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旅の無事を祈るため

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●洋館にて
「これは親切に。ありがとうございます。泊めてくれるんですね」
 夕暮れどき、流浪の民の一団が少女に頭を下げていた。彼らは圧政を逃れ、幌馬車に乗って、はるばる旅する身。親切な館の主人に一晩の宿を許してもらえたのだから、頬も緩もうというものだ。聞けば少女は館の主人であり、両親亡きあと、ここに一人住んでいるという。いや、正確には一人ではない。彼女に忠実に付き従う、猟犬たちがいるのだという。とにかく危険がなさそうに見えて、流浪の民の団長は団員に次々と館の中へと入るように指示した。

 旅塵を落としてしばらくした後、賑やかな夕飯が振舞われた。
「それでそのとき、団長さんはどうされたんですの?」
 なんて可愛い女の子に笑顔で聞かれたならば、団長は武勇伝を朗々と語る。
「あれは、俺がまたこの幌馬車を作って間もない時の話――」
 それを聞いて、やんややんやと囃し立てる流浪の民たち。
 楽し気な様子を、少女は、そして猟犬はじっと見つめていた。

 じっと、じっと見ていた。

 そしてあくる日。
 その館から出てきたものは誰もいなかった。

●グリモアベース
「はーい。本日はお集まりいただき、ありがとうございますー。皆さんに、お願いしたい事件があるんですよー」
 兎の耳飾りを揺らして、ぺこりとお辞儀したのはグリモア猟兵、東風・春奈(小さくたって・f05906)だ。のほほんとした笑顔を浮かべながらも、彼女が予知した内容は看過できないものだった。

「実はー、ダークセイヴァー世界で旅人の集団――流浪の民の一団が、ヴァンパイアに殺されてしまいそうなんですー。文字通りの全滅、軍事用語では殲滅と言えば誤解ないかもしれませんー。少なからぬ人命が失われることを、未然に防ぎたいですー」

 予知の内容はこうだ。『ダークセイヴァー世界のさる地方にある、小さな館。そこはヴァンパイアとそのペットが住まうという。流浪の民の一団が、その館にやってきて宿を取る。その夜、ヴァンパイアは本性を現して、流浪の民の一団をあまさず食い殺し、翌日には何もなかったかのように時間が流れていく』のだ……という。

「そこで皆さんには、被害を未然に防ぐため、流浪の民の一団より早く館に潜入し、ヴァンパイアを討伐してもらいたいんですー」
 春奈は笑顔でそう伝える。オブリビオンとその眷属との即座の開戦、討伐は決して簡単な話ではない。しかし、皆さんならきっとできるはずですからと信頼のまなざしを受けて、引き下がる猟兵がいるだろうか。

「作戦の流れを説明しますねー」
 エプロンドレスをふりふりと揺らし、作戦の流れが書かれたレジュメを配った。

・館の入り口付近まで、私(春奈)が転送しますー
・道中、オブリビオンと思われる番犬を蹴散らし、館の奥へ向かってくださいー
・主人の部屋へと向かい、ヴァンパイアを討伐してくださいー

「以上が、主な作戦となりますー。実際にどんな敵が現れるかは、その場に行かないとわかりません。タイミングや、場所は考えなくて結構ですよー。皆さんは、戦闘に集中していただければー」
 だいぶふわふわとした作戦だな――なんて苦言を呈した猟兵に、予知には限界がありまして――と春奈は頭を下げる。

 ――それから。
「作戦が成功したら、皆さんにお願いしたいことがあるんですー」
 付け加えるように、春奈は指を振って付け加える。

「予知された時間通りに、流浪の民はやってきます。皆さんが順調に戦闘を終えれば、戦闘終了後になるはずですー。彼らは疲労してくたくたで、これまた予知通り、一晩の宿を求めてくるはずですー。そこで、一晩だけ。猟兵のみなさんには館の住人となって、彼らをもてなして欲しいんですねー」
 館の住人となるといっても、形だけのこと。彼らの流儀に従って共に遊んだり、あるいは猟兵の文化を持ち込んでもいい。とにかく楽しく遊んでもてなすことをお願いしたい。得意なことをしてほしいという。

「ただし、一つだけ条件がありますー」
 ――《猟兵がヴァンパイアを討伐したこと》は言わないで欲しい。
 そう、春奈は伝えた。
「不安がらせるだけですし、意味がありませんから-」
 あくまで、たった一晩館に住まう住人の演技をお願いしますと付け加えた。

「――それでは準備はよろしいですか?」
 春奈が首をかしげると、猟兵たちは頷いた。


隰桑
 お世話様です。隰桑(しゅうそう)という名の初心者マスターです。

 お陰様で、今回は四作目となります。

●依頼について
 ダークセイヴァー世界です。戦って、戦って、騒ぐ依頼です。
 あまり気構えず、かっこいい皆さんのお子さんを見せてください。

 一章・二章については、戦い方に関するプレイングのみで十分です。
 しかし、反映できるかは別にして、絡め手の記載も歓迎です。

●プレイングについて
 自由に送っていただいて結構です。隰桑への気兼ね、遠慮は不要です。
 なるべく多くのプレイングを採用したいと思っています。
 得意なこと、やりたいことを書いてください。
 皆様の自由な発想で、事件の解決を。

 ただし、オープニング提出時点で二章と三章のフラグメントは確定していますので、その点ご留意くださいませ。

 あわせプレイング歓迎しております。
 複数人の場合は名前(相互に、呼び方・キャラIDなどあると嬉しいです)
 団体様の場合はそれに加えて人数がありますと、迷子が減るかと思います。

 逆に誰かとプレイングを一緒にしてほしくないソロ希望の方は、その旨記載していただけますと助かります。記載ない場合、どなたか別の参加者の方と同時に採用、リプレイに反映することがあります。

 隰桑はアドリブが大好きです。アドリブがどうしても困るという方は、別途プレイングにその旨記載いただけますと助かります。(【アドリブ禁】の五文字で十分です)

 それでは、熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『オルトロス』

POW   :    くらいつく
自身の身体部位ひとつを【もうひとつ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    ほえる
【悲痛な咆哮】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    なかまをよぶ
自身が戦闘で瀕死になると【影の中から万全な状態の同一個体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼に支配されたこの世界で不用意に館に近寄るなんて…
まぁ、無用心な旅人の事は後回し
吸血鬼を狩り終えた後で考えよう
今は、番犬の相手に集中する…

事前に防具を改造
第六感を強化し些細な存在感も見逃さない見切りの呪詛を付与
敵の攻撃の予兆を感じとり回避する
…術式選択。真理の衣
本命はこの後。無駄に消耗するつもりは無い…


【限定解放・血の波涛】を発動
吸血鬼化した怪力を瞬発力に変えて敵の懐に潜り、
大鎌をなぎ払うのと同時に、生命力を吸収する波動を放つ
その後、時間差で力を溜めた魔力が敵の体内で爆発して傷口を抉る2回攻撃で追撃

…波涛は逆巻く。撃ち砕け、血の怒涛…!

…ん。仲間を呼ぶと分かっていれば、対処は簡単、ね


セルマ・エンフィールド
それが逃げるためとはいえ、未知へと踏み出すのは勇気が必要です。彼らには敬意を。(……私にはできなかったことですから)

同じダークセイヴァーの出身として思うところはありますが、まずは戦いに集中します。

●ほえるの正確な攻撃範囲は不明、ですが射程ならば私もそれなりには自信があります。【氷の狙撃手】で近寄る前に凍り付いてもらいましょう。

●なかまをよぶは面倒ですし、スコープの視力補助やスナイパーとしての技能を活かし、近くの敵から確実に仕留めていきます。

他にも交戦中の猟兵がいればそちらの援護射撃を。特に●くらいつくために身体部位が頭部に増えた敵は優先してクイックドロウによる早撃ちでその頭部を狙います。


杼糸・絡新婦
カラクリ人形・サイギョウと共に戦場へ。
怖いお出迎えやねえ、お邪魔させてもらいます。
SPD行動
「フェイント」を交え攻撃を行いこちらに攻撃をわざと向けさせ、
向こうの攻撃に合わせ、オペラツィオン・マカブルを発動。
お返しといきましょうか。
また、こちらに来た敵を「敵を盾にする」で使用、
他の敵の攻撃から防御。
すんませんなあ、お互い仕事ですから。


フィン・クランケット
旅人を騙して殺す、なんて、昔話にはよくある事でも、現実には見捨てておけませんよぅ
私も旅人ですしねぇ
という訳で、旅人さんの道行を守るべく、お手伝いに参りました!

●SPD
館へ向かう道に出る悪いわんちゃんさんたちは、眠ってもらいましょうねぇ

危なくない程度に多数のオルトロスさんたちを引き付けてから、吹雪の森を空間展開
ユーベルコードを発動します
全てを埋め尽くす、白い墓標の下でおやすみなさい

残った子達は、属性攻撃を乗せた薙刀で薙ぎ払い
各個撃破で片付けましょう

他の方と連携して、囲まれたり、不利な状況にならないように気をつけつつ

う〜…さむっ
この技使うと、本当、冷えちゃうんですよねぇ…
さ、早く館へ行きましょうっ



●城の朝
 そこは冬の森に囲まれた館。
 光差さぬダークセイヴァー世界の、ひときわ寒い夜の闇を裂いて、猟兵たちは舞い降りた。カチカチと灯りを灯し、互いの所在を確認する。
「時間と場所を確認。……大丈夫、目標の館です」
 まず第一にと、青い瞳をくりくりと動かして、油断なくあたりを確認したのはセルマ・エンフィールド(終わらぬ冬・f06556)である。初めて来る場所ではあるが、どこか知っている風景を見ても、彼女は表情を変えない。
「ん、ありがとうなあ。それじゃ、いこか」
 不愛想に見えるセルマに、にこにこ笑顔でお礼を言うのは白い着物の青年だ。名を杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)という。狩衣を着た狐人形を抱き、よく化粧した整った顔をそのままに、音もなく城門の方へ歩き出す。

「しかし、旅人を騙して殺す……なんて、昔話にはよくある事でも、現実には見捨てておけませんよぅ」
 からりと明るい声で館の頂上へびしっと人指し指を突きたてて、そう思いませんか? と傍らの同胞へ同意を求めるのは蜜柑色の髪をしたエルフ、フィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)。フィンが示指をぴこ、ぴこと動かすとそれに合わせたかのように、ぴこ、ぴこと頭頂のアホ毛が揺れた。
「でも、吸血に支配されたこの世界で不用意に館に近寄るなんて……」
 旅の一団は油断しすぎだと指摘するのは、輝く銀のウェーブヘアの黒騎士。そのままリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、館の内を、装飾が凝らされた門ごしに覗いて、何もないことを確認し仲間へ合図を送る。
「たしかに、そうかもしれませんねぇ。でも、旅をするのは大変ですから、つい寄りたくなっちゃう気持ちはわかりますよぅ!」
 なにせ旅商人ですからとフィンが胸を張ると、リーヴァルディはそういうものなのと納得してみせた。のんきな話をしているように見えるが、フィンもリーヴァルディも、油断なくあたりの敵を警戒したままである。お互いに、それがわかっていた。

●白い墓標
「それじゃ、入りましょう」
 会話を遮るように、素っ気なく、セルマが門を開く。相手がオブリビオン、特に番犬を模したものならば、表から入ろうと裏から入ろうと同じことである。ならば、堂々と。ゆらり、ゆらりと茂みから、塀の影から、正門から。あたかも黒色をした炎のように、ゆらめく影は、犬のように見えなくもない。しかし、決定的に目が違う。彼らの瞳は虚ろであり、無間地獄の鬼火を思わせる赤色をしていた。それはまさしく過去より蘇った生き物たち。堂々入った猟兵たちを歓迎するように、オルトロスたちが現れた。

「……ん。来た。」
 いち早く気づいたのは、リーヴァルディである。常闇の世界を終わらせ、黎明をもたらす誓いが刻まれた衣に纏った呪詛は、敵の攻撃の予兆を見逃さない。それゆえに、彼らの殺気にいち早く応対し、迎撃の構えを取った。

「おーおー、怖いお出迎えやねえ、お邪魔させてもらいます」
 怖いと口では言うものの、絡新婦の表情に驚きの色はない。とんと音を立てて、狐面の人形が地面に降り立つ。ぴっぴっと指を早繰りに動かすと、からくり人形のサイギョウは生命を吹き込まれたかのように動き出す。

低い唸り声は、何重にもわたって猟兵たちを取り囲む。犬という種は本来個ではなく、群れで狩りを行う。オブリビオンという異形の身であっても、その本質は変わらないということなのだろうか。
(「――時間を稼がれては、厄介ですね」)
 過去を守る番犬たちが機を窺う様子を見て、セルマは冷静に戦況を俯瞰する。もとより時間制限のある戦い、そしてこれは前哨戦。相手のペースに乗ることはない。彼女は握る銃を地面に立てて、前部から素早く弾を込める。悠々と銃を両手で持ち直し、銃側部の火門に雷管を嵌める。最後に撃鉄を発砲位置につけ、狙いを澄ませ、一体のオルトロスの腕が爆ぜた。続くように、ぱんと乾いた音が鳴った。
「――少し動かれて、外れましたか。次弾は修正します」
 少し不満そうに呟くが、銃弾に穿たれ手負いのオルトロスはもはや戦力外であった。

『……限定解放』
 その音を皮切りにして、ユーベルコード【リミテッド・ブラッドウェーブ】を解放させて、一挙に敵の懐に飛び込んだリーヴァルディは、過去を刻み未来を閉ざすその大鎌で、オルトロスの身体を切り裂く。しかし、敵は決して繊細な紙細工ではない。切り口からどろりと粘つく液体が流れこそすれ、まっぷたつとはいかなかった。
「……波涛は逆巻く。撃ち砕け、血の怒涛!」
 だが、リーヴァルディにとってはそれで十分。彼女の言葉にあわせて、与えた傷口から魔力が爆発の形となって溢れ出る。哀れなオルトロスが甲高い鳴き声をあげながら、ゆらりと倒れる。それに一瞥もくれず、銀の髪したダンピールは次の獲物へと駆けだした。

 ――オォォオオオン!
 轟音が、館の前庭を満たす。それはオルトロスたちの吠声。ただの音ではない。倒れた仲間を悼む悲痛な感情の込められたそれは、聞くものへの呪詛と変わりない。しかし、涼し気な顔でそれを聞いた絡新婦は笑顔のまま。オルトロスに知性があれば、それを訝しむところであろうが、彼らにその力はなかった。寸後、満足したようにサイギョウが絡新婦の前に飛び上がる。きらきらと光る、糸は絡新婦の指に伸びるもの。放射状に、音が発された。それを聞いたオルトロスが何体か、ばたばたと倒れた。
「ま、こんなもんか。すんませんなあ、お互い仕事ですから」
 ユーベルコード【ダンスマカブル】で受けた攻撃を跳ね返し、倒した敵を、無感情の笑顔で眺めたのち、絡新婦とサイギョウは悠々、館の扉へと歩いて行く。

「いっぱいいますねぇ。そんなワンちゃんたちには、眠ってもらいましょうねぇ」
 相変わらずのとぼけた声は、フィンのもの。ぴょんぴょん跳ね、腰をふりふり、ちっちっと指を振ったり、アホ毛をぴょこぴょこ横に揺らしたり、とにかくオルトロスたちの注目を集めていたら、いつの間にやら彼らに囲まれていた。モテモテのフィン。絶体絶命。
「そろそろいいですかねぇ」
 なんて、指を頬にあててご機嫌に笑う。そんなことを言っていたら、一匹のオルトロスがフィンのアホ毛……ではなく、頭目掛けてとびかかる。が、その動きがぴたりと止まった。
「油断しすぎです。……まったく」
 少し離れた位置で、そのオブリビオンに銃を向けていたセルマからの援護射撃。彼女が一発で胴を打ち抜いたかと思えば、そこから氷が広がって、たちまち凍り付かせてしまう。黒色火薬の白煙の中で、彼女の顔は恩を着せる様子も、自慢げな様子もなく、当然とばかりの無表情。
「おおー! すごい、すごーい! あーりがとうございまーす!」
 ぶんぶん、ぶんぶん。まるで遊園地にでもいるように、大きく手を振り、ぴょんぴょん飛び跳ね、セルマにお礼を言うフィン。それを見てか、あるいは凍り付いたオルトロスを見てか、セルマはぷいっとそっぽを向いて、もともと相手していたオルトロスたちへと向き直る。その表情は、フィンからは見えなかった。
「むむー……聞こえなかったんですかねぇ。ま、それはさておきお仕事です!」
 口を尖らせながらも、周囲のオルトロスを片付けるのが先決。
「魂すらも凍てつき砕ける。この森の命は斯くも儚き――」
 今までの底抜けに明るい態度と、この言葉は全く別物。

「――Valkoinen hautakivi、白い墓標の下でおやすみなさい」

 白い墓標を意味するユーベルコード【Valkoinen hautakivi】は、彼女に集っていたオルトロスたちごと、いや、館の前庭ごと、はらはらと花びらが舞う、白い世界に包んだ。

「――もらった」
 グリムリーパーが、一体のオルトロスの首を掻き斬った。紫の瞳は動きの停止を見逃さず、リーヴァルディは白い世界を駆ける。絡新婦が糸を舞わせ、セルマが撃ち、オルトロスたちにトドメを刺す。やがて、館の入り口の前に立つのは猟兵だけとなった。

「う〜……さむっ。この技使うと、本当、冷えちゃうんですよねぇ……」
 ぶるぶると自分の両腕をさすって、他人事のように暢気に言うフィン。周囲の視線が自分に集まっていることに気づくと、ぱぁっと明るい顔になって。
「敵は掃討されました。さ、早く館へ行きましょうっ!」
 なんて元気よく、館の扉を指さすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

聖護院・カプラ
【WIZ】
予知から察するに、猟犬を従える少女というのがヴァンパイアなのでしょうね。
人の命を奪うその行い、看過できましょうか。
いえ、できません。

猟兵がヴァンパイアを討伐した事を話さない旨も理解しています。
過度の戦闘痕を残す訳にはいきませんから、私の選択するユーベルコードは……。

後光ユニットから存在感を増して放つ事で発生する『円相光』です。
存在感でオルトロスの注目を集め、動きを封じ味方猟兵の攻撃をサポート致します。

影の中から敵が呼び出されそうになったら、後光を照らし
仲間を呼ぶ事を阻止してみせましょう。


天星・零
『ふふ、やれやれ。人とオブリビオンは寄り添えないのですかね。僕達が特殊なだけなのかも知れませんがね。ウェビルはどう思う?』

零で行動。【毒使い・呪詛】の技能を活かしつつマフェットスレッド、Ø、グレイヴ・ロウを使い戦闘



万が一のことがないよう【第六感】を働かせつつ単調にならない為と敵を翻弄する為【フェイント】(例えば手を敵の顔前に出して敵の視界に死角を作って見えない所から攻撃するなど)を入れつつ戦う



UC【ウェビル・ジョーカー・オブ・ウィスパー】を使い、戦闘に参加させ、攻撃、妨害などを担当させる

指定UC以外もご自由に

キャラ口調ステシ参照

ウェビルの口調‥語尾、一人称、二人称常に安定せず、変わるのでお任せ


月宮・ユイ
SPD行動

人を招いて持て成して、最後は誰一人帰さない不帰の館
怪談話ならまだしも、現実にされてはたまりませんね…
過酷な世界を精一杯生きる皆さんを
私達でしっかりと御持て成しできるよう、準備を整えましょうか

まずは番犬からね
”戦闘知識、第六感”等を駆使、敵の動きを”情報収集・見切り、カウンター”
”衝撃波”も織り交ぜながら、
’連結剣型:星剣’を用いた遠近両用の”範囲攻撃”
’秘匿兵装:暗器、投げナイフ’の”投擲、グラップル”による格闘
と近~中距離戦で対応予定。
敵が多そうなので【捕食形態】や
攻撃に込めた”吸血・生命力吸収”の”呪詛”で消耗の回復も
「逆にこちらが食べてあげる…」

アドリブ・絡み・協力歓迎



●館の中
 白い世界を抜け、扉を明けた猟兵たちを待っていたのは暗い空間だった。ダークセイヴァー世界は、光の差さぬ闇の世界。その内にある館もまた、暗がりの中にあった。来客を未だ知らぬ館は、まるでその主の存在を示すがごとく、重々しかった。

「……まっくらね」
 左右で異なる金銀の瞳、艶やかな黒髪を揺らし、暗闇を見て呟くのは、月宮・ユイ(終焉に抗いしモノ・f02933)という名の可憐な少女。猟兵たちの視力なら、道こそ見えないこともないが、敵がどこから襲ってくるかわかったものではない。それを真面目な面持ちで警戒する様子は、その身が兵器のヤドリガミゆえか。
「そうですね。……このまま進むのは、少々危険かもしれません」
 そう応じるのは、金髪の少年。左右異なる瞳は彼も同じ、特に右目はユイと同じ金色であるが、滋味を感じさせるワインレッドは彼のもの。天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は、首から下げた十字架を触りながら、どうしたものかと思案する。

「ならば、ここは私にお任せください」
 分け入って、ずいと前に出るのは、特異な形をしたウォーマシン。聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)が仲間たちにそう宣言し、背部のユニットから広がるように光差す。それはさながら仏から差す後光のように。ユーベルコード【円相光】の光は、冷たいダークセイヴァーの世界を温かるような慈愛に満ちたそれとして、猟兵たちの視野を満たす。赤い絨毯が敷かれた、広いエントランスホールが露わとなった。
「――見つけた。階段の裏と、花瓶の影。オルトロスよ」
 ユイが冷静に敵の位置を仲間に伝える。即座に気づくのは、彼女が戦闘慣れしたヤドリガミであり、情報収集に長ける精霊の加護を受けているからだろうか。
「それから、階段を上がったところにもいますね」
 零は補足し、あれは僕がやりますと伝えては、即座に駆けだした。
「先ほどからの戦いを見る限り、影から敵が現れます。ご注意を」
 駆けだす二人に声をかけるカプラ。彼の後光に照らされて、何頭かのオルトロスの存在が明らかとなった。暗がりに潜み、慎重に襲い掛かる機を窺っていた彼らは、即座の明かりに対応しきれず右往左往していた。

●捕食者
(「過酷な世界を精一杯生きる皆さんを、私達でしっかりと御持て成しできるよう、準備を整えましょうか」)
 彼女が戦わなくては、きっと目の前の番犬たちは無辜の人々を食い散らかす。それがわかっているから、彼女は戦う。
 一階部のオルトロスたち目掛けて駆けだしながら、ユイの手がきらりと光る。その手にあるのは投げナイフ。投じ、牽制しながら一挙に近づく。一頭のオルトロスの燃えるような瞳と、金銀の瞳が交差した。赤い絨毯を傷つけぬようにしながら、星剣が敵の喉笛を掻き切る。ゆらりと揺れた番犬の頭部を見て、ユイの瞳が欲望に揺れる。
「因子覚醒……! 逆にこちらが食べてあげる……」
 彼女の腕が異形へと変わる。全てを喰らう捕喰者の頭部となった、ヤドリガミの少女の腕が噴き出る血ごと丸のみにして、バリボリと音をたてたならば。後には何も残らなかった。

●浄化する者
「ふふ、やれやれ。人とオブリビオンは寄り添えないのですかね。僕達が特殊なだけなのかも知れませんがね。ウェビルはどう思う?」
 零の手には、ウェビルと言う名の小さなピエロが一人。
「キヒヒ! さーナ! 俺とオマエだって、本当はわからねーゼ!」
 ウェビルはキヒヒと笑って、主人たる零に反抗的な言動を弄ずる。
「おや、今日はそういう気分なんですか。ま、いいですけど」
 道化の言葉は道化のもの。まともに取り合うこともなく、零は階段を駆け上がり、オルトロスと対峙した。ぴょいとウェビルは零の手から降りて、ぴょこぴょこと走り出す。
「あなたは、どう思います?」
 問いかける零。知性なきオルトロスの瞳に、答えはなかった。

「――やれやれ」
 ため息をついて、虚空よりØを出だす。
「オォォ!オオオォ!」
 番犬の吠える声が、零の身体を撃つ。質量を持つ刃と、質量を持たぬ音では、手数の上で音が有利。躱しきれない音波の攻撃を受けながらも、零は落ち着き払っていた。Φが現れては、オルトロスは身をかがめ、跳躍し、躱していく。――だが。
(「――今です、ウェビル」)
「キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
 オルトロスの眼前に、零の相棒、ウェビルが現れ、その視界を塞ぐ。咄嗟の出現にオルトロスが動きを止めて、その瞬間を零は見逃さない。
「さあ、おやすみなさい」
 地面から現れた十字架が、オルトロスを貫いた。たちまち絶命したオルトロスの身体は聖なる力で清められ、はらはらと灰となって崩れ去る。それを見て、零はウェビルを抱きかかえあげる。
「ありがとうございます、ウェビル」
「当然、当然だロ! 僕と君は友達! トモダチ! キヒヒヒ!」
 気分屋のピエロはご機嫌に笑っていた。

●後光差す
「お二人とも、素晴らしいですね。私も負けていられません」
 カプラの緑色の機械的な瞳が、二人の戦いをじっと見ていた。圧倒的な存在感で玄関ホールに君臨する彼は、微動だにせずとも、存在するだけでオルトロスの増援を防いでいた。しかし、光は必ずしも全てを照らさない。光あるところに影あり。風変わりなウォーマシンは、障害物ごしに蠢く気配を感じていた。
「だめですねぇ」
 つつと地面から浮きながら移動するカプラは、後光を放ちながらもまっすぐに気配の源へ。そこにはこそこそと様子を窺いながら、影から出ようとする赤い瞳があった。ぴたりと緑の瞳と目があった。びくっと震えるオルトロスの瞳。白い無機質な顔貌に浮かぶ、緑の微光を放つ瞳が、わずかに細まったように見えた。人間でいうなら、笑顔に近い表情。
「さあ。あなたは、あるべきところに。――改めなさい」
「――――――――!!!!!」
 聖なる光に照らされて、オルトロスの声にならない悲鳴があがる。暗いところで出番を待っていた番犬が、急に明かりで照らされてびっくりして逃げて行った――というわけではないはずだ。たぶん。

 とにかく増援は防がれて、光源を中心にした猟兵の一団は館の奥へと進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定

偽善で油断させ、食い物にする周到なオブリビオン
問罪、断罪。ジズは、その悪意を浄化するのです

【覚悟】を決めて猟犬の懐に飛び込み、隙を【見切り】して
〈咎力封じ〉で猿轡を噛ませます
見たところ頭部が危険な様子、味方の被害をこの一手で減らすのです

よく吠える犬は躾けが必要です
騒狂、調教。ジズは、噛み付くワンちゃんは嫌いです

主人がどのような人物かは…ワンちゃんに聞くわけにもいかないですか
速やかに制圧して、館の主人をおがむとするのです


アララギ・イチイ
ヴァンパイアちゃん(君?)に挨拶する前に遊んでいきましょうかぁ
まずはワンちゃん達をお遊戯の時間だわぁ

召喚・自己幻影で自分を増やして死角を作らない様に連携して行動するわぁ
重火器類の使用は(今の所は)控える方針、流浪の民が来たら館が大炎上してましたぁ、とか、廃墟みたいな有様でしたぁ、ってなったら依頼的に駄目そうだしぃ……面白そうだけどぉ(ぼそり

なので、近接戦闘重視で戦闘するわぁ
改造ブーツのホバー機能で【ダッシュ】、【フェイント】を織り交ぜて移動よぉ
攻撃は大型シールドの衝角で【串刺し】する様に叩き付けるわぁ、もちろん推進装置を点火、急加速させて勢いを上乗せさせるわぁ
敵の攻撃には(盾受け)対応よぉ



●恬淡に、槌を振る
 変わらず赤い絨毯の敷かれた細い廊下を、猟兵たちは進んでいく。
「敵を認知。ジズが討伐します」
 戦闘を歩いていた褐色のエルフが、敵の発見を伝え、出番とばかりに走り出す。セミロングに整えた銀の髪をはためかせ、ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)は迷いなく、戦う覚悟を決めて番犬の懐へと飛び込んだ。
「オ――――」
「よく吠える犬は躾けが必要です」
 吠声をあげようとしたオルトロスに向けて、迷いなく放たれたのは猿轡。ガシャリと固定音が響いては、もはや番犬は無力化したも同然。仲間も呼べず、何もできず。
「騒狂、調教。ジズは、噛み付くワンちゃんは嫌いです」
 にべもなく、紫の瞳が見下すような色を湛えた。ジズルズィークは愛武器たる巨大な槌を構えて、頭部に狙いを定めた。
「主人がどのような人物かは……、ワンちゃんに聞くわけにもいかないですか」
 仕方ないですねと躊躇なく槌を振り下ろし、哀れな番犬はたちまち絶命した。

「……後ろは大丈夫でしょうか」
 そう言って、ジズルズィークは後ろを振り返る。戦闘音が聞こえていた。

●盾×盾
「こっちも見つけたわぁ。私に任せてねぇ」
 面白がるように一斉に笑うのは、金髪のドラゴニアン "たち" 。二体のドラゴニアンはどちらも、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)の姿をしていた。ユーベルコード【召喚・自己幻影】で呼び出した、自らと同じ分身と連携して、アララギはオルトロスへと距離を詰める。魔改造されたロングブーツの力で、ホバー移動するように高速で移動し、魔力炉を備えた大盾で盛大な体当たり。オルトロスの身体をそのまま壁に叩きつける。
(「武器を選んだつもりだけど、傷つけちゃったかしらぁ?」)
 なんて、余裕の疑問を心の中で浮かべながら、壁を見る。平気そうだった。
 押し付けられたオルトロスが、鎌首をもたげるようにして、ドラゴニアンへ噛みつこうとする。
「ごめんなさいねぇ」
 それを小さな盾で防ぐのは、もう一人のアララギ。
 刀を取り出して、貫いて、たちどころに邪魔な番犬を排除したのだった。

「館を廃墟みたいな有様にしちゃうのは、依頼的に駄目そうだしぃ」
 こんなものかしらぁ?なんて呟いて、ジズルズィークに手を振って合図するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紅呉・月都
趣味のわりぃ館の主だな…ま、オブリビオンなんてそんなもんか
で、まずはオルトロスの相手な

奇遇だな。俺の元持ち主も“番犬”やってたんだ。
だが…テメェもテメェの護ってるもんにも虫酸が走る。
【鎧砕き】や【マヒ攻撃】で撃破のための下地を作る。
下地が出来たら【2回攻撃】【なぎ払い】【串刺し】とか使って攻撃。

おら、獲物が追えてねえぞ?
敵からの攻撃は【残像】【見切り】【武器受け】で対応するように
あとはあれか、数がいるなら【敵を盾に】しちまってもいいな。

錬成カミヤドリ:“柄に三日月の飾り、赤みを帯びた刀身には細かい彫の入ったナイフ”を複製して攻撃


甲斐・ツカサ
自由を求めて旅をする人達…その邪魔はさせないよ!
それに、旅の話を聞きたいし、旅の話をしたいしね。
だから、まずは番犬には道をあけてもらおうか!

下手な攻撃は治療されるし、瀕死にすれば仲間が増える。
それなら一撃必殺が理想だよね!

マフラーとマントを翻して番犬の気を惹いて、食らいつかせよう!
ちょっと痛いかもしれないけど、噛まれるって分かってれば我慢できる!
でもって、噛みつけるぐらいの零距離は、オレの必殺の間合いさ!

空のように蒼い光を纏った短剣で斬り伏せて、先を急ごう!
だってこの後には、おもてなしの準備だってあるんだからね!


セリオス・アリス
アドリブ歓迎

戦いにだけ集中していいなんて最高の依頼じゃないか?

まずは挨拶代わりに先制攻撃だ
【青星の盟約】を歌い攻撃力を強化
少し腰を落とし素早く剣を振り斬撃を飛ばす
「こっちだ犬っころ!」
敵を挑発しながら誘い込み
接近戦をしかける
見切りかわしカウンター
地面に両手をついて蹴りを立て続けに2回ぶちこんで
噛みついてくるなら左腕を噛ませてやろうじゃねえか
その代わり…
「お前の治癒力と俺様の攻撃力。どっちが強いか勝負といこうか…!」
噛んでる間は回避もできねえだろ
腕を引くのではなくむしろ押し込み
力を溜める
剣に炎の魔力を込め
渾身の一撃を噛んでる方とは別の、もうひとつの
本当の頭に叩きつける
瀕死になる間もなく殺してやる



●扉の前
 後光に照らされ、襲い掛かる番犬たちを蹴散らしながら進んできた猟兵たちは、頂上階へとたどり着いた。赤い絨毯が敷かれた、言葉通りの洋館然とした館内は永遠に続くかと思われたが、どうやらここが終着点らしい。それを真っ先に感じ、発言したのは甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)という名の男の子。冒険家らしい軽装で、手にはアズールの光を放つ剣。
「ここの扉を開ければ、館の主人がいるのかな? 先を急ごう!」
 周りの仲間たちを急かすように、声をかける。たとえ敵地の暗い館の中であろうと、彼にとっては見知らぬ場所。早く扉を開けて先を見たくてうずうずしているのだと言わんばかりに目を輝かせている。
「いや、ちょっと待て。入る前に、……まずはこいつらの相手な」
 それを制したのは、黒衣の猟兵。セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)がちょいちょいと部屋の隅を指で指し示せば、ツカサはうんざりしたような顔で、ちぇーと口を尖らせる。
「拗ねるな、拗ねるなって。こいつらを一瞬で倒せばいいだけのことだろ」
 乱雑な口調ながらツカサを励ますように、声をかけた長身の青年は紅呉・月都(銀藍の紅牙・f02995)。言い終わるや否や、彼の銀の瞳が光る。誰かを惨殺するために作られたとしか考えられないような鋭利な形状の、赤みを帯びた刀身のナイフを青年は握っていた。

「――――ま、それもそっか。よーし、いくぞ!」
 その言葉を聞いて気を取り直したのか、あるいは番犬討伐も冒険の一つと思い直したのか、とにかく黒い短刀を握ってツカサは一体のオルトロス目掛けて走り出す。太陽のように明るい赤をした少年は、暗いダークセイヴァーの世界の中でもよく映える。ツカサはオルトロスの前にたどり着いては立ち止まり、ばさりと広く、マントを広げる。
(「下手な攻撃は治療されるし、瀕死にすれば仲間が増える」)
 それに驚いたオルトロスが、敵意も露わに噛みついてくるのを、落ち着いて眺め、左腕をオルトロスの顎前に突き出しては、――ばくり。番犬の白く尖った歯が見えた。板金鎧が腕を覆っていようと、痛みを完全に無効化はできない。その痛みを覚悟し耐えた冒険者は、オブリビオンを食らいつかせたまま、青い光を纏った黒短刀でその喉笛を掻き切る。それは、ユーベルコード【暗刻斬り拓く蒼穹ノ光刃】の一閃。高速で繰り出されたその斬撃を、至近距離で躱すことなど不可能だ。
「――だから、一撃必殺。うん、理想通り!」
 光を失った番犬の瞳を何事もなく見下ろして、その遺骸を払い捨てて。
「さて、他のオルトロスは……っと」
 元気いっぱい、明るい笑顔でツカサは戦場を見回して、ひとつの戦いに目をつけた。

「こっちだ犬っころ!」
 わずかに腰をかがめ、素早く剣を振ったセリオスは、オルトロスの気を惹くように声を出す。彼の歌声はユーベルコード。【青星の盟約】の美声が館を満たす今、彼の膂力は、テンションは、最高潮にある。美貌の猟兵に声をかけられ、その意味を解してか否かはともかく、立ち止まった番犬に飛行する斬撃が迫る。
「――ギャイン!」
 番犬とてオブリビオン、ただではやられない。その斬撃を体当たりで弾いて見せる。しかしそんなことなど織り込み済み。オルトロスの眼前に、黒鳥が迫った。噛みつこうとするオルトロスの一撃を地面に両手をついて躱し、そのまま身を翻らす。その勢いで、蹴りを立て続けに2回ぶちこんでは、番犬も身がすくもうというもの。しかし、オブリビオンは屈しない。意地でセリオスへ向けて身を乗り出して、その頭部のあるべき位置に、もうひとつの頭部を生やして、彼の左腕に噛みつかせる。噛まれてなお、セリオスは笑う。犬歯を見せて、その意気を買うように笑う。
「いいぜ。噛ませてやろうじゃねえか」
 その代わり……と黒鳥は続ける。
「お前の治癒力と俺様の攻撃力。どっちが強いか勝負といこうか……!」
 剣に炎の魔力を込め、噛みついたのとは別の、本当の頭に向けて、盛大に叩きつけた。めき、めきと音を立ててオルトロスの頭部がひしゃげては、耐えることもできず、彼もまた過去へと帰っていった。

「なるほど。早い一撃だけじゃなく、ああいうやり方もあるんだね」
 一足早く戦いを終えて、その様子を見ていたツカサは、感心するように呟くのだった。

 扉の前の最後の一頭とは、月都が対峙していた。
「奇遇だな。俺の元持ち主も“番犬”やってたんだ。だが……テメェもテメェの護ってるもんにも虫酸が走る。だから――」
 青年は最後まで言わなかった。だが、その先は容易に想像がついたし、なにより彼は行動を以て示した。機敏に跳ねるオルトロスの爪を軽々と躱し、余裕の笑みを浮かべ、返り討ちとばかりにナイフで斬り付ける。
「おら、獲物が追えてねえぞ?」
 続けざまに、もう一斬りと切りつけて、怒って突撃してきたその牙を横に避ける。
 当たらぬ攻撃に痺れを切らした番犬が、コォォと息を吸う様が見えた。
 道中、他の猟兵たちが戦っている様を見てきた彼には、それが何か容易にわかった。
 両脚にぐっと力を込めて、まるで銀の瞳の猟兵は、まるで銀の毛をした狼のように跳躍する。その動きは、まるで大切なものを守るためのそれに似ていた。
「――遅ぇよ」
 深い緋色の一閃が、ナイフによって生み出され、オルトロスの首をずずと落とす。
「待たせちまったな。これで終わったぜ」
 月都がツカサたちに声をかける。
 時間にして、せいぜい数十秒の出来事。
 猟兵たちの前に、たかが数体のオルトロスでは敵になりえなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
ひぅ……!あれが猟犬……
オルトロス……うぅ……狼に追い回されるのは勘弁してほしいな……!
でも、頑張らないと……春奈のお願い、そして、旅人さんの無事のために……!
シアはフェアリーだから、旅人を導くから!


使うユーベルコードは「神薙胡蝶蘭」
技能【目立たない】【地形の利用】【迷彩】で物陰に隠れて、オルトロスが他の猟兵と戦って集まっているところを隙をついて攻撃するよ
鉄塊剣を胡蝶蘭の花弁に変えて、嵐に乗せて放つよ
【全力魔法】で強化した胡蝶蘭の嵐を【高速詠唱】で速く、何度も何度でも!

獣に追い回されるのは怖いけど……負けない!
胡蝶蘭の花言葉はね「幸せが飛んでくる」
だから……旅人さん達の幸せの風にもなるから!


アレクシス・アルトマイア
なるほど、なるほど。
はい、それではこの私におまかせを。
流浪の民の皆さんは、誠心誠意、主に変わってもてなしてみせましょう!

……おや、少し気が早かったでしょうか。
それではまずは、ワンちゃんたちのしつけと参りましょう。

2丁拳銃で二回攻撃で援護射撃。サポートならばおまかせを。
あ、一人きりでも戦えますからご心配なく。
でも、協力して効率的に時間短縮できるなら、それが理想ですね。

こんにちは、と扉をノックして、
そのまま通してくださるなら良いのですけど……
きっとそうは行きませんね。
賢いワンちゃん達に銃弾でご挨拶をいたしましょう。

それではお先に、失礼いたしますね。


ノエル・クリスタリア
折角旅をして、逃げてきたと言うのにその先でもヴァンパイアに襲われる……何とも、殺伐とした世界よね。
しかしこのままにしてしまうのも忍びないわ。
折角助けになれる機会を春奈が作ってくれたのだし、彼らを照らす光となりましょう。

まずはヴァンパイアの猟犬が相手なのね。
近距離での戦闘は不得手だし、可能な限り距離を取って戦いましょう。
影からの不意打ちにも気を付けた方が良いのかしら。
影に纏わるオブリビオンみたいだし、ユーベルコードの特性を濃く出すために【属性攻撃】、後のことを考えるとこの場を余り荒らしたくないし【誘導弾】も乗せて、流星雨を降らせましょう。
あなたは救ってあげられないの。
ごめんなさいね。

アドリブ歓迎



●開く前の、小休止
「こ、これで狼は、全部、倒されたのかな…?」
 おそるおそる、宝石の身体をした少女の肩からフェアリーの顔が覗く。
「ひとまずは、ね。シアラ。でも、開けたらどうかはわからないわ」
 気を付けましょうと答えるのは、ノエル・クリスタリア(夢色輝石・f09237)。クリスタリアンの中でも、特に煌めく宝石の少女。どこか窓の外を見るような、落ち着いた様子はその高貴な育ちゆえだろうか。
「ひぅ……! そ、そうだよね。油断は、だめ。怖いけど……負けない!」
 おどかすそぶりのない落ち着いたノエルの声で伝えられてもなお、びくりと身体を震わせたのは浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)というフェアリー。極度の人見知りな彼女であるが、道中共に進んできたノエルには、いくらか心を許したようで、その背中に隠れながら様子を窺っているようだった。
「ふふ、それでは準備はよろしいですか?」
 試すような声で、そんな二人に声をかけたのは、なんとも不思議な姿の猟兵だった。アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)はその瞳を白布に隠し、しかしそれでもわかるわくわくとした笑顔で、両開きの扉の金属環を打ち付けて、ノックする。返事はない。ならばと両開きの扉に手をかけ、一挙に開けた。

●扉の先
 そこは、いうなれば謁見の間。広々とした白壁。相も変らぬ赤じゅうたん。向こうには大理石らしき柱も見える。その奥に、一段高くなった区画があり、中央に豪奢な玉座が鎮座していた。そこに鎮座するのは白髪の少女。血のように赤い瞳が光るのが、遠目からでもわかった。
「あれが、ヴァンパイアね。この世界を殺伐としたものに変えた存在」
 書物に書いてあったことが、目の前にある。その新鮮な驚きを宝石の少女は味わった。しかし、眼前の存在はまごうことなき敵。会敵を喜ぶわけにもいかないわねと、その感情を心の内にしまった。

「さて、覚悟はよろしいですか?」
 館の主人――いや、ヴァンパイアにそう問いかけるのは、アレクシス。だが、その問いかけを聞いた主人は、つまらなそうに答えた。
「妾(わらわ)がどうしてお前らなんぞの相手をしてやらねばならんのじゃ」
 その言葉の出どころは、誰が聞いてもはっきりしていたことだろう。赤い瞳を見ても、それははっきり伝わってくる。軽蔑、侮蔑、身分の違い、それを固く信じる心。古よりの観念に凝り固められた、まごうことなき太古の遺物。オブリビオンたるヴァンパイア。彼女にとって、その答えは当然のことなのだろう。
「お主らのような野良犬の相手は、番犬の仕事。妾が動くまでもない」
 ぱん、ぱんと手を叩く。またオルトロスか。そう猟兵の誰かが思った。だが、今度は様子が違う。一体、二体どころではない。数十体はくだらぬ大量のオルトロスが玉座の間の隅の闇から次々と現れる。猟兵の一人が光を放ち、オルトロスの増援を妨げる。しかし、それでもなお数差は圧倒的だった。低い唸り声が木霊する。

「……おや、少し気が早かったでしょうか」
 そんな様子を物ともせずに、先の問いかけを思い返すのは瞳を隠した少女。その瞳の色はこの場の誰も知らないが、少なくとも焦りや恐怖の感情が浮かんでいることはないだろう。
「それではまずは、ワンちゃんたちのしつけと参りましょう」
 恐怖と叫びの二丁拳銃を構えて、アレクシスは猟兵たちを見る。なんてことはない。誰一人、怯えるものなどいないのだから。本命の前の、前座はこれで打ち止めに違いない。迷う必要などどこにもないのだから。

●色とりどりの
「――いち、に、さん…………たくさんね」
 一体ずつ数えていたノエルは、やがて数えきれないことに気づいて思案げな顔を浮かべる。彼女は、自分の不得手を、そして敵に接近されずに倒す必要があることを理解していた。そして、周囲の猟犬たちを悲しそうに眺める。
「あなたたちは救ってあげられないの。ごめんなさいね」
 そう、呟いて。
「――輝きを解き放ちましょう」
 彼女が一言詠唱すれば。

 きらきらと、雨が降り始める。その滴が番犬に当たるたびに、彼らは悲鳴を上げる。それは、光の雨。ユーベルコード【流星雨(ルミナスレイ)】は、過去より蘇りし番犬たちを、闇に帰していく。輝石の姫の背中でその様子を、じっと見ていた少女がいた。
「――わ、綺麗」
 シアラが一言呟けば、ノエルはくすりと笑ってみせる。
「どういたしまして。そのまま、そこにいていいのよ」
 気遣うように、優しく伝える。
「ううん、頑張らないと……春奈にお願いされたし、そして、旅人さんの無事のためにも……! シアはフェアリーだから、旅人を導くから!」
 紫の光を放つ蝶の羽。ふわりと広げて小部屋の真ん中へ。
「狼さんたち、シアを甘く見ないでね! 綺麗な胡蝶蘭だって、時に切り刻む牙になるんだから!」
 蝶の騎士が、胸をはると、彼女を中心に、扇状の花びらが舞いだす。それは、胡蝶蘭の花びら。白、紫、青、黄、色とりどりの花々が舞い踊る。その花びらは大きな渦を巻くように、オルトロスたちを飲み込んでいく。柔らかな花びらが番犬の身体を撫でるたびに、鮮血が跳ねる。それもそのはず、その花びら一枚一枚が、武器そのもの。鋼鉄でできた剣に等しければ、ユーベルコード【神薙胡蝶蘭】のただ中に身を置くことは愚か以外の何物でもない。
「あらあら。そう言うシアラだって、綺麗だわ! 負けてられない!」
 その様子を見たノエルが、一層の笑顔になると、彼女の身体を中心に周囲がきらきらと光りだす。それは宝石の光。輝石の光。クリスタリアンのお姫様が、心から楽しんでいる様子。彼女が一たびねがえば、【流星雨】の星々の光が、一層輝きを強め、その彩を増していく。光が持ちうるすべての輝きが雨となって降り注いだ。
「わあ、わあ! ノエル、ノエルの技って、とってもきれい!」
 それを見て、シアラも一層嬉しそうに舞う。きらきらと舞う光の雨と、はらはらと降る胡蝶蘭の風が吸血鬼自慢の番犬を、悉く消滅させていった。

●オルトロスの最期
 ――だが。
「――あら!?」
「――ひうっ!」
 光あるところに影はある。色とりどりの光を産み出す大技と、多数の質量を持った花びらを産み出す大技が組み合わされば、無数の影ができるも道理。その影から、窮鼠もあわやとオルトロスが飛び出して、その本来の首の左右に醜悪な首を二本余計に生やしては、二人の少女を食いちぎらんと襲い掛かる。嫋やかな少女たちに、それを防ぐ手立てがあるようには見えなかった。二人の顔に、焦りが浮かぶ。

「――失礼いたしますね」
 それを打ち破ったのは、続けざまに放たれた無数の弾丸。忘れるなかれ、アレクシスの手には二丁の拳銃。迷いのない連射が、オルトロスの三本の頭を砕き、四肢を砕き、即座にその息の根を止めた。
「危ないところでしたね」
 丁寧な口調で、目隠しをした少女は笑う。
「ありがとう、ええと……アレクシス? あなたは命の恩人よ」
 名前あってたかしらとお礼と共に、ノエルが尋ねる。
「はい、アレクシスです」
 こくりとアレクシスは頷いて。
「ですが……よければ、アレクと。親しい人はそう呼んでくれます」
 ぴしりと指を立て、そう付け加えた。
「えへへ、アレク。アレクさん! ありがとう、アレクさん!」
 噛みしめるように繰り返して、シアラが嬉しそうに宙を舞う。その様子を見て、ノエルとアレクの表情は、何か愛おしいものを見るときの、およそ人が作りうる最も尊いひとつになるのだった。

「シアラ、アレク。さっきから、最後の敵がお待ちかねみたいよ」
 ノエルがそう水を向ければ、玉座から立ち上がったヴァンパイアへ自然と視線が集まった。もはや、邪魔するものは何もない。傲然たるヴァンパイアを、倒すときがきたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『リーシャ・ヴァーミリオン』

POW   :    魔槍剛撃
単純で重い【鮮血槍】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ブラッディ・カーニバル
自身に【忌まわしき血液】をまとい、高速移動と【血の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    魔槍連撃
【鮮血槍による連続突き】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●傲然たるヴァンパイア
「……まったく、使えぬ奴らじゃ」
 立ち上がったオブリビオンは、明らかに苛立っていた。ひどくつまらない茶番劇の途中で、金を惜しまず立ち上がるよう。あるいは、お気に入りの人形の首が折れてしまって、それを無造作にごみ箱に投げ捨てるような。

「どいつもこいつも雁首揃えて突っ立ちおって。このリーシャ=ヴァーミリオンを前に、跪いて礼するぐらいの礼儀すら持ち合わせておらんとは」
 ヴァンパイア、リーシャ=ヴァーミリオンは一層憤慨した様子で、猟兵たちを睥睨する。透き通るような白い肌。黒い翼は艶やかで、しなやかさと強靭さを兼ね備えている。白い髪は、ところどころ緩やかにカーブを描く。鮮血のようなドレスの仕立ては遠目から見ても優れているのが見て取れる。それらだけを見れば、まぎれもなく令嬢と呼ぶほかない見事な外見であった。だが、その瞳がいけなかった。それは悪魔のもつもの。蠱惑的な魅力と、残虐なまでの酷薄さを含み、温かみある人間が持てるものではないのだと誰もが感じただろう。
 リーシャの持つ、瞳のような装飾が凝らされた槍は、まるで血を欲するように脈打ち、いずれの猟兵からその餌をもらえるのかと心躍らす感情を持っているかのようだった。

「敵の攻撃は、おそらくあの槍が中心になるはず。物理的な飛び道具を隠し持っている可能性は低いでしょう」
 銀の髪、青い瞳の猟兵少女が、油断なく狙撃銃を構えて言う。

「そうね……。でも、ヴァンパイアは血の操作に長ける。その方面の絡め手への警戒を怠ったら……ダメ」
 ダンピールの猟兵が、紫の瞳を油断なく動かす。

「戦場は謁見の間。広く、十分な空間があるね。遮蔽物になりそうなテーブルとか、椅子もある。困ったら、距離を取ればよさそうかな!」
 赤いマントの冒険少年は、いつでも駆けだせるよう、ナイフをにぎりしめる。

「光源については、心配いらないでしょう。今の戦闘中、何人かでこっそり壁の燭台に火を灯しておきました。――それに、私がいます」
 言葉にあわせて、後光がくるくる回転する。まぶしい。

「それじゃあー、いっちょぅ、ヴァンパイアをやっつけちゃいましょー!」
 間の抜けた声で、エルフの蜜柑頭が高らかに拳を突き上げた。
ジズルズィーク・ジグルリズリィ
WIZ判定

道中の皆さんの活躍を拝見したのですが。
見事なチームワーク、鮮やかな御技、類い稀な勇気
集中、執心。やはりジズは、皆さんのため隙を作ることを目標にするのです
直接の打倒はおまかせするつもりです

リーシャ=ヴァーミリオンさま、大変なご無礼をしたのです
と、前に出て平伏。容赦を願います
下手に出つつ、挑発行為を行うユーベルコード
〈神聖なる姿勢〉で攻撃するのですよ

正直なところ相当恥ずかしいのです
しかし【恥ずかしさ耐性】を備えたジズにこそできる奇策です
血が沸騰するような怒りが、その美しい槍先をわずかにでも曇らせられればよいのですが


アララギ・イチイ
あら、可愛いわねぇ
吸血鬼を喰らうのは初めてだから凄く楽しみだわぁ

重火器類は使わない方針は継続だわぁ
【UC:禁忌薬・人狼薬】を自分に投与、魔術刻印を活性化して自分の牙や爪を武器として扱うわねぇ

投与後の移動は人間の歩行を捨てて、獣の様な四足歩行で移動するわぁ

霧を周囲に噴出させて、敵からの視界を妨害、【ダッシュ】で加速しながら相手の視界外から【暗殺】の技能を併用した奇襲を加えるわぁ
牙や爪で相手の身体に喰らい付き、【傷口をえぐる】様に肉を引き千切り、霧に紛れて即座に離脱するわぁ
敵の反撃や攻撃はその攻撃範囲を【見切り】回避行動を取るわねぇ

ちなみに抉れた肉とかは新鮮なうちに美味しく頂くわよぉ(その場で咀嚼


月宮・ユイ
アドリブ・絡み・連携歓迎

さて、館の主人とご対面ね
見た目は相応しくとも、性格には難ありかしら
館を借り受ける為にも、人喰いの彼女にはご退場願いましょ

▼武装
遠:’ストレージ’よりボルトアクションライフル
近中:’連結剣型:星剣’と’秘匿兵装:暗器、投げナイフ’

基本仲間の動きに合わせつつ遠距離で
”視力、暗視、戦闘知識”を駆使、【根源識】も併せ、敵の動きを注視警戒、”見切り、情報収集”
”スナイパー、念動力、誘導弾”にて銃撃により、敵の動きの出始め潰し又は攻撃を逸らす等行動阻害を狙う
攻撃には”マヒ・気絶攻撃、吸血、生命力吸収”とありったけの”呪詛”を

この後のためにも、あまり荒れないと良いのだけど…<”掃除”



●嚆矢は意外な行動から
「リーシャ=ヴァーミリオンさま、大変なご無礼をしたのです」
 猟兵たちの中で、いの一番に進み出たのは、褐色の猟兵ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)だった。まわりの猟兵たちが、味方であるはずの彼女を訝しむ目を向ける。他の猟兵は誰一人、リーシャなどというオブリビオンの威厳を認めていないのだ。ゆえに、一見裏切り行為のようにすら見えるその動きが迎えられた反応は、好意的たりえない。
「ふん、謝るとは殊勝じゃな。それで?」
 平伏するジズルズィークに興味を覚えたのか、リーシャの怒気が和らいだ。しかしそれは、秋の曇り空が少し晴れたのと大差ない。気まぐれで吹き飛ぶような、凪の一瞬であることは容易に想像がついた。その一瞬を、彼女はどう活かすのか。
「……それで、お主は何をしているのじゃ?」
 それは、次にとったジズルズィークの行動に対する呆れた言葉。
「それはもちろん。お詫びです。恥ずかしいので見ないでください。いえ、やっぱり見てください」
 露出の高い服装で、お尻を向けて、ふりふり振る褐色のエルフ。世界あまたあれど、これほど失礼で、破廉恥で、品性を疑う下品な仕草はそうそうないだろう。だが、ユーベルコードの名は【神聖なる姿勢】である。
「――あ?」
 蟀谷の白い肌に浮かんだ血管がひくひくと痙攣する。
「さあ、見てください! さあ! さあ!」
 それを見て、ますます前へ出るジズルズィーク。本人は恥ずかしいらしい。
「――殺す」
 当然だろう。高慢なヴァンパイアの行動を、その出鼻をくじくように妨げた行為の代償は高くつくことを。計算にいれるべきだった。相応の覚悟と能力、回避する手立てなど相手の攻撃に対する対策を用意すべきであった。明確な殺意の籠った赤い瞳は、鮮血を思わせる槍をぐっと握りしめる。
「――――塵も残さず、殺す」
 それは、リーシャ・ヴァーミリオンの最も得意とする一撃のひとつ。黒い翼を誇示するように、広げ、まっすぐ槍を立てる。必殺の構え【魔槍連撃】。赤い瞳が、輝いた。その刹那、リーシャはジズルズィークの眼前に現れ、大きく槍を振るう。
「っあ?!」
 褐色の猟兵が叫ぶのに一瞬遅れて、鮮血が迸る。まるでそれは、槍が血を吐き出させ、吸いつくすかのごとく。槍が回り、その穂先を血が纏う。
「――終わらぬぞ」
 きゅ、とリーシャの靴が鳴る。静止し、翻り、再び刺す。続けざまに槍を振るい、ジズルズィークの肌を傷つける。それは、一方的な連撃。それは、ヴァンパイアとは、恐るべき存在なのだと、知らしめるための技。まるで血と舞い踊っているようにすら見えた。槍が踊り、血が弾ける。トドメの一撃とばかりに、槍が高らかに掲げられ、ジズルズィークの心臓を穿たんと下ろされる。

「――まずいですね」
 そう呟いたのは、月宮・ユイ(終焉に抗いしモノ・f02933)。彼女はユーベルコード【根源識(ラプラス)】によって、その行動の解析を行っていた。ゆえに、その危険性を理解していた。初撃を見た時点で察した。あれをまともに食らえば、この中の誰とて命を落としうると。仲間を守らなくてはならない。手元にあるボルトアクションライフルを構える。槓桿を引き、薬莢を確認。槓桿を押し、ガチャリと金属音が鳴る。ただちに引き、空の薬莢を排出。そしてボルトを閉め、薬室を密閉。槓桿を回し、狙いを定める。
「狙いが、定まりません。ほんの少し、動きが止まれば……」
 ジズルズィークの周りを連撃によって動き回るリーシャの動きは、捉えがたいものだった。

「心配ないわぁ。私に任せてぇ」
 それは、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)の声であるはずだった。しかし、聞き覚えがあるよりも、幾ばくか野性的。それもそのはず。彼女のユーベルコード【禁忌薬・人狼薬】によって、彼女の様相はいささか様変わりしていた。眼光らんらんと輝き、獰猛なまでに牙を剥き、爪は殺意を持って曲げられている。まるで狼、いやまさしくドラゴンらしい原始性を獲得し、四足歩行で走り寄って、リーシャ=ヴァーミリオンに襲い掛かる。
「さ、いただきよぉ!」
「――っちぃ!」
 すんでのところで、ヴァンパイアの少女はドラゴニアンに気づいた。すぐさま立ち止まり、槍を大きく振ってその噛撃を防ぐ。アララギの歯と鮮血槍がぶつかって、甲高い音が鳴った。すなわち、その瞬間に攻撃が止まった。銃弾の咆哮が、聞こえた。
「ありがとうございます、アララギさん」
「がっ!?」
 リーシャの肩から、ぽたぽたと血が落ちる。その銃弾が飛んできた方向を見れば、遥か離れた場所にいたユイの姿が白煙にゆらぐ。しかし、リーシャは冷静だった。あそこまで走るには、直近の敵が邪魔。まずはこいつらを仕留めてから――
「――馬鹿な!? 奴ら、どこに消えた!?」
 あたりは霧に包まれていた。ユーベルコード【禁忌薬・人狼薬】の効果は二つ。高速移動と、霧の発生。霧の発生は短時間、すべてを覆えるほどではないし、目を凝らせば透けて見える。だが、身を隠し、数秒稼ぐには十分。よくよく見れば、気絶したエルフを抱えたドラゴニアンの姿が、少し離れた場所に見えた。霧を活かして、アララギはジズルズィークを救出したのだ。
 (「食べれなかったのは残念ねぇ」)
 ……なんて思いながらも、彼女とて猟兵。任務を優先し、アララギ・イチイは仲間を確かに助けたのだ。
「――あの技、外すと隙が大きいようです」
 その連撃をつぶさに観察していたユイは、仲間たちに伝える。ジズルズィークの挑発を決して無駄にはしないために。そしてこの情報が帰趨をわけることを、猟兵たちはまだ知らない。

「――小癪な真似をしおって!」
 思うままにいかない。リーシャ・ヴァーミリオンはその尖った犬歯をむき出しにして、怒りを見せた。撃たれた傷は浅く、戦いに支障をきたさない。状況は決して悪くなってはいないのだが。

 高慢なる吸血鬼はそれをよしとはせず、一層の殺意を持って猟兵たちと対峙する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

甲斐・ツカサ
レイギサホウってよくわかんないんだけど、えらい人にする事だよね?
だったらキミにする必要はないんじゃないかなあ

忌まわしい血液を纏った紅のドレスに対して、蒼い風を纏った太陽のような緋色のマント
槍VS短剣、とにかく間合いを詰めて、ダンスを踊るように動きについていく
マントで視界を遮れば後方の仲間への放射攻撃もしにくいだろうしね!

強力な一撃が来そうなら、シャンデリアにワイヤーを引っ掛けて離脱
それで距離が離れても、大丈夫!
短剣は確かにリーチが短いけれど、そこから伸びる光の刃がある!

それに、ワイヤーを振り子のようにした反動や、風を放つ勢いで更に加速出来るからね!

屋敷の中では味わえない、太陽と風を見せてやる!


リーヴァルディ・カーライル
…ん。ここには歴戦の猟兵が揃ってる
だから、吸血鬼を狩ることは、そう難しい事じゃない
難しい事は…。難しいのは、そう
なるべく屋敷を壊さないように闘うこと…!

他の猟兵と連携し前に出て、常に挟み撃ちをする形で闘う
改造した防具を維持し第六感を強化
殺気の存在感を感知して見切り、
大鎌を怪力任せになぎ払い武器で受ける

…吸血鬼、部屋をあまり壊さないで
この後の予定が詰まっている

敵が隙を見せたら【限定解放・血の魔剣】を発動
吸血鬼化した生命力を吸収して魔力を溜めた魔剣を召喚

魔剣を突き刺し、時を吸収する呪詛の黒炎で敵の動きを縛りながら、
傷口を抉るように爆発させ切り裂く2回攻撃を行う

…時を喰らい、焼き払え、血の魔剣…!


天星・零
万が一がないよう【第六感】
【情報収集】で場所や猟兵や味方戦況状況や敵の行動を把握しておく


Øやグレイヴ・ロウを使いつつ
【毒使い】で猛毒のマフェットスレッド
で戦う

敵の攻撃には天星の書・零で【オーラ防御】
必要なら他猟兵にも


『悪趣味な戯れはもう辞めませんか?僕は御顔を傷つけたくないので』
交渉に応じるわけがないので
『そうですか‥残念です。ふふ、では‥』

相手の傷がある場合アヴィスの懐中時計から【呪詛】で呪いを放つ

『僕のお友達はその首欲しがってるので頂けませんか?』
【首狩り女王の死刑執行】でディミオスを出して戦わせる
ディミオスの口調
私+貴様、お前、零のことは名前で+-だ、だよな、だろう?と女王様らしい喋り方



●戦いは続く
「あの槍の連撃を受けないようにしつつ、戦う必要がありますね」
 戦況をつぶさに観察するのは、赤と金の瞳の持ち主。天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)は、槍の間合いを図りながら短剣をにぎりしめた。
「……ん。対策なしに攻めかかるのは、無謀。今得られた情報から、対策を」
 対策を練ろうと提案するのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)である。無感動な表情であっても、ダンピールの美貌は隠れない。女性的な曲線を帯びた紫の瞳が信頼の色を持って、傍らの猟兵たちへと向けられる。
「うーん……槍を使わせないほど近距離で戦うか、遠距離から火力をぶつけて破壊するとか、どっちかじゃないかな」
 二人の横で、思案気に呟いたのは、冒険者然とした赤い少年。甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)の明るい声には、仲間が倒された苦しい戦況、重々しい空気を和らげる力があって、心のうちで零は感謝した。
「遠距離から火力をぶつけるのは、リスクが大きいですね。それができるのは、ノエルさんとシアラさん。でも、二人とも先ほどリーシャの前でその技を見せてます」
 多重人格者の少年は、淡々と情報を整理する。もちろん他の猟兵たちも見てきた情報。ただの意見交換。だが、話を確かに進める効果を持つ。ツカサの発案を無遠慮に否定するような口ぶりではない。ツカサ自身にもそれが伝わっているらしく、快活にこくりと頷いた。
「それと、できれば……館を壊したくない」
 難しいかもしれないけれど、とリーヴァルディが付け加える。猟兵が過去と戦うのは、他の世界の日常を守るためでもあるのだから。
「そうだね! じゃあ、オレが間合いを詰めて切りかかるから、二人には援護をお願いしたいな」
「ではその間に、術の準備をします。召喚術ですから、一度召喚できれば、それなりの戦力になるはずです」
「ツカサが隙を作ってくれたら、私も切りかかる」
 敵の眼前の作戦会議。時間はかけられない。三人は互いに頷き合って、散会した。

●風の戦い
 まっさきにとびかかったのは、宣言通り、ツカサである。赤色の服を着た冒険者が走るたびに、頭に巻き付けたタスキが尾を引くようにひらひらと舞う。ダッと音を立てて、跳躍する。手には青い光放つ短刀、AZ-Light。シャンデリアの光が混ざって、後光に照らされてるとはいえ薄暗い部屋に彩を与える。跳躍しながら、ツカサは口を開いた。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「妾は機嫌が悪い。無礼者に答える口など持ちはせんわ」
 青い一撃を、軽々と鮮血槍で受け止めて、リーシャ=ヴァーミリオンは言葉を吐き捨てた。その答えを前にしても、ツカサはいささかも傷ついたような顔を見せない。槍から剣を軽々引いて、剣から放した右手で着地して、くるりと空中で一回転。両足で着地して、剣を中段に構えて、リーシャの赤い瞳を覗く。
「レイギサホウってよくわかんないんだけど、えらい人にする事だよね?」
 こてりと首をかしげて、不思議そうにつぶやく。
「だったらキミにする必要はないんじゃないかなあ」
 答えはいらないとばかりに、赤い外套を広げる。それは、ユーベルコード【悠久の蒼穹呼ぶ風の外套(ファーマメント・マント)】の開放の合図。ツカサのまわりを、風が渦巻く。一歩踏み出すと、それはまさしく一陣の風のように。まっすぐ剣を突き出して、吸血鬼の白い腕を切り裂くと、赤い血がぽたぽたと落ちた。
「――ほう、なかなか速いではないか」
 だが、オブリビオンとて負けていない。特に、その得物が槍であるのならば。槍の長さは、すなわち対応範囲の広さ。こと「接近させない状態」において、槍持つ吸血鬼の対応範囲は、剣を持つもののそれを凌駕する。そして。
「――なら、面白いものを見せてやろう」
 それは先ほど零れだした血。赤黒いそれがふわりと浮き上がる。その血がぐるぐると吸血鬼の少女のまわりをめぐる。まるで纏うように。
「【ブラッディ・カーニバル】と妾は名付けておる」
 会心の命名らしい。リーシャという少女は、自慢げに語る。
「ふぅん、それで僕を捉えられる?」
「――無論じゃよ」
 吸血鬼が牙を剥いた。
「うぉっと!?」
 放射されるように広がる血液、その一滴一滴が刃となって、ツカサを襲った。ぴし、ぴしと服が裂ける。血がにじむ。ツカサはそれを舞うように躱し、槍の間合いの内に入ろうと努める。しかし、あと一歩のところで叶わない。槍の間合いに入る踏み込んだ手立てが、何かあれば変わったかもしれない。致命的な一撃を受けていないのは、ツカサ自身の身体能力の高さと、風を操るユーベルコードの為せる技だろう。
「――今じゃ」
 吸血鬼の目が、怪しく光った。
「ツカサさん!」
 遠くから、零の声が聞こえた。それはつまり、あの【魔槍連撃】の兆候を示す。
「――ありがとう、零さん!」
 ワイヤーを天井に向けて射出する。ぐるぐるとそれが吊られたシャンデリアに巻き付いて、ギシリと音を立てる。それを巻きとって、ツカサは飛び上がる。
「逃さぬぞ!」
 しかしそれを見逃すほどオブリビオンは甘くない。ただちに追撃をかけんと槍を振るい、ガキリと音をたててその動きが止まった。

●燃える魔剣と爆ぜる魔剣
「……限定解放。顕現せよ、血の魔剣……!」
 リーヴァルディが手に執る魔剣が、リーシャ・ヴァーミリオンの腹を刺す。鮮血を思わせる黒ドレスが、歪な黒い染みを作る。黒い炎が、その動きを縛るように血液を辿って全身を覆った。その一瞬の後に、剣を振るったダンピールの少女の銀のウェーブヘアが、ふわりと重力にひかれて落ち着いた。きん、と音を立てて、魔剣が敵の腹から引き抜かれる。
「……な!?」
「悪趣味な戯れはもう辞めませんか?」
 痛みが走る最中、吸血鬼は二つの衝撃を感じていた。
 ひとつは、魔剣による腹の傷。もうひとつは。
 もうひとつは、自分の手から伸びる鮮血槍が、動かなくなっている理由。
 それは誰かに受け止められていた。誰に? 声の持ち主、零に?
 いや、違った。それは、まったく別の存在だった。
「私を呼んだな、零。今日得られる首は、貴様のそれか」
 声を発するのは、巨大な骨の山羊の姿をした禍々しい人型。
 ユーベルコード【首狩り女王の死刑執行(ディミオス・クイーン・オブ・ザ・ハート)】が呼びだした、悪魔の女王。
 その手には、巨大な鎌。それが槍を受け止めていた。
 零の問に対する応答はなかった。その余裕が、吸血鬼になかった。
「僕のとっておきのお友達が首を欲しがっているんです。いただけませんか?」
「――馬鹿な! 図に乗るのもたいがいにせい!」
「女王様のおねだりです。格としては十分でしょう、ふふ」
 邪悪さすら感じさせる笑みで、零が笑う。オブリビオンの少女は、零の虚空の刀Φ、首狩り女王の大鎌、リーヴァルディの魔剣の三本を、燃え上がる身体で受け止める。まずは槍を払い大鎌を跳ねのける。次に槍の逆側、石突きの部分で魔剣のひらたい箇所を小突いて軌道をずらし、一歩引いて頭上に振り落ちるΦを躱す。それは、追い詰められてもなお、優雅であった。
「過去が私の前に立たないで」
 邪魔だとばかりに銀の髪したダンピールが走り寄る。下から振り上げるようにして、魔剣が走る。紫の瞳の端に、シャンデリアにしがみついて、機を窺う赤い姿が見えた。彼の実力は、よくわかっている。心配は無用。仕掛けるべき時。
「――今!」
「まかせて!」
 リーヴァルディが一言叫ぶ。それに、ツカサが応じた。
「……時を喰らい、焼き払え、血の魔剣……!」
「過去も未来も、何処にでも。吹き抜ける風を見せてやる!」
 魔剣が燃え上がるのにあわせて、突風が部屋に巻き起こる。
 豪風は、ヴァンパイアごと炎を燃え上がらせた。しかし、オブリビオンは止まらない。リーシャは猟兵の技を受け止める。リーヴァルディの剣をはじき、鎌を躱し、零へ牽制の血刃を飛ばす。すさまじい力ですねと零は呟く。まぎれもなく、ヴァンパイアのなんたるかを目の前の少女は示していた。
 受け止め、躱し、限界は来る。その隙を突かんと、風を纏った赤いマントがはためいた。シャンデリアに足をかけ、力を込めて一挙に跳ねる。ツカサが青い光剣を持って、突っ込んだ。忌まわしい血液が、禍々しく光る。それは魔力の光だろうか。吸血鬼は、脅威としか言いようがない反応を見せて、ツカサの剣を受け止めた。
「――甘いわ!」
「――うわあ!」
 これを受け止めるのかとツカサも思わず感嘆の声をあげる。
「いいえ、これで終わり」
 リーシャ・ヴァーミリオンの右肩に、深々と魔剣が刺さる。道中、リーヴァルディの炎の魔剣は二つの力を見せていた。一つは、その纏った炎。そしてもう一つ。傷口をえぐるような、爆炎。吸血鬼の目が見開かれる。そして、爆ぜた。

 ぼとりと、吸血鬼の右腕が落ちた。

●骸骨は主人を守る
「――やったか!」
 ツカサが、思わず口にする。
「――いえ、まだです。何か、まずい」
 零が冷静に呟く。その言葉を聞いて、猟兵たちが距離を取る。
「く、く、く……」
 炎に包まれて、リーシャ=ヴァーミリオンは笑っていた。その赤い瞳が見せる凄絶さは、如何とも形容しがたい。憎悪もある。だが、それ以上に冷静さを感じる。つまり、これは。
「怒らせてしまった、みたい」
「……ですね」
「本気じゃなかったってこと?」
「いえ、どちらかと言えば、俗に言う、火事場の馬鹿力に近いのではないでしょうか」
「なんにせよ、――まずい」
 猟兵たちへ向けて、大きく槍が振るわれる。それが邪悪な魔力に満ちていること、誰にも容易に見て取れた。あれを受け止めることはできない。しかし、長く武器を打ち合った猟兵たちも相応に疲労しているこの状況、ヴァンパイアの本気の振りを、今この瞬間回避することはできない。
 このままでは、ぶつかる。猟兵たちは、覚悟した。
 しかし、一撃は届かなかった。こんこんと王冠が絨毯に跳ねる音がした。
「だらしのない契約者だ。零、次はもっとマシな戦場で呼ぶがいい」
「――ありがとう、首狩りの女王」
 ディミオスの骸骨頭が、【魔槍剛撃】によって貫かれていた。強力な召喚霊である彼女でなくては、まともに受け止められないであろう一撃。しかし、まともに受けては女王ですら現界を維持できない。霊体が消えていく。

「さあ、仕切り直しだ。――猟兵ども」
 悼む暇さえ与えないとばかりに、リーシャ=ヴァーミリオンから、血の刃が全方位に放たれて、猟兵たちは彼女から距離を取る。その瞬間、ヴァンパイアは体勢を立て直す。噴き出た禍々しい血液が形を成して、かりそめの右腕を形成する。戦力が落ちたようには、とても見えない。
「なんとも、困りましたね」
 相棒を失ってなお、零の戦意は衰えない。しかし、くやしさは滲む。
「いや、オブリビオンの魔力は無限じゃないよ。あれだけ好き勝手に暴れて、腕まで再生して、はい元通りとはいかないさ」
 まだまだ戦う気まんまん、ツカサは晴れ晴れと笑う。
「――そうですね。私たちは、確実に追い詰めています」
 リーヴァルディは、頑張りましょうとまでは口にしない。
 だが、その意味は十分に周りに伝わっていた。

 ヴァンパイアの少女は、まだ立っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紅呉・月都
あ?跪けだ?ざけんな、テメェみてえなやつに誰が跪くかよ。

血はどうにもなんねぇ…したらまずは槍をぶっ壊すか
【マヒ攻撃・鎧砕き・二回攻撃】などで攻撃。
チャンスがあれば【怪力・なぎ払い】等で槍を狙って攻撃し、槍の破壊もしくは手の届かない所へ吹き飛ばす。

ユーベルコード
焔鎖は敵の持つ槍よりも長い状態をキープし、敵と一定の距離を空ける。
ブラッディ・カーニバルを使用されたら鎖は解く。

攻撃は【見切り・残像】を活用して回避。
回避しきれない場合は【武器受け・なぎ払い】で対処。
周りの遮蔽物を活用して体勢を立て直して再度攻撃を試みる。


フィン・クランケット
うぅ〜ん、普通の貴族さん相手なら、私も礼儀正しくするんですけれどもぉ
残念ながら、これは商売じゃない方のお仕事なのでっ!

●WIZ
まずは距離を取ってUCで敵を牽制しつつ、挙動を備に観察します

ふむ、どうやら、彼女の魔槍連撃という技は、一度使うと隙が大きい技みたいですねぇ
では、それを逆手に取りましょう!
かるーくストレッチ。いっち、に
足とんとん、でコンディション確認

よし、行けますっ
敵に近づいて、槍の攻撃を誘発し、【ダッシュ】で逃げます
上手に回避できて隙を作れたら、他の方に「今です!」と合図
バシッと決めちゃってくださいな!
上手く避けられなくても、致命傷は避けれるといいなぁ…あわわっ

アドリブ・連携・大歓迎!


セリオス・アリス
アドリブ歓迎
マリアドール・シュシュと同行

悪いな礼を尽くさなきゃいけない相手が見当たらなくてよ

歌で攻撃力を上げ
挨拶(物理)の先制攻撃
走り込み連続で斬りつけ
槍の攻撃に嫌な予感がして床を蹴りあげジャンプで上に回避
…っは、その顔でゴリラかよ
悪態をつきつつ振り下ろしたその隙を狙って攻撃しつつ距離をとる

一段じゃあちと弱いか?
さっきの、もう一回打たせるからそこ狙え
ヤバそうになったら任せたぜ
マリアに声かけ
敵へダッシュ何度も斬りつけながら魔槍剛撃をもう一度放つよう誘う
慎重に見切り
マリアの攻撃に合わせて剣を振る
剣が止められたら剣から態と手を離すことで逆に距離を詰める
そのまま拳に魔力を集め【星球撃】をブチ込んでやる


マリアドール・シュシュ
アドリブ歓迎
セリオス・アリスと同行

「まずは目の前の彼女を何とかしなくちゃ、なのだわ!
おいたがすぎる悪い子にはメ、なのよ。
あら、礼儀を語っているけれど、そういうあなたは礼儀を重んじる方なのかしら。違うわよね?
わたし、そういう人にはそれ相応の礼を返すのよ」

ドレス翻し竪琴構える
攻撃が届く範囲で距離取る
セリオスの背を守る後衛
音色に【マヒ攻撃】を付加し演奏攻撃
【おびき寄せ】して隙を作りセリオスの攻撃を通しやすくする
敵の攻撃は回避か音色の攻撃で相殺
セリオスの掛け声と共に攻撃合わせ【透白色の奏】

「まぁ、セリオスったら!事実だからってそんな事を言っては駄目よ?可哀想でしょう。
ええ、分かったのだわ!任せて頂戴」


ノエル・クリスタリア
彼女が今回の事件の……流浪の民の命を奪い尽くした、元凶。
此処で、運命を変えるわ!
手早く倒してしまいたいトコロだけれど、未熟な私はまだ攻撃手段のバリエーションがそれほど無いから、ヴァンパイアの眼前での戦闘をしてしまった今、先ほどの攻撃では見切られてしまうかもしれないわね……
此処は、生まれながらの光でみんなの援護に回って、円滑な討伐を目指しましょう。
みんなの勝利を、【祈り】を込めて!

アドリブ歓迎



●三人揃えば
「フィン、本当に大丈夫?」
 よいしょよいしょと屈伸運動をする蜜柑頭を心配そうに眺めるのは、ノエル・クリスタリア(夢色輝石・f09237)である。宝石の目が、青く、愁いを帯びた光を放つ。
「ご心配ありがとうございますっ! でも平気ですよぉ、お任せあれっ!」
 びしっと親指を立てて応じる明るい声は、フィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)のもの。いっち、に。いっち、に。とストレッチして、足をとんとん助走のようにテンポを刻む。
「そう。でも、無理だけはしないでね……?」
 連撃を封じなくては勝利を決定できないことは、明らかであった。ノエルとて猟兵。戦闘能力は決して人に劣らないし、実戦経験こそまだ重ねていないものの、知識は十分。だから、止めることはしなかった。騎乗するものがない現状、彼女は聖者として戦うのみ。囮役を代わることはできない。だから、せめて後へ備えつつ、その成功を祈るのみ。
「――よし、行ってきます!」
 心優しい戦友にはにかんで、跳ねのきつい髪を揺らしてフィンが駆けだした。血に塗れ、片腕をも禍々しき血で肩代わりしてなお、リーシャ・ヴァーミリオンは健在である。切りかかるフィンに向けて、迷いなき槍撃が繰り出された。そんなオブリビオンの槍を、フィンは開刀『幻世』で受け止める。金属がぶつかりあって、火花が散る。撃ち合う音が、何度となく響く。
「この程度ですかぁ? 意外と、大したことないんですねぇ」
 フィンの顔が、挑発するように歪む。内心は逆だ。鋭い一撃ひとつひとつ。相手は戦いこそ得意とするオブリビオン。受け止め切るには、フィンの戦闘技術では足らない。油断すれば、一瞬で打ち取られることはすぐにわかった。しかし、商人である彼女にとって、演技はおてのもの。心にもないことを言えなくては、百戦錬磨の商人たりえない。余裕の表情は、すっかりヴァンパイアを騙しきる。
「ほざけ。妾の恐ろしさを知りたいというのであれば、見せてやろうぞ!」
 槍がすぅっと引く。それは、連撃の合図。
 吸血鬼が牙を剥く。奴め、果たしてどれだけ撃ち合いに耐えられるかな?
 戦いの愉悦に、ヴァンパイアの赤い瞳が揺れる。

 だが、その期待は裏切られた。
「残念でした! 鬼さんっ、こちらー!」
 くるりと踵を返し、フィンは後方へと全力ダッシュ。
 迷いのない行動。意外性しかない行動。
 だが、リーシャには唖然とする贅沢すら許されなかった。
 すでに彼女は予備動作に入っていて、それを今更取りやめられない。
 すなわち、追うしかない。

「ひ、卑怯者ぉーーーー!」
「商売の世界ではぁ、騙される方が悪いんですよーーーーだっ!」
 雪糸で編まれた服がまるで翼のように空気を吸って、フィンは駆ける。アホ毛がぴょこぴょこ揺れる様は見るものの笑いを誘いそうなものであるが、彼女の動きは真剣そのもの。瞬く間に部屋の中ほどまで逃げていく。その後ろを、弾丸のように吸血鬼が猛然と追う。
 狭い室内、それはいつまで続けられるのか――と、ある猟兵は思った。事実、すでに追いつかれそうであった。それは、歴戦のオブリビオンの実力と、相性差などが織りなすもの。逃げ続けるのは、あと数秒が限度だろう。どうするのか。
 だが、フィンの狙いはそんなところになかった。
 きゅ、絨毯と靴が擦れる音がする。蜜柑色の走者の動きが止まった。
「妖精さん。私に力を貸してくださいっ!」
 くるりと振り向くフィン。眼前にリーシャ。
 妖精の力を借り、空間に氷柱を産み出してリーシャの攻撃を牽制しながら、周りの猟兵に声をかける。その瞬間、フィンはヴァンパイアの鮮血槍に貫かれた。くりくりとした青い瞳が、激痛で見開かれる。腹部に巨大な黒い染みが浮かぶ。それは、常人ならば致命傷といってもいいほどの傷。だが、フィンは満足そうに笑う。

「――今です!」
 
「――おうよ。任せな。マリア!」
「ええ、分かったのだわ! セリオス、任せて頂戴!」

●歌と琴の二重奏
 それは、黒衣の鳥と華水晶の蕾。セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)とマリアドール・シュシュ(無邪気な華水晶・f03102)の二人は、互いに声をかけあう。セリオスは、純白の剣で、フィンに向けられていた槍を受け止める。びりびりと剣を握る手に衝撃が走るのを感じた。
「……っは、その顔でゴリラかよ」
「なんと無礼な。そも、誰の許しを得て邪魔をしている!」
「悪いな礼を尽くさなきゃいけない相手が見当たらなくてよ」
 怒り狂う吸血鬼を前にして、黒い鳥は平然と受け流し、剣を振るい、槍の連撃を食い止める。その狙いはフィンであり、一度外してしまった以上、その脅威はさほどのものではない。近接戦を得意とする彼からすれば、今はまさに獲物でしかないのだ。
「まぁ、セリオスったら! 事実だからってそんな事を言っては駄目よ? 可哀想でしょう」
 その後ろから、優美な旋律が流れる。踊るように夜空色のドレスを翻し、面白がるように笑いながらも、マリアドールの奏でる黄昏色の竪琴の音色は典雅そのものであった。
「煌き放つ音ノ葉を戦場へと降り注ぎましょう」
 ふわりと笑みを、哀れなオブリビオンに向ける。
「──さぁ、マリアに見せて頂戴? 玲瓏たる世界を」
 それは、ユーベルコード【透白色の奏(リスタ・エメラルム・カノン)】。たったひとつの竪琴から、幾重もの旋律があふれ出す。そのひとつひとつの音が、魔力を帯びていることを思えば、その技術は巧みというほかないだろう。

「おら! 動きが鈍くなってるぜ、どうした!」
 マリアの奏でる音色にあわせて、セリオスもまた盟約を歌う。力を漲らせ、槍と撃ち合う。時間と共に、吸血鬼の槍が鈍くなっているのを感じた。いや、知っていた。仲間の奏でる旋律が、リーシャの身体を麻痺させはじめていることを知っていた。セリオスの歌声は一層高らかに、竪琴の旋律と調和する。その合奏は、暗い世界を晴らすような楽しさを持っていた。
「貴様ら、貴様ら、小細工ばかりを弄しおって!」
 ぐぐぐと鮮血槍を握る力が一層強まる。それは、先ほども一度見せていた。零の女王を奪った一撃。ユーベルコード【魔槍剛撃】。いくら強化していても、それをまともに受け合うことは困難である。それを見て、セリオスは獰猛に笑う。いいじゃないか。やってやる。
「やるぞ、"お前ら" 。頼んだぜ!」
 剛撃放つ鮮血槍と、輝く純白の剣が打ち合わさる瞬間、竪琴が響く。一瞬の時間を、竪琴が稼ぐ。それは、剣を離すまでの瞬間。
「武器が剣だけだと思うなよッ!」
 長身の猟兵が、にやりと笑う。魔力が拳に込められる。握りしめる指の音が、リーシャの耳に届いた。そして、それは迫った。ドンと音を立てて、腹を撃つ。穿つ。吸血鬼の赤い瞳が開かれる。それは、大きな隙。槍を握る手が、一瞬緩んだ。

●槍を砕け、紅焔の鎖
「命令すんじゃねーよ! だが、いいタイミングだ!」
 炎を纏った日本刀が、光る。まっすぐに、槍目掛けて突く。紅呉・月都(銀藍の紅牙・f02995)の斬撃が、爆ぜる。
「――紅焔に喰われて灰燼と化せ!」
 ユーベルコード【悪しきを喰らう焔鎖】が、リーシャの鮮血槍の自由を奪う。その鎖は、紅焔。その熱により、槍は緋色に歪む。ぐしゃり、どろり、ぐしゃり。

「がはっ!」
 一瞬遅れるようにして、吸血鬼の肺が空気を求める。吸血鬼の纏う忌まわしき血を刃と変えて、間近のセリオスへ向けて十重二十重の斬撃とする。
「これで動けるなんて、たまったもんじゃねーな!」
 斬撃を無理に受け止めることは割け、セリオスは身体を逸らし、後方へとステップ。身体を翻し、手で体重を受け止めて回転し、一度距離を取る。

「俺のこと、忘れてんじゃねーだろうな!」
 砕けかかった槍を、鎖が引く。咄嗟にリーシャが鮮血槍を掴もうとしたのは誤りであった。彼女は鮮血槍を離すべきだった。未練を残すべきではなかった。そうすれば、この瞬間、ここまで屈辱を味わうことはなかっただろう。とはいえオブリビオンというものは、多かれ少なかれ過去に未練があるからこそ、蘇るものなのかもしれないが。
 確かなことは、紅焔の鎖の強靭さは、吸血鬼の膝を地面に屈させたということだった。
「あ? 跪けだ? ざけんな、テメェみてえなやつに誰が跪くかよ。テメェの方こそ跪く方がお似合いだぜ」
 せせら笑って、瞬間地面に倒れた吸血鬼を見下すような目を向けた。燃えるような銀の瞳は、決して悪を許しはしない。目の前の存在は、いかなる外見をしていようと、弱者を虐げる悪なのだから。

「――なるほど。妾はお主らを甘く見ていたようじゃな」
 ヴァンパイアという種族は、なるほど支配者たるにふさわしく、かかる劣勢にあってもなお冷静であった。鮮血槍から手を離し、飛びのくために翼を広げる。
「させねーよ!」
 紅焔鎖が、がしゃりと音を立てて、主から見捨てられし鮮血槍を砕く。それを一顧だにせず、月都は紅華焔を高らかに掲げ、振り下ろす。その軌道は、まさしく緋色の彩糸。繊細にして、大胆なる刀閃が、リーシャを追う。邪悪なる令嬢は、白い髪を揺らし、赤く染まった爪先へ禍々しき血を纏っては刀を受け止める。
「――テメェ」
 眼光鋭きヤドリガミは、思わず悪態をつく。満身創痍で追い詰められたはずの彼女が、未だにこのような力を持っていること、腕力と速度に長けた彼の一撃を防いだことは驚嘆に値する。だが、面白くはない。

「仕切りなおす。まだ、まだ妾は終わっておらぬのじゃ」
 黒く広げられた翼が大きく羽ばたく。それが禍々しき血を含んだ突風を起こし、月都は咄嗟に自らを守る。それを隙と為して、リーシャは大きく羽ばたいて、彼から距離をとった。反撃の機会を探るように、赤い瞳が動く。

●聖なる光は味方を守る
「――いいえ、もう終わりですよ。あなたは」
 それは、フィン・クランケットの言葉。傷ついた彼女は温かな光に囲まれていた。赤黒く染まっていた腹は、もはや見る影もなかった。酷くなったという意味ではない。最初から傷なんてなかったように、もとの綺麗な様相に。
「ええ、私たちの勝ち。もう後がないのよ、あなたは」
 フィンの傍らで、きらきらと聖なる光を放つのはノエルである。彼女のユーベルコード【生まれながらの光】は、生命の代謝を促す癒しの光である。まばゆく輝き仲間を救う彼女を見て、誰が聖者以外の存在と考えられようか。
「えへへ、ありがとうございますぅ、ノエルさん」
 フィンは、傍らのノエルに笑顔を向ける。
「いいのよ、フィン。あなたのおかげで、みんなのおかげで、もうすぐ、運命が変わる」
 それは祈るような優しい言葉。ノエルは、もはや帰趨を確信していた。

 相反する二色の瞳の先で、哀れな吸血鬼が追い詰められようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
ひぅ……綺麗なヴァンパイアのお姫様……でも……
あなたは、人を虐げて、命を簡単に奪う、だから……
あなたの美しさは、ここで否定するよ!


使うユーベルコードは「美貌の呪い」
このユーベルコード、使うのは本当は凄く恥ずかしいんだけど……そうも言ってられない、から……!

見る者に美しいと感じさせるのなら、シアだって負けない……!
何故なら、シアのこの容姿はお父さんとお母さんが授けてくれた親子の絆だから!
シアの全身から溢れる美貌を輝かせて、その美しさで目を奪われている間、リーシャ・ヴァーミリオンは全くの無防備になるはず
その間に皆、リーシャを討ち取って……!

本当の美しさは皆と協力する心だから……!


聖護院・カプラ
「使えない奴だった」と言うのですか。
行いの是非はどうあれ、命を受け従いそして散らしたオルトロスを使えなかったと切り捨てるのですか。
その行い、赦せるものではありません。

魔槍の剛撃を受けてはひとたまりもありませんから、距離を取る事で対処致しましょう。
不用意に踏み込めば猟兵の攻撃に晒される事は理解をしている筈。

その間に私は経法を唱える事で、後光ユニットから発する光に浄化の力を籠めて『リーシャ・ヴァーミリオン』に向け放ちましょう。
彼女の言い分を聞きますが、反省の色が見られないようなら遺憾ながら光を強め、人生を改めさせる事で行いがよくなるよう祈ります。


アレクシス・アルトマイア
跪いて礼……と言われましても、残念ながらそうすべき相手が見当たらなくて……困ってしまいましたね、ええ。

見た目は可愛らしくはありますが……
やはり主は中身が肝心です

どうにか矯正出来るとよいのですが
オブリビオン相手では少し過激なお仕置きとなりそうですね

味方と連携して【従者の時間短縮術】を用いてサポート。
大技に合わせて隙を作ったり、ピンチのときに敵の妨害をしたりしましょう。
そうしているうちに隙が出来たら【宵の華】で四肢と首とをかっさばきましょう

血とか飛ばしてきそうですから、避けたり破魔で浄化したりしましょう。
お掃除中といえど、無駄な汚れはできるだけ避けたいですからね。

アドリブ・絡み歓迎ですよ



●夜を明らむ可憐な花々
「その様を見ますと、やはり。中身が肝心ということですね」
 傲然としていたその姿を見てきて、満身創痍で今なお強がるオブリビオンを見て、アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)は冷然と言い放つ。
「うん、うん。……あんな風に人を虐めるなんて、絶対ダメ!」
 許さないと剣を握るのは、浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)。柔らかな青い髪を揺らし、邪悪な存在を見据える。

「ええ。お仕置きが必要ですね。私も、今宵は過激になりそうです」
 アレクシスが折り目正しく笑って、ベルトから抜いた二丁の拳銃を構える。編み上げブーツが、絨毯を平らにしつつ、リーシャの四肢へと乾いた音を撃ち込んだ。
「その程度で、追い詰めたつもりか!」
 アレクシスへと、ぐいと踏み込む吸血鬼。手に纏うのは禍々しき血。爪のように伸びる血を、銃把が受け止める。右が受け止め、左が止め、吸血鬼が蹴り上げるように足を動かすと、その体を纏う血が、刃の形でアレクシスを襲う。

「アレクさんを、やらせない! ――お母さん、借りるね!」
 その刃をアレクシスの周りを飛んだシアラが払う。胡蝶の形をした閃きは、かつて紺色の戦乙女がふるったもの。閃きが光る。きらきらと光る。血刃がしぶきとなって、砕ける。アレクシスの周りを縫うように青い妖精が舞い踊れば、友を襲った邪悪なる血は悉くが灰となった。
「貴様、ちょこまかと!」
 何もかもがうまくいかない。あれも、これも。すべてはこの猟兵たちの仕業。吸血鬼は、眼前の敵を仕留める技を挫いた、小さな存在へと憎々し気な目を向ける。
「ひぅ!」
 その邪悪な目線に、シアラは身体を強張らせる。
 だが、そこで彼女は終わらない。
 緑の瞳に、戦意の色が浮かぶ。それは、両親から受け継いだ戦士の色。
「このユーベルコード、使うのは本当は凄く恥ずかしいんだけど……そうも言ってられない、から……!」
 シアラの体が、まるで光ったかのようだった。それはユーベルコード【美貌の呪い】。浅葱・シアラと言う名のフェアリーが、ヴァルキュリアの母から、ドワーフの父から受け継いだ大切なもの。ただの美貌ではない。ただ外見だけなら、リーシャ=ヴァーミリオンという名の敵だって相当な美貌である。シアラが真に持つのは、魂の美しさ。かつて魂を救ってきた戦乙女の子だからこそ、地獄を乗り越えた少年の子だからこそ、持ちえる清らな精神。
「あなたは、私から目を離せない!」
 赤い瞳が自分の身体に釘付けになったのが見える。逃げたい。逃げられない。
「――十分です、ありがとうございます」
 ダークセイヴァー世界の、暗い部屋を裂くように漆黒の刃が迫る。風を切る音さえ聞こえさせない虚無の刃が、白い髪した吸血鬼の少女の喉笛を裂く。鮮血がほとばしる。

「――――――――っぁ!」
 喉笛を裂かれ、もはや声にならない叫びが、吸血鬼から漏れる。
「――あと、少し。トドメを、お願い!」
 その様子を見て、シアラが叫ぶ。

「――他力本願、承りました」

●浄化の法光。
 その声は、音もなくホバー移動で寄っていた。聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)は、決して部屋の照明用蛍光灯ではない。彼のおかげで、増援として番犬たるオルトロスが呼ばれず、戦闘が優位に進められてきたのは事実だが、彼は何より猟兵である。すなわち、誰かを守るための救済の光。他力本願とは、仏の願いの力をもって、成仏せしめることを祈ること。彼自身が望んだことではなかったかもしれないが、誰かを肯定し、誰かを守り、誰かを救う存在は、ヒトのために光を放つ。金属でできた法衣がきしむ。機械仕掛けの台座が排気の音を立てる。宝珠と宝珠がぶつかって、じゃらりと音を立てる。後光ユニットに、エネルギーが満ちる。
「悔い改める気はありませんか?」
 それは慈悲の言葉。カプラの無機質な緑の瞳が静止して、リーシャへと向けられた。
「―――――」
 もはや答える力はない。だが、その目は、確かな憎悪に燃えていた。
「――そうですか。残念です。せめて、あなたに安らぎがありますように」
 ウォーマシンの動力炉から、背部の後光ユニットにエネルギーが送られる。蓄積されたエネルギーが光子エネルギーと法力エネルギーへと変換される。

 そして、照射された。

「ア、――ア、――アアア、アアアア―――――」
 吸血鬼の少女が、悶える。苦しむ。あがく。だが、浄化の光は逃さない。その中心で、カプラは悲しそうに目を伏せたように見えた。光の反射かもしれない。ユーベルコード【経法】が、オブリビオンを血の一滴すらあまさず灰にする。

「――終わってみると、あっけないものですね」
 アレクシスが、雪のように白い目隠しで顔の見えぬままに呟く。
「でも、これで、このオブリビオンは死んだんだよね……?」
 シアラが心配そうに灰を眺める。
「はい、この、リーシャ=ヴァーミリオンは浄化しました。しかし、いつかまた蘇るかもしれません。その可能性は、否定できません」
 カプラが、機械的に事実を告げる。

「その時は、倒すのみです。そうでしょう?」
 アレクシスが冷静に告げる。
 その言葉に周囲の猟兵皆が頷く。彼らは皆、その力を持っていた。

 邪悪なる吸血鬼はここに倒された。灰となり、今宵蘇ることはない。
 しかし、この物語はここで終わらない。もう少しだけ、続く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『流浪の民と過ごす一時』

POW   :    狩猟や採取、彼らの為に食料を調達してきます。

SPD   :    吟遊や舞踊、彼らと囲んだ焚き火の前で一芸を披露します。

WIZ   :    修繕や作成、彼らの馬車や持ち物に手を加え、知識を伝授します。

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●猟兵たちの仕事
 リーシャ=ヴァーミリオンは討伐された。
 だが、猟兵たちの仕事は今少し続く。

「流浪の民がやってくるまで、それほど時間は残されておりませんー。ただちに準備を整えて、彼らを歓迎してあげてくださいー」
 安全を確認して、やってきた春奈が猟兵たちに告げる。歓迎の仕方は猟兵次第。表立つことが苦手なら、準備に勤しむのも手かもしれない。彼らをもてなすのみならず、旅の手助けをすることもあるはず。やれることは様々あるはずだ。

「お疲れのところすみませんが、よろしくお願いしますねー」
 春奈はにこりとほほ笑んだ。

●マスターコメント(補足)
 戦闘お疲れさまでした。第三章です。
 POW、SPD、WIZ、あまりこだわらずにやりたいプレイングをどうぞ。

 日常パートです。
 登場しうるNPCは東風・春奈(小さくたって・f05906)です。
 それ以外の隰桑担当グリモア猟兵は登場しません。
 春奈はすでに転送のために現地に来ています。
 呼ばれたら出てきますが、呼ばれなければ自由に過ごしているはずです。
 どうぞお構いなく。もちろん、呼ばれたら喜んで登場させます。
 
浅葱・シアラ
ひぅ……もう少しで旅人さんがやってくるね
早くおもてなしの準備しなくちゃ……
平和になったお屋敷で、旅人さん達がゆっくりと休めるように
フェアリーは旅人を導くのが役目だものね


使用するユーベルコードは「紫光蝶」
旅人さんはお疲れだから、心身ともに癒してあげたいよね

お願いね、紫色に輝く蝶々さん、シアの精霊さん達……!
シアが疲れちゃうかわりに旅人さん達を癒してあげてね

ふわふわ、きらきら……綺麗でしょう?
お母さんが教えてくれた蝶々さん達、きっと旅人さん達を癒して導いてくれるから

えへへ……旅を続けるために、今日はゆっくりゆっくり休んでね……
えへへ……。


月宮・ユイ
アドリブ・絡み協力歓迎

生まれゆえ、人の為に働くことが好き。少しでも旅の疲れを癒せるよう一生懸命に活動
出来るだけ協力し合い、しっかりと歓迎できるようにする
まずは急いで”お掃除と戦闘痕を隠す”処置をしてしまいましょう

私は”世界知識、礼儀作法、料理、暗殺の潜入技術”等技能を最大限活用しつつ、館の使用人に”変装”しきる
『この一夜、皆様が存分に安らげるよう、どうぞ何なりとご命じ下さい』
旅は身体に思わぬ負担をかけているかもしれません。【癒し手】を使ったマッサージ等もいかがでしょう


甲斐・ツカサ
旅の話を聞かせてくれるなら、オレもとっておきの話をお返ししなきゃね!

以前泊めた吟遊詩人から聞いた(という体の)夢と希望に満ちた冒険譚でみんなに力を与えたいな!
太陽に照らされた大地を駆け、星明りを浴びた森に潜り、月光の下で神秘と交わる旅人の話
それを電脳ゴーグルのホログラム(太陽や月、星の光をもっと綺麗に見せてあげたいから、春奈ちゃんの電脳技術を借りたいな!)を用いて(ちょっとした手品みたいなもんさ)披露!

そうそう、吟遊詩人さんが言ってたんだけど、最近ヴァンパイアや異端の神々を倒して人々を救ってる人達がいるんだって
この事を伝えていけば、他のみんなにも希望が湧いてくるかもね!

それじゃあ、良い旅を!


聖護院・カプラ
これにて一件落着……にはまだ早いですね。
館の主として『存在感』を放ち流浪の民をおもてなししなければならないでしょう。
戦闘の痕跡は短時間で隠しようがありませんから、修復系のユーベルコードを持つ猟兵が居なければそのままにしておきましょう。

なに、強盗に入られたものの腕に覚えのある方々(他猟兵)が追い出してくれた……という風に『説得』すればよい訳ですから。
不安要素を逆手にとり安心していただきます。

ああ、東風さんも”お客様”のお出迎えを手伝っていただけませんか?
何分この大柄な身です、驚かせてしまうかもしれませんから。
見た目麗しいお嬢さんが一緒に居てくれれば警戒心も解れるでしょう。


フィン・クランケット
ふへぇ、つっかれましたぁ~
でもでも、これで旅人さんたちは確実に助かったんですものねぇ
あと一頑張りっ
がんばっておもてなししちゃいます♪

・準備
急いで隠さなきゃいけない感じのあれこれがあれば、UCでしまっちゃうくん3号(ポシェット)にないなしします
う゛っ! 入れたくない!

・おもてなし
私だって旅商人ですから!
旅人さんたちを歓待するのはバッチ来いなんですよぉ
【コミュ力】を活かして、ご案内などできるなら
うっかり、旅商人とか言わないようにしないといけませんねぇ…
ええと、立ち位置は御屋敷のうっかりメイド、みたいなっ?
お喋りと賑やかしはお任せ下さい!
あ、食事のサーブは、ひっくり返しそうなので遠慮しますね(にこ)


天星・零
(一人の吸血鬼が犠牲になった事で民達は一時の幸せを得た。逆に、民達が理不尽な犠牲になれば吸血鬼が幸せになったのだろう。結局、犠牲が出るんだな。本当は分かり合えたらいいんだけど‥)


『彼等が安全な場所に出会えるように微力ながらお手伝いさせていただきます』

普段からしている【情報収集】での知識と、【世界知識】の技能を用いてダークセイヴァーでUCのオブリビオン達と協力して、薬草などを集めて、これからの道中怪我があっても応急処置や病気にかかった時の薬を作る

可能なら、民達に治療の仕方なども教えます

また、余裕があれば動物などを獲ってきて長持ちする様な食料(干し肉など)を作り、村人達に渡し暫くは困らない様にする


リーヴァルディ・カーライル
…ん。私の仕事はもう終わったけど…
まぁ、折角だから旅人達を労うくらいはしてあげる
…あの吸血鬼、私と同じぐらいの背格好だったし、
一つぐらい着れる衣裳があるでしょう。多分…

事前に【常夜の鍵】の中に屋敷の戦闘跡を片付けておき、
令嬢に変装して旅人を出迎える
屋敷の主か、主の縁者か…他の猟兵と相談して役割を決める

…ようこそいらっしゃいました、旅の方々
どうぞ、此方へいらしてください

礼儀作法に則っ令嬢然とした存在感を放ち、
客人に旅の出来事などを聞いて場を盛り上げる

…もっと、旅の話を聞かせてください

彼らが寝静まった頃に馬車に大量の保存食をのせておく

昨晩は楽しい話を、ありがとうございました
…これは私からの御礼です


紅呉・月都
歓迎…歓迎なぁ……うし、俺裏方やるわ
ゆっくり休みに来たのに迎えに出てくんのが俺じゃ驚かしちまいそうだからな。

道具とかのメンテはわりと得意な方だし、そっち系やるわ。
何か直すもんあるか?
何なら簡単なメンテの方法も教えとくかな。
今後の旅路でもちっとは役に立つだろ。

あー、子どもがいればその相手すんのもありか
まぁ…寄ってくれば、っていう前提条件があるが。
その間、大人は酒でも飲んでればいんじゃねーの?
それぞれストレス発散して、ゆっくり寝ちまえば気分良く再出発出来るだろうからな。


アレクシス・アルトマイア
さあ、さあ。
お掃除も無事終えまして、これからが本番ですよ、皆さんっ。

みなさんと協力してお料理やベッドの準備に、歓待にと大忙しですっ
戦って壊れたところは大胆に飾り付けてごまかしたりしちゃいましょう

ぽかぽか温かいスープに、ジューシィなお肉料理。新鮮なお野菜のサラダ……
が作れるかどうかは、わりとここの貯蓄と辺りの獲物次第ですけれど……
料理とかも贅沢をしそうな感じでしたし、どうでしょうか?

旅のお話なんかも、聞きたいですね。
ちょっとわくわくします。

流浪の民さんの疲れを癒して、元気に出立されるのをお見送りするまで、
従者として張り切ってまいりましょう。

アレンジ・絡み大歓迎ですよっ


セリオス・アリス
アドリブ歓迎

もてなすならやっぱり食いもんが大事だろ
吸血鬼の食いもんなんて食えるかわかんねえし…いっちょ狩って来るか
周囲に獣を狩りにいく
なるべく量があった方がいいだろ狙うならでかい獲物だ

獲物を見つけたら気配を殺し足音を立てないように軽やかな足取りで近づき
一気にダッシュで先制攻撃だ
拳を胴体に力強く叩きつけ
よろめいたところを今度は炎の魔力を込めて全力で叩きつける【星球撃】
火も通せて一石二鳥だろ!
ある程度用意できたら屋敷に戻り
食材を渡す
…あ?ちゃんと火が通ってりゃ食えるだろ?(料理できない)
誰かが料理をするなら目を輝かせて眺め
すげーな
ちょいと味見だ
ひょいっとつまみ食い


ノエル・クリスタリア
何とか猟兵としての初めてのお仕事を終えるコトが出来そうね。

春奈が予知してくれたお陰で何とか、流浪の民は難を逃れられたのかしら。
この殺伐とした世界ではこれからも沢山の困難があるだろうけれど……今はゆっくり、疲れを癒して貰いましょう。
私に出来るコトは少ないけれど、この世界において温かな光はそれだけでも安心感があると思うから、生まれながらの光で疲れを癒して貰いつつ、件のヴァンパイアに倣って流浪の民のお話をお聞きしましょう。
これまでの武勇伝と、私たちが繋いだこれからの物語をーー


ジズルズィーク・ジグルリズリィ
SPD判定
(再送につき、内容不備の場合は蹴ってくださいませ)

血祭り、後の祭り? ぼっこぼこにされて眠っている間に、ジズはよい献立が思い浮かんだのです
皆々様の治療のおかげですかね? ともあれ、
天啓、天明。ジズは、【料理】を担当するコックさんに扮するのです

こう見えてジズは愛する夫の開く大衆食堂、その女将なのです
腕によりをかけ、食べがいのあるメニューを揃えるです

……む? 突然? 天然?よく言われるのです
天然といえば、今回は自然の食材にこだわってみたのです
荒れ果てた土地に根付いた作物、さぞ力強い味わいになるのですよ

どうか、これからの旅路に幸多からんことを
と、【祈り】を込めることは忘れないのです



●館の掃除は一苦労
「う゛っ! 入れたくない!」
 その顔はひきつっていた。
 およそ女の子(※ただし、実年齢87歳)が浮かべていい顔ではない。
 眉間に皺をよせ、目をまんまるにひき吊らせ、ほうれい線はくっきりと。
 自慢のアホ毛はぴんととんがり、わなわなと震えている。

 フィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)は、オルトロスの死体を詰まんでいた。死後時間の経った肉体は、オブリビオンのものだろうとなんだろうと、たんぱく質でできているから腐るのだ。さすがにまだ腐りきってはいない。しかし、猟兵たちの手で無残に割かれたその身体から、芳しい香りのするはずがない。

「……あのぅ、本当にいれないといけないんですかぁ?」
 ほかに処分の仕方を知っていたりとか……なんて、傍らの猟兵に話を振る。
「……ないです。諦めてください」
 にべもない返答である。これは、月宮・ユイ(死ヲ喰ラウモノ・f02933)のもの。別にユイがいじわるしようとか、フィンが嫌われているという話ではない。単純に部屋の片づけに要する作業量が多く、余裕がないだけのこと。その証拠に、メイド服姿の少女は手際よくはたきを叩いて、雑巾をかけて、戦いの汚れを落としていく。

「でーすよーねぇー……」
 えいやっと毛だらけの死体を持ち上げて、ぽいっと小さなポシェットに差し入れる。
 ユーベルコードを知らない身なら、奇妙に感じるかもしれない。
 そのポシェットは明らかに、死体に比べて小さいはずなのに。
 みるみるうちに吸い込んでいく。
 それはユーベルコード【四次元ポシェット(ナンデモ・シュウノウ)】のなせる技。四次元空間の内に、抵抗しない物体を仕舞いこんでしまう秘密技術。当然のことだが、死体は抵抗などできない。なお、弦理論によれば、我々の存在する空間の構成軸の最外たるは、時間軸であると言われる。四次元ポシェットの時間軸がどうなっているかは、それを直に見るだろう未来のフィンだけのお楽しみに留めよう。

 幸運なことに、フィンの苦しみは最後まで続かなかった。まとめられ、山積みになったオルトロスの死体を一つ一つ、泣きそうな目でしまっていくフィンのもとに、救世主がやってきたのだ。

「……ん。終わった?」
 それは、令嬢の服に身を包んだリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。銀のウェーブヘアに似合う、血のように赤い色のしっとりとしたドレス。ふわりと軽いレース生地でできたドレスの、膝が見えるくらいの丈は若々しい瑞々しさで満ちている。ダンピールの整った顔を見れば、誰一人として彼女が令嬢であることを疑わないだろう。ちなみに服は、リーシャ=ヴァーミリオンの予備としてクローゼットに仕舞われていたものを拝領したとかなんとか。
「おお~、お似合いですよぉ! このドレス、ひらひら~のふりふり~で、とってもかわいいですねぇ!」
 それを見て、両手を打ち合わせて、目を輝かせる蜜柑エルフ。アホ毛がぴょこぴょこと動く。アホ毛ぴょこぴょこ。みぴょこぴょこ。誉め言葉のセンスは、少しだけ人とずれているが、当人は気にしていない様子。
「そのオルトロス……」
 リーヴァルディが、着せられた白手袋で死体の山を指さす。
「おーっとぉ! 少しお待ちくださいね、お嬢様! 今片づけますのでぇ~」
 慌てるフィン。令嬢然としたダンピールの戦友を見て、いつの間にか完全に口調が従者になってしまっている。
「……いい、任せて。……開け、常夜の門」
 手袋を取って、人差し指を齧る。ぽとんと血が垂れれば、垂れた先に鮮血の魔法陣が浮かぶ。ユーベルコード【常夜の鍵(ブラッドゲート)】は、常世の古城へと続く門を開く。あっという間に死体を吸い込む。終わったあとで、平然とするリーヴァルディ。あの死体を収めて平然とできるとは……と目をきらきらさせるフィン。

「フィンさん、何をしているんです。片づけが終わったら、次は従者役の準備ですよ」
 ほらほらとフィンの背が押される。もとよりメイド服のユイは、従者長という役回り。新米メイドの蜜柑頭を更衣室へと連れて行く。押さないでくださいよぅ!なんてアホ毛を揺らしながらの文句もどこ吹く風よ、オッドアイのヤドリガミの少女は丁寧ながら淡々と準備を進めて行った。

 ちなみに残念ながら、フィンのお着換えシーンは大人の事情によりカットされました。

●狩猟採取
「もてなすならやっぱり食いもんが大事だろ」
 うんうんと頷いて、丸焦げとなった鹿をかつぐのは、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)。黒い長髪が触れないよう、今の髪型はポニーテール。それに意味があるかどうかはともかくだ。
 彼は満足げな顔で、鹿というよりは炭の塊を持って館へと歩いてきた。

 哀れな鹿に何が起きたのか。
 館の周辺の森に生息していた彼は、新鮮な食材を手に入れるべく館の周辺を探索していた黒い猟兵に見つかってしまった。鹿というのは聴覚に優れた動物であるが、猟兵が相手だったことが不運であった。気配を消した黒い鳥は足音を殺して近づいて、ここぞというタイミングで一気に走り出す。拳を強く握りしめ、胴体を力強く叩きつけ、鹿が衝撃でよろめく。脊髄反射で体勢を立てなおす鹿が、大きくよろめいたところに炎の魔力を籠めた必殺の一撃。それは、先にリーシャ=ヴァーミリオンという強大な敵をも穿った拳。ユーベルコード【星球撃】による全力全開の炎の一撃、それを全力で叩きつけたのだ。
 結果は、自ずと明らかだろう。

「おう、食材とってきたぞ」
 と自信満々、少しだけ得意げなセリオスに、信じられないモノを見る目が向けられたとしても、誰が責められようか。
「セリオスさん、あの」
 厨房にいた皆を代表して、アレクシス・アルトマイア(夜天煌路・f02039)が尋ねる。相も変らぬ、瞳の色がわからぬ装い。なれど今日はコックさん。コックの白服を着てもなお、彼女の女性らしい身体つきは隠しきれるものではない。
「……味見ってしてみました?」
「あ? してねーけど?」
 黙って、鹿だった何かをアレクシスが差し出し返す。
 その黒と灰色でできた塊をセリオスは摘まむ。食べる。
「うえっ、にがっ! しぶっ! まずっ! なんだこれ!」
「……私たちの台詞です。これ、火の通しすぎです」
 勘のいい読者も、そうでもない読者もお気づきのことと思うが、たんぱく質を燃やせば
炭になる。まして、セリオスという力自慢の猟兵の、一切遠慮ない一撃は、一発で哀れな鹿の内臓を破壊して、肉を血まみれにしてしまう。猟師が肉を捌く時、最も気を付けることは血抜き作業。いかに肉に血の味を移さないかを検討するという。
 炭の味のあとに襲い掛かる、拭いきれない獣臭さ。
 一言で言うなら、激マズである。
「………あ? ちゃんと火が通ってりゃ食えるだろ」
「とにかく、ダメです。食材を取ってきてくださるのはありがたいのですが、ユーベルコードは禁止です」
 首を横に振るアレクシス。だが、彼女を誰が責められるだろうか。

●採取という名の大冒険
「仕方ありませんね。僕が同行しましょう」
 そう申し出たのは、天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)である。彼は、薬剤の調合をし、旅人たちへ贈る予定だった。しかし、館の中を捜索したところ、一部の材料が足りない。そこで、捜索に向かうところだったのだ。

 一時間後。

「零……おまえと夕夜、それからそのオブリビオン、すげーな!」
「いえいえ、セリオスさんこそ。特にあの歌の支援、頼もしかったですよ」
 オブリビオンの館近辺の森が、危険な野生生物の住まうファンタジー色で溢れる冒険世界であったなど誰が想像しようか。このたった一時間で、グリモア猟兵が予知していてもおかしくないほどの激しい戦いを潜り抜け、彼らは食事と薬、それらの極上素材を獲得していた。まさか森の奥に千年に一度の秘密の花が咲いていて、それによりモンスターが活性化していて、さらにはオブリビオンの妨害が入り……いや、その冒険譚の詳細は、諸般の事情からこれ以上ここでは語るまい。片手間で語りきれるものではないのだ。
 とにかく、ダークセイヴァー世界の秘宝とも言うべき素材を手に入れて、彼らは帰途についていた。
「……それで、お前は何を作るんだ?」
「薬ですよ。痛み止めや、感染症を抑える薬です」
「へぇ、器用なんだな!」
 男性的に笑うセリオスに、柔らかな笑みを零は向ける。
「はい、彼らが安全な場所に出会えるまで、旅を続けられるように。微力ながらお手伝いしたいんです」
「微力なんて謙遜言うなよ。それをもらった奴らは、ぜったい喜ぶだろうさ」
 確信と自分の感想への絶対的な自信をもって、金と赤の目をした少年を励ます。もちろん、零も一から十までその通り謙遜していたわけではないだろうが、その言葉を聞いて嬉しそうに目を細めるのだった。目の前の黒鳥が、本気でそう思っているのだと伝わってきたのだから。本気で褒められて全く無感動の人間など、そういるはずがない。

 セリオスが、シンリンハンテンモドキオイシイダークドラゴンの肉を担ぎながらでなければ、もっと格好がついたかもしれない。

●調理とは気遣いの心
「これは……すごいですね。ジズも、腕が鳴ります」
 ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)が口を開いた。ちなみに今日の彼女はコックさん。衛生管理と大人の事情から、きちんとしたコック服を着ている。ちなみに彼女は、なりたてとはいえ、大衆料理店の女将である。店に並べばいくら値が付くかわからない、高級肉と扱われるだろうジビエのいいところを堂々切り取って、焼き始める。
「……あの。ジズさん」
 また、困った顔を浮かべるのはアレクシスである。本当に困った顔かどうかは、目隠しの下に隠れており確定することこそできないが、その挙作は明らかに戸惑っていた。
「何を混ぜたんですか?」
「はい! 地物のトテモマズインゲンと、ニガクテタマラナイモです!」
「――」
「今回は自然の食材にこだわってみたのです。荒れ果てた土地に根付いた作物、さぞ力強い味わいになるのですよ」
「……ジズさん、もしかして天然と言われたりしませんか?」
「……む? 突然? 天然?よく言われるのです」
「そうですか。――そうでしたか。料理は、私がやりますから。そうですね。……完成した料理に【祈り】を籠めることをお願いしてもいいですか?」
「なるほどっ! 大事な仕事ですねっ!」
 心優しい竜騎士たる猟兵は、ふわりと笑顔の口許で、ジズルズィークを傷つけないように調理の仕事から外した。結果、最後の方でそれに気づいたシアラやノエル、ユイたち、料理の手伝いができる他の猟兵が手伝いに来るまで、アレクシス・アルトマイアという少女ひとりの手によって、調理が続けられたのだった。ちなみに、助力を申し出たフィンは豪華な皿を何枚も割ってしまったので、やはりアレクによって丁重な言葉で別の仕事へと回された。
「ひぅ、アレクさん、優しい顔して、怖い……」
 とは、あまりに鮮やかなアレクシスの手腕を見たシアラの感想である。それでも、ぽかぽか温かいスープに、ジューシィなお肉料理、新鮮なお野菜のサラダといった、豪華な料理を多数作ったその労苦は、計り知れない。

●出迎え
「私が、主人です」
 館の主人は、この猟兵以外いなかっただろう。
 圧倒的《存在感》で、聖護院・カプラ(旧式のウォーマシン・f00436)は館の入り口に浮いていた。そもそも、猟兵は《世界の加護》の力によって、住民から違和感を持たれない。世界の加護を受けた猟兵は、どこでも言葉が通じ、どんな姿形でどんな世界に行こうとも、住民に違和感を与えないのだから。しかし、それを差し引いても、彼の居住まいは堂々としていた。流浪の民の長と握手をする様は、さながら絵画の一幕のようであった。

「こちらは、娘です。さあ、リーヴァ。団長のサイラス氏にご挨拶なさい」
 娘という設定になったリーヴァルディを紹介しても、違和感を微塵も与えない。その《存在感》は、違和感を感じることができるはずの猟兵たちも、(「あれ……もしかして本当に父娘だったりするんじゃない?」)とつい思ってしまうほどだった。

「春奈、春奈。この方たちをご案内しなさい。いいですか、大事な賓客です。くれぐれも粗相のないようにね」
「はいー。かしこまりましたー。ささ、どうぞこちらへ~」
 なんて兎耳を揺らして、グリモア猟兵の東風・春奈(小さくたって・f05906)。普段のエプロンドレスではなく、今日はメイド服姿。ちなみに着付けは同じくメイド役仲間の、フィンとユイに手伝ってもらった。彼女がひょこひょこ歩いて、道案内すれば流浪の民たちは喜んで、館の中へと入っていった。

●宝石の少女、ナンパされる
 盛大な宴会が開かれた。館の主人であるカプラがめったに来ない来客を、流浪の民のことを大いに気に入ったという設定である。実際、気持ちの良い……『いいね』をあげられそうな人物であったのだから、カプラはこの役割を大いに喜んで執り行った。

「まあ、そうなの。勇敢だったのね」
 きらきらと輝く笑顔で、流浪の民の青年の話を聞くのは、ノエル・クリスタリア(夢色輝石・f09237)である。クリスタリアンのお姫様が文字通りきらきらと顔を輝かせて話を聞いてくれるものだから、若者のテンションはまさしく有頂天にも登ろうというものだ。
「そうなんだよ。君にも見せてあげたかったな、俺の活躍! 敵のヴァンパイアから仲間を庇ったんだぜ。俺の槍がこう動いてさー、ずばばーっと!」
「それでそれで? そのヴァンパイアはどうなったの?」
 なんて、興味津々に話を掘り下げていく。少年の話が面白がっているよりは、宇宙船の外の、本当に広がる世界の空気を、全身満腔で味わうように。"この世界" しか知らない、流浪の青年には、そんなノエルの気持ちを測りようがないが。

「なあ、君さえよかったら、俺と一緒に来ないか?」
「えと、それは……」
「娘を嫁にもらいたいのであれば、まず私を通してもらわなくては」
 ゴツいお父さんである。なにせウォーマシンだ。酒を飲み、絶世の美少女を前に気分の上がった青年は、その聖騎士の圧倒的《存在感》の前に酔いがさめたのか、気圧されたのか、たじたじになって逃げていく。
「邪魔してしまいましたか。本当は、ついて行ってもいいと思っていたとか」
 カプラは小さな少女に尋ねる。
「いいえ。流浪の冒険も面白そうだけど、……やっぱり私。猟兵だから」
 ノエルは笑った。
 まだまだ私の知らない世界はたくさんあるのだから、と。

●冒険者の少年はかく語る
「うわーっ! すごかったよ!」
 大きく拍手して、感動してみせる……いや、本当に感動しているのは、甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)だ。今日だけは、赤い冒険服ではなく、おぼっちゃまらしいパーティ用の礼装。なにせ、聖護院・カプラお父さんの、たった一人の跡取り息子という設定なのだ。

「じゃあさ、お返しにとっておきの話をしてあげる!」
 おーい!と春奈に手を振ると、給仕として控えていたドワーフの少女が駆けてくる。
「はいはーい、坊ちゃま。お任せくださいー」

「これは吟遊詩人に聞いた話なんだけどねー」
 ツカサが語るのは、太陽に照らされた大地を駆け、星明りを浴びた森に潜り、月光の下で神秘と交わる旅人の話。少年が大事にしている、本物の冒険の物語。その語り口は、真剣であり、熱がこもっていたものだから、その場の流浪の民たちも、身を乗り出して聞き入っていく。
「そして星の光を頼りに、冒険者たちは進んでいった! 背後に迫るは狼の――」
 時折春奈にウィンクをして合図すれば、ホログラムが浮き上がる。彼らの知らない技術だが、ツカサの思い通り魔法を混ぜた手品と信じ込んでいるようで、違和感なくそれを見ては話に入り込む。
「――こうして、冒険者の旅はひとまず終わりを迎えるのでした。でも、まだ彼の旅は続くんだ……なぜか、わかるかい?」
 観客の一人に、冒険家の少年が問う。
「決まっている、冒険者だからだ!」「そうだそうだ!」「冒険者だからさ!」
 流浪の民は圧政から逃げた存在。だが、同時に広い世界を旅することをよしとする人々である。ツカサの話を聞いて、彼らは大きく共感したのだろう。やんややんやと大盛り上がり。
「おい兄ちゃん、続きの話はないのか!? 聞かせてくれよ!」
「兄ちゃんは失礼だろう、坊ちゃんだよ。坊ちゃん!」
 彼らの期待を前にして、そして何より自分の大好きな話を求められて、冒険家の少年が話を止めるだろうか。
「そうだね。次は――――――」

 彼らの宴会は、まだまだ続く。

●月の見える裏庭で
 裏庭には、流浪の民の馬車が止まっていた。そこで、赤髪の猟兵、紅呉・月都(銀藍の紅牙・f02995)は彼らの道具箱を開いていた。
「おーおー……道具を雑に使いやがって」
 壊れかけたネジを締め、朽ちかけた持ち手を補修し、金属をはめなおす。ものによっては、新たにナイフで削りだして、しれっと道具箱に収める。そう。表の仕事が苦手という彼は、流浪の民の持ち道具を修繕していたのだった。裏方を受け持つと宣言したわけではないが、自然とこうしていた。誰にも気づかれず、人知れず。
 しかし、人知れずというのは、少し違った。

「……おじさん、何してるの?」
 きょとんとした顔の、子供の尋ねる声がした。
「見りゃわかんねーのか、直してるんだよ」
「……なにそれ。その道具、まだ使えるよ」
「もうじき使えなくなるんだよ。そうなったら、困るだろ?」
「……うん」
「メンテナンスって言うんだ、こういうの」
「……めんてなんす?」
「そーだ。物を大事に使っていくために、大事なことだ」
「……僕にもできる?」
「その気があるならな」
「……教えてよ」
「教えてください」
「……教えて、ください」
「それからな」
「……なに?」
「俺のことは、おじさんじゃなくて、月都おにーさんと呼べ」
「月都おにーさん」
「……よし。大事にしろよ」

 月明りの下、ヤドリガミはごそごそと、予備として買ってあったナイフを手渡した。あくまで予備。別に捨てても惜しくはないが、拵えはそれなりにしっかりしたもの。これなら子供が扱っても大丈夫だろう。ぼつぼつと、道具の扱い方とメンテナンスの仕方を教えていく。朴訥で、おおざっぱな教え方は、とてもわかりやすいものとは言えなかった。だが、その場にいた二人の目は、きらきらとしていた。
 この子供が、そのナイフを大事にして、その百年後――いや、これはまた、別の話。

●そして
「なんとお礼を言っていいのか。色々と、世話になったね」
「それじゃあ、気を付けてね」
 彼らを見送るのは、小さな少女。浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)は、門の前で馬車に乗った流浪の一団を見送るように、ひらひらと舞う。そして、彼らは旅だとうとして。
(「お願いね、紫色に輝く蝶々さん、シアの精霊さん達……!」)
 シアラが心の中でひとつ、念じると、紫の光をした蝶が夜の世界を照らし出す。きらきらと光る鱗粉が舞う光景は、まさしく幻想的であった。その光を浴びるにつれて、流浪の民たちは、自らの身体が少しずつ、軽くなっていくのを感じた。

「これは、君が?」
 流浪の民の団長が、仲間の疑問を代表して、シアラに問う。
「ふわふわ、きらきら……綺麗でしょう?」
 青い髪をした少女は、そう言えることそれ自体を喜ぶように、はにかんだ。
「お母さんが教えてくれた蝶々さん達、きっと旅人さん達を癒して導いてくれるから」

 ひとしきり光の蝶を味わった流浪の民たちは、馬車に乗って発っていった。
 彼らの旅は、まだまだ続く。この世界の闇が明けるまで。
 見送るように、彼らが見えなくなるまで、光の蝶は舞っていた。

 ――いつか、光を見つけられますように
 優しい祈りを籠めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日


挿絵イラスト