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斬れない洋服はあんまりない

#グリードオーシャン

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#グリードオーシャン


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●辻斬り
 ちょっとだけ、その判断が、命取り。

 暑さに耐えかね、涼みに家の周りをほんの一周。それだけのために『わざわざ着替える』などやっていられない。

 男は己にそう言い聞かせ、掟破りの外出に繰り出した。
 だが、たとえ一分一秒であっても、掟を破れば罰が待つ。
「掟を破る者には――天誅」
「うわああぁぁぁ!!」
 今日もまた一人、刀の錆になる。
 その者、洋服を身に纏いて。

●ファッションの自由は失われました
 ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)がグリモアベースを訪れる。それは、新たな事件の発生を意味している。
「皆さん! 新しい作戦のお話をさせてください!」
 グリモア猟兵が話し始めることが何を意味するかは、慣れた猟兵ならすぐわかる。彼らもまたお決まりのように身構え、話の続きを待っていた。
「『グリードオーシャン』の『赤晴日島(あかはるひじま)』にてコンキスタドールが『悪の掟』を振りかざして島の人達を苦しめています! 今回の掟は『外出時は和装すべし』というものです!」
 赤晴日島はその景観などから『UDCアース』から落ちてきた島であるようだ。和の文化もあるにはあるが、衣類は一般に洋服が広まっていた。
 それが勝手に掟で『外出は和装』と縛られたのだから堪ったものではない。そもそも和服を持っていない者も多く、持っていたとしても外出の度に着用するのは面倒極まりなかった。
 外出しなければ話は早いが、生活のためにはそうも言っていられない。そのためしぶしぶ掟を守る者もいるが、掟を破る者も後を絶たず、その度にコンキスタドールの被害者が増えているのが現状だ。
「島を支配するコンキスタドールは、掟を守らなかった人達に襲い掛かり、連れ去っているようです! ですから今回の作戦は、まず敵の拠点で捕らわれた人達を解放し、それから敵を倒していく、という流れになりそうですね」
 敵の拠点の位置は判明しているので、島に到着した後は即作戦行動、となりそうだ。しかし、当然敵の存在はある。捕らわれた島民の救出は、正面突破か、敵の目を掻い潜るか。選択は猟兵達に委ねられる。
「敵の情報ですが、どうやらゾンビが大量にいるようです。あと、ボスとなるコンキスタドールは刀を使うようですね。大変な相手かもしれませんが……皆で力を合わせて頑張りましょう!」


沙雪海都
 沙雪海都(さゆきかいと)です。
 物の名前を決めるのに結構悩みます。

●フラグメント詳細
 第1章:冒険『戦渦の島で』
 敵の拠点には掟を破った島民が捕らわれていますので、助けてあげましょう。
 拠点は一部崩壊などが見られる廃ビル群となっており、廃ビルのいくつか(特定済み)に捕らわれた人々が閉じ込められています。
 人々を閉じ込めている部屋のみ、ドアや窓がきっちり修復されている模様。
 また、第2章で戦う愉快なゾンビ達が見張りとして周りにいます。
 しかし元締めのゾンビアリスがいないため、冒険の範疇で行動を起こすだけで無力化できるようです。
 ゾンビアリスごと倒さないと無限湧きなのでここで頑張って倒すことに意味はありません。ご注意を。

 第2章:集団戦『ゾンビアリスと愉快なゾンビ達』
 人々の避難等は第1章の中で完結しますので、ここからは戦闘一本に集中できます。
 廃ビル群は窓などが抜けていて中に侵入することもできるかと思います。

 第3章:ボス戦『ミコト』
 刀使い。まあ力勝負になるのではないかなと思います。

●MSのキャパシティ
 合わせプレイングはお受けできません。申し訳ないです。
 ゆったりペースで進行予定です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『戦渦の島で』

POW   :    敵の拠点を正面から叩き潰す

SPD   :    ゲリラ戦で敵を恐怖させる

WIZ   :    難民の救助に回る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ソナタ・アーティライエ
その場で斬り捨てられて命を落とされたのではなかったのですね
その事に一先ずはホッとしましたけれど
身勝手な掟を押し付け、破った者を捕らえ閉じ込めてしまう
そのような所業を放ってはおけないです

荒事は苦手ですし、ゾンビさんは多すぎます
全て倒すのも気づかれずに助け出す事も難しいでしょう
なら……
祈りに応え顕現するのは【天の回廊】
廃ビルも飲み込む形で作られる迷宮で
捕らえられている人たちの所まで道を作りましょう

わたしとアマデウスが先頭と殿を務めて守りながら脱出
迷宮である程度分散と隔離できるので敵との遭遇は減らせる筈
襲われた際には、除霊や破魔の力を込めたオーラで守り
空間入れ替えで強制的に他所へ跳ばして排除しますね



●天の回廊、聖者の導き
 少し風が吹いていた。流されそうになる髪を軽く手で押さえながら、ソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は隠れて敵の拠点を伺っていた。
(その場で斬り捨てられて命を落とされたわけではなかったのは安心しましたけれど……身勝手な掟を押し付け、破った者を捕らえ閉じ込めてしまう所業を放ってはおけないです)
 今も目に見えぬ恐怖が島民達の心を押し潰している。見過ごすわけにはいかなかった。
 事前情報から、捕らわれた島民達がいる廃ビルはすぐにわかった。そして、警戒に当たっているゾンビ達の姿も数多く。
(全て倒すのも気づかれずに助け出す事も難しいでしょう。なら……)
 ソナタ自身、荒事が苦手ときている。ゾンビ達に真っ向から挑むのは不可能。かと言って全てのゾンビの目をすり抜けるのも困難。それなら、とソナタは祈りを捧げる。
『迷える子羊、導く御手……』
 島が揺れる。見張りのゾンビ達が異変に気付いたのも束の間、地面から白く輝く壁がせり上がり、戦場を一気に分断した。
「わ! 何ー!?」
「みんなー、どこ行ったー!?」
 それは巨大な迷宮だった。仲間達とはぐれ、迷宮内で騒ぎ出すゾンビ達。出口を探して右往左往していることだろう。
 壁は硬く、ゾンビ達に破壊されることはない。ソナタの存在も気づかれていないようだ。
 ソナタは入口から迷宮内部へ侵入すると、空間支配の権能を利用して安全な通路へ跳びながら、ゾンビ達に見つかることなく島民達が捕らわれている廃ビルの一つに辿り着いた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
 扉を叩き、内部へと声を掛ける。するとすぐにくぐもった声が返ってきた。
「た……助けてくれ!」
「今、助けます」
 ソナタはノブに手を掛けたが、動かない。鍵がかかっているようだ。
「アマデウス、お願いします」
 固く閉ざされた扉を前に、ソナタは傍らの銀竜に声を掛ける。銀竜アマデウスはくるりと宙で翻り、勢いよく扉へ体当たりしてぶち破った。倒れた扉を踏み越えて中に入ると、床に座り込み、項垂れて動かない島民達の姿が見て取れた。
 怪我をしている者もいる。衣服も所々損傷が見られ、監禁生活に疲れ切っている様子だった。
「助かった……」
 島民の一人がソナタの姿に安堵していた。ソナタの声に返事をしたのはこの者だったようだ。
 おそらく捕らわれてから時間が浅いのだろう。他の島民達よりは元気な様子だったが、破れた袖の下に血が滲んでいた。
 痛ましい――チクリと胸が痛んだが、ソナタは努めて前向きに振舞う。
「わたしとアマデウスが皆さんを守ります。外のゾンビ達も今はこちらに近づけませんので、今のうちに脱出しましょう」
 澄んだ声が部屋に通る。助けが来た、その安心感に少し力を取り戻したのか、捕らわれていた島民達がゆっくりと立ち上がり、ソナタの元へ。
「アマデウス、殿の防衛は任せます」
 銀竜はソナタの指示にコクリと頷き、一列に並ぶ島民達の最後尾についた。先導するソナタは行きと同様に迷宮の中から安全な通路を選び出す。ゾンビ達の声が壁一枚向こう側から聞こえることもあったが、うまくやり過ごして遭遇は免れた。
「もうすぐ出口です」
 白い光に包まれた迷宮を抜けた先はビル群の外れ。ここまで来ればもう追っ手が来ることはない。
「このまま皆さんは逃げてください。わたしはまだ、やることがありますので」
「わかった。本当に……ありがとう」
 島民達はソナタに頭を下げ、その場から離れていく。
 捕らわれの島民達はまだビル群の中に残っている。ソナタは再び作戦のために走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コトト・スターチス(サポート)
辻ヒーラーのコトトですっ
皆さんをいやせるようにがんばります!

ぼくは回復や情報収集などのサポートで動こうかなとおもいます
ケガしている方やピンチな方(特に一般人)がいれば『いやしのてのひら』で【救助活動】します!
辻ヒーラーとしてぜったいにまもって治します!

回復がいらなければ、まわりの状況をよく見て【情報収集】します
必要ならはドローンを使ったり『ことなまっ☆』で意見を求めますね
そうして分析してえられたデータをいかして、皆さんがばっちり動けるように支援したいです!

※ネタ・シリアスどちらもOKですが、迷惑行為や公序良俗に反する行動はしません
 ただしやむを得ない時には【ハッキング】を使用することがあります



●コトトのニコニコヒーリング生放送!
 廃ビル群の間を配信用ドローンが飛び抜けていく。辺りを一通り撮影した後、ゆっくりと発射地点に戻ってきた。
 カメラがくるりと向いた、その場所にいたのは。
「今日も一日一ヒールっ! コトトです!」
 カメラに向かってキュンキュンラブリーな決めポーズと共に、コトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)がお決まりの挨拶をぴしっと決めた。
『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
『わこつー』
『KTTちゃんktkr!!』
『今日どこー?』
 配信の視聴画面にはコメントが一気に流れてくる。コトトはいつも通りの辻ヒール配信を開始した。
「今日ぼくは、ひょんなことからグリードオーシャンという世界の、赤晴日島に来ています! 先程お兄ちゃんたちに見てもらった廃ビル群に、なんとこの島の人達が捕らわれてしまっているそうです!」
『ひでー』
『これあかんやつやん!』
『でもコトトちゃんと一緒に監禁されるならOKです!』
 コトトの言動に様々な反応が返ってくる。現場の危機感も深刻に捉える者や実感のなさそうな者もいるようだが、視聴者はそれでいい。
 配信は楽しみの一つであるし、こうして生放送をすることで多くの人から知識を借りることができる。武器や防具のパワーも上がる。
 頑張るコトトの原動力なのだ。そんなコトトを見て楽しんでくれるなら、それで十分。
 コトトはカメラに向かって呼び掛ける。
「廃ビルの周りにはゾンビさんたちがたくさんいますね! どうしましょう?」
 何の策もなく突っ込むわけにはいかない。三人寄れば文殊の知恵と言うが、ここには画面を通じて何百、何千という人間が集っている。
 コトトの相談にコメントが流れてきた。
『ゾンビ……女の子……ひらめいた』
『←通報した』
『なんか殴れば倒せそう?』
『数多過ぎね?』
『ここはコトトちゃんの聖s(このコメントは検閲されました)』
『コトトちゃんは辻ヒーラー……あっ』
『ヒールで倒せるんじゃね?』
『辻ヒーラー天敵くせぇwww』
『ヒールで倒せは草』
『マジでありそうだから困る>ヒールで倒せる』
 などなど。それらを見て、コトトはぽんと手を叩く。
「なるほど……お兄ちゃんたち、ありがとうございます! 辻ヒーラーとして、ヒール、やってみたいと思います!」
 ゾンビにヒール。言われてみればうまくいきそうな気がした。
「コトト、行ってきますにゃー!」
 ドローンに自身を追わせ、コトトは廃ビルに向かって走り出した。突然現れたコトトにゾンビ達も気づく。
「敵が来たー!」
「みんなーやっつけろー!」
 ゾンビ達の外見はコトトにも負けず劣らずの幼女っぷりで、メイド服まで着ているのだから視聴者の寵愛対象にならないはずがなかった。
『( ゚∀゚)o彡゜幼女!幼女!』
『コトトちゃん頑張れー!』
『にゃんにゃん大戦かな?』
『●REC』
『これでご飯3杯はいける』
『間に挟まれたい人生だった』
 全てのコメントがコトトの力に。前方に伸ばした両手が温かく優しい光を放ち始める。
「いいこいいこしちゃいますにゃー!」
 光を敏感に察知したゾンビ達の動きが一瞬にして強張った。
「あの光嫌ー!」
「きゃー来ないでー」
 コトトに殺到しようとしていたゾンビ達は、ヒールの光を見て今度は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。ざあっと波が引くようにして進路が開けた。
 コトトは深追いすることなく、島民達が捕らわれた廃ビルまで一直線。
「着きました! 開けます! ……開きません!」
 喋りながら手を伸ばした扉のノブは動かなかった。戸締りはしっかりしており、敵もタダで返すつもりはないようだ。
 どうにか突破しなければならない。しかし、再生数とコメントにパワーを貰ったコトトなら――。
『ひっさつ! いやしとさばきのファイアーですっ!』
 扉から離れたコトトは一瞬にして81個の炎を生成、それを全部纏めて扉に放った。最初の10個ほどが扉の真ん中に刺さり、バキッと貫いていく。他の炎で扉の枠にくっつく残りの部分を綺麗に削り取り、入口が完成した。
「辻ヒーラーのコトトです! 助けに来ましたよー!」
 廃ビルに入って声を掛ける。閉じ込められていた島民達はコトトの元気な声に反応し、蠢き始めた。
「助かっ……た?」
「明るい……」
 自分の足で立ち上がる者、手を使って這って来る者、島民の状態には差があった。
「あっ、ケガをしている方もいますね! 辻ヒーラーの出番です!」
 コトトはてきぱきと癒しの光と炎を届けて回った。そうしてどうにか、全員が自分の足で立って歩けるまでに回復した。
「別の敵が来ちゃうかもしれません! 早く逃げましょう!」
 ゾンビ達は未だコトトのヒールを恐れて近寄ってこない。今のうちに、とコトトは島民達を連れ、廃ビルを抜け出した。
 ゾンビ達を追い払うヒールは安全な場所へ逃げるまで緩めることなく。そうしてコトトは島民達の救出に成功した。
「こんな小さい子が……勇気あるね。ありがとう」
「いえいえ! これがぼくのお仕事ですから! さ、皆さんはこのまま逃げちゃってください!」
 頭を下げた後、逃げていく島民達の姿がカメラを通して視聴者の元へ届けられていた。コメントには賞賛の嵐。
『お疲れ様ー!』
『88888888888』
『いいもん見たなー』
『ジュースおごってあげたい』
『今日も最高オブ最高でした!』
「えへへ……お兄ちゃんたちも、どうもありがとー!」
 はにかむコトトの表情は、大量の萌え死コメントを生み出していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

久瀬・了介
オブリビオンは殺す。必ず殺す。
すぐにでもボスの元へ行こうとする衝動を無理矢理抑える。民間人の保護は軍人の責任であり義務。疎かにしては死んだ戦友に顔向け出来ない。
UC【雷人】で体を電磁場で包み空中浮遊。
上空から目標のビルへ突入する。見張り達へ放電を放ち麻痺させ、その隙に内部へ殴り込む。麻痺している間に迅速に作戦を遂行する。文字通り電撃戦だ。
人々の捕らえられている部屋を見つけたら「助けに来た。扉から離れていろ」と声をかけて鍵をハンドキャノンで破壊、救出する。
ビル内の全員を助け出したら、先ず自分が外へ飛び出し敵の注意を引き付ける。
再度放電で見張りの動きを止め、その間に人々を安全な場所まで逃がそう。



●抗う者
 久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)は廃ビルの陰で壁に背を預けていた。ガラスの抜けた窓枠を左手で握り、自分の身が衝動に駆られて飛び出していくのを必死に抑え込んでいる。
(オブリビオンは殺す。必ず殺す)
 そこらに散らばるゾンビ達などどうでもいい。このクソッタレな事件を起こした犯人を、この手で、必ず――。
「……うああぁっっ!!」
 了介は叫んだかと思うと廃ビルの壁に向き直り、反動をつけて思い切り頭突きをかました。ゴリッと壁が放射状に抉れ、割れた欠片がぱらぱらと壁から、額から落ちていく。
 つーっと一筋、赤い液体が顔の真ん中を垂れていく。
「違う……違う!」
 痛みが了介を冷静にさせる。
 自分は何だ――軍人だ。目的は何だ――民間人の保護だ。
 先走るな。衝動に流されるな。責務を全うしなければ、死んだ戦友に合わせる顔がない。
 荒く呼吸しながら、了介は一歩ずつ、足が地に着いたのを確かめるような歩調で廃ビルの端に寄り、状況を伺う。
 島民達が捕らえられている廃ビルはまだある。了介はやや遠い一つの廃ビルに目を付けた。窓がしっかり塞がれたそこは、下から窓を数えていくとどうやら三階のようだった。
 侵入、解放、脱出、全てにおいて難度が上がることだろう。
 だが、考えるまでもない。
『発雷』
 了介は動いた。足元から天を穿つほどに逆立つ黒い雷を纏い、軽く足元を蹴り戦場、宙へ飛び立つ。急激な弧を描き反転して、目的の部屋の一つ下、壊れた窓の侵入口を目指していた。
「何か出てきた!」
「飛んでる! 飛んでるよー!」
 ゾンビ達が地上で騒ぎ出した。追い縋ろうと駆け出すものも見える。
 集まられては厄介だ。
「黙れ、動くな」
 纏う黒い雷が地上を襲った。広範囲に降り注ぐ雷の雨はゾンビ達を打ち、痺れさせる。
「あわわわわ!」
「びりびりする~!」
 ゾンビ達はバタバタと倒れていく。行動不能にしてしまえばそれで十分。雷がどれほどの効果を発揮したかはゾンビ達の悲鳴で確認し、了介は目的の廃ビルへ飛び込んだ。
 ひびの入った階段を一跳び、踊り場からもう一跳びで越える。
 御丁寧に南京錠が取り付けられた部屋がある。外から見た位置関係からしても、ここが監禁部屋に間違いない。了介は扉を一つ叩き、声を掛ける。
「助けに来た。扉から離れていろ」
「……本当か!?」
「ああ。だが時間がない。吹き飛ばされたくなかったら早く離れろ」
「わ、わかった」
 数秒、ごそごそと部屋から聞こえた物音が静まるのを確認し、了介はハンドキャノンを構えた。南京錠を狙い発砲すると、ゴン、と鉄球が衝突したかのような重い衝突音が響き、南京錠が弾け飛んだ。ぷらぷら揺れる役目を失ったノブごと扉を蹴ると、キィィと悲鳴を上げて開いた。
「自力で立てる者は立て。立てない者がいたら手を貸してやれ。ビルの出口までは先導する。その後は自分が陽動する間に逃げろ」
 手短にプランを伝え、島民達を脱出させる。ひびの入った階段も島民達が全員下りるまで保ったようだ。
 一旦は痺れさせたゾンビ達が、また動き出そうとしていた。
「向こう側へ行け。それで助かる」
「わかった。……ありがとう、恩に着るよ」
 島民達の感謝の言葉は背に受ける。最後の指示を出した了介はすでに雷を纏い走り出していた。
「俺が……相手だ!」
 衝動を発散するかのように、黒い雷をド派手に放出してみせた。ドーム状の雷が膨れ上がりながら周囲にいたゾンビ達を次々と巻き込んでいく。
「また~しびれる~!」
「うわ~逃げろ逃げろ~!!」
 件の廃ビルに集まりかけていたゾンビ達は再び倒れ、新たに集まろうとしていたゾンビ達は雷を嫌って散っていく。
 うまく逃げだした島民達の背中が遠く見えなくなるまで、了介は黒き雷の化身となって辺りを蹂躙していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
掟かぁ、人以外も対象だったりするのかにゃ?。兎も角、先ずは捕らわれた人の救出にゃね。
ふんふん、場所が分かってるなら18代目様の力【スカルキャット】でいくにゃん。
レフティは子猫に変身し、召喚した頭蓋骨を被って装備。
肉球で足音を消し、更に頭蓋骨の特性「装備者と共に発見され難くなる」で隠密性を高めてくにゃん。
髭感知でゾンビ達の位置を見切り、斬鉄爪で壁や扉を切り開き抜け道を作って脱出ルートを確保するにゃあ。
こそこそと人々を誘導しつつ、敵に見つかった時は応援を呼ばれる前に、死角からの奇襲攻撃していくにゃ。
18代目様は一撃離脱の狩人スタイルだけど気分はスパイキャットにゃん。



●変身・スカルキャット
「先ずは捕らわれた人の救出にゃね。起動(イグニッション)!」
 現場を訪れたレフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)は周囲を一瞥した後、斬鉄爪の子猫へと変身した。
 同時に現れた頭蓋骨が浮いていた。それをレフティは軽やかにジャンプしてキャッチ。一回転して着地した後、すちゃっと頭に被った。
「ふんふん、絶好調にゃあ」
 シャキーン、などと効果音が聞こえてきそうだった。

 さて、島民が捕らわれている場所はすでに把握済みだ。案の定、件の廃ビルの周辺一帯にはゾンビ達が徘徊している。すでに猟兵の奪還作戦がいくつか成功を収めており、警戒を強めているはず――ではあったが、如何せん愉快なゾンビ達であるから、緊張感にやや欠ける。
 それでも単純な数で言えば、襲撃初期よりは密なはずである。しかし密であればあるほど、体が小さく小回りが利くレフティにとっては有利になるのだ。
「この頭蓋骨は隠密装備……そう簡単に見つかると思うにゃあ」
 頃合いを見計らい、レフティはぴゅんと飛び出した。白くふわふわの体毛が風を切る。
 ゾンビ達も見ず知らずの何者かが現れれば声を上げるくらいの警戒はしていたが、まさかそれが下から来るとは夢にも思わない。それが隠密効果を重ねていればなおさらで、レフティは悠々とゾンビ達の足元をすり抜けていく。
「わー。なんか足元がすーすーする!」
「涼しいねー!」
 とは、レフティが通り抜けた直後のゾンビ達の弁である。暢気なものだ。
 高速で移動する中、ゾンビ達の動きを一々目で追っているわけにもいかない。レフティの進路を決めていたのは、ぴくぴく跳ねる髭だった。
 髭で瞬時にゾンビ達の位置を感知。体勢のわずかな変化も捉え、不規則に動き回るゾンビ達をひょいひょいと回避していった。
「到着にゃ」
 監禁部屋に辿り着く。突貫工事の木の扉。斬鉄爪を以てすれば朝飯前だ。にゃにゃにゃにゃ、と振り回して真四角の小さな穴を開けた。
 扉を完全に突き破るのは帰る時で十分。今は違和感を最小限に留めてレフティは部屋へ侵入する。
「助けに来たにゃあ!」
 薄暗い部屋に声が響く。辺りから布の擦れるような音、床を鳴らすような音がちらほら聞こえてきた。
「助け……? 俺達、助かった……?」
「嘘……! 助けに来てくれる人がいるなんて!」
 絶望が希望へ。力のない声が、少しだけ前向きに変わった。捕らわれていた島民達は衰弱こそ見られるものの、死者もなく無事なようだ。
「レフティが来たからもう安心にゃ。さぁ、皆で逃げるにゃあ!」
 レフティが先導し、いざ帰路へ――とは言え行きとは異なり、ここからは島民達を引き連れなければならず、俊敏性が生かせない。レフティは一層慎重に事を運ぶ。
 入ってきた扉の小窓から顔を出し、まず廃ビルが面する通りにゾンビ達がいないことを確認する。
「よし、行くにゃ」
 扉を爪で裂き、完全に解体した。レフティの後に続き、島民達もぞろぞろと小走りについていく。裏街道へ入り、真っ直ぐ廃ビル群の外側へ。
 順調に見えたが、やはり大人数での移動は危険が伴う。肉球で足音を消していたレフティとは違い、島民達はどう頑張っても多少の足音は立ってしまう。
 一定のリスクと隣り合わせの中でも、どうにかこうにか進んでいたレフティ一行だったが、
「あっ!」
「……!」
 後方からかかった声にレフティは機敏に反応した。子供の――ゾンビの声だった。ひょっこり顔を出している姿は、まだ一体。
「みんな――」
「させないにゃ!」
 トン、トトン、とレフティはビルの壁を足場に超加速。ゾンビの頭上から爪を振り上げ一撃。ざしゅっ、と意識を刈り地面へ転がした。
「何だかスパイな気分にゃ……。皆、急ぐにゃあ! ゴールはすぐそこにゃ!」
 レフティは再び素早く先頭に躍り出て、島民達の行く先を示す。ゾンビの応援を呼ばせなかったことでできた猶予で島民達は力を振り絞り逃げた。

 そうしてようやく、コンクリートジャングルから脱出を成し遂げた。ゾンビ達のテリトリーから十分離れ、もう追っ手はやってこない。
「皆はこのまま離れるといいにゃ。もうゾンビ達は来ないから、大変だったら無理しなくていいにゃよ」
「ありがとうございます。助かりました」
 そう紳士的に礼を述べたのはサイボーグの男性だった。よくよく見れば、島民達の陰にちらりとシャーマンズゴーストの姿も見えた。
 この島はUDCアースから落ちてきたもの。彼らもまた、末裔としてこの島に住み続けているのだろう。
「掟はなんでもかんでも対象にしてたのにゃあね。許せないにゃあ」
 レフティはゆっくりとその場を離れていく島民達を見送った後、決意を新たに廃ビル群を見据えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ゾンビアリスと愉快なゾンビ達』

POW   :    あなたが欲しいの♡
装備中のアイテム「【吸血&吸精能力の寄生触手(ワーム型)】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD   :    みんなであそぼうよ♡
召喚したレベル×1体の【陽気に歌って踊る愉快なゾンビ】に【吸血牙と吸精角と寄生触手(ワーム型)】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
WIZ   :    わたしのおうちに招待するわ♡
【玩具と寄生触手(ワーム型)】で武装した【陽気に歌って踊る愉快なゾンビ】の幽霊をレベル×5体乗せた【如何にもな雰囲気の屋敷orお城】を召喚する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●愉快に任せちゃまずかった
「ん~……騒がしくない~?」
 配下のゾンビ達に監禁した島民達の監視を任せていたものの、外の物音が何だか騒がしく、ゾンビアリス達が拠点の廃ビルから出てきた。お昼寝を邪魔されちょっぴり不機嫌そうである。
「えー!? なにこれー!?」
 そして発見したのは、全てもぬけの殻となった監禁部屋だった。
「あー、いつの間にー」
「みんなやられちゃったー」
 愉快なゾンビ達が弁明するも、反省の色は薄い。愉快なのだから仕方ない。
「もー、私が怒られちゃうじゃなーい! どうしよ、どうしよー!?」
 頭を押さえてあわあわと慌てふためく。そうして辿り着いたのは。
「こうなったらー……きっと島民を奪っていった奴らはまた来ると思うからー、そいつらを捕えて代わりにしちゃおうっと」
 ゾンビアリスはちょっぴりやる気だ。その周りを、愉快なゾンビ達はくるくる陽気に踊っていた。
久瀬・了介
愉快そうだな、御同輩。
こっちは衝動を抑えないとまともに歩く事も出来ないというのに、随分と気楽に動き回ってくれる。
うらやましいな…いや、恨めしいと言っておこうか。気楽に愉快に、貴様らは人の命を、自由を、幸せを奪う。掟?和装?ふざけるな。
殺す。殺さなければならない。いや、違うこいつらは既に死体だ壊す壊せ滅ぼせ消し去れ……

オブリビオンに対する復讐と殺戮の衝動に敢えて身を任せる。民間人は全て避難し終えた。理性的に振る舞う必要は無い。自身に暴走を許す。
【天変地異】発動。「雷」属性の「嵐」を起こす。ゾンビ共に【呪詛】の宿った高圧電流が豪雨の様に降り注ぎ、竜巻の様に渦を巻く。
踊れ、楽しめ。そしてくたばれ。



●衝動を解放せよ
「愉快そうだな、御同輩」
「んん? あなたはー……」
 ゾンビアリスと愉快なゾンビ達の前に了介が姿を現す。未だ衝動を抑えている状態のため、足元がやや覚束ない。
「こっちは衝動を抑えないとまともに歩く事も出来ないというのに、随分と気楽に動き回ってくれる」
 半ば愚痴のように言葉を零す。
 オブリビオンへの殺戮・破壊衝動は、平時ではただの枷に成り下がる。縛られることなく陽気に踊り回るゾンビ達とは対極にある存在だ。
「うらやましいな……いや、恨めしいと言っておこうか。気楽に愉快に、貴様らは人の命を、自由を、幸せを奪う」
 声に沸々と湧き上がる怒り、恨みが籠っていく。
「掟? 和装? ……ふざけるな」
「ふざけてなんかないんだけどなー……あ、もしかして、ここにいた島民達を逃がしたのはあなた? だったら、代わりにあなたを捕まえなきゃねー」
 ゾンビアリスは空に向けて高く両手を広げた。
「あなたをおうちに招待するわ♪」
 空が一瞬輝いたかと思うと、辺り一面一気に影に包まれた。どすん、と落下してきたのは大きな屋敷。そこには陽気に歌って踊る愉快なゾンビの幽霊がパーティーを開いているかのように踊り狂う。
 触手がうねる極上ホラーハウスの登場だ。
「……殺す」
 ホラーハウスの影の中に立つ了介の眼光が不気味に迸った。意識を、理性を、この場ではあえて衝動の中へ投じていく。
 もうこの場に守るべきものはない。必要なのは、目の前のものを破壊し、殺戮するための力だ。
「殺さなければならない……いや、違うこいつらは既に死体だ壊す壊せ滅ぼせ消し去れ……」
「何言ってるの? よくわかんないー。まあいっか。やっちゃえー」
「やっちゃえー」
 屋根のてっぺんからゾンビアリスと愉快なゾンビ達が指示すると、屋敷が武装している寄生触手がぶわんぶわんと宙に踊りながら了介へ振り下ろされた。
「滅びろ……何もかも!」
 了介の体から雷が迸った。地から天へと逆巻く雷はやがて嵐となり、振り下ろされる触手に真正面から襲い掛かる。
「殺す……殺す殺す殺スコろスコロスコロスコロス――コロス!!」
 力の源は衝動の奔流。それがそのまま雷の嵐となって現れ、触手を焼き焦がしていく。正面衝突して互いに弾かれはするものの、雷の嵐は二の矢が速い。全てを滅ぼす――衝動に身を任せた了介の力がゾンビアリスの触手を上回っていた。
「ちょ、ちょっとヤバイんですけどー……」
「ヤバーいー」
 ゾンビアリスの表情が焦燥に染まる。愉快なゾンビや幽霊達はおどけて口調を繰り返す。
 触手を跳ね除け屋敷の上空まで立ち昇った雷は、台風のように広く大きな渦を形成した。激しく電撃を散らしながら回転し、増幅された膨大な力がより立体的に、長く竜巻の形状を成した。
「踊れ、楽しめ。そしてくたばれ」
 立てた親指を地面に突き刺すように下へ向けて振り下ろすと、呼応して雷の竜巻が豪雨のように屋敷全体へと降り注いだ。バリバリと雷鳴が耳を劈く。高圧電流に打たれた屋根は飛び、壁は上から下へメリメリと剥がされた。骨組みの木材は黒炭へと変貌し、触手は黒焦げとなって地面に横たわる。
「うぎゅぅ……しび、れ、た……」
 幽霊達は声を上げる間もなく一瞬で消滅。電撃で体が痺れたゾンビアリスと愉快なゾンビ達は千鳥足のようにふらつきながら、最後に唇を震わせて瓦礫の中に倒れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
……ってことはゾンビ達にボスも和装かにゃ?。
今度はミュージックエナジーで音楽を提供しつつ、起動!【キャットヒーロー】。
子猫のヒーローに変身した僕もダンスを踊る様にくるりふわりと舞い、呪いのオーラ防御を纏った四肢を武器に、攻撃を弾いたり受け流してくにゃん。
……えぇ、それでどうやって飛んでるんだろ?ゾンビとは。兎も角、墜とすなら何処かの電気ネズミくんを真似て、こんな感じかな?。
にぃやぁ~、みゃあ!(唐突な変化、轟音のミュージックエナジーによる気絶攻撃と放電技キャットスパークを合わせて)墜ちてきたら素早くトドメのVスラッシュを見舞ってくにゃあ。



●キャットヒーロー・レフティ
「和装じゃなきゃダメって掟だから、ゾンビ達にボスも和装かにゃ?」
 そんな疑問を持ったレフティの前に現れた愉快なゾンビの主、ゾンビアリスはワンピース風のメイド服を着ていた。
「和装じゃないにゃあ!?」
「まあそれはほら、掟って島民達のためにあるものだし、私はノーカンノーカン」
 掟はコンキスタドールにとって実に都合がよいものだった。
「なんだか釈然としないにゃね……まあいいにゃ。この島の人を苦しめた報い、受けてもらうにゃあ」
 そう宣言すると、レフティの周囲に軽快な音楽が響き渡り始めた。レフティが纏うミュージックエナジーが奏でているのだ。
 リズムに乗り、テンションを上げていくレフティ。ゾンビアリスと愉快なゾンビ達はその様子をただ黙って見ている。
 知ってか知らずか、彼女達はこの手の『礼節』をよく弁えていた。
『起動(イグニッション)! キャットヒーロー』
 ほんわかした雰囲気のレフティにしては、威勢のいい掛け声だった。ポーズを決めると、ふわんと子猫の英霊が宙に飛び出してきた。しばしくるくると舞い踊り、やがてレフティの体にすーっと降りてくる。
 降霊術を視覚化したならば、おそらくこんな感じなのだろう。英霊というヒーローパワーを新たに宿した子猫レフティがゾンビ軍団に立ち向かう。
「さぁ、いくにゃあ!」
「ようやく戦いねー! みんなー、あーそびーましょー!!」
 ゾンビアリスは口元に手を当てて声の拡散を助け、周囲の愉快なゾンビ達を呼び集めた。レフティにも負けず陽気に歌って踊るゾンビの輪が二重、三重に広がっていく。
「よーし、みんなも、へんしーん!」
 パン、とゾンビアリスが手を叩くと、吸血牙と吸精角と寄生触手(ワーム型)がにょきにょきにょきっ、と生えてきた。可愛らしい姿ながら、人を襲いそうな悪っぽさも満ちている。
「いけいけー、ごーごー!!」
 ゾンビテイマーとなったゾンビアリスの声に、愉快なゾンビ達(変身体)が一斉に空へ飛び立った。イナゴの大群を思わせるように空を埋め尽くす愉快なゾンビ達。レフティの眼前に広がる光景は恐ろしい。
「……えぇ、それでどうやって飛んでるにゃあ……」
 レフティは割とガチめにドン引きだった。羽根も翼もなく、ただ触手を揺らしながらふわふわ浮いているような状態だ。これはこれで気持ちが萎えてくる。
「……ダメにゃダメにゃ。気を取り直していくにゃあ!」
 肉球でぽふぽふと自分の頬を叩いて、空に広がるゾンビの群れを見上げた。
 レフティの武器は自身の四肢だ。纏った呪いのオーラが怪しく輝く。
 ゾンビ達は一点の目標を目掛けて殺到してきた。右から、正面から、左から、と広範囲をカバーしながら攻撃を受け止め、またはいなしていかなければならない。
 音楽は戦闘のリズムを保ち、攻撃と防御の精密さを上げる役割も果たす。触手が左右から飛んで来れば、タンタンタタン、と左前脚、右前脚、左後脚と華麗に捌き、寄せ付けない。
 ゾンビ達は次に牙を剥いた。噛みつかれればひとたまりもなさそうな鋭い牙だ。
 相打ちでも構わない。そう言わんばかりにゾンビ達は一直線にレフティへ突っ込んできた。それを今度はステップをタンタタ、タタンでひらりと回避。回りながら、次のゾンビがどこから来るか、しっかり見定めていた。
 ゾンビ達は第一陣、第二陣と集まり、レフティへの攻撃も激しくなる。
「随分と集まったようにゃね……丁度いいにゃ」
 ゾンビ達の攻撃を避け続けながら、レフティはさりげなく移動を始めていた。攻撃に夢中のゾンビ達は気づかない。
 ゾンビ達にしてみれば押せ押せ行け行けムードだったが、その実、確実にレフティが仕掛ける罠へと近づいていた。
「何処かの電気ネズミくんを真似るなら、こんな感じかにゃ!」
 一瞬、ゾンビ達の攻撃に隙が出来たのを見逃さなかった。レフティは脱兎の如く駆けた。
 すぐ近くには廃ビルがある。一瞬の隙から廃ビルに辿り着ける距離まで移動していたのだ。
 壊れた窓、その窓枠は絶好の足場になる。レフティは三角跳びの要領で跳躍、空中のゾンビの群れに飛び込んだ。
「にぃやぁ~、みゃあ!」
 閃光が迸った。雷撃と轟音が走った。必殺技『キャットスパーク』とミュージックエナジーによる気絶攻撃の合わせ技が四方八方に放たれ、飛行するゾンビ達に直撃した。
「ひゃあああばばばばばー!」
 痺れて気を失ったゾンビ達が落下していく。とある世界の理では、ひこうタイプにはでんき技がこうかばつぐんなのであった。
 くるくると回転しながらレフティは着地した。そこにはゾンビの雨が降る。
「トドメをお見舞いするにゃあ!! にゃにゃあ~~っ!!」
 シャキン、と鋭く研がれた両の爪を剥き出しにした。変身したことで得た高速移動の力で雨の中を一気に駆け抜け、交差させた爪を左右に振り抜く。その軌道はVの字を描き、落下するゾンビ達をたちどころに断っていた。
「えぇ~!? あんなにいたのにぃ!!」
 愉快なゾンビ達を全て真っ二つにされ、思わず頭を抱えるゾンビアリス。
「お前もにゃあ!!」
 レフティの狙いは愉快なゾンビ達のみにあらず。その元締め、ゾンビアリスも巻き込んで。
 ゾンビアリスに自分の身を守る手段はなかった。交差した瞬間、その体は綺麗なVの字によって、上半身と下半身に分解されていた。
「うわぁん、ゾンビなのに、復活できないぃ……」
 どさりと投げ出された上半身も、ばたっと倒れた下半身も、やがて土へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
捕らえられていた人たちは無事助け出せたものの
元凶であるコンキスタドールを放っておいてはまた……
皆様が気軽に外を歩ける自由を取り戻すため、頑張ります

なにやら楽しそうなところをお邪魔してしまってすみません
けれど悪の掟を無くすため、コンキスタドールの許へと向かわねばならないのです
邪魔をされるというのなら、わたしなりのやり方で押し通らせて頂きます
思いに応え白銀のヴァイオリンへと姿を変えるアマデウス
奏でられるのは【神理絃奏『幻創庭園』】の調べ
敵UCで召喚された屋敷orお城などが光となって解け
浄化・除霊の属性を与えられた光の蝶たちへと生まれ変わります
不死者の皆様が、正しき眠りに導かれますように

アドリブ歓迎



●光の調べ
「なにやら楽しそうなところをお邪魔してしまってすみません」
 相手はコンキスタドールだというのに。ソナタは畏まった態度で敵と接触する。
「この子達はノー天気だからいいけどさー、ちょっと私はご機嫌ナナメだよねー」
 ぷんぷん、と湯気が出そうな態度を取るゾンビアリス。彼女の障害となるのは、他ならぬソナタ自身である。
「島の方々はわたしと仲間の皆様で助けさせていただきました。ですが、元凶となるコンキスタドールを放っておいては、また同じことの繰り返し……ですから、わたしはその元凶の許へと向かわねばならないのです」
「ふーん……あなたを通すと、それこそこっぴどく叱られるし、通すわけないよね」
「……でしたら、わたしなりのやり方で押し通らせて頂きます」
 コンキスタドールを排除することで島の未来は拓かれる。かつての平穏を、再びこの島に――。
 想いを胸に、ソナタは傍らの銀竜、アマデウスに手を伸ばした。
 アマデウスは想いに応え、その姿を白銀のヴァイオリンへと変化させる。すっ、とソナタの手に収まる様子は芸術品のように均整が取れて美しい。
「私の力、見せてあげる! お城さん、カモーン!」
 ゾンビアリスが空に向かって呼び掛けると、四角く影が現れたところへズドンと城が落ちてきた。イソギンチャクのような極彩色の触手を生やした、西洋風のゲテモノ城だった。
 ぴょんぴょんぴょん、とゾンビアリスと愉快なゾンビ達は城に飛び乗る。
「捕まえちゃってー!」
 ゾンビアリスの号令がかかると、触手はうねうねと空を泳ぎながらソナタのもとへと向かって来た。
 捕まってしまえば終わりだ。ソナタはヴァイオリンを構える安定しない状態の中で、トントンと左右後方へ跳び、足元を狙ってくる触手達を回避する。
「早く捕まっちゃえばー?」
「そういうわけには参りません。城に触手……では、こちらを奏でましょう」
 弦に弓を重ねた。紡ぎ出される音色はこの世のものとは思えないほどに透き通り、世界へ遍く広がっていく。人のみならず、コンキスタドールのみならず、万物が耳を傾けている――そんな錯覚さえ覚えてしまうほどに、清廉とした音色だった。
『いつかは醒める幻と知りながら、それでも誰もが夢をみる』
 ソナタは詩を口ずさむ。詩は明確に、ソナタが奏でる音色に意味を与えた。
 無機物が見る夢は――光の小動物型疑似生命。手も足もなく、ただ鎮座するだけの存在が蝶となり、自由気ままに空を舞う。
「え、ちょっ……私の城に変なことしないでー!?」
 ゾンビアリスが召喚した城が、ゾンビアリスの意志に反して崩壊を始めていた。光の蝶が羽ばたき、荒廃したビル群を照らしていく。
 真夜中でもないというのに、光の蝶の存在感が、その場を幻想へと変えていた。城から生えていた触手もまた蝶となり、共に現れた幽霊達は光の力で浄化されていく。
 それは、ゾンビ達も同じだった。
「わー、体が軽いねー」
「のぼってくー」
「え、ちょっ……昇っちゃダメ! ダメだからー!!」
 愉快なゾンビ達は今の状況をよく把握していなかった。彼女達もまた夢の中。夢にいるまま昇天していった。
「……そろそろ、終わりにいたしましょう」
 ソナタのメロディーもフィナーレを迎える。光の蝶は最も煌びやかに終わりを飾るべく、ゾンビアリスの周囲を舞っていた。
「近寄らないで! 近寄らないでー!!」
 光の蝶は、ゆっくりとゾンビアリスを象っていく。振り払うにも、ゾンビの体が光を拒絶し満足に動けない。
「や、やめ……」
 ゾンビアリスの声が光に呑まれ消えていく。
 そしてソナタが最後の一音を鳴らすと、光の蝶は一斉に羽ばたき天に飛び立った。
 ゾンビなどいなかったかのように、蝶が飛び去った後には何もない。
「不死者の皆様が、正しき眠りに導かれますように」
 演奏を終えたソナタは、誰にともなく一礼した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星川・杏梨(サポート)
『この剣に、私の誓いを込めて』
 人間のスーパーヒーロー×剣豪、15歳の女です。
 普段の口調は「聖なる剣士(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、時々「落ち着いた感じ(私、~さん、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

性格はクールで凛とした雰囲気です。
常に冷静さを念頭に置く様に努めており、
取り乱さない様に気を付けています。
戦闘は、剣・銃・魔法と一通りこなせます。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●最後の砦、ゾンビアリス
「あーん、もうどいつもこいつも役に立たなーい!!」
 愉快なゾンビ達を使ってもダメ、屋敷や城を召喚してもダメ。他のゾンビアリス達は猟兵達の攻撃の前に次々と倒れていった。
「……人ばっか当てにしないで、少しは自分で戦ったら?」
 嘆くゾンビアリスを冷ややかに見つめる紫の瞳。星川・杏梨(聖炎の剣士・f17737)がそこに立っていた。
 剣を信じ、己を信じる孤高の少女だ。これまでのゾンビアリスの戦いぶりにはほとほと呆れていたようだった。
「むぐぐ……自分で、自分でかあ……そうね。じゃあ、刮目しなさいよ! これが私の、本気の力!」
 ゾンビアリスもまた、吸血&吸精能力の寄生触手(ワーム型)を備えていた。新たなエネルギーが注ぎ込まれ、寄生触手が倍以上に膨れ上がる。
 小柄な体躯には持て余してしまうくらいの触手を装備した彼女達が、杏梨の最後の標的となる。
「ふぅん……口だけ、というわけではないようね。なら、私が相手になるわよ。この剣に、私の誓いを込めて」
 流星の聖剣を垂直に立て、杏梨は誓う。この者達を全て葬り去ると。
 ゾンビアリス達の触手は巨大化しており、場の制圧力が脅威に見えた。にもかかわらず、杏梨は正面へ飛び込んでいく。
「潰れちゃえっ!」
 ゾンビアリスが触手を振った。巨大化しているが故に、振るためのモーションも非常に大きい。後ろへそのまま倒れてしまうのではないかと思わせるくらいに腕を振りかぶり、細身ながら全力で叩きつける大味な攻撃だ。一撃必殺、当たれば期待される威力は猟兵を倒すのにも十二分。
 無論、当たれば、である。
 どしん、と大地を揺るがすほどの強力な攻撃は地面にヒビこそ入れたものの、そこに杏梨の姿はない。触手の落下を見てから真横に跳んで、触手が地面を叩いた後に着地し、また跳んだ。
 太い触手が横たわる。その上を伝っていけば、必然、ゾンビアリスに辿り着く。
「まず一体よ」
 体を低く、前傾状態で触手から跳ぶと同時に一閃、ゾンビアリスの首を飛ばした。空中で回転するゾンビアリスの首はぽかんと口を開けていた。
「ちょこまかと……動かないで!」
 別のゾンビアリスが触手を横から振ってくる。着地を狙っていたようだが、杏梨は行動と行動の間に無駄がない。溜めが必要な高い跳躍も瞬時に軽々とやってのける。
 杏梨は宙に翻る。触手はやはり空を切った。
「これなら……逃げられないでしょっ!」
 ぶぅん、ぶぅんと触手が唸る。空中にいる杏梨を目掛けて触手を振り回しているのだ。重量も増して不安定ではあるが、やはり一撃の威力は侮れない。
 ゾンビアリス達が振り回す触手の動きが、杏梨の落下軌道と噛み合った。杏梨の視界に巨大触手が迫ってくる。
「狙いはいいけどっ――」
 杏梨は聖剣を逆手に握り直すと、飛んでくる触手に思い切り突き立てた。ずむん、と柔らかい感触で刃が埋まる。
 空中での直撃は防いだが、重量差で杏梨の体は聖剣ごと押されていく。このまま地面に一直線では潰されてしまうが。
「まだまだよ」
 右手で聖剣の柄を握り、体を宙で支えながら、左手に新たな武器、シューティングスターを取った。高性能のライフル銃で、この触手の主の居場所を捉える。
 数秒の猶予。そこで杏梨は最大限の集中力を見せた。
『私の狙撃からは、逃れられるとは思わない事ね!』
 銃口が赤く輝いた。炎の弾丸が弾け、隕石のように真っ赤に燃え上がりながらゾンビアリスに着弾した。
「あつっ! あつい~~~!!」
 悶え苦しむが、炎からは逃れられない。瞬く間に灰となり、触手も消滅してしまった。
 解放された聖剣を握り締め、杏梨は受け身を取って地面に転がる。
「も~う! こうなったら、全員、総攻撃!!」
 あるゾンビアリスの号令により、残った者達が一斉に動き出す。
「そう来るの……なら、決着の時よ」
 極太の触手が戦場に入り乱れる。どこかでは同士討ちのようなことも起きていたかもしれない。
 逃れられない触手の嵐に杏梨が挑む。
 身のこなしはさらに俊敏に。剣を振り、魔法を放つ。
 一本、触手が斬り飛ばされた。援護に入った別の触手へは氷の弾丸が飛び、空中で氷漬けにされ地に落ちた。
 振り回される触手、相手の力を利用して杏梨は高く飛び、さらに次のゾンビアリスの頭上から聖剣を突き立てた。
 もう、触手の動きも、ゾンビアリスの動きも見切ってしまった。時間が経つにつれ、杏梨の優位は揺るぎないものとなっていく。
「この~~~っ!」
 触手が槍のように、鋭く飛んできた。ぎゅっと縮こまったことで溜めた力を解き放ち、渾身の突きを繰り出す。
 弾丸をも貫きそうな攻撃を、杏梨は最後に、やはり剣で。
「この一閃に――全てを!」
 縦一文字、両手で一気に振り抜いた。受けるのではない。攻撃もろとも相手を斬り伏せるのだ。
 斬撃が触手を真っ二つにしながら地を走った。抉れる地面と裂かれる触手が、斬撃の威力を物語っていた。
「が……はぁっ……斬られてる……」
 なんだか頭がぺらぺらしているような気がした。ゾンビアリスは二枚に捌かれ、死の瞬間の感覚の通りにぺらぺらだった。
「……終わりね」
 しんと静まり返った廃墟の中で、杏梨は最後のゾンビアリスを見送った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ミコト』

POW   :    悪く思わないでくれ
自身の【人間への好意】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    居合斬り
【納刀状態の刀を瞬時に抜刀すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【鉄さえも切断し、飛翔する斬撃】で攻撃する。
WIZ   :    鬼神戟
自身に【鬼神の力】をまとい、高速移動と【斬撃や打撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は琶咲・真琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●悪の掟、その元凶
「……なるほど」
 ゾンビアリス達が一掃され、辺りを包んでいた静寂を、やや低い女性の声が破った。
「まだ……歯向かうものがいた、ということ――いや」
 この島を支配するコンキスタドール、ミコトは合点がいったように呟く。
「来た、ということか」
 すらり、ミコトは刀を抜く。
 この島の掟を破壊しようとする奴らは、自らの手で斬り捨てなければならない、と。
紬雁・紅葉
その刀が、めがりすですか?
何とも興味深い…
一手試しましょう

羅刹紋を顕わに戦笑み
先制UC発動
天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現

残像忍び足で正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔雷火属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるか見切り
躱せるなら残像などで躱し
さもなくば破魔衝撃波オーラ防御武器受け等で防ぐ
何れもカウンター破魔雷火属性衝撃波UCを以て範囲ごと薙ぎ払う

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

黄泉醜女の一人か
和装を強いるは奪衣の変わりか?

何れ吾には詮無き事
うぬが業邪災魔と成りたる以上、吾が仕業は唯一つ
力を溜め渾身のとどめ

去り罷りませ!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※



●戦いは刹那に起こりて
 すらり。抜かれた刃は妖艶であった。
「その刀が、めがりすですか? 何とも興味深い……」
 魅入られたように視線を送るのは紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)。彼女もまた、東洋を起源とする類の武具をいくつか持つ。
 すっ、と手が、まだ刃を封じる鞘に伸びる。
「一つ、お手合わせ願いましょう」
 どくん、と鼓動するように羅刹紋が露となった。にぃ、と浮かぶ笑みは、戦を喜とする羅刹のそれであった。
 紅葉は緩慢な歩みの中で天羽々斬を鞘払う。紅葉の像はいささか揺らいでいた。足音もなく、存在が希薄だ。
 故に、ミコトは慎重に見極めようとしていた。正体不明を前に闇雲に踏み込むべきではない、と本能が警鐘を鳴らしていた。
 しかし間合いは詰まる。そして――時は来た。
 ミコトは鬼神をその身に下ろす。燐光のような青白い光を纏った刃を二度翻し、音速に至る衝撃を放った。
 時同じくして、紅葉は呪を口ずさむ。
「掛けまくも――」
 ひゅ、と体をずらし衝撃の外へ。元より残像がミコトの認識を狂わせていた。造作もない。
「そちらか!」
 だがミコトもまた、それは手の内と言わんばかりに今し方実像を晒した紅葉へと疾駆した。鬼神の力は神速をも与えていた。
 紅葉を胴から二分せんと刃が走った。神速から放たれた刃は――しかし空を斬るのみ。
 紅葉は刹那を見切っていた。衣と切っ先の間には、わずか一髪の隙しかなく。
「畏き布都主の遍く剣とす御力――お越し畏み畏み申し賜う……!」
 実と虚を兼ね備えていた紅葉の姿は、やがて薄煙を纏う“剣神”布都主の神霊体となった。
 命を削る犠牲を厭わず、十握刃(かなたをきるやいば)の名の下に我武者羅に刀閃を飛ばす。
 魔を破る雷火の衝撃は至近のミコトを焼き焦がした。艶やかな衣が瞬時に黒く焦げ上がり、真白の肌をも冒していく。
「この太刀筋……っ!」
 数を以って神速を凌駕しようというのか。一瞬で反転した攻防。脱兎の如く退避するミコトをさらに雷火が追い詰める。
 衝撃には衝撃を、とは破魔が許さない。逃げ惑うミコトを紅葉は空間ごと斬り払い、
「黄泉醜女の一人か……和装を強いるは奪衣の変わりか?」
「……何?」
 雰囲気はすでに一変していた。戦に身を投じた紅葉は伝承に聞く羅刹に成り果てる。
「何れ吾には詮無き事……うぬが業邪災魔と成りたる以上、吾が仕業は唯一つ」
 紅葉は高く上段に刃を構えた。
「去り罷りませ!」
 直下に振り抜き、地を割るほどの衝撃を走らせた。空間をも断つように錯覚したミコトは堪らず跳ねたが、腕を、肉を、削がれるという痛手を負った。
「紛うことなき、羅刹とはな……」
 ミコトの血潮の如き紅の瞳は、紅葉に己以上の鬼神を見ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久瀬・了介
お前が全ての元凶か。
ふざけた掟の事等、言ってやりたい事はあったが、目の前に現れた今全てはもはやどうでもいい。オブリビオンは殺す。それだけだ。

UC【雷電】を使用し加速状態になる。比喩でなく電光の速度の【早業】で拳銃を抜き連射。
弾丸に怨敵への【呪詛】を込め威力を増す。
UCの効果による電磁場感応能力……周囲の状況や敵の身体内の予備動作を、電磁気の動きから光速で把握する能力で、抜刀の動きを事前に読み取り、抜かれる直前に高速で斬撃の軌跡から逃れ回避を試みる。
抜刀術は抜いた直後が隙だ。回避の勢いのまま【ダッシュ】し間合いを詰め槍型の「怨念武器」を形成し、【怪力】【貫通攻撃】で自慢の和服ごと貫いてやる。



●電光、顕現
「オブリビオンは――殺す」
 了介の本懐。今こそ全ての力を解き放つ時だ。
 物申すべきこともないわけではない。和装を強要するふざけた掟についてもそうだ。
 しかし、言葉を幾千万集めたとしても、今の了介には無でしかない。
 了介は雷の化身となる。その速さは電光に至った。拳銃を抜き連射する姿はもはや人間の眼には捉えられない。
 ミコトもまた超人的な速さを併せ持ちながら――それでも了介の速度には届かない。一つ二つほとんど戦闘本能で回避していた弾丸も、三つ四つとなればその身を以って味わうしかなくなる。
 呪詛が込められた弾丸だ。ミコトの肉に食い込むと、じわりじわりと組織を侵食し始める。
「貴様……っ!!」
 ミコトは了介を憎々しく睨みつける。同時に抜き身の刀をわずか、鞘に戻す動作を見せた。
 視認するものを等しく断つ、居合斬り。戦いの最中に行うには納刀の隙が生まれてしまうが、直後の斬撃の速度、破壊力はその不利を補って余りある。
 だがそれも無警戒か、納刀に偽りの機を見出した愚者を相手にすればこそ。了介はミコトの一挙手一投足にその先を見る。
 電磁気感応による疑似的な未来視。抜刀を予感した了介は瞬時に距離を測り、そして思い切り後方へと跳んだ。
 眼前を刀閃が通り過ぎた。ミコトの斬撃は実刀の範囲を優に超えて襲い掛かってきたが、それも了介が得た間合いの先までは届かない。
 着地の瞬間に、地を蹴る足に力を込めた。後方跳躍の反発力を生かした超加速はミコトの隙を突く。
「速い……!!」
 ミコトが刀を振り戻す前に。了介は怨念武器を槍の形状にし、分厚い衣のど真ん中を貫いた。
「ぁぐっ……!!」
 ミコトは喉から潰れた声を上げる。体を奇妙な物体が貫通する感触は激痛と吐き気を催した。
 踵で地面を踏み蹴りながら刀を払ってぶつけ、どうにか了介の槍を逃れる。
 色鮮やかな着物は真紅に染まり始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
いよいよにゃね。今回の話を聞いた時から思ってた、やってみたいことを実行する時にゃん。……今度こそは和装だよね?。
起動【キャット・ドール】僕は子猫に変身し、15代目様の縁で乙女サキュバスを召喚。
霊体化した乙女サキュバスの応援を受けて超強化、更に猫限定着せ替え魔法による猫の洋服を変わる変わる着用し、髭感知による見切りと呪いのオーラ防御をサーフボード状に変えての盾受けや衝撃波に乗る様にオーラサーフィンで攻撃を凌ぎ、魅了して斬れない洋服を作り出していくにゃん(刻々と寿命削り)
ダメな時は和風で人質ならぬ服質にゃん?
ぁ、サキュバスにゃん…お手柔らかに?(女装もOK。うん/諦念の目)



●着せ替えレフティ
「さすがにボスは和装だったにゃんね……」
 手下となるゾンビ達は皆メイド服だっただけに、掟通りの展開で胸をなでおろすレフティ。
「いよいよにゃね。今回の話を聞いた時から思ってた、やってみたいことを実行する時にゃん。起動(イグニッション)! キャット・ドール!」
 ミコトを前に、レフティはまたも変化した。例によって例の如く、暗黙の了解は守られている。
「召喚にゃあ!」
 子猫となったレフティが声高々に呼び出したのは乙女なサキュバスの霊だった。
 それも、ただの霊ではない。猫ラブである。猫カフェに行けばあまりのラブさに卒倒してしまうかもしれない猫ラブだった。
「いや~ん、猫ちゃん可愛い~♡」
 早速のラブ。見つけるのが頗る速い。しかし、単に猫ラブでないのがこのサキュバス。応援した対象を超強化する能力を持っていた。
「早速来たにゃああああ!」
 レフティの小さな体に溢れんばかりのパワーが漲る。
「強化系か……ならば」
 手負いだったが、ミコトの闘志は消えていない。再び鬼神の力を宿し斬撃を繰り出した。
 迸る衝撃がレフティに襲い掛かる――が、ぴくりと揺れる髭がミコトの挙動を察知していた。
「くるっとにゃん!」
 サーカスの曲芸の如き跳躍からの宙返りで衝撃波の上を飛び越えてみせた。
「まだだ……こんなものではないぞ!!」
 ミコトは回転数を徐々に増しながら縦、横、斜めとあらゆる軌道の斬撃を荒波のように繰り出してくる。
 戦いも佳境に近い。しかし、事態を全く把握しておらず能天気に魔法を振り回す者が。
「スカート! スカート似合いそ~♡」
 サキュバスの霊である。視界に入ったレフティの動きにきゃいきゃい黄色い声援を送りながら、魔法を飛ばして着せ替えるのだ。
「にゃっはぁ!?」
 髭感知と呪いのオーラ防御で衝撃波を防ぎつつ駆け回っての時間稼ぎをしていたレフティに、突如すぅっと風が抜ける感触が現れた。ひらり、布が翻る。
「にゃ、にゃぁ~……止められないのがもどかしいにゃ……お手柔らかにお願いするのにゃあ!」
 衣装替えはサキュバスの霊の力の一部であり、それを止めてしまうと全ての力が失われてしまう。甘んじて受け入れなければならないのだが、かと言って度が過ぎるのも困りものなのでやんわり釘は刺しておいた。
「さっきからころころと目まぐるしい……しかし先程のは……!? 違う! 断じて!!」
 雑念を振り払うようにミコトは出鱈目に刀を振り回し衝撃波を乱れ撃つ。まさに荒波。それをレフティはオーラをサーフボード状にして、器用に尻尾でバランスを取りながらひらひらと乗り越えていった。
 飛沫の代わりは突風だ。ぶわっとスカートを舞い上がらせる。
「落ち着かないからそろそろ変えてもらってもいいかにゃあ!?」
「え~! 可愛いのに~……もうっ♡」
 口惜しそうにしながらも、サキュバスの霊はようやくレフティをスカートから解放した。
 ミコトとサキュバスの霊、双方を相手にドタバタなやりとりを繰り広げていたレフティだが、これもまた戦術の内だ。
 ミコトが行使する鬼神戟は強大な力をもたらす半面、その命を削る。のらりくらりと受け流すレフティを相手に苦戦を強いられたミコトは、確実に命を減らしていく。
 滴る血が時の流れを映し出す。広がる波紋は次第に大きくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソナタ・アーティライエ
何故、あのような掟を作られたのですか……
確かに貴女の装いはとても素敵だと思います
だからと言って、他の皆様にまでそれを押し付けようとなさらなくても良いではありませんか

世に綺麗なもの、素晴らしいものは数多あります
どうか……貴女にもそれを感じて欲しいのです
そう願いを込めて、ミコト様のためにこの歌を贈ります
オーラ防御と変身によって纏う光の2重の守りで攻撃に耐えながら
死者の魂の安寧を祈る歌に専念します

貴女は、本当は心根の優しい方だと思います
だって、貴女は掟を守らなかった島の人たちをすぐには殺さなかった
ゾンビさんたちに、無理矢理和装を着せてはいませんでした
だから、この歌も貴女の心に届くと信じられるのです



●歌に願いを
 悪の掟の存在意義は、それを作り出した本人にしかわからない。
「何故、あのような掟を作られたのですか……」
「何故……だと……?」
 大きく息を吐きながら、ミコトはソナタの言葉に耳を傾ける。
「確かに貴女の装いはとても素敵だと思います。だからと言って、他の皆様にまでそれを押し付けようとなさらなくても良いではありませんか」
「趣味嗜好の……話では、ない。この島の……個という個を、支配する……それが全てだ!」
 強制力による支配。それが、ミコトが目指していた掟の真実であった。
「そう……ですか。どこかで道を違えてしまったのですね……」
 ミコトが生前どうであったか、ソナタに知る由は無い。しかし、メガリスという呪いの秘宝に触れなければ、きっと違った生き方をしていたはずだ。
 道を引き返すことは叶わない。結末も――ソナタが猟兵としてミコトの前に立つ限り、変わらないのだろう。しかしそれでも、ソナタには伝えたいことがあった。
 神様がもし、ミコトに次代の生を与えるならば――心に留めてほしいこと。
「世に綺麗なもの、素晴らしいものは数多あります。どうか……貴女にもそれを感じて欲しいのです」
 ソナタはミコトのために願う。
『葬送の鐘、鳴り響く……』
 天より注ぐ光を纏い、ソナタは姿を変えていた。それは天界に住まう天使のようでもあり。
 光の中で、ソナタは歌を紡ぐ。悲しき死者に贈る歌。それは紛れもなく、呪いの秘宝に命奪われたミコトのためにあるものだった。
「う……ぐぅ……やめ、ろ……!!」
 声が、音が、ミコトの脳内を掻き回す。鈍器で殴られるような激痛が断続的に襲い掛かっていた。
「や、め……ロ……ヤメロォ!!」
 耐えかね、ミコトはソナタへ剣閃を飛ばした。空気を圧縮した衝撃が色なくソナタへ向かっていく。
 ソナタは歌に専念しており動く気配を見せない。しかし光はソナタを包んで守り、その上にオーラを纏う。二重構造の防壁が衝撃の到達を阻んでいた。
 しゅうぅ、と風が鳴り、オーラが微かに揺らぐのみ。鬼神の力を宿しているとは言え、ここまでの戦いの消耗が激しすぎた。
「貴女は、本当は心根の優しい方だと思います。だって、貴女は掟を守らなかった島の人たちをすぐには殺さなかった。ゾンビさんたちに、無理矢理和装を着せてはいませんでした」
「うる……サ、イ……」
 コンキスタドールの性質は生前の気質を反映するのか。それは定かではないが、ソナタはそう信じたかった。
「だから、この歌も貴女の心に届くと信じられるのです」
 ソナタが歌い上げる最後の音色。それは悲しみの淵に差し伸べられた光の手。
 ミコトの体からゆらゆらと黒い煙のようなものが空に昇る。苦しみに声を上げるだけの力もなく、刀を地面に突き立てて体を支えていた。
「あ……アァ……ひか、りが……」
 つと、刀がたわんだかと思うと、ぱきりと折れた。壊れた刀に覆いかぶさるようにミコトの体が倒れていく。
「きれ……い……だ……」
 旅立つミコトは最後の最後で、差し伸べられた手にわずか、触れたようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月25日
宿敵 『ミコト』 を撃破!


挿絵イラスト