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おひさまがほしい

#ダークセイヴァー #辺境伯の紋章 #番犬の紋章 #地底都市

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#地底都市


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●あかいひかり
 ひかりなき世界の、更に地下深く。
 そこには広大な地底世界が広がっていた。
 この地の都市にも人々は住み、日々を営む。
 地上よりも過酷で、明日をも知れぬ暮らしだけれど。

 おさなごの手が、暗い家の中で両親を探して彷徨う。
 肌の色は白く、ところどころに斑が浮いている。
 もう野山を駆けまわれる年頃だろうに、足元は覚束ない。
 その子はあまりに大事に匿われすぎて、光を浴びられずにいた。
 そうせねば、子を護れなかったのだ。

「おひしゃま、って、なあに」
 夜な夜な母の語り聞かせるおとぎ話では、天に光の御印が輝くという。
 それが訪れれば地は安らぎ、花々や作物が待ち望んでいた芽を出す。
 いつ、どこから伝わったかもしれぬおとぎ話は、長らく一家の心の支えだった。

「……あれ、おひしゃま」
 ふいに。建付けの悪い木の板の合間から、赤々とした光が漏れた。
 それを目にした母親はとっさにわが子をかばい、うずくまる。
「ちがう、ちがうのよ。あれは、あれは……!」
 言い終える前に地を激震が伝い、巻き起こる熱風に背中が焼け焦げる。
 痛い。頬を最期に熱いものが伝う。
 せめて一瞬でもこの命を永らえさせようと、ちいさな体を抱きしめた。
 この際、神でも悪魔でも何でもいい。
 ――この子だけは。

 戯れに零された竜の吐息が、ひかりなき地下世界を焼く。
 血も肉も灼き尽くし、赤熱の太陽が村を覆った。

●煉獄
 ぎり、と握り固めた手のひらに爪が食い込む。
「……おねがい。助けてあげてほしい人たちがいるの」
 予知を告げるリグ・アシュリーズの声はか細く、掻き消えそうであった。
 グリモア猟兵たるもの、視てしまったものからは逃れられぬ。
 そして自身が向かえぬ代わりに、願うのだ。
「地下世界の人たちを、まもってあげて」

 ダークセイヴァーの新たに見つかった地底世界。
 そこではオブリビオンに奴隷同然の暮らしを強いられる人々が暮らしていた。
 幸い、一方的な支配にかまけていた為に群れるオブリビオンの力は強くない。
 他の地底都市から増援が来る前に倒してしまえば、どうにかなるわとリグは言った。
 彼女は、一度そこで口を噤んだ。

 と、ここで話を聞いていた猟兵の一人が問う。
 そんな単純な話なのか? と。

 至極もっともな問いにこくり、と頷いたリグは続きを話す。
「門番がいるの。それもとびっきり強いのが」
 リグによれば、予知に見えた異端の神は竜の姿をしていた。
 爆炎で地を焦がす竜は首筋に『番犬の紋章』を宿し、それがより竜の力を強めているという。
「さらに悪い事にはね。この竜の攻撃は、どれも炎熱や熱波をもたらすの」
 どのぐらいの規模かと聞かれ。リグは「村ひとつぐらいは」と短く答えた。

 グリモアベースに沈黙が訪れる。
 あまりに強大で、破壊的な力。真っ向から立ち向かえば守るべき命は失われ、後には焦土しか残らないだろう。
「だからね、皆には村の人たちを助ける算段を立てた上で臨んでほしいの」
 竜の気を引いて村から引き剥がすか、村人を避難させるのか、人によってやり方は異なるだろう。
 いずれにしても、誰かが動かなければ助かる命も助からないのだ。

「ひとつ朗報があるとすればね。この竜、『番犬の紋章』それ自体が弱点みたいなの」
 竜の首筋に宿った『紋章』は力を授けるかわり、貫かれた際には絶大な痛みをもたらす。また強化の源を弱らせる意味でも、紋章への攻撃は効果的だろう。
 巨大な竜の首に刃を届かせるのは簡単ではないが、ここで全力を賭してこそ救える命もあるだろう。

 竜を倒し、続く魔の手からも守り切れば、最後には村人たちが残される。
 とはいえ、オブリビオンが治める地底世界。
 一度騒ぎが起きれば、追手が来るのも時間の問題。安住の地がない以上、別の土地に移り住むのが妥当だろう。

「幸いなことにね、地上にある人類砦が村人たちの受け入れの約束をしてくれたの! だから後は、どうにか連れていけるだけの信頼を得てほしいの」
 地上への旅路は、きっと長旅になる。
 村人たちが首を縦に振るには、それに足る『根拠』がいるのだ。
 彼らにはきっと、見知らぬ誰かが命を救ってくれる事すらも絵空事すぎて。
 急には受け入れられないだろうから、と。

 説明を終えたリグは、以前よりいくらか慣れた手つきでグリモアをかざす。
 その向こうに待ち受けるのは、人の心が闇に塗り潰された地底世界。
「このゲートを抜けた先のことは、皆に託すわ。だから――おねがい」
 すうっと胸いっぱいに息を吸い込み、切実な願い、そして皆への信頼を声に乗せる。
「あの人たちの、おひさまになってあげて!」
 希望をちりばめるような光と共に、グリモアの道は開かれた。


晴海悠
 お世話になっております! 晴海悠です。
 ダークセイヴァーの地下深くに住まう人々。
 彼らは、地上よりもさらに過酷な暮らしを強いられているようです。
 希望も安らぎも知らぬ、彼らに。
 皆様の手で、救いを届けてあげて下さい。

『プレイングの受付』
 各章の冒頭に短い文章を挟み、受付開始の合図とします。最初のみ、3章だけなど、お好きな形でお越し下さい。
 また、受付期間のご案内をマスターページに記載する事があります。よろしければご参照下さい。
(複数名の合わせプレイングは2~3名までならはりきって承ります!)

『1章 ボス戦』
 紅竜の異端神ベルザード。
 のっけからクライマックス感すら漂う強敵です。
 竜は最初、村を見渡せる小高い丘に鎮座しています。

 プレイングボーナス……
 1.竜の首筋にある番犬の紋章を攻撃する。
 2.広範囲攻撃から村人を守る。

 上記いずれかの行動をとったプレイングは加点対象となり、成功率が上がります(両方も可)。

 なお、このシナリオでは個々の作戦方針の違いは「お互いの手の届かない点を補い合った」ものとして好意的に解釈します。
 作戦が優れていれば、掛け算的に相乗効果を発揮する事もあります。
 なので恐れず、皆様自身の手で「村人を救う方法」を考えてみて下さい。

『2章 集団戦』
 ディオ・デモン。
 騒ぎを察知した双頭の悪魔が、村人や猟兵たちを根絶やしにしようと襲ってきます。
 個々の力は大した事ないようですが、ここでの戦いぶりによって三章での村人たちの反応が変わってきます。
 どうぞ存分に武勇を発揮して下さい。

『3章 日常』
 村人たちと交流を図りながら、限られた時間で人類砦への移動を促します。
 この地底都市では、長らく祭りの文化が途絶えているようです。
 皆様の手で祭りを興せば、住人たちの癒しとなる事でしょう。

 なお、リグは呼ばれても登場致しません。最後まで皆様の物語として、お楽しみ頂ければと思います。

 それではリプレイでお会いしましょう! どうぞ、希望あるお話となりますよう。
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第1章 ボス戦 『紅竜の異端神ベルザード』

POW   :    炎滅の吐息
【自らすら焼き尽くさんとする爆炎の身体】に変形し、自身の【命が討たれた時に大爆発が起こる事】を代償に、自身の【放つ炎熱のドラゴンブレスの火力と範囲】を強化する。
SPD   :    熱砂を喚ぶもの
全身を【周辺を非現実的な速度で砂漠化させる熱波】で覆い、自身の【発する熱量】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    火は炎に、炎は焱に、焱は燚に
レベル×1個の【可燃物が無くとも周辺に延焼し続ける魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガルディエ・ワールレイドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その竜は、村近くの小高い丘に佇んでいた。
 番犬の紋章を宿す竜も、まだ村を襲う様子はない――いまのところは。
 だが、ひとたび戦いになれば火炎の吐息は村を一呑みにするだろう。
 その末の光景を、猟兵たちは予知に聞かされ思い知っていた。

 村の人々は猟兵の存在を知らないが、竜の脅威は魂に織り込み済みだ。
 もし、村人の側を動かすのなら。
 生存本能を突き動かすような、端的で明確な声の掛け方が相応しいだろう。
 あるいは、竜の側を動かすのなら。
 どうにかして、村近くで戦いが本格化するのを防がねばなるまい。

 ただでさえ手強い敵を前に、状況は予断を許さない。
 村人たちの命の灯火を、生温かい風が玩具のように揺らし、弄ぶ。
 吹けばとぶ命。それがダークセイヴァーの民の現実だ。
 だが、忘れてはならない。
 あなたは――猟兵たちは、一人ではない事を。
鈴木・志乃
アド連歓迎
端的に言って最悪ですね(飴玉がりいっ)
苦手も苦手の状況だァい……。そんな時に私が出来ることね、どうしよう。

UC発動
降らすったら降らすんじゃ。
不浄をどうにかとかいう敵じゃないけど、異端神ならビミョーに効くかも分からんしね。
さ、海よ降れ。川よ流れろ。距離と大きさは高速詠唱である程度コントロールし、村から丘に向かって大量の水を流しまくる。なんなら敵の頭上に海を落とす。炎対策。
木の生えてない土の山も落とせたら落とす。

否が応でも腹立って気を引けるだろ。
混乱してるうちに手持ちのライフルで紋章を狙う(スナイパー)
高速詠唱オーラ防御展開
第六感で行動見切り回避
念動力で光の鎖を操作し早業で捕縛したいなァ


サフィリア・ラズワルド
POWを選択

敵は竜、戦いたいけど今回の私の役目は守ること。
村人を守ることに専念します。

助けに来ました、生きたいなら一緒に行きましょう、私の“人の寿命”をかけて守りますから。

【白銀竜の同朋】で四つ足の飛竜に、通常の変身よりも竜に近づける、もっと高度な技が放てる。

私が口を向けるのは竜ではなく村人、敵の炎が迫ってきたら村人に向かって青い炎を吐きます。
味方には害のない炎、ぶつかるのは敵とその攻撃だけ、これは敵の炎から村人を守るバリアになる。

戦いが終わるまで続けます!ですので猟兵の方々!思いっきり敵に攻撃してください!

アドリブ協力歓迎です。


朱酉・逢真
心情)ひ、ひ。こりゃムリだ。相性が悪すぎる。火はニガテなんだ。《陽》の極みだからなぁ。俺は防御に徹させてもらわぁ。そンかわし、村人はこの身に変えても守るからさ。許しておくれ。俺は救いの神じゃねえが、いまある命はいまある者で奪い合うべきだろう。《過去》はお呼びじゃねえさ。
行動)熱と砂漠化を《抑制》しよう。この依頼が終わったらくたばるくらいでちょうどいい。俺は神だ。この《宿(*からだ)》が壊れても死にゃしねえ。できっかぎりがんばってみるが、それでも漏れちまうなら仕様がねえ。眷属ども《獣・鳥・虫・魚》をどっさり呼んで、みぃんな身を挺してかばわせらぁ。神威のかけら《恙》で強化すりゃ盾くらいにゃなるさ。


レイラ・アストン
【明け空】

【精霊と見る夢】発動
水の精霊の力にて生み出す現象は蜃気楼
竜と村との間に割り込むような形で
広くに展開するわ

竜の視界を阻むスクリーンと炎からの防護壁
双方の役割を担わせて
村人の逃げる時間を作り出すわね

事態は一刻を争うわ
行きましょう、プロメテさん

狐の姿に変化した友の背に乗り
声かけをしながら村を回りましょう
「竜がもう近くまで来ているわ。丘とは逆の方角に逃げて」

姿が見えない方はいないか
集まった村人から『情報収集』
もし逃げ遅れた人がいれば私達で探しに行くわ

避難誘導が終わり次第、戦場に合流
プロメテさん、無理しちゃ駄目よ?
貴女のことは私が守るわ

『オーラ防御』で友と己の身を守りつつ
魔弾を放って仲間に加勢


プロメテ・アールステット
【明け空】

蜃気楼発動まで周囲を警戒
…守り切らなければな
村人も、大切な友人も

ああ、行こうかレイラ殿…共に

【赫灼炎狐】発動
レイラ殿を乗せて村人達の避難誘導に向かう

『視力』『聞き耳』で村人を探し『地形の利用』『拠点防御』活用
レイラ殿と情報共有し、避難呼びかけ
「私達が守る。生き延びたければ落ち着いて避難を!」
逃げ遅れた者がいたら私が乗せて運ぼう
特に老人、女性、子供を優先

直接攻撃はなくとも熱波がくるだろうか
『火炎耐性』で対応
レイラ殿や村人を『かばう』

避難誘導完了後は戦場に合流
大事な友人が背にいるのだ、無理はしないとも
レイラ殿が一緒なら心強い
『戦闘知識』を活かし、他の方が番犬の紋章を攻撃できるよう立ち回る



●アーリィ・グロウ
 地に覆われた空は未明のような不気味な明るさを湛え、ガスのような朧げな大気が明かりを幾重にも滲ませる。
 ダークセイヴァーの地底大空洞。そこは地上世界と似て、けれど陽の明るさからはさらに縁遠い土地だった。
 丘の上からは、赤々と燃える竜の火が村を睨む。いつ襲うかもわからない脅威を見て、レイラ・アストン(魔眼・f11422)は眼差しを険しくする。
「事態は一刻を争うわ。行きましょう、プロメテさん」
 名を呼ばれた傍らの少女は、友を護るように一歩前へ歩み出る。仄暗い大地に火を灯すように、鮮やかな髪が風に踊る。
「ああ、行こうかレイラ殿……守り切らなければな」
 村人も、共に戦う仲間も――大切な友人も。プロメテ・アールステット(彷徨う天火・f12927)は手の及ぶ限りのものへと、守護の誓いをあらたにする。
 丘の上、此方の動向を見守るように座する竜の喉元からは、金属をも溶かすであろう温度の焔が漏れ出ていた。
 古来、火はところにより病や不浄を退けるシンボルとして信仰を集めたという。竜のもたらす焔の色を見て、朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は敵わないとでも言うように笑い声を漏らす。
「ひ、ひ、ひ。こりゃムリだ、相性が悪すぎる。火はニガテなんだ」
 人の姿こそすれど、逢真の本質は病毒をつかさどる神。陰の気そのものである彼からすれば、陽の極みたる炎は身を焼き尽くし破滅に至らしめる不倶戴天の敵だ。
「俺は防御に徹させてもらわぁ。そンかわし、村人はこの身に変えても守るからさ……どうにかそれで許しておくれ」
 軛で力を抑えた今の彼では、燃え広がる炎の威を祓うには及ばないだろう。それでもできる事はあると、何かを企むように逢真は笑ってみせる。
「端的に言って最悪ですね。苦手も苦手の状況だァい」
 村の命運を背負ったこの状況は、鈴木・志乃(ブラック・f12101)にとってもやりづらいもので。こみ上げる緊張を噛み殺すように、飴玉をがりっと奥歯で砕く。
「こんな時に私が出来ることね……さて、どうしよう」
 数々のトリッキーな手を駆使して戦う志乃も、守りながらの戦いは不得手であり。何か手を打たねばならぬと、志乃は今も必死に考えを巡らせていた。
 破滅をもたらす、悪しき力。今まさに村を呑みこもうとする竜の姿に、サフィリア・ラズワルド(ドラゴン擬き・f08950)の紫の瞳は揺れていた。
 人でありたいと願うサフィリアにとって、授けられた竜の力は意にそぐわぬもの。自身も複雑な思いを抱えるだけに、竜の力が滅びの契機となる事は看過できるものではない。
 敵が竜であるなら、直接戦いたい気持ちはあった。しかし、それ以上にサフィリアの心は村人たちの方へと向けられていた。
「生きたいと願うなら、一緒に行きましょう。私の『人の寿命』をかけて、守りますから」
 自分にしかできぬ役割と、サフィリアは守りに徹する決意を固める。人でありたいと願う彼女の、人たらしめる部分を喰らい――そして、白銀の飛竜が姿を現した。

 紅竜が身じろぎを見せるのを見て、レイラは水の精霊を呼ぶ。集う精霊たちの力は周囲に満ちる熱気と合わさり、たちまちに蜃気楼を生み出していく。
 竜と村の間へ割り込み、視界を奪うように。濃くたちこめた蜃気楼は炎の熱を遮断し、村人たちの避難経路を確保する。
「炎の幻獣よ、我が身に宿り姿を成せ」
 狐のストラップに込めた魔法を解けば、プロメテの姿は四つ足の獣へと変じていく。尻尾の先に赫々と燃える炎を宿し、現れたのは巨大な赤き狐。
 優しき幻獣は姿勢を下げ、レイラを乗せて走り出した。
 燃ゆる毛並みの狐の背につかまりながら、レイラが声を振り絞る。
「竜がもう近くまで来ているわ。丘とは逆の方角に逃げて」
 狐は元々、ある程度夜目が利く。蜃気楼の中にあっても眼力は損なわれず、プロメテは逃げ遅れた村人の姿を探して村の中を走る。
「竜、竜が……ああ、もうおしまいよ」
 半ば恐慌状態に陥り座り込む女性へ、奮い立たせるようにプロメテが呼びかける。
「大丈夫だ、私達が守る。生き延びたければ落ち着いて避難を!」
 声を受け女性は幾らか身を動かしたが、立ち上がるのは困難に見えた。レイラが手を貸して引き上げ、プロメテの背に乗せる。
 村人たちを安全な方角へと逃がし、レイラが次に救うべき姿を探したその時。
 闇夜を焦がし、無数の炎が舞い踊った。

●死の炎、命ある静寂
 逃げ惑う村人たちに竜よりもたらされた贈り物、それは逃げ場を奪って燃え広がる炎だった。可燃物がなくとも燃え移る魔性の火。それはたちどころに燃え広がり、家々を飲み込む。
「ああ……畜生……」
 逃げる事を諦めた村人は、茫然と迫りくる炎を眺める事しかできなかった。せめて苦しまず短く死ねるようにと、目を閉じる。
 しかし、いつまで経っても死の間際の痛みは訪れなかった。
「死んで、ない……?」
 おそるおそる、目を開ければ。村人の体は、青い炎に包まれていた。
 サフィリアの放つ命の炎。彼女の人の寿命の一部と引き換えに、青い炎は竜の攻撃を阻む。
「助けに来ました! 私の炎が押し留めているうちに、早く……!」
 幾度も感謝を告げながらその場を逃れるのを確かめ、サフィリアは他にも残る村人の元へと向かう。
 そして青々と燃ゆる炎の対岸では、莫大な量の水が滝のように流れ落ちていた。
「降らすったら降らすんじゃ。異端神ならビミョーに効くかも分からんしね」
 志乃が呼ぶのはどこか遠く、何処とも知れぬ海底より流れる大瀑布。天井近くに開けた次元の裂け目より、神気に満ちた水が滝のように降り注ぐ。
「さ、海よ降れ。川よ流れろ。なんなら敵の頭上に落としてやろうか」
 自然の驚異に満ちた神域は異次元の領域へと繋がり、海水に土砂の山、次々と自然界由来の異物を降らせて燃え広がる炎を押し留めていく。
 青い炎を吐き続けるサフィリアが、仲間へ向けて叫ぶ。
「戦いが終わるまで続けます! ですので皆様方、今のうちに村人たちを!」
 周りの猟兵たちが救助、そして戦いに専念できるように、と。二人の呼ぶ海水と青い炎は、竜の炎に付け入る隙を与えない。
 善戦していた志乃は、ふいに風に砂粒が混じっているのに気づく。吹き荒ぶ熱砂が辺りを一変させ、青い炎と神気に護られていたエリアが砂漠の景色へと塗り変えられていく。
「く……私たちだけじゃ抑えきれないですね……!」
 異なる手を打ち出してきた敵に、奥歯を強く噛みしめる。もう溶けて形のない飴玉のかわりに、砂粒がじゃり、と嫌な音を立てた。

 ――ひ、ひ。
 不気味な笑い声が響いたのは、その時だった。
 おそらくは逢真のものと思われるが、彼の姿は風に隠れて見えない。
「過去はお呼びじゃねぇさ。今更しゃしゃり出るのはよしとくれないかねぇ」
 逢真の中で、はめられていた軛がビキリと音を立てる。人の形を保てなくなる代わり、奥底に秘められていた抑制の権能が溢れ、周囲を余す事なく静寂の闇に包み込んでいく。
 この戦いが終わったらくたばるくらいでちょうどいい――何せ神なのだ。宿(からだ)が壊れても死にゃしないと、逢真は潔く割り切って事に臨む。
 ここまで命を賭する理由は、救いたいなどという綺麗なものでなく。逢真の関心はむしろ、命の天秤を保つ事にあった。
 増えすぎた命の芽を摘む。彼の司る病毒はある種、自然の摂理を体現していた。命の尊さなどには別段関心なく、均衡が保たれるなら問題ない――だが。別の種を繁栄させる事無く命を減らし、無尽蔵に世界に満ちるオブリビオンだけは例外だった。
(「俺は救いの神じゃねえが、いまある命はいまある者で奪い合うべきだろう」)
 霧散した体では、もはや声響かせるのも億劫だ。しかし軛をいくら外せど、広がりゆく熱砂の領域に果ては見えない。
 ならばと呼び出したのは、彼の従える数多の眷属。獣が唸り、鳥が舞い、空埋め尽くす蝗を飛魚のような魚が追いかける。
 彼らはみな、逢真の後に付き従うように熱砂の中へと身を投じる。その身を黒い、底なしの闇に包んで。
「できっかぎり頑張ってみたが、それでも漏れちまうなら仕様がねぇ。みぃんな身を挺してかばわせらぁ……!」
 命の形をした死の群れが、溢れる砂粒を覆い尽くし死の闇に沈める。
「……!」
 逢真のそれが捨て身の猛攻だと一目で見抜き、レイラが目を伏せる。だが次の瞬間には、友の背に掴まり杖を構えていた。
「プロメテさん、貴女も無理しちゃ駄目よ? ……私が守るわ」
 熱を阻むよう薄くオーラを展開し、その一部だけを開いて杖の先を突き出す。此れよりこの身は、魔弾の射手――漲る銀の魔力が、弾丸の形へと姿を変えていく。
「大事な友人が背にいるのだ、無理はしないとも」
 下から返る声は、駆けながらだというのに灯火のように優しく温かだ。張られたオーラの膜に明るい色の焔を纏わせ、プロメテは守りをさらに強固にしていく。
 志乃が光の鎖を伸ばして竜の捕縛を試みるも、抑えつけるには力が足りず。弾かれたそれを手早く巻き取り、志乃は後続の味方へと突破を促す。
「竜が本気を出す前に、早く……!」
 手持ちのライフルで紋章を狙い、少しでも気を引けるように弾を撃ち込んでいく。
「私からもお願いします!」
 サフィリアの青い炎が、燃え続ける炎の中へと道を開け。先鋒をつとめた彼女たちの開く突破口から、猟兵たちが次々になだれ込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ハロ・シエラ
お日様になったり人々を守ったり、私よりも私の友人達の方がずっと向いていますが……一人で来たからには、私が出来る限りの事をしましょう。

まずは敵の炎です。
魔の炎ならば、ユーベルコードで起こす風の【属性攻撃】に【破魔】の力を乗せて【吹き飛ばし】てしまいたいですね。
出来れば合体される前に【早業】で。
炎を減らせば住民が逃げる間【かばう】のも少し容易になるでしょう。
自分の身は【オーラ防御】で守ります。
後は敵の動きを【見切り】、風に乗って【ジャンプ】し、紋章にレイピアを突き立てます。
首筋であればそもそも守りが硬いかも知れませんが【鎧無視攻撃】で鱗の隙間でも狙い、内部に魔力の【衝撃波】をくれてやります。


ジャハル・アルムリフ
太陽の眩しさも熱も
知らぬままで逝かせはすまい

此方を見下ろす形の竜を仰ぎ
死角を取りやすいのは――

覚悟決めれば闇に紛れながら羽撃き、空へ
竜の首筋、その上空から真っ直ぐに降下
妨害は百も承知
直接首を狙っていると見せかけ
裂いた掌から【怨鎖】撃ち込み
牙を、炎を避けながら竜の身体へ絡める
ほんの僅かでも動きを妨げられるよう

遠い親戚…と言うには小さくて悪いが
相手になるぞ、炎の竜よ

竜の巨体自体を遮蔽物に、駆ける足場に
無論、隙あらば紋章へも鎖を放ち
此方を脅威と認識させ

余所見している暇はなかろう?
灼かれ焦がされようと今は捨て置き
村人達に余波が及ばぬよう
地上を確認しながら空中戦を続ける

あの光の下でこそ
咲う顔もあるだろう


シキ・ジルモント
◆SPD
宇宙バイクに騎乗
出せる限りの速度で走り、敵を観察しつつ回り込むように接近する

十分接近したらユーベルコードを発動
四肢や頭部に絞っての射撃によって怯ませ、敵を覆う熱波を少しでも鎮めたい
熱波が弱まったら『番犬の紋章』を狙ってありったけ銃弾を叩き込む
熱波に曝される危険を承知で接近したのは、射撃の威力を高める為
それから、敵の弱点である番犬の紋章の位置を確認する為だ

敵がこちらを認識したら、あえて敵に追わせつつ村から遠ざかる
紋章への攻撃によるダメージはもちろん期待するが、ひとまず気を引く事が先決だ
最終的に倒すにしても、広範囲攻撃の射程内に村がある場所で戦い続けるのは危険だ
できるだけ村から引き離したい


アレクシア・アークライト
吸血鬼に支配された世界の地下深くには
さらに吸血鬼に支配された世界がありました

……だなんて、本当に救いがない世界ね
でもそれだけ、この世界の根源に近付けているってことかしら
さて、まずは竜退治と行くわよ

第一目的は村人の保護
それができなきゃ、あいつを倒せたとしても任務は失敗ね
了解

UCで念動力を強化
力場を防御&情報収集用に広域展開し、村人全員の居場所を確認
逃げ遅れている村人がいるなら、念動力で直接退避させる

あいつが動き始めたなら、頭上から岩盤を叩き落とし、生き埋めにするわ
ただの質量攻撃。ダメージは与えられないでしょうけど、時間稼ぎにはなるわよね

戦える状況になったら、全ての念動力を紋章の1点に集中して攻撃


リーヴァルディ・カーライル
…地下世界でも人々はこうして虐げられているのね
これ以上、彼らの生命を奪わせたりしない。必ず、救いだしてみせるわ

武器改造して大鎌を大盾に変形させてUCを発動し、
"盾、御使い、黒炎鎧、魔動鎧、岩肌、軍略、火避け"の呪詛を付与

●団体行動の知識を加えた戦闘知識を頼りに無数の浮遊盾を乱れ撃ち、
村人や仲間を●かばうように●追跡する空中戦機動の早業で、
敵の火属性攻撃を●火炎耐性の●オーラで防御する●盾で受けるわ

…術式換装、炎神の盾

…炎はこの盾で防ぐわ。今のうちに逃げなさい!

第六感が好機を捉えたら無数の浮遊盾を切り込ませ、
竜に張り付き炎の●力を溜めて封じる拘束具に●防具改造する

…術式反転、炎神狩り



●救いはあるか
 貧しい大地に芽吹いた作物の苗は、哀れ炎にまかれて薪となった。燃え盛る炎を横目に見送り、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は遣り切れない心中を静かに吐露する。
「……地下世界でも、人々はこうして虐げられているのね」
 地底空洞に広がる光景は、彼女がこれまでに見てきた世界の現実と悲しいほどに符合する。吸血鬼や異端の神々の支配は、世界の全域に及んでいた。新たな土地を訪れるたび、この世界に安住の地はないのかと暗澹たる思いが沸き起こる。
「吸血鬼に支配された世界の地下には、さらに支配された世界がありました……だなんて。本当に救いがない世界ね」
 アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)は、これが残酷な寓話で済めばどんなに良かったかと目を閉じる。再び目を開けても広がるのは、微塵も変わらぬ仄暗い景色。
 しかし、切り替えの早い彼女はすぐに次へと関心を移す。
「それだけ、この世界の根源に近づけているってことかしら」
 これまで迫れていなかった地底の領域。ここにも版図を広げていけば、いずれは人類を吸血鬼の支配から解放する手立ても見つかるかもしれない。
 まずは竜退治と行くわよ――そんな声を響かせるアレクシアに頼もしさを感じ、隣を駆ける少女が微笑んだ。
「お日様になったり人々を守ったり、正直そういった事は私よりも私の友人達の方がずっと向いていますが……」
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)が請け負う仕事は、専ら戦いに関するものばかり。誰かを護るため剣振るうよりも、純粋に敵を斬り伏せる方が向いている自覚があった。
 けれど、縁あって訪れた以上は見て見ぬふりをできるはずもなく。
「……来たからには、私が出来る限りの事をしましょう」
 俊敏な動きでいつでも斬り抜けられるよう、レイピアを抜き払い風を切る。
 敵のもとへと駆けながら、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)の双眸は自分とは似つかぬ紅竜の躯を見据えていた。
 黒龍と呼ぶに相応しきジャハルに比べ、相手の方が明るい色こそしていたが。
 赤々と燃え盛る竜の炎は吸い込まれそうに昏く、そこに命の色はない。命育む太陽の色には遠く及ばないと、彼は思った。
 記憶を失くしたおかげでジャハルの知り得る景色は限られていたが、星空思わす翼で世界を駆け巡る彼は、自然界の美しき色を知っていた。
 あの光の下でこそ、咲う顔もあるだろう――だから。
「太陽の眩しさも、熱も。知らぬままで逝かせはすまい」
 翼を広げ、闇に紛れるように上空へと羽撃く。その飛翔の音を受け、一同は一斉に散開する。
「これ以上、彼らの生命を奪わせたりしない。必ず、救い出してみせるわ」
 決意を竜へと突きつけるように。リーヴァルディの声が、高らかに響いた。

 バイクの駆動音が、薄暗い大地に淡々と響く。道中にある小石を跳ね飛ばし、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は出せる限りの最大速度で竜の元へと迫っていた。
「……」
 寡黙な男は言葉もなく、気を調えるように短く溜息をつく。跨るバイクは彼の性格を如実に表すように、機能重視のカスタムが施されていた。宇宙空間と異なり縦横無尽の動きこそできないが、高々と機体ごと跳躍する程度なら造作もないだろう。
 シキの視線の先では、我先にと飛び立ったジャハルが竜の首を狙っていた。
(「斯様な巨体の竜であっても、死角をとれば――」)
 首筋に鈍く輝く紋章めがけ、短剣を突き立てるべく急降下するも、その動きは読まれていた。羽虫を払うように動いた首。弾き飛ばされたジャハルの手首から、鱗に裂かれて鮮血が飛び散る。
 しかしジャハルは怯む事無く、淡々と敵に挑みかかっていく。
 地に満ちゆく魔性の炎は、当初の勢いこそ失ったがいまだ健在だった。隙を見て燃え広がる炎を消し止めようと、ハロがレイピアで空を切る。
「いかに魔の炎でも、この風なら……!」
 虚空を切り裂く剣閃から、一拍遅れて嵐が巻き起こる。いかに可燃物なしで広がる炎といえど、破魔の力を乗せた風には弱く。紙が引き千切れるかのように、炎は裂かれて小さく消えていく。
「このまま、火が合わさる前に鎮火してしまえれば……」
 あちこちから漏れいずる火はキリがないが、せめて住民が逃げるまでの時間は稼ぎたい。村の方角により近い方から、ハロは剣を振るって消し飛ばしていく。
 しかし。そんなハロの思惑を笑うように、再びの熱波が訪れようとしていた。
 陽炎を伴い、熱く竜の体をとりまく熱の塊。生半可な守りでは役に立たぬとみて、リーヴァルディは大鎌を大きな盾に変形させる。
「……術式換装、炎神の盾」
 彼女が編み出した吸血鬼狩りの業は、何も攻めに由来するものだけではない。呼び出した物は、浮遊する盾。僅か一瞬に満たぬうちにリーヴァルディの周りに並んだ盾は、彼女の意を受けて自在に飛び交う。
 襲い来る熱波にあわや飲まれかけた村人を、間一髪割り込んで盾が受け止める。呪詛の名を冠する盾は村人や仲間を追随するように動き、身に及ぶ火炎から護った。
「あ、ありが……」
「感謝はあとで。炎はこの盾で防ぐわ。今のうちに逃げなさい!」
 頷き走り去る村人を見て、リーヴァルディは逃げ遅れた人を探すべく更に盾を展開していく。
「第一目的は村人の保護。それができなきゃ、あいつを倒せたとしても任務は失敗ね……了解したわ」
 作戦主旨を繰り返すように述べたアレクシアは、自身をとりまく念動力を強めていく。視界だけでカバーしきれないのであれば、見えない箇所にまで手を伸ばせばいい。昂る精神から溢れたサイコキネシスが力場を広げ、物陰にうずくまっていた村人を柔らかく捕らえた。
「ひっ……お助け……!」
「バカ言わないで、助けに来たのよ!」
 未知の力に怯えるのも構わず、念動力で強制退避させる。誤解は後でいずれ解けるだろう――すべては命あっての前提付きなのだ。
 宇宙バイクで十分に距離を詰めたシキが、敵の四肢へ向けてハンドガンを構える。
「……ただでさえ場所を取る図体だろう。少しは大人しくしたらどうだ」
 枷の魔力を籠めた銃弾が、次々と竜の四肢、頭部へ命中する。働いた魔力が全身を鎧の如く覆っていた熱波を弱め、徐々に封じ込めていった。

●救いの在り処
 膠着状態を嫌ったか――巨山の如き竜の身体が、いよいよ動く。
「そうはさせないわ……!」
 念動力で持ち上げた岩盤を、アレクシアは竜の頭上へと運ぶ。いかに強化されたサイコキネシスであっても、竜の巨体を生き埋めにするだけの量を運ぶのは至難の業だ。だが、頭部にガツンと食らわすだけなら何とかなるだろう。
「随分愛想がないのね。でも、時間稼ぎにはなったかしら……?」
 紋章以外への攻撃は効果が薄いと予想はしていたが、アレクシアの狙いは其処ではない。こちらへと首を向けて睨む竜に、アレクシアは目的が果たせたことを実感する。
 出来得る限り、村人たちの逃れる時間を稼ぐ。その考えは、シキもまた同じだった。
 熱波が弱まるのを待って、シキはあえてバイクで大岩に乗り上げる。サスペンダーが悲鳴をあげ、機体は高々と宙を舞った。
 視界がめまぐるしく回るのも構わず、シキは銃を構えてタイミングを待つ。竜の首筋に鈍く輝く番犬の紋章は、シキの銃弾の届く場所で無防備な姿を晒していた。
(「……今、だ」)
 捉えた位置へ吸い込まれるように、銃弾を立て続けに発射する。銃弾を受け、紋章は命あるかのように明滅する。

 ――!!

 竜の喉からはじめて、悲鳴のような鳴き声があがった。回転しながら地上へ降り立ったシキは、竜の首が自分の方を向くのを背中越しに感じてバイクを駆る。
(「ひとまず気を引けたなら、それでいい」)
 最終的に倒すにしても、村付近で戦う事は避けたい。そう考えてシキは、陽動に自身の全力を注いだのだ。
 地響きのような翼の音が、砂粒と共に死の気配を運ぶ。竜はシキの背にブレスを浴びせようとしたが、しかしそれを阻む者がいた。
 高々と首をもたげた竜の頭を、真上から『牙』が穿った。紅竜には確認しようもなかったが、掌から黒血を鎖のように伸ばしたジャハルが竜の首を捉えていた。
「遠い親戚……と言うには小さくて悪いが。相手になるぞ、炎の竜よ」
 そのままギリギリと巻き付けるように鎖を絡めれば、竜の動きは徐々に鈍る。巨体の上を駆けながら、時折引き千切ろうと反駁するそれを押し留め、ジャハルは他の者にも反転攻勢を促した。
 やがて竜の全身が爆炎に包まれ、ジャハルは上空へと飛びずさる。
 炎滅の吐息。それがもたらされれば、村にも猟兵にも壊滅的な打撃を与えるだろう。
「あれを打たせちゃ駄目ね。全力を注ぐなら今よ……!」
 アレクシアは周囲に転がる目に付く限りの農具や石礫を念力で拾い、尖った側を紋章へと突き立てていく。
 続いて敵の動きを封じようと、リーヴァルディが浮遊盾を一気に切り込ませる。
「……術式反転、炎神狩り」
 炎に耐性を持つ盾は、一斉にびしりと張り付かせれば炎を封じる拘束具となる。そのまま炎熱を竜の体内に閉じ込めるように、盾はくまなく取りつき竜の動きを封じていく。
 身じろぎする巨体が疎ましげに二人の方を見、喉元に火炎が零れる――が。
「余所見をしている暇はなかろう?」
 存在を忘れたとは言わせまい、と。ジャハルがするりと伸ばした鎖が、今度こそ竜の身体の柔い所――即ち、紋章を深々と刺し貫く。
 再び、悲鳴じみた咆哮が大地を揺らがした。その轟音に紛れ、猛烈な上昇気流が地より吹き上がる。
 勢いに乗って高々と身を翻したのは、ハロ。風繰る力で火を鎮火し終えた彼女は、レイピアの切っ先へ荒れ狂う気流を集めていく。
「あとは、これで……!」
 鱗の隙間を突いて刺し込まれたレイピアの先から、猛る暴風がほとばしる。注ぎ込まれた魔力は、竜の体内を深々と切り裂く。苦しみを表すように、断続的な咆哮が幾度となく上がった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

春乃・結希
地上も、まだ太陽の見えない闇の世界だけど
でも、確実に希望へ進んでるから
ここの人達にも、見せてあげたいな

紋章を何度も狙うチャンスは無いやろうから
一撃に全てを賭けます
『with』。貴方の力なら、それで充分だよね

UC発動
村から反対方向で戦いながら機会を伺う

ブレスが噴かれる気配があれば、空へ向かって吹かせるために
竜よりも上へ飛んで引きつける【空中戦】
身体を覆う暴風【オーラ防御】
焔を使う者としての【火炎耐性】
絶対に負けないという【覚悟】で耐え切る

攻撃後の僅かな隙。多少強引でも飛び込み
『with』を叩き付ける【カウンター・重量攻撃】

あなたの炎は、おひさまと違って優しさが無いから
熱いだけでは、嫌われますよ


七那原・望
太陽の光も知らず、ただ必死に生きていた彼らの末路があれでは、あまりにも……

【Laminas pro vobis】を発動。こんな結末には、させたくない。この望みを村人達を護る防御力に特化させて挑みます。

アマービレで呼んだねこさん達にも協力してもらいながら、村人達と自身を護る【多重詠唱】【全力魔法】の【オーラ防御】【結界術】を。どれほどの攻撃でも絶対に防いでみせます。

【第六感】と【野性の勘】で敵の動きや攻撃を【見切り】、番犬の紋章を狙って分離させたセプテットとオラトリオによる【スナイパー】【一斉射撃】で攻撃を。

最期の瞬間まで絶対に村人に被害が出ないように、攻撃を行いつつも結界の維持に努めます。


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

人を地の底に縛り、仰ぎ見る意思すら焼き尽くすなんて
…行きましょう、ナイくん。民が待っています!
偽りの太陽を沈めるため、我ら『勇者』の出番です!

翼で空を飛び、上空から気を惹きます!
他者と連携、隙あらば首筋の紋章に斧を叩きつけましょう
無辜の民に矛先が向かぬよう…常に正面から戦いを挑む必要があります【勇気】
こちらです!貴方の敵はここにいますよ!

【盾受け・オーラ防御・火炎耐性】
勇者とは守る者、ならば今こそ命を張る時!
耐え切り、竜が大爆発する直前
至近距離、民がいる方角に黒翼の盾を構え立つ【怪力】
全て守り切ってこそ、わたしたちの勝利です!
ナイくん、そしてモナーク、わたしに力を…!


ナイ・デス
ソラ(f05892)と

気紛れに、いつ滅ぼされてもおかしくない
そんな環境で生きてきた人々、なのですね

……ソラ。彼らにおひさま、みせてあげましょう

私が、村を守ります。ソラは思い切り、戦ってください……!

竜と村の間に降りて『光の鎧』展開
これは、戦う光……はじめましょう。守り、救う戦いを

光に、大気と大地を吸収させ、風と土の鎧を纏わせて
炎や熱波から、440の騎士に村を守らせる
風が炎熱を散らし、土が防ぎ、光が炎熱を、砂漠化を吸収して鎧を強化する

余裕があれば【念動力で吹き飛ばし】突撃させて支援を

竜の絶命時、大爆発から盾となるソラに光を
騎士の光を集め、ソラを覆い、鎧を
盾が防ぎ、光の鎧が吸収して、被害を0に!


ナギ・ヌドゥー
掌に【殺気・呪詛】を込め【呪殺弾・制圧射撃】の【弾幕】を放つ
ダメージは通らなくてもこの殺意と呪いは感じるだろう?
ちっぽけな人間が神に挑もうとしているのだ、怒りの炎を滾らせてみろ!
奴を怒らせUC「闇舞呪装」展開
飛翔し敵を【おびき寄せ】村から遠ざけ【空中戦】を挑もう
【殺気】を帯びた【残像】を無数に発生させ炎攻撃の狙いを外す
全ては本物の殺意だが実体は一つ 容易には見切れまい
残像群と共に特攻し奴の懐に飛び込む
無尽の殺意こそ己が力の源
内なる武器『冥き殺戮衝動の波動』を首筋の紋章に流し込んでやるぜ
暗黒の呪いに蝕まれるがいい!



●夜空を焦がす
 戦いの趨勢はゆっくりと、確実に猟兵たちの方へと傾いていた。近づきつつある勝利を確かなものとすべく、最後の部隊が到達する。
「地上も、まだ太陽の見えない闇の世界だけど……確実に希望へ進んでるから」
 これまでに数多くの人類砦を救ってきた春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)は、実感のこもった声で呟く。
 幾度攻め入られようと、この世界に住む彼らは前を向いてきた。その強さたくましさにかえって励まされた事も、これまでに何度あっただろうか。
 闇の救世主として立ち上がった、彼らの生き様を思い浮かべる。
「ここの人達にも見せてあげたいな」
 その為にもまずは窮地を脱してもらわねばと、結希は伴侶に等しき白の大剣『with』を持ち上げる。
「太陽の光も知らず、ただ必死に生きていた彼らの末路があれでは、あまりにも……」
 グリモアの未来視に見えたという凄惨な光景を想像し、七那原・望(封印されし果実・f04836)の顔が僅かに俯く。封印の目隠しにより、彼女が目元に宿す感情は窺えない。けれど、望が何を思っているかは周囲の者にも痛いほど伝わってきた。
「人を地の底に縛り、仰ぎ見る意思すら焼き尽くすなんて」
 長きにわたり地の底で過ごした住人たちは、魂を牢獄に囚われたに等しい。その境遇は、自由を奉ずるソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)にとって許容できる範疇を超えていた。
 常時陽の明るさを宿す竜騎士の声音にも、怒りか悲哀かは知れぬが――今回ばかりは揺れるような響きが混じっていた。
「気紛れに、いつ滅ぼされてもおかしくない……そんな環境で、生きてきた人々なのですね」
 つられて気が沈みそうになり、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はぎゅっと目を瞑る。けれど、いつまでもそうしてはいられない。
 常に明るさを振り撒き周囲を励ますのは、少女の方だが。今回先に声を響かせたのは、ヤドリガミの少年だった。
「……ソラ。彼らにおひさま、みせてあげましょう」
「はいっ……! 行きましょう、ナイくん。民が待っているとあれば、我ら『勇者』の出番です!」
 二人の声を受け、望が顔を上げる。赤い燐光が身体を包み、新たに纏ったドレスの裾がはらりと風に舞う。
「わたしも、戦います。かなしい結末には、させたくありませんから」
 強く籠めた願いは、光となり。後ろに背負う村を護るように、光の結界が幾重にも形成されていった。

 延焼をもたらす、魔の炎。一度は鎮火された焔が、再び地をなめる。放たれた竜の炎と入れ違いに、竜の体表近く、鱗の上で音を立てて呪詛の塊が爆ぜた。
「ふん……深くは至らずとも、この殺意と呪いは感じるだろう?」
 掌に闇色の塊を浮かべ、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は不敵に笑う。そのまま踊るように呪殺弾を投げ、竜の気を自身へ向けようと爆ぜさせる。
 異端の名こそついてはいるが、目の前のモノは神に他ならない。神殺しを背負えるのだ――そう思えば、悪魔の心臓が胸の中で脈を立てて躍った。
 村を救うなど、ナギにとってはおまけでしかないが。人に牙剥くこの竜から村を庇えば、『合法的に』『誰からも責められず』その業深き殺しを果たせるのだ。
 殺意に身を委ねるナギの中、微かに残る理性が振るう暴力に指向性を持たせる。
「ちっぽけな人間が神に挑もうとしているのだ、怒りの炎を滾らせてみろ!」
 ナギの挑発を受け、次々と魔性の炎が押し寄せる。その動きが村でなく猟兵たちへ向けられているのを確かめ、ナイはさんざめく光を展開した。
「これは、戦う光……守り抜きましょう、救いをもたらすために」
 自然を鎧とする光の騎士が、灰色の大地に並び立つ。風を纏い、あるいは大地でアーマーを作った騎士たちは、押し寄せる炎をものともせず立ち向かい、炎熱の波を押し留める。
「結界にひびが……ねこさん、お願いします」
 白の鈴付きタクトを機敏に振るい、望は友たる魔法猫たちを呼び寄せていく。彼女一人では手の及ばぬ結界の綻びへ、心優しき猫は魔力を寄せ集めて穴を塞ぐように浴びせかける。
 守りを他の猟兵たちに任せ、結希は攻めの一手を仕掛ける。村から反対方向にいる今、背に庇い立つものは何もない。
「私は負けない、どこまでも強くなれる……!」
 遠慮の枷を外すと同時、烈風が吹き荒れた。強烈な自己暗示が結希の全身を覆い、纏う風のエネルギーは空翔ける事すら可能にしていく。
 そして質の近い、けれど対極のエネルギーを宿す者がここに一人。
「天魔となり闇に舞う……呪殺舞装展開」
 結希の気が自己を高めるものなら、ナギの纏う気は他者への害意。膨大な殺気を呪殺の装へと変え、ナギはどす黒い殺戮衝動をまき散らして空中戦を挑む。
 捨て身に等しき猛攻を二人は次々と見舞う。しかし、存在を賭けて戦うのは敵もまた同じ事。
 ごぽり――溶岩が泡立つように、竜の喉が膨れ上がるのを望は見た。
「……来ます」
 警戒の声に、猟兵たちの緊張が高まる。大気を、そして自らの命すらをも焦がし、炎滅の吐息がもたらされようとしていた。

●天を衝く炎
 竜の身体を覆う熱は高まり、もはや竜の形をした炎となっていた。どろりと形をとろかす炎は、触れれば溶岩のように弾け、瞬く間に辺りを飲み込むだろう。
 ブレスが来る瞬間、撃つ方角を誘導しようと結希は真上に飛び上がろうとし――間に合わない、とすぐに判断を改めた。
「そげな事、させへんよって……!」
 力いっぱいに『with』を振り抜き、顎の下から一気に跳ね上げる。飛び散る炎熱のブレスの欠片を浴びたが、苦痛に顔を歪ませまいと意地と覚悟で耐え凌ぐ。
 地表では降り注ぐ爆炎のシャワーを、ナイの光の騎士、そして望の多重結界が受け止めていた。地を溶かすブレスの影響を最小限に押し留め、溶けた大地の上に立つ仲間の負担を軽減する。
「く、うっ……」
 炎熱の痛みに耐えながらも、望は分離させた合体銃を宙へと散らす。隊列成す銃士のように規則正しく並ぶ銃へと、色持つ影が手を伸ばした。
 エクルベージュ――実体を持った色のある影は、銃の引き金へと指をかける。そのまま狙いを定め、七発の銃撃が間髪入れずに竜の紋章へと撃ち込まれていく。
「ソラ、今のうちに……!」
 光の騎士を念力で飛ばして支援に向かわせ、ナイが空へ向けて呼びかける。
 少年の声を受けた時、少女は既に翼を広げ大空を舞っていた。雷神宿す大戦斧をその手に抱き、竜の真正面から勇ましく突撃を仕掛ける。
「こちらです! 貴方の敵は、ここにいますよ……!」
 ありったけの声で存在を主張し、振り向いたその顔めがけ斧を振り下ろす。まだ浅い、狙うべきは此処ではない。再び斧を持ち上げたソラスティベルは、今度こそ紋章めがけて斧を叩きつける。
 急所を打たれ、身体がこわばるように硬直した僅かな隙。見逃さず、強引に割って入った結希が、大剣を大上段に構える。
「何度も狙うチャンスは無いやろうから、一撃に全てを賭けます……『with』。貴方の力なら、それで充分だよね」
 結希の無垢なる想いを受け、真白き刀身が露わになる。それは戦いを治め、苦痛に満ちた物語を終わらせる為の、しろしめす正義の剣。
「熱いだけでは、嫌われますよ。……あなたの炎は、おひさまと違って優しさが無いから」
 重量を伴う大剣の一撃が、紋章を鱗ごと深々と断ち割った。
 竜との戦いは既に佳境。溢れんばかりの殺意を押し殺す理由はもはや、どこにもない。無数に生じた残像群を伴って、ナギは竜の懐へと飛び込んでいく。
 無尽の殺意こそが、ナギの力の源。群れ成す影は、勢いを殺さず紋章の中核へと飛翔突撃を仕掛ける。
「全ては本物の殺意だが実体は一つ……容易には見切れまい」
 鋸のような刃を持つ鉈が食い込む。まだだ。傷口に刃を埋め込むように、滾る殺意の衝動を流し込む。
 闇色の炎が、竜の首を壊死させるように黒々と取り巻く。竜はなおも逃れようともがくが、その抵抗は無意味だった。
「このまま全部首筋へ流し込んでやるぜ……暗黒の呪いに蝕まれるがいい!」
 バキリ――何かが砕ける音が、ナギの手元で響いた。

 爆炎をまき散らし、竜の巨体が大きくのたうった。振り払うように首を振った竜の頭部が千切れ、泣き別れしたまま大地へと堕ちる。
 しかし、それで終わりではなかった。首の断面から炎の塊があふれ出し、辺りの大気を飲み込んで大きく成長する。
 この敵の厄介な特性――命が討たれた時、焔は大爆発を引き起こす。これを放置すれば、後には草木の一本も残らない事は明白だった。
「来ましたね……ナイくん!」
 ソラスティベルが黒翼の盾を構える。黄昏の竜の力宿す盾は、少女の揺らがぬ思いを受けていま巨大な竜翼へと変形する。
「勇者とは守る者、ならば今こそ命を張る時! 閉ざして、黒鋼の城壁よ!」
 味方を護るように展開される、防護の壁。加えてナイがありったけの光をかき集め、ソラスティベルの身体へと加護を宿す。
「ソラは……私が、守ります……!」
 集う光の騎士たちは、防御陣形をとって最後の爆発に備える。しかし、たとえどんなに順調に事が運んでも――二人の力だけでは、被害を無にとまではいかなかっただろう。
 赤い光を宿し、六角形のハニカムタイルが浮かび上がる。望の生み出す光の結界が、村の周囲を取り巻いていた。
「最後まで、気を緩めず……わたしが、余波を防ぎます」
 結界の形は、力を流せるよう楔形に。二人に中央の護りを任せ、望は襲い来る爆風から村を守れるよう結界を配置していく。
 やがて、限界まで膨れ上がった炎が一気に収束する。
 竜の姿が溶け消え、次の瞬間――音もなく、大地が揺れた。耳をつんざくような大気の揺れは、焼き尽くされて無になった空間へとなだれ込む。
 鼓膜がビリビリと震えた。盾持つ手が震えた。衝撃に全てを持っていかれそうになりながら、陽の娘は叫ぶ。
「全て守り切ってこそ、わたしたちの勝利です! ナイくん、そしてモナーク、わたしに力を……!」
 ナイの光が衝撃を殺し、巨大な漆黒の竜の翼が仲間を、村を庇い立つ。粉塵が風によって遠く運ばれていき――そして。

 湿っていた筈のダークセイヴァーの大地は、いまや火の舌の這う焦土地帯と化していた。猟兵たちの立つ場所を川の中州のように残し、視界の先には変わり果てた風景が続く――だが。
「まもり、きれた……のですね」
 結界の向こうに残る家々を見て、望はまだ震える喉で声を絞り出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ディオ・デモン』

POW   :    燃やし穢す火の粉
【松明から飛ばす火】を降らせる事で、戦場全体が【焦熱地獄】と同じ環境に変化する。[焦熱地獄]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    分かたれる頭
【身を引き裂くことで、もう一方の自分】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    二つ頭の悪魔
【溢れ出す暴力への欲】に覚醒して【巨大な二つ頭の悪魔】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 爆炎の後に訪れる静けさは、かえって耳に痛く感じた。
 変わり果てた大地の上、残り火の弾ける音だけがそこかしこで響く。
 紅竜の最後の足掻きは大地を死の色に染めたが、これで危機は去ったろうか。

 ――否。

 遠くに揺れる松明の灯り。あれは村人のものではない。
 双頭の悪魔が、各々の武器を手に群れ成してこちらへと押し寄せているのだ。

 悪魔が火の粉を降らさずとも焦熱地獄に変えられたこの大地。
 とはいえ、竜を倒した後では個々の強さはさしたるものではない。

 問題なのは、数だ。
 猟兵たち全員を合わせても遠く及ばぬ敵影の数。
 殺戮と暴虐の予感にギャアギャアと声を立てるそのけたたましい様子は、
 力持たぬ者には終末の訪れにも等しい。
 今はこちらに関心が向いているのが、せめてもの救いだろうか。

 だが万一、村人がこの悪魔と出くわせば。
 悪魔は事の因果関係を考える程度には知恵があったが、
 思いやりを抱くほどに知能や思慮深さはないらしい。
 支配下に置いていた住人達が家屋から逃れているこの状況に、
 奴らがどう判断を下すかは言うまでもないだろう。

 はるか後方では、一時難を逃れた村人たちが身を寄せ合い、固唾をのむ。
 脅えながら事態を見守る彼らの目は、猟兵たちが救い主なのか、
 破滅をもたらす使者なのかを見定めるようであった。
ハロ・シエラ
あの竜の後にまだこれだけ控えていましたか。
かなり力を使ってしまいましたが……まだ戦えます。
早めにけりを付けましょう。

どうやら敵は更に倍に増える様子。
ですが身を引き裂くのに一瞬と言う訳には行かないでしょう。
敵陣に【切り込み】つつレイピアで【なぎ払い】少しでも敵の数を減らしましょう。
なるべく増える前に【先制攻撃】を仕掛けたい所ですが、その内囲まれてしまうでしょうね。
ですがそれも想定内です。
攻撃を【激痛耐性】で押し殺しながら、ユーベルコードによる【範囲攻撃】でまとめて【焼却】してやります。
味方から離れる様に、突きを浴びせるなどして上手く敵を【おびき寄せ】なければなりませんね。


春乃・結希
凄い焔だったね、with
…本当はちょっと羨ましかった
私も、あれだけの力が使えたら
本当に絶望を全部消すことだって出来るんやないかって
…うん。今は目の前の絶望から、海に還そう

UC発動
羽撃きに乗り、敵の群れに飛び込む
背後を翼で護り、目の前の敵を『wanderer』で蹴り飛ばし
『with』で叩き潰し、奥へ奥へ【怪力】【重量攻撃】
あなた達の火はこの程度ですか?
竜と比べたら、火の粉にも劣りますね【火炎耐性】

周囲を完全に囲まれたところで燃え盛る翼を大きく広げ
周囲の敵を焼き払う【焼却】

闇の世界に光を灯していく人たち
ひとりだって欠けさせたりしない
おひさまが戻ったこの世界を
いつか旅してみたいから


リーヴァルディ・カーライル
…そこまでよ。此処から先には行かせない

…お前達、過去の存在が支配する歴史は今日で終わり
これからは今を生きる人々が明日を築いていくのよ

左眼の聖痕で紅竜の魂の存在感を暗視して見切りUCを発動
自身の生命力を吸収して魔力を溜め降霊した魂を浄化し、
紅竜の異端神を炎の精霊竜化して召喚するわ

…来たれ。世界を焼き尽くす紅竜の魂よ
我が声に応え、再び甦り、彼の者に炎滅の吐息を浴びせよ

爆炎のオーラで防御した精霊竜を空中戦機動で切り込ませて、
限界突破したブレスを乱れ撃ち敵陣をなぎ払う火属性攻撃を行う

…手数が足りないならば増やせば良い
例え紋章が無くとも、あの程度の敵ならば問題無いはずよ


…心配しないで。あの竜は味方だから



●幽けき曙光
 焼け焦げた大地を、黒々とひしめく影が埋める。敵の影そのものは暗くて見えないが、煌々と揺れる松明の炎が敵勢力の多さを表していた。
「あの竜の後にまだ、これだけ控えていましたか」
 ハロ・シエラは敵の大群を見て率直な感想を漏らす。先の戦いで酷使した体は今にも悲鳴をあげそうだが、どうやら弱音を吐ける状況ではない。一度緩めた気を張り直すように、レイピアの柄を握りしめる。
 先の炎を思い返し、春乃・結希はいまだ高熱を放つ愛用の大剣に呼びかける。
「凄い焔だったね、with」
 竜の焔は、慈愛の欠片もない熱量の塊でこそあったが。大地を焦がすその炎の熱に、内心では羨ましさも感じていた。
(「私も、あれだけの力が使えたら」)
 この世にはびこる絶望の闇を消し去る事すら出来るのではないかと、そう思わせる力が紅竜の炎にはあった。
 強すぎる願いは時に、自らをも焼き尽くす――果たして少女は、その事に気づいているのか。結希の表情が僅かに翳るのを見て、ハロは意識を戦場に呼び戻すように声を投げかける。
「かなり力を使ってしまいましたが……まだ戦えます。早めにけりをつけましょう」
「その通りね。そろそろ決着をつけましょう」
 傍らに立つリーヴァルディ・カーライルもまた、やがて開かれる第二の戦端に備えた。手にした大鎌だけでは、護り切れる命の数も限られるだろう。もっと多くを守るため、敵を屠る算段を立てながら武器を構える。
「これからは今を生きる人々が明日を築いていくのよ。過去の存在が支配する歴史は、今日で終わりにしましょう」
「……はい」
 ハロ、そしてリーヴァルディの言葉に頷きを返した後で、結希は胸に抱くwithに視線を落とす。
「うん。今は目の前の絶望から、海に還そう」
 松明の火は徐々に近づき、こちらを取り巻くように視界内の左右に広がっている。その光景は、両者が接するまで時間の猶予がない事を示していた。

 先陣を切ったハロの眼前、双頭の悪魔がニタリと笑みを浮かべる。
 悪魔は躊躇いもなく手に持った鉈をずぶりと自身に突き刺し、身体を裂く。悪辣極まりない異様な光景ではあったが、すぐにその意図は判明した。
 裂かれたそれぞれの半身の、太腿の付け根から異形の脚が生え伸びる。分かたれた分身はそれぞれ別の悪魔として、活動を始めようとしていた。
「倍に増える力。厄介極まりない、ですが」
 痛みに強い悪魔といえど、身を引き裂くにはひと手間要する。生じた隙を好機とばかりに、ハロはレイピアを振るい、敵陣真っただ中へと斬り込んでいく。
 猟兵たちと悪魔の入り乱れる乱戦模様。結希もまた、緋色の翼を広げて敵の群れへと飛び込んでいく。闇夜を焦がす、焔の翼。明るい炎は心に湧き出る昏きものを祓い、背にする村人たちの命を庇って鮮やかにはためく。
 眼前に立ち塞がる敵の頬を魔導ブーツで蹴り飛ばし、なおも食い下がる敵へ高々と掲げたwithの一撃を見舞う。
「あなた達の火はこの程度ですか?」
 敵の前進を押し込むように阻み、奥へ奥へと追いやっていく。彼らの掲げる松明は竜と比べれば、火の粉にも劣る――そう、結希は思った。
 隙を見て村人の方へ向かおうとした敵の前には、リーヴァルディが立ち塞がる。
「そこまでよ。此処から先には行かせない」
 紫の瞳の奥、左眼に宿る聖痕が光を湛え、闇の中に巨大な影を呼び覚ます。
「手数が足りないならば増やせば良い……来たれ、世界を焼き尽くす紅竜の魂よ。我が声に応え、再び蘇れ」
 自身の生命力を糧に呼び寄せたものは、先ほどまで敵であった紅竜の異端神。猟兵たちを苦しめた焔が、再び現世へと蘇る。
 しかし、まだだ。それだけでは足りない。リーヴァルディは持てる魔力で悪しき魂を浄化し、紅竜を今この場限りのしもべとして侍らせる。
 ゆらめく陽炎を身に纏って立ち昇る竜の巨体は、悪魔たちにとって絶望の化身に等しい。何せ門番として従えていたのだ、その強さは保証つきであった。
 くわえて、紋章がなくなりオブリビオンとしての意思も失った今、その矛先が向かうのは。
「彼の者に、炎滅の吐息を浴びせよ!」
 逃げ惑う双頭の悪魔たちの頭上へ、灼熱のブレスが浴びせられた。

 ハロのレイピアが、幾度となく風切る音を立てる。精気を啜る切っ先で敵の喉を深々と貫けど、戦いの終わりは容易には見えてこない。
「……なるべく、増える前に倒してしまいたいところですが」
 囲まれてしまえば、それだけ剣の届く範囲は限られる。それは即ち、敵に分身を生む猶予を与えてしまう事を意味していた。
「ですが、こうして囲まれるのも想定内です」
 遠くには、同じように敵に囲まれた結希の姿が見えた。単身敵の群れへ身を投げ出すのは自滅を招く行いだったが、両者とも狙いは『囲まれる状況』にあった。
 結希の燃え盛る翼が、次第に熱を帯びる。攻勢を仕掛けるまで程ない事を悟り、ハロは互いを巻き込まぬよう結希と距離をとっていく。
 戦線を離脱し村人へ向かった悪魔は、悉く紅竜の炎が焼いた。後方で村人が息をのむ音が聞こえ、リーヴァルディは安心させるように声を投げかける。
「……心配しないで。あの竜は味方だから」
 身を寄せ合い目を瞑る彼らの心に、恐怖は染みついている。言葉を信じてもらえるかは、ここからの戦いに懸かっているだろう。
 悪魔の大群を剣で引き裂きながら、結希はこのダークセイヴァーの地で出会った人々を思い返していた。
(「闇の世界に光を灯していく人たち。ひとりだって欠けさせたりしない」)
 絶望的な支配に抗い、砦を築く人々の姿。それは正しく生きようとする者の輝きに他ならない。彼らの姿が、笑顔が、何よりも温かく感じた。
(「おひさまが戻ったこの世界を、いつか旅してみたい」)
 その願いは、猟兵たちの力だけでは決して叶わない。この大地に生きる彼らなくして、結希の望む世界は存在し得ないのだ。
「私の間合いです。もう逃げ場はありませんよ!」
 ハロが刀身に火を灯し、回転斬りを放った。地平まで焼くかのような鮮やかな焔が、戦場を嘗めるように駆ける。魂を焼き尽くす焔の薙ぎは、悪魔たちを焼き払い塵へと返していく。
 それを遠目に見た結希もまた、焔の翼を拡げる。この大地の色を消し飛ばすかのような白い炎が、火球となり敵を飲み込んでいく。
 ――あの人たちの、おひさまになってあげて。
 旅立つ直前、誰かの贈った言葉を体現するかの如く。地上に二つの陽の花が咲き、敵の大群を飲み込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

七那原・望
大丈夫です。あなた達はわたし達が護ります。
だからわたし達を信じて、この結界の中で待っていてください。

【果実変性・ウィッシーズアリス】を発動し、アマービレで更にたくさんのねこさん達を呼び、ねこさん達と共に【多重詠唱】【全力魔法】【オーラ防御】【結界術】で住民達を護る防壁を展開します。

更にねこさん達の【全力魔法】の幻覚を敵全体に【範囲攻撃】で放ち、こちらを認識出来ないようにしつつ、敵同士での同士討ちを狙います。

敵が互いに潰し合っている間にわたしとねこさん達の【全力魔法】や、オラトリオと分離させたセプテットによる【一斉発射】【範囲攻撃】【乱れ撃ち】で敵を一人残らず【蹂躙】しましょう。


朱酉・逢真
心情)ああ、疲れた。弱ェ身に無茶させらァ。マ・ここに足向けたンは俺だ。これはつまらんグチってやつさ。それはともかく、いいモン残ってるじゃねえか。なあ?
行動)辺り一面焦土地帯か。ああ、そいつは都合がいい。なんせ炎にゃ意思がねえでな。同意を得る必要がねえのさ。竜の残り火を結晶化する。拳サイズの石に圧縮して、《鳥》の1羽に持たせよう。悪魔の群れはまだ遠いだろう。つっこませる。結晶が壊れれば、その熱が爆発してやつらを焼くさ。この魔炎、あいつら(*悪魔)の火より強いようだからなァ。爆風や岩石の破片で松明の火ごとふっ飛ばせるし、村人も火に囲まれなくなる。このあとも村は残るンだろう。こンくらいはするさ。



●暖火
 地上に巻き起こる巨大な火炎に、村人たちからどよめきが上がる。
 それも無理からぬこと。炎は依然恐怖の象徴として、住民の心に根付いていた。
「大丈夫です。あなた達はわたし達が護ります」
 七那原・望の呼びかけに、住人たちは不安そうに彼女の方を覗き込む。この者たちは、いまだ猟兵の何たるかを知らないのだ。
「わたし達を信じて、この結界の中で待っていてください」
 そういって望が手を高く掲げると、四匹の猫たちが姿を現す。白、黒、茶……色も模様も様々の猫たちは、いずれも魔法や幻覚を操る力を秘めていた。
 呼び出された不思議な存在に、住民たちから感嘆の声が上がる。更に白のタクトでちりりと鈴を鳴らせば、先ほどの猫をリーダー格としてたくさんの魔法猫たちが付き従い、村人たちを護るように円陣を組む。
「ねこさん達、お願いします……!」
 住民たちを包み込むように、淡い色の防壁が展開されていった。

 先発部隊が接敵したのと同時刻。いまだ悪魔の手の及ばぬ地点で、羽織物を着た人影がゆらりと立ち上がった。
「ああ、疲れた。弱ェ身に無茶させらァ」
 ようやく元の姿を取り戻し、朱酉・逢真はこきりと首を鳴らす。軛を外し『らしくない』事をした後では、神力もつ身であってもすぐに本調子とは行かないらしい。
「マ、ここに足向けたンは俺だ。つまらんグチはさておいて」
 逢真は地を舐める火の舌に目を向ける。燃えるものがなくとも燃え移る紅竜の火は、未だ随所に爪痕を残していた。
「いいモン残ってるじゃねえか。なあ?」
 そう言って、逢真は敵の残り火を歓迎するかのように手を翳した。
 かまいたちとなった神威が音もなく残火を斬る。形無きはずの炎が形を伴い、透いた結晶の中へと閉じ込められる。
「何とも都合がいいのを残してくれたモンだ。なんせ炎にゃ意思がねえでな、わざわざご機嫌伺う手間も省けらァ」
 手のひらの上、拳ほどの大きさに収まった炎は、見かけによらず紅竜の残り火全てを凝縮した力を秘めていた。うっかり割って爆ぜさせないよう気を付けながら、使い魔たる鳥の一羽に持たせて放つ。
 ここからなら悪魔の群れもまだ遠い。鳥の速度の方が勝つ。そして鳥が先に突っ込めば、壊れた結晶から炎は一気に燃え広がるだろう――燃やせる限りを、燃やし尽くして。
「あの魔炎、あいつらの火より強いようだからなァ」
 間もなく始まるショーをいっそ心待ちにするかのように、逢真は鳥の飛んで行った方角を見遣る。巻き起こる爆風は松明の火ごと、やつらを吹っ飛ばしてくれるに違いない。
 逢真は病毒を司る神ではあったが、命の一切合切を摘みとるわけではない。何よりこの大地には命が少なすぎるのだ。増えてもらわねば、彼の出る幕もない。
(「このあとも村は残るンだろう。こンくらいはするさ」)
 果たして、彼の狙いは違わず。見えなくなった使い魔と入れ替わりに、炎の嵐が吹き荒れた。

 渦を巻いて立ち昇る炎の柱に、村人たちから再び悲鳴が上がった。
「安心してください。あの炎はわたし達の味方です」
「炎が、俺達を守ってくれるというのか……?」
 望の声に、村人たちはいまだ半信半疑であったが大人しく従う。信じられぬ事ではあったが、火の勢いは確かに自分たちではなく悪魔の方へと向かっていた。
 炎に身を焼かれながらも突破してきた悪魔が、村人たちへと襲い来る。
「ウィッシーズアリス……力を貸して!」
 呼びかけに応じ、猫たちの放つ幻覚の煙が悪魔の軍勢を取り囲む。武器を振り回して煙を払いのけ、見えた村人の姿に悪魔たちは嬉々として鉈を振るう――が。
「ギャギャ、グギギィッ!?」
 悪魔の振るう刃は、別の悪魔の喉元へと食い込む。幻覚効果を持つ猫たちの煙が、彼らに敵味方の判別をつかなくさせていた。
 さしたる理性も持たぬ悪魔たちは目には目をの原則に従い、怒りに任せて同士討ちを始める。そして彼らがつぶし合う間にも、色持つ影たちの放つ銃弾が悪魔の腕や頭を吹き飛ばしていく。
 防壁ごしに眺めていた村人は、眼前の光景をいまだ信じられぬ心地で眺めていた。遠くでは逢真のもたらす炎が蔓延り、悪魔の群れを取り囲むように燃えている。
「なんて事だ。炎の灯りが見えたら、もう命はないものと思っていたが……」
 村の若者は熱に浮かされたような目で見守り、呟く。世の中には、こんな不思議な事もあるのか、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シキ・ジルモント
◆SPD
ユーベルコードを発動、バイクのスピードを上げる
機動力を上げてカバーできる範囲を広げ、敵の数に対抗する為だ
村人の被害を出さない事を最優先に行動する

村へ接近する敵の進路を妨害するようにバイクを走らせる
バイクは止めず走りながら、村へ侵入しようとする敵を片っ端から射撃で撃ち抜く
強引に突破するならバイクごと敵に体当たりして止める
村人に危険が迫ったら真の姿を解放し自身を強化(月光に似た淡い光を纏い、犬歯が牙のように変化し瞳が輝く)
間に割り込んで車体や自分の体を盾にして庇い、村人への攻撃を防ぐ

血を流す必要があるなら、それは戦う力のある者が担う
ただ生きようとしているだけで、一方的に虐げられる謂れは無い


サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

村人に言うことは変わりません、生きたいという意思を見せてくれたあなた達を私達は全力で守ります。

【幽冥竜の騎士団】を召喚、おばば様は村人を守って、竜騎士達は私と一緒に敵に攻撃を。
ペンダントを竜騎士の槍に変えて掲げます。

『我等は平和を望む者の盾!我等は明日を望む者の刃!』

施設で散々言われてきた言葉、私達を戦わせるための都合の良い言葉、それを今は村人のために私達のために言いましょう。

『死んでも抑え込めッ!命に代えても守りきれッ!』

まあ、私とおばば様以外みんな死んでるんですけどね!

アドリブ協力歓迎です。



●庇護する者たち
 人々を怖がらせぬようにと、少女の姿を取り戻し。サフィリア・ラズワルドは守りを引き継ぐようにして、小さな背に村人たちを庇い立つ。
「一度立てた誓いを翻したりはしません。生きたいという意思を見せてくれたあなた達を、私達は全力で守ります」
 彼女が一貫して大切にするのは、人々の意思。命だけでなく、生きたいという彼らの願いにも応えるべく、瑠璃色のペンダントを槍へと変えて戦いに備える。
 そんなサフィリアの様子を見て、シキ・ジルモントは短く告げる。
「……俺の方でもできる限り防ぐ。万が一の時は頼んだ」
 言い残すようにして宇宙バイクにまたがり、彼のバイクは砂利をまき散らしてあっという間に見えなくなった。
 先の戦いぶりに見えたシキの人柄。寡黙だが、彼の内に秘めたる思いは人々を守るためのもの――遊撃は信頼して彼に任せ、サフィリアもまた自身の力を解放する。
 槍の穂先から、蒼の炎が地にこぼれた。焔は円を描くようにして燃え広がり、サフィリアと縁のある者たちが虚空のゲートより現れる。
 幽冥竜の騎士団。かつて尊厳を賭けてサフィリアと共に戦い、死してなおその力を貸す頼もしき仲間達が、今この場所に集結していた。
「おばば様は皆を守って! 竜騎士達は私と一緒に、打って出ましょう!」
 サフィリアの強い呼びかけに頷いて応じ、誉れ高きドラゴニアンの霊たちが各自の持ち場へと散開していった。

 シキの駆るバイクの轍が、昏い荒れ野に灰色の線を引く。変形機構により速度を上げたバイクは、駿馬の早駆けの倍はあろうかというスピードに達していた。
 視界の先、捉えた悪魔の姿めがけ、容赦なく引き金を引く。止まる事のない駆動音の駆け抜けた後には、自覚のないまま撃ち抜かれた悪魔の亡骸が転がっていた。
 いかに敵が大群なれど、村人たちの元へ到達する前に倒してしまえば危害は及ばない。多少無茶な作戦も、乗り手としての腕前が伴えば可能となる。
 突出した敵の進路を阻むように弾丸を撃ち込めば、瓦解した敵陣が態勢を立て直すまで大きく時間を稼げた。
 業を煮やした悪魔が数体、シキに轢かれるのも厭わず強引に突破を試みる。ならばそのままはねるまでと、シキは躊躇わずアクセルペダルを踏みこみ、加速を強める。
「……っ!」
 身を揺さぶるインパクト。車輪を通じて伝う衝撃はなかなかのものだったが、辛うじて転倒を免れ振り返ってみれば、引きずられて息絶えた悪魔どもの姿に車上で安堵の息をこぼす。
 一方のサフィリアも、幽冥竜の騎士団を率いて前線へと辿り着いていた。村人の護りは死霊術士の『おばば様』に任せてある。騎士団における唯一の生者、リーダー格を務める翼もつ蛇は、とぐろを巻いて如何なる方角にも睨みを利かせていた。
 敵の方を向き、サフィリアは自身を奮い立たせるように唇の端を引き結んだ。そのまま、幾度となく口にした言葉を唱える。
「我等は、平和を望む者の盾! 我等は、明日を望む者の刃!」
 それはかつてサフィリア達を都合よく戦わせるために、施設で繰り返し叩き込まれた言葉。響きと共に忌むべき記憶も蘇ったが、今は村人のため、そして自分たちのためにとあえて声に出す。
「怯むな、死んでも抑え込めッ! 命に代えても守りきれッ!」
 もっともな話、サフィリアとおばば様以外はみんな命を落としているのだが。死霊術で率いられる側となっても、かつての頼もしい仲間たちは覚悟と共に、その力を奮ってくれる事だろう。
 合戦の雄叫びをあたりに轟かせ、死霊の竜騎士団と悪魔の軍勢が交差する。痛覚の鈍い悪魔は穂先に貫かれてもなお鉈を振り回していたが、二つ目の槍が突き刺されば悪しき意識も途絶えていく。
 軍勢との衝突を免れ、抜け出た数体の悪魔たちが村人の方へと向かおうとしたが――邪な目的を果たす前に、銀の閃きが彼らを天高くへ弾き飛ばした。
 月の光にも似た、淡い輝き。彼方の空にある満月の力を宿し、シキが人狼としての力を解放していた。
 鍛えられた体躯で、まず蹴りを放った。宙へ舞い上がる悪魔の体に、今度は爪の一撃。シキは驚異的な身体能力を遺憾なく発揮し、次々と悪魔を追い詰めていく。
(「血を流す必要があるなら、それは戦う力のある俺達が担う」)
 抜け駆けする敵がいれば車体や自身の体で受け止め、二度と動けぬよう深くトドメを刺していく。その姿は、決して越えられぬ壁として立ち塞がるようでもあり。
(「ただ生きようとする彼らに、一方的に虐げられる謂れは無い」)
 矛なき者の盾として。弛まぬ二人の攻防は敵の前進を阻み、次々と灰の大地に沈めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
ソラ(f05892)と一緒

ソラ……まだ戦える、ですね?
全て守り切るために、もう一頑張り、いきましょう……!

【念動力】で自身を【空中浮遊+吹き飛ばし】ての【空中戦】機動で【切り込み】ます
黒剣鎧から刃を伸ばして【鎧無視攻撃】
【第六感】で感知しての回避行動
受けても【覚悟、激痛耐性、継戦能力】負傷には、慣れてる
仮初の肉体の傷は、命には関わらない
だから、折れたり千切れかけたり燃えたり、もししても。念動力で補って、変わらず戦い

ソラ、一緒に

群れの中心で、悪魔だけを喰らう【生命力吸収】する光
加減なし。消滅させる『生命力吸収光』を
人々へ、明日の暁をみせるための【範囲攻撃】
【浄化】するような、聖なる光を放ちます!


ソラスティベル・グラスラン
ナイくん(f05727)と

…彼らがこの地獄の主
恐怖の源を絶たねば…人々を真に解放することは叶いませんか
ふふ、ナイくんこそ。【勇気】は未だ尽きていませんよね?

蒼天の大斧を高く掲げ、
見る者すべてを腑活する声【鼓舞】

―――悪を成す者に黄昏を、人々に明日の暁を
人々が一歩を踏み出せるように、誰より前に立ち、
導(しるべ)となるのが『勇者』の務めです!
いざ、勇猛にッ!!

盾を構え、突撃!【盾受け・怪力】
【火炎耐性】で地獄の環境に適応
敵の群れを力尽くで弾き飛ばし、一気呵成に斬り込む

群れの中心で全てを飲み込む黄昏の一撃を
民の恐怖を祓うが如く、地獄の炎を全て消し去る!【範囲攻撃・吹き飛ばし】

ナイくん!最後は貴方に!



●落陽――または、黄昏
 猟兵たちと悪魔の軍勢の戦いは、乱戦模様を呈していた。陽のめざめの訪れぬ地の底で、繰り広げられる戦模様はさながら、地獄絵図のようでもあり。
 これから戦う相手を見定めるように、ソラスティベル・グラスランの眼差しは敵の軍勢へと向けられていた。
「……彼らが、この地獄の主」
 先の竜は恐ろしい相手ではあったが、村人たちを直接従えていたのはこの悪魔たちの方だ。恐怖の源を絶たねば、きっと火勢は息を吹き返すように地に満ちる。
 奴らがいる限り、人々が真の自由を味わえる日は訪れない。ならば、自分たちのすべき事は一つに絞られる。
「ソラ……まだ戦える、ですね?」
 ソラスティベルの顔をのぞき見、意思を確かめるような視線。ナイ・デスの言葉は疑問の形こそしていたが、返る答えはきっと分かっていた。
「ふふ、ナイくんこそ。勇気は未だ尽きていませんよね?」
 遠巻きながら、二人の立つところからも仲間たちの姿は見て取れた。悪魔の軍勢を徐々に押し返す様子に、加勢すべきは今だと確信する。
「はい。全て守り切るために、もう一頑張り、いきましょう……!」
 交わす頷きは、一度きり。二人分の足音が、慌ただしく戦場へと駆けていった。

 蒼穹の色をした戦斧を掲げ、ソラスティベルは戦意高らかに吼え猛る。
「悪を成す者に黄昏を、人々に明日の暁を!」
 敵には畏怖を、味方には鼓舞を。見る者全てを奮い立たせるべく、誰よりも前に立ち鬨の声をあげる。
 うら若き少女が最前線に立てば、誰かが一歩を踏み出し続くだろう。身を挺して道標となる、それこそがソラスティベルの志す『勇者』の役目だった。
「いざ、勇猛にッ!!」
 黒翼の盾を構え、炎にまかれるのも厭わず突撃を仕掛ける。焦熱地獄の土を踏みしめ突き進めば、盾に弾かれた悪魔の身が宙を舞った。
 一方のナイは、地上でなく空から攻め入っていた。
 自身を念力で浮かし、弾き飛ばすようにして速度を増す。勢いそのままに黒剣鎧から刃を出せば、手首と足首から伸びる奪命の刃が敵を切り刻んで葬り去る。
 襲い来る敵の殺意は、生まれ持った危機感覚で感じ取れた。疼くような衝動に顔を醜く歪め、巨人となった双頭の悪魔が鉈を振るう。首筋めがけて振り下ろされる鉈を躱し、それでもいなしきれないものは覚悟を決め攻撃を優先する。
「っ……!」
 歯を食い縛り、痛みに耐える。ヤドリガミであるナイは、怪我には慣れていた。仮初の肉体に傷を受けても、本体が無事なら命まで失う事は無い。たとえ手足が折れ、千切れようとも念動力で補えばいい――腹に決めた凄絶な覚悟は、迷いなき速度となって彼の戦いを支えていく。
 悪魔の数体を、ソラスティベルの盾がまとめて弾いた。宙を舞って自由の利かない敵めがけ、今度はナイが追い打ちをかけて斬り刻んでいく。
 勇猛果敢なる二人の猛攻。悪魔たちは血の臭いに酩酊すら感じ、二人の元へと吸い寄せられては成す術もなく命を散らせていく。
 やがて、周囲の悪魔たちが軒並み二人の元へ集ったのを確かめ。もう出し惜しみは要らないだろうと、ナイは頼もしき相方へと呼びかける。
「……ソラ、一緒に」
「はいっ!」
 ソラスティベルの掲げた斧から、橙の色した光がにじみ出る。
 それは、悪しき命に落陽をもたらす光。力強く振るう斧の回転戦舞で居合わせた敵の全てを飲み込み、空中を伝う衝撃波が王冠のように拡がっていく。
 それでもまだ残る敵を、逃すものかと少女は吼える。
「ナイくん! 最後は貴方に!」
 言葉を受け、今度は悪魔の群れる中心から光があふれた。暁思わせる温かな色が、辺りをくまなく包んで照らしていく。
「はい。この期に及んで、加減はしません」
 それは、聖者としてのナイが生まれながらに持つ光。浄化の光は巨大な柱となり、仇成す者の命だけを喰らって膨れ上がっていく。
 網膜を焼くほどの輝きが、灰色の大地をあまねく照らした。やがて点線のような光が天へと伸び、その光もかき消えて途絶えた時。
 二人の近くに、動く敵の姿はなく。残るのはもはや、悪魔の抜け殻のみであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

プロメテ・アールステット
【明け空】

引き続き【赫灼炎狐】でレイラ殿を乗せ
『戦闘知識』を活用
背を撫でてくれる小さく温かい手に力が溢れてくる
答えるように尻尾を振り
「ああ、行こうか。共に」
皆の居場所を、大事な者を守るために

『火炎耐性』『オーラ防御』を活用
敵の攻撃からレイラ殿を『かばう』
私は熱の耐性があるが、レイラ殿が心配だ…
技が発動するまで時間を稼ごう

彼女の攻撃が決まれば敵も熱さも弱まるだろう
ならばこれが好機

「お疲れさまだ、レイラ殿。しっかり捕まっていてくれ」

そろそろ退場願おう、双頭の悪魔共
『地形の利用』で戦場を駆け、『戦闘知識』を活かし
『怪力』『なぎ払い』で蹴散らし
怯んだところを一体一体確実に仕留めていく
守り切って見せよう


レイラ・アストン
【明け空】

先程の竜を思い返し、迫る悪魔を見据えつつ
炎狐と化した友の背を優しく撫でる
…こんなにも優しい火だってあるのにね

「いきましょう」
今一度、告げる
皆で生きる為、戦うわ
これ以上、魔の手を伸ばさせはしない

引き続き、友の背に乗り接敵
『オーラ防御』を彼女のそれと重ね
守りをより万全に
大丈夫よ、少しだけ堪えていて

敵の配置を見定め、一瞬の隙を『見切り』
【精霊と見る夢】発動
此度の精霊は氷、生み出すは集中豪雨
敵の頭上に氷槍を降らせて
地に縫い留めて動きを止めるわ

攻撃ついでに
焦熱地獄を少しでも緩和できれば幸い
止めは仲間と、友に任せましょう

「ええ。プロメテさん、お願い」

どうか祓ってあげて
人々に迫る不安も恐怖も、全て



●漏れいづる日――または、黎明
 たたん、たたん。リズミカルな足音を響かせ、燃ゆる毛の狐が大地を駆ける。
 赫灼炎狐――成人の身の丈三倍もあるその狐は、人々を守るべくプロメテ・アールステットが化けた姿であった。
 狐の火は明るく空を照らすほどだというのに、友を乗せる背中の体温は暖炉のように温かい。背中を手のひらで優しく撫で、レイラ・アストンは呟きを風に乗せた。
「……こんなにも、優しい火だってあるのにね」
 当初に比べ、大きくその数を減らしているとはいえ。闇に煌々と燃える悪魔の火は、人々の命を脅かすものでしかなかった。同じ炎でもこうも違うのかと嘆かわしい思いもあったが、いまは友の『火』を信じて駆けるほかない。
 撫でる手の温もりが、背中を通じてプロメテの胸の内へと伝わる。背に乗せているのは自分の側なのに、かえって守られている感覚すら覚えた。
「いきましょう」
 レイラの短い言葉に、尻尾を大きく左右に揺らして答えを返す。
「ああ、行こうか。共に」
 襲い来る魔の手から、皆の居場所を――大事な者を守るため。彼我の間合いは、間もなく交戦可能な距離へと達しようとしていた。

 暖かい焔が灯るように、橙色をした球状のオーラがプロメテの体を包み込む。
 火の舌を阻む、守護の力。それは焦熱地獄の熱さから二人を守り、敵陣真っただ中を突き進む事を許した。
 守りを確実なものとすべく、レイラは更にその上から防護を施す。間違っても友の柔らかな毛並みが焦げてしまわぬようにと、幾重にも張られた膜のような加護がプロメテの周りに張り巡らされていく。
「大丈夫よ。少しだけ堪えていて」
 そう言って涼しい顔で精霊魔法の詠唱に入るレイラだったが、プロメテは内心、彼女の事を案じていた。
(「この力のおかげで、私は熱さにも耐えられるが……レイラ殿が心配だ」)
 技が発動するまで、護り切れるよう。飛来する武器や炎を前脚で弾き、言葉通りに降りかかる火の粉を払っていく。
 襲い来る悪魔の大群は、切れ目のないように思えた。だが、舞い踊るプロメテを追随するあまり彼らの足並みは乱れ、目標へたどり着く前に悪魔同士で衝突が起こる。
 敵軍に生まれた、一瞬の隙。それを千載一遇の好機として、レイラは最後の魔力を収束させる。
「精霊よ、この地に住む人たちにも――どうかその夢を、映して、見せて」
 此度レイラが呼んだのは、炎と対極にある氷の力。大気中に満ちた水滴が冷気を受け、瞬く間に氷の粒へと結氷していく。
 氷柱、いや氷の槍へと育った欠片にレイラが与えたのは『敵を穿つ』という方向性。頭上より降り注いだ凍てつく槍は、敵を貫き大地へと縫いとめていく。
 砕け散る氷の破片が、大地に散らばりほとぼりを冷ます。熱砂を元の黒土へと還し、精霊たちの夢は蔓延る炎熱を遠くへと押しやっていく。
 大地はもう十分に元の冷ややかさを取り戻した。この程度の温度ならば、遠慮なく駆ける事もできるだろう。
「お疲れさまだ、レイラ殿。しっかり掴まっていてくれ」
「ええ。プロメテさん、あとはお願い」
 プロメテの化ける炎狐の脚が、大地を掴み、そして蹴った。勢いよく敵へと飛びかかる様子に、仲間の猟兵たちが我もと後に続く。
 一度喰らいついた牙は、決して敵の逃れる動きを許さず。尻尾に灯るあかるい炎が、悪魔たちの好む闇の在り処を次々と奪う。
 やがて、怯え切った一匹の悪魔の目に炎狐の焔が映し出される。
 殺戮衝動に身を任せた悪魔は、巨大な姿へ変身こそしていたが――もはや如何に抗おうと、焼け石に水だった。
 プロメテの操る炎狐の牙が、がちりと二つに噛み合わさる。締め付ける力は悪魔が動く限り決して緩まず、彼らの強いた圧政の苦を知らしめるかのようであった。
「キ――」
 ダークセイヴァーの冷え切った大気に、細く長く苦しげな吐息じみた声が響いた。
 それが最後であった。か細い断末魔が途絶え、悪魔の体は動かなくなる。
 そして、地に動く敵影がいないのを確かめ終えた後に。

 猟兵たちは、この地の人々に束の間の――けれど初めての安寧がもたらされた事に気づくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『失われた祭事の復活』

POW   :    櫓を建てる、祭りの資材を運ぶなど

SPD   :    祭りの準備をする、料理を作るなど

WIZ   :    祭りの企画をする、出し物を考えるなど

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 地底世界に、はじめての平穏が訪れる。
 たとえ束の間であろうと、支配に慣れたこの地にとっては得難いものであった。

 だが、まだ足りない。
 村人たちの表情は先程までと変わらず、
 怯えた目で自分たちのたどる運命を見定めようとしている。
 そう。まだこの者たちは、平穏が訪れた事すら知らぬのだ。

 手筈通りに事を進ませるなら、彼らはこれから長い旅路を往く。
 肉体も痩せてはいるが、それ以上に魂が痩せていた。
 気力を満たさねば、きっとどこかで脱落者が出る。
 ――癒しが、求められていた。

 方法は各自の手に委ねられた。
 集ったも何かの縁、各々が得意な事をするのがいいだろう。
 語らうもよし、料理振る舞うもよし。子らの相手も歓迎される。
 彼らと信頼が結ばれれば、移住の提案にも頷いてくれる筈だ。

 それでも何をすべきか迷うのならば、如何だろう。
 長らく、畏怖の象徴であった火を希望の灯火とし。

 ――祭りを、開くというのは。
七那原・望
地上に連れて行くにも、満たさないといけないものがたくさんありそうですね。

【望み集いし花園】を発動。
皆さん聞いてください。
この黄金のりんごは触った人を果物いっぱいの魔法の世界に連れて行ってくれる不思議なりんごなのです。
ずっとその中で過ごすことは残念ながら出来ないのですけど、この中で美味しい果物をお腹いっぱい食べませんか?

空間の中では【歌】と【踊り】を披露してみんなを楽しませましょう。
興味のありそうな人は誘って一緒に歌って踊るのです。

上手に出来なくても大丈夫。楽しむ事が大事なのです。

地上もここと同じようにどこまでも続く空と綺麗な花があるのです。

あっちの方向の光、見えますか?
あれがお日様なのです。



●陽のあたる果樹園
 差し迫った危機は去ったというのに、村人たちの顔は暗く俯いている。長らく望みを捨て生きてきた人々だ。突然前を向け、と言われても難しいのだろう。
 七那原・望はその様子を見て、彼らを地上に連れて行く前に満たさねばならないものが多くあるのだと実感する。
 今この場で、自身にできる事――そのうち一つに思い至り、望は翼持つ王笏を手に掲げた。
 先端で輝くのは、黄金に輝く林檎。磨かれ、みずみずしい果実のような鏡面の輝きを湛えるそれを、村人たちの前へゆっくりとかざす。
「皆さん、聞いて下さい」
 望の声に、村人たちの眼差しが注がれる。
「この黄金のりんごは、触った人を果物いっぱいの魔法の世界に連れて行ってくれる、不思議なりんごなのです」
 彼らは当初訝しむというより、言っている事を理解できずに望の顔色を窺っていた。命の恩人である望に、害意がない事は分かっている。ただ彼らからは、実在しない理想郷を思い浮かべるだけの夢見る力――想像力が失われていたのだ。
「ずっと中で過ごす事は、残念ながら出来ないのですけど……この中で美味しい果物を、お腹いっぱい食べませんか?」
 あるわけがない、と夢物語を否定するように首を振る村人たち。だがその中で、一人の少年が弱々しく声をあげた。
「おれ、お腹へった……」
 ふらふらと近寄る少年を、窘める母の姿はない。誰にも阻まれる事なく、少年は自身が欲するままに林檎に手を触れる。
「このまま死んじまうくらいなら……嘘でもいいから腹いっぱい食いたいよ」
 吸い込まれるように少年の体がかき消え、村人たちから驚きの声が上がる。やがてすぐに戻ってきた彼の目は見開き、口元は歓喜にほころび――少年の表情は、楽園の実在を告げていた。

 望が心に描いた花園は、夜明け前の美しい光で村人たちを包み、招き入れた。
 地には花。頬にはそよ風。見た事もない果実が木々には実り、梢からは姿見えぬ鳥たちの囁く声が響く。
 楽園には、どこからだろうか――願いを捧げる者たちの声が、精霊の囁きのように絶えず響き渡っていた。
 ここは、世界から隔絶された花の楽園。平穏を望み願う者たちを匿い、傷が癒えるまで過ごすためのユートピアだった。
「さあ、まずはお腹を満たすのです。お腹がいっぱいになったら、わたしと一緒に歌って踊りましょう」
 赤いアネモネの花を揺らし、小さなつま先がステップを踏む。はじめは遠巻きに見ていた村人たちも、腹が満ちれば気力が湧いて、一人、またひとりと輪に加わる。
 多くの村人は踊りなど経験した事もなかったが、楽しむ事が大事と望が呼びかければ安心した表情で手をつないでくれた。
「地上もここと同じように、どこまでも続く空と綺麗な花があるのです」
 ダークセイヴァーにも空はあり、小さいながらも花は咲く。この楽園に並ぶほどの花園は恐らくなかろうが、それでも望の言葉は村人たちに希望を抱かせた。
 不意に、森の向こうに光のラインが伸びた。村人たちが眩しさに不安を覚え、光の方を振り向く。
 また、竜の焔が大地を焼くのか。しかし光の線はいつになっても緑を焼かず、大気を通じて暖かさだけを肌に届ける。
「あっちの方向の光、見えますか?」
 望の声には、敵の到来を告げる険しさはない。彼女の穏やかな声音が、あの光は味方であると告げていた。
「あれが、お日様なのです」
 地平に滲むあたたかな陽光。これまで見た事もない光の帯を、村人たちの目が不思議そうに見つめていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
使い方を間違えれば、火は怖いものだけど
生きていくには、絶対に必要なものだから
怖いだけのものじゃないって知って貰うには……

あっ、そうだ!まだ夏に買った残りがあったはず!
トランクケースをごそごそ。手持ち花火を取り出します
蝋燭で火を点ければ、色とりどりの炎が輝く
気になった子供達が寄って来てくれるといいなー

お、あなたもやってみます?この先っぽに火を点けるんですよ。そうそこです
わ、綺麗ですねー!まだ沢山あるから好きなの選んでねっ
ちゃんと火の始末まで教えてー……
最後にとっておきの打ち上げ花火!
……ね、火は、私達を楽しませてくれたりもするんです
あなた達の旅が、いつか光で照らされるまで
一緒に歩いていこうね


サフィリア・ラズワルド
WIZを選択

お祭りかぁ、お祭りなら大勢の方が楽しいですよね!勝利の祝杯ってことで再び【幽冥竜の騎士団】を呼んで、アイテムの竜血酒とお弁当を村人に配ります。

どうぞ遠慮なく、彼等は霊体なのですり抜けてしまいますから代わりに皆さんが食べてください。

あ、おばば様は食べますか?ってあれ?おばば様がいない、いったい何処へ?

戻ってきたおばば様がなんか大きな動物を狩ったらしく、それを差し出してくるので受けとります。

『焼きます?……村人さんもこれ食べますか?』

なんの動物かわかりませんけど……。

アドリブ協力歓迎です。


ハロ・シエラ
敵を倒して終わり、と行かないのがこう言う厳しい世界の難しい所ですね。
私は戦う事以外は不得意な方です。
お祭りをするのなら、準備を手伝うくらいしか出来ません。
【怪力】ステージとか櫓とか……まぁ、必要な建物などの資材を揃えたり、ですね。
戦いの痕跡を【破魔】の力を乗せた炎の【属性攻撃】などで【浄化】する事も出来るでしょうか。
もはや炎は敵では無い、と分かってもらえるといいのですが。
後は素人芸ですが、多少は【歌唱】による【パフォーマンス】も出来ます。
歌声にユーベルコードを乗せて、少しでも皆さんを【鼓舞】し、癒す事が出来れば……同じダークセイヴァーの人間としては、嬉しいですけどね。



●幽冥に咲く
 圧政に耐え続けた末の唐突な自由。命は助かったが、村は無事とは言い切れない。
 村人たちの目は、今後どうすればいいかを探るようにあたりを見回していた。
「敵を倒して終わり、と行かないのがこういう世界の難しい所ですね」
 ハロ・シエラは、人々を取り巻く環境の厳しさをあらためて実感する。
 彼らの元を、黙って平穏が訪れる事はない。それに争いの起こった土地は少なかれ疲弊するものだ――荒れた土地に留まっていては、オブリビオンの到来を待たずして村は死の静寂に包まれるだろう。
 村人たちの怯え切った様子に、春乃・結希はやり切れなさを感じて目を閉じる。先ほどの大火にくわえ、これまでの暴虐がこたえたのだろう。残り火に目を向ける人々の目には、まだ恐怖の色が根付いていた。
「使い方を間違えれば、火は怖いものですけど……怖いだけのものじゃないって知って貰いたいな」
 人が生きていくには、火は絶対に必要なものだから。その言葉にはハロも頷き、自身が協力できる事を探し始める。
「戦う事以外は不得意ですが……何かするのなら、手伝うくらいはしましょうか」
 祭り、というほど大規模な事を考える者はいなかったが。まずは身体を温め気力を養う必要があると考え、ハロは木材を運び、巨大な焚き火を組みはじめた。
 黒土の上に蒼の火が灯り、先の戦いでも活躍した幽冥竜の騎士団がサフィリア・ラズワルドの呼びかけに応じて現れる。
「ひとまずは勝利の祝杯をあげましょう! きっと大勢の方が楽しいですよね!」
 幽霊竜たちを引き連れるのは、蛇のように長大な体を持つおばば様。カンテラの火をその手に揺らし、サフィリアの様子を物珍しそうに眺めている。
『おや、また呼ばれたようですねぇ。これから祝宴をあげるのですか?』
「はい、そうなんですおばば様! まずはお腹と心を満たしてもらおうと思って」
 お弁当として持参した惣菜パンをふやかせば、パンはみるみる手のひら大に膨れ上がった。竜の血で作った酒は未成年の子らには配れないが、彼らにはほぐしたパンをポリッジのようにして振る舞っていく。
 村人の中にはただ貰うだけでは申し訳ないと遠慮する者もいたが、大所帯の幽霊竜たちはパンを差し出されても言葉なく首を振るのみ。
「どうぞ皆さんが食べてください! どの道彼らは霊体、食べようとしてもすり抜けてしまいますから」
 そういって固くなる前に食べるよう促せば、村人たちは口々に感謝を述べ食事にありついた。

 食事に夢中になる村人を横目で見守り、ハロは次の仕事に着手する。
「あれ、何をしてるんですか?」
 結希に声をかけられ振り向くハロは、焔を乗せた刀を今にも薙ぐ所だった。
「少しでも、戦いの痕跡を消しておこうと思いまして」
 破魔の力乗せて刀を振るえば、風に乗って浄化の炎が静かに広がる。焼かれた作物の残骸。壊れてしまった納屋。戦いを想起させるものを音もなく燃やせば、痛々しい爪痕はパッと見で分からぬ程度の燃え滓となった。
 いずれはこれらの灰も肥やしとなり、土に還る事だろう。
「もはや炎は敵では無い、と分かってもらえるといいのですが」
「分かってもらう……そうですね。あっ、そうだ!」
 ふと、何かを思い出し。まだ夏に買った残りがあったはずと、結希は持ち歩いているトランクケースをごそごそ漁り始めた。
 中から取り出したのは、細長い紙の筒。蝋燭で先端に火を灯せば、小さな火花がちりちりと舞う。
「おねえちゃん。それ、なあに?」
 興味を示して近づいてきた子どもに、結希が笑顔を向けると同時。彼らの目と鼻の先で、手持ち花火が鮮やかな炎を噴き上げた。

 赤、オレンジ、緑。色とりどりの可愛らしい火の花に、きゃあきゃあと子らのはしゃぐ声が響く。
 使い古され泥水の溜まったバケツも、火の始末にはちょうどよく。子らが手に持つ花火を嬉々として見せれば、大人たちの側からも笑みがこぼれた。
「それ、おーれーのー!」
「ダメ、取らないでよ……あっ!!」
 細いこよりのような花火を取り合い落としてしまった兄妹へ、今度は仲良く遊ぶようにと言い含めて結希が新しい花火を渡す。
 微笑ましく光景を見守っていたサフィリアは、手元にひとつ余ったパンを見て一人、この戦いの功労者を労い忘れている事に気づいた。
「危うく忘れるところでした、おばば様も食べますか? ってあれ……いない」
 いったい何処へと首を傾げると、羽ばたき舞い降りる音が後ろで響く。戻ってきたおばば様は、肩に大きな動物を担いでいた。どうやらその辺で調達してきたらしい。
『あの子たちも食べ盛りなら、お肉もきちんと食べませんとね。さあて、どう調理しようかしら……焼きます?』
 手際よく捌いて骨身を切り離せば、さすがは巨体の獣、部位ごとに大きな肉がとれた。体格からして草食獣だろう、痩せた大地を生き抜いた獣の肉を、筋を断つように切れ目を入れて焼いていく。
 肉汁が火の上に滴り、香ばしい煙が立ち上る。まだまだ腹を空かせていた村人たちは、調理を快く手伝ってくれた。味付けは辛うじて持ち出せた塩のみだが、今はこうしてありつける事もありがたい。
「おいしそうですね……結局なんの動物かわかりませんけど」
 村人たちが驚かない以上は見慣れた獣なのだろう。かくして、心配そうなサフィリアをよそにしばし謎肉祭は執り行われるのだった。
 ぱちぱちと弾ける焚き火の前では、ハロが歌声を披露する。
 ――♪
 耳にする者を勇気づける、命奮わす希望の旋律。ゆらめく炎を前にして歌う様は、さながら歌謡祭のようでもあった。
(「ここに来るまで、大変な道のりばかりでしたが」)
 吸血鬼と異端の神蔓延る、神に見放されたこの大地に生きる事は容易ではない。その事実は、出自を同じくするハロ自身がよく理解しているつもりだ。
(「少しでも皆さんを癒す事が出来れば、私としても嬉しいんですけどね」)
 寄り添い、励ますような歌の調べに、村人たちは静かに耳を傾け聞き入っている。
 ハロの歌がクライマックスに差し掛かるのを見て、結希はそろそろと大きめの紙筒を地面に立てる。
 周囲に土を盛って倒れないよう支え、近づいちゃダメですよと言い聞かせて導火線に火を点け、数を数える。
 3、2、1。
 小気味のいい音と共に上がる花火は、ばらばらと散って人々の目に映り込む。
 驚きに見開かれる目。次の瞬間沸き起こる拍手の音は、この花火が村人たちの心に迎え入れられた事を示していた。
「たまやー! ……ね、火は、私達を楽しませてくれたりもするんです」
 連発花火が二発、三発と打ちあがるのを見ながら、傍らに立つ人々へと結希は語りかける。
「あなた達の旅が、いつか光で照らされるまで」
 一緒に歩いていこうね――。寄り添うようにあたたかな言葉の語尾を、花火の爆ぜる音が彩った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
村人に声をかけて恐怖を取り除きたい
もう息をひそめて隠れなくてもいいと、村を襲う脅威が去った事を伝える

目立つ事を恐れる必要は無い、少し大がかりな焚火を用意するのもいいだろう
緊張を和らげる為に暖を取る事は効果がある筈だ
そういえば、炎を神聖なものと考え大きく焚いた炎に健康や幸福を祈る…そんな祭りを聞いたことがある

これは、あの紅い竜や悪魔の操る火では無い
人の手で起こした、人の為に生まれた炎だ

見知らぬ誰かが助けてくれる、そんなものは信じられなくても仕方がない
しかしそれでも差し伸べてくれた手に助けられて今の自分が在るのだから、今度は自分が手を差し伸べてみようと思った
…あの人のようにできるかは、分からないが


リーヴァルディ・カーライル
…ん。さっきは恐がらせてしまって悪かったわね
あの紅竜の魂は既に葬送したから安心してほしい

…そのお詫び、という訳じゃないけれど
…貴方達に一つ、見せたいものがあるの

左目の聖痕に魔力を溜め周囲を漂う霊魂を暗視してUCを発動
心の中で祈りを捧げ彼らの呪詛や怨念を浄化して精霊化し、
彼らの家族や大切な人達に別れを告げるように促す

…この地に縛られし魂達よ。我が声に耳を傾けよ

…貴方達を苦しめてきた焔は私達が討ち果たした
もうこれ以上、この地に鎮まらぬ魂が増える事はない

…生き残った彼らは新手な天地を目指し、
やがてこの地を去るでしょう

…彼らの為に、そして散っていった貴方達の為に
言葉と想いを先に進む彼らに託してほしい



●魂に安息を
 先程まで火が舞い、狂気の怒号に満ちていた地に静けさが舞い戻る。崩壊した家屋の影に身を隠していた村人は、頭上から降りかかる声に顔を上げた。
「そろそろ出てきても大丈夫だ。立てるか?」
 手を差し伸べていたのは、シキ・ジルモント。長身のシキの逞しい腕に引き上げられ、村人は立ち上がって辺りの様子を確認する。
「戦いが、終わったのか……?」
「ああ。もう息をひそめて隠れなくてもいい」
 村人は、未だ周囲を警戒するように身を強ばらせている。村の外れでは、他の猟兵が既に火を焚いていた。
 彼の緊張を和らげるにも、暖をとらせた方がいいだろう――立ち上がった村人を伴い、シキはそちらへと向かっていく。
 焚き火の傍では、リーヴァルディ・カーライルが村人たちと言葉を交わしていた。
「……ん。さっきは恐がらせてしまって悪かったわね」
「いいえ、私達の方こそごめんなさい。守ってくれてるって、分かっていたのに」
 紅竜の魂は既に送ったから、安心してほしい。そう告げるリーヴァルディに、村人は深々と頭を下げている。味方だと分かっていても、反射的に恐怖してしまったのだろう。
「お詫びに、という訳じゃないけれど……貴方達に一つ、見せたいものがあるの」
「見せたいもの……?」
 一人きりの女性が指輪をはめ、首からロケットを提げているのが目に留まり。リーヴァルディは他何名かの大人たちに声をかけ、村の更なる外れへと向かって行く。
 やがて、たどり着いた人気のない場所。ダークセイヴァーの中でもいっそう影の濃いその大地には、最近掘り返されたような真新しい土がむき出しになっていた。
「ここは……ねえ貴方、どうしてこの場所が?」
 石を切り出して運ぶ余裕もなく、地面に突き立つのは十字に括られた木の標のみ。だが、十、二十……無秩序に並ぶ無数の標が、ここが墓地であることを伝えていた。
 左目に魔力を溜め、周囲を漂う者の正体を見定めた後。リーヴァルディは祈りと共に、持てる力を解放する。
「これは、傷ついた魂に捧げる鎮魂の歌……この地に縛られし魂達よ、我が声に耳を傾けよ」
 墓標から、炎のような淡い光が漏れ出た。宙に浮かんだ光たちは、目覚めたばかりのようにあたりを彷徨い遊ぶ。
「貴方達を苦しめてきた焔は、私達が討ち果たした。もう、この土地に縛られ苦しむ必要はないわ……行って来なさい」
 その言葉を受け、止まっていた『彼ら』の時は動き出す。祈りによって浄化された『彼ら』は、生きている者のところへと向かう。村の女性の前、物言わぬ炎は彼女だけを見つめるように静かに燃えていた。
「あなた……まさか」
 焔の正体を悟った女性が、目を見開く。
「もうこれ以上、この地に鎮まらぬ魂が増える事はない。生き残った彼らは新たな天地を目指し、この地を去るでしょう」
 リーヴァルディの言葉に安心したように、優しく炎が揺れる。音も熱もなく燃える火の先が、優しく女性の胸のロケットへと触れた。
 思わず頬を、涙がつたう。
「なんだ……私を置いていっちゃったって、あの時あれだけ泣いたのに。あなた、こんなに近くで、ずっと見守っていてくれたのね」
 抱きしめるように伸ばされた女性の腕の中で。光はゆっくりと明滅し、やがて満ち足りたように消えていった。

 炎は、爆ぜる音を立てて燃え続ける。ぱちぱちと弾ける音が少ないのは、先の炎で薪が乾かされたおかげだろうか。
 焚き火のそばではシキが、今も不安そうな村人へ声をかけていた。
「案じなくともいい。これは、あの紅い竜や悪魔の操る火では無い」
 人の手で起こし、人の為に生まれた炎だ。安心させるように告げるシキに、わかっていると村人は返した。
 わかっては、いたが。火の傍にいるというのに、村人の肌は寒気を感じて鳥肌が立っていた。
「私は……いまだに火を見ると恐ろしいんだ。今にも炎の手がこちらへ伸びて、襲ってくるんじゃないかと思う」
 村人の言葉を受け止めるように頷き、シキは揺れる炎へと目を向けた。
「物事の意味はところにより変わる。炎を神聖なものと考え、大きく焚いた炎に健康や幸福を祈る……そんな祭りがあるとも聞く」
「……そんな、風習があるのか」
 熱さと恐怖を伴う炎ばかりではない、と。シキは旅で得た見聞をもって、遠回しにそう伝えていた。
 寡黙で言葉を選ぶように話すこの男が、親切心で接してくれているのは確かだ。しかしそうまでしてくれるシキの意図をはかりかね、村人は正直にこう尋ねてきた。
「なあ。何であんた達は、俺達を助けてくれるんだ?」
 僅か、答えを躊躇うような吐息。しかし避けられる質問ではないと、シキは己の心中を明かす。
「……見知らぬ誰かが突然、助けてくれる。そんなものは今日明日には信じられなくても仕方がない」
 かつては自分もそうだったのか。村人の立場を肯定しつつも、シキは語る。そういう事が、世の中にはあってもいいのだと。
「助けられたから、今の俺がいる。以前そうしてもらったように……今度は自分が、手を差し伸べてみようと思ったんだ」
 感情を紛らわすように息を吐き、シキはハンドガンに目を落とす。
 あの人のようにできただろうか――白銀の銃が答えを寄越す事はなかったが。使い込まれた銃身は炎の灯りを柔らかく返し、シキの顔をあたたかに照らし出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱酉・逢真
(物理接触不可)
心情)さァて、最後のひと仕事だ。もう俺にできっことなんざァ大して残っちゃいねェが…使い果たしちまったンでね。あとは帰っていっぺん死ぬだけだ。そォさな、こンくらいは。
行動)ちびっこ、いるンだろ。『おひしゃま』見せてやるよゥ。光属性のマボロシを、地底空洞に映し出そう。緑もゆる地面にやわらかな花、空は青くて…そうとも、あの白くてまんまるい光が『おひしゃま』だ。あれはな、火なんだ。火のカタマリ。村を守ってくれた火があったろう。アレのお仲間さ。いまは外も地底と変わりゃしねェが。お前さんがおとなになる頃にゃ、外でも見られるかもしれねェなァ。
俺ァ太陽ニガテなんだが、マ・それは言う必要ねェさ。


レイラ・アストン
【明け空】

そうね、人々にはまだ
未来を見据える心の余裕はないでしょう
だから、せめて今を感じて欲しいわ
もう大丈夫なんだって

ね、プロメテさん
もう少しだけこの姿でいてくれる?
炎狐を優しく撫でながら
微笑みかけるは子供達へ
いらっしゃい、この狐さんは優しい子よ?

赤い毛並みは温かく
燃える尾は穏やかな灯となる
身を預ければ
安心して眠ってしまいそう
「本当、まるでお日様みたいね」

知っている?お日様
集まった子らに
語って聴かせましょう

天に輝く光の御印
地を照らし、命を育むもの
その存在は御伽噺ではないと

幾度も夢見たであろうお日様は
確かに現に存在すると

皆が心に描くお日様が
今触れている優しい光が
どうか長い旅路の導となりますように


プロメテ・アールステット
【明け空】

大人も子供達も火で恐ろしい思いをしただろう
私の炎で恐怖を和らげることができるのなら、いくらでも
レイラ殿に頷き返し【赫灼炎狐】で狐の姿に

立ち上がると怖がらせるかもしれない
レイラ殿の隣に座ろう
優しく撫でてくれる手が心地よくて目を細め
子供達へ尻尾をふわりと振って見せる

撫でるのも登るのも子供達の好きなようにさせてあげよう
もたれ掛かるレイラ殿にすり寄り、目を閉じる
…お日様か……
レイラ殿の言葉が嬉しくて尻尾が自然と動いてしまう
そんなこと、始めて言われたな

子供達と一緒にレイラ殿の声に耳を傾ける
優しい声で紡がれる物語
私の炎も、そんな風にありたいな
そして子供達の未来にも、優しい光が待っている事を祈ろう



●あした
 湿気を帯びていた筈の風は、今は乾いた砂粒を運んでいる。
 其処ら中に満ちる火の名残り、あるいは陽の気を。忌み嫌うかのように、物陰から声が響いた。
「おォ、やれやれ。火の番にしちゃァ、えらく疲れたなァ」
 壊れかけの宿(からだ)は、もう人前に出るのに役に立たない。歩く分には差し支えないが、正真正銘のずたぼろだった。
 この姿のまま子らの前へ出ても、怖がらせるだけかという思いがよぎる。
「もう俺にできっことなんざァ、大して残っちゃいねェだろが……そォさな、こンくらいは」
 姿を見せ、優しく声かけるだけが全てではなかろうと、『彼』はばさりと羽織をはためかせる。
「さァて、最後のひと仕事だ」
 やがてその声を最後に、物陰の気配は行方をくらました。

 暗い大地の上にあって、彼女の髪色は焔のように明るい。しかし鮮やかな髪が風になびくほどに、プロメテ・アールステットの浮かない表情は際立っていた。
「大人も、子供達も……きっと炎で恐ろしい思いをしただろう」
 村人たちを慮る声。猟兵たちの励ましを受け、彼らのうち幾らかは徐々に顔を上げ始めていた。
 だがそれも、自ら奮い立って動きを起こせる程ではない。この厳しい大地で生きていくには、それ以上の強い気持ちが芽生えなくてはならなかった。
「そうね……人々にはまだ、未来を見据える心の余裕はないでしょう」
 だから、せめて今を感じてほしい。もう明日に怯えずとも大丈夫なのだと伝えてやりたいと――レイラ・アストンはそう、声を響かせる。
 この状況を、黙って見過ごすレイラではない。そう知っていて、彼女が皆まで言葉を紡ぐのをプロメテは待った。
「ね、プロメテさん。もう少しだけさっきの姿でいてくれる?」
 二つ返事で返される頷き。レイラの意図は、プロメテにもすぐに伝わった。
「ああ。私の炎で恐怖を和らげることができるのなら、いくらでも」
 大気をゆらめかす火が暖かく灯り、プロメテのいた所に炎の狐が姿を現す。
 炎狐の姿は、先の救助の折にも村人たちの目に触れていた。興味を惹かれて歩み寄ってきた子らへと、レイラはしゃがんで微笑みかける。
「いらっしゃい、この狐さんは優しい子よ?」
 地に伏せた炎狐の眼差しは、慈愛をもって子らへと注がれる。怖がらせないよう気遣って頭を低く下げれば、小さな手が顔へと届いた。
 鼻先に触れる、くすぐったい手のひらの感触。くしゃみしたくなるのを堪えて尻尾をゆらせば、子どもたちの関心はそちらへと移った。
 納屋ほどの大きさもある炎狐の体は、子どもたちの格好の遊び場となった。よじ登って声を響かせ、時にふかふかの毛に頬を寄せる子どもたちを、プロメテは温かく見守る。
 元気のある子らは、そうして遊ぶ事ができた。しかし、腹を満たしたとて誰もがすぐに動けるわけではなかった。
 光を浴びず、足を患ってしまったのだろう。無表情のままぎこちなく歩く、おさなごのもとへ。
「……ィよう、ちびっこ。いるンだろ」
 何者かの声が、誘うように響いた。

 赤い毛並みに身を預け、レイラは静かに目を閉じる。燃える尾の届ける温もりは暖炉のように穏やかで、ともすればうたた寝をしてしまいそうだ。
 狐になったプロメテもまた、もたれ掛かるレイラへ甘えるように、頭を彼女の方へすり寄せて目を閉じる。
 いとし子の髪を、梳くように。レイラの手があたたかな毛をかきわけ、地肌を優しく撫ぜる。触れる彼女の手は、不思議とくすぐったくはなく。まるで昔からそうしてもらっているように、プロメテは友の手の感触を受け入れていた。
「ぽかぽかと温かくて。本当、まるでお日様みたいね」
「お日様、か……」
 そのように例えてもらうのははじめてで。嬉しさと幾らかの気恥ずかしさを示すように、炎狐の尻尾が左右に揺れた。
「おひさまって?」
 背中に登りやんちゃしていた子が、未知の単語に興味を示してレイラの顔を覗く。
「ええ、お日様。知っているかしら?」
 そういって、レイラは語り聞かせる。

 天に輝く、光の御印。
 お日様の光は地をあまねく照らし、分け隔てなく慈しむ。
 光の下で作物は実り、麦の穂は頭を垂れ、あらゆる命は健やかに育まれる。
「皆を照らしてくれる、その光はね」
 レイラの語る物語は、真に迫るような響きを帯び。
「おとぎ話では、ないのよ」
 その言葉の真偽を示すかのように、空に光があふれた。

 空の一点にはじける光。
 カーテンが開き風が吹き込むように、景色がざあっと広がっていく。
 陽の光届かぬ地の底に、映し出される青空の情景。
 はじめ人々は自分たちがあの世へ導かれたものと思い騒ぎ立てたが、どうもそうではない。説明を求めて顔色をうかがえば、レイラ、プロメテの両名ともに驚いた顔で空を見上げていた。

 ――『おひしゃま』、見せてやるよゥ。
 約束してくれた名も知らぬ『彼』は姿を見せず、声だけを届かせる。その声で誰の仕業かを悟り、レイラは大丈夫よ、と周囲に短く呼びかけた。
 足元には、いつの間にか緑の絨毯が敷かれていた。緑萌ゆる大地には新たな命が芽吹き、花々は緑の上に新たな色を咲かせる。
 空は澄み渡るように青く、どこまでも透き通っていて。しかし人々の目はその中にある一点、白い光へと注がれていた。

 おさなごの目に、光が宿る。
 地べたに座ったままの彼女にも、その色は届いた。
 彼女だけではない。その場にいた誰もが、目に未知の色を宿していた。
「……あれが、そうなの?」
 少年の問いに、姿見えぬ声が答えを返す。
「そうとも、あの白くてまんまるい光が『お日様』だ。あれはなァ、火なんだ。火のカタマリ」
「火!?」
 驚いた少年が手をかざしてみるも、白いお日様は熱くなく。ただ、光を受ける手のひらは母の手を握る時のように、心地よい温もりを感じていた。
「村を守ってくれた火があったろう。アレのお仲間さ」
 そう言われた少年少女たちが、周囲の猟兵たちへと目を向ける。暖かな色して燃える炎狐の毛並み――安心感を運ぶその色と、あの白い光が似たものだと知り、見守る大人たちにも安堵の色が滲んだ。
「お前さんがおとなになる頃にゃ、外でも見られるかもしれねェなァ」
 まさかこの期に及んで陽の光が苦手などという野暮な事を、声の主は告げる筈もなく。裏方に徹していた『彼』の気配は、静かに遠のいていく。
 そして、地平にゆれる白い光を。
 見つめていた小さな影が、立ち上がった。

 おさなごの手が、光を求めて差し伸べられる。
 小さなもみじの手のひらが、暖かな影を生み出した。
 足元はあんなにも覚束ないのに、踏み出した足を止める者は誰一人いない。
 歩むその姿は、光の中に明くる日の希望を求めていた。

 小さな足の裏が、黒土の上にてんてんと足跡をつけていく。
 ずっと自分の傍を離れる事はない――いや、できないとばかり思っていた。
「あの子……前はあんなに歩けなかったのに……!」
 母の泣き崩れる声は、嬉しさに震え。
 そうしてしばしの間、陽に向かって伸びる歩みを、誰もかもが見守っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
ソラ(f05892)と

次は彼らを、地上へ……ですが、その前に、ですね

では、ソラが料理を作っている間
蜜ぷにさん達を、紹介していますね

ソラの料理中、私は子供達の相手
『蜜ぷに召喚』で召喚した、蜜ぷにさん達を
こわくないですよ。いい香りですよ
ちょっとかじっても、蜜ぷにさん達は大丈夫。おいしいですよーなど、紹介して
蜜ぷにさん達とふれあい癒したら、食事

私は、これから向かってもらう、人類砦について。闇の救済者さん達について、お話します
辛いこともあるでしょう。けれど、希望は確かにあるのです

彼らが立ち上がったら
そんな彼らに、祝福を
私は【祈り】ます

『神隠し』
地上の仲間、人類砦まで
全員を、光が包む

世界に、お願いします


ソラスティベル・グラスラン
勇者が邪悪を討ちめでたしめでたし
…と、なかなか物語のようにはいきませんねえ
さあナイくん(f05727)、民の心を救いにもう一頑張りですよ!

ぷにぷにで有名なアルダワの災魔『蜜ぷに』を召喚
彼らに子供たちの遊び相手をして貰います
ふふ、ぷにさんたちはわたしの友達なんです、仲良くしてあげてくださいね?

その間に取り出すのは故郷アルダワの食料セット
ほぐしたお肉とお野菜をじっくり大きな鍋で煮込みまして
皆さん弱り切ってますから、食べやすく、栄養たっぷり取れるように♪【料理・優しさ】

さ、皆さんまずはご飯にしましょう!
皆さんはわたしたちの事を疑問に思うでしょうけれど…
色々考えるにしても、まずは体力をつけませんかっ?



●道照らすひかりは、心の中に
 乾いた土に眠る草木の種が、雨粒に目を覚ますように。
 俯いていた村人たちの表情にも生気が戻り、次第に交わす言葉も増えてきた。
 けれど、彼らの中には体の自由の利かない者もいる。すぐに出立となれば、困難な道のりとなるだろう。
「勇者が邪悪を討ち、めでたしめでたし……と、なかなか物語のようにはいきませんねえ」
 疲弊しきった民がまだ体力を取り戻せていないのを見て取り、ソラスティベル・グラスランはそんな言葉をこぼした。
 ソラスティベル自身は元気もパワーもみなぎりどこまでも往ける心地だが、畑の状況を見るに、村人たちは長い事満足のいく食事にありつけていない。
「あとは彼らを、地上へ……ですが、その前に、ですね」
 ナイ・デスもまた、まだ一仕事あるといった風に彼らの方を眺める。安全圏に運ぶだけが、今回の仕事ではない――彼らには、希望をもって生きていてほしかった。
「さあ、ナイくん! 民の心を救いに、もう一頑張りですよ!」
 背中を押すようなソラスティベルの声に、ナイは確りと頷いた。

 膝を抱えて座る小さな女の子の前に、ふよふよとした何かが現れた。
「あれ……? ね、あなた、どこからきたの?」
 少女の声に、ふよふよとしたものは笑顔を浮かべて「ぷにー」と揺れる。
 後ろを振り返れば、同じ姿で色違いの子たちがふよん、ふよんと地を跳ねてきているではないか。しかもよく見ると目つきが若干凛々しい。
「この子たちは蜜ぷにさん、こわくないですよ。いい香りですよー」
 ナイがそうやって紹介すれば、勇ましい顔立ちの蜜ぷにたちは「勇者ハ勇気ガ大事プニ!」「気合ト根性プニ!」と口々に声を発する。勇者だったのか。
「ふふ、ぷにさんたちはわたしの友達なんです。仲良くしてあげてくださいね?」
 そういってソラスティベルは子どもたちの相手をナイと蜜ぷにさんたちに任せ、大鍋と食材を取り出した。
 遠くアルダワの迷宮内で育った野菜たちは、自然の恵みを受け豊かに育っていた。じゃがいもはまるまると実り、青菜は鮮度を表すように緑を湛え。それらを食べて育った鶏の肉もまた、おいしさを保証してくれるだろう。
 焚き火から火種をもらい、大きな煮込み鍋に湯を沸かす。出汁が出るよう鶏の骨から入れ、合間に肉を下ごしらえ。酒、塩、胡椒などに加えて、アルダワの魔力秘めたハーブをもみ込めば、もうそれだけで肉はぷりりと締まっておいしそうに見えた。
「皆さん胃が弱ってるでしょうから、少しでも食べやすいように……っと」
 火を通す意味も兼ねて野菜と肉は小さめに刻み、鍋いっぱいに煮込んでいく。もうもうと立ち上る湯気は、火から下ろす頃合いを教えてくれた。
「皆さん、もうすぐですからねっ♪」
 食欲そそる香りに、口にする時の村人たちの笑顔を想像し。ソラスティベルの口元からも、自然と笑みがこぼれていた。

 はじめおっかなびっくり触れていた子どもたちの手は、いつの間にか遠慮なく蜜ぷにさん達を撫で回している。
「すっげぇ! ひんやりしててきもちいいー」
「ぶよんぶよんするー」
 すっかり打ち解け大人気のぷにさん達を、ナイはにこにこと見守っていた。
「ちょっとかじっても、蜜ぷにさん達は大丈夫。おいしいですよー」
「かじるの!?」
 目の前の可愛い生き物(正しくは災魔)たちが、まさか食べられるとは思ってもみず。興味のわいた少年が、おそるおそるぷにさんのほっぺをかじろうとする。
「オイシク食ベテプニー」
 そう言われるとますます食べづらくなりそうなものだが、果たしてお味は。
 ――あむっ。
「……!」
 思ったよりも一口は大きく、もぐもぐと口を動かす少年の顔にはわかりやすく「うっま!!!」と書いてあった。
「はーい、甘いものもいいけどまずはご飯にしましょう!」
 じっくり煮込んだお肉と野菜をソラスティベルがスープごとお皿によそえば、子どもたちは我先にとそちらへ群がった。
「突然現れたわたしたちの事を、疑問に思うでしょうけれど……まずは体力をつけて、それからいっぱいお話しましょう!」
 大人たちは当初手伝いに回ろうとしたが、そう勧められれば断る理由もなく。十分な量があると聞かされれば、感謝を告げながら皿を手にした。

 やがて腹の満ち足りた村人たちへと、ナイは地上世界の話を語り聞かせる。
 これから向かう人類砦のこと。圧政に抗い生きる場所を求めて立ち上がった、同じ世界の仲間達のこと。
「そんな人たちが、いたのか……」
 こくり、と村人の言葉に頷き、ナイはこう口にする。
「辛いこともあるでしょう。けれど、希望は確かにあるのです」 
 彼らの目に生きる気力がみなぎっているのを見て、ナイは彼らの前途が幸あるものであるよう祈りを捧げた。
 他の猟兵たちとの話し合いの結果、まずは遠方まで移動できない高齢者や病気の人々をナイが送り届ける事になった。離れ離れになる事がないよう送り届ける先を確かめ、打ち合わせをしていく。
「じゃあ、私たちは先に」
「はい! ナイ、案内をお願いしますね」
 ユーベルコードの力をもってしても、全員を一度に送る事は叶わなかったが。安全に送ってもらえるだけで十分だと、村人たちは頭を下げた。
「それじゃあ、行きますね」
 あたたかな光がこぼれ、村人とナイたちの身を包んでいく。向こう側に開ける地上世界の景色もまた薄闇に包まれていたが、もうその事で落胆する彼らではない。
 希望の色は、確かに宿った。天に光はなくとも、支えてくれる誰かが存在するだけで歩んでいけると、ある村人が語ってくれた。
 支えてくれた猟兵たちを、そしてまだ見ぬ仲間たちの存在を、目指すべき導――おひさまとして。
「この方たちを、地上へ――世界に、お願いします」
 神隠しの力がナイたちを包み込み、一足先に地上世界へと送り届けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月22日


挿絵イラスト