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迷宮災厄戦⑱-18〜知っているのか、オリジン!?

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン #イマジンモンスター

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「クスクス……もう何度倒されたかは分からないけれど、私以前に倒されたオリジン達は、オリジンの中でも最弱の存在」
 舞い踊る花と、咲き誇るトランプと、風に散る怪物達に囲まれて。
 悠々と玉座につく彼女、オウガ・オリジンは己を賛美し、自らが敵達を待つ。
「来ればいい、猟兵達。どんな剛力も、技術も、英知も、この私には通じない。何故なら―――」
 くわっ、と何処にあるかも分からない口を開き、彼女は豪語する。
「―――何故なら、私はこの地にて、さいきょーの存在となったから!」

 フォーミュラとなったからには、一度は夢見る『世界最強の存在』。
 今やオウガ・オリジンは、『世界最強の存在』を語るイマジンモンスターとなったのである!


「……、私からの詳細説明は、うん、無しで」
 グリモアベース発の猟兵向け汎用戦況説明冊子の山を指さして、白い護刀のヤドリガミたるファンは不貞腐れていた。
 もぞもぞと、ソファの上で垂れファン惰になりながら、説明することさえ気怠い世界の敵について、一言だけ口にする。
「……予知の中では、フォーミュラに逃走はないのだ! って豪語してたよ。おそらく、全てを受け止めた上で、猟兵に圧倒的な“さいきょー”具合を示したいんだろうね。いいんじゃない? 世界特性を上手に応用して、あなた達も思いきり、全力全開を出しきってくればいい」
 眉をへの字にしたまま、ファンは鞘から抜いた刃を床に刺して転移の門を斬り開く。
「それじゃ、いってらっしゃい。無事に帰るんだよ?」


BB
 <ヤローォ!
  シンサクブッコンデヤラァア!!

 おはこんにちこんばんは、さいきょーの響きに誘き寄せられた私がやって来た!
 第三作目です、どうぞよろしくお願いします。
 以下補足。

 シナリオ傾向:『シリアス~ギャグ。ただしオリジン、てめーはギャグ固定だ』
 現場:『想像力の国』

 今回、参加してくださる方々には“さいきょーのオウガ・オリジン”と戦ってもらいます。
 あんなイカれたオリジンちゃん様でも実力は本物です、舐めてかかると一捻りです、コロコロされます。狂気の国故致し方なし。
 難易度は“やや難”です。故に、どんなスタイルであれ“プレイングボーナスを意識して行動して下さい”。
 逆説的に、要点さえ押さえていただければ、“さいきょう”の猟兵達の活躍をご提供させていただきます。
 想像力の国では、強く想像することで大体の事が実現出来そうな気がします、多分、おそらく。
 どうぞ、必殺技の演出に字数をお使いください。
 想像するのは常に最強の自分だ!

 プレイングボーナス:『さいきょうのそんざいに変身する。』
 ※本シナリオにおいて、変身の定義は広く捉えることとします。必ずしも姿を変える必要はありません、パワーアップ程度の認識でOK。

 プレイング受付はシナリオ公開後、MSページにて発表します。
 参加者の公平を期すため、指定する受付時間前の提出はいかなる場合も採用しませんのであしからず。
 受付数は5名を最低保証とし、以降は受付順に、失効期限までに書けるだけ頑張ります。

 今回使用できる『略記号』
 ◎:アドリブ可・共闘可。
 〇:アドリブ可・共闘不可。
 △:アドリブ不可・共闘可。
 ✕:アドリブ不可・共闘不可。
 G:ギャグ表現OK。
 V:暴力・グロ表現OK。
 P:ピンチ表現OK。
 S:シリアス希望。
 ※ただし、オウガ・オリジンは余程にプレイングで引っ張らない限りギャグ体質です。
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』とイマジンモンスター』

POW   :    イマジンモンスター・ギガンティック
【現実改変ユーベルコード】を使用する事で、【全身からオウガ達の頭部】を生やした、自身の身長の3倍の【イマジンモンスター】に変身する。
SPD   :    イマジンモンスター・スピード
【現実改変ユーベルコードを使用する】事で【イマジンモンスター】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    イマジンモンスター・ディフェンス
対象の攻撃を軽減する【イマジンモンスター】に変身しつつ、【身体から溢れ出すトランプ】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

地籠・凌牙
◎GV
あー。あー、あれかこれは。最強と書いて「バカ」って読むやつだ。
間違いない、何故なら俺の胃が既にキリキリ痛んでいるからだ!!!
何でどの世界もボケ過多なんだよ!!!!(切実)

……上等だ。
お前が最強のボケ通しで世を支配するというなら俺はそれをツッコミで止めてやる!最強のツッコミニストとして!!

出ろ最強のボケ特効武器「ハリセン」ッッ!!!
これに俺の【怪力】が入った一発、涙目だけで済むと思うなよ!

これこそはボケを滅ぼせしツッコミ!必殺!「賑やかしきアリスへの折檻(ハリセン・ブラッド・ジョーク)」!!
(誰かっぽくハリセンの一撃を振り下ろしながら片っ端からツッコミすることで逆に相手を動揺させるムーブ)


ルドルフ・エルランゲン
◎G 絡み・アドリブ大歓迎

あらゆる能力でさいきょー、そりゃすごい!
私も『相手を褒める能力』には自信もあるんですよ?
お互いを相手に言い合って、どっちが太鼓持ちとして優秀か勝負です!

■心攻の計(wiz)
まずオリジンさんは覚悟が違いますね、どんな勝負からも逃げない!、すごいなー
力も、技も、知恵もすごい!、オリジン・オブ・オリジン!あふれ出すトランプも鮮やかな事!

…とかいろいろゴマ擦って巻き込み、逆に相手からは私におべっかを言わせる
私を褒める為に本心のように謙遜(卑屈に)させる事で自己の『トータルとしてのさいきょー性』に疑義を抱かせ、「自分が褒めた通りならこいつには勝てないんじゃないか?」と錯覚させる



●アレっ?の一決

『―――、アレっ?』
 結果から言うと、オウガ・オリジン(以下、オリジンちゃん様)は宙を舞っていた。
 さいきょーたる彼女が、なぜこのような目に遭っているのか。
 それでは、皆様と一緒にこちらのVTRから見ていこう。

 過去、別所において可憐な姿をしていたはずのオリジンちゃん様は、今や凄まじい狂気を孕んだイマジンモンスターとしてこの世界に君臨していた。
 具体的にどれくらいやべー姿かと言えば、オリジンちゃん様の両肩の辺りから“ばんだーすなっちさん”と“じゃばうぉっくさん”の頭がにょきっと生えて組体操しているような感じである。なお、猟書家のナイスミドルダンディズムなサー・ジャバウォックとは一切関係ありませんのであしからず。
『今の私は、さいきょーだッ! ……おっとっと』
 オウガの頭分で身長増3倍を稼ぐオリジンちゃん様はバランスの悪さによろめく。
 しかし侮るなかれ、この様相をして、彼女はこの世界においてまごうことなくさいきょーなのだ。
 対応を間違えれば、カートゥーンアニメのワンシーンの如く、一撃で血みどろブシャーと屠られてしまうこと必至なのである。
(あー。あー……あれかこれは。最強と書いて「バカ」って読むやつだ)
 それでも、心の中で思うことぐらいは自由であろう。地籠・凌牙(黒き竜の報讐者・f26317)は死んだ魚の目をして現状を受け入れようと努力していた。
 現実とは残酷だ。いや、アリスラビリンスは仮想の国に近いかもしれないが。
 ともかく、凌牙のストマックエイクは高まっていく、胃を苛む理由がこの場にもう一人いたからだ。
「いやー、あらゆる能力でさいきょー! そりゃすごい!」
 ニッコニコしながらオリジンちゃん様を褒めちぎるメガネの男が一人、ルドルフ・エルランゲン(黄昏に抗う白梟・f03898)はファンクラブ会員No.001と言ってもおかしくないくらいのテンションだったのだ。
(うがぁあッ! くっっっそ腹イテぇ!! 何でどの世界もボケ過多なんだよ!!!!)
 この世界に働く強力なギャグ補正で描写省略されているが、実際のトコロ、凌牙を苛む胃痛は割と深刻だ。
 胃壁各所に見るも無残な潰瘍がいくつも出来、流血し、胃酸過多で焼け付き傷付いた箇所が猛烈な痛苦をもって凌牙の神経を削り続けているからだ。
 戦いは既に始まっているのだ、そういった意味では、凌牙はオリジンちゃん様の無意識なる猛攻に身を晒していることになるのかもしれない。
 あまりの胃痛に膝を折りくずおれた凌牙を尻目に、ルドルフの方はと言えば、相変わらずの様子でオリジンちゃん様を褒め讃え続けていた。
「ああ、オリジンさん、流石はフォーミュラと言うべきか。その威容、何をせずともそこの猟兵を始末せしめた圧倒的存在感。私は、このままあなたの身じろぎ一つで露と消える憐れな存在なのでしょう……」
 ほろりと涙し、フォーミュラの強大さと自らの儚さを比較し膝をつくルドルフの様子に、オリジンちゃん様は少しずつ、気分を良くしているようだった。
『そ、そう……かな? そう、だよね! だって私、フォーミュラだよ、ちょー強いに決まってるよね! うん、うん! それにちゃんと気付けるなんて、あなたも少しは出来るみたいね!』
 あらゆる戦場において敗戦を重ねる彼女にとって、ルドルフの言葉は甘き蜜のように耳に沁み、茂る蔓のように心に絡みついていく。
 それが、埋伏の毒であるとは、純粋故に気付けないまま。
「私を褒めるなんて、そんな、もったいない言葉です。力も、技も、知恵も優れた存在。原初のアリス、オリジン・オブ・オリジン! あふれ出すトランプも鮮やかなる事!」
『ぇ、ええ! よくぞ気付いたわね! このトランプは凄いのよ、ちょーやばいのよ! 猟兵なんてちょちょいのちょいなんだから!』
 ぶわっさぁと宙に溢れるトランプを花吹雪の如く華麗に操り、オリジンちゃん様のテンションはいよいよ有頂天に達する。
 オリジンちゃん様は、とても嬉しかったのだ。
 猟兵の一人は自らの威光によってか眼前から消え去っているし、もう一人に至ってはこれ以上ないと言う程に褒めてくれる。
 ここで自分を褒め讃えてくれる彼を倒すのはとても心苦しいものがあったが、心に灯ったこの自信をもってすれば、波のように押し寄せる猟兵達を倒すことも訳ないように思えたのだ。
 オリジンちゃん様の心は温められ、空に浮く風船のように膨らみ舞い上がる。
 そう、違和感に気付くまでは。
「いやぁ、まずオリジンさんは覚悟が違いますよね、どんな勝負からも逃げない! “フォーミュラに逃走はないのだ!”、すごいなー!」
『そう、私は偉大なフォーミュラ! あなたが知っているように、フォーミュラに逃走はないの―――』
 はて。この男は、何故、そのセリフを知っているのか。
 猟兵達が来る前に独り言ちたその言葉を、何故、この男は、さも当然に語るのか。
 甘い甘い蜜で満ち足りていたオリジンちゃん様の心に、ヒヤリと、冷水のような何かがもたらされる。
 それは、付け入るには決定的な隙となった。
 見れば、ルドルフが意味深に目配せしている。
 誰に?
「……上等だ」
 オリジンちゃん様が振り向いた先には、吐血しながらも立ち上がり、十分に力を溜め切った凌牙がいた。
「なぁ……最強のボケ特効武器って、知ってるか?」
 振りかぶるその手に収まるは、想像力に模られていく純白の、ハリセン。
「お前が最強のボケ通しで世を支配するというのなら、俺はそれをツッコミで止めてやる! 最強のツッコミニストとして!!」
 オリジンちゃん様は目の前の事象に反応出来ない。
 心が、乱れているのだ。
 目の前のハリセンに。
 そして、褒めちぎられていたことが嘘だったという事実に。
 クィとメガネを上げるルドルフのしたり顔。見つめるオリジンちゃん様の心には、深い深い猜疑心が広がっていくのだった。
「さぁ、お前のボケを数えろ! うぉおおおおッ!」
 振り抜かれるハリセンが亜音速に達し、輝きさえ伴う軌跡がオリジンちゃん様の頭頂部をスパーン!する。
「なんやねんそのけったいなカッコ! 中学生の組体操かーい! しかもジャバウォックはおっさんの方じゃないんかーい! どっからそないなトランプ出てくんねーん!」
 スパーン、スパーンと乱打されるハリセンに、オリジンちゃん様はとうとうよろめく。
 好機とばかりに、凌牙は渾身のフルスイングを放つのだった。
「てか、最強モンスターがバランス崩しておっとっとって、ちょっとだけ可愛いやーん!」
 右斜め45℃下方から抉り込むように振るわれたハリセンが、クリティカルにオリジンちゃん様をとらえる。
 あとは冒頭の通り、正気に戻ったオリジンちゃん様が唖然と宙に舞うことになるのであった。

 なお、この一連の技が“賑やかしきアリスへの折檻(ハリセン・ブラッド・ジョーク)”という名を冠したというエピソードは、また別のお話である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ペイン・フィン
◎GVP

最強、か
そうだね。自分が、あえて、想像するなら…………

今はまだ、たどり着けない最奥
限界の、その先
'いつかたどり着く最強の自分を'
イメージする

少し残念だけど、背丈は、変わらない
服はいつもの黒でもなく、白でもなく、灰色に染まる
怨念と、浄化
相反する2つを、完全に制御し、扱う

オリジンの攻撃は、浄化の力を円盾に固めて、弾く
……悪感情を浄化し、沈静させる優しき盾
攻撃のイメージを消し去り、中和させる

引き抜くのは、'名無しの禍惧枝'
怨念の力を喰わせ、能力強化し、攻撃
そして、コードも発動
狙うは、敵の力の源
"敵の現実改変能力を盗む"

どんな王も、冠を盗まれれば、人に落ちる
最強って、案外、そんなもの、だよ


勘解由小路・津雲

最強の存在、か。おれにとって……、いや、私にとっての最強は、かつての主、勘解由小路在高(あきたか)ですね。若くして亡くなりましたがあのまま研鑚をつめば、立派な退魔師になっていたでしょう

【戦闘】
(見た目にほぼ変化なし、ただ眼は黒く、自身は器物に)
「やれやれ、なんであんな出鱈目な奴を相手にしないといけないのか。いくぞ白虎鏡、というか行って来い白虎鏡」

あいかわらず器物の扱いが荒いですね!

「冗談はさておき。敵は紙片の類を飛ばすか。朱雀、青龍、力を貸せ。役立たずの虎は寝てろ」

扱いがひどい!

【エレメンタル・ファンタジア】で炎の竜巻を起こし、トランプを焼き尽くす。

……ああ、だが敵を倒せば、私はまた独りか。



●人の造りしモノ達

 宙に打ち上げられたオリジンちゃん様は力なく地に墜落した。
 先の猟兵達は機に乗じて戦線を離れており、今、彼女の姿を認めるのは新たにきたる二人のヤドリガミであった。
「えっと……こんな時、どうすればいい、かな……」
「笑えば、いいんじゃないか?」
「そして、決戦、想像力の国……?」
「お、ペインもなかなか、分かってきたな。っと……来るぞ」
 冗談を交わし合う二人、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)と勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)の言葉を聞いてか聞かずか、倒れ伏していたオリジンちゃん様は突如笑い出し、ゆらりと起き上がった。
『ふふ……くふふ……そっか、そうだよね。はじめから、誰かの言葉なんて信じちゃいけなかったんだ。必要ないもんね、信用ならない誰かなんて』
「何か、言外におれが胡散臭いと言われているような気もするが……、ッ!」
「津雲。どうやら、おふざけの時間はおしまいみたい、だよ」
 間一髪飛び退いた津雲の足元を、鋭利なトランプ群が刺し貫いていた。
 ざわざわと剣呑な雰囲気を纏い始めるオリジンちゃん様に、二人は意識を改める。
『さいきょーであること。それは、他の誰でもない、私自身が自任すれば、それでいいんだ』
 ぐにゃりと、世界がゆがんだ気がした。
 オリジンちゃん様の一挙手一投足が、現実を捻じ曲げる気配を伴っていたのだった。
 自然な流れでペインは構え、津雲は嘆息する。
「やれやれ……何が詳細説明は無しだ。此奴は間違いなく、化け物だぞ」

 空を切る無数のトランプが飢えた猛禽の如く二人を襲う。
 拷問器や式神で応戦してはみるものの、圧倒的な物量と想像力に裏打ちされた強度にはまるで歯が立たない。
 散り散りに破られゆく式を尻目に、津雲はさも参った様子で戦況を嘆く。
「これは、ちとまずいな。想定しているつもりではあったが、現実改変の影響がここまで大きいとは」
「うん、これは、厳しい。帰ったら、一言、言っておかないとね」
 苦境に立たされている二人には、けれど、絶望の様子はなかった。
 無事に帰り、件のグリモア猟兵に小言を言わなければと思うくらいには、未来を見ている。
 彼らには最低限やるべきことは伝えられている。故に、あとは実践するしかないのだ。
(最強、か……そうだね、自分が、あえて、想像するなら―――)
 拷問器としての彼、ペインは、思う。
 今はまだ、たどり着けない自身の最奥。
 己が殻を破った限界の、その先。
 “いつかたどり着く、最強の自分”を、イメージする。
(最強の存在、か。おれにとって……いや、私にとっての最強は―――)
 呪具としての彼、津雲は、思う。
 若くして亡くなった、自らが主、勘解由小路在高(かでのこうじあきたか)の姿を。
 その類稀なる才覚は、成し得なかった研鑽の果てに、最強の退魔師と謳われる未来もあったはずだ。
 有り得なかった二つの可能性を、二つの造られしモノ達が、強く、想像する。
 そして、ここは想像力の国。
 物に宿った想いがカタチを成した彼らであれば、その実現は、ある意味必定だったのかもしれない。
 二人の姿が突如眩い輝きに満ちると、雰囲気を異にする二つの存在がそこに在ったのだった。
『……ッ! 想像力の国のチカラを、こうもあっさりと使いこなすなんて!?』
「―――あっさりでは、ないよ。これは、自分がずっと願い焦がれてきた、そうあって欲しかったカタチ、だから」
 ペインは、いつもの黒でも、白でもない、灰色に染まりし姿をしていた。
 怨念と浄化、相反する二つを内包する、中庸をなす姿。
 背丈は変わらないままに、その手には、かつて在りし日の鋼の盾を携えていた。
 一方。
「―――で。何だ、彼奴は。やれやれ……なんであんな出鱈目な奴を相手にしないといけないのか」
 津雲の似姿、否、オリジナルたる勘解由小路在高の姿が、その黒い瞳を自分の討つべき敵へと向け、ぶつくさと小言を零す。
 白虎鏡に刻まれた記憶の中の彼を、ヤドリガミの身体に降ろした宿り身のまじない。
 使役するではなく、完全に明け渡す、ある種神憑りの域に達した術の極致。
『どうして! ここは、この世界はッ、私の国なのに! なんで、なんでなんでなんで!?』
 オリジンちゃん様は機嫌を損ねた子供のように駄々をこねる。
 世界の中心であるはずの自分を差し置いて願いを叶える彼らの姿に、憎しみと嫉妬を抱いた。
『思い通りにならないモノなんて、要らない!』
 現実が、想いによって捻じ曲がる。ありえない速度に加速したいびつな世界の主人公は、己にとっての異物を排除すべく、双肩に乗せた怪物達をけしかけるのだった。
「津く……えっと、何て、呼べばいいかな?」
「在高と呼べ。白虎鏡もいくぞ、というか行って来い白虎鏡」
(あいかわらず器物の扱いが荒いですね!)
 清濁併せるペインと、降ろし宿された在高と、いつの間にか器物に収まっていた津雲の意識は三者三様にオリジンちゃん様へ対応していく。
「時間稼ぎは、自分が担当、かな。盾は、守り、治めるモノ、だから」
「応、役に立たん白虎の分の仕事は任せるぜ」
(扱いがひどい!)
 凄まじい速度で迫り来たオリジンちゃん様の殴打を、ペインはその円盾をもって凌ぐ。
 感情のままに振るわれる対なる怪物からの暴力を、弾き、いなし、あらぬ方へと流しきる。
『なんで、なんでっ?!』
「あなたの攻撃は、想いが強過ぎて、読みやすいんだよ。少し、落ち着いた方がいい、ね」
 圧倒的な速度を伴えど、感情的なオリジンちゃん様の攻撃は単調過ぎた。
 感情を糧とし読み取る特性は円盾にもあり、故に、力を受け流すたびに込められた感情を食む盾は防御を見誤らない。
 ならばと、一歩引いたオリジンちゃん様は無数のトランプ群を展開し、あらゆる方位からの飽和攻撃を試みる。
『盾だって、これだけの攻撃は防ぎきれないでしょ!』
「そうだな、盾ではな。さて……お前の飛ばすそれらは紙片の類か。ほんっとに白虎では用が足りんな。青龍、やれ」
(…………)
 ペインが身を引けば、力を練り終えていた在高の術が広域に展開される。
 五行における木を司る青龍の権能、植物への干渉によって、想像力の国一面に茂っていた花達が一斉に花弁を散らす。
 花弁は宙へ泳ぎ、キリキリと舞いては鋭利なトランプ達を相殺していく。
 しかし、感情を爆発させたオリジンちゃん様の猛攻にはあと一手、押し戻す圧が足りない。
「ふむ、これでは足りんか。なら―――朱雀、やれ」
 淡々と語る言葉は、されど膨大な力を込めた上での命令。
 めらりと、空気が揺らぐ。
 宙に浮く花弁に緋が灯ったかと思うと、瞬く間に火炎が空を舐めた。
 青龍の成した花の舞をもとに、朱雀の羽ばたきがトランプの嵐を紅蓮の渦で上書きしていくのだった。
『ッ! ああ、もう、どうして―――!』
 オリジンちゃん様は叫ぶ、何もかも上手くいかない自らの国を批難するかのように。
 がむしゃらなままに怪物達の顎をかざし、術の隙を衝き、在高の頭を喰らわんと駆け出して。
「……、あなたは確かに、この国の王様かもしれないけれど」
 さらりと、白い翼が激高するオリジンちゃん様の顔を撫でていた。
「どんな王も、冠を盗まれれば、人に落ちる」
 本来節くれ立った骨翼でしかないはずのソレは、ペインの手の内にて、今この時だけは純白の羽箒の如き姿を取り戻していた。
 オリジンちゃん様の表情は、憑き物が払い落とされたかのように呆け、勢いを失う。
「最強って、案外、そんなもの、だよ」
 一時的にとは言え、現実改変能力を阻害された彼女は、怪物としての鳴りを潜める。
「その姿の方が、あなたには、似合っているよ」
 少女然としたその姿に、ペインは微かな笑みを向けるのであった。

 時を同じくして。
 亡き主の活躍に胸を躍らせた津雲を、時の制約からくる寂寥感が苛んでいた。
 想像力の世界とは言え限度はある。強力な術式の連続をもって、想像の主を保つ力は間もなく尽きるだろう。
(……ああ。じきに、在高は消えるのだろう。そうなれば、私は―――)
 続こうとしていた心の中の呟きは、鏡面を叩いた衝撃にかき消されていた。
 見上げれば、何も言わず、目も合わせぬ主の姿。
 されど、その口元は皮肉めいた笑みを浮かべていて。
(―――ええ。いずれ、また)
 言外のメッセージを受け取り、彼は、銀の眼を瞬かせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
刮目せよ!これが最強だ

姿もサイズも帝竜ヴァルギリオスに変身
盗賊の悪辣さ、猟兵の力を持つ最強帝竜の降臨だあ

オリジンも巨大化したらふしぎの国の怪獣大戦争だね
ノリノリで力に溺れて破壊の限りを尽くすぜ

オリジナル同様にバリア張ったり、超強化したりやりたい放題
トランプ邪魔だとばかりに火炎ブレスで焼き払い爆撃だあ

紅狐の猛撃発動…狐たちも変身で竜化しちゃいなよ
眷属たちと圧倒的暴力を振るう
オリジンを倒すが…同時に完全に力に酔って破壊を楽しんでいるのだ

手足を振り回し破壊の限りを尽くせば力溜め開始
八本の首から全属性攻撃のブレスを吐いてこの国ごと木っ端みじんにしてやるぜ

こりゃ、帝竜の皆様が傲慢に振舞う気持ちが分かるわ


木々水・サライ
◎GP
いや、世界最強の存在ってどういう部分で世界最強なんだよ。
そこ示せよ。ツッコミどころ満載じゃねぇか。

じゃあ俺、趣味の第一形態・世界最強のチェス王者になります~~~。
俺のユーベルコード【複数の白黒人形達(マルチプル・モノクローム)】使って駒代わりにするわ。そんで俺キングな。
あっちも合わせてくれるならいいんだけどなー。

まあチェス出来なくても第二形態の俺は世界最強のサイボーグなので何しても最強だし。
世界最強なのでオウガ・オリジンも【黒鉄刀】で倒す。

何?第二形態の俺がやられた?
仕方ない、最終形態・最強の俺を見せるしかねぇな。
最強の俺は最強なので複製義体達と連携するぞ。

…頭オーバーヒートしそう。


宵野崎・とも子
◎GVP
この地にて最強ってことはつまり、
この地に限らなければ最強ではないということかしら。
語るに落ちるとはこのことね。

そんな井の中の蛙さんに、他の世界の超強生物の力を見せてあげるわ。
その名も、クエーサービースト・マインドミナBVA!
無限に変化する外殻で身を包み、
あらゆる環境で最大効率の殺戮を提供する小惑星サイズのニクイヤツよ。
さぁ行くわよオリジンさん!
空を埋め尽くしてなお余りある圧倒的巨体と、
相手に合わせて最適の形をとる殺戮ドリルで粉みじんにしてやるわ!
あなたの想像力で、倒せるものなら倒してみなさい!

大きすぎて被害が甚大じゃないかって?
うっさい!そんなの想像力でどうにかなさい!



●あつまれ!想像力の国

 猟兵達の善戦によって、オリジンちゃん様はオウガとしての側面を潜め(以降、オリジンちゃん)、はじまりのアリスとしての姿を取り戻していた。
 いままで感情を映さなかった無貌には、円らな瞳、可愛らしい耳、ちょこりと上向く鼻、艶のある唇が揃い、小さな少女がそこに佇むのみである。
 世界の主の豹変に、辺りに控えていた怪物達はオロオロと事の成り行きを見守る。
 その場へ辿り着きたるは、物語の締めを飾ることになる3名の猟兵達であった。
「うぉおおお! ……って、あれ? 何だか、オリジン、おとなしくなっちゃってる?」
「俺もツッコむ心持でいたんだが……何か、毒気を抜かれちまったな、コリャ」
「最強を語るオリジンは、あくまでオウガの一面だったということかしらね」
 三者三様に語る彼ら、四王天・燦(月夜の翼・f04448)、木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)、宵野崎・とも子(推定吸血鬼・f29264)の三名は、茫然自失としているオリジンちゃんの側へと赴くとそのほっぺたをぷにぷにした。
「おお、柔らかいぜ」
「いや、不用意に触って大丈夫なのか? ……えっと、マジで柔らかいのか?」
「ええ、コレは女の子のもち肌ね。触ってみる?」
「男の俺が触ったら、オブリビオン相手とは言え事案だろうが……」
 サライが少しだけ触ってみたそうにチラチラと眺める最中、自失から戻ったオリジンちゃんがこの状況に一言零す。
『……、えっと……お姉さん達、何してるの……?』
 ビクリと驚く女性陣だったものの、無垢な呟きに敵意を感じなかったためか、オリジンちゃんのほっぺをこねくり回すままに言葉を続けた。
「最強のアタシ達が、オリジンちゃんを倒しに来たんだけれどねー。なんか、その顔を見たら気が抜けちゃってさー」
「オリジンさんのこの国、想像力の国での猛威に対抗すべく、最強のイメージを用意してきたのだけれど……今はあなたに、どう接したものかと悩んでいるところよ」
 苦笑いする燦ととも子の言葉を受けて、ぼんやりとしていたオリジンちゃんの瞳に輝きが灯る。
『さいきょー……お姉さん達は、さいきょーになりに来たの?』
 一歩離れた所で様子をうかがっていたサライは、オリジンちゃんの様子になにか不吉なモノを感じて声をかけた。
「おい、違うぞ。俺達は、さいきょーを語るお前を倒すために、最強のイメージを用意しただけであって」
『なぁんだ、早く言ってくれたらよかったのに』
 ニコニコと満面の笑みを湛えるオリジンちゃんは、世界を、歪めた。
 猟兵3名が自意識を保てたのは僅か。自らの想像へと流れゆく感覚が聞き届けた最後の言葉は、とても、××しげな声だった。
『みんなの願い、叶えてあげる。だから、私にも―――』

「いつッ……おい、みんな無事か」
 意識の覚醒したサライが周囲を見渡せば、周りには仲間の猟兵の姿はなく、オリジンちゃんがぽつりと佇んでいるだけだった。
「てめぇ、何しやがった」
 サライの射貫くような視線を受けるも、オリジンちゃんは何食わぬ顔で、どこか遠くの方を眺めながら答える。
『ん? 何って、世界最強の存在にしてあげたんだよ、みんなを』
「はァ? いや、世界最強の存在って、だから、それはお前を倒すための想像だって―――」
 ズシン。
 大地が震え、鳴動がサライの足元を揺るがした。
 身体の芯から響きが来る、とても嫌な感覚だった。
 直感で、振り向けば。
「――――――ッッッ!!!」
 竜の咆哮が空に轟いた。
「うそ、だろ……?」
 八つの顔を持つ、かつて最強の名をほしいままにした帝竜、ヴァルギリオスの偉容がそこに在った。
 サライは噂程度しか知らなかったが、その存在感が一線を画すことは、今まさに肌身で感じて理解できた。
『でね、お兄さん達に先に謝っておかないといけないことがあってね?』
 どこか暢気な様子でサライに話しかけるオリジンちゃんは、しかし、とんでもない事をさらりと打ち明ける。
『この世界、もうすぐ崩壊しちゃうかも?』
「………、は?」
『だーかーらー、私のキャパシティを超えた存在を具現化しちゃったから、この世界の方が参っちゃったんだよ!』
 ぷりぷりと怒ったような口調でオリジンちゃんが事態を説明する最中、ヴァルギリオスの八口が光を溜め始める。
「え、ちょ、ま」
 放たれた。八輝の吐息が。
 凄まじい破壊力の奔流が、想像力の国の万物を壊していった。
 花は焼け、トランプは溶け、怪物達は凍てついてゆく。
 それは、かつての戦役においてもあったであろう、暴竜の業の再現であった。
 幸運にも巻き込まれずに済んでいたサライは、しかし、これ以上はないと言っていい最悪の事態に頭を抱える。
「誰だあんなモン想像した奴は!!」
『えーっと、ドラゴンさんを想像したのは……そうそう、狐の人だったかな。すごい想像力だね、あれだけ具体的に模れるんだから、もしかすると本物にも会ってるのかもしれないね!』
「そこっ、ワクワクした目で語るところじゃねーよ! てかアイツ、見境なくねぇか!?」
 まるで加減もあったものではない破壊光線の乱舞にサライは絶叫する。
『なんだか狐の人、ドラゴンさんを再現したまでは良かったんだろうけど、半ば意識が混濁してるみたいでね。私が渾身の思いで想像したすーぱーオリジンちゃんを倒しても止まってくれないんだよ!』
 オリジンちゃんの指さす先には、超巨大オリジンちゃんの姿が、溶け爛れ喰いちぎられた痛ましい姿で地に倒れ伏していた。
『と、言うわけで、私はここまで。頑張って生き延びてね、お兄さん?』
 オリジンちゃんの身体が笑顔のまま、無数のトランプとなって崩れていく。
 色々と無理が重なり、維持も限界であったのだろう。それでも楽し気な様子のまま、少女はその存在を終えていくようだった。
「お、お前……」
 サライは舞い散るトランプを見送りつつ、呟く。
「どうすんだよ、この状況……」
 死んだ魚のような目だけが、この世界の終わりを克明に写し続けるのであった。

(刮目せよッ、これが最強だ!)
 燦の心はとても晴れやかだった。
 かつて自らが仕留めた最強の竜、帝竜ヴァルギリオスの姿となって想像力の国に降臨したのだ。
 体中に溢れる力、それは本来、猟兵個人では持ちえない世界を統べるにあたう力。
 首を一つ薙ぐだけで地は微と砕け、吐息を零すだけで空は緋に染まった。
 楽しい、ただただ愉悦が思考を染め上げていく。
『やーらーれーたー……』
 目の前には、あっけない程の間に屠りきった超巨大オリジンちゃんが火の海に沈む光景が広がっていた。
(弱い。こんなんじゃ、アタシは満足できないぞーッ!)
「――――――ッッッ!!!」
 咆哮が空を震わせる。
 その一吼えだけでも燦の心は満足に満たされてゆく。
(あ。折角だ、狐たちも変身で竜化しちゃえ!)
 帝竜化した燦に呼び出された紅蓮の狐達は集い、その身の赤にふさわしい竜へと変貌していく。
 重厚なる雄たけびが上がり、山のような巨躯を持った炎竜ガイオウガが姿を現すのだった。
 そんな怪獣大集合の最中、くらりと、ヴァルギリオスに扮する燦は首をよろめかせる。
(ぁ……あれ、なんだか、頭がぼーっとする、ような……?)
 想像力とて、無限ではない。
 燦にいかな強力な精神力があろうと、フォーミュラの姿を真似ることに限界は近付きつつあった。
 それでも、高揚した精神は半ば正気を失いつつも最後の瞬間まで帝竜を演じ続けることだろう。
 そう、あと少しだけ。

「じゃあ俺、世界最強のチェス王者になります~~~。あ、そんで俺キングな」
 サライは、自らの分身達を使ってチェス盤風の戦陣を組んだ!
 しかし、帝竜の首の一薙ぎで駒達は吹っ飛ばされた!
「まあまあまあまあ、落ち着け、俺。竜相手にチェスは無謀だったな、ウン、想定内だ。だが、俺は世界最強のサイボーグだ。想像するのは常に最強の自分ゥ熱ッうイ!」
 サライは、世界最強のサイボーグ群たる自分達を想像した!
 しかし、炎竜の吐息に焼き焦がされた!
「オイオイオイっ、このままじゃ死ぬわ俺! 文字通りフレンドリーファイアで!」
 間一髪直撃を避けたサライは焦げた髪をチリチリさせながら猛ダッシュで攻撃圏からの脱出を試みる。
 けれど、相手は一山と見紛うほどの巨躯である、逃走は困難であった。
「こうなりゃ、最終形態、光と闇が合わさって最強に見える俺を出すしか―――あ?」
 最早破れかぶれになって刀を構えるサライは、相対するが巨躯故に、その兆候に気付く。
 しかし、それが彼にとっての吉報であったかと言えば、決してそうではなさそうであった。 
「……頭、オーバーヒートしそう」
 空が、突如割れたからである。

 本日、とも子が最強のイメージとして想像したカタチは、ある意味、フォーミュラ級の厄災であった。
(この地にて最強を謳う井の中の蛙さんには、他の世界の超強生物の力を見せてあげるわ)
 無限に変化する外殻と、あらゆる環境で最大効率の殺戮を発揮する凶悪性を備えた歪なる生命。
 その名は、クエーサービースト・マインドミナBVA。
 この恐ろしき破壊の権化を、とも子がどこでどのように知ったかは定かではない。
 しかし、そんなことはこの際些事である。今重要なことは、とも子がこの暴食狂星を再現してしまったこと、その一点に尽きた。
(さぁ、行くわよ……えっと、どこに行くんだったかしら……ああ、そう、オリジンさん!)
 一つの生命としてはあまりに規格外すぎる、小惑星級の巨体と化したとも子は希薄する意識と共に落下を始めていた。
 何処へ?
 当然、倒すべき相手がいるはずの、想像力の国の大地へ、である。
 空を埋め尽くして有り余る圧倒的巨体が、相手に合わせて最適の形をとる殺戮ドリルが、想像力の国に在るあらゆるものへと影を落としていた。
 見上げる帝竜ヴァルギリオスと炎竜ガイオウガがいかに強大な存在と言えど、星一つに匹敵する存在の襲来にどうこう出来る機は既に逸している。
 巨大質量の異常接近に伴う大地の崩壊、大気摩擦によって加熱された灼熱の空気の充満。
 怪獣大戦争の世界観を超えた、惑星滅亡シナリオの到来。
 そんな夢物語の如き状況において、一介のサイボーグたるサライには、もはや出来ることは何一つなかった。
(あ。俺、死んだわ―――)
 世界崩壊の音を聞く間もなく、観測者サライは意識を手放すのであった。

 ぱちんと、弾けるような音が響く。
 それは夢の終わり、賑やかなる世界が本当の意味で終わる最後の音。
 暗く何もない虚無の水平線の果てで、原初のアリスが手を叩き、自ら目覚めるその刻。
『うん、うん! 私、とーっても楽しかった! いろんな人が、色んな物語を見せてくれた!』
 夢に揺蕩うアリスは、自分の想像力だけでは知り得なかったあらゆる世界のモノを猟兵との戦いで引き出し、実現し、楽しんでいたのだ。
 けれど、それもそろそろおしまい。永遠に覚めない夢など、ないのだから。
『もっと続いて欲しかったけれど……それは、わがままかな』
 ポロポロと崩れゆく自らの存在に、アリスは独り言ちる。
『私も、猟兵みたいに、世界を旅してみたかったな―――』
 それは、不思議の国へと消え逝くアリスの、小さな小さな願いだった。

 不思議の国の某所、そこは想像力の国があったとされる場所。
 気を失ったまま倒れていた猟兵達にケガはなく、間もなく付近を通りがかった愉快な仲間達の手によって眠りから覚めることになる。
 ただ、愉快な仲間達曰く、“その寝顔は、世界の終わりを見たかのような壮絶さだった”とのことである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年09月01日


挿絵イラスト