12
紅茶の友~皇女殿下の危険な市民(作者 かやぬま
15


●帝都、カフェーの片隅
「色々と面倒なことになって来たな」
 三つ揃いの男がトーストを片付けて口を開く。
 視線の先にはタートルネックにジャケットの男がスプーンに掬ったジャムを口に含んでいた。
「やはりレモンティーではないんだな」
「それは貴殿の愛する女王陛下だけの特別な茶葉だ。我々労働者たる市民は貴重な砂糖の代わりにジャムを含み、濃いめの紅茶を嗜むのだ」
 薄く入れた紅茶を片手に、同じ色の髪を持った三つ揃いが溜息をつく。正面に座るジャケットを羽織った銀髪の男はその様子に対して赤くなった舌を見せて答えとした。
「まあ、これも最後だと思うと残念だよ」
「ああ、残念だ。本国へ召還されると聞いた、おかげで私は証拠を消すのに苦労した」
「『皇女殿下』は用心であらせられる、私のような口の回る男は放ってはおけないのだろう」
「『女王陛下』は最後まで仕事を全うすることを望まれた。私はもう少しここにいるよ」
 互いに席を立つ。時間が来た。
「残念だ」
「ああ、残念だ」
 あとには空になった二つのティーカップ。

 紅茶を嗜む、二人の時間は終わり。ブーツとオックスフォード、それぞれの足元を泥に汚す時間が始まった。

●グリモアベース
「苦手なのよね、腹の探りあいとか、駆け引きとか。みんなはどう?」
 ミネルバ・レストー(桜隠し・f23814)は軽く髪を弄りながら、金の瞳で問うた。
「『幻朧戦線』について、新しい動きが視えたの。あいつら、利害の一致を見た連中から支援を受けてたみたいでね」
 言葉が切れると同時に、中空にいくつもホロウインドウが展開して、さまざまな都市の映像が映し出される。
「……世界が統一されたとはいっても、国ごとの利害関係はなくならない。関係だって張りつめてる。少しでも有利な立場でいたいって思うのは、まあ――当然よね」
 元々『兵器』として、分かりやすく運用されていたミネルバからすれば、ややこしい話としか思えないのだろうか。再び首を振って、ホロウインドウを消した。
「その辺は勝手にすればいいのよ、わたしたち政治家でも何でもないんだもの――でも」
 ひときわ大きい映像を映し出せば、そこにはタートルネックにジャケットを羽織った、銀髪の男の姿があった。
「『幻朧戦線』に加担されたとなれば、話は別よね?」
 悪戯っぽい笑みを浮かべて、ミネルバは集った猟兵たちを見遣った。

 スパイだなんて役回りに身を投じるくらいなのだから、それなりの固い意思があるのだろう。それは最早、信念と言っても良いだろう。
「この男については、遠い北国から派遣されたってことだけ分かってるの。けど、本国から帰還の指示が出て高飛びしようとしてる」
 それじゃあ、と誰かが言いかけるのを、ミネルバは人差し指で制止する。
「帝都の桜が、よほど気に入ったのかしらね? 幻朧桜に『約束』をしてからにしようって思ったみたい」
 バカよね、そんな感傷起こさなければわたしに見つからずに済んだでしょうに。
 ――ううん、こいつには片割れがいたから、どのみち見つけたんでしょうけど。

「みんなにはまず、幻朧桜に願掛けをしてきてもらいたいの。普通に楽しんでくれていいわ、そうすれば自然と『見えてくる』と思うから」
 他人の約束や誓いを覗き見るなんて無粋かも知れないけれど、どこかに紛れ込んでいるスパイの痕跡や証拠を掴んで突き付けてやれば、正体を暴くことも叶うだろう。
「その後は映画とかみたいなスパイアクションよ、スカッと追い詰めてやって頂戴」
 ただ、とミネルバは顎に手を添えて考え込む仕草をする。
「……追い詰められたネズミが、どんな行動に出るかはわからない。気をつけてね」
 真剣な眼差しを頼もしい猟兵たちに向けて、六花のグリモアを輝かせる。

「もし、余裕があったら、片割れのスパイも何とかしてくれると嬉しいわ」
 あちらは英国紳士なんですって――そう言って、ミネルバはぺこりと頭を下げた。





第3章 ボス戦 『スパヰ甲冑』

POW ●モヲド・零零弐
【マントを翻して高速飛翔形態】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【目からのビーム】を放ち続ける。
SPD ●影朧機関砲
レベル分の1秒で【両腕に装着された機関砲】を発射できる。
WIZ ●スパヰ迷彩
自身と自身の装備、【搭乗している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●スパヰ甲冑『バーバチカ』
『ようこそ、我が祖国へ』
 一面の草原に佇んだタートルネックの男は、両手を広げてそう言った。
 ――心底、猟兵たちを歓迎するかのように。
 列車内で奮戦していた猟兵たちが事態の急変を知って次々に飛び降り集えば、それをスパヰは満足げに見遣る。
 列車は走り去り、代わりに線路からは赤い『何か』が地響きを立てて歩み寄ってくる。

『この草原は、此処に至るまで流された幾多の血を見て、そして染められてきた』
 血のような赤を纏う甲冑が、土煙を舞い上げてスパヰの背後に立つ。
『――その意味を、帝都で久遠に思える平和を享受してきた君達は理解出来まい』
 草原を渡る風は、男の短い銀髪を僅かに揺らしていく。
 そうして、背後に立つ赤いヒトガタにそっと触れた。
『影朧兵器『スパヰ甲冑』――はは、安心したまえ。乗って死のうなどとは思っていない。心身こそ損耗するが、致命は回避する改良がもたらされているのでね』

 ならば、その兵器で何をするつもりなのか?
 猟兵たちの疑問は、当然そこに収束する。

『君達は私を逃がすつもりは無いのだろう? だが私もそう易々と捕まる気は無いのでね』
 そう言うや否や、差し伸べられた『スパヰ甲冑』の掌を踏み台にして、男はあっという間に甲冑の中へと吸い込まれた。
 乗り手を得て、赤い甲冑は身体中から蒸気をひと噴き、しっかりと草原を踏みしめる。
『かつて祖国の英雄たちが草原を駆けたように、私も君達と向き合おうではないか』
 操縦席の中で、スパヰは天を仰いで良く通る声を張り上げた。

『――なあ、『バーバチカ』!』

 まるで生身の人間をベースにしたかのように細い機体。
 それに不釣り合いなほど大きな四肢のパーツは赤い。
 いかつい肩部パーツの右側には、青い蝶の意匠が添えられていた。
 甲冑の顔面はまるでデフォルメされたメカを思わせ、その視線は搭乗者のものとリンクするかのようにぎょろりと動く。

『最早、私は君達を倒すより他に無い。そうしてでも、果たしたい役目と――』
 蝶の二つ名を持つ男は、誰よりも巧みにこの草原を舞い、敵を翻弄するだろう。
『叶えたい約束があるのでね、悪いが此処で君達には血を流して貰う』

 風が吹き抜ける。かつては勇敢なる歌が響き渡ったであろう草原は、今はただスパヰの男の伝声管越しの声だけが響く静寂の地。
『来い!!』

 皇女殿下の危険な市民は、己が願いに忠実であるが故に手段を選ばない。
 対する超弩級戦力たちは、何を以て彼と対峙し、刃を交えるのか?
 どうか悔いのなきよう、互いの持てる全てをぶつけ合わんことを。