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なんてすてきな海のせかい。(作者 夜団子
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●ゆらゆら、
 揺れる揺れる、波が揺れる。波に取られてゆらゆらと緑の葉が揺れた。
 一見なんでもない、ただ夜海に流された笹の葉たち。だがそれらは、水面に映る月を囲むように流れて崩れず、その場で漂い続けている。
 ただっぴろい水平線、穏やかな海。まるで平和そのもののような静かな世界―――。しかし、あるべきものが確かに存在しない世界。
「こまりました、こまりました……」
 呆然と月を見上げながら、譫言のように困ったとつぶやいている妖怪がいた。それもひとりふたりではない。何人もの妖怪が、水面から突き出した岩場に体を預けて途方に暮れている。
 彼らには共通点があった。ある者は髪に花が咲き、ある者は足先が根と化しており、ある者は―――そもそも体の半分が、樹木であるような。そう、彼らは皆、何某かの「植物の妖怪」なのだ。植物は潮水の下では生きられない。つまり、彼らが『海』に居るのはどう考えてもおかしい。自殺を図るようなものだ。しかし彼らはそこにいる。
「土よ、我らが故郷よ、受け皿たる『陸』よ―――いったい、どこに消えてしまったのだ」
 なぜ彼らがそこにいるのか。理由は簡単で、彼らがいるべき『陸』が、跡形もなく消え去ってしまったからだ。
 まるでカタストロフが起きてしまったような、陸で生きるものからしたら絶望でしかない、そんな世界。陸のない、『海洋の世界』が彼らの面前には広がっていた。
「ああ、どうしましょう……私たちのおうちは、どこにあるの……」
 ひとりの妖怪が、呆然としながら水面を覗き込んだ。空に昇る月が映りこんだ水面はゆらゆらとゆれている。ゆれるそこに、音もなく緑の笹舟たちが集まってきて―――。
「ぁ」
 ざぷん。
 小さな波音を立てて、ひとりの妖怪が海の中に飲み込まれた。彼女がいた岩場だけが月に照らされててらてらと光っている。
 妖怪が消えた水面に、また笹舟が浮かび上がって来た。ゆらゆら、ゆらゆらと。それらはまたゆれて水面月に紛れ浮かんでいる。

●『陸』を失った世界
「カクリヨファンタズム、忘れ去られた妖怪たちの住まう追憶の世界か……」
 そんな幽世で起きる事件の予知を携えてアメーラ・ソロモンは息をついた。見えた予知のスケールの大きさに、少し面食らったらしい。
「いやぁ、おどろいたよね。見渡す限り海しかない、アリスラビリンスみたいな幻想的な光景だったよ。恐ろしいのは……アリスラビリンスと違って幽世のすべてがそうなってしまったことかな。概念ひとつを消してしまうなんて、とんでもない話だよ」
 過去の追憶の世界ゆえに起きることなのかな……とぼやきつつ、アメーラは己の見た世界を投影魔法で宙に映す。まるで世界の終わりのような―――戦争で敗北し、カタストロフを起こしてしまったような、そんな光景が魔法越しに広がる。
「喪われた概念は『陸』。つまり、この幽世は海しかない世界だ。海自体はなんの変哲もないものだけれど、骸魂が飛び交っているせいで植物関連の妖怪がオブリビオン化の憂き目にあっている。ほらごらん」
 アメーラが指したのは海に飲まれた妖怪の姿。その妖怪が沈んだ先の水面には笹舟が浮かびゆれているが―――どうも、そのゆれ方が不自然に思える。
「浮き笹舟。水月に宿る妖だ。笹舟に関連してか、骸魂に触れた妖怪たちはこのオブリビオンに囚われている。すでにかなりの数がオブリビオン化しているうえ、まだオブリビオン化していない者たちを誘い込むのだからやっかいだよ。水流と、波に隠れた光刃による攻撃に注意かな」
 まずは囚われた妖怪たちの救助。それを第一目標とする。彼らはオブリビオンとして倒されれば解放され、なんとか岩場にしがみついていてくれるだろう。
「救助が終わったら……今回の首謀者を叩くとしよう。おそらく、猟兵たちが海で暴れていればおのずと姿を現してくれるはずだ」
 敵の予測がついているのだろう。投影魔法を打ち切りながらアメーラは予言書を開いた。輝く光が猟兵たちを幽世へと導いていく。
「今回は水中戦がメインになるからね、その用意は怠らないように―――さあ、胸の躍る戦いを、楽しみにしているよ」





第2章 ボス戦 『偉大なる海の守護者』

POW ●深海の歌
【津波を呼ぶ歌】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD ●海の畏れ
【他の海にまつわる妖怪を吸収する】事で【鯨の鎧を強化した形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ ●災厄の泡
攻撃が命中した対象に【祟りを引き起こす泡】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【恐怖による精神ダメージと祟り】による追加攻撃を与え続ける。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はペイン・フィンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ────深海より、“それ”は来る。
 海を害するすべてのものを葬るため。海に属するすべてのものを護るため。
 “それ”は正しく、古今東西すべての海を護る者たちの集合体。
 海を護る妖がいた。彼は忘れ去られる前に、己の眷属たちを取り込んで消滅に抗った。
 すべては海を護り続けるため。それはうまく行ったように思われた。
 だからこそ“それ”は想った。すべてが海ならば、生き物すべてが海に還れば。この手ですべてのものを護れるのではないか─────と。
 ゆえに奪った。『陸』という概念を。ゆえに招いた。『陸』に属する者たちを。
 ゆえに────“それ”は怒っている。招いたものたちを解放する猟兵たちを。せっかく作った海の世界を、自分が護る海の世界を、壊そうとしている彼らを。
 同時に憐れんでもいた。だから“それ”は畏れと災厄を持って猟兵たちへ迫らんとしている。猟兵たちもまた、自分の護る世界に引きずりこもうと────。
「愚かな、人間よ。愚かな、妖たちよ」
 私が、未来永劫、護ってやろう。

 “それ”に名はない。ただ“それ”を指し示すのであれば、人間はこう名付けるだろう。『偉大なる海の守護者』と。

 守護者は深い海中を自由に泳ぎ回る。その歌と力で海の中からでも海上へ攻撃をしてくる反面、海上から攻撃しても守護者に当てることは難しい。確実に攻撃を通すためには守護者のホームグラウンドである海に入ることが必要だ。
 無論人は海中で息ができず動きも制限される。そのディスアドバンテージをどう乗り越えるか。その工夫なくしては戦いにもならないことだろう。