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腐らない骸の救い

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●逢魔
 霧の立ち込めるその場所。明け方なのか、はたまた夕暮れなのか。薄い闇と仄かな光。反する二つが混在し、その境目を霧がぼかし馴染ませていた。
 柔らかな土から生えるのは、交差させた簡素な板。時に傾き、時に石造りで。静かに佇むそれは、その場所がとある村の集合墓地であることを示していた。

 昼と夜の境の世界で、踊る異形の影があった。声も無く、歌も無く、溶けるようにその揺らめく体を振るわせている。
 それに向かい合い、話しかける姿があった。かしこまった口調だが、声からすると若い男だろうか。
「――なるほど」「――はい」「――ではそのように」
 少し離れた場所には、その対話を見つめる者達の影があった。時に十字架に寄りかかり、時に墓石に座り。仲間内にだけ聞こえる小声で、こちらは砕けた口調で話す。同じく若い男のようだ。
「しかしアイツ、よく分かるな」「大将喋らないもんなぁ」「俺にゃさっぱりだ」
 しばらくすると、対話していた男がその集団に近付き加わった。後ろにはもう、踊る異形の影はない。
「で、どうだったんだ」「大将今度は何やれって」
 呼ばれた男は、今度は仲間のそれと同じく、やや砕けた口調になって応えた。
「あー……あれは私も何言ってるか全然解らなかったから、適当に相槌打ってたんだ。お等も遠目から見ていたようだから聞きに来たんだ。大将の今回の指示、何だと思う?」
 霧の立ち込めるその場所。大の男が集まっているにしては、静かすぎる時が流れた。

●腐らない死体
「みんな、集まってくれてありがとう。ダークセイヴァー世界で事件発生だよ」
 手の平に出現させたグリモアをくるくると回転させていた仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)は、集まった猟兵達に向き直ると胸に手を当て姿勢を正した。
「ある村で腐らない死体の大量発生、という怪事件が起こっているんだ。今回はその解決に尽力してほしい」

 そのある村とはダークセイヴァー世界の例にもれず、領主の圧制に耐えながらもなんとか細々と人々が生きている村だった。もともと苦しんでいた村に、更に事件というわけだ。
「ある日を境に、突然死する人が連日出るようになってしまったんだ。ついに埋葬作業が間に合わなくなるほどにね。そこで遺族の家ではお葬式の後、新しいお墓を掘るまでの間、もうしばらく遺体を預かることになったのだけれど――」
 通常、ダークセイヴァー世界では三日もすると遺体が腐り始めるそうだ。ところがその突然死事件の遺体は、一週間を過ぎても綺麗なままであった。まるで、今も生きているかように。
「よくよく調べたところ、亡くなったと思われていた人達は、実は生きていたんだ。脈も呼吸もとてもゆっくりになっていて、少し診ただけでは分からないほどに」
 でも、生きているからと言って楽観視はしていられない、とグリモア猟兵は続ける。
「彼等が死んだように目覚めないのは確かだからね。そのまま飲まず食わずでは衰弱は免れないし、寝返りも打たず眠り続けたら、体重のかかった体の箇所は壊死していってしまう」
 そして遂には――。みなまで言わずとも、といったところか。
「また、事の発端になったと思われる突然死も起こり続けているんだ。両方が無関係とは思えない。このままでは、村がまるごとお墓になってしまうよ。僕等で止めないとね」

●音楽隊
「恐らく、怪事件に関わっているのはオブリビオンだろうね。腐らない死体事件に前後して、村では少し変わったことが起きているんだ。みんなにはまず、それを追って欲しい」
 霧の立ち込める夜、村をねり歩くようにして、どこからか曲が聞こえるようになったらしい。
「流れの吟遊詩人と思われているようだけれど、人も集まらない時刻にわざわざ演奏するなんて不自然だよ。これが事件解決の手掛かりになると思うよ」
 予知で聴こえてきた曲は様々だという。
「そして使っている楽器は……これは何なんだろう。和音を弾いてるね。笛の音に琴の音? それに、ワンワン、ニャーニャー、コケコッコー」
 おいこのグリモア猟兵バグったぞ。
「ごめんごめん。音楽には疎いからヒントにならないね。暫定この"音楽隊"の正体と、どこから来ているのかを突き止めよう」
 暫定音楽隊の捕まえ方は様々だろう。
「待ち伏せをして音が聞こえて来たら追い駆けるもよし。音楽が得意ならこちらから演奏すれば近付いてくるかもしれない。あとは……動物の鳴き真似でもしてみる?」
 謎の多い事件だ。有効だと思われる方法はいくらでも試してみることだ。

 三つ揃えのスーツを正し、柔和な顔を向けて衣吹が微笑む。
「それじゃ、みんなのこと頼りにしてるよ。よろしくね」


小風
 小風(こかぜ)です。
 四作目はダークセイヴァーです。よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『闇夜に訪れる音楽隊』

POW   :    肉体言語。犯人を捕まえるのに小細工はいらない。

SPD   :    音楽や歌で相手の注意を引く。

WIZ   :    罠を用意。疑似餌だったり、他の動物だったり、種類は色々。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 音楽が聞こえる。
 時に寂しく、時に優しく。
 こんな寂れた町に、どこの酔狂者だろう。 
 子守歌のように、鎮魂歌のように。
 わずかな癒しと慰めを求めて耳を傾ければ――もう、残酷な朝を迎えることはない。
彼岸花・司狼
ブレーメンの音楽隊でも出たのか…?
まぁ、考えるのはあとでも出来る。
なんであれ倒すし、今はわからないなら考えても仕方がない、か

UCで一部の狼を放ち、周囲を探る。
基本は【聞き耳】で怪しい場所を探り、何か見つけたら【動物会話】で報告させるように。
ただ、住民に余計な不安を抱かせぬように吠えることは抑えておく。

ロバらしい鳴き声って実際どんなんだろうな?
全く痕跡を探れず空振りした場合に、物は試し、と
ダメで元々、ロバの鳴き真似でもしてみよう。


アルト・カントリック
【SPD】
音楽隊……?

分からない事の方が多いな。ここは慎重に行こう。でも……大胆にね。

“音楽隊”とやらが気付くように【仔竜の角笛】を吹くよ。でも、吹きながら待つだけじゃ無防備になってしまうからね。相手の正体が分からない以上、

ユーベルコード【スカイステッパー】で空を飛んで、【サイバーアイ】でこちらが先に、目視で確認できるようにしたいな。もしくは、見られないように避けるか……かな。

……わんわん、にゃーにゃー、こけこっこー、というと“とある音楽隊”のシルエットが浮かぶけど……多分、違うよね?尚更、自分の目で確かめないといけない気になるね。


ラナキューラ・ワルキリア
アレンジは大歓迎です

目的:歌って人形を踊らせ、相手の注意を引く
やること:人形遣いで人形を踊らせながら、シンフォニアの歌声を披露

人形芸人と名乗って、村の片隅で歌いますわ
ちゃんと村の人から許可をもらいたいですが、ダンピールと知られたら怖がれてしまうのかしら
村に来る前に仮面を買って、目を隠して行きます

場所がもらえたら、『シンフォニックデバイス』で遠くまで歌声を響かせながら、【シンフォニック・キュア】を使いますわ
歌声が届く範囲、すべての心を少しでも癒していきたいと祈りを込めます
その間、『からくり人形』を軽やかに踊らせながら、何かあったときに盾にできるようにしますわ
…お父様も、こんなことをしてたのかしら


ナナ・モーリオン
SPD

……墓所。
良く見知った場所。
その筈なのに、何かが、歪んでる……?誰が、歪ませてる……?

石笛を吹きながら、お散歩。
その『音楽隊』が元凶かは、解らないけど……何がしたいんだろう。

もしかしたら、狙われるかもしれないし……【野生の勘】で、警戒は欠かさずに。
逆に、隠れて逃げるような何かがいるなら、【暗視】を効かせて【追跡】だね。

ヒトは、疲れたら死んで眠るんだ。
疲れてないのに眠らされるのも、疲れてるのに起こされるのも、良くないことだから。
ボクらが、正さないと。




 昼でも常に厚い雲に覆われ薄暗いダークセイヴァー世界だが、現在は時刻も深夜。
 姿なく、遥か地平をなぞっていた僅かな太陽も沈み、真の闇夜が訪れる刻限だ。
 天頂彼方、雲間に隠れながら、弱々しく輝き欠けゆく月明かりだけが頼り。
 深まるそれらに屈するように静まる動植物、村人の寝息を感じながら猟兵は展開する。

●狼と角笛
「わんわん、にゃーにゃー、こけこっこー、というと」
「あの音楽隊でも出たのか……?」
 脱走し一致協力して新生活を切り開いた動物達の物語を思い出ているのは、アルト・カントリックと彼岸花・司狼。
 その名を冠するも目的地は遠すぎて、彼等は辿り着けなかったわけだが。
「ロバが足りないだろロバが」
「……ロバってどんな鳴き声なんだい?」
 アルトに問われれば、司狼は少し考えた後、披露する。
「~~~~!!」
「えーーーーっ!?」
 馬とは言えず山羊とも違う。訴え掛けるような物悲しいその鳴き声は、とても書き表すことが出来ない。
「まぁ、考えるのはあとでも出来る。なんであれ倒すし、今はわからないなら考えても仕方がない、か。――狩りは終わらない、ヒトが『ワレラ』を必要とする限り」
 司狼が自身のユーベルコード・封印と解放を発動させ、一部の狼を周囲の偵察に放つ。
「尚更、自分の目で確かめないといけない気になるね。ここは慎重に行こう。でも……大胆にね」
 アルトは自身の持つ仔竜の角笛を取り出す。奏で聴いた相手を誘き出す作戦だ。
 それぞれの策を抱き、二人は闇夜の村へ歩を進める。

 先行した司狼の狼達はその嗅覚と聴力をもって怪しい場所を探り始め、そして捉えた。複数の動物が一度に移動している、その鳴き声と足音を。
 住民に余計な不安を抱かせぬよう、咆哮はしない。動物会話を駆使する司狼は、人間には聞こえず狼同士でしか通じない高音の会話を聞き取ると、護衛の狼達を引き連れてそちらへ向かった。
 村に今、狼の群れが入り込んでいることに気付いているのだろう。猫、それに犬が不安気に激しく鳴き続けている。それらが揃って移動しているのは、胸の高さに抱えて歩く人影があるからだ。突然鳴き出した動物達をなだめるように撫で、赤子のように揺らして歩きながら、人影はどこかを目指す。
 村人だろうか。動きがあるまで、司狼はその人影を尾行する。

 角笛を吹きながらアルトは村をゆっくり歩き回る。どんなに凶暴で、機嫌が悪くても、音色を聞けば心が弾む、仔竜の角からできた笛。人間より耳の良い動物には効果的だ。
 しばらく歩き回ったところで、足元にもふりと絡みつく感覚が走った。見ると、野良猫だろうか。人懐っこく足に体を摺りつけている。
 笛の音で寄って来たのだな。アルトは屈み、人好きの猫をそっと撫でてやる。
 そして、気付く。その猫の毛並みが、良過ぎることに。艶やかな体毛の流れに沿って背中も撫でてやれば、骨は触れるが痩せ細ってはいない。はたしてこの村の猫だろうか。
 刹那近付いてくる足音に気付き、アルトはスカイステッパーで上空へ跳ぶ。相手に気付かれず目視出来る高さを保ち、やや霧がかって来たがサイバーアイを用いて分析を行う。

 人影は空を見上げる一匹の猫へ近付いた。飼い主だろうか。側に屈むと手を伸ばす。
 断言は出来ない。しかし僅かな違和感を感じる。違っていたら……後で謝ろう。「行け!」
「すみません!」
 司狼は人影に向けて狼を走らせ、アルトは空中を蹴るのを止めて人影に重なるように降下する。両者が人影に触れようとした瞬間、――それは犬猫の姿に分かれて弾け飛んだ。
「!?」
「うわぁ!!?」
 驚きつつも踏み潰さないように、再度ステップを踏み上空へ跳ぶアルト。そんなアルトを避けるように横っ飛びに避ける狼。
「人が分裂した!?」
「いや、これはアイツが抱えていた動物達だ」
 素早く周囲を見渡す司狼。もうあの人影は見当たらないが、まだ遠くへは行っていないはずだ。
「俺はもう少し探ってみる」
 狼の一部を再び周囲の偵察へと向かわせ、自身も霧の中へと向かう司狼。
 地に降り立ったアルトの側には、不安気に鳴く犬と猫が残された。
「大丈夫だよ」
 アルトは再び角笛を吹き、取り残された動物達を落ち着かせていった。

●歌とからくり
 闇夜の村の片隅で静かに、けれどその声が優しく響き渡るように歌うのはラナキューラ・ワルキリア。
 闇に溶けるように、しかしどこまでも遠く癒しを届けるように歌声を響かせる。
 ダンピールと知られたら怖がられてしまうかもしれないと仮面で目元を隠し、歌に合わせてふわりと人形を踊らせて人形芸人に扮する。領主の圧制に怪事件が続く村人の心を少しでも癒したいと、そのシンフォニック・キュアに祈りを込めて。
 ……お父様も、こんなことをしてたのかしら。
 ヴァンパイアである父を思い感傷に浸りそうになったそんな時、声が掛かる。
「お上手ね。お嬢さん」
 はっとして振り向くと、道沿いの一軒家。少し開けられた窓から老婆が話しかけていた。姿勢からすると、窓際のベッドと枕にもたれて座っているようだ。
「ごめんなさいね、びっくりさせちゃって。素敵な歌声だったもので」
 そう言って老婆は穏やかに笑う。
 村人から直接話を聞けるかもしれない。窓際へ歩み寄りラナキューラはまずお礼と、静かにお喋りの相手を務める。
「最近もよく奏者さんが立ち寄っているのよ。真夜中だからか怖がる人もいるみたいだけれど。私は遠くから聴いただけだから、いつかこの近くにも来ないかしらと思って待っているの」
 老婆は好奇心旺盛だが、村人は突然死と音楽隊を、薄々関連付け始めているようだ。
 貴重な情報のお礼にと、ラナキューラは歌と人形の踊りを目の前で披露する。嬉しそうに自分の為の劇に見入る老婆。

 するとそこに……一匹の蝶が、ひらりと舞い踊った。
 闇夜でもはっきりと分かる、仄かに光る紫の蝶。
 気付いた時には開かれた窓の隙間からするりと入り込み、老婆の髪に留まって消えた。
「……あら……ごめんなさいね…………もう……眠いわ…………」
 窓も閉めず、ベッドへ寄り掛かるようにして目を閉じた老婆。
 不思議な蝶に突然の眠り。
 まさかこれが、と急いで後ろを振り返るラナキューラ。そして気付く。
 村にはいつの間にか濃厚な霧が立ち込め、辺り一面を白く塗りつぶしていることに。
 風に吹かれて薄くなるそれは何者かの影のようで、こちらを見つめているような感覚に襲われる。
「情報を……持ち帰らなくては……」
 踊るからくり人形を隙なく操り盾としながら、ラナキューラは霧を抜け風上へと走る。

●墓と人形
 村の隅に作られた墓場。その中に不思議と馴染んで立っているのはナナ・モーリオン。
 眠れる森の代理人形にとって、そこはよく見知った場所であった。
 石笛を吹きながら辺りを一周したところで、しかしとナナは違和感を覚える。
「何かが、歪んでる……? 誰が、歪ませてる……?」
 予知で話された共同墓地。けれどこの場はそれとはあまりに印象が違う。
 墓標はどれも真っ直ぐ立った石造り。通路の土も柔らかい箇所があり、人が踏み固めたにしても日が浅い。それどころか掘り途中の墓穴もいたる所に開いたままだ。
「どれも新しい墓所……だよね」
 想像したのはもっと古く広い墓地だ。はたして何カ所もあるものだろうか。
「!!」
 自分の野生の勘のもと、ナナは急いで体勢を低くし、開いている墓穴へ滑るように入り込んだ。ゴシックな色合いの衣装も相俟って、見つかり難いはずではある。
 そろりと顔を覗かせ周囲を窺うこと暫し。聴こえて来た、儚げな音色が。
 暗視を利かせても遠く影しか見えない。しかし追跡には支障ない。
 そろりと墓穴を抜け出すと、ナナは一定の距離を保ったまま追い始める。

「ヒトは、疲れたら死んで眠るんだ。疲れてないのに眠らされるのも、疲れてるのに起こされるのも、良くないことだから。ボクらが、正さないと」
 影は和音を響かせながら、寝静まる村の中へと入って行った。周囲は民家となり木々が遮らない。見通しのよくなったところで再度影を見つめ、ナナはやはりと確信する。
 音楽隊は、一人だ。
 しかし後を追う形となったので、その楽器までは分からない。幸い村の道は入り組んでいない。先回りして確かめるかと思案していた、その時。
『――君は誰だい?』
 自分の耳の高さ、すぐ近くで、冷たい声に問いかけられた。
 咄嗟に飛び退くナナ。しかし、そこには誰もいない。
 すぐに一人の音楽隊へ視線を戻すが、そこにももう誰もおらず音色も聞こえない。
「これ以上は、追えないね」
 夜が明ける前に、狙われる前に、ナナはテレポート位置へと急ぐ。
 月は輝きを失い白くなり、東の空は夜のヴェールを脱ぎ始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


 一夜目の情報をもとに、再び闇夜降り立つ猟兵。
 時刻は深夜――のはずだが、何故か村の中にいくつかの動く姿が見える。
 農具、もしくはそれを改造したものを手にした村人のようだ。
 彼等も事件と音楽隊の関連を疑っている様子であった。
 捕まえようと動き出したのだろう。
 しかし、相手は恐らくオブリビオン。敵うはずのない相手である。
 今村へ行けば自分達も怪しい者だと思われて襲われるかもしれない。
 それどころか、あの村人達の前に音楽隊が出現したら。
 猟兵は村人への対応も考えながら、調査を続ける必要に迫られた。
「心配しなくてもやることは変わらないよ。音楽が聞こえて来たら追い駆ける、今夜は村人よりも早く追いつく工夫が必要かな。音楽が得意なら演奏、上手すれば捕まえようとする村人から直接話を聞けるかもね。動物の鳴き声で村人の家畜やペットだと思わせて気を引き――罠を仕掛けて捕まえちゃう? 警備が手薄になれば僕達も動き易いからね」
 大変そうだけど頑張ってねと見送られながら、猟兵は村へと向かった。
水心子・静柄
さてと…墓所が怪しいのかしらね?こう情報が少ないと第六感と野生の勘を働かせながらあるき回るしかないわね。とりあえず近寄ってくるものには片っ端から恫喝というなの恐喝を使って「あなたはこの事件の元凶を知ってるかしら?」と質問するわ。知らなくてもいいし、知っててもそれは本人にとっての真実であって事実じゃないかもしれないけど、何かしら隠し事をしている人に出会えるかもしれないわ。隠し事した人はもっとよくお話をしましょうね。まぁ出会えなくても、そんな人はいなかったというのはわかるから無駄ではないはずよね。シンプルに私は怪しいですっていう人がいると楽なんでしょうけどね。



「さてと……墓所が怪しいのかしらね? こう情報が少ないと勘を働かせながらあるき回るしかないわね」
 舞台衣装のような黒く重厚な服を身に纏い、夜の村を行くのは水心子・静柄。
 報告で聞いた墓場に立ち寄った後、第六感と野生の勘が示すままに歩を進めている。世界の加護を受けた猟兵は住民に違和感を与えない。が、見ず知らずの者が警戒態勢中の村を歩き回っているという妖しさは消せない。通りを警備していたのであろう、改造した鍬を持った中年の男から声が掛かる。
「おい、ちょっとアンタ――」
 しかし男はすぐに射すくめられることになる。より新月に近付いた月影の下でも分かるほど、静柄の眼光が冷たく鋭かったから。
「あなたはこの事件の元凶を知ってるかしら?」
「な!? 何のことだ!?」
 ユーベルコード恫喝というなの恐喝に当てられたその男は、驚きはしたものの損傷を受けた様子はない。では腐らない死体の原因は? 音楽隊の正体は? 続けざまに詳しい質問を投げるものの、男は依然として困惑するのみだ。どうやら本当に知らないらしい。

 何も知らないということが分かった。決して無駄ではない情報を得た静柄がそのまま通りを進もうとしたところへ、男の手が伸びる。
「イヤちょっと待てアンタ! 何者だ!」
 引き留めようとしたそれは、しかし静柄を捕らえることはなかった。それどころか逆に捕まれ、体重の乗った方の足を蹴られながら引き倒された。
「うわぁ!!」
「先に仕掛けて来たのはそっちよ。当然じゃない」
 村人と猟兵の差はあれど、異様に軽かった男の体。やはり圧政下の村であるからか。しかし男は立ち上がると再び静柄と対峙する。
「真夜中にこんな辺鄙な村訪れる奴が何人もいてたまるか。オレの妻だって変に何日も起きなくなっちまっただけで死んでる扱いだ。アンタこそ何か知ってるんだろ。これ以上の面倒ごとはごめんだ!」
 屈するではなく行動を起こす。見上げた根性だが敵の正体も分かってない以上、彼らに分は無いだろう。しばらく黙って見つめていた静柄だが、思い出したように再び技発動の為に眼を飛ばす。
「あなたは墓所の場所を知っているかしら? 後ろにある新しいのじゃない。もっと古くて広い方よ」
 再びの質問に訝しんだ男だったが、すぐにハッとして静柄の進行方向、己の後ろを振り返る。それにしても一度もダメージを食らわない、正直な男である。
「そっちね」
 再び止めようとした男だが、すぐに静柄に睨まれたじろいだ。やはりオブリビオンを相手取るには心もとない。
「それじゃあひとつだけ教えてあげるわ。気を付けなきゃいけないのは見える者じゃない、消える男よ。――その古い墓にもしばらく近付かないことね」
 敵なのか? 味方なのか? 判断がつかない。そんな表情を浮かべる男の横を通り過ぎ、静柄は夜の村を進む。反骨精神あふれる彼らに事件を任せるのは、元凶を倒した後だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

プラシオライト・エターナルバド
村人たちへ
アメグリーンの回復薬を渡します
長く眠りに付いている方に
飲ませて差し上げて下さい
目覚める事は難しいかもしれませんが
少なからず体力は回復出来るはずです
お望みなら毒味も致しましょう

私と仲間が必ず犯人を捕まえます
皆様はどうかお待ちになっていて下さい
それでも信用していただけないなら
クリスタライズで姿を眩ませます
どうか、不思議な力を使える私達にお任せ下さい

第六感を働かせて捜索
蝶と霧には注意

古い墓地を中心に警戒
音楽が聞こえたら
クリスタライズで透明化
音楽隊への接近を試みる
静かに急いで…音を立てずに

念動力で透明なトリックスターを操って捕縛
分裂にも注意、個々で縛る
優先は中央の人物

アドリブ歓迎



「長く眠りに付いている方に、飲ませて差し上げて下さい。目覚める事は難しいかもしれませんが、少なからず体力は回復出来るはずです」
 古い墓地を探す中、警備する村人達へ手製のアメグリーンの回復薬を渡してゆくのはプラシオライト・エターナルバド。
 お望みなら毒味も致しましょうと申し出れば、警戒態勢の中でも受け取る者が多いところから、その被害の数が推し量れる。
「私と仲間が必ず犯人を捕まえます。皆様はどうかお待ちになっていて下さい」
 完全に信用されたわけではないだろう。しかし遠巻きに警戒されながらも、村を歩き回れている。第六感を頼りに村を巡れば、同じく墓地の場所を聞き込みしている猟兵に会い方角も分かった。
 辿り着いたのは村の外れ。薪を燃料とする為に森を切り開き、跡地を畑とした場所だ。その向こうには僅かな明かりも灯らず、地の闇がそのまま立ち上がったかのような木々の影が遠く連なっている。
 古い墓場はそう遠くないはずだ。しかし村の中ならともかく、夜中に勘を頼りに探し出すには広大過ぎる。
 躊躇するプラシオライトを助けたのは、なんと"向こう"からだ。

『わざわざ手間をかけていたのはね、どうやら大将が手荒な方法を望んでいなかったからなんだ』
 突然自分へ話しかける男の声。音色は聴こえない、姿は見えない、だが遠巻きの村人では在り得ないその距離。
 ――"音楽隊"だ。
 瞬時にクリスタライズを発動しその場を離れるプラシオライト。
『本当は窓や扉を少し開けてくれるだけで良かったんだ。――君達がこんなに沢山引き連れて来てくれたこと、感謝するよ』
 二言目が発される時にはもう己の武器であるワイヤー、トリックスターを投げていた。
 確かな手応え、だが人にしては妙に軽い。声の発される方向から引き寄せられたそれは、プラシオライトの手の中で可視化されてゆく。
 一抱えほどある木製の箱。横には帯と回せる取っ手が付いており、等間隔に穴の空いた紙が挟まっている。紙巻きオルゴール……いや、手回しオルガンだ。
『嗚呼、手間が省けた』

 その言葉と同時に、森の方角から細い光が伸びて来た。
 ともすれば夜に溶けそうな紫の光を纏った、蝶の群れ。
 一列に連なったそれは村に着くなり四方へ飛んで行き――警備に当たっていた村人の頭へと留まってゆく。
 目の前で崩れ落ち、唐突な眠りにつく村人達。
 助けたい――が、この機を逃すわけにはいかない。
「蝶に捕まらないように! 家の中へ逃げて下さい!」
 せめて一言だけと叫んでオルガンを置き、透明なプラシオライトは走る。
 蝶で作られたその光の道が消える前に、その発生地へと。
 上空を舞うその数は、これから目覚めなくなる村人の数だ。
 戻ってひとつ残らず叩き落したい。
 仲間がその役を担っていることを願い、自分は幻想の光を頼りにその先を目指す。

 最後の一匹が飛び去る前に、辿り着けた。
 周囲は切り開かれた畑が広がる中、村を見守るように残された場所。目隠しのように、空近く食むように黒い枝葉を伸ばす木々が残っている、その小山を。
 ここが、墓だ。
 クリスタライズの疲労も相俟って、その場にしゃがみ込むプラシオライト。
 警備警戒中だったはずの村は朝を迎えても、とても静かだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『オーバースト・フックス』

POW   :    ツヴァイ・クラールハイト
自身と自身の装備、【己の分身】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    ブルート・イルズィオーン
【流し目】から【紅光】を放ち、【血まみれの臓物に縛られる幻覚】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    フェアエンデルング・シュヴェールト
【血をすすり形状を変える吸血牙の剣】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 三度目の夜を迎える。
 静まり返った村を抜け、辿り着いたのは黒い針葉樹が生い茂り、村を見守る小高い山。
 猟兵は暗く今にも草木に覆われてしまいそうな山道を登る。
 進む度に空に近付き霧が濃くなる。紫の蝶が自分を見つめ舞い飛ぶのを無視して歩く。
 そうして頂に着くと唐突に、周りを取り囲んでいた木々がなくなり開けた場所に出た。
 代わりに地面から生えるのは古い墓標の数々。予知で話され、探し求めた地だ。

『やはり、邪魔をしに来ましたね、猟兵』
 突然聞こえる男の声。霧が固まり人影となるようにしてそこに現れた。細剣と籠手を持つ騎士のようだ。
『あの村人を目覚めさせようってのかい? 止せよ、何も変わらない』
 別の場所の霧が収束し、二人目の人影となる。ゴールデンブロンドの髪だ。
『彼等が本当に苦しんでいるのは人が起きないことじゃない。昼間の圧制さ』
 また人影が増える。青紫色の目だ。
『もはやその力関係は覆らない。領主が退いても、そこに納まるのは人類じゃない。別のヴァンパイアだ』
 四人目の人影。それは――いや、今までの全員が、同じ特徴を持っている。鏡写しのように同じ男だ。

『これは救いだ。彼等は一刻も早い解放を望んでいる。邪魔をする者は――』
 不意に景色が揺らめき、霧が黒く色付いた。
 否、墓場を埋め尽くさんばかりに、あのヴァンパイア剣士が分身したのだ。
『このオーバースト・フックスが、退ける!』
ラナキューラ・ワルキリア
【SPD】
アレンジは大歓迎です
同じ吸血鬼の半端者同士、どうか無様なりに美しく踊ってもらいましょうか!

わたくしの『からくり人形』を起動して、わたくしの代わりに戦ってもらいますわ
幻覚に対しては、ユーベルコードを使用して人形を身代わりにします
お父様がわたくしそっくりに作らせたという、わたくしの人形
同じような服を着せた人形を操り、わたくしへの攻撃をうまくいなさせますわ
踊れ踊れ、わたくしの人形
わたくしと同じ姿に鋳造された、その意義を果たしなさい!
この村には静かな夜と、暖かく賑やかな朝が似合いなのです
例えダンピールの体では、同じように朝日を浴びられないとしても……あのおばあ様と、また朝にお話したいから!



「同じ吸血鬼の半端者同士、どうか無様なりに美しく踊ってもらいましょうか!」
 霧の立ち込める舞台へ、まず降り立ったのはラナキューラ。
 その全身白で揃えられた出で立ちが二つ。片方は自分とそっくりに作られたからくり人形である。
『半端者? ……あぁ、君はダンピールなのかい。残念ながら、僕はいくら分身しようとヴァンパイア。半分になるわけじゃないんだよ』
 対するオーバーストの同じ姿は二つ以上。目の前だけでも十体はいる。それらが音もなく細剣を抜き、切っ先を全てラナキューラへ向ける。
『それでも僕に縁を感じて競技ダンスをご所望なら――心得はあるかい?』
「そちらこそ、素養はありまして?」
 傀儡達による舞踏会が、曲も無く幕を開けた。

 フロアを縦横無尽に舞い踊るように、ラナキューラと等身大のからくりは走り回る。時に白刃を躱し、時にそれを迎え撃ち。ヴァンパイアの父に作られたふたつは武器と操者となって、黒い人影の中で白いステップを紡いでゆく。
「踊れ踊れ、わたくしの人形。わたくしと同じ姿に鋳造された、その意義を果たしなさい!」
 幻覚の紅光がその歩みを止めんと襲えば、依代たる人形がそれを受け止める。主に当たり倒れんとすれば、その呪詛を吸い取りからくりが反撃に用いる。盾となり剣となり、ラナキューラとその似姿のダンスは続く。
「この村には静かな夜と、暖かく賑やかな朝が似合いなのです」
 姿は墓場を彷徨う幽鬼のように。しかし繰り広げる攻防は情熱に揺らめく炎のように。
「例えダンピールの体では、同じように朝日を浴びられないとしても……あのおばあ様と、また朝にお話したいから!」
 焼けるように熱いパッションを胸に灯し、霧のヴェールを纏った半魔半人は靴音で神殺しのタンゴを奏でる。

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗
成程、一理ある
お前のエゴは、ダークセイヴァーならば正しいだろう
増してや、お前がオブリビオンならば尚更な
なら、俺は俺のエゴを貫き通させて貰う
…俺のエゴ?
簡単だ。お前が言っている解放を違う形でくれてやるってだけの話しさ
例え、それがほんの僅かな間でしかなくても、お前達の支配を望まない人々はいるみたいだからな
だから……お前はさっさと消えろ
仲間との連携・声掛けOK
お前の流し目なんぞ此方から願い下げだ
先制攻撃、ダッシュで肉薄分身しようとした本体に対してUCを使用するよ
範囲攻撃、薙ぎ払いを交えた乱舞だ
たとえお前が幾ら分身しようとも意味は無い
防御は流し目を見切り、その視線を避けてカウンターするよ



「成程、一理ある。お前のエゴは、ダークセイヴァーならば正しいだろう。増してや、お前がオブリビオンならば尚更な」
 救いと解放だとの言葉に同意を示しながらも、隙なく刀を構えるのは北条・優希斗。
「なら、俺は俺のエゴを貫き通させて貰う」
『あなたのエゴ、ですか』
 対峙するオーバーストの一体が同じく細剣を半身で構えながら問いかける。
「簡単だ。お前が言っている解放を違う形でくれてやるってだけの話しさ。例え、それがほんの僅かな間でしかなくても、お前達の支配を望まない人々はいるみたいだからな」
 冷たい夜風が墓場の霧をたなびかせる。そのゆらめく影から現れるのは、優希斗を包囲するように布陣した、何体ものオーバーストだ。
「だから……お前はさっさと消えろ」
『とても残念です。救いを与えようとする志は同じなのに、対立してしまうなんて』
『けれど譲る気はありません。これは優しく儚いあの方の願いだから』
『牙たる我々は、ただその想いを守るのみ』
 口々に語り刃を向けるオーバースト隊。多勢に無勢である。
 そんな中で優希斗は、ゆっくりと息を吐き、目を閉じる。次にその目が開いた時、漆黒の瞳は朝凪のような静かさを湛えていた。

「躍るよ、蒼き月の舞を」
 刹那、それは霧の中へ溶けたように見えた。だがそうではないということに、オーバーストは己の身を切り刻む、信じられない速度の斬撃をもって知ることとなる。
 静からの目にも留まらぬ激しい動。優希斗のユーベルコード夢月蒼覇斬である。
 たまらず反撃を試みるオーバーストであったが。
「お前の流し目なんぞ此方から願い下げだ」
 ダッシュ、先制攻撃と、取得技能を余すところなく活かし、無心の高速乱舞に拍車をかける優希斗は止まらない。
 オーバーストが技を発動させる為には流し目……つまり相手を一度視界から外し再び捉えなければいけなかったが、この動作は超高速連続攻撃との相性が酷く悪い。視線を外した瞬間を見切られ肉薄され、悉く葬られていった。
「たとえお前が幾ら分身しようとも意味は無い」
 減った戦力を補充しようと距離を取るオーバースト。しかし優希斗はその懐へ一瞬で踏み込むと、範囲攻撃、薙ぎ払いを交えた乱舞を繰り出す。本体、そして分かれたばかりの身が一度に巻き込まれ、その被害は甚大であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティモシー・レンツ
オーバーブースト……ごめん、名前なんだっけ?(ちゃんと聞き取れてない)
ところで、人数多すぎない?全員同じ名前だと、区別付かないんじゃない?

生き埋めにされた人の敵討ちとして(濡れ衣)、占いカードの投げトランプをお見舞いするよ!
幻覚で縛られても実際にロープ的なものが出てきても、意識があれば錬成したカードは動かせるはず……じゃなかった。
『たまたま持ってた』占いカードは、魔力で操作するから、縛られても誘導できるんだよ?
(本体が水晶玉、と偽るために事実を嘘で隠す)



「オーバーブースト……ごめん、名前なんだっけ?」
 ヴァンパイア剣士の外国名を聞き取れなかったのはティモシー・レンツ。
 ところで人数多すぎない? 区別付かないんじゃない? と敵前で脱力した質問を繰り返すのは、肝が据わっているということだろうか。
「生き埋めにされた人の敵討ちとして、占いカードの投げトランプをお見舞いするよ!」
『人は遅かれ早かれ死ぬ運命。それが数年早かっただけで、目角を立てられてもねぇ』
 濡れ衣のつもりで発した言葉に、事も無げに返答するオーバースト。支配者種族としての言葉か、己が過去から甦った死者であるからか。その感覚は人類と酷くズレがある。
『"せめて最期は安らかなれ"。眠るように死ぬってのは、理想的なんじゃないのか?』
 細剣を向けられると同時に、記号の描かれた占いカードを一枚構えるティモシー。手首の捻りを利かせて投げたそれは、霧の流れを乱さず真っ直ぐ飛んで行った。

 断面を向け、線にしか見えない角度で飛んで来るカードを捉えるのは難しい。手の動作からその方向に予想を付けたオーバーストは、一歩横に踏み出しカードの刃を躱す。
『お前の武器はそれだけか』
「あれは"たまたま持ってた"占いカードだよ」
 そうか、と一言呟いたオーバーストの目が鮮やかな紅色へと変わる。それと同時にティモシーの視界も紅色の幕が掛かった世界へと変わる。
 幻覚だ。墓場の地面から湧き出る死者の臓物を冷静に見るヤドリガミ。しかしそれが隠しているはずの本体であるカードを捕らえようと伸びて来た時に、思わず手で押さえてしまった。
『――そうか、そこか』
 今の声はすぐ耳元から。
 反射的に避けたティモシーの脇を、もう一体の剣士が鋭い連続突きで襲う。
 直撃は避けたが本体を包む袱紗が切り裂かれ、記号の描かれた本体カードが露になる。
『外したか』
『だが次は避けれられない!』
 突きを繰り出した剣士の目が光り、対峙するオーバーストが細剣を構えて飛び込む。紅に色付く視界の中、その切っ先は狂いなくティモシーの急所であるカードを捕らえる。

「"カード"は一枚じゃないんだよ」
 二体のオーバーストの目を、二枚の占いカードが切り裂く。
 一つは初撃で避けられた後、再度魔力で操り飛ばしたカード。
 もう一つは今錬成し至近距離で撃ち込んだカードだ。
 悶えるオーバーストに本体アタック、と叫びながら水晶玉で眉間に一撃入れ、ティモシーは距離を取る。
 三枚目のカードを錬成するティモシー。
 それぞれのカードの柄はバラバラだ。
 その占い結果が何を示すのか、知るのは自称・水晶玉のヤドリガミである彼だけだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

彼岸花・司狼
コレは終わりだ。どこにも行き着かないただの幕切れでしかない。
惰性でも、自分の意志で生きていくのならこの戦いは無駄じゃない

【追跡+聞き耳】や【暗殺+殺気】で攻撃のタイミングを【見切】、【残像+野生の勘】で回避狙い
気づいてないと【フェイント】を掛けて【おびき寄せ】たところで【早業+だまし討ち】による斬撃を見舞う
見落とした分は【激痛耐性】で耐えて【捨て身の一撃】、【生命力吸収+鎧砕き+呪詛】を乗せて【恐怖を与える】ようお返し
【範囲攻撃+念動力】UCを使って把握した敵を封じるように【衝撃波】を【一斉発射】
敵を【なぎ払い+吹き飛ばす】【援護射撃】を行う。

例え救いであっても、押しつけられたものはいらんよ。



「コレは終わりだ。どこにも行き着かないただの幕切れでしかない」
 救い、との言葉を真っ向から否定するのは司狼。
『たとえこのままの生活を続け抗ったとしても、結末は変わらないのにか?』
「惰性でも、自分の意志で生きていくのならこの戦いは無駄じゃない」
 黒衣と大剣を構え、凛と言い放つ司狼。仮面の下の双眸も、揺らぐことはない。
『――貴様も、村人も、ボロボロになるまで納得しないってことか』
「例え救いであっても、押しつけられたものはいらんよ」
 殺気立った空気を夜風が押し流し、その場に立つのは司狼一人となった。
 だがそれはユーベルコードにより相手が透明化しただけ。今一体何人のオーバーストが自分を取り囲んでいるのだろう。
 より一層張り詰めた冷たい霧の中、目に見えぬその戦いは始まった。

 こちらから進んで斬り込んで行くことは出来ない。それは受け身の攻防から始まった。
 距離を図る為に土を踏む微かな足音、攻撃の瞬間に強く踏み込む音と鋭い殺気。それを勘と残像を作って避け確実に回避する。持てる技能を総動員し立ち回る司狼だったが基本相手待ちの動き。戦場の主導権を握っているのはオーバーストであった。
 何度かの斬り合いの後、一方的に神経を張り詰めている司狼の受ける傷が増えて来た。その期を見逃さず、取り囲むオーバーストが攻撃の頻度を上げる。
『どうした? やはりこれは無駄な戦いなんじゃないのか?』
 優勢の中での油断か。声を発したオーバーストの斬撃をギリギリで躱した司狼は、そのまま相手を取り押さえ一太刀浴びせる。これで一体。やっと一体だ。
 そして掴んだ。反撃に転じれるこの瞬間。見えぬからと相手の間合いが詰まっている、この時を。

「此処が底。全てが堕ち逝く空の底」
 司狼の姿が消えた。
 否、姿が変わったのだ。
 彼の技、心惑わす憂鬱により超加重を掛ける高重力の塊に。
 誰も居ないように見えた地面に深い足跡が刻まる。次いで大きな穴、そして弾けて血だまりが現れた。
 目に見えぬ敵はそのまま墓場の地面に吸われるようにして、消え散った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

水心子・静柄
うん?あなたが真の解放を目指しているのなら、あなた達ヴァンパイアがこの世界の支配を止めれば済む事じゃないのかしら?色々御託を並べてるけど、要は解放したくない、まだ支配してたいって事なのよね?あなたが下っ端でどうしようとも出来ないって言うなら親玉のヴァンパイア…ロードなのかしら?を呼んできなさい。スペースシップワールドみたいに私達が親玉を倒してこの世界を解放してあげるから。それともそんなお使いも出来ない下っ端なのかしら?

まぁあなたなんかあてにしてないからさっさとここで倒されなさい。いくら分身が透明でも全方位に攻撃すればどれか当たるのよ。流石に透明なのは見えないから勘で攻撃するしかないけどね。



「うん? あなたが真の解放を目指しているのなら、あなた達ヴァンパイアがこの世界の支配を止めれば済む事じゃないのかしら?」
 なお増える相手に冷めた眼差しと言葉を投げるのは静柄。
 開戦時よりも分身の速度が若干遅くなっているのは疲労の表れか。しかし冷静然とした表情を崩さずにオーバーストが応える。
『樹が無くなるから薪も炭も止めよう、煤煙が有毒だから製鉄を止めようなんて、今更出来るのか? 手に入れた便利を全て投げ打つような真似はしないが、苦しみを少しでも和らげてやる。俺達が可能な限りの折衷案さ』
「色々御託を並べてるけど、要は解放したくない、まだ支配してたいって事なのよね?」
 錬成した自分である脇差を中腰に構え、静かに柄を握りながら敵の配置を確認する。
「親玉のヴァンパイアを呼んできなさいよ。スペースシップワールドみたいに私達が倒してこの世界を解放してあげるから」
『俺の今の主はソイツじゃない。どうしてもってんなら――その首と交換だ』
 霧に混じるように姿が霧散してゆくオーバースト達。移動し土を踏みしめる音、わざと墓石を叩く音、肌で感じる視線の鋭さが、彼等が確かにそこに居ることを教える。
 静柄は脇差、オーバーストは剣。正面から斬り合えば、先に届くのは相手の切っ先だ。
 悠々と先手を取ったのはオーバースト。死角から勢いよく地を蹴る音がする。しかし別方向からも、殺意を孕んだ気配が静かに近付いてくる。
 敵の構えも分からない、だが勝負するしかない。
 黒い衣装が重く叩きつけるような音を鳴らしてはためいた。

「いつから居合と錯覚した?」
 悠々と鞘付きの脇差を構え、ほくそ笑んでいるのは静柄。
 周囲には自分を中心に円形の陣を成した剣士が倒れている。
 静柄のユーベルコード射合(イアイ)。
 大きく黒い袖の内には錬成した鞘付きの脇差二十五振を隠し持ち、細かな制御を捨てた最大限加速により一斉に放ったのだ。
 しかもその特性の鞘により刀身を越える重量を持った強靭な刀装。それは大砲の弾を撃ち込んだかのような威力を放った。
 分身から掛けられていた透明化が解かれ、寸の間状況把握が出来ないオーバーストの懐に一瞬で踏み込み、眉間に鈍い一撃を入れる静柄。
 それは最早刀剣ではなく、刀の形をした鈍器であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

彼岸花・司狼
死にたいなら勝手に死ぬ、自分で死ねないなら救いの手を取る
選んだ後まで止めはせんが、終わりぐらい自分で選ばせろ

今度は周囲を高速移動して【見切り+早業+残像】で翻弄しつつ
【殺気】で【フェイント】を掛けて【だまし討ち】狙いの反撃
【力溜め+怪力+念動力】で大剣を振り回し、重力と【衝撃波】で【なぎ払い+吹き飛ばし】【鎧砕き】をしかける
続けざまに【2回攻撃】で【傷口をえぐり】【生命力吸収】で発動中の寿命分代わりに生命力を奪い取ろう

…選択を強いるか、救いを強制するか
これ自体押しつけ、大差なんてないさ、本当は



 高重力の塊は収束し、それは再び呪われた武装を纏う司狼の姿となった。
『まだ懲りないようですね』
 別のオーバーストが剣を構えれば大剣を抜き放ち司狼は走る。
「死にたいなら勝手に死ぬ、自分で死ねないなら救いの手を取る。選んだ後まで止めはせんが、終わりぐらい自分で選ばせろ」
『なるほど、結果変わらずとも相手の意思を。良いですね。主君へ提案してみましょう』
 一見すると認め合ったかに見える会話。
 しかし生き抜くことに主軸を置く司狼と、死に逝くことに抵抗の無いオーバースト。その考えは真っ向から対立している。両者の刃が下りることはない。
 ヴァンパイアの視線が弧を描いて外れると、再び真っ直ぐ目の端で人狼を捕らえる。禍々しい夕焼けのように周囲の霧が紅に染まり、逃れられない血塗れ臓物の幻へと誘う。

「此処が底。時の歩みも拒む闇の底」
 紅の光景を闇だと例える司狼。その瞬間、オーバーストの世界は暗転する。僅かな星も月の輝きも遠退いてゆく。それは己が顔を下し地に伏したからだ。そう気付いた時にはもう、斬られていた。
 超重力により行動を阻害する停滞領域。その中でただ一人、自在に高速移動を行っているのは、秘められた超重力加重の呪いと狂化した武装を纏う、司狼だ。
 狂い蠢くような呪いと寿命を代償に発動するユーベルコード、共鳴と停滞。
 幻覚を放とうとする他のオーバースト目掛けてその超重力領域を放射し広げると、油断なく切り込んでゆく。
 紅光に囚われないよう残像やフェイントを駆使し翻弄しつつ大剣を振り回し、周囲の敵をまとめて薙ぎ倒してゆく。
 代償の寿命を補う為に切り刻み生命力を奪い取りながら、呪いの化身となった司狼は災厄のように戦場を駆け抜ける。
「……選択を強いるか、救いを強制するか。これ自体押しつけ、大差なんてないさ、本当は」
 やりきれない思いを独り言ち、黒い獣は吸血鬼を狩る。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルト・カントリック
色々、質問を投げかけようと思ったのに……よく分からなくなっちゃったな。とりあえず、倒せばいいのかな……?

ユーベルコード【戦場の霧】で霧状のドラゴンを召喚して、相手の視界を塞ぐよ。相手の眼に注意しないといけないからね。ただ、相手も不意打ちを警戒するだろう。

敵の背後を僕は狙うけど、囮として鳥型ドローン(ラードーン)を飛ばすよ。囮に気を取られた瞬間、オーバースト・フックスの背後から、白いドラゴンランスで突き刺すよ!



「……よく分からなくなっちゃったな」
 仲間と敵の応酬を見聞きしながら、そう呟いたのはアルト。
 色々質問を投げかけようと思っていたのに、その考えは今なお纏まらずにいた。
『互いの正義とセイギが戦っているのです。すっきりもしないでしょう』
 対峙するオーバーストの一体が細剣を隙なく構えながらも話しかける。
『おそらく大将は、猟兵の邪魔をしようとも、人類を弄ぼうとも思ってない。しかし私達に敗北し、破壊を待つだけの世界に取り残された人々の苦しみは図り知れない。弱者を優しく解放してやるのも、力持つ者の務めです。死は誰しもが平等に迎える結末ですよ』
 雄弁と語るオーバースト。そこには悪意も血生臭さも微塵も無いように感じられる。
 彼ほど流暢に自らの思いを語ることは出来ない。
 けれど……それは…………。
 アルトは白いドラゴンランスを構える。
 ひとつ、溜息と共に首を振り、オーバーストも武器を掲げる。戦闘中の分身も限界と見える。これが最後の戦いになるだろう。
「上手く言えないけれど……それは違うと思うんだ」
 霧のように掴みどころの無い、仄かな輪郭を宿す思いを胸に、アルトは力を込める。

「見えざる者よ、姿を映せ」
 そう唱えたアルトを中心に、薄くなりつつあった墓場の霧が一層の濃さを増し視界を塞ぐ。ユーベルコード戦場の霧(ミスト・ドラゴン)により謎の霧状ドラゴンが現れたのだ。
 己の視界を都合よく塞ぐ霧の発生に、技を掛けるのを諦めオーバーストは警戒を強める。分身同士の位置は把握している。それ以外が、猟兵だ。
 ふいに虫の翅音のような、鳥が羽ばたくような音が、上空を通り過ぎる。仕掛けて来た。しかし見通しが悪くそれ何なのかが分からない。やられる前にやらなくては。
 その音は幾度か頭上を通り過ぎ、少しずつ高度を下げているようだった。そして何度目かのその時、オーバーストは跳躍する。剣を突き上げ真っ直ぐ上へ。僅かに硬質な感触と共に、それは串刺しにされた。
 仕留めたそれは――アルトの持ち物、鳥型ドローン(ラードーン)。戦闘能力など無い、ただの囮だ。

 着地したオーバーストの背後の霧が唐突に晴れ、ドラゴンランスを構えたアルトが飛び出した。
 霧に包まれていたのはオーバーストのみ。
 全ての動きを外から見ていたアルトは、その期をずっと狙っていたのだ。
 唐突過ぎて視線を流すほどの余裕がない。
 剣はドローンに刺さったままで使えない。
 反撃の手を完全に奪われ、オーバーストは白い槍に貫かれた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『幻想術師『パラノロイド・トロイメナイト』』

POW   :    記録■■番:対象は言語能力を失った。
【夢幻の眠りを齎す蝶の幻影 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    記録■■番:対象の肉体は既に原型を留めていない。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【数多の幻想が囚われた鳥籠 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    記録〓編集済〓番:〓編集済〓
対象のユーベルコードに対し【幻惑し迷いを齎す蝶の群れ 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鶴飼・百六です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 最後の一体まで倒し終え、山上の墓地には再び静けさが戻る。
 夜も明けてしまったようだ。
 空は雲に覆われ陽を直接見ることは叶わないが、夜を押しやり白い光が世界に満ちる。

 最初それは、まだ残る霧に自分の影が映っているのだと思っていた。
 しかし何かが妙だ。
 その影は今にも溶けそうに左右に揺れ、曖昧な輪郭から何本も袖や裾のようなものが。
 そして飛んで来た紫の蝶をその手に乗せると、同じく何羽もの蝶がその身から……。

「構えろ!!」
 仲間の鋭い声と共に猟兵が振り向き戦闘態勢をとる。
 目の前に見えるは取り残された夜のような異形。
 誰かが呟く『パラノロイド・トロイメナイト』だと。

 パラノイドは踊る。声も無く、歌も無く。
 ――救い――救い――。
 ――疲れたら死んで眠るんだ――長く眠りに付いている方に――。
 ――静かな夜と――解放を――。
 ――たまたま持ってた――真の解放を――終わりぐらい――。
 ――分からなくなっちゃった――。
 ――救い――救い――不思議な力――で――。

「!?」
 寸の間、夢を見ていた気がする。
 今のはパラノイドが見せたものなのか。
 しかしそれは仲間の声のような、自分の喉から出たような響きをもって伝わった。
 同じ想いだと伝えたいのか。

 目の前のオブリビオンを止めなければ、あの村人達は目覚めない。
 それどころかその所業を各所で続ければ、人類の滅亡は免れない。
 やさしい異形を、猟兵は見据える。
エリス・シルフィード
優希斗(人間の妖剣士・f02283)と同行
それ以外の仲間との連携・声掛けもOK
変だなと思って来てみれば
優希斗は色んな事に共感されすぎだよいつも
…まっ、優希斗らしいと言えばらしいと思うし
それも優希斗らしい優しさである事も、あなたらしい覚悟だとは理解しているけれど
それでも、こいつは私には敵なのよ
…例え優希斗が許したとしても
私は絶対に貴方を許さない
UC使用。ライラを弾きながら仲間達の心と体の傷を癒して夢に取り込まれかけている人達を解放するわ
こいつは私の故郷の世界を支配する敵
打倒されるのが当然だもの
歌は歌い続けるわね
皆が戦い続けられる様に
私への攻撃はオーラ防御、地形の利用で最小限に被害を抑えるわ


北条・優希斗
エリス(金色の巫女・f10648)と同行。
それ以外の仲間との連携・声掛けもOKです。
(夢の中に飲まれて、自らのエゴとパラノイドのエゴとの境目に惑わされつつ)…っ。
(とある歌が聞こえてきて)…エリス、か。
…すまない、助かった。
大丈夫だ。お前が邪魔してくれた今なら、完全な脱力状態になってはいないだろうさ。
此処から先は…俺の仕事だ。
ダッシュ+先制攻撃で肉薄、UC発動。
更に二回攻撃で追撃、月桂樹による騙し討ちで容赦なく追い打ちを掛けるよ
…まだまだだな、俺も
自分のエゴを貫いて敵対するつもりだったのに、敵なりの優しさに飲まれそうになるとはね
以降の攻撃は見切り・残像で標的をずらし、オーラ防御で回避するよ



 異形からしてみれば、それはほんの挨拶や会話のつもりだったのかもしれない。
 しかしその夢に未だ飲まれ続けている者がいた。
「……っ」
 敵前に在って、優希斗は立ち尽くしていた。
 自らのエゴとパラノイドのエゴとの境目に惑わされ、今なおオブリビオンの夢の中に。
 その横で春風のライラを手に取り、癒しの曲を歌い始めたのはエリス・シルフィード。
 白銀の美しい竪琴を爪弾き、雪解けと目覚めの時を告げる唄を紡ぐ。
 ユーベルコード天使の歌う交響曲。
 夢に取り込まれかけている人達を解放したいというエリスの想いを受けて、透き通る程に美しいその調べは、心と体を癒す力を纏って響いてゆく。
 ふわり、異形が踊る。朝を迎えても紫光を失わぬ蝶の群れを解き放ち、春風を歌うエリスの周りに添わせ舞わせるように。そして――。
「っ!!」
 それは春雷のような衝撃を以って、エリスの演奏を断ち切った。オブリビオンの力は、その癒しを許さなかったのだ。
 それでも、よく知る者の心打つ音色は優希斗に届いた。虚空を見つめていた目は現実を映し、隣に立つ歌姫を捉えた。
「……エリス、か。……すまない、助かった」
 肩をすくめ、エリスは答える。
「優希斗は色んな事に共感されすぎだよいつも」
 あなたらしい覚悟だとは理解しているけれど、と続けた後、その相貌は鋭くなる。
「それでも、こいつは私には敵なのよ。私の故郷の世界を支配する敵。打倒されるのが当然だもの」
 ヒリリと痛む指先を一度握って開き、エリスは再びライラを爪弾く。
 歌は歌い続ける。皆が戦い続けられる様に。例え優希斗が許したとしても、絶対にパラノイドを許さない。強い決意を宿した、優しい春風の歌を。

 そんなエリスを見て、優希斗は自嘲気味に笑う。
「……まだまだだな、俺も」
 自分のエゴを貫いて敵対するつもりだったのに、敵なりの優しさに飲まれそうになるとは。
 改めて、対峙するパラノイドを見据える優希斗。それはよく似た利己を抱くものを見る目ではない。これから討伐する敵の動きを見定める、研ぎ澄まされた猟兵の目だ。
「此処から先は……俺の仕事だ」
 春風の歌と共に踏み込む一歩。それは立春を迎えて吹く力強い突風の如く、優希斗の体を勢いよく前へと押し出した。
 刹那、肉薄し不定形のオブリビオンを間合いに収める。
 脱力から反撃される前に、この一騎打ちを決める。
「躍るよ、蒼き月の舞を」
 冷たい声と踊り狂う刃を以って、優希斗のユーベルコード夢月蒼覇斬は吹き荒れる。
 冴え冴えとした剣舞に迷いはない。
 舞う紫蝶と揺れるパラノイドの体を散らすが如く切り刻み、夜色の花弁を吹雪かせる。
 技の終わりには漆黒の短剣月桂樹による騙し討ち、駄目押しの二回攻撃を繰り出した。

 もともと原型を失い不定形であるパラノイドの体。どれほど崩れても、そこから正確なダメージ量は測れない。
 しかしその夜を映した五体が一層歪になり、強風に煽られたように大きく後退してゆく様は、見事な有効打であったと見て間違いないだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィロメーラ・アステール
【スライディング】で流星の尾を引いて登場だー!
「夜も明けるってのに、まだ変な夢を見ているヤツがいるのか?」
終わりなき夜を終わらせる明星が、真の眠りを齎す!

【おわりを印す天の客星】を発動!
終焉の星を浮かべ、すべての幻想を沈静化するぜ!
【全力魔法】を込めた【破魔】の波動で魔を破壊!
蝶、幻、眠り、すべてに終わりを与えるぞー!

敵の攻撃は主に【オーラ防御】のバリアで防御!
幻に包まれたら【気合い】と【第六感】を働かせて打ち破る!
【迷彩】魔法の知識があれば、幻を破るヒントにもなりそうだぜ!
仲間がいたら、この知識を元に警告や【鼓舞】することもできるかもな!


アルト・カントリック
「そっちが夢なら、こっちだって……開け、夢幻の瞼よ」

ユーベルコード【夢幻時の召使】を使用。幻想ドラゴン事典のページをほぼすべて、ドラゴンに変換して敵を襲わせるよ。

このオブリビオンの目は……どこにあるんだろう?なるべく見破られないように……ただ、ドラゴンを一直線に攻撃させるんじゃなくて、囲むように攻撃するよ。



「夜も明けるってのに、まだ変な夢を見ているヤツがいるのか?」
 輝く金色の長い髪をなびかせ、流星の尾を引くスライディングを披露しながら登場したのはフィロメーラ・アステール。
 キラキラと星の燐光をきらめかせながら、星くずの妖精は早朝の空を飛び回る。
「終わりなき夜を終わらせる明星が、真の眠りを齎す! お星様がおやすみを言いに来たぞー!」
 間髪を入れずにハイテンションな妖精が放つはユーベルコードおわりを印す天の客星。
 紫の蝶を従える異形パラノロイドの幻惑と迷いをかき消さんが為に、冷たく曇りがちな空を裂いて終焉を告げる星の霊が襲来する。

「そっちが夢なら、こっちだって……開け、夢幻の瞼よ」
 幻想に幻想で対抗するのはアルト。
 ユーベルコード夢幻時の召使で作るは自分の大好きなドラゴン。
 幻想ドラゴン事典――本物のドラゴンを知らない作家達の竜で溢れた書物を開き、ほぼ全てページをそこにかかれた様々なドラゴンの姿に作り変え再現してゆく。
 作家の、そしてアルトの夢の数だけいる多種多様なドラゴン達。
 それは地を、時に天空を駆け抜けながらパラノロイド目掛けて襲い掛かる。

 歪になった体をどうにか立ち上がれるまでに整えたパラノロイドが、閉じた一つ目の描かれた白い仮面をもたげる。
 そこに広がるのは美しい景色だった。
 朝を迎えつつある空になお映る満天の流れ星。
 夢と理想を織り込んだ多彩なドラゴン達が天地で自由に遊び踊る。
 ――参加しなくては――。
 夢の中で、他人の言葉を借りてでしか話せない異形が、本当にそう思ったのかは定かではない。
 しかし扉を開けた鳥籠を二本腕で仮面よりも高く掲げ、大小様々な蝶を、紫の花畑が出現したかと思うほど大量に放った様子からは、相当な気合を感じずにはいられなかった。

 空を覆う流星群、地より舞い踊る紫蝶の花畑、その中を駆け回る千姿万態のドラゴン。
 空想を詰め込んだかのような光景。しかしそれは捨てられた過去の怪物と生命体の埒外にあるものとの、激しい力のぶつかり合いだ。
 蝶を食らう龍を紫光が惑わし同士討ちさせる。その光を降り注ぐ流星が破魔と魔法を以って沈静化しただの蟲とする。それを竜の炎が燃やし灰とする。
 幻惑蝶を打ち破る為の星とドラゴンの共闘。その美しくも残酷な光景と戦況は、徐々に猟兵の側へと傾いて行った。

 パラノロイドに目があるかは分からない。しかし形勢が苦しくなれば周囲を見回す余裕も無くなって来るのだろう。仮面の向く反対側より、周囲の流星よりも一際大きく明るい星――火球が迫ってて来ているのに、対処が見られないのだから。
「迷彩魔法もそろそろ限界だ! 行けるか!?」
「大丈夫!」
 フィロメーラの見せない幻にアルトが応える。
 仮面を向け振り向いた異形が、ギリギリまで隠されていた火球に気付き蝶の壁を作る。
 終焉を告げる火球は地に落ちず、幻惑の蝶だけをかき消し、目が眩むほどの閃光を残して頭上を通り過ぎてゆく。
 異形への道が開けたその中を、後方から取り囲んでいたドラゴンの群れが地響きと共に突き進んで行く。
 眠りの妖精は朝を迎える。太陽のような光に目を焼き、巨大なトカゲ達に踏みつぶされ吹き飛ばされながら。微睡みさえ許されぬ強烈なモーニングコールを受けて。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラナキューラ・ワルキリア
【POW】
我が真の姿を完全に解放し、叩き砕きましょう
あぁ、でもこの蝶は美しいです、これだけいただけないかしら
優しい眠り、されど定命のモノにはすぎた眠り
その夢を砕き、朝焼けを呼び込みましょう
【血統覚醒】で真の姿を解放し、『からくり人形』とわたくしと二人がかりで戦います
優しくて残酷な蝶の攻撃は人形に身代わりをさせながら、わたくしは爪などを振るって攻撃します
なるべく短期決戦を目指しますわ
優雅ではありませんが、その辺にあるものはなんでも武器として活用
流れる血さえも、可能であれば武器として振るいます
そして、全部終わったら、蝶を1つ持ち帰り、あのおばあさまが目覚めたか確認して、静かに村を去りたいです


護堂・結城
司狼(無音と残響・f02815)と参加
死んだように眠らせることで辛さから解放する、か
……過酷な現実につき落とすのが救いかは知らん
だが、絶望も希望も、生きて自分で考えてこそだ

UCで巨大な氷鳳を纏い【存在感】と【殺気】を振りまき
氷のカギ爪で【早業+2回攻撃】を仕掛け【傷口をえぐる】等【挑発】で敵の気を引く事をメインに戦う
蝶の幻影に対しては【破魔+生命力吸収】を載せ【怪力】で羽ばたき、トロイメナイトを巻き込むように吹雪と【衝撃波】を起こす【範囲攻撃+属性攻撃】

羽ばたき咆えよ氷色の鳳よ
目覚めの一声と行こうじゃねぇか


彼岸花・司狼
護堂(雪見九尾・f00944)とともに参加

・・・まぁ、確かにアレは解らんな。
何言ってるかさっぱりだ。

護堂に、相手がこちらから意識をそらすように任せて
周囲に舞う蝶を【見切り】、【残像+フェイント】で回避しつつ、
直撃しても【激痛耐性】で押し通すつもりで
UCにより強化された【迷彩+忍び足】で【目立たない】よう死角から忍び寄り、
【生命力吸収】を乗せて相手の至近距離で【捨て身の一撃+鎧無視攻撃】
更に【傷口をえぐる】ように【早業+2回攻撃】を仕掛け、【暗殺】を狙っていく



「……まぁ、確かにアレは解らんな。何言ってるかさっぱりだ」
 異形の白昼夢を見て、そう感想を漏らすのは司狼。
 総勢8名もの猟兵の言葉を借りてアレである。予知された配下ヴァンパイアの反応は意外とまともであったらしい。
「死んだように眠らせることで辛さから解放する、か。……過酷な現実につき落とすのが救いかは知らん。だが、絶望も希望も、生きて自分で考えてこそだ」
 その隣に立ち凛と言い放つのは護堂・結城。
 色鮮やかな九つの尾を揺らし、緑と赤を宿す瞳で、宙を舞う異形を見据える。
「優しい眠り、されど定命のモノにはすぎた眠り。その夢を砕き、朝焼けを呼び込みましょう」
 からくり人形を従えて、落下する異形を見つめるラナキューラ。
 仄明かりを放つ蝶に心奪われながら、今この時からその優雅さを捨てる覚悟を秘めて。
 パラノロイドが地面に叩きつけられるのを合図に、三人の猟兵は一斉に駆け出す。誇大妄想家の夢想夜は、この朝をもって終わらせてみせると。


「我が真の姿を完全に解放し、叩き砕きましょう」
 ラナキューラの瞳が真紅に染まり、その身は半魔半人から完全なヴァンパイアへと変貌する。自分の姿を模して造られたからくり人形の動きも一層鋭さを増し、その戦いは二人を相手しているのだと見紛うばかりであった。
 パラノロイドが視界いっぱいに蝶の幻影を放ち、夢幻の眠りへ誘わんとする。明滅する紫の光は現と夢の境をにじませ、一歩踏み込んだその先がはたしてどちらなのかを曖昧にしてゆく。
「あぁ、でもこの蝶は美しいです、これだけいただけないかしら」
 幻影を爪で切り裂き、眠りを知らないからくり人形に迫り来る攻撃を身代わりさせながら、ラナキューラは感嘆の声を漏らす。こうしている間にもヴァンパイアと化した自らの寿命は削られ続けている。眠れば何も出来ぬまま更に。触れられぬ美しさに酔い痴れながら、短期決戦を目指すラナキューラはパラノロイドに迫ってゆく。

 優雅ではない。けれど正面から勝てる相手ではない。
 駆け抜ける最中ラナキューラとからくり人形は手近な墓標を掴むと一気に引き抜き、手当たり次第に投げ始めた。幻影に隠れながら、飛んで来るいくつもの墓を避けるパラノロイド。そしてその蝶の向こう側から、形の崩れた体をしかりと取り押さえる腕が伸びて来た。ラナキューラそっくりのからくり人形である。異形の周りは蝶の幻影が一層濃く危険であったが、眠らない人形には無関係であった。蝶に纏わり付かれながらもパラノロイドを取り押さえ、その自由を奪う。
 優雅ではない。けれど手段を選べる相手ではない。
 ラナキューラは自分の両腕を鋭い爪で掻くと、両手いっぱいに血を滴らせる。今体内を流れるは色濃いヴァンパイアの血。これすらも自らの武器である。
 パラノロイドまでの距離はまだ遠い。しかし構わずラナキューラは爪を振るう。
 爪が描いた弧を血がなぞり、刹那それは真紅の刃となって空を切り裂いてゆく。
 十枚の血の刃は夜を宿すパラノロイドの体を切り裂き、朝焼けの色を映した。


「此よりは我が領域、全てを閉ざす氷結の獄」
 間髪入れず雪見九尾の氷結鳳装を発動させるのは結城。
 自身の三倍、5メートル越えの対外道抹殺用飛翔氷装に乗り込むと、その圧倒的な存在感と溢れる殺意を周囲に振りまく。
 細切れになり、より墓場の幽霊のように揺れるパラノロイドが随分小さく見えるが、見誤ろうはずがない。その氷のカギ爪を巨体からは想像できない早業で振るい連続攻撃、出来たばかりの傷口をえぐり、初撃から深夜よりなお凍える容赦の無い攻撃を放つ。
 体を充分に直せないままだが、標的は大きく狙いに困ろうはずもない。パラノロイドは蝶の幻影を作り出すと、本来複数相手に放つそれを一斉に巨大な氷鳳へ向けて飛ばした。
 異形のその攻撃と違い、結城は強力な氷結鳳装を纏う為、一切の飛び道具を使わないことを代償にしている。周囲を覆いつくす紫の蝶は、カギ爪ではとても払い切れるものではない。数の暴力に押されて、夢幻の眠りへ誘われるのも時間の問題だろう。
 しかし、結城に焦る様子はない。周囲を埋め尽くす紫の光。それは何よりもパラノロイドが自分の挑発に乗った証なのだから。

「羽ばたき咆えよ氷色の鳳よ。目覚めの一声と行こうじゃねぇか」
 巨大な鳥を模した氷結鳳装の翼がその怪力を以って力強く羽ばたく。
 その身に氷の属性を宿した鳳の起こす風は、季節を逆行し吹雪となった。
 衝撃波を放つ範囲攻撃は破魔と生命吸収の力を乗せて幻影を襲い、薄紫の霜付く蝶は地に落ち砕けて消えてゆく。
 パラノロイドも無事ではない。幻影より重いその身は精一杯踏ん張り飛ばされなかったが、、凍てつく風と氷に塗れて白い地面と一体となってしまった。


 ヴァンパイアへの変貌から、巨大な氷結鳳装。敵の気を引く事を最大限に意識して戦った仲間の立ち回りにより、司狼の存在は異形の中で希薄なものとなっていた。
 こちらへ飛んで来た蝶の幻影は見切り、残像とフェイントで回避し、決して自分の認識を強めないよう隠密行動に徹していた。佇む墓よりも静かに、落ちる影よりも沈黙を湛え、司狼はパラノロイドの死角に回り続けた。
 そして訪れた。絶好の暗殺機会。切り刻まれた体に最早立ち上がる力はなく、氷の巨人を見つめる姿は凍て付き不動。全ては整った。

 無明と終焉。
 そのユーベルコードに直接的な攻撃力は無い。ただ追跡と暗殺に特化した様々な技能を自らの限界を超えて高める。それ渾身で死の訪れを体現するが如く。
 ……どんなに心が残っていようともオブリビオンは、そしてその力は、染み出した過去で世界を埋め尽くし――必ず、世界を滅亡に導く。救いたいと願いながら、結果救えないことから目を逸らし、せめて最期は安らかなれと、己の我儘を貫いたヤサシイ異形。最後まで失わなかった心と、得られた超常能力が噛み合わないカナシイ幻想術師。パラノロイド・トロイメナイトを救う最適解は…………己が、最初から示していた。

「祈りも慟哭も届かない、ただ安らかに息絶えろ」
 パラノロイドを包む氷が鳴る。逃げようと、行こうと、力を込めたのだ。これでは異形のユーベルコードは発動しない。
 最後の力まで残らず啜るように、生命力吸収を乗せた刀が冷たく光る。司狼の至近距離からの捨て身、防御を無視する強力な一撃が突き刺さる。刃を回し傷口をえぐると素早く二回攻撃を放つ。苦しむ時間も無い、確実な暗殺を遂行する。

 氷は砕け、音も無く、パラノロイドの体が横たわる。それは登りゆく朝日を浴びて白く色褪せてゆく。最後の霧を運ぶそよ風に流されて散り散りになるその骸。もうそこに何があったのかは、猟兵達にしか分からなくなった。


 全てを解決したわけではない。あの村に起こる夜の事件を解消しただけだ。
 今日も領主による圧政下で村人は苦しみ、終わりの見えない日々を送るだろう。
 ただ、その破滅の日々さえ一足飛びでやって来たわけではないはずだ。
 あの村には音楽隊を捕まえようと奮起する者達がおり、この報告書が上がれば猟兵とオブリビオンの交戦記録として残り"ただの村"ではなくなるのだ。
 先を灯す希望は猟兵が作ってゆく。共に戦ってくれ。また世界を越えて来るから。
 村を確認しに行った仲間の帰りを待ち、猟兵はテレポートゲートを潜った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年04月16日


挿絵イラスト