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救世猟兵譚~少年と魔女~

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●燃える家
 少年は森の中を駆ける。彼女/魔女に会うために。あって伝えなければならないことがある。
「早くあいつに伝えないと……」
 村人たちがここ最近の天災を彼女/魔女のせいだと捲くし立てる。しかし少年は知っている。それを止めようと誰よりも心を痛めているのは彼女/魔女なのだ。
「頼むから間に合ってくれよ……っ」

 しかし少年が彼女/魔女の家に着いた時には既に家は火の海だった。

●人形の予知
「これが当機が予知した未来です。ダークセイヴァーのある村で魔女狩りが行われます。そして罪のない魔女の命が奪われる」
 沈痛な面持ちで君たちを迎えたのは日頃から変わらぬ表情をほんの少しだけ歪めたアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)だった。アマータは説明を続ける。
「近頃この村では原因不明の疫病や天災に見舞われ魔物の目撃も増えています。それを村人たちは魔女の仕業だと言い張り彼女を亡きものにしようとしています。しかしそのような事実はどこにもありません。疫病や天災は別の要因からなるものです。皆様にはその原因を特定し魔女の無実を証明していただきたいのです。そのためなら暴走する村人にこちらの力を見せつけるのも致し方ありません」
 罪のない彼女の命が冤罪によって奪われる。そんなことはあってはならないのだとアマータは力説する。
「理解できないモノを排除しようとする村人の気持ちも当機にも分かります。ですが、それでも、自身の心の安寧のためだけに奪っていいいい命などないのです。村人たちに目を覚まさせて下さい。予知で見た限りだと村人たちはあまり友好的ではないですがその中で一人、魔女を救いたがっている少年がいるようです」
 この少年から話を聞けば魔女のことが分かるかもしれない。とアマータは続ける。

「今回のこの一件、予知には村を覆う黒い影の様なものが見えました。おそらくそれが元凶でしょう。皆様、お気をつけて。そして犠牲となろうとしている魔女をお救いください」
 そう言ってアマータは深々と頭を下げた。


灰色幽霊
 どうも初めましての方は初めまして。
 魔女の長いローブが好きな灰色幽霊です。

 三作目の今回はダークセイヴァーで冤罪により処刑されそうになっている魔女を救っていただきます。NPCの少年君もできればお手伝いさせてあげてください。

 シナリオの状況や注意事項がMSページにございますので一読よろしくお願いします。

 今回はギャグ少なめの(比較的)シリアスシナリオになると思います。
 それでは皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『村のはずれに暮らす魔女』

POW   :    村人に力を見せつけて暴走を止める

SPD   :    村人から話を聞く/魔女の家に忍び込む

WIZ   :    村人を説得して暴走を止める/現象の原因を推理する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イリス・ウィルター
疫病や天災を恐れ、その原因を倒そうとしたいのは分かるが、冤罪では意味がない。
しかも、それで治まらなかったら、明日は自分が危ないかもしれないのによくできるな。
そういう意見を言っても仕方がないだろがな。

私は村人達に接触して、力を見せつけて暴走を止めようか。
力を見せるなら刀は抜かなくてもいいだろう、鞘のまま、家々や畑など生活に影響があまり無い大きな岩や樹木を、UCも使用したうえで全力で叩く。
力をぶつけた物はどうなるか分からないが、少なくとも壊れるだろう。
この力が怖くないと言う者がいるなら、相手になろうと言って村人達を見る。


黒崎・颯也
「早着替え」でこの世界の旅人らしい服装(軽装)にして、「礼儀作法」も併用して村人達から事情を聞きます。
自分は猟兵…という説明が分かりにくそうでしたら、旅をしながらコレで魔物を狩るのを生業にしている者です、と自分の本体の刀を示します。(金糸の装飾のついた黒い拵えの刀)

どのような災害が起きているのか、何故それを魔女に結びつけるのに至ったかを聴取し、魔女を狩るのであれば危険があるかも知れないし、狩りは自分に任せてほしいと申し出ます。

力を疑われるようなら「怪力」「早業」をのせた『鋼断ち』で手近な岩なり大木なりを叩き切ってみせます。

笑顔で「これでも力不足でしょうか?」と「恫喝」して村人達を帰らせます。


アドルファス・エーレンフリート
【POW】
閉鎖的な環境ほど排他的になると言うが、ナルホドどうして 不安と集団心理も合わさってちょっとした暴徒であるな

では肌を焼く熱風で少々頭を冷やしてもらおうかナ 必要なのは時間、後はお節介がナントカしてくれるサ

(揮血精髄)を得物に塗布した後、斧を勢いよく地面に擦り点火、【炎血付与】 鐘の音が聞こえるかネ?

ついでに【灼炎領域】にて私と彼らを分かつように焼き潰し、これでデッドラインの完成である
聞く耳を持たずにその炎の道を超えるなら、命の保証はしかねるなぁ

「少々落ち着きたまえ 話なら聞くヨ?物事は一杯の飲み物を落ち着いて飲んでいる内に進むものであるからして」

モチのロンだが建物の引火には気をつけるヨ


ガルディエ・ワールレイド
此処は厳しい世界だ
疑心暗鬼になるは仕方ねぇのかもしれねぇ
だからこそ、人を助ける為に動いてる奴の手助けをしてぇ

◆行動
【POW】
村人の初動を止める事に注力するぜ
少年や他の猟兵が行動する前に雪崩込まれても困るからな

【ダッシュ】で村人達が魔女の家に至るルートに立ち塞がり【殺気】を飛ばして牽制
ハルバードを【怪力】で振って近くの木を切り倒す演出だ
こっそりと【竜神気】も併用
木を斬り飛ばし損ねた場合は捩じ切るし、木が倒れる方向を誘導して道を塞ぐ

「止まりな!俺はテメェらの村を襲ってる災厄を止める為に来た。この件に魔女は関わってねぇ。騎士として無実の人間を害する事は見逃せねぇ!」
あとは状況が動くまで膠着状態を狙う


我妻・惇
魔女、ね…んで、イイ女なのか?

まぁいいや、殺させなきゃ良いんだろ。迂回する奴は他に任せて、俺は正面を守る

魔女の家近くで地面に槍で線を引いて…舗石?いやあっても線は引けるだろ、こう、ざぁーっと
「こっから先行くんなら、命置いてく覚悟しろよ」
歯を鳴らしつつ口の端吊り上げ笑ってみせ、気勢を殺ぐ
それでも寄ってくるようなら槍の石突きで致命傷にならない部位を打つ

少年が側にいれば一応問う
「おいガキ、こいつら殺しても良いんだよなァ」
村人への威嚇の意味で大声で
否定された場合には
「…だとよ、おたくらは殺そうとしてるのにな」
「まぁ、ガキのご希望は俺の依頼内容とは関係ないがなぁ」

基本は低い抑揚の薄い声で、呟くように喋る


トリテレイア・ゼロナイン
騎士と振る舞うものとして、止めなければなりません
罪なき魔女の命が失われることも、少年の努力が無為に終わることも、恐怖から犯さなくてもよい罪を犯そうとしている村人達も

機械馬に「騎乗」し、魔女の家や村人達の前に急行
「礼儀作法」を使い、魔獣狩りや異変の解決を目的として訪れた遍歴の騎士を名乗り、村人達に心当たりを尋ねましょう

村人は魔女が原因だと叫ぶでしょうが、「確固たる証拠はあるのですか?もし無ければ、私はその女性を騎士としてお守りするため貴方達と戦わねばなりません」と槍と盾を持つ「怪力」で威圧します

件の少年や魔女が危険に晒されたら「優しく」「手をつない」で馬上に引っ張り上げて「かばい」ましょう


エウトティア・ナトゥア
【酔兵団】のメンバーで参加

POW村人に力を見せつけて暴走を止める

村人の境遇を思えば、疑わしき者に疑念を抱くのは仕方ないじゃろうのう。
とはいえ、無実の者が害されるのは哀れじゃ。ちとお節介を焼くかの。

まずは話し合いの場を整えぬといかんのう。
村人は頭に血が上っておるじゃろうから、力ずくでも止めるのじゃ。
《群狼の狩猟》使用
マニトゥに跨り村人を威圧。狼の群れで魔女の家を取り囲み一斉に吼えさせて村人を近づかせないようにするのじゃ。
ここから先へ進む事はまかり成らん。
わしの狼達の牙は鋭いのじゃ。先へ進むなら覚悟して進むことじゃよ。


御倉・ウカノ
【酔兵団】のメンバーで参加
判定:WIZ
どうしようもなく不安なことも、それを誰かのせいにしたい気持ちも理解はできるさ。だからこそ、誰かが止めてやらなくちゃあならないね。とはいえ、あたしには村人を説き伏せるような学も、はったりきかせられるような顔も持っちゃいないからね。一緒に来てる面子の役に立てるように動こうか。『フォックスファイアを使って村人たちの意識をゲンジロウとヒカタに誘導します。また、村人たちに対して事態の収束を自分たちにまかせるように一応の説得をします』
「あたしたちには理不尽と戦える力がある。ここはひとつ、あたしたちに賭けてみちゃあくれんかね?」


ゲンジロウ・ヨハンソン
チーム【酔兵団】にて参加じゃ。
アドリブなど大歓迎じゃよ。

正当な罪だってんなら仕方ねえが、運悪くそれが冤罪じゃと知っちまった。
ほっとけねぇよな、協力してくれとる奴らに奢る一杯が不味くなっちまう。

○作戦
仲間が十分に村人を怯えさせた所にリーダー風を吹かして登場。
【コミュ力】で少年と魔女を守る【覚悟】をもって村人と交渉。
内容は、力を示して「魔女の討伐を任せてもらえないか」という物じゃ。
話している最中にも鉄塊剣を【怪力】で軽々と振り回したりとアピールをしよう。
報酬もいらんと言えば、力さえ示せば承諾しそうなもんじゃが、どうじゃろな。

力の示しは、UC【殺戮の壺】を素手で地面に叩きつける。
これで十分じゃろ。


欄干橋・ヒカタ
【酔兵団】って名前はどうなのよ、ゲンさん(f06844)。
助けになるなら一緒に行くけど。

恐怖故に思い込みを深めているニンゲン、それも集団。安心させることが必要かもね。

WIZの行動。
ウカノ(f01251)が上手く追い込んでくれれば流石、と目配せしつつ、ゲンさんのPOWの衝撃に怯んだ人々の説得にあたるわ。

「流行り病に異形の出現、災禍の中で不安だったでしょうね。…で、誰かそれと魔女との関係を証明できるの?」
「ワタシたちには少しでも敵のアテがある。見ての通り圧倒的な力もある」
「アナタたちを必ず助けるから。プロに任せなさい」

話しながら、裏で糸を引いてるヤツに苛立つわ。
村人も被害者だものね。

*アドリブ歓迎



●境界線上の猟兵たち

 ダークセイヴァーのとある小さな村の中。今夜は何故か大きな人だかりができていた。村人たちの手には鍬や鎌の農作業具、包丁や叩き棒。武装ともいえぬそれらを持って村人たちは村外れへと向かう。目的はただ一つ、悪しき魔女を滅するために。しかしその行く手を阻む者たちがいた。
「な、なんだお前らは!」
 先頭の村人が声を上げる。身なりからして村長か何かだろう。一人だけ少々古めかしい片刃の長剣を手にしている。と言っても剣の重さで手が震えておりまともに扱えるようではなさそうだが。
「俺らが誰かって?」
 その質問に答えたのは我妻・惇(人間の戦場傭兵・f04976)口許を歪め、犬歯を打ち鳴らしながら惇は地面に槍で線を引いていく。まるでここが境界線だと言わんばかりに。
「邪魔者だ」
 低く抑揚の薄い声で呟くように村人たちに語りかける惇。その異様な風貌に村人たちは二の足を踏む。
「こっから先行くんなら、命置いてく覚悟しろよ」
 惇は自身の歯を鳴らしながらその口元を吊り上げにやりと笑う。
「うーむ、それでは分かりづらいだろう?こうした方が分かりやすい」
 そう言ってアドルファス・エーレンフリート(立てば胡乱げ 座れば不審 歩く姿は白々しい・f07048)は懐から自身の地獄の竜血を精製した揮血精髄を取り出し己の獲物である十字大斧鉄塊に塗りたくる。そして幾度か斧を振りまわし地面との摩擦により火をつける。
「これなるは大道芸。鐘の音と共に燃え上がる灼血をご照覧あれ」
 アドルファスがおどけながら斧を振るう。どこからともなく鐘の音が周囲に響き渡り村人たちにどよめきが走る。そのまま振るわれた斧から伸びる灼炎は惇が引いた線をなぞる様に上書きする。猟兵たちの背後に燃え盛る炎の境界線が村人たちの行く手を阻む。
「ここから先がデッドライン。聞く耳を持たずにその炎の道を超えるなら、命の保証はしかねるなぁ」
 白々しいその口調、だが背後の炎の熱量は地獄由来の本物だ。猟兵でさえ焼き焦がすその炎。村人たちが触れれば骨すら残らず灰となるだろう。
「君たち少々落ち着きたまえ。話なら聞くヨ?物事は一杯の飲み物を落ち着いて飲んでいる内に進むものであるからして」
 背後の炎で火を付けた葉巻を吸いながらアドルファスはにこやかに村人たちを挑発する。

 話が違う。村人たちは誰しもがそう思っていた。今夜は無抵抗の魔女を討伐するだけだったはず。こんな物騒な輩が来るなんて聞いていない。村人が隣の村人の顔色を窺う。誰しも次の行動を決めあぐねていた。同調圧力により集まっただけの集団。誰しも自分が損はしたくないのだ。
 ざわつきが止まぬ中、街路樹が2本へし折れる。片やガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)の竜神気を纏ったハルバードにより半ばまで切断されて捩じ切られ、片やイリス・ウィルター(刀の技を磨くもの・f02397)の鞘に納刀したままの一刀で根元が粉砕されていた。倒れた2本の街路樹はアドルファスの産み出した炎の境界線に重なるように道を塞ぐ。
「この力が怖くないと言う者がいるなら、相手になろう」
 口で説明するよりまずは暴走を止めた方が解決の近道だと考えるイリスは村人たちと相対する。しかしそれとは逆にガルディエは説得を試みる。
「止まりな!俺はテメェらの村を襲ってる災厄を止める為に来た。この件に魔女は関わってねぇ。騎士として無実の人間を害する事は見逃せねぇ!」
 仮にも騎士たるこの身、隠しごとは極力避けたい。だから真実をありのままに話す。
「何故見ず知らずのお前らがワシ達を助けようとする!報酬など払えんぞ!」
 自身が生きるので精いっぱいのこの世界。他人を疑い知人を欺く者たちに無償の奉仕など思いもよらぬだろう。しかもそれが得体のしれない力を持った者たちならばなおさらだ。こうして村人たちは一層警戒を強めてしまった。

 しかしこれこそが猟兵たちの狙いであり次の手への布石であった。


●真相を探る者~騎士と侍~

 他の猟兵たちの足止めにより魔女討伐に向かった村人たちが足止めされている頃、残った村人たちにこの事件のことを聞いて回る二人の猟兵がいた。機械馬『ロシナンテⅡ』に騎乗し遍歴の騎士を名乗るトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)とこの世界の旅人に扮した黒崎・颯也(酔生夢死・f04766)だ。二人は別々の方向から残った村人たちに話を聞いていた。
「それではその魔女というのは以前からずっと村のはずれに住んでいるのですね?……魔女というからには寿命もない、と?」
「違う違う、あの子の家はそういう家系だってだけさ。魔女って言ったって簡単な呪いくらいしかできないって話だよ」
「そうなのですか。魔女というからにはもっと恐ろしいものだと思っていました。お話ありがとうございます、マダム」
「マダムなんて騎士様は口が上手いねぇ。おばさん調子乗っちゃうよ!」
 そう言って事情を聞いていた恰幅のいい女性に別れを告げるトリテレイア。先程の女性の口ぶりでは魔女のことは村人の周知の事実らしい。それでは一体何故魔女は狙われているのか。それを考えがら次の家へと馬を進める。

「この辺りではそのような災害が起きているのですね」
「あぁ、そうだよ。あの魔女のおかげで今年の収穫はいつもの半分だ。備蓄がある家はなんとかなるがない家は誰かを売りに出さなきゃならねぇかもな」
 颯也が話を聞いてたのは片足に包帯を巻いた男。なんでも数日前の仕事中に捻ってしまったらしい。それで今回の魔女討伐は見送ったらしい。
「失礼、その災害の原因が魔女であるという確固たる証拠はあるのですか?もし無ければ、私はその女性を騎士としてお守りするため貴方達と戦わねばなりません」
 颯也と男の会話にトリテレイアが割り込んだ。身長が3m近く未知の全身鎧に見間違う風貌のトリテレイアに詰め寄られた男は腰を抜かし座っていた椅子から転げ落ちる。
「な、なんだおめぇ!俺は間違ったこと言ってねぇぞ!みんな言ってることだ!俺だけじゃねぇ!」
 後ろにずり下がりながら男は叫ぶ。そんな男とトリテレイアの間に金糸の装飾のついた黒い拵えの刀を割り込ませたのは颯也だ。
「お待ちください。こちらもその魔女とやらに用があります。これでもこの身はコレで魔物を狩るのを生業にしている者。話を聞いた限りその魔女の相手は俺が相応しそうです」
 腰を抜かした男を尻目に対峙するトリテレイアと颯也。男に背を剥けている背後の男に気がつかれぬよう颯也はトリテレイアに目配せ一つ。
 そう、これは仕込み。止める猟兵と魔女を狙う猟兵二手に分かれ村人たちの行動を阻害するという猟兵たちの作戦。その目的は信頼を得て情報を聞き出すためとこちらの手で村人たちに怪我人を出さないようにするためだ。
 ロシナンテⅡに騎乗したまま槍と盾を構えるトリテレイア、対峙する颯也もまた自身の本体たる黒い拵えの刀を鞘から引き抜く。
「俺の邪魔をするというのなら容赦はしませんよ?騎士様」
「それはこちらの台詞です。お侍さま」

 槍と盾、そして刀がぶつかり合いここに騎士と侍の偽りの戦いが幕を開ける。
「ひぃぃぃ!なんだこいつらぁあ!」
 巻き込まれただけの男は隅っこで独り蹲っていた。


●戦場の助っ人【酔兵団】

 村の中から剣戟の音が鳴り響き村人たちは異変に気がつき疑心暗鬼が増長される。
「おい、これもまさか魔女の祟りじゃ……」
「バカ言うな!魔女はまだ家にいるはずだ!」
「でも作物を枯らしたり疫病を流行らせられるなら……」
 ありもしない魔女が起こした惨状に恐れおののく村人たち。何故これほどまでに彼らは魔女を恐れるのか。それを知らなければこの事件を解決へと導くことはできないだろう。
「う、うろたえるな!こいつらの目的は分からんが魔女をどうにかすればいいのだ。皆わかっているな?」
 村長の檄が飛ぶ。しかしその言葉に賛同するものはいなかった。それほどまでに彼らの目の前に現れた猟兵は超常の存在だった。ここにいる村人だれしもが思う。『誰か代わりにやってくれ』と。
「ちょーっと失礼。通してくれ」
 そんな村人たちの気持ちを察してか偶然か。この場に現れたのは旅人というには少々不釣り合いな一団。ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)を先頭に村人たちを掻き分け境界線上に立つ猟兵たちと対峙する。
「だ、誰だお前らは!」
「お前さんたちの助っ人って奴だ」
「ワタシたちは【酔兵団】。流れで魔女や魔物といった怪異を退治しているの」
 自分で紹介しつつもゲンジロウの考えたこの酔兵団という名前に納得がいっていない欄干橋・ヒカタ(日かげ日なたと飛びにけり・f05881)。
「は、はぁ?そんなこと信じられるか!お前らに一体なんの得があるというのだ!」
 ヒカタの言葉にも耳を貸さない村長。しかしそれも想定の範囲内。御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)とエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)がそれぞれ自身の力を誇示すべくユーベルコードを発動させる。
「お前たち、狼の狩りというものを見せてやるのじゃ!」
 エウトティアの号令により現れる百を超える小さな狼の群れ。それは村人たちの周囲を囲みこれ以上の進行を許さない。そしてエウトティアに続くのはウカノ。妖狐たるウカノは自身の掌から生み出した狐火を自在に操り村人たちを照らしていく。周囲を囲む狼の群れと宙を漂う狐火の数々。村人たちは既に酔兵団の演出に酔いしれていた。こいつらならば自分たちの代わりに目の前の得体のしれない者たちと戦い魔女の討伐もしてくれる、と。
「あたしたちには理不尽と戦える力がある。ここはひとつ、あたしたちに賭けてみちゃあくれんかね?」
「……」
 村長の心も揺れ動く。しかし最後の心残りが一つ。
「報酬なんぞいらん。わし達にとっては魔女の討伐こそが報酬じゃ」
 巨狼マニトゥに跨りのそのそと村長の隣へとやってきたエウトティア。その言葉に村長の最後の心残りが消えうせる。言質はとった。これで心おきなく目の前の邪魔者も魔女もこの得体のしれない来訪者達に押し付けることができる。
「魔女の前にちょっくら準備運動でもしとくか」
 腕をぐるぐると回しながら前に出るゲンジロウ。前に立ちふさがる猟兵たちには事前に話は通してあるがここで下手に手加減でもして村人たちに怪しまれてはここまでの苦労が水の泡だ。よってここでは全力出す。
「おら、避けてみな。殺戮の壺に呑まれちまうぞ!」
 地面に叩きつけられたゲンジロウの単純で重い人間の限界を超える程の威力を持った拳は舗装も碌にされていない村の街道を一撃で粉砕、陥没させる。それを皮切りにエウトティアの狼が、ウカノの狐火が境界線を守る猟兵たちに殺到する。そしてそれに応戦すべく打って出る燃え盛る斧を担いだアドルファス、竜神気を纏いしハルバートを振りまわすガルディエ、槍を構え牙を噛み鳴らす惇、今まで鞘に納めていた刀を抜き放つイリス。ここに猟兵同士の戦いが幕を開ける。

 先陣を切ったのはイリスと惇。エウトティアの放った狼たちを槍と刀で突き刺し斬り伏せていく。しかし如何せん数が多い。百を超える狼の群れは単体では脅威に成り得ないが数そのものが脅威になる。惇は槍を器用に使い迫る狼を薙ぎ払っていく。
「しゃらくせぇ!」
「数が多いのはそれだけで厄介…ねっ!」
 イリスも妖刀:紅葉姫を使い荒々しくも正確な太刀筋で狼たちを切り払っていく。エウトティアに操られたこの狼たちは惇とイリスを襲いはするがその身に牙と爪を突き立てることはなかった。あくまでこれは村人の目を欺き信頼を得るための戦闘。
(倒されるために嗾けるのも狼たちに悪いが今回ばかりは目をつぶってほしいのじゃ)

 惇とイリスがエウトティアの狼たちと戦闘を繰り広げるその裏でアドルファスとウカノが相対していた。
「君も炎を使うのか。奇遇だネ、吾輩もだ」
 燃え盛る十字大斧鉄塊を片手に優雅に葉巻を吸うアドルファス。実際この戯れの中とは言え自身の炎とウカノの狐火、どちらの火力が優れているか試してみたいと思っていた。
「あたしはこっちのがいいんだけどね……」
 背負う刀に手をかけるウカノだったがここで刀を抜く理由も無い。お望み通り火力比べと洒落こんだ方がよさそうだ。ウカノはアドルファス目掛け狐火を操作した。

「どっこいしょお!」
 ゲンジロウの鉄塊剣がガルディエのハルバード目掛け振り下ろされる。見たもの通り重厚なその一撃はガルディエの振るうハルバードを軋ませる。しかし竜神気を纏ったハルバードは生半可な攻撃では壊れない。
(ってぇ、ちったぁ手加減しろよなぁ)
 悪態をつきながらもガルディエはお返しとばかりにハルバードを振るう。こちらの手を痺れさせる攻撃をしてきたのだ。次はゲンジロウの手が痺れる番だろう。
「そーらよっと!」
 
 ここまでの戦いは事前の打ち合わせ通りの演武の様なものだが今まで見せたユーベルコードの数々が猟兵たちの超常性を村人たちの認識にすりこんでいる。ゲンジロウの先の一発もあり完全に村人たちは猟兵たちの戦いを見入っていた。こちらの目論見通りに事が運びヒカタはウカノやゲンジロウ、エウトティアに流石、と目配せする。そして雰囲気に呑まれた村人たちへの説得を試みる。
「流行り病に異形の出現、災禍の中で不安だったでしょうね。…で、誰かそれと魔女との関係を証明できるの?」
 他の猟兵たちが戦闘を行う中ヒカタは村人たちへと語りかける。しかし村人たちはその問いに誰ひとりとして答えることはできない。最初に言い出したのは誰だったか?何故その言葉を信じていたのか。それすら誰にもわからない。それはヒカタにこの一件の糸を引く存在がいることを実感させ苛立ちを覚えさせる。
「ワタシたちには少しでも敵のアテがある。見ての通り圧倒的な力もある」
 それは村人たちも疑いようのない事実。
「アナタたちを必ず助けるから。プロに任せなさい」
 これは猟兵たちの嘘偽りない言葉。

 こうして猟兵たちは自らの手で膠着状態を作り出し事態の収束を図る。他の仲間が真相を掴むまでこの仮初の戦いは続く。

 終わりの雨が降るその時まで。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

リミティア・スカイクラッド
異世界の魔女に興味は尽きませんが、詮索する前にやるべきことがありますね
村人とて救うべき命に違いはありません。リムは使命を果たします

魔女を名乗るのは得策ではないでしょう
旅の医師を称して村人の説得にあたります
「魔女を殺せば災いが去るというのは早計です。リムがお力になれませんか」
疫病に罹った村人を診て【魔女の秘薬】で治療を試みます
元凶を討たない限りは一時凌ぎでしょうが、その一時の猶予が今のリム達には必要です

他にも防疫や衛生の知識を伝え、「コミュ力」で人心の安定に努めながら
【影の追跡者】を隠密裏に黒い影に向かわせて「情報収集」を試みます
五感共有で得た情報を他の猟兵の情報を照らし合わせ、正体を探ります



●魔女の救急外来

 動ける村人たちの大半が魔女の討伐に向かった村。つまり残っているのは動けぬ者たち。動けぬ理由は様々だがそんな彼らを見捨てられぬ者たちがいた。リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)だ。リミティアは原因究明の前にやるべきことがあると感じていた。原因を突き止めこれから起こることを止めるのも確かに大事だ。しかし既に病に侵される者、魔獣により動けぬ怪我を負った者達がいた。リミティアはそれを見過ごせない。リミティア自身もここで迫害される『魔女』の身でありながら迫害を行う村人たちを助けたいと願う。己の身分を隠し旅の医師を自称して。リミティア自身の血を媒介に生成された魔女の秘薬を用いて一人でも多くの村人を救う。

 それが例え一時凌ぎに過ぎずとも。リミティアは村人たちを救い続ける。
「魔女を殺せば災いが去るというのは早計です。リムがお力になれませんか」
 咳が止まらぬという老婆の治療を続けながらリミティアは村の広場に集まった村人たちに問う。
「それはどういうことですか?お医者様。村の皆が言っています魔女を退治すれば元に戻ると」
「例え魔女が元凶だったとしても退治しても現状が好転することはありません。この村の状況ですと近いうちにまた疫病が蔓延します」
「な、なんだってそんなことが分かるんだ!あんたはただの医者だろう!?」
「医者だから分かることもあるのです。この村の衛生環境、リムが見た限りの村の習慣から導き出された事実です」
 リミティアの言う通りこの村に公衆衛生などという概念はない。死体は浅く掘られた穴に土葬され、汚染水は家の外にそのまま捨てられている。現代のUDCに基づく知識を持つ者からすればあり得ない行いだがここではそれが当たり前であり誰も何も疑うことなく代々続けられてきた行い。

 そこに現代の魔女たるリミティアが魔法をかける。

「ですが疫病は防ぐことができるのです。リムが皆さんにその方法をお教えしましょう。そして皆さんはそれを他の誰かに伝えてあげてください」
 リミティアが教えたのは手を洗い清潔を保つこと。たったそれだけのことだがこの村ではそれが一番効率がいい。
「どうしてそれだけのことで病に罹りづらくなるのか不思議でしょう?お答えします。病を引き起こす悪魔は水が苦手なのです。それがリムの見つけた答えです」
 ウィルスや細菌の話をしても村人たちには理解を得られないだろう。だからこそ嘘という魔法にかける。
 村人たちが理解しがたい病の原因たるモノを村人たちが理解し得る悪魔へと置き換えリミティアは嘘という魔法で村人たちを説き伏せる。これで彼らの命がほんの少しでも長らえるなら。
(情報や足止めは他の方が行ってくれるでしょう。リムはリムのできることをします)
 誰かの助けになればと影の追跡者も魔女の家へと放った。あとは他の誰かが必要な情報を集めてくれるだろう。リミティアは今できることをする。一人でも多くの村人を救うのだ。

 魔女の救急外来は未だ眠らず。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イデアール・モラクス
フン、魔女狩りか…よく返り討ちにしないと感心する、私なら村ごと滅ぼしているところだ。
ダークセイヴァー出身の魔女仲間としては放っておけぬ、助けに行ってやろう。

・行動
原因究明と魔女の救出が最優先だ、まずは魔女を救わんとする少年に接触しよう。
「私は魔女イデアール、同胞たる魔女の危機に参上した。少年よ、魔女の居場所と最近の村の様子を教えよ」
掌から炎を出し、色欲の触手を見せれば私が魔女だと理解するだろう。
少年を伴い魔女の家についたら愛欲の軍勢を召喚、魔女宅を防衛させ私は魔女と少年と3人で原因推理を行う。
「何らかの存在が村人達を煽動しているのは確かだ、異変もソイツが引き起こしているのだろう」

※アドリブ歓迎


ヴィサラ・ヴァイン
……グリモア猟兵のアマータさんの予知を疑う訳ではありませんが、村人さん達の気持ちも分からなくはないんですよね。火の無い所に煙は立たない、って言いますし
逆に魔女さんが犯人のつもりで証拠を探してみましょう。魔女さんが誤解を受けてる理由も見つかるかもしれませんし
目立たないように魔女さんのお宅に忍び込んで、証拠を探します(技能:目立たない12)
いざという時は【ハデスの隠れ兜】で透明になってやり過ごします……頭の蛇さん、しゅーしゅー言わずに大人しくしててくださいね……?
日記があれば、最近の動向も掴めますし、アリバイの証明に使えるかもしれません
「何もしてないのに怖がられるのは、やっぱり嫌ですよね……」


シャノン・ヴァールハイト
【POW】
<心情>
原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)と神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)連携。
しかし天災は兎も角、疫病については死体を焼いて埋めれば良いのだが、埋葬を管理する者の杜撰さの方を裁くべきだと思うのだがな…

『行動』当方のUCは死霊を使うのが主なので、住民に見せるのは避けたい。故に、可能な限りUCを使用せずに技能である[怪力]を用いた身体能力を見せるだけで、暴走を止めたい。
だが、雨で防げぬレベルの火が用意された場合は、UCの使用者の動きをトレースすると言うのを利用して巨体で家を守るつもりだ。
連中の目が魔女で無く、当方に向く可能性があるのが問題だがな…


原・ハウスィ
神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)、シャノン・ヴァールハイト(死者の声を聞き、招く者・f10610)との連携を希望。
「冤罪はよくないからね、証拠を集めて村人を説得できるかどうか試してみるんだ」
【SPD】魔女の家に【目立たない】【忍び足】を活用して忍び込み「魔女がどのような人物か」また「今回の疫病や天災に本当に関係がないか」「黒い影と関わりがないか」の三点について調査する。
物的に魔女が今回の件と無関係である証拠が見つかれば、それを拝借する、もしくはその存在を記憶しておいて、村人を説得する材料として使えるようであれば、それを根拠に村人の説得を試みる。


神宮寺・絵里香
【WIZ】原・ハウスィ(f01358)とシャノン・ヴァールハイト(f10610)と連携〈心情〉・珍しくハウスィの奴がやる気になってるから、その補助でもするか。・敵を知り己を知れば百戦危うからずってな、オレは黒い影の方が気になるからな。 そちらから調査するとしよう。〈調査〉・ダークセイヴァーで起こった事件やオブリビオンの報告書を読みつつ、【世界知識】と【戦闘知識】を基に分析。黒い影の正体を探る。・基本的には光源を持ち込み、魔女の家付近で待機しつつ報告書を読む。 有事の際には時間稼ぎや陽動に動きハウスィの支援に回る。・村人の放火対策として、いつでもUCで雨を降らせる準備はしておく。


ノルナイン・エストラーシャ
冤罪による魔女狩り……悲劇的ですね。どうにかして救いたいものです……しかし、背後に何らかの思惑があるかもしれません。気をつけないと。

原因不明の疫病、天災、魔物の出現について、【学習力】や【世界知識】で調査しながら村人に話を聞いてみます。【選択したUC】で手分けして聞けば、何か分かるかもしれません。

何か分かれば儲けもの。分からなければ仕方なし。道中でアマータさんの予知に現れた少年も探し、一緒に魔女の家に向かってほしいとお願いします。
「冤罪であるなら、彼女の濡れ衣を晴らしたいと思いませんか?」

私達はシーフなので、家の中の調査は得意です。何か分かれば、他の人にも情報共有します。

※アドリブなど歓迎です



●魔女と善悪の人形、そして少年

 イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)とノルナイン・エストラーシャ(旅する機械人形・f11355)は予知に出たという少年を探していた。街道の街路樹の奥に広がる森、イデアールとノルナインは少年が通るのであればここだろうと目星をつけて探索を続けていた。
「チッ、意外と広いな。他の奴にも来てもらうんだった」
 想像以上に森の探索は重労働でイデアールは苛立ち舌打ちをする。しかしノルナインには考えがある様で。
「仕方ありません。他の方は他にやるべきことがあるのですから。それに人手が必要であればそれ相応の手段もあります。ブラックボックス解放。コマンドコード・パラドクス。来なさい、私でない私」
 ノルナインが呼びだしたのはノルナイン自身とは別の道を歩んだもう一人の自分。犯罪という道に手を染めた彼女も使いノルナインは予知の少年を探しだそうとする。蛇の道は蛇。人探しならばその手に詳しいもう一人の自分の方が得意だろうと考えたノルナイン。

 ノルナインが一人増え、三人に増えた一行だが存外早くお目当ての少年を発見した。15になるかどうかといった風貌のその少年は脇目も振らず森を一目散に駆けていた。しかしその足は魔女の手から放たれた無数の魔方陣から溢れだす触手の壁によって止められる。
「うわっ!?なんだこれ!?」
 今まで見たこともない触手に驚き足を止めた少年に近づいていくイデアールと二人のノルナイン。
「私は魔女イデアール、同胞たる魔女の危機に参上した。少年よ、魔女の居場所と最近の村の様子を教えよ」
「私とそっちの私はノルナイン。私たちは魔女を救いに来た。だからあなたの知っていることを教えて欲しい」
 魔女としての力を誇示するため掌に火球を浮かべながら単刀直入に要件を伝えるイデアールとノルナイン。少年は事情を呑み込めずにいた。
「ちょっと待て、危機とか救いにってどういうことだよ。あいつ……アカーシャのことをなんで知ってるんだあんた達」
 少年は戸惑いを隠せない。いきなり目の前に現れた未知の力を行使する者たちを信じろというのが無理な話だ。しかし少年には時間も力も足りていなかった。だから選べる選択肢など存在していなかった。
「それを説明しても信じられないだろう。だから話さぬ。しかし私たちは味方だ」
「彼女の罪が冤罪であるなら、彼女の濡れ衣を晴らしたいと思いませんか?」
「……あんた達のが本当にアカーシャを助けに来たかどうかはオレにはわからない。もしかしたらアカーシャの魔女の力を狙いに来た悪い奴なのかもしれない。でも―――」
 少年は力なく開かれた自身の両の掌を見つめ、拳を握りしめる。
「でもオレにはアカーシャを救えるだけの力がない。今だってオヤジたちがアカーシャの家に乗り込もうとしているのを止められなくてそれを伝えようと走ってるだけだ。―――って、そうだ急いでアカーシャに伝えないと!」
 少年は自分の目的を思い出し狼狽する。このままでは魔女の身に危険が降りかかってしまう。少年はそう心配していたのだが。
「それならば心配はいらん。私の仲間が足止めをしている」
「ですがそれもいつまで時間が稼げるかわかりません。できるだけ急いだ方がいいでしょう」
「仲間?あんた達みたいにこんな凄ぇことができる奴がまだ他にもいるのか?」
 二人の言葉を聞き少年の瞳に光が宿る。それならば魔女を、アカーシャを救えるかもしれない。その光明が見えてきた。
「ああ、いる。他の仲間たちも各自魔女を救うために行動している」
「ん?ちょっと待てください。まさか魔法を見たことがないのですか?魔女と知り合いなのに?」
「ああ、初めて見たよそんな凄ぇの。アカーシャの奴は薬作ってばっかだからな。自分でも魔力とか言うのはあるけど魔法なんて使えないって言ってたぜ」
 イデアールとノルナインは顔を見合わせ理解した。魔法を使わぬ魔女がここまでの事件を起こせるはずがない。黒幕はやはり他にいる。
「でもこれで俺の決心がついた。あんた達にオレの知っているアカーシャのことを全部話す。そんでアカーシャを救ってくれ。もしあんた達がアカーシャを狙う悪い奴だったとしても顔見知りの村人に狙われるより大分ましだろ?」
 少年は泣きそうな顔をして笑う。自分に力があればと切に願うが、願っただけではなにも変わらない。大切な誰かを守りたいのにそれを見知らぬ誰かに願うしかない自分の不甲斐無さが許せない。
「……少年、名前は?」
「オレか?オレはゼノン。ただのゼノンだ」
 しかし少年、否、ゼノンの真摯な気持ちは猟兵の心を動かした。
「……私は村に戻って村人にも話を聞いてくる」
「わかりました。よろしく願いしますよ、私」
 もう一人のノルナインは来た道を戻り村で情報収集を続ける。少しでも多くの情報を集めるために。
「では聞かせてもらおうかゼノン。そのアカーシャとかいう魔女のことを」


●スネーク&スニーク

魔女の不在を見計らい、その家に侵入する二つの影があった。ヴィサラ・ヴァイン(もうどくけっとうしょ付き・f00702)と原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)の二人だ。気配を殺し、息も殺す。二人の存在は闇に溶け込み常人では認識できぬほど希薄になる。そしてヴィサラは魔女が犯人である証拠を。ハウスィは魔女の人となりがわかるものを探していた。
「ハウスィさん、なにかありましたか?」
「何もないね、見つけたのは薬研と乳鉢くらいかな。これじゃ魔女じゃなくて薬屋さんだね」
 しばらく家の中を捜索していた二人だったが未だなんの証拠も見つからず捜索は難航していた。見つかるのは薬草や少しばかりの毒草。とても疫病を自由に巻き起こせる様なものではなかった。
「私も日記を見つけましたが毎日付けているわけでもないようです。所々日付が飛んでいます。これでは魔女の罪も無実もどちらも証明できません」
「もう少し調べてみようか」
 ヴィサラがハウスィの言葉に頷き二人が家の捜索を再開しようとしたその時、玄関の扉を開く音が家の中に鳴り響く。老朽化故軋む扉は耳障りな音を立てながら開け放たれる。そして現れたのは背負った籠いっぱいに薬草や作物を詰め込んだ長い銀色の髪を黒いリボンで縛った一人の少女だった。
(ハウスィさん!)
(忝いんだな)
 間一髪ヴィサラからハウスィに投げ渡されたヴィサラとお揃いの帽子。ハウスィがそれを被ることで【ハデスの隠れ兜】によりヴィサラとハウスィの姿が消える。消えただけで音も熱も存在するが二人の目立たぬ気配を少女は察することなく背負った籠を机の隣に置く。
「ふぅ、今日も疲れた。村のみんなの病気とか怪我がこれで治ればいいんだけど……」
 籠の中の薬草を仕分けしながら少女が呟く。どうやら言動から察するにこの少女が件の魔女のようだ。そして実際に魔女を目の当たりにしたハウスィとヴィサラの猟兵としての直感が告げる。この魔女はオブリビオンではない、と。しかし残り香とでもいうべき微かなオブリビオンの気配は彼女から感じる。その気配は微弱すぎて特定こそできないが彼女に関係するオブリビオンがいることは確かなようだ。ヴィサラとハウスィはその気配の主を特定しようとするが……。

「出て来るがいい!村に禍を齎す悪しき魔女よ!」
「きゃっ!?」
 家の外から大きな叫び声が飛び込んできた。


●雨冠乃巫女と死霊術師

 ハウスィとヴィサラが魔女の家へと潜入している頃、時を同じくして神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)とシャノン・ヴァールハイト(死者の声を聞き、招く者・f10610)は魔女の家付近の森に待機しこれまでにダークセイヴァーで起こった事件と現れたオブリビオンの報告書に目を通していた。
「シャノン、お前この世界の出身だろ?なにか気づいたこととかないのか?」
「生憎、当方では目新しい発見などできそうもない。そのようなことは神宮寺の方が適任だろう」
 絵里香の質問に朴訥と答えるシャノン。これでは議論も進みそうもない。絵里香は別の話題を振ることにした。
「質問を変える。この世界のオブリビオンはどんな奴らだ?」
 報告書を読んだだけでは理解できないこともある。生の声を聞いてこそ分かることもある。だからこそ絵里香はシャノンにオブリビオン達の印象を問う。
「そうだな……奴らは狡猾で残忍だ。そして人を人だとは思っていない。当方が分かるのはこれくらいだ。参考になったか?」
「とりあえずは。この世界に多い奴らはヴァンパイアだったか?」
「その通りだ。奴らは生き汚くしぶとい。倒したと思って生きていることがザラだ。トドメはきっちりと刺すのだな」
「覚えとこう」
 シャノンの言葉を受け再び報告書へと視線を戻す絵里香。おそらく黒い影というのが今回の件の黒幕だと絵里香は考えている。しかしその正体は現時点で全くと言っていいほど分からない。頭を悩ませる絵里香の耳にシャノンの驚愕の声が届く。
「神宮寺!あれを見ろ!」
 シャノンが示した先には松明を持った数人の青年。街道は他の仲間が封鎖しているはずだが一体何故。考えている暇などない。絵里香とシャノンは待機していた森の中から一目散に駆けだした。

 そんな中、青年たちの一人が叫ぶ。
「出て来るがいい!村に禍を齎す悪しき魔女よ!」


●雨は総てを洗い流す

「シャノン、やれ」
「承知した」
 突然の襲撃者に対し反応したシャノンと絵里香。しかしまだユーベルコードを使うには早い。死霊術師であるシャノンの技はこの場で見せるには些か派手で人目を引く。そしてなにより現れた死霊を村人たちが敵だと誤解してしまうかもしれない。奥の手は取っておくべきだろう。
シャノンは自身の隣に生える木を一本、左手で掴み引っこ抜く。
「当てはしない。驚かすだけだ」
 それをシャノンは力任せに青年達に投げつける。
「うわっ!?」
「危ないっ!」
 シャノンの手から放たれた木は魔女の家と青年たちの間に突き刺さる。それに驚いた青年たちは腰を抜かし地面に尻もちをつく。
「どうやってここまで来たかは聞かん。だが、その手に持ってるものは預からせてもらう」
 青年たちの前に立ちふさがる絵里香。しかし青年たちは怯えながらも手に持つ松明は離さない。
「誰だお前たちは!何故邪魔をする!ここは悪しき魔女の住処だろう!?」
「悪しき魔女かどうかは当方の仲間たちが調べている。結果を待て」
 声を荒げる青年たちの前にシャノンが立ち塞がる。
「噂をすればなんとやらだな」
 叫び声と投げられた木の衝撃で襲撃者に気がついたのかヴィサラとハウスィが家から出てくる。背後に少女を伴って。
「それが例の魔女か?ハウスィ」
「そうみたいだね、ハウスィが見たところただの人間みたいだ」
 ハウスィの言葉にヴィサラが頷き絵里香とシャノンも直感する魔女はオブリビオンではないと。しかしやはり残滓は感じる。後で詳しく話を聞いた方がよさそうだ。

「アカーシャ!」
「ゼノン!?どうしてここに。今日は来ないはずの日じゃ!?」
「親父が、親父たちがここに―――」
 森の中からイデアールとノルナイン、そしてゼノンが現れる。そしてゼノンは地面に座る襲撃者の存在に気がつく。
「……あんたらも森から来たのか。大人たちより早くここに来るために」
「あ、ああ、そうだ!俺たちの手で魔女を討つためにここに来たんだ!」
 一人の青年がゼノンへ向けて声を張り上げる。しかし彼らは実際に魔女を見たのはこれが初めてだった。想像していた姿と全く違う。今目の前にいるのはどう見てもただの普通の少女だった。彼らの顔から動揺が隠せない。
「……アカーシャをちゃんと見てもあんたらはそう言うんだな」
「何もしてないのに怖がられるのは、やっぱり嫌ですよね……」
 ヴィサラの呟きもゼノンの呆れかえった言葉も彼らの耳には入らず暗闇へと消えて行った。

「フン、こんな少女に滅ぼされる村ならとっとと滅んでしまえばいいのだ」
 イデアールは青年たちへの不満を隠そうともしない。それもそうだろう。己の仲間である魔女が迫害されているのだ。それを快く思えるはずがない。
「だ、駄目ですよ滅んじゃ!」
 ヴィサラはイデアールの過激な発言に思わず反論してしまう。ちらりとイデアールに視線を向けられるがすぐにハウスィの後ろに隠れてしまった。
「魔女がシロということはやはり例の黒い影とやらが元凶なのだろうか」
「だろうな。村人たちに事情を説明するためにも一旦頭冷やさせるか」
 絵里香が詠唱を口ずさみ暗い雲に覆われた空に雨雲を呼ぶ。それは次第に大きくなり村の空全体を包み込んでいく。村の空全体を包み込む頃にはしとしとと雨が降り始めていた。
「これでよし、シャノンそのガキ共も連れてこい」
「承知した」
 シャノンは強引に青年たちの手を引き立ち上がらせる。彼らの手にあった松明の炎は雨により消えていた。彼らの魔女への恐怖心と共に。

「じゃあ他の皆と合流して村人たちに事情を説明してみるんだ」


 こうして猟兵たちが稼いだ時間、広めた知識、集めた情報により魔女の無実は証明され真の黒幕がいるであろうと村人たちに説明された。超常の力を見せつけ深き知識を振舞い信頼を勝ち取った猟兵たちの言葉を村人たちは存外すんなりと受け入れた。この問題を解決してくれるなら誰でもいいという気持ちもあったのだろうが。それでも魔女を狙うものはもういなかった。


 ―――ここに魔女の冤罪は証明された。Q.E.D.

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『血の狂宴』

POW   :    わざと捕えられ、地下コロシアムに潜入する。

SPD   :    街中を調査し、地下コロシアムの場所を探る。

WIZ   :    人々から情報収集し、地下コロシアムの場所を探る。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 村人たちの説得に無事成功し魔女の冤罪を晴らすことができた猟兵たち。
 翌朝アカーシャに話を聞こうと魔女の家に向かった猟兵たちだがそこにアカーシャの姿は影も形も存在しなかった。

 これは一体どういうことだ。

 猟兵たちは手当たり次第に情報を集めた。
 するとどうやらこの近くの街にある闘技場で銀髪に黒いリボンの少女を見たという証言が。そしてゼノンから興味深い話も聞くことができた。
「その闘技場じゃいろんなところから集められた人たちが生き残りをかけて闘わされてるらしい。もしかしたらアカーシャもそこに連れていかれたのかもしれない……」

 その可能性は0ではないが今夜の村には猟兵たちがいた。その監視をかいくぐってアカーシャを浚うことができる者などいるのだろうか?

 考えていても仕方がない。こうなったら闘技場の事を調べ、潜入しアカーシャを探し出す他ないだろう。

 猟兵たちは行動を開始する。魔女を救いだすために。
リミティア・スカイクラッド
これは『浚われた』のではなく『逃げられた』のかもしれません
アカーシャさんではなく、オブリビオンに

あえて捕らえられ闘技場に潜入を試みる方がいるなら
影の追跡者に追わせて、どこへ浚われて行くか突き止めましょう
平行して街で「情報収集」を
聞き込み相手は物乞いや浮浪者。『消えても誰にも気にされない』彼らの中にも、闘技場に浚われた者がいるかもしれません
金と食べ物と「コミュ力」を駆使して、些細な情報でもかき集めましょう

闘技場の所在判明後は影の追跡者でアカーシャさんの捜索
村で得た情報と状況判断から、彼女はオブリビオンの憑代とされている可能性を考えています
発見しても警戒は怠らないように。杞憂であれば幸いですが


欄干橋・ヒカタ
きな臭くなってきたわねぇ。
【酔兵団】のゲンさん(f06844)たちとは一旦別行動、情報収集するわ(WIZ)。

そもそもワタシたちを掻い潜って拐われる可能性ってどの程度なのかしら?
自ら出向いたって線もある?
それと証言の“銀髪に黒いリボンの少女”。
魔女の特徴だけれど、本人か定かではないのよね。
濡れ衣…誰が言い始めたのか…扇動されていた村人……成りすまし、とか。
色々考えちゃうけど詮無いわ、頭に留めておきましょ。

コミュ力、言いくるめ、失せ物探し、使える技能は全て使って情報を集め、真相を探る。
気になる動きはUCで追跡するわ。

彼女が人々を救おうとしていたのが本当なら、彼女もまた救われるべきよ。

*アドリブ歓迎



●精霊術師の追跡者

 アカーシャの行方を探すため、それぞれ行動を開始した猟兵たち。リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)と欄干橋・ヒカタ(日かげ日なたと飛びにけり・f05881)は二人で行動しアカーシャの行方を追っていた。
二人ともアカーシャが浚われたのではなく自ら出向いた可能性を少なからず考えていた。しかしそうだとしたらその理由は何か。そこがまだ分からなかった。
「ヒカタさんはどう思いますか?アカーシャさんのこと」
「そうね……銀髪に黒いリボンの少女だけだとまだアカーシャかどうかはわからないわね。もしかしたら誰かが成すましているかもしれないわ」
 ヒカタと同じ想像をリミティアもしていた。しかしそれ以上の可能性もまたリミティアの脳内には浮かんでいた。それはアカーシャから感じたオブリビオンの残滓とこの状況からくるリミティアの直感。それはアカーシャがオブリビオンの憑代とされている可能性だ。アカーシャ本人がオブリビオンではないことはアカーシャを直に見た他の猟兵たちが断言している。であれば考えられるのはアカーシャはオブリビオンではないがその関係者である、ということだ。その真相を確かめるべくリミティアとヒカタは情報を集める。その対象は物乞いや浮浪者。彼らであれば例え居なくなったとしても誰も怪しまないし探さない。それに街の至る所にいる彼らはその手の事情にも詳しいだろうと二人は考えた。

「あの人なんていいんじゃない?」
「まずは声をかけてみましょうか」
 ヒカタとリミティアが目を付けたのは路地に座り込み、既に空となったワインボトルから一滴でも啜ろうとボトルを振り続ける浮浪者。彼ならば欲しいものも分かりやすい。交渉材料もすぐに用意できるだろう。
「そこのアナタ?ちょっといいかしら」
「あん?なんだぁ?ねえちゃん達。おらから出るもんなんてなぁんもねぇぞ?」
 浮浪者の男は訝しげにヒカタとリミティアへ視線を向ける。それもそうだろうそもそも男に誰かが話しかけてきたのがいつ以来だったか男の記憶にすらない。しかも話しかけてくる相手は大抵こちらの物を狙っている同じ浮浪者だ。しかし目の前の二人はどこからどう見ても浮浪者などには見えないし自分に用があるような人種の様にも見えない。ということはつまり―――。
「ねえちゃん達が噂の人浚いか?悪ぃがおらには欲しい物も叶えたい夢も無ねぇ。このまま酔っぱらってあの世に行くだけだ。他を当たんな」
 男の口から求めていた言葉が出た。この男も存在を知っているということはそれなりに有名な話なのだろう。であればこの機会を逃す手はない。
「ちょうどいいですね。リムたちはその人浚いを探しているのです」
「だからアナタの話を聞きたいわ」
 リミティアの手から硬貨が数枚男へと差し出される。所謂情報料、一文無しの男にとってそれは喉から手が出るほど欲しいものだった。例えこれが何かの罠だったとしても男に失うものはない。男は何も出てこないワインボトルを投げ捨て差し出された硬貨を握り締め受けとった。これでまた酒が買える。
「……で、どんな話を聞きてぇんだ?生憎だがおらも詳しいわけじゃねぇぞ。噂程度しか知らねぇ」
「その噂でいいのです。お聞かせください」

 男の話では以前から人を浚い、どこかへ連れていくという者たちの噂は後を絶たなかった。しかし最近その噂が少々変化してきているのだと言う。
「最近は積極的に女、それもまだケツも青そうな奴を集めているって話だ。もちろん見世物用に活きのいい奴も浚っているらしいが。羨ましいこって」
 それはアカーシャにもあてはまる。
「その少女たちがどこに連れていかれてるかはご存知ですか?」
「知るわけねぇよ。知ってたらおらはここにいねぇ」
 リミティアから受け取った硬貨を指で弾きながら男は答える。これから買う酒の事を考えながら。
 男の口ぶり的にもこれ以上は何も知らなそうだ。リミティアとヒカタは男に別れを告げ現状の情報を纏めるべく路地を抜けた。

「どう思う?」
「最近になって少女を集めているという話がリムは怪しいと思います。アカーシャさんと何かしらの関係はあるでしょう。これは確信です」
「やっぱりそうよね……とりあえずこの情報は他のみんなにも教えておきましょう」
 ヒカタは自身のユーベルコードを使い蝶の精霊リラ・ササキアを呼びだす。集いし蝶の精霊たちはリミティアとヒカタの集めた情報を他の猟兵たちへと運んでいく。
「リムも一応追跡用の影を放っておきましょう。闘技場の場所までは分かりませんでしたから」
 リミティアもヒカタの蝶の後を追う形で影の追跡者を召喚する。追跡する対象は事前の打ち合わせで闘技場に潜入することになっている猟兵たちだ。捕まった彼らを追えば闘技場の場所も分かるはず。
 
「次に話を聞く相手を探しましょう」
「ええ、そうですね」
(彼女が人々を救おうとしていたのが本当なら、彼女もまた救われるべきよ)
 ヒカタは心の中でそう呟き、リミティアと共に次なる情報提供者を探しに路地へ向かう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アスカ・ユークレース
街中を歩き回って情報収集といきますかね?

【コミュ力】を使い闘技場についての情報を聞き出します

設定は…街の闘技場の噂を聞きつけて遠方から来た変わり者のお嬢、といったところでしょうか?

もしかしたら裏社会に通じる所の方が情報が出てくるかもしれません
その場合にはそちらにも脚を伸ばしてみましょうか
【勇気】が必要になりそうですが。

その他何か気になることがあったら私の【第六感】が教えてくれるといいですね

アドリブ歓迎、連携希望


イデアール・モラクス
フン、やってくれたな…私を出し抜くとは。
初めから黒幕の狙いはアカーシャだ、孤立させ村人を煽ったのも黒幕の策であったのだろう。
村に内通者でもいるか…探る必要はあるな。

・行動
人々に闘技場の事を聞き出す、ただ漫然とではなく『誘惑』しながら場所や用途まで細かく証言を集めていくぞ。
「詳しく聞きたいなぁ…2人きりで話さぬか?」
感情の揺らぎを察知する魔術を瞳に浮かべながら聞き込み、闘技場に詳しい者か内通者と思しき者がいれば情欲に訴えて2人きりになり。
「全部吐き出せ、気持ち良くなりたいだろ?」
色欲の触手で拘束し、快楽漬けにした上で更に快楽拷問で追い詰め情報を引き出す。
全部吐いたら、解放しスッキリさせてやろう。


ヴィサラ・ヴァイン
アカーシャさん、どこに行ってしまったんでしょうか?
村人の為に動いてた彼女を、目の前で見てた私としては心配です……少し性急かも知れませんが、情報を速やかに集めましょう
出来るだけ善良そうな人ではなく、悪いそうな人を人目のない所に誘います
そして……[最悪の恐怖]をもって【強迫】します。頭の蛇もチラつかせます(恐怖を与える13)場所を知らないなら、闘技場について知ってる事を喋らせ、闘技場の場所や情報を知ってそうな人を紹介させます
「あと、私の事は他の人には言わないでくださいね? 怖がられるなら、せめてこの姿を見せた相手だけにしたいので……」
これを繰り返し、闘技場の有益な情報を手に入れます
※アドリブ歓迎


我妻・惇
闘技場の街で、知ってそうな奴、ガラの悪そうな奴を中心に聴き込みをする。答えを渋るようなら襟首引っ掴んで威嚇・恫喝して聞き出しにかかる。知ってて黙ってるようなら適度に痛めつけて「交渉」だ。

俺が答えに行き着かなくても、派手に動いて怪しまれれば相手の動きにも変化が出るだろうし、他の誰かのヒントになるだろうしな。

「交渉」の時は、もちろんにこやかに、親しげに、笑顔で…なァ?

口の端を釣り上げて歯を鳴らし、目を剥いて近距離で、意図的に威圧する笑顔を向けて



●悪女の尋問、傭兵の詰問、普通の質問

 闘技場のある街で今日は一際目立つ集団がいた。街の住人であれば危険性を理解し誰も近づかない路地裏のさらに奥。得体のしれない薬を売る老婆に買えば自身に幸運をもたらし他者に不幸を与えるというリボンを売る男。そんな怪しい市場を品定めでもするかのように闊歩するのはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)、おどおどしながらもその眼は獲物を探すが如く光るヴィサラ・ヴァイン(人見知りなゴルゴン少女・f00702)、槍を背負いながら犬歯を剥きだしにニヤリと笑いながら周囲を威嚇する我妻・惇(人間の戦場傭兵・f04976)。そしてその三人の後ろを少し離れてついていくのはアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)、アスカの第六勘が告げている。勇気を出して裏の市場に来たのはいいが一番の危険人物は目の前の三人だ、と。どうしてこうなった。
 三者三様に情報を聞き出す相手を探す。イデアールは誘惑に弱そうな軽薄な男を、ヴィサラは恐怖を与えても心が痛まない悪そうな人を探していた。惇はこちらのメンチに反応するチンピラを。アスカはとりあえずそこら辺のリボンを売っている商人に目をつけた。
「あのー……少々伺いたいことがあるのですよ」
「アァン!?お、ねーちゃん綺麗な髪してるねぇ!このリボンどうだい!安くしとくよ!」
「えぇー……私別にお買い物に来たわけじゃないんですが……」
 商人に言いくるめられリボンを買わされそうになっているアスカ。その後ろで他の三人も獲物を見つけたようだ。


●魔女の誘惑

 イデアールは自身の誘惑により寄って来た、舌舐めずりする金髪の男を標的に決める。金髪の男はイデアールの極上の肢体を前に興奮を隠せない。息は荒く、すぐにでもイデアールに襲い掛かりそうな雰囲気を醸し出している。
「お前はこの街にあるという闘技場のことを知っているか?」
 男に撓垂れ掛かりながら頬を人差し指でなぞりイデアールは問いかける。男もその興奮を抑えきれず声を張りながら答える。
「あ、ああ!知ってるぜ!よく知ってる!だからそれを教える代わりに……」
「ああ、その話、詳しく聞きたいなぁ…2人きりで話さぬか?」
 ちらりと見えたイデアールの胸元に男の視線は吸いこまれ鼻から一筋の血が垂れる。イデアールが自身の瞳に施した魔術により感情の揺らぎを捕えこの男が件の人浚いに関係があると言うことを察知する。
 男はイデアールに導かれるままさらに奥の路地へと消える。
 他の者からは見えぬ位置へと辿り着いたその瞬間、金髪の男の足元に魔法陣が浮かび上がり色欲の触手が金髪の男の身体を拘束する。触手から与えられる快楽により男の思考は真っ白に染まっていく。
「あ……」
「さぁ、全部吐き出せ、気持ち良くなりたいだろ?」
 男へのイデアールの刺激的な誘い。これ以上の快楽、それは一体どんなものか、どこまでいけるのか。男に既に理性の枷は残っておらず口が快楽を求め動きだす。
「俺は…若い髪を結んだ女を……手当たり次第に…売った。どいつも…こいつも……声をかければちょろかった……」
「売った?誰に」
「名前は…知らない……金払いはよかった」
 男が売った髪を結んだ少女、それがオブリビオンの狙いなのだろう。アカーシャもそれに該当する。イデアールはそう推察した。そしてこれ以上の情報を持っていないこの男にもう用はない。
 ―――否、少しばかりこちらのストレス発散に付き合って貰うのもいいだろう。男を拘束する触手を解きイデアールは改めて男に歩み寄る。
「約束通り気持ちよくさせてやろう。存分に、な」
 獲物を見つけた魔女が舌舐めずりを一つ。


●少女の恐怖

 ヴィサラも時を同じくして標的を見つけていた。道を我が物顔で歩き他の者たちはその男と視線を合わせようとしない。おそらくこの一帯でもそこそこ地位がある男だろう。であれば何かしら情報を知っているはず。ヴィサラは男の後をつける。男が次の曲がり角を曲がった瞬間を見計らい距離を詰める。
「あのー……」
「なんだぁ……ひぃっ!?」
 振り返った男の目の前には身長150cmにも満たない小さな少女。しかし男の眼に映るヴィサラはただの少女には到底思えない。帽子の隙間から覗く蛇、見るだけで寒気がするその瞳。男からすればヴィサラは恐怖の対象でしかなかった。
「な、なんだなんだお前はぁ!」
「それはお答えしかねます。でもこちらの質問には答えていただきます」
 男に恐怖の感情を与えることに成功したヴィサラの背後には彼女の真の姿たる幻影が現れる。しかしそれは恐怖を感じた男にしか見ることができない幻の影。その幻影に魅入られた男はヴィサラの指示に従わざるを得ない。
「はい……」
 虚ろな目をした男が口を半開きにしながら返事をする。この男はもうヴィサラの思いのままだ。
「あなたは闘技場の場所を知っていますか?」
「はい……」
「そこを案内できますか?」
「いいえ……」
 場所は知っているが案内はできないという男。ヴィサラはその返答に疑問を感じ男へ理由を問う。
「それは何故ですか?」
「呼び出されなければ入れない……」
 場所は分かるがそこまでしかこの男では協力できないようだ。であれば場所だけ聞き出すことにしよう。そうすれば他の猟兵たちの手助けになる。ヴィサラは地図を広げ男に闘技場の位置を記させた。
「これでよし。あと、私の事は他の人には言わないでくださいね? 怖がられるなら、せめてこの姿を見せた相手だけにしたいので……」
 男はコクリと頷き意識を失った。目が覚めたらこの一連の出来事は夢だと思いこむだろう。限界を超えた恐怖を感じた人間の防衛本能として……。


●傭兵の乱闘

 ヴィサラとイデアールがそれぞれの方法で情報を聞きだしている頃、惇は数人の男に囲まれていた。槍を見せびらかしながら周囲を威嚇し続けていた惇をこの街のゴロツキどもが放っておくわけはなかった。イデアールとヴィサラと別れた後、瞬く間に惇はゴロツキ達に囲まれた。
「おい、お前」
「あぁん?俺に言ってんのか?」
 惇は己という餌に引っかかった獲物を口の端を釣り上げて歯を鳴らし歓迎する。とりあえずの挨拶代わりに目の前に立つ男の襟首を掴み近くの壁に叩きつける。
「ガハッ!」
「お前ぇらこの街の闘技場って知ってっかァ?」
 壁に叩きつけた男の襟首をひっぱり、頭を自分の眼前まで近づけ語りかける。意図的に威圧する為の笑顔を向けながら。その予想外の行動に周囲の男たちは驚愕のあまり身体を固める。
「し、しら――」
「そうかよ」
 答えを最後まで聞くことも無く惇は手に持つ男の頭を壁へと放り投げる。男の頭は壁へと激突し意識を失いそのままずり落ちる。
「次はどいつだァ?」
 傭兵は口許を歪め、犬歯を打ち鳴らす。次なる得物を求めて。
 惇のこの行動は直接情報収集に結びつくものではなかったがこの行動により周囲のゴロツキ達がここに集まり結果的にイデアールとヴィサラのサポートになっていた。この結果を惇が狙ってこの行動を取ったのかは定かではないが。
「さァさァ!どんどんこいやァ!」
 傭兵の乱闘は終わらない。挑戦者がいなくなるまで。


●謎が謎を呼ぶリボン

「だーかーらー!要りませんよ!」
「ちぇ、意外と強情なねーちゃんだぜ。押しに弱そうに見えたんだがなぁ」
 商人風の男とアスカのリボン押し売り論争はアスカの勝利で幕を閉じた。男は至極残念そうに。
「最近黒いリボンの需要があがってるって聞いたからこうしてはるばる来たってのによぉ」
「はい?ちょっとその話詳しく聞かせてもらってもいいです?」
「おう?リボン買ってくれたら話すぜ?」
 サムズアップしながらにこりと笑う男。中々に商売上手である。仕方がないのでアスカは渋々そのリボンを購入する。押し売りには買ったが結局買うはめに。
「このリボンにそんな需要が?」
「これは俺の作った複製だけどな。最近この街じゃ黒いリボンをしている女子が大勢いるらしくてな。そんで流行ってるなら売れるんじゃねーかと思って来たわけよ」
 それなのに、と男はため息をついて話を続ける。
「いざ来てみたらどうよ?だーれも黒いリボンなんてしちゃいねぇ。やっと見つけた銀髪の子もふらふらどっかのお屋敷に入っちまうしよぉ」
「!?その銀髪の子を見たのはもしかして今朝とかですか!」
「お、おう?えらい剣幕だな、ねーちゃん。そうよ、今朝も今朝。俺がやっとこさこの街に着いた時だからなよーく覚えてる」
 おそらくその銀髪の少女がアカーシャだろう。時間もほぼ一致する。アスカの勇気が当たりを引いた。
「そのお屋敷っていうのをもっと詳しく教えてください!」
「いいぜぇ、でもそれはこれを全部買い取ってからだな!」
 再び男はサムズアップ。欠けた前歯がきらりと光る。
(これもアカーシャのためですっ)
 アスカは重い財布の口を開いた。手痛い出費だが後で然るべき所に請求すれば返ってくるだろう。多分。


 こうして集められた情報は共有され他の猟兵たちにも伝わる。ヴィサラの地図に記された場所とアスカが聞き出した場所は完全に一致した。であればここが件の闘技場だろう。リボンを付けた少女を集める理由はまだ分からないがアカーシャと思われる少女はそこにいる。

 情報は出揃った。後は救出に動くのみ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

トリテレイア・ゼロナイン
火の無い所に煙は立たぬ…オブリビオンの残り香…黒いリボン…猟兵達の目を盗んで街に移動…

もしやアカーシャ様は『ゼラの死髪黒衣』に操られているのでは?
この世界に幾度も赴いた経験が導き出した推理などとは呼べぬ当てずっぽう、ですが私はこの答えに掛けて動いてみましょう

「防具改造」で『異端の騎士』のように鎧を黒く染め(水溶性)、「礼儀作法」「世界知識」でヴァンパイアの配下の騎士のように振舞い、街の暗部の人間に「主が闘技場を見物する前の下見に来た」と伝え案内させましょう

闘技場についたらヴァンパイア達が居そうなVIP席や貴賓席に準じる観客席を中心にアカーシャ様を捜索します

どうかこの予測が外れてくれますように…



●紛い物の騎士の懸念、リボンの真実

 情報収集に出ていた猟兵たちの情報を元に動きだす猟兵たちだったがその中で一人、トリテレイアだけが単独行動を申し出た。幾度となくこの世界に赴いた経験から導き出された推理がトリテレイアの脳裏に今回の黒幕の姿を過ぎらせる。自身の勘でしかなく当たって欲しくないその推理を元にトリテレイアは行動を開始する。

「すまない、主にここの視察を頼まれた者だが。連絡は来ているだろうか」
 自慢の鎧を漆黒に染め、さながら異端の騎士のように振舞うトリテレイア。口調もいつもより少々厳めしく、尊大に。
「連絡?んなもんいちいち来てねーよ。とっかえひっかえ人が来るんだから覚えてらんねー。……あんた入んな」
「すまない」
 門の前に立つ男はトリテレイアを少しばかり怪しんだが以前にも似た風貌の騎士は来た。その仲間だろうと思いトリテレイアを通す。そもそもこの場所自体関係者しか知らないのだ。ここを知っているということが関係者の証明になる。この場所が既に猟兵たちに嗅ぎつけられていることも知らず……。

 闘技場の中へと潜り込むことに成功したトリテレイアはアカーシャを探しつつ自身の疑念を晴らす材料も同時に探していた。他の猟兵たちが集めた情報で気になったのは『少女』『黒いリボン』この2つの単語だ。
(あれは……)
 闘技場の貴賓席に紛れ込んだトリテレイアはアカーシャを探す。ヴァンパイアたちの間をすり抜けるのは少々肝が冷えるが幸いその身体は機械仕掛け、動揺が漏れ出すことはない。そんなトリテレイアの目に飛び込んできたのは闘技場の観客席の一番上、ここで最も権力を持つであろう者が座るはずの椅子に掛けられた漆黒の布。アカーシャから感じた残滓をより濃くしたソレはトリテレイアが懸念していたモノに他ならなかった。
(『ゼラの死髪黒衣』)
 それは死したヴァンパイアの遺髪から創られた黒衣。纏った対象の自我を浸食し意のままに操ることができるその黒衣。おそらくその一部がばら撒かれアカーシャの手元にやってきたのだろう。つまりアカーシャはここにいる。彼女の意思ではなくゼラという女吸血鬼の意思で。
(ここで破壊できればいいのですが……それは難しそうですね)
 一瞬、腕に格納された多目的速射砲を展開しかけるトリテレイアだったが思い留まった。大半の黒衣が椅子の上にあるとは言えアカーシャのリボンも黒衣の一部。ここで攻撃してはアカーシャの身に何が起こるか分からない。トリテレイアは一先ず黒衣の監視を続け後から来る猟兵たちを待つことにした。
(アカーシャ様を操るのがゼラの死髪黒衣であるのなら……)
 次の算段を高速演算で導きながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルセリア・ニベルーチェ
アドリブ歓迎
他の猟兵さんとの協力も大丈夫よ

今宵もダークセイヴァーでオブリビオン狩りなルセリアさん
偶然通りかかった村で他の猟兵を見かけ、事情を知り協力する事に
罪なき命が失われるのは、あってはならないわね
身を挺して、コロシアムとやらを見つける必要があるかしら

作戦はコミュ力と情報収集で人々から闘技場に連れ去られている
人の特徴・場所を聞き出し、ルセリアさんも捕まえて頂きましょうか?
連れ去られた後は外見など話に聞いた、アカーシャさんを探し
戦いが発生していれば、最優先で守るよう立ち回るわ

潜入ですし派手には動けませんが
他の方々が来るまで耐えるだけですね

活性化している技能、UCは自由に使って頂いて構いませんの


シャノン・ヴァールハイト
原・ハウスィ(元は小売店の店主f01358)、神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女f03667)、ルカ・ウェンズ(f03582)と連携。

【POW】
捕まる為に、軽く視線で周囲を探りながら街中を移動。釣れたら、態と路地裏に入って捕らえられる。コレが上手くいけば、後を着けているだろうハウスィから、神宮寺にも連絡が行く筈だ。

連れられた先が、闘技場のどう言った場所なのかは解らないが…移動中に最低限の通路を覚えつつ、アカーシャが居ないかをバレないように視線で確認しながら、最低限の支持があるまで待機。
支持を待つか、ルカと相談が可能なら相談して怪力を使用して2人でアカーシャを探して逃げる為に行動を開始する。


ルカ・ウェンズ
作戦はPOW で原・ハウスィ(f01358)、神宮寺・絵里香(f03367)、シャノン・ヴァールハイト(f10610)と連携、まずは街で「コロシアムに参加するにはどうすればいいかしら」と裕福そうな人に【誘惑、怪力】を使って聞いたり、同じ事をゴロツキにも試してみてその後に…

捕らえられたり参加できたりして潜入に成功したら捕らえられた場合は牢を【縁切り】で切断して見張りに【怪力】を使い銀髪に黒いリボンの少女の事を聞いてから【暗殺】その後に【忍び足】で少女を探して見つけたら二人で脱走するわ。参加する場合も同じ事をするわか。(脱走する時に【後からきた味方】と連携して人を逃がして相手を混乱させようかしら)


エウトティア・ナトゥア
【酔兵団】で参加
地下コロシアムに潜入し調査

やれやれ難儀な事じゃの。アカーシャ殿は無事じゃとよいのじゃが

(狼に騎乗し透明になって潜入)
お、あそこじゃな。ゲンジロウ殿がわざと捕まっておる間に透明になり足音を殺して潜入するのじゃ

とりあえず狼の嗅覚や聴覚を頼りに探索じゃ
わしも目や耳には自信があるでなアカーシャ殿や怪しい痕跡を探してみるとするかの
それにここが怪しいとわしの第六感がささやくのう

手がかりやアカーシャ殿・ゼノン殿等の保護対象を発見したら、透明化して連れ出しゲンジロウ殿と合流して情報共有するのがよいじゃろう
マニトゥ、ゲンジロウ殿の匂いは分かるな?案内頼むのじゃ


ゲンジロウ・ヨハンソン
【酔兵団】として【POW】で参加。わし含めて2人じゃ。

嫌な予感するのぅ…ゼノンとかいう小僧、この状況で大人しく待ってるとは思えんぞ…。

○事前準備
調査等を済ませた猟兵からコロシアムの場所を確認。
仲間が嗅覚でわしを見つけられるように【世界知識】でこの世界にない酒を軽く飲んでおく。

○行動
準備を済ませ、コロシアムへ出発じゃ。
途中でエウトティアと別れ、大人しく捕らえられよう。
会話の全てには【コミュ力】を使い「わしは敗北を知りたい」とか【挑発】してみよう。
同時に【怪力】【激痛態勢】等の戦闘技能で自分を闘士として雇わんかと交渉。
アカーシャについては、試合に出る闘士達や、得られる景品等についてを探ってみよう。


ガルディエ・ワールレイド
【POW】わざと捕えられ潜入する

不自然ではない範囲で、力があまり強くないダンピールとして行動するぜ。
その上で「自分の故郷が滅びた」「その故郷の生き残りらしき人の目撃情報がこの街で有ったので探してる」という話をしながら、怪しげな裏通りや店を巡り歩く。

この流れで食いつく奴がいれば、イライラしてる感じで喧嘩の流れに持っていく。喧嘩にはわざと負けるか、最低でも苦戦して次の機会(相手の仕返し)で負ける流れを作っとく。
「おい、あんた何か知ってんのか? 俺は気が短いんだ。知ってることが有るんなら早く喋りな!」
これで連れ去って貰えれば良いんだが、ダメだった場合はもう少し闘技場の噂に触れつつ情報収集続行だ。


神宮寺・絵里香
【WIZ】原・ハウスィ(f01358)、シャノン・ヴァールハイト(f10610)、ルカ・ウェンズ(f03582)と連携。〈作戦〉・囮として捕まった面子の後ろから着けていったハウスィから情報を 受け取り、村で聞き込みをしているメンバーと共有。 闘技場の外で騒ぎを起こし、潜入したメンバーの脱出支援をする。〈心情〉・似たような事件はどこでも起こってるんだろう 手口やらを今のうちに把握していきたいところ ハウスィからの情報を待ちつつ、こちらも調査〈捜査〉・【世界知識】を基に【情報収集】・闘技場は見世物。客が必要だ。それもこの世界における上客 村の長としては、そいつらを接待する必要があるんじゃないか?


原・ハウスィ
神宮寺・絵里香(f03667)、シャノン・ヴァールハイト(f10610)、ルカ・ウェンズ(f03582)との連携を希望。
囮として捕まる予定のヴァールハイトさんを、周囲から目立たないように【目立たない】【忍び足】を使って追跡。
予定通り捕まったのを確認したら、そのまま追跡を続行して闘技場の場所を探る。
携帯端末を使えれば、神宮寺さんに順次連絡を取り、情報を伝える。何らかの理由で使えない場合は、闘技場の場所を特定次第、戻って情報を伝える。
伝えた後は、神宮寺さんと共に外で騒ぎを起こして脱出を支援する。


イリス・ウィルター
その子も災難だな。村人の次は闘技場か。
ようやく冤罪を晴らせたのにここで殺させるか。

私はわざと捕らえられて地下コロシアムまで潜入するよ。
調査とかは苦手だから、そっちの方が手っ取り早い気がする。
歩いて連れていかれるなら、出来れば等間隔にガラスの欠片でも落として他の仲間の目印にしたい。
闘技場に着いたらアカーシャを探すよ。
他の人と話せるなら、目撃者がいるかどうかも聞いてみる。
同じように潜入した仲間とも相談して情報交換をしておきたい。



●潜入する女猟兵

 集められた情報を元に行動を開始した猟兵たち。狙われるために己の髪にリボンを巻くルセリア・ニベルーチェ(吸血鬼嬢は眠らない・f00532)とルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)、イリス・ウィルター(刀の技を磨くもの・f02397)。情報通りならばこれで声をかけてくる者たちがいるはずだ。纏まっていては怪しまれる可能性があるため彼女たち三人はそれぞれ別の方向へ歩きだす。見目もよく黒いリボンをした女性が歩いていれば即座に目を付けられる。彼女たちに声をかける男たちは後を絶たなかった。軽薄そうな軟派男は無視をして三人はそれぞれ闘技場について知っていそうな関係者を探す。


~ルセリアの場合~

 髪を一房リボンで結ったルセリアは街の路地裏を歩く。背後にこちらを狙っている者の気配は感じるがどれも一般人だろう。しかしその中に一つ気になる気配が。その男は道すがら人々に聞いていた人浚いの容姿とも一致する。
(これは大当たりですの?)
 ルセリアは背後に気配を感じながら人毛の少ない路地へと入っていく。浚ってくれと言わんばかりに。男もその道のプロ、隙だらけの女を見逃す下手は打たない。それが吸血嬢の罠だったとしても。
 路地の曲がり角を曲がった瞬間。ルセリアは男に襲われ何かの薬品を嗅がされる。即座に息を止め吸い込むことを回避したルセリアだったがここは気を失ったフリをするのが得策だと判断し身体から力を抜き倒れそうになるその身体を背後の男が抱きとめる。
「おっと、今回も上玉だな。親分のとこに連れてくか」
 変な所に触ったら許さないというオーラを発しながらルセリアは浚われていく。闘技場の中へと潜入するために。

~ルカの場合~

 ルカは黒いリボンをつけ浚われるのを待つのではなく自分から行動していた。裏の市場へ出向き闘技場へ参加する方法を尋ねて回る。もちろん不信に思われるがそれも計算の内。黒いリボンを付けた女が闘技場の事を嗅ぎまわっていると関係者の耳に入れば向こうから接近してくるだろう。そしてそれはほどなくして接触してきた。
「よォ、ねェちャん。闘技場のこと知りたがッてるッてェ?」
 ルカに声をかけてきたのは少々独特なしゃべり方をする眼鏡をかけた男。雰囲気から察するにルカの好きなタイプの男だ。そう、自分が賢いと思い込んでいる悪党。思わず首を刎ねたくなるがまだその時ではない。今はこの悪党の話に耳を傾ける。
「ええ、興味があるの。できるなら参加してみたいわね」
「そりャあいい。こッちにはツテがある。どうだい?組んで一儲けと洒落込もうじャねェか」
「いいわね、乗ったわ」
 交渉は成立した。これでルカも闘技場の中に潜入できる。ルカは腰元の剣に手をかけながら男の後をついていった。

~イリスの場合~

 黒いリボンを付けた異国の女。それが目立たぬわけがなくイリスもまたすぐに何者かに後をつけられていた。さっさと襲ってくればそのまま浚われてやるのに背後の気配は一向にイリスの誘いに乗って来ない。人気のない路地に行ってもわざと立ち止まっても一定の距離でついてくる。どうしたものかと思いつつもイリスはそのまま歩き続ける。こちらの歩行速度に即座に対応してくる辺りは素人ではないと思うのだが……。
(浚いに来てくれないとこちらも困るのよね……)
 このままイリスはぐるぐると裏路地を回り続け人浚いが声をかけてくるまでに街を一周する所だった。
「あ、あの!」
「何か用?」
「つ、ついて来て下さい!理由は聞かずに!」
 どうもこの人浚いはまだ新人だったようだ。なにも人浚いなどにならなくても……。とイリスは思うがこんな世界では選べる選択肢も無かったのだろう。新人人浚いの言葉通り何も聞かずにイリスは彼の後をついていった。



●捕獲される男猟兵、それを追う者

 リボンをつければ標的になれる女性陣達とは違い男性陣は少々頭を悩ませていた。どうすれば捉えられ、闘技場の中へと潜入できるだろう?男性陣の考え出した答えはこれだった。

 ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)はまず一人で街を歩く、行き交う人々に自身の滅びた故郷の話を聞かせその生き残りの銀髪の少女を探していると言いふらしながら。
「おい、あんたもなんか知らねぇか?」
「それは当方に言っているのか?」
 大通りで何人目かにガルディエが声をかけた赤髪の男、それはシャノン・ヴァールハイト(死者の声を聞き、招く者・f10610)だった。不機嫌そうに振り向いたシャノンはガルディエを見て顔をしかめる。
「当方になんの様だ。生憎当方には用がない」
 聞く耳も持たず立ち去ろうとするシャノンだが肩を掴んだガルディエがそれを許さない。
「おい、あんた何か知ってんのか? 俺は気が短いんだ。知ってることが有るんなら早く喋りな!」
「当方は何も知らない。知っていたとしてもその様な失礼な態度では答えないがな」
 売り言葉に買い言葉。二人の周囲に険悪な空気が流れ周囲にいた街の住人たちも我先にとこの場を離れていく。その場に二人の男を残して。
「そろそろその手を離して欲しいのだが、ダムピール」
「だからどうしたよ、ニンゲン」
 ガルディエの手を払いのけようとするシャノンだが先程より力が込められたガルディエの手はそう簡単に振りほどけない。そしてその険悪な二人の前に新たな挑戦者が現れる。
「お?なんじゃなんじゃ喧嘩か?わしも混ぜて貰おうかのう」
 その挑戦者はゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)機械式の兜で素顔を隠しシャノンとガルディエの前に現れる。とりあえずどうやったら捕まえに来るか分からないので暴れていればそのうち来るだろうと言うのがこの三人の出した結論だった。脳筋が三人集まっても文殊の知恵は出てこなかった。残念。
 かち合ってしまった三人の猟兵はとりあえず暴れることにした。ガルディエは自身のハルバード【複合魔槍斧ジレイザ】を振るいシャノンもそれに合わせ【堕銀の剣】で応対する。ゲンジロウはただ一人素手で戦うがその体躯から繰り出される拳は生半可な武器の一撃より重く鋭い。三人とも極力街への被害は出さない方向には持っていくがそれでも多少の被害はでる。床石は割れ街灯は曲がる。この無駄に見ごたえがある戦いを止めるために人浚いよ、早く来い。

「わしは敗北が知りたい」
「えぇ…おっさんに勝てる奴なんていんのかな……対戦表弄らねぇと……」
 騒ぎを聞きつけやってきたスカウトの男に決着は闘技場でやってはどうだ?と声をかけられた三人は迷うことなく頷く。こうして街の平和は守られ三人も闘技場に潜入することに成功した。


●元締と狼少女

 スカウトの男に連れられて行く三人を追う二つの影。エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)と原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)。技能を生かし目立たないように後をつけるハウスィと風精霊のベールにより騎乗した狼マニトゥと共に姿を消し後を追うエウトティア。ゲンジロウが飲んでおいた麦酒の匂いのおかげで追跡自体は容易に行えた。追跡の先頭はエウトティアに任せハウスィは自身の携帯端末で神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)に連絡を取る。今までに得た情報も共有してはいるがシャノンたちが潜入に成功したという新たな情報を共有するためだ。
「問題なく潜入できそうだね」
『そうか、こっちも大体のことは聞き出せた。そっちに合流する』
「闘技場の位置は送っておくんだよ」
『頼んだぞ』
「連絡は済んだのか?では早く行かねば匂いが追えなくなってしまうのじゃ」
「ナトゥアさんお待たせしてごめんね。もう大丈夫なんだ」
 絵里香との通信を切り追跡を再開するハウスィ。巨狼に跨り疾走するエウトティアの背を見えないながらも気配を感じなんとかついていくハウスィ。実は結構凄いことをしているのかもしれない。
 二人と一匹の姿は誰にも気づかれることなく闘技場までの追跡に成功した。元から見えないエウトティアはともかく普通に見えているにもかかわらず存在を察知されないのはハウスィの目立たなさ故だろう。

「とりあえずハウスィはここで神宮寺を待つけどナトゥアさんは?」
「わしはこのまま中に入ってゲンジロウの手助けをしようと思うのじゃ」
「じゃあここで一旦お別れだね」
 絵里香を入口で待つハウスィと別れを告げエウトティアは透明化を保ったまま闘技場の中へと入っていく。
「……なにもなければいいんだな」
 絵里香へと闘技場の位置情報を送りながらハウスィの呟きは空へと消える。


●巫女の問いと少年の想い

 他の猟兵たちが闘技場の街へと向かっていく中、絵里香は一人村に残っていた。もう少し村長に聞きたいこととゼノンに言っておきたいことがあったからだ。
「それでお前が知っているのは全部か?」
「ああ、わしはこれ以上何も知らん。だから早くこの村を元に戻してくれ」
 絵里香が村長から聞き出したかったのは闘技場がある街が近くになるのだからこの村もそこに訪れる上客の接待をしているのではないか?ということだった。しかし村長の答えは絵里香の想定から少し外れていた。この村も以前まではそういう接待をしていたらしいがここ最近の事件のせいか最近はそう言った話は来なくなったらしい。その詳しい理由までは村長も知らなかった。
「……」
「落ちつけ、ゼノン。ここで待っている約束だろ?」
「でも!」
「でもじゃない。お前が行った所でオレたちの邪魔になるだけだ。何回も説明したが忘れたか?」
 当初ゼノンもついていこうとした。だが猟兵たち全員がそれを許さなかった。適材適所というものがある。アカーシャを救うのは猟兵たちに任せその後、猟兵たちが手を出せない所をゼノンが救うのだ。
「何回も聞くが最近アカーシャの奴に代わったことはなかったのか?」
「あー……ぼーっとしてることが多かったけど元からだしなぁ。髪を纏めだしてからはひっかけることは少なくなったけど」
 今のゼノンの言葉に絵里香は違和感を覚えた。髪を纏めだしてから……つまりアカーシャは元からリボンを使っていないということになる。
「アカーシャがリボンを使いだしたのはいつからだ?」
「えーっと……確かニ月くらい前かな?行商人のおっちゃんに貰ったって自慢してきたし」
「村長、この村に異変が起き始めたのは?」
「……二月前だ」
 これで繋がった。やはり村の異変はアカーシャ本人が起こしたものではない。現状から推察するに報告書にも乗っていた『ゼラの死髪黒衣』の仕業だろう。アカーシャ本人を陥れるために周囲の状況を悪化させたのだろう。身体を奪う分には死体でも構わないのだから。
「なるほどな」
 絵里香がこの一件の黒幕の正体を突き止めると同時に端末が着信を知らせる。ハウスィからの連絡により絵里香も他の猟兵たちと合流すべく席を立つ。そんな絵里香をゼノンは縋るような目で見つめる。
「心配いらん。黒幕もぶっ飛ばしてアカーシャも連れて帰って来てやる」
「……ああ、頼んだっ」
「頼まれた」
 絵里香もハウスィと合流するため最高速で駆けだした。一刻も早くこの悲劇を終わらせるために。


●逃げ出す者たち

 闘技場に無事潜入した猟兵たちは男女別の部屋に分けられていた。それもそうだろう。集められた目的が違うのだから。女性陣は他の黒いリボンをした少女たちと共に。男性陣は見世物として集められた剣闘士のような男たちと共に牢に入れられている。
 男性陣はともかく女性陣は比較的緩い警備体制の部屋に閉じ込められていた。この程度であれば抜けだすのには苦労しない。早速行動に移る。ルカが鉄格子を手刀を用いた縁切りで切断。それに引き続きルセリアが白黒無常を放ち光と影に潜み同化する、白と黒の双剣がアカーシャを探すべく影と光に同化する。イリスは他の閉じ込められていた少女達に声かけ脱出を呼び掛ける。十数名の少女達が一斉に逃げれば闘技場の関係者も混乱するだろう。おそらくここにはいない他に潜入した猟兵たちも同じことするだろう。そうすれば効果はもっと増える。
「こっちですの!」
「私たちはアカーシャさんを追うわ」
「私はこの子たちを逃がすよ」
 イリスはルセリアとルカと別れ少女たちの護衛につく。ルセリアとルカは双剣の後を追いアカーシャを追跡する。
 ―――その先に待っているモノを想像すらせずに。

 ガルディエ、シャノン、ゲンジロウは漢臭い牢屋に剣闘士と共に閉じ込められていた。
「のう、お前さんたち銀髪の黒いリボンした女の子見なかったか?」
 しかしそんなんことは意に介さず持ち前のコミュ力で剣闘士達に話を聞くゲンジロウ。シャノンとガルディエはどうやら脱出のための工作をしているようだ。
「銀髪の子は見たことねぇな。黒いリボンをした子は最近いっつも見るけどよ」
 あそこの良くいるぜ、と剣闘士の男が指を刺したのは鉄格子の隙間から見える闘技場の観客席の一番上にある一際目立つ装飾が施された椅子だった。そしてそこに掛けられた黒い布からゲンジロウは目が離せなかった。
(あれからいやぁな気配がするのぅ)
「よっしゃ!開いたぜ!」
 どうやらガルディエが牢屋の扉をこじ開けることに成功したようだ。剣闘士達の驚きと歓喜の声が響き渡る。
「当方は彼らと共に騒ぎを起こしながら脱出を図るとしよう。神宮寺たちの援護もあるはずだ」
「俺もシャノンに付き合うとするぜ。ゲンジロウはどうする?」
「わしはもう少し色々探ってみるわい。気になるもんも見つけちまったしなぁ」
 剣闘士達と脱出を図る二人に別れを告げゲンジロウもまた来たるべき者を待っていた。
「遅くなったかの?」
 顔を出したのはエウトティア。ゲンジロウの麦酒の匂いを追ってここまでたどり着いたようだ。
「いや、ナイスタイミングじゃ。どうも観客席に怪しいもんがあった。ちぃっと行ってみるかのう」
「承知したのじゃ」
 ゲンジロウとエウトティアもまた闘技場の奥へと進んでいく。

 剣闘士と少女達が逃げ出し闘技場の中の騒ぎはどんどん大きくなってた。それこそ外に伝わるレベルまで。
「頃合いだな」
「でも騒ぎってどうするのかな?神宮寺さん」
 ハウスィと合流し逃げ出す者たちの支援をするべく外に残った絵里香。騒ぎを起こすにはこれが一番だろう。絵里香は闘技場のある屋敷の庭に立つ一本の木にニ指を向ける。
「『ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!神々の王の裁きよここに!魔を滅ぼせ因達羅の矢よ!!』」
 絵里香の詠唱により放たれるニ指を向けられた木への天からの青白い稲妻。雷鳴と共に訪れるその一撃は木を真っ二つにして燃え上がらせる。
「これで騒ぎになるだろ?」
「……そうだね、流石は神宮寺さんだね」
 いつも濁っているその瞳を一層濁らせハウスィは答える。
「あとは他の奴らが出てくるのを待つだけ、か……」


●アカーシャとリボン

 少女たちと剣闘士たちが逃げ切り目当ての物も無くなり観客たちも帰った後の閑散とした闘技場の観客席に現れる猟兵たち。その目標はアカーシャと椅子に掛けられた黒い布だったのだが……。
「……いないわね」
「ルセリアさんの剣はここにアカーシャさんがいるといってますの」
「いるはずのアカーシャ殿がおらず黒い布もないのじゃ」
「嫌な予感しかせんのぉ」
 四人の期待を余所にそこには黒い布もアカーシャもいなかった。しかしルセリアの白黒無常がここを指示したということはアカーシャがここに来たことに他ならない。四人の額に嫌な汗が流れる。
『よくもまぁここまで邪魔してくれたのものだ。猟兵たち』
 そんな四人に椅子の奥から語りかける声。声色はアカーシャの物に近いがどこか雰囲気が違う。それどころかこの気配はオブリビオンの物だ。猟兵たちの嫌な予感は的中した。アカーシャは既にオブリビオンの手に落ちていた。
『本来であれば絶望したこの魔女を取り込む予定だったが貴様ら猟兵のせいで予定が狂ったわ。だがまぁいい。既にこの身体を扱うのに十分な浸食は行えた。もうすぐアカーシャの意識は消えてなくなる』
 黒衣を纏い虚ろな目をしたアカーシャが身の丈ほどの大きな鎌を持って現れる。その強大な気配、今ここにいる四人だけでは太刀打ちできない。一旦ここは引くべきだと判断した猟兵たちの行動は速かった。
「そぉら!」
 ゲンジロウが観客席の床に向け筋絆仲の拳を放ち足場は崩壊する。もちろんこれではアカーシャに憑依したオブリビオンにはダメージを与えられないがそれでいい。これは逃げるための時間稼ぎだ。四人はエウトティアの操る巨狼マニトゥに乗り込み闘技場から撤退する。
 黒衣の少女はそれを追うことも無く眺めていた。彼女に今最も必要なものは時間。完全にアカーシャの意識を消すための時間が必要なのだ。

 ―――勝機はまだある。アカーシャの意識が消えぬ限り。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ゼラの死髪黒衣』

POW   :    囚われの慟哭
【憑依された少女の悲痛な慟哭】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    小さな十字架(ベル・クロス)
【呪われた大鎌】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    眷族召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【眷族】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 アカーシャを発見はしたがアカーシャは既にゼラの死髪黒衣の手に落ちていた。猟兵たちは捕らわれていた剣闘士と少女達を逃がし態勢を整えるべく闘技場から一時撤退した。アカーシャ/ゼラはまだあの椅子にいる。アカーシャの意識がある限り。
 ゼラの死髪黒衣はまだ完全にアカーシャを取り込んだわけではない。まだ間に合う。アカーシャとゼラの死髪黒衣を引き離し、ゼラの死髪黒衣を破壊することができればアカーシャの呪縛は解けるだろう。

 ゼラの死髪黒衣が纏われている間はアカーシャの身もオブリビオンへと変貌する。故に彼女の身体は傷つくことはない。あくまで本体は黒衣の方なのだから。しかし完全に取り込まれてしまえば話は変わる。アカーシャは第二のゼラになる。それだけは何としても止めなければならない。
 その方法とは持てる最大火力を叩きこみアカーシャの目を覚まさせること。ダメージを与え続ければゼラの死髪黒衣はアカーシャの意識を奪うために割いていたリソースを戦闘に回さねばならなくなる。アカーシャを救う隙はそこしかない。アカーシャの目が覚めさえすればアカーシャとゼラを切り離すことができるだろう。


―――猟兵たちよ、黒衣の呪縛から魔女を救え。
イデアール・モラクス
チッ…やはり狙いはアカーシャ、魔女を食い物にするオブリビオン!
断じて許さん、跡形も無く消し炭にしてくれる!

・行動
「布風情が、魔女を食おうなど千年早いわ!」
UC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『高速詠唱』を用いて連射。
魔剣は命中したら布部分を『串刺し』にして壁に縫い止め『属性攻撃』で刀身を発火させ『傷口を抉る』ように布を燃やす。
「アカーシャ!気をしっかり持て!こっちを見ろ!」
そして死髪黒衣の余裕を奪ってから【村から連れてきたアカーシャを慕う少年ゼノンの姿を見せて】アカーシャの正気を取り戻す。
「ゼノン、お前の想いで彼女を解き放つのだ!」


エウトティア・ナトゥア
チーム【酔兵団】で参加します

おお、ボロ布よ久方ぶりじゃな。
せっかく骸の海に還してやったというのに性懲りも無く戻ってきたのじゃな。
ええじゃろう、何度でも戻してやるわい。


他の猟兵が攻撃態勢に入っておるのう。わしは別方向から騎射で牽制射撃を行うかのう。

マニトゥ!駆けよ!
マニトゥに騎乗し、死角に回り込むように駆け回り矢を射かけるのじゃ。
それどんどんいくぞい。

む、ゲンジロウ殿の周囲の精霊がざわめいておる。怨嗟の炎で彼奴を焼き尽くすつもりじゃな?
では、わしは隙を作るとしようか。
ゲンジロウ殿の攻撃の直前に風の刃で『ゼラの死髪黒衣』へ攻撃し体勢を崩します。
ゲンジロウ殿、今じゃ!


マディソン・マクナマス
【酔兵団】で参加。

女の子を助けるのは傭兵の仕事じゃねぇから今まで傍観してたけどよ、悪いオブリビオンをぶち殺すってんなら、そりゃあマディソンおじさんの仕事だぜ……!

『お前ロードキル』『飲酒運転』『よろしくおねがいします』と書かれた幟旗をたなびかせ、暴走宇宙ハーレーに【騎乗】して闘技場へ乱入。
小型眷属を轢殺しながら、片手運転で違法改造ブラスターを乱射して前衛を支援。
敵の【囚われの慟哭】にはカウンターでUCを放ち、敵の攻撃力を減衰。フラッシュバンの音響で少しでも慟哭を相殺する。
【小さな十字架】に対しては至近まで【おびき寄せ】てバイクを乗り捨て、【2回攻撃】で再度UC発動し、煙で敵の視界を阻んで逃走。


我妻・惇
はァ、胸クソ悪ぃ展開だなァおい…
だがまァ…分かり易い展開で助かる。
要はあの布っキレ、ブチ抜きゃいいんだろ。
なァ、ブチ抜いてイイんだろ、なァ!

真っ向から最高速で突っ込む。大鎌が来るならそれで良い、ブチ割ってやらァ。
ダメならダメで構やしねェ、斬られた所で止まりゃしねェからなァ!

そんなわけで回避はしない。防御せざるを得ない勢いでの攻撃を繰り返す形で、敵の攻撃の手数を減らしてみせる。
寄れば至近で攻撃を、隙を見て退がれれば繰り返し縮地での突撃を


御倉・ウカノ
【酔兵団】のメンバーと参加
判定:POW
死髪黒衣に先手こそとられちまったがまだ終わっちまった訳じゃない。アカーシャが諦めないでいる限り、あたしたちが諦めるわけにゃいかないし、アカーシャが折れちまう前に助けてやるのがあたしらの仕事だね。
『【酔兵団】のメンバーと連携しつつ死髪黒衣に対し攻撃を仕掛けます。眷属の相手はヒカタに任せエウトティアやマディソンの支援を受けつつゲンジロウとともに前衛を務めます。ゲンジロウがUCを使用して火をつけた所に合わせてUC【一二ノ太刀】を使用して畳みかけます』
「今助けてやる!もう少し我慢してくれや…!」


リミティア・スカイクラッド
そこで哭いている暇があるのですか?
その黒衣に屈することは、あなたが守りたい大切な人々を見捨てるということです
魔女ならば誇りを示しなさい。己の魂は亡霊風情に弄べるものではないと

UCの炎を個別に操作し「属性攻撃」で眷属を焼き払いながらアカーシャさんに呼びかけ続けます

いよいよ追い詰められれば、敵は新たな憑依先を探すかもしれません
油断したように距離を詰めて挑発を
「無様ですね。布切れ一枚で生に縋り付く様は」
それでリムに憑依先が移れば「呪詛耐性」で抵抗しながら【魔女の禁呪】から【火葬】に繋ぎ
「全力魔法」で我が身諸共炎に包みます
誘導失敗時は、味方とタイミングを合わせ同様の攻撃を

魔女を無礼(なめ)るな、亡霊が


欄干橋・ヒカタ
さて、最後まできっちり仕事しましょ。
ワタシは仲間たちが「ゼラ」への攻撃に集中できるよう、
煩わしい【眷属】への対応と回復役に努めるわ。

「右後方から迫ってる、3秒は全速力で走り続けて!」
距離をとって全体を俯瞰できるようにしておきたいわね。
【眷属】の動きをみて具体的に声をかけつつ
エレメンタル・ファンタジアで炎の雨を降らせる。ゼラへの道を開くのよ。

叩くのはみんなに任せて、
無差別攻撃に対しては手広い回復が必要よね。
シンフォニック・キュア、響かせるわ。
ワタシのスピーカー、小さい割によく鳴るんだから。
「『飢えた獣達へ その一滴が全てを癒す』」

酒は百薬の長、ってね。
…結局【酔兵団】の名に感化されてしまったわ。


ゲンジロウ・ヨハンソン
【酔兵団】として参加。わし含め総勢5人じゃ。
※アドリブ歓迎

今日は頼もしい仲間のサポートもあるし、わしも久々に全力攻撃できそうじゃわい。

○戦闘
厄介な攻撃にゃ味方が対応してくれるでな、本体への攻撃に集中じゃ。
生に執着があるみたいじゃの【生命力吸収】の効果のある海部刀で【挑発】的に斬りつけてこう。
敵の攻撃には【盾受け】大威力の攻撃には【激痛耐性】で対応しよう
どんな敵でも高威力の範囲攻撃の後なんざちったぁ隙ができるじゃろ。
●囚われの慟哭 発動後【コミュ力】で総攻撃の声掛けして【捨て身の一撃】でUCを叩き込むぞぃ。
ゼラの生への執着と、この怨嗟の主共のわしへの生への執着。
どっちか勝つか見ものじゃのぅ。


ヴィサラ・ヴァイン
アカーシャさんはゼラに意識を奪われていた……? 日記が途切れ途切れなのも、そのせい……? 何にせよ、彼女の体も心も渡しません
だから彼女の意識に呼びかけます
貴女がゼラになったら、助けようとした村人を手にかける事になるんですよ!
その時の貴女を見る村人の目を想像してください!
あえてそんな【最悪の恐怖】を抱かせて(恐怖を与える25)その恐怖を元に【強迫】します
……ゼラに意識を奪われるくらいなら、私が奪います
「目を覚まして! アカーシャさん!」
貴女が抗う意思を持つ限り、私達猟兵は諦めません
だから『絶対に諦めるな』
それが彼女に対する『命令』

…後で彼女に何を思われるのか……ですが、これが今の私の精一杯です


アスカ・ユークレース
さて、リボンの似合う優しい魔女さんを助けに行きましょうか?
原・ハウスィ(f01358)、神宮寺・絵里香(f03667)、ルカ・ウェンズ(f03582)、シャノン・ヴァールハイト(f10610)と連携

基本は【クイックドロウ】と【援護射撃】で【眷族】の対処に当たりましょうか。元締めの無差別攻撃も含めて攻撃は【眷族】を使って【敵を盾にする】とか【ジャンプ】等で距離をとって対応。
「アカーシャ!折角村人と仲直りできそうなのにっ……!心も体も乗っ取られて終わるなんて…そんなの絶対に駄目なのです!」


トリテレイア・ゼロナイン
※鎧は白に戻します
やはり存在しましたね、『ゼラの死髪黒衣』
アカーシャ様を開放してもらいましょう

過去に遭遇した個体と違い、完全に取り込まれていないので少女の身体を気にせず戦えるのは僥倖、手加減せずに戦えるものです

慟哭から周囲の仲間を「盾受け」で「かばい」つつ、スラスターを点火。
地面を滑るように「スライディング」しながら眷属の間をすりぬけ接近し、大鎌を「武器受け」で受け止め、「怪力」による大盾殴打での「カウンター」を狙います

ゼラがリソースを戦闘に回し始めたタイミングを「見切り」、自身の被害を度外視し「優しく」アカーシャ様と「手をつなぎ」貴女を待っている方がいると伝え彼女の目を覚ます一助としましょう


ルカ・ウェンズ
【行動】私は敵にPOWで攻撃、原・ハゥス(f01358)、神宮寺・絵里香(f03667)、アスカ・ユークレース(f03928)、シャノン・ヴァールハイト(f10610)と連携して戦うわ。基本的には囮役になり敵の【慟哭】からの無差別攻撃などに気おつけて【戦闘知識】を使い【残像】で移動しながら敵に隙があれば【怪力や2回攻撃】したり【縁切り】での攻撃や【怪力】で死髪衣装を引き離すのを狙って行動するわ。あと味方が死髪衣装を引き離そうとしたら手助けして【怪力】で敵を押さえ込むようにするするわよ。
【心情】ゼラを悔しがらせるためにも少女を助けるわよ。(この世界では数少ない、可愛いくて善良な人間だしね)


神宮寺・絵里香
アスカ、ルカ、ハウスィ、シャノンと連携≪心情≫あの少年、ゼノンの想いを聞いているのはオレだけだったな。だったら、オレがゼノンの想いを御業に乗せてアカーシャまで届かせる≪戦闘≫・防御や雑魚対処は任せて魔法に集中する。・【高速詠唱】により詠唱破棄した『我等雨雲と共に舞い踊る巫女也』 を使い雨雲を呼び雨を降らせる。・ゼノンのアカーシャを救いたいという【祈り】を真言にのせ、 【力溜め】をした【全力魔法】のUCを【破魔】の力を乗せて詠唱。・詠唱文変更。 「ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!  神々の王よ、純粋なる少年の祈りに応え、少女を救い給え!  少女に憑きし魔を滅ぼせ因達羅乃矢よ!」


ガルディエ・ワールレイド
アカーシャの意識が消えるまでが勝負か。
上等だ。脳筋の本領って奴をみせてやるよ。

◆戦闘
【存在証明】を攻撃力重視で使用。
真の姿を開放し赤い雷を纏う。その雷は【属性攻撃】として武器に付与。
武装は【怪力】【2回攻撃】を活かすハルバードと長剣の二刀流で、間断なく攻めるぜ。
更に死中に活を求めて【捨て身の一撃】で踏み込みだ。

守りは【武器受け】を駆使して立ち回り、被弾しそうな時は【オーラ防御】
近接攻撃が命中した場合は【生命力吸収】

【囚われの慟哭】対策
自分の気を強く持つし、アカーシャの意識に話しかけて慟哭を軽減出来ないか試すぜ。
「嘆いてる暇はねぇぜ。もう少しでハッピーエンドだ。あのガキ(少年)だって待ってる。」


シャノン・ヴァールハイト
ハウスィ、神宮寺、アスカ、ルカ、と連携希望。

《心情》最大火力を叩き込む。言うや易しだが…相手が動いていては、当たる攻撃も当たらぬ可能性がある。ならば、当方は味方を守りながら攻撃を当てる為のタイミングを作るとしよう。

《行動》真の姿を使用。
基本的に、技能『怪力』『武器受け』を使用して前衛で防御をメインとして行動をする。ただし攻撃をし易そうな見方が居たならば『吹き飛ばし』を使用するし、意識が自分から反れたら『怪力』を使用して全力で攻撃するなど、徹底的に敵の邪魔を行う。
可能であれば、死髪黒衣を『怪力』を使用して捕まえ、逃げられないようにした上でUCを使用し、仲間がUCを使い易いようにする


原・ハウスィ
神宮寺・絵里香、ルカ・ウェンズ、シャノン・ヴァールハイト、アスカ・ユークレースとの連携を希望
「今回は縁の下の力任せになるよ! 唸れN.G.H.B!」
携帯端末を操作し、UC【Net income God Hand Blow】を発動。召喚されるであろう眷属を殲滅し、味方猟兵がゼラの死髪黒衣に攻撃を集中しやすいように支援する
一応周囲に気を配って攻撃を繰り出すが、ユークレースさん辺りは自分でなんとかするとのことなので、割と遠慮なく行動する
攻撃を受けた場合は持参している「ミラクルバット」を用いて【カウンター】をし、攻撃を打ち返せるように備えておく


ルセリア・ニベルーチェ
アドリブ歓迎ですの
他の猟兵さんとの協力歓迎!

派手になってしまいますが、開戦の狼煙は上げさせて頂きましょうか!!

初手【吸血鬼嬢は眠らない】で真の姿と共に吸血鬼に覚醒
【過去と未来の狭間】で真の姿を更に強化し
黒剣を統べし未来の可能性を再現
「目指す果ては栄光か破滅か───"黒剣を統べし"未来」

囚われの慟哭の射程に入らぬよう、透過しながら念動力で空中へ
今宵の天気は、黒剣のち破壊となるでしょう。
皆さんは敵から一旦離れる事を勧めます!

【契約者権限】発動、未来の可能性を再現し黒剣を敵に射出
敵か地面に触れれば集約した【破壊の暴君】を起動、消し飛ばす!

本来、対国や対域で使う代物ですが……最大火力との事ですし!



●黒衣は無慈悲な夜の女王

 態勢を整え再び闘技場に現れた猟兵たちを出迎えたのは舞台と観客席を埋め尽くすゼラの眷属たち。それは影の異形、蝙蝠の翼を持つ悪魔、肉体の一部が腐食した元人間、首のない騎士等様々な眷属たちが猟兵の来訪を出迎える。数を数えるのが馬鹿らしくなるほどの圧倒的物量が猟兵たちの前に立ちはだかる。
『遅かったなぁ猟兵たち。貴様らも随分と準備してきたようだがこちらも準備が整ったわ。総力戦といこうじゃあないか』
 最上段の椅子に腰を掛け猟兵たちを見下ろすアカーシャ、否、ゼラ。その身体から感じる気配はすでにオブリビオンの物。だがまだ微かにアカーシャの気配も感じられる。アカーシャもまだ抗っている。であれば猟兵たちが諦める理由など存在しない。


●吸血姫はかく語りき

「開戦の狼煙は上げさせて頂きましょうか。派手な方がみなさんいいでしょう?」
 闘技場の舞台へと足を踏み入れたルセリア・ニベルーチェ(吸血鬼嬢は眠らない・f00532)はユーベルコード【吸血鬼嬢は眠らない】を発動しあらゆるものを透過する吸血鬼へとその姿を変貌させ真の姿を開放する。
「目指す果ては栄光か破滅か───"黒剣を統べし"未来」
 【過去と未来の狭間】それはルセリア自身の未来の可能性を再現する。未来のルセリアの姿。それは数多の黒剣を統べる吸血鬼の女王に他ならない。姫から女王へと変貌を遂げたルセリアの身体は紅蓮の旋風で覆われる。
 あらゆるものを透過する現世と幻世の狭間。そこにいるルセリアには誰の攻撃も当たらず今のルセリアを止めることができる者はいない。ルセリアは己の身体を浮かせ、ゼラの目線と同じ高さまで飛翔する。
『頭が高いぞ、後輩』
「貴女を先達だと思ったことはありませんの。ルセリアさんは猟兵なので」
 振り上げられたルセリアの腕の先に展開される闘技場の天井を埋め尽くす夥しい数の黒剣の群れ。それは敵を穿ち味方の道を創る破壊の雨。女王の命に従い降り頻る黒剣の雨は破壊の暴君の力を集約させ舞台の眷属だけではなく闘技場そのものを半分消し飛ばす。
「……ルセリアさんやりすぎちゃいました?」
『よいよい、それでこそ猟兵だ』
 半壊した闘技場の中でゼラは未だに健在。おそらく眷属たちがその身を犠牲に盾となったのだろう。不敵に笑うゼラは意趣返しとばかりに腕を振り上げる。
『お前たち、まだ寝るには少々時間が早いぞ?夜は始まったばかり。もう少し愉しませてくれ』
 ゼラの呼び声に従い再び召喚される眷属たち。それほどまでにアカーシャとの親和性が高かったのかゼラの能力は生前に勝るとも劣らないものとなっていた。
『次は何を見せてくれる?猟兵たち』
 眷属たちの双眸が一斉に猟兵たちを捉える。


●利益の弾丸は打ち抜けない

「今回は縁の下の力任せになるよ! 唸れN.G.H.B!」
 原・ハウスィ(元は小売店の店主・f01358)は眷属たちと相対すべく一歩先んじる。今回のハウスィの役目は眷属たちを殲滅し後に続く者たちの道を創ること。そのためならば自らが代表を務める猟兵商業組合の純利益など惜しくはない。例え明日からの昼食がTKGになろうとも。刻一刻と減っていく組合の純利益を代償にハウスィの右腕は輝きを増していく。
「くらえ!」
 振り下ろされたハウスィの手刀は眷属たちを二分し両断する。
二分された眷属の道を駆け抜ける『お前ロードキル』『飲酒運転』『よろしくおねがいします』と書かれた幟旗をたなびかせ、暴走宇宙ハーレー。そこに跨るのはマディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)酔兵団の一員とし招集された彼の役目もまた眷属たちの殲滅。
「悪いオブリビオンをぶち殺すってのは、そりゃあマディソンおじさんの仕事だぜ……!」
 縦横無尽に部隊を駆ける暴走宇宙ハーレー。前に出て来る眷属は轢殺しバイクを避ける小賢しい眷属は違法改造ブラスターで蜂の巣に。
「どうしたどうした!こんなもんか眷属さんよ!」
 片手で暴走宇宙ハーレーを操り連続アクセルターンをしながら周囲の眷属たちに違法改造ブラスターを掃射するマディソン。
「マクナマスさんは物騒なんだな」
 いつの間にか目立たず忍び足で暴走宇宙ハーレーの後ろに乗っていたハウスィ。ハウスィもまた、掃射される違法改造ブラスターに合わせ光る腕から放たれる薙ぎ払いにより眷属たちを一掃する。組合の純利益という名の思い代償を支払いながら。
「久しぶりじゃな、ボロ布」
 巨狼マニトゥに跨り暴走宇宙ハーレーの後に続くのはエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)エウトティアは過去にこのゼラの死髪黒衣とはまた別の黒衣と遭遇し戦闘した経験がある。またゼラの死髪黒衣による被害者が出るというならまたそれを止めるまで。
「マニトゥ!駆けよ!」
 バイクとは別のルートを縦横無尽に走り回るマニトゥ。鈍足の眷属たちでは巨狼の進行をだれも止めることができない。眷属たちはなすすべなく巨狼の急襲を受け蹂躙されていく。
「後で怒られても知らないのですよ、ハウスィ」
 眼下に群がる眷属たちの頭を器用に足場にしながら戦場を駆けるのはアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)アスカもフェイルノートを片手に戦場を駆け廻る。傍迷惑な男性陣二人の範囲攻撃を射線上に眷属を入れることでその攻撃を回避する。それでも掠る程度は何度かあったが。
「アスカさん右後方から迫ってる、そのまま3秒は全速力で走り続けて!」
「はいですよ!」
 眷属を相手取るマディソン、ハウスィ、アスカのやや後ろから戦場を俯瞰し指示を出す欄干橋・ヒカタ(日かげ日なたと飛びにけり・f05881)
「マディソンさん、ハウスィさんは……そのまま自由に暴れてちょうだい」
 なのだが男性陣二人への指示は割と大雑把だった。細かい指示を出すより自由に動いてもらった方が威力を発揮する二人だと察したのだろう。
「応よ!」
「了解なんだな!」
 事実マディソンとハウスィの活躍により再び舞台上の眷属たちは着実に数を減らしていた。組合の純利益も着実に減っていたが。
「アスカさんいくわよ!」
「はいですよ!」
 ヒカタの合図と共にアスカは眷属を足蹴に高く、高く飛ぶ。
「赤く輝け、蠍の炎、その御霊燃やして我に道を示せ。いきますよヒカタ!」
 上空で詠唱を唱えフェイルノートに蠍の心臓たる赤き星の力を込め引き金に指をかける。
「こっちもいいわよ」
 対するヒカタも周囲の精霊に働き掛け開け放たれた闘技場の空に炎の雨を形成する。
「さぁ道を作るわよ!」
 降り注ぐ炎の雨と放たれる真紅に輝く蠍の毒の炎。降り注ぐ二色の炎が眷族たちを焼き尽くしゼラの座る椅子への道を通す。
『……来るか、猟兵』


●猟兵たちの沈黙

 ヒカタとアスカが作り上げた道を走り抜ける6つの影。各自が思い思いの方法でゼラへと接近し動きを止めるべく試みる。その中でも先行するのは我妻・惇(人間の戦場傭兵・f04976)
「要はあの布っキレ、ブチ抜きゃいいんだろ」
 縮地と呼ばれる特殊な歩法と呼吸の制御により他の猟兵たちより先んじる惇。応対するゼラは椅子から立ち上がりこそしたがその場から動かず惇を待ちうける。牙を噛み鳴らし獲物を見定めゼラへと迫る惇。
「オラァ!」
 千枚徹と名づけられたその槍から放たれる刺突はゼラの心臓を貫かんとする。
『……その程度か』
 しかし惇の突きはゼラの指一つで止められる。その手に持った鎌を振るうまでも無く攻撃を受けてみせた。
「まだまだァ!」
 穂先を反転させ石突でゼラの腹部へ打突を繰り出すがそれは死髪黒衣に阻まれダメージを与えることはできない。だが惇にとってはそれでいい。この連撃はゼラにダメージを与えるものではなくその動きを止め、別の猟兵たちの攻撃する機会を生み出すための物。さらに石突を反転させ穂先の連撃を繰り出す惇。ゼラも余裕を見せてはいるがいつ何時本命の攻撃が来るかわからない以上気は抜けない。
「そろそろお終いにしましょうか」
 そんなゼラの背後から現れたのはルカ・ウェンズ(風変わりな仕事人・f03582)ルカもまた惇の攻撃に合わせゼラの首目掛け黒剣を振るう。首を、というよりはアカーシャの頭を覆うフードを斬り取るために振るわれたルカの縁切りもまたゼラの左手に持つ鎌の柄に阻まれる。
『小賢しい奴らよ、その程度でこの首は取れぬぞ?』
「だからどうした!俺は俺の道を行く。例え俺が何者であろうと揺るがぬ意思を以て!そしてお前からアカーシャを救いだす!」
 そう宣言し自身の真の姿を解放するガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)。自身の内に流れるヴァンパイア血。己の中にある異端神の力を決して揺らぐことのない強い意志で制御することによりガルディエの身体は赤き雷光を纏う。複合魔槍斧ジレイザと複合魔剣レギア、二振りの獲物を持ってガルディエはゼラの元へと突貫する。
『混ざりモノか。おまえたちはいつも我々の邪魔をする』
「他の奴のことは知らねぇ。俺はお前が気に食わないだけだ。単純にな」
 赤き雷光を纏ったジレイザを鎌を持つゼラの左手に向け振り下ろす。しかしオブリビオンと化しているゼラの圧倒的なまでの膂力から繰り出される鎌の横薙ぎが惇とルカとガルディエを後退させる。
『その首もらい受けるぞ』
 ゼラは勢いそのままに両手でその呪われた大鎌を構える。
『小さな十字―――』
 その大鎌が振るわれる直前。30cmの間合いに割り込む二つの影。
「させません」
 眷族たちの隙間を地面を滑るようにスライディングで突破し背後のスラスターを吹かせ飛翔してきたのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)トリテレイアは初動前の大鎌に合わせるように儀礼用長剣を叩きこむ。
「そうは問屋が卸さんだろう?」
 ゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)もまたトリテレイアの長剣に巨人の百刃束を合わせゼラの大鎌の動きを止める。
『チッ!次から次へと忌々しい!』
 大鎌を引き態勢を立て直そうと後退しようとするゼラだったがそれを許す猟兵たちではない。
「させるかよ」
 惇の縮地からの加速と共に再度放たれる刺突。後退に意識がいっていたゼラの頬を穂先が掠める。
「当方を忘れてもらっては困るな。堕ちた魂よ、我が招きに応じ、集いて力となれ」
 墜ちた剣士と攻城兵、そして神官の魂をその身に宿しシャノン・ヴァールハイト(死者の声を聞き、招く者・f10610)は堕銀の剣を袈裟に振り下ろす。その一撃は猟兵たちの連撃により意識が逸れたゼラの黒衣の裾を一部だけ斬り落とす。そして猟兵たちの追撃はまだ終わらない。
「そらァ!」
「フンッ!」
 ガルディエのレギアとゲンジロウの海部刀・ヒラヅクリが体勢を崩したゼラに向かい交差するように振るわれる。右腕でその攻撃を弾くゼラだがダメージ以上にその攻撃には目的があった。
『ッ!?』
「あり余ってるみてぇだから貰ってやったぜ」
「随分溜めこんでるみてぇだな」
 ガルディエとゲンジロウの刃から吸いだされるゼラの生命力。アカーシャを完全には浸食し尽くせないゼラにとってそれは砂漠の水よりも貴重なエネルギーだった。
「隙だらけよ」
 生命力を吸われたことに動揺し生まれた一瞬の隙。そこを見逃さず振るわれるルカの縁切り。今度こそ、その凶刃はゼラのフードを引き裂いた。そしてルカの攻撃はそれだけではない。引き裂かれたフードが爆発し見えない蜘蛛の糸がルカの右手とゼラのフードを結ぶ。
「捕まえたわよ?」
『忌々しいッ!』
 その糸を引きちぎろうとするゼラだったがそれを許す猟兵ではない。トリテレイアの重質量大型シールドによるシールドバッシュがゼラの身体を吹き飛ばす。しかし糸に繋がれたその身体は空中で静止しルカの元に引き戻される。
「貴様の動き、封じさせてもらおう」
 宙を舞うゼラの身体に組みつきそのままユーベルコード【無敵城塞】を発動しシャノンの身体は硬直する。本来であればデメリットでしかない身体の硬直もこの状況であればメリットに転ずる。
『くっ…動けん……』
「そうだろう、当方と我慢比べでもしようではないか吸血鬼」
 組みつき硬直したシャノンの身体はそのままゼラの枷となる。


●誰がために雨は降る

「仕込みは上々、予定は順調だな」
 神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)はこれまで戦いに参加せず魔法を練り続けていた。それも猟兵たちの作戦。最大火力をぶつけるのはまずゼラ自身の動きを止めなければ
防がれるし避けられてしまう。であれば動きを封じてから最大火力をブチ込めばいい。単純明快な答えだった。
「……」
 御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)もまた攻撃役として選ばれたのだが目の前で酔兵団の仲間が戦っているのをただ見ているだけというのはウカノの性に合わず歯がゆい思いを感じていた。
「慌てるな、機を待て」
「でも!……わかった」
 逸る気持ちを絵里香に制されウカノもまた集中に戻る。
「オレの方も仕込みを進めるか……」
 詠唱を破棄された【我等雨雲と共に舞い踊る巫女也】により闘技場の空を覆い尽くす雨雲。ポツポツと降り出した雨は炎の道を鎮火し絵里香に力を蓄えていく。
「こっちはいつでもいいぞ、ゲンジロウ」

「そろそろ頃合いかしら」
 戦況を眺めるヒカタは呟く。
「ルセリアさんももう一発ぶっ放せばよろしくて?」
 滞空し黒剣の雨を降らせ続けていたルセリアがヒカタの元へ舞い降りる。
「ええ、絵里香さんたちの攻撃に合わせてちょうだい」
「了解しましたの!」
 ヒカタの指示を受けルセリアは再び空へと舞い戻る。

「ハウスィさんよあんたはどうする?やるなら運ぶぜ?」
 暴走宇宙ハーレーで眷族たちを轢殺しながらマディソンはタンデム中のハウスィに問いかける。
「って、あれ?いねぇ」
 しかしハウスィの姿は既になく置いてあるのはたった一つの小石だけだった。

(む、ゲンジロウ殿の周囲の精霊がざわめいておる……頃合いかの)
 マニトゥに騎乗し死角を回り込むように駆け回り眷族たちに矢を射続けていたエウトティア。しかしゲンジロウの周囲の精霊たちの声がエウトティアに次なる作戦を伝える。エウトティアはマニトゥにも作戦を伝え行動を開始する。今回の攻撃の引き金を引くのはエウトティアだ。攻撃に最適な場所を探しマニトゥは駆け巡る。
(この位置なら―――)
「風の精霊よ。我が敵を切り裂くのじゃ!」
 エウトティアの呼び声に応える風邪の精霊たち。エウトティアの敵意に従いゼラの死髪黒衣目掛けて風の刃が飛来する。
『その程度ッ』
 しかしその攻撃もシャノンという枷がついているゼラにギリギリ避けられてしまう。しかしそれでいい。
「ゲンジロウ殿、今じゃ!」
「応!」
 エウトティアの声に従いゲンジロウの身体中の傷跡から怨嗟の紫炎が溢れだす。それは眼前のゼラの死髪黒衣を焼き尽くさんと燃え広がる。
『その程度の炎、耐えきれないと思ったか?』
 現在進行形で四肢を封じられているゼラだがまだ一つだけ隠された奥の手があった。それはゼラにとってほんの少しだけリスクを伴う行為。だがこの状況を打破するためには手段は選んでいられない。
『起きろ、アカーシャ。お前を迎えに来た者たちだ』
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」
 それはアカーシャの、少女の悲痛な叫び。すでに意識はゼラに呑みこまれる寸前のアカーシャが何を見たのか。何を想って発した声なのかは分からないがアカーシャの慟哭は音の衝撃波となり怨嗟の炎を掻き消し周囲の猟兵たちを飲み込もうとする。
 しかしそれを許さない二つの盾。ゼラの前に立ち、攻撃の準備を進める背後の仲間たちを守るのはトリテレイアとゲンジロウ。紛い物の騎士とただの傭兵は持ち得る盾だけではなくその身も盾としこの哀しき悲鳴を受け止める。ゼラの付近にいた猟兵たちは無敵と化し枷となったシャノンと盾となった二人以外はその衝撃により吹き飛ばされる。

「そっちはどうよ……トリテレイアくん」
「私はまだまだ平気ですよ」
 盾となった二人の傷は浅くはない。剣を杖代わりに立ってはいるがダメージは隠せない。ゲンジロウは持ち前の激痛耐性でやせ我慢をしているがそう簡単に動けそうもない。トリテレイアもまた身体の細部に罅が入っていた。しかしゼラもまたアカーシャの意識を解放したことにより動きを止める。
「今が好機、ワタシの歌を響かせるわ」
 ゲンジロウとトリテレイアのおかげで無傷で済んだヒカタ。ゼラの動きが止まった今を見逃す手はないが前線のメンバーは先程の攻撃でダメージを受けている。であればそれを癒すのがヒカタの役目だ。
「『飢えた獣達へ その一滴が全てを癒す』」
 歌われるヒカタの歌。それは猟兵と酒の歌。【酔兵団】の名に相応しいその歌はヒカタの心の内から紡がれる。それは共感した者の傷を治療する癒しの歌。少女の哀しい慟哭と対を為す人形の癒しの歌。ヒカタの歌声を聞き届けた前線の猟兵たちは再び立ち上がる。今こそ好機だと信じて。
「そぉら!ぶちかませぇ!」
 ゲンジロウの喝に従い万全の準備を整えていた猟兵たちが動き出す。
「やっとあたしの出番だぜ!受けてみな!【一二ノ太刀】!」
 ウカノの太刀が刀身を煌めかせ斬撃を飛ばす。
「もう一発いきますの!」
 黒剣の雨が再びゼラを襲う。
「ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!  神々の王よ、純粋なる少年の祈りに応え、少女を救い給え!  少女に憑きし魔を滅ぼせ因達羅乃矢よ!」
 ゼノンのアカーシャを救いたいという純粋な祈り。それを巫女たる絵里香は真言にのせ最大の威力を持って解き放つ。

『ク、クハハハハ。この程度か猟兵!私はまだ健在だぞ!』
 斬撃に晒され、黒剣に貫かれ、稲妻に焼き焦がされても未だゼラは健在である。
「まだ終わらんよ」
 ゲンジロウの固く握られた拳が怨嗟の炎を纏う。腕の届く範囲であればこの拳は届く。
「てめぇの強さ、認めた上で越えてやろうじゃねえか!」
『や、やめ―――』
 ゲンジロウの全身の筋肉が躍動しゼラの腹部へ怨嗟の炎を纏った拳が捻じ込まれる。
「やめないんだよ」
 そしてゼラの胸元から光り輝くエネルギーブレイドの刀身が伸びていた。それはハウスィ自身の店の売り上げを代償に得られる最高の力【Sales Abandonment Attack】またの名をウリアゲホウキアタック。その刀身から漏れだすエネルギーがアカーシャではなくゼラの身を焼き焦がす。

 ここで猟兵たちの攻撃によりゼラのリソースは尽きた。ここからが本当の戦い。


●アカーシャに花束を

「間に合ったな」
「え?ちょ、どういうことだよ!オレはここに来んなって―――」
「事情が変わったのだ。お前自身の手でアカーシャを救いだせ。手助けはしてやる」
 ゼノンを村から連れ出したのはイデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)。魔女はこの物語を締めるのは最初の二人だと決めていた。
「ギリギリセーフですね」
 炎を巧みに操りながら眷族を焼き払うリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)魔女たるリミティアもまたゼノンを連れてくることに賛成していた。
「……おい、あれって」
「そう、アカーシャだ。心配するな今起こす」
 ゼラに憑依されたアカーシャを見て言葉を失うゼノン。しかしイデアールはそんなゼノンの気持ちはお構いなしに事を進める。
「布風情が、魔女を食おうなど千年早いわ!」
 イデアールは即座に魔法陣を展開。シャノンがイデアールの展開する魔法陣に気がついた所で無敵を解除し離脱。空を埋め尽くすほどの無数の魔法陣が現れそこからゼラ目掛け一斉に魔力の剣が放たれ魔剣は黒衣を壁へと縫い付ける。既にダメージの許容量を超えていたゼラはたまらずアカーシャの意識を手放してしまう。それにより一時的に憑依が解ける。
「貴女がゼラになったら、助けようとした村人を手にかける事になるんですよ!その時の貴女を見る村人の目を想像してください!アカーシャさん!」
 そのタイミングを見逃さず叫ぶのはヴィサラ・ヴァイン(人見知りなゴルゴン少女・f00702)ヴィサラがアカーシャの恐怖を煽るようなこと言うのにはもちろん理由がある。それは―――。
「……いやです。みんなをきずつけるのはいやです」
 アカーシャがヴィサラに抱いた恐怖心。ヴィサラはそれを利用し恐怖を操る幻影を召喚しアカーシャへと命令を飛ばす。
「目を覚まして! アカーシャさん!」
 アカーシャが抗い続ける限り猟兵たちも抗い続ける。だからこそアカーシャも『絶対に諦めるな』それがヴィサラが下したアカーシャへの『命令』
 ヴィサラ自身があとで何と思われようと今はアカーシャのことが最優先。そのためにできることを全力でする。
「今助けてやる!もう少し我慢してくれや…!」
 ウカノがアカーシャとゼラの死髪黒衣を引き剥がすべく壁に縫い付けられたゼラの元へ向かう。またそれに続く他の猟兵たち。
「アカーシャ!折角村人と仲直りできそうなのにっ……!心も体も乗っ取られて終わるなんて…そんなの絶対に駄目なのです!」
 アスカの悲痛な叫びもまたアカーシャを勇気づける。
「そこで哭いている暇があるのですか?その黒衣に屈することは、あなたが守りたい大切な人々を見捨てるということです。魔女ならば誇りを示しなさい。己の魂は亡霊風情に弄べるものではないと」
 リミティアの厳しくも優しい言葉がアカーシャの心を揺さぶる。

 しかし猟兵たちの言葉では魔女は目覚めない。真に彼女の求める声は別にあるのだ。

「……帰って来いよ、アカーシャ。村に帰ろうぜ」
 ぽつり、ぽつりとゼノンの口から言葉が零れ落ちてくる。
「いつもみたいにお前んちに行って、わけの分かんねー薬の話を聞いて、お前のつくった微妙な飯食って、帰ってまた明日って。オレはそんないつもの毎日があればよかった。お前がいてくれればそれだけでよかったんだ……」
 少年はやっと気がついた。自分の中でどれだけ魔女の存在が大きかったか。それが分かったらもう離さない。アカーシャへゼノンは手を伸ばす。
「帰ろう、アカーシャ。オレたちの村に。そしてずっとオレと一緒にいてくれ」
 その言葉を聞いたゼラ/アカーシャの目から涙が零れ落ちる。

「貴女を待っている人がいます」
 紛い物の騎士は立ち上がる。守るべき者がいる限り。
 既にゼラの死髪黒衣の浸食は0に近い。自身の命を維持することで精一杯なのだろう。だがそれでも0ではない。引き剥がそうとすればそれ相応の痛みが待っている。
「ですから貴女はそろそろ起きなければ」
 そっとアカーシャの手を優しく握るトリテレイア。そしてトリテレイアは徐に黒衣を右手で掴み力任せに引き千切る。右手を軋ませ歪ませながら。物理的に分離したことによりアカーシャへの浸食は今度こそ0になる。その代償は小さくなく、トリテレイアの右腕はボロボロだった。意識を失っているアカーシャを左手で抱きながらトリテレイアは救いだせたことを安堵する。

 ひらりひらりと死髪黒衣だったモノが地に落ちる。


●夜は短し恋せよ魔女

 これにて一件落着。アカーシャは解放されゼラの死髪黒衣も宿主がいなくなり無力化に成功した。猟兵たちはものの見事に半壊、いや、全壊している闘技場をどうしたものかと頭を悩ませていた。

「無様ですね。布切れ一枚で生に縋り付く様は」
 そんな中、地に落ちた黒衣に近づくリミティア。その眼は侮蔑と嘲笑に満ちていた。リミティアが布に背を向け立ち去ろうとした次の瞬間。黒衣がリミティアの首へと巻きつき浸食を開始する。そう、ゼラの死髪黒衣は猟兵さえも浸食できるのだ
「リミ―――」
「よく見ろ、問題ない」
 飛び出そうとしたシャノンを絵里香が静止する。絵里香の言葉通りリミティアにはなんの変化も無い。それは魔女たる彼女が身につけている呪詛耐性の効果に他ならない。真の魔女たるリミティアがこの程度の呪詛に呑みこまれるわけがない。
「……この程度でしたか。拍子抜けですね」
 リミティアは首に巻きつく死髪黒衣に手をかけ魔女の禁術を発動する。口元から血が流れるがそれは限界を超える魔力を宿した代償、甘んじて受ける。
「魔女を無礼(なめ)るな、亡霊が」
 リミティアの手から放たれた勿忘草色の炎がゼラの死髪黒衣のみを焼却する。灰も残らず燃え尽きた黒衣はもう二度と蘇ることはないだろう。灰が風に流される中、リミティアは思い出したのかのように呟く。
「布切れのためにここまで被害を出したというのも心外です。元に戻しておきましょう」
 詠唱を口ずさみ振るわれた指から迸る魔力の輝き。それが闘技場を包み込み全壊していた闘技場は瞬く間に元の姿に戻っていく。
「これにて一件落着です」

 リミティアの手により此度の事件は幕を閉じた。誰ひとりの犠牲者を出すことも無く。


●魔女のいない日曜日

 村の暴動も止め、アカーシャを救いだし、オブリビオンの討伐も終えた猟兵たち。帰路につこうとした猟兵たちを呼びとめる声があった。
「今回はありがとうございました!」
 意識を失ったままのアカーシャを背負い深々と頭を下げるゼノン。リボンのなくなったアカーシャの長い髪が時折顔に当たり鬱陶しいようだがその顔は笑っていた。
「約束したからな」
 ぶっきらぼうに答える絵里香。絵里香だけがゼノンの想いを知っていた。
「あんたたちのことは絶対に忘れない。猟兵って人たちがどんなに優しくて強くてカッコいいか、オレは忘れない」
「縁があればまた会おう。精々アカーシャに逃げられない様にな」
「う、うるせぇ!」
 背を向けゼノンに手を振りながら最後である絵里香の転移も終えて猟兵たちはこの世界から去っていった。少年と魔女の心の内以外に何も残さず。

「う、うーん……」
 ゼノンの背中でアカーシャが目を覚ます。
「起きたか?ねぼすけ。今日はどんな夢見てたんだ?」
「ゼノンが告白してくれてー、あとはー……」
 その時のことを思い出して嬉しくなったのかアカーシャはくすりと笑い。
「真っ暗でなにもできない所にいる私に『諦めるな』って元気づけてくれた優しい女の子がいた気がするんだ」
「そっか……そりゃよかったな。さ、村に帰ろう」
「あ、わ、私歩けるよ!」
 ゼノンに背負われていることを思い出し急に恥ずかしくなるアカーシャ。だがゼノンはアカーシャを下ろさない。
「お前くらいならオレだって背負ってやれる。今だってこれからも」


 かくして少年と魔女を巡る事件は幕を閉じた。少年は父親の後を継ぎ村長に。魔女と呼ばれた少女はその後、才色兼備な村長の妻となり薬学の知識を広め村人の健康を守った。
 その村はどんな薬も扱える魔女がいる村だと少しばかり有名になったらしい。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月08日


挿絵イラスト