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エスケイプ・フロム・フローズンジェイル

#アポカリプスヘル #ヴォーテックス・シティ

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#アポカリプスヘル
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#ヴォーテックス・シティ


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●氷獄
 そこは、仮にも屋内だと言うのに雪と氷に覆われていた。
 時折隙間風が流れ込んで来ては、ふわりと積もった雪を巻き上げて、その度に強烈な冷気が肌を刺す。
 寒い。
 嗚呼、寒い。
 特にやることがあるわけではないのに、その部屋は忙しない。
 男の視界に映る人達は、落ち着きなく部屋の中を行き来したり、その場でスクワットをしてみたり。
 ……オブリビオン蔓延る悪徳の都、ヴォーテックス・シティ。
 この巨大都市において、普通の『人』に与えられるものは、生きるのも難しい僅かな施しと苦難ばかり。
 無駄に動くことは、体力をいたずらに消耗するだけなのは誰しも分かり切っていることの筈なのに。
 それでもそうせざるを得ない理由は簡単だ。少しでも動いて体を温めないと、ボロ布同然の囚人服ではこの寒さに耐えられないからだ。
 その中で、ただ一人。
 稼働中の機械らしきものにもたれかかる、一人の屈強な男が目についた。
 その背中のそれが何なのか、何に使うものかはよくわからない。
 だが、重く低い音を立てて駆動する機械であれば、若干の熱くらいは持っていよう。
 そして、その熱を複数人が享受するには、そこは些か狭すぎる。
 このまま凍え死ぬくらいなら……。
 ぎり。それを目にした男の、粗末なナイフを握った手に力が籠る……。

●日の当たる場所へ
「幸い、彼が凶行に走るまではまだしばらく時間があるんですが……」
 それでも、このまま放置していれば遅かれ早かれそのような事態は起こりうる。
 緊張の走るグリモアベースの一角で、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)はそう告げる。
「アポカリプスヘルで先日存在が確認された、オブリビオンの都市……既に知っている方も多いと思いますが、改めて説明の方を」
 悪徳の都『ヴォーテックス・シティ』……。
 それは、ヴォーテックス一族と呼ばれる巨大なレイダー……即ちオブリビオンの組織が支配する、超巨大都市。
 日夜、各地のレイダーから奴隷や物資が上納され、発展を続けていく歪な摩天楼。
 そんな場所の中での『人』の価値などは……わざわざ説明しなくても想像がつくことだろう。
 シャルが予知したのはそんな都市の一角……都市全体からすれば、ほんの、ほんのわずかな一部分ではあるが、そこに閉じ込められた人々のビジョンであった。
「何の目的で集められたのかはわかりません。……まぁ、もしかしたら単に見て楽しむだけという事も有りえますし、考えるだけ無駄でしょうが」
 いずれにせよ、ただの人間が相応の装備も無い状態で長く生きていられる状況でないのは明白だ。
「直接転移させることは不可能ですが、該当エリアの近くまではこちらで送ります。皆さんには、人々が捕らえられている部屋まで到達し、彼らの脱出を支援していただきたく」
 正確な場所はわからない、が。冷気の特に強い、何人もの人間が閉じ込められている大きな部屋、となるとそれなりに候補は絞られてくるだろう。
 それよりも、当然いるであろうレイダーの巡回や見張りをどうやって潜り抜けて辿り着くか。
「最悪、わざと見つかって自分が捕まる……なんて選択肢も入ると思います。危険が伴うので、あまりお勧めはしませんけど」
 解放が成れば、脱出を阻むオブリビオンの追撃を退ける撤退戦となる。
 床も凍っているような極寒の区画だ。その中での移動手段……専用のタイヤを備え付けたバギーくらいは、そこら中に転がっている。
 一つ二つを奪取するくらいならそう難しいことではない、筈だ。
「……ただ一つ。いくらアポカリプスヘルでも、こんな極寒の状況はただの気候変動で片付く話ではありません。この一区画を凍結させている何かしらの存在があるのは間違いないでしょう」
 あくまで目標は救出、脱出だ。こちらから探せ、とまでは言わないが。
「作戦中の接触は十分に考えられます。そのつもりで」
 そう言ってシャルが展開したグリモアのその向こうから、心なしか冷え切った空気を感じた気がした。


ふねこ
 もう今年3分の2終わってるって本当ですか?
 そんな感じのふねこです。涼しくなってきましたね。
 今回はアポヘルのご案内となります。
 例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
 以下、補足情報になります。

 今回はヴォーテックス・シティの一角に囚われた人々の救出ミッションです。
 極寒の世界と化しているのは該当エリアとその周辺だけ(広い都市なので探せば他にもあるかもしれないですが)なので、より寒い方向に向かっていけばとりあえず近くには行けるでしょう。
 第二章では、脱出を阻むオブリビオンとの、極寒の都市を駆け抜けるカーチェイスとなりますが、自力で高速移動する手段を採れるならそっちでもOKです。囚われた人々も自力でバギーの運転くらいはできるでしょう。
 第三章にはボス戦もございます。

 第一章は断章無しでこのままスタート、第二章以降は断章で軽く情報説明を入れてからの募集開始となります。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております!
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第1章 冒険 『セーブ・ザ・スレイブ』

POW   :    レイダーを腕力で成敗する

SPD   :    逃走経路を探し、秘密裏に奴隷を逃がす

WIZ   :    自身もあえて奴隷となり、現地に潜入する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
閉じ込めるだけ……人手が勿体ないですね。

用途不明の機械装置があるなら、コントロール用のネットワークがある可能性は高いですね。金属属性の触手で壁越しに回線の場所を特定。電気属性の触手と回線を接続しハッキングを試みます。警備情報と建物の内部構造を入手し、可能なら目的の部屋にある機械装置を壊れない程度にオーバーヒートさせましょう。部屋全体が温まれば凶行は起きないでしょうし、協力体制も敷きやすくなるはず。あとは脱出経路を確認しつつ、警備の目を掻い潜って進みます。バギーがあればメカニックで自動運転化し引き連れていきます。怪我人や衰弱した人が居れば運搬に使えるでしょう。


メンカル・プルモーサ
……さて、救出と脱出ね…寒さを考えると時間をかけてもいられない…手早く行こうか…
心理隠密術式【シュレディンガー】による心理迷彩を起動…巡回や見張りから見つかりづらくして部屋へと向かうとしようか…
セキュリティシステムがあればハッキングをして情報を集めて…寒いところを目指して進めばとらえられてる人のいる部屋につくかな?
…見張りは医療製薬術式【ノーデンス】で作った麻酔薬でしばらく眠らせて…鍵を開けてとらえられてる人を救出しよう…
…そのあとは鍵を閉めて【面影映す虚構の宴】で捕虜の幻覚を作ってここからの脱出の発覚を遅らせるとしようか…
…さ、あとは何事もなければいいのだけど、ね…



「本当に閉じ込めるだけ……であるならば、人手が勿体ないところですが」
 冷え切った金属の壁に、導電コードを思わせる金属の触手を這わせながら、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は独りごちる。
 はてさて、人々をあんな場所に閉じ込めるその理由は果たして何なのだろうか。
 グリモア猟兵が言っていた通り、ただ閉じ込められたその様を見て楽しむだけなのか、或いはその先に何かが待っているのであろうか。
 ……まぁもっとも、仮にその先に何かがあったとして、思惑通りにさせる気などは更々ないわけなのだが。
「……とは言え、寒さを考えると時間をかけてもいられない」
 しゃがみこんだ怜悧の頭上から落とされる声。背中合わせに立つメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が、視線だけをこちらに向けて進捗はどうかと問いかけてくる。
「手早く行きたいところだけど」
「おかげさまで、順調ですよ」
 そう、と視線を戻したメンカルの先を、巡回らしきレイダーが通り過ぎていく。
 ――心理隠密術式【シュレディンガー】。
 メンカルの持ちうるそれは、決してその姿を消すものではない。
 それは、心理的に『認識させづらくする』もの。
 勿論、見つかりづらい物陰で作業していることは間違いないのだが、その上で誰かの視界に入ったとして『そこに人がいる』という事は認識されても『それが何者か』までには思考が及ばない。人がいるだけで特に異常はない、そういう事になるのだ。
 そして、存在そのものが消えるわけではないのだから、彼女を遮蔽とする怜悧も当然として見えなくなる。
「……完了です。必要な情報と……それから、ネットワーク経由で目標の部屋の機械の稼働率をギリギリまで」
 ネットワークで外部から調整されるものと考えれば空調(機能しているかは別として)、監視、警備システムと言った所。
 それの稼働率を限界まで引き上げることで、機械が発する熱を強める。微々たる差ではあるだろうが、それでも、部屋の温度には影響を与える筈だ。
 もっとも、ネットワーク経由である以上はその超過駆動は遅かれ早かれ感づかれることになる。
 もっとも、急ぐ理由が一つ増えただけと言えばそれまでだが。
「巡回に来られても、時間稼ぎの手段は用意してある……」
「なるほど」
 メンカルの周囲で、ゆらりと蠢く人型の幻影。
 その気になれば、一度見た人間を模すくらいはわけもない。
 鍵のかかった扉越しであれば、パッと見ただけで偽物と断じるのは難しかろう。
 さて、とにもかくにも救出に必要な要素はこれで整った。
 後は動くだけ。
 仮に脱出になった段に何かが起こったときは……その時はその時、である。
「こちらはバギーの確保に動きます。そちらもお気をつけて」
「了解……任せといて」
 交わす言葉は小さく。
 猟兵達は、密やかに行動を開始する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エル・クーゴー
●SPD



・区画を遠隔操作の圏内にギリ収められる距離で陣取り、電脳世界を展開
・周辺風景を取り込み生成する電子迷彩(撮影+学習力+迷彩)を施した【合体強化マネギ】マックス86体を、SPD対処の為送り込む(偵察+団体行動)

・マネギ全数の視覚&聴覚情報を電脳世界に巻き取り(情報収集)、都度の指示出しの他、友軍へのマッピング状況の逐次報告や連絡中継等に便利に使う

・ルート等の都合上、レイダーをノす必要がありそうな際は、対処可能な強度にまでマネギ達を適宜合体させる

・囚われの人々に訝られず誘導指示に従って貰えるよう、彼らの前でだけこっそり姿を可視化させるマネギ各機の腹の小判には『たすけにきたよ』って書いておく


アレックス・エイト
目的が何であれ、無辜の人々を徒に苦しめて良い理由などありません
自由や尊厳を奪いこの極寒のように心まで凍てつかせる…許しがたい所業です
必ずや囚われた人々を救い出しましょう

ウィザードハットのセンサーを稼働させ区画内を走査
脱出ルートの情報収集と、生体反応を検索…微弱な反応が多く集まっている所が、人々が囚われている場所でしょう
巡回や見張りの位置を確認し、彼らの目を盗みその地点へ

おそらく人々が収容されている地点の周辺は、道中以上に見張りが厚いでしょう
私の体躯では本格的な隠密行動は厳しい…であれば充分に距離を詰めて、後は強行突破を
インパクトカノン用意
邪魔者を打ち据え、障害物を破壊し、人々の救助へ向かいます



 ジジ、と。カメラのピントを絞る音が微かに聞こえた。
 魔法使いを思わせるような風貌の、全高2メートル半の人型機械……アレックス・エイト(Geisterritter・f22485)の各種センサーが、周囲を油断なく警戒する。
 今のところ、周囲に人の気配はない。
 物音ない、閑散としたその様が、実際以上にこの環境の寒さを際立たせるような気さえしてくる。
 生気を感じない、凍て付いた世界。
 そこに囚われた者の心も、同じように凍て付いていくのは想像に難くない。
 それを徒に、戯れにともなれば、義憤の心が沸き上がるのは騎士の位を持つ者としてはごく自然な事であろう。
「(必ずや囚われた人々を救い出しましょう)」
 杖を握る手に力が籠るのを感じながら、アレックスは改めて歩を進める。
 ――帽子型ユニットに搭載されたセンサーが、周囲を移動する幾つかの小さな熱源を捉えていた。
 敵の防衛設備か?
 否、その反応には、識別を『僚機』として登録してある。
 電磁迷彩によって目視からの発見を難くしているのは、侵入者からではなく、住人から身を隠すため。
 それは、他の猟兵が放った遠隔兵器であった。
『収集データを転送、共有します』
「助かります」
 それらを中継器として、アレックスの頭の中に直接通信音声が飛んでくる。
 遠隔兵器を放った主……エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は、区画の外周ギリギリを陣取って、こうして後方からのバックアップに注力していた。
 いくらアレックスのセンサーをフル稼働させていても、単騎から集められる情報には限りがある。
 無数の遠隔兵器からもたらされる情報は、精度も量も有り難いものに違いない。
『次の十字路を左へ。移動する見張りの背後を抜けることが可能です』
「了解」
 大型のウォーマシンという種族のハンデを物ともせず、警備の目を掻い潜る。
 その中で、生体反応を探る。
 あまり強い反応は『敵』として除外する。
 この環境でまともに防寒を施して活動できるのはオブリビオン……と、強いて加えるならこうして救出に動いている猟兵くらいなものだ。
 探るべきは、弱い反応。
 それも、微弱な反応が一カ所に集まっている場所だ。
 それこそが、助けるべき――。
「……キャッチ」
『警告。周辺に敵反応多数。救出には交戦が不可避と予想されます』
 流石に道中は良くても、その部屋の見張りはそうもいかないらしい。
 予想通りと言えば予想通りだが、無理なものはどうしようもない。
 とはいえ。
 施設の構造は既にデータとして取り込んである。熱源位置と構造を照らし合わせれば、敵の視界外から射線を通すくらいは可能だ。
 インパクト・カノン。ファイア。
 炸裂音と共に打ち込まれた無数の魔力弾が、見張りを悉く打ち据える。……クリア。
『近隣のマネギのタスクを、要救助者の避難車両への案内に移行させます』
 ザリ、と音を立てて、エルの遠隔兵器が電磁迷彩を解除する。
「……ずいぶん可愛らしい格好をしていることで」
『当ドローン『マネギ』は要救助者へのメンタルケアに高い適性を発揮します』
 その外見は一言で言うと、『たすけにきたよ』と書かれた小判を抱いた招き猫であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リア・ファル
アドリブ共闘歓迎

脱出の案内なら、ボクの出番かな!
それじゃいこうか!

『ハローワールド』を起動。
セキュリティシステムに介入
巡回や見張りの動き、室内の経路、マッピングを把握
(情報収集、偵察、ハッキング)

監視カメラがあればソコから
無ければ見張りの通信機器などを経由して
UC【電子幻想の申し子】で電脳空間から
ダイレクトに現場に侵入・奇襲かな

突入時には『ライブラリデッキ』製の麻酔弾を撃ち、
安全を確保
(マヒ攻撃、毒使い)

脱出経路は演算把握済み、
巡回や見張りの動きも通信機を介して欺瞞情報
・合成音声での偽の指示などで対応しつつ

みんなを脱出用のバギーまで送り届けようか
(逃げ足、時間稼ぎ)


荒谷・つかさ
なるほど、冷気。
何が原因なのかは知らないけれど、要はすごく寒い所よね。
なら、筋肉の出番ね。
(どうしてそうなった)

【超★筋肉黙示録】発動しつつ現場へと向かう
冷気に対しては筋肉を動かすことによる発熱(シバリング)で対抗
カロリー消費が激しいので高カロリーな携帯食料(チョコ等)を多めに持っていく

私自身は隠密行動に向かないので、陽動に回る
なるべく広く目立ちやすい所から、真っ向から攻撃を仕掛けて騒ぎを起こし、敵の目をこちらに引き付ける
武器の類は持たず徒手で対応、状況に応じて「怪力」を活かしその辺のバギーやら瓦礫やらをぶん投げたり派手に立ち回る
遮蔽に隠れるようなら殴って破壊して引きずり出す



「データ収集、統合……っと。他の猟兵さんのおかげで、思った以上にデータが集まるのはありがたいね」
 自身の周囲に半透明のディスプレイを数枚滞空させながら、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は嘆息を零す。
 元々、ハッキング、電子戦は得意分野だ。仮に彼女一人だったとしても、やろうと思えば施設内のデータを抜き出すことは可能であっただろう。
 だが、この作戦に参加している猟兵の中で、電子機器に明るい者はリア一人ではなく、彼らの収集したデータも利用するとなれば、やることは同じと言えど効率は格段に跳ね上がる。
 他の面々がすでに行動を開始している以上、時間をかけてはいられない。これは大きなアドバンテージである。
「それじゃあ、侵入は、まかせて、しまって、いいの、かしら」
「勿論。任せておいて……だけど」
「なに?」
「……何してるの?」
「みて、わからない、かしら」
 さっきからリアの視界の端で、荒谷・つかさ(逸鬼闘閃・f02032)の上半身が上下にフェードインとフェードアウトを繰り返していた。
 物音が立っているわけでもなく、二人は今物陰に身を隠しているわけなので発見の危険は特にないわけなのだが。
 なんというか、こう。視覚的にうるさい。
 ちなみに、彼女が何やってるのかというのはリアにもわかる。
「……いやだから、なんでスクワットしてるの?」
「筋肉を、動かせば、温まる、でしょ」
 確かに。
 いざという時体が冷えてしまって満足に動かせないと言うのはこちらとしても困る。他になかったのかというのは置いておくとして。
「……じゃ、陽動お願いして良いかな。なるべくそっちに誘導するようにするけど、良い?」
「上等」
 スクワット終了。
 応えるが早いか、軽く関節を解して、つかさの足が凍結した床を蹴る。
 背後で、リアの身体が電子の海に溶けていくのをなんとなく感じた。
 元々、隠密行動はあまり得意ではない。
 であるならば、それが得意な者達が『動きやすい』ように立ち回ると言うのが常道であろう。
 故に、つかさは迷いなく『遮蔽の少ない』『見晴らしの良い』ポイントを採る。
 発見されるのは早い。当然だ。見つかるように動いているのだから。
 次々と集まってくる、銃やら鉈やらを手にしたガラの悪い略奪者たち。
 オブリビオンと言えど、雑兵クラスの格の低い連中だ。全滅は流石に難しくとも、時間を稼ぐくらいならつかさ単騎でもやれないことはないだろう。
『今、偽の命令送って進路上の敵をそっちに向かわせてるから』
「了解、リア。……あぁそうだ、ひとつ確認したいんだけど」
 懐から、つかさにだけ聞こえるようなリアの声が届く。
 あちらの方も順調に事を進めているらしい。
 こちらで引きつけるだけ引きつけたら、どうしても邪魔な敵を無力化して避難誘導を行う程度、リアなら容易いことだろう。
「この辺のバギー、壊しちゃっても問題ないわよね?」
『うーん……まぁ、そっちに向かう予定はないし、ボクたちが使う事はないんじゃないかな』
「なら、遠慮なく」
 そこら一体の機材の末路を察したリアの苦笑交じりの声を聞きながら、集ったオブリビオンを前につかさの口角が上がる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ロケット・レイダー』

POW   :    ガベッジボンバー
単純で重い【上空まで運んだ瓦礫やドラム缶 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    バラッジアタック
【上空】から【短機関銃の掃射攻撃】を放ち、【頭上から降り注ぐ激しい弾幕】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    永遠ヒコウ宣言
【永遠にヒコウ(飛行/非行)を続ける宣言】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●追走
 施設のあちこちで、エンジンに火が入る音が鳴り響く。
 捉えられていた人々は、零下での監禁生活に衰弱こそしていたが、それでも確かに生きながらえてはいた。
 動ける者が動けない者を抱え、座席や荷台に一人、また一人と乗り込み、猟兵達もまた、各々が取れる手段を以て出口へとひた走る彼らを先導し、或いは追う。

 凍結路面用のタイヤを装備しているとはいえ、凍て付いた極寒の中でスピードを出すことは大きな危険が伴う。
 車両の通行が想定されているとは言っても、入り組んだ施設内の、決して広いとは言えない道路での走行となればなおの事。
 逸る気持ちとは裏腹に、出口までの道は長く、遠い。

 その中で、後方から轟音が聞こえてくる。
 視線を向けた先には、幾人ものレイダー――その誰もが、裸の上半身に、そのものずばりなロケット推進機を背負った珍妙な姿――が、脱出を阻まんと追いすがる姿が見えた。
「ヒャッハーーー!!」
「てめぇら、良い具合に追いつめてたところを邪魔しやがって!」
「まとめてUターンしてもらうぜェーー!」
 口々に好き勝手なことを叫び、短機関銃を構えるレイダーたち。
 無視して振り切れればそれが一番だったのだが、残念ながら脱出行の速度と比較するとスピードは相手に分があるらしい……。
水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ

衰弱した人を医術で治療中に敵襲。
「熱源を背負っているとはいえ、随分寒そうな追っ手ですね」
UCを使い通路一杯に壁を構築。あえて上部と下部にギリギリ相手が通れるだけの隙間を開け、光属性の光学迷彩で見えなくした網を仕掛けておきます。
相手がかかったら銃撃をUDC液体金属で防ぎつつ駆け寄り、UDC液体金属の刃で相手に止めを刺すと、ベルト部分を切断。噴射剤を止めてロケットを入手します。また追っ手が来たらミサイル代わりに使いましょう。いくつかは残しておけば後で燃料が取れそうですね。
撃退したら治療に戻りつつ、閉じ込められた経緯や理由を聞いてみましょう。


メンカル・プルモーサ
装甲車【エンバール】に人を乗せていざ出発……
……短機関銃程度ならこの装甲車の装甲車は貫くことが出来ないけど……
タイヤとかにあたると困るな……さっさと迎撃が必要か…
運転得意な人に運転代わって貰って……後部荷台に移動…
…そこから追ってくるレイダー達を視界に収めて【世界鎮める妙なる調べ】を発動…
……レイダー達には眠って貰うとしよう……
……まあ眠った結果どっかしらにぶつかったり仲間巻き込んで墜落したりするかも知れないけどそこまでは面倒見切れないから仕方ないね…
…最後に煙玉を投げて攪乱してまた運転に戻るとしよう……



「熱源を背負っているとはいえ、随分寒そうな追っ手ですね……」
 装甲車の窓越しにそれを見た怜悧は、思わずそんな溜息をついていた。
 巨大なロケットを背負った、上半身裸のチンピラたち。
 追手の姿を端的に説明するとこうだ。この極寒の環境下では些か不釣り合いと言わざるを得ない。
「とは言え、見た目ばかりで呆れてもいられませんが……こちらの強度の方は?」
「……短機関銃程度なら、この装甲は貫けない」
 運転席でハンドルを握るメンカルの声に、いくつか安堵の声が上がる。
 彼女が運転する装甲車【エンバール】は、かのスペースシップワールドに存在するクエーサービーストの外殻を用いた代物だ。
 強度もあり、密閉された空間はただの車に比べて段違いの安全性を誇る。
 救出対象の中でも消耗が激しい者達を優先して乗せたのも、その都合だ。
 怜悧の見立てでは、彼らに外傷らしい外傷はない。
 長時間の低温に晒されたのと栄養不足による衰弱が大きい。
 であるならば、何よりもまずはこれ以上体を冷やさないこと。そう言う点でも、外気を防ぐ装甲車は都合がよかった。
「しかし、なぜあんな場所に?」
「少し前に、俺達の集落を連中が襲いに来て……それで、連れ去られたんだ……理由なんかねぇ。ただあいつらは、自分たちだけ平気な中で俺達が凍えてくのを見てるのが楽しいのさ……」
「……」
 悪趣味なことだ。
 もう一度、窓越しに追撃者たちを見やる。
「……さすがに、振り切れそうにありませんね」
「装甲は無事でも、タイヤとかに当てられると困るな……さっさと迎撃が必要か」
 出来れば、治療と運転に専念していたいところだが、そうもいかないようだ。
 比較的体力に余裕のありそうな者に運転を代わってもらい、怜悧とメンカルは後部の荷台へと身を乗り出す。
「少し、時間稼ぎして……すぐ準備はできるから」
「そういう事なら、お任せを」
 ある程度の心得はあるとはいえ、不慣れな運転手に変わったせいで、装甲車の速度は更に落ちている。肉薄されるのは時間の問題だろう。
 怜悧の服の下で、うぞりと黒光りする軟体が蠢いた。
 それは瞬く間に広がり、二人と装甲車を阻む防護壁を形成する。
 制動、減速、姿勢制御。
 追跡者たちも馬鹿ではない。即座にロケットの出力を弱めて、壁の隙間を縫って掻い潜る。
 ただ、それでも速度は落ちるし、追撃の速度は緩む。
 そして彼らは、その壁の隙間が『意図的に作られたもの』であることに気付けなかった。
 視認性をギリギリまで弱めた網。そこに見事誘導させたのだ。
「汝は安息、汝は静穏。魔女が望むは夢路に導く忘我の音……」
 そして、幾重にも重ねた妨害工作は、メンカルの『準備』を終えさせるには十分すぎた。
 術式起動。
 動きを取られた追跡者に容赦なく浴びせられるメンカルの術式。
 それは、対象の意識を瞬時に奪い、強烈な眠気をよもおす代物であった。
 ネットに身体を絡め取られ、体勢を崩した上にロケットの飛行を行っている中での居眠り運転がどれほど危険かは、最早想像するまでもないだろう。
 あらぬ方向へと飛び回り、墜落していく追跡者たち。
「せっかくですから、少し拝借していきましょうか」
 その中で、運よく(?)こちらに向かって飛んできた一人を器用に掴み取れば、ロケットの燃料供給を止めてベルトを外し、人だけを蹴り落とす。
 ミサイルとしても使えるだろうし、そうでなくても燃料や火薬を抜き取れば、追々何かに使える事もある……かもしれない。
 なにはともあれ。
 第一陣はかくして潰えた。最初の波は凌いだと言っていいだろう。
 〆に煙玉を放り投げておき、メンカルと怜悧は車内へと戻って行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ
へぇ、面白そうな事してるじゃない。
私も混ぜてもらえるかしら。
(真の姿で空中を飛翔してくる)

前章に引き続き、囮兼レイダー排除役になる
【逸鬼闘閃・鬼神咆哮】発動しレイダー達の後ろから追いかけて強襲
強烈なプレッシャーを放ちながら登場することで、意識とタゲをこちらに向けるのが狙い
後は真っ向からの空中格闘戦を行う
敵コードは基本的に重量物の投下、であるならば上を取ってしまえば無力
そこから猛禽類のように急降下して捕縛、あとは持ち前の「怪力」で殴ったり、締め上げたり、蹴飛ばしたりして撃墜していく
排除完了したら直掩について護衛

よそ見している余裕があるのかしら?
逃げても良いわよ、私から逃げられると思うならね。


アレックス・エイト
推進器を直接身体に括りつけて…?
なんという命知らずな連中なのでしょう
…と、いけません。あまりにも珍妙な姿につい動揺してしまいました
どのような姿であれ、我々の道を阻もうとするのなら迎え撃たせて頂きます

救助者達が乗る車両にスラスターで並走し、彼らを守るように行動致しましょう
魔力弾で牽制を行い、掃射される短機関銃は魔力障壁で防御を
車両には被弾させません

彼我の速度差は歴然…追いつかれる前に反撃に転じなくては
牽制の魔力弾の弾幕密度を上げ隙を作り、それと並列して詠唱を開始
ジャッジメントブレイズ発動
彼らの背負う推進器の燃料を狙います
直撃すれば只では済みませんよ
…もっとも、避けた方がより酷い結果になりますがね



「…………」
 絶句だった。
 持ち前のスラスターで、救助された奪還者たちが駆るバギーと並走していた最中、後方からの噴射音と熱源反応を察知したアレックスが目の当たりにしたのは、裸の上半身にロケットを括り付けたヒャッハーであった。
 背中が焼けたりしないのだろうか。
 いやそもそも爆発物にも等しいものを生身に括りつけるとは、なんと命知らずなのだろうか。
 いやもしかすれば、古今東西度胸試しと言うものは何処にでも多かれ少なかれ存在するもので、あれもその一環を兼ねているのかもしれない。
 ……いや、そうじゃない。
 あまりの珍妙な姿に思わず思考が妙な方向に逸れてしまったが、重要なのはそこじゃない。
 追撃を受けている。今必要な情報はその一点だ。
 追跡者たちが機関銃を構えるのを見た。
 ホバリングによる高速移動を続けながら、バギーの後方に躍り出たアレックスが機械杖を振るう。
 空間が揺らぐ中に次々と叩き込まれる銃弾が、然しそれ以上の進行を許されずぽたりぽたりと凍った床に落ちる。
 魔力による防護障壁。
 軽いものであれば造作も無く弾き落とせる。
 が、しかしそれもどこまで続くかと言った所。
 なにせ、彼我の速度に絶対的な差がある。距離のある今ならば、障壁で射撃を防ぐことは可能だが、その内側に飛び込まれたら話は変わってくる。
「(追いつかれる前に反撃に転じなくては……)」
 杖先を敵陣に向ける。
 せめて進軍速度を少しでも弱めようとする牽制の魔力弾幕。
 その中に一発、性質の違う火炎弾があった。
 何かが違うと、オブリビオン側も察知したのだろう。ロケットのノズルを操作し、火球を避けるように散る。
 しかし、火球はそれを追うように軌道を変え、なお火力を増しながら手近な追撃者に追いすがっていく。
 それこそは『断罪の炎』の名を冠するアレックスの魔術。
 逃げるは恥であり、大罪である。故に断罪の火はそれを逃さず、その怒りを増すのである。
 しかし、牽制弾と並行して魔術を編んでいる以上、そこまで連射が効くものではない。すべてをこれで落とすのはいくらなんでも不可能だ。
 火球の追跡を免れた幾人かが、今にも障壁を抜けようとロケットに推進剤を叩き込み……。
「……へぇ、面白そうな事してるじゃない。私も混ぜてもらえるかしら」
 突如、その横合いの壁が砕け散り、吹き飛んだ瓦礫に押しつぶされた。
 そしてその大穴から躍り出る、一人の羅刹。
 追跡者を今しがた潰してみせた瓦礫を蹴り、その先にいた別の追跡者を踏みつけ、跳ぶ。
「片付けたらすぐ追いつくわ。行って」
「……承知しました」
 護衛を第一に動くアレックスに対し、乱入した羅刹……つかさは、囮役を兼ねて追撃者の排除を優先して動く。
 それを見て取ったが故に、アレックスも了承の意を返し、決してバギーから離れるようなことはしない。
 なおもバギーを追撃しようとするオブリビオンに、容赦なくつかさの鉄拳が飛ぶ。
「私から逃げられると思うなら逃げても良いけど……」
 そんな余裕は与えない。
 言外にその『圧』が語る。
 殴り抜いたオブリビオンを掴み、捩り、踏みつけ、さらに上へ。
 誰かが放り投げた瓦礫が、その眼下を通り抜けていく。
 重量物を落とすだけならともかく、上方へ投げるのなら相当の力が要る。高速飛行中という不安定な状態ではなおのことだ。
 前方から飛来するアレックスの魔力弾で一人がまた撃墜されるのを視界の端に収めながら、つかさもまた天井を蹴り、眼下の敵に襲い掛かる。
 その様は、地を這う獲物に食らいつく猛禽の姿にも似ていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レッグ・ワート
逃がす仕事らしいな?俺も入れて。

情報収集用のドローンを組み込んだバイクで一団に並走しながら、負担にならないようにざっくり様子見。根性で大丈夫かもしれないが、もし連中の中で調子がいま一つな運転手を見かけたら、バイクは自動に切換えて車の運転代わろうか。なるたけ揺らしたりしないように逃げ足利かせていくからさ。

そんであちらさんは元気につっこんでくると。ならこっちは銃で仕掛けてくる間際に鉄骨を複製して盾にするぜ。……ちょっと一部の配置散らせて角度も弄って跳弾注意状態にもしとくか。その後も鉄骨操作して逃げる最中の盾やら、地形上の障害避けやらに使っていけるかね。何にせよこっちに弾が抜けないようにが最優先だ。


リア・ファル
キミ達より、ボクの方が空中での小回りは効くさ
追撃、止めさせてもらう!

いくよイルダーナ!
ボクの高次元・高速機動戦闘で制空権を奪い返す!

『イルダーナ』で空中戦を繰り広げる(操縦、空中戦)
相手の機動力や慣性移動、戦闘行動その他モロモロ、
『ディープアイズ』で演算解析(情報収集、学習力)

頭上を取れたからって、はしゃいで良いのかな?
直ぐさまUC【召喚詠唱・流星戦隊】の複製各機と
切り離した『アンヴァル』の連携反撃が開始される(カウンター)

そう、ボクは自身は囮ってワケさ(戦闘知識、時間稼ぎ、集団戦術)

それじゃロケットマン、その背中のロケットを狙わせてもらおう!


エル・クーゴー
●POW



ジェネレーター出力_正常
火器管制システム_ロック解除
L95式アームドフォート及び全追随武装_展開

――システム、オールグリーン

躯体番号L-95
当機は【対空戦闘】に高い適性を発揮します


・脱出を図るカタギの方々の運転する車両の内一つの荷台に、幌でも被り伏せって待機
・お外の様子は、視覚情報を共有するサーチドローン『マネギ』に確認させておく(撮影+偵察)

・敵性が追い縋って来たタイミングで、幌を払い姿を現しざま【ワイルドドライブ】発動

・車両を銃砲火器群でゴテゴテに覆った固定銃座の怪物の如く仕立て上げ、不意打ち気味に【一斉発射】、敵群を【蹂躙】せん

・瓦礫等はライフルの手動発砲で適宜相殺(スナイパー)



「さーて、ようやく追いついたけど……」
 愛機イルダーナを駆り、電脳空間から遅れて撤退戦に合流したリアが見たのは、4台のバギーを追うオブリビオンの軍勢だった。
 先ほどから、次々と脱出成功の報が無線越しにリアにも届いている。
 おそらくあれが、(今回救出に成功した者達では、であるが)最後の一団となるだろう。
 見やるに、うち3台はともかく、最後尾の一台が大きく出遅れつつある。
 追いつかれ、包囲されるのは時間の問題のように見えた。
 ならば、振り払う他あるまい。
 愛機のスラスターを吹かし、機首の機銃を挨拶代わりに一団に向けて叩き込む。
 追撃に夢中になっていたオブリビオンも、流石に後ろから撃たれれば気付く。
 被弾を嫌って散って行ったその中心を最大速度で抜け、オブリビオンの前方に躍り出た。
 高速飛行中のドッグ・ファイトにおいて、背中を取られるのは大きな不利だ。
 こんな狭い中で反転などは出来ないし、後ろを取り返そうと減速をすればそれこそ的になる。
 そして後ろを狙って攻撃すると言うのは考えるまでもなく難しい。
 オブリビオンにとってすれば、良い餌が自分から突っ込んできたようなものだろう。
 逃げるバギーと射線が重ならないようにある程度の距離を保ち、敢えて低空ギリギリを維持しながら、軽機関銃の照準をこちらに向けさせる。
「頭上を取れたからって、はしゃいで良いのかな……?」
 オブリビオンの火器が火を吹こうとしたまさにその瞬間、その背中のロケットが『爆ぜた』。
 何も、考え無しに背中を晒したわけではない。
 当然、その後の流れくらいはリアも計算済みであった。
 後方のオブリビオンの更に後ろ側。
 自身の駆る愛機と同型の自律兵器一個小隊が、その背中のロケットにぴったり照準を合わせていたのである。
 だが混乱状態に陥る中でも、なおリアよりも逃走車を優先するオブリビオンは決してゼロではない。
 自身を囮とするという少々危険な手段を採っている以上、リアもそう余力があるわけでもなく、オブリビオンが最後尾のバギーへと距離を詰め……。
「適性体射程内。ワイルドハントを開始します」
 後部荷台を覆っていた幌の奥から雨あられと放たれた銃弾に蜂の巣にされた。
 ばさり、穴だらけになったボロ布が冷風に乗って消えていく。
「躯体番号L-95――」
 その奥に鎮座していたのは、軍用車もかくやという備え付けの重機関銃と、それを操る一人のミレナリィドール。
「当機は対空戦闘に高い適性を発揮します」
 ――ジェネレーター出力_正常。
 ――火器管制システム_ロック解除。
 ――L95式アームドフォート及び全追随武装_展開。
 増設せしめた火器に自らのアームドフォートの火砲も加えた大火力を、纏わりつく羽虫目掛けて浴びせかける。
 オブリビオンが背負うロケットの誘爆が花火のように次々と上がる中、バギーが大きく傾ぐ。
 確かにエルの火力投射は強烈だが、あくまでも載せているのはただのバギーである。
 反動を受け止め切るにはやや心もとなく、凍結した不安定な路面では下手をするとコントロールを失いかねないと言うのは、致し方ないところではある。
 ……それが、その様子を遠目に眺めていた『彼』の見解であった。
「なるほどな……っと」
 横合いから現れたのは一台の宇宙バイクに乗る暗緑色の旧式ウォーマシン。
「レッグさん!?」
「逃がす仕事らしいな?俺も入れて」
 逃がし屋レッグ・ワート(脚・f02517)、介入。
 バギーを運転する奪還者に、助手席の扉を開けるように指示する。
 少々ウォーマシンの身体にとってすれば手狭だが、そこは我慢するとして……換金による疲労もあるであろう奪還者よりも、自分が運転を代わってやった方が余程効率がいいと踏んだ。
 自身の宇宙バイクにはオートパイロットを命じる。
 所詮はただのバイクだ。無人ともなれば、たとえスペースシップワールドのテクノロジーとは言っても、連中にとっての優先順位は低かろう。そちらはそのまま勝手に逃げおおせてくれると信じておく。
 身を乗り出し、助手席に転がり込んだ。
 少々の揺れと減速。
 どうにかこうにか運転手と位置を入れ替え、改めてバギーのハンドルを握り込む。
「なるたけ揺らしたりしないように逃げ足利かせていくから、そっちはよろしく」
「了解。迎撃行動を継続します」
 再び、エルの火砲が火を吹き始める。
 同じ車、同じ火器であっても、その安定度は段違いだ。
 重量による速度低下は避けようがなく、最高速度はあまり出ないとしても、操縦技術によって速度を必要以上に落とさないことは出来る。
 そこは『脚』の面目躍如、と言った所か。
 崩れかけた建材の下をくぐり、凍結を物ともせずできる限りの速度で突き進む。
 無造作に修理や増改築を繰り返した建物の隙間――それにレッグが持ち込んだ鉄骨が更に行く手を阻む中、地を走るバギーや小回りの利くリアはともかく、ロケットと言う直線的な推進システムに頼るオブリビオン達にとっては、ここを高速で突き抜けるのは些か危険な状況である。
 いくつかが激突し……あるいは、闇雲に撃った弾の跳弾を喰らい自滅する中、それでもなおバギーとイルダーナ、二つの餌を目掛け追いすがってくる敵は、エルの射撃の正面に放り出されることとなり、当然その状況で生き延びられる道理はない。

 潜り、抜け、落とす……それを幾度となく繰り返したのち、いつしか聞こえるのは幾つかのエンジン音とタイヤが凍結路面を擦る音だけになったころ。
 最初に気付いたのは誰だったか。
 急激な……ただでさえ寒い中、それを超えた……冷気と、何やら不吉な機械の駆動音。
「友軍の脱出は成功と判断。猟兵に余力有、敵勢力減退のため、対象の撃破を進言します」
「……だね。せっかくだから、壊れたクーラーの処分もやっておこうか!」
 脱出者を乗せたバギーは逃げるに任せ、エルの足が荷台の床を蹴った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『氷結重装タンク『ジャックフロスト』』

POW   :    雪合戦キャノン・スキー体験マシン(だったもの)
【肩の大砲が核発射シーケンス】に変形し、自身の【移動速度】を代償に、自身の【氷結核弾頭】の連射と【脚部雪津波発生装置】を強化する。
SPD   :    超アイス棒・悪戯水鉄砲・万華氷装置(だったもの)
装備中のアイテム「【氷棍棒・液体窒素レーザー・胸部氷鏡バリア】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
WIZ   :    スノーマン・フレンズ生成機(だったもの)
自身の【口から放つ大量のナノマシン混入雪】を代償に、【生成したレベル×8体の雪だるまタンク】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【適時本体を修理】し、【本体と同じ武器】で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ポーラリア・ベルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●アイシクル・モンスター
 元々は、どういった用途のものだったのだろうか。
 愛嬌のある外見は、本来は娯楽のための存在だったことをどことなく予想させたが、各所に備え付けられた砲塔から漂う冷気は、もはや『冷たい』の一言で済ませられるものではなく。
 達磨の顔に施された顔面の意匠は、表情など存在しない筈の機械でありながら、どことなく狂気を感じさせる。
 囚われていた人々を無事に安全圏まで送り届けた猟兵が、凍り付いたヴォーテックス・シティの一角にその駆動音を聞き取り、そして目の当たりにしたのは、簡単に言うならそんな『雪達磨型の戦車』であった。
 キャタピラを軋ませながら凍結した床をゆっくりと進軍する鋼鉄の雪達磨。
 こいつが、ここら一体を零下に沈めた元凶であることは想像に難くない。
 凍結した水分で煌めきを放つ砲口が、猟兵の側を向いた。
エル・クーゴー
●WIZ



最終撃破目標を目視で捕捉しました
これより、敵性の完全沈黙までワイルドはっくしょん

――エラー

マルチプルミサイル、セット
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します(キリッ)


・マニピュレーターを操り、電脳魔術ストレージより三次元上に描出したマイクロミサイルポッド群を一挙掌握

・展開力で競り合ってたらジリ貧必至と見る
・ずばり作戦は「全弾ぶっぱ→即時離脱」

・プラズマジェットを吹かしての空中機動(推力移動+空中戦)で敵群の展開状況と仕掛け時を見計らう
・『己を照準中の雪だるまタンク>敵本体修理に及ぶタンク>敵本体口腔部へ集中砲火』の優先度で、MAX435発を間断なく放り込み【蹂躙】せん


レッグ・ワート
壊れたクーラーってまたファンシーなのが来──

いやいやいやいやいや物騒だなおい。どうしてそんなにもったんだ。とりま防具改造でフィルムの各耐性値を環境と氷結に再編。運転するバイクで悪路走破といけば、直撃さえ貰わないように避けりゃ何とかなるだろ。……周りぐるぐる逃げ足したってそもコードなんだし弾尽きないよなあ。
武装と精度は勿論、足周りの動きの情報収集もしたいんで、ドローンは引続きバイクに留めたまんま。目がカメラかの保証も無し、とまれフェイントじみた足捌きが出来そうかはみるよ。正面からいっても問題ない程度に情報が揃うか仕掛け時がきたら、あちらさんの足周りの片っぽでも被膜置換で触れ斬りに行こうか。


荒谷・つかさ
(若干トンチキな見た目に)
……何、アレ。きまふーのロボット?
出てくる世界を間違えたんじゃ……違うの?
……まあいいわ。アレをぶち壊せば終わりでいいのよね?

雪だるまの機械がお相手なら、雪合戦と洒落込みましょうか
【鬼神剛腕砲】発動
まずはその辺の瓦礫やら廃材やらを投擲、氷結核弾頭とやらに対してぶつけて迎撃する
また雪津波とやらが来たら一旦高所に避難し直撃は避ける
反撃には雪津波で発生した雪を「怪力」で超圧縮した雪玉もとい氷礫を使用
なるだけ大量に用意、本体直撃の他に砲塔狙いで詰め込むように投げつける
凍らせる事に特化してるなら、氷を詰めればその排除は難しい筈
無理やり撃てば暴発して自爆するんじゃないかしら



「壊れたクーラーってまたファンシーなのが来──」
 まず、その姿を目にしたレッグがフリーズした。
 冷気だけに?うるさいわ。
「……何、アレ」
 まぁ気持ちはわかる。
 つかさも思わず零すくらいに、その兵器は兵器離れした外見をしていた。
 狂気と愛嬌をない交ぜにした風貌は、どことなくキマイラフューチャーを思い起こさせる。
 その分、搭載された火器の物騒さを引き立たせているような気はしなくもないが。
「いやいやいやいやいや物騒だなおい。どうしてそんなに盛ったんだ」
 その外見的インパクトを抜きにしても、えげつない口径の主砲を始め、あれもこれもと搭載された武装の数々を見れば、その過剰火力が伺える。
 しかもオブリビオン、ユーベルコードと考えれば、弾切れを狙うと言う手も少しばかり難しい。
 ともあれ、危険度をつらつらと並べているだけでは何も始まらない。
 結局のところ、やらねばならないと言う事には違いないのだ。
「展開力で競り合うのは危険と判断します。一撃離脱を実行します」
 エルがあらん限りのマイクロミサイルポッド群を展開するのと、かの雪達磨が随伴機を並ばせたのはほぼ同時の事。
「最終撃破目標を設定。
 これより、敵性の完全沈黙までワイルドはっくしょん」
「「…………」」
 つかさとレッグがエルを見た。
 何なら雪達磨軍団もエルを見てた。
「――タスク実行中にエラーを確認しました。再試行します」
「「…………」」
「マルチプルミサイル展開。最終撃破目標を設定。
 これより、敵性の完全沈黙まで――」
 ミサイル発射管が開く。
 一瞬の沈黙。
「――ワイルドハントを開始します」
 轟砲。
 ミサイルに火が入り、煙を残して一斉に放たれる。
 同時に打ち出された氷の戦車砲と中空でぶつかり合い、砕け散った弾頭が一帯に衝撃波と冷気を撒き散らす。
「おいおいこいつは……ッ」
 暴れ狂う冷波に揉まれ上体を揺らしながら、その煙(恐らく大半は水蒸気であろう)に紛れ、レッグがバイクを走らせる。
 寒冷、氷雪地帯に適応したチューニングを施しても、衝撃波だけは如何ともしがたい中、どうにかコントロールを効かせ、側面に向けて弧を描き回り込む。
 各種センサーは、あの大火力のぶつかり合いの中で、あの巨大な雪達磨姿の重心がほとんどブレていないていないのを見て取っていた。
 それに、確実にこちらを捉えているというわけでもないが、レーダー照射がこちらを追っているのを感じる。
 確実に、視線はこちらを追っているのだ。大方、機体のどこかしらに熱探知機能でも載せているのだろう。
 奴の顔の『目』から逃れたところで、そこは死角ではない。
 だが、一方で完全なロックを許していないと言う事は、足捌きで翻弄することは可能、という事も意味していた。
 ――ならば、やりようはある。
「スラスター展開。ミサイル再装填」
 プラズマジェットに火を入れたエルが飛翔する。
 自然、敵群の視線は上方を取り再度の火力投射を為さんとするエルと、死角を取り挟撃を狙うレッグへと向く。
「――Fire.」
 第二射。そして迎撃の対空射撃。
 ミサイルの殆どは空中で叩き落とされ、少ない弾着も本体の撃破には遠く及ばない。
 だが、その一瞬、釘付けにはした。確かにしてみせたのだ。
 敵の残る射撃武装は、その大口径の肩部砲塔。
 到底迎撃には向かぬ、大口径弾頭が、発射準備を整える。他の攻撃は、この瞬間には起こりえない。
 ……そしてここで、彼女が動く。
「雪だるまの機械がお相手なら――」
 手にしたのは巨大な雪の塊。
 こんな状況下だ。氷も雪も余るくらいにある。
 そこら中にあるソレを、己の握力で固めに固め、圧縮し、外見以上に質量を獲得した大雪玉は、それこそその肩部砲塔の口径とほぼ同じくらい。
 ……何をやろうとしているかは、もうお分かりであろう。
「――雪合戦と洒落込みましょうか」
 投 擲 。
 その体積と質量を物ともしないコントロールで、発射直前の砲塔に雪玉をブチ込んだ。
 相手の攻撃はそのほぼすべてが極低温……即ち、対象あるいはその一帯を凍結させることに特化している。
 であれば、元々雪……というか圧縮しすぎてもはや氷……であるものを詰め込めば、排除することは当然難しい。
 そして、つまりを起こした砲塔で無理に発射を敢行しようとすれば、未来は一つである。
 ――くぐもった爆発音が響く。
 粉々に砕け散った鋼片が飛び散る。
 そして一拍遅れ、随伴機を軽々と転がし、巨大な本体すら大きく揺るがすほどの衝撃と、絶対零度とも思えるような猛吹雪が一帯を覆った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

メンカル・プルモーサ
うーむ……愛嬌が逆にホラー感だしてるね……
無差別に辺りの温度を下げようとしているのかな…

さてと…あの修理する雪だるまを処理しないことにはダメージ与えた端から修理されてしまうね…
……ここは【連鎖する戒めの雷】で雪だるまタンク達を雷鎖で縛り付けると共に感電でダメージを与えて…
……術式装填銃【アヌエヌエ】から火炎の術式を込めた銃弾を撃って破壊していくよ…
…スノーマンのナノマシンを消費している以上、そうそう数は出せないだろう…
…雪だるまタンクを全滅させたらジャックフロストに重奏強化術式【エコー】で強化した火炎の槍を打ち込んで倒しに行くよ…


アレックス・エイト
あの機体がこの極寒の元凶ですか…
見た目はひょうきんですが、この街の有様を見ればその厄介さは充分に伝わります
だからこそ、わざわざ相手の得手である陸戦に付き合ってやる義理はありません
空中戦を挑む事で雪津波を回避、上空から魔力弾の乱れ撃ちを降り注がせましょう
移動速度が落ちた所が好機、集中砲火を…
…あの武装、街中でも見境無しですか…!

敵本体を中心に、高速詠唱で凍結空間を展開
爆破範囲を敵上半身に集中
弾頭を発射される前にその砲身を破壊します
装填済みの弾頭も、起爆装置が凍結していれば爆縮は起きないはず

…やはり捨て置けませんね
もう一撃、ここで確実に破壊します


水鏡・怜悧
詠唱:改変、省略可
人格:ロキ
彼らを逃がした後で良かった。強力な冷気からの防衛は難しいですからね。

ふむ、何とも面白い機械ですね。ロボットを出して自己修復とは……逆に利用出来るでしょうか。
炎属性の触手で雪を溶かし、雷属性の触手で駆動系をマヒさせ無力化します。タンクを捕まえ、マヒしている間にメカニック知識で分解し情報収集。命令系統を解析し、終わったら雷属性触手で一斉にタンク内に侵入しハッキング。修復機構を狂わせて、本体を分解させましょう。
倒せたら冷却装置を主軸に、回収できそうなパーツは回収します。ロケットと合わせて、困っている方が居そうなら譲渡しましょう。


リア・ファル
WIZ
アドリブ共闘歓迎

製造当初の平和なマシンなら良かったろうに
魔改造が過ぎるね

「ディープアイズ起動。対象を把握演算」
特に重量と空力特性はおさえておこう
(情報収集、偵察)

UC【元素律動・ダグザの竪琴】で竪琴を召喚
炎の竜巻を喚び、敵の横転と機能低下を狙いつつ
味方を援護し、相手の動きを牽制しよう
(属性攻撃)

「ダルマさん、転んだ、ってね! キャタピラだと復帰は手間だよね」

反撃には、『ライブラリデッキ』から
ナノマシンを抑制・混乱させるべくウイルス弾を生成
『セブンカラーズ』から撃ち込んではハッキングしていく
(毒使い、マヒ攻撃、ハッキング)

修理を妨害し同士討ちしてくれれば御の字かな



「あの武装、街中でも見境無しですか……!」
 一帯をほんの一瞬で一面の銀世界に変貌せしめた氷結核弾頭の誘爆。
 この爆発の要因は、端的に言えば他の猟兵の妨害によるものなのだが、それでも発射体勢に入っていた……つまり、『撃とうとしていた』という事実には変わりがない。
 周辺環境すら変え得る強烈な破壊兵器、それを『オブリビオンの』という接頭語がつくにせよ都市部で躊躇いも無く使ってくると言う事実に、アレックスは少なからず戦慄を覚えた。
「彼らを逃がした後で良かった。強力な冷気からの防衛は難しいですからね」
「魔改造が過ぎるよ、まったく……!」
 広域にわたる攻撃、それも伝搬する冷気は遮断するのも難しい。
 仮に救助者を守りながら戦えと言われたら、かなりの苦戦を強いられたであろうことは想像に難くない。
 登場時から変わらぬ表面だけの笑顔を顔に張り付けたまま、主砲の壊れた雪達磨はなおも猟兵達を見据える。
 正直、ちょっと怖い。
「……愛嬌が逆にホラー感だしてるね……」
「ですが、何とも面白い機械ですね」
 少々げんなり気味のメンカルに対して、怜悧の目には興味の色が浮かんでいる。
 雪達磨の口が開いたかと思えば、その中から吐き出された大量の雪が即座に小型の同型機へと変貌し、主砲の修理を行い始めているのである。
 子機を自己精製しての自己修復。確かに少々面白い機能と言えばそうなのかもしれないが。
 いやしかし、面白いで済む話ではない。
 このまま修理するに任せていては、ダメージを与えた先から回復されるのはもちろん、再びあの核弾頭を使用されかねないと言う事でもある。
 修理が追いつかない速度で攻撃を加えればいずれは撃破も叶うかもしれないが、これを相手に消耗戦を展開するのはかなりのリスクが伴う。
 であるならば、まずは取り巻きの子機を何とかするのが先決。
「だったら、牽制と足止めは任せといて!」
 ここで真っ先に動いたのはリアだった。
 データの収集は一通り済んだ。有効性は演算済み。やれる。
 『元素律動・ダグザの竪琴』、データ・ロード。スタンバイ。次元干渉開始。
「精霊よ、舞い踊れ!」
 電子空間から喚び出した竪琴を爪弾けば、巻き起こるのは熱波を伴う竜巻。
 重量級の本体を巻き上げるような真似は流石に無理でも、子機のバランスを崩させることくらいは難しいことではない。
 本体の主砲は故障中。であるならば、この程度が限界だとしてもそれで充分なのである。
「今だよ!」
「汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷……」
「出番ですよ、触手ちゃん達」
 そして、竜巻に伴う熱波は少なからず氷雪に覆われた道を切り開くことにも繋がる。
 リアが開いた空間を、メンカルが放つ雷撃と怜悧の操る魔導兵器が走る。
 固体となることで抵抗値こそ大幅に上がるものの、所詮は氷も絶縁体とは言い難い。
 それぞれが放つ電撃が、次々とナノマシン交じりの氷雪製の子機を沈黙させていく。
「あぁ、ですが一機頂いていきますね」
「……まぁ、いいけど」
 怪訝そうな表情のメンカルを無視し、怜悧の触手が子機を一つ絡め取っていく。
 それはまぁともかくとして、ひとまず修理に回っている子機は一通り妨害はできたであろう。
 いくらユーベルコード、外見とナノマシン雪の搭載量が比例しないことはあろうとも、子機の生成にはどうしても時間はかかる。
「今のうちに本体を叩きます。一度竜巻を停止させてください」
 上空でホバリングしていたアレックスが、杖先を雪達磨へと向ける。
 詠唱はとうに完成済み。
 炎の竜巻の熱波が引いていく。そして攻撃を阻むような取り巻きも今はいない。
「(この街の有様を見ればその厄介さは充分に伝わります……)」
 凍結した街並、凍えた人々。
 今回に関しては手遅れになる前に助け出せたからよいものの……。

「(捨て置くわけにはいかない)」
 座標指定を敵戦車の上半身部分に集中。
 術式展開。起動。
「"雪の女王の抱擁は身を焦がす恋の先触れ"」
 ――凍て付きなさい。
 寒波とは違う、分子振動を停止させることによる局所的な急速冷却。
 中途半端に修復された主砲が、たちまち氷に閉ざされていく。
 いくら冷気を撒き散らす氷結核弾頭と言えど、その点火、爆縮に関しては話は別となる。
 凍結し、停止させてしまえば、それはただの質量弾に成り下がる。
「ここで確実に破壊します」
 杖を振る。
 それを合図に、氷に亀裂が入り――砕け散る。
 内に封じた主砲ごと細々と散った氷が、電灯の光を乱反射させる様を見た。
 強引な再発射も封じた。
「ですが、下半身の対地武装は健在です。後は……」
「大丈夫、お待たせしました」
 下方から声をかけたのは、捕獲した子機に自身の触手をいくつも突き刺している怜悧だった。
 バチリ、触手に電流が走る。
 次の瞬間、機能不全に陥っていた子機たちが、おぼつかない動きで復帰すると、本体目掛けて群がっていき……本体を修理するでもなく、ただその足回りを止め始めたのである。
「……これは?」
「あくまでも随伴機です。命令系統を解析して、ネットワークに介入しました」
「動かしやすいように、ちょっと手は加えさせてもらったけどね」
 触手漬け(?)の子機から偽命令を飛ばす怜悧の横で、リボルバーを手にしたリアがウィンク。
 見やれば、群がる子機にはいくつか弾痕が見受けられる。
 リアがハッキング用のウイルス弾を撃ち込み、動けない間に制御情報を書き換えていたのだ。
 さぁ、これで阻むものは何もなくなった。
 となれば、後にやるべきことは一つ。
 最大火力を、遠慮なく叩き込むこと。ただそれだけである。
「さぁ、やっちゃって!」
「あぁ、でも残ったパーツは出来れば回収したいので、良ければ程々に」
 回収できるパーツが果たして残るかは置いといて。
 アレックスの魔術が、再び戦車を足元から凍結させていく。
 逃げ場はない。
 そこに狙いを定めるのは、メンカルが生成した炎の槍。
 詠唱に詠唱を重ね、幾重にも練り上げ、メンカルの周囲の氷雪をも溶かすほどの熱を纏わせて。
 投げつける。
 ぶち抜く。
 熱と冷気は相反するものではあれど、その速度と魔力を乗せに乗せた衝撃は、凍結した戦車の装甲を打ち砕くには容易い。
 身動きも反撃手段も完全に封じられ、止めるもののない状況で十二分に練り上げられた一撃であれば、致命傷には十分である。
 轟音と共に、雪達磨の胴体が砕け、炎槍の熱で表面の溶解した内部構造が顔を覗かせる。
 だが、それも表面だけ。芯まで凍り付いた戦車の内部構造は、ほんの一瞬だけ通過した炎では内部への引火を許さない。
 サーチライトの灯が消え、沈黙する雪達磨。
 その冷たい戦いの終焉は、あまりにも静かに、呆気ないものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月10日


挿絵イラスト