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UDC-HUMANに変じた少女を絶望から救え

#UDCアース #UDC-HUMAN

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●苦しみ疲れ果てた末に
 もう面影すら思い出せないけれど私の父は良い人だったのだと思う。
 時々会う五代のおじさんはよく懐かしそうに両親の話をしてくれるし、私の境遇を知ってからは父の知人に声をかけて私を助けようと必死に頑張ってくれる良い人。
 だから、そんなおじさんの親友だった父は悪い人なんかじゃないとは思うし、そもそも凶悪犯から子供達を庇って殉死したらしいし。
 母も母で体が弱いのに私を生む為に無茶して亡くなったそうだから余り悪い印象はない。
 ああ、けれど……。
「財産目当ての『あいつ』じゃなくて五代のおじさんに引き取られる様にしてくれてたら良かったのに……」
 勿論、無茶ぶりなのは判ってる。
 『あいつ』は大分前に会わなくなった遠い親戚でしかなくて、そもそも父さんも会った事はなかったみたいだし、父さんが亡くなった事件では父しか死んでないのが疑問なレベルのテロでそんなのが起こるのを予測するのも難しいし……。
 其れに警察が殉死するなんてドラマの中での話。父の居た所で殉死した人なんて父だけだったそうだから自分が殉死するなんて予想できたかどうか。
「けど、其れでも……恨み言、言いたくなるよ……お父さん……」
 おじさんが動いてるのに気付いたのか、それとも何時もの気紛れか。
 最近は殴ってくる率も多くなってきたし、食事も一食あるかないか。
 それに嫌な目で此方を見だしたから身を護る手段をきちんと考えないと……。
「普通の家で育ったら、こんな事考えなくて済んだんだろうな……ほんと嫌だな……」
 其れでも後少しの我慢……部屋に戻って『あの子』を隠し場所から取り出して抱き着いて眠ろう……そう考えて戻った部屋に入り、目の前に広がる光景に真っ白になった。
「……『あの子』がっ!」
 其処に在ったのはボロボロになった大きな鼻で立ち上がる鼠の様な何かのぬいぐるみ。
 お父さんが作ってくれた、私に最後に残った思い出のぬいぐるみの『あの子』。
「……隠してたのに!なのに……っ!!」
 『あいつ』は時々、玉遊びに負けた憂さ晴らしに私を殴る。
 私が居なかったら私の部屋に入ってきては服とか物をボロボロにする。
 ……だから隠していたのに!
「……もう嫌……」
 ぷつり、と何かが切れた様な音がした気がした。
『……本当に酷い話ね。
 むかつくしぶっ飛ばしてやりなさいよ!』
 そして、私に話しかける誰かの声がした気がした……。

●グリモアベース
「……本当に嫌な話ね。
 『あいつ』とやらを私の手でぶん殴ってやりたい位だわ」
 ヴァ―リは集まった猟兵達に状況を説明すると怒りの余り、表情を歪める。
「……今回UDC-HUMANになるのは一条久遠ちゃん。
 日英ハーフの少学三年生よ。
 この子は刑事だったお父さんが亡くなってから禄でもない親戚にお金目当てに引き取られて……所謂虐待を受けているわ」
 食事は最低限しか与えられない、腹いせに殴る蹴るの暴行を受ける、憂さ晴らしに部屋を荒らされる。
 これを4歳位の頃から受けてきて、其の余りの苛烈さに父の記憶が薄れる程だったらしい。
「それでもまあ、そんな久遠ちゃんにも救いの手が現れたのは良かったのだけど……」
 父の親友の五代さんという人が彼女の境遇に気付き彼女を助ける為に奔走してたのだという。
 そして、あと少しで久遠ちゃんは地獄から解放されるところだったのだが……。
「そこで父親の最後の思い出の品のハナアルキのぬいぐるみをバラバラにされて……ぷっつり切れてしまったのね。
 心が壊れてしまい、変貌というか憑りつかれたというか……久遠ちゃんと似た境遇で死に邪神の眷属となった少女と同じ姿に変化してしまっているわ」
 眷属の名はステラ。
 イギリス人の孤児であり暴漢に襲われ僅か11歳で死亡。
 その後、眷属となって犯人を祟り殺したというUDCだ。
「状態的には多重人格者の人達みたいにステラと久遠ちゃんが別々に意識がある様な感じかしら?
 悲しみ嘆く久遠ちゃんをステラが全てから守ろうとしてる感じね」
 祟りや呪いの炎等を用いて戦う厄介な相手なので説得するのにも中々苦労させられるだろう。
「そして、久遠ちゃんの元に赴く迄の間に倒さなければならないのがハナアルキね。
 久遠ちゃんの大切にしてたぬいぐるみがハナアルキだったからそうなったのかしら?」
 ミツオトビミミゾウハナアルキ。
 邪神の遊び場、ハイアイアイ島において邪神の実験によって配合され生まれた存在であり同胞たる鼻行類を伴ったり、空から襲い掛かったりするという。
「正直、大変な状況だけど……久遠ちゃんを助けてあげてほしいの。
 あの子は未だ未だ小さい。幸せになれずに亡くなるなんて悲しすぎるわ」
 そうヴァーリは集まった猟兵達に頼み込む。
「そうそう、其れと久遠ちゃんの言ってる『あいつ』だけど……まあ、ロクデナシね。
 久遠ちゃんの遠い親戚なのを利用して久遠ちゃんを引き取り、遺産を使い込む。
 仕事もせずにぶらぶらして玉遊びをしたり競馬や競艇をしたり遊び惚けたり、戯れに久遠ちゃんを傷つけたり……後少ししたら久遠ちゃんを襲ってた可能性も高いわ」
 そんな輩なので色々と付け込む所は多く、虐待の証拠以外にも何某か犯罪行為を行ってる可能性も高い。
「久遠ちゃんの今後の人生の為にも暴力は無しで完膚なきまでに叩きのめしてやってくれると助かるわ。
 ええ、暴力以外は犯罪行為じゃないなら問題なしよ」
 そう言うとヴァーリは猟兵達を戦場へと転移するのだった。


久渓洞
 初めまして、或いはお久しぶりです久渓洞です。
 今回の依頼は虐待に心おられUDC-HUMANに変じた少女を救うお話。

 第一章、少女の住む家の周辺に集まったハナアルキを倒し少女の部屋に向かう。
 第二章、多重人格者の人達の様にUDCのステラと少女本体である久遠に別れた状態になっています。
 ステラは久遠に感情移入し守ろうと必死な状態です。
 元に戻る様に少女を説得しステラを倒して救い出しましょう。
 ステラ自身も説得すると救出はよりやり易くなるかもしれません。
 第三章、少女を虐待してきた『あいつ』の虐待や犯罪の証拠を掴むなり精神的にボコボコにしてぶっ倒すなりして少女の人生の陰りをなくす。
 という流れになります。
 少女の新しい引き取られ先の五代のおじさんは良い人なので其の後は確実に幸せになれます。

 それでは皆様のプレイング楽しみにお待ちしております。
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第1章 集団戦 『ミツオトビミミゾウハナアルキ』

POW   :    ハナアルキ達のパレード
自身からレベルm半径内の無機物を【ナゾベーム等の多様な種類の鼻行類達の大群】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    空を駆けるは巨大なる象の耳
【耳が巨大化した高速飛行形態】に変形し、自身の【防御力】を代償に、自身の【飛行速度と反応速度】を強化する。
WIZ   :    幾多の命魅了せしは蜜放ちし尾の香り
【尻尾の花】から【あらゆる命を魅了し洗脳する香り】を放ち、【其の抗いがたい香り】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

お前らは……
そうか、カタチに引き寄せられたか?
それとも、「あの子」が無意識に呼び寄せたか……
いや、どっちでも同じか。
久遠ちゃんの所へすぐにでも向かうには、
アンタらが邪魔なんだ。
押し通らせてもらうッ!

部屋へ向かって『ダッシュ』しながら、
【弱点特攻作成】で作った小型スピーカーと音楽プレーヤーを周囲にばら撒くよ。
流れ出すのは『催眠術』の波長をサブリミナルで埋め込んだ、
のんびりとした環境音楽。
その大きな耳ならよく聞こえるだろう?
アンタらを眠りにいざなうこの音楽が!
一匹一匹を潰して回るのも時間が惜しい、
無力化できたならアパートの部屋へ一目散に向かう!
どうか間に合ってくれ……!


片桐・公明
警察官の"一条"とその友人の"五代"、
そしてUDC(未定義の怪物)、ね。
…その素性、ちょっと興味があるわ。

【SPD】
速度が強みの敵に対して居合の構えで待ちの態勢を取る
相手の動きはこちらの攻撃による反応行動を含めてUCで見切る
接近してきた敵を妖刀の一閃で攻撃する

「たとえ速くとも、私の演算はその上をいくわ。」

「……で、コイツは植物と定義するべきなのかしら。それも哺乳類の一種と定義するべきなのかしら。」
「ただ一つ、決まりきっていることあるとしたら。こいつらは私の敵ってことだけだものね。」
(絡み、アドリブ歓迎です。)



●只助ける為に駆ける
「お前等は……そうか、カタチに引き寄せられたか?
 それとも、「あの子」が無意識に呼び寄せたか……」
 見覚えのある敵が飛び交う姿に数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は警戒しつつ原因について一瞬、ハナアルキ達が何故現れたのかに思索を巡らせる。
 だが、其れも一瞬の事。
「いや、どっちでも同じか。
 久遠ちゃんの所へすぐにでも向かうには、アンタらが邪魔なんだ。
 押し通らせてもらうっ!」
 その宣言と共に多喜は目的の場所、久遠がいる部屋へと走り出す。
 当然、そんな多喜をハナアルキ達が見逃す筈はない。
 空からキィキィという耳障りな鳴き声と共に襲い掛かってくるが、多喜は嘗てのハナアルキとの戦いの経験を活かして其れを全て避けていく。
「相手をしている暇はないんで、ね!」
 とはいえ、其の侭避けているだけでは目的の場所へとたどり着く迄にかなりの時間が過ぎてしまうだろう。
 ならばどうするか。
 其の為の布石として多喜は攻撃を避けると同時に小さな機械をばら撒いていく。
 そして、其の効能は直ぐに結果が目に見えて現れていく。
「キィ……?!キィ……」
「戦った事があるからデータがあって良かったよ、本当にさ」
 時間をおかずに多喜のばら撒いた機械から流れる穏やかな環境音楽。
 其れが流れ出すと同時にハナアルキ達は目を眠たそうに動かし、ゆっくりと空から落下していったのだ。
(その大きな耳なら良く聞こえるだろう?
 アンタらを眠りに誘う此の音楽がさ!)
 前回ハナアルキ達と音を用いて戦った経験からスピーカーはより彼等の耳に音が入り易い様に改良を施されている。
 其の為にハナアルキ達の殆どは眠りに抗えずに落下。
 其の侭ハナアルキはアパートの廊下や地面に横たわっており動きはしない。
「一匹一匹を潰して回る時間も惜しいんだ!
 どうか間に合ってくれ……!」
 そして、ハナアルキを無力化した多喜は敵にトドメを刺す事なく、其の侭、久遠が居る部屋へと一目散に走りだす。
 悲劇を留め、ハッピーエンドを叩き込む、其の為に―――。

●戦場を切り開き
「警察官の”一条”と其の友人の”五代”、そしてUDC(未定義の怪物)、ね。
 ……その素性、ちょっと興味があるわ」
 そう久遠の関係者に関して考えを巡らせながら嘯くのは刃長2尺半、76cm程の長さの刃を持つ刀を携えた少女、片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)。
 幾多の戦場で時に刃を振るい、時に銃で敵を討ち貫いてきた彼女はそう思索を巡らせながらも警戒は怠らず、居合の構えでハナアルキの攻撃を待ち受けている。
「キィィ!」
「中々の速度ね。
 けど……」
 そんな公明にキィキィと鳴き声を挙げながらハナアルキが襲い掛かるが……。
「たとえ速くとも、私の演算はその上をいくわ」
「ギ、ギャァッ?!」
 公明はハナアルキの挙動から彼等を屠るのに最適な動きを割り出し、其れに合わせて攻撃を回避。
 冷静に返す刀で妖刀を一閃。
 公明の振るう妖刀『血吸』はハナアルキを胴体から真っ二つに両断する。
「……で、コイツは植物と定義するべきなのかしら。
 それとも哺乳類の一種と定義するべきなのかしら?」
「キィ……キィ……」
 両断されても藻掻く様に動くハナアルキを見ながら公明はそう独り言ちる。
 実際、ハナアルキはモグラ等から分岐した鼻行類とよばれる哺乳類と言われるがかなり特異な生き物。
 酷いのになるとハラワタハナアルキの様に鼻の付け根から分裂して増殖するなんて哺乳類とは?となる存在なので公明がそう疑問に思うのも仕方ないという物だろう。
「キィィっ!!」
「遅いですよ?」
「ギ……ッ?!」
 勿論、そうやって観察し思索している最中も公明は決して油断しておらず、己に向かってくるハナアルキを斬り伏せているのだが。
 そして、ハナアルキ達はそんな公明に対し敵わぬと知りながら、尚公明を先に進ませぬ為に襲い掛かる。
「キィィィィッッ!!」
「ただ一つ、決まり切っている事があるとしたら。
 こいつらは私の敵ってことだけだものね」
 日常の時と異なる冷たい眼差しでハナアルキを見据えながら公明はそう嘯くのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御形・菘
お主ら…いつの間にやらなんだかメジャーデビューしおって! おめでとう!
でも妾だってキマフュでは、ぬいぐるみとかグッズが色々作られてるからな?

右手を上げ、指を鳴らし、さあ鳴り響けファンファーレ!
はーっはっはっは! お主らの手の内は分かっておる!
ならば一番映える戦法はコレであろう! 花の部分は殊更によく燃えそうだな!
そのまま盛大に燃え尽きるもよし、妾の左腕にブッ飛ばされるもよし! 好きに選べ!

さてマジな話、子どもの悲嘆に妾が駆け付けるのを阻むとは許しがたいぞ?
一切の容赦はせんよ、ロクデナシを直接ボコらん分、お主らにすべてブチ込んでやるからのう?


篁・綾
アドリブ連携歓迎だわ。

どこにでも下衆はいるものよね…。

…報いを。

でも今は、あの子を助ける事に集中しましょうか。
…あなたには悪いけれど、押し通るわよ。

刀から舞い散る桜吹雪を【目潰し】にしつつ立ち回るわ。
相手の動きは【見切り】、【残像】、もしくは指定UCで人型を捨てて回避。隙があるようなら、そのまま返す刀で【カウンター】で【鎧無視攻撃】を。

自分から手を出す場合は、よく動きを見極めた上でやりましょう。
相手との位置関係次第では【衝撃波】も使っての面攻撃も考慮して立ち回りましょう。

…この場所は、壊してしまったほうがいいのかしら。どうなのかしらね。
まぁ、後で考えましょう、それも。



●ハナアルキVS邪神系配信者
「お主ら……いつの間にやらなんだかメジャーデビューしおって!おめでとう!
 でも妾だってキマフュでは、ぬいぐるみとかぐっずが色々造られてるからな?」
 そう周辺をうろつく様々な種類のハナアルキ達に言うのは邪神系動画配信者の御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。
 蛇の下半身と禍々しい見た目の角、そして化粧も相まって彼女の見た目はまさしく邪神。
 割りと愛嬌がなくもない一部のハナアルキと相対している所はどちらが敵か間違える人も出るかもしれない。
 ……いや、中には19対の鼻を持ち其の内18対の鼻で音楽を演奏するナキハナムカデみたいなキマフュ民もドン引きなモンスターもいたりするんでそうはならないか。
「いやはや、相変わらずバズりそうな見た目よのう。
 実に面白い連中ばかりじゃな!」
 そうハナアルキを愉しそうに見ていた菘が右手を上げ指を鳴らすと響き渡るファンファーレ。
「はーっはっはっは!お主らの手の内は分っておる!
 ならば一番映える戦法はコレであろう!花の部分は殊更によく燃えそうだ!さあ妾だけを刮目して見よ!」
「キ、キィ?!」
「キキィ?!」
 其のファンファーレと共にハナアルキ達は即時炎上。
 更にハナアルキ達は菘から目を離したくないという情動に捕えられ逃げる事も儘ならない。
「其の侭盛大に燃え尽きるもよし、妾の左腕にぶっ飛ばされるもよし!
 好きに選べ!!」
「キ。キイイイイイイ!!!」
 菘の其の言葉に抵抗しようとしたマンモスハナアルキの一頭がその巨体を活かした一撃を菘に向け放ってくる。
 だが、其れを菘は冷静に対応。
「さてマジな話だがな……子供の悲嘆に妾が駆け付けるのを阻むとは許しがたいぞ?」
 先程迄とは違う、真面目なトーンでハナアルキに宣言しマンモスハナアルキの体当たりを躱すと其の侭返す刀で左腕でマンモスハナアルキを殴り飛ばす。
「キキィィィィィ?!!!」
「一切の容赦はせん。ロクデナシを直接ボコらん分、お主らには全てブチ込んでやるからのう?」
 そう怒りを帯びた笑いを浮かべハナアルキ達を菘は見据えるのであった―――。

●桜花舞い散り鼻が飛ぶ
(どこにでも下種は居るものよね……。
 必ず報いを受けさせるとして……今は、あの子を助ける事に集中しましょうか)
 久遠を苦しめた彼女の現在の保護者である『あいつ』への怒りを胸に抱きながら戦場に立つのは刀を携えた妖狐の女性、篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)。
 彼女は宙を舞い自身を警戒しながら伺うハナアルキ達に刃を向けると宣言する。
「……あなたには悪いけれど、押し通るわよ」
 其の宣言と共に綾は鞘と柄に彼岸桜の意匠が入った刃を抜き放ち空から己に迫るハナアルキへと一閃。
 白銀の刃は桜の花びらを舞い散らせながらハナアルキを両断する。
「キキィ!!」
「連携は其れなりに上手い様ね。けど、見切れない程じゃあ……ない!」
「キィィッッ?!!」
 倒された同胞を見て今度は複数で襲い掛かってくるが綾は其れに対し冷静に対応。
 己が振るう刃『彼岸桜』から舞い散る桜によって狭まった敵の視界を利用。
 敵の動きを見切り、残像を綾自身と見誤らせ其方に攻撃するように誘導し返す刀でハナアルキを両断する。
 そんな綾に対しハナアルキは自己犠牲を慣行。
「キキ……ギギィ!!」
「……自分から刀に突っ込み己を肉鞘に。
 そうして刀を使えない様にするとは……敵ながら天晴ね」
 斬られる際に刀に突っ込んでいき己が刀に貫通された状態のハナアルキの姿に僅かに感嘆した様な表情を浮かべる綾。
 そんな彼女を他のハナアルキが取り囲み襲い掛かるが……。
「けれど、甘い。
 ……はらり、はらり 舞う無数の花よ 地に墜つ影が消ゆより疾く 千千に乱れて宙へと踊れ―――」
「キ、キィ?!」
「キキィ?!」
 詠唱と共に綾は其の身を無数の桜の花びらへと変貌。
 ハナアルキ達は其の侭互いに激突してしまう。
「猟兵を舐めない事、ね」
 そんな隙を綾が見逃す筈もなく、『彼岸桜』を振るい生じた衝撃波を以ってハナアルキ達は斬り伏せられる。
 そして、そんな綾にハナアルキ達は距離を取ろうとするが綾は其れを赦さず飛ぶ斬撃で斬り払う。
「其れにしても……この場所は壊してしまった方が良いのかしら。
 どうなのかしらね?
 まぁ、後で考えましょう、それも」
 そう嘯きつつ、綾は戦い続けるのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「今回はUDCが悪いとは言えないっす。でも一般人がUDCに憑り付かれたままだと死んじゃうっす。それはだめっすよ」

「財産…子供を守りテロで殉死…お父さんって表向き警察のUDC組織員じゃないっすよね?」
一般住宅っぽいので事前にUDC組織に依頼し周辺の立ち入り禁止や事件隠蔽を依頼。

「UDCはできるだけ隠さないと…飛ぶ前なら強いハナアルキっす」
まず【迷彩】【忍び足】からの忍者手裏剣による【暗殺】で倒せるだけ倒す。死体等は【化術】の幻で偽装。

「飛んでも防御が紙なら速攻っす!」
見つかったら【綿ストール・本気モード】発動、【見切り】つつ【結界術】で動きを止め、ストール【だまし討ち】【カウンター】で迎撃。



●変幻自在の狸の技
「今回はUDCが悪いとは言えないっす。
 でも一般人がUDCに憑りつかれた侭だと死んじゃうっす。
 其れはだめっすよ」
 だからこそ、必ずこの事件を解決しようと決意しつつ綿の様な白い髪の少年、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)はハナアルキが飛び交う戦場へと足を踏み入れる。
(其れにしても財産……子供を守りテロで殉死……お父さんって表向き警察のUDC組織員じゃないっすよね?)
 事前にUDC組織に周辺の立ち入り禁止や事件の隠ぺいを依頼する際にUDC職員と話をした事もあってか一瞬そんな考えが過ったりもしたが、今は其れを確かめる事も難しい。
 なので衣更着は戦場に集中。
「UDCは出来るだけ隠さないとっすから……飛ぶ前なら強いハナアルキっす」
 そう言うと衣更着は己に迷彩を施し忍び足で未だ飛び立ってないハナアルキ、其れもより力を有して居そうなハナアルキに接近。
「キ……?!」
(先ずは一匹……っす。ついでに、っと)
 大きな悲鳴を挙げる間もなく、ハナアルキは衣更着の手裏剣によって命を断たれ倒れ伏す。
 更に倒れ伏したハナアルキに対し狸伝来の化術を以って隠すよう偽装。
 他のハナアルキに気付かれない様に処理するという念の入れようだ。
 そうやってハナアルキ達を処理していく衣更着だが其の内に地上にいるハナアルキは全て処理し終えてしまい残りは空を飛び交う者のみに。
(んー、流石に空を飛んでるのを殺したら落下音で気付かれるっすよねえ)
「なら最初の一撃で数を減らすっす!」
「「「ギギぃぃぃぃっッッ?!」」」
 現状、気付かれずにハナアルキを屠るのは難しいと判断した衣更着は先ず手裏剣を投擲。
 其の侭、分身させた其れで集団で固まっていたハナアルキに手裏剣の雨が降り注ぎ叩き伏せていく。
「飛んでも防御が紙なら速攻っす!」
 其の言葉の通り、手裏剣を喰らったハナアルキ達は全てが倒れ伏し絶命。
「キキィ!」
「見えてるっすよ!」
 そして、それから逃れ得たハナアルキ達もいるにはいて衣更着に襲い掛かるが衣更着は冷静に動きを見切り結界術で動きを止め……。
「打綿狸の本領発揮、誰にもこの綿は捉えられないっす!」
「ギ?……ギ…ィ……!」
 返す刀で発動した本気モードの綿ストールの変幻自在の攻撃に翻弄され身を護る事も出来ずに貫かれて打ち倒されていく。
 そうして衣更着の戦いは其の場にいるハナアルキ達を殲滅するまで続くのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルネ・プロスト
元ネタの方はさして興味は惹かれないのだよね
ぬいぐるみの方が出てくるのなら兎も角
そんなわけだから前哨戦はてきとーにやらせてもらうよ。油断はしないけど
統率者のいない烏合の衆相手なら駒場遊戯達だけで手が足りるでしょう?

とりあえず道化師団の改造系技能でミレナリィドール・ボディ、ルネの身体をいじって嗅覚遮断
嗅覚を介して魅了・洗脳するなら単純にそれを絶つだけのこと

ビショップ2体は自陣を覆うように雷の結界を展開(属性攻撃&結界術&マヒ攻撃
迂闊に近づくとバチッといくよ
来ないなら来ないで此方から近寄っていくわけだけど
ポーン8体は結界内部から銃剣による射撃で遠方の敵を攻撃
UCは威嚇or掃討に使えそうなタイミングで



●異形と人形
「元ネタの方はさして興味は惹かれないのだよね。
 ぬいぐるみの方が出てくるのなら兎も角」
 妖しい香り漂う戦場に降り立ちそう呟くのはぬいぐるみ好きなミレナリィドールの少女、ルネ・プロスト(人形王国・f21741)。
「そんなわけだから前哨戦はてきとーにやらせてもらうよ。油断はしないけど。
 統率者のいない烏合の衆相手なら駒盤遊戯達だけで手が足りるでしょう?」
 そう言いつつ全く油断はしていない状態でルネは自分と共に在る人形達を展開。
 そして、周囲に漂う其の内の一体の道化姿の人間にミレナリィドールである自身の身体を弄って嗅覚を遮断させる。
「嗅覚を介して魅了・洗脳するなら単純に其れを断つだけのこと。
 それじゃあ次はビショップ」
 ルネの言葉に応え鎖製の祭服に身を纏う人形が木の杖を掲げ結界をルネ達の周囲に展開していく。
「ギィ…ッ!」
 其の結界は雷で出来ている様で結界を発生させた際に巻き込まれたハナアルキは雷に打たれ倒れ伏し動く事が出来ない状態に。
「うかつに近付くとバチッといくよ?
 動かなくてもバチッといったのもいる様だけど」
 そう言って自分達を見止めるルネに香りが効かない事もあってかハナアルキ達は攻めあぐねている様子。
 だが、そんな状態を赦す程ルネものんびりとはしていない。
「来ないなら来ないで此方から近寄っていくわけだけど」
「ギ、ギギィ!?」
 そんな言葉と共にルネは銃剣と革鎧を装備した等身大の人形達、ポーン8体に指示。
 結界内部からの射撃で近付いてこないハナアルキ達を殲滅していく。
 其の殲滅は順調で香りが効かないルネに対抗しようと体当たりで突っ込んでくるハナアルキ等もいたがポーンの銃弾に撃たれ倒れ伏していく。
「とはいえ油断は禁物。
 徹底的に殲滅しないと」
「ギ…ギィ!!」
 ルネの指示により放たれる銃弾は的確にハナアルキ達を追い詰め、一か所へと誘導していく。
「さて、これでトドメだね。
 あいつらの動きを止めるよ、軽装歩兵、銃弾換装、散弾装填。マスケット、構え。
 ……撃てぇ!」
 其の言葉と共に一纏めになったハナアルキ達へと銃弾の雨が降り注いでいく。
 そして、銃弾の雨が止んだ時、其処にはもうハナアルキ達は存在しないのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
家族を亡くし、意地悪な養父から虐待を受けるなんて……
この世界にも、悪意の犠牲になる子供たちがいるのですね
久遠ちゃん、待っていて。必ずあなたを救います

あのUDCの姿は、彼女の大切なぬいぐるみの影響なのかしら……
でも今は邪魔されるわけにはいきません
一刻も早く彼女のもとに向かわなくては

【奇しき薔薇の聖母】に変身
敵の放つ香りを身に纏ったベールとオーラ防御で防ぎ、洗脳効果には狂気耐性、覚悟で耐える
舞い散る薔薇の花びらと茨の蔓を放ち反撃
久遠ちゃんの無事を祈りながら、限界突破のスピードで飛行し振り切ります

たとえ世界は違っても、幼子を守りたいと願う気持ちは同じ
これ以上の悲劇を生まないために、全力を……!



●幼子を救う為に
「家族を亡くし、意地悪な養父から虐待を受けるなんて……。
 此の世界にも悪意の犠牲になる子供達が居るのですね。
 久遠ちゃん、待っていて。必ず貴方を救います……」
 そう決意し最後に戦場に立ったのは白い髪に蒼いミスミソウの花が咲いたオラトリオの女性、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)。
 もう誰も泣く事のない世界を、そう望む彼女にとって久遠の状況は決して放っておくことは出来ない様であり、彼女のやる気は十分な様子。
 そして、そんな彼女の眼前にハナアルキ達の群れが見えてくる。
「キィキィ!」
(あのUDCの姿は彼女の大切なぬいぐるみの影響なのかしら……。
 でも今は邪魔されるわけにはいきません。
 一刻も早く彼女の元に向かわなくては!)
 一瞬、ハナアルキと久遠のぬいぐるみの関係に思索を巡らせたがハナアルキ達が邪魔者である事には変わりない。
 ヘルガはハナアルキを見据えると戦闘の準備を開始する。
「大地の恵みと生命を司る慈悲深き聖母様、どうかわたくしに、人々を守るための奇跡をお与えください……!」
 詠唱と共にヘルガは白いベールと薔薇を纏った聖母の姿へと変身。
 そして、其の背の羽を羽ばたかせ己の限界を超えたスピードで空を駆けていく。
「久遠ちゃん……どうか間に合って……!」
 久遠の無事を祈り彼女の居る部屋へと向かうヘルガだが、勿論、ハナアルキ達が黙って見逃す筈もない。
 周辺に心を惑わす香りを放って邪魔しようとするが、彼女は其れを身に纏うベールに気の障壁を纏わせて遮断。
 更に僅かにだがあった其の障壁を超えた香りによる洗脳も其の強い意志で耐えきっていく。
「今は一刻も早く彼女の元に向かわなくてはいけません。
 邪魔をするのなら……!」
「ギ……!」
 そして、其の侭ヘルガは其の身に纏う茨の蔓を放ちハナアルキを拘束。
 自身の周りに舞い散る薔薇の花びらを刃と変えハナアルキを切り刻んで打ち倒す。
(例え世界は違っても幼子を守りたいと願う気持ちは同じ。
 此れ以上の悲劇を生まない為に全力を……!)
 そう心に誓い、久遠を救い出す為にヘルガは久遠の居る部屋へと飛ぶのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ステラ・ウィテカ』

POW   :    ずっとずっと続く痛み
攻撃が命中した対象に【深い深い傷】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【立て続けに起こる「不慮の事故」】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    悲しい悲しい満たされぬ心
【世界を呪う言葉】【殺された恨み】【幸せになれなかった未練】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    味わえ味わえ私の苦しみ
【自身の周囲に漂う人魂】から【周囲の酸素を消す、両手の形をした炎】を放ち、【自身の死因である窒息死を追体験させる事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビビ・クロンプトンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『少女』を救え猟兵達
 最初に思い出したのは鬱憤晴らしに自分を殴る職員の記憶。
 次に思い出したのはほんの僅かな食事しか与えられずひもじい思いをした記憶。
 其れに親の居る子達から上から目線で可愛そーとか言う無遠慮な言葉を投げかけられたり、親なしとか言って虐めてくる悪ガキ達とかもいたっけ。
 此れが『ステラ』の物なのか其れとも別の孤児の記憶が混ざった物なのかは判らないけれど、此の境遇から抜け出したいという想いとどうして両親は私を残して死んだんだ、という悲しみと怒りだけは今も強く残っている……。

 そして、『ステラ』が頭の良さを生かして漸く其の環境から抜け出せそうになった時に……思い出したくもない吐き気がする酷い目にあって、挙句の果てに首を絞められて死んだ事も……死の間際に邪神とかいう奴と契約して酷い目に合わせた奴等全部、ぶっ祟ってぶち殺した事も―――。

 だからだろう、自分の体になった此の子、親においてかれて保護者に虐待されてる此の子は守ってやろうと思ったのは。
 とりあえず、大人なんて信用できないし近付く奴等は全部ぶっ殺す。
 綺麗ごとを言いながら其の裏で幾らでも汚い事をやってくる。
 そんな奴等に此の子を汚させる訳にはいかない。
 あたしの様に未練を抱いた侭に死なせる訳にはいかないのだから……。
ヘルガ・リープフラウ
本来の『ステラ』は、きっと優しい子だったのね
同じ境遇の久遠ちゃんを救いたいと願うほどに

わたくしも愛する家族や領民を吸血鬼の戯れに殺された
故郷のダークセイヴァーには、今なお人々を苛む悪意が蔓延っている
何度も傷つけられ、怒りも絶望も憎しみも覚えた

でも世界にはそれ以上に、人々の幸せを願う人々がいるわ
わたくし達も、そして……久遠ちゃんなら分かるでしょう?

憎しみに心を閉ざせば、差し伸べられた手の温もりにも気づけない
だからもう、彼女を解放してあげて

激痛と狂気に耐え、勇気と覚悟を胸に秘め
歌うは【天上の調べ】
ステラに対しても怒りではなく、憐れみと優しさ、慰めを込めて

約束するわ
どんな悪意からも彼女を守り抜くと


家綿・衣更着
裁縫セット用意し【迷彩】【忍び足】【鍵開け】で侵入。久遠のぬいぐるみを探し器用さ生かし【優しさ】籠め修繕。

「どうも、久遠ちゃんとステラさん。衣更着と申しまっす」
妖怪煙を煙幕に登場しユベコ発動。【見切り】と【結界術】で攻撃回避しつつ、ステラだけ狙いストール布槍【だまし討ち】で攻撃。

「ステラさん、UDCに憑りつかれ続ければ死んでしまうっす。守るどころか貴女が危険になってるっす」
「久遠ちゃん、勝手にだけど直しといたっす。復讐したい気持ちは分かるけど、貴女を助けたい五代さんの為にも元に戻って欲しいっす」
弱体化させたらぬいぐるみを返しつつ説得。

「あとは任せて骸の海に還るっす」
ステラに止め。やるせないっす


篁・綾
アドリブ連携歓迎よ。

まぁ、別に戦う気はないのだけれど。
刀は一纏めにして横へ弾いて、とりあえず座りましょうか。
お茶を勧められそうな状況であるならば、各員へお茶を勧めて話をしましょう。
胡乱な話や回りくどいやり取りは横に置いて、率直な話をしましょう。
それは大人のやり方でしょうから。

戦闘になるのなら、【残像】で身をかわしながら話す事になるのでしょうけれど。

出来るだけ優しく問いましょう。

貴女の本当に欲しいものは何?
この鳥籠を壊す事かしら?それとも、その子を助ける事かしら?
…貴女の、本当に望むものは何?

覚悟を決めて答えを待つわ。
そしてその答えが、善きものであるならば。
…その願いを、叶えましょう


御形・菘
先に宣言するが、此度の妾は説得のターン!
久遠にもステラにも、手を出す気は一切ない!
倒す必要? そんな些事は他の者に任せてしまえばよい!

意図せざる不慮の事故など、妾にとってはご褒美であるぞ
ただしメイクを落とされるのはマジ勘弁だがな?

大人は信じられぬか? ならば気の済むまで、妾にその気持ちをぶつけるがよかろう
妾はデキる大人だからから、大体笑って許す!
そして、ロクでもない大人は、同じ大人に始末を任せてくれればよい
お主らがこれ以上、底も救いもない陰りに身を染める必要はないよ

笑ってくれとまでは望まん、しかし怒りと涙はせめて止めたいものよ
…悪を叩くことではなく皆の笑顔を生むことが、「私」の全てなのだからね



●大人として
「何よアンタ達……!
 この子、久遠には指一本触れさせないわよ!?」
「こっちは其の子を傷付けるつもりも戦う気もないのだけれど」
「うむ、先に宣言するが此度の妾は説得のターン!
 久遠にもステラにも手を出す気は一切ない!」
 そう言って最初にステラの前に現れたのは戦闘ではなく説得を選んだ二人、黒髪の妖狐の女剣士、篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)と蛇の下半身を持ち禍々しい角を有する邪神系動画配信者の御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。
 戸惑うステラを横目に綾は刀を一纏めにして横へ弾き戦いの意思を示し、又、菘も攻撃を仕掛けてきても構わないとばかりにステラに近い場所に座り込む。
 二人は互いに戦いよりも説得の方を優先するつもりであり、菘等は倒す必要?そんな些事は他の者に任せてしまえばよい!という説得全振りの姿勢である。
「……何のつもりよ」
 それに対しステラは警戒心を露わに問いかける。
 大人を全く信用していないからこそ、逆に仕掛けたら何か罠があるかもしれないと疑っている様であり、攻撃すべきかどうか判断に迷っている様子が其の表情から見て取れる。
「とりあえず、話をするのなら喉も乾くだろうしお茶はどうかしら?」
「おお!気が利くではないか!」
「いや?!何で呑気にお茶なんて用意すんのよ!?
 状況分ってる訳?!」
 お茶を差し出す綾に対し菘は受け取るがステラは戸惑い、其れを拒絶し攻撃を仕掛けてくる。
 だが……。
「何で避けないのよ!其れにそっちのも武器を取ろうとしないし!」
 ステラの言葉の通り、菘は攻撃を避けようともせずに傷を受け、其の後に彼女に向かってくるボールも落ちてくる本も甘んじて受け、綾も又、攻撃を避けはするが横に弾いた武器を手に取ろうとせず。
 本来なら出来る筈の反撃を全くしない二人に対しステラは困惑を隠せないで問い詰める。
「私は話をしにきたのであって戦いに来た訳じゃないもの」
「右に同じ、よ」
「……ッ!し、信じられる訳ないじゃない!
 大人は何時もあたしを踏み躙って!奪って!最後にはあたしを……!」
 ステラは涙を流しながら怒りの侭に力を振るう。
 だが、其れでも綾も菘も彼女に対し力を振るう事はない―――。
「貴方の本当に欲しいものは何?
 この鳥籠を壊す事かしら?それとも、其の子を助ける事かしら?」
「そんなの久遠を守る事に決まって……ッ!」
 綾に呪詛を放ちながらステラは綾に答えを返そうとするが、綾の瞳に見据えられて言葉に詰まってしまう。
「……それが貴方の本当に欲しいものなの?
 ……貴方の本当に望むものは何?」
「私は……私は……!」
 呪詛を避けながら綾はあくまでも穏やかに言葉をステラに向けていく。
 彼女の脳裏に過るのは『ステラ』が死の間際に願った事。
 だが、ステラは頭を振って綾の言葉を振り払う様に暴れまわる。
「どうせ答えたって叶えられる訳がないわよ!
 とっとと久遠からの近くから出ていきなさいよ!!」
 そう言い暴れ回るステラに対し次に話しかけたのは菘であった。
 彼女はステラの放つ攻撃をずっと受け続け血に濡れながら、其れでも鷹揚に笑って言う。
「大人は信じられぬか?
 ならば気の済むまで妾に其の気持ちをぶつけるがよかろう。
 妾はデキる大人だから大体笑って許す!
 そして、ロクでもない大人は同じ大人に始末を任せてくれぬかな?」
「……っ!何でよ!あんたも何で避けないのよ!」
 あれだけ傷つけたというのに菘にはステラに対する怒りも憎しみも負の感情が一切感じられない。
 其の事にステラは戸惑い叫ぶ。
「受け止める、そう決めたのでな。
 其れにお主等がこれ以上、底も救いもない陰りに身を染める必要はない」
「何よ其れ!何よ其れ!!ふざけんじゃないわよ!!」
 菘の言葉にステラは激高し菘へと攻撃を重ね続ける。
 だが、其れでも菘は避けずに受け止め続ける。
「笑ってくれとまでは望まん、しかし……怒りと涙はせめて止めたいのじゃよ。
 ……悪を叩く事ではなく皆の笑顔を生むことが『私』の全てなのだからね」
「……分らない!何なのよ、あんた達は!何考えてるのよ……!」
 穏やかに優しく笑う菘の姿にステラは戸惑いの叫びをあげていく。
 彼女にとって大人とは自分を、自分達を踏み躙る物。
 少なくとも、こういう対応をしてくる者なんて彼女は知らない。
「ただ其の子を、そして貴女を助けたいだけよ。
 叶えられる訳がない、そう言っていたけれど……その願いが善きものであるならば……その願いを叶えるわ」
「うむ、子供の切なる願い、其れが間違ったものでないならば叶えてやるのが大人というものよ」
 あくまで穏やかに二人はステラに言葉をかけ、故にステラは困惑する。
「嘘よ!大人はあたし達を踏み躙ってきたじゃない!
 あんた達みたいな綺麗事を言う奴なんて信じないわよ!
 第一、せめて墓に花を供えてくれる友達が欲しいなんて、絶対に無理に決まってるわ!」
 だからこそ、ステラは本音を言ってしまったのかもしれない。
 当然、思わず言ってしまった事にステラは赤面してしまう。
「あら、想っていた以上に善い願いね」
「ほう、ならば妾と友になるか?」
「忘れなさい!忘れろ―――!!!」
 そうしてステラの暴走は二人がグリモアベースに帰還する迄続くのだった―――。

●天上の調べ響きて
(本来の『ステラ』は、きっと優しい子だったのね。
 同じ境遇の久遠ちゃんを救いたいと願う程に)
 心の中でそう思いながらヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は不機嫌そうで涙目のステラの前に顕れる。
 頭を過ぎるのは過去の記憶。
「わたくしも愛する家族や領民を吸血鬼の戯れに殺された。
 故郷のダークセイヴァーには、今なお人々をさいなむ悪意が蔓延っている。
 何度も傷付けられ、怒りも絶望も憎しみも覚えた……」
 余りにも簡単に命が奪われる故郷の事を想い、ヘルガは悲しそうな表情を浮かべステラに語り掛ける。
「でも、世界にはそれ以上に、人々の幸せを願う人々がいるわ。
 わたくし達も、そして……久遠ちゃんなら分かるでしょう?」
 そう、久遠の父が命を懸けて守った様に誰かの為に抗う人々は必ずいる。
 だから、久遠自身に語り掛けるのならばヘルガの言葉は届いたかもしれない。
「ふん、それで?
 幸せを願う人々が居て、其れで久遠は助かるとでも?
 祈りなんて何の役にも立ちやしないわよ!」
 だが、此処にいるのは『ステラ』であって『久遠』ではない。
 久遠はステラに守られ眠りに就いており、ヘルガの言葉は届かず……ステラは反発心もあってか怒りの侭にヘルガに襲い掛かる。
「さっき来た猟兵にも言ったけど……あたしはあんた達みたいな綺麗ごとを言う奴なんて信じない!
 あたしの居た孤児院の院長は表では綺麗事を言っておきながらあたし達を気紛れに殴った!
 あたしを殺した奴は味方の振りをして近付いてあたしを……大人なんて信じない、信じてやるもんですか!」
 ステラの叫びと共に硝子の破片がヘルガに降り注ぎ、彼女の身体を傷付けていく。
 そうして負った深い深い傷はヘルガに激痛を齎し苛んでいくが……ヘルガは其の強い意志で激痛に耐え抜き、ステラに声をかけ続ける。
「……憎しみに心を閉ざせば、差し伸べられた手の温もりにも気付けない。
 だからもう、彼女を、そして貴女自身を開放してあげて!
 『……護り給え、生きる力、心の光、人の望みの喜びを。其はかけがえ無き魂の旋律。何者にも穢されることなかれ』―――」
 勇気と覚悟を胸に秘め、人の命と尊厳を守り慈しむ願いを籠めた聖なる歌声をヘルガは歌う。
 久遠を案じる想いだけではない、ステラに対する憐れみ、そして彼女の心に寄り添い慰めたいという優しさを込めて祈り、歌う。
「ぐっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!
 煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い!!
 大人なんかがあたしを憐れむな!!
 認めない認めない認めない認めない認めない、認めてたまるか―――!!」
 だがヘルガの聖なる歌声にステラは心が揺らぎかけてきたからこそ必死に抵抗した。
 其の優しさから彼女をも救いたいと願っていたヘルガは悲し気な目で其れを見つめながら其れでも想いを届けよう、と歌い続ける。
(ステラちゃん……。
 せめて約束するわ。
 どんな悪意からも彼女を、久遠ちゃんを守り抜くと……)
 そう心の中で誓いながら―――。

●想いは届く、されど……
「はぁはぁ……あたしは消えられない!……消えられないのよ!!
 この子は久遠はあたしが守らないといけないんだから……!」
 消耗し今にも倒れそうになりながらもステラはそう言い無理やりに気力を奮い立たせていた。
 そんな彼女の周辺に怪しげな煙が漂っていく。
「……煙って火事か何かかしら?場合によっては移動しないと「どうも久遠ちゃんとステラさん。衣更着と申しますっす」誰よ?!」
 何処かからかけられてきた、だが姿が見えぬ声にステラは呪詛をばら撒いて対処。
 それに対し声をかけた人物、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は呪詛の動きを見切り、避けきれぬ呪詛を結界に封じて対応。
「打綿狸の本領発揮、誰にもこの綿は捉えられないっす!」
「っ!?……な…何これ?……ストール?」
 そして、衣更着は天井から急降下し棒状の武器、布槍に変化させた愛用の綿ストールを以ってステラを打ち据える。
「……だまし討ちって訳!でも、あたしは観念なんてしな「ステラさん」何よ!」
「ステラさん、UDCに憑りつかれ続ければ死んでしまうっす。
 守るどころかあなたが危険になってるっす」
「な、そんなの信じられる訳……!」
 衣更着のストールに抑えつけられながらもジタバタと暴れるステラに対し衣更着は穏やかな声色で諭す様に告げ、戸惑いつつも其の言葉を跳ねのけようとする。
 そんな彼女に対し、衣更着は一つのぬいぐるみを差し出す。
「……っ!これ久遠の……?」
「勝手にだけど直しといたっす。
 ……復讐したい気持ちは判るけど、貴女を助けたい五代さんの為にも元に戻って欲しいっす」
『……お父さん』
 大切なぬいぐるみを目の前に差し出されてステラの中に眠っていた久遠が出てきたのか。
 『ステラ』はぬいぐるみを受け取るとぎゅっと抱きしめる。
 自身に迷彩を施し忍び足で此のぬいぐるみを探し回収。
 久遠に救われて欲しいという想いを込めて衣更着が修繕したぬいぐるみは確実にステラの中の久遠へと想いを届ける事が出来ていた。
「ステラさん、あとは任せて骸の海に「嫌よ」ステラさん!」
「あの子のぬいぐるみを修繕してくれた事は礼を言うし、あんたも、あたしを説得してきた奴等も信頼できるかもしれない。
 でも、あんた達がずっと久遠を守れる訳じゃないじゃない!」
 今まで猟兵達が積み重ねてきた説得は衣更着が直し久遠に渡したぬいぐるみにより久遠、そしてステラにも届いた。
 だが……其れで素直に消えられる程、ステラの傷は浅くはなかったのだ。
 此の子に傷付いてほしくない!自分の様に踏み躙られて痛めつけられて最後には殺されるなんて目にあってほしくない!
「あんな酷い目に逢ってほしくないのよ!
 女の子の大切な物も命も何もかも奪われて誰にも看取られずに、笑いながら殺される!
 あんな目に逢ってほしく……!!」
 余りにも苦し気なステラの慟哭に彼女を抑えつけていた衣更着の手が僅かに緩み、其の隙にステラは拘束から逃れ離脱していく。
「ステラさん……」
 衣更着はやるせない表情を浮かべ、其れを見ていたのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルネ・プロスト
誰彼構わず殺すなんて雑なやり方はいけないよ
幸せの定義は人其々だけど、君のそのやり方はその子を孤独にする
君は一生の孤独を幸せだと思うのか?

その身体の子。久遠、だっけ
君はあと少しで穀潰しと縁を切って君のおじさんの元へ行けるんだってね
なら尚の事、君達は手を汚してはダメだ
社会のゴミ相手とはいえ人殺しなんて人生の汚点、君に残すわけにはいかない

これは君にも言える事だよ、ステラ
久遠を思い遣れる心があるなら、これ以上人を殺めて心を荒ませてはいけないよ
怨嗟の果てには幸福も安息もありはしない
優しい君が生前の苦しみを引き摺り続けている様は見てられない

戦闘はUCで天使化させたビショップに一任
人形には酸欠も窒息もないよ



●少女と人形
「そうよ……この子にあんな目に逢わせる訳には……」
「だからと言って誰彼構わず殺すなんて雑なやり方はいけないよ。
 幸せの定義は人其々だけど、君のそのやり方は其の子を孤独にする。
 君は一生の孤独を幸せだと思うのか?」
 消耗し惑うステラに対し語り掛けるのはルネ・プロスト(人形王国・f21741)。
「……っ、猟兵?!其れでも……あんな目に逢うよりは遥かに孤独の方がマシよ!!あんたもあたしの、私の最期の苦しみを味わってみると良いわ!!」
「窒息死を追体験させる人魂か……けどね?」
 ステラは周囲に漂う人魂から炎を放ちルネの周囲の酸素を打ち消していく。
「人形には酸欠も窒息もないんだ。
 ――君の楔を解くよ、僧正人形(ビショップ)」
 彼女の言葉に合わせ、彼女に付き従っていた聖域を展開していた人形であるビショップが聖なる炎を纏う熾天使へと変貌する。
 其の力は初見でもわかる様でありステラも攻めあぐねている様子だった。
 そして、そんなビショップに戦いは任せルネは更に言葉を重ねていく。
「その身体の仔、久遠だっけ?
 君はあと少しで穀潰しと縁を切って君のおじさんの元へ行けるんだってね。
 なら尚の事、君達は手を汚してはダメだ。
 社会のゴミ相手とはいえ人殺しなんて人生の汚点、君に遺す訳にはいかない」
 そう諭す様にルネは言葉をかける。
「だから、あたしが手を下すのよ!あたしが手を下せば「此れは君にも言える事だよ、ステラ」どう言う事よ……」
「久遠を思い遣れる心が在るなら、此れ以上人を殺めて心を荒ませてはいけないよ。
 怨嗟の果てには幸福も安息もありはしない。
 優しい君が生前の苦しみを引きずり続けている様は見てられない」
 心の底からそう思っている事が判る。
 そんな声色でルネはステラに諭す様に語り掛けた。
「……安息なんて知らないわよ!
 生まれてからずっと、そんな物知らなかったんだから!!」
 それに対しステラが出来たのは通じないと判っていて、其れでもルネを黙らせる為に炎を放ちルネの周囲の酸素を打ち消していく。
 だが……。
「――――」
 ルネに付き従うビショップは其れを赦さず、聖なる雷を以って人魂を浄化していく。
「なら此れから知れば良いんだ。
 死んで迄苦しみ続ける必要なんて、ないよ」
「煩い煩い煩い煩い煩――――い!!」
 そして、更に言葉を重ねていくルネに対しステラは掻き消すように、そして説得されかかっている自分の想いを振り払うように必死に抵抗するのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

ステラ。
アンタ達の心意気も分かるよ。
そりゃ心配だよな、自分たちと似た境遇だもんな。
けどな、もう一つ分かっておくれ。
本当に救うのなら、アンタ達じゃダメなんだ。
薄々気付いているんだろ?
このままじゃ久遠ちゃんを、取り込んでしまう事を。
彼女を、消し去ってしまうって事を。

だから、アタシらに護らせておくれよ。
そして、救わせておくれよ。
久遠ちゃんを、世の理不尽から。
ステラ、アンタ達を邪神の軛から。

知った風な口を利くだろう?
当たり前さ、邪神に関わって自分自身って存在を亡くした知り合いがいるんでね。
皆にはそうなって欲しくない。
だから。
この【魂削ぐ刃】、受け入れちゃくれないか?


カシム・ディーン
【属性攻撃】
生命属性を己に付与
己自身の生命力を強化

ステラのユーベルコードを正面から「受け止める」

己の体の状態を【情報収集】で把握
【医術】で的確に致命避

これが…お前の受けた痛みと悲しみですか

なぁ…教えてください
「親」ってどんななんですか?(生まれた時に捨てられた孤児

少しだけ…その子が羨ましい
だって…お前はその子を助けたいんでしょう?

そして…お前の強さが羨ましい
是だけ辛い目に在ってお前は尚他人を想えるのか

だから事実だけを教えます
このままではその子はお前と同化して消えます
それを望みますか?

その子が受けた痛み
お前の受けた痛み
その記憶を僕に下さい

その痛みを…奴に伝えましょう

了承してくれたらたまぬき発動1



●そして、彼女は骸の海へと還る
「はぁはぁ……今度は二人掛かりで煩い事を言ってくるつもり……?」
「ああ。そうなるかね」
「ええ。そのつもりですよ」
 そして最後にステラの前に現れたのは数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)とカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)。
 そして先ずは多喜がステラに言葉をかける。
「アンタ達の心意気も分るよ。そりゃ心配だよな、自分達と似た境遇だもんな。
 けどな、分かっておくれ。
 本当に救うのなら、アンタ達じゃダメなんだ」
「……ッ!それでもあんな目に逢わせるよりはマシよ!
 そもそも、アンタ等猟兵がずっと守れる訳じゃないでしょうが!!」
 多喜の言葉にステラは激昂し言葉を返す。
 確かに五代のおじさんの所に引き取られる迄は猟兵達が見守ればどうにかなるかもしれない。
 だが、其の後は?
 五代のおじさんが理不尽に晒されて命を落とせば久遠はどうなる?
 久遠を踏み躙る大人が此れからも現れないと?
 そうステラは言葉を重ねる。
 そんな風に疑心暗鬼になる程にステラの人生は大人に踏み躙られ続けてきたのだ。
「其れでも……薄々気付いているんだろう?
 此の侭じゃ久遠ちゃんを取り込んでしまう事を。
 彼女を消し去ってしまう事を」
「ええ、事実だけを述べると此の侭では其の子はお前と同化して消えます。
 其れを望みますか?」
「黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ――――!!」
 目を逸らし続けてきたその言葉にステラは二人に襲い掛かるが……。
「そいつは僕にぶつけると良いですよ」
「って、何正面から受け止めてるんだい!?」
 ステラの攻撃に対しカシムが正面から受け止める。
 カシムは生命属性を己に付与し生命力を強化しているとはいえオブリビオンのユーベルコード。
 其の傷はかなり深い様だ。
「必要な事でしたから……成程、此れが。
 此れが……お前の受けた痛みと苦しみですか?」
「……そんなもんじゃないわよ!体の痛みだけじゃない!
 だから此の子に味合わせたくないのよ!!」
 己の身体の状態を診断し把握、致命傷にならぬ様に処置しながら問いかけるカシムにステラはそう返す。
「なら教えてください。
 それと……「親」ってどんななんですか?僕、孤児なのでよく判らなくて」
「あたしだってよく知らないわよ!そもそも、そんな重い事をこんな場で言われても困るわ!」
 カシムの問いにステラは困惑し、そんなステラにカシムは畳みかける様に更に言葉を重ねていく。
「そうですか……久遠ちゃんでしたか?
 少しだけ……其の子が羨ましい」
「は?何がよ、此の子は…「僅かでも親の記憶がある事もですけど……だって、お前は其の子を助けたいんでしょう?」はぁ?其れが何で……」
 自分が助けたいと思う事の何処が羨ましいのか。
 そうステラは困惑する。
「そして……お前の強さが羨ましい。
 是だけ辛い目に在ってお前は尚他人を想えるのか」
 カシムは貧民街出身だ。
 そして孤児でもある。
 彼の幼い頃において無償で助けようとしてくれた人はいなかったのかもしれない。
 そしてステラの様に他人を想う心根を抱けない程荒んでいた時期も在ったのかもしれない。
 其れはカシム以外判らない事だが……其れでも彼の境遇を想えば想像に余りある事だ。
「よく判らないけど……あたしは此の子を久遠を……!」
「だったらアタシらに護らせておくれよ。
 そして、救わせておくれよ。
 久遠ちゃんを、世の理不尽から。
 あんたはずっと守れる訳じゃない、そう言ったけど……約束するさ守ると」
「僕は、そうですね其の子が受けた痛み、お前の受けた痛み、その記憶を僕に下さい。
 そうしたら……その痛みを奴に伝えましょう」
 二人は真摯にステラに言葉を向け説得する。
 今まで自分達を説得してきた猟兵達の言葉もあったからだろう。
 後一押し、そう見える位にステラの態度は和らいできていた。
 だからこそ多喜は更に言葉を重ねていく。
「知った風な口を利くだろう?
 当り前さ。邪神に関わって自分自身って存在を亡くした知り合いがいるんでね。
 皆にはそうなってほしくない。
 それはね、ステラ、あんたもであたしはアンタ達も邪神の軛から救いたいんだよ」
「…………」
 多喜の声は其の名に反し悲しみに満ちており、其の瞳は決意に満ちていた。
 約束を守るだろう事は疑い様がない事を。
 或いは命を懸けてでも為しとげ様とするかもしれないと不安を抱いた程に。
「なら、さっきした約束守りなさいよ」
「え?」
「ああ、多喜さんがした守るという約束と後は僕がした痛みを奴に伝えるという奴ですね」
 だからこそ、カシム曰く『是だけ辛い目に在ってお前は尚他人を想えるのか』と評されたステラは言葉をかける。
「そう、その約束よ。
 護るといったあんたも痛みを伝えるって言ったそっちのあんたも……それと約束を守る為にも長生きしなさい。
 そうしたら受け入れるわ」
「ああ、分かった必ず」
「僕の場合は長生きする必要もない気がしますが……まあ、約束しましょう」
 其れは不器用な彼女なりの優しさだったのかもしれない。
 笑いながら彼女はそう言い……。
「万物の根源よ。我が手に其の心をも奪い去る力を宿せっ…!」
「……見えたよ、本当の「アンタ」って奴が……。引き裂け、アストラル・グラインド!」
 二人に見送られステラは再び骸の海へと戻っていったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人間の屑に制裁を』

POW   :    殺さない範囲で、ボコボコに殴って、心を折る

SPD   :    証拠を集めて警察に逮捕させるなど、社会的な制裁を受けさせる

WIZ   :    事件の被害者と同じ苦痛を味合わせる事で、被害者の痛みを理解させ、再犯を防ぐ

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●その醜悪さは人故に
「ちっ、今回の馬は当たると思ったんだがな」
 男はそう言うと持っていた缶ビールを投げ捨てながら歩いていた。
 何時もの遊びで負けた腹いせに帰ったら、あのガキを殴ってスッキリするか、等と聞くに堪えない事を呟き、すれ違った女性に胡乱な目を向ける。
「あー……そういや、もう随分と女を抱いてねえな。
 ……あのガキも育ってきたし、そろそろ良いかもしれねえなあ」
 脅す材料は幾らでもある。そいつを使ってやりゃ訴える事も出来やしねえだろ。
 最近、あのガキも家から逃げようとしてる様だし逃げられやしねえと教えてやらねえとなあ、等と下種極まる事を考えながら男は帰路につく。
「あいつも、あいつの親父の遺した金も俺の為に骨の髄までしゃぶりつくしてやらねえとなあ。
 奴の孫なんて苦しめば良いんだしよ」
 反吐が出る程に邪悪な笑みを浮かべながら、そう呟いて。

●対象の資料
・一条ゲン(53)
 一条久遠の現在の保護責任者であり虐待を加えている人物。
 一条久遠の父である一条刑事の遺した遺産を使い込んでおり、其れを用いて豪遊を繰り返している。
 基本、金に汚く女に貪欲で親戚内でも鼻つまみ者だったらしく、一条久遠の祖母を襲おうとして一条久遠の祖父に懲らしめられたのが親戚内から遠ざけられた理由の様であり一条久遠の父親がゲンの事を知らなかったのも其の為。
 総じて碌な事をしない人物であり、幾つか犯罪行為にも手を染めている為に其処から攻めるのも手と思われる。

 猟兵達にUDC職員から配られた資料には纏めるとその様な内容が書かれていた。
 どうも五代という人物はUDC職員と知己を得ている様で、その縁で情報を集めていたのだという。
 豚箱に放り込めば完全に久遠から完全に切り離す事も可能との事であり、其れを確実にする為に暴力は無しにしてほしいが、精神的に苦しめるのは幾らでもOK、寧ろ精神的に壊れるレベルで追い詰めてくれてもいいのよ、とは此の資料を渡した職員の言だ。
 君は此の情報を元にゲンを犯罪者として逮捕する為に動いても良いし、精神的に攻撃していってもいい……。
ヘルガ・リープフラウ
久遠ちゃん、今度こそ五代のおじさんと幸せになってね
ステラ……あなたとの約束、必ず守るわ

それにしてもこの男、聞けば聞くほど、何て悪辣で破廉恥な卑劣漢!
人を人とも思わぬ所業に怖気が走ります

人通りの多い繁華街でゴスペルを披露いたしましょう
こちらでは「すとりーと・みゅーじしゃん」と言いますの?
精霊のルミナとアジュアも一緒に
神聖な歌声をアカペラとリズムに乗せて

ええ、あの男への罰も忘れてはいなくてよ
歌うは【恐るべき御稜威の王】
他の善き人々にとっては静謐で厳かな聖歌でも
あの男の邪心には、かつて虐げた人々の怨嗟が
地獄へと突き落とす神罰の雷鳴が鳴りやまぬでしょう

被害者の無念が、少しでも濯がれ癒されんことを……



●彼女は願い
(久遠ちゃん、今度こそ五代のおじさんと幸せになってね。
 ステラ……あなたとの約束、必ず守るわ)
 そう心に誓いながらヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は一通りの多い繁華街でストリートミュージシャンに扮し青い髪と蝶に似た翅をもつ少女、精霊アジュアと淡い光を纏い浮かんでいる少女、光精ルミナを伴って謡っていた。
 謡うのは黒人の感情の発露やアフリカ的なリズムで神への賛美を歌う福音音楽、所謂ゴスペル。
 三人の合唱は素晴らしく、其の神聖な歌声に繁華街を歩く人々は聞きほれて立ち止まる人がちらほらと。
 勿論、ゲンへの罰を忘れている訳では毛頭なく、此れは在る作戦の為。
 此処は目標、ゲンが家に帰る際に必ず通る場所であり、作戦を行う為に待っていたのだ。
(其れにしてもあの男、聞けば聞く程、何て悪辣で破廉恥な卑劣漢!
 人を人とも思わぬ所業に怖気が走ります)
 そして、心の内でヘルガが怒りを抱いているとゲンが彼女の視界に入ってくる。

●虐げられた人達からの報いは為される
「あん、何だ?」
 男、ゲンは聞こえてくる音楽に一瞬、足を止める。
 音楽に然程興味のない男であるが、そんな男ですら思わず足を止める程、其の歌は荘厳で美しい物だった。
「主よ、今こそ悪しき者の不義を裁き、良き人々に慈悲をお与えください。
 諸々の罪穢れを濯ぎ、世に溢るる悲嘆が慰められん事を……」
「へぇ、良い女じゃねえか。って、ガキ連れか」
 ガキを連れてる女は襲ったら面倒くさい事になるからな、等と神に祈る歌を聞いておきながら下種な事を考えていると突然耳元から声が聞こえてくる。
『許さない……お前だけは絶対に許さない……』
『お母さんに酷い事して……僕を殴って……』
『私にあんな事をしただけじゃなく、坊やを殴って……其の所為で坊やは……!』
 男は突然聞こえてきた声に思わず振り返るが後ろには誰もいない。
「な、何だ?……昔の事だってぇのに……くそ、やらん方が面倒がなかったか?」
 男を襲うのは一切思い出す事が無かった筈の罪への歪んだ形での後悔。
 そして、何かに罰せられるのではないかという恐怖であった。
『此れ以上、あの子を苦しめるな……』
『貴様が追い出されたのは働こうとせずにふらつき、挙句の果てに家の妻を襲おうとしたからだろう。
 其れを逆恨みするならば貴様を全霊を以って呪ってやるぞ!』
「な、ななな何であいつらの声が……死んだ筈だぞ?!」
 再び後ろを振り返るが男の後ろには誰もいない。
「ひ、ひぃ?!わ、訳が分からねえよ?!」
 男は恐怖の余り、繁華街から逃げ出していく。
 そんな男を周囲の人達は狂人を見る様な目で見ていたという。

●そして、彼女は祈る
(他の善き人々にとっては静謐で厳かな聖歌でもあの男の邪心には、かつて虐げた人々の怨嗟が地獄へと突き落とす神罰の雷鳴が鳴りやまぬでしょうね)
 突然悲鳴を挙げて逃げていったゲンを見ながらヘルガは想う。
 彼女が歌った【恐るべき御稜威の王】は人を傷付けた者達に罪の意識と神罰への恐怖心を与え、犯した罪を告発する犠牲者の声が囁かれる。
 あれ程に多くの人を虐げた者であるならば……言う迄もないだろう。
「被害者の無念が、少しでも濯がれ癒されんことを……」
 ヘルガはそう願うのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

片桐・公明
本「女性にだらしないなら、仕掛けるべきは美人計ね。」

【SPD】
分身をあえて対象の目につくように歩かせる
対象が釣れたら人気のない路地裏に連れ込む
行き止まりにたどり着いた時点で振り返り相対する
分「さっきから下卑た視線をくれているが何か用か?」
分「そんな体裁繕う必要なんかねぇよ。」

対象が手を出してきたら、正当防衛の範囲で迎撃する
武器は使用せず素手で応戦する
分「ほらほら。どうした?あれやこれや、ヤりたいんだろう?」

対象が逃げた場合は追撃しない
対象が見えなくなってから記録媒体を手に持った本体が出てくる
分「首尾は?」
本「上々よ。」
悪戯っ子のような笑顔を互いに浮かべる

(絡み、アドリブ歓迎です。)


カシム・ディーン
暴力禁止とは過酷なルールですね
残虐な拷問は幾つかしってるのに

証拠諸々は他に任

制裁
さて
お前は復讐ってどういうものと思います?
良くドラマとかでありますが…つくづく思うんですよ
あの程度で受けた痛みを理解できるのか

だから
一つ人の気持ちを理解してみましょう

二章で受け取った痛みの記憶を叩き込み
ステラと彼女が受けた痛み全てを追体験させる
その時の感情と悲しみも
己がやった事がどのような物だったかを

さて…
【医術(メンタルヘルス)】で男の精神状態の把握

煩悩無量誓願断…でしたか
上手くいく自信は欠片もないが
壊れたらそれはそれ(冷酷

たまぬきで男の煩悩の三毒の大半を強奪

後悔を抱いて生きるか
壊れ廃人か
何方にせよ地獄ですね


御形・菘
残念なことに、此度の動画は相当キツめの視聴制限をするしかないのう
拷問は決してエンタメではないのでな?

昏い夜道に、地を這い静かに忍び寄ろう
人気の無い場所で一気に接近、身体に尾を巻き付け拘束
頭を優しく掴んで、至近で目をしっかり合わせんとな
もちろん身体には一切傷つけんよ

はっはっは、こんばんは! 久遠に呼ばれて邪神推参!
理由を優しく丁寧に説明しつつ「お願い」しよう

久遠を不幸にするのは止めるように、というフリをして、
久遠の顔を見るたび…いや頭に浮かべるだけで絶望が襲い掛かるように、精神へと恐怖を刻み込む!
怒りをただぶつけるのは二流のやり口よ
妾は、裏コミュ系スキルを適切に駆使して、完膚なきまでに壊し潰す!



●怒りの侭に翻弄され
「はぁはぁ……な、何だったんだあの幻聴は……!」
 男は過去に虐げた人々から掛けられた声から逃げ出し、人通りが少なくなった所で一息ついていた。
(ちっ、気分が悪いぜ。……帰ったら憂さ晴らしするかぁ?)
 其れともあのガキを襲って発散するか、等と下卑た事を考えながら歩きだすと目の前に美しい……美しすぎる少女が通っていく。
 年齢は成人になった位だろうか。
 セミロングの髪をポニーテールにしていて眼鏡をしていた。
 だが、特に男の目を引いたのは其の胸元であった。
 欲望に正直な男は帰り道沿いなのもあって其の後をついていく。
 そうしてついていく内に帰路から外れて路地裏に入っていったのだが……少女に釣られた男は其れに気付かない。
 そうこうしている内に路地裏の奥、行き止まりに辿り着き、少女が振り返る。
「さっきから下卑た視線をくれているが何か用か?」
「は、はぁ?何を言ってやがる、俺は偶々行く道…が……」
 流石に急に話しかけられた困惑もあるし何より度胸もないのだろう。
 男は少女の言葉に慌てて言い訳しようとするが、自分が路地裏に迷い込んでいる事に今更気付き、余りに苦しい言い訳だと黙り込む。
「そんな体裁繕う必要なんかねぇよ。胸への視線とかで丸わかりだ」
「ぐっ……?!
 そうやって挑発してんだ!覚悟してるんだろうな!」
 少女の言葉に男は言葉に詰まり周囲を見渡す。
 そして、周囲に誰の目もない事に気付くと改めて少女を確認。
 同年代の女性の平均身長よりは高いものの自分に比べて体格はそこまで良くないと判断し襲い掛かろうとする。
「よっ」
「なっ?!」
 だが、少女は冷静に自分に殴りかかってくる男の腕を掴むとふわり、と投げ飛ばす。
 その動きは見事としか言いようがない物であり、更に男に怪我すらさせていない。
「ぐ、くそおおおおお!!」
「ほらほら。どうした?あれやこれや、ヤりたいんだろう?」
 その後も殴りかかろうとする男に対し、少女は決して自分から殴りかかる事もなく対応。
 怪我すらさせずに自分を翻弄する少女に徐々に男は化け物を見るような眼を向けだしていく。
「……っ!こんな化け物に関わっていられるか!!」
 そう捨て台詞をはいて男は路地裏から逃げ出すのであった。

●仕掛けの裏側
 そして、そんな男を少女が見送っているとビデオを持った同じ顔の少女が現れる。
 少女の名は片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)。
 そして、今まで男と相対していたのは彼女が呼び出した彼女の分身だったのだ。
「首尾は?」
「上々よ」
 『二人』は悪戯っ子の様な笑顔を浮かべながら笑い合う。
 本体の公明の手には女性、公明に殴りかかる男の姿が映った動画。
 しかも、男に対し公明は自分から殴りかかったりせず、反撃も正当防衛の範疇。
 この動画は男を追い詰めるのにかなり役立つ事だろう。
「女性にだらしないなら、仕掛けるべきは美人局よね」
 想定以上にいい結果を得る事が出来、公明は笑うのであった。

●例え異なる世界から見れば不条理だとしても
「暴力禁止とは過酷なルールですね。
 残虐な拷問は幾つか知ってるのに……とりあえず、証拠諸々は他の人に任せますか」
 逃げ出した男、ゲンを影から見止めながらカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は静かに呟く。
 UDCアースの法は彼にとって面倒くさい物かもしれないが、確実にゲンから久遠を引き離し二度と会わせない為にも其の辺りは必須事項。
 という訳でカシムは精神的にゲンを追い詰める行動に出たのであった。

●押し込められ盗まれて
「はぁはぁ……何だったんだよ!何なんだよ、さっきから!」
「自業自得では?」
「あぁ?!」
 自身の呟きに言葉が返された事に戸惑いながらも自業自得と自分を表した事にゲンはずうずうしくも怒りの声を挙げる。
 彼の眼前に現れたのは年若い少年。
 彼は怒りの表情を向けるゲンに構わず言葉を続ける。
「さて、お前は復讐ってどういうものと思います?
 よくドラマとかでありますが……つくづく思うんですよ。
 あの程度で受けた痛みを理解できるのか」
「何言ってヤガルんだ、手前!!」
 ゲンが殴りかかるが少年は何処吹く風と其の攻撃を避けながら言葉を更に重ねていく。
「だから……一つ人の気持ちを理解してみましょう」
 其の言葉と共に少年はゲンの頭にポンと手を置き……それと同時にゲンの脳裏に幾つもの光景と痛み、嘆き、悲しみ、絶望の感情が洪水の様に襲い掛かる。
「い”あ”……があ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」
 自分に殴られる、自分に大切な物を、家族の写真やぬいぐるみをバラバラにされる、僅かな食事しか与えられずに飢えに苦しむ、知らない誰かに殴られる、知らない誰かに心ない言葉をかけられ、物を取られ、汚され、誰も味方してくれずに苛まれ続ける、殴られる、穢される、首を絞められ……!
「さて……彼女とステラの受けた痛み全てを追体験させましたが彼女達が抱いた感情と悲しみを、己がやった事がどの様な者だったかを理解しましたか?」
 少年は叫ぶゲンを見下ろしながらそう嘯く。
「とはいえ、此れだけで済む訳ないですけどね」
「あ”……ま、待…て……」
「そう言ってお前は彼女に待ってあげましたか?
 煩悩無量誓願断…でしたか。
 上手くいく自信は欠片もないが壊れたらそれはそれでしょう。
 お前の煩悩の三毒、奪わせて貰います。
 万物の根源よ。我が手にその心をも奪い去る力を宿せっ…!」
 其の言葉と共に己の内から喪われていく感覚がゲンを襲う。
 物を求める欲望が、怒りが、知らないでいる事を恐れずにいられる、己が無知を赦す心が喪われていく。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」
「後悔を抱いて生きるか。壊れて廃人か。
 何方にせよ地獄ですね」
 頭を抱え苦しむゲンを見据えながら少年はそう嘯くのであった―――。

●動画配信者としての倫理
「残念なことに、此度の動画は相当キツめの視聴制限をやるしかないのう。
 拷問は決してエンタメではないのでな?」
 そう嘯いて禍々しい角に蛇の下半身をした女性、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)はフラフラしながら暗い夜道を歩く男を見据える。
 禄でもない男である。報いを受けるべきでもある。
 だが、其れは其れとして此れからやる事はあくまで久遠の未来の為の事。
 男の末路は娯楽にはなりえないし、恐らくだが自分の動画を見る人達に娯楽にはしてほしくないのだろう。
 菘は地を這い静かに忍び寄っていく。

●畏れるべき『何か』
「はぁはぁ……俺は…俺は……」
 ゲンは疲弊しながら動きにくい足を引きずって歩いていた。
 あの女の歌を聞いてから死んだ奴の声が聞こえて仕方ない、あの化け物に絡んでから周り全てが恐ろしくて仕方ない、あのガキに『何か』を押し付けられてから己が希薄だし見えない所が有る事が知らない何かがある事が恐ろしくて仕方ない。
「くそ、気分が悪ぃ……」
 其れでも毒づきながら歩いているゲンにザラザラした何かが巻き付いた。
 そして、動かなくなった自分の頭を何かが掴んで……ゲンの目の前に白い髪をした美しい『何か』がいた。
 禍々しい二対の角、蝙蝠の翼、見た目、大きさの異なる左右の手、蛇の下半身に紋様が施された体。
 そして、禍々しい化粧が施されながらも人を魅了する貌。
 ゲンにとって己の埒外となる人外の美が其処に在った。
「はっはっは、こんばんは!久遠に呼ばれて邪神推参!
 今日はお主にお願いがあって、のう」
「く、久遠だぁ?!あ、あのガキが何を……?!」
 『何か』、女性らしい其れの口から出た名前に戸惑い、そして、今までの原因はあのガキか!等と可笑しな怒りをゲンは抱く。
 なら、あのガキを甚振って、等と現実逃避がてら妄想するが……『何か』は其れを赦しはしない。
 己の目を至近距離から見つめ、自分が久遠を救う為に現れた事を、そして久遠の幸せの為に幾らでも『尽力』する事を、久遠が自分以外の別の誰かに引き取られる事をいっそ異様な程に優しく丁寧にゲンに教えていく。
 『何か』が普通の女性だったのならばゲンは反発し逆に久遠を傷つけ苦しめたかもしれない、『何か』が暴力によって従えようとしたのならば従う振りをして裏で動いたかもしれない。
 だが『何か』は其の見た目に反し穏やかで優しい声色であり、だからこそ畏ろしかった。
 己の頭など軽々と握りつぶせると其の目は言っている様にゲンは感じた。
 実際、自分を持っていない方の手で持っていた岩を軽々と砕いていたのだから、その予想は間違ってはいないだろう。
 あくまで久遠の此れからの人生において自分の死が汚点になり得るからこそ殺さないのだ、と。
 久遠を傷付ければ、いや久遠に近付けば此の岩の様に砕き、壊し潰すとでもいうかの様に。
 その恐怖は絶望は『何か』が言葉をかける度にゲンの精神へと刻み込まれていく。
 其れこそ久遠の顔を見る度、どころか頭に久遠の事を思い浮かべるだけで此の事を思い出し恐怖に襲われ絶望に其の身を包むだろう。
 故に久遠を不幸にするのは止める様に、という『何か』の言葉にゲンは頷く事しか出来なかった。

●穏やかな人ほど起これば怖い
「さて、念入りに精神へと恐怖を刻み込んだが……あれなら大丈夫そうじゃな」
 開放し這う這うの体で逃げていくゲンの姿を観て菘は静かに呟く。
「怒りをただぶつけるのは二流のやり口。
 裏コミュ系スキルを適切に駆使して完膚なきまでに壊し潰さねば、のう」
 あくまで声は穏やかに菘はそう呟くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

さて、と。
ステラとも約束しちまったしねぇ。
あの屑から久遠ちゃんを引き離すために、
やれる事を全力でやっていこうじゃないのさ。

そういう意味で、先に手を付けてくれてるヒトが居るのは有難いね。
五代のオッサンにアタシも協力して、
ゲンの犯罪歴の『傷口をえぐる』様に訴追材料を絞り込み、
ブタ箱へ放り込める手続きを進めるよ。
そして同時進行で、久遠ちゃんの新しい受け入れ先も探さないとね。

そこで、だ。
五代のオッサン、どうせなら久遠ちゃんと養子縁組してみたらどうだい?
あくまでアタシのアイディアだし、最後に決めるのはお二人さんだけどさ。
悪い話じゃない、そう思うけどねぇ?


家綿・衣更着
やっぱり五代さんも一条刑事もUDC職員なのでは?
いつも助けられてる組織に恩返しのつもりで行くっす。

さあ、汚い大人達の茶番劇っす!
全力【化術】で久遠に変身。【変装】と【演技】でなりきり、スマホ設置し【撮影】で犯罪の証拠確保。
【催眠術】や【誘惑】で心のタガをはずし暴行誘発。ここは映らないよう注意っす。
まあまあ殴られ、そこそこ襲われかけ、ほどほどで逃げて追ってこさせて…

ようこそ逃げ場なき提灯お化けの【結界術】空間へ。
うん、またなんす。この【呪詛】は結界に残ったステラさんの置き土産っす。
殺伐とした【化術】のハナアルキ達に喉が枯れるほど【おどろか】されて欲しいっす。
じゃあ、悲鳴を聞かせてもらおうか?っす


篁・綾
アドリブ連携歓迎よ。

そう、これが。
まぁもう他の皆に何かされているかもしれないけれど。
【誘惑】するように微笑んで、【だまし討ち】で指定UCを使用。
一時間分の記憶を代償に、この男の悪事の情報を全部引き出しましょうか。
どれだけ出てくるかしらね。
情報を得たら用無しだから、他の人に任せるわ。
その上でちょっと、つまらない事を男の姿のまま行いましょう。
警察?の詰め所から何かつまらないものを盗み出すフリとか。
それだけでも不法侵入?とやらになるから、御用改できるのでしょう?
途中で元の姿に戻って【残像】と共に消えるけれど。私は。

何なら顔写真付きでSNSを悪用してもいいわね。



●狐に化かされ
「はぁはぁ……も、もう見えてこねえよな?!」
 男、ゲンは後ろを何度も振り返りながら、そう呟く。
 余程恐ろしかったのだろう。
 その全身は汗まみれ、動悸も激しく、はぁはぁと息も乱れている。
「くそ、此れからどうすりゃあ……」
 余りにも恐ろしい体験故に久遠の事を考えるだけで其の事を思い出し恐怖に震えてしまうゲンにとって家に帰る事すら億劫な状態であった。
 そして、誰もいない薄暗い道で又出会う事となる。
 季節外れの桜吹雪を纏いながら現れた其れはとても美しかった。
 一目見るだけで男の本能を刺激した。
 其の笑みを見てあまりの美しさに息をする事すら忘れそうになった。
「変われ、変われ 鏡像の影へ 極彩の闇で言霊喰みて 夜を彷徨う徒花となれ……」
 女の唱える何かについて、そして自分の意識が徐々に遠のいていってる事が全く気にならなくなる程に美しかったのだ。
 ……女が自分と全く同じ姿へと変貌する迄は。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ?!!」

●そして罪は積み重ねられる
「此れは又、随分と酷い物ね……」
 同じ顔、同じ服、同じ声に変化した変化した綾に驚き逃げ出したゲンの姿を横目で見つつ、ユーベルコードによってゲンの脳内から吸い出したゲンが起こした悪事に関する情報を確認し篁・綾(幽世の門に咲く桜・f02755)はその醜悪さに顔を顰めた。
「どれだけ出てくるかしらと思っていたのだけれど……此処迄酷いとは予想外ね」
 人を『直接的に』殺めた事がないのが驚く程にゲンは多くの犯罪に手を染めていた。
 久遠の事がなくとも放置してはならない、多くの人が犠牲になりかねない外道であることを改めて綾は認識する。
 ゲンの一時間分の記憶を代償に得た其れは其れ程の情報であった。
「とはいえ情報だけで済ませるつもりはないのだけど、ね」
 そう言うと綾は其の姿の侭、付近にある警察署へと移動。
 事前に調べておいた監視カメラに敢えて映る様にしてゲンの姿の侭、署内に侵入。
 適当な物を盗もうとしている振りをし……。
「誰だ!そこで何をしている!」
「…………!」
「待て!くっ、署内に侵入し証拠品を盗もうとした男を発見!
 現在、追跡中。至急応援を望む!」
 敢えて見回りをしている警察官に発見され逃走。
 そして、途中で警察官の目を盗んで元の姿に戻り残像と共に完全に警察の目から逃れていく。
「さて、此れだけでも不法侵入?とやらになるから御用改できるのでしょう?
 あの男、暴力何某と繋がりもあるだろうし、捜査が其の辺にも及ぶかもしれないわね。
 そうしたら出所しても命を狙われるんじゃないかしら?」
 警察に侵入する前に取っておいた写真とSNSを用いゲンに悪評等が流れる様にしつつ綾はそう嘯くのであった。

●恩返しも兼ねての茶番劇、其の舞台裏
「やっぱり五代さんも一条刑事もUDC職員なのでは?
 いつも助けられてる組織に恩返しのつもりで行くっす」
 そう言って久遠を避難させた後の部屋で準備をしているのはストールをした白い髪の狸の青年、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)。
 彼は部屋の中に証拠を撮る為のスマホを設置すると久遠の姿へと変化。
 帰ってくるゲンを待ち受ける。
「さて、準備は万端。……主賓も帰ってきたみたいっすし、汚い大人達の茶番劇っす!」

●狸に壊される
「……今日は妙な奴に絡まれるし、ちょっと前の記憶が妙に曖昧だし厄日だぜ。
 俺が何をしたってんだ!」
 男、ゲンは自分が今までしてきた事を顧みる事もなく、そう憤慨する。
 妙に身体の調子が悪いし、自分の玩具で金の元のガキの事を思い浮かべるだけで頭がガンガンする。
 更に言えば薄暗い夜道で『何か』に出くわした筈なのに其れが何なのか全く思い出せない。
 そして、帰宅した後、自分を反抗的な目つきで見てくるガキ、久遠を見て頭が痛くならない為に身体が久遠の事を思い浮かべると拒絶反応を出していたのは勘違いだと思い込んだ。
 実際は久遠の姿に変化した別人だから拒絶反応が出なかったと言う事も知らずに。
「はっ、憂さ晴らしだ!何時もの様に殴らせろや!」
 そう言ってゲンは久遠を殴りつける。
 ご丁寧に周囲にばれないように服で隠せる場所を何時もの様に。
 何時もよりも殴りたくなった事が少し気にかかったが、今日が厄日だったからだと思い込みゲンは考え様としなかった。
 其処で可笑しいと思っていれば或いはだが、其れは言ってもどうにもならない。
 其れに気付いたのならば気付いたで他の形で報いを受ける事になっただろう。
 何時もの様に殴りつけ、そして何時もよりも鬱憤が溜まっていたから、体付きも悪くなくなってきたから、と鬱憤晴らしに襲おうとし逃げるのを追いかけて……断罪の場へと誘い込まれたのだ。
「ひ、ひぃ……?!な、何だ此れは……!」
「ようこそ逃げ場なき提灯お化けの結界空間へ。
 この呪詛は結界に残ったステラさんの置き土産っすから、まずじっくり堪能してほしいっす」
 今まで自分を恐れ逃げていた筈の久遠が自分を嘲笑い見据え、後ろから何かが自分への怒りを呪いの言葉を囁いてくる。
 其れはあの歌を聞いた時に聞こえた死者の声の様。
「うん、またなんす。
 まあ仏の顔もって言うし謝ろうが赦す気は毛頭ないっすが」
 己の足元に何かが纏わりつきキィキィと鳴き声が聞こえてくる。
 其れは自分の想像もつかぬ存在への恐怖、未知への恐怖を刺激し壊されかけた心が軋んでいく。
「殺伐としたハナアルキ達に咽喉が枯れる程におどろかされて欲しいっす」
 足元に纏わりついてきた何かは腰まで自分を包み込み、最早、動く事も儘ならない。
 その感覚は『忘れていた』巨大な蛇の下半身に巻き付かれ動けなくされた時の様だ。
「じゃあ、悲鳴を聞かせてもらおうか?っす」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
 そして、ゲンの心は壊れた―――。



●そして完全なハッピーエンドを掴む為に
(さて、と。ステラとも約束しちまったしねぇ。
 あの屑から久遠ちゃんを引き離す為に、やれる事を全力でやっていこうじゃないのさ)
 そう心に決めて数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は一人の男性と向かい合い、手元の資料を見つめていた。
「しかし、先に手をつけてくれてるヒトが居るのは有難いね。
 こう言うのは割りと時間が掛かるもんだしさ」
「いえ、此方こそ助かりました。
 俺が伝手を使って調べただけじゃ決定打がありませんでしたし」
 男、一条刑事の友人の五代は多喜の言葉にそう返す。
 時間を掛ければ久遠を助ける事は出来たかもしれないが、その間に久遠がどれだけ酷い目に在っていた事か。
「まあ、偽物とはいえ久遠ちゃんが酷い目に合う動画はちょっと見るのがきつい、ですけどね」
「あー……大丈夫かい?辛い様ならあたしが見るからさ」
「っと、すいません。手伝って頂いているのに弱音を吐いてしまって……やらなきゃいけない事ですし、自分がきついからって他の人に押し付けるのは違うと思いますので」
 多喜の言葉に五代はそう返し、多喜に気遣ってくれた礼を言うと資料の読み込みを再開する。
 そうして作業を続けていく内にゲンの犯罪歴は猟兵達の働きにより追加された物も含め的確に纏められていき、十分すぎる量の追訴材料が積み重なっていった。
「此れであの男が万が一にも治ったとしても速攻でブタ箱へ放り込む事が出来そうだね」
「ええ、例え出所できても警察に監視される事になるでしょうし、此方にも情報が来る事になるでしょうね」
 尤も、此れだけの罪が積み重なればあの男の年齢なら出所する前に、という事になるだろうが。
 そして残った問題はあと一つ。
「後は久遠ちゃんの新しい受け入れ先、だね。
 そこで、だ。五代のオッサン、どうせなら久遠ちゃんと養子縁組してみたらどうだい?」
「久遠ちゃんと義親子に、ですか?
 其れは妻も反対はしないと思いますが……」
 五代も自分が引き取る事そのものは考えてはいたし妻にも其の考えは伝えていた。
 だが、五代にとっては久遠の父は自分の親友であり自分が養父になるというのは考えの外だったのだろう。
 多喜の言葉に困惑の表情を浮かべる。
「あくまでアタシのアイディアだし、最後に決めるのはあんた等だけどさ。
 悪い話じゃない、そう思うけどねぇ?」
「確かに変な手出しを完全に遮断できそうですし、苗字が変わってしまうのを久遠ちゃんが嫌がらなければ悪くないとは思いますけど」
 五代は悩んでいる様子だったが何れにしても久遠ちゃんに話を通してから、とそう言う話になった。
「しかし、三十路前半で久遠ちゃんの父親なんて出来るかなあ……?」
「ん?ちょい待ち。……五代さん、あんた何歳なんだい……?」
「32歳ですけど?」
 その際に10歳も違わない相手をオッサンと呼んだ事を多喜が謝罪する一幕も在ったりしたが、其れは余談だろう。

●そして、その後
 その後の事は其処迄語る程でもないだろう。
 外道は塀の中にいき、精神に傷を負った事もあってか死ぬまで出てこれなくなるだろう。
 出てきたとしても厄介な所に恨みを買い命を狙われかねないし、下手すれば塀の中でも命の保証はない状態。
 そして、苦しみ傷付いた少女は父の友人に引き取られ幸せになった。
 只それだけの事である。
 敢えて言うのなら、少女は父の友人、新しい養父の力も借りて花を手向ける為に一人の少女のお墓を探しているらしい、と言う事位だろうか?

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月17日


挿絵イラスト