判別できません)金色の髪が爆風で激しくなびくこともありますが、顔色一つ変えません。小さいながらも堂々たるものです。
「すべての人間がフェアリーのように飛べるなら、地雷なんて胸糞の悪いものがこの世に生み出されることはなかっただろうな」
 悠然と舞うウーナを見やり、アルが独りごちました。軽口を叩いているようでもあり、空を飛べる者に(あるいは地雷なき世界に?)本気で憧れているようでもあり。
「そうかもしれないのです」
 と、ウーナがアルの独白に反応しました。あいかわらず、無表情。アルは眼光が鋭い上に筋骨隆々でおまけに頭髪が一本もないという特徴的な外見なので、威圧的な印象を他者に与えることが多いのですが、ウーナは恐怖心も警戒心も抱いていないようです。
 無表情といえば、アヤメも負けていません。彼女は、十歳にもなっていないような人間の女の子の姿をしたミレナリィドールです。仮に無表情でなかったとしても、心の内を表情から読みとるのは難しいかもしれませんね。
 顔の一部が包帯で隠されていますから。

●ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)
 アヤメが隠しているのは顔の一部だけではないのです。体のそこかしこに包帯が巻いてあるのです。
 だけど、その包帯も……いえ、包帯だけでなく、体の大部分が隠されてしまったのです。
「鎧装召喚(コール・ヴェルフェン)」
 と、アヤメが口にした瞬間、なにやらメカメカしい甲冑が出現して、彼女を包み込んでしまったからなのです。
「ユニット・チェンジ、『ヴェルフェン・ヤークト』」
 ただでさえメカメカしい甲冑に別のメカメカしい装備が合体し、更にメカメカしくなったのです。
 そして、甲冑から何本かの角(『あんてな』と呼ばれるものでしょうか?)が伸び、分厚い円盤(『れどーむ』と呼ばれるものでしょうか?)が回転を始め、おかしな形をした小型の機械(間違いなく『ドローン』と呼ばれるものですね)がいくつか分離して飛び立ったのです。
「……」
 無言で佇むアヤメ。甲冑の隙間から覗く片目は閉じられているのです(もう片方の目は包帯に覆われているので見えないのです)。たぶん、エメラと同じようにドローンの目鼻を活用して地雷を探しているのです。
「ロックオン、完了」
 十数秒後、アヤメは閉じていた片目を開き、真上に飛び上がったのです。
「目標を排除する」
 空中で停止し、左右の手に持った武器を地面に向けて――
「全弾フルバースト」
 ――連射、連射、ひたすら連射。無数の弾丸が地面に降り注ぎ、地雷が次々と爆発していくのです。凄い迫力なのです。
 もちろん、アヤメは無闇矢鱈に撃ちまくっているわけではないのです。私やアレクサンドラやマクシムスから離れた範囲を攻撃しているのです(それにエメラの工兵たちのことも避けているようです)。
 やがて、弾丸の雨がやんだのです。アヤメは空中で静止しているのです。新たに『ろっくおん』すべき地雷をまた探しているのだと思われるのです。
 さて、私も作業を再開するのです。
 アヤメのようにドローンで地雷を探すことはできませんが、第六感であたりをつけることはできるのです。
 そして、あたりをつけた場所に念動力を働かせれば……はい、『ずどーん!』と爆発したのです。
 この地味な作業を繰り返していきましょう、なのです。
 フェアリーである私にとって地雷など脅威ではありませんが(先程のアレクサンドラの発言もむべなるかななのです)、手を抜いたりはしないのです。
 しっかりと排除し、そして、備えるのです。
 予知通りに現れるであろうオブリビオンとの戦いに。

●御門・アヤメ(異界の魔導兵器・f17692)
 再度、地雷をロックオン。数は二十一。
 右手のブラストライフル(『ブラスト』といっても、発射するのは熱線ではなく、実弾だけど)と左手のビームガトリングユニット(『ビーム』といっても、発射するのは光線ではなく、光弾だけど)を地表に向けてトリガーを引いた。
 二十一回分の爆発をカウントしたところで射撃を停止。
 ドローンやセンサーの報告を待つ間、視線を落として、他の猟兵たちの様子を眺めてみた。とくに興味があるわけでもないけれど、手持ち無沙汰だから。
「マクシムスは地雷を見つけるのが得意なのです?」
「はい。朝ドッグフード前ですよ」
 ウーナを見上げて小さく頷くマクシムス。犬の表情のことはよく判らないけど、たぶん、得意げな顔をしているのだと思う。首をやや反らした姿勢(胸を張っているように見える)や声の調子も得意げな感じがする。
 でも――
「嘘ですけどね」
 ――嘘だった。
 このタイミングで嘘をつく(ばかりか、すぐに嘘だとばらす)理由がよく判らない……もしかして、『冗談』や『ユーモア』と呼ばれるものの類なの? とくに誰も笑っていないけれど。
 わたしの当惑など知る由もなく、冗談も言える賢い動物は話を続けた。
「私は、この美しい被毛以外に誇れるものなどない平凡なアフガン・ハウンドです。専門的な訓練を受けた探知犬の皆様にはとても及びませんよ」
「とはいえ――」
 と、アレクサンドラが会話に加わった。
「――アポカリプスヘルでの暮らしが長かったから、火薬の臭いには敏感になっているだろう」
「そうですね。この世界では、それを嗅ぎ分けられるかどうかが命運を分けますから」
 鼻先を地面に近付けるマクシムス。臭覚で地雷を探す作業を再開したみたい。
「ふむ」
 リードの先のマクシムスを見守りながら、アレクサンドラが小さく頷いた。
「帰ったら、本格的な地雷探知のトレーニングをしてみるか。危機を察知できる能力を磨いておくに越したことはないからな」
「えー、トレーニングですかぁ」
 マクシムスが頭を捻って、後方のアレクサンドラを見た。さっきは『犬の表情のことはよく判らない』と言ったけど、今は判る。
 とても不満そうな顔。
「私はフリスビーの練習のほうが……」
「そう言うな。地雷探知トレーレニングをちゃんとできれば、最高級のジャーキーをやるぞ」
「ふむ」
 と、今度はマクシムスのほうが小さく頷いた。尻尾が嬉しげに揺れてる。『最高級のジャーキー』が効いたのかもしれない。
「仕方ありませんね。マスターがそう仰るのなら……」
『マスター』という言葉に力を込めるマクシムス。
 片方の眉をぴくりと吊り上げるアレクサンドラ。
 なんだか、険悪な雰囲気になってる。事情はよく判らないけど、『マスター』というのは禁句だったみたい。後々の任務に支障が出ないように仲裁しておいたほうがいいのかな? ……と、迷っている間にウーナが何気ない調子で言った。
「二人とも仲良しさんなのですね」
 え? 仲良し? 険悪ではない?
「ジャーキーだけじゃなてく、ブラッシングもお願いしますね」
 マクシムスが要求を述べると、アレクサンドラは肩をすくめてみせた。
「仕方のない奴だ……」
 険悪では……ない?

●アレクサンドラ・ルイス(サイボーグの戦場傭兵・f05041)
 俺は金属探知機の類を使うことができない。サイボーグである自分の体に真っ先に反応してしまうから。
 なので、マックスの鼻に頼らざるを得なかったわけだが――
「また見つけましたよ、アル」
「よし。エメラの工兵たちに処理してもらおう」
 ――なかなかどうして上手くやるじゃないか。これで七つ目だ。
 本人が言ってたように専門的な訓練はしていないのだがな。やはり、賢い動物と猟兵のポテンシャルがあるだけに基礎能力が高いのだろう。
 とはいえ、基礎能力だけで終わらせるわけにはいかない。先程の宣言どおり、早急に本格的なトレーニングを開始しよう(ご褒美用の高級ジャーキーも買い貯めしておかないとな)。
 もっとも、マックス自身はその種のトレーニングがあまり好きではないようだし、こうやって猟兵の任務に参加するのも乗り気ではないらしい。俺になにかあった時、一人でも生きられるように――そう思って、経験を積ませているのだがな。親の心子知らずとはこのことか。もしかしたら、俺の面倒を見ていた神父もこんな心境だったのかもしれん。過去に戻って、ガキの自分に説教してやりたい。
「地雷に対処するだけでなく、オブリビオンとの戦闘にも備えなくてはいけないのです」
 ウーナの声が聞こえ、時間遡航の方法を模索していた俺の顔の前を妙なものが通り過ぎていった。
 一対の蝶の羽を有した小さな球体だ。
 マックスと一緒にウーナのほうを見ると、その球体の群れが彼女の周囲を舞っていた。ユーベルコードで召喚したらしい。
「なんだ、そいつらは?」
「砂の下級精霊なのです。地雷原の外に散開して、オブリビオンを警戒してもらうのです」
 ウーナが答えている間に砂の精霊とやらは四方八方に飛んでいった。羽をパタパタと動かす様が愛らしく見えないこともない。女子供に受けそうだ。
 きっと、最年少の女子であろうアヤメにも――
「……」
 ――いや、ノーリアクションだった。まあ、人それぞれだからな。

 九個目の地雷を嗅ぎ当てたところで、俺とマックスはお役御免となった。アヤメとエメラのドローン、ウーナの精霊、エリーの念動力のソナーなどによって得られた地雷の位置情報を皆で共有する方針になったからだ。
 アヤメの他にウォーマシンのフライディやガジェッティアのニィナといった高火力を誇る面々もいたおかげで、それから三十分も経たぬうちに地雷は一掃できた。
 爆破音が絶えた地雷原に……いや、元・地雷原に歌声が流れていく。ウタがコンテナの上でギターを爪弾き、歌っているんだ。
 だが、耳に心地よいその歌は――
「精霊たちが知らせてくれたのです。北西の方角から、何者かたちが高速が飛来してくるとのです」
 ――ウーナの報告によって、中断を余儀なくされた。
「数は八つから十ほどなのだそうです」
「オブリビオン?」
 と、アヤメが言葉少なに確認した。
「そう考えるのが妥当なのです」
「集団で空の散歩ができるような一般人は現在のアポカリプスヘルにいないでしょうからね」
 マックスが口吻を北西の空に向けた。敵の臭いが届く距離ではないが、鼻をひくつかせている。
 俺も同じ方角に視線を向けた。
 いくつかの小さな点が見えた。
 すぐに小さくなくなったし、点でもなくなったが。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『支える者』

POW   :    ――“発射”
【ミサイルや機関砲 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    ――“散開”
技能名「【空中戦(回避機動) 】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    ――“大祖国よ栄光あれ”
【大祖国の敵を撃滅する 】という願いを【他の“燕”】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 あれは何年前のことか。
 あるいは十何年前のことか。
 あるいは何十年も前のことか。
 空戦演習の際に奇妙な嵐に遭遇した時から、А中隊を取り巻く世界は一変してしまった。
 А中隊そのものも大きく変化したのだが、それを自覚している隊員は一人もいない。
 たとえ自覚できたとしても、気にしなかっただろう。美しかった(多分に主観が入っている)祖国が不毛な荒野となってしまったことに比べれば、些細なことなのだから。
 あの嵐に遭遇して以降、自分たちが食事も睡眠も排泄もしていないことなど。
 とうの昔に燃料が尽きているにもかかわらず、愛機が飛び続けていることも。
 変わり果てた祖国の空をあてもなくさまよっているうちにА中隊の面は狂気に蝕まれ……やがて、この異常な状況と折り合うためのロジックを見出した。
 すべて、敵国のせいにすればいいのだ。
 祖国が荒涼の地に変わったのは敵国が強力な新型爆弾を使ったから。
 司令部と連絡が取れないのは敵国が通信妨害をしているから。
 ともに演習をしていたはずのБ中隊が消えてしまったのは敵国の戦闘機に撃墜されたから。
 愛機のレーダーだったもの(今は常識の埒外にあるなにかだ)が地上での爆発を何度も捉えたが、それらもきっと敵国の仕業に違いない。
「これ以上、我らの祖国を傷つけさせるわけにはいかない」
 中隊長の誓いの言葉が、かつて通信機だったもの(今は常識の埒外にあるなにかだ)を介して、すべての隊員に伝えられた。
 かくして、А中隊は何年振りかに、あるいは十何年振りかに、あるいは何十年振りかに戦闘態勢に移った。
 美しき祖国を蹂躙する敵国の兵士を倒すため。
 その『敵国の兵士』の正体が猟兵であることも知らずに(そもそも、猟兵という存在を知らないのだが)。
 猟兵たちが爆発させたものの正体が、かつて『美しき祖国』の手で埋設された地雷群であることも知らずに。

 北西の空から十機前後の戦闘機が飛来し、猟兵たちの頭上を通過した。
『支えるもの』や『燕』などの俗称で知られた旧時代の戦闘機だ。
 それらは南東の空に消え、すぐにまた戻ってきた。
 そして、攻撃を開始した。


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●JJからのお知らせ
 第2章は戦闘機との戦いだ。ユーベルコード等で空を飛び、空中戦を挑むもよし。地上から対空戦を仕掛けるもよし。コンテナを守るもよし(敵はべつにコンテナを狙っちゃいないが、流れ弾とかを食らう危険性もあるからな)。
 第1章ではちょっとオマケしたけど、戦闘で使えるユーベルコードは基本的に一種だけ。『ユーベルコード甲で飛びながら、ユーベルコード乙で攻撃』とかはダメ。あと、適は普通の戦闘機じゃなくなってるので、『燃料切れを待つ』という作戦も通じないぜ。
 通信機系アイテムやなんやかやを用いて敵と交信することはできる。でも、相手はオブリビオン化して正気を失っているから、説得して戦闘を回避したりするのは無理だろうな。WIZのユーベルコード『大祖国よ栄光あれ』の効果を低下させることぐらいはできるかもしれないけど。
 敵の数は十機前後だけれども、参加人数やプレイングの内容によって増えたり減ったりする……かも? まあ、細かいことは気にしなーい。
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ニィナ・アンエノン
このバイクもちょっとは空を飛べるけど、流石に戦闘機相手じゃ歩が悪いかな?
とゆー事でまずは地上でバイクを【操縦】しながら、ライフルで【スナイパー】っぽく対空射撃!
弾丸は徹甲弾がいいかな?
にぃなちゃんも【空中戦】の知識があるからちょっとくらいはどう動いて来るか分かるかも。
破片や避け切れない攻撃を【オーラ防御】で守りながら撃ち続けて【時間稼ぎ】すれば、いくらか寄って来てくれるはず。
そしたらそこでユーベルコード発動だ!
ミサイルは【誘導弾】だし、逃げられないくらい広く【範囲攻撃】してまとめて【吹き飛ばし】ちゃえ!
他には……味方の【援護射撃】くらいはできるかな?


木霊・ウタ
心情
戦闘機とそのパイロットか
奴等もOストームの犠牲者だ
可哀そうに
海へ還してやろう

戦闘
普通の機体ではありえない機動の可能性もあるよな
その辺も注意しとく

炎の剣風でミサイル迎撃
爆発は炎壁で受け
コンテナも庇う

機関砲は爆炎噴出のバーニア機動で回避

敵攻撃の土煙に紛れ
爆炎で一気に矢の如く宙へ飛び出し
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

そのまま炎を延焼させるけど
更にダメ押しだ

迦楼羅を炎の翼として顕現
宙で身を還し
翼をジェット噴射の如く
戦闘機の直上から突撃

刃をぶっ刺して
機体内部へ炎の奔流

パイロット
国を愛し守ろうとするその思い
俺達が受け取ったぜ
きっとやかんも同じって思う
是からのことは任せて
紅蓮に抱かれて休め

事後
鎮魂曲
安らかにな


火土金水・明
「相手が空を飛ぶのでしたら、私も空を飛ぶことにしましょう。」「例え、旧時代の戦闘機だとしても全力で戦うことで敬意を示しましょう。」
魔法の箒に跨って【空中戦】の技能を使用します。
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【高速詠唱】で【破魔】と【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【サンダーランス】を【範囲攻撃】にして、『支える者』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。


ウーナ・グノーメ
アドリブ・共闘◎

【心情】
「あのオブリビオンは……まるで鋼鉄の鳥なのです」
「加えて多数の武装、地雷原でまともに戦うには厄介な相手なのです」

なるほど、それではまともに戦うことはしないのです。
フェアリーの力を侮って貰っては困るのです。

【行動】
【念動力】によって浮遊し、上空でUCによって鋭利な石柱を数百個生み出し、空中で撃ち合いを行うのです。
敵の攻撃は【オーラ防御】で防ぎ、【吹き飛ばし】によってこちらの弾丸は威力をプラスし、敵の弾丸は逸れるように試みるのです。
敵の動きは速いのですが、【第六感】を擁するわたしは、ある程度動きの察知が可能なのです。
ウィザードの能力とサイキッカーの能力を駆使して戦うのです。


フライディ・ネイバー
空だ!空を飛んでいる!この世界の戦闘機か!
空好き仲間だったら良かったが、残念、予知にあったオブリビオンだな!

空中戦を選択。飛行ユニット起動、空中浮遊!
情報収集、敵機観察。小手調べだ、バァルカン!!
熱線機関砲の弾幕を張る!

流石、空を飛ぶ為の機械だ!良く避ける!だが!
『色彩加速』7色に分身(残像)で攻撃を回避「見切ったぁ!」
情報と戦闘知識から動きを見切り、接近、ビームグレイブで属性攻撃。

まだまだぁ!飛び足りねぇ!!
分身と入り乱れ、色を変え、敵機を撹乱。敵の視界から外れた瞬間、本体だけ迷彩で姿を隠す。

至近距離なら、回避は間に合わねぇ!
パッと敵機の目の前に姿を現し、バルカン制圧射撃!
さよならだ!!



●ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)
 十機くらいの戦闘機があっちの空から『どびゅーん!』と飛んできて、そっちの空に『ずびゅーん!』と消えたかと思いきや、こっちの空に『ばびゅーん!』と戻ってきて、にぃなちゃんたちの上をまた通過した
『ゔぉっぎゅうぉぉぉぉぉーっん!』という轟音を置き土産にしてね。
 もー、鼓膜が破れるかと思ったよ。これがソニックブームってやつ?
 両耳を押さえながら、空飛ぶ暴走族を目で追った。敵は水平に飛ぶのをやめて、揃って上昇。そして、両端から順に枝分かれするように外側へと曲がっていく。お尻のほうからカラフルなスモークを出してれば、航空ショーの一シーンに見えるかも。
 実際、航空ショーを観に来たお子ちゃまみたいにはしゃいでる猟兵もいるしね。
「うぉぉぉーっ! 空だ! 空を飛んでるぅ! あれがこの世界の戦闘機か!」
 それは誰あろう、フライディ。楽しそうに両腕をぶんぶんと振り回している。飛行機の類が本当に大好きなんだねー。
 対照的なのがウーナ。いつものごとく、無表情だよ。
「あのオブリビオンは……まるで、鋼鉄の鳥なのです」
 ぼそりと呟くフェアリーの横に黒い影が並んだ。
『黒い』っていうのは比喩じゃないからね。見るからに魔法使いといった感じの黒い帽子をかぶって、見るからに魔法使いといった黒いマントを羽織って、見るからに魔法使いといった黒い指輪やピアスをつけて……そして、どこから見ても魔法使いっぽくない露出度高めの黒いハイレグの衣装を着てるの(きっと、下着も黒と見た!)。
 この黒い魔法使いの名前は明。ちなみに、にぃなちゃんに負けず劣らずナイスバディだったりして。
「敵が『鋼鉄の鳥』だというのなら――」
 明はどこからともなく箒(見るからに魔法使いが持ってそうな箒だった)を取り出すと、くるりと回して両足の間に入れ、細長い柄にまたがるような姿勢を取った。
「――こちらも鳥のように空を飛んで相手をしましょう」
 箒がふわりと舞い上がる。
 明は箒の上でバランスを取りつつ、誰かに指示を出した。
「クロはここで待ってなさい」
「はーい」
 と、可愛い返事が足下から聞こえた。
 視線を下ろすと、そこにいたのは可愛い猫。きっと、明の使い魔だね。見るからに使い魔といった感じの黒猫だし。
「気をつけてね」
 と、猫が声をかけた瞬間、明を乗せた箒は猛スピードで『しゅびーん!』と飛んでいった。
「けほっ! けほっ!」
 猫が咳き込んでる。『しゅびーん!』の衝撃派で砂煙が巻き起こったもんだから。
 その砂煙が晴れると――
「私も空で戦うのです」
 ――ウーナが飛び立った。
 三十センチもない小さな体がすごぉく頼もしく見えるね。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「フライング・ベット、起動!」
 フライディが装備している例の大きな機械が唸りを発した。
 その機械の一部分――脚のところのブースターから炎が噴き出し、青い体が空に上がっていく。
 それに続くのはアヤメ。そして、翼を持った二機のロボット。エメラが新たに召喚した魔導蒸気兵だ。
「いっくよー、テンカス!」
 と、元気な声と排気音が背後から聞こえてきた。
 振り返った俺の目に飛び込んできたのはニィナ。いつの間にやら、セルフメイドっぽい宇宙バイクにまたがって、エンジンを噴かしている。
「その宇宙バイクで空中戦と洒落込むわけか?」
「いやー、確かにテンカスは空を飛べるけど、流石に戦闘機が相手では分が悪いと思うんだよね。だから――」
 宇宙バイクの前部が勢いよく跳ね上がった。
「――地上から攻めまくっちゃうよー!」
 ウィリー状態のまま、ニィナのバイクは走り去った。明が飛んでいった時と同じように土煙が巻き起こり、これまた同じように黒猫が咳き込んでる。ご愁傷様だぜ。
 バイクの爆音が遠ざかると、今度は上のほうから派手な音が聞こえてきた。二機の戦闘機が機銃を撃ちまくってるんだ。標的は、箒に乗った明。
 明はジグザグの軌跡を描いて、二本の火線を巧みに避けてる。たいしたもんだ。
 しかし、敵のほうもたいしたもんで、明の後ろにしっかりと食いついてやがる。軌跡のジグザグ具合は明ほど急角度じゃないが、普通の戦闘機に描けるようなもんじゃない(描けたとしてもパイロットはGで押し潰されるだろう)。オブリビオン化のなせる技か。
 追いかけっこしてる奴は他にもいた。フライディと一機の戦闘機。ただし、フライディのほうが追っかけている側だ。両肩の機銃から銃弾を……いや、ビームを連射している。今のところ、命中はしていない。だが、敵は避けるのに必死で、反撃する余裕はないみたいだ。
 おっと! 仲間たちの戦い振りに見惚れてる場合じゃなかった。どうやら、俺に目を付けた戦闘機がいるようだ。こっちに向かって急降下してきやがる……と思ったら、ミサイルを一発ぶっぱなして、今度は急上昇。
 しょうがねえ。本体のほうは後で始末するとして、まずはミサイルの相手をしよう。ここで爆発されちゃあ、後ろにあるコンテナまで吹き飛んじまうからな。
「こっちが逆に吹き飛ばしてやるぜ!」
 迫り来るミサイルを睨みつけて、俺は『焔摩天』を振りかぶった。

●フライディ・ネイバー(ウォーマシンのスカイダンサー・f28636)
 敵の後ろを取ることができたから、まずは小手調べって感じで、両肩のブラスターバルカンを撃ちまくってみたが……当たらねえもんだな、おい。縦横無尽に動き回って避けやがる。さすが、空を飛ぶ機械だぜ。
 ああ、残念だ。実に残念だ。こいつらがオブリビオンじゃなかったらなぁ。一緒に飛んだり、空のことを語り合ったりしたかった……。
『こっちが逆に吹き飛ばしてやるぜ!』
 感傷にふけってると、ウタの叫びが聞こえてきた。集音センサーが声を拾ったらしい。
 俺は反射的に地上を見た。
 鉄塊剣(ぶっとい刀身がボーボー燃えている)を構えたウタに向かって、ミサイルが突進している。
 援護をしたほうがいいな……と、思って降下しようとした矢先にウタが鉄塊剣を振り抜いた。『ぶぅーん!』ってなもんだ。敵の部隊が最初に響かせたあのソニックブームにも勝るとも劣らぬ激しさ。
 鉄塊剣の刀身を覆っていた炎が猛獣みたいに荒れ狂い、自分が起こした砂煙を飲み込んで、砂利混じりの熱風となって、ミサイルにぶつかった。
 ミサイルは衝撃で半回転。あらぬ方向に飛んでいった末、ウタから遠く離れた場所に落ちて爆発した。ウタは無傷。もちろん、コンテナも無傷。
 ウタ以外の地上組も激闘を繰り広げてるぜ。ニィナはイカした宇宙バイクで爆走しながら、ライフルで援護射撃をしてくれてる。マクシムスを連れたアレックスことアレクサンドラはウォーマシン用と見紛うようなゴツい機銃をこれでもかとばかりに乱射している。エリーは……ただ突っ立ってるようにしか見えないが、地雷を始末していた時と同じように念動力で色々やっているんだろう。たぶん。
 まあ、とにかく、地上組に手を貸す必要はなさそうだ(いや、奴らのほうが空中組の俺らに手を貸してくれてんだよな)。
 俺は空に意識を戻した。
 ブラスターバルカンを連射しつつ、他の空中組の様子を伺ってみる。箒に乗ったニィナはあいかわらず敵を翻弄中。ウーナのほうは翻弄どころか、まだ姿を捉えられていないようだ。体が小さいからな。
『私は、地の属性と強い結びつきを持つ砂漠のフェアリーなのです。故に大地から離れた空中での戦いは不得手――』
 集音センサーからウーナの独り言が聞こえてきた。あるいは独り言じゃなくて、俺や他の仲間に語っているのかもしれないが。
『――などと思ったら、大間違いなのです』
 突然、小さなウーナの周りに大きな物体が出現した。鏃みたいに尖った石柱だ。しかも、一本じゃねえ。群れをなしてんだよ。ざっと見たところ……四百本近くもある!
『フェアリーの力を侮ってもらっては困るのです』
 いや、誰も侮らないと思うぜ。
 この状況で侮れるわけがねえや。

●火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)
 さっきまで空は広かった。
 今はとても狭く感じる。
 人口密度ならぬ岩石密度が上がったから。
 そう、何百本もの石柱が飛び交っているのよ。
 ウーナによって召喚されたそれらは錐のように回転しながら、風を切り、唸りをあげ、戦闘機に体当たりをしかけている。
 今のところ、敵に命中した石柱はない。一方、敵は体当たりを躱しつつ、ミサイルや機銃で既に何十本もの石柱を破壊している。だからといって、石柱の側が劣勢というわけでもないけれど。スピードでは戦闘機には敵わないものの、数の差が大きいから。
「敵の動きのパターンが読めてきたのです」
 風に紛れて、ウーナの声が聞こえてきた。
 小さすぎて目立たなかった彼女だけれども、石柱群が現れた時にその中心にいたせいか、今は敵にしっかりと認識されて、攻撃されているわ。
 でも、石柱の体当たりが戦闘機に命中していないように、戦闘機のミサイルや機銃もウーナには命中していない。時にはオーラの障壁を展開して銃弾を防ぎ、時には石柱をミサイルにぶつけて軌道を逸らしているの。
 それに、どの戦闘機もウーナだけに集中できるような状況じゃない。他の猟兵たち(当然のことながら、私自身も含んでいるわ)も戦い続けているんだから。
「いけいけ、ウーナ! ぶっとい石柱で串刺しにしちゃえ!」
 敵の攻撃を回避するために急降下して低空飛行した時、『他の猟兵たち』の一人の大声が聞こえた。
 宇宙バイクを疾走させているニィナよ。ウーナに声援を送りながら、両手で構えたライフル(バイクのハンドルはロックしているのだと思う)で援護射撃をしている。
 私は箒の高度を地面ぎりぎりのところまで落とし、彼女のバイクと併走した。
「やっほー、明! 調子はどう?」
「しつこく絡んでくる敵がいるの」
「数は?」
「二機」
「じゃあ、一機はにぃなちゃんがもーらい!」
「お願いするわ」
 ニィナを地上に残して、再び上昇。
 ほんの一瞬、荒野に立つウタの姿が視界の隅に入った(使い魔のクロも見えたような気がした)。親指を立てている。『そちらは任せた』という意味なのか『こちらは任せろ』という意味なのか。たぶん、その両方ね。
 空に帰った私は、乱舞する石柱の間を縫うように飛行して(こういう状況では戦闘機よりも小回りの利く箒のほうが有利だわ)、ウーナに近付いた。
「そろそろ、地上組が本格的な攻撃を始めるみたい」
「了解なのです」
 すれ違いざまに言葉を交わし、私は更に上昇した。
 ウーナは逆に降下した。何本かの石柱を伴って。

●ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)
 高度を下げつつ、私は視線を上げてみたのです。
 箒に乗って飛ぶ明と、彼女に狙いをつけた二機の戦闘機が見えるのです。
 戦闘機が機銃を発射。左の翼の根本の辺りからオレンジ色の破線が伸び、明を貫いたのです。
 しかし――
「残念。それは残像よ」
 ――残像だったようです。
 戦闘機は銃弾を吐き続けましたが、明は次々と残像を生み出しながら、高速かつ不規則な動きで躱していきます。黒いポニーテールとマントの裾がたなびく様はとても優美な印象を受けるのです。なんだか、ダンスでも見ているような気がしてくるのです。
 でも、ダンスの鑑賞はこれまでなのです。私は私の敵の相手をするのです。降下をやめて、前進。三時の方向からミサイルが飛来しましたが、慌てず騒がず、石柱を操ってガードするのです。
 ミサイルを受けて石柱が砕け散ったのです。その破片が舞う中を飛び続けるのです。今度は十時の方向から機銃攻撃。またもや慌てず騒がず、石柱でガードするのです。
 何発もの弾丸を撃ち込まれて石柱が崩れ去ると同時に、機銃を撃っていた敵機が頭上を通過したのです。私はすぐさま振り返り、反撃を……しかけたのですが、思い留まったのです。
 私よりも先にフライディたちが敵機に襲いかかっていたからなのです。
 フライディに『たち』をつけたのは冗談でも間違いでもないのです。どうやら、彼は分身系のユーベルコードを使ったらしく、七人に増えているのです。でも、見分けはつきやすいのです。全員、色が違いますから。オリジナルは青で、後の六人は藍、赤、黄、橙、緑、紫なのです。
「どうだ、見切れるかぁ!? 俺のほうは――」
 虹色のフライディたちが同時に腕を振ったのです。自分の腕ではなく、彼らが背負っている『ふらいんぐ・べっと』なる機械の腕ですが。
「――完璧に見切ったぜ!」
 その腕は槍状のビームを発生させていたのです。
 敵機はそれを躱そうとしたものの、左側の尾翼の一部を切り裂かれてしまったのです。七人で同時に攻撃したのに一箇所しかダメージを受けなかったということは……このユーベルコードは実際に人数が増えているわけではなく、超高速で移動することで分身しているように見せかけているのです?
 まあ、それはさておき、敵機は尾翼を傷つけながらも墜落はしなかったのです。しかし、体勢を大きく崩し、その拍子にミサイルを(おそらく意図せずに)撃ち出したのです。
 ミサイルが向かった先は地表なのです。コンテナの近くでもあり、ウタの近くでもあるのです。だから、私はまたもや石柱を操り、それを盾にしたのです。
 ミサイルは石柱にぶつかって爆発したのです。ぶつかった位置が低かったため、爆炎や破片がウタに降り注ぎましたが、なんの問題もないのです。
 ブレイズキャリバーである彼は地獄の炎で壁を築き、それらを防いだのです。

●再び、ニィナ
 にぃなちゃんはテンカス(正式名称は『Z17テンプテーション・カスタム』だよ)のハンドルのロックを解除した。
 三角形の大きな鉄板――フライディがちょん切った尾翼が目の前に落ちてきて、地面に突き刺さったから。
 ハンドルを切り、尾翼の横を通り抜け、ハンドルを再びロック。スリングで背中に回していた速射型スチームドライフルを構え直す。
 標的は、明と追いかけっこをしているコンビの片割れだよ。
「徹甲弾!」
 あ? べつにカッコつけたくて叫んだわけじゃないからね。このライフルは音声入力で弾丸を装填できるの。
 それに――
「ふぁいやー!」
 ――発射もね。
 ライフルから撃ち出された徹甲弾は標的の鼻先に命中(普通に狙ってもスピードに差がありすぎて当たらないだろうから、動きを先読みしたんだ)。大きなダメージは受けてないみたいだけど、べつに構わないよ。明を追っかけるのをやめて、こっちに飛んできたからね。
 興味をもってくれて、ありがとー。さあさあ、もっと近付いて。いいよ、いいよ。そのまま、そのまま。もっと、もっと、もっと……はい、いい感じに距離が詰まったとろこで、ろっくおーん!
「カーニバルだよ、れっつだーんす!」

●再び、明
 眼下を走っていたニィナの姿が白煙に包まれた。攻撃を受けたわけじゃない。その逆よ。無数の小さなミサイルをバイクから発射したの。一斉にね。
 彼女に迫っていた戦闘機は慌てて機首を上げ、曲芸じみた動きで回避を試みた。
 そして、見事に躱した。
 最初の三発までは。
 残りのミサイルはすべて命中。機体のあちこちで続けざまに小爆発が起き、それらが合わさって大爆発に変わった。
 その爆発を回り込むようにして旋回。こちらをずっと機銃で撃っていた(犠牲となったのは残像だけだけど)戦闘機を正面に捉えた。それとは別に三体の機体も。この時を……そう、複数の敵をまとめて攻撃できるチャンスを待っていたのよ。
「我、求めるは、新たな雷撃の力」
 高速詠唱に応じて、何百本もの槍が出現した。
 雷の力を有した魔法の槍。
 そして、それらは一瞬にして私の周囲から消えた。
 飛び去ったのよ。残光を空間に焼き付けながら、四機の戦闘機に向かって。

●再び、フライディ
 明の生み出した恐怖の槍軍団が戦闘機に次々と突き刺さっていく。
 その猛攻が止んだ時、四機だったはずの戦闘機は三機になっていた。一機は墜落して絶賛炎上中。
『すべての敵を落とすことはできなかったけど、与えたダメージは無駄にならないはず。他の人もいるから……』
 集音センサーが拾ってきた明の呟きを聞きながら、『他の人』であるところの俺は三機のうちの一機に突進した。尾翼をぶった切ってやった、あの機体だ。
 相手は俺の動きに気付いたらしく、錐揉み降下で離脱したかと思うと、すぐにまた姿勢を整えて真っ正面に飛び始めた。
 いいぞ、もっと逃げろ。もっと粘れ。飛び続ける理由を俺にくれ。まだまだ飛び足りねえんだ!
 飛び足りねえんだよ!
 もっかい、『色彩加速(オーロラ・ビート)』を発動。七色に分身して、俺は敵を追った。言っておくが、七色のうちの青いのが本体ってわけじゃねえぜ。俺は常に色を変え、他の分身と入れ替わり、入り乱れながら、飛んでいるのさ。
 この技で攪乱されているせいか、あるいはダメージが蓄積しているせいか、敵の動きに切れがなくなってきた。
 ほら、追いつくぞ。
 ほら、間合いに入った。
 もう終わりか? 終わっちまうのか? 飛び足りねえのによぉ。

●再び、ウーナ
 敵の一機に迫っていたフライディたちが七色から六色に減ったのです。
 消えたのが青いフライディであることに私が気付いた瞬間、残されていた六色も消えてしまい、消えていたはずの青いフライディがまた現れたのです。
 敵のすぐ目の前に。
 操縦席を覆うガラス(『きゃのぴー』と呼ばれるものでしょうか?)の前面に。
「さよならだ!」
 フライディが叫んだのです。
 彼の両肩の武器も連射音という形で叫んだのです。
 そして、至近距離からそれを浴びた敵も爆発音という形で叫んだのです。
 三つ目の叫びの残響が消えなぬうちに私も周囲の石柱を打ち出したのです。
 狙った相手は、明の猛攻にさらされた四機のうちの一機なのです。最初に私は『鋼の鳥』と評しましたが、今は何本もの槍が刺さっているので、ハリネズミのように見えるのです。
 ハリネズミになっても、スピードは健在なのです(防御力その他は落ちていると思うのですが)。私は石柱を次から次へと繰り出しましたが、一本も……当たらないと思ったら、大間違いなのです。群を抜いて鋭くて群を抜いて大きい石柱が戦闘機の操縦席に命中したのです。
 もっとも、避けられないほどの超スピードで攻撃したわけではないのです。敵の未来位置を予測し、そこに石柱を放ったのです。これが、強大な第六感を有するサイキッカーの戦い方なのです。
 あえて、もう一度、言わせてもらうのです。
「フェアリーの力を侮ってもらっては困るのです」
 操縦席を破壊された戦闘機は真っ逆さまに落下し、地面に激突して大爆発を起こしたのです。
 突然、その爆炎の中からなにかが飛び出したのです。空に向かって、一直線に突き進んでいくのです。
 ん? よく見ると……あれはウタです。ウタなのです。

●再び、ウタ
 地獄の炎を噴出させて、俺は飛び上がった。人間ロケットってところかな。
 で、ウーナがいる高度で敵と御対面とあいなった。何十本もの槍が刺さって針山みたいになった戦闘機だ。
「せぇーの!」
 炎を纏った『焔摩天』を横薙ぎに払い、すれ違いざまに強烈な一発を見舞う。
 ガツンとした手応えが返ってきて、敵の装甲の破片が舞い散った。
 敵はよろけたが、俺の体勢も反動で崩れた。天地が逆になり、地獄の炎が上向きになったもんだから、今度は地面に一直線……なんてことにはならなかったぜ。
 翼をはためかせて、体勢を戻したからな。
 なぜ、人間である俺に翼があるのかって? 普段は地獄の炎と一体化している『迦楼羅』って使い魔を翼に変えたんだよ。炎の翼にな。
 敵の位置と状態を確認。右斜め下。よろけながらも、まだ飛んでいる。
 俺は翼を広げ、炎を盛大に噴射して、敵に追いすがった。
「軍用機に乗ってるってことは、あんたは兵士なんだろうな」
 機体の背中に飛び乗り、パイロットに語りかけながら(声は届いちゃいないだろうけど)、『焔摩天』を装甲に突き立てた。
「だとしたら、国を愛し、守ろうとしていたんだろう。その思いは――」
『焔摩天』の刃から機体の内部へと炎が注ぎ込まれていく。
「――俺たちが受け取ったぜ」
 俺は『焔摩天』を引き抜き、機体を蹴りつけて離脱した。
 三秒も経たぬうちに機体が爆発した。

 守りたかったものを守り切れないのは悔しいだろうな。哀しいだろうな。
 だけど、眠ってくれ。
 紅蓮の炎に抱かれて……。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
やはり空から来たわね
今回の予測からその予感はしていたわ…当然、対処の方法もね
それじゃ、始めましょう
陸でも動き回りたいから安全な撤去を選んだのだけれど…大丈夫かしら…

戦闘機には戦闘機よ…それも凄腕のね
『渾天裂くは我が鉄翼』、機動型鉄翼兵二機を戦闘機形態で召喚
その機動力でひっかきまわして後ろを取り、ミサイルや機銃を使って墜としてあげなさい、ドッグファイトよ
私自身はいい機会だから試作兵器の試験ね
「騎乗鎧」に【騎乗】、「武装群」から対空砲を呼び出して鎧に装備
ローラー【ダッシュ】で大地を駆けまわりつつ対空砲で機翼兵の援護よ
さぁ、少し派手に行きましょう?

※アドリブ・絡み歓迎


エリー・マイヤー
戦闘機ですか。
拠点間を飛んで移動できたら、色々捗りそうですね。
…はぁ、地雷なんかよりこっちを残しといて欲しかったです。

気を取り直して、とりあえず防御を固めましょう。
外向きの【念動力】で周囲を覆って、
機関砲の軌道を逸らす感じのバリアを張っときましょう。
当たったら痛いじゃすまなそうですし。
ミサイルは【TK-G】で優しくキャッチして、向きを変えて撃ち返します。
直撃するかはわかりませんが、
敵の近くで弾頭を【念動力】で叩いて起爆すれば多少は撹乱できるでしょう。

むしろ、敵の戦闘機を直接掴めそうだったら、
振り回してハンマーがわりにしたら手っ取り早そうですね。
そして鹵獲を…いえ、欲をかくのはやめときましょう。


御門・アヤメ
ヤークトユニットのサーチと、通信システムのハッキングによる情報収集能力で確認が取れた情報を各猟兵に伝達します。
「敵兵力確認……完了。各自に情報を送る」
伝達次第、ヤークトユニットをパージしブースターやバーニアを備えたシュトルムユニットに切り替えます。
「ユニットチェンジ『ヴェルフェン・シュトルム』」
一気に空へ上昇し、スピードを生かした空中戦(ドックファイト)を行います。
「あなた達の状況は理解した」
「あなた達の魂を骸の海から解放する」
ミサイルはビームガトリング弾をばらまき撃ち落とし
「ミサイル確認。迎撃する」
機関砲は残像を囮に避け急停止し、戦闘機とすれ違い様にレーザーブレードで一閃。鎧砕きで両断する。


マクシムス・ルイス
アル(f05041)、どうしたのですか
なぜ私を追い払おうとするのです?
マスターの指示に従おうとする本能と
「解せぬ」とふつふつ沸き上がる怒りのせめぎ合いに困惑して
哀しい鳴き声が漏れてしまいました

――なぜ、ここにきて私を足手纏い扱いするのですか!

激情と共にUCを発動させ、
アルが蜂の巣にした敵機を更に私の剣で串刺しにします

あとついでにアルの足かおしりに噛みつきます
ここらで正気に戻っていただかないと
彼の身体がふつうの人間よりも硬いのは知っていますが
いまはやけに堪えますね

私はただ守られるべき者ではない
あなたの隣に並び立つ者なのです
どうかそれをお忘れなきよう、マスター


アレクサンドラ・ルイス
マックス(f28856)に退避を指示しながら、ドロテアできる敵機を迎撃
行け、マックス!
止まるんじゃない
安全な場所まで走れ!

でっかい爆弾をクソみたいにポロポロ落としやがって
世界中がこんなになっても未だ正義を背負って戦ってるつもりだとは
お笑い種だ
ガキの時は豆鉄砲(拳銃)を悔し紛れにぶっ放すのが精一杯だったが
見ろ、この機銃を
これはお前らみたいな奴らの土手っ腹に穴を開けて燃料をジャブジャブお漏らしさせてやるための特別製だ

つい頭に血が上って感情的になったが
マックスの言葉と噛まれた刺激で冷静になる
撃墜した機体に数珠を握り込んだ拳のUCを打ち込んで破壊

――すまなかった、マックス
ありがとう
お前は俺の相棒だ



●エリー・マイヤー(被造物・f29376)
 オブリビオン戦闘機たちが轟かせたソニックブームによって、空気がびりびりと震えています。
「はぁ……」
 私が紫煙と溜息を同時に吐き出すと、アフガン・ハウンドのマクシムスが顔を見上げてきました。
「どうしました、エリー?」
「いえね。詮ないことですが、思わずにいられなかったんですよ。どうせなら、地雷なんかよりも――」
 私は煙草を掲げ、頭上を飛び回っているオブリビオン戦闘機を指し示しました。
「――ああいうものを残しておいてほしかった、と。飛行機があれば、拠点(ベース)間を短時間で移動できて、色々と捗りそうじゃないですか」
「なにも捗らない」
 と、冷たく言い切ったのはアヤメです。いえ、本人はべつに冷たくしているつもりなどなく、普通に意見を述べているだけなのでしょうが。
「たとえ状態のいい航空機が残っていたとしても、運用するための技術や人的資源がなければ、なんの役にも立たない。それに恒常的に燃料を確保できる環境や離着陸するための施設も必要。そんな条件が揃っている拠点なんて、そうそうあるもんじゃない」
「アヤメはマジメですねぇ。夢くらい見させてくださいよ」
「……」
 アヤメはなにも言い返しませんでした。でも、へそを曲げて無視しているというわけではなく、作業に集中しているだけだと思われます。その作業の詳細はよく判りません。機械の鎧に装着したオプション(地雷を探し始めた時に『ナントカ・ヤークト』とか言ってましたっけ?)の一部をいじっているようですが……。
「まあ、自由に航空機が飛び回れるような世界を再び築くためにも、今は目の前の敵を倒すことを考えましょう」
 私の背中をぽんと叩いて、エメラがそう言いました。
「おっと、目の前じゃなくて、頭の上だったわね」
「で、おまえはその『頭の上』の敵とどうやって戦うつもりなんだ?」
 アレクサンドラがエメラに尋ねました。
 同じ問いを彼に投げかける人はいないでしょうね。答えは一目瞭然なのですから。
 その『答え』は、戦車だのヘリだのに搭載されているような特大サイズの機関銃。先程からアレクサンドはそれをガチャガチャといじくり、長ぁーい弾帯をセットしているのです。
「地雷を始末する時によく働いてくれたあの魔導蒸気兵とかいう連中も戦闘機には対処できないと思うんだが……」
「ええ。だから、別の魔導蒸気兵に働いていてもらうわ。目には目は、歯には歯を――」
 エメラの両隣にロボットのようなものが一体ずつ出現しました。またもや、召喚系のユーベルコード。しかし、地雷処理を手伝ってくれた工兵たちと違って、新たな魔導蒸気兵たちは翼を有しています。
「――戦闘機には戦闘機よ。それも凄腕のね」

●アレクサンドラ・ルイス(サイボーグの戦場傭兵・f05041)
「敵兵力確認……完了。各自に情報を送る」
 俯き加減だったアヤメが顔を上げた途端、俺がかけているサングラス型演算デバイスのレンズの内側に敵のデータらしき文字群が表示された。先程からアヤメはずっと黙り込んでいたが、俺には理解できないような手段(敵を走査したりとか、通信システムをハッキングしたりとか?)でデータを取得していたらしい。
 エメラが召喚した羽つき蒸気兵たちの頭部の一部が点滅し、カチカチという音が聞こえてくる。おそらく、奴らにもアヤメからのデータが届いているのだろう。
「それじゃあ、始めましょう」
 全員にデータが行き渡ったところで(データを受け取る手段のない者にはアヤメが口頭で簡潔に伝えた)、エメラが俺たちを見下ろして宣言した。何故に身長百五十センチ足らずなのに見下ろせるのかというと、マシンウォーカーに搭乗しているからだ。エメラのことだから、普通のマシンウォーカーではなく、魔導蒸気とやらで動いてる代物なんだろうが。
 敵に空中格闘戦を挑むべく、明が箒で飛び立ち、ウーナが羽で舞い上がり、フライディがブースターを噴かして上昇した。
 そして、アヤメが――
「ユニットチェンジ、『ヴェルフェン・シュトルム』」
 ――地雷の探知や敵データの取得に使用していたと思わしき装備を分離し、ブースターなどを備えたものに換装した。
 その新装備の力を使い、ロケットのような勢いで一気に飛翔。半秒ほど遅れて、羽つき蒸気兵たちが後を追っていく。
「得意の機動力でひっかき回して後ろを取り、墜としてあげなさい。。ドッグファイトよ、ドッグファイト」
 小さくなっていく蒸気兵たちに声をかけながら、エメラがマシンウォーカーを起動させた。
「私は地上から援護するわ。この試作兵器のテストを兼ねてね」
 マシンウォーカーが走り出した……と言っても、人間のように足を動かして走ってるわけじゃない。足についてるローラーを使ってるんだ。
「マシンウォーカーというよりもマシンスケーターですね」
 くだらないことをマックスが抜かしたが、相手をしている暇はない。敵が一機、こっちに降下してきたからな。機銃から弾丸(アヤメのデータによると、口径は30ミリだそうだ)をばら撒きながら。
 くそっ! 嫌な記憶がフラッシュバックしてきやがる。やり切れないのは、それが特定のいつかの記憶じゃないってことだ。ガキの頃の俺にとって、機銃掃射だの爆撃だのは(それに人が地雷で吹き飛ばされる様も)日常茶飯事だった。
「逃げろ! マックス!」
 マックスに叫びながら、俺は機銃『ドロテア』を持ち上げた。

●御門・アヤメ(異界の魔導兵器・f17692)
 機銃が絶叫し、ミサイルが咆哮し、石柱(ウーナが召喚したの)までもが怒号する空をわたしは駆け巡った。
 残像を囮にして機銃の攻撃を避け、ビームガトリングを連射してミサイルを撃ち落とし、時には石柱を楯や隠れ場所として利用しながら。
 敵は軍用機。しかも、オブリビオン化している。スピードも機動性も尋常なものじゃない。
 だけど、機械鎧『ヴェルフェン』を着込んだ上にスピードユニット『シュトルム』を装着したわたしのほうが有利。その気になれば、時速七千キロ以上のスピードで飛ぶこともできるから。
 それに頼れる仲間たちがいるから。
『逃げろ! マックス!』
 パージして地上に置いてきた(でも電子的にはまだリンクしている)テクニカル・ユニット『ヤークト』を介して、『頼れる仲間』の一人であるところのアレクサンドラの声が聞こえてきた。
『ヴェルフェン』のカメラを地表に向けてズーム。迫り来る戦闘機に向かって、アレクサンドラが重機関銃を撃っていた。戦闘機のほうも機銃を連射している。
 二条の火線が交差し、アレクサンドラは粉微塵になって四散、戦闘機は火を噴いて墜落……というような光景が脳裏に浮かんだけど、それは現実にはならなかった。戦闘機は何発かの銃弾を受けながらもアレクサンドラの頭上を通過し、そのアレクサンドラは無傷の状態で仁王立ちしている。
『おまえが守ってくれたのか?』
 銃身から硝煙を漂わせてる重機関銃を構えたまま、アレクサンドが横手を見た。
 そこにいたのはエリー。いつものように、汚染物質を吸引している。
『はい。外向きの念動力で周りを覆う感じにして、弾丸を逸らしました』
 と、こともなげに彼女は言ってのけた。
『あんなのが当たったら、痛いどころじゃ済まなさそうですからね……あ? また来た』
 エリーが目をやった方角から、ミサイルが飛んできた。先程とは別の戦闘機が放ったみたい。
 アレクサンドラが素早く重機関銃をそちらに向けたけど、迎撃するまでもなかった。
 ミサイルは空中で止まったから。一時停止した映像のように。
『よっこらしょっと』
 エリーの声に合わせて、ミサイルは反転。もと来たほうに戻っていった。
『今のも念動力ですよ』
『言われなくても判る……』
 アレクサンドラは憮然とした面持ちで答えた。
 そして、我に返ったかのようにマクシムスを睨みつけ、厳しい声音で叱りつけた。
『『逃げろ』と言ったはずだぞ!』
『わっふうぅーん』
 マクシムスが吠えた。
 彼はずっと人の言葉を喋ってたから、犬らしく吠えると、なんだか奇妙な感じ。それに、なんだか……悲しい感じ? 胸がちくちくする。

●マクシムス・ルイス(賢い動物のレトロウィザード・f28856)
 アルが『逃げろ』と言ったので、私は即座に逃げ出しました。
 六歩だけ。
 七歩目を踏み出した時には体の向きが変わっていて、アルの傍に戻ってしまいました。
 アルの……いえ、マスターの指示は絶対です。彼が『逃げろ』と命じたからには、私は逃げなくてはいけません。
 それでも……やはり、納得できません。なぜ、私を追い払おうとするのですか? 危険な状況だからですか? しかし、危険な状況だからこそ、あなたは訓練の場に相応しいと考え、私を連れてきたのでは?
「『逃げろ』と言ったはずだぞ!」
 マックスがまた怒鳴りつけてきました。
 わけが判らないやら、情けないやら、腹立たしいやらで、私は思わず――
「わっふうぅーん」
 ――と、鳴いてしまいました。
 しかし、マスターは耳を貸してくれません。
「なにをしてる! 安全な場所まで走れ!」
 有無を言わさぬ調子で叫びながら、上空の敵めがけての銃撃を再開し、葉巻ほどもある空薬莢を機関銃から撒き散らしています。
 私はなにかを訴えようとしましたが、その『なにか』を言葉にする前に彼方から爆音が急接近してきました。
 またもや、ミサイルが飛んできたのです。
 反射的に身を伏せたものの、爆音が爆発音に変わることはありませんでした。
 代わりに聞こえたのは、エリーの物憂げな声。
「もー、しつこいですね」
 ミサイルのほうを見ると、先程と同じように空中で停止しています。おなじみの念動力ですね。
「優しくキャッチするだけでは懲りないようですから――」
 エリは顔の前で手を軽く振りました。煙草の煙でも払うかのように。
「――お返ししますね」
 ミサイルが九十度ほど傾いて弾頭を空に向け、上昇を始めました。ひょろひょろと頼りなげに揺れながら。
 そして、敵の戦闘機のうちの一機(このミサイルを放った機体かどうかは判りません)に近付いたところで――
「はい!」
 ――エリーが両の掌を打ち合わせました。
 同時にミサイルが爆発。
 その衝撃に煽られ、件の戦闘機が空中でひっくり返りました。そこにエメラの魔導蒸気兵たちが肉迫し、ミサイルや機銃で攻め立てていきます。あれがエメラの言っていた『ドッグファイト』なるものでしょうか? 本物のドッグである私は置いてけぼりですが。
「今のは上手い攻撃だったわ、エリーさん」
 私たちの前をマシンウォーカーならぬマシンスケータで通過しながら、操縦席のエメラが声をかけてきました。
「念動力でミサイルの信管を刺激したの?」
「そうですよ」
 と、エリーが答えている間に、マシンスケーターは走り去りました。
 エリーの返事が聞こえたのかどうかは判りません。
 でも、エメラの行動によって生じた音はこちらにまで届きましたよ。
 マシンスケーターに装備されている対空砲の発射音です。

●エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)
 私が駆っているのは陸戦型高機動魔導蒸気騎乗鎧よ。マシンウォーカーでもなければ、マシンスケーターでもないからね。
 この騎乗鎧の長所は汎用性。工房にある武装群のどれかを転送して装備すれば、様々な局面に対応できるの。
 今、砲声を響かせた対空砲(煙突ほどもある代物よ)も武装群のうちの一つ。敵機には命中しなかったけど、それは想定内。当てるためじゃなくて、敵機とドッグファイトを繰り広げている二体の機動型鉄翼兵を援護するために撃ったんだから。
 ほら、お利口な機動型鉄翼兵たちは私の意を汲み、こっちの砲撃にタイミングを合わせて敵機を攻撃し、確実に追いつめてるでしょ?
 その二体だけじゃなくて、アヤメさんも別の敵機を追いつめているわね。弾丸のような光を左腕から連射して牽制しつつ、時には上昇し、時には降下し、時に旋回し……といった具合に目まぐるしく動いてるようでいて、しっかりと確実に間合いを詰めている。
 そして、十秒ほどが過ぎた頃――
「おみごとー」
 ――向こうで空を見上げていたエリーさんが拍手をした。
 アヤメさんがレーザーの刃を文字通り一閃させて、敵機の片翼を断ち切ったから。
 敵機は忽ちのうちに失速し、風に吹かれる木の葉のようにくるくると舞い落ちた。本当に木の葉だったら、音も立てずに地面に触れるのでしょうね。でも、戦闘機だとそうはいかない。地面にぶつかって大爆発を起こして、赤い炎と黒い煙を巻き上げた。オブリビオン化して燃料は尽きているだろうに爆発するというのも不思議な話だけど……たぶん、燃料に代わって機体の中を流れているなにかに引火性があるんじゃないかしらね。うん、そういうことにしておきましょう。
 爆発が残した炎が消えぬうちに別のものが落ちてきた。なにかに切断された尾翼よ。
 宇宙バイクに乗ったニィナさんがその横を駆け抜けて、ライフルを発射。更に何十発ものミサイルを発射。それらを食らって敵機が空中で散った。
「皆、派手にやってわね」
 と、言ってる間に敵機がまた墜落してきた。無数の槍が突き刺さった状態で。
「じゃあ、私も少し派手にいきましょうか」
 対空砲の砲口を空に突き上げ、援護射撃を再開。
 もしかしたら、『少し』では済まないかも。

●再び、エリー
 対空砲を撃ちまくりながら、二足歩行戦車で走り回るエメラさん。
『どぉん!』という砲声をテンポよく連発し、『ぎゅいーん!』とローラーの駆動音を響かせ……まるでライブですね。連携して空中戦をしている二体の魔導蒸気兵はバックバンドならぬトップバンドといったところでしょうか。
 では、彼女たちに倣って、私も派手にいきましょう。飛んできたミサイルを受け止めて投げ返すという受動的で消極的な戦い方はもうお終いです。
 念動力の見えざる手を思いっっっ切り伸ばして、と……。
 はい、捕まえました!
「なんともはや……」
 と、言葉を漏らしたのはマクシムス。ぽかんとした顔で空を見ています。
 いえ、私が念動力で固定したものを見ています。
 ミサイルじゃありませんよ。
 ミサイルを撃ってくる大本――オブリビオン戦闘機です。
「アポカリプスヘルに航空機を普及させるための第一歩として、鹵獲したいところですが………いえ、欲をかくのはやめときましょう」
 かといって、このまま握り潰すのはもったいないですね。
 有効活用しましょう。
 対戦闘機用の大型武器として。

●再び、エメラ
 空中で敵機が停止しても、私は驚かなかった。エリーさんが念動力を使ったということは察しがついたから。
 でも――
「せーの!」
 ――向こうのほうからエリーさんの声が聞こえて、停止していた敵機が弧を描くように動いた時は少しだけ驚いた。というか、呆れた。あの娘ったら、念動力で掴んだ敵機を横薙ぎに払ったのね。斧かハンマーでも扱うみたいに。
 エリーが全長十七メートルほどの斧/ハンマーで狙った相手は別の敵機。
 もちろん、その敵機は回避行動を取ろうとした。でも、間に合わなかった。私の機動型鉄翼兵たちが二方向から攻撃を仕掛けて動きを鈍らせたから。
 そして、哀れな敵機の側面に即席の斧/ハンマーが叩きつけられた。正面衝突ならぬ側面衝突。こういうのも同士討ちって言うのかしら? 言わないわよね。
 実に豪快なショーだったけど、拍手は後回し。敵機はまだ残っているもの。爆発して四散した二機分の破片が降ってくる中、私は騎乗鎧を走させ続け、対空砲を撃ち続けた。
「そろそろ、あなたも――」
 目につけた敵機の翼に穴があいた。
 砲弾が命中したのよ。
「――墜ちてくれない?」

●再び、マクシムス
 左の翼を撃ち抜かれた戦闘機を魔導蒸気兵たちが巧みなコンニビネーションで追撃し、とどめを刺しました……が、私はそれを悠長に眺めていたわけではありません。視界の端のほうでぼんやりと認識していただけです。
 エリーの戦闘機手掴み攻撃に度肝を抜かれたりもしましたが、今は冷静さを取り戻していますよ。
 ……嘘ですけどね。
 心の中ではまだ激しく渦巻いています。マスターに対する怒りとも哀しみともつかない感情が。
 そのマスターといえば――
「さっさと行け!」
 ――まだ退避を命じています。
 私を庇うようにして立ち、低空飛行している戦闘機を睨みつけ、あいかわず機関銃を乱射しながら(本人は狙って撃っているつもりなのでしょうが、私には乱射しているようにしか見えませんね)。
 そんな彼の背中を凝視しているうちに例の感情を抑え切れなくなって……いえ、抑え込んではいけないような気がして、私は叫びました。
「なぜ、ここにきて私を足手まとい扱いするのですか!」
 発したのは叫びだけではありません。半ば無意識にユーベルコードを行使してしまいました。
 しかし、私はその結果を見届けることなく、マスターの……いえ、アルの足首の辺りに思い切り噛みつきました。
 そこはサイボーグ化した部位であったらしく、とても硬かったです。まあ、それを承知の上で牙を立てたのですが……思っていた以上に徹えますね。

●再び、アレクサンドラ
 頭に血がのぼっているという自覚はあるんだが、どうにも抑えることができない。
 しかし、抑える必要などないだろう。
 相手はオブリビオンなんだから。
 しかも、軍属のパイロットだ。きっと、お綺麗な大義名分に踊らされて、正義だのなんだの名のもとにでっかい爆弾をクソみたいにポロポロ落としていたような奴らに違いない。おおかた、いまだに正義を背負って戦ってるつもりなんだろうよ。世界中がこんな有様になったことも知らずにな。
 ……お笑い種だ。
 ガキの時は、鳥も殺せないような豆鉄砲を悔し紛れにぶっ放すのが精一杯だったが、今は違うぞ。見ろ、この機銃『ドロテア』を。これはおまえらみたいな連中の土手っ腹に穴を開けて、燃料をジャブジャブお漏らしさせてやるための特別製だ。死ね、死ね、小便くさい燃料にまみれて死……あー、くそっ! 間断なく響くドロテアの連射音に紛れて、背後から犬の鼻息が微かに聞こえてくる。まだそこにいるのか、マックス。
「さっさと行け!」
『ドロテア』を撃ち続けながら、俺は怒鳴った。
「なぜ、ここにきて私を足手まとい扱いするのですか!」
 背後のマックスが怒鳴り返してきた。
 ほぼ同時に敵が空中でよろめき、高度を落とした。『ドロテア』の放つ弾雨を浴びたからでもあり、どこからか飛来した何百本もの剣に刺し貫かれたでもある。後者はマックスのユーベルコードか? ……と、考える間もなく、足首に痛みが走った。サイボーグ化した部位なので、本当の痛みじゃない。なにかが接触したことを知らせる電気信号に過ぎないんだ。
 だが、痛かった。

●再び、アヤメ
 アレクサンドラの重機関銃で蜂の巣にされ、マクシムスのユーベルコードでハリネズミにされたにもかかわらず、その戦闘機は爆発しなかった。
 だからといって、飛び続けることができたわけじゃない。地上に落ち、腹面で土を抉るようにして十数メートルの溝を刻んだ末に停止した。限りなく墜落に近い胴体着陸。
 停止といっても、その場から動けなくなっただけで、機体は激しく揺れている。死にかけて痙攣している虫のように。
 そこにアレクサンドラが駆け寄り、何度も拳を叩きつけた。たぶん、灰燼拳。手元をズーム。拳になにか握ってる。あれは……ロザリオ?
 戦闘機の死の痙攣が止まると、アレクサンドラはマクシムスのほうを振り返った。
『噛んだことはお詫びします』
 マクシムスが頭を下げた。
『しかし、これだけは言わせてください。私はただ守られるべき者ではない。あなたの隣に並び立つ者なのです。どうか、それをお忘れなきよう……マスター』
『いや、俺のほうこそ、すまなかった』
 今度はアレクサンドラが頭を下げた。
『そして、ありがとう。おまえは俺の相棒だ。だが――』
 わずか七秒で頭が上がった。
『――対等な相棒ならば、『マスター』などと呼ぶな。今の分は見逃してやるが、次にその言葉を口にしたら、おやつ抜きだからな』
『わっふうぅーん』
 ……。
 よく判らないけど、仲直りできたの?
 まあ、どうでもいいけど。
『シュトルム』のブースターの出力を上げて、わたしは新たな敵を追った。いえ、最後の敵と言うべきね。九時の方向で最後から二番目の敵――十機目が爆発したから。倒したのはウタ。
「あなたたちの魂を――」
 通信機で語りかけながら、わたしは十一機目の前に回り込んだ。
「――骸の海に還す」
 正面から飛び込むようにして、すれ違いざまにレーザーブレードを振るう。
 一瞬、パイロットの姿が見えた。
 バイザーで顔が隠れているにもかかわらず、目が合ったような気がした。

●中隊長が見たもの
 機械鎧を装着した十歳足らずのミレナリィドールが正面から飛び込んできた時、А中隊の中隊長は思わず目を閉じた。
 瞼に映ったのは、飛び込んできた敵と同じ年頃の少女。もちろん、機械鎧など着ていないし、ミレナリィドールでもない。どこにでもいるような、ごく普通の少女だ。
「――」
 中隊長はその少女の名を呼んだ。
 オブリビオン化して正気を失った後も忘れなかった名前。
 愛する娘の名前。
 十分の一秒にも満たない再会を終えて目を開くと、視界が光に包まれた。
 レーザーブレードの光だ。
 とても温かく、優しい光に見えた。
 それが残酷な錯覚であることに気付かないまま、中隊長は旅立った。
 隊員たちが待つ骸の海へ。
 もしかしたら、娘も待っているかもしれない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ささやかな宴』

POW   :    料理や酒を楽しむ

SPD   :    皆でゲームを楽しむ

WIZ   :    歌や踊りを楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 翌々日の昼。
 戦闘機の残骸が散乱する元・地雷原で猟兵たちは十数人の男と対面していた。
『マルガリートカ』の奪還者(ブリンガー)たちである。
「うぇー!?」
 猟兵たちの話を聞くと、頭にコック帽を乗せたリーダー――チャイニクことミハイル・マルィシェフは素っ頓狂な声をあげた。
「つまり、ナニか? あんたら、俺らやコンテナを守るために戦闘機と喧嘩したっていうのか? いやー、ありがたいというか、申し訳ないというか、話がブッ飛びすぎててこよく理解できないというか……」
 感謝、驚愕、恐縮、興奮、困惑。か行で始まる様々な感情が綯い混ぜになった結果、チャイニクの表情は半笑いになっていた。後ろに並ぶ他の奪還者も同じような表情を浮かべている。
「まあ、とにかく……ありがとよ」
 半笑いを全笑いに変えて、チャイニクは水筒を差し出した。
 もちろん、中に入ってるのはただの生温い水だろう。しかし、猟兵たちは知っている。初対面の相手に水を分けることがこの世界でどれほど大きな意味を持つか……。
 それ以外の形でもチャイニクは厚意を示した。
「よかったら、俺たちの拠点に来てくれよ。たいしたもてなしはできないけどな」
 とはいえ、そこは海千山千の奪還者。厚意だけで猟兵たちを誘ったわけではない。
「ついでにコンテナの物資を運ぶのを手伝ってくれる?」

「奪還者の仕事ってのは物資を見つけることじゃない。物資を持ち帰ることなんだ。つまり、この時点で仕事はまだ半分しか済んでないわけで……」
 名も知らぬ運転手の弔い、コンテナのハッチの解錠、収容物のチェック。仲間たちをてきぱきと指示して作業を進めつつ、チャイトフは奪還者の仕事について猟兵たちに語って聞かせた。半笑い/全笑いだった先程までとは打って変わり、真面目な表情をしている。
「今回のように見つけた物資の量が多い時は長期的な計画を組み、拠点との間を何往復もする。一度に運べる量は限られているから、まずはすべての物資をチェックし、優先的に持ち帰るものを決めなくちゃいけない。拠点で早急に求められているものとか、日持ちしなさそうなものとかな」
 拠点に戻っている間に他の奪還者やレイダーがコンテナを発見する可能性もある。それに備えて何人かの仲間を残して番をさせる(現れた者たちが友好的な場合はなんらかの交渉をして、そうでない場合は力尽くで追い払う)奪還者たちもいるが、チャイニクはその方針を取らないという。人数を割いてしまうと、運べる物資の量が更に減ってしまうだけでなく、戻る側も残る側もリスクが高まるからだ。
「言うまでもないことだが、物資の中になにか気に入ったものがあったら、持っていっていいぞ。このコンテナを見つけて守り通したのはあんたらなんだから、中身の所有権もあんたらにある。だけど――」
 チャイニクの顔に笑みが戻った。
「――俺らの分もちょっとは残しておいてね?」


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●JJからのお知らせ
 第3章は拠点『マルガリートカ』での宴会だー!
 拠点の住人が用意してくれた御馳走(とっておきの缶詰や瓶詰など)を食って、美酒(とっておきのウォッカの他、じゃがいもを原料にした自家製酒など)を飲んで、戦いの疲れを癒そうぜ。もてなしを受けるだけじゃなくて、歌ったり、踊ったり、ゲームをしたり、拠点の外の話を聞かせたり、乏しい食材でなにか料理を作ったりして、宴会を盛り上げるのもいいかもな。
 物資を持って拠点に帰るまで(徒歩で二日)のシーンは描かないけど、その間にあったこと(奪還者たちとの交流とか)をプレイングに盛り込んでもらっても構わないぜ。
 あと、宴会は一晩だけな。夜が明けたら、チャイニクは仲間を率いてコンテナにまた戻る。物資をピストン輸送しなくちゃいけないから。
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エメラ・アーヴェスピア
ふふ、気にしないでいいわ、こちらも仕事よ
…さて、これからどうしようかしら。
仕事の分は終わっているのだけれど…まぁせっかくだから、お手伝いしましょうか
…私ならこれらを全て、一度に運べるけれど…どうかしら?(指定UC利用)

とりあえず、楽しむ前に報告書の作成や試験した兵器の問題点の軽い洗い出しをして、と
欲しい物?コンテナの中身より戦闘機の残骸の方が私には有用よ、あとで色々と使える技術が無いか調べさせてもらうわ
その後は宴会を眺めつつゆっくりとさせてもらおうかしら
あなた達の武勇伝、聞かせてもらえるかしら?

※アドリブ・絡み歓迎


木霊・ウタ
心情
好意は遠慮なく受け取らなきゃな

共に笑い合う時間がきっと
心に希望の灯を燈すと信じる

輸送
出来る限り手伝う

一度に沢山とか
高速ピストンとか
きっと皆が何とかしてくれるだろ(ぐっ

宴会
JJへも声掛け
あんま喰いすぎて
拠点に迷惑かけんなよ

ごはんパック×コンビーフ缶で炒飯作る
勿論火力は獄炎
こいつは美味いぜ?

全員に行き渡る分作るけど
計画的な資源利用も大切だし
やかんへ相談して使用量調整

やかん>
引退するってマジ?
やってみたいことが?コックとか?
それも拠点を守る大切な役割だよな


心地よい喧騒や笑顔を楽しみ味わいながら
軽くギター爪弾く

大変な世界だけど
今を精一杯生きて
裡に希望が輝いているなら
きっとより良い未来を創れるぜ


エリー・マイヤー
いやぁ、コンテナは強敵でしたね。
まさかコンテナが突然襲い掛かってきて、
ヒキニクさんがチャイニクになってしまうとは思いもよりませんでしたね。
通りすがりの†ダークネス§ドクター†さんはまさに地獄の仏でした。

は?酔ってませんよ。
私を酔わせたのなら大したものです。
まったく、こんな喉が焼けて息も臭くなって、
翌日頭痛と吐き気で大変なことになる面倒な飲み物に、
私が負けるわけないでしょう。
聞いてるんですかKKさん。
その暑苦しい毛並みを丸刈りにして、
スフィンクスとなるべき時が来たと言っているんです。
誰ですかそんな訳の分からないこと言ったのは。
酔っ払って脳みそショートしたんじゃないですかね。
水ぶっかけましょう水。


ウーナ・グノーメ
連携・アドリブ◎

【心情・行動】

「無事に終わって何よりなのです。奪還者達の命を救えてめでたしめでたし……と言うには彼らにはまだまだ仕事があるのですが、それはさておくのです」

「遠慮しているわけではなく、わたしは少食なのです。代わりに歌と踊りを披露するのです」

 わたしは妖精であるものの、世界の加護によって彼ら一般人には違和感のない姿に見えている筈。食欲については少食ということでごまかして、妖精の歌と踊りを披露するのです。ふわり、ひらり、と舞い踊る妖精の舞いは、彼らにはどのように見えるのか、楽しみなのです。わたしはサイキッカーなので、そこまで違和感のあるようには見えないとは思うのですが。



●ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)
 マルガリートカに到着すると、チャイニクさんは私たちを住民たちに紹介し、事のいきさつを語って聞かせたのです。
 でも、住民たちは『いきさつ』の『い』の字あたりでチャイニクさんを制止し、宴の準備を始めたのです。その際、住民の一人である年嵩の男性はこう仰ったのです。
「細けえ話を聞かずとも、あんたらが良い奴だってことは判る。チャイニクが連れてきたんだからな」
 そして、私たちはこのザールに案内されたのです。
 ザールとは彼らの言葉で『ホール』という意味だそうですが、ここには天井も壁もないのです。バラックに囲まれた円形の広場に過ぎないので。
 だけど、立派なお屋敷の豪奢なホールにも負けないものがあるのです。
 それは人々の温かさなのです。
 物理的な温かさもある程度は保証されているのです。焚き火と篝火を兼ねたドラム缶がそこかしこに置かれ、炎を揺らめかせ、火の粉を散らしているのです。
 それでも砂漠の夜の冷え込みが完全に消え去るわけではありませんが、人々は寒さなど苦にしていないようなのです。白い息を吐きつつもドラム缶を囲み、食べたり、飲んだり、歌ったり、語ったりしているのです。
 チャイニクを始めとする奪還者(ブリンガー)の面々も楽しんでいるのです。
 しかし、チャイニクは羽目を外しすぎることもなく――
「ありがとうよ、お嬢ちゃん」
 ――お酒を飲む手を止め、帽子を脱いで頭を下げたのです。
 相手はエメラなのです(チャイニクは『お嬢ちゃん』呼ばわりしてますが、たぶん、二人の実年齢はさして離れてないと思うのです)。
「お嬢ちゃんのおかげでピストン輸送の手間が省けたぜ」
「ふふっ。気にしないでいいわ」
 エメラは笑って済ませましたが、チャイニクが感謝するのも当然なのです。エメラが不思議なユーベルコードを使ったことによって、コンテナ三台分の物資を一度に持ち帰ることができたのですから(エメラの他にアヤメやニィナやアレクサンドラやマクシムスも大量の物資を運んでくれたのです)。
「気にすんなって言われてもなぁ……なんか、心苦しいぜ」
「いいのよ。報酬はちゃんと貰ったから」
 エメラが言うところの『報酬』とは、戦闘機の残骸なのです。彼女はあれらをすべて回収したのです。いったい、なんに使うつもりなのです?
「あんた、『奪還者を引退する』とか言ってんだって?」
 ウタがやってきて、チャイニクに声をかけたのです(ちなみにウタも沢山の物資を運んだのです)。
「引退した後はなにをするんだ? その帽子を活かして、コックとか?」
 いえ、帽子は活かしようがないのです。コックは形から入る職業ではないのです。
「うーん」
 丸っこい頬を太い指でかきながら、チャイニクは照れ笑いのような表情を浮かべたのです。
「今回で引退するつもりだったけど、あと一回だけやってみることにしたんだ。ホント、一回だけな」
 周りにいた他の奪還者たちがニヤニヤと笑っています。『まぁーた同じことを言ってるよ』とでも思っているのです?

●エリー・マイヤー(被造物・f29376)
「チャイニクさんたちの命を救ったということは、この拠点(ベース)の人たちの生活を守ったということでもあるのです。これで、めでたしめでたし……と言いたいところですが、そうもいかないのです」
 宴に興じる人たちを見ながら、ウーナが誰にともなく語っています。
「物語なら、ここで終わるところですが、これは現実なのです。しかも、とても厳しい現実なのです。チャイトフさんたちの苦闘の日々はまだまだ続くのです。でも、まあ――」
 ウーナは羽をはためかせて振り返り、こちらを見ました。
「――それはさておき、今は楽しむのです」
「ええ、楽しみましょう」
 頷いた私の傍に住民のかたが近寄ってきました。古風な飛行帽とフライトジャケットを身に着けたお婆さんです。
「ほらほら。遠慮してないで、あんたたちもお食べ」
 お婆さんが差し出したアルミの皿には野菜が少しばかり乗っていました。もちろん、採れたてではないでしょう。ずっと冷凍保存されていたサラダパックの類だと思われます(だとすれば、このマルガリートカは冷凍庫およびその動力源を所有しているということですね。環境は劣悪ながらも、技術面では恵まれた拠点なのかもしれません)。なんにせよ、アポカリプスヘルでは貴重な食料です。
「ありがとうございます」
 わたしは右手でレタスを取り(左手は塞がっているのです)、口に運びました。
「ありがとうなのです。遠慮しているわけではなく、小食なだけなのです」
 そう言いながらも、失礼にならないように一切れのニンジンを持ち上げるウーナ。一切れといっても、フェアリーである彼女からすれば、けっこうな大きさです。
「世界の加護が働いているので、ここの人たちが私の姿に違和感を覚えることはないはずですが――」
 別の人に野菜を勧めに行ったお婆さんの背中を見送りながら、ウーナが首をかしげました。
「――どういう風に見えているのか気になるのです」
「他の人たちの見え方は判りませんが、私の目には二人のウーナが映ってますよ」
「……え?」
 ウーナがきょとんとしています。二人揃って。
 そう、私が言ったことは嘘でも冗談もでありません。ウーナは本当に二人いるのです。まあ、戦ってた時に七人に増えていたフライディに比べれば、そんなに驚くほどのことじゃないですよね。
「アナタだけじゃありませんよ。ほら、ウタも二人です」
 私は右手をあげて(左手は塞がっているのです)、指先をウタに……いえ、ウタたちに向けました。相手は二人なので、交互に指さそうとしたのですが、どうも上手くいきません。
「おい、エリー……」
 ウタたちがジト目で睨んできました。
「おまえ、酔っぱらってないか?」
「はぁ? 酔ってませんよ。酔うわけないでしょう。私を酔わせることができるのなら、たいしたものですよ」
 確かに、私の左手にはブリキのカップがあり、その中には喉が焼けて息が臭くなって翌日頭痛と吐き気で大変なことになる面倒な飲み物が入っていますけどもぉ。こんなものに私が負けるわけありません。
 ……おや? いつの間にか、ウタが三人に増えてますね。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
「まさか、ウタが三つ子だったとは……よくもまあ、今まで隠し通せたものですね」
 うわぁー。エリーの奴、完全に酔っぱらってやがる。いや、『酔っぱらう』という段階を通り越して、次のステージにあがってるな。
 あ? 絡まれては敵わんとばかりにウーナがそっと離れていくぞ。こういう時、フェアリーみたいな小型の種族は得だよな。目立たないから。
 小型でも大型でもない俺はゆっくりと静かに後退りして、エリーから距離をあけた。幸いなことに引き止められたりしなかった。住人たちが面白がってエリーの周りに集まり、防壁の代わりになったからだ。
 安全圏に到達したところで後退りをやめて反転し、普通に歩き出した。目が会った住人に挨拶して、言葉を交わし、勧められた料理を食い、お返しにも俺も料理を勧め……。
「……って、なにそれー? めっちゃ良い匂いが漂ってくるじゃん!」
 灰色の毛玉みたいなのがいきなり行く手を塞いだ。ケットシーのJJだ。やっぱり、嗅ぎつけてきやがったか。
「特製の炒飯だよ」
 手に持っていたトレイを俺はJJに見せてやった。
「パックのごはんと缶詰のコンビーフを高火力な地獄の炎で炒めたんだ。こいつは美味いぜぇ」
「うにゃにゃにゃー! 俺にも食わせてー!」
 JJが奇声を上げて茶碗を突き出してきたので(用意のいい奴だな)、トレイの炒飯をいくらか盛ってやった。
 だが、釘を刺すのも忘れない。
「ここの連中がもてなしてくれるからって、なんでもかんでも食い過ぎるんじゃねえぞ。食料は限られてんだからな」
 炒飯を作る時もその点を考慮して、食材を使いすぎないように気をつけたんだ。チャイニクと相談しながらな。あいつの助言は役に立ったぜ。腕利きの奪還者だけあって、計画的な資源利用ってのを心得てるようだ。
 そのチャイニクをまた見かけたので、俺はそちらに移動した。茶碗を数秒で空にしたJJの『おかわり、欲しい』という視線を背中に感じるが、無視だ。
「炒飯、食うかい?」
 そう尋ねると、チャイニクは笑顔でかぶりを振った。
「いらないよ。さっき、自分の分は食ったから。すげえ美味かったぜ。ありがとう」
「どういたしまして。そっちは?」
 と、俺が訊いた相手はエメラ。チャイニクの傍でなにか書き物をしてたんだ。
「私もいらない」
「そうか。ところで、なにをしてんだ?」
「今回の任務でテストした陸戦型高機動魔導蒸気騎乗鎧の問題点を軽く洗い出してるの」
 さすが、天才エンジニアだな。
「ローラー走行と二足歩行を使い分けることで、スピードが重視される局面と悪路走破性が求められる局面の両方に対応できることが証明されたけども、切り換えをもう少しスムーズにおこなえるようにするか、あるいは同時に併用するための新機軸を……ん?」
 機嫌よく長広舌を振るっていたエメラだが、話をいきなり中断した。
 俺の後ろから聞こえてきた大声が気になったんだろう。
「いやー、あのコンテナたちは強敵でしたね! そう、コンテナですよ、コンテナ! 突然、三つのコンテナが襲いかかってきたんです!」
 エリーの声だ。奇々怪々かつ支離滅裂な法螺話をまくしたててやがる。
 周りの連中は楽しそうに耳を傾けてるけどな。

●エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)
「コンテナ三連星のデッドスクリームカヤックを受けたチャイニクさんがヒキニクになってしまった時はさすがの私も焦りましたね! 通りすがりの†ダークネス§ドクター†さんがいなければ、どうなっていたことか! まさに地獄に仏ですよ!」
 エリーさんの話のカオス度がどんどん加速していくわ(声を聞いてるだけでは判らないけど、きっと『ダークネスドクター』という謎の名前は中二っぽいマーク付きね)。でも、本人は事実を真面目に語っているつもりなんでしょうね。お酒のせいで記憶中枢と言語中枢がアレな感じになってるだけ。
 とはいえ、アレな感じではあるものの……いえ、アレな感じだからこそ、彼女を取り囲んでいるギャラリーには大受けしているわ。私の傍にいるチャイニクさんも(話の中で挽き肉にされたっていうのに)笑ってる。
「ちょっと聞いてるんですか、KKさん!」
「KKじゃねーし! JJだし!」
 あらあら。今度はJJさんに絡み始めた。
「名前なんか、どうでもいいんですよ! その暑苦しい毛並みを丸刈りにして、スフィンクスとなるべき時が来たと言っているんです! 判りましたか、GGさん!」
「JJだってば! 誰か、この酔っ払いをなんとかしてー!」
 JJさんは半泣きで助けを求めていますが、ギャラリーはただ笑うばかり。コントかなにかだと思っているのかもね。
「お? あっちでもなにか始まったぞ」
 と、住民の一人が別の住民の肩を叩き、顎をしゃくってみせた。
 髭まみれ顎が指し示したのはウーナさん。羽を震わせて滞空しながら、静かに歌ってる。
 歌声が小さい上にエリーさんの大音声が響いているものだから、よく聴こえなかった。
 でも、それは最初のうちだけ。
 彼女が歌っていることに気付いた人たちは静かになり、エリーさんまでもが黙り込み、か細くも美しい歌声に耳を傾けた。
 やがて、ウーナさんはただ歌うだけでなく、踊り出した。ふわりと飛び、ひらりと舞い、くるくると回り、緩やかな弧を描いて……。
 半透明の残像を生み出して動く羽から光の粒子が散り、ドラム缶の焚き火から跳ね上がった火の粉と混じり合って、フェアリーの踊りに幻想的な効果を加えた。
 更に音楽も加わった。
 私とチャイニクさんの間でウタさんがギターで爪弾き始めたの。
「まるでフィエーヤ(フェアリー)だなぁ……」
 踊り続けるウーナさんを目で追いながら、チャイニクさんがうっとりと呟いた。『まるで』もなにも本当にフェアリーなんだけどね。でも、これって実は凄いことなのかも? 世界の加護を受けているはずのフェアリーを見て、フェアリーを連想したのだから。たぶん、チャイニクさんだけじゃなくて、この場にいる全員が。
「ここは大変な世界だけどよ」
 ギターを弾く手を休めることなく、ウタさんが呟くように独白した。
「今をせいいっぱい生きて、胸の内に希望が輝いているなら……きっと、より良い未来を創れるぜ」
 私は住民たちを見回してみた。歌と踊りとギターの演奏に魅せられた彼らや彼女らの表情はとても明るい。地獄のような世界で生きてる者のそれとは思えないわ。ウタさんが言うように『胸の内に希望が輝いている』のでしょうね。
 暫くすると、ウーナさんは踊りを終えて一礼した。
 住人たちは拍手も忘れて、余韻に浸っている。
 夜に相応しい静けさ。
 聞こえるのは、焚き火が爆ぜる音だけ。
 でも、エリーさんがブリキのカップを頭上に突き上げて、静寂を吹き飛ばした。
「この喉が焼けて息が臭くなって翌日頭痛と吐き気で大変なことになる面倒な飲み物のおかわりをいただけますかー!」
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御門・アヤメ
「荷物運びなら任せて」
道中、怪力で持ち上げて輸送します。

住民たちの歓迎を受け
「歓迎の宴に感謝の意を」
少し困った顔を見せ
(わたしはただの戦闘兵。芸事の類や料理や話術は得意でない)
(異世界の話、戦いの記録を説明すればいい?いや、この場では適切ではない気がする)
(催しとして、模擬戦でもすれば。誰か乗ってくれる人がいるか否か)
(ヴェルフェンの飛行能力で、子供たちを抱えて空の旅へ連れて行けば)
「……難しい」

子供たちがいれば、少し対応が軟化します。
「わたしに用があるの?」
不器用だけど、精いっぱいリクエストにこたえようと努力します。


フライディ・ネイバー
なぁなぁ、もう一回、もう一回頼む!

飯食う口がねぇ。夜空を飛ぶってのも良いが、
せっかくの宴を無下にもできねぇ。んで、カードゲームに興じてた。が、

……かぁー負けたぁ!
もう一回後一回と頼んでこれで5連敗。か、勝てねぇ…

あー、やっぱちょいと夜空を飛ぶかぁ……あ、ちょい!えー、ちー、チャ、チャイニク!これ渡しとくわ!!

何の気なしにコンテナ見た時みつけた質の良いハンディカムな。
ここ二日で空から見た気になる景色とか、ここら周辺の景色を俺の記憶データから移しといた。

役に立つかはしらねぇけど、ま、この出会いを記念して、もらってくれや!じゃあな!!


ニィナ・アンエノン
とりあえず戦利品は持ち帰らなきゃね!
バイクを上手く【操縦】してバランス取れば、いっぱい【運搬】出来ると思うよ!
それでどれどれ、中身は……ざんねーん、にぃなちゃんお酒飲めないや!
でも少しは【料理】も出来るし、宴会の準備のお手伝いは出来るかも。
【武器改造】で武器の出力を調整して、焼くとか煮るとか炙るとか蒸すとか刻むとか低温調理とかそんなのも出来るかな?
宴会が始まったら【歌唱】して【ダンス】して【楽器演奏】して、と【元気】に【パフォーマンス】!
ノれる皆で歌って踊っちゃおう☆
この世界ならやっぱりハードロック?それともメタル?
ノリがよければ何でもいいかも☆


アレクサンドラ・ルイス
マックス(f28856)と物資の輸送を手伝う
運べるだけ運び終えたら、分け前は受け取らず、宴会にも参加しないでさっさと帰る

感謝の気持ちが迷惑というわけじゃあないが
ただでさえ食うのに困る世界のものを
何も困っていない俺たちが頂戴するわけにはいかない
これはあんたがたで使ってほしい
それが俺の願いだ。心からの
――生きてくれ

ほら、マックス
帰るぞ
…そんな顔をしてもダメだ
…………チッ
妙なところで知恵が回るな
しょうがない奴め
少しだけだぞ
いいか、ちょっとだけ食べさせてもらったら、もう帰るんだ
帰還したら地雷探査の訓練が待ってるんだからな

(宴会中は酒を飲みながらマックスのブラッシングに夢中になっている)


マクシムス・ルイス
アル(f05041)と一緒に荷物の運搬をがんばりました
犬なのでこのままではたくさんは運べませんが
ソリがあれば無敵です
犬ゾリレースにも参加してみたいですね
地雷探査の訓練よりもそっちの方が絶対に楽しいと思いますよ、アル

ええ…帰るんですか…(きゅぅーん
確かにアルの仰ることも筋が通っていると思いますが
私はつい最近までこの世界で暮らしていたわけですし
ちょっとくらい、ち ょ っ と く ら い
ご相伴にあずかってもバチは当たらないのでは?(きゅぅーん

干し肉をちょっぴり分けていただいて
アルの傍らでがじがじします
この噛み応え、たまりませんね
アルのブラシも、たまりません
幸せというのは、こういうことを言うのでしょう



●御門・アヤメ(異界の魔導兵器・f17692)
 マルガリートカの中央広場。住民たち『ザール』と呼んでいる場所で、わたしは立ち尽くしていた。
 ストーブ代わりのドラム缶がそこかしこに設置され、炎を揺らめかせている。それらを囲み、宴を楽しむ住民たちと猟兵たち。とても平和な光景に見えるけれど、ここは戦場よりも気が抜けない。
 なぜなら――
「チャイニクたちを助けてくれて、ありがとうな。本当にありがとうな」
「あんたも奪還者(ブリンガー)なのかい? 小さいのに偉いねぇ」
「ネズミの薫製、食べるぅ?」
 ――住民が入れ替わり立ち替わりやってきては声をかけてくるから。
 包帯まみれの傷痍兵じみた姿のわたしに対して、恐怖や嫌悪の感情を示す人は皆無。こんな格好の子供など、アポカリプスヘルでは珍しくもないから? あるいは世界の加護が働いているから? それとも……。
 当惑しながらも、住民から話しかけられる都度、わたしは礼を述べた。
「歓迎の宴に感謝の意を」
「……って、表情がかたぁーい! 笑顔でいこうよ、アヤメ! 笑顔、笑顔ぉ!」
 横からニィナがいきなり現れ、肩を抱いて頬をすり寄せてきた。こんなにもテンションが高いのは、エリーに負けないくらい泥酔しているから……というわけじゃないみたい。顔にかかる息にアルコール分は含まれていない。ハイテンションが常態なのね。
「笑顔が無理なら、せめて芸とかで盛り上げようよ。ウーナのダンスやウタのギターみたいにさ」
 ……これが『無茶振り』と呼ばれるコミュニケーション?
「わたしはただの戦闘兵なので――」
 肩に回されたニィナの腕を解き、何歩か横に移動して距離をあけた。
「――芸事の類や料理や話術は得意ではない」
「得意じゃなくても、だいじょーぶだって」
 すかさず、ニィナは距離を詰めてきた。移動距離はわたしのそれよりも一歩分だけ多い。また離れたら、今度は二歩多めに近付いてくるかも。
「たとえば、猟兵として巡った異世界のことかをちょこっと話すだけでも、皆は大喜びしてくれると思うよ」
「異世界の話?」
 今までに参加してきた任務について、わたしは思い返してみた。
「つまり、戦闘記録の詳細を語ればいいということ? ……いや、この場では適切ではない気がする」
 ニィナをちらりと見やると、彼女は苦笑して頷いた。
「うん。テキセツじゃないねー」

●ニィナ・アンエノン(スチームライダー・f03174)
 自分になにができるのか? 自分はなにをするべきか? アルガリートカの無垢なる民が寄せる期待とプレッシャーに押し潰されそうになりながら、己の存在意義を根本から問い質すアヤメであった! ……って、それほど大袈裟なノリで語るような状況じゃないんだけど、アヤメは真剣に考え込んでるみたい。
 で、考え抜いた結果、二つ目の案を捻り出した。
「住民と模擬戦をするのはどうかな? なにか話したりするよりも、そちらのほうが性に合ってる」
「それはちょっと危険だと思う。あと、たとえ模擬戦でも、アヤメに敵う人はいないでしょ」
「うーん……」
 小さく唸りながら、またも熟考。
 しばらくして、第三案を自信なげに提示した。
「『ヴェルフェン』の飛行能力を使って、子供たちを抱えて空の旅へ連れて行くというのは?」
「いや、さっきのやつよりも危険だし。子供にはめちゃくちゃウケそうだけど、親御さんが許さないんじゃないかな」
「……難しい」
 がくりと首を折るアヤメ。だいじょーぶだよ! 強く生きて!
 なんか、この状況だけを見ると、アヤメがポンコツな子に思えるかもしれないけど、そんなことないからね? 地雷の始末や戦闘機とのバトルで活躍したし、マルガリートカへの帰り道でも力を発揮したんだから。そう、文字通りに『力』を発揮したの。沢山の物資をひょいと持ち上げて運んだんだよ。このちっちゃい体のどこにあんな怪力が秘められてるんだかねー。
 そういえば、坊主頭のアレックスとモフモフボディのマックスも物資をいっぱい運んでたっけ(まあ、誰よりもいっぱい運んだのはエメラなんだけどね)。アレックスが戦闘機の残骸でソリを作り、それに物資を乗っけて、マックスが引っ張ってったんだ。犬ゾリって、意外と速いんだねー。機会があったら、乗ってみたいかも。
「えー!? もう帰るのかよ?」
 ん? 向こうでチャイニクが目をまん丸にしてヘンな声をあげてるよ。
「ああ。帰らせてもらう」
 と、チャイニクに答えたのはアレックス。もちろん、傍にはマックスがいる。
「つれないこと言うなよぉ。なんか食ってってくれや。口に合うようなもんはないだろうが、これでも心尽くしの……」
「誤解するな。もてなしに不満があるわけじゃない」
 引き止めようとするチャイニクの言葉をアレックスは遮った。
「それに感謝の気持ちが迷惑というわけでもない。しかし、ただでさえ食うのに困る世界のものを、なにも困っていない俺たちが頂戴するわけにはいかない」
「……」
 チャイニクはまだなにか言いたげだったけど、なにも言わなかった。アレックスの思いやりに胸を打たれたのか、目がちょっとウルウルしてるよ。

●アレクサンドラ・ルイス(サイボーグの戦場傭兵・f05041)
「コンテナにあった物資はすべて、あんたがたで使ってくれ。それが俺の願いだ。心からの……」
 俺はチャイニクに背を向けて――
「生きてくれ」
 ――そう言い残し、歩き出した。
 六歩だけ。
 七歩目を踏み出そうとした時には体の向きが変わっていて、マックスを睨みつけていた。
 奴は六歩どころか一歩も動いちゃいなかったんだ。べちゃりと地べたに這い蹲り、訴えかけるような上目遣いを見せて、『梃子でも動かない』という意思を示している。散歩に行くのを拒否する犬のように。あるいは散歩が好きすぎて家に帰るのを拒否する犬のように。
「帰るぞ、マックス」
「……」
「そんな顔をしてもダメだ」
「きゅぅーん」
 マックスは切なげに鼻を鳴らした。女子供には効果覿面だろうが、俺には通用しないぞ。
 しかし、まあ……話くらいは聞いてやるか。
「確かにアルの仰ることも筋が通っていると思いますが――」
 と、上目遣いのままでマックスは語り出した。
「――私はつい最近までこの世界で暮らしていたわけですし、ちょっとくらい……そう、ちょっ、と、く、ら、い、ご相伴にあずかってもバチは当たらないのでは?」
「……」
「当たらないのでは?」
「……」
「きゅぅーん」
「……チッ」
 妙なところで知恵が回るな。しょうがない奴め。
 くそっ! さっきまで目を潤ませていたチャイニクが笑いを堪えて肩を小刻みに揺らしてるじゃないか。

 そういうわけで、住民たちが開いてくれ宴に少しだけ参加することにした。
 楽しそうに騒いでる連中を眺めつつ、木彫りのカップでジャガイモ酒をちびちびやりながら、マックスをブラッシング。
 そのマックスはといえば、塩気の少ない干し肉を囓っている。首を傾けては戻し、傾けては戻して、いろんな角度からな。もっと美味いものやもっと高価なものをいくらでも食ってきたことがあるだろうに(俺だって、こいつの食費は出し渋っちゃいないさ)世にも幸せそうな顔をしている。
「美味そうに食うなぁ」
 と、同じような感想を漏らした者がいる。
 隣に座っていたフライディだ。
「おまえはなにも食べないのか?」
 青い巨体を見上げて(俺も上背はあるほうだが、ウォーマシンには敵わん)そう尋ねると、フライディは自分の顔を指さした。
「食べないんじゃなくて、食べられないんだよ。ほら、飯を食う口がねえだろ?」
 ふむ。確かに口がない。鼻もない。顔面の大部分は水色のモニターのようなものに占められている。人間の目に相当する部位だろうか?
「さっさとフケて、一人で夜空の散歩と洒落込みたいところだが……せっかくの宴を無下にもできねえやな。飲み食い以外のことで楽しむとするか」
 フライディは立ち上がり、口のない顔を巡らせた。
 そして、歩き出した。お目当てのものを見つけたらしい。
「ちょっと勝負してくるぜ!」
 ……なんの勝負だ?

●マクシムス・ルイス(賢い動物のレトロウィザード・f28856)
 楽しそうに騒いでる人々を眺めつつ、マックスにブラッシングしてもらいながら、干し肉をがじがじ。
 この噛み応え、たまりませんね。
 アルのブラシも、たまりません。
 幸せというのは、こういうことを言うのでしょう。
 しかし――
「それを食べ終わったら、すぐに帰るぞ」
 ――ブラシを動かし続けながら、アルは非情極まりない言葉をぶつけてきました。
「地雷探知の訓練が待っているんだからな」
 やれやれ。幸せの半分(ブラッシング)をもたらしている当人が幸せに水を差してどうするんですか。残りの半分(干し肉)はゆっくり時間をかけてがじがじしましょう。せめてもの抵抗です。
「私としては、地雷探知よりも犬ゾリの訓練のほうがいいですね」
「犬ゾリ?」
「ええ。そっちのほうが絶対に楽しいですよ。いつか、犬ゾリレースに参加してみたいですし……」
「ふむ」
 おや? アルは満更でもなさそうです。なんでも言ってみるもんですね。
「では、犬ゾリの訓練もしてみるか」
 いやいやいやいや。『犬ゾリの訓練も』じゃなくて『犬ゾリの訓練だけ』でいいんですよ。意地でも訓練メニューから地雷探知を外さないつもりですね。
「さあ! 皆さん、お待ちかね!」
 訓練の方針についてアルに意見しようとした矢先、元気いっぱいな声がゾールに響きました。
 言うまでもないと思いますが、声の主はニィナです。
「ん? べつに待ちかねてない? でも、待っていようが、待っていまいが、にぃなちゃんは歌っちゃうよー!」
 そう宣言して、ニィナは歌い始めました。ちなみに伴奏つきです。演奏しているのは彼女自身。肩からかけた鍵盤型の楽器に指を走らせています。
 歌も演奏も実に力強いですね。これは人間たちが『ヘヴィーメタル』と呼ぶ音楽でしょうか? どのあたりがヘヴィーで、どのあたりがメタルなのかは私にはよく判りませんが、住民の方々には大好評。手拍子をしたり、足踏みをしたり、食器などを叩いて伴奏に加わったりしています。
 それにしても、ニィナは多芸ですね。マルガリートカへの帰路でも、彼女は大活躍したんですよ。宇宙バイクに物資を山と積み上げ、倒れないように巧みにバランスを取りながら、砂漠を颯爽と駆け抜けていったんです。宇宙バイクというのは実に速い乗り物ですね。機会があったら、乗ってみたいです。
「ダンスもいってみよー!」
 間奏部に入ると、ニィナは踊り出しました。鍵盤から手を離しているにもかかわらず、音楽は途切れていません。自動演奏の機能が備わっているようですね。
 住民の方々もニィナに合わせて踊っています。とはいえ、全員ではありません。他のことに夢中になっている人たちもいますよ。
 たとえば、あちらのほうで――
「かぁー! また、負けた!」
 ――頭を抱えて叫んでいるフライディや、その周囲にいる子供たちですね。
「『勝負』というのはアレのことか……」
 少しばかり呆れたような顔をして、アルがフライディのほうに目を向けました。
「なぁなぁ、もう一回! もう一回、頼む!」
 正面に座っている少年を拝み倒すフライディ。両者の間には何枚ものカードが置かれています。
 どうやら、カードゲームの『勝負』をしているようですね。

●フライディ・ネイバー(ウォーマシンのスカイダンサー・f28636)
 ガキンチョ相手のカードゲームだからといって、手を抜いたりはしねえ。電子頭脳をフル回転して、勝ちまくってやるぜぇ! ……と、気合いを入れて臨んだのに四連敗もしちまった。
 で、今は四回目のリターンマッチの真っ最中。しかし、こっちが圧され気味なんだよな。
 言っておくが、俺が弱すぎるってわけじゃねえぞ。だからといって、対戦相手が強すぎるってわけもでない。ただ、人数が多すぎるんだ。一対一の勝負のはずなのに、周りにいるガキンチョ仲間どもが対戦相手にあれこれとアバドイスしたり、俺に揺さぶりをかけてきやがったりするんだよ。
 いや、ガキンチョ仲間だけじゃなくて――
「このカードは温存すべき。今はそっちのカードで様子を見たほうがいい」
 ――ってな具合にアヤメも協力してんだ。裏切り者め。
「こら、アヤメ! なんで、ガキンチョどもの参謀役をやってんだよぉ!」
「だって、頼まれたから……」
 おいおい。クールに見えて、実はガキンチョに弱いタイプかよ?
 いや、つい忘れそうになっちまうけど、アヤメ自身も『ガキンチョ』と言って差し支えない年齢なんだよな。こうして見ると、包帯だらけな上に厳つい武装をしているにもかかわらず、ガキンチョ集団に溶け込んでいるような気がする。
 おっと、いけねえ! オヤジ目線になっちまったぜ。今はゲームに集中しよう。五連敗は御免だからな。
 絶対に勝つぞぉーっ!

「勝ったぁーっ!」
 勝利の雄叫びをあげたのは俺じゃなくて、対戦相手のガキンチョのほうだ。ガキンチョ仲間どもは拍手喝采。アヤメも無表情で拍手してやがる。
 この騒ぎを聞きつけて、歌と踊りを終えたニィナがやってきた。
「なになに? フライディ、負けちゃったのぉ?」
「うん。五連敗よ」
 余計なことを教えてんじゃねえよ、アヤメ。
 あっちのほうでアレックスとマックスもニヤニヤと笑ってやがる。いや、マックスは犬だから、笑ってねえか……と、思ったら、尻尾をめっちゃ振ってるし。そんなに可笑しいか?
「もう、やめやめ! やっぱ、ちょいと夜空を飛んでくらぁ」
 五連勝に沸くガキンチョどもを残して、俺はそこから立ち去った。
 そして、フライング・ベットを起動し――
「あ、ちょい!」
 ――飛び立としたんだが、ブースターが火を噴く寸前に停止させた。
 コック帽の旦那を見かけたからだ。
「えーっと、チー? チャー? ……チャイニクだっけ? これ、渡しとくわ」
 俺が旦那に差し出したのは、そこそこ状態のいいハンディカム。コンテナの中で見つけたんだ。
「こりゃどうも……」
 旦那はハンディカムを受け取ったが、きょとんとした顔をしている。突然の贈り物に戸惑っているようだな。
「ここ数日の間に空から見た気になる景色とか、この周辺の景色を俺の記憶データから移しといた。役に立つかどうかは判らねえけどよ。まあ、この出会いを記念して、もらってくれや」
「おう」
 と、旦那は頷いた。表情はもう『きょとん』じゃなくなってる。
 俺は旦那にサムズアップした後、フライング・ベットを再起動し――
「じゃあな!」
 ――今度こそ飛び立った。
 まだまだ捨てたもんじゃない世界の空に。
 捨てる要素なんて一つも無い最高の空に。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月18日


挿絵イラスト