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永久ならぬ刹那よ、せめていま一時の安息を(作者 月見月
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●彼女が羽を休めるために
 残酷童話迷宮アリスラビリンス。フォーミュラであった『オウガ・オリジン』が打倒され、各地で蠕動していた猟書家もまた討ち取られるか逃亡を果たし、状況的には一区切りついたと言える。
 だが、未だ戦争の齎した余波が留まる様子は無い。それも当然だろう。捕食種たるオウガ、その首魁が突然居なくなってしまったのだ。各地で暴虐を働いていた悪鬼たちに動揺するなと言う方が無理である。
「ふむ……暫くあちらこちらを逃げ回っていたが、どうやら好機が到来したと言って良いだろうな」
 そんな揺れる世界の片隅、とある『不思議の国』の一角。決して明ける事のない夜空の下で、時計兎が金色の卵を詰まらなさそうに指先で玩んでいた。黒い両耳をゆらゆらと揺らし、バニースーツに身を包んだその姿は貧相な体躯ながらもどこか妖艶さを感じさせる。傍らにはうず高く山と積まれた金色の卵、その頂点へ手にしていた一個をそっと乗せ、時計兎は立ち上がった。
「やれやれ、こそこそと逃げ隠れながら卵を拾って歩いた甲斐が在ったと言うものだ。強化の力は失われたが、金は金だ。それだけで価値があるとも」
「また、危険なことをしていたの……?」
 そんな時計兎へ、投げ掛けられた声がある。視線を向けると、そこには一人のアリスが佇んでいた。年の頃は十代前半か。褐色の肌や顔立ちを見るに、アース系世界の中東かそれに近しい土地の出だと見て取れる。心配そうな表情を浮かべるアリスへ、時計兎は安心させるように穏やかな微笑を浮かべながら肩を竦めた。
「なに、ちょっとしたピクニックの様なモノだよ。それにかつてなら兎も角、今の私にとって何よりも価値ある存在は……ファウリーに決まっているさ。一人きりにしてしまうような無茶など、する気はないよ」
 そう言って時計兎はアリスの頬へ指を這わせ、そっと愛おしげに撫ぜてゆく。余裕ぶった、ややもすれば気障ったらしい仕草だが、逆にそれが安心感を与えてくれるのだろう。少女の相貌からは不安の色が消え、穏やかなものへと変わる。しかし、それでも疑問がまだ残っているようであった。
「これだけ卵を集めて、いったい何をするつもりですか? 持ち運ぶのにも苦労しそうですけれど……」
「はっはっは、なに単純な事だ。これまではどこもかしこもオウガだらけだったし、つい先日までは戦争の真っただ中。これじゃあ、ゆっくりと腰を落ち着けることも出来ん。だから……」
 ――ここは一つ、プレゼント代わりに国の一つでも買ってみようかと思うんだ。
 きょとんと、事情を呑み込めぬアリスの頭をそっと撫でながら、時計兎は虚空を見やる。
「とは言え、猟兵諸君らが乗って来るかどうかはまた別問題だが……まぁ、底抜けのお人好したちだ。悪い結果には転ぶまいよ。先立つモノとて用意したしな」
 そう言って、時計兎は戯けた様に肩を竦めるのであった。


「みんな、先日の迷宮災厄戦はお疲れ様だったね。無事勝利できたようで何よりだ」
 グリモアベースに集った猟兵たちを前に、ユエイン・リュンコイスはまず労いの言葉で口火を切った。また一体フォーミュラを討ち取り、世界から脅威を取り除けたのは何よりも喜ぶべき事だろう。本来であれば暫しの休息を取りたいところだが、戦争終結の直後だからこそ出来る動きというのもまたあった。
「さて、一段落ついたところで申し訳ないけれど、アリスラビリンスで早速お願いしたい仕事があってね……オウガに占領された国の奪還、それが今回の目的だ」
 アリスラビリンスに跋扈するオウガたちにとって、フォーミュラが倒されたという事実は想像以上の衝撃を以て受け止められた。国すら指先一つで容易く作り替える、あの絶対存在たる『オウガ・オリジン』ですら斃れたのである。況や、それに遠く及ばぬ己がもし猟兵と相対でもしたら。そんな不安が伝播し、彼らはいま恐慌状態に陥っているのだ。
 そして、憎々しき悪鬼たちがむざむざ隙を晒しているとあれば、この機に乗じて圧政を打ち破らんと目論む者たちも当然出てくる。だが相手も決して愚かではない。今は浮足立っていても、時間が経てば統制を取り戻してしまうだろう。だからこそ、速やかに動かなければならないのだ。

「という訳で皆には時計兎や愉快な仲間たちと協力して、ボス級オウガの討伐や『不思議の国』の復興を行って欲しいんだ」
 今回、猟兵たちが向かうのは『常夜の国』と称される世界である。名前の通り星もない夜空に覆われており、日光が射さないせいか草木も碌に生えていない。そんな荒涼とした大地の中心、巨石を組み上げて造られた岩屋の中にオウガは陣取っている様だ。
「普通に戦えば強敵だろうけど、協力してくれる時計兎が相手の死角にウサギ穴を繋げてくれる。それを利用すれば、奇襲を行うのは容易いだろう。加えてどうやら、件の時計兎はかつて或るアリス共々、猟兵によって救われていてね。相応に恩義を感じている様だ」
 詳細は長くなるので省くが、絶望したアリスは猟兵たちに助けられ、元の世界ではなくこの童話迷宮で生きる事を選んだ。紆余曲折を経て友誼を結んだ時計兎もまた、そんな少女と共に歩むことを望んだ……そんな結末で幕を閉じた事件が、過去にあったのである。
「ボス級のオウガ討伐に参戦するのは時計兎だけだけれど、その後の『不思議の国』復興にはアリスも姿を見せてくれるみたいだ。一緒にどんな国を作るのか、相談するのも良いだろうね」
 ただ残念なことに、そういった復興作業も悠長に行ってはいられない。己の主が倒された事を察知し、配下のオウガが駆けつけてくる危険性があるからだ。故に、復興案にはある程度の自衛策も入れるのが得策で在ろう。

「とまぁ、説明すべきことは以上かな? 戦争と言うのは戦いも厳しいものだけれど、戦後の復興もまた重要だ。その一歩をどうか頼んだよ」
 そう話を締めくくると、ユエインは猟兵たちを送り出すのであった。





第3章 集団戦 『ストローマン』

POW ●カースバースト
自身の【身体と込められた全ての怨念】を代償に、【恐るべき呪い】を籠めた一撃を放つ。自分にとって身体と込められた全ての怨念を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
SPD ●リスポーン
自身が戦闘で瀕死になると【新しいストローマン】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ ●ネイルガン
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル✕10本の【五寸釘】で包囲攻撃する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※マスターより
三章断章及びプレイング受付告知は16日(水)夜に投下予定です。
引き続きよろしくお願い致します。
●災い転じて富と為せ
 猟兵たちの尽力により、赤茶けた大地に様々な施設が打ち立てられた。『不思議の国』の中心部にはがっしりと頑丈な塔と黄金に輝く少女像が建ち、そこを基点として直線と曲線の入り混じった路が外周へ向かって伸びている。試しにそれを辿ってみれば、緑の芽吹く空き地や真新しい井戸を見つけることが出来るだろう。そうして国の外周部へと至れば、来たる脅威に対する備えとして、灌漑も兼ねた水堀と背の高い物見塔が守りを固めていた。
 足りない部分を求めてしまえばキリはないが、経過時間を考えれば十分過ぎるほどの成果である。作業に専念していた猟兵と愉快な仲間たちが一区切りをつけ、そろそろ休憩でもしようかと声を掛け合っている……そんな最中であった。
 ――敵襲、敵襲! 国境付近にオウガの大群が接近しつつあり!
 突如として飛び込んで来たのは、オウガの襲来を伝える急報。どうやら、たまたま塔の上に登っていた愉快な仲間が敵影を発見したらしい。指し示された方向へ急行するや、荒野を埋め尽くす敵群が視界に飛び込んで来た。
「あれは……藁人形、ですか?」
 敵の容姿はファウリーの零した呟きに集約されている。藁を麻紐で人型に束ね、各所に五寸釘を刺したモノ。東洋の呪術である丑の刻参りにでも使われそうなソレが、群れ成すオウガの正体であった。
「恐らく、先に討ち取った人狼の配下だろうな。全く、納得の選択だ。もしヤツが生身の配下を傍に置いてみろ。狂気と本能に支配されて、自らの爪牙に掛けるのがオチだろうさ。だからこそ、あんな木偶人形を選んだのだろう」
 黒兎……先ほどアザリーと名付けられた時計兎は、傲慢さを崩すことなく相手の事情を推察し、呆れた様に鼻を鳴らす。だが背景がどうあれ、あの量が雪崩れ込んでくれば折角復興させた国が廃墟と化しかねない。各種施設を利用しつつ、水際で食い止めねば。戦闘へと意識を切り替えつつ、迎撃態勢を取る為に動き始める猟兵と愉快な仲間たちだった、が。
「しかし……あれは逆に使えるかもしれん。喜び給え、資源が向こうからやって来たぞ」
 時計兎は上機嫌そうに、そうのたまった。今度は猟兵側が『お前は何を言っているんだ』という視線を向けるが、彼女は涼しい顔をしながら肩を竦める。
「考えても見給え。この国の懐事情はお寒い限りだ。そこに藁、麻紐、釘が大挙してやって来たのだぞ? どれも使い道が広い上、有り過ぎて困る物でもなし。しかも、追い詰められる度に増えるとくれば、利用しない手は無いだろう」
 こんな状況で言う事かとも思うが、確かに一理ある。それに攻めてくる敵がそのまま復興の一助に変わると言うのも、意趣返しとしては中々痛快かもしれない。最優先課題は勿論この『不思議の国』の防衛だが、余力が在れば敵のオウガの刈り取りを狙ってみるのも良いだろう。
「先のボスオウガ戦とは違い、今度はこちらも迎撃準備が出来ている。我々も援護は惜しまんし、相手は烏合の衆だ。驕るつもりはないが、そう悲観する必要も無いはず」
「それに、猟兵さんばかりに頼ってもいられませんから。私たちの国は、私たち自身で守らなくちゃいけないから……そうだよね、みんな?」
 アリスの問い掛けに、愉快な仲間たちが鬨の声を上げて応ずる。自らの手で作った国をみすみす壊されたくなど無いに決まっている。戦いに怯えるどころか、逆に士気が燃え上がっているようだ。

 こうなれば、もはや後顧の憂いも無い。
 彼らはもう、虐げられるだけの弱者ではないのだ。
 此処は猟兵と少女と愉快な仲間たちが作り上げた、明日へと至る国。
 ――さぁ、その真価をとくと見せてやろう。

※マスターより
 第三章プレイング受付は18日(金)朝8:30~から開始致します。
 第三章は迎撃戦となります。二章で建設した防御施設を利用すれば、判定にボーナスが発生します。加えてアリスは『ガラスの迷宮』、時計兎はちょっとした時間停滞による妨害を行えるほか、愉快な仲間たちも指示に従って動いてくれます。必要に応じてお声がけください。
 また、敵オウガを効率よく倒すことが出来れば、今後の発展に役立つ物資を回収できるでしょう。なお火や水で攻撃したとしても、戦闘不能後にはちゃんと物資をドロップするので、攻撃方法に縛りなどはありません。ご自由に戦ってください。
 それではどうぞよろしくお願い致します。