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迷宮災厄戦⑱-1〜空飛ぶほうきは戯れたがり

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●ぶるーむめもりある☆
「突然だけど、ほうきに乗って空を飛びたいなんて思ったことはあるかい?」
 ぺらり。メモ帳の中身を確かめながら、グリモア猟兵エンティ・シェア(欠片・f00526)は語る。
 オウガ・オリジンが扱う現実改変ユーベルコードが作り上げた不思議の国の一つが、そう言った国なのだと言う。
 なんと、地面がない。
 一面が晴れ渡った青空で構成されており、足場になるのは辺りを飛び交うほうきだけ。
「オウガ・オリジンはさすがというかね、普通にぶんぶん飛ぶよ。まぁ彼女の作った国だからそうなるよね」
 ずるいよねぇ、と肩を竦めつつも、どことなく浪漫の溢れる国ではないかなと微笑んでみせる。
 ほうき達は何もただの足場ではない。一本捕まえて言うことを聞かせれば、空飛ぶ魔女さながらにほうきに跨っての空中戦だってできてしまうのだと言う。
 そして肝心の、どのようにして言うことを聞かせるかという点は。
「このほうき達、ときめきに弱いらしいよ」
 格好良く、可愛らしく、時にはセクシーに?
 ほうきの心をハートキャッチしてやればいい、らしい。
 要するにほうきにも色々性格があるらしく、相性のいい子を探すといいんじゃないかなとは、取ってつけたようなアドバイス。
「まぁその辺は現地で臨機応変にというやつでね。相対する彼女の力も確認しておこうか」
 この国に現れるオウガ・オリジンは、ハートのトランプを飛ばし、対象を燃やす事ができる。
 この炎はハートの女王のような姿をしており、オウガ・オリジンの気まぐれ一つで消すことも出来るのだ。
 次に、空飛ぶほうきを駆る魔法使いのオウガを召喚する。魔女のようなそのオウガは、オウガ・オリジンに協力する形で、猟兵達を追い詰めてくるだろう。
 最後に、彼女は辺りのほうきすらも従える。
 支配者然としたオウガ・オリジンの号令一つで、飛び交うほうき達は幾何学模様を描きながら複雑に飛翔する武器へと早変わりだ。
「どれも相応に強力だけれど……必ず先制攻撃してきたりとかはしないから、その辺は安心するといい」
 オウガ・オリジンにとって都合のいい不思議の国を生成している時点で先制されているようなものか、と再び肩を竦めたエンティは、浪漫溢れると言った不思議の国への道を開きながら、猟兵達を振り返る。
「自前の羽根でも飛べるから、そちらを駆使するのもありだけど……プライドの高いほうき達が、腹を立ててしまうかもしれないから、あんまり、お勧めはしないかな」
 できれば仲良くしておいで。そう微笑んで、送り出すのであった。


里音
 今回の戦争でもこんな事やらかす里音です。

 今回のシナリオでは空飛ぶほうきをうまく使うことでプレイングボーナスを得ることができます。
 この国のほうきさん達は胸キュンな口説きとかされちゃうと軽率に手懐けられるちょろいタイプばかりです。喋りません。
 甘えん坊やツンデレ、どえむからどえすまで、こんな性格のほうきが居るに違いない!と狙いをつけてときめかせるプレイングをどうぞ。
 また、不思議の国で飛んでいいのは私達だけ!(オリジンさんは怖いのでオッケーですぷるぷる)という状態なので、自前の羽根や飛翔能力だけで飛ぼうとすると妨害されることがあります。
 一度従えたほうきは、オリジンのユーベルコードに影響されずずっと従ってくれます。

 当シナリオは人数控えめでスピード重視の運営となる可能性が高いです。(締切一杯おまたせする場合もあります)
 多くを採用できない場合がありますので、予めご了承くださいませ。

 皆様の胸キュンなプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と魔法の箒』

POW   :    ファイア・オブ・ハート
【ハートのトランプ】が命中した対象を燃やす。放たれた【ハートの女王の姿をした】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    ファンタズム・メイジ
【空飛ぶほうきを駆る魔法使いのオウガ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    箒どもよ、わたしに従え
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【魔法の箒】で包囲攻撃する。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

松苗・知子
【心情】
ふーむ!これはそこそこの【騎乗】スキルを持つあたしの出番だわね!

【口説き】
壁ドン系(?)で強気に行くのよ!
スターライダーとしてあまたの星の海を駆け抜け、銀河帝国との戦いの視線を潜り抜けたあたしに乗りこなされたい箒ちゃん、いるかしら?
うふふ、あなたの魅力を120%引き出してあげるわ。

【戦闘】
まあ実践は泥臭いんだけどね!なり振り構わずギリギリを攻めてこそ勝機があるのよ!
敢えて遅めの速度で飛翔して狙いやすそうな目標に見せ、相手の攻撃に合わせて地表ギリギリまで急降下。低空を潜りぬけてすれ違いざま幻青燈火を投射するのよ。
炎は半分は纏めて一つの炎として正面から、残りは退路を塞ぐように回り込ませるわ




 何処までも何処までも広がる青空。その只中。
 放り出されるように現れた松苗・知子(天翔るお狐・f07978)は、飛び交うほうきの幾つかを足場に体勢を整えながら、改めてその国の情景を見やる。
 今回は、無数のほうきのどれかを手懐けて乗りこなせとのお達しだ。
「ふーむ! これはそこそこの騎乗スキルを持つあたしの出番だわね!」
 自信満々に胸を張る知子は、その自信を裏付ける確かな技能を有している。
 能力は十分、後は、知子と相性のいいほうきと出会うだけ。
 とん、と足場にしていたほうきを蹴って宙に浮き上がると、知子は両手を広げて高らかに告げる。
「スターライダーとしてあまたの星の海を駆け抜け、銀河帝国との戦いの視線を潜り抜けたあたしに乗りこなされたい箒ちゃん、いるかしら?」
 さぁ、我こそはという子は名乗り出て。
 それとも――。
「迫られる方がお好みかしら?」
 知子はくるりと身を翻しながら、興味深げにこちらを見つめていたほうきに、すとん、と横乗りで着地する。
 一瞬、慌てたようにじたばたとしたほうきを優しく撫でて、うふふ、と知子は微笑んで。
「あなたの魅力を120%引き出してあげるわ」
 強気な態度で迫られながら、優しい手のひらに撫で付けられては、ときめきを覚えないわけがない。
 瞬間的にめろめろになったほうきは、ひょいとまたがる姿勢で乗り換えた知子を乗せて、軽やかに青空を飛んだ。
(機嫌が良さそうで何よりだけど……実践は泥臭いんだけどね!)
 軽く肩を竦めながら、知子は敢えて遅めの速度でほうきを飛翔させる。
 ぎゅんぎゅんと飛び交うほうきの中でものろのろと飛ぶ知子の姿はとても目立ち、すぐさまオウガ・オリジンの目にとまることとなる。
「私のほうきを……!」
 奪われたと憤慨して、オリジンは周囲のほうきに号令をかける。
 オリジンを恐れるほうき達はすぐさまそれに応じ、複雑な幾何学模様を描きながら、知子へと襲いかかった。
「――今よ!」
 四方八方から襲いかかるほうきの隙間。身を屈め、ほうきにぴったりと寄り添った知子は、その隙間をほうきと共にくぐり抜けていく。
 びしっ、と幾つかのほうきが知子の身に当たるが、大したダメージではない。
 ぎゅん、と一気に下降し、追いすがるように飛んでくるほうき達を最大速度で振り切るほうきは、誇らしげに胸を張っている……ように見えた。
「その、調子で……!」
 急降下の次は、急上昇。一直線にオリジンのもとへ飛んだ知子は、そのすれ違いざまに、青白い狐火を撃ち出す。
 ぼぅ、と燃え上がった大きな炎は、多くの数を纏めて強化した炎。
 同時に、退路を塞ぐように数個の炎を放ち、オリジンを炎の中に包み込んだ。
「燃やしちゃうわよ?」
 くすりと笑んで炎を叩きつける知子に、さすが! と言いたげにほうきが揺れる。
 強気な姿勢を崩さぬまま、ふふん、と胸を張ってみせながら。やっぱり手のひらだけは優しく、ふりふりと掃く部分を振っているほうきを、労うように撫でてやるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
【果実変性・ウィッシーズラブ】で魔法少女姿に変身して、アマービレで呼んだねこさんを抱きながら箒にお話するのですー。

こんにちはなのです箒さん。わたし、空飛ぶ箒が大好きなのです。
自由で、たくさん風を感じて……
だから、一緒にオウガ・オリジンを倒しませんか?
それでその後は仲良く空を飛ぶのです。風になって、どこまでも遠くへ。
だから……一緒においで?

【第六感】と【野性の勘】で敵の攻撃を【見切り】、回避を。
わたしの愛の力による強化は箒さんにも及んでいるはず。この速さなら敵の攻撃なんて当たらないのです!

ねこさんと協力して【多重詠唱】【全力魔法】【範囲攻撃】【乱れ撃ち】。超高密度の弾幕で敵を【蹂躙】なのです。




 青空ばかりが広がる中に送り出された七那原・望(封印されし果実・f04836)は、重力に身体が引き寄せられるのを感じるや、愛の強さが力となる魔法で全身を覆う。
「わたしは望む……ウィッシーズラブ!」
 きらりんエフェクトがつきそうな華やかな光を放ち、魔法少女の姿と化した望は、落ちていくその身をぴたりと中空に留める。
 本来なら、この技一つで飛翔能力を得るところだが、今回はそれを妨害されてしまうという話だ。
 ほうきを手懐けるべきという指針を示されているのであれば、従うより他はない。
 くるりん、鈴のついた白いタクトを振り、可愛らしい猫の子を呼び寄せると、望は猫を抱きしめながら、ほうきに話しかけた。
「こんにちはなのです箒さん。わたし、空飛ぶ箒が大好きなのです」
 自由で、たくさん風を感じているほうきの姿は、とても清々しくて、楽しげで。
 でも、いまは。オウガ・オリジンへの恐怖心が見え隠れしてしまっている。
 大好きな空飛ぶほうき達が恐怖に支配されるなんて、あんまりだ。
「だから、一緒にオウガ・オリジンを倒しませんか? それでその後は仲良く空を飛ぶのです」
 風になって、どこまでも遠くへ。
 澄み渡った青空を自由に、気ままに飛ぶことは、きっと、素敵なことだろうと望は微笑む。
「だから……一緒においで?」
 少女の無垢な夢と願いに、きゅん、とほだされたほうき、くるりと望の前で旋回しては、恭しくお辞儀をするようにして、その身を差し出してきた。
「ありがとうなのですー」
 ふわりと微笑み、望がそっと跨った途端、彼女の味方となり持ち物と化したほうきは、望が得ている愛による強化の力を感じることとなる。
 自分にこんな力があったなんて、と言うようにぷるぷると掃く部分を震わせているほうきに微笑んで、望は、きっ、と目隠しをした瞳でオウガ・オリジンを睨み据えた。
「さぁ、ほうきさんいきましょう!」
 ぎゅんっ、と勢いよくほうきが飛ぶ。その速度は望の力に準拠している。到底、ほうきの出せる速度ではない。
 さしものオリジンもぎょっとして望とほうきにハートのトランプを飛ばすが、到達する頃にはとっくにその位置を離れており、命中することがない。
「この速さなら敵の攻撃なんて当たらないのです!」
 そうだそうだ、とノリノリで望を乗せて飛ぶほうきに、オリジンが一度舌打ちしたような気がしたが、音速を超える速さで飛んでいるので聞こえないということにした。
「ほうきさん、ねこさん、力を貸してほしいのです!」
 望の声に、ほうきは縦横無尽に飛び交い、ねこは望の魔法詠唱を補佐する。
 全力を注いでの詠唱は、オリジンの周囲に幾つもの魔法陣を形成し、弾幕の如き魔法弾を放つ。
 オリジンが飛び退ろうとすれば、ほうきで先回り、さらに魔法を追加でお見舞いだ。
「く、おのれ、おのれ……私のほうきを……!」
「ほうきさんは貴方のものではないのですー」
 高圧的なオリジンさんに心乱されているほうきがいないとも限らないが、それはそれ。
 その大半が恐怖で縛り付けられているのならば、開放するまでなのだ。
「一緒に空を飛ぶのですから!」
 ね、と微笑みかけた望に、ほうきは力強く頷いてくれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乱獅子・梓
【不死蝶】
クッ、単に空を飛ぶだけなら
焔が居れば万事解決するのに…!

綾のアドバイスによると
「梓は見た目だけならオラオラ系っぽいから
乙女ゲーのような恋愛に憧れる箒に
『俺について来い!!』とか言えばイチコロじゃない?」
…乙女ゲーのような恋愛に憧れる箒って何だ
とにかく何かそれっぽい箒を少し強引にガッと掴み
力強く…お、俺について来い!!

…というわけで箒に立ち乗りし
いざオウガオリジンと決戦!

UC発動し、ドラゴンを最大数召喚
オリジンへのメインアタッカーは綾に任せて
こちらは数に物言わせてひたすら
オリジンと魔法使いオウガの妨害に徹する
体当たりや頭突きを仕掛けたり
遠距離からブレス攻撃を放ったりな


灰神楽・綾
【不死蝶】
俺も飛ぼうと思えばUCで飛べるけど
郷に入れば郷に従えって言うもんね

初対面の子と仲良くなるには
やっぱり笑顔が一番だと思うな
クセが無く普通っぽい箒を見つけ
…やぁそこの箒さん、こんにちは
俺は綾って言うんだ
突然ごめんね?
あそこまで俺を連れて行ってくれないかな?
俺一人じゃどうしても無理だけど
君と一緒なら出来る気がするんだ

笑顔で話しかけ、ちゃんと名乗り
真摯に紳士的にお願い

魔法使いオウガの対処は梓に任せ
オリジンに狙いを定める
まずUC発動し、行動の成功率を高める
箒に頼みオリジンの傍まで来たら
そこで大きくジャンプ
Emperorを大きく振りかぶり力溜め
落下の勢いも借りて叩き斬るよ
最後は箒の上に着地




 ――梓は見た目だけならオラオラ系っぽいから乙女ゲーのような恋愛に憧れる箒に『俺について来い!!』とか言えばイチコロじゃない?
 青空一面の不思議の国にて。乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は割と切実に動揺していた。
 的確なような雑なようなよくわからないアドバイスを灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)より受けたのが、ちょっと前のこと。
 正直どういう意味だかよくわかってない梓は、相棒である焔を呼び出したい衝動をぐっと堪え、飛び交うほうきの間をさまよっていた。
 単に空を飛ぶだけなら、焔がいれば万事解決だ。なんてったって焔はドラゴンなのだから。
 だがその大事な焔がこの空を飛ぼうとすることでほうき達のリンチに合う可能性を考えると、迂闊な真似などできなかった。
 つまりは。綾のアドバイスを参考に、ほうきを手懐けるしか無いのだ。
 無いのだが。
「そもそも、乙女ゲーのような恋愛に憧れる箒って何だ……!」
 どれもこれも同じようなというか同じでしか無い無機物にそんなのいるのかと声を大にして言いたい。
 でも、居たりするんです。
 きっ、と鋭い眼差しで見つめれば、怯えるだとかとは違う、興味的な憧れを湛えてドギマギしているほうきが、確かに居た。
「居るのか……」
 一瞬真顔になった梓だが、ふるりと頭を振って、そのほうきへと強引に迫ると、がっ、と鷲掴みにした。
 力強く。そう、その辺が大事だ。脳内で復唱して、梓は鋭く言い放つ。
「お、俺について来い!!」
 ――惜しい!
 でもそのヘタレ疑惑のある俺様感はたまらなく素敵です!
 ほうきが覚えたのはときめきか、はたまた萌か……定かではないが、とにかく無事にほうきを確保できて、梓はほっと胸中で息を吐く。
 一方、綾は一本のほうきの上に横座りで乗りながら、そんな梓の奮闘を見上げていた。
「あ、無事に仲良く慣れたみたいだねぇ」
 一安心だ、と微笑みながら、視線を下ろしてほうきを見つめる。にこりと柔らかな笑顔を湛えた綾に、ほうきもなんだか微笑み返しているような……。
「何いちゃついてんだ」
「普通に仲良くなっただけだよ」
 ねー? と顔を(顔無いけど)見合わせる綾とほうき。
「どうやって誑かしたんだか」
「人聞きが悪いなぁ。郷に入れば郷に従えって言うじゃないか」
 綾は語る。ただ笑顔で紳士的に接しただけだと。
 こんにちはと笑顔で声を駆け、自らの名を名乗り警戒されないように振る舞いながら、丁寧にお願いしただけだ。
 ――綾が目をつけたのは特にクセのなさそうな普通のほうき。
 そんなほうきも例にもれずにときめきに弱い。不特定多数の中から自分を見つけ出してきた美丈夫が笑顔で紳士的に声を掛けた時点でほだされるのである。

 ……やぁそこの箒さん、こんにちは。
 俺は綾って言うんだ。突然ごめんね?
 あそこまで俺を連れて行ってくれないかな?
 俺一人じゃどうしても無理だけど、君と一緒なら出来る気がするんだ。

 一連の流れが、梓の脳内には余裕で再生された。
 これが『ただしイケメンに限る』というやつかとか一瞬思った。
 だが、揃って無事にほうきを手懐けられたのだから、喜ぶべきところだ。
 ほうきの上で器用にバランスを取り、立ち乗り状態となった梓を乗せ、ほうきもまた、バランスを崩させないように丁寧に飛ぶ。
 仁王立ちのままオウガ・オリジンと対峙した梓は、彼女がすかさず召喚した魔法使いがこちらへ魔法を放ってくるのを躱しつつ、ありったけのドラゴンを呼び寄せた。
「集え、そして思うが侭に舞え!」
 ――ただし今回は飛び交うのは控えめで頼む!
 ほうきを立てつつドラゴンを召喚した梓は、90近い数のドラゴンに、魔法使いの妨害を指示する。
 飛び回れない分ちょっぴり窮屈そうなドラゴン達だが、魔法使いが放つ魔法にブレスで対抗したり、その飛行を妨害するように体当たりを食らわせたりと、様々な手段で挑んでいく。
 呼び寄せた魔法使いがまるで使い物にならない状態にオウガ・オリジンが舌打ちするのを聞きながら、綾はほうきと共にオリジンの背後を取る。
 魔法使いとオリジンの足止めは、梓に任せたこ。その隙に、綾はオリジンを叩くのだ。
「俺に出来ないことは無い……なーんてね」
 唱えるは、自身の寿命を代償に行動の成功率を上げるユーベルコード。
 ぱちりとウインクを添えて見せれば、ほうきはすっかりめろめろになって、今なら何でもできる気がする! とやる気に満ち溢れた。
 そんなほうきを従え、オリジンの傍へと飛んだ綾は、彼女がこちらを振り返ると同時に、高くジャンプした。
 くるりと空中で身を翻せば、見上げてくるオリジンと、目が合う――気がして。
 微笑みかけながら、大きく振りかぶったハルバードを、力を込めてオリジンへと叩きつけた。
 落下の威力も含めた一刀は、深々とオリジンを抉り、斬り捌く。
 唸るオリジンを足蹴にして斧を引き抜くと、ふわり、宙に身を投げだして――。
「っと、ありがとね」
 すっ、と綾の落下点に入ったほうきに、着地した。
 そうして、ぼたぼたと溢れてくるオリジンの血を浴びぬように、すぐさまその場を離れながら、綾は梓のドラゴン達やほうきの助力のお陰で、この襲撃に際してはさして寿命を削らずに済んだことを、感じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
ほうきで空飛びたいです!
コミュ力と礼儀作法を使ってほうきさんと交流します
初めまして!貴方は人を乗せて空を飛ぶ事が出来るんですか?凄い凄い!私もちょっとだけ下駄のジェットで飛べるけど、上手くは飛べないから…
もし良かったら乗せて貰えませんか?
乗せていただけたら、ちょっと重いけどごめんなさいねと一言
そーちゃんを片手に、うわぁ綺麗に空飛んでる〜!と感動しながらの、呪詛を帯びたなぎ払い攻撃です
櫻鬼の仕込み刃で斬撃の追撃も加えておきましょう
敵攻撃には第六感で避けてカウンターで反撃です
ありがとうほうきさん!とってもいい子ね(撫でる)




 ほうきしか足場がないけれど、自力で空を飛ぶなんてもってのほか!
 そう、私達を、ほうきを使いなさい!
 聞こえずとも、そんな主張が聞こえてきそうな不思議の国にて。
「ほうきで空飛びたいです!」
 びゅんびゅんと飛び交いながら落ちてくる人をそれとなく受け止めたり足場として利用しやすい位置に行ってみたり。
 なんだかんだ人が好きそうなほうき達に、清川・シャル(無銘・f01440)は元気一杯宣言した。
 足元に飛んできてくれたほうきにありがとうと礼を述べながら、シャルは下駄のジェット噴射で一旦宙に浮く。
 そうして、辺りに飛び交うほうき達をぐるり見渡して。
「初めまして!」
 パッと花の咲くような笑顔で礼儀正しく声をかければ、自然、ほうき達が寄ってくる。
「貴方達は人を乗せて空を飛ぶ事が出来るんですか? 凄い凄い!」
 嬉しそうにはしゃぐシャルに、ほうき達は満更でもない感じだ。ちょっと得意げな様子が見て取れる。
「私もちょっとだけ下駄のジェットで飛べるけど、上手くは飛べないから……もし良かったら乗せて貰えませんか?」
 よろこんで!
 聞こえるような声はないのに、そんな回答が返ってきたように感じるのは、ほうき達が意外と豊かな感情表現をしてくれるからだろう。
 ふふ、と微笑ましげに笑って、それじゃあ誰に、と迷うように視線を巡らせたシャルの元へ、しゅっ、と素早く駆けつけた一本のほうき。
「わぁ! それじゃあ、貴方にお願いします。ちょっと重いけどごめんなさいね」
 ふ、とジェット噴射を収め、すとん、とほうきの上に跨がりつつ苦笑するシャルに、重いなんてとんでもないと言うようにゆらゆらとほうきが揺れる。
 でも少女の見た目にしてはなんだか重いような気がするのは、事実で。
 なんでだろうと不思議そうにしていたほうき、すぐさまその答えを知ることになる。
「うわぁ綺麗に空飛んでる~!」
 感動しながらしっかりとほうきを握りしめているシャルは、もう片手にピンクの可愛らしい色をした結構ごつい金棒を手にしているのだ。
 なるほどそう言うことかと察すると同時、ほうきはシャルの金棒がしっかりと届くよう、オウガ・オリジンへと狙いをつけて勢いよく飛んだ。
 ぎゅんぎゅんと距離を詰めるオウガ・オリジンは、既にいくらかのダメージを負っているようで、飛ぶ速度も技のキレもいまいち。
 ハートのトランプが飛ばされようとも、ほうきが華麗に避けてくれる。
「おのれ……私の支配下の分際で……!」
 恨みがましくほうきを睨めつけるオリジンに、ほうきは一瞬びくりとしたように震えたけれど、シャルがしっかりと握り締めていてくれるから、何も、怖くないのだ。
「ありがとうほうきさん! とってもいい子ね」
 優しく撫でて、また、しっかりと命を預けて。
 シャルはオリジンを睨みつけた。
「地獄へWelcome」
 ぶん、と振り回した鬼金棒が、すれ違いざまにオリジンを強かに打ち据える。
 すかさず高下駄の底から刃を出し、旋回するほうきの動きに合わせて刃を備えた回し蹴りを食らわせてやれば、オリジンの身体が大きく傾くのが見えた。
「ほうきさんを侮るからですよ」
 呻き、あるいは喚くオリジンを見下ろしながら、シャルとほうきは、揃って得意げに胸を張っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルル・ミール
落ちてますが何のこれしき
勇気を胸に周りを見て…
あっ素敵な箒さん!紳士の気配も!
風属性の全力魔法で自分を流して箒さんの方へ

わあ、近くで見るとますます素敵な箒さんです…
艶々な柄は宝石や飴みたい
穂先はふさふさ小麦色で見事に整って…
なんて、なんてハンサムな箒さんでしょうか…!
ハッ
ごめんなさい、自己紹介が遅れました
私ルル・ミールっていいます
お会いしたばかりですが第一印象から決めてました
私をオウガ・オリジンのいる空へ連れて行ってください…!

真摯にお願いしてOKが頂けたら
妨害箒やオリジンには銃勇士の皆さんを降らせましょう
紳士箒さんには傷一つ付けさせません
私がお守りします

そして皆さんの空
返してもらいますね!




 落ちる、落ちる――。
 足場のない不思議の国に放り出されたルル・ミール(賢者の卵・f06050)は、唐突な浮遊感に僅かな動揺を見せるものの、勇気を胸に体勢を立て直す。
「何のこれしき」
 そうして、どこまでも広がる青い空をぐるりと見渡す。
 そこらじゅうを自由に飛び交うほうき達は、どれもこれも同じ見た目の無機物ではあるが、飛び方に若干違いがあるように見える。
 やんちゃそうだとか、のんびりさんだとか。
 そんな中で、ルルは飛び方がやたらとスマートなほうきを見つけて、ぴこっ、と耳を立てた。
「あっ素敵な箒さん! 紳士の気配も!」
 重力には逆らえないルルは、風の魔法で自身の身をせめてと緩やかに滑空させながら、ほうき達の元へと流れていき、件のほうきへと声をかける。
「わあ、近くで見るとますます素敵な箒さんです……」
 近づいてきたルルに、ちゃんと向き直るついでにその身を支えてあげようとする辺り、やっぱり紳士なのだろう。
 自分の下にふわりと収まったほうきに驚きながらも、そぅ、と柄を撫で、ルルは微笑む。
「艶々な柄は宝石や飴みたい。穂先はふさふさ小麦色で見事に整って……なんて、なんてハンサムな箒さんでしょうか……!」
 これはまさに、ほうき界のイケメン……いや、ジェントルマン!
 やや興奮気味にほうきを眺めては撫でるルルは、そんな己の行動にも引いていかず黙って(そもそも喋れない)自分を支えてくれている事に気が付いて、ハッとしたようにわたわたとした。
「ごめんなさい、自己紹介が遅れました。私ルル・ミールっていいます」
 丁寧に名乗るルルに、御機嫌ようと言わんばかりに柄が傾ぐ。
 やっぱり優しいほうきさんだ、とはにかんで、ルルは一度ぎゅっと握り締めた手のひらを、ほうきへと差し出した。
「お会いしたばかりですが第一印象から決めてました。私をオウガ・オリジンのいる空へ連れて行ってください……!」
 告白現場かな?
 ドキドキしながら返答を待ったルルに対し、ほうきはちょいちょいと柄を振って、握るように促してくる。
 応えて握れば、ふわり、ほうきが浮き上がる。
 ――お安い御用だ。さぁ行こうか、お嬢さん。
 幻聴が聞こえそうな気がする紳士っぷり。
「紳士箒さんには傷一つ付けさせません。私がお守りします」
 藤紫の瞳に決意を込めて、見据えるはオウガ・オリジン。
 随分と手ひどくやられた後のようだが、それでも――いや、だからこそ、凄惨に吠える彼女を怖れて、ほうきは従ってしまうのだ。
 幾何学模様を描きながら飛ぶほうきは、真っ直ぐにルルへと向かってくる。
 一際スマートに飛んでいたほうきは、ルルを振り回すことなくほうきとほうきの隙間を縫って飛んでいく。
 それでもやはり、人を載せて躱すには限度のあること。そんな時こそ、ルルの出番だ。
「彼らの勇気はちょっとやそっとじゃ消えませんよ!」
 突如、上空に馬車が現れる。馬も御者も幽霊が務める馬車からは、レイピアとラッパ銃で武装したリスの銃士がわらわら。
 彼らもまた幽霊である。重力とは無縁の存在は、各々に飛び出てはほうき達を蹴散らし、オリジンへと果敢に挑んでいく。
 傷つけてしまったほうきを撫でて下がらせながら、ルルは紳士ほうきと共に銃士の猛攻を補佐していった。
 無数の銃弾を、幾つもの刃を受けて、オリジンは怒号と悲鳴を上げながら、ついには、堕ちた。
「皆さんの空、返してもらいますね!」
 青空ばかりの不思議の国で、何処まで堕ちていくのかはわからないけれど。飛び上がることすらできないオリジンは、やがて消滅するのだろう。
 かくして、空飛ぶほうき達は猟兵と共に、自由な空を取り戻したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月26日


挿絵イラスト