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ひとくちの夢『スイーツキャッスル』

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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「……いらっしゃい、ませ」
 継接ぎだらけの強面顔面、フランケンシュタインのド迫力アップのお出迎え。
 でも本人は驚かせたいわけじゃないの。お願い待って帰らないで!
「店長ー! お客様の心臓に悪いから厨房に引っ込んでてくださいー!」
 申し訳ございません、お席へご案内致しますね!
 ごつい店長の身体を奥へ押しやり、可愛い魔女のウエイトレスがにっこり微笑んだ。

 ここは先日オープンしたばかりの西洋妖怪カフェ「Frank」。
 メニューを開けば、西洋妖怪をモチーフとした愉快なスイーツ達が並んでいた。
 オバケカボチャのパンプキンプリンにミイラ風ホワイトチョコモンブラン、キャットウィッチのブラックチェリーケーキに、ケルベロスの3Dラテアート。
 ページを捲る度、美味しそうな子らが誘惑してくる。

 そんなカフェの一角に、黒いドレスを着た吸血鬼の女の子がひとり。
 どこかぼんやりと、夢うつつの瞳でテーブルの上のパフェを見つめていた。
 蝙蝠のダークチョコと薔薇林檎が飾る吸血鬼モチーフのパフェのシロップは赤く紅く。
 少女は薔薇林檎と生クリームをすくって、ひとくち。甘くて美味しいはず、だけど。
 色のない頬が綻ぶことはなく、パフェの中へずぶずぶスプーンを沈めていく。
 ――ローズ。あーん。
 突然自分の名前を呼ばれて、少女は目を見開く。
 誰もいないはずの向かいの席には、美しい真紅の瞳を細めるお姫様が座っていた。
 ――ねえ。あーん、してよ? 私にちょうだい?
 夢魔姫は生前と同じように悪戯におねだりをする。懐かしい姿は透き通り、今にも消えそうだ。白昼夢でも見ているのだろうか。私の親友、会いたかった、ずっとずっと……。
「アンネ……」
 ローズは彼女の名を呟いて、果実を乗せたスプーンを差し出す。
 ぱくり。果実も貴女も、いただきます。おねだりは成功、ひとつになれた。
 骸魂は少女を取り込み、吸血夢魔姫『アンネローズ』へと生まれ変わる。
 そうして、甘い夢に堕ちてく少女は『滅びの言葉』を紡いでしまったのだ。
「『時よ止まれ、お前は美しい』」

 世界の終わりは、いつだって突然だ。
 カクリヨファンタズムは足元から崩れ、住民達は皆夢の中へ囚われる。
 そして、崩壊する世界の上空に、お菓子のお城が浮かび上がった。
 お菓子で出来たホーンテッド・スイーツ・キャッスルは罠だらけ。
 チョコレート甲冑の襲撃、飴細工の串刺しトラップ、所々脆い足場のクッキー。
 他にも様々な仕掛けが隠されているかもしれない。
「さあ、私の元まで辿り着ける人はいるかしら? ただの甘いだけのお城じゃないわよ」
 吸血夢魔姫は城の最上階の窓から顔を出して、蠱惑的な笑みを浮かべていた。


「いい感じのカフェを見つけたと思ったら、世界の終わりまで付いてきちまってね。ちょいと手を貸してもらえるかい?」
 グリモア猟兵のメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は、カクリヨファンタズムを襲うカタストロフを防いで欲しいと猟兵達に声をかけた。
「まずは崩壊する世界の中心、ホーンテッド・スイーツ・キャッスルを攻略しとくれ。お菓子で出来たヨーロッパ風の古城は、どうやらお化け屋敷の迷宮みたいになっとるみたいでね。仕掛けられた罠を突破しながら最上階を目指して欲しいのさ」
 最上階では、骸魂であるサキュバスプリンセス『アンネ』が、生前の親友だった吸血鬼の少女『ローズ』を飲み込んでオブリビオン化した、吸血夢魔姫『アンネローズ』が待ち構えているはずだ。崩壊前の世界に戻す為には、オブリビオンを倒しアンネとローズを再び引き裂かなければならない。
「アンネローズは激しく抵抗するだろうけどね。骸魂は今は亡き命……どんなに望んでも望まれても、現世に居座ってはいけないモノだ。世界も彼女達も、在るべき元の姿へ戻してやろう」
 骸魂を倒せば、世界は崩壊前まで巻き戻り、住民達は夢から醒める。
「仕事の後は、カフェで一息吐いてもいいんじゃないかい? そこには救出したローズもいるはずさ。きっと頭では納得しても、寂しさを胸に抱えているだろうから……良ければ少し相手をしてやっとくれ」
 彼女の心境を想ってか、メリーは切なそうな色を瞳に滲ませていた。
 しかしすぐに元気な笑顔へと戻り、グリモアを光らせる。
「……よし、転送は城の入り口まで飛ばせそうだ。後は任せたよ、よろしゅうにー!」


葉桜
 OPをご覧いただきありがとうございます。葉桜です。
 お久しぶりかなと思っていたのですが、前回の戦争からまだ1か月も経っていないのですね。
 またマイペースに依頼を出していくので宜しくお願い致します。

 第1章。冒険『ホーンテッド・キャッスルへようこそ』
 第2章。ボス戦『吸血夢魔姫『アンネローズ』』
 第3章。日常『妖怪コラボカフェへ行こう』

 この世界のオブリビオンは「骸魂が妖怪を飲み込んで変身したもの」です。
 飲み込まれた妖怪は、オブリビオンを倒せば救出できます。

 第2章では、アンネとローズの思い出に関わるようなプレイングには、プレイングボーナスが入ります。
 第3章の日常では、お声がけがあった場合のみグリモア猟兵メリーが登場します。

 ユーベルコードは指定した1種類のみの使用となります。
 プレイングはOP公開から募集開始、締切はマスターページでご連絡致します。
 第2・3章の募集で日程調整が必要な場合があれば、そちらもマスターページでご連絡致しますので、お手数ですがご確認のほど宜しくお願い致します。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『ホーンテッド・キャッスルへようこそ』

POW   :    動く甲冑の襲撃を力で突破する

SPD   :    串刺しのトラップを技で回避する

WIZ   :    秘密の隠し通路を知恵で看破する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ジュテム・ルナール
切ない、ああ…切ないな…永遠を生きる我とて別れの寂しさは耐えがたいものだ。
ゆえにこそ世界の片隅で誰とも合わずに暮しているのだが…それでも温もりや喧騒、交わす言葉を求めてしまう心はある。
アンネローズ…その哀しみ、救えずとも理解はしてやれるぞ。

・迷宮突破
翼で浮遊しながら床や壁に触れぬよう、罠に警戒して進むのは当然。
動く甲冑の襲撃か、そんなものは我の宝具を盾に変えて『盾受け』して防ぎ、下級の竜言語魔法を『高速詠唱』して放ち凍らせて突破するのみよ。

待っていろアンネローズ…私が終わらせてやる。

※お任せ、アドリブ、大歓迎




 夜空の瞬きを独り占めしたように煌めくドラゴニアンの翼を広げて、ジュテム・ルナール(魔皇・f29629)はホーンテッド・スイーツ・キャッスルの内部を探索していた。
 迷宮化した城内では自由自在に飛び回るというわけにはいかないが、軽く空中浮遊をするだけでも、床や壁への接触で発動するタイプの罠は避けられるはずだ。現に、入口から今までの間に、ジュテムは一度も罠に遭遇していない。
「幽世を滅ぼそうとする魔王城が、こんなにも夢見がちな空間だとはな」
 薔薇が咲くキャンディランプが廊下を照らす城内は、アイスボックスクッキーが行儀よく並ぶ床に、ドライフルーツやナッツが散りばめられた板チョコの壁が続いている。甘くて可愛らしいもので埋め尽くされた乙女チックな城だ。しかし、城の主についてある程度事前情報を得ていたジュテムには、装飾が華やかであればあるほど、それらは己を守る為の強がり、武装のようだと思えてならない。
「……切ない」
 城の最上階で猟兵を待つのは囚われのお姫様ではない。大切な人と共にいたいと願い、骸魂と幽世の命との同化を叶えた少女達なのだ。
 例え世界を敵に回したとしても、その想いが覆ることはないだろう。
「ああ……切ないな……永遠を生きる我とて別れの寂しさは耐えがたいものだ」
 ゆえに、ジュテムは世界の片隅で誰とも会わずに暮している。しかし、それでも温もりや喧騒、交わす言葉を求めてしまう心はあるのだ。
「アンネローズ……その哀しみ、救えずとも理解はしてやれるぞ」

 ガシャガシャガシャ――。
 迷宮の侵攻を進めて階段を上っていると、望まぬ喧騒が前後から近付いてくる。それはチョコレート甲冑の大群。漸く侵入者に気付いた番人達が、この場で確実に敵を仕留めようと集結したようだ。
「有象無象が幾ら集まっても同じこと。我が纏めて相手してやろう」
 正面から振り下ろされたチョコレート剣は、ジュテムの手に収まっていた水晶球から盾へとチェンジした竜宝具に難なく受け止められた。そのまま反対の手を背後に向けて下級の竜言語魔法を高速で詠唱すれば、下段の甲冑達は忽ち凍り付いてひと纏めの氷塊となる。
「道を開けろ、我が通る」
 続けて、防御形態だった宝具を槍に変えて【ドラゴニック・エンド】を前方へ放った。ジュテムの槍が甲冑を穿つと、召喚されたドラゴンがチョコレートを食い荒らしていく。むせ返りそうな濃厚な甘い香りは、翼をばさりと羽ばたかせて散らせた。
「待っていろアンネローズ……我が終わらせてやる」
 そうして邪魔者を排除したジュテムは、再び最上階を目指した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニオ・リュードベリ
わぁ、お菓子がいっぱい!
……なんて言ってる場合でもないよね
ここにあるのは夢だもの
夢は……終わらせなきゃいけないから

正面突破なら得意だよ
無敵の鎧を着込んで甲冑さんとも戦っちゃうよ
チョコレート製なんて素敵だね
でも……邪魔しないで!
ランスで【串刺し】にして砕いちゃうんだから!

迫りくる敵も罠も全部力づくで突破して、ひたすらに突き進んでいこう
アンネもローズもあのままにはしておけないよ
大切な人とずっと一緒にいたい気持ちは分かる
けれど世界の理を曲げてまで、世界を終わらせてまで一緒にいるのが本当の幸せだとは思えないんだ

あたしに出来るのは、きっとあの子達のお別れを手助けすること
……そのためにひたすら走ろう!




 苺の薔薇が咲くミルフィーユの城門を抜けると、床はアイスボックスクッキー、壁はナッツとドライフルーツのチョコレート。城内にはスイーツの迷宮が広がっていた。
「わぁ、お菓子がいっぱい! ……なんて言ってる場合でもないよね」
 ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は、飴色の瞳をついついキラキラさせてしまうけれど、すぐに頭をぶんぶん振って甘味欲を追い払った。
 まるで夢のようなお城。そう、ここに在るのは夢だもの。
 ひとくちだけと甘えてしまった、彼女達の泡沫の夢。
「夢は……終わらせなきゃいけないから」
 幽世の崩壊を夢で終わらせる為に、ニオはクッキーの床を駆けて行く。

 わたあめ床の落とし罠は、鎧の背に生えた飴細工の羽根でひらり!
 フロランタンの落石は、『ラッキーアイスランス』でホームラン!
 ニオは侵入者を排除する為の罠を次々と正面突破で越えていく。【アリスナイト・イマジネイション】で想像し創造した、このお菓子の城にぴったりな戦闘鎧は無敵なのだ。
 ザックザック。今度はチョコレートの甲冑達が足並みを揃えてやってくる。
「チョコレート製なんて素敵だね。でも……邪魔しないで!」
 でっかくて強い、最強のアイスクリームの槍が甲冑を串刺しにする。薔薇やリボンで飾られるアイスにチョコチップも散りばめて、美味しさもパワーも更にUP!
 強化を重ねて次々と甲冑を砕きながら、ニオは一段飛ばしで階段を上りひたすら走る。
 最上階には、彼女達が待っているはずだから。

「……アンネもローズもあのままにはしておけないよ」
 ローズはアンネがいなくて、甘いものを美味しいって感じられなくなるくらい寂しかったんだよね。大切な人とずっと一緒にいたい気持ちは分かる。そんな時に現れた甘い誘惑に揺らいでしまった気持ちも分かる。けれど、 
「世界の理を曲げてまで、世界を終わらせてまで一緒にいるのが本当の幸せだとは思えないんだ」
 余計なお世話だって、私達の幸せを勝手に決めるなって、怒られるかな。
 それでも、あたしはあなた達に会いに行くよ。
「あたしに出来るのは、きっとあの子達のお別れを手助けすること」
 ニオの優しい勇気によって鎧の羽根はより一層美しく大きく広がり、軽くなった体は階段を二段三段と飛んでスピードをあげていく。
 最高速度で最上階へ、まっすぐとニオは先を急いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
聞いてはおりましたが……。お菓子とホラーの組み合わせがなんとも言えない雰囲気を醸し出していますね……。こういった雰囲気は少々苦手ですので……。何も起こらないことを祈りつつ迅速に最上階を目指します。

お菓子で作られた甲冑ですか……。細かなところまでとても作り込まれているのですね。ホラーな展開ですとこういった物が動き出すとよくお聞きしますがさすがにそんなことは……。本当にあるのですね……。
と、とりあえず全力で上を目指しながら逃げて……。その間に進路を塞ぐ甲冑様のみリボンに魔力溜めしている魔力を3割程使用して作り上げた氷の拳にて砕きながら……。アンネローズ様にお会いするために頑張って進んでいきます。




 ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)は甘いお菓子の香りに満たされる城内を探索していた。チョコレートの壁とクッキーの床の迷路を進んでいると……。
 すぅ――っと。何の前触れもなく、後方の光が失われる。
 今までの道を照らしていた薔薇のキャンディランプの灯が消えてしまったようだ。後戻りは出来ないと暗示されているのだろうか。
 ここはお菓子で作られた夢の城、ホーンテッド・スイーツ・キャッスル。
 主である吸血夢魔姫が告げていた通り、ただ甘いだけの城ではないようだ。
「聞いてはおりましたが……。お菓子とホラーの組み合わせがなんとも言えない雰囲気を醸し出していますね……」
 正直に言うと、ネーヴェはこのような雰囲気があまり得意ではない。後ろの闇が恐怖心を煽ってくるが、……しかし、だからと言って足を止めるわけには行かないのだ。
「……どうか、何も起こりませんように……」
 祈るように呟いて。無理矢理顔を前へ向けたネーヴェは、速足で迷宮を進んで行く。

「ここは……」
 最上階へ続くと思われる階段の前には、長い廊下が広がっていた。仄暗い廊下の脇にはチョコレートの甲冑がズラリと並んでいる。
「お菓子で作られた甲冑ですか……細かなところまでとても作り込まれているのですね」
 ネーヴェはそろそろと廊下を進みながら甲冑を警戒していた。
「ホラーな展開ですとこういった物が動き出すとよくお聞きしますがさすがにそんなことは……」
 ――ガシャ!
 恐れていた予感的中。甲冑は一斉に侵入者へ身体を向けた。
 チョコレートの剣や槍を構えた甲冑が、ネーヴェの小さな身体を取り囲おうとする!
「本当にあるのですね……。と、とりあえず上を目指しましょう……!」
 【ice of destruction】。ネーヴェはリボンに溜めた魔力で作り上げた巨大な氷の拳を、前方へ向けて即座に放つ。使用した魔力は最大値の三割程度。普段より控えめな威力だが、オブリビオンではない城の仕掛けの一部を壊すには十分だ。
 粉々に砕けるチョコレートの欠片が舞う中、ネーヴェは階段へ向かって駆けて行く。後ろからはまだ無事な甲冑達が武器を振り下ろしてくるが、自分を捕らえそうなものだけを凍らせて、魔力消費を最小限に抑えながらネーヴェは最上階を目指した。
「……ここで全力を注ぐわけにはいきません……私はアンネローズ様にお会いするために来たのですから……」
 青い瞳にはもう恐れの色は無く、ただ前だけを見据えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
黒騎士たる己が吸血鬼を救いに往く。
猟兵になる前ならばついに狂ったかと思うのだろうが…
あぁ、今の俺ならば迷いはない。

城も騎士も菓子細工なら火に弱かろう。
青く燃える鉛の翼を巨大化【武器改造】し展開、
【空中浮遊】しつつ羽搏き熱風【属性攻撃】で【吹き飛ばし】。
城内を砕いて通り難くしたくはない、UCの火力に任せた強行突破は控えよう。

代わりにUC【心暴き唄う音叉剣】で城や騎士を【串刺し】。
この城もまた二人の思い出の片鱗なのかぐらいは【情報収集】したいが、成果がないなら構わず進む。

いつか言ったか。
全てを喪い猟兵になったからこそ出会えた世界がある。
時よ止まるな、世界は美しい
死に損ないの騎士はまだ先へ進むのだ。




 薔薇が咲くキャンディランプの灯は、一体の鎧騎士を仄かに照らしていた。
 ザシュ、ザシュ――。
 お菓子の迷宮を巡回するチョコレート甲冑の集団は、侵入者である鎧騎士ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)の進む道に立ち塞がる。
「黒騎士たる己が吸血鬼を救いに往く。猟兵になる前ならばついに狂ったかと思うのだろうが……あぁ、今の俺ならば迷いはない」
 ダークセイヴァーのヴァンパイアは全てオブリビオンである一方で、このカクリヨファンタズムの妖怪は無害な住民であり、西洋妖怪の吸血鬼も平和に暮らしているという。
 本当に、世界は広い。
 そして、この世界のオブリビオンは特殊で、倒せば取り込まれた妖怪を救うことが可能なのだ。それならば騎士として、敵を倒し救える者を救う為、彼女が待つ最上階を目指していこう。

 ルパートは青く燃える鉛の翼を大きく広げて宙へ浮く。そしてその灼熱の翼で羽ばたき、熱風によってチョコレートの甲冑を吹き飛ばした。クッキーの床や板チョコの壁に溶けた甲冑の欠片がこびり付く。
「城も騎士も菓子細工なら火に弱かろう。安心しろ、城までは壊さない」
 全力の炎で強行突破すれば、菓子の城ごと砕くことも可能かもしれない。だが、共に訪れている猟兵達の道を遮るつもりはないので、ルパートは火力任せの手段は控えて、加減した熱風攻撃だけにとどめた。
 しかし、――リィン、と兆しの鈴が鳴る。
 まだ動ける甲冑が溶けた鎧を軋ませながら再び向かって来たと知らせてくれたのだ。抵抗するなら、今度は【心暴き唄う音叉剣】でクッキーの床に縫い付け串刺しにしてやる。
「我が鈴は清く鳴り響いて。しかし我が剣は煩く捲し立てる」
 兆しの鈴付きの剣は、貫いたモノの残留思念を語る呪剣へと変化する。お喋りな呪剣が告げる城の主達の昔話によれば……。
 ――アンネはお姫様で何でも持ってていいな。お菓子も食べ放題だし。
 ――でもお城から出してもらえなくて退屈よ? だからローズ、沢山遊びに来てね。
 人間の生気よりも血よりも、お菓子が好きだった幼い夢魔と吸血鬼の子供達。
 いつか一緒にお菓子のお城に住もう。そんな甘い夢を見ていたのに。
 幽世に辿り着けたのは、吸血鬼の少女だけだった。

 二人の思い出の片鱗を聞き終えたルパートは、再び最上階を目指す。
「いつか言ったか。全てを喪い猟兵になったからこそ出会えた世界がある」
 己が歩む猟兵としての旅路にあった尊き総てを肯定するルパートは、滅びの言葉に対してこう返す。
「時よ止まるな、世界は美しい」
 死に損ないの騎士は、これからも未来(さき)へと進むのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『吸血夢魔姫『アンネローズ』』

POW   :    アンネのお願い
【可愛らしいポーズからの「お願い」】を披露した指定の全対象に【この子の言う事を何でも聞きたいと言う】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    変幻自在どろんチェンジ
【吸血夢魔姫『アンネローズ』の姿】【狼の群れ】【吸血蝙蝠の群れ】【魔性の霧】【これらに自在に変身する事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    紅薔薇の嵐
自身の装備武器を無数の【真紅の薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 お菓子の迷宮の階段を上り続けて、猟兵達は最上階へと辿り着く。
 ストロベリーマカロンの柱に、チェリーゼリーの真っ赤な絨毯。
 ルビーチョコの玉座で、深紅のドレスを纏ったお姫様が薄い笑みを浮かべていた。
「来てしまったのね。私達を引き裂こうとしているのでしょう?」
 ひどいひと――。声には出さずに、赤い唇だけが言の葉を形どる。
「ねえ……どなたか、私を救って下さらない?」
 甘えたような声と仕草で、吸血夢魔姫『アンネローズ』は囁く。
「もう離れ離れになりたくないの……どうか、この甘い夢を壊さないで……?」
 赤い瞳に涙を浮かべて、お姫様は猟兵達へ『お願い』をするのだった。
ジュテム・ルナール
お願い、か…ならば我に話してみよ、なぜそうまで離れたくないのかを。
アンネ、ローズ…貴様らは何を思い、何をして、なぜそうまで一つであろうとする…思い出の一つも語って聞かせるがいい。

我は貴様らを救いに来た、一方的に誅する気はない。
ただ……今、貴様はこう言ったな?
『甘い夢』を壊さないで、と。
自分で理解しているのではないか、これは幻だと、今は刹那の夢に過ぎないと。
醒めない夢は悪夢でしかなく、夢は所詮夢でしかない、そこに永遠も安寧もありはせぬのだ。

ゆえに、我は貴様らを救う。
アンネ、ローズ、在るべき姿へと戻る為、我が斬り裂いてくれよう!
【竜言語魔法《幻影刃》】の一撃で!


ルパート・ブラックスミス
ならん。
お前の言うその甘い夢とは、もはや『未来』を想い描いてるのではない。『過去』を思い返して沈む微睡みだ。
その夢に永遠に眠るならば…それはつまり死ぬということだ。

死に別れた今も友を想う夢魔よ。
お前は、同じようにお前を想う友を、その夢の末路に殺そうとしている。

黒騎士は、お前の「お願い」には応えない。

敵のUCを【狂気耐性】で凌ぎつつ【青炎より再誕せし神殺しの魔剣】抜剣。
彼女の「お願い」を拒絶するだけの【覚悟】がある以上、魔剣の威力も十分に発揮している。一撃で斬り伏せる。

世界と共に、お前の友を喰い殺さんとするオブリビオンに。
粛清宣告。




 吸血夢魔姫の願いをまず耳にしたのは、一人の魔皇と一体の黒騎士の鎧だった。
「お願い、か……ならば我に話してみよ、なぜそうまで離れたくないのかを」
 ジュテム・ルナール(魔皇・f29629)は態度こそ傲岸不遜だが、幾千の刻を重ねたその心に深い愛を持つ男だ。少女の願いを一蹴せずに、続きを語れと先を促す。

 アンネローズは、魅惑的に濡れる瞳を静かに閉じた。
「ローズは、私が『お願い』を使わなくても傍に居てくれた、たったひとりの友達」
「アンネは、暗くて永いだけの夜に甘い喜びを教えてくれた、かけがえのない友達」
「「彼女と共にいられるなら、他には何もいらないわ」」
 目的は彼らの心を震わせて自由を奪うため、しかしその唇から紡がれた二人分の想いは一時凌ぎの作り話とは思えない。
「だから……どうか、この甘い夢を壊さないで。『お願い』を聞いてちょうだい?」
 吸血夢魔姫は胸の前で両の手を合わせたポーズで、再び願う。
 けれど――。

「ならん」
 と、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は一言、否の答えを叩き付ける。
「『いつか一緒にお菓子のお城に住もう』、嘗てそんな甘い夢を見ていたそうだな」
「……っ!? どうして、それを……」
 二人だけの夢を知られていたことに驚き、アンネローズの瞳が見開かれた。
「お前の言うその甘い夢とは、もはや『未来』を想い描いてるのではない。『過去』を思い返して沈む微睡みだ」
 ルパートはお菓子の迷宮での情報収集で、一足先に二人の心に触れていたのだ。それでも、その『願い』には応えられないという意思は揺るがない。

 取り付く島もない鎧から、アンネローズはジュテムへ縋るように視線を移した。
「我は貴様らを救いに来た、一方的に誅する気はない。だが……」
 救いに来た。その言葉とは裏腹に、夢魔のお願いに心を奪われていないことを示すように、ジュテムの瞳は彼女を鋭く射抜いている。
「貴様は自分で理解しているのではないか。これは甘い夢で、幻だと。今は刹那の夢に過ぎないと。……醒めない夢は悪夢でしかなく、夢は所詮夢でしかない」
 そこに永遠も安寧もありはせぬのだ、と。人一倍孤独の寂しさを知るジュテムは、吸血夢魔姫が目を逸らしていた現実を静かに突き付けた。

 そう、夢魔姫が想う吸血鬼は、まだ現実を生きているのだ。
「その夢に永遠に眠るならば……それはつまり死ぬということだ」
 ルパートは言葉の刃で甘い夢を斬りつけ暴いて行く。彼女にはその夢を見ることの意味を知る義務があるのだから。
「死に別れた今も友を想う夢魔よ。お前は、同じようにお前を想う友を、その夢の末路に殺そうとしている」

「――――っ!!」
 目を瞑って、耳を塞いで。アンネローズは声にならない声で叫んだ。
 お願いお願いお願いお願い……通じなかった魅了の魔力が暴走して、キャンディランプやマカロンの柱を破壊していく。あれもこれも嫌だと駄々を捏ねるように無差別に暴れる魔力は猟兵達にも襲いかかるが、ルパートとジュテムはそれぞれの剣を構えて、彼女の涙の如き叫びを受け止めた。

 寂しいな。苦しいな。甘い夢を壊さないで欲しいという願いは聞けない。
 猟兵達は彼女の願いを拒絶するだけの覚悟を持って、この戦場へ訪れたのだ。
 ……けれど、もうひとつの願いなら叶えてやれるはずだ。
「我らは貴様らを救う」
 大切な者をその手で殺める前に、彼女の夢を終わらせる。
「アンネ、ローズ、在るべき姿へと戻る為、我らが斬り裂いてくれよう!」
 ジュテムは【竜言語魔法《幻影刃》】を、ルパートは【青炎より再誕せし神殺しの魔剣】を喚び寄せた。虚空から不可視の刃が、鎧の炎から再生成した呪いの魔剣が生まれ、二人は同時にアンネローズを指し示す。
「微塵に斬り裂け、ファンタズム・ブレイド!」
「我が血はもはや栄光なく。されど、罪科の剣は今一度この手に。世界と共に、お前の友を喰い殺さんとするオブリビオンに……粛清宣告!」

 刃はアンネローズを断ち、二人の少女を別つ……はずだった。
 しかし、猟兵達の前で切り裂かれていたのは、人の身の丈ほどある大輪の薔薇だ。
 ――いかないで、アンネ。
 骸魂に飲み込まれているはずのローズの願いが、ぎりぎりで友を庇ったのか。
 はらりはらりと散る薔薇の花びらから、深い傷を負ったアンネローズが出てくる。
 死んでもいいから、傍に居たい。そんな願いが必死に甘い夢を掴んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

上野・イオナ(サポート)
『英雄イオナ 希望を描きにただいま参上!』
ヒーローの類いに憧れてる系男子です。悪いやつ許せないです
でもカッコイイものや面白そうな事が好きで直接助ける対象が見えてない場合はそちらを優先することがあります
具体的にはとあるシナリオで崩れる遺跡の中、巻き込まれてる人が居ないか探さずに、カッコイイ剣をあつめてました
正統派英雄を目指してますが
クールなダークヒーローやイラズラ好きのややひねくれた主人公とかも好きです

UCは指定しているものはどれも使いますが【バトルキャラクターズ】は気づいたら多用してます。雰囲気に合いそうな色んなキャラ召喚します
年齢に比べて行動や喋り方が少し幼い気がします
※アレンジ・連携 歓迎




 痛い……けれど、倒れるわけにはいかない。
 意識を飛ばしたら、この甘い夢が終わってしまう。貴女がいなくなってしまう……!
 傷だらけの自分の身体をぎゅっと抱いて、アンネローズはお菓子の床を踏み締める。
 夢を終わらせようとする侵入者、猟兵はまだやってくるのだから――。

「英雄イオナ! 希望を描きにただいま参上!」
 お菓子の城の最上階で待つお姫様を迎えに、上野・イオナ(レインボードリーム・f03734)はキマイラの白い翼を広げて、文字通り飛んでやって来た。
「この部屋も全部お菓子で出来てるんだね。土産に何かもらっていってもいいかな?」
「……駄目よ。これは私達の夢、私達のお城なんだから!!」
 アンネローズは自分の身体を分裂させ、狼の群れに変身してイオナに飛び掛かる。しかし、鋭い牙と爪は再び宙へ飛んだイオナに躱され、視界を真っ赤に染められる。ゴシゴシと擦っても取れないそれは、過改造ショットガンピストル 『トライレインボウ』のペイント弾だ。
「こいつは……助けに来たヒロインがボスだったってパターンだね」
 ピストルから彩虹の剣に持ち替えたイオナは、狼から吸血夢魔姫の姿に戻ったアンネローズに極めて明るい声で語りかけた。
「この世界のお姫様なら、昔の思い出はやっぱりUDCアースだよね?」
 そう言って、イオナは部屋の中に幽世の空ではない彼女の故郷の空を描いていく。
「僕が描いたこの空は今、本物になる!」
 パチン――。【虚構虹】の完成と共に指を鳴らして、ペイント弾の特殊ペンキを消滅させる。すると、視力が回復したアンネローズの目の前には、幽世よりも小さな月がこちらを見つめて傾ぐ懐かしい空が広がっていた。
 貴女と会える夜が来る、この瞬間がいつも待ち遠しかった。
 薔薇と夜の色が溶けあうマジックアワーの空は、離れたくないと希う私達のようだ。
「これは、どういう攻撃なの……」
「初めに言っただろう。僕は希望を描きに来ただけだ」
 うそ。だって、こんなにも胸が痛い……。
「この甘い夢が終わったとしても、思い出は消えないよ」
 いつの間にか、イオナは薔薇のキャンディランプをひとつ胸に抱えている。
 消えてしまわないように僕も覚えておくから、と。にこやかに手を振った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニオ・リュードベリ
大切な人と悲しいお別れをして、だけどもう一度出会えて
それで二人の夢が叶えられたのならそんなに嬉しいことはないよね
けれどこれは夢なの
アンネは……帰るところに帰らなきゃ

薔薇の嵐を想像の鎧で切り抜け前へと走る
痛いのは【激痛耐性】で我慢だよ
だって……彼女達の心の方が絶対に痛いもの
だからあたしはこの程度の痛みで足を止めない
あなた達の元へと辿り着いてみせる

接近したのなら【ランスチャージ】でひとおもいに【串刺し】に
この夢は消えてしまう
けれど……ローズの中にアンネは生きるよ
アンネがローズと生きていけば優しい夢はきっと続いていく
そうやって託してあげることはできないかな
これがあたしの願いで、あなた達に託す希望だよ


ネーヴェ・ノアイユ
申し訳ありませんが……。そのお願いは聞き届けられません……。
例え全てを犠牲にしてでも共に居たいと思うお二方の友情はとても尊いものだとは思います。だからこそ……。世界を崩壊させ多くの命を奪った。そんな悪夢で互いを染め上げないでください。

UCを展開し……。薔薇の攻撃による拒絶をまずは盾受けをにてしっかりと受け止めます。
その後は一度見たことを活用し……。しっかりと相殺しながらゆっくりとアンネローズ様へと近づきます。
その際に右手にはリボンに魔力溜めしていた魔力の残り7割を使用して作り上げた威力と引き換えに一度振るえば壊れてしまう氷の鋏を作り上げます。
想いと力の全てを込めた一撃にて悪夢を切り裂くために。




 猟兵が部屋に描いた故郷の空を見上げて、アンネローズは涙を流していた。
 これが『希望』? ……わからない、わからない。
「過去の思い出が希望? 一緒にいられない未来に希望なんてあるはずないじゃない……。だから、お願い。この甘い夢を壊さないで……」
 吸血夢魔姫はお願いを繰り返す。
 例えそれが許されない夢だと分かっていても、それ以外に道はないと縋るように――。

「申し訳ありませんが……。そのお願いは聞き届けられません……」
 ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)の答えも揺るがなかった。怖ろしいホラーな展開に襲われても逃げずに最上階まで上って来たのは、彼女に伝えたい言葉があったからだ。ネーヴェもまた祈るようにアンネローズへ想いを返す。
「例え全てを犠牲にしてでも共に居たいと思うお二方の友情はとても尊いものだとは思います。だからこそ……。世界を崩壊させ多くの命を奪った。そんな悪夢で互いを染め上げないでください」
 ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)も、ネーヴェに同意するように頷いていた。二人の少女が抱く想いは恐らく同じだ。――アンネとローズの心を『救いたい』。
「大切な人と悲しいお別れをして、だけどもう一度出会えて……それで二人の夢が叶えられたのならそんなに嬉しいことはないよね」
 けれどこれは夢なの。貴女も分かっているように。
「アンネは……帰るところに帰らなきゃ」

 ――いや!! いやいやいやなんでおねがいをきいてくれないの!?
 まるで子供の癇癪だ。猟兵達の答えを拒否するように、紅薔薇の嵐が暴走する。
 見渡すばかりの赤、赤、赤……。真紅の薔薇の花びらが部屋中を埋め尽くして、生命力を奪おうとネーヴェとニオの元へ降り注ぐ。
「風花舞いて……。一つになれば全てを守る煌めきの盾」
 そんな中、冷静に詠唱を紡いだネーヴェは氷の盾鏡を展開した。ひとつひとつは小さな雪結晶。だが無数に集まった煌めきはどんな攻撃をも受け止める氷壁となる。
 パリン――。絶え間なく降る薔薇により、壊れることもあるだろう。しかし、壊れた瞬間にまた次の盾鏡が現れる。繰り返せば繰り返すほど、上手に薔薇を去なして。ネーヴェの周りには美しい万華鏡のような光がキラキラと踊っていた。
「これで薔薇は大分減ったね、ネーヴェさん、ありがとう! ……あたしの心、無敵の武器へと変われ!」
 礼を告げると、ニオは【想像の鎧】を纏って、残る薔薇の嵐の中へと飛び込んで行った。影の鎧に光の翼を背負い込んで、濃い影ばかりに目が行って光が見えなくなっている彼女達へ希望を届けるために、ニオは翔ける。
「ニオ様……!? まだ薔薇は残っていますよ……!?」
 氷の盾を展開しながらじわじわと進んでいたネーヴェは、ニオの行動に驚きを隠せない。けれど、ちらりと一瞬だけ後ろを向いたニオは、あたしは大丈夫だよと力強い笑みを見せる。前を向き直したその瞳は、頬に赤い筋が刻まれても尚、輝いていた。
(だって……彼女達の心の方が絶対に痛いもの)
 少しくらい痛いのはへっちゃらだと足を止めずに、薔薇の嵐の中心、アンネローズの元へとニオは辿り着き、そして――。

 薔薇の中心で我を忘れているアンネローズを、アリスランスでひと思いに貫いた。
「……アンネ、ローズ。聞こえる?」
 ニオはアンネローズの内にいる二人に向かって語りかける。
「この夢は消えてしまう。けれど……ローズの中にアンネは生きるよ」
 アンネがローズと生きていけば優しい夢はきっと続いていく。
 そうやって託してあげることはできないかな。
 優しい声に包まれて、アンネローズは顔を上げる。
 眩しい……。目の前には、思い出の空を背にした美しい光の翼が広がっていた。
「これがあたしの願いで、あなた達に託す『希望』だよ」

 散り終えた薔薇の道を歩いて、ネーヴェは残りの魔力全てを使って氷の鋏を生成する。
「お別れの時間です……。甘い夢を、悪夢を切り裂いて……未来へ進みましょう……」
 コクリと小さく頷いて、漸く夢の終わりを受け入れたアンネローズは瞳を閉じた。
 ――ありがとう、アンネ。――ありがとう、ローズ。
 ――ごめんね、ごめんね。でも、貴女と出会えて、最期に会えて、幸せだった。
 シャ……ッキン。氷の鋏はアンネとローズを断つ。
 切り離された骸魂は空に溶けるように消滅し、黒いドレスの吸血鬼の少女、ローズだけがその場で眠るように倒れている。二人の少女の甘い夢は終わりを迎えたのだ。

 時間が巻き戻るように、崩壊した世界は元通りに修復されていく。それに次いでお菓子の城は間もなく消滅するだろう。猟兵達はローズを連れて脱出し、地上へと帰った。
 そうして、ローズも幽世で眠らされていた住民達も、みんな夢から醒めたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『妖怪コラボカフェへ行こう』

POW   :    カフェのお手伝いをしてみる

SPD   :    とにかく食べて飲んで楽しんでみる

WIZ   :    オリジナルメニューを考案してみる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 何だか長い夢を見ていたような気がする。また世界が終わりかけていたのだろうか。
 ええと……なんだって!? これから猟兵さん達がうちに来て下さる!?
 それでは最大限のおもてなしをしないと!!
 自慢の西洋妖怪スイーツを召し上がれ!
 新しいメニューの考案もあったら参考にさせてもらいたいね。絶対に売れるよ!
 ああ、なんで僕はこんなに口下手なんだろう……。
 伝えきれない感謝の分、腕によりをかけてとびきりのスイーツをお届けするからね!
 カランカラン――。
 ほら、早速猟兵さん達がいらっしゃった。最高の笑顔でお出迎えにいこう!
「……いらっしゃい、ませ」
 強面フランケンシュタインが店長の、西洋妖怪カフェ「Frank」へようこそ!

 ***

 飲んだり食べたりメニューを考案したり、カフェでお好きな時間をお過ごし下さい。
 OPに幾つか書いてあるとおり、西洋妖怪モチーフのスイーツをご提供致します。
 何でもお作りするので、自由にご注文をどうぞ。お任せも歓迎です。
 猟兵達が助けた黒いドレスの吸血鬼、ローズも店内でパフェをつついています。
 その姿はまだ少し寂しそうです。宜しければ、声をかけてあげてみて下さい。
 こちらの章だけの参加も歓迎です。
 それでは楽しいスイーツタイムをお楽しみ下さいませ。
ネーヴェ・ノアイユ
強面の店長様の笑顔に小さくながらも悲鳴を上げてしまったことにお詫びを告げ……。その後に吸血鬼をモチーフにしたパフェを注文させていただこうと思います。

パフェを受け取りましたら寂しそうにされているローズ様に先ほどは申し訳ありませんでした……。と、お詫びをしてからご一緒してもよいかを伺いますね。
少しでも寂しさが晴れるようご助力出来たらとアンネ様との思い出などについてお聞きしたり……。何かお二方の想い出が形となるよう共にメニューを考えてみたりなども出来たらと思います。
メニューを考える際には……。甘い幸せの中にてお二方が共に居られるよう商品名が『アンネローズ』となるような方向に考えていきたいですね……!


ジュテム・ルナール
ふむ、カフェか…あまり人の多い場所は慣れぬがこれもまた一興である、我はローズに同席し何か食べてみるとしよう。

スタッフよ、我にもパフェをもて。
そうさな、この紅い雫が滴る吸血鬼パフェとやらだ。

さて…ローズよ、身体の調子はどうかね?
まぁまだ本調子では無かろう、ゆるりと休むが良い。
……救うなどと大言を吐いておいて何だが、所詮は我もまた別れを恐れて他者から距離をとり生きる身、お前の哀しみを癒す術も知らぬ。
ゆえに今はただ目の前でこの美味いパフェを一緒に食ってやろう、哀しみは時間しか癒せぬ…望むなら彼女が思い出に変わる日まで我はここにいよう。
幸い我には時間だけは無限にあるのでな。

※お任せ、アドリブ、歓迎




「ふむ、カフェか……あまり人の多い場所は慣れぬがこれもまた一興である」
 ジュテム・ルナール(魔皇・f29629)が招待されたカフェに訪れると既に先客がいたようで、レトロなドアベルがぶら下がる扉が開けられたまま、小さな少女がフリーズしていた。何事かと覗き込めば、小さな悲鳴を上げた表情で凍り付いているネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)と、その真向かいに強面のフランケンシュタインの姿が。
「なるほどな。随分と個性的な出迎え付きの店らしい」
 我も入店するぞと少女の背を押せば、我に返ったネーヴェは店主にもジュテムにも頭を下げて謝罪を告げる。
「思わず悲鳴を上げてしまい……大変申し訳ございませんでした……」
 すると、魔女のウエイトレスがずずいと店長を押し除けて、
「どうかお気になさらずにー! むしろ驚かせてごめんなさい!」
 二名様をご案内。席は二人の希望で、先に来店していたローズとの相席となった。

「まずは注文を行えばよいのだろう? スタッフよ、我にもパフェをもて。そうさな、この紅い雫が滴る吸血鬼パフェとやらだ」
「私も同じものをお願い致します……」
 猟兵との相席を受け入れたローズは、一足先に届いた吸血鬼パフェをつついている。大切な者との別れに導いた猟兵達を前にしても拒絶こそしないものの、心ここに在らずといった体でぼんやりとパフェの山を崩していた。
「さて……ローズよ、身体の調子はどうかね?」
「体は何ともないわ、お蔭様でね。ただ……駄目ね。この結末が正しかったと頭では分かっているのに、まだ心が付いてこないの」
「ローズ様、アンネ様との思い出などについてお聞きしても宜しいでしょうか……」
 少しでも寂しさが晴れるように、ローズの力になりたいネーヴェはそんな質問を投げかけるが、ローズは難しそうに眉尻を下げて切ない微笑みを浮かべている。
「私達、とってもスイーツが好きだったの。毎晩のように夜のお茶会を開いていたわ。パフェも大好きだったのに……どうしてかしらね、今はちっとも甘くないの」
 だから、スプーンにすくった生クリームと赤いシロップを口に含んでは、物足りなさそうにパフェの底を探っていたのか。
 ネーヴェとジュテムの前にも届けられたパフェを同じように口にする。薔薇林檎からは果実の蜜が溢れ、紅い雫のシロップは酸味の利いた甘さを舌に広げた。
「うむ、十二分に美味なパフェだ。甘く感じられぬのは、お前の気持ちの問題なのだろう。まぁまだ本調子では無かろう、ゆるりと休むが良い」
 パフェの薔薇を上品に平らげながら、ジュテムは独り言のような言葉を紡ぐ。
「……救うなどと大言を吐いておいて何だが、所詮は我もまた別れを恐れて他者から距離をとり生きる身、お前の哀しみを癒す術も知らぬ」
 自分と同じ寂しさを抱いているという声に誘われて、ずっと俯いていたローズの視線がジュテムの華美な瞳に捕らえられた。漸くこちらを向いたな、と。魔皇はまたひとくち甘い紅を口にして妖しく笑む。
「ゆえに今はただ目の前でこの美味いパフェを一緒に食ってやろう、哀しみは時間しか癒せぬ……望むなら彼女が思い出に変わる日まで我はここにいよう」
(そんな日が来るまで、一体どれだけ時間がかかると……)
 しかし、否定も誤魔化す為の戯言もローズには許されない。
「幸い我には時間だけは無限にある」
 永遠を生きる彼は、本気だ。
 そんな尊大な笑みに降伏して、ローズも釣られて頬を緩めるしかなかったようだ。

 雰囲気の和らいだテーブルで、ネーヴェはひとつ提案をしてみる。
「……そうです。お時間が許すなら……何かお二方の想い出が形となるよう共にメニューを考えてみるのはいかがでしょうか」
「それは面白い。ローズ、アンネと食したスイーツの中で、特に好きな品はないか」
 問われて一瞬目が泳いだローズだったが、すぐに何か思い当たったようだ。
「フルーツタルト、かしら。ストロベリーとブルーベリーがゼリーに包まれて、キラキラしてるの」
「アンネ様の赤色とローズ様の夜色のタルトですね……とても素敵だと思います……」
 思い描いていたスイーツのイメージがネーヴェに伝わって、ローズは少し嬉しそうに頷く。――そこへ、ぬぅっと。はじめに見たあの迫力ある顔がまた乱入してきた。
「す、す……」
「ひゃっ!?」
 中々あの顔に慣れるのは難しく、再び悲鳴を漏らしたネーヴェはウエイトレスによって助けられた。
「度々ごめんなさいー! 店長がその素敵なスイーツ案、是非採用させて下さい、ですって! 他の猟兵様からも、そこの吸血鬼のお嬢様とお城をイメージしたスイーツをって、リクエストがあったばかりなんです。すぐに試作品を作ってお届けしますね!」
 新作のイメージが湧いた店長とウエイトレスは、嵐のように厨房へと戻っていった。
 どうやら暫く待っていれば、他の猟兵の案との合作スイーツが出来上がるらしい。
「甘い幸せの中にてお二方が共に居られるよう……商品名は『アンネローズ』がよいとおもいます」
「我もその名に一票入れよう」
「ありがとう……私も、そうしてもらえるように、店長さんにお願いするわ」
 そんなヒトのあたたかさに触れて食べた残りのパフェは、先程よりも不思議と甘かったそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルパート・ブラックスミス
【指定UC】、仮初の身体でローズの下へ。

君の友のことを聞かせてほしい。
当人に比べればちっぽけな思い出にしかならんが、
君から奪い去った一人として、彼女のことを記憶に刻みたい。
…欠片も残らず消えてしまう必要はないはずだ。

ひとしきり話を聞いたら、彼女の前に
アンネローズの姿のメレンゲドールと
今回のホーンテッド・スイーツ・キャッスルをモチーフにしたヘクセンハウスを置く。
記憶を頼りに店員に無理を言って用意してもらった。

『夢』は残る。描いた通りとはいかないし、口に収まる小ささになってしまったが。
この『夢』を味わい記憶に残して、時の進んだ先に持って行けるのは、他ならぬ君だ。
この『夢』を食べるのは君だ、ローズ。




「同席してもよいだろうか」
 カフェの奥でパフェを食べ終えたローズに、黒髪の青年が声をかけた。
「自分は先程あの城で戦った鎧騎士だ。君の友のことを聞かせてほしい」
 言われてみれば、ローズはその青年の瞳の青に見覚えがある。
 青い炎を宿す鎧騎士。アンネとの夢に終わりを告げた、猟兵のひとりだ。
 ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は、【縁が紡ぎし身製】で召喚した仮初の身体でローズの話を聞きに来たのだと言う。許可を得た後、背筋を伸ばした姿勢で向かいの席に座ったルパートは彼女へ真直ぐな視線を送った。
「当人に比べればちっぽけな思い出にしかならんが、君から奪い去った一人として、彼女のことを記憶に刻みたい。……欠片も残らず消えてしまう必要はないはずだ」
「……そう。夢だからって、忘れなくてもいいのね」
 鎧兜が無くても表情の変わらない青年は、勿論だと頷いた。
 世界の終わりを回避して、いつも通りの変わらぬ日常が広がる窓に目を向けながら、ローズはぽつりぽつりとアンネについて語り出す。

 夢魔のお姫様だったアンネはいつもお城に閉じ込められていたの。
 人の夢よりもお菓子が好きな彼女は、夢魔として正しくないとされていたから。
 人の血よりもお菓子が好きな私と同じ。
 落ちこぼれで似た者同士の私達はすぐに仲良くなった。大切だった。特別、だった。

 静かに相槌を打つだけだったルパートは、突然店員を呼ぶように手を上げた。
 すぐに気付いた店員は、彼が事前に注文していたスイーツをテーブルの上に置く。
 小さめのホールのタルトには、ストロベリーとブルーベリーがゼリーの中に包まれていた。その上にはクッキーとチョコレートで出来たヘクセンハウス、小さな小さなホーンテッド・スイーツ・キャッスルが建っている。キャンディの薔薇が咲く中、アンネローズのメレンゲドールがこの城のお姫様だ。
「これ、は……」
 ルパートの記憶を頼りに、店員に無理を言って新作を用意してもらったのだ。他の猟兵もアンネローズをイメージしたスイーツ案を出していたようで、これはその合作となる。
 
「『夢』は残る。描いた通りとはいかないし、口に収まる小ささになってしまったが。この『夢』を味わい記憶に残して、時の進んだ先に持って行けるのは、他ならぬ君だ」
 この『夢』を食べるのは君だ、ローズ。
 ルパートがローズへフォークを差し出すと、貴方も持っていてと微笑まれた。
「スイーツは、誰かと一緒に食べたいの。お願い、付き合って?」
 その願いなら叶えられる。ルパートは誰かと食べるタルトの甘さも思い出に残した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニオ・リュードベリ
わぁ、今度こそお菓子がいっぱい!
可愛いお菓子達に目移りしちゃう

オバケカボチャプリンに可愛いラテアートを頼んでから、改めてお店を見回す
あ!メリーだ!お仕事お疲れ様だよ
よかったら一緒に食べない?
メリーは何頼んだの?
あたしはねー……

いざ頼んだお菓子を食べようとしたら
寂しげな女の子に気付く
ローズ、無事だったんだね
あの……あの子も一緒に誘っていいかな?

改めてこんにちは、ローズ
そのパフェ可愛いね……じゃなくて
その、よければ友達になって欲しいんだ
あなた達と戦ったあたしが言うのは勝手だろうけど……
あたしがローズと、そしてアンネのことを知れば
また何かが続いていくと思うから
大丈夫そうなら暫く一緒にお菓子を楽しもう




「わぁ、今度こそお菓子がいっぱい! 可愛いお菓子達に目移りしちゃう……」
 カフェのショーケースの前で、ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は幸せな悲鳴を上げていた。あの子もこの子も食べたいけれど……うん、決めた!
 店員に注文を頼んだニオが店内を見渡していると、同じようにスイーツのお届けを心待ちにしているグリモア猟兵のメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)の姿を発見した。
「あ! メリーだ! お仕事お疲れ様だよ」
「やあ、ニオこそお疲れ様。幽世を守ってくれてありがとねぇ」
 一緒に食べようというお誘いには喜んで。まだかなまだかなと仕事上がりのご褒美を待つ少女と幼女の前には、すぐにお望みのスイーツが並べられる。
 ニオの前にはオバケカボチャのプリンとケルベロスの3Dラテアート。
 メリーの前にはミイラ風ホワイトチョコモンブランが届けられた。
「すごい! もこもこのケルベロスもオバケも可愛いね、どこから食べようかな」
「真っ白なミイラもなかなかオシャレだよ。覗いてるお目目はミルクチョコかね」
 きゃいきゃいと二人でひとしきりはしゃいで、いざ実食しようとしたその時、ニオは奥のテーブルにローズが居ることに気が付いた。
「ローズ、無事だったんだね。あの……あの子も一緒に誘っていいかな?」
「ああ、勿論だよ。この子達を連れて向こうの席に移動しよう」

 そうしてニオとメリーは自分達のお皿を持って、ローズのいる席へと移った。
「改めてこんにちは、ローズ。わぁ、そのお菓子のお城、可愛いね!」
「ありがとう。猟兵の皆さんが私達をイメージしたスイーツを考案して下さったの」
 同席を快く許可してくれたローズの隣に座って、ホールのベリータルトの上に乗ったヘクセンハウスを間近で見させてもらう。タルトが数切れと薔薇のキャンディはもう美味しくいただかれた後のようだが、残されているあの城をイメージしたお菓子の家も、アンネローズのメレンゲドールも良く出来ている。
「私達はあんな騒ぎを起こしたのに……みんな優しいのね」
 砂糖で出来た自分をつつくローズの微笑みには、まだどこか寂しさが残っていた。
「ううん、ローズの気持ちも分かるから。あなた達と戦ったあたしが言うのは勝手だろうけど……あのね、その……よければあたしと友達になって欲しいんだ」
 『友達』。そんな関係を望まれるとは思わなくて、ローズは言葉が出てこない。ニオは明るい笑顔が魅力的な少女だ。けれど、その内には普段は見せない感情を抱えている。寂しい者は誰かの寂しさにも敏感だ。アンネとローズがそうだったように。
「あたしがローズと、そしてアンネのことを知れば、また何かが続いていくと思うから」
 すると、ローズは自分のタルトを切り分けて、ニオに小皿を差し出した。
「昔、アンネが言ったの。『友達なら、自分の大好きなスイーツを分け合うものよ』」
 ありがとう。甘いものは新しい縁を繋いで行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジェイソン・スカイフォール(サポート)
根がマジメで、楽しむことにあまり慣れていないものの、他参加者の様子を見つつ、リラックスしようとしています。

あまりはめを外す感じではありませんが、自然の風景や、土地の食べ物、おもてなしは素直に受け入れ、楽しみます。

他参加者とも、交流できそうなら、会話できると嬉しいです。


徳川・家光(サポート)
 基本的に、必要性が無い限りあまり目立たないようにしています。でも頼られると嫌と言えず、人前に出ることにめちゃくちゃなれているので、必要になればそこそこの「コミュ力」技能でそつなく対応します。
 土木系の力仕事は「羅刹大伽藍」、スピード勝負なら騎乗技能+名馬「火産霊丸」を召喚し、活用します。

 異世界の文化が好きで、自分なりに色々調べており詳しいのですが、ときどき基本的な知識が抜けていたりします。

 嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。また、エンパイアの偉い人には会いません(話がややこしくなるので)。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせ。よろしくです!




「随分と繁盛しているようですね」
 幽世に新しいカフェがオープンしたという噂を聞きつけたジェイソン・スカイフォール(界境なきメディック・f05228)が妖怪カフェに来店すると、既に店内は妖怪と猟兵で賑わっていた。
 空いているカウンター席に腰を下ろそうとすれば、隣には見覚えのある姿が……。

 サムライ装束を纏う赤髪の羅刹が、馬っぽいスイーツを色々な角度から観察している。
「上様……ですよね。お隣を宜しいでしょうか」
 上げられた顔は、やはりその人。徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は人当たりのよい笑顔でジェイソンの申し出を受け入れた。
「どうぞどうぞ! ここのカフェは変わったメニューが多いですね。もう注文はしましたか? 店員さんに頼めばオリジナルメニューも作ってくれるようですよ」
「とりあえずお勧めメニューを注文しました。上様の召し上がっているそちらは……」
「これは僕の火産霊丸をイメージして作ってもらった、ファイヤーホースロールです!」
 オレンジクリームをぐるぐる巻いた白生地のロールケーキは、オレンジピールによって気高き炎を表現されていた。上部に飾られたホワイトチョコの耳も円らなチョコチップの瞳もなかなかに愛嬌がある。たっぷりと見た目を楽しんだ後、家光は馬の鼻先にフォークを刺して頬張った。お味の感想は勿論……。
「うん……うまい! ですね!」

 そうこうしている内に、ジェイソンが注文していたスイーツも届いた。
 テーブルに置かれたグラサージュショコラのニャンとも可愛らしいキャットウィッチが、ジェイソンと見つめ合う。フォークを持つ手は完全に止まっていた。
「これはこれは、随分と可愛らしい品が届きましたね」
「どこから食べようとしても、猫の顔を崩してします……一体、どうすれば……」
 真顔で悩むジェイソンは、実は可愛いもの好きだったらしい。
 どうにかこうにか覚悟を決めて頬張ったビターなチョコレートケーキの中には、ブラックチェリーの酸味ある甘さも潜んでいて、大変満足のいく味だったそうだ。

「そういえば、このカフェには持ち帰り用のスイーツはあるのでしょうか」
「どうでしょう、頼めば作って下さる気も致しますが……」
 混雑してきた店内を見ると、無理な注文を行うのは些か気が引ける。しかし、それならこちらから手を貸せばよいのではないかとジェイソンは思い至った。
「少々お待ち下さい。【衛生小隊】と共に厨房の手伝いが出来ないか交渉してきます」
「それでは僕も共に参りましょう! サメを召喚して果物の皮むきくらいなら出来るかもしれませんが……店員さんをビックリさせてしまうかもしれませんので、やめた方がいいですかね」
 お気持ちだけで十分だと思います、とジェイソンもサメの案だけは止めておいた。

 それぞれのスイーツを食べ終えた二人は、早速店員に声をかけた。店の手伝いをする代わりにテイクアウト出来るスイーツを用意してもらいたいと提案してみる。すると、店長にもウエイトレスにも、猟兵さんが手伝って下さるなんてとビックリするほど大喜びされた。
 そうして、厨房で大活躍した二人は、大量のオバケクッキーサンドをゲットした。何味のクリームが挟んであるかは、食べてみてからのお楽しみだ。
 ジェイソンは可愛い土産を割らないよう大事に仕舞い込み、家光はサプライズの土産で喜ぶ嫁達の顔を思い浮かべながら、それぞれ軽い足取りでカフェを後にしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

灰神楽・綾
【不死蝶/2人】
面白いカフェがあると聞いたから来てみたよ

へぇ、本当にユニークな料理がいっぱい
なんだかハロウィンっぽいよね
ふと、近くの席の女の子が食べている
吸血鬼モチーフのパフェが目に留まる
じゃあ俺はあの子と同じパフェにしようっと

SNS映えもバッチリそうなパフェにおぉーと感動
梓も食べてみる?
ナチュラルにはいあーんと差し出し
わぁ、本格的な食レポ

いやぁそれは梓も人のこと言えないと思うよ?
梓もワイルドな見た目に反してとっても繊細な料理上手
アリスラビリンスでの戦争以来
お菓子作りにもハマったようだし
どんどん女子力とお母さん力が上がってる
もしかして梓もそのうちこういうの作ってくれるのかな?
って期待しちゃう


乱獅子・梓
【不死蝶】
店長の圧に若干怯みつつ入店

ああ、そういえばもうすぐハロウィンか
この世界の住人って全体的にハロウィンぽいよな
とか思いつつメニュー眺め
それじゃあ俺はケルベロスの3Dラテアートで

ラテの中に3匹の犬が気持ち良さそうに
浸かっているようなビジュアルにクスッとなる
綾の頼んだパフェも凄いな
一人で食べ切れるのか…?

綾からパフェ貰い
……おぉ、こういうのは見掛け倒しの
イメージがあったが味も一級品だな
チョコと生クリームの甘みと
林檎の酸味のバランスが絶妙
パフェって結構ボリュームがあるが
これなら飽きずにどんどん食べられそうだ

それにしてもこの可愛らしいスイーツを
あの強面の店長が作っていると思うと違和感がすごいな…




 ずぅうん……と効果音が聞こえてくるように。人間としては背の高い部類に入る乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の更に上から、継接ぎの大顔が間近に迫る。
「……おぉ、圧が半端ないな」
 カフェ「Frank」恒例、強面店長のウェルカムドアップの洗礼を受けた梓は、若干怯んでしまったのか仰け反っている。その様子を見守ってクスクスと微笑む灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が後に続いて、二名はウエイトレスに席へと案内された。

「面白いカフェがあると聞いたから来てみたけど、お出迎えから普通じゃなかったね。メニューも……へぇ、本当にユニークな料理がいっぱい」
 西洋妖怪カフェは店内もスイーツも、どことなくハロウィンを連想させる。
「ああ、そういえばもうすぐハロウィンか。この世界の住人って全体的にハロウィンぽいよな」
 フランケンシュタインの店長に、魔女のウエイトレス。客も猟兵以外は吸血鬼に悪魔に狼男エトセトラ。仮装ではない本物の西洋妖怪達がスイーツをつつくこの店内は、まるでハロウィンパーティー会場のようだ。
 綾はどのメニューにしようか暫し迷っていたが、隣の席の女の子が食べていた、吸血鬼モチーフのパフェに目が留まる。サングラスの赤レンズの奥でダンピールの瞳を細めて、あれに決めたと指さした。
「じゃあ俺はあの子と同じパフェにしようっと」
「それじゃあ俺はケルベロスの3Dラテアートで」

 薔薇林檎が頂上で美しく咲き誇り、真っ赤なシロップを滴らせる吸血鬼パフェ。
 表情の違う三つの顔がもこもこもこ、愛らしく浮かぶケルベロスのラテアート。
 綾と梓の間のテーブルに届いたスイーツは、SNS映えもバッチリだ。
「おぉー、豪華だ。ちょっと感動しちゃうね」
「お前らも気持ち良さそうに浸かってんなー」
「ほんとだ。特にこの舌出してる子、可愛いね」
 ケルベロスのゆるキャラのようなビジュアルに、二人はクスリと笑い合う。
 かき回して崩すのは勿体ない。そっとラテに口を付ける梓は、薔薇林檎の花びらを剥いていく綾を見て、ひとりで食べきれるのかと少し心配になってくる。
 すると、前方から感じる視線に気が付いた綾は、シロップ付きの生クリームと林檎を乗せたスプーンを差し出した。
「梓も食べてみる?」
 実にナチュラルにあーんが行われる。仲良しの二人にとっては慣れっこなのだろう。
「……おぉ、こういうのは見掛け倒しのイメージがあったが味も一級品だな。チョコと生クリームの甘みと林檎の酸味のバランスが絶妙。パフェって結構ボリュームがあるが、これなら飽きずにどんどん食べられそうだ」
「わぁ、本格的な食レポ。店長さんにも聞かせてあげたかったね」
 梓の食レポをききながら、綾はその言葉の通り、ひょいぱくとパフェをどんどん食べ進めていった。甘くて、酸っぱくて、確かに手が止まらなくなる美味しさだ。

「それにしても、この可愛らしいスイーツをあの強面の店長が作っていると思うと、違和感がすごいな……」
 ぽつりと呟かれた梓の言葉に、綾はスプーンを止めて首を傾げる。
「いやぁそれは梓も人のこと言えないと思うよ?」
 梓もワイルドな見た目に反してとっても繊細な料理上手なのだから。
 綾の証言によると、アリスラビリンスの戦争でパンケーキやゼリーを作って以来、お菓子作りにもハマっているとのこと。
「どんどん女子力とお母さん力が上がってるよね。もしかして梓もそのうちこういうの作ってくれるのかな? って期待しちゃう」
「女子力お母さん力言うな! 自信があるのは菓子じゃなくて飯作りなんだけどな……」
 そんな風に期待されたら、頑張ってしまうじゃないか。一人旅で必要だったから身に付けたスキルは、いつの間にか二人旅を豊かにしていくものになっていた。
 今度はどんなスイーツを作ろうか。スキルアップは少しずつ。いつかはこんなスイーツの花を咲かせて、綾をあっと驚かせる日が来るかもしれない。


 甘い夢から醒めても、世界は終わらない。
 これまでの思い出を胸に、これからの出会いを繋ぎ、それぞれの日常を生きていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月04日


挿絵イラスト