おおぐちさま(作者 ささかまかまだ
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「集まってくれてありがとう。今日はUDCアースの仕事だよ」
 バインダーに綴られた資料を捲りつつレン・デイドリーム(白昼夢の影法師・f13030)は猟兵達へと笑顔を向ける。
「カクリヨファンタズムが発見された事で、竜神の人達からUDCアースで行われた邪神の封印について聞くことが出来たんだ。その結果、彼らが覚えているはずの封印は殆ど存在していない状態になっていて……それでも、出来る事があるのが分かったんだよ」
 竜神達は所謂『邪神山脈』を含めた様々な場所に邪神を封印してきたという。
 しかし、彼らから情報を集めたUDC組織が実際に封印場所を訪れた結果――殆どの場所に「封印が存在しない」という事が分かってしまった。
 既に封印が解かれているのか、別の理由があるのかは分からない。
 また、この情報を元に更に調査を進めた結果、「新たな封印」が発見されたのだ。今回の依頼はそちらに関連するものだという。
「新しい封印は『竜脈封印』と呼ばれるものだね。竜脈とかレイラインとか、大地に流れるエネルギーを利用した封印だ」
 竜神信仰が廃れた現代においても『竜脈封印』は生きている。
 それに関して調査を進めれば、封印されて弱っている邪神に対し先手を取ることが可能なのだ。

「今回調査してもらうのは、日本のとある地方だよ。ここのどこかに『竜脈封印』が存在しているはずだから、その場所を突き止めて欲しい」
 そう話しつつ、レンは猟兵達へと資料を配る。
 そこには目的地周辺の地図や『竜脈封印』に関わるであろう民話の要約などが載せられていた。
 目的地は田舎の方らしく、周囲には小さな村が点在している。お年寄りから子供まで、住んでいる年齢層は意外に幅広い。
 近くには大きな山も存在している。村の人達は山の深い所には足を踏み入れず、それなりのところで山菜をとったりしているようだ。
「詳しくは現地に行くまでに読んでもらえればと思う。この情報を元に現地の人に聞き込みをしたり、あとは直接それっぽい場所へ赴いてみて欲しいな。それから……」
 無事に封印の場所を突き止めても、この依頼は終わらない。
 封印が弱まっているのなら、それに呼応してオブリビオンが集まっている可能性が高いのだ。
「『封印』の近辺に潜むオブリビオン、それから封印されている邪神そのものの討伐。ここまでをお願いしたいよ」
 封印されている邪神は本来ならば強力な存在なのだが、永い封印の影響で今は本領を発揮できないようだ。今のうちに倒してしまうのがいいだろう。

「この時期の山は暑いだろうし……大変な調査になるかもしれないけれど、皆ならきっと大丈夫。気をつけていってきてね」
 話を締めくくり、レンは改めて猟兵達へと笑顔を向けた。

●「伝承『おおぐちさま』に関する情報」
 昔々、山の中に『おおぐちさま』という恐ろしい怪物が住んでいました。
 『おおぐちさま』は時々山から里へと下りて、そこに暮らす人々を食べに来ます。
 村の者たちは生贄の若者を捧げ、『おおぐちさま』に満足してもらっていました。
 『おおぐちさま』の棲家からは、いつも若者の泣き声が聞こえてきたといいます。

 そんなある日、一人の男が村へとやってきました。
 男は村人の嘆きを聞き入れ、『おおぐちさま』を退治しにいきました。
 実はその男は人間ではなく、神様だったのです。
 神様は嵐を起こし『おおぐちさま』の棲家の入り口を塞ぎました。
 おかげで村人は『おおぐちさま』に生贄を捧げずに済むようになったのです。

 けれど『おおぐちさま』は山のどこかで眠っているだけです。
 その影響か「悪い子は山に捨てられ『おおぐちさま』に食べられる」といった脅し文句が存在したりしているようです。
 また、この地域の住民も山の奥深くへは足を踏み入れたりしていないそうです。


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 山です。
 「【Q】UDCアースで竜神の痕跡を探したい」の結果発生したお話です。

 日本の田舎町や山を調査して邪神が封印されている場所を探しましょう。
 場所が判明したら、そこに巣食っているオブリビオンや邪神と戦います。

●一章「竜脈封印の伝承」
 調査パートです。能力値はあまり気にせずにどうぞ。
 『おおぐちさま』の伝承を元に調べるもよし、とりあえず片っ端から調査するもよしです。
 出来そうなのは「封印があると思われる山へ直接赴く」「周辺地域で更に情報を集める」「近くの村に聞き込みに行く」などです。他にも出来そうな事があれば提案してみてください。

●二章「集団戦」・三章「ボス戦」
 戦闘パートに特にギミック等はありません。
 一応戦闘場所は山の中なので、それを利用できるといい感じになると思います。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『竜脈封印の伝承』

POW巨石を動かしたり、沼の底に潜るなどして、竜神信仰の痕跡を探索する
SPD探索範囲内全域をくまなく歩いてまわるなど、足を使って竜神信仰の痕跡を探し出す
WIZ村に伝わる昔話や童歌の調査、村の古老との会話などから、竜神信仰の痕跡を探ります
👑7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 転移した猟兵達を迎え入れたのは、濃い緑の香りだった。
 周囲に広がっているのは田んぼに畑。
 そこから道を辿れば、人々の暮らす村へと行ける。
 農作業に勤しむ人に声をかける事も可能だろう。

 反対側には大きな山が広がっていた。
 鮮やかな緑色に包まれる山は美しいが――どこか薄ら寒い気配も感じるのは邪神のせいだろうか。
 山へと繋がる道も存在しているため、人々が出入りするような地点まではすぐに辿り着く事が出来るだろう。

 この地のどこかに竜脈が在り、そこに邪神が封じられているはずだ。
 まずはその地点を特定しなければ。
エーデル・グリムワール
封印されし邪神の討伐…本来ならば2個軍団を投入して然るべき作戦を少人数で行うとは、やはり猟兵という存在は桁外れですね。
ともあれ今は私もその1人、魔軍師の名にかけて任務を果たして見せましょう…。

私の調査策は山へ入っての現地調査です。
魔剣の力で我が第3軍団の魔法兵達を召喚、手分けして山へ入り地道な魔力探知によるローラー作戦で封印を探り当てます。
私自身は将として【団体行動】【地形の利用】と言った指揮能力を活かして魔力通信で魔法兵らを指揮しつつ、自らも山に存在する魔力を感じるオブジェクトを一つ一つ調べていきましょう。

また、山で戦闘になる事を見越し地形地理の把握と計略の準備もしておきます。



 アックス&ウィザーズの山々とは違う、湿気と熱気を帯びた空気。
 それを肌で感じつつ、エーデル・グリムワール(魔軍師・f25392)は周囲を見渡す。
 訪れたのは一見平和な田舎の山だが、ここには恐ろしい邪神が眠っているのだという。
「封印されし邪神の討伐……本来ならば2個軍団を投入して然るべき作戦を少人数で行うとは、やはり猟兵という存在は桁外れですね」
 将軍としての視点から今回の作戦を鑑みれば、その規模の小ささには思わず気が遠くなる
 けれどエーデルもその『埒外』である猟兵の一人。『魔軍師』の異名を預かる者としてもしっかりと仕事をこなさなければ。
「それでは参りましょう」
 魔剣ゾルダートをしっかりと構え、エーデルは呼吸を整える。
 発動するのは召喚の魔術。呼び出すのは自らが指揮する第3軍団。どこの世界であろうとも、やるべき事に変わりはない。
「来たれ我が精鋭、パルミラ連合第3軍団よ!」
 魔軍師の召集に合わせ召喚された魔法兵達はすぐさま隊列を整え、エーデルの指揮を待つ。
「手分けして山の調査を! 魔力探知と地理地形の把握、その双方を行って下さい!」
 軍団長の高らかな声に合わせ、すぐさま兵士達は進軍していく。
 エーデルも指揮官として通信網の把握を行いつつ、山の奥へと進みだした。

 今回の作戦はシンプルなローラー作戦だ。
 この山は第3軍団だけでカバー出来る大きさだろう。
 更にここは戦場にもなる予定だ。それなら少しでも地形把握や計略の準備を進めておきたい。
「何か気になるものがあれば、すぐに私に報告して下さい」
 魔力通信で兵士達に連絡を入れつつ、エーデルも山の中を突き進む。
 広がるのはどこか鬱蒼とした森だ。奥へ進めば進むほど、むせ返るような緑の香りが身体を包む。
 けれどそれと同じく、魔力の反応もどんどん強まっているようだ。

「……魔力探知が引っかかる地点がある、と。ではそちらへ向かいます」
 兵士達から連絡を受け、エーデルはすぐに現場を目指す。
 報告を受けたのは森の少しだけ開けた地点だ。そこに微かな魔力の反応があるという。
 エーデルもすぐさま自身の魔力を集中し、怪しい痕跡を探していく。引っかかったのは……一本の老木だ。
「これは……戦いの痕跡、でしょうか」
 木の表面を撫でてみれば、内から伝わるのは雷の魔力。
 伝承では『神様は嵐を起こして邪神を封じた』と伝えられている。だとすればこれは竜神が戦った痕跡だろうか。
「この近辺から封印場所に通じているかもしれません。より強い魔力を探しましょう。それから……」
 兵士達に指示を出しつつ、エーデルは周囲を見遣る。
 ここなら地面もぬかるんだりしていないし、視界もそれなりに広く取れそうだ。
 もし開けた地点で戦う必要があれば、ここに敵をおびき出すのも良いかもしれない。
 勿論森の中だって利用できる。そのためにはもう少し草木の性質を見ておいた方がいいだろうか。
「まだまだ確認すべき事は数多くありますね……。ですがそれもこなしてこその魔軍師。やり抜いてみせましょう」
 困難な仕事だからこそやる気も出るというもの。
 赤い瞳にしっかりとした光を宿しつつ、エーデルは更に調査を進めていくのだった。
成功 🔵🔵🔴

ティノ・ミラーリア
山の中で探しもの…この範囲を調べるとなると、大変そうだ…

先に調査した猟兵の情報を聞きつつ【眷属の召喚】を発動。
『眷属』のオオカミとコウモリを召喚して「情報収集」をしよう。
山の中なら…僕よりこいつらの方が自由に動けるだろうしね…
よくないものの気配は感じられるみたいだからそこを重点的に、
痕跡を「追跡」して捜査網で「範囲攻撃」のごとく。
これだけ散らして探せば、何か見つかるかな……?
山の木々が深くなってきたら『纏影』で適度に枝を払いつつ、
自身は『眷属』で調査した中でも気配が濃いなど疑わしい方向へ向かう。



「山の中で探しもの……」
 周囲に茂る草木をかき分けながら、ティノ・ミラーリア(夜闇を伴い・f01828)は山を進む。
 故郷では感じられないようなじっとりとした熱気を味わいつつ、きょろきょろと辺りを見回しつつの探索だ。
 他の猟兵からも話を聞いているとはいえ、捜査出来る場所はなかなかに広そうだ。
 自分達だけでは大変だろう。それなら仲間を呼び出そうか。
「空に地に、満ちろ眷属……」
 呼びかけに応じて影から姿を現したのは、眷属のコウモリとオオカミ達だ。
 険しい山を探索するなら彼らの方が適任だろう。
「よくないものの気配は感じるよね……そっちを重点的に見てきてくれるかな……?」
 ティノからの指示を受け、眷属達は山の中へと飛び出していく。
 コウモリ達は高い木々を掻い潜り、オオカミ達は地面を蹴って。少しでも怪しい気配を感じればすぐに報告が来るはずだ。

 事前に聞いていた情報では『竜神と邪神の戦闘の痕跡』があると聞いていた。
 まずはそちらを目指しつつ、ティノは更に山道を歩き続ける。
 山に入って暫くは人が往来している痕跡があったけれど、奥へ進めば進むほど自然の気配が濃く感じられる。
 そこからもっと進んでいけば――気の所為だろうか。湿気とは違うじっとりとした気配が肌を撫でていく。
「これは邪神の影響……かな」
 表情は変わらずともティノが纏う雰囲気も少しずつ鋭く変わる。
 より強く何かを感じ取れないだろうか。ティノがそう思った矢先に、一匹のオオカミが報告へとやって来た。
 オオカミの口元には黒い花が咥えられており、その存在を知らせるために戻ってきたのだろう。
「変わった花だね……何の花だろう……」
 黒い花からは厭な香りが漂っているが、オオカミの持ち運び方から毒はなさそうだ。
 手にとって観察してみれば、その花は百合によく似ていた。そういえば『クロユリ』という花があると聞いたこともある。
 本来ならばクロユリは高山植物。今回訪れた山に咲いたりはしないだろう。それに――花からは強い気配も感じられる。
「この花が咲いている場所まで案内してくれるかな……?」
 ティノの命を受け、オオカミは来た道を戻っていく。
 彼に着いていけば新しい発見があるかもしれない。ティノも自分の纏影で邪魔な草木を払いつつ、更に奥へと進んでいく。

 クロユリが咲いていたのは『戦闘の痕跡』があったと報告を受けた地点から更に奥、より山の深い場所だった。
 そこでは数輪のクロユリがひっそりと咲いており、漂う邪神の気配もより肌寒いものへと変わっている。
 山奥だからといってここまで気温が下がるだろうか。邪神の影響が山の環境をおかしくしているのかもしれない。
「この辺り……もっと調べた方がよさそうだね」
 眷属達を呼び寄せ、ティノは近辺の調査を進める。
 きっとここから邪神の棲家へ繋がっているはずだ。その確信を胸に抱き、ティノの赤と青の瞳は山の景色をしっかりと映し出していた。
成功 🔵🔵🔴

天瀬・紅紀
謡さん(f23149)と

ご婦人の人気…って、え、どーいう意味

伝承の類を調査するのは普段もやってるし
うん、僕達なら取材名目で行けるよね
謡先生の伝奇物の新作なら僕も読みたいし
え゛…? 僕が書くの?
ああ、うん、確かにその見目じゃ…
いや、何その設定
僕は料理くらいは出来るよ?
――ああ、つまりアレ? ご婦人のエモを狙い打ち、と
(割と相手の勢いに飲まれつつ納得)

お年寄りを訪ねてお話聞こうか
郷土の恐い話をテーマに取材してると話して
おばーちゃんが子供の時に聞いた恐い昔話なんて無い?

後は古い蔵や神社に文献でも見つかると良いな
お祭りの由来に荒神や龍神なんかのワードがあればしめたもの
きっと実際にあった事だろうし、ね


白紙・謡
紅紀様(f24482)と

紅紀様はお話好きの「ご婦人」方に人気がありそうですもの
是非協力致しましょう?

わたくし達でしたら
伝奇物の新作の為の取材というのが自然でしょうか

あら
もちろんわたくしではなく、貴方が。
だってわたくしの姿では説得力がありません
という訳で
生活力に乏しい兄を引っ張り回す世話焼きな妹、という設定で如何でしょう
いいえ、今は事実より設定受け
何でもそつなくこなせそうな殿方の
小さな弱点に心擽られる方は多いのです

紅紀様がご婦人とお話する間
わたくしは子供達の方に

脅し文句を聞いて
むしろ山に探検に行ってしまうやんちゃな子は居るものです
凄いね!褒め倒しながら
ね、秘密にするからいちばんの冒険を聞かせて?



 目的地である山の麓、小さな村の入り口で青年と少女が顔を見合わせていた。
「山奥に施された竜神の封印、か。村にも何か情報が残っていればいいんだけれど」
 青年、天瀬・紅紀(蠍火・f24482)は赤い瞳で村を見遣り、これからの計画に思案を巡らせている。
 その横では少女、白紙・謡(しるし・f23149)が円な瞳で紅紀を見つめていた。
「紅紀様はお話好きの『ご婦人』方に人気がありそうですもの。きっとたくさんお話していただけますわ」
「ご婦人の人気……って、え、どーいう意味」
「ふふ、悪い意味ではございませんわ。わたくしも是非協力致しましょう?」
 くすくすと上品な笑みを零す謡に対し、紅紀の表情はどこか困惑気味。
 けれど上手く話を聞くことが出来るのならばそれが最善。さて、どうやって話を聞きにいこうか。

「わたくし達でしたら伝奇物の新作の為の取材というのが自然でしょうか」
「そうだね、伝承の類を調査するのは普段もやってるし……うん、僕達なら取材名目で行けるよね」
 紅紀も謡も小説を愛し、それに携わる仕事をしている。それならそのまま自分達が出来る事を活かすのが得策だろう。
「謡先生の伝奇物の取材っていう体が自然かな。新作が出来るなら僕も読みたいし」
「あら、取材を行うのはわたくしではなく紅紀様だと思ったのですが」
 きょとん、とする謡の顔を見て、紅紀も目を丸くする。一体どういう考えなのだろうか。
「え゛、僕が書くの? そういうのはやっぱり謡さんの仕事じゃ?」
「けれどわたくしの姿では説得力がありません。ご婦人がお相手なら特にそうではありませんか?」
「ああ、うん、確かにその見目じゃ……仕方がないかな」
 実際の年齢はともかく、見た目でいえば謡は子供で紅紀は大人。
 このような田舎では『子供の作家』では信頼を得るのは難しいかもしれない。謡の意見に紅紀も思わず唸った。

「という訳で。生活力に乏しい兄を引っ張り回す世話焼きな妹、という設定で如何でしょう」
「……いや、何その設定。僕は料理くらいは出来るよ? 生活は出来るよ?」
 謡の投げかける思いがけない提案に紅紀は再び目を見開いた。
「いいえ、今は事実より設定受け。何でもそつなくこなせそうな殿方の小さな弱点に心擽られる方は多いのです」
「――ああ、つまりアレ? ご婦人のエモを狙い打ち、と」
「今時の言い方をするとそうなりますわね。ほら、紅紀様もたくさんお話が聞ける方が嬉しいでしょう?」
 謡は笑みを全く崩さずに言葉を紡ぐ。その勢いについつい紅紀も呑まれているようだ
「……分かった、それでいこう」
「ありがとうございますわ。それでは参りましょう」
 もしかしてこの設定、謡先生の好みなんだろうか。そんな考えが脳裏を過ぎったけれど、真相は闇の中だ。

 暫く村を歩き回れば、小さな公民館を見つけることが出来た。
 空調が効いているためか、その中では村人のグループが涼んでいるようだ。
 紅紀と謡はまず年配グループの元へと向かい、彼らへと挨拶することにした。
「こんにちは、少しよろしいでしょうか?」
「僕は作家をやっているもので……こっちは助手の妹だよ。二人で取材をさせてもらいたいんだ」
「あら、作家先生だなんて珍しいねぇ。妹さんもしっかりしてらっしゃって……うんうん、ゆっくりしておいき」
 愛想よく挨拶する二人の姿は村人からも好印象なようだ。皆にこにこと笑顔を浮かべ、麦茶やお菓子を用意してくれている。
 二人も村人達の側に座り、早速麦茶で喉を潤す。その後は自己紹介や雑談が続き、話が転がり始めた所で本題に。
「……ということで、郷土の恐い話が今回のテーマなんだ。おばーちゃん達も昔はそういう話を聞かなかった?」
「ああ、それなら『おおぐちさま』っていうのがあってね……」
 村人達が顔を見合わせ、話を始めようとした瞬間。突然別の場所で遊んでいた子供達が押しかけてきたようだ。
「『おおぐちさま』なら知ってるぜ! 俺もこの前ばーちゃんに『山に入ったら食べられる』って言われたからな!」
「まあ、山に入るなんて凄いのね! そのお話、詳しく聞かせて下さいな」
 謡は子供達を宥めすかし、彼らを少し離れた場所へと連れて行く。内緒話なら子供同士の方がやりやすいだろう。

 紅紀は老人達から、謡は子供達から話を聞き、更には封印の根拠になりそうな物品も見せてもらえた。
「『おおぐちさま』は神様が退治してくれたけど、まだ眠っているって……おとぎ話だとは思っているけど、こんな話もあるのよね」
 老人達は家から古い書物を取ってきて、その中身を見せてくれた。
 曰く、『おおぐちさま』はこの地に呪いをかけたらしい。呪いは黒い花の姿を取り、山の奥に広がり続けていると。
 他の猟兵が集めた情報も合わせると咲いているのは無害なクロユリだ。
 けれど本来ならばクロユリはこの山に咲かない。高山植物が育つような天候や標高ではないのだから。
「山の奥でな、変な花を見つけたから摘んできたんだ。そしたらばーちゃんめっちゃ怒ったんだぜ!」
 山へと冒険に出かけた子供もそのクロユリを見つけていたようだ。
 その場所は書物に書かれていたよりも、もっと人の生活圏に近い場所であり――つまり封印が弱まり、邪神の影響が広がっているのかもしれない。

 二人は村人達に礼を告げ、集めた情報を共有していく。
「クロユリが咲いているところを中心に探せば、封印の在処も見つけられそうだね」
「咲いているのが無害な花で良かったですが……このまま放っておくのも良くないでしょうね」
 邪神の封印が弱まっているのなら、呼応してUDC怪物が集まってくる可能性も高いだろう。
 紅紀と謡は顔を見合わせ頷きあい、そして共に山を見遣る。
 人々を守るという猟兵の使命。そして『本来咲かないはずの不気味な花が咲いている』という光景を見たいという作家としての興味。
 二人の胸に宿る気持ちは同じだ。
「……こうしていると本当に兄妹になったような気分ですわ」
「はは、謡先生のような妹がいるなら百人力だね」
 軽口は交わしつつも二人の表情は真剣だ。
 次に目指すは邪神の潜む山の中。二人は準備を整えつつ、出発の時を待つことにした。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

岩戸・御影
土着神って印象
僕は麓の集落で情報を集めることにしよう

UC発動、山の全体的な景観を空から見ておくよ
季節柄山の細部までは見辛いかもしれないけれど、不自然に木々が途切れていたり生き物の気配がない地点……注連縄等「いかにも」な地点があれば記憶しておこう
次の行動に有効な情報はあればある程いい

僕自身は集落で聞き込みをするよ
猟兵になれば見えるし、怖がられたりしないんだよね?

郷土資料館などが存在するのならそこへ
土着の悪いモノを退治するお話によく付随するのが出没前の異変、そして弱点
口伝の話には何か重要な情報が眠ることがある
資料館の担当者にも尋ね[情報収集]

一介の妖怪に過ぎない僕が神に歯向かうなんてわくわくする



 事前に受け取った資料の内容を思い出しつつ、岩戸・御影(赫鬼面・f28521)は山の麓を歩いていた。
 『おおぐちさま』に訪れた神様。土着神の物語としてよくありそうな印象だ。
 すぐ側には目的地である山も見える。そちらの調査は適した存在に任せよう。
「さ、おいで。僕を手伝っておくれ」
 御影の呼びかけに応えたのは夜空を纏う美しい夜鷹だ。夜鷹はふわりと空を舞い、御影の指示を待っている。
「山の景観を見てきてくれるかい。細かい部分は後で僕も確認するから、兎に角怪しい場所を探してきて欲しいんだ」
 青々と自然が広がる山だから、細かい景観を確認するのは難しいかもしれない。
 けれど人とは違った視点ならば見えるものもあるだろう。夜鷹は小さく一鳴きすると、翼を広げて山の方へと飛んでいった。
「僕も聞き込みを頑張ろうか……人里に行っても大丈夫なんだよね」
 御影も村へ向かって歩を進めるが、その表情にはほんの少しだけ不安の色が滲んでいた。
 猟兵は世界から加護を受けており、どんな見た目をしていようと他者から違和感を抱かれない。
 その知識は頭に入っているが、本当に自分の姿に驚かれたりしないだろうか。
「……きっと大丈夫、怖がられたりしないよね」
 欠けていない方の角を軽く撫でつつ、御影はゆっくりと村へ足を踏み入れていく。

 いざ村の中を歩いてみれば、拍子抜けするほど順調に進むことが出来た。
 村民達は客人に驚いたりはしたものの、御影を不審に思ったりはしていないようだ。加護の力を実感し、しみじみとした思いが胸を過る。
「目的地は……ここかな」
 御影が探していたのは地元の郷土資料館だ。田舎の片隅にあるものだから規模こそ小さいけれど、管理はしっかりしているのか中は小綺麗だった。
 受付には係員も座っており、客人の来訪に気付いたのか視線を御影へと投げかけている。
「こんにちは、ここって昔話の資料も置いているのかい?」
「ええ、ありますよ。何をお探しですか?」
「『おおぐちさま』に関する伝承なんだけど……」
 要件を伝えれば係員はすぐに案内を務めてくれた。展示されていたのは古い絵巻だ。
 山奥に潜む『おおぐちさま』は生贄の若者を連れ去り、散々嘆き悲しませた後に喰らったという。
 巻絵に描かれているのは、黒い身体と大きな口を携えた不気味な邪神だ。恐らくこれが『おおぐちさま』の正体なのだろう。
 そして『おおぐちさま』が封じられる場面では、邪神は洞窟の奥へと押し込まれ、嵐がその入口を崩していた。
 資料館で分かった情報は以上になる。御影は係員へ礼を告げ、静かに資料館の出口へ歩いていった。

 資料館を出た頃に夜鷹も山の周囲を見回り終えたようだ。
 夜鷹の目を通して送られてくるのは一部が崩れた山の光景。周囲にはクロユリも咲いており、ここに確かに邪神が封じられているようだ。
「……いいね、わくわくしてきた」
 あの場所に向かえば伝承の存在と対峙することが出来る。
 一介の妖怪に過ぎない僕が、神に歯向かうなんて。
 これからの出来事に思いを馳せて、御影はゆるりと笑みを浮かべた。
成功 🔵🔵🔴

花房・英
おおぐちさま、か
当たり前かもしんないけど、昔噺じみてイマイチぴんとこない
つっても、オブリビオンも俺らも似たようなもんか
伝承としても何かの教訓としても、長い時を語り継がれてるならすごいことだよな
なんか不思議

人と話すのは苦手なんだけど、年寄りや子ども辺りならなんとか
地域の伝承を調べてる学生で通す
昔から住民達が寄り付かない場所がないか聞いてみる

その上で電脳空間を利用して、この周辺や山をマッピングしていく
特に住民が踏み込まない奥地を重点的に調べる
この後の戦闘にも少しは役に立つだろ
話し通りに入り口を塞がれたなら、洞窟なんかの空洞とかあったりしないかな



 昔噺というのはいまいちしっくり来ないもの。『おおぐちさま』の物語だってそうだ。
 けれど猟兵もオブリビオンも似たようなものだろうか。
 そんな事を考えつつ、花房・英(サイボーグのグールドライバー・f18794)は山道の中を歩いていた。
 伝承、物語、教訓、その他諸々。長い時を語り継がれるものに、自分も彼らも携わっているのだ。
 それだけの何かが残せるのは不思議だし、凄いことだと思う。
 自分もそうなっていくのだろうか。誰かが何かを語り継いでくれるのだろうか。
 考え事を続けているうちに村へと辿り着く事は出来ていた。呼吸を整え、英もその中へと入っていく。

 村にはちらほらと人の影もあり、住民はのんびり過ごしているようだ。
 ちょうど学校が終わった時間なのだろうか。英の瞳にはランドセルを担いだ子供達が映っていた。
 彼らなら話しかけやすいだろう。人と話すのは苦手だけれど、今回のような案件なら人間から情報を得るのが一番だ。
「……ちょっといいか?」
「ん、兄ちゃん誰?」
「学校の授業でこの辺の事を調べに来てるんだよ。よかったら話を聞かせてくれないか?」
 英は子供達の前にしゃがみこみ、彼らの瞳をじっと覗く。
「授業って何の授業?」
「歴史……社会の方が分かりやすいか? この地域の昔話について調べてるんだよ。ほら、『おおぐちさま』とか」
「あー! それなら知ってる!」
 『おおぐちさま』はこの地域では馴染みのある伝承なのか、子供達は口々に情報を話してくれた。
 殆どは事前に確認した資料や他の猟兵が調べた情報と同じような内容だ。けれど話の中には気になる実体験もあった。

「この前、虫取りしてたら山の奥まで入っちゃって……その時変なものを見たんだ」
 もともと山の奥には誰も立ち入ったりしていないようで、子供達も入るのを禁じられているらしい。
 この子供は偶然そこまで入り込んでしまい、怪しいものを見たのだという。
「なんかなー、泣いてる人がいたんだよ。話しかけようか迷ったんだけど、怖くなって逃げちゃった」
 不思議な人影を見た場所では黒い花も咲いていたという。封印が弱まっている箇所で間違いないだろう。
 けれど『おおぐちさま』に泣き声に関する伝承はない。ならば――その影は別のUDCだろうか。
「……話を聞かせてくれてありがとう。これからはあんまり危ないことすんなよ」
「どーいたしまして! 気をつけるぜ!」
 屈託のない笑みを返す子供に対し、英は少し困ったように視線を逸した。

 何にせよこの山に何かが起きているのは間違いない。確証を得るために、起動するのは電脳空間だ。
 山の周囲をマッピングしていけば不審な点はいくつか見える。
 咲くはずのないクロユリの咲く地点、開けた戦闘の跡、山が崩れ落ちた部分。それらを重点的に確認すれば――入り口が埋もれた空洞も発見する事ができた。
「ここが当たりみたいだな……」
 戦闘に使えそうな地点もマッピングしつつ、英は目的地の方を見上げる。
 本来の棲家を無視して咲く花は誰かの嘆きの現れだろうか。それも放っておきたくはない。
 目指すは伝承が実在する光景。昔噺へと改めて思いを巡らせ、英は準備を進めていくのであった。
成功 🔵🔵🔴


第2章 集団戦 『嗚咽への『影』』

POW ●嗚咽への『器』
戦闘力が増加する【巨大化】、飛翔力が増加する【渦巻化】、驚かせ力が増加する【膨張化】のいずれかに変身する。
SPD ●嗚咽への『拳』
攻撃が命中した対象に【負の感情】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【トラウマ】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ ●嗚咽への『負』
【負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【涙】から、高命中力の【精神をこわす毒】を飛ばす。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 目的地は竜神が埋めた洞窟だ。それを確認した猟兵達はいよいよ山の奥へと足を踏み入れる。
 進めば進むほどクロユリの数は増え、漂う気配は不気味なものへと変質していく。
 そしてその最中――現れたのは嘆き悲しむ影達だった。

 影は嗚咽を零しつつ、今を生きる者達を待ち構える。
 彼らは『おおぐちさま』に喰われた若者だろうか。それとも全く関係のないただの化け物だろうか。
 一つ分かるのは、彼らが自分達の仲間を求めていることだ。
 このまま彼らを放っておけば、山から下りて里を襲うかもしれない。それを防ぐためにもここで影達を討伐しきらなければ。

 影が潜んでいるのは山の深い所だが、少し手前に引き返せば開けた地点も存在している。
 入り組んだ地形を利用するか。それとも開けた場所まで敵を誘導するか。
 どう行動するかはそれぞれの裁量に任されている。
 とにかく今は、目の前の怪物を倒さなければ。
エーデル・グリムワール
敵集団戦力を確認…ここで確実に討ち果たさねば人里に被害が出ます、ここは【地形を利用】した計略で包囲殲滅と参りましょう。

私は魔剣にて召喚した第3軍団歩兵隊と共に巧みな【団体行動】にて敵集団と戦いつつ後退、開けた場所へ誘い込みます。

開けた場所まで完全に引き込んだら伏せていた弓兵による【制圧射撃】を命じ、更に敵側面及び敵後方から騎士隊を突撃させ【集団戦術】指揮にて包囲を完成させ、そのまま私が引き込んだ分の敵集団を1匹逃さず殲滅。
これら偽装後退から包囲、挟撃に至る一連の計略をUC【深謀遠慮】の力も用いて【命中重視】で確実に完遂します。

※アドリブなど歓迎します



 目の前に広がる黒い影達。彼らの姿を視認し、エーデル・グリムワールは瞳に鋭い光を宿した。
「敵集団戦力を確認……ここで確実に討ち果たさねば人里に被害が出ます」
 敵の出現地点から人々の生活圏まではまだ距離も離れている。
 けれどこの状態がいつまで続くだろうか。子供達がこの近辺まで足を踏み入れているというのも懸念材料だ。
 とにかくここで敵を倒しきらなければ。決意と共に魔剣ゾルダートを構え、エーデルは自らが指揮する第3軍団を展開していく。
「歩兵隊は私と共に! 残りの部隊も指揮に従って下さい!」
 第3軍団は統率の取れた行動で陣形を組み上げていき、少しずつ森を散らばっていく。
 最初はぼんやりとエーデル達を見ていた影も敵意を感じ取ったのか、少しずつ不気味に揺らめき始めた。
「敵対行動を確認。戦闘開始です!」
 影達の注意を引くように、エーデルと歩兵隊は前へと走る。
 それぞれが携えた武器を持ち、まずは一閃。影達を切り払えばきちんとした手応えを掴む事が出来た。原理は分からないけれど、彼らに物理攻撃は有効なようだ。
 切り裂かれた影はあっという間に消え去ったものの、敵の数はまだ多い。
 残った影達は少しずつ身体を巨大化させていき、子供のように両手をばたつかせて対抗しているようだ。
 彼らの大雑把な攻撃はエーデル達の戦力を削れてはいない。しかし、狭い場所での戦いで暴れられるのもあまり喜ばしい状況ではない。
 ここは最初から決めていた作戦に従うのがいいだろう。エーデルは声を張り上げ、兵士達へと声をかけた。
「歩兵隊、一度撤退しましょう!」
 エーデルが剣で指し示したのは最初に見つけた開けた地点。そちらへ向けて、彼女達は一直線に駆け抜ける。
 影達も追いかけるように走り出すが――彼らは既に包囲されている事に気付いてはいなかった。

 影達の視界に開けた地点が目に入った瞬間、彼らの身体を鋭い光が射抜き始めた。
 事前に潜伏させていた弓兵部隊が弓を構え、敵の襲来を待ち受けていたのだ。
 怯んだ影達に追い打ちをかけるように、騎士隊も周囲を取り囲んでいく。影達は騎士達の巧みな陣形と突撃に対処しきれず、とにかく両手をばたつかせる事しか出来ていない。
 とどめとばかりに駆け込むのはエーデル率いる歩兵隊。第3軍団は全方向から敵を包囲したのだ。
「この一手で戦局を変えます」
 事前に調査していた地形、対峙して即座に判断した敵の性質、そして自分達の戦力。
 それら全てを利用し生み出す見事な『深謀遠慮』は、戦況を見事にコントロールしきった。
「戦略こそが戦場を制すのです。全軍、攻撃開始!」
 エーデルの高らかな声に合わせ、第3軍団は一斉に武器を振るう。
 彼らの攻撃は一撃一撃が着実に影を削り、彼らの嘆きの声を消していく。
 これ以上この森から嘆きを生まないように、新たな悲しみを生まないように。
 魔軍師の戦略はそのための確かな一手になったのだった。
大成功 🔵🔵🔵

ティノ・ミラーリア
本命ではないけれど、良くないものが出てきているみたいだね……。
里には遠いけど遠からず害が出そうだし…進むためにも倒さないと。

僕はこのまま、山の中で先手を狙って攻撃していくよ。
「眷属」を先行させて『情報収集』し、発見した敵を『追跡』。
自身は山の『闇に紛れる』ようにして「狩猟銃」か「纏影」で『先制攻撃』。
「狩猟銃」は『呪殺弾』、「纏影」は『串刺し』による遠距離攻撃で、
命中したら【影の支配】を発動して敵を拘束し影の支配を奪う。
近くに他の敵がいる場合は自身か対象支配した影を「纏影」として操作、
もしくは「狩猟銃」で更に攻撃を当てて【影の支配】を発動していく。
拘束したら自身と対象の影からの追加攻撃を行う。



 周囲に漂う気配、がさがさと草木が揺れる音。明らかな異変を五感で認識しつつ、ティノ・ミラーリアは山の中を突き進んでいた。
「本命ではないけれど、良くないものが出てきているみたいだね……」
 自分達の後方には人里がある。影達がそちらまで下りてしまえば必ず被害が出るだろう。
 前方にも邪神へと通じる道があるはずだ。それを塞がれたままという訳にもいかない。
「僕らのためにも、みんなのためにも……ここで倒させてもらうよ」
 ティノは再び影の眷属達を呼び出して、彼らへ手短に指示を出す。
 眷属達は素早く草木の影に隠れ、周囲の索敵を始めだした。ティノも彼らと共に山を往く。
 相手は影の化け物だ。それならティノとの相性は良いだろう。何故なら――彼は影の支配者なのだから。

 影のコウモリとオオカミはすぐに敵の存在を捉え、ティノへと報告してくれた。
 彼らは猟兵の敵意を感じているものの、大きく動いたりはしていない。ただひたすら黒い涙を零し、敵を待ち構えているようだ。
「あの涙に触れるのは良くないね……。心を壊されるのは、きっといい気分がしないから……」
 それなら遠距離からの攻撃を仕掛けよう。
 なるべく音を立てないように、ティノは手早く狩猟銃を構える。
 中に籠めているのは呪殺弾だ。相手が嘆き悲しみ誰かを呪う存在ならば着実に傷を与える事が出来るだろう。
 そっと狙いをつけて、まずは一撃。
 放たれた弾丸は一体の影の胴を穿ち、その身を霧のように溶かしていく。
 仲間の異変に気付いた影達は周囲を見回すが、彼らは見事に闇に紛れたティノの姿を見つけられない。

「影なら……僕が支配できるはず……」
 今度は『纏影』を用いて別の影を捕らえるティノ。彼の赤と青の瞳は妖しく輝き、そこに宿る魔力が影の嘆きを掻き消していく。
「その影はもう……僕のもの」
 嘆き悲しむ暇すら与えない夜闇の支配は、しっかりと影の心を捕まえた。
 ティノがそっと耳打ちすれば、支配された影もまた彼の眷属へと姿を変える。
「……一人で悲しまなくていいよ。僕が連れて行くから」
 だから、他の皆も連れて行こう。
 ティノの刃と化した影は、他の仲間も更に取り込みどんどん大きくなっていく。
 残りの影も抵抗しようとしてきたが、彼らの不意打ちは眷属達が防いでくれた。
 心を壊す涙はコウモリの羽ばたきに打ち消され、オオカミが蹴った土が吸い取っていく。
 暴れる子には更に狩猟銃で動きを止めつつ、一人、また一人とティノが彼らを迎え入れた。
「一緒に外の世界を見に行こう……」
 だから、この山での嘆きはおしまいだ。
 ティノは新たな夜闇を伴いつつ、更に山の奥へと進んでいくのであった。
大成功 🔵🔵🔵

岩戸・御影
僕は山深いこの場所で戦闘を始めるよ
白兵戦は少し苦手なんだ

【WIZ】
わざわざ敵の攻撃を喰わらなくとも僕の中は負の感情――恨み嫉み、怨嗟で一杯だよ
敵の毒を[呪詛・毒・狂気耐性]で積極的に取込み[略奪]
[赫鬼面]、ちゃんと僕の力へ変換してよ

[第六感]で敵の動きを[見切り]回避しながら半径66m位の広めの[結界術]を張る
張り切ったところでUC発動、再度[呪詛を込めた結界術]を身の回りに張り、それを外側の結界術に向け四散させ[範囲攻撃]
逃げ場のない中、今度は僕の毒を味わって貰う番

彼らには悪いけどこの世は苦しいことだらけでしょ?
死して尚嘆く位なら、いっそのこと悪意を募らせて悪い奴になり切っちゃえばいいのに



 異様な気配が濃くなっても、山の本来の空気は失われていない。
 濃い緑の香りを受け止めつつ、岩戸・御影は影達と対峙していた。
「白兵戦は少し苦手なんだ。それに……キミ達からは僕好みの匂いがするね」
 御影から向けられた感情を理解して、影達はぽろぽろと涙を零す。
 そこから溢れるのは精神をこわす強烈な毒だ。危険な存在ではあるが――だからこそ、御影からすると好ましい。
「キミ達は負の感情を理解しているんだよね。うん、分かるよ。僕の中は負の感情――恨み嫉み、怨嗟でいっぱいだから」
 影達が零す毒を受け止めるべく、御影は赫鬼面の口を開いた。
 同時に身体を前へと滑らせ展開するのは結界術。半径はおおよそ66m、かなり広めの結界だ。
 入り組んだ山の中で結界を組み上げるのは骨が折れるが、それでも御影の表情には楽しげな笑みが浮かんでいる。
 何故なら赫鬼面が影達の涙を吸い込み、それを御影の力へと変えているからだ。
「毒は毒でも心から生まれる毒もあるんだね。これがキミ達の負の感情で、誰かを壊す毒。そういうのも悪くないと思うよ」
 御影の表情に浮かぶのは笑みなのに、それに呼応する影達は更に負の感情を溢れさせているようだ。
 そこにあるのは嘆きや悲しみだけではない。きっと、恐怖も混ざっている。

 結界を張り切った所で、御影はその中央へと立った。
 赫鬼面も十分に毒を奪い取っている。これなら満足出来る成果が出せるはずだ。
「毒はいつだって脅威だからね。今度は僕の番だ」
 結界の内側では影の嘆きと御影の纏う淀みが混ざっていく。どろどろとした呪いの毒は結界を覆うように形成されて、薄い膜を作り上げていた。
 その気配に怯えたのか、影達は更に涙を零すが――それはきっと逆効果だ。彼らの涙もどんどん結界へと吸い込まれていく。
「この世は苦しいことだらけでしょ? だから、僕からこれをキミ達に渡そう」
 御影の言葉と共に、結界が弾けた。
 同時に毒の膜も大きく弾け、その呪いが影達を喰らい尽くす。
 逃げることすら出来ない山の中、静かな呪いと悲しみが全てを覆い尽くしていくだろう。
 御影はあいも変わらずその中央に立っている。
 その表情は同じく笑みだが、先程までの楽しげな様子とはどこか違っていた。
 思い返すは影達の嘆き。毒を通して彼らから受け取った感情達。化け物に殺され、ただ悲しみに暮れるしかなかった彼らの思い。
「死して尚嘆く位なら、いっそのこと悪意を募らせて悪い奴になり切っちゃえばいいのに」
 少しだけ遠い目をして御影は呟く。
 その言葉は不思議と静かに山の中へと響き渡っていた。
成功 🔵🔵🔴

花房・英
クロユリは綺麗なのに、空気が不気味なの勿体ないな
あんたらがどんな存在だったかは、どうでもいい
過去は変えられないんだから
…けど、嘆くだけなんてつまんないだろ
誰かを傷つけてしまう前に、還してやるよ

地形を利用して戦う
木とかそこにあるものを盾にして攻撃を躱したり、姿を隠す
敵との距離は攻撃が届く範囲を保って
障害物で躱せない涙は、クロからシールドを展開して受ける

泣いたって何も変わんないよ

本命はこの奥なんだろ
ここであんま時間かけたくないな

無銘を影に向かって投擲しUC発動
一等綺麗な花、やるよ



 湿気を帯びた空気の流れがクロユリ達をゆらゆらと揺する。
 その光景を横目に眺め、花房・英は大きく息を吐いた。せめてあの花がもっと良い場所に咲いていたら、と。
 目の前の影達も見ていて心地の良い存在ではなかった。彼らが何者かは関係ない。過去は今更変わりやしない。
 けれど、現在と未来は変えられる。
「……嘆くだけなんてつまんないだろ」
 彼らが罪のない誰かを傷つけてしまうよりも早く、過去を終わらせよう。
 呟きと共に英は折りたたみ式のナイフを取り出した。

 幸いなことに周囲の地形は利用しやすい。
 影達の数は多くとも、彼らの動きは単調だ。
 泣いて暴れるなら木の陰に隠れてしまえばいい。駄々っ子のように振るわれる手は巨木に拒まれ大きな音を立てていた。
 深追いはしない方がいいだろう。手に届く範囲の敵を着実に。
 木の合間を縫って走りつつ、英は次々にナイフを影へと振るう。
 乙女椿が施された刀身はあっさりと影を切り裂き、彼らを骸の海へと還していく。
 けれどそこから生じる負の感情は更に影達を刺激しているようだ。彼らの頭から溢れる涙は地を覆い、英の進路を塞いでしまう。
「腕はどうにかなるけど……こっちは、無理だな」
 咄嗟にグローブから展開した盾で涙を塞ぎ、英は自らの心を守り抜く。
 あの涙に触れてしまえば自分も彼らと同じく、ただ嘆き悲しむ存在になってしまう。
 そんな風に足を止めるのは、やっと見えてきた世界の色が再び色褪せてしまうのは嫌だから。

「泣いたって何も変わんないよ」
 溢れる黒い涙を受け止めつつ、紫の瞳で影を映す。
 次に見るのは山の奥。ここから先に進まなければ邪神は倒せず、影は嘆き続けるだけだ。
 ここにあるのは留まり続ける過去と感情。そこから生まれる淀んだ流れがただクロユリ達を揺らし続けている。
 止まった時を進めるのは猟兵の仕事だ。一歩でも先に進むため、英はナイフを強く握りしめる。
 負の感情とは違う、英の中に生じた大きな感情。それに呼応したのだろうか、影達も力を振り絞り英の元へと殺到してきた。
 ここが決め時、最大のチャンスだ。英はゆっくりと呼吸を整え、再び確りと影達を見つける。
「あんま時間もかけたくないからな。だから……これは俺からあんた達へと贈らせてもらう」
 別れの挨拶は乙女椿の花から。
 影達の元へナイフを投げ入れ、英はユーベルコードを発動していく。
「お別れだ。一等綺麗な花、やるよ」
 ナイフは変幻自在の花弁へと姿を変え、小さな嵐を巻き起こした。
 その流れは影達を飲み込んで、彼らを往くべきところへと連れて行く。
 同時に生じた風が再びクロユリ達を揺らしたが、それは今までの緩やかな流れと違って――どこか大きく手を振っているかのようだった。
成功 🔵🔵🔴

天瀬・紅紀
謡さん(f23149)と

謡さんが荒事に向いてないのは察してたけど
全部、とは行くか解らないけどさ…
気持ち整える様に大きく息吐いてから刀を抜く

謡さんの解釈に同意
いずれにせよ、悲しい連中だって事は変わらない
斬って燃やして、還すしか出来ないんだしね、僕らには
そう割り切る様にUC発動

相手の負の感情に此方の心も揺り動かされてしまう感受性の強さを自覚してるけど
立ち止まっちゃ何も出来ないって俺は知ってるから
だから、泣いて座り込んだままのお前らみたいにはならないよ

何者かも解らない、答えられない君達への餞
炎は全てを燃やし、刃は全ての思いを断ち切り、浄化するもの
悲しい事も、辛い事も
全部纏めて過去に持っていけ


白紙・謡
紅紀様(f24482)と

わたくし、直接的な戦いは不得手ですの
逃げ隠れしやすい方が
か弱き身には安心感がございます
いざとなれば紅紀様が全て倒して下さるでしょう(にこにこ)

クロユリの花言葉は「呪い」「復讐」と申しますわね
おおぐちさまの伝承から考えれば
封印されたおおぐちさまの怒りでしょうか
それとも
生贄にされた若者達の怨念なのでしょうか

皆の為にと望んで犠牲になる者などそうはおりませんし
逆も然り、他人を犠牲に差し出せば、罪の意識に心が澱む

さあ
顔も窺えぬ影達に問う
「あなた方は何者なのでしょう?」
〝其の答えを識るまで〟
何故
何故
何故
負の感情をむしろ追い求めるように喰らう精神攻撃を
破魔の力持つ白い万年筆で描き出す



 冷えるような、けれど纏わりつくような山の空気が肌に触れる。
 耳には影達の啜り泣く声が届き、目の前にはただただ影が広がっていく。
 それらの厭な感覚を身体で感じつつ、天瀬・紅紀と白紙・謡は黒い影達と対峙していた。
「やっぱりオブリビオンが潜んでいたみたいだね。謡さん、大丈夫?」
「ええ、わたくしは大丈夫ですが……」
 紅紀は険しい顔で打刀『青江貞次』の柄に手をかけているが、傍らの謡はどこかゆるく笑みを浮かべている。彼女の手にはしっかりと白色椿の万年筆が握られているが、どうにも戦いに挑む様子とは異なっているように見えた。
「わたくし、直接的な戦いは不得手ですの」
「ん? 確かにそれは察してたけど……」
「か弱き身なので逃げ隠れしやすいようにしていただけると安心感がございます」
「……それで?」
 全く笑みを崩さず言葉を紡ぐ謡に対し、紅紀の眉はどんどん下がる。
 いや、自分達がこのように立ち回る事になるのも織り込み済みだ。剣道有段者の紅紀と文学少女の謡ならばどちらが前衛に立つべきかも明白だろう。
 けれど、いやここは。敢えて最後まで聞くのが華というものか。
「ですので、わたくしはここで筆を執らせていただきます。ほら、いざとなれば紅紀様が全て倒して下さるでしょう」
「ああ、やっぱり……。全部、とは行くか解らないけどさ……」
 紅紀は大きく息を吐くと、静かに青江貞次を鞘から引き抜く。今の吐息はある種の感情表現ではあるのだが、それ以上に気持ちを整える役目が大きかった。
 何故なら既に眼前に嘆きは広がっている。これを終わらせ、さらなる悲劇を止めるために自分達はやって来たのだ。

「それにしても……ここはクロユリがたくさん咲いていらっしゃいますわ」
 万年筆の調子を整えつつ、謡も小さく吐息を零す。
 本来なら高い山で誇らしく咲く花は、呪いの地でただ影と共に揺れていた。
 『呪い』『復讐』の花言葉を持つクロユリだからだろうか。これが示しているものの意味をつい考え込んでしまう。
「この花は封じられたおおぐちさまの怒りでしょうか。それとも……」
「生贄にされた若者達の怨念かもしれない。どうやら僕たち、同じことを考えていたみたいだね」
 紅紀の言葉に、先程とは違う柔らかな笑みを浮かべる謡。同じ文章を綴るもの、解釈が一致するのは嬉しいものだ。
 それならこの花に、この地に、そしてこの嘆きに。二人が向かい合う気持ちもきっと同じ。
「皆の為にと望んで犠牲になる者などそうはおりませんし、逆も然り。他人を犠牲に差し出せば、罪の意識に心が澱む」
「いずれにせよ、悲しい連中だって事は変わらない。だから僕たちに出来ることはたった一つだ」
 紅紀の刀からは猛る真っ赤な炎が奔り、謡の万年筆からは雪のように白いインクが溢れる。
 二人が生み出す埒外の力は暗く淀む嘆きの地を眩く照らしているようだ。
「……斬って燃やして、還すしか出来ないんだしね」
「ですから、せめて問いましょう。ここにあったものの答えを」
 二人の文豪が確りと武器を構えると同時に、影達は一際大きな泣き声をあげた。

 影達の攻撃は単調な大暴れだけ。ひたすら腕を振るい、目の前の邪魔者を振り払おうとしてきている。
 しかし、単調なはずの攻撃は敵数の多さと足場の悪さによってとても厄介なものへと変わっていた。
 紅紀は炎を纏いつつ彼らと対峙し、なんとか刀で拳を受け止め続けているが――攻撃の余波は間違いなく彼の心を蝕んでいた。
「ああ、こうなってしまうのも分かって、いたけど……!」
 文章を綴る者だからこそ、己の心は他者の心を映しやすい。影達の拳から伝わる嘆きが紅紀の内を揺るがし、様々な思いが脳裏を過る。
 けれど、自分はそこで止まらない。それはきっと後方に控える謡も同じだろう。
「紅紀様、大丈夫ですか? もうすぐこちらの準備も整いますから……!」
「うん、大丈夫。ここで立ち止まっていられないから……それじゃ何も出来ないからね」
 他者の負の心を感じたとして、それに負けてなるものか。
 その闇を覗き、そこから感じたものを綴り、そして記す。それが自分たちに出来る精一杯。だから影のように嘆いて終わる訳にはいかないのだ。

 嘆きに立ち向かうのが紅紀なら、その嘆きを見つめ返すのは謡の役目。
 彼女は白色椿の万年筆を手繰り続け、漆黒の瞳で闇を覗く。
「さて、それではあなた方に問いましょう」
 さらり、白のインクが宙に舞う。そこから描き出されるのは謡の深い情念だ。
「あなた方は何者なのでしょう?」
 封じられた怪物の感情か、それとも喰い殺された若者達の感情か、あるいは別の何かかもしれない。
 そんな彼らの『答えを識るまで』情念は綴られ続け、真白の獣が森を蹴った。
 獣の牙は影を貫き、彼らの心に強烈な感情を流し込んでいく。
 何故、何故、何故。
 問われ続ける影達は更に嘆き、その場でばたばたと暴れだしているようだ。
 この状態なら隙も大きい。紅紀は一瞬だけ謡と目を合わせ、そして青江貞次を強く握った。
「君達は……謡さんの問いに答えを返せないんだね」
 ならば彼らへほんの少しの餞を贈ろう。
 紅紀からは蠍座の名を冠する炎と刃を。謡からは人らしい問いかけと破魔の祈りを。
 悲しみを抱き続ける彼らが、その全てを断ち切り安らかに眠ることを願って。
「あなた方の答えは、未来で聞かせていただければと思いますわ」
「その時まで――全部纏めて過去に持っていけ」
 眩い紅蓮と純白の輝きが森を包み、影達をざぁっと飲み込んでいく。
 最後に残ったのは――その様子を見守っていた、二人の文豪だけだ。

 けれど戦いは終わらない。
 全ての元凶がこの奥に眠っているのだから。それを倒すまで、猟兵達は止まらない。
成功 🔵🔵🔵🔵🔴🔴


第3章 ボス戦 『牙で喰らうもの』

POW ●飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD ●貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ ●喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達は全ての影を倒し、『おおぐちさま』が封じられている洞窟まで辿り着いた。
 その前方には巨大な岩が安置されており、これが封印の要となっているようだ。

 岩をどかして封印を解けば、洞窟からは不気味な唸り声が鳴り響く。
 そして姿を現したのは――巨大で、悍ましい邪神が一柱。
 邪神は身体中の口を歪な笑みの形へと変え、数万年ぶりの獲物に歓喜しているようだ。

 けれどこの邪神は力の大部分を眠らせたまま。
 今の状態ならば猟兵達の手で倒す事も可能だ。
 これからの戦いに備えるため、そしてこの地の呪いを終わらせるため――この邪神を討ち倒さなければ。
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー

邪神見ーつけた
いかにもな感じで良いね
だが所詮はご当地邪神
スケールが小さいよ
もっと宇宙規模の厄災をだね
とりあえず邪神死すべし爆殺なり

登場即自爆
とにもかくにも速攻で自爆することが最優先
自爆さえできれば台詞も活躍もいらぬ!

ただ自爆するためだけに現れる存在

技能:捨て身の一撃を用いてのメッサツモードによる高威力な広範囲無差別自爆

射程範囲内に敵が1体でもいれば速攻で自爆する
自爆することが最重要
なので敵がいなくても自爆するよ
近づかない動かない一歩も動かず即自爆
大事なのはスピード
そう、スピードなのですぞー

捨て身の一撃なので自爆は1回のみ
1回限りの大爆発
自爆後は爆発四散して戦闘不能さ



 おおぐちさまは訳も分からず周囲を見回していた。
 気がつくと身体中に焼け焦げたような痕が生まれ、新たに生じさせた口は爛れて落ちている。
 そして目の前には――ボロボロになった虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)の残骸が落ちていた。
 一体何が起きたのか。果たして彼が何をしたのか。
 何者かが自分の封印を解いたことは分かっている。その後に美味しそうな獲物達がこちらを見ていたことも分かっている。
 だから口を開き、彼らに襲いかかろうとして、それから。
 うっすらと記憶を辿っていけば――自分が何をされたかも思い出せた。

 時は少し遡る。
 洞窟から姿を晒したおおぐちさまが最初に耳にしたのは不思議な声だ。
「邪神見ーつけた。いかにもな感じで良いね」
 木々の合間を縫って黒い影が飛んでくる。その正体は文字のようなブラックタール、うつろぎだった。
「だが所詮はご当地邪神、スケールが小さいよ」
 挑発のような言葉に思わず苛立ちの唸りをあげるおおぐちさまだが、うつろぎは全く意に介さない。
 何故ならうつろぎは邪神よりもよっぽど様々なものを見てきている。そして――殺してきている。
 宇宙規模の災厄だろうと、もっと訳の分からない存在だろうと、うつろぎからすれば慣れたもの。
 説得力のある言葉はおおぐちさまの足を止め、注意を引くのに十分だった。

 一瞬、うつろぎがおおぐちさまの前に姿を晒し――そして凄まじいエネルギーが彼の中で渦巻き始める。
「ということで邪神死すべし爆殺なり」
 次の瞬間、世界が爆ぜた。
 おおぐちさまが更に怒りの声を零すより早く。周囲に咲くクロユリがうつろぎの動きに合わせて揺れるより早く。
 ありとあらゆるものを置き去りにして、爆ぜたのはうつろぎだった。
 うつろぎ式・切宮殺戮術『一爆鏖殺』。範囲内に敵がいれば構わず放たれる捨て身の一撃。その輝きは邪神を燃やし、焦がし、殺す。
 おおぐちさまの大きな身体もその衝撃には耐えきれず、うつろぎに向けようと生やした口は何も喰わずにそのまま爛れ落ちた。
 目覚めの一撃にしては些か強烈だが、これこそがうつろぎの目的。
 相手が何者だろうと、過去に何をしていたとしても、これから何をしようとしていても、相手が邪神ならそれでいい。
 展開される鏖殺領域は見事に邪神を殺すための一手となり、その血肉を滅ぼしていくのだ。
 爆発した後のことは考えていないが……あとで誰かが回収してくれるだろう。もしくは時間が経てば動けるようになるかもしれない。
 とにかく目的は果たした。その充足感がうつろぎの中にはしっかりと残っていった、かもしれない。
成功 🔵🔵🔴

エーデル・グリムワール
これが封印されし邪神…やはり並の相手ではありませんね。
ここまでの相手だと長く戦えば兵達に被害も出る…ならば勝負は一瞬!

【総攻撃命令】による一撃と追加の計略で勝負です。
召喚した第3軍団の弓兵による【一斉射撃】を敢行、同時に歩兵隊と騎士隊が突撃しての一撃離脱を私の【団体行動】【集団戦闘】指揮にて実行し【総攻撃命令】を完遂。
更に【学習力】で把握した洞窟の構造を【地形利用】すべく魔法兵達に邪神の足元と天井を同時に魔法攻撃させ【足場習熟】知識で割り出した【地形破壊】に適した場所を【破壊工作】し天井の局地崩落と足場崩しにより邪神の機動力を完全に奪います。



 焼け焦げた肉を削ぎ落としつつも、おおぐちさまから邪悪な気配は失われていない。
 むしろ身体の損傷を補わんと獲物を求め、より獰猛に牙を剥いているようだ。
 その様子を見遣り、エーデル・グリムワールは眉を顰める。
「やはり並の相手ではありませんね……流石は封印されし邪神という訳ですか」
 相手が強敵である以上、戦いを長引かせるのは得策とは言えない。
 共に戦う兵士や仲間のためにも一瞬で勝負を決める必要があるだろう。
「来たれ我が精鋭、パルミラ連合第3軍団よ! 戦略を以てこの邪神を討ち破りましょう!」
 魔剣ゾルダートを掲げ、エーデルは叫ぶ。
 彼女の勇ましい声に呼応するように、山と洞窟の周囲には次々と第3軍団の精鋭達が姿を現していた。

 相手に余計な肉を食わせないためにも攻撃のタイミングはしっかり見極めなければならない。
 エーデルが最初に動かしたのは弓兵隊だ。
「総員、一斉射撃です!」
 弓兵隊は研ぎ澄まされた動作で弓を構え、一気に矢の嵐を生み出していく。
 その合間を潜り抜けるようにエーデルと歩兵隊、そして騎士隊が山を駆ける。
 嵐が邪神を穿つ間に一行は邪神の元へとたどり着き、各々が全力で武器を振るった。
 弓兵による的確な射撃、歩兵隊の統率のとれた武器の一閃、そして騎士隊の勇ましい突撃。その全てが見事に邪神の身体を削り、悍ましい力を少しずつ奪っていく。
 けれど深追いするのは危険だ。エーデルはすぐさま声を張り上げ、次の指揮を仲間へと伝えた。
「攻撃が終わればすぐに離脱を! 次の行動に移ります!」
 魔軍師の声に合わせ、第3軍団は一斉に後方へと離脱していく。彼らが目指したのは邪神が封じられていた洞窟だ。
 その様子が見えていたのか、邪神が微かに口元を歪めた。
 相手からすれば洞窟はずっと潜んでいた場所だ。そんな所に大量の餌が雪崩込むのはきっと喜ばしい事なのだろう。
 けれどそれこそがエーデルの狙い。
 戦いに置いて必要なのは圧倒的な力でも、相手を追い詰める嗜虐心でもない。
 真に必要なものを――相手に知らしめてやる時だ。

 邪神が洞窟へ足を踏み入れた瞬間、彼の身体に凄まじい衝撃が襲いかかった。
 同時に天井と足元が崩れ、邪神の身体は瓦礫の中に埋もれていく。
 その瞬間に邪神が見つめたのは――パルミラ連合第3軍団の魔法兵達だ。
 エーデル達が洞窟の外で戦っている間に、魔法兵達は洞窟の中を解析していた。
 天井と足元が崩れやすく、かつ自分達が生き埋めにならない地点。そこに魔術を施し邪神を倒す罠としたのだ。
 一気に機動力を奪われ、身体中に傷をつけられた邪神は恨めしそうな呻きをあげる。
 エーデルは第3軍団と共に洞窟を脱出しつつ、生き埋めになった邪神を睨んだ。そこにあったのは強い意志と確信だった。
「戦いにおいて必要なのは戦略です。あなたのように力任せに暴れまわり、他者を傷つける者にこそ――冷静に場を見極め、指揮し、戦う力が必要になるのです」
 魔軍師の女は間違いなく成果を上げ、邪神に大きな損傷を与えていく。
 それを成したのは彼女の的確な指揮と優秀な軍団の力。その証明が確かに古の邪神へと刻まれたのだ。
大成功 🔵🔵🔵

花房・英
……確かに『おおぐちさま』だな
伝承って長い時間かけてなんだかんだ脚色されたりするもんかと思ってたけど
とか、妙に感心してしまいつつ

まぁいいや
俺がやることは変わんないから

UC真似られんの厄介だな
とりあえずは無銘で応戦
ちょっとどころかナイフじゃリーチが心許ないけど
距離詰めたら隠し持ってた試験管キットの中身を敵相手にぶち撒ける
毒仕込んであるから多少は怯むだろ
そっちに気を取らせたら、無銘で斬り付けUC発動

食ってもいいけどーーそれも毒だから

花の刻印が重要なUCだから
後は精々攻撃食らわないように防御に徹する
後は蝶が片付けてくれるまでの根比べだな



 身体からどろりとした液体を流しつつも、おおぐちさまは牙を剥く。
 獲物を求めて歯を鳴らす邪神へ向けて、花房・英はどこか感心したような視線を投げかけていた。
「……確かに『おおぐちさま』だな」
 名は体を表すというが、目の前の邪神はまさにそれだ。
 伝承にあったその名が一切の脚色なく伝わってきたのだと実感すれば、不思議な感慨も湧き上がる。
 それでもやるべき事は変わらない。
「……まぁいいや。とにかくあいつを倒せばいいんだよな」
 気をつけるべきはやはりあの大きな口だ。単純な噛みつきや巨体を活かした攻撃も怖いけれど、それだけが脅威とも思えない。
 あの口は埒外の力すら喰らうという。それをいかに防ぎ、立ち回るか。
 自らの経験や手持ちの道具から作戦を考えて――英が最初に手にとったのは銘のない乙女椿のナイフだった。

 あの化け物相手に刃物一本というのは心許ないが、やるしかない。
 英は森の中を駆けていき、一気におおぐちさまとの距離を詰める。
 邪神も迫りくる青年を認識したのか、口元を不気味に歪めるが――あのくらい分かりやすい相手の方がやりやすい。
「そうやってニヤニヤ笑って誰かを追い詰めてきたんだろ。それはもうお終いだ」
 英の言葉に応えるように、おおぐちさまが牙を剥く。
 凄まじい勢いの突進と噛みつきをひらりと躱しつつ、英は上着の中へと手を突っ込んだ。
「人間は食わせない。代わりにこれでもやるよ」
 上着から取り出したのはカラフルな薬品が詰められた試験管だ。
 それをすぐさま投げつければ、鮮やかな薬液がおおぐちさまの身体を蝕んでいく。
 予想外の攻撃に邪神が思わず一歩下がるのを視認して、英は力強く地面を蹴った。

 おおぐちさまのどす黒い身体へと振るわれたのは無銘の刃による一閃だった。
 傷はそれほど深くない。けれど傷がついたのならそれで充分。
「印をやろう、お前を殺す標を」
 ふわり、山の奥に花が開いた。おおぐちさまに刻まれた傷は花の刻印へと変わり、周囲をぼんやりと照らし出す。刻印からは甘い蜜の香りが漂っていた。
 更にそこへと数匹の蝶が舞い降りてきた。それだけなら山の中ではありふれた光景だが――それだけではない。
 見れば蝶は英の手元から飛び上がっている。彼が握ったナイフや試験管が蝶へと変わり、刻印の花へと群がっているのだ。
 傍から見れば美しい光景かもしれない。けれどそうでないことは、英も邪神も分かっている。
「その蝶は喰わないのか? 別に喰ってもいいんだけど――それも毒だから」
 英の言葉通り、蝶を構成する毒がおおぐちさまを蝕んでいるのだ。花に蝶が集えば集うほど、そこに毒も集まっていく。
 それはまるで死者の魂が邪神の元へと集い、相手を死へと誘っているようで。
 目の前の光景から少しだけ目を逸し、英は周囲に咲くクロユリを見遣った。
「……これで良かったか?」
 ゆらり、クロユリが頭を揺らす。その様子はお辞儀のようで、誰かの思いが英に応えているようだった。
 その様子を眺めつつ、英は少しだけ安堵の息を吐いた。
大成功 🔵🔵🔵

岩戸・御影
【鬼々】2名
それじゃ悪い神様を懲らしめよう

【SPD】
接近戦は相馬君に任せ、僕は爆破で生まれた瓦礫や洞窟前の木々の陰に[目立たない]よう身を潜める
[哭廻]を操り、死角から[呪詛毒を使った継続ダメージ]を与えていくよ

矛先が僕に向いたら[第六感]で感知、別の障害物に身を隠しつつ[衆合の針種]で元いた場所に針山を生み出し牽制
相馬君は靴底に何か仕込んでいるみたいだし踏んでも平気だろうけど、一応気を付けてって言っとくかな

邪神がおおぐちを開けたら[結界術]を邪神に展開
怯んだところへUC発動、巨大な鬼の頭に変形した僕の胴体で邪神に喰いつき動きを止める

呪詛も毒も生命力も回収できるかな?
おなかいっぱいになりそう


鬼桐・相馬
【鬼々】
御影、お前に懲らしめるという正義感なんてあったのか
ないだろ

【POW】
洞窟の中は邪神が地形を把握している分こちらが不利
加えて生物の肉を極力食べさせたくない
以上の事から洞窟の入口付近をメインの戦闘場所に

邪神の口や舌、手足の数を鑑みて
異形相手の[戦闘知識]や自前の[野生の勘、視力]で動きを分析、攻撃を[見切り怪力で武器受け]する
他の部位より防御力が劣るであろう口の中を[冥府の槍]で攻撃
接近戦を意識し、邪神が食べようとする肉を[串刺し]槍から立ち昇る炎で炭化させよう

笑顔で針山をあちこちに生み出す御影にひとこと
やりすぎるなよ

御影に攻撃が向いたら背後からUC発動、一番大きな口を狙い[部位破壊]する



 木々の合間を縫って、二人の男が姿を見せた。
 片方は先程までも戦いに励んでいた赤い鬼、岩戸・御影。
 その後ろから真剣な表情で姿を現したのは御影の悪友、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)だ。
 邪神との戦いに備え、二人の鬼は洞窟へと歩を進める。
「相馬君、来てくれて助かったよ。それじゃあ一緒に悪い神様を懲らしめよう」
 にこやかにこれからの目標を告げる御影に対し、相馬は大きく息を吐く。その表情には微かな呆れも滲んでいた。
「御影、お前に『懲らしめる』という正義感なんてあったのか」
「あると思う? 相馬君の想像に任せるよ」
「……ないだろ」
 相馬からの言葉を受けて、御影はにんまりと笑みを深める。その様子に相馬も再び息を吐くが、表情はすぐに真剣なものへと戻っていた。
「何にせよやるべき事は変わらない。作戦は把握しているな?」
「勿論。ああ、どんな邪神なのか楽しみだね」
 表情も心持ちも違えども、二人の鬼が目指す所は同じ。
 この山の奥に潜む邪神を倒す。そのために二人はやって来たのだ。

 目的地の洞窟まで辿り着けば、邪神が新たな来訪者へと口元を向ける。
 大きな口をいくつも持ち、獰猛な牙を剥き出しにするその姿はまさに『おおぐちさま』という風貌だろう。
「洞窟の中は不利だ。ここで決着をつける」
「了解。それじゃあ接近戦は任せたよ」
 最初に駆け出したのは相馬だ。手にはしっかりと冥府の槍が握られ、その穂先には青黒の炎が灯る。
 邪神もすぐさま口を開け、新たな獲物に狙いを定めたようだ。その迫力は凄まじいものだが、だからこそそこに勝機がある。
「……お前が喰らうのは、この炎だ」
 相馬は臆さずに前へと踏み込み、一気に冥府の槍を突き出した。
 槍は勢いよく大きな口へと突っ込まれ、そこから吹き上がる炎は邪神の身体を内側から焦がしていく。
 その損傷は凄まじいものだが、相手の獲物への執念も凄まじいのだろう。邪神はなんとか大きな口を閉じ、相馬の腕を噛みちぎろうとしてきたのだ。
「ああ、君の気持ちも分かるけど相馬君の腕を食べられるのは困るね。だから――これをあげよう」
 援護に入ったのは木の影に身を潜めていた御影だ。
 神器『哭廻』を器用に手繰り、相馬の腕に噛み付いた口を切りつけたのなら溢れるのは呪詛の毒。
 内側からの火傷と外側からの毒、その双方が邪神を苛めば口の力もついつい弱まる。その隙を利用して、相馬は一気に槍と腕を引き抜いた。
 相手の牙が少しだけ腕に食い込んでしまったものの、この程度の損傷ならば地獄の炎で補えるはずだ。

「相馬君、大丈夫?」
「ああ、助かった。ここまで貪欲とはな」
 軽く会話を交わし、鬼達は体勢を整える。その一方で邪神も忌々しく歯を鳴らし、今度は御影へと狙いを定めている。
 巨体や損傷を苦にしていない様子で、邪神が大きく足を踏み出す。けれど御影の表情に焦りの色は出ていなかった。
「今度は僕? いいよ、こっちにおいで」
 懐から不思議な種をばら撒きつつ、御影は邪神へ笑顔を向ける。
 次の瞬間、邪神は強く地面を踏んだが――そこから生じた無数の針が一時的に相手の身体を縫い止めた。
 御影が撒いていたのは『衆合の針種』。衆合地獄のような針地獄を生み出す植物の種だ。
「あ、相馬君は大丈夫だと思うけど一応気をつけてね。危ないから」
「ああ、分かっている……それにしても、楽しそうだな。やりすぎるなよ」
 敵に距離を詰められているというのに、御影の様子は楽しげで。その様子を見遣り、相馬は再び息を吐く。
 けれどお陰でチャンスは生まれた。敵は完全にこちらのペースに乗せられている。ここからは一気に攻め込む時だ。

 針地獄をなんとか踏み越えつつ、邪神は少しずつ御影へと迫る。
 けれどここまでで時間は充分稼いだはずだ。御影は静かに息を吐き、自らの周囲に結界を展開していく。
 次の瞬間、鈍く輝く赤黒の光が邪神を阻んだ。結界はすぐに破られてしまうだろう。けれど一瞬でも相手が怯んだのならこちらのものだ。
「意趣返しって訳でもないけれど……ちょっとだけ、齧らせてよ」
 少しだけ後退した邪神の元へ、御影が一気に駆け出した。彼の身体は黒い毒の瘴気に覆われて、胴は不気味な形へと変形している。
 そこに宿るのは顔の見えない双角の鬼。鬼は大きく牙を剥き、おおぐちさまの胴を噛みちぎる。
 邪神の身体に宿る呪詛は凄まじいものだ。先程まで含ませていた毒も相まって、ただ咀嚼するなら危険なものだ。
 けれど淀みに親しい御影からすれば、ただの甘美な肉でしかない。
「一口でもおなかいっぱいになりそう……。でも僕ばっかり食べてちゃいけないね」
 御影の言葉を受け、邪神は後方から迫る気配に気づいたが――時既に遅し。既に青鬼は邪神へと狙いを定めている。
「お前の伝承はここで終わりだ、退いてもらう!」
 冥府の槍に全力の悪意と紺青炎を纏わせ、相馬はその身を前へと突き出した。
 矢のように駆けるその一閃は見事に邪神の大口を貫き、爆ぜさせ、切り落としていく。
「やっぱり相馬君は頼もしいね。助かったよ」
「御影こそ随分楽しそうだったじゃないか。……あまりやりすぎるのは危険だと思うがな」
 最後に軽口を交わし合えるのも二人の間に奇妙な縁があるからだろうか。
 そんな二人の鬼は見事に邪神へと深い傷を刻んでいったのだった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

白紙・謡
紅紀様(f24482)と

うふふ
紅紀様も作家でございますから

作家の脳内に棲む想像の怪物の方が
大抵のリアルより悍しいものでありましょう
現実に被害を出さぬ分、紙の上は平和ですけれども

あらあら、困りました
それでは邪神よりも紅紀様の本性の方に
俄然興味が湧いてしまいます

とは言え愛でているだけという訳にも参りませんから

愛用の紅椿の万年筆で
さらさらと虚空に書き出す文は
おおぐちさまの伝承

《昔々、山の中に『おおぐちさま』という恐ろしい怪物が住んでいました――》

おいで、おいで
飼い猫を手招くような気軽さで『招』くのは
おおぐちさまそのもの

気が済むまで喰いあえば宜しい
邪神の物語に相応しい、シュールな結末ではありませんか


天瀬・紅紀
謡さん(f23149)と

予想はしてたけど、本当に大きな口持ってるし
しかし…マトモな感覚の人なら見ただけで狂気にやられるな、これは
ああ、残念ながら僕は違うようだ

さて、謡先生…ちょっとマジになるんで口悪くなったらゴメン
ネコ被ってちゃ倒せる気しないし

炎の槍を生み出しながら、眠りより覚めし邪神に問おう
万年の眠りの内に、お前は何を見た?

その口は喰らう為の口、喰らうだけの口と見た
俺達の言葉を理解し応える口には到底思えない

返らぬ答えに魔獣は襲いかかり、牙で爪で攻撃しかけ
それに合わせて炎槍で攻撃
噛み付きは魔獣が代わりに受け、食われても己の影突いて再召喚

そんな結末に持っていく、か
やはり謡センセの作風は読めないや



 すえたような匂いと共におおぐちさまは身体を振るう。
 損傷した傷を治すため、そして永き眠りによる飢えを満たすため、獰猛な口は獲物を探し続けているようだ。
 その様子を見て天瀬・紅紀は眉を顰める。
「名前の通りの姿だし、予想はしてたけど……」
 目の前の邪神は余りにも悍ましい。何も知らない人々がその姿を目にすれば心に深い棘が突き刺さってしまうだろう。
 けれど紅紀と、彼の隣に立つ白紙・謡は猟兵であり文豪。この程度で心が折れたりはしない。
「謡先生、平気?」
「うふふ、紅紀様もわたくしも作家ですから。作家の脳内に棲む想像の怪物の方が、大抵は悍ましいものでありましょう」
 尤も想像上の怪物は現実に被害を出さないけれども、二人が生み出す存在ならば話は別だ。
 そのためにも心の内を曝け出す必要があるだろう。紅紀はちらりと謡へ視線を向け、軽く頭を下げていた。
「ところで……この戦いは流石にマジになるしかない。口悪くなったらゴメン、ネコ被ってちゃ倒せる気しないし」
「あらあら、困りました。それでは邪神よりも紅紀様の本性の方に俄然興味が湧いてしまいますわ」
「……感想はあとで好きなだけ聞くよ。あんまり聞きたくないけれども」
「分かりましたわ。わたくしも愛でているだけという訳にも参りませんから……」
 紅紀は炎の槍を、謡は紅椿の万年筆を手に取り邪神へと向き直る。
 此度描くは悍ましき怪物のお話。伝承を更に昇華させ、現代に紡ぐ物語へと変えるのだ。
「紅紀様、行きましょう」
「ああ。行こう、謡先生」
 二人は共に、筆を執る。

 戦いの気配か獲物の気配か。邪神も猟兵達を認識し、身体を更に悍ましく変化させていく。
 幾つもの口が混ざり溶け合い、形成されるのは一際大きな顎だ。
 あれに噛まれてはひとたまりもないだろう。その存在もグロテクスで直視するのも一苦労だ。
 けれど猟兵達はそこから目を逸らさず、互いに紡ぐべき言葉を述べていく。
「眠りより覚めし邪神、お前に問おう」
 炎の槍を握りしめ、紅紀は猛々しく言葉を発する。投げるのは真実を見定めるため、そして己の内側を発露するための問いかけだ。
「万年の眠りの内に、お前は何を見た?」
 邪神は返事を返さない。ただ顎をガチガチと鳴らし、ひたすら目の前の獲物に食らいつこうとしているようだ。
 いや、むしろあれが邪神の答えなのかもしれない。あの化け物に存在しているのは強烈な飢餓感くらいなのだろう。
 けれど紅紀は満足しない。その程度の、ただひたすら『喰らう』ことに特化したものに必要なものは見出だせない。
「それがお前の答えなら――俺も返事を返させてもらおう」
 鋭い表情のまま、紅紀は槍を地面へ突き刺す。その穂先が捉えているのは紅紀自身の影だ。
 炎は影の中へと溶けて、そこからのそりと姿を現したのは深紅の影たるマンティコア。
 赤い魔獣も口を開け、邪神へと向け牙を剥いているようだ。

「紅紀様が邪神そのものを映し出すのでしたら、わたくしは伝承の続きを綴りましょう」
 紅紀の後ろでは謡が静かに万年筆を手繰りだしていた。
 赤黒のインクが虚空に紡ぐは悍ましき邪神の伝承そのもの。
「昔々、山の中に『おおぐちさま』という恐ろしい怪物が住んでいました――」
 書き出しは王道に。そこから先は謡の言葉が伝承を浮かび上がらせていく。
 村の方で集めた情報、この山の風景、遺された嘆き、そして封印の先の化け物。
 それらを頭の中に落とし込み、更に文字へと移し替える。
 空中に描かれた文字はその光景全てを再現するように綴られていく。
「おいで、おいで」
 柔らかな呼び声と共に虚空の文字は混ざり、一つの大きな塊へと変わる。
 その塊は謡が描いた『おおぐちさま』そのもの。もしこれがあの邪神と同じ存在ならば、最初に狙うのは――。
「あなた様が食べたいのはより大きな獲物でしょう。さあ、気の済むまで喰いあえば宜しいのです」
 謡がにこりと笑みを浮かべれば、もう一体のおおぐちさまは勢いよく地を蹴り出す。
 目指すは一番大きな獲物、本物のおおぐちさまだ。

 改めて戦いの準備が整ったことを感じ取り、紅紀と魔獣もおおぐちさまへと向かっていく。
「マンティコア、一気に攻めるぞ。悲しい伝承はここで終わりだ」
 魔獣の牙が邪神の肉を抉り、そこから焦げ臭い匂いが周囲へ漂う。それで相手が怯んだのならすかさず紅紀は槍を振るう。
 二人が生み出す熱は古の邪神をどんどん燃やし、ぬらぬらとした黒の身体を別の黒色へと変えていく。
 残った生の肉に喰らいつくのはもう一体のおおぐちさまだ。
 邪神に負けず劣らず凶暴な牙は容易く肉を噛みちぎり、邪神から力を奪っていく。
 邪神も必死で顎を振り回し、魔獣やおおぐちさまを噛みちぎるが――魔獣は何度だって紅紀が呼び出すし、邪神同士は勝手に喰らいあっていればいい。
「化物同士で喰らい合う。邪神の物語に相応しい、シュールな結末ではありませんか」
「そんな結末に持っていく、か」
 やはり謡センセの作風は読めないや。激しい戦いの最中でも、互いの作品に言葉を述べたくなるのは作家の性か。
「そこに人が関わり、獰猛な炎の嵐が全てを吹き飛ばす。それもまた一つの結末、かな」
「ふふ、そちらも素敵ですわね。そして最後の言葉は決まっております」
 獣達の牙が邪神を削いで、残った部分は蠍の炎が全て燃やす。
 最後に残るのは灰と静かな山々だけだ。
「……こうして悍ましい邪神は倒され、山や村に平和が戻ったのでした」
「めでたしめでたし、だね」
 謡が締めの言葉を書き出せば、周囲のクロユリがぶわりと揺れる。
 きっとここに残った嘆き達もいつかは溶けて消えていくのだろう。
 この地に刻まれた悲劇を――猟兵達は終わらせたのだ。


 こうして封印された邪神は消え去った。
 この世界にいずれ訪れると言われている『大いなる戦い』においても、此度の戦いが何か有益なものを齎したに違いない。
 山の空気も次第に清浄なものへと変わっていき、周囲の環境も正しい姿を取り戻すだろう。
 その時にはクロユリ達も消えるだろうが――それはきっと、この地の呪縛から解放されるから。

 戦いの終わりを迎えた猟兵達を、自然が優しく迎え入れてくれた。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2020年09月24日
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴