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メルティ・ラビリンス ~伝説のカカオの木の下で~

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「もうすぐ……もうすぐ、あの噂の木に辿り着けるんだから……!」
 学生服に身を包んだ褐色肌の金髪女子が居たのは、とある迷宮の最奥付近だ。
 見れば、彼女の服には汚れが目立つ。ここまで来るのに相当な冒険があったのだろう。
 しかし、それ以上に彼女の服は溶けていた。それはもう見事な溶け具合だった。
 どんな溶け具合かと言えば、どの年齢層が見ても大丈夫なように溶け残った布地が色々としっかりとバッチリと隠している。なんてこった。
 ――それはともかく。
 ギャルっぽい彼女は明らかなピンチに陥っていた。
 彼女がここに来たのは今よりほんの少し前。
 食べさせた相手を自分に夢中にさせるカカオがなる木があると聞いて、
『いやいや、そんなのに頼るとかマジないわー。でもまあ? 少し見に行くくらいなら、良いかな?』
 とか言いつつ結構なガチ装備でやって来たものの、なかなか見つからず半ば諦めかけていたところ、ようやくそれらしき木が現れたのだ。
 しかし喜び勇んでその木に近づいたのが運の尽き。途中にあった水溜まりに足を踏み入れた瞬間、跳ねあがるはずの水がズルズルと自分の脚を駆けあがってきて……幾らか抵抗した後には、服が溶けたこの有様だった。
 気づけば、ピンク色をした液体状の魔物達が彼女を取り囲んでいる。
 それらから感情は読み取れないものの、じりじりとこちらに近づく様子から彼女を狙っているのは間違いない。
 加えて、先ほどから彼女の体は熱く火照り始めていた。恐らく、あの魔物に触れられた後からそうなったらしい。
 しかしその原因を考えるよりも早く、彼女の理性はさらに増す身体の熱によって徐々に溶かされていく。

 ――頬を赤く染め、玉のような汗をその褐色の肌に這わせつつ平常を保とうと耐えていた彼女だったが、身体の奥で膨れ上がる形容しがたい、しかし身を委ねてもみたいある種の情動に組み伏せられ、ついには力無くその場に崩れ落ちる。
 地に伏せたまま起き上がることも出来ず、蠱惑的な熱い吐息を漏らしながらも朦朧とした頭を何とか動かし、自身へにじり寄る魔物達を精一杯の強がりで睨み付けて彼女は言い放った。

「くっ……溶かせ!」
 いや受け入れてんじゃないよ。


「特定の日に想い人にチョコを渡す、そんな風習を聞いたことがあるかな?」
 スカル・ソロモン(目覚める本能・f04239)の問いかけにグリモアベースに集まった猟兵達は様々に反応を返す。
「実はアルダワ魔法学園の迷宮に、食べさせれば想い人を自分に夢中にさせるカカオがなる木があるという噂があってね」
 途端に前のめりになった数名を落ち着かせつつ、スカルは続ける。
 学園内でも噂になったその木を求めて迷宮に向かった女生徒達が幾人かいたようだが、それきり消息を絶ってしまったらしい。
「どうやらそのカカオの木が生息している周辺に魔物が住み着いていて、彼らが女生徒達を襲っているようなんだ」
 しかもその魔物達は、例のカカオに含まれる一種の媚薬成分を取り込んでしまっている。つまりその魔物達に襲われると、詳しくは伏せるが足腰立たないえらい事になってしまう。
「魔物はいわゆる液体状の生物で、足音を立てることはほぼ無い。気が付いたら近づかれていた、なんてことが無いようにね」
 それと、とさらにスカルは続ける。
「迷宮内にその魔物が出現するということは、彼らの巣もきっとあるはずだ。迷宮を突破した後は巣にいる魔物達の撃破を行ってもらうことになるだろう」
 また迷宮内には魔物の媚薬にやられた女生徒達がいる。迷宮突破が優先ではあるが、出来る限り彼女達の救出も行ってもらいたい。
「しかし、その区域に魔物が生息しているという情報は今までなかったんだが……。何者かが魔物達を連れてきた可能性が高いね。もしその“何者か”と遭遇することがあれば、十分に注意して事に当たって欲しい」
 ではよろしく頼むよ、と告げるとスカルはテレポートの準備に入るのだった。


力水
 初めましての方は初めまして。
 そうでない方は毎度ありがとうございます。
 力水です。

 バレンタインも近くなってきたということで、このような依頼を出してみました。
 チョコは作りませんが。
 今回はコメディ成分強めになると思います。

 物語の流れとしては、
 第1章:迷宮突破。
 第2章:魔物の巣で戦闘。
 第3章:???
 となります。

 またオープニングでは魔物は女子生徒を襲っていましたが、性別関係なく襲います。種族も年齢も特に関係ありません。
 タフな魔物だ。

 それでは、皆さまのご参加お待ちしております。
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第1章 冒険 『チョコって媚薬らしいってばっちゃが言った』

POW   :    媚薬入り魔物になんて負けない!根性と気合さえあれば乗り越えられると罠を気にせず突き進む

SPD   :    媚薬入り魔物なんて捕まらなきゃいい!一気に突っ切っていけば罠になんて引っかかるはずがないさ

WIZ   :    媚薬入り魔物の観察だ!パターンを読み切れば難なく抜けられると魔物の動きだけを注意深く見て行こう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

秦田・麻弓
餌食になってる学生さんたちがいないか探しながら、そこそこに警戒しながら突っ切るつもりで走ります

でも媚薬入りかぁ…ダンジョンとかお仕事とかじゃなければ悪くは…っとと、なんでもないですよ?

無事に抜け切れそうだったり、被害者の学生さんを見たりしたら、好奇心に負けるかもしれません
「ちょ、ちょっとだけなら、うん、大丈夫、です、よね?」
周りに他の猟兵さんがいないのを確認してから足を突っ込みます
他の人に見つかったら、襲われて捕まったていで演技しつつ
「私は大丈夫なので!」と、学生さんの救出や迷宮の踏破を促します

ほ、ほら、他の人も捕まったら良くないですし、囮です囮。楽しんでるように見える?まさかそんな。


ロート・カニーンヒェン
「一面焼け野原にしてやる!絶対、媚薬なんかに負けない!(キリッ)」フラグを立ててる気がするけど、フルバースト・マキシマムで魔物も罠も吹き飛ばしながら突き進むよ。シンプルイズベスト!え?罠にはまりそう?その時は・・・「くっ……溶かせ!」(アドリブ歓迎です)


雛菊・璃奈
…魔物の媚薬成分って元々カカオのものなんだよね…?
もし、目論見が成功してそのカカオでチョコ作ったら、それはそれで大変な事になるんじゃ…?

とりあえず.【オーラ防御】を展開しつつ迷宮へ…。
黒桜の呪力放出や【衝撃波】によるなぎ払いで敵や罠を退けつつ進むよ…。
水たまりに擬態してるみたいだけど、自発的に動き出すのかな…とか、水たまりの擬態に注意して観察したり、槍で突いたりしてると、上から染みだして来たのに気づかずに上からボタボタと降って来られて色々と大変なコトに…

「や…ちょっと…ま…身体、熱い…」

女生徒達がいたら、黒桜で吹き飛ばしつつ、狐九屠雛で凍てつかせて粉々に…。

※アドリブ、絡み歓迎



 秦田・麻弓(びびりびりびり・f00217)は消息を絶った女生徒達を探しつつ、迷宮突破を目指してひた走っていた。
 無論、周囲の警戒も怠ってはいない。
 だがふと、出現が予知されている魔物について想いを馳せてしまう。
 ――媚薬入りかぁ……ダンジョンとかお仕事とかじゃなければ悪くは……。
「っとと、なんでもないですよ? って、あれは……」
 麻弓が進んでいた道の脇、少し窪んだようになっている所から服の端のようなものが見えたのだ。
 固唾を呑んで、おそるおそる近づいた彼女が目にしたもの。
 それは、窪みに溜まった蛍光色の液体に浸かるようにして気を失っている女生徒の姿だった。
 無論、それがただの液体では無い事はわかっている。恐らく、複数の液体生物がこの窪みの中に集まっているのだろう。
 これが情報通りの効果を持っているのだとしたら、果たして彼女はこうなるまでどんな――。
 思わず、その光景に目を奪われていた麻弓だったが、ふと我に返ると慌てて女生徒の様子を確認する。
 ……どうやら命に別状はないようだ。安堵の息を漏らす麻弓。
 しかし彼女の中ではふつふつとある感情が湧き上がっていた。
 周囲を見回すと、誰もいない。
「ちょ、ちょっとだけなら、うん、大丈夫、です、よね?」
 都合よく、女生徒がいる窪みにはまだ人が一人入れそうな余裕があった。そっと、しかし大胆に麻弓は蛍光色の水面に足を差し入れる。
 直後。
 液体に足を掴まれ、持っていかれる。ぞぶり、と麻弓は一瞬で窪みに飲み込まれた。
「え――」
 気付けば、液体に胸元まで浸かっている。突然の事に麻弓はもがく。だが。
 ――深い……っ。
 うんとつま先を伸ばせば、僅かではあるが底に届く。しかしこの窪みにそれだけの深さがあったのは予想外だ。隣で気を失ったままの女生徒も、今の麻弓と同じ体勢でいたのだろう。
 だがそれよりも、
 ――からだ、が……。
 熱い。
 内側から溢れるように来る火照りと、自分が知る以上の情動が麻弓の理性を蕩かせていく。加えて、液体生物独特の動きが麻弓をさらに追いつめる。
 彼らは潜り込むのだ。衣服と衣服の隙間に。そして、衣服と身体の隙間にも。
「ひ、ぁ……」
 もはや頭以外の身体全体を包む液体生物が不規則に蠢くたびに、甘い声が漏れる。
 駄目だ。このままでは駄目だ。いや、駄目になってしまう。
 危険なのはわかっている。女生徒を助け出さないといけないのもわかっている。でも、でももう少しだけ――。

「ねえ」
 突然声を掛けられた麻弓は思わず飛び上がりそうになった。とはいえ今はまともに動けないが。
 声をかけてきたのは、麻弓と同じく迷宮の突破を目指している猟兵だった。
「大丈夫? 手を貸そうか?」
「いっ、いえいえ、私は大丈夫なので!」
 うっかり捕まってしまった体を装い、自力で何とか出来るので他の学生や迷宮の踏破に向かってほしい、と麻弓は告げてみる。
「ほ、ほら、他の人も捕まったら良くないですし、囮です囮」
「そういうものなの? でも――」
 やり取りの後、その猟兵はなんとか納得してくれたようで迷宮の奥へと去っていく。周りにはまた、自分たち以外誰もいなくなった。
 ふと、先程の猟兵が最後に言い残した言葉が思い返される。
 ――でも、なんだか楽しんでるように見えるけど。
「まさか。まさかそんな。……っ♪」

 結局、数時間後、麻弓と女生徒は共に気を失っているところに再び通りすがった、先ほど麻弓に声をかけた猟兵――ロート・カニーンヒェン(グリーディー・ファントム・f00141)に救出されたのだった。
 あられもない姿になっていた二人を安全な所まで運んだロートは、途中で出会った雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)と共に迷宮探索を再開していた。
 あちらこちらを駆け回ったおかげで、迷宮探索は順調に進んでいる。
 しかし迷宮の奥に進むにつれ、例の魔物と遭遇する確率も増えてきている。また被害にあった女生徒の姿もちらほらと見受けられ、二人は彼女達の救出も並行して行っていた。
「一面焼け野原にしてやる! 絶対、媚薬なんかに負けない!(キリッ)」
「それフラグ……」
 ロートのフルバースト・マキシマム、そして璃奈の呪槍・黒桜によるなぎ払いや衝撃波が二人ににじり寄る魔物達を一掃する。
 魔物自体もカカオの媚薬に侵されているせいか、本来よりも弱体化しているようだ。
 跳ねるように飛び掛かってきた魔物をオーラで防御しつつ、璃奈は懸念を言葉にする。
「……魔物の媚薬成分って元々カカオのものなんだよね……?
 もし、目論見が成功してそのカカオでチョコ作ったら、それはそれで大変な事になるんじゃ……?」
「璃奈ちゃん持って帰ってチョコ作ってみる?」
「え……いや、甘い物は好きだけど媚薬入りはちょっと……」
「まあそうだよね。あ、私はチョコなら甘いのよりかは少しビターなのがいいかなあ。あとはナッツが入ったのとか」
「……ん」
 不意に、璃奈がロートを制止した。二人の前方には水たまりがある。
 予知で伝えられた出来事を警戒した璃奈が水たまりに目を凝らす。次いで、槍で水たまりを突いた。
 静かに、水面に波紋が広がっていく。
「うん……何も、なさそ――」
 言葉は途中で遮られた。べたり、と璃奈の肩に突如塗られた蛍光色。
 ――上!?
 魔物の襲撃方向に気づいた彼女達が見上げたそこには、二人に向かって次々と落ちてくる魔物達の姿があった。

 ――地面が目の前にある。ロートと璃奈の二人は、うつ伏せに倒れていた。いや、倒されていたと言うのが正しいだろう。
 彼女達の背中には今、液状の魔物達がのしかかっている。
 数が少なければ大したことはないのかもしれないが、上から降ってきた魔物の数は二人の身動きを封じるほどには居たようだ。
 傍から見れば、その光景はトリモチに捕まった獲物のようでもある。
「罠にはまってしまったみたいだね……。くっ……溶かせ!」
「……しゃれになってない……」
 魔物達は衣服だけを溶かす能力を持っている。何故身体には作用しないのか謎ではあるが、きっとカカオの媚薬成分のせいだろう。なんもかんも媚薬が悪い。
 そして二人の身体が少しずつ熱くなってきているのも、やはり魔物達が取り込んだ媚薬のせいだった。
「や……ちょっと……ま……身体、熱い……」
 璃奈はなんとか抜け出そうと身をよじらせつつも、自身の身体の変化に戸惑いを隠せない。
 魔物が触れていた衣服も、時を経るごとに次々と溶けていく。もはや身体の前面と地面に挟まれた、魔物が触れていない布地だけが辛うじて残るのみで、衣服と呼べるものをもう二人は纏っていない。
 それに布地が減ったということは、露出した肌に直接魔物が触れる面積が増えたということに他ならない。
 媚薬の蜜が、さらに身体へと染み込んでいく。
「っ……、んぅう……」
 ロートが耐えるように唇をきゅっと結ぶ。すでに璃奈と言葉を交わす余裕は失われつつあった。もし仮に今、安易に唇を開こうものなら……どんな声が漏れ出すことか。
 さらに恐ろしいのは、その漏れ出すかもしれない声に自分自身が興味を持ち始めているということだ。
 だが媚薬によって削られつつある理性が、その興味をなんとか押しとどめる。
「ぅ……」
 璃奈もまた、いつも以上に言葉を発さなくなっている。だが色白の肌はほんのりと紅に染まり、無表情にも見える顔立ちの中でもその目尻は徐々に下がりつつあった。
 銀の尾が、力なくゆらゆらと揺れている。
 璃奈が無意識のうちに握りこんでいた手に、不意に力が籠る。それは背中の上での動きに変化があったためだ。
 のしかかるようにしていただけの魔物達が、擦り付けるような動きを始めたのだ。
 強引に擦るのではなく、緊張のほぐれを促すようなその動き。それでいて、簡単に満足させない焦らすような巧みさも感じられる。
 これが按摩であれば心地よさに繋がったのかもしれないが、媚薬で敏感になった二人の素肌にこの柔らかな刺激は過酷だった。
 もう少し。もう少しだけでも強くしてくれれば、すぐにでも脱することができるのに――。
 だが魔物達に彼女達の想いは届かない。彼らが飽きるまで、この優しい地獄は続くだろう。終わりがいつになるかなど分かりはしない。
 その事に二人が気づいてしまった時、もはや閉じて耐えることすら出来ず、喘ぐように開いていた口からついに、
「――ぁ」
 嬌声が、生まれた。

 二人と魔物達が共にいた時間は、実は半時間にも満たなかった。だが、二人にとっては三日三晩にも感じたという。
 麻弓、ロート、璃奈。彼女達の冒険は各々の場所で一旦止まってしまったが、彼女達の行動により、迷宮の攻略は中盤を越えようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ルルティア・サーゲイト
「ほう、媚薬チョコモンスターとな」
 徐に下着を抜き取り、本気(ではいてない)モードである。
「ふふふ、滾るのう」
 わざと捕まるような事はしないが捕まったとて別に問題はあるまい。何せ、普段からコレである。
「さあ、妾をどんな酷い目に合わせてくれるか楽しみじゃ!」
 意気揚々と正面突破あるのみである。寄らば斬る。寄らねばほっとくがどうせ寄ってくるじゃろう。
「罠があったら踏み潰す! それが脳筋道と言う物よ!」

【アドリブ・絡み歓迎】

「んアー! 妾今体温何度あるかなーッ?」
「温い、温いぞッ! もっと激しくしてみよ!」
「誰だ今妾の事平坦と言ったのはッ! 命が惜しくないようじゃな……」
「巨乳め、消えてしまえよ!」



 ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)は迷宮を我が庭のように進んでいく。彼女は迷宮の中盤を越えたところへ来ていた。
『ほう、媚薬チョコモンスターとな』
 ふと興味を抱いたルルティアが迷宮へ赴いてから、それなりに時間は経過している。もちろん、ここまでの道中に魔物には遭遇しているのだが、その襲撃は散発的なもので勝負師な彼女としては少し物足りなさを感じていた。
 しかし今――彼女の眼前には媚薬を体内に蓄えた魔物の軍勢が居並んでいる。
「ふふふ、滾るのう」
 ようやくか、と言った面持ちのルルティアは徐に下着を放り投げた。それは、試合に赴くために首にかけたタオルを投げ捨てる格闘家のよう。
 彼女曰く、“本気(ではいてない)モード”である。
 ふわりと、下着が宙を舞う。睨み合う両者。
 そして下着が地面に落ちたその瞬間、戦闘開始のゴングが鳴った。

「さあ、妾をどんな酷い目に合わせてくれるか楽しみじゃ!」
 先手必勝。ルルティアの鎌が容赦なく薙がれ、魔物達が斬り飛ばされる。
 しかしそれで怯む魔物達ではない。壁を、天井を利用して魔物達は跳ね、ルルティアへ迫る。それらはまるで跳弾する弾丸のようだ。
 剣豪らしく敵の動きを見切り、斬っては捨てるルルティアだが、やはり数が多い。和洋折衷をモチーフにした着物が、徐々に魔物達に溶かされていく。
「温い、温いぞッ! もっと激しくしてみよ!」
 それでも、不敵な笑みを浮かべてルルティアは跳弾する魔物達の只中へ敢えて突っ込んで行く。さらに形を失う衣服。そして忘れてはならない、媚薬もその効果を発揮し始めている。
「んアー! 妾今体温何度あるかなーッ?」
 火照る身体の熱をエネルギーに変えているかのように、ルルティアは大鎌を振り回しながら敵陣をただ突き進む。
 ルルティアに刈られ、自身でも跳ね、魔物達が乱れ飛ぶ。まさに大乱闘。
 しかし悲しいかな、魔物達の数は確実に減ってきている。媚薬という能力を得た代わりに戦闘能力の弱体化というハンデを負った彼らでは、まともにやりあってはやはり猟兵には敵わないのだ。
 それでも一矢報いようと一体の魔物が全力を振り絞り、飛んだ。背中を向けているルルティアに飛んだそれは、直撃コースのはずだ。しかし、運悪くルルティアが振り返る。すぐそこに迫った魔物を彼女は、
「なんのぉぉぉっ!」
 反る。上半身を反って避ける。だが魔物も体の一部を必死に伸ばして届かせようともがいた。
 すると僅かではあるが――掠めた。ルルティアの衣服、その前面を裂くかのように魔物が伸ばした手(?)が掠め、溶かしていく。
「くっ……!」
 服の前面が特に何かに引っかかることもなくはらりと開き、露わになりそうになる胸元。しかしそれを隠すことなく、臆することなく、ルルティアは反撃に移った。
「誰だ今妾の事平坦と言ったのはッ! 命が惜しくないようじゃな……」
 え、言ってない――。
 魔物がそう思ったのと同時。彼の身体は遠心力に加えて脱衣で身軽になったことでさらに加速した大鎌の刃により、真っ二つになっていた。

 そして大乱闘の結末は――。
 最後に立っていたのは、ルルティアだった。その様相はまさに(衣服が)満身創痍だ。
 周囲には、さっきまで魔物と衣服だったものが一面に散らばっている。
 ふと、ルルティアは何かを見つけると静かに歩み寄った。それは、開戦前に自身が放り投げた下着だ。
 今となってはこの場で唯一“衣服”と呼べるであろうそれを彼女は拾い上げると、しっかりと握り締め、迷宮のさらに奥へと歩みを進めていったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリンデ・エーデルシュタイン
チョコにはそんな効果があったのですね……バレンタインに何故、チョコを渡すのかと疑問でしたが謎が解けました。

魔物も出ると聞きますし、気を付けていきましょう。
聞いた感じですと、状態異常を引き起こす魔物でしょうか……?
ならば【聖天示すは慈悲なる標】にて聖なる柱を立てて己を癒しながら魔物を倒します。
どれだけ魔物が来ようと、御柱があれば恐れる事はありません。どんどんいきましょう。

えっ、ちょ……服を溶かすとか聞いてないですよ!?
防戦は不利……となれば天の威光を示す為にも魔物に御柱をぶつけて殲滅あるのみです!

※アドリブ・絡み歓迎



 ――チョコにはそんな効果があったのですね……バレンタインに何故、チョコを渡すのかと疑問でしたが謎が解けました。
 アルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)は新たな知識を得られたことに感謝していた。
 少なくない誤解を生みだしてしまった感はあるが、それはそれとして、アルトリンデはしずしずと迷宮内を進んでいく。
 だが彼女がいるのは、迷宮の中盤を越えたさらに奥。魔物の数もさらに増してきている。そしてその動きも活発だ。
 跳ねた魔物がアルトリンデの顔や体をかすめていく。
 しかしそんな状況にあっても、彼女の静謐さは失われない。
『神域は此処に在り。迷える者が邪なる甘言に惑わされぬよう、白き澪の標で導き護りたまえ。過ぎし海を礎に、天を繋ぐ輝きで照らしたまえ』
 アルトリンデが言葉を紡ぐと同時に現れた無数の白亜の柱が、地面と垂直に立った状態で宙に浮かびながら彼女の周囲をゆっくりと旋回。魔物に触れられたことで引き起こされた身体の熱を途端におさめていく。
 ――状態異常、のようなものでしょうか。
 この熱がどういったものなのか、彼女にはまだわからないのかもしれない。それでも、この柱で癒せるのであれば恐れることは無いだろう。
「どんどんいきましょう」
 うん、と頷き、自信を持ってまた一歩を踏み出す。
 ――あれ? でも、なんだか妙に足がすーすーするような……。
 ふと視線を下に落とすと、スカートに、とっても大胆なスリットが誕生していた。その他、身体のあちこちも所々で肌が見えたり見えそうになっていたりしている。
 魔物によって引き起こされる身体の熱は柱の力でなんとか出来そうだが、流石に服を溶かそうとするのはどうにもならなかったようだ。
「えっ、ちょ……服を溶かすとか聞いてないですよ!?」
 柱がアルトリンデの焦りを感じ取ったかのようにその動きを変える。地面と垂直、から、地面と平行、へ。護り、から、攻め、へ。
「防戦は不利……となれば天の威光を示す為にも魔物に御柱をぶつけて殲滅あるのみです!」
 空中に横たわるようになっていた柱がその姿勢のまま射出され、着弾点にいた魔物達を吹き飛ばす。
 その様子を見た他の魔物達は慌てて退散しようとするが、アルトリンデは彼らにも容赦なく次々と柱を放った。
「禁制です、禁制……!」
 一体の魔物が飛来した柱の下敷きになる。それを最後に柱は撃ち止め。なにせ、魔物達がすっかり身を潜めてしまったためだ。
「ふう、分かれば良いのです。ですが……」
 ――この服どうしましょう……。
 上手く肌を見せるように狙って破ったのではないかと思われそうな、聖者らしさを失いつつある修道衣をどうしようか。アルトリンデは途方にくれるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

秦田・麻弓
運ばれた安全な所で目を覚ましてから探索再開です
今度は気を失わないように、もっといっぱい…あ、も、もちろんダンジョン突破が目的ですけどっ

先程よりも魔物を警戒しながらも、おびき寄せや誘惑で魔物を引き寄せながら奥深くへ進みます。学生さんに取り付くものは特に優先的に

できる限り深くに集め、人がいない所で向き直り、両手を広げて呼び寄せ
「さぁ、獲物はここですよ、他の人には渡しま…手は出させませんっ」

えへへ…ほら、しょうがないですよ、媚薬効果とか、そういうダンジョンの罠ですから…ね?


また気を失いそうになったら、名残惜しがりながらバチっとやります。それで倒せなかったらしょうがないし、飽きられるまで楽しもうっと…



 秦田・麻弓(びびりびりびり・f00217)は迷宮のさらに奥へと進んでいた。
 目を覚ましてから、もうそれなりの距離と時間を経ている。
「っ、と……」
 足元が少しもたつく。それもやむを得まい。何しろさっきまで気を失うまで――。
「――っ」
 足が止まる。身体が先程の出来事を思い出す。思わずその場に座り込みそうになるが、ぐっと堪える。
 ふと何かが足に触れる感触を得てそちらを見れば、そこには件の魔物の姿があった。だが、
「まだ、ダメですよ……ええ、まだダメなんです。もっともっと、お友達を連れてきてくださいね?」
 笑みを零しつつ、魔物を引き離して駆ける。しかし、離れ過ぎないように注意して。
 彼女の背後には、無数の魔物たちの姿があった。辺り一面にいるそれらは、麻弓が迷宮を進む中で次々と引き連れてきた者達だ。
 無論、ただ引き連れてきたわけではない。迷宮内で女生徒達を襲っていた魔物達を先程のように焦らすようにおびき寄せ、誘惑して回っていたのだ。他意は無い。
「今度は気を失わないように、もっといっぱい……あ、も、もちろんダンジョン突破が目的ですけどっ」
 他意有りまくりであった。

 魔物達を引き連れつつどこまで来ただろうか。幾度か迷いながらも進み続けたが、今いる場所の風景は初めて見る。
 であれば、ここは最奥部にほど近いはずだ。
 そう確信して麻弓は近くにあった横道へと魔物達を誘う。勿論、そこに誰も居ないことを確認した上で、だ。
 そうして横道をいくらか進んだ後。彼女は背後の魔物達へ向き直り、両手を広げる。
「さぁ、獲物はここですよ、他の人には渡しま……手は出させませんっ」
 魔物が、“待て”から主人に許しを得て解放されたペットのように麻弓にすり寄っていく。その光景は、一匹二匹がそうするものであればまだ可愛げを見出すことが出来たかもしれない。
 だが、そこにいたのは、横道を塞ぐ程に数が膨れ上がった魔物達だ。すり寄る……否、横道の奥へ流れ込むように魔物達は麻弓へ殺到した。
 当然のように彼女はその濁流に丸呑みにされ、そして魔物達の只中に浮かぶこととなる。

 その中で、彼女が何を得たかはあえて語るまい。だが、彼女が再び気を失おうとしたその時、予め使用を決めていたユーベルコードを発動し――。
 気づけば麻弓は横道の奥、その床に横たわっていた。
 彼女を飲み込んだ魔物達の姿はどこにもない。だが目の前には迷宮の最奥にあると噂されていたカカオの木と、その隣に、人がようやく通り抜けられそうなどこへ続くともしれない穴が空いていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ネバメーバ』

POW   :    はじける
【攻撃された際、飛散した肉体の一部 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    からみつく
【ネバネバ 】【ドロドロ】【ベチャベチャ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ふきつける
レベル×5本の【酸 】属性の【自身の肉体の一部】を放つ。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ここからは(残念ながら)媚薬成分抜きでお届けします。あ、服は今まで通り溶けます。
 カカオの木のそばに空いていた穴。グリモア猟兵の情報通りであればこれは恐らく――。
 猟兵達は調査の為、身をかがめて中を進んでいく。すると、薄暗い道の先に明るい光が見えてきた。
 何があるのかと好奇心を抑えきれず小走りになる者、慎重に行かねばとゆっくり進もうとする者、各々が様々な反応を見せつつ穴の奥へと到着する。
 そこは、岩肌におおわれた広く大きな空間だった。走ってもなかなか端には到着できず、天井も高い。迷宮の構造の出鱈目さを感じさせる、そんな場所だった。
 さらには岩肌に自生している苔が光を放ち、空間内部を十分な光量で照らしている。道中から見えていた光の正体はこれだ。
 空間内をもっと調査しようとした猟兵達だったが、それはある者達の登場で中断せざるを得なかった。
 迷宮内にもいた魔物達が、ここにも次々と姿を見せ始めたのだ。
 しかもその数は増える一方だ。迷宮内にも相当な数がいたはずだが――。
 間もなく、猟兵達は確信を得る。
 やはりここは、魔物達の『巣』だと。恐らくはここから穴の外に出てカカオの媚薬成分を吸収した者が迷宮内を徘徊し、女生徒を襲っていたのだろう。
 魔物達が猟兵達を取り囲み始める。巣に入ってきた猟兵達に対して、少なからず気が立っているようだ。
 迷宮内にいた魔物達はカカオの媚薬成分のせいで弱体化していたが、ここにいる魔物達はそうではないはずだ。媚薬成分こそ持ち合わせていないものの、攻撃をまともに受け続ければ猟兵とて無事ではいられまい。
 魔物自体に恨みはないが、迷宮の安全のため、彼らを倒さねばならない!
ロート・カニーンヒェン
「溶かすものがないなら、怖くない!」「・・・え?あ、ちょっと待って、そこ弱・・・ひぃんっ」服や鎧を限界まで減らして威力を上げたソニック・キャリバーで短期決戦を仕掛けるよ。どんだけ絡まれても倒してしまえば良いんだ!あ、でも、私割りと快楽堕ちしやすい・・・け、けど、うん、大丈夫!たぶん!!(アドリブ歓迎です)


秦田・麻弓
探索の影響は残ってますしだいぶ装備も溶かされちゃってますけど…大丈夫、戦えますよっ むしろ影響強くなったし今度はさっきよりもっと…っと違う違う、頑張って倒さなきゃ、先に進めませんからねっ

無差別に敵を攻撃し注意を引いておびき寄せ、射程内で一通り集めきったら手近な所から確実に仕留めていきます。他の人が被害受けないように、もう損傷増えそうにない私が受け持つのがほら、合理的かな、みたいな…

これ、捕まったらまたさっきみたいな…えへへ…ってあっ、ちょっ、ホントに…

…油断してからみつかれたらそれはそれで、囮として頑張って耐えます。皆を守るためです、よ?
「こっちは今度こそ大丈夫です、今のうちに他の奴をっ」


アルトリンデ・エーデルシュタイン
うう、すーすーします……走ったりすると破れたところが広がりそうですし……
あれが噂のカカオの木ですか。
となれば元凶も近くに……って、さっきの魔物の巣ですかここ!?

数は多いようですが、先の戦闘で力量は計れています。
ならば【聖天示すは慈悲なる標】を全力でぶつけるまで!

もし迷い込んだ学生さんが居た場合はかばって敵をこちらにおびき寄せ、逃げる隙を作ります。
柱は攻撃に回していますが、我が身は呪詛への耐性も賜っています。
状態異常程度…え、あ、これ、思ってたのと違います……!?
く、加勢されないよう柱を放って増援を防ぎつつ、聖剣を抜いて応戦です!
ああ、ヘンなの飛ばしてこないでくださいー!

※アドリブ・絡み歓迎です



 ユーベルコード『ソニック・キャリバー』の効果でロート・カニーンヒェン(グリーディー・ファントム・f00141)の衣服の布面積が急激に減っていく。
「んんっ、パワーがみなぎる……!」
 バーチャルキャラクターである彼女は衣服のデータを攻撃力に変換することが出来るのだが、そもそもロートの衣服の布面積が元々少なめな上にソニック・キャリバーの性能を限界まで引き出したため、彼女の衣服はマイクロビキニも真っ青の見た目になっていた。
 それでも、
「溶かすものがないなら、怖くない!」
 ロートは大事な布面積を代償にして得た超高速の手刀で、次々と魔物達を細切れにしていく。だが魔物達も彼女の動きを止めようと、負けじと粘液を噴射した。
 当初はそれすらも手刀で切り払っていたロートだったが、下手な鉄砲もなんとやら。布面積が減ったために大胆に肌が露出した背中に突然ひんやりとした粘液が当たってしまい、途端に脱力してしまう。
「……え? あ、ちょっと待って、そこ弱……ひぃんっ」
 ぞくりと体を震わせたロートの動きが止まった所に、さらに浴びせるようにドロドロの粘液が振りかけられ、あっという間に彼女は粘液まみれになってしまった。
 ――こういうの実際にされるとすごく……。
 ふと自分が置かれている状況に頬を赤く染めるロートだったが、慌てて緩んだ表情を整えるとキッ、と魔物達を睨みつける。
「私は粘液なんかに、負けないっ!」
 だがそう言い放った彼女の口元はやはりどこか緩んでいたとか、いなかったとか。

 一方、熱線銃を乱れ撃ちしながら戦場を駆け回っていたのは秦田・麻弓(びびりびりびり・f00217)だ。
 先の迷宮攻略ではとにかく魔物達と(彼女目線で)楽しく触れ合ったために装備――特に衣服へのダメージが深刻であったがそれには懲りる、もとい気にかけることなく、勇敢に魔物達と戦っている。
 麻弓の射撃に当たった者、あるいは注意を引かれた者を誘き出して集めると、彼女は手近にいる者から熱線銃を浴びせて各個撃破していく。
「ほーらほらもっと積極的になってもいいんですよー?」
 彼女の魔物を見る目付きは、敵対する者がするそれとは違う意味で怖い。
「他の人が被害受けないように、もう損傷増えそうにない私が受け持つのがほら、合理的かな、みたいな……」
 的確に敵を撃ってはいるのだが、その目付きは何かラブコメにも似たトラブルを狙っているかのようにも見える。
 魔物達の方も当初は麻弓の妙な様子に慎重だったのだが、巣を荒らされている事への反撃が最優先と考えたのか、体の一部を麻弓へ吹き付けていった。
 ――やった、きたぁ……っ。これ、このまま捕まったらまたさっきみたいな……。
 内心で悦ぶ麻弓に付着した魔物の一部は彼女の体を這い回り、僅かに残った麻弓の装備を酸性の成分でさらに溶かしていく。
「ってあっ、ちょっ、ホントに……!?」
 タダでさえ減っていた衣服のHPゲージがミリなところまで減っていくが、もうどうしようもない。
 このまま囮として頑張って耐えることにした麻弓は、周囲の皆に言葉を投げた。
「こっちは今度こそ大丈夫です、今のうちに他の奴をっ」
「今度こそって、どうして会う度に絡まれ度合いが増してるのかな! ……まあ私も今は人の事言えないけど」
 すっかり粘液まみれ・アンド・マイクロビキニなロートが答える。この二人のツーショットはなかなかに強力だった。

「あ、あのお二人共大丈夫なのですか……?」
 アルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)はロートと麻弓の心配をするものの、彼女は彼女で大きなダメージを受けていた。
 服が。
 破れた箇所を押さえながら、アルトリンデはあまり大きく動けず恥じらいながらもじもじとしている。下手に動けば、破けた部分がさらに広がりそうだからだ。
 しかし、衣服という概念を文字通り脱ぎ捨てた例の二人が、揃ってこちらに力強いサムズアップを見せてくるのは何故だろう。
 しかしそうしているうちに、アルトリンデにも魔物達が迫る。
「っ……あなた達の力量は把握済みです!」
 彼女はすぐさま『聖天示すは慈悲なる標』を起動すると白亜の柱を魔物達へ全力で射出した。あまり動かずに済む遠距離攻撃を準備してきたのは、今回に限っては正解だったかもしれない。
 魔物達を巻き込んで、岩肌に無数の柱が突き刺さる。
 アルトリンデは念の為、学園の女生徒達がこの場所に迷い込んでいないか周囲を確認するが、ここまで辿り着いた生徒はいなかったようだ。
 だが安心したのも束の間、魔物達はさらに数を増して襲い掛かって来る。アルトリンデも柱で応戦するが、討ち漏らした数体の魔物が飛ばした体の一部が彼女に命中した。
「ああ、もうっ! ヘンなの飛ばしてこないでくださいー!」
 衣服を溶かしつつ、魔物の体の一部がアルトリンデの身体を這う。衣服の隙間にそれが潜り込みそうになるのを必死に食い止めつつ、ふと彼女は自身の身体に異変を感じていた。
「呪詛への耐性と御柱による癒しがあって、それにそもそもここにいる魔物には媚薬効果が無いのに何故……」
 何故、こんなに身体が熱く――。
「お姉さんが教えてあげましょう。それは無意識のうちにあなたの中にあるとってもイ・ケ・ナ・イ欲求が覚醒をですね」
 いつの間にか耳元に立っていた麻弓にアルトリンデが無言で柱を向けると、肌色多めな彼女はそそくさと敵の掃討に戻って行った。
「まったく――まさか。まさかそんな。ですよね?」
 アルトリンデはそう独り言ちるも、その問いに答えられる者は誰も、
「素直になればいいのに」
「ねー?」
 柱が魔物達がいるのとは違う方向に飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルティア・サーゲイト
「さて」
 何か、下着だけと言う姿が落ち着かんのでさらっと脱ぐぞ。
「おお……この解放感。いやいや、これでは痴女ではないか。全く、替えの服何ぞ持ってきてなかったのでな。ちゃっちゃと終わらせるのじゃよ」
 見えてはいけない所を何かしら(任せた)で隠しながら桜花の舞を始める。携えた大鎌を中空でゆらり、と振るう。当然、そこには何もなくただ空を斬るのみ。流れる動きで二度、三度と大鎌を振るう。その刃先から桜の花弁が散り、全てを魅了するように舞う。
 円を描く動きから垂直に飛び上り、
「天武桜花陣ッ!」
 真下に大鎌を振り下ろす。地面に突き立てた瞬間、一瞬にして桜吹雪は消え、ただ斬られたという事実のみが残る。



 敵群を薙ぎ払った大鎌を、ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)は拭うのも面倒だというように一度、強く振るった。
 すると、その刃に付着していた魔物の体液が飛び散り、岩肌にその跡を残す。
 他の猟兵達は勿論、ルルティアもすでに十分な数の魔物を屠ってきた。猟兵達を包囲していた魔物達も、今では猟兵達によって隅へと追いやられている。
「さて」
 片手に大鎌を持ったルルティアは、もう片方の手で器用に下着を脱ぎ去った。
 どうにも座り心地が悪いといった様子だった彼女の面持ちが、安堵のそれに変わる。
「おお……この解放感。いやいや、これでは痴女ではないか。全く、替えの服何ぞ持ってきてなかったのでな。ちゃっちゃと終わらせるのじゃよ」
 素足の裏から伝わる岩肌の冷たさが、戦いで火照った身体と頭に心地よい。だが冷めすぎてもいけない。それこそ、興が冷める、というものだ。
 だから、熱がその肌から抜ける前にルルティアは残った敵群へ静かに歩みを進める。一歩、二歩、三――。
 その瞬間、魔物が酸を伴った体の一部をルルティアへと飛ばした。まるでそれ以上近づくなという警告のように放たれたそれをしかし、彼女は“合図”と受け取った。
 ここでの戦いを終わらせる、最後の戦いの合図だ。
 歩みを止めず、ルルティアは携えた大鎌を中空でゆらり、と振るう。舞として振るわれたそれは、何もない空をただ斬るのみ。
 魔物達から粘液が、彼らの身体の一部が、ルルティアへと飛ぶ。今度は警告ではなく攻撃として放たれたそれを彼女は舞の続き、流れるような動きで躱すと二度、三度と続けて大鎌を振るう。
 すると、その刃先から桜の花弁が散り始めた。
 風は無い。しかし噴き出すように放たれた花弁は、ルルティアを中心に魔物達を囲うように流れていく。
 彼女は敵の攻撃を躱しつつ、さらに速さを上げて舞い続ける。全てを魅了するように。
 そして、その速さが頂点に達した時。円を描くように振るっていた大鎌の動き、それを利用してルルティアは飛び上がった。
 真下に、魔物達を覆い隠す程の桜吹雪の渦が見える。
 ルルティアはその渦の中心に狙いを定めると、構えた大鎌を振り下ろした。
「天武桜花陣ッ!」
 大鎌の切っ先が地面を割る。その快音が巣の中を駆け抜けたその時、瞬きのうちに桜吹雪は消え去り。
 散る。周囲にいた魔物達から鮮血が激しく飛び散る。
 そこにはルルティアを雌蕊として咲いた、一輪の血飛沫の花があったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『スペシャル・ライター』

POW   :    修正箇所
【修正箇所を確認する目の青白い光】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    印字作業
【26個のキーから青白い光】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    より良い作品を
対象のユーベルコードに対し【正確に全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はライラック・エアルオウルズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●【急募】次の本のネタ
 巣の中から魔物達の気配は消えた。だが気にかかるのはこの区域にこれまで魔物が生息していたことがない、という情報だ。
 加えて、何者かがこの魔物達をここに連れて来たかもしれないという話も出ていたが……。
「オオッ、オオオオオオオ……!」
 突然、雄叫びが聞こえた。声がした方向を目で追う。よく見れば、岩肌の壁の上方にまるでバルコニーのように張り出した場所があるではないか。
 そしてそこには、機械仕掛けの人型のような姿があった。まさか先ほどの戦闘もそこで見ていたのだろうか。
「オオッ、おのれ……!」
 すると人型はバルコニーから飛び降りると、意外と華麗に着地した。
 結構精密そうな機械なのに大丈夫なのかと心配になる猟兵達をよそに、その人型――ロボ? は言葉を紡いだ。
「せっかくの、せっかくのネタを!」
 ネタ?
「これではイベントに間に合わない……、インスピレーションが、足りない!」
 イベント?
「なんということをするのだ……! 媚薬入りカカオの噂を女生徒達に流し! 服を溶かす魔物を連れてきてカカオの媚薬成分を吸収させ! そしてやってきた女生徒を魔物に襲わせる! そうすれば次の本のネタが際限なく生まれると思ったのにぃぃぃ!」
 なるほどなるほど。
「魔物を壊滅されてはネタがもう出て来ぬではないか! 媚薬魔物シリーズがあと10冊は描けたのだぞ! こうなっては私がお前達を使ってネタを作るしかあるまい……」
 機械の目でじろりと猟兵達を品定めするロボ。少し考えた後、仕方ないといったポーズを取る。
「まあ、多少のネタにはなりそう、か。ところでジャンルは機械責めになるのだが構わないかね? もちろん責めに抵抗してもらっても構わない。その方が良いネタが生まれそうだからなあ! ウィーヒヒヒ!」

 君達は、女生徒達に酷い事をして迷宮内の生態系を狂わせたこのオブリビオンと普通に戦って倒しても良いし、面白そうだという理由でネタ作りに協力しても良い。
 ただしどう動くにしろ、戦って撃破することには変わりないのでご注意を。
ルルティア・サーゲイト
「ほう、妾をネタに薄い本を作るというのか」
 ゆらり、と大鎌を構えて……品を作るようにポーズを取る!
「ふふふ、美しく描くのじゃぞ?」
 だがしかし、責めようとする機械の接近は許さない。絶妙に見えてはいけない所が見えないように、美しく即興で舞うかのように迫る機械を迎撃しつつ次々とポーズを決める。
「お触りは無しじゃよ。妾はそこまで安くない」
 機械を寄越さぬのであればポーズの要望にも応えよう。
「ほれ、このポーズが良いのか? ふふふ、スケベじゃのう」
 だが卓越したテクニックによりどんなポーズでも見えてはいけない所が見えない! これぞはいてない道である。


ロート・カニーンヒェン
「現況発見!ほうほう、本・・・なるほど、お疲れ様!だが倒す!!」(POW)機械責め?興味あります!けど、お仕事も大事!プロミネンス・ノヴァで本ごと燃やす!ここまでたくさん媚薬責めされてきた私に生半可な機械責めが効くと思わないでよね!!(フラグ)どんとこい!機械責めなんかに、絶対負けない!!(フラグ2)(色気、アドリブ歓迎です)


秦田・麻弓
協力してあげたらうん、油断を誘ったり満足して倒されてくれたりもしないかなーとか…

「あ、はいはーい、構わないです、私手伝いまーすっ」
手を挙げて無警戒に近付いて行きます。攻撃を受けそうになったら一旦反撃を。出力を抑えて攻め手を倒してしまわないように…あ、ほらネタとしては抵抗パターンもあった方が良いかもだし、同じユーベルコード使われるかもなら…へへ…

「あ、私は大丈夫なので、今のうちに皆さんはやっつける準備とかしてもらえると…っ」

「あ、せんせー、できたら一冊、私にも欲しいですー」
誘惑とかあれこれポーズとってアピールしながら、敵さんに笑顔を向けて
…あ、油断させて時間稼いでるだけですよホントホント。


アルトリンデ・エーデルシュタイン
何か申し訳ない事をしてしまったような……いえ、創作活動は今を生きる人の領分。
言ってる内容はよく分かりませんが、それは後世に託すもののはずです。

とはいうものの……あまり動き回れる格好ではないのですよね。
いえ、オブリビオンを前に躊躇っている時間はありません。
どのような責めをしてくるか分かりませんが、せめてもの慈悲として正面から受けて立ちます。
拘束などされるようなら【聖光示すは神苑の階】で戒めを断ち、周囲に聖域を敷いて挑みます。
最後に聖光にて攻撃を。
さあ、これで終わりです!……あっ(相手のUCで相殺され、舞い散る衣服。聖域からの謎の光。そのまま押し切られるかは状況次第で)

※アドリブ・絡み歓迎です



「――ウィーヒヒヒ!」
 機械仕掛けの人型――スペシャル・ライターの下卑た笑いが魔物達の巣だった場所に響き渡る。
 そして、ライターの前には四人の女達の姿があった。
 その誰もが迷宮を越え、魔物達を越え、その度に服を犠牲にしてきた猛者である。今や彼女達の出で立ちは半端では無い。

「ほう、妾をネタに薄い本を作るというのか」
 四人のうちの一人、ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)が大鎌を構える。
 その立ち姿はライターの言う“本”に描かれる事をすでに意識してか、地面に立てた大鎌にしなだれかかり、品を作るものだ。
「……猟兵如きがと侮っていたがなかなかどうして」
 ライターの目が怪しく光る。
 そして彼の腕に接続されたペンが途端に激しく動きだした。
「ふふふ、美しく描くのだぞ?」
 挑発するようにルルティアがポーズを変える。
「おお……ほう……では次はこういうのは如何かな?」
 腕を激しく動かし続けたまま、背中から伸ばした機械の触手をルルティアへと差し向ける。
 別の生き物のように彼女へ迫るそれは、ライターが言っていた機械責めのためのものだ。
 だがルルティアはその腕を大鎌の一振りで払い除けつつ、舞うように一歩後ろへ飛んだ。
 腕は諦めずにルルティアへとまた迫る。
 一歩、二歩、三歩。右へ左へ後ろへ。
 払い、避けてルルティアは腕をひたすらに迎撃する。
「ぬう、ちょこまかと!」
 焦るように突き出した触手を、ルルティアは大きく体を反らしてさらに避けた。
「これこれ、お触りは無しじゃよ」
 反らした胸の上に伸びた触手の先端をルルティアの細い指先が優しくなぞる。
「おお……反抗的な態度にそのポーズ……イイ……」
 ライターの目が怪しく光る。
 だが次の瞬間、ルルティアは体を反ったまま触手を力強く掴むと、もう片方の手に握られていた大鎌で触手を勢い良く断ち切った。
 触手の断面から部品やオイルのようなものが激しく飛び散る。
「ビガガガガ!? おのれ、おのれ小娘! 商売道具に何をする!」
 慌てて触手を引っ込めるライターに、ルルティアは反った体をゆっくりと起こしつつ、流し目でライターを見る。
「調子に乗るな阿呆かお主。妾はそこまで安くない」
「ぬぅっ……イイ……」
 ライターは少しキュンとした。

「あ、はいはーい、構わないです、私も手伝いまーすっ」
「元凶発見! ほうほう、本……なるほど、お疲れ様! だが倒す!!」
 そう言ってライターへと駆け寄ろうとするのは秦田・麻弓(びびりびりびり・f00217)とロート・カニーンヒェン(グリーディー・ファントム・f00141)だ。
「……イイ……はっ。ほう、お前達も手伝うと……待て、今倒すとか聞こえたんだけど」
「いえいえ! 機械責め、興味あります!」
 慌ててロートが言い直す。
「そうかそうか、猟兵にしては殊勝な心掛けだ」
 そう言うとライターはまた新しい触手を二人に伸ばした。
「キャー触手コワイー」
「ここまでたくさん媚薬責めされてきた私に生半可な機械責めが効くと思わないでよね!!」
 麻弓はどこか棒読みっぽく、ロートは見事なフラグを立てながら触手に抵抗するようにそれぞれがユーベルコードを放つ。
 炎と電撃、2つの属性がライターの体にダメージを刻む。
「ぐうっ!? クク、素直ではない所は点数高いぞ……!」
 そういうと、ライターは麻弓に彼女が放った電撃と同じものを放った。麻弓の電撃を押し返すように放たれた電撃は拮抗の様相を見せていたが、ある瞬間に爆ぜるように二人の電撃が霧散する。
 その隙を狙って、触手がとうとう麻弓に取り付いた。彼女に巻き付くように触手がその体を這っていく。
 柔肌に食い込む触手。漏れる麻弓の苦悶の声。
「ウィーヒヒヒ! そうだ私はこれが見たかったのだ!」
 ペンを持つ腕を激しく動かしつつ、ライターの下卑た笑いが再び響く。麻弓は触手に身動きを封じられながらも、他の猟兵達に言葉を投げる。
「あ、私は大丈夫なので、今のうちに皆さんはやっつける準備とかしてもらえると……っ」
「デジャブかな?」
「なんかお家芸みたいになっておるな」
 思わずロートとルルティアのツッコミが入る。麻弓は麻弓で平常運転だった。

「お前は、じっとしていろ。ヒヒヒ!」
 ライターが次に狙ったのはロートだ。その目から放たれた修正箇所確認光線と共に彼女にルールが宣告される。
「うっ……」
 ルールを守る義理など無いのだが、これがユーベルコードの効果の一部である以上、ルールを破ればどうなるかは明白だ。
 思わず動きを止めたロートに触手が伸びていく。彼女が動けないのをいい事に、触手はその体を容赦なく蹂躙していった。
「んっ、くぁうっ……機械責めなんかに、絶対負けない……っ」
 触手がもたらすこそばゆさになんとか耐えていたロートだったが、ついには触手の責めに崩れ落ちてしまう。
 そしてそれは“動くな”というルールから逸脱した行為だ。
 触手に絡み取られたロートの身体に罰として電撃が走る。
「あ゛ぅうっっ……」
 堪えきれずに漏らした嗚咽と共に、ロートの口端から一筋の唾液が零れた。
「くっ……!」
「いやそれでまだ足りんのかお主」
 すでに触手に捕まっているのに何故か羨ましそうな麻弓に、再度ツッコまざるを得ないルルティアだった。

 この四人の中では一番衣服の状態がまともなアルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)は躊躇いを捨てつつあった。
 ――あまり動き回れる格好ではないのは間違いないのですが……。
 少なくとも今のところ、ご近所さんに見られたら次の日の朝から愛想笑い度が高まりそうな出で立ちではある。
 しかしオブリビオンを前にしてそのような事を気にしている場合ではない。
「何か申し訳ない事をしてしまったような気もしますが……創作活動は今を生きる人の領分。言ってる内容はよく分かりませんが、それは後世に託すもののはずです」
 勇敢にもアルトリンデはライターの前に立ちはだかる。
「せめてもの慈悲として正面から受けて立ちましょう……!」
「では遠慮なく」
 ノータイムでライターの触手がアルトリンデに勢いよく絡みついた。
「もう少し遠慮しても良いのでは!?」
「ヒャアー! 据え膳喰わぬはなんとやらってなあ!」
 キャラが良く分からないライターが、ペンを持つ腕を止めることなく、触手でアルトリンデを縛り上げる。
「んぅっ……!」
 縛りの力強さに思わず声を漏らしはするものの、彼女とて無策ではない。
「……天よ光を与えたまえ。我らが闇に惑わぬよう、神の庭へと至る道を照らしたまえ!」
 岩肌に囲まれた巣の中に眩い光が差す。その光がライターに命中すると、アルトリンデや他の猟兵達に絡みついた触手が溶けるように解かれ、地面に聖印を刻み周囲を聖域へと変化させていく。
「ぬうぅ!?」
 ライターが驚きの声を上げる。
 触手から解放されたことで安堵する者、内心残念がる者、あからさまに残念がる者、反応はそれぞれだが、猟兵達は好機とばかりにライターへ攻撃を与えていった。
「や、やめて! 堪忍して! この原稿だけは……!」
 ライターの悲痛な叫びが響く。この期に及んで自身より原稿の心配をするのはある意味立派だがオブリビオンである以上、倒さねばならない。
「さあ、これで終わりです!」
 聖域の中にあって戦闘力を高めたアルトリンデがトドメの聖光を放つ。
 ライターが原稿諸共、輝きに飲み込まれていく。
「ぐああああ! ただでは、ただでは逝かぬぞ!」
 しかし最後の足掻きを見せたライターが、聖光を相殺せんとそれと同じ光を放った。
「ああっ……!」
 アルトリンデもまた、光に飲まれていく。そしてもはやこれまでと彼女の衣服が舞い散り、素肌が露わに――。

 否。そうはならなかった。
 光が、偶然にもアルトリンデの色々な所を輝きで覆っていたのだ。
「おお……これが、この輝きが……いわゆる円盤では消えるアレ……。まさか実在したとは、な……」
 光が一際戦場を明るく染めた後、途端に消え失せる。アルトリンデとライターの光が相殺しあったのだ。
 だが光が消えた後、そこにライターの姿はなかった。
「あー……終わっちゃいました?」
「うむ、一件落着というやつじゃな」
 少し残念そうな表情の麻弓だが、彼女なりに楽しめたようではある。またその横ではルルティアが大きく伸びをしていた。
「ん? これ……原稿?」
 どこからともなくひらひらと落ちてきた複数の紙切れをロートが手に取った。覗き込むアルトリンデ。それにはびっしりと文字が書き込まれている。
「あれ、もしかしてあのオブリビオン、物書きさんだったのです?」
 そういえば、絵を描いているような腕の動きではなかったような気がする。
 一応皆で原稿の内容に目を通すが、内容からするに自分達がモデルであることは間違いない。
 しかし明らかに原稿の対象年齢が一定以上であることや、やっぱり原稿内で酷い目にあっている事が確認された後、原稿は丁寧に処分されたのだった。

 どこからともなく風が吹き込み、処分された原稿が舞う。そこに記されたこの原稿のタイトルは――。
『メルティ・ラビリンス ~伝説のカカオの木の下で~』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月13日


挿絵イラスト