迷宮災厄戦⑱-8〜美味しさは罪!
●孤独のオリジン
「お腹がすいた、ぞ……」
オウガ・オリジンは、空腹でした。
食材はたくさんあります。立派な厨房だってあります。
けれど、作ってくれる人が不足ちゅうです。猟兵との戦争にかりだされたせいです。
残った配下もいるにはいますが、オリジンを満足させる料理を作る事の出来るものはいません。
オリジンの味覚が特殊だからです。
「げはっ!」
料理を食べたオリジンが、吐血しました。
とても美味しそうな料理で、実際美味しいのですが、オリジンはご立腹です。
「わたしが食べたいのは、このように美味しくて、深みがあって、褒めちぎりたくなるようなものではない。もっと尖って、突き抜けて、ヤバいものだ。わかるか?」
わかりません。
わかるものがいるなら、オリジンは腹ペコではありません。
「お腹が、すいたー……!」
オウガ・オリジンの魂の叫びが、国じゅうに木霊しました。
●もふもふ大好きマタタビさん
タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)が案内を始めたのは、『大量の食材と厨房のある国』だった。
「この国は、オウガ・オリジンの食糧のアリスがいない時、部下の皆さんにアリスに負けないくらい美味しいものを作らせるために作られた国だよ」
オリジンの求めるものは、ちょっと個性的。『見た目は美しいけれど、有害な食事』が好みなのだ。
こともあろうに『安全で美味しい料理を食べるとダメージを受ける』という謎の生態の持ち主。それがオウガ・オリジン。
「っていっても、味覚自体は、料理に使われた材料や調味料の1つ1つまで見分けられるほど凄いんだよ。ただ、剣山とか毒とか、おかしなものが好きなだけで……」
つまり。オウガ・オリジンに『美味しい料理』を食べさせることでダメージを与えようと、そういう作戦である。
オリジンがこの国にいるという事は腹ペコ状態なので、料理を食べさせること自体はさほど難しくないだろう。
「オリジンは、見た目が美味しそうならなんでも口に入れちゃうから、まずは見た目が大事。ちゃんと味も美味しければ、なお最高だね!」
ぐっ、とタビタビは、ぷにぷにの親指を立てた。
オリジンはダメージ受けちゃうけど。
七尾マサムネ
腹が減っては戦が出来ない感じのオウガ・オリジン。
このシナリオは、戦争シナリオです。
1フラグメントで完結する、特殊なシナリオとなります。
●プレイングボーナス獲得条件
おいしい料理を作ってオウガ・オリジンに食べさせる。
オリジンは見た目が美味しそうなものなら、とりあえず食べます。
味もしっかり美味しいとダメージを与えられますが、不味い料理だと回復してしまうので注意が必要です。
なお今回のリプレイは、オープニング前半のように、童話調でお送りする予定です。
それでは、皆様の美味しい料理、期待しております。
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』と美食嫌い厨房』
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POW : ハングリー・バースト
【飢餓感と、自分を敬わない者達への怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : 女王は常に独り食す
非戦闘行為に没頭している間、自身の【肉体】が【虚無を映す漆黒の液体で覆われ】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 炎なくして食事なし
レベル×1個の【美食嫌い厨房にある、無数のかまどから】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
大門・有人
不採用含め全て歓迎だ。
飯に文句とは贅沢な奴だな!
俺は料理の腕に自信は…無いが、作れるはずさ!
エプロンを着て卵をとき、スクランブルエッグに茹でたブロッコリーやウインナーで盛り付け。腕のとかくこれは毒物にならんはず。
オリジンとの戦闘に入れば覚悟を持ってUC始動。厨房だからな、エプロンで血やモツが広がるのは防ぐ。
痛みをごまかし叫ぶぞ。
参上!ガンバレェエイ!
敵のUCには食べ物を取り上げる事で注意を引き妨害。
お望みのものを食らわせてやる、腹を突き抜く俺の拳を。
膝へローキックを放ち、体勢を崩して全力のガンバレイ・パンチをぶち込む。
人の望みを断ってきた貴様には、一切の望みを与えん。正義の怒りをその身に刻め。
「飯に文句とは贅沢な奴だな!」
厨房に勇ましく現れたのは、大門・有人(ヒーロー・ガンバレイにして怪人・トゲトゲドクロ男・f27748)です。
「なんだ、わたしに料理を献上しにきたのか?」
「そういう事だ。俺は料理の腕に自信は……無いが、作れるはずさ!」
オウガ・オリジンに断言した有人は、この場に相応しいコスチュームを身にまといます。
すなわち、エプロンです。
器具と材料を用意して、料理を始めます。しばしお待ちを。
そして……。
「そら、召し上がれ」
テーブルについて、そわそわと料理の出来上がりを待っていたオリジンの前に、有人が皿を置きます。
「これは……絵に描いたようなたまご料理だな」
スクランブルエッグです。茹でたブロッコリーやウインナーが添えられています。
オリジン的に、見た目は及第点のようです。
「どれどれ」
暗黒の顔に放り込みます。
「たまごの塩加減が絶妙だ……付け合わせのブロッコリーも適度な歯ごたえを失わず、それでいてすんなりと歯が入っていく……」
歯はどこ。
「パキっとしたウインナーどもは、自らが添え物という役割を理解し、たまごの引き立て役に徹している……これは」
美味い。
「ゲハァーッ!」
オリジンが吐血しました。
「何故こんな美味いものを出した!」
「俺が猟兵で、貴様がオブリビオンだからさ」
有人のいる厨房に、オリジンが殴りこんできました。
「いいさ、覚悟も料理のついでにできてる。──変、身ッ……!」
変身に伴う痛みを噛み殺し、有人……ヒーローが名乗りを上げます。
「参上! ガンバレェエイ!」
空腹と美味しいもののダブルパンチ。
既に追い詰められていたオリジンは、渋々スクランブルエッグを口にします。ヒーローのアタックを防御するためです。
が、ガンバレイが、それを取り上げました。
「あっ、皿を返せ!」
「代わりに、お望みのものを食らわせてやる」
まずは前菜。オリジンの膝に、ローキックが刺さります。
体勢を崩したところに、腹を突き抜ける、全力のガンバレイ・パンチが炸裂します。
「人の望みを断ってきた貴様には、一切の望みを与えん。正義の怒りをその身に刻め」
ガンバレイの赤い瞳が輝きました。
成功
🔵🔵🔴
パルピ・ペルポル
美味しい料理ねぇ。
今はプリンが食べたい気分だからプリンアラモード作りましょ。
まずはプリン作りね。
卵と牛乳と砂糖を混ぜて、プリン液は丁寧にこして、と。
カラメルソースを入れた器に泡を作らないようそっと流し込んで、すが入らないように蒸し焼きに。
蒸し上がって冷やしてる間にフルーツを飾り切りして、生クリームを泡立てて。
あとはガラスの器の中央にプリンを出して、プリン単体の味が楽しめるように、クリームはプリンの脇に搾り出して、あとはフルーツで綺麗に飾りつけたら完成っと。
うさぎりんごもちゃんと作ったわよ。
やっぱりこだわったところはしっかり味わって欲しいしね。
次に厨房に立ったのは、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)でした。
「さあ、召し上がれ」
テーブルで行儀よく待っていたオウガ・オリジンに供されたのは、パルピ謹製プリンアラモードです。
パルピの気分がプリンだったからです。
フルーツや生クリームで綺麗に飾り立てられたそれは。オリジンの食欲をなんともそそったようでした。
「一見豪奢な飾りがあり食べにくそうであるが、実のところ、プリンがすぐ楽しめるよう配されている……」
パルピのプリンに、オリジンが解説を加えます。
「見た目は、申し分ない。何より、飾り切りされたうさぎりんごがメルヘン心をくすぐってくれる。では1つ」
オリジンが、プリンを黒の口で吸いこみます。
「これは……」
パルピは、ふるふるとふるえるオリジンの、次の言葉を待ちます。
「なるほど、プリン」
オリジンが、しみじみと言いました。
「プリン液は、特別丁寧に濾したようだな。加えて、器に注ぐ際も、静かにそっと流し込み、泡が出来ないよう配慮されている。そして何より、『す』が入らぬよう上手く蒸し焼きされている……」
オリジンは、パルピの苦心を言い当てます。
「こだわりに気づいてもらって光栄ね」
「これはプリンではない。プリンの形をした王冠。……すなわち」
「すなわち?」
「美味ギニャーッ!!」
スプーンを放り出して、奇声とともに、オリジンが吐血しました。
床をのたうち回ります。まるで、強力なユーベルコードを叩き込まれた後のようです。
「なんという仕打ち。こんな美味いものを食べさせるとは血も涙もない。やはり猟兵は滅ぼさなければ」
「それだけ聞くと、わたし達ヤバいヤツみたいね」
余ったフルーツを食べながら、パルピは言いました。
「おのれ、だが私が苦しむ隙に、首を狙うなどという不届きな真似はさせぬ」
オリジンは、椅子を支えに立ち上がります。
食事に没頭する事で、絶対の防御を発揮しようとしましたが、
「食べないの? 食べていればわたしの攻撃受けないんでしょう? ダメージは受けるけど」
パルピに煽られても、オリジンの手は止まったままです。
「食べても地獄、食べずとも地獄。まさに正解のない二者択一……!」
やる気満々でシャドーボクシングするパルピに、オリジンは無駄にジタバタするしかないのでした。
大成功
🔵🔵🔵
卜一・アンリ
(持ってきた物の蓋を開け)
料理?猟兵生活してる間に忘れたわ。
(中の袋を開け)
でもね、異世界にいってる間に私は禁忌の味を知った!
これが最近の私のそうるふぅど!『カ ッ プ 麺』よ!
あら、至って真面目よ、お菓子ばかりの世界のオブリビオン・フォーミュラ。
生クリーム、チョコ、レアチーズ。
甘ぁいシュガーに飽き飽きしてるんじゃなくて?
(お湯を注いで待機)
ほら、鼻を近づけて。カップから漂うお醤油と香辛料、魚介エキスの独特の香り…食べたいわよね?
ハイ、お行儀よく待ちなさい!(相手が暴れそうだったら【指定UC】で鎮圧)
(で、数分後)
よし、お待ちどうさま。いざ、喰らいなさい!
(なおちゃっかり自分の分も作ってある)
「今度こそ食べられる料理を用意してくれるのであろうな」
新たに厨房に立った卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)を、オウガ・オリジンは不遜な態度で、恫喝しました。
ですがアンリは、持ってきた物の蓋を開けながら、しれっと答えます。
「料理? 猟兵生活してる間に忘れたわ」
「なんだ、それは」
オリジンは、中の小袋を開けるアンリを怪訝そうに見つめます。
「でもね、異世界にいってる間に私は禁忌の味を知った!」
「いや待て、それはまさか……!」
「あれ知ってるの? これが最近の私のそうるふぅど! 『カ ッ プ 麺』よ!」
「カ ッ プ 麺」
オリジンが真顔になりました。
暗黒に包まれ、アンリに表情はわかりませんが、きっと真顔なのでしょう。
「それは料理とは呼ばない。ふざけているのか」
「あら、私は至って真面目よ、お菓子ばかりの世界のオブリビオン・フォーミュラ。生クリーム、チョコ、レアチーズ。甘ぁいシュガーに飽き飽きしてるんじゃなくて?」
「一理ある」
アンリの主張に、オリジンは一度は巨大化しかけた体を元に戻しました。
でしょう、と得意げに言うと、アンリはさっそく調理を始めます。
お湯を注いで待機です。
「それだけか」
「ほら、鼻を近づけて。カップから漂うお醤油と香辛料、魚介エキスの独特の香り……食べたいわよね?」
アンリにつられて、オリジンが匂いを嗅ぎます。
「ンン! 確かにこのザ・ジャンクフードな気配に、わたしの腹の虫も小躍りしている……!」
思わずフタに手が伸びそうになるオリジンを、アンリが制しました。
「ハイ、お行儀よく待ちなさい!」
「生殺しではないか……!」
数分後。
「よし、お待ちどうさま。いざ、喰らいなさい!」
「いただきます!」
アンリのゴーサインが出た瞬間、オリジンが、割りばしをカップ麺につっこみました。
「ずるる……スープの計算され尽くしたスパイス感、いつどこで食べても確実なうまさを提供する安定感……これはまさに人類の英知、期待を裏切らぬ願望充足装置……ぶはっ!」
激痛の走ったオリジンの口?から、麺とナルトが飛び出しました。
「あらあら行儀が悪いことね」
ずるるる。
アンリは、自分の分のカップ麺をすすりながら、床でのたうつオリジンを眺めました。
成功
🔵🔵🔴
鈴木・志乃
ピザ焼こう。ピザ。
私が食いたいんだ。文句あっか。
アド連歓迎。
生地は今回はクリスピータイプ! 薄くてパリッて言うやつね。見た目もそうだけど、音って食欲そそるやん? そういう精神攻撃しかけたいなーと。
(生地をこねこねしている)
何ピザにするかって? マルゲリータだね! 王道isベスト!
手作りのトマトソースを塗って、モッツァレラチーズとバジルの葉をしっかり散らすよ。鮮やかな緑にしたいから、バジルはピザ焼いた後にも乗せるね。
オリジンの目の前で切り分けるよ。ほら……白いチーズが伸びてる。赤いソースが零れそう。それに今の裂く時の音聞いた? 最高だよね。
あー私が食いたい。
必要あれば全力魔法なぎ払い攻撃
「ピザ焼こう。ピザ」
鈴木・志乃(ブラック・f12101)は厨房に入るなり、宣言しました。
すると、テーブルで待つオウガ・オリジンが、即決の志乃に問います。
「なぜピザ」
「私が食いたいんだ。文句あっか」
「特に……」
「ならよし」
こともなげにオリジンを黙らせた志乃は、生地をこねこね。
今回はクリスピータイプにします。薄くてパリッて言うやつ。好き。
志乃は、こねた生地をてのひらでくるくると回し、円盤状に仕上げていきます。さすがのパフォーマンスでオリジンを焦らして、食欲を高める作戦です。多分。
そしてそれを厨房の石窯にイン。
「はい焼けた。出来上がり」
「おおっ」
完成したのは、まごうことなきマルゲリータでした。王道isベスト。
おっと、まだ仕上げが残っています。オリジンの目の前で、志乃は追いバジルしました。緑の鮮やかさが際立ちます。
そして志乃は、ピザを切り分けていきます。
ピザカッターが入った瞬間、ぱりっ、と軽快な音が響きます。それだけでピザへの期待感が高まります。
「ほら……白いチーズが伸びてる。赤いソースが零れそう」
「むむむ」
「それに裂く時の音聞いた? 最高だよね。あー私が食いたい」
「ぐぬぬ」
五感全てを刺激されて、オリジンの食欲はもう爆発寸前です。もはや精神攻撃の域です。
「で、ではいただくとしよう」
オリジンが、ピザを一切れ、口に運びます。
ヒュゴウ、と暗黒の顔に吸い込まれて行きます。
「ンン!」
声が思わずこぼれました。
「このトマトソース、絶品だ。量産品のような凡庸さや、変にスパイス感のトゲトゲしたところもない。そしてチーズの柔らかさも申し分ない。これこれ、これこそ焼きたてをその場で味わう、ピザの醍醐味」
「話が長い」
「つまり」
つまり。
「うーまーいーギニャアアア!!」
がふっ、と吐血してオリジンが、椅子ごと後ろに倒れました。
血ではなくピザソースでした。
「は、図ったな……」
「いや善意で食べさせないでしょ。猟兵だよ?」
そうだった……と飢餓感に惑わされたオリジンが、がくっ、と倒れました。
指の辺り、書かれた血文字ならぬピザソース文字には、こうありました。
「『びみ』……おそまつさまでした」
志乃が手を合わせました。
「まだ生きておるわ!」
成功
🔵🔵🔴
ルウィア・ノックス
なんか気の毒だな
世界を滅ぼす脅威なのはわかってんだが…
フルコースを作ってやる
最初のハムの盛り合わせにはシーフの扱う毒を入れ、奴好みに
次に美味いミネストローネ
次は骨もしっかり残ったアクアパッツァ
続いて毒入りほうれん草と人参のソテー
チーズ盛り合わせと続け
俺の全身全霊を込めた最高のティラミスでフィニッシュ
絶望の福音で自分の身に危険が及ばないかは気を付けておくが
他はオウガ・オリジンの食事光景を眺める
おい、もう食べないのか
次はお前好みの料理かもしれないぜ?
差し引きゼロダメージかもしれねえが、飢えには思うところ(幼少期町民全員飢えていた)あってな
じきに滅びる存在でも、一瞬でも、満たされてもらいたかったんだ
ルウィア・ノックス(止まない雨・f03190)は、テーブルに突っ伏したオウガ・オリジンを見て、同情の気持ちが湧いてきました。
「腹が……減った……」
「なんか気の毒だな。世界を滅ぼす脅威なのはわかってんだが……」
ルウィアはせめてもと、袖をまくりました。
「また……料理を作るのか……」
「ああ、フルコースを作ってやる」
一縷の望みに全てをかけて。オリジンは、ルウィアの調理風景を見守りました。
「さあ、召し上がれ」
オリジンがしゃきん、と姿勢を正しました。
ルウィアの用意した料理の数々に、食欲を刺激されたのです。
「ではハムの盛り合わせからか」
暗黒の顔に、盛り合わせが吸い込まれて行きます。その勢いはブラックホールのようです。
「……これこれ、これだ!」
オリジンが歓喜しました。
「ハムに忍ばせた即効性の毒の味わい! これこそわたしの求める刺激なのだ! さては貴様シーフだな?」
「ご名答。口に合ったようで何よりだ」
ルウィアが次に勧めたのは、ミネストローネです。
「これも期待できる……って普通に美味しいギャーッ!」
オリジンが仰け反りました。ダメージです。
「おい、もう食べないのか。次はお前好みの料理かもしれないぜ」
「く……次はアクアパッツァか。取り除かれる事なく残された魚の骨が、口の内側を刺激する! 素晴らしい!」
ノーダメージ。
ルウィアは、そんなオウガ・オリジンの食事光景を眺めます。
念のため未来予測して気を付けておきますが、オリジンは食事に没頭していて、危害を加えてくる様子はありません。
ルウィアのもてなしは続きます。
「ほうれん草と人参のソテーか。バターと毒が口の中でミスマッチして……最高だ!」
けれど続くチーズの盛り合わせは普通だったのでオリジンはダメージを受けました。
「これで最後だ」
「最後……今までの傾向からして、次はわたしの口に合うもののはず」
ぱくり。
ルウィアの全身全霊を込めた最高のティラミスでフィニッシュです。
「ぐふっ……騙したな……しかし多少なりとも満たされたのは事実……なぜ、わたしを害する料理だけを用意しなかった?」
「飢えには思うところあってな。一瞬でも、満たされてもらいたかったんだ」
ルウィアは言いました。
「たとえじきに滅びる存在でも」
成功
🔵🔵🔴
備傘・剱
…なぁ、ちょっと思ったんだが、このオリジン、料理ってもののレゾンデートルを完全にはき違えてないか?
てなわけで、調理開始、発動!
真心こめて、対オリジン用美食決戦料理を作るとするかな
…料理バトル漫画の事、もう馬鹿にできねぇ…
料理テーマだが…、最も得意とする料理、各世界で狩ってきたオブリビオンを使って作る料理、その名も、「オブリ飯」、だ!
この戦争中にも沢山のオブリビオンを狩り倒してきたからな
手にかけた命は、完全再利用が、最も美しく、また、自然に優しいってもんだ
あ、食べられなさそうなのと、食べちゃダメそうなのは省いてあるから、安心して
広めよう、地産地消、もったいない精神!
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
備傘・剱(絶路・f01759)は、思いました。
(「このオリジン、料理ってもののレゾンデートルを完全にはき違えてないか?」)
まあ美食の基準は人それぞれ、オウガそれぞれです。
ともあれ、調理開始、発動!
剱は(それなりの)真心をこめて料理を作ります。対オリジン用美食決戦料理を!
「……料理バトル漫画の事、もう馬鹿にできねぇ……」
剱の脳裏を、数々の迷シーン、迷台詞の数々がよぎります。
調理に取り掛かる剱を見て、オリジンが釘を刺します。
「半端な料理を出すようなら……わかっているだろうな?」
「期待してくれ。そして料理テーマは……最も得意とする料理、各世界で狩ってきたオブリビオンを使って作る料理、その名も、『オブリ飯』、だ!」
「『オブリ飯』」
オリジンの口調は、ちょっぴり弾んでいます。
「この戦争中にも沢山のオブリビオンを狩り倒してきたからな。手にかけた命は、完全再利用が、最も美しく、また、自然に優しいってもんだ」
「その発言は聞かなかったことにしてやろう。わたしの胃袋を満足させることが出来たらな」
オリジンの死刑宣告はスルーして、剱は次々食材を並べていきます。
「あ、食べられなさそうなのと、食べちゃダメそうなのは省いてあるから、安心して」
「いやそういうのこそ入れて欲しいのだが?」
むやみな筋肉とか人形とか石像とか猟書家とか。
そして、剱のフルコースが出来上がりました。
「まずはこの牛頭スープから……ううむ、素晴らしい出汁。しっかりと煮込んだ牛肉も、口の中でほろほろと崩れていく……美味い。ギャアーッ!」
オリジンの悲鳴が上がりました。
「つ、次は鬼面蟲の包み焼き……口の内側を傷つけそうな角や節くれだった部分は丁寧に取り除かれて、たんぱく質に満ちた肉部分の触感を堪能できる……美味い。ギャアーッ!」
オリジンの悲鳴が上がりました。
「つ、次は兎肉の……って、何故せっかくのオウガをこんな美味しいものばかりにする!」
「広めよう、地産地消、もったいない精神!」
「人の話を聞けぇーッ!」
剱に抗議していたオリジンの体が、消え始めました。
もう限界です。ダメージに耐えられなくなったのです。
自分の望むものが食べられない、そんな心の飢えに耐えられなくなったオリジンは、無に還るしかなかったのです。
「お粗末様でした、ってな」
からん。
持ち主を失い落下したフォークとナイフを、剱は拾い上げました。
大成功
🔵🔵🔵