迷宮災厄戦⑱-19〜オウガ・オリジンは悪夢と共に眠る~
●アリスラビリンス・夢の国のアサイラム
「おのれ……おのれ! なぜうまくいかない!」
すべてのオウガを統率し、アリスラビリンスの絶対捕食者であるオウガ・オリジンは忌々しい口調で吐き捨てる。猟書家達が作り上げた牢獄を破り、徐々に力を取り戻したにも関わらず、侵攻する猟兵達を止めることができない。
いや、認めることはしないが、確実にオウガ・オリジンが押されているのだ。絶対的なる力を元に現実改変ユーベルコードで様々な力を発揮しても、猟兵達はそれを破ってくる。そしてそのオウガ・オリジンにも、ついに限界が見えつつある。
「このわたしが、このオウガ・オリジンが追い詰められているだと! そんなことは、ない。わたしはこの世界のアリスを腹に収め、すべてを満たす者。だから……」
そんな時、オウガ・オリジンの手首が傷つき、ぱっくりと傷口が割れる。そこから飛び出てくるのはオウガ・オリジンの血であり、その体内で構成する様々な悪夢が形作った獣達である。
そしてオウガ・オリジンもそれは意図したものではなく、己の感情による現実改変ユーベルコードの暴走であった。
「あ、ああ! やめろ! わたしの中から出るな! わたしはオウガ・オリジンだぞ! 悪夢すら喰らう存在だ! そうだ、そうなったはずだ!」
そう言いつつも血の色をした悪夢達は溢れ続ける。やがて自身の力は周囲を全ての窓に鉄格子の嵌められた、暗く陰鬱な病院に変え、その国の光は閉ざされる。
噴出する悪夢の獣達を抑え込もうとしつつも、オウガ・オリジンは苦しみと痛みの中で、己の中で泣いている少女を見ていた。それはかつて、オウガ・オリジンとなった時に押し込めた存在だったのかもしれない。
「やめろ……やめて……もう、来ないで……」
弱々しい呟きと共にオウガ・オリジンは形成されたアサイラムの病室の一室のベッドに横たわる。己の中の悪夢の獣達を解き放ち続け、彼女は悪夢に苦しみながら夢現になるのだった。
●グリモアベース・ブリーフィングルーム
「どうやらかなり追い詰めておる証拠のようじゃのー」
暗く閉ざされた病室の一室のオウガ・オリジンを電脳ウインドウで映しながらグリモア猟兵メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は一つため息をつく。今も生み出されて続けている、鮮血の色をした狼や兎といった獣達は、まるでオウガ・オリジンの悪夢を象徴するように、彼女を取り囲んでいる。
「今回はオウガ・オリジンの手首から噴き出して出現した鮮血の如き色の悪夢獣を殺しつくすことにあるのー」
場所は全ての窓に鉄格子の嵌められた、暗く陰鬱な病院。まさしく閉鎖病棟、アサイラムといったところだが、そんな奥の病室の一室でオウガ・オリジンはベットの上で悪夢に苦しんでいる。
本人の戦闘能力は皆無ではあるが、その傷ついた手首から噴出する悪夢獣という鮮血の如き獣達が襲い掛かってくる。それはオウガ・オリジンを構成する悪夢そのものであり、彼女の生命力でもある。つまり苦しむ悪夢を取り払うことは、オウガ・オリジンの消滅にあたる。
なお、悪夢獣はオウガ・オリジンの血で構成されているも同然なので、倒せばぶちまけるように鮮血を浴びることとなる。そういうのに耐性がない人は精神的にきついが、それに耐えて悪夢獣を一掃しなければならない。
「悪夢をすべて取り払ったところで、待つのはオウガ・オリジン本体の消滅じゃがのー。悪夢によって形成されているとは何とも言えん存在じゃのー」
そう言いながらメイスンは転移術式を発動し、猟兵達を決戦のアサイラムに送り出す。かつてアリスだった者は救えずとも、悪夢から救うことはできる。血塗れの中で、猟兵達の救済の戦いが始まる。
ライラ.hack
悪夢と共に来りて、悪夢と共に去る少女。
どうも皆様こんにちわ、ライラ.hackです。
このたびは「はじまりのアリス」にて「はじまりのオウガ」、アリスラビリンス世界のオブリビオン・フォーミュラにして絶大な力を持つオウガ・オリジンとの決戦です。
難易度は普通より高めなのでご注意ください。
激戦の影響か、『オウガ・オリジン』の中に眠っていた「無意識の悪夢」が、現実改変ユーベルコードで具現化してしまいました。猟兵達が降り立った不思議の国は、全ての窓に鉄格子の嵌められた、暗く陰鬱な病院。オウガ・オリジンは自分から噴出する悪夢に苦しんでおり、まともに戦えませんが、その手首から噴出する鮮血の如き色の「悪夢獣」が猟兵に襲いかかってきます。悪夢獣を殺し尽くせば、オウガ・オリジンは消滅します。
以下、特殊ルールとなります。
プレイングボーナス……鮮血にまみれながら、悪夢獣と戦う。
以上です。オウガ・オリジンとの戦いも佳境。オウガ・オリジンとしてではなく、元アリスとして悪夢を取り払ってあげましょう。
それでは皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『『オウガ・オリジン』と悪夢のアサイラム』
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POW : ナイトメア・パレード
【巨大な馬型悪夢獣の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【一角獣型悪夢獣】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : 悪夢の群狼
【狼型悪夢獣の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 忠実なる兎は血を求む
【オウガ・オリジンに敵意】を向けた対象に、【鋭い前歯と刃の耳を持つ兎型悪夢獣】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鳳凰院・ひりょ
WIZ
連携・アドリブ歓迎
この閉鎖病棟、オウガ・オリジンとなる前の彼女は過ごしていたのだろうか
彼女を解放してあげたい
俺はまだ新米の域を出ないけれど、それでも出来る事があるはずだから
襲い来る悪夢獣に遠距離から光陣の呪札の乱れ撃ちでダメージを与えた後、退魔刀での接近戦へ
周囲に味方がいる場合は連携
自分はどちらかというと遠距離がメインの為、接近戦はやや苦手
味方と共に接近戦を挑む状況の場合は、敵の攻撃から味方を庇い、その間の敵の硬直を狙い味方に攻撃してもらう
自分及び味方が消耗してきたら黄昏の翼発動
生命力吸収で回復しつつ上昇した力で畳みかける
敵の血を浴びる事になろうとも彼女を解放する為に全力を尽くす
ユーノ・エスメラルダ
ユーノにできることは、血に濡れるのも構わず【祈る】こと
オブリビオンである以上は倒さなければなりませんが…それでも
せめて、この苦しみが遠ざかればと、この戦いが苦しみを短くする一助となればと、そう願わずにはいられないから
もし手が届くのなら、【手をつなぐ】ことによる寄り添いを、きっと孤独なままよりは、苦しみは軽くなるから
攻撃はUCの祈り
敵の反撃は、【オーラ防御】と【激痛耐性】で受けましょう
猟兵は、簡単には死にませんし…危険に身を晒す【覚悟】もあります
元より自分のことは後回しにしがちなので、今回も目の前のつらそうな存在が気になり自分の怪我はあとまわしになるでしょう
『聖痕』の癒やで自分の治療もできます
御魂・神治
この子、闇が深そうやな
望んでこうなったとは思えへん
背後にどむならん黒幕がおる気がするけどそれは後回し
今はこの悪夢を狩るのが先や
UC【病魔排撃『大国』】と【狂気耐性・オーラ防御】の二重結界で守り、耐える
服汚れるのと多少の傷は必要経費や、そっちの方が都合がええ
返り血も傷も全部UCで力に還元する
血の獣は『森羅』と『天地』の【破魔】の銃撃で攻撃
【破魔】の【結界術】による血だまりからの血の獣の形成速度の低下・弱体化も狙う
死角からの攻撃は『天将』の【情報収集】で予測し避ける
トドメは『出雲』の陽【属性攻撃】や
最期くらい、光になって成仏せい
ここはアサイラム。薄暗く重苦しい空気で満ちた閉鎖病棟。多くのアリス達がこのアリスラビリンスに送り込まれた場所でもある。
そしてその中の一室のベッドで、この世界の絶対支配者であるはずのオウガ・オリジンが座っている。その強大な力は今はなく、ただ手首の傷から悪夢を垂れ流すだけの存在となっている。
多くの絶望と悪夢を喰らい続けた結果なのか、その悪夢達はオウガ・オリジンの器から飛び出し、獣となりて襲い掛からんとしている。それは防衛なのか、はたまた悪夢に引きずり出したいという思いなのか。
「この閉鎖病棟、オウガ・オリジンとなる前の彼女は過ごしていたのだろうか」
そんな何気ない疑問を鳳凰院・ひりょ(人間の聖者・f27864)は憂いげな顔で呟く。自信は真っすぐ健やかに過ごすことができたが、孤児という生い立ちはいつ歪んでもおかしくはなかった。
だからこそオウガ・オリジンが歪んでしまったのは環境ではないかともひりょは思う。だからこそ彼は願う。新米の域を出ないけれど、それでも出来る事があるはずだから。
「彼女を解放してあげたい」
「そうさな。この子、闇が深そうやな。望んでこうなったとは思えへん」
ひりょの願いに同意するのは御魂・神治(除霊(物理)・f28925)。除霊を生業とする者としても、これほどの悪霊というか悪夢とは遭遇したこともない。一体どれほど怨念・憎悪・絶望をため込めばそうなるのだろうか。
神治はこのオウガ・オリジン誕生にはもっとやばい気配の背後がいるのではないかとも疑う。だがそれを気にしている場合でもない。今は思考を後回しにして悪夢獣に立ち向かわなければならない。
「今はこの悪夢を狩るのが先や」
そう言ったと同時に、オウガ・オリジンの手首から漏れていた黒い瘴気、いわゆる悪夢が具現化を始める。鋭い前歯と刃の耳を持つ兎型悪夢獣。オウガ・オリジンに敵意を向けた相手を食いちぎり、斬り裂く獰猛なる悪夢獣だ。
一方でひりょは襲い掛かってくる兎の悪夢獣に対して、遠距離から光陣の呪札の乱れ撃ちで牽制を仕掛けて勢いを止める。しかる後に、退魔刀『迅雷』による一閃で一気に切り伏せていく。
「下がっていて。血で穢れるよ」
「いいえ、ユーノにできることは、血に濡れるのも構わず祈ること」
悪夢獣の血に汚れることを引き受けようとするひりょに対して、ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)は二人の後ろに隠れるのではなく前に出る。そして祈る姿で能力「奇跡の祈り(キセキノイノリ)」を発動する。
その身体が光に包まれ、ひりょや神治にもその温かい光が心地よく感じる。その祈りは、オブリビオンである以上倒さらなければならない宿命なれど、苦しみを遠ざけようと、苦しみを短くする一助になればという、願いであった。
「もし手が届くのなら、手をつないで寄り添ってあげたいのです。きっと孤独なままよりは、苦しみは軽くなるから」
「ハハッ、おもろいヤツやな。それじゃ、わいも頑張ろうか」
ユーノが浄化の光で悪夢獣を血へと還し、ひりょが光陣の呪札と退魔刀で奮戦している。ならばと神治も能力「病魔排撃『大国』(ビョウマハイゲキ・オオクニ)」発動によるマイナス要因をプラス要因に変える結界と自身に精神防御も張ったオーラ防御を展開する。
「服汚れるのと多少の傷は必要経費や、そっちの方が都合がええ」
これで血による精神汚染に対する対策は完璧だ。神治は角材型の大きめのハンドガン「天地」「森羅」の二丁拳銃で悪夢獣の兎狩りを敢行する。
獣を撃ち抜くたびに飛び散ってくる血を結界によって吸い取っていき、己の力に変える神治。さらに集団になって襲い掛かってくる者達に対抗するように、足元から破魔結界を展開し、悪夢獣の形成速度の低下・弱体化も行う。
「神治さんの方は鉄壁だね。俺も頑張らないと」
そう言って退魔刀を振るうひりょ。だが元々が遠距離戦闘がメインの為に、接近戦が苦手なひりょだ。浄化の光を発し続けるユーノに代わり、こちらが悪夢獣の兎を引き受けている感じだ。
ユーノに向かおうとする兎の牙を身体を呈して庇い、斬り伏せていく。その様子を見たユーノが治癒の光を飛ばしてサポートする。
「ひりょさん。猟兵は、簡単には死にませんし……私は危険に身を晒す覚悟もあります。ご無理はなさらずに」
「ありがとう、ユーノさん。だけどこれも俺の性分だし」
ひりょはそう言うが、ユーノもまた元より自分のことは後回しにしがちな性質である。自分の代わりに怪我を負う存在がいたら、目の前のつらそうな存在が気になり、そちらを最優先にしてしまうだろう。
だからこそひりょは心配させないように、能力「黄昏の翼(タソガレノツバサ)」を発動する。黒白のオーラと共に翼が降臨し、その受けた傷を力に変えるように、ひりょは退魔刀と光陣の呪札を構える。
「翼よ、今こそ顕現せよ! 彼女を解放する為に全力を尽くす!」
そしてそのまま高速で飛翔し、悪夢獣の兎達を狩りつくしていく。倒した兎から生命力を吸収しつつ、傷を負うことで戦闘能力の向上も図る。さらにユーノの浄化の光によって、悪夢獣の形成も阻害していくという連携攻撃。
だがユーノの死角から悪夢獣の兎が飛翔してその喉笛を噛み切ろうとしてくる。そんな兎の眉間を神治の「天地」の陽弾が撃ち抜く。
「最期くらい、光になって成仏せい」
悪あがきを続ける兎達の動きはサポートAI的存在の人工式神「天将」によって把握済みである。そして近寄る大型の悪夢獣もまた、散弾銃型の旧式神器銃「出雲」の一撃で粉々に吹き飛ばしていく。
回復と浄化、攻撃がうまくかみ合った三人の連携攻撃によって血溜まりが増え続けていく。そしてその血は徐々に悪夢を霧散させていき、やがてただの血として収まっていく。
悪夢の獣は見事に消え去っていったのだ。ひりょが、神治が、ユーノが願い続けた救済の思いが届いたかのように、苦しみが和らいでいく。オウガ・オリジンの中の少女は一歩、解放への道を歩んだのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
泉・火華流
今更血で汚れるっていうのが何だっていうのよ…
…と言って参戦
基本的にレガリアス・エアシューズで戦場を疾走しながら戦闘【ダッシュ】
基本は『ハイスチーム・ミニガンとFBC』で戦闘【制圧射撃・乱れ撃ち・継戦能力】
近接戦闘では『ナイトメア&クロノス・シザーズ』(アリスラビリンスで拾った武器)に持ち替えて戦闘する
ナイトメア&クロノス・シザースの【封印を解く・リミッター解除】して【結界術・時間稼ぎ】で火華流を中心にシザーズの間合いに入った相手は時間の流れが緩やかになり、そこを攻撃して仕留めていく
指定UCは進行先に大量の相手が出てきたときに使用【一斉射撃・砲撃】
全射撃武器展開…目標補足…ファイヤー!!!!
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
対応武器:黒燭炎
本当に悪夢だの。他三人から、この戦場は一任されておるが。
敵の攻撃は戦闘知識と第六感で見切り、避けようか。
こちらは早業と二回攻撃を組み合わせた、なぎ払いが主な攻撃。できるだけ巻き込みたいの、
指定UCは、囲まれた時に使用。離脱しながらも、雷での攻撃は忘れぬ。
さて、一任されておる理由は簡単だの。
武士が…しかも前に立つ者が、血を厭うわけなかろうが!
わしは、それがことさら強い!ははは、だてに『侵す者』を名乗ってはおらぬ!
悪霊にも血濡れは似合うであろ?
悪夢は疾く終わらせようぞ。
悪夢獣の兎達が大勢が血となって飛び散っていく。アサイラムの一室が血に染まりながらも、ベッドの上のオウガ・オリジンは苦しみ抜いていた。
「やめろ……やめて……来るな……来ないで……」
まるでうわ言のように悪夢獣を拒絶するオウガ・オリジン。だがそれは猟兵達も一緒であった。自身の血の化身である悪夢獣はそれに呼応するように猟兵達に襲い掛かる。
その心理はいかなるものかは窺い知ることはできない。だがオウガ・オリジンを救うにしても倒すにしても、この血をまき散らす悪夢獣を倒さなければならないのははっきりしている。
「今更血で汚れるっていうのが何だっていうのよ…」
そう言って気丈な面持ちで参戦してきたのが泉・火華流(人間のガジェッティア・f11305)。戦闘である以上、血にまみれることはやむを得ないことではある。
その覚悟を持って火華流はオウガ・オリジンの前に立ち向かう。そして放たれた悪夢獣は巨大な馬型悪夢獣と、それをサポートするように現れた一角獣型悪夢獣だった。
「本当に悪夢だの。他三人から、この戦場は一任されておるが」
火華流と共に隣に立って顎を摩る馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)はそう呟く。複合型悪霊として現在は第三悪霊『侵す者』が顕現している。豪快古風にして武の天才。
その手には愛用の武器である黒いスピア「黒燭炎」が握られており、今回は他の戦友たる悪霊達にこの戦場を任されて昂っている。巨大馬型と一角獣型の悪夢獣が突進してきても平然としている。
「義透さん、しっかり避けてね!」
「わかっておるよ」
あの巨体の巨大馬型の突撃をまともに食らってはさすがの猟兵であっても危険極まりない。そう判断した火華流はレガリアス・エアシューズの大気ホイールの推進力を利用して戦場を疾走する。邪魔をする一角獣型悪夢獣の脇をすり抜け、手に持ったハイスチーム・ミニガンとビームキャノン「FBC」で粉砕していく。
その弾幕を前に一角獣型悪夢獣はは弾け飛んでいくが、その弾幕を耐えうる巨大馬型は火華流に襲い掛かってくる。それをアリスラビリンスで入手した二つの鋏が融合した「ナイトメア&クロノス・シザーズ」を持ち出して迎撃する。
「これの試運転にはちょうどいい相手かもね」
そして火華流を突進で蹂躙せんと迫る巨大馬型の悪夢獣に対し、彼女のナイトメア&クロノス・シザーズは真価を発揮する。その機構に宿る力は間合いに入った者達の時間の流れを緩やかにすることである。
いわゆる空間干渉に近い能力であるが、時間は短い。だがそれでも火華流にとっては十分な時間である。ゆっくりとなっている巨大馬型悪夢獣の首を掻き切り、仕留めていく。
「さて、一任されておる理由は簡単だの」
一角獣型悪夢獣の突進を見切って躱しながら、義透は黒燭炎を振るい、的確に首を落としていく。まさしく武の天才を呼ぶにふさわしい技量。
主に回避からの切り替えし攻撃、そしてなぎ払いによる範囲攻撃を中心にして一角獣達を血へと帰していく。血を巻き込みながら義透は裂帛を籠めた声で叫ぶ。
「武士が…しかも前に立つ者が、血を厭うわけなかろうが!」
武士として戦場を幾つも駆け回って来た者として、この程度の血など精神に左右するものでもない。むしろこの血の戦場こそ、己の本分を思い出すものとなる。
「わしは、それがことさら強い! ははは、だてに『侵す者』を名乗ってはおらぬ!」
振るう黒燭炎が軽く感じるくらいに力が漲ってくる。一角獣型の悪夢獣が四方八方迫っている危機的な状況に変わらずに笑みがこぼれる。
まさしく武士。戦いに生きる者としての本領を発揮する義透。だがそんな義透を止めようと、大量の一角獣型悪夢獣が取り囲み、巨大馬型悪夢獣が突進しようと試みる。
「悪霊にも血濡れは似合うであろ? 悪夢は疾く終わらせようぞ」
だがそれでも義透は慌てない。血で高揚しながらも、冷静に戦場を俯瞰し、状況が見えている。この包囲を抜け出す為に能力「それは雷のように(ウゴクコトライテイノゴトク)」を発動する。
己が身体が翼の生えた虎に変化し、一角獣型悪夢獣の包囲網の一部に突進し頭を吹き飛ばし、首を食い破る。そしてそのまま翼で飛翔し離脱しながらも、落雷を落とし敵の追撃を封じる。
「我らの怒りを理解したか? ほれ、今じゃぞ!」
「了解! 全射撃武器展開…目標補足…ファイヤー!」
そして動きの止まった一角獣型と巨大馬型の群れは一か所にとどまり、格好の的になる。義透が離脱したのを確認して火華流は能力「フルバースト・マキシマム」を解放する。
自身が持つ全武装の一斉発射がそのフィールドに突き刺さる。足の止まった悪夢獣達は容赦のない砲撃により、血をまき散らしながら粉砕されていく。
巨大馬型悪夢獣も穴だらけになりながらも立っているが、それを義透が最後に首を刎ね飛ばし、大量の血を浴びせて倒れ込む。これでこちらに向かってきた悪夢獣は最後となった。
火華流と義透が討伐した悪夢獣はかなりの数になり、二人も血塗れとなっている。それほどの数であったが、まだオウガ・オリジンは悪夢を手首から流している。
だが苦しみは和らいだ顔をしている。おそらく悪夢の量が少なくなっている証拠であろう。このままいけばオウガ・オリジンを苦しみから解放できるかもしれない。周囲にいる猟兵達は最後の気力を振り絞り、悪夢獣を一掃すべく動き出した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リジューム・レコーズ
貴女を消滅させればこの戦争も終わる
暗い悪夢を産み出す者だというなら…闇より深い澱みに消えろ…!
病棟内での戦闘ですか
完全武装状態では動き難そうですね
非武装状態で向かいましょう
閉鎖空間となれば接近戦に主眼を置くべきですね
デュアルムーンにエクステンションコネクターを接続
出力を強化し少ない手数で迅速に悪夢獣を処理します
群で来るなら纏めて一閃するまで
無策に向かってくる獣を斬り捨てる事など、造作もありませんよ
それにしても返り血が凄まじいですね…事前情報は得ていましたが…
かと言って臆する理由にはなりません
そもそも私は戦闘兵器ですから
強いて言うなら固着する前に洗浄しないと余計な作業が増える事が懸念ですね
シーザー・ゴールドマン
ふむ……自らのUCに蝕まれるか。
哀れではあるね。
先制対策POW
突進の進路を初動を第六感で見切り、分身(残像×存在感)を置いて回避。
本体は分身の少し横で突進の勢いを利用してカウンター気味にオーラセイバーで斬り裂きます。
返り血は全く気にせず。
屍山血河という奴だね。
『シドンの栄華』を発動。
『破壊の魔力』を帯び、威力の向上したオーラセイバーで手当たり次第に悪夢獣を葬っていきます。
せめて悪夢から解放されて骸の海に還りたまえ。
もはや悪夢獣の放出はオウガ・オリジンの制御下で行われるものではない。ただ暴走して周囲に溢れ出し、害悪をまき散らす悪意となり果てているのが現状であった。
創造主であるオウガ・オリジンを傷つけるものではもちろんないが、己の傷口から出てくる故に血と共に力を失っていき、その存在は徐々に気薄になっていく。
「はじまりのオウガ」の側面が色濃く出ていたオウガ・オリジンの中に、「はじまりのアリス」の残ったカケラが少しだけ表出する。だがもはやそれを戻すことは能わない。ただ葬るしかない存在、それこそがオウガ・オリジンなのだから。
「ふむ……自らのユーベルコードに蝕まれるか。哀れではあるね」
そんなオウガ・オリジンの様子を見るシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)に浮かぶ感情は憐憫であった。己の強大な力を制御できないことは哀れですらある。
その暴虐が力によって振るわれていて、弱い己が振り回されていたのであれば悲劇である。自身も絶大な力を持つ故に、その力の責任を果たせずにいるオウガ・オリジンに哀れみすら感じるシーザー。
「ですが、貴女を消滅させればこの戦争も終わる」
そう言い切るリジューム・レコーズ(RS02・f23631)。オブリビオン殲滅を目的に行動し、ウォーマシンにしては感情表現が豊かで起伏も激しい彼女は、オウガ・オリジンに対して敵意をむき出しにする。
このアリスラビリンスを守るため、そしてオウガの統率者たるオウガ・オリジンを討滅する為に。苦しむ姿であってもリジュームは情けなど一切かける気はない。
「暗い悪夢を産み出す者だというなら…闇より深い澱みに消えろ…!」
だがリジュームを止めるべく生み出される狼型悪夢獣の群れに突撃するリジューム。閉鎖病棟という室内戦闘故に、完全武装状態では動きにくいと判断した彼女は、現在は非武装状態である。
だがそれで非力というわけではない。あくまで接近戦に主眼を置いた戦い方をするために荷電粒子両剣「デュアルムーン」に能力「エクステンションコネクター」発動と同時に接続する。
「プラズマリアクター接続完了、エネルギー供給開始。迅速に悪夢獣を処理します」
振るわれる剣閃は鮮やかにして鋭い。出力を強化されたデュアルムーンは少ない手数で、多くを葬る兵器を化していた。血すら蒸発する臭いを発しながら、白の装甲のリジュームが赤く染まる。
悪夢獣の血など気にしないと言わんばかりに、狼型の群れを一気に薙ぎ払い一掃するリジューム。ただの獣の対して、こちらは理を持って適切な戦術を持って相手をするので、展開は一方な狩りとなる。
「無策に向かってくる獣を斬り捨てる事など、造作もありませんよ」
返り血はすさまじいことになっているが、リジュームは気にしない。人間であれば顔をしかめるが、彼女はウォーマシン。精神状態のコントロールはお手の物である。
事前情報としてインプットしていれば、戦闘兵器であるリジュームは臆さない。そして最後の狼型悪夢獣を斬り伏せて、オウガ・オリジンへの道を斬り開く。
「見事なものだね。あとは任せて貰おうか」
オウガ・オリジンの姿が見えたシーザーは好機と捉えて突撃する。だがそれを阻まんと残っていた一角獣型と巨大馬型悪夢獣が殺到する。
包囲するようにシーザーを捉え、そして巨大馬型が強烈な突進でシーザーを跳ね飛ばす。これほどの衝撃ならば身体がバラバラになって当然だが、シーザーの身体は肉片にならず虚空へと消えていく。
「やはり獣か。簡単に引っかかる」
それはシーザーがオドの魔力によって創造した自身の質量のある分身体であった。本物と見分けのつかない分身の傍にいたシーザーは、カウンターとばかりにオーラセイバーを最大に伸ばして振るう。
一角獣型を一気に掃討し、悪夢獣の血が散らばる。そしてその血の海の中を飛翔し、巨大馬型の頭にオーラセイバーを突き立てて、そのまま真っすぐ両断するシーザー。
「屍山血河という奴だね」
赤き公爵の名にふさわしく、血を、赤を積み重ねていく。かねてよりその身は返り血を浴びることなど気にせず、むしろ染め上げることに苦などない。
興が乗ったシーザーは能力「シドンの栄華(デウス・アニマ)」を発動させ、破壊の魔力を増幅させる。それをオーラセイバーに乗せることでさらに悪夢獣の殲滅スピードを上げていく。
「せめて悪夢から解放されて骸の海に還りたまえ」
それは彼なりの慈悲であり、葬送でもあった。一角獣型は止めることなくただの血へと還っていき、巨大馬型も突進することすら能わずにただの肉片へと化していく。
シーザーが一角型と巨大馬型の悪夢獣を葬り去ったと同時に、リジュームも狼型の群れを消し飛ばして、オウガ・オリジンの前に立つ。オーラセイバーとデュアルムーンの刃が、ベッドの上のオウガ・オリジンの前に突き立てられる。
「ああ……、悪夢が……終わる……わたし……ようやく……」
オウガ・オリジンはその暴虐性すら喪失したような声を絞り出す。その手の傷からは悪夢獣の放出は終わっていた。そしてその黒い表情から溶けるように流れ出す、一条の雫。
そしてシーザーとリジュームの刃を気にせずにベッドに横になるオウガ・オリジン。まるで子供のように寝息を立てると同時に、その身体は崩壊へと向かっていく。まさしく眠るのように逝く、といった感じであった。
「……最後は安らぎを得たというわけかな」
シーザー達が悪夢獣を掃討したことにより、中の「はじまりのアリス」が悪夢から解放された瞬間と判断したシーザー。だがそれは一時的なものに過ぎないだろう。彼女は「はじまりのオウガ」でもあるのだから。
だがそれでもオウガ・オリジンはついに滅びることになった。それはつまりオウガの悪夢から解放されたかもしれないとも思う。そしてリジュームは戦闘終了と共にデュアルムーンから血を払う。
「……固着する前に洗浄しないと余計な作業が増える懸念がありますね」
シーザーも忘れていたが、今の二人は血塗れである。リジュームの実利ある発言に、苦笑して応えるシーザー。ようやく勝利したという実感を得て、他の猟兵達と共にアサイラムからの帰還を果たす。
アリスラビリスをカタストロフへと導こうとしたオウガ・オリジンは猟兵達によって完全敗北を喫し、その強大なる暴力は消滅することとなった。これでアリスラビリンスにも平穏が訪れることであろう。
だが油断はできない。猟書家の何人かはオウガ・オリジンの力をうまく簒奪し、このアリスラビリンスや他世界に君臨を果たすのだから。これからも破滅を防ぐ為に戦いは続くことになる。
それでもオウガ・オリジンは倒れた。今はその事実をかみしめ、勝利を喜ぼう。そして明日から、また平和を守るために戦うのが猟兵なのだから。
大成功
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