11
空色葡萄と偽りの聖女

#ダークセイヴァー #人類砦 #闇の救済者

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#人類砦
🔒
#闇の救済者


0




「ここも直に敵が攻め込んで来るでしょう。サリーナ様も教会までお下がりください!」
 武装した青年の声に、サリーナと呼ばれたオラトリオの女性は首を横に振った。
「いいえ、ここで食い止めなければ全滅必至でしょう……私も戦います」
 そう告げると、手当てしていた怪我人を近くの修道女に任せて青年の隣に並んだ。
「た、戦うってそんな……貴女を失うわけには……!」
 青年は慌てて止めようとするも、彼女は頑なに『戦います』と言った。

 サリーナはこの街の人々から『聖女様』と慕われている。
 現在は人類砦としてそれなりの大きさがある街だが、半年ほど前に疫病が流行り、滅亡寸前まで追い込まれた。
 それを救ったのがサリーナだ。
 彼女の神秘の力は疫病を退け、病に冒された者を救い、人々に希望を与えた。
 そんな希望の象徴である彼女には戦ってほしくない……街の誰もがそう思うのも頷ける話だった。

 しかし今回攻め込んで来た敵は、手も足も出ないような強敵だ。
 青年の脳裏に『全滅』の二文字が浮かび、慌てて首を左右に振った。
(ここはサリーナ様の力に頼る他ないのか……)
 あれこれ考える青年の視界に、風になびくサリーナの髪が映った。
 金色から水色へと変化する美しいグラデーション。それはこの人類砦のフラッグに描かれた『空色葡萄』と同じカラーリングだ。
 痩せた大地にしっかり根を張り、僅かな水でも大きく育つ空色葡萄は、この街になくてはならない存在だった。
(金の蔦に水色の実をつけるこの葡萄の、一体どこが『空色』なのか……)
 青年はため息と共に空を見上げた。
 普段通りに厚い雲の広がった空は、サリーナの毛先の色とも、空色葡萄の実の色とも、似ても似つかない鈍色だった。

 青年はサリーナの説得を諦めて、街の中央にそびえる『巨人の時計』を見やった。
 そこが現在の防衛ラインだ――突破されるのは時間の問題だろうが。
「……シロンの部隊は既に全滅しました。サイオンとヨールカの部隊が巨人の時計の下で敵を迎え撃つので、俺も残りの部下を連れて向かいます」
 青年の言葉にサリーナは首を横に振る。
「いいえ、巨人の時計へは向かいません。私とナギの部隊は、地下道を潜って敵の背後から攻めましょう」
 サリーナの提案に、青年――ナギは眉根を寄せた。
「確かに地下道を使えば可能ですが……間に合うでしょうか?」
「大丈夫ですよ、私が間に合わせますから」
 ふんわりと微笑む聖女に、ナギは思わずつられて笑った。
「……わかりました。ではサリーナ様の指示で俺らは動きます」
 ナギは周りの部下を従え、聖女に続く。
 聖堂から伸びる地下道の先にある『希望』を掴み取るために――。


「やあ、よく来てくれたね」
 グリモアベースの一角、いつものカウンターの前で。
 黒月は猟兵たちに笑顔を向ける。
「ダークセイヴァーからの依頼だ。今回は人類砦の守護に向かって貰いたい」
 そう告げると、背後のパネルに都市の姿が映し出された。
「ここがその砦、名を『ブルーヴァ』と言う」
 ブルーヴァは人口5000人を有する城塞都市だと黒月は説明した。
 都市の中央には『巨人の時計』と呼ばれる巨大な時計塔がそびえ、毎日12回鐘の音を響かせていると言う。
「巨人の時計から西側は様々な施設があるが、東側は農地が広がっているらしい。農地では特産品でもある『空色葡萄』を栽培しているみたいだね」
 水色の実を付けるこの葡萄が『空色』と呼ばれるのは、昔この土地を統治していたヴァンパイアが見つけた古文書に『空は青い』と記されていたかららしいと、黒月は説明した。
 闇に覆われたダークセイヴァーに於いて、理解の得られない名前だろうにと付け加え、悲しげに微笑む。
「……ごめん、説明の途中だったね。ブルーヴァは人類砦としては古い方だ。過去に大きな疫病を経験している街だが、『聖女』と呼ばれる人の活躍で乗り越えたらしい。その人、猟兵ではないみたいだけど」
 黒月は首を傾げて何事か考える素振りをしたが、首を左右に振って説明を続けた。
「予知夢では、大量のオブリビオンがブルーヴァに押し寄せ、都市の人々や聖女の抵抗も虚しく、あっと言う間に滅んでしまった」
 オブリビオンが人類砦を襲う事件は多発しているが、今回の事件では『戦車』のオブリビオンが軍勢を率いて襲撃すると予知している。
 戦車と言っても機械仕掛けではなく、ゾンビホースが牽引する奈落の怪物だ。
「過去にヴァンパイアと戦うために編成された戦車部隊のようだけど……こうやってオブリビオンとなって人々を襲うだなんて、やり切れないだろうね」
 彼らの戦争は、未だ終わっていない。すべてを轢き殺すまで進むのだ。
 黒月は目を伏せた。
「まずは戦車部隊を殲滅し、街の安全を確保してくれ」
 わだかまりのようなものを感じながら、黒月はそう告げて。
 猟兵たちを転送すべく、グリモアを手にした。
「何だか嫌な予感がしているんだ……くれぐれも気をつけて。じゃあ転送しちゃうぞー。健闘を祈る!」
 グリモアは輝き、猟兵たちは光に包まれた。


霧雨りあ
 ダークセイヴァーからこんばんは、霧雨です。
 葡萄が美味しい季節ですね。

 さて、今回は再び地上へ出まして、人類砦を救って頂きます。

●第一章
 戦車部隊との集団戦となります。
 サリーナとナギの部隊に合流したところからスタートしますが、共闘は強制ではありません。
 ただし共闘した場合『サリーナの加護』を得られるため、必ず奇襲に成功します。ぜひご活用ください。

●第二章
 ボス戦となりますが、詳細は断章にて追記いたします。

●第三章
 平和が訪れたブルーヴァの街で、葡萄収穫祭が催されます。
 秋のひとときをお楽しみください。
 空色葡萄はここだけのレア品なので、是非ご堪能くださいね。

 今回も全章に断章を挟みます。
 プレイング受付はその後となりますので、ご注意くださいませ。

 それでは、みなさまの冒険が良きものとなりますように。
44




第1章 集団戦 『死地を駆け抜けるチャリオット』

POW   :    駆け抜け、弾き、轢き倒す戦車
単純で重い【チャリオットによる突撃】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    馭者による巧みな鞭
【絡めとる鞭】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    全力による特攻
自身が操縦する【ゾンビホース2頭】の【身体を鞭で強く打ちスピード】と【突撃による破壊力】を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが転送されたのは、ブルーヴァの城門を潜った先の噴水広場だった。
 既に火の手は上がっている。
 どうやら戦車部隊は、猟兵たちよりも早く辿り着いてしまったようだ。

「貴方たちは……?」
 突然掛けられた声に猟兵たちが振り向けば、美しいオラトリオの女性と武装した十数名の街人が、噴水の影から姿を現した。
「新たな敵か……?」
 武装した一人が猟兵に銃を向ける。
「待って、ナギ。この方たちは……もしかして『猟兵』ではないでしょうか?」
 オラトリオの女性がそう尋ねれば、猟兵のひとりがそうだと応え、助けに来た旨を伝えた。
「ああ、はやりそうなのですね! ありがとうございます、何とお礼を言って良いか……」
 彼女は『サリーナ』と名乗り、これから都市の中央へ向かう戦車に奇襲をかけることを説明した。
「私の祈りで、皆さんの気配を消すことが出来ます。宜しければ、共闘いたしましょう」
 グリモアベースで聞いた『聖女』とは、どうやら彼女のことのようだ。
 一般人のはずの彼女、一体その力をどこで手に入れたのか――。
 謎は多いが、今は街を破壊する戦車を止めることが先決だ。

 猟兵はサリーナたちと共に、中央にそびえる『巨人の時計』を目指した。

 ---

●補足
 マスコメにも記載しましたが、共闘は必須ではありません。
 下記の通り、共闘か単独戦闘かによって戦場が変わります。

『共闘』……中央広場で奇襲をかけます。
 サリーナの加護で必ず奇襲となるので、初手は反撃を気にせず攻撃することが出来ます。
『単独戦闘』……街の至るところに戦車がいるため、それを倒しに行って頂きます。
 建物が乱立する、比較的狭い場所での戦闘になります。

 この戦いが終わった後、街の人々はここで再び生活することになります。
 建物を極力壊さない工夫があれば、プレイングボーナスとなります。
リーヴァルディ・カーライル
…手助けは不要。ご覧の通り、気配なら自力で消せるもの

…それに、杞憂なら良いのだけど、彼女の力は…

事前にUCを発動して"飛翔、怪力、御使い、地縛鎖、
韋駄天、暗殺、破魔、闇夜、迷彩"の呪詛を付与

…バラバラに動いているのなら好都合
被害を抑える為にも一騎ずつ、確実に仕留めていくわ

残像のように●存在感を消す●迷彩の●オーラで防御して、
建物から建物へ飛び移る●地形の利用法で●空中戦を行い、
●闇に紛れた早業の●ダッシュで戦車を●追跡し頭上から切り込み、
●破魔の魔力を溜めた大鎌を●怪力任せになぎ払い●暗殺して回る

…吸血鬼と闘う為に得た力をこんな事に使うのは、
貴方達とて本意ではないはずよ。眠りなさい、安らかに…



 暗い路地を、銀の髪の少女が駆けていく。
 宵闇色の礼装と、禍々しい鎌を手にしたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、敵の気配を感じる方角へ、影から影へと移動していた。
 聖女の力がなくとも、闇に紛れた彼女の気配は皆無。こうして、単独で戦車の駆逐を遂行している。
(……杞憂なら良いのだけど、彼女の力は……)
 先程目にした聖女は、不思議な雰囲気を纏う女性だった。
 不穏な考えが脳裏に浮かんだが、すぐに意識を外へ向ける。今は街を蹂躙するオブリビオンを殲滅させなければならない。

 近くに敵の気配を感じ、足を止めた。ガラガラという音が、徐々にこちらへ近づいて来る。
 ――音から察するに、単騎だ。
 音を立てずに跳躍したリーヴァルディは、近くの建物の屋上に着地した。
 狭い通路で迎え撃つ必要はない。こうして死角から暗殺すれば、被害は最小限に抑えられる。
 視野に戦車を収め、リーヴァルディの目が細められた。
 二頭のゾンビホースに引かれる荷台に乗った御者は、白いローブを纏った亡霊だ。
 自身が立つ建物の前を通り過ぎる瞬間、リーヴァルディは飛び降りた。
 宙で大鎌を薙ぎ払い、着地する前に御者を屠る。
 大鎌から発せられた衝撃波は、ついでと言わんばかりにゾンビホース二頭の首元を通過し絶命させると、胴体だけとなった二頭は数メートル進んだ場所で横転した。
 僅か数秒で片付けたリーヴァルディ。しかし着地すると同時に、くるりと身を翻して来た道を猛然とダッシュする。
 別のチャリオットが現れたのだ。
 まだこちらに気付いていない敵へ、残像を残して肉薄する。
 間近で見る御者の顔は、何もない空間に真紅の瞳が浮かんでいるのみだった。その真紅には、何の感情も見られない――否、僅かばかりに残る憎悪や無念の想いを感じ取り、リーヴァルディは目を伏せた。
 そのまま何の躊躇もなく大鎌を振り下ろせば、グリムリーパーの名を冠したそれが彼らの想念を喰らい尽くす。
 チャリオットは、先に倒した一騎へ突っ込み大破した。
 死骸となった御者とゾンビホースは灰となって宙に舞い上がり、残された荷台の木片と鉄の車輪だけがその場に転がっていた。

「……吸血鬼と闘う為に得た力をこんな事に使うのは、貴方達とて本意ではないはずよ。眠りなさい、安らかに……」

 静かに告げた彼女の言葉が弔いの歌となって、空へ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
じゃ!私は単独行動をやらせてもらうわね!(猟兵同士の行動は大歓迎)
なんかサリーナは謎が多いもの!なんかそれっぽいのトップにいr(謎の騒音でうまく聴こえない)

町の屋根の上から走ってる戦車に向かってUCで狙撃よ!
馬の足か車輪を狙って動きが止まれば、そのまま【属性攻撃】で燃やす作業に入るわね!
何匹か倒した時に戦車が建物に突っ込んだりしたら私は落ちるかもしれないから
うっかり落下したら戦車になんやかんやで乗り移ってひーひー言いながら
従者を蹴落として爆走するとするわ!敵戦車に向かって!!運転なんて当然できないんだけど!!気合があればなんとかなるわあああ!!

(アレンジアドリブ連携大歓迎!)



「じゃ! 私はあっちで戦ってくるから!」
 サリーナが祝福を与えようと手をかざした瞬間、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は全力でダッシュ(手はパーの構え)で走り去った。
 商店街の細道を走りながら、むむむと唸る。
「んー、何か謎が多いのよね! でもやっぱり決め手はトップにそれっぽ――」
 ドドドドドガラガラガラ……。
 何か言い掛けたフィーナの声を遮るように、道端に置かれた様々な道具がチャリオットに蹴散らされた。
 騒音は建物に挟まれたせまい通路で反響し、ぐわんぐわんと耳を打つ。
「あーもー、うるさいわね!」
 フィーナはそう叫びながら、杖に跨り宙を舞う。
 手近な建物の上に着地して杖を握り直せば、そこから薄い炎の刃が伸び、鎌の形状となった。
 それを横に薙ぐことで炎の刃は撃ち出され、通り過ぎようとしていたチャリオットを真っ二つに切り裂く。更に別の方角から現れたチャリオットが、スライスされたチャリオットに衝突し、二騎は凄まじい轟音と共に燃え上がった。
「やったわ! さすが私、タイミングばっちりじゃない!」
 ふふんと誇らしげな笑みを浮かべるフィーナ。
 続いて奥からやって来るチャリオット目掛け、次撃を放とうと……。

 ――ズズン。

 突如足元が揺れた。
 慌てて辺りを見渡せば、裏手でチャリオット同士がぶつかり、片方が建物に突っ込んだところだった。
「ちょ、ちょっと……」
 フィーナが体勢を崩したところへ、入れ替わりに別のチャリオットが突撃し、再度激しく揺れる建物。直後、フィーナの足元が崩れ去った。
「っんきゃー!!」
 瓦礫と共に落下し、なんかいろいろ覚悟したのだが。
「……あら?」
 フィーナが落ちた先は、何と巨大なマグロの上だった。
 どうやらこの建物は魚屋のようだ。
 おかげで怪我はない。でも、なまぐさい。
 体を起こすと、頭の上にはイワシが乗っていた。
「……」
 怒りに震える魔女は、ゆらりと立ち上がって外へ出る。
 もうもうと土埃が上がる中に、大破したチャリオットが一騎が見えた。
 残りの二騎はまるでフィーナを待っていたかのように、こちらを向いて待機している。
 カッと目を見開きフィーナは走った(イワシは足元に落ちた)。
 そのままチャリオットに飛び乗ると、御者を蹴落として手綱を取る。
 ……フィーナさん、馬車なんて運転できましたっけ?

「気合があればなんとかなるわああああ!!!!」

 轟く魔女の咆哮。
 御者フィーナが鞭を打てば、ゾンビホースはまるで怯えたかのように走り出し……いや、これはもう暴走だ。

「いけぇぇぇえええ!!!」

 凄まじい勢いで正面のチャリオットに突撃し大破させ、そのまま中央通りへ向かって爆走して行く。

 その後、街中で暴走する魔女の姿は、至るところで発見報告が上がったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

人類砦、時計塔、疫病に、そして聖女様。
思うところはありますが、今は目の前の脅威を片付けに参りましょう。

動いている戦車は手強いですが、止まった敵は的同然。
この城塞都市の狭い環境を利用し、単独での戦車撃破に向かいます。
壁か地面から分厚い氷柱を生やし、または路面を凍らし、一時でも戦車が止まらざるを得ない状況を作っておきます。
何箇所か作成した後は建物上や物陰に潜んで戦車が来るのを待ちましょう。
来ないのであれば仕方がありません。私を囮にし、指定の箇所まで誘い出します。
思惑通りにいけば『属性攻撃』ホワイトブレスや手にした武器で討ち取れるはずです。
操縦士を、車輪を、馬を凍らせ、被害を最小限に。



 比較的低い建物がひしめき合う居住区。
 その狭い道にも、チャリオットたちは侵入していた。
 すべての者を轢き殺さんがために、残っている人間を探す御者の紅い目が光る。
 手綱を操って狭い通路を猛スピードで走り――異変に気付いて手綱を大きく引いた。
 二頭のゾンビホースが嘶き、車輪が激しく軋む音を立てて止まる。
『……?』
 辺りに白く霧が掛かり、視界が徐々に悪くなっていく。
 御者が見つめる先にあるものは、建物の側面に生えた氷柱。
 何故そんなものがそこにあるのかと――しかし、彼に考える時間は与えられなかった。背後に気配を感じた瞬間、思考が停止したからだ。
 小さな呼気に合わせて突き出されたレイピア。
 それは彼の心臓を貫き、瞬時に凍りつかせた。
 後方から伸びた逆の手は、手綱を通して冷気を奔らせると、荷台を引くゾンビホースを凍らせた。
 これで制御を失ったゾンビホースが、周りの家々に突っ込むことはない。
 氷の造形と化したチャリオットから地上へ降り立ったのは、紺桔梗の髪の美しい猟兵、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)だった。

 遠くから車輪の音が聞こえる。
「まだ残っていましたか」
 既に十数体倒した後だというのに。
 アリウムは凍りついたチャリオットに衝撃波を叩き込んで粉々に砕くと、近くの建物の影に潜んで戦車の到着を待つ。
 今の音を聞きつけたのか、チャリオットは凄まじい勢いでやって来た。
 アリウムが影からそっと冷気を吹き掛けてやれば、興奮気味のゾンビホースたちが驚いて暴れ、荷台を思い切り引っ張った。
 荷台の上の御者は振り落とされ、制御する者のいなくなったゾンビホースは高らかに嘶いて走り出す。
「させません」
 アリウムは静かに告げると、練り上げた魔力を解放した。
 魔力は極低温魔力の波涛となって、チャリオットを飲み込み、凍らせ、粉砕する。
 ――あとに残ったのは、きらきらと舞う氷の粒子のみ。

 静寂の訪れた居住区から、アリウムは中央広場の方角を見やった。
 人類砦に時計塔、疫病を退けた聖女――。
 様々な疑念を胸に、彼も中央広場へ向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・リデル
『共闘』
……ああ、貴女が聖女ですか。
ええ、この街を滅ぼそうとするオブリビオンを倒しに参りました。
まずは戦車の群れを滅ぼしましょう。
気配を消す祈り、お願いしますね。

気配を消してもらった後、飛翔。(空中浮遊×念動力)
中央広場の上空から『破剣乱舞』にて戦車の群れのみに滅びを齎していきます。(周囲をよく観察して建物、施設に損害を与えそうなモノを優先的に狙います)

アドリブ歓迎です。


メフィス・フェイスレス
何処でも神や聖者は祭り上げられるものか
縋るものがなければ前を向くのも難しい世界だしね
私の故郷もそうだったから悪いとは言えないけど…

UCを発動 最大人数を展開
デメリットは三章を楽しみに耐える

報酬は弾んで貰うわよ
ここの砦 良いモノ作ってるらしいじゃない(涎)

両部隊に同行して共闘する班と砦全体に散って哨戒する班に別れ
各々の状況を五感共有で随時伝達し連携を強化

戦闘では闇に紛れて偵察に出て
本隊の分身が本隊に敵の侵攻ルートなどの情報を伝達
敵の進路に「微塵」を設置し分身部隊を囮に起爆

確かに戦車は強力だけど足下がお留守なのよね
そして横転してしまえば後続の進行の邪魔になる
――今よ!

敵の混乱に乗じ味方と強襲する


サンディ・ノックス
…話が早すぎる
でも罠でもいいや
中に入って【情報収集】をしたほうがいいと判断
共闘の話に乗る

気配を消してもらうときサリーナにおかしなところがないか観察
視覚情報と、魔力の種類は悪(邪悪な思念や呪詛)しか区別がつかないけれど力の発生源くらいはわかるかな
「こんなことができるなんてすごいね」
と【コミュ力】を活かして褒めながら、疑念を持っていることは【演技】で隠し通す

奇襲は【怪力】を込めて攻撃力を重視したUC解放・宵を騎手に叩き込む
以降はUCを馬に放って機動力を奪い、できるだけ動き回らせない
馬を滅ぼすのが間に合わないなら暗夜の剣を鎖鎌に変形させ脚に向かって【投擲】、転ばせてチャリオットの突撃は何が何でも阻止


ロラン・ヒュッテンブレナー
【共闘・アドリブ連携歓迎】
人間形態で参加
耳や尻尾に感情がよく表れる
【WIZ】

砦を守るんでしょ?
ぼくが、魔術でお手伝いするの
作戦があるから、聞いてほしいの

サリーナさんから加護を受けたら、UCを発動
変身して【残像】が残るくらいの【ダッシュ】で相手の本体に遠吠えの音撃を【全力魔法】なの

奇襲したら目立つ高い場所に登っておびき寄せの遠吠えなの
音とにおい【聞き耳】と【暗視】で寄ってくる相手の戦力を【情報収集】なの
十分引き付けたら、サリーナさんたちに攻撃の合図なの

サリーナさんたちと一緒に、チャリオットに音撃の人狼魔術を撃ち込んでいくよ

これで、一段落、かな?
でも、なにかありそうなの…【第六感】


アンナ・フランツウェイ
確かにサリーナは怪しいけど、この状況下で役に立つのも事実。なら協力するのが最善手かな。…同じオラトリオなんだからと私の内にいる呪詛天使もうるさいし。

とりあえずサリーナの加護を受けたら、広場の中央付近の空中に潜伏。自分の姿は黒い服を上手く使って目立たない様にしよう。

戦車が集まって来たら【断罪式・鮮血蔦】で血液の剣を大量に複製し、戦車へと降らせる。血液の剣で倒しきれれば上々、仕留めきれなくても私の血液に混じる【呪詛】が蝕むし、外れた剣からも【呪詛】を放てば自滅も期待できるはず。

(サリーナからなんで敵意を向けてくると聞かれたら)
「いや、敵意じゃない。ただ聖女として生きられるアンタが羨ましいだけ」



 時は猟兵たちがブルーヴァに到着したところまで遡る。

「待って、ナギ。この方たちは……もしかして『猟兵』ではないでしょうか?」
 オラトリオの問いかけに、ステラ・リデル(ウルブス・ノウムの管理者・f13273)は答えた。
「ええ、この街を滅ぼそうとするオブリビオンを倒しに参りました」
 ステラの言葉に、女性は涙を浮かべ頭を垂れる。
「ああ、やはりそうなのですね! ありがとうございます、何とお礼を言って良いか……。申し遅れました、私はサリーナと申します」
 極上の笑みで名乗るサリーナ。
「……ああ、貴女が聖女ですか」
 ステラが納得顔で言えば、サリーナは苦笑する。
「ええ……そう呼ばれることもあります」
「サリーナ様」
 先程ナギと呼ばれた青年の声に、サリーナは笑みを消して頷いた。
「現在、中央広場で仲間たちが最後の抵抗をしています。中央広場が突破されれば、街の住人が避難する大聖堂と教会が襲われてしまうのです」
 サリーナは猟兵たちを見渡して説明を続ける。
「そこで、私たちは背後から奇襲をかけます。私の祈りは気配を消す力があります。多少音を立てても、敵に気付かれず近付けるでしょう」
 サリーナの言葉に、数名の猟兵が一瞬怪訝な表情を浮かべた。
 気配を消す祈り……?
(……話が早すぎる)
 猟兵たちの最後列で聞いていたサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)が心の中で呟く。
 猟兵を知っている者だとしても、こうもすんなり受け入れられるだろうか。
 しかも、緊迫したこの状況で。
 サリーナと同じオラトリオであるアンナ・フランツウェイ(怪物である事を受け入れた天使・f03717)も、その可愛らしい表情の下でサリーナに疑いの眼差しを向けていた。
(確かにサリーナは怪しいけど、この状況下で役に立つのも事実。なら協力するのが最善手かな)
 彼女の中の呪詛天使は、同じオラトリオだからと訴え騒いでいる。
 煩いなぁと思いながらも、協力してチャリオットを殲滅させることにアンナも賛同したのだった。
「――そうですね、まずは戦車の群れを滅ぼしましょう。気配を消す祈り、お願いしますね」
 微笑んで告げるステラの言葉に、猟兵たちはサリーナを見つめた。
 彼女は頷くと、両手を広げた。
 瞳が赤紫の不思議な輝きを灯せば、七色の光が彼女から放たれ、ここにいる者に等しく降り注いだ。
 サリーナの胸元の大きな宝石が、その光を受けてきらきらと輝く――よく見なければわからないが、その宝石はドレスの飾りではないようだった。
 肌に付けるブローチなのか、それとも……。
(うーん、力の発生源はやはりあの宝石? でも今の力は彼女自身から発せられてるし……少なくとも邪悪な魔力ではないかな)
 注意深く観察していたサンディが、人懐こい笑みを浮かべてサリーナに話しかけた。
「こんなことができるなんてすごいね」
「いえ、こんなことしか出来ないのです。戦闘では私は何も出来ません。あなた方や、ナギの部隊に任せる他ないのです……」
 サリーナが申し訳なさそうに言うと、サンディはにこりと微笑んだ。
「大丈夫、任せて!」
「……任せて貰って良いけど、報酬は弾んで貰うわよ? ここの砦、良いモノ作ってるらしいじゃない」
 サンディの言葉に続いて、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)がそう言った。
「良いモノ……ああ、空色葡萄か」
 サリーナの隣に立つナギが、笑って答えた。
「本来なら今日が収穫祭だからな、この騒動が無事に落ち着いたら、うまい料理を振る舞えるさ」
 空色葡萄を使った料理。一体どんな美味しさなのかと想像し、涎を垂らしかけてハッと正気に返るメフィス。
 その美味しい料理のためならば、彼女は激しい空腹にも耐えられるのだ。


 猟兵たちとサリーナ率いるナギの部隊は、中央広場へと移動を始めた。
 メフィスは移動しながらも、何か別のことを気にしているようだった。
「どうかしましたか?」
 ステラが気付いて話し掛ければ、曖昧に返事をかえす。
「んー、腹減ったわね」
「ふふ、終わったら美味しいものが食べられますね」
 ステラは何か察したのか、それ以上なにも言わず先頭集団へと向かった。
 実はメフィス、分身たちを街のあちこちへ向かわせているのだ。
 哨戒班として動く分身と五感を共有しているため、送られて来る情報がなかなかに多い。
(……居住区は制圧完了済み。ここは商店街かしらね……なんだか猟兵が暴れてるけど敵はなし)
 どうやら中央広場以外は制圧が終わっているようだ。
 杞憂だったかしらと分身たちを戻そうとした時、思わぬ場所にチャリオットの集団を発見した。
(あーあ、余計にお腹が空くじゃない)
 メフィスは分身たちを二分割すると、半分をこちらに向かわせ、半分を残党処理に向かわせた。

 中央広場の手前で、先頭を行くサリーナの隣にトコトコとやって来たのはロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)だった。
 サリーナの服をちょいちょいと引っ張る。
 耳と尻尾は少々下がり気味だ。
「……あのね、作戦があるから、聞いてほしいの」
「あら、こんな小さな猟兵もいるのですね……どうしたの? どんな作戦?」
 サリーナが身を屈めて尋ねれば、少し緊張気味にロランは話した。
「えっとね……」
 彼の作戦は、猟兵やナギの部隊にも伝えられた。
 その時が来るまで、ロランはサリーナと共に見守ることとなる。


 中央広場には、既に百近いチャリオットが集っていた。
 幸いまだ攻撃は始まっていないようだ。
 猟兵たちが広場へ飛び込んでも、全く気付いた様子はない。

 ステラは上空へ飛翔し、周りを観察した。
『巨人の時計』の裏手に武装した人々が見える。あれがサリーナの言っていた『仲間』なのだろう。
 広場の中には何もないが、外周は大小様々な建物で囲まれていた。
 その建物付近に群れるチャリオットに、ステラは狙いを定める。
 街の建造物を破壊されるわけにはいかないからだ。
 一秒に満たない速度で移動すると、静かな声音で告げた。
「終末に降り注ぐ、第二の騎士の刃、その身で受けなさい」
 展開されるユーベルコード。出現するは、八百を超える剣。
 切っ先は、眼下のチャリオットたちに狙いを定めている。
 それは物理の刃ではない。触れた者を消滅させる魔力の刃だ。
 ステラの呼気に合わせ、剣は降り注いだ。
 チャリオットたちは、自身に何が起きたか知る由もなく骸の海へと還っていった。
 消滅を見届けたステラは、次の敵を目指し飛翔した。

 サンディは広場の入り口から真っ直ぐに走った。
 敵に真っ向からから突っ込むつもりだ。
 それでも敵が彼に気付く様子はなかった。サリーナの『祈り』は気配を消すというレベルではなく、姿すら見えないようになっているのかも知れない。
 サンディの柔らかな表情が消え、入れ替わるかのように獰猛な――誰もが別人ではないかと思う程の表情が現れる。
 腰から引き抜いた黒剣は、今のサンディにはとても良く似合っていた。
「さぁ、宴の時間だよ」
 地を蹴って手近なチャリオットに肉薄し、力任せの一撃を御者へと叩き込む。真っ二つになり崩れ落ちた御者には目もくれず、ゾンビホースへと二撃を叩き込んだ。
 暴れさせず、その場で確実に仕留めるのだ。
 着地と同時に後方のチャリオットへと奔る。
 トントンと軽いステップを踏んで一体を切り裂き、美しく舞いながら鎌状に変化させた暗夜の剣を投擲する。それはゾンビホースの足元を切り裂き、カーブを描いてサンディの手元に戻った。
「突撃はさせない」
 サンディの瞳が怪しく光った。

 サンディが戦う上空で、アンナは対空していた。
 彼女の纏う夜色のワンピースは、気配をさらに消失させている。
 中央の敵は最も多い。そして、中央に行けば行くほど、ひしめき合っている。
「そんなに集まってたら、身動き取れないのでは?」
 呆れ半分に、アンナはユーベルコードを展開する。
 真っ赤な剣が、彼女の周りに出現した。
 断罪式・鮮血蔦――それは自身の血より生成された剣だ。
 滴る鮮血のような剣は、複雑な動きで宙を巡る。
 暗夜の空に描かれた幾何学模様は、何かの魔術のようだった。
 アンナが剣に命じる。
 剣は地上へ向かって鋭く奔った。
 血の雨が降る――そして、雨は御者やゾンビホースを穿ち、その傷口から呪いの力で体中を蝕んでいくのだ。
「この剣から逃れられると思うな」

「――派手にやってるわね」
 広場全域に配置した分身たちから送られて来る情報に、メフィスは嘆息混じりに呟いた。
 彼女は『巨人の時計』の真下で戦況を把握しながらも『時が来る』のを待っていた。
 猟兵たちの攻撃は圧倒的で、入り口付近と広場の周辺にいたチャリオットは既に全滅。最も多い中心部のチャリオットも、半数以上が死に絶えていた。
 この後、残りのチャリオットたちは、猟兵たちがこちらへ向かって追い立てる手はずになっている。
「っと、来たわね」
 分身から動き始めたと報告が入ると、メフィスは事前に準備しておいた『微塵』の場所へと分身たちを移動させていく。
 メフィスの身より滲み出たタール状の粘液。それを変質させた『微塵』は、吸着性に富んだ爆弾だ。
 敵が指定の場所へと誘導されれば、メフィスは『微塵』を起爆させた。
 激しい音を立てて爆発し、驚いたゾンビホースたちの嘶きが上がる。
「確かに戦車は強力だけど、足下がお留守なのよね」
 彼女の立つ位置からは見えないが、チャリオットたちは全て横倒しになったようだ。
「――今よ!」
 メフィスは『巨人の時計』の頂上へ向かって叫んだ。

 中央広場に静かに佇む『巨人の時計』。
 巨人の名に相応しく、高くそびえるその上に、一匹の灰色狼がいた。
 月の光を思わせるオーラを纏い、紫の瞳は曇天を映す。
 それは音狼。ロランが名付け契約した魔狼の姿。

 ――ほぉぉぉぉぉぉぉぉ……ん。

 遠く、長く。
 街全体に響き渡る遠吠えは、郷愁にも似た思いを運ぶ。

 ひとしきり鳴き終われば、ロランは塔の壁を伝って地上へと降り立った。
「うまくいったわね」
 メフィスの声に、尻尾を振って頷いた。

 ロランの遠吠えは、サリーナとナギの部隊が攻め込む合図だった。
 彼らは広場へと突入し、中心部を抜けて、メフィスの爆弾で倒れたチャリオットの元までやって来た。
 爆発によるダメージがあったのはゾンビホースのみで、御者はまだ戦意を失っていない。
 サリーナたちを守るように、ロランが前に立つ。
 御者はチャリオットによる『轢き殺し』が出来なくなったため、鞭を握りしめてこちらの様子を伺っていた。
 その数、五人。
 先陣を切ったのはロランだ。
 耳をぴんと立てて、鞭が空気を裂く音を聞き、するりするりと躱して肉薄する。
 噛み付くかと見せかけて、音撃の人狼魔術を撃ち込んだ。
 凄まじい爆音と共に吹き飛ぶ御者。そこへ、ナギたちが剣を掲げて突撃した。
 ロランのエスコートは的確で、自身はとどめを刺さず、街の人々に譲った。
 ――これは、この人類砦の戦いなのだから。

「これで最後だ!」
 ナギの剣が最後の御者に突き立てられた。
 サリーナの恩恵を受けた聖なる剣は、瞬時に敵を灰へと変える。
「やったぞ!」
「我々の勝利だ!」
 武装した青年たちが喜びあい、『巨人の時計』の背後で様子を伺っていた他の部隊も、歓声を上げて飛び出して来た。
「これで、一段落、かな?」
 人の姿に戻ったロランが、不安の残る顔で首を傾げた。
 しかし、周りの猟兵たちの表情は硬い。
「どうしました?」
 サリーナが、近くで見つめていたアンナに声をかけた。
「いや、別に。ただ聖女として生きられるアンタが羨ましいだけ」
 敵意ではないと告げるアンナに、サリーナは微笑んだ。
「ふふ、謙遜ですわ。貴女も十分聖女のようじゃないですか。街を救ったのですから」
 そう告げるサリーナの表情から、笑顔がするりと抜け落ちた。
 それはもう、聖女の顔ではなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『偽聖母』サリーナ』

POW   :    煉獄
【使用者以外を焼き尽くす業火】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    ホーリー・プレイ
技能名「【優しさ】と【祈り】と【神罰】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    この世界に救いはあるのでしょうか
対象への質問と共に、【胸元の宝石】から【レベル×10匹の、猛毒を持つ殺人ヘビ】を召喚する。満足な答えを得るまで、レベル×10匹の、猛毒を持つ殺人ヘビは対象を【精神攻撃を伴う締め付け】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミモザ・クルセイルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 聖女は困った天使のような表情で、猟兵たちを見た。
「街を、救ってしまったのですね……」
 サリーナの声が幼い少女の声へと変わる。
「これは由々しき事態ですわ」
 サリーナの表情が歪む。
「天災でブルーヴァは滅んだはずですのに……貴方たちが運命を変えてしまった」
 サリーナの胸の宝石が輝く。
 それは明らかな悪意の光。
 猟兵たちが動くより早く、サリーナから迸った光がナギを貫いた。
「ぐっ……サ……サリーナ……さま……」
 目を見開いて倒れるナギ。
 彼の部隊の青年たちが、悲鳴を上げてナギに駆け寄る。
 ――ナギは既に事切れていた。
「やはり自然死でないと、魂は美味しくありませんわね」
 サリーナは残念そうな表情をして、猟兵たちを見た。
「希望を抱いて生活している人類砦の人々が、天災によって滅ぶ時のあの魂の叫び……希望を持ったものが絶望した魂ほど、美味しいものはありませんわ。それなのに……」
 サリーナは目を閉じて一呼吸於いた。
「それなのに、貴方たちは私の食事を邪魔したのですわ。この人類砦を美味しく料理するために、私がどれだけ努力したことか……もう、赦せませんの」
 オラトリオの証でもある髪の花が、はらはらと落ちる。
 代わりに二枚の羽が髪を飾った。
 胸の宝石は悪意を撒き散らし、偽りの聖女はその本性を現したのだ。
「稲穂を摘み取った貴方たちには、死んで貰いますのよ」

 ---

●補足

 ※プレイングは9/24 8:30から受付開始となります。

 中央広場でサリーナ戦です。
 広さは十分あるので派手に戦えますが、生き残った部隊の青年たちをサリーナは優先して殺そうとします。
 彼らを助けるプレイングにはボーナスが加算されます。
 基本的に他の猟兵と共闘することになると思いますので、連携するようなプレイングをお送り頂けますと幸いです。
サンディ・ノックス
美味しくないと言いながら収穫をやめないのか
いいよ、徹底的に邪魔してやる
死ぬのは、魂を喰われるのは、お前だ

胸鎧と同化、全身鎧姿に変身しつつ黒剣を手にサリーナの胸の宝石を狙い突撃
敵が俺に対して攻撃するよう誘う

問いへの答えは「救いは作る」
この実現のために俺は戦っている
保身のために自分に嘘などつかない

魔力を高め【オーラ防御】、オーラを味方のために広範囲に展開しながら【毒耐性】もついたこの体で一般人への攻撃は【かばう】
また、高めた魔力からUC解放・夜陰発動
先程は隠していた得意戦法で敵と、味方へ向かう攻撃を塗り潰す

可能なら宣戦布告どおり魂を喰らいたい
俺に料理を悪趣味とは言う資格はないけど…気に食わないんだ


ステラ・リデル
私達が帰るまで我慢できませんでしたか。
また、機会を窺えばいいものを。
もっとも見逃すつもりもありませんでしたけどね。

『青い光の衣』を纏って戦闘態勢へ。
青年達への攻撃は魔法銃からその都度適した属性弾を放って妨害します。
味方の動きもよく観ておいて手薄な場所を主に守りましょう。

敵WIZUC
ありますよ。
貴方達を減らしていけば必然的に救われる者は増えていきます。
手始めに貴方を骸の海に還しましょう。
(蛇自体の攻撃は気にせずに受けて自身の戦闘力に変換します)

蛇の攻撃を全て魔力に変換した後、それを以てオーラセイバーを顕現。
サリーナを斬り裂きます。

最後に。貴女、趣味が悪いですよ。


アンナ・フランツウェイ
フィーナさん(f03500)と合流

なんで戦車が突っ込んでくるの、って乗ってるのフィーナさん!?あ、空中投げ出された、とにかく飛んで空中キャッチ…!
キャッチ出来たらサリーナが敵であった事を説明し、私も連携し戦いに臨む。

フィーナさんの援護を信じ、空中を飛びながら武器を捕食形態へ変形して突撃(【空中戦】)。残り火は【火炎耐性】で耐える。接近出来たらサリーナの翼へ影の大顎を放つ。

後は何度も捕食しサリーナを倒す…いや嬲り殺しにする。そして漏れる呪詛と負の言葉を止められない…。
「なんでお前は幸せになれたんだ。その壊れた幸せは私には手に入れられないんだ。その身体を渡せ、翼を渡せ、祝福を寄越せ…」

アドリブ歓迎


フィーナ・ステラガーデン
アンナ(f03717)と合流

「だあああっ!そこどいてええ!」
暴走する戦車に乗ったままサリーナにぶつかりそのまま投げ出されるわ!

説明を受けた後
「ふむふむ・・ええ・・?本当・・?(こそこそ」
「あんたが黒幕のようね!予想通りだったわ!!」
アンナと連携して戦いに挑むわ!

敵UCには炎魔法の【制圧射撃】にて蛇を焼き払いつつ
「甘ったれてんじゃないわ!世界とか周りが助けてくれて当たり前と思ってるんじゃないの!?救いが欲しいなら自分で勝ち取りなさいよ!自分がそうなるように動かなきゃ救いなんて無いわ!!」
アンナに向けられる業火に対しUCを放ち縫いとめる

アンナの様子がおかしいことに気にかけつつ終了
(色々大歓迎!)


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

疫病から人々を救う聖女
そんな都合の良い話があるはずがないと思ってしまう卑しい思考に自己嫌悪を感じていましたが……。
残念です。この自己嫌悪は無くしたくありませんでした。

希望の灯りを遮る聖女に用はありません。
『属性攻撃』ホワイトファングで動きを妨害し、他の味方が付け入る隙を作っていきます。
問答は不要と言いたいですが、あえて答えましょう。
救いはある。あると信じたいだけなのかもしれませんが。
例え無いとしても、それでも人は進まなければならない。絶望の闇に塗れようとも後悔の泥濘に塗れるよりはマシですから。
言葉でUCで、私の『存在感』を見せつけましょう。周りの村人へ攻撃が、意識が向かないように。


メフィス・フェイスレス
しくじった…!
なにやってんのよ!下がって!
(「飢渇」を戻すのに時間が掛かる。町中に散らせたのは失敗だった!)

UCの鞭を展開、「先制攻撃」で敵の攻撃の前に咄嗟に青年達の胴に絡めて後方の安全圏に投げ飛ばす
投げた先に「飢渇」をクッションとして配置して受け止めさせる
逃げ遅れた奴への獄炎は投げた青年達と入れ替わるように飛び出して
腕で「かばって」、体に延焼する前に斬り落とす事で対処

醜悪?ツラだけ小綺麗なお前よりはマシよ
我ながら日和ってたわ
お前みたいなのが現れるものだと考えるべきだった!

空きの鞭を敵とその周囲を攻撃して爆破
爆煙の「闇に紛れて」「骨身」で斬りかかりつつ
足に鞭を絡めて「体勢を崩す」事を狙う


ロラン・ヒュッテンブレナー
★連携・アドリブOK

いけないの
みんなを守らないと
部隊の人たちとサリーナさんの間に【結界術】【オーラ防御】の壁を作って耐えるの

今は、ぼぅっとしてる場合じゃ、ないよ
あなたたちがやられたら、この先、誰がこの砦を守るの?
大丈夫、ぼくたちが新しい希望に、なるの
だから、『ぼくの声を聴いて』
UC発動して、他の猟兵さんや、部隊の人たちに魔力の鎧とエンチャントを施すの

ぼくも、お手伝いするの
【残像】が出るくらいの【ダッシュ】で惹きつけながら
【全力魔法】【高速詠唱】の重力【属性攻撃】魔術で足止めを狙うの

ぼくの大事な友だちも聖女だけど
あなたとはまるで違うの
あなたが絶望を呼ぶのなら
ぼくは友だちの様に、人々の太陽になるの



「稲穂を摘み取った貴方たちには、死んで貰いますのよ」
 そう告げると同時に、サリーナは胸の宝石を輝かせて凄まじい魔力を生成させる。
 ナギを失った青年たちは、唖然とした表情でそれを見つめていた。
「なにやってんのよ、下がって!」
 サリーナの胸から何かが放たれる寸前に、メフィスの髪が空間を裂くように伸びた。青年たちの銅を絡め取り、猟兵たちより後方へと投げ飛ばす。
「うわ、うわああああ!!」
 青年たちの情けない叫びは、決して投げ飛ばされたからではない。彼女の髪の先端が、鋭く生え揃った歯の並ぶ『飢牙』となっていたからだ。
 投げ飛ばされた先に待っていたのも、その『飢牙』だったのだが。
 青年たちの体を受け止めて、地面に転がしていく。
(しくじった……!)
 メフィスは青年たちを回収しながらも、意識は別のところへ向いていた。
 チャリオットを倒すために街中へ放った分身たちが、まだ戻っていないのだ。これでは自身の戦力が半減だ。
 急いで戻るよう命じながら、ちらりとサリーナを見やる。
 彼女は無表情にこちらを見つめていた。
「あら、私から逃れられると思っているの? いけない子ですわね」
 サリーナは首を傾げてそう言うと、飽和しそうな魔力を一斉に解放した。
 魔力は火球へと姿を変え、宙に浮かぶ。
「……煉獄」
 小さく舌なめずりをして言葉を乗せれば、火球は弾けるように突き進む――猟兵たちの後方、青年たちに向かって。
「いけないの!」
 ロランがその小さな腕を目一杯広げ、幾重にも連なる結界を張り巡らせた。
 光り輝く障壁に火球がぶつかれば、まるで花火のように火の粉を散らして爆散していく。
 しかし火球の数は恐ろしく多い。
 ロランの額に汗がぽつぽつと浮かび上がり、その可愛らしい顔に余裕はない。
 そこへ、ステラがふわりと前に出た。
 手にしたハンドガンを、向かい来る火球へと向ける。
 ヴォン、という不思議な音と共に撃ち出されたそれは、氷の魔弾。
 火球を次々と消滅させていく。
「……あ、あ……」
 障壁の中の青年たちは、身を起こしたまま固まっていた。
 恐怖に声が出ず、ガタガタと全身を震わせている。
 ロランが顔だけ後方へ向け、青年たちに告げた。
「今は、ぼぅっとしてる場合じゃ、ないよ。あなたたちがやられたら、この先、誰がこの砦を守るの?」
 彼の言葉に、青年たちがはっとする。
「大丈夫、ぼくたちが新しい希望に、なるの。だから、ぼくの声を聴いて!」
 ――意志を力に変える奇跡を信じて。
 ロランの言葉に勇気づけられ、青年たちは立ち上がった。
 小さな少年の言葉が、彼を信じた青年たちに力を与える。
 ロランの生まれ持った電脳魔術が、彼らの鎧となったのだ。
「あら? これは思わぬ収穫ですわ」
 すべての火球を防がれたサリーナが、その白い手を下げた。
 相変わらず表情のない顔で、猟兵の顔をひとりひとり見つめ、最後に立ち上がった青年たちに視線を落とす。
「――美味しくないと言いながら、収穫をやめないのか」
 沈黙したサリーナへ、サンディが言葉を投げ掛けた。
「いいえ、違いますわ」
 サリーナはゆっくりと首を左右に振った。
「人間は再び希望を抱きましたわ。つまり、私自身の力で絶望を与えてあげれば、それはそれは美味しいご飯になる……というわけですのよ?」
 大好きな食べ物を出された子供のような顔で、サリーナは言う。
「猟兵さんたちは、美味しくなさそうですけれど……仕方がないので一緒に食べてあげますわ」
 くすりと笑うサリーナ。
「――いいよ、徹底的に邪魔してやる。死ぬのは、魂を喰われるのは、お前だ」
 サンディが残忍な笑みを浮かべ、言い放つ。

 それが、戦闘開始の合図となった。


 真っ先に動いたのは、サンディだ。
 サリーナへと奔りながら、胸のプレートアーマーと同化する。
 彼の全身は、血のように紅い模様が描かれた漆黒の鎧に包まれ、右手に携えた暗夜の剣の切っ先は、サリーナの胸元――魔力の源であろう宝石へと向いていた。
 しかしサリーナはサンディに視線を向けることなく、指先から光線を放ち、青年たちへ向けて撃ち出した。
「無駄だよ」
 サンディが素早く跳躍する。
 サリーナの放った光線は、彼の体に遮られて霧散した。
 オーラを纏った鎧には、傷一つ付いていない。
「困った子ですわね……」
 本気で困ったような表情で、サリーナはようやくサンディに目を向けた。
「そんなことをして……この世界に、人間に、救いがあると思っているのです?」
 サリーナの言葉に合わせ、胸の宝石から闇色の靄が湧き出した。
 その靄から現れたのは――シュルシュルと威嚇音を上げる毒蛇だ。
 蛇は次々と生まれ、猟兵や青年たちに向かって地を滑るように這い進む。
「呆れた、何が聖女だ」
 サンディは歪んだ笑みを浮かべたまま、魔力を高めた。
「救いは作るものだ。この実現のために俺は戦っている」
 彼に噛みつかんとする蛇は、漆黒の鎧に阻まれて毒の牙を届かせることは叶わない。
 サンディは自身の底から溢れる闇の魔力を操り、漆黒の水晶を生み出した。
 それは、純粋な悪意。獲物を喰い尽くすことを渇望する意思だ。
 水晶たちはサンディの意思に応え、散開した蛇へと鋭く飛翔した。一匹たりとも逃すつもりなどない。
 肉に突き刺さった水晶は、対象を闇の力で塗りつぶしていく。
 まるで――むしゃむしゃと食べるように。


 サンディがおびただしい数の蛇を屠っている間に、アリウムはサリーナの後方へ回り込んでいた。
「疫病から人々を救う聖女――そんな都合の良い話があるはずがないと思ってしまう卑しい思考に、自己嫌悪を感じていましたが……」
 独りごちるアリウムに気付き、サリーナが振り向いた。
 否、向かざるを得ない力が作用し、サリーナを振り向かせたのだ。
「残念です。この自己嫌悪は無くしたくありませんでした……」
 ナギは死んだのだ。
 最初から共に戦っていれば、変化に気付き助けられたかも知れないと。
 後悔の念を瞳に湛えたアリウムに、サリーナは首を傾げた。
「あら、自分に落胆していますの? ダメですわよ、希望を胸に抱いて頂かないと。魂がマズくなってしまいますわ」
 聖女の微笑みを浮かべるサリーナに、アリウムの瞳から感情が消える。
「希望の灯りを遮る聖女に用はありません」
 氷よりも冷たい言葉を放ち、アリウムは氷華の切っ先をサリーナへと向けた。
「貴方も、世界にまだ救いは残っていると考えていますの?」
 サリーナは呆れた顔でそう言いながら、再び蛇を召喚する。
 死を喚ぶ毒蛇が、牙を剥いてアリウムを威嚇した。
「問答は不要――と言いたいところですが、敢えて答えましょう」
 アリウムは氷華の切っ先から蒼い弾丸を撃ち出した。氷の魔力を帯びたそれ等は、向かい来る毒蛇を穿ち、動きを封じ込めていく。
 その間も、二人は互いから視線を外さない。
「救いはある。あると信じたいだけなのかもしれませんが……例え無いとしても、それでも人は進まなければならない。絶望の闇に塗れようとも、後悔の泥濘に塗れるよりはマシですから」
 アリウムは、過去にたくさん見て来たのだ。
 弱者が諦めずに前へ進む姿を。
 そして、その先に希望を見い出し、強く生きていく姿を。
 そんな弱くも愛おしい人間のために、彼は武器を振るうのだ。
 蛇型の氷の彫像に囲まれたサリーナは、小さく嘆息した。


 一瞬気が逸れたサリーナに、空気を切って鞭が伸びる。
 しかし寸でのところで躱されてしまった。
 サリーナは火球を鞭の持ち主へと向けて放つ。
 思わぬ反撃に、持ち主――メフィスは、自身の腕で体を庇った。
 燃え上がる左腕――それを躊躇なく切り落とす。
「やってくれるじゃない」
 燃えるような金の瞳が、サリーナを見据える。
「あらあら、醜いお姿ですわね。よく見れば、貴女ツギハギだらけですわ」
「ツラだけ小綺麗なお前よりはマシよ」
 そう吐き捨てて、メフィスは地を蹴った。
 サリーナへは向かわない。横へと滑るように走って行く。
「鬼ごっこですの? 良いですわ、遊んであげましょう」
 サリーナがころころと鈴のような笑い声を上げ、メフィスを追いながら火球を撒き散らす。
 メフィスは右手の鞭をしならせ、追い縋る火球を的確に爆破させていった。
 サリーナを中央広場の真ん中へ誘うように、メフィスはうまく『鬼ごっこ』を演じたのだ。
 爆煙がもうもうと辺り一帯を覆い隠し、互いの姿を隠す。
 ――失ったはずの左腕から、骨刃が伸びた。
「便利な体よね」
 そう皮肉げに呟きながらも、地を蹴って見えないはずのサリーナへと肉薄する。
 ようやく戻った分身たちを配置することで、サリーナの居場所は知覚できている。
 殺気を感じたサリーナが、何とか最初の一撃を躱した。
 ふわりと髪が舞い、その軌跡が刃となってメフィスを襲う。
 メフィスは骨身で防ぎつつ、今度は右手の鞭を伸ばした。
 狙うはサリーナの足元。
「きゃっ」
 死角から伸びたそれは、見事彼女の体を掬い上げ、体勢を崩すことに成功した。


 煙がもうもうと立ち込める中央広場へ、突然車輪のガラガラという音が響き渡った。
 メフィスの作った好機を逃すまいと武器を構えたアンナが、怪訝な表情でそちらを見やる。
「……なんで戦車が突っ込んでくるの?」
 ガラガラ音に混じって、誰かの声が聞こえて来た。
「だあああっ! そこどいてええ!」
「って乗ってるのフィーナさん!?」
 そう。ゾンビホースが引く荷台に乗っているのは、フィーナだった。
 しかも、まったくもって制御など出来ていない。
 ゾンビホースは高らかに嘶き、暴走していた。
 向かう先には、地に倒れたサリーナ――しかし彼女は素早く身を起こして防御壁を張り巡らせる。
 突如出現した防護壁にぶつかり、チャリオットは大破。フィーナは宙を待った。
「んぎゃあああ!!!」
「フィーナさん!」
 アンナが慌てて飛翔し、フィーナをキャッチする。
「アンナ! 助かったわ!」
 二人はそのままサリーナが見える場所に着地した。
「……で、どういう状況?」
 周りの猟兵や青年たち、そして遠くで倒れる息のないナギを認め、フィーナは怪訝な表情でアンナにそっと問いかけた。
「それが……」
「ふむふむ……ええっ、本当……!?」
 アンナの簡潔な説明に、フィーナは目を丸くした。
 そして、にんまりと笑う。
 誇らしげに立ち上がり、ビシッとサリーナへ杖を突きつけて叫んだ。
「あんたが黒幕のようね! 予想通りだったわ!!」
 しかしフィーナには目もくれず、サリーナはぶつぶつと何事か呟いている。
「まったく……一体どうなってますの……? どうして『天災』に猟兵が乗っていましたの……?」
「ちょっと! 何無視してんのよ!?」
 フィーナがむきーっと怒って地団駄を踏めば、サリーナはふうと息を吐き出した。
「疲れましたわ……もう、いいですわ」
 そう言って、フィーナとアンナに向き直る。
 底なしの魔力の元である宝石に手を滑らせれば、先程までとは種類の違う巨大な蛇がずどんと出現した。
「さあ、お食事の時間ですわよ」
 蛇はサリーナの命に従い、蛇あるまじき咆哮を上げて地を滑った。
「大きな蛇ね! 燃やして食糧にできそうね!」
「いや、それはどうかと思うよ……」
 アンナが苦笑する。
 フィーナはアンナの前に出ると、杖を掲げた。
「いっけええええ!!!!」
 叫ぶと同時に出現した炎が、弧を描いて蛇に殺到する。
「ギシャアアアア!!!」
 蛇は最初の炎を噛み砕いたが、二撃、三撃には耐えられず、その場でのたうち回った。
「丸焼き一丁上がりよ!」
 フィーナの言葉にアンナは笑うと、宙へと飛翔し武器を掲げる。
 次の攻撃が来る前に、サリーナを倒すのだ。
「喰らい尽くせ……原罪の大顎よ!」
 白と黒の翼を大きく広げて叫べば、彼女の血が大鎌を捕食形態へと変化させた。真紅の刀身がぎらりと光る。
「あらあら、禍々しい武器ですわね? 最初に言った言葉、撤回いたしますわ。貴女は聖女ではなく、堕天使ですわね」
「だまれぇぇぇ!!!」
 アンナが何事か言うより早く、フィーナの火球がサリーナへと向かう。
 サリーナは楽しげに笑いながら、同じく火球を操ってフィーナではなくアンナへと放った。
「アンナ!」
 フィーナは慌てて火球をコントロールし、アンナへの攻撃を率先して相殺する。
「――フィーナさんを、信じる!」
 アンナは向かい来る炎を無視して、サリーナ目掛けて急降下した。
 目を細めるサリーナ。
「……こんな救いもない世界で、一体貴女たちはどうしたいと言うの?」
 両の手を宝石にあてがうと、真っ赤な輝きが放たれた。
「救いもない? 甘ったれてんじゃないわ! 世界とか周りが助けてくれて当たり前と思ってるんじゃないの!? 救いが欲しいなら自分で勝ち取りなさいよ! 自分がそうなるように動かなきゃ、救いなんて無いわ!!」
 フィーナが噛み付く勢いで叫び、魔力を練り上げる。虚空から出現する黒い杭。彼女の魔力が姿を成したものだ。
 ぶわりと炎を纏った杭は、凄まじい速度でサリーナの宝石へ向かう。
 同時に、サリーナの宝石から噴き出した業火が、彼女ごと燃え上がった。
 術者にはダメージのない炎に守られたサリーナに、アンナは躊躇なく突っ込んでいく。
 先にサリーナへ辿りついたのは、フィーナの杭だ。
 杭は彼女の炎に文字通り『突き刺さる』と、魔力へと変換しフィーナへ還元する。
「ごちそうさま!」
 業火はあっと言う間に消え失せた。
「な……!?」
 そんな攻撃が来るとは予想していなかったサリーナが、はじめて顔色を変える。
 ――そこへアンナが降ってきた。
 振り下ろされた大鎌が、サリーナの純白の翼を斬り落とす。
「っ!!!!」
 背中から鮮血が迸り、サリーナはぐっと息を飲んだ。
 叫び声は上げず、そのまま後方へと跳躍する。
 怒りに燃えた瞳は、悪魔のようだ。
 反撃しようと宝石に手をやると、背後に厭な気配を感じて振り返った。


「無様ですね」
 サリーナの背後に立っていたのは、青い光の衣に身を包んだステラだった。
「私たちが帰るまで我慢できませんでしたか。また、機会を窺えばいいものを」
 冷たく言い放つ彼女に、サリーナは衝動的に魔力を放った。
 宝石が明滅し、蛇や炎が不安定に召喚される。
「最早ここまでですね。元より見逃すつもりなどありませんでしたから、このまま滅んでください」
 ステラは一歩も動かない。
 サリーナが放った炎と、毒蛇の顎が襲いかかる。
 しかし、ステラに触れようとした瞬間、霧散した。彼女の纏う青い光が、輝きを増していく。
 サリーナの攻撃は、すべてステラの魔力へと変換されたのだ。
 その魔力を以て、オーラセイバーを顕現させるステラ。表情は変わらない。
「この世界に救いなどない、と言っていましたね。ですが、救いはありますよ。貴女たちを減らしていけば、必然的に救われる者は増えていきます」
 告げながら、地を蹴る。
「手始めに、貴女を骸の海へ還しましょう」
 言葉が終わる頃には、オーラセイバーがサリーナの眼前に迫っていた。
 魔力を解放しても、ステラの光の衣が吸収してしまう。
「そんな……っ」
 悲痛な声がサリーナから漏れ、オーラセイバーの斬撃が彼女を斬り伏せた。
 とさ、と地面に倒れるサリーナ。
 血は出ない。オーラセイバーが斬り裂いたのは、彼女の魔力と精神だ。
「く……あ……」
 苦しげに呻き、僅かに動く指が宝石に触れる。
 ――ぱきっ。
 綺麗な音を立てて、宝石は二つに割れた。
「ああああああ!!!」
 サリーナの瞳が真紅に染まり、体から七色の光が溢れ出す。
「これは一体……?」
 ステラが後方へ跳躍し、オーラセイバーを構え直した。


 それは、尽きかけた命の煌きにも思えた。

 胸の宝石があった箇所から、鮮血が止めどなく溢れ出している。
 サリーナは表情のない顔を虚空へ向け、光の弾を降らせる無差別攻撃をはじめた。
 雨のように降るそれは、まるで『天災』だ。
「させないの!」
 ロランが高速で詠唱し、巨大な闇色の結界を展開した。
 結界は青年たちの上だけでなく、猟兵一人ひとりに施されたのだ。

 猟兵たちは反撃に出た。
 アリウムの吹雪が、フィーナの炎が、メフィスの飢渇が、サリーナへと殺到した。
 ロランの結界を纏ったステラ、サンディ、アンナが、武器を手に肉薄した。眩い光に目をやられそうになりながらも、三人の武器がサリーナを穿つ。

 サリーナの脳裏に、見知らぬ風景が浮かんで、消えた。

 ――それは、いつか修道女をしていた自分。
 ――吸血鬼に怯えながら、人々を癒やし、救っていた頃の自分。

 誰も助けてはくれず、皆吸血鬼に殺された……そんな過去。
 しかし、オブリビオンとなった彼女に、そんな記憶があるはずもなく。
「あ……ああ……」
 朽ちゆく体に留まったままの魂が、その口から言葉を紡がせる。
「もっと……もっと魂を……すくわれないたましいを、ちょうだい……」
「――貴女、趣味が悪いですよ」
 ステラが言い捨てる。
 どんな過去を持っていようとも、慕う人々が絶望した魂を喰らうオブリビオンと成り果てた彼女に、憐憫などない。
「ぼくの大事な友だちも聖女だけど、あなたとはまるで違うの。あなたが絶望を呼ぶのなら、ぼくは友だちの様に、人々の太陽になるの」
 ロランは言う。
 彼の友人――紫髪の可愛らしい聖女は、とても明るく元気で、いつも皆に希望を振りまいている。
 ロランもそうなりたいのだと。

 しかしもう、サリーナに言葉は届いていなかった。
 彼女は死して骸の海へと還ろうとしているのだから。

 足元の物言わぬ死骸に目を向けて。
 サンディの手の上には、漆黒の水晶がひとつ浮かんでいる。
 ふわりと手を離れて死骸に突き刺されば、死んだはずの彼女がびくんと跳ね上がった。
「俺に料理を悪趣味と言う資格はないけど……気に食わないんだ」
 彼は、まだ肉体に留まっていたサリーナの魂を喰らったのだ。
 あとに残るは、静寂のみ――。

 猟兵たちがその場を去っても、アンナはまだそこに立ち尽くしていた。
「……なんでお前は幸せになれたんだ。その壊れた幸せは私には手に入れられないんだ。その身体を渡せ、翼を渡せ、祝福を寄越せ……」
 アンナが鎌を振り下ろす。
 すでに事切れた死体に、何度も何度も突き立てる。
 止まらない呪詛、負の言葉――昏い瞳。
「アンナ……?」
 フィーナの呟きは、風に乗って消えた。


 こうして、人類砦『ブルーヴァ』は救われた。
 犠牲はあれど、空色葡萄の『実り』は守られ、人々から希望が失われることはなかったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『葡萄収穫祭』

POW   :    葡萄踏み体験!

SPD   :    葡萄の収穫をお手伝い!

WIZ   :    ワインやジュースをテイスティング!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 チャリオットが暴れまわった街中は、猟兵たちの協力もあって、あっと言う間に復興した。
 戦死者たちの葬儀も無事に終わり、砦の代表者サナトスは予定通り空色葡萄の収穫祭を開催すると宣言したのだ。
 サリーナやナギといった重要人物を失ったが、彼らは逞しく立ち直り、未来を生きていくのだろう。

 収穫祭は弔いの意味も込めて、盛大に執り行われる。
 空色葡萄の酒にジュース、料理にデザート。
 そして、この辺りで稀に捕獲されるバップロ―の肉料理に、裏の森で採れる野草料理などもある。
 巨人の時計が12回鐘を鳴らせば、号砲が鳴り響いた。
 さあ、収穫祭の始まりだ。

●補足
 特段注意点などありません。お祭りを楽しみましょう!
 催し物など自由にやって頂いて問題ありません(あまりに世界観から外れるものはマスタリングさせて頂きますが……)
 空色葡萄は、誰が食べても美味しいと感じる不思議な葡萄です。
 葡萄が嫌いな猟兵さんも、是非食べてみてくださいね。持ち帰りもオーケーです。
 苗を譲って貰うことも可能ですが、痩せた地でさえぐんぐん育つ葡萄なので、肥沃な土地では増えすぎるかも知れません。
サンディ・ノックス
ナギさんからの信頼への裏切り行為がまだ腹立たしかったり
「オブリビオンが好む人々の状態を作る行為=料理」に対して思い悩むこともあるのだけれど今は祭り
祭りを心から楽しむことが彼らへ俺ができる一番のことだと思うから、あちらこちら見て回ろう

料理は種類は多め、量は控えめにいただくね
催し物を見つつ人々の様子を眺める
…ヒトは、こんなに強いのか
俺の常識と違いすぎて夢を見ている気分

苗を譲ってもらえるの?
故郷には…帰りにくいけど、とても持っていきたいから譲り受ける
流石に10年も経てば土で腹を満たさなければいけない状態よりは良くなっていると思うけれど、痩せた土地が豊かになるのは難しいはず
だからきっと故郷の助けになる



 ブルーヴァの砦は、戦場だったとは思えない賑わいを見せていた。
 戦死者が出たとは言え、4000に近い人々が互いの無事を喜び、料理を楽しみながら故人の思い出話に花を咲かせているのだ。
 路上のあちらこちらに無造作に置かれた長机には、色とりどりの料理が並んでいる。
 そんな中を、サンディはゆっくりと歩いていた。
 戦闘中の表情が嘘だったかのように、穏やかな微笑みを浮かべて。

 実際のところ、複雑な心中ではあるのだ。
 あれほどサリーナを信頼していたナギを、あっさりと裏切って殺害した行為は赦せるものではない。
 しかし、ブルーヴァの人々の信頼を得るため尽力したかと思えば、それは『美味しく食事をするため』だと言う。つまり、料理だと。
 腹立たしかったり、悩ましかったり――。
 思わず眉間に皺が寄りそうにもなるが、今は祭りなのだ。
 この祭りを心から楽しむことが、ブルーヴァの人々へ自分が出来る一番のことだと、サンディは考えている。

 ちょうど近くの机に、できたての料理が運ばれて来た。
 種類を楽しむためにも量は控えめに――サンディが料理を取ろうと手を伸ばせば、隣に立っていた大きな女性が、豪快に笑いながら様々な料理を皿に盛ってくれた。
「猟兵さんには、ここのオススメを食べて貰わないとねぇ」
「ありがとう」
 笑顔でそれを受け取ると、サンディは少しずつ口に運ぶ。
 どの料理も、戦いを癒やしてくれるような味付けだ。
 思わず口元を綻ばせると、女性は満足そうに何度も頷いた。
 ふと、武器保管庫の前に大勢の人が集まっているのを見つけ、サンディは首を傾げた。
「模擬戦をやるんだよ」
 料理を盛ってくれた女性が、ウインクをしてサンディに告げる。
「はっはっは! 大きな戦が終わったばかりだってのに、元気なヤツが多くていいじゃないか!」
 愉快に笑う彼女の言葉に重なって、大きな歓声が上がった。

 ――ヒトは、こんなに強いのか……。

 自身の常識との違いの大きさに戸惑いながらも。
 眩しいとさえ感じるブルーヴァの人々を目に焼き付ける。
 きっと、ここでのことは忘れない。

「ごめんね、苗を譲ってもらえる?」
 街外れの葡萄畑にて。
 少し忙しそうにしている少年に、サンディはそっと声をかけた。
 どうやら少年は、祭りに出す追加の空色葡萄を収穫していたようだ。
「あ、猟兵さんだ! いいえ、だいじょうぶです!」
 少年はサンディを見ると、嬉しそうにきらきらと笑顔を振りまいた。
 そしてトコトコと施設へ入って行くと、状態の良い苗を数本選び、袋に入れてサンディへ手渡す。
「はい! これならきっと、たくさん実をつけるとおもいます!」
「それは楽しみだよ、ありがとう」
 サンディは苗を受け取ると、少年に別れを告げてブルーヴァの出口へ向かった。
 道すがら、故郷に思いを馳せる。
 あれから10年も経っているのだ。さすがに土で腹を満たすような状態よりは、幾らかマシになっているだろう。
 とは言え、あの地が豊かになるのは難しいはずだ。
「だから――この空色葡萄は、きっと助けになる」
 そう確信して。
 サンディは故郷へ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・リデル
逞しいものですね。(と収穫祭の様子を見て回り)
さて、空色葡萄ですか。どんな味なのか楽しませてもらいましょう。
……美味しいですが、不思議な感覚ですね。
お土産としていくつか分けていただきましょう。
対価はもちろんお支払いしますよ。
(収穫祭の準備時の待ち時間に郊外にでて『悪魔召喚Ⅱ』により狩猟に長けた悪魔達を召喚。彼らに命じて狩りをして獲物をとっておきます。対価にはそれらのたんぱく源を)



 ブルーヴァの西側は、開けた草原地帯になっている。
 こんな厳しい環境だと言うのに、青々とした草がびっしりと大地を埋め尽くしているのだ。
 そんな中を、青髪の猟兵が歩いて行く。
「空色葡萄と言い、よく育つものですね」
 ぐるりと周りを見渡して、ステラは声を漏らした。
(そして植物だけでなく、人も逞しい――)
 先程までの街の喧騒を思い出し、ふっと口元が綻ぶ。
 戦場に出た青年たちは勿論のこと、教会に身を潜めていた一般市民はどれ程恐ろしい思いをしたことか。
 ――それなのに。一夜明けた今日、彼らは祭りを全力で楽しんでいるのだ。

 ふと目の端に目的のものを捉え、ステラは立ち止まった。
 牛のような青い魔獣――バップローだ。
 彼らはゆっくりと街から遠ざかるように、草を食みながら移動しているようだった。
「――来たれ、偉大なる超越者の僕。契約に基づき使命を果たせ」
 突然ステラが告げる。
 彼女の魔力が空間を歪ませ、そこから出現したのは大量の悪魔。
 羽付き帽子を被り帯刀した黒い鳩や、山羊頭の蛇を従えた鹿角の男――恐らく『Urbs novum』の住人なのだろう――は、静かに主の言葉を待つ。
 ステラは彼らを一瞥すると、すっと草原の向こうに群れるバップローの群れを指し示した。
「あの草を食む魔獣の集団を狩猟しなさい。ただし、狩り過ぎないように」
 彼女の言葉が終わると同時に、悪魔たちは奔りだす。
 彼らは皆、狩猟を得意とする悪魔だ。
 ステラは見届けることもなく、街へと踵を返した。

 ――時は1時間前に遡る。
 ステラは、祭りを見物しながら街を散策していた。
 一体どこにこんな蓄えがあったのかと思うくらい、豊富な料理が並べられている。
 どれもあまり見たことがないような、カラフルな料理だ。
 とは言え『収穫祭』と言うだけあって、空色葡萄を食べている者が多いようだ。
 ステラも積み上げられた皿から一粒手に取ると、周りの人に倣って皮ごと口に入れた。
「……美味しいですが、不思議な感覚ですね」
 まさに”食べたことのない味”だった。しかし、脳は美味だと告げて来る。
 病みつきになる、と言う表現がぴったりかも知れない。
 ステラはもう一粒食べながら、土産に貰おうと考えていた。
(確か、バップローがこの辺りに来ているとか……)
 ダークセイヴァーでは貴重なたんぱく源と交換に、空色葡萄を貰って帰ろうと。
 ただで貰わないのが、さすがはステラだ。

 こうして、無事(悪魔たちの手によって)入手したバップロー十頭は、砦へと運び込まれた。
「これと交換に、空色葡萄を頂けないでしょうか」
 ステラが代表者サナトスに尋ねれば、彼は目を見開いて両手を振った。
「な、なんと……こんなに頂けません。空色葡萄はたくさんありますから、恩人である猟兵様から対価を頂くなんてことは――」
「チャリオットやサリーナと戦った対価は、もう頂いています。気にせず受け取ってください」
 ステラの言う対価とは、彼女が食べた空色葡萄や料理だ。
 土産は別だと彼女は言う。
 サナトスはその後も必死に説得しようとしたが、最後は笑顔で受け取ったのだった。

 たくさんの、青。
 空の名を冠した葡萄と共に、ステラはこの地を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
気持ちの良い勝利、とはいかないけど漸く空きっ腹を落ち着かせることが出来そうね

悪かったわね
もう少し気をつけていればアイツも生きて此処でみんなと笑ってられたかも知れないのに
…たらればなんて言っても気が滅入るだけね
うじうじしてる暇があるなら、今を楽しみましょうか
何があっても生きてる以上腹は減るものだしね

「飢渇」を動員してブドウを収穫しつつ芯ごと摘まみ食いしたり
お土産にUCでブドウを吸い込んでいく
(飢渇も取ったブドウをむしゃむしゃやっている)

苗もいくらかもらっていこうかしら
こんな環境でもこれだけ育つならコートの中で栽培できるでしょうね

え、肉料理もあるの?にくー(急に言動のIQが下がる)



 ブルーヴァの精鋭部隊に所属する青年たちの酒盛りに、メフィスは混ざっていた。
 成人は空色葡萄の葡萄酒を、未成年は葡萄ジュースをグビグビ飲みながら、山盛りに積み上げられた料理を腹に収めていく。
「姐さんすげぇ食うよな」
 青年の一人がそう言えば、メフィスはにっと笑った。
「だってウマイし」
 そう告げて、手にした煮込み料理を口へ運ぶ。
「猟兵さんの口に合って良かったよ」
 料理を運ぶおばちゃんが、足を止めて微笑んだ。
「ホント、気持ちのいい食べっぷりねぇ」
「大丈夫よ、残さないから」
 メフィスがすかさずそう言えば、ドッと笑い声が上がった。

「……ああ、ナギのこと?」
 誰かの声に、メフィスの手が止まる。
 今回の戦いは”気持ちの良い勝利”とはいかなかった。部隊長のナギが死に、何より自分たちが辿り着いた時には、既に砦の中で相当な被害が出ていたのだ。
「――悪かったわね」
 メフィスがぽつりと言葉をこぼす。
 わいわい会話していた青年たちの手が止まった。
 ここにいる全員の視線が、メフィスに集まる。
「姐さん……?」
「ほら、もう少し気をつけていれば、アイツも此処でみんなと笑ってられたかも知れないのに――」
 そう言いながら周りを見渡して、メフィスは言葉を止めた。
 誰もが優しい笑顔を彼女に向けていた。
 ナギの魂は此処にあって、彼らは今ナギと一緒に楽しんでいる――そうとしか思えないこの場の空気に。
 メフィスは自嘲気味に笑うと、グイッと葡萄ジュースで喉を潤した。
「……たらればなんて言っても気が滅入るだけね。うじうじしてる暇があるなら、今を楽しみましょうか」
 大きな手羽先を手に取って立ち上がれば、青年たちから歓声が上がった。
 ――そう。
 何があっても、生きている以上腹は減るものだ。

「さーて、ここからが本番ね」
 メフィスは空色葡萄の畑に来ていた。
 生い茂る黄金の葉から、空色の実が顔をのぞかせている。
 畑の管理人から、ここの葡萄はどれだけ採っても良いと言われた。
 ともすれば、やることは一つだ。
 メフィスは畑に入って行くと、早速空色葡萄をつまみ食い。
「あー、これはヤバイわね」
 ザ・美味!
 癖になる美味しさというやつだ。
 メフィスの袖からずるりと飢渇が伸びる。
 飢渇は熟した空色葡萄に狙いをつけると、回収のために口を大きく開いて――むしゃむしゃ食べた。
(大丈夫、大丈夫……たくさんあるから、持ち帰る分は十分にある)
 メフィスは自身に言い聞かせながらも、飢渇と一緒にもぐもぐタイムだ。
 ある程度食べた飢渇は、ようやく回収作業に入る。
「さて、どれくらい持ち帰ろうかしらね」
 メフィスは葡萄の汁が付いた口をぐいっと手の甲で拭うと、外套をバサッと広げた。
 外套の内側には、まさかの口が並んでいる。それが開いたかと思えば、物凄い吸引力で次々と葡萄を吸い込んでいく。
「こんな環境でもこれだけ育つなら、この中で栽培できるでしょうね」
 メフィスは後で苗を数本貰っていこうと考えながらも、葡萄を回収し続けるのだった。

 ――その後。
 誰かが運び込んだバップローが数頭丸焼きにされ、言うまでもなくメフィスはがっつり食らった。
 そして砦の人々から”最高の大食らい”の称号を与えられたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
アンナと

何部屋の隅で全部に絶望したって顔してんのよ?(葡萄ジュース持参)

・うずくまるアンナの首を抱きしめ、かつて妹にしてやったように傾聴
・フィーナからしてアンナは今までの環境、猟兵活動で見た人間の醜さ
自身への極端な否定が今の不安定さを作り出しているものだと考え
アンナの嘆きには短く否定せず応える
・フィーナの視点ではアンナは一人の未熟な少女であり、居場所が無いなら見つけるまででもずっとでも自分を含めた仲間達といれば良い
同じ物を手に入れる必要はない。他人が見せる「正しい栄光、幸せ」なんて只のまやかし
欲しがっているものよりも、既に手に入れているものに目を向けて欲しい。但し答えは出さない
(描写表現自由)


アンナ・フランツウェイ
フィーナさんと

(座り込み、祭りの風景を見ながら)
疲れた、なんで私には、もう嫌だ、そうだ、私はバケモノなんだ人じゃない。だからもう忘れよう、そうすれば何も考えなくて…。

(フィーナさんが来たら)
私に何か用?…ごめん何でもない、少し疲れただけ。早く祭りに混じった方が良いよ。こんなバケモノといても面白いはずが無い。

(フィーナさんに抱きしめられたら。最終的には泣き出す)
…私、正直サリーナが羨ましかった。私と違って祝福されて、幸せそうで…。でもそれが壊れた時私には絶対手に入らないんだって、突きつけられた気がして、もう自分じゃこの胸の痛みが、自分の感情すらも分からなくなっちゃって…!

・アドリブ等ご自由に



 もう今は使われていない、赤レンガの倉庫。
 今回の戦闘で被害を受けたが、使われていないからとそのままにされていた。
 崩れたレンガは瓦礫となって積み上がり、その上にちょこんと腰掛けて。
 アンナは祭りの様子を遠目に見ていた。
 いや、見てなどいなかった。
(疲れた――)
 目に光はなく、虚ろで。
 アンナの胸中には、ずっと同じ言葉がぐるぐると渦巻いていた。
(なんで私には……もう嫌だ)
 顔を下げて、立てた膝に額を乗せる。
(そうだ、私はバケモノなんだ、人じゃない。だからもう忘れよう。そうすれば何も考えなくて――)

「何こんなところで全部に絶望したって顔してんのよ?」
 取り留めのない想いは、唐突に遮られた。
 声がした方をちらりと見やれば、金髪の魔女がこちらを見上げている。
 フィーナだ。
 手にした空色葡萄のジュースを一気に飲み干すと、コップをその辺に置いて瓦礫の山を登ってくる。
「私に何か用?」
 思わず出た言葉に、バツの悪い顔で再び俯いた。
「……ごめん、何でもない」
 フィーナがどんな表情をしたか、見てはいない。
 隣に彼女が座ったことを気配で感じながら、息を吐き出す。
「何でもないわけないでしょ?」
 間近で聞こえる優しい声に、思わず言葉が詰まる。
 しかし、だめだ。
 だって私は――。
「……少し、疲れただけ。早く祭りに混じった方が良いよ。こんな……こんなバケモノといても、面白いはずが――」
 勢いに任せて、言いたくもない台詞をフィーナに叩きつけようと顔を上げれば、突然彼女に抱きしめられて目を見開いた。
 アンナの『こえ』は行き場を失って溶けて消えた。
 変わりに口から零れる『ことば』は、彼女の心の内の悲鳴だ。
「……私、正直サリーナが羨ましかった」
 ぽつぽつと話し始めたアンナを抱きしめたまま、フィーナがこくりと頷く。
「私と違って祝福されて……幸せそうで……。でも、それが壊れた時、私には……絶対手に、入らないんだって、突きつけられた気がして……っ」
 アンナの体が強ばるのを感じても、フィーナはアンナの心に耳を傾ける。
 そう、かつて妹にしてやったように。
「もう自分じゃこの胸の痛みがっ……自分の感情すらも! わからなくなっちゃって……っ!」
 最後はもう、悲鳴にも似た嗚咽。
 そのままアンナは、子供のように泣きじゃくった。
 そうね、と短く囁いて、フィーナは彼女の背中をさすった。

 アンナは幼い頃、両親に実験施設へ売り飛ばされ、そこで『呪詛天使計画』の被験者となった。世界を恨んで死んでいった呪詛天使の魂をその身に宿し、時折彼女が表へ出ては暴走するのだ。
 ――正義を恨み、汚い人間を滅ぼせ。
 その狂気はアンナにも伝播し、彼女は苦しんだ。
 様々な猟兵活動で人を助け、人を憎み、そしてそう思う自身を蔑んだ。
 そんな『今までの環境』『猟兵活動で見た人間の醜さ』『自身への極端な否定』が、今のアンナの不安定さを作り出しているのだと、フィーナは考えている。
 彼女はまだ、未熟な少女だ。研究施設から逃げ出して日も浅い。
 癒えぬ傷と、呪詛天使というイレギュラーを抱え込んだまま一人で生きていける程、人は強くはないのだ。
 居場所がないのなら、見つけるまで――いや、見つけてからもずっと、私たちと一緒に居れば良いのだと。

 ようやくアンナが泣き止むと、遠くから楽しげな音楽が聞こえて来た。
 この砦の人々のように、共に歩む仲間がいれば――。

「……同じものを手に入れる必要なんて、ないのよ」
 フィーナがぽつりと呟いた。
 アンナの肩がびくっと震えたが、気にせず後を続ける。
「そんなものより、もっと近くにあるじゃない。アンナは既に、手に入れてるのよ」
 他人が見せる『正しい栄光や幸せ』なんて、只のまやかしだ。所詮、その人にとってのソレでしかない。他人が取って代わることは出来ないのだ。
 だから。
 アンナの幸せとなり得る、私たちとの未来を。
 それに気付くことが出来れば、きっと――アンナは変われるのだと。
「すでに、手に入れて……?」
 フィーナの腕から解放されたアンナは、不思議そうな瞳を彼女に向けた。
 しかし、フィーナは微笑んだまま何も言わない。
 答えは自分で掴み取るものだ。
「さ、話はおしまいよ! お腹すいたでしょ? あっちで何か食べるわよ!」
 フィーナはアンナの手を引いて瓦礫の山を降りると、そのまま引きずるように祭りへと連れて行ったのだった。


 ブルーヴァの祭りは、日が暮れるまで続いた。
 荒れ地で育つ空色葡萄の生命力。
 裏切られ殺されかけても、活き活きとした日常を取り戻す逞しい人々。
 偽りの聖女がもたらした傷は、浅くはない。
 しかし、それによって得られた『真実の希望』は、ダークセイヴァーの闇を払う一筋の光となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年10月03日


挿絵イラスト