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肉体派からの挑戦状

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●壁の試練
 ズズンと迷宮の内部が震動する。
「こんなところ、だナ」
 その震源で、重さを感じるような濁った声が低く発された。
「ようやくだ」
「タノしみだ」
 濁った声に続くのは、それに比べればやや高い、知性を欠いた声を発するコボルトの群れ。
 彼らの言葉の節々には達成感の陰があり、やはりというか彼らが見下ろす先には、一辺の崖があった。
 角度は90度。下から見上げるならそれは純粋な壁と表現する方が良いのかもしれない。
 その高さは彼らコボルトたちを数人積み重ねてもまだ足りない程に険しいものであり、これを登っていく、というのは並みならぬものだと想像できるだろう。
 彼らの達成感の正体とは、この壁を作り出した事によるものであった。
 そんな壁の上。
「今こそ、時は来タ!」
 拳を突き上げ、一匹の人型の災魔が叫びを挙げる。
 ただし、人型であるというだけで、その姿そのものは人とは程遠い。
「我々は力強い者を求めル!」
 強靭な筋肉を纏う深い緑色をした拳を高々と掲げて、人型の巨大な災魔、サイクロプスは更に叫ぶ。
「この壁の試練を越えてみロ!」
「コえてみろ!」
「みろ!」
 叫びに続くコボルトたちの声は、まるでこだまのように。災魔たちの叫びは迷宮のどこまでも、響いて行くのだった。

●挑戦者求む
「……皆さんは、壁って、どう思いますか?」
 普段、壁にどうこう思う人はいない。
 わかっていても、結晶・ザクロ(真実のガーネット・f03773)はそう聞かざるを得ない心理であった。
「すみません。その、皆さんには壁を越えていただきたいんです」
 だから、言葉を続けるザクロの声は、申し訳なさそうに。グリモアベースへと集まる猟兵たちに、頭を下げて、その事態について説明を始めた。
「実は、とある災魔が、迷宮に壁を作ってしまいまして……」
 もう何度かになる壁という言葉の登場。
 この壁とはつまり、壁の事である。
 普通こうした言葉の中で使われる時というのは、心の壁や、障壁、障害などといった比喩の意味を込めた使い方が多いものだが。
 この場合は、本来の意味での壁が迷宮に作られたという事であり。
「それで、その壁を乗り越えて、災魔たちを倒してきてもらいたいんです」
 壁を越えるというのは、物理的に。
 ちなみにだが、この時、飛行や魔法などの浮遊によって飛び越えようとすると、魔法障壁によって遮られるらしい。
「多分、そういう迷宮になってるんだと思います」
 つまりは、地上から跳んで、壁に張り付いた後はよじ登る、などの。飛行などを伴わない方法での攻略が必要となる。
 説明するザクロ自身も、何とも言えない表情であった。
「闘争本能、なんでしょうね……。俺より強いヤツと戦いたいってね。でも、壁を越えたから強いヤツだってのは、脳筋すぎるよねぇ?」
 改めて、災魔についての解説を始めるザクロの言葉は途中、途切れたと思うと、その身に纏う雰囲気を変えて、言葉を続けていく。
「ま、こんな事思いつくくらいだから、わかりやすい敵だと思うよ。フロアボスのサイクロプスも、雑魚のコボルトも筋肉ムキムキで、体を動かす事ばっかりしか考えてないし」
 最低限言葉は通じるともザクロは言うが、トントンと、自身の頭をつっつく仕草で、からかうように。
「けど、気をつけてね。力任せってたまに、理屈も何でもねじ伏せるもんだからさ」
 僅かばかりの注意を添えて。
 それじゃあよろしく、とザクロは、頭に向けていた指先をグリモアベースに映る迷宮の景色に向け、猟兵たちを送り出すのだった。


一兎
●はじめに
 逆俺より強いヤツに会いに行く。
 こんにちは、もしくはこんばんは。
 アルダワの迷宮から、シンプルイズベストな勢いを込めてお送りします。
 以下に当シナリオの概要を。

●概要
 場所は、アルダワ魔法学園に数ある迷宮の一つ。
 たまたま巣食った脳筋サイクロプスと脳筋コボルトたちの、バカな思い付きから絶壁が作られました。
 皆さまには、この壁を越え、脳筋災魔の撃破をお願いします。
 概ねは、オープニングとフラグメントの通り。
 第一章では、この壁の攻略。
 第二章では、攻略後、壁の上に巣食う災魔、コボルトとの集団戦となり。
 第三章では、それらを率いていたフロアボス、サイクロプスとの戦闘となります。
 タイトル通りくらいには肉体派な構成のつもりですが、知性に満ちた方でもどうぞどうぞ。
 ちなみに。壁を越えた先に敵はいますが、壁は攻略後、障壁が消えるなどで行き来が楽になるとお考えくだされば、と思います。途中章からでも、お気軽に。

 以上それでは、皆さまからのプレイング、お待ちしております。
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第1章 冒険 『ウォールクラッシュ!』

POW   :    気合と根性!壁はガッツでよじ登って、力でずり落ちないようにする。

SPD   :    速度が全て!足の速さを生かしてより高く飛び、素早く上を目指す。

WIZ   :    頭で勝負だ!飛ぶ角度や壁に張り付く場所を綿密に計算、上手く上れる工夫をする。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ステラ・ハシュマール
飛行が弾かれるのはきついけど、プロレスのための筋肉作りにはなるかな?
よし、ここは珍しく真っ向から上ってみようか。

ユーベルコードはとくに使わない。怪力持ち故のパワーを行かした登りかたでいかせてもらうよ。
普段飛行して壁を越えてるから、なんか新鮮。
迷惑なことをするオブリビオンたちだけど、今回は感謝しておこうかな?
上りきることが手来たら、その達成感に酔いしれておこう。

「で、できた。いや、これなかなか達成感あるね!うん、満足満足!!……なにか忘れてる気がする」


ドリスコ・エボニス
POW

いいじゃないかこーゆーの
脳筋っていい響きじゃん

おっしゃ!いっちょやりますか!
壁には【力溜め】で全力で【クライミング】していくぜ
壁の多少の凹凸もあるかもしれないから【地形の利用】で登るのに使っていこうじゃないか



●力任せに挑む
 ズシン、ズシン、ズシン!
 迷宮に地響きにも似た重い音が続く。
「ウオオオォォぉぉ!!」
 次いで響き行く、猛獣の如き雄叫び。
 両者の音の正体とは、ドリスコ・エボニス(蛮竜・f05067)が助走を行う事により、生まれ出たものであった。
「っフンッ!」
 やがて、連続する音は、ズダンッと、一際力強い音と共に終わりを迎える。
 同時に、ドリスコの巨体は宙へと跳び上がる。真っすぐに、正面にそびえる。巨大な壁に向かって。
 その姿を例えるなら、一人でに飛んでいく砲丸というのが相応しいだろうか。
 砲丸は瞬く間に壁へと迫り、そして。
「だあぁぁ!!」
 衝突。そう形容するにふさわしい轟音と共に、ドリスコの身体は壁へと到達した。
 寸前に伸ばされたドリスコの手足が突き立ったと思うと、陥没。壁面に四つのえくぼが増える。
「おや、先を越されちゃったね」
 そんな衝撃を伴う方法でクライミングを始めた、ドリスコの姿を見上げる位置から声を掛けたのは、ステラ・ハシュマール(炎血灼滅の死神・f00109)だった。
 ドリスコとステラ、二人の位置は、斜めを見るところにあって、数メートルとないほど近くにある。
 普通に考えるなら、衝突するドリスコの傍にいた彼女にも、強い震動などの影響があったはずに違いないのだが。
 なんて事のないような声色で語り掛ける彼女の手足は、しっかりと壁面の凸凹を捕まえていて。
 これだけを切り取っても、二人の筋力が並大抵のものではない、という事がよくわかる一幕だと言えるだろう。
「ほら、どうせ登るにしても、ちょっとでも高い所からの方が、いーじゃん?」
 そのようなッ超人的な方法をとったドリスコの言葉に混ざる響きはどこか、当たり前の事を言っているように思わせられるもので。
「なるほどね。ボクもそうすれば良かった、かな。けど、まだ負けないよ?」
 それに返すステラの言葉もまた、賛辞を送るもので。
「ほー。なら……決まりだな!」
 ほんの短いやりとりの間に、二人の間で、火花が散った。
 先に動き出したのは、ステラの方である。
「先手必勝、逃げるが勝ちってね!」
 持ち前の怪力を活かした小さな指先が、壁面の次の凹凸を掴み、彼女の小さな体を持ち上げていく。
 体格に反した不条理ともとれる光景はしかし、新たな不条理に塗り替えられる事となる。
「……ぅぉぉぉおおお!!」
 雄叫びを挙げたのは、再びドリスコだった。
 というのも、彼の手足は、その一部を壁に埋めてしまっていて。身動きができない状態だったのである。
 その原因は言わずもがな、先ほどの衝突であったわけだが。
「っさすが、はやい!」
 メキメキと彼の手足の埋まる辺りに亀裂が走ったと思ったのも束の間、ドリスコの手は壁面の拘束から放たれ、その長く逞しい手足を使い、瞬く間にステラとの距離を縮め始めていた。
 今度は上から見下ろす側となっていたステラは、負けてられないとばかりに、再び壁面の上へと視線を向ける。
 後ろを見ていて、登れるわけがないからである。
 阿吽の呼吸のうちに始まった、二人の猟兵による登攀競争は、早くもデッドヒートを迎えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ガルディエ・ワールレイド
頭の悪そうな災魔どもだな!
だが、まぁ、そういうのは嫌いじゃねぇぜ。
最終的にはぶっ潰すわけだが、せいぜい納得出来るような潰し方をしてやるよ。
ともあれ、先ずは壁登りか。

【POW】
楽に登る案が無いでもねぇが……あえて正面から攻略してやるよ!

一旦装備は置いて身軽になる。
装備はロープで結んどいて後で引き上げるぜ。
小型ドラゴン化する武器もあるから、万が一ロープが外れても、そいつに回収を手伝って貰えば大丈夫だろ。

壁登りは両手足の内の3箇所で身体を支えて、残った1箇所を動かして登るっていう基本を遵守。
特に指先には【怪力】を込めてがっしりと掴む。
それでも不安定なら【血統覚醒】で身体能力を底上げ。
最後は気合だ!



●そもそもクライミングとは
 そもそもクライミングとは、いかに厳しいものであるのか。
「頭がおかしくなりそうだ……」
 轟音にも近い、登攀時には起こり得るものではない音を立て、駆け登っていく猟兵たちの姿を目に。ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は目頭を押さえ、天を仰いだ。
「そういうのが嫌いなわけじゃないんだ……がなぁ……」
 どこか言い訳するような言葉も付けて。
 目頭を押さえていた手は、すっと、次の手掛かりを探るのに使われる。
 ガルディエが行う動きは、クライミングにおける基礎。左右の手足を四点として扱い、三点を使って体は支え、移動時には必ず一点のみを動かす事を徹底するという。基礎に準じた動きであった。
「っと。このまま戦えってんなら、厳しかったろうが。っふ。よっと」
 時々、すっと大きく手足に、振るような動作を加えて。応じた部位の疲労を抑える。
 それら一連の動きは、もはやクライミングにおける理想と言っても良い。
「……大分、登ったな」
 そうしている間にも、ガルディエの体は、壁の上部に位置する所にまで来ていた。
 競争をしていた二人はもう登り切ってしまったのだろう。
 壁の途切れる登頂部から、達成感のある声が聞こえてくる。
「目的、忘れてんじゃねぇだろうな……?」
 それに思わずと言った様子で、呟いて。ガルディエは視線を下の方へと向ける。
 そこには登攀のため、置いてきた自身の装備があるはずなのだ。
 この後に待っているだろう、災魔たちとの戦いに備えた、装備一式が。
 腰に結んだロープを引けば、いつでも引き上げられる。それが切れていない事を確認して。改めて、ガルディエは視線を上へと戻す。
 最後の、登頂直前の瞬間こそ。油断が生まれる境界である。
 もちろん、ここまでを着実に登ってきたガルディエに、油断が起こり得る事はなく。
「……ぅっし!」
 こうして、ガルディエの手は、登頂の縁を掴むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レギーナ・グラッブス
可能なら出発前にザイルとハーケン、ハンマーを手に入れておきます。
もし使えれば自分も他の方も楽になるでしょうし。

使える凹凸がないか、崩れやすそうな場所はないか、
他の方の動きはどうか、など登る前に全体を眺めてルートを考えます。
要らない怪我をしても仕方ないので慎重に。
また、協力した方が上手くいきそうなら協力するつもりです。

登攀を妨害してくるのであれば
ミレナリオ・リフレクションで相殺したり
ジャッジメント・クルセイドで反撃したりして対処します。

制服で登る事になりますが服装の事は色々諦めるとしましょう。
わざわざ機械人形のを注視する方もいないでしょうし。
でも、できるだけ最後の方に登る事にしておきましょうか。


空廼・柩
ええ…この壁登らないといけないの?正気?
壁を乗り越えられる奴から強い奴?
え、馬鹿なの?
何でもかんでも筋肉に訴え過ぎてない?
…もう溜息しか出ないんだけれど
はあ…もう、仕方ないなぁ

…この後に敵との戦いも待っているからね
敵へ至る前に体力をがっつり奪われるのだけは避けたい
とりあえず…此処は先に壁を登る猟兵達に助けてもらおうか
【影纏い】を使って猟兵達を追跡
視覚を用いて足場になりそうな場所、自分でも登れそうなルートを予め計算する
それを元にして壁にチャレンジするとしよう
勿論、登る前の準備運動も欠かさず行う
万一ずれたら危ないし眼鏡も外しておこう
白衣の袖を捲り、滑り止めの手袋と靴は忘れずに

――さぁて、行きますか


草剪・ひかり
POW判定
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎

肉体派!?
私のこと呼んだよね!(多分自意識過剰です)
次元を超える“プロレス界の女王”草剪ひかり様が、この企画?に挑戦してあげるよ!!

もちろん。壁昇りくらいならまーかせて!
プロレスラーたるもの、高いところに登るのもお仕事の内ですよ!
コーナートップはもちろんのこと、柱や金網の上から豪快に飛び降りるのも
「高いところに昇れてこそ」なんだから!

(女の子?にしては)長身と手足の長さを活かして手掛かり足掛かりをがっちり掴み
持ち前のパワーでしっかり身体を維持しつつ、目指すは壁の上の敵群!

……大きすぎる胸やお尻が壁昇りにはちょっと邪魔だけど、そこはまぁなんとか、ね?



●肉体派
 果たして、自分は何を間違ったのだろうか。
 壁面を登る途中にいて、空廼・柩(からのひつぎ・f00796)の脳内では、走馬燈にように、そこに至るまでの経緯を何度と回想していた。
 時は微妙に巻き戻る。
「人間業じゃないなぁ……」
 柩は、ユーベルコードによって生み出していた、影を纏う蝙蝠を手元に戻して、そんな風に呟いていた。
 この時、いち早く現場の壁へと到着していた柩は、すぐさま登り出す、という事はせず。その様子を見ていた。
 他の猟兵たちの様子を、である。
 自らに登攀の技術がない、という事と。筋力に特別優れていると思っていない事。両方を要素を足し合わせ、先に登っていく猟兵たちの動きを観察していれば。最も効率の良い登り方を見つけられるのではないか、と考えたのだ。
 果たして、それ自体は正しい選択であっただろう。
 ただし、最初の二人は明らかに手本にならない次元の動きであった。
「三人目の人は、すごく良かった。アレなら、俺にもできそうだしな」
 ふんふんと頷いて、準備体操を行う。登攀中に足をつってしまうなど目も当てられないだろうから。
「どうかされましたでしょうか」
 そんな時である。柩に声をかけたのは、その両肩にザイル、両手にハーケン、ハンマーと。本格的なクライミングを行う時に使われる道具一式を手にしたレギーナ・グラッブス(人形無骨・f03826)であった。
「……なるほど、では協力して登る事といたしましょう。」
 レギーナは道具の支度をするため、やや遅れて現場に到着している。よって、手前に登った猟兵たちの動きを知らず。それを見ていた柩と手を組むのは、効率的だと判断したのである。
「なんだ、まだ登ってない人がいたの?」
 その時、結託する二人の姿を目にして乱入してきたのは、知る人は知るプロレスラーこと、草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)。
 彼女もまた、この壁に挑む者の一人だった。
 そのいで立ち、立ち振る舞いはむしろ真っ先に壁に登っていきそうなものだが、ここまで動いていなかったのも理由がある。
「真打は遅れてやってくる、ってね! そういう事なら任せなさい。二人に何かあったら、私が持ち上げてあげるから!」
 真打であるがために、その出番は後に。ただそれだけの理由で。
 パシパシと力こぶを作った腕を叩いて、ニカッと笑ってみせるひかりの姿は、頼りにできる自信に満ちたもの。
 彼女の存在は、柩とレギーナにはない体と力の使い方を知る者として、この結託に加わった時の心強い味方となるだろう。
 こうして、三人は協力して、登頂を目指す事になった。
 時を、今に戻そう。
「……? 空廼さんはどうかされましたか? 横を向いていて、登れるとは思えないのですが」
 登攀用具を装備したレギーナ、そして、いざという時の二人の命綱代わりとなる、ひかり。二人が順に登り始め。その後ろを、ユーベルコードによって得た視覚情報によってサポートする。
 一見すると完璧な布陣である。穴だらけかもしれないが完璧な布陣である。
「い、いや。もしかしたら昨日寝違えてたかもしれないなぁってね?」
 しかしその完璧な布陣にも、明確な問題があった。
「先ほどは真っすぐしてましたよね? ……大丈夫なら良いのですが」
 柩が不自然な姿勢をとる事に疑問を残しながら、レギーナはまた一つ、また一つとハーケンを突き立て、徐々に登っていく。
 この調子でいけば、いずれ容易に登頂は果たせるだろう。柩の持つ情報によってハーケンを用いても問題のなさそうなルート選びが出来たのも、大きい。
 しかし。
(どうして、この子は、制服なんだ!)
 真上を見上げないように、柩は必死の姿勢でこらえていた。
 どうして登り始める前に気づかなかったのか。どうして自己申告もなかったのか。
(ミレナリィドールだから大丈夫だとか、そんな事、全然ないからな!)
 もはや何に対して心の叫びを発しているのか、柩の顔を変な汗が伝っていく。
 そしてその時、柩の脳内に閃きが走った。
(そ、そうだ。こっちの五感に集中すれば……)
 念のため、影を纏う蝙蝠はひかりに追従させてある。そちらで得る五感に集中すれば、少なくとも。目の前のものは、認識せずにすむかもしれない。
 そうして、もう一方の五感に意識を投じた柩は、間もなくブホァと噴き出していた。
「んー、なんか少年から変な声がするけど?」
 その原因となったであろう、ひかり本人はというと。なぜだかその全身はじっとりと汗に濡れていた。
 というのも、柩が見たものは、隙あれば筋トレでもしようとばかりに、明らかに登攀に対して不利な体勢をとっているひかりの姿であり。しかも丁度、衣装のズレが気になったのか、親指を使いお尻の辺りをピシっと正している最中、その瞬間だったのである。
「やっぱり、一度休まれた方が良いのでは。一旦、止まりましょうか?」
「何でもない! 大丈夫だから、早く登ろう!」
 トドメとばかりに提案するレギーナの言葉に、邪気はない事はわかっていたが、柩は必死に叫んでいた。この天国の、いや地獄のような状況から抜け出すには、登りきる他ないのだと。自らに言い聞かせるように。
 果たして、その後三人は(主に一人が)様々なアクシデントを乗り越え、しばらくの後、登頂を果たす事になる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『コボルト』

POW   :    爪牙強襲
【鋭い爪牙】による素早い一撃を放つ。また、【四足歩行】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    爪牙蹂躙
【駆け回ること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【鋭い爪牙】で攻撃する。
WIZ   :    猛牙咬撃
【噛みつき】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●来る力持つ
 一人ずつ。あるいは続々と登頂にいたる猟兵たちに、ぎらつく視線がまとわりつく。
 その数は無数に。自らの姿を隠そうともせず。大胆に。
「おマエたち、ツヨいヤツ」
「ツヨいヤツ!」
 そこでは、筋骨隆々の肉体をしたコボルトの群れが、弧を描くような布陣で、猟兵たちを取り囲んでいた。
 さらにその群れの向こうには、両腕を組み、どっしりと構える巨大な人型、サイクロプスの姿。おそらくウォーマシンと同じ程の大きさはあるだろう。
「おマエたち、タオしたら、オレたち、もっとツヨい!」
「もっとツヨい!」
 そんな観察を行っている猟兵たちの様子に構わず、口上のような事を述べるコボルトの一匹が、パキパキと腕を鳴らすと。
 やがて一帯に、一瞬の沈黙が舞い降りた。
空廼・柩
まったく…戦う前から酷い目に遭った
悪いけれど今は虫の居所が悪い
手加減する心算なんて毛頭ないから覚悟しなよ

【咎力封じ】を用いてコボルトを縛っていこう
縛った後は大きく振り回して出来るだけ多くの獣達を巻き込んでいくよ
大丈夫、やる時はちゃんと周囲の様子を窺うし皆に警戒するから
駆け寄ってきた獣の爪は極力拷問具を盾にして防御
そのままカウンターに持ち込み、一体でも多く敵を潰す

共に戦う者在れば、その者の隙を埋められるよう行動
誰かが死角から狙われているのを確認したら武器で庇おう
…あんた、大丈夫?

――どう、ツヨいヤツって認めてくれた?
見た目がひょろいからって舐めてくれたら困る
これでも割と、肉体労働は得意な方なんだ



●壁無き戦場
 アォォォン!!
 沈黙を打ち破るように、あるいは死合の始まりを告げるかのように。
 コボルトの一匹が咆哮を挙げた。
 猟兵たちは呼応するかのように、一斉に動き出す。
 各々の得物を手に、いや、何も持たない者もいたかもしれない。
「おマエ、ヨワそうなヤツ、シぬ!」
「シぬ!」
「死ぬ、じゃなくて、死ね、な?」
 殺意ですらない、あまりに単刀直入過ぎる言葉に思わずと訂正を挟んで。
 空廼・柩(からのひつぎ・f00796)は指先に引っかけた拘束具をくるくると回す。
「だったら、シね!」
「シね!」
 言葉を訂正されたコボルトの二匹は、訂正した主である柩に向けて、その逞しい両腕の先に備えた鋭い爪を構え、駆け出す。
「それと、もう一つ」
 両サイドから挟み込むような位置取りで迫るコボルトの姿に心中で、それほど頭が弱すぎるわけではないのかと、感心するように思い。柩は、一歩後ろへと引いた。
「俺は弱そうな奴じゃない」
 一歩退く、後ろに傾いたその姿勢から拘束具を放つ。
 狙いは違わず、左手側に迫るコボルトの腕、そして右手側に迫るコボルトの足へと。
「っ、ウデがっ!?」
「っ、アシがっ!?」
 そっくりな声を挙げて、態勢を崩す二匹のコボルト。
「それだけじゃない。よく見なよ」
 二匹の弱い頭を補ってやるように、柩のかけた忠告は、すぐさま形となった。
「「トまらなっ?!」」
 態勢を崩した二匹の身体は、それまでの走力を示すかのように慣性に従い、互いの身へと、迫る。
 右手側のコボルトは、足を取られた事により、手の鋭い爪を剥き出しにして。
 左手側のコボルトは、腕を取られた事により、体毛に覆われた胸板を曝け出すように。
 これだけの状況が揃って、その先に起こる事態を読めない者はいないだろう。
 当然、それはコボルトにも伝わった。
「確かに俺はひょろいけどさ。見た目だけで判断するのは、どうかと思うね、とっ」
 派手に挙がる血飛沫に内心でぎょっとしつつ。柩の踏ん張った足は、背にする崖の縁の上に。
 先ほどまでは壁であったその下から、拘束ロープを使って吊り上げたソレを担ぎ直して、柩の眼は鋭い光を携える。
「これでも力には自信があるんだ。……さすがに背負って登る事は出来なかったけどね」
 ソレとは、柩が普段、拘束具を持ち運ぶために使用している棺の事。
 そうして、手始めとばかりに内に収められた拘束具を幾つと使い、眼前に転がる二匹のコボルトを縛りあげていく。
「俺がツヨいヤツだってわかった? わかった頃には、くたばってると思うけど」
 それを最後に、縛った内の片方が弱々しくもがく様を視界から外して。
「それじゃ、俺の憂さ晴らしに付き合ってもらうかな」
 壁登りの最中に味わった苦労と、心労ばかりが重なった疲労と、二重の憂いを脳裏に描いた。
 微かに赤面した。
「本当に、色々大変だったんだからな!」
 その憂いの原因を振り払うように、柩は背にする崖から離れるように足を踏み出していく。
 後に柩は語った。この時ばかりは、コボルトのような安直な思考が、羨ましく思ったと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリ・ヴォルフ
アドリブ絡み大歓迎です

強い者と戦いたいという気持ちはわかる
私もまだまだ未熟だからこそ、
武芸に長けた…ではなく所持するは野生の力かも知れないが、
力ある者と戦い経験を積みたい。来るがいい!

敵は素早く数も多くて面倒だな
五感で追い無駄な動きは慎み【範囲攻撃】【属性攻撃】で
ファイアボールを叩きつける
獣は炎を苦手とするが、こういった魔物はどうだろうか?

至近に迫られたら噛みつきを警戒
大口を開けたところで槍を突き付け【ドラゴニック・エンド】
突き破れ、ファフニール!


ドリスコ・エボニス
壁を登っていい感じに体が暖まったぜ
おーおーいいね倒したら強いヤツって考え、でもあんたらはこれから倒されて弱いヤツになんだよ

【ダッシュ】で一気に間合いをつめるぜ
【怪力】と【力溜め】でパワーをあげてから【捨て身の一撃】による【二回攻撃】のグラウンドクラッシャーを叩き込む
倒せたなら【ダッシュ】で次のヤツに向かう
相手の攻撃には【戦闘知識】と【野性の勘】を駆使して回避を試みるぜ、隙があるようなら【カウンター】も狙う



●竜人炎武
 崖際を好む者というのは、いないのだろう。
 一度背にすれば退路はなく。動きも制限される事になるそこで戦いを続ける者はおらず。
 戦いの場は自然、崖から離れた猟兵たちを中心として。
 目先の猟兵に狙いをつけ、我先にと追従を始めるコボルト達の姿は、斑模様のように、幾つもの集団へと分裂を起こし始めていた。
 その斑の一点で、炎が渦巻く。
「それだけ豊かな体毛ならば、容易く燃えるだろう」
 駆けるユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)の掌に、新たな火球が生まれでた。
「ヒ、ヒだ。クるなあぁ!」
「クるなあぁ!」
 その火球に、あるいは直前の爆炎に怯えてか、ユーリに追われる形となったコボルトの数匹が、その背を向け逃亡を始める。
 その一方で。
「ヒ、アヤつるヤツ、ツヨいはず。タオす!」
「タオす!」
 ユーリの力を目にして、生き勇んで追いかけてくるコボルトが数匹。
 追う側でありながら、追われる側となったユーリはその胸の内で考えた。
(なるほど。同じコボルトでも、意識の差があるのか……)
 今、自らが応じるべきは、どちらのコボルトか。
 火を見ただけで逃げる個体は恐らく、戦意も続かないだろう。しかし、自らを追いかけている個体たちは、怯えるどころか、その戦意を漲らせている。
 まさしく、強者との戦いを求める姿そのもの。
(……だったら)
 答えを出したユーリの足は、180度反転。慣性に足を地に滑らせながらも、追いかけてくるコボルト達の姿を正面に捉えた。
「俺が戦いたいのはこっちだ!」
 次いで、反転と同時にかけた踏ん張りで、手にした火球を投げ放つ。
 しかし。
「ヒだ。ヨけろっ!」
「ヨけろっ!」
 先頭を走るコボルトはよほど警戒していたのだろう。ユーリが投擲を終えた瞬間に挙げた号令に従い、二つに裂けた集団は、迫る火球をやり過ごしたのである。
「……っ!」
 その光景に思わず、ユーリは息を呑んだ。
 視線の先で、まるで渓谷かのように綺麗に裂けた茶色い体毛の谷の向こう。
 そこで自らの放った火球に向かい、一人のドラゴニアンの巨体が跳び上がる瞬間を目にしたから。
「俺は嫌いじゃないぜ。お前らの考え方」
 呟くように口にする巨体は、宙空に振るう足で大きな弧を描き、その先端で火球を捉える。
「どっ、せぃ!!」
 瞬間、火球は巨体の、ドリスコ・エボニス(蛮竜・f05067)の足によって、大砲に撃ち出されるが如く、弾き返される。
 その狙いは違わず、二つに割れた集団の片方へと。
 着弾と同時に起こる爆炎が、悲鳴ごとコボルトの身を焼き払っていく。
「けどな、お前たちは弱いヤツだ。なんせ」
 巨体が足が、重い振動と共に地を踏む。
「俺は強い、からなっ!」
 このドリスコの姿に呆気にとられたのは、ユーリだけではない。
 他ならぬコボルト達も、心境を同じくするものであり。彼らとユーリの違いと言えば、その恐ろしい巨体の目標であるかないか、くらいのものだろう。
「あぎゃぁっ!?」
 気づけば、その身にドリスコの拳を受けたコボルトの一匹が、地に叩きつけられていた。
 いつの間に近づいてきていたのか。
 そんな疑問を置き去りに残るコボルト達は身構え、ドリスコの身に、そして呆気に取られていたユーリの身にと、迫った。
「ようやく来たな。いいぜ、かかってこいよ!」
 四足歩行、人型には本来不向きな姿勢で加速を始めるコボルトたち。
 これにドリスコは、あえて小さな隙を晒した。
「モラッ、た?!」
 その隙を見抜いたコボルトが、ドリスコの身に爪を突き立てる。
 突き立て、掴まれる。
「どんな早くても、こうすりゃ捕まえられるだろ? 露骨な隙は考えろよ、なっ!」
 傷ついた身を省みる事なく、再びドリスコの拳が炸裂。
 地面と平行に吹き飛ぶコボルトの身は、ユーリに迫っていたコボルトの幾らかを巻き込み、転がっていった。
「肉を切らせて骨を断つ、か。さすがだ」
 火球を槍に持ち変え、コボルトと対峙していたユーリは思わずと感心の声をあげる。
 今の戦法もそうだが、自身の火球を蹴り返す行動からして。並みの神経ではまずできる事ではないと。
「俺も見習おう」
 そう、口にするや。
「アォォン!!」
 咆哮と共に瞬足で迫るコボルトの牙。
 その動きはまるで、槍の間合いの内側を取るように。
 恐らく、狙っての行動ではなく、本能のような行動なのだろうと、コボルトの行動に対して、どこかクリアな思考を巡らせて。
「生憎だが俺は、肉をやる気はない」
 ユーリは槍の柄の先端近くを握る。
 例え、槍には向かない至近距離の間合いでも。予め覚悟し備えていれば。その対応は容易いものとなる。
「突き破れ、ファフニール!」
 両者が交差する寸前。紅く燃える炎を伴う槍の穂先が、コボルトの顔前に突き付けられた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ガルディエ・ワールレイド
期待には応えてやるぜ。お望み通り、力比べをしてやろうじゃねぇか。
ただし、期待の対価は高くつくがな!

◆戦闘
【存在証明】で攻撃力を強化してから仕掛けるぜ

武装は【怪力】【2回攻撃】を活かすハルバードと長剣の二刀流
敵集団への【なぎ払い】を基本攻撃とするぜ。
遠間の場合は【ダッシュ】で間合いを詰める。

【爪牙強襲】に対しては【殺気】を読む事と敵の四足歩行への移行を観察して警戒。
動きを上手く読めた場合は突進してくるルートに合わせた刺突を放ち【串刺し】にしてやるぜ。
刺突は出来ずともせめて【武器受け】で防御してぇな。

被弾しそうな時は【オーラ防御】
攻撃命中時は【生命力吸収】
味方に通ってヤバそうな攻撃は【かばう】



●証明者は
 四足歩行するコボルト達に囲まれる猟兵というのは、二人の他にもいた。
「どうした! テメェらの力ってのは、その程度か!」
 仮に先の二人を熱風だったと例えるなら、一人、立ち回りを演じる彼は、暴風のようだったと例えるられるだろう。
「ツヨいヤツ、ウレしい。ゼッタイにタオす!」
「タオす!」
 左手に長剣を、右手にハルバードを携えた、鬼神の如き姿。
 このガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)の姿を最初に目にしたならば、彼がダンピールであるとは露ほどにも思われないだろう。
 それほどの脅威、そして闘志を秘めた姿は声を挙げる。
「そりゃどうも。……ちまちまやってんじゃキリがねぇ。まとめてかかって来やがれ」
 コボルトに囲まれるその中心にいながら、物足りなさを訴えるように。
 アォォォォン!
 すると、ガルディエの声に応えるかのように。遠吠えを挙げた数匹のコボルトたちが、円を描く動きでガルディエの周囲を旋回し始めた。
「俺とテメェらの力比べだ。半端な事、すんじゃねぇぞ?」
 様子を探り、構えるガルディエの左手で握る長剣、いや、魔剣が震えを発する。
 時計回りに動くそれらは、まるで残像のようにガルディエの視界の中で連なり始めていた。
「おマエのメ、オレたちオえてない!」
「オえてない!」
 その最中、回転するコボルトの中から挙がる声が、勝利の確信に満ちたものへと変貌する。
 事実、コボルトたちの指摘は正しく、動きを追いきれないガルディエの目は、哀れにも定めるべき目標を見失いつつあった。
 戦いの場において、狙いを失うという事は、勝機を見失う事と同義であると言って、過言ではないだろう。
「これでシね!」
 では、ガルディエの魔剣が震えたのは、敗北に怖れをなしてだったのだろうか。
「シね!」
 当然、違う。
「やっぱテメェら、バカだな!」
 勝機を手にしようとばかりに、円陣を為していたコボルトたちは一斉に、ガルディエの身へと飛び掛かった。
 迫るのは無数の牙と、無数の爪。
 それらの動きに瞬時に反応するように、魔剣とハルバード、ガルディエの握る二振りの武器が、魔力を放つ。
「見え見えの罠に飛び込んできやがって!」
 魔力はオーラと化し、ガルディエの身を包む。と同時に迫る爪牙の狙いを逸らすように押し出していく。
 もちろん、全てを外させたというわけではない。僅かにできる傷を良しとしながらも、敵を自身の間合いに誘い込んだガルディエは、口の端に笑みを形作る。
「見せてやるよ。期待通りのツヨさってのをな」
 その表情を見た者は、あるいはその声を聞いた者は、彼がダンピールである事を思い出させたかもしれない。
 種族固有の持ち得る美貌と、静かな声に隠した殺意の冷たさが、コボルトたちの神経を貫き。
「あぎぁっ!?」
 赤いオーラを伴う魔剣が、身を切り裂く。
 至近距離であるがゆえに、振るえば悲鳴は連なり。
「こんなもんじゃ、俺も、こいつらも、満足しねぇぞ!」
 魔剣、そして、魔槍斧であるハルバードが唸りを挙げて、コボルトたちの体に強さの証明を刻んでいく。
 二振りの魔具は、持ち主の言葉に共感するようにその刀身を震わせていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

草剪・ひかり
POW判定
お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎

ふっふっふ
私が強いのは分かり切ってるけど、正面切って言われると少し照れるよね!
私が宇宙最高のプロレスラー、“絶対女王”草剪ひかり!
倒せると思うなら、どこからでもかかっておいで!

あっちは爪や牙、こっちは素手で一見不利に見えるかな?

プロレスはある程度の申し合いがあるから「危険であってもエンターテインメント」だけど
普段やらないだけで、「相手を壊す」覚悟があれば幾つもその方法があるんだよ

飛び掛かってくるコボルドの首根っこを捉まえ、そのまま力任せに地面に叩きつける「チョークスラム」とかをこんな岩場で仕掛ければ、どんな結果になるか考えるまでもない、よね?



●力の証明
 それはまさに、独壇場と言っていいものだった。
「どう? もう、ギブアップ?」
 ギリギリと、間接技をキめられていたコボルトの、振り絞るようなタップに、草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)の声が重なる。
『さすが絶対女王草薙ひかり! 並みいる敵を次々と、ごぼう抜きに、いや、骨抜きにしていくぅ!!』
 どこからともなく戦場に響き渡る謎の男の声。ややエコーがかかっているのは、マイクか何かを通しているからなのだろうか。
 ひかりはというと、そんな声を意に関した風もなく。今まさにダウンを取ったコボルトの一匹を解放して。ふぅと息をつき、汗を拭う。
 その仕草に、彼女の長い黒髪がなびいた。途端。
『『うおおおおおぉぉ!!』』
 謎の歓声が挙がった。
『骨抜きにされているのは、会場の方ですよ。見てくださいこの大・歓・声!』
 言われようと見えない。ありもしないはずの謎の声が、ひかりを中心に次なる世界を待望する。
『『ひ・か・り! ひ・か・り!』』
 これらは全て、次元を越える宇宙最高のプロレスラーを自負する草薙ひかりが持つ、ユーベルコードの力であった。
 ひかりが技を仕掛ければ、サービスすれば。それに応じて実況と解説、そして客席のリアクションが生まれる。まるでどこかに、彼女の勇姿が映し出されているように。
 いや、事実それは映し出されているのかもしれない。
「ウルサい!」
 狭い地下迷宮に反響する絶叫の数々に、顔を怒りの色に染めたコボルトが動けば
『ああっと、絶対女王草薙ひかりコールを遮るかのように、敵が仕掛けたァーッ!』『絶対女王も動きましたよ。これはっ!?』
 ひかりの認識を越える速度で、実況と解説が叫びを挙げる。
「お客さんの期待には、バッチリ応えないとね?」
「ナンのコト、だっ??!」
 客席に向けてウインクを送るひかり、そして戸惑いの声を発するコボルト。
 しかし彼の戸惑いの感情、瞬く間に混乱へと変貌する。
「そら、捕まえたっ!」
『これはっ、両者が交差する、その瞬っ間ッ。タカのように鋭い指先が、敵の首根っこを捉えるゥゥ!』
『ここは伝家の宝刀を期待した方も多いでしょうから、意外ですよ』
 もはや紙面に綴る必要性を欠く程に、実況と解説の言葉のまま、コボルトの首を捉えたひかりは、その勢いのまま。宙へと跳び上がる。
「本当は跳ぶ必要はないんだけどね。だからこれは、おまけ」
 様式美を秘めたセオリーを多く持つ競技でありながら、女王のアレンジは客席にスタンディングを促す。
 生まれる一瞬の静寂。
 その間、僅か数秒。
「っせい!」
 コボルトの身体はマットに沈められた。当然ありもしないために、その実態は石で出来た迷宮の大地へと。
 インパクトと着地の瞬間、ひかりの豊かな身体が弾み、スタンディングを裏切らない成果を叩きだす。
『これはっ、!』『チョークスラムですね。さすが絶対女王、ファンサービスを兼ねた良いアレンジです』
 チョークスラム。敵の喉を捉え、手と肩とを支点として持ち上げ、敵をマットへと投げ落とす大技である。
 実況のシャウトを遮る解説の目さえも、釘付けとなっている事がよくわかる。
「さ、次の挑戦者は誰かな?」
 やがてひかりは、その歳を感じさせない豊満な体を見せつけるように腕を組み、残るコボルトたちへと挑発的な視線を送る。
 まとめてかかってきてもいいよと、その視線は暗に告げていた。
『ああっと。ここで残念ですがお時間です。いやぁ、絶対女王の勇姿、いつ見ても興奮しますねぇ』
『興奮してたのは勇姿だけですか? っと、それではまた、次の試合でお会いしましょう』
 そうして迷宮に、一時の静寂が舞い戻る。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『サイクロプス』

POW   :    叩きつける
単純で重い【剛腕から繰り出される拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暴れまわる
【目に付くものに拳を振り下ろしながら咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    憤怒の咆哮
【嚇怒の表情で口】から【心が委縮する咆哮】を放ち、【衝撃と恐怖】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●力、立つ
 猟兵たちの力は目覚ましくも、次々と動けるコボルトたちの影を減らしていく。
 それらの様子を、奥から。そして、高い視点から見下ろしていた影は、その巨体を揺らして、立ち上がった。
「さすが、ダ」
 顔の面積の半分を埋めようとという巨大な一つ目が、示される力の数々を捉え、期待にギラつく。
「どけ、お前たちでは力不足ダ!」
 それが立ち上がると共に、コボルトたちに下される圧力がかった命令。
 ギラついた視線は、一つ目の、サイクロプスの肉体を震わせていた。
「よく、壁の試練を越え。コボルトたちを倒せたナ」
 まだ身動きのできるコボルトは迷宮の奥へと散り始める。
 猟兵たちとしても、追撃を仕掛けようかという声はあったが。それは、目の前の巨体が立ちはだかった事によって、否定される事となった。
「強き者よ。歓迎するゾ。さあ、かかってこイ!」
 迷宮に、サイクロプスの叫びがこだまする。
チコル・フワッフル
ユーリ・ヴォルフと行動
★アドリブ、他猟兵との絡み歓迎!

ユーリがここに来てるって聞いて、手伝いに来たよ!
わぁっ、大きな人……いや、人じゃない!?
まともに食らったらぶっ飛んじゃいそう。了解、気をつけてね!

ユーリが気を引いてくれたら、キャミソールと短パン姿になって【シーブズ・ギャンビット】での一撃を狙うよ。
接近する際は【野生の勘】【ダッシュ】【ジャンプ】【フェイント】【見切り】を駆使して、素早く敵の攻撃の回避を試みる。
どんなに強い攻撃でも、当たらなければ意味がないもの!

攻撃は足を狙うけど、イケそうなら顔面に向けてダガーを【投擲】するよ。
当たらなくてもいい、ユーリが攻撃するチャンスになれば!


ユーリ・ヴォルフ
チコル・フワッフルと行動
アドリブ共闘大歓迎です

1撃でも食らったら痛そうだな…
チコル。連携を狙ってみよう。まずは私が囮になる!

正面から突撃し「叩きつける」の発動を狙う
予備動作から軌道を読み『吹き飛ばし』で自らを飛ばして勢いをつけ避ける。今だ、チコル!

チコルが暴れまわっている間に、敵の目を盗み飛行
上空から戦場を俯瞰する
『真の姿』を解放し、全身を炎で包んだ炎の精霊のような姿になる
「暴れまわる」を始めたら、炎霆を構え頭上から急降下
視線が上へ向くと同時に、敵の目玉を狙い【ドラゴニアン・チェイン】『範囲攻撃』『属性攻撃』で炎の力を乗せて目玉へと『串刺し』にする。冷厳なる業火にて焼き尽くす!



●紅玉の二人
 コボルト達が立ち去り密度を失った空間に、広さが戻ってくる。
 もっとも、その広さの戻った空間にありながらも、猟兵たちの視界を埋めるように拳を振るうサイクロプスの姿は、重圧を身に纏ったかのような存在感があった。。
「わぁっ、おっきな人~。……って人じゃない!?」
 そんなサイクロプスの姿を目にした猟兵の一人が、驚きの声を挙げる。
 また、驚気の声を挙げたのは、その猟兵だけでなかった。
「チコル!?」
 よく聞き知ったキマイラの少女の声がする事に、ユーリ・ヴォルフ(叛逆の炎・f07045)は驚き、思わずと振り返る。
 するとそこには、案の定。あの壁を越えてきたばかりらしき、少女の姿があり。
「あ、ユーリ、手伝いに来たよー!」
 少女、チコル・フワッフル(もふもふウサキツネ・f09826)は、今まさに戦いの場にいるという事を忘れさせるほど人懐っこい笑みを浮かべて、ユーリの姿に手を振り返していた。
「お前も強き者カ!」
 そんな笑みすら意に介さず。サイクロプスの一つ目と腕がその狙いを伝えるように、チコルに向けられる。
 壁を越えた者ならば強者。理屈として成り立たない理屈によって振りかかる暴力が、ユーリの目前で振るわれようとしていた。
 しかし。
「……手応えが、なイ」
 サイクロプスが拳を握りこんだそこに、チコルの姿は既になかった。
「危ないだろう。敵の目の前で、闇雲に手を振るものじゃない」
「当たらなかったらいいんでしょー? ユーリは心配性なんだよ」
 代わりに、どこか場違いなやりとりを交わす男女の姿が、傍らにあった。
 ただし二人ともに自らの得物を、ユーリは竜槍、チコルはダガーを、その手に握りながら。
「面白イ、敵を前に戯言とは、いい度胸ダ!」
 そんな二人の姿を一つ目の水晶体の中に捉えて、サイクロプスは叫びと共に地を蹴った。
 巨体が反転するだけで、ごぉぅと空気が唸る。
「……わかった。全く、チコルには敵わないな」
「んふふー。ユーリはイイ顔なのと同じくらい、イイ人だよねぇ」
 巨体が一歩を踏みしめる度に、地鳴りにも似た音が生まれる。
 その標的とされていながらも、二人は態度はどこか余裕を携えた様子で。
「どうやら私達の態度に、すっかり激昂してくれているらしい。……行けるか?」
「いつでもオッケー! ユーリこそ、無茶したらダメだよ?」
 巨体の一歩は大きくとも、速度は遅い。その僅かな合間に交わした言葉に互いに疑問符のついた確認を行い、互いに頷くだけで答え返す。
 二人は同時に駆け出した。
「真っ向から来たカ!」
 体一つ分、前に出たユーリが手にした竜槍を前方に構える。このまま進めば、その穂先はサイクロプスの足を捉えるだろう。
 互いに距離を詰める最中であれば、拳が振り下ろされるより先に、一撃を与える事ができるかもしれない。
「だが、甘イッ!」
 ユーリたちの狙いを、見たままそのように捉えたサイクロプスは、しかし恐るべき速度で右拳によるストレートを繰り出した。
 角度は斜め下、足元を狙う一撃。
 筋肉に包まれた肉体に秘められた、馬鹿力的瞬発力が為せる攻撃である。果たして腕先はユーリを捉え、その後ろに続くチコルさえも巻き込む。はずであった。
「考えが甘いのは貴様の方だ!」
 ストレートが放たれる直前、ユーリは手にした槍を地へと突き立てる。
 そこで立ち止まるためではない。そこで跳び立つため。
 ユーリが真っ向から攻めるように見せたのは、隙が生じやすいこの一撃を誘い出すためだったのである。
「チコル!」
 囮としての役目を終え、宙へと跳び、その背の羽を広げ飛び上がるユーリは叫んだ。
 次に名を呼ぶそれに、もう驚きの声色はない。代わりにあるのは、信頼できる友の名を呼ぶ声色である。
「まっかせてー!」
 勢いのついた体が急に立ち止まれないのは、チコルも同じである。
 なのでチコルは、槍を手にした。正確には、ユーリが地に突き立てた槍の柄を。
 そこを軸に進行方向を捻じ曲げる。
 それに遅れて、迷宮の大地に拳が突き立った。
 拳の半ばまでを埋めたソレが、その威力のほどを周囲に知らせる。
「うわわ、あれじゃ、当たったらひとたまりもなさそうだもんね。……んしょっと」
 後ろ目にその様子を確認したチコルは、改めて威力のほどを思い知り、予め決めていた事だが、目にも止まらぬ速さでその衣服を脱ぎ捨てた。
 季節外れの薄手のキャミソールと、ショートパンツといった姿へと。
 そもそも迷宮の中にいて、季節が関係あるものか定かではないが。
「寒くなったらユーリに温めてもらおっかな? ……それじゃ、いっくよー!」
 果たして彼は恥ずかしがるだろうか、それとも真面目に取り合うだろうか。そんなイタズラ心を胸に秘めたままダガーを逆手に構え、身軽になったチコルの身体が加速する。
「むっ、こノッ……!?」
 チコルはそのまま残像を生まんとばかりの速さで、サイクロプス足の間を駆け抜け、斬りつけ。時に変則的な軌道を混ぜ、幾度と斬撃を繰り出していく。
 分厚い筋肉に包まれた足に対して、刃渡りの短いダガーで決定的なダメージを与える事は本来難しい、ただし手数を増やす事で、その難点を補うほどの効果を得られるだろう。
「これで、仕上げっ!」
 そしてチコルは、ようやくと動きに追いつき始めたサイクロプスの一つ目に目掛けて、ダガーを投擲した。
 真っすぐに、自らの視界に向けて放たれる切っ先など、並の精神であれば、目にした瞬間に為す術なく直撃していただろう。
 しかし、強者を望むこの巨体の怪物が、知能に劣るとはいえ並の精神を越える者である事は明白で。
「この、程度ッ」
 サイクロプスは、投擲されたダガーが目玉に当たる寸前その顔を引き、上体を逸らす事で回避する事に成功する。
「ユーリ!」
 そして、上体を逸らし、宙を見上げる形となったサイクロプスは、悟った。
 見上げた先。迷宮の天井に張り付き、音も無くその全身に、練り上げた炎を纏うユーリの姿を目にして。
「囮の、囮だト?!」
 チコルの攻撃もまた、注意を足元に向けさせるための囮であったと。
「そこまで馬鹿ではないらしいな。……いや、戦いに関する事だけは理解できる、という事か?」
 トンと、ユーリの足が天井を蹴り、その身が降下を始める。
「だが、察しの悪いおかげで、炎を練る時間が稼げた」
 途中、チコルの放ったダガーを宙で手に取り、握りしめた。
 全身を炎を纏う姿と化したユーリが手にしても燃えないのは、彼が得たそういう存在として、燃やすものを選べるからだろうか。
「チコルも、ありがとう。……行くぞっ!」
 瞬く間に。ユーリの全身を覆う揺らめく炎が、手にするダガーを核として一振りの炎の槍を生み出す。
「ハァっ!」
 合わせて、炎の槍を握る手とは逆の手から波動を放つ。狙いはサイクロプスの目玉へと。
「ガアア!」
 一方、その狙いを悟り、五感の一つを潰される事だけは避けねばと、サイクロプスは咆えた。咆え、巨木のように太い腕を、ユーリの繰り出した波動の軌道に重ねた。
 その間、数泊。ユーリの波動は着弾と同時に爆炎を生む。
「……っこれは、鎖カ!?」
 爆炎が晴れたあとには、波動によって編まれた鎖が生まれる。ユーリの腕と繋がった炎の鎖が。
「例え腕の一つでも、いただくぞ!」
 その鎖を引き寄せ、降下する身と合わせ零距離へと至るユーリの繰り出す炎の槍が、サイクロプスの腕を貫く。
 突き立つ槍を、いや、ダガーを触媒として、サイクロプスの傷口から炎が噴き上がる。
「グッ……ア゛ア゛アアァァ!!」
 周囲を揺るがすほどの呻きが、迷宮に響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
面白ぇ。敢えてのパワー勝負を受けてたってやるよ!

立場は違うが、お前みたいな奴は嫌いじゃないぜ

◆戦闘
真の姿で【黒竜嵐装】をい、巨大な西洋風の黒いドラゴンとなる。
爪での《2回攻撃》や牙での《生命力吸収》に《怪力》を乗せるのが基本
被弾時は《オーラ防御》

【叩きつける】は、豪腕を振りかぶるようなタイミングで、敵の脚を尾で薙いでバランスを崩す。

◆行動
半ばノリで近接戦を挑んだが、流石に純粋なパワー勝負は不利だな
近距離戦の流れの中で敵の挙動を読んで、耐えられそうな攻撃が来るタイミングで《全力魔法》《衝撃波》《属性攻撃》による、赤い雷のドラゴンブレスを近距離から撃ち込むぜ。
この時は《捨て身の一撃》覚悟だ。


空廼・柩
まあ、やばいのが来ると想像はしていたけれど
実際に見ると更にやばいというか
…無傷に越した事はないけれど骨の一本二本いくは覚悟しておこう
それで休暇届けなんて貰えたら最高だけれど

真の姿の解放、【霄化】で己の肉体を強化
膨れ上がる身、巨大で歪な狼男へ変身
灰の毛皮を飲み込む様な空の色――かつて焦がれたUDCの彩
身を削られ、正気を削られる最終手段
全てを誤魔化す様に咆哮をあげ、敵と対峙
…割とこれきついんだから
早く終わらせてしまおう
…あんたも力任せの戦いが好きだろう?

敵は力の限り殴り、切り裂き、力任せに引き千切る
重い一撃を放つ動きを察知したら回避を試みる
その侭振り下ろされた拳に乗り、腕を走り首や目等を狙いにいく



●あり得ない力
 サイクロプスの呻きは、迷宮を震わせ、同時に猟兵たちの闘争心をも震わせた。
 恐怖や慢心に満ちたものではない。痛みによる叫びでありながらもどこか、歓喜を含んでいたからだろうか。
「さすが、あの壁を越えた者たちダっ!」
 未だ火の粉を散らしながらも、その巨体の動きは、力と鋭さを増したように。
 猟兵たちを目にすれば、拳を振るい、物理的破壊力を秘めた咆哮を放つ。
 まさに愚行ともいえる強行が繰り広げられていた。
「いや、ヤバいとは思ってたけどさ。手がつけられないよ、さすがにこれじゃあ」
 吐き散らかされる暴力の台風に、思わずと空廼・柩(からのひつぎ・f00796)の悲痛な声が挙がる。跳躍する柩が立っていたその場所が、咆哮による衝撃で瓦礫と化した。
「俺は嫌いじゃないぜ。相手が強いほど、血が滾る。どの世界であってもそれが通じるヤツがいるってのはな」
 柩が背負う棺の向こうで、同じようにサイクロプスの放つ一撃を避けながら口にする、ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)の声にもまた、歓喜に近い感情が込められていた。
「その姿らしくない言葉だね。偏見かもしれないけどさ。っ!」
 ガリ、と棺が擦れる音を立て、また柩は跳躍する。その一瞬後には、サイクロプスの拳が突き立つ。
「ああ、偏見だ。偏見だが、真っ当な言葉だなっ!」
 巨木の幹のようなサイクロプスの蹴りを、手にする魔剣で受け流し、ガルディエもまた距離をとる。
 地に足をつければ、ガシャリとその身に纏う漆黒の甲冑が音を立てた。
 騎士。ガルディエのその姿だけを見れば、誰もがそう口にするであろう。事実それは、指摘した柩も例外ではなかった。ただ。
「ただ、これ以上、防戦一方ってのも癪に障るな。お前もそう思うだろ」
 ガルディエの言葉遣いや、その態度は、騎士というにはらしくない。やや荒っぽいものだった。ある意味では、柩がらしくないと口にしたのも納得のできる事ではある。
 その指摘した当人はと言えば。
「……そうだね。真っ当にやってたんじゃ、よほど強い一撃を入れるか。よほど息の合った事でもしないと、反撃も難しいと思ってたよ」
 そんな風に口にして、騎士らしくない騎士の言葉に頷いてみせた。
 息の合った。先ほどに、サイクロプスに大きな傷を与えた二人の猟兵たちの事を指しているのだろうとは、ガルディエも容易に想像できた。
 もちろん、防戦一方と言えど、全く攻撃を与えていないわけではない。ただ、決定打に至っていないだけである。
「それで、縁のゆかりもない俺たちに残ってるのは、よほど強い一撃の方だって事か」
 自然と、それが必然であるかのように並び立つ二人は、互いを知らないはずでありながらも、どこか息の合ったように。それは偶然、二人が同じ事を考えていたからだろうか。
「そういう事。……俺は、これやると、きついんだけどね」
 そう言って、柩は掛けていた眼鏡を白衣の内に仕舞う。途端、その白衣の下から青白い靄のようなものが立ち上っていく。
「むっ、させんゾ!」
 その瞬間、怪しい気配を感じたのか。並び立つ二人に向けて、サイクロプスは拳を放った。
 大きな事前動作を必要としない。それでいながらも、最適な間合いを間違えなければ、瞬間的に最大の威力を生み出す事の出来る、シンプルなストレート。
 威力に応じて、その速度も並ではない。並ではないが、避ける事ができないほどではない、そんな一撃を。
「……勝っタ!」
 二人は避けれなかった。迷宮の床や壁とは違う手応えに、サイクロプスは拳の直撃を確信し、ぎょろりとした一つ目に勝利の色を灯す。その時。
「……だったら、一瞬だ。一瞬でケリ着けてやる」
 サイクロプスの拳が揺れた。突き出した姿勢のまま、その拳の捉えた先が動いたのである。すなわち、二人が。
 アオオオォォ!!
 ガルディエの掠れ、消えていくような声と入れ替わりに、狼の遠吠えが迷宮に染み込んでいく。
 先ほどまでいたコボルトのものではない。遠く、広く澄み渡っていくような。それでいて威圧的な響きを載せた。遠吠えであるのに静かさを秘めたものだった。
「ナッ?!」
 そして、遠吠えに気を取られた一瞬の合間に、サイクロプスの腕は高く、上方に向けてへ弾き飛ばされた。
 肩関節を支点に弧を描く軌道のその始点。二人の猟兵が並んでいたはずのソコでは、二匹の異形が獰猛な視線をギラつかせ、サイクロプスを睨みつけていた。
 拳を振り上げた姿勢でいるのは、一匹の人狼。その毛皮は、元となる人物のような灰色を、まるで空のように青白く澄んだ色で塗り合わせたような独特の彩を持った異形である。僅かにだが両腕に傷が刻まれているのは、彼がサイクロプスの一撃を受け止めていたからだろうか。
 そしてもう一匹、それまで騎士が佇んでいたソコには、彼が身に纏っていた鎧と同じ、漆黒の鱗を持つ竜が一匹。その身は既に鎧で纏えるものでなく、代わりに黒色の嵐と赤雷を纏っていた。
 その口から漏れ出る赤光もまた、身に纏う赤雷と同じものであるのだろう。いや、もしくはそれ以上の密度と威力を持つものだろう。
「まさカっ!?」
 その赤光の意味を悟ったサイクロプスは、腕ごと逸らされた上体を急いで戻そうと、自身の身を防御に移そうとする。
 だが、遅い。
『真っ向勝負だ。俺の全力をぶつけてやるぜッ!!』
 人の声帯でなくなったガルディエは、そんな言葉を発したような思念を放ち。同時に、己の口から巨大な赤光を、赤雷を併せ持つブレスを放った。
「ぉ、ォォおオオ?!!」
 雷と同じ速度で迫るソレを躱す事も防ぐこともできず。胴体のど真ん中に、それは穿つような勢いをもって、直撃した。
 勢いに押し負けたサイクロプスの巨体が、ズリズリと徐々に後ろへと押されていく。
 それがどれほど続いただろうか。
 一時的に光を灯したように迷宮を照らしていたブレスは、時間にすれば、10秒やそこらの放出だったのかもしれない。
 体感的にはそれよりも長い間、ダメージを伴ったサイクロプスの巨体は。
「……た、耐えたゾッ」
 それでもなお、その体を沈める事はなかった。
 震えながらも、片膝をつく体をダメージの少ない左腕で支え、しかし勝ち誇った声を挙げるサイクロプスの信念は、その身のタフさに並ぶものであったと言えるだろう。
 しかし、それが最後の言葉となった。
 オオォォォン!!
 狼の遠吠え。当然、この迷宮に人狼はあり得ても、狼がいる事はまずない。
「ッッ!!?」
 サイクロプスの胸の中心、そこに強い衝撃が走る。
 言葉すら発せないまま、サイクロプスの目玉は、そこに叩き込まれた空色の人狼の鋭い爪をもつ拳を見た。
 そのまま二度目の衝撃。
 驚愕に見開かれた目が、焦点を失う。
 あり得なイ。そうとでも言おうとしたのか、サイクロプスの口はかすかに、パクパクと動いて。
 アオォォォォ!!
 それが最後であった。
 迷宮の中にあり得ない色を持つ異形は、その爪を、牙を、容赦なく。既に力を失い、地に伏せたサイクロプスの身体を抉り、潰し、叩きのめしていく。
 戦いの決着とは、どちらか一方の死をもって知らさせるものである。
 それはサイクロプスが健在であれば、口にしていただろう。だが、決着がついてもなお、振るわれていく爪や牙は、果たして柩の望んでいたものであったか。
 彼が真の姿と化す間際、きついと言った意味を知らしめるように。
 もう何度目となるかわからない遠吠えが、迷宮における力を示す戦いの幕引きを報せるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月10日


挿絵イラスト