2
迷宮災厄戦⑱-19~ジェイルハウス・ララバイ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン #悪夢獣

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#戦争
🔒
#迷宮災厄戦
🔒
#オブリビオン・フォーミュラ
🔒
#オウガ・オリジン
🔒
#悪夢獣


0




「このアリスラビリンスを巡る戦争も佳境に入ったというところだな。皆の奮闘の賜物だろう」
 グリモアベースの一角。フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は自らの呼びかけに応えた猟兵たちにねぎらいの言葉をかけたのち、そう言った。薄氷色の左目が苛烈に輝く。
「オウガ・オリジンは新たに戦場を出現させた。だがしかし、新たに現れたこれらは少々今までのものとは毛色が違っていてな。これを、見てもらえるだろうか」
 男は背後の映像を振り返る。そこに映し出されているのは、暗く陰鬱で、すべての窓に鉄格子の嵌められた――病院と思しき建物。
「オウガ・オリジンは「はじまりのオウガ」であり、「はじまりのアリス」であるとも言う。アリスであったということは即ち、UDCアースでこれまでにも発見されてきたような閉鎖病棟のような場所……「アサイラム」からやってきた可能性があった。これは、オウガ・オリジンの中に眠っていた「無意識の悪夢」のようなものだと考えられる」
 病棟――檻の中で、オウガ・オリジンは自らの両手首から噴出する赤色に塗れて苦しんでいる。とても戦える様子ではないと思えるのだが――……。
「見ての通り、オウガ・オリジン自身はまともに戦える状態ではない。だがその手首からは、絶えず鮮血色の「悪夢獣」とも言うべき存在が現れ、近づいた猟兵たちに襲いかかってくるようだ。これら「悪夢獣」を殺し尽くすことが叶えば、ここにいるオウガ・オリジンを消滅させることはとりあえず可能なようだな」
 出現する悪夢獣は、巨大な馬型をしたもの、一角獣の姿をしたもの、狼の形をしたものの群れ、刃の耳を持つ兎型のものと多彩だ。
「皆にはこの「悪夢獣」と戦い、そして蹂躙し――殺し尽くして貰う。オウガ・オリジンは放っておいて構わない。どうせ戦えない、そして悪夢獣を残らず殺せばオウガ・オリジンも消滅するのだからな」
 冷たい口調で言う男。どのような背景があったにせよ、オウガ・オリジンに同情している場合ではないと――そう言いたげだった。
「悪夢獣は強力で、そして集団となって現れる。ゆめゆめ気をつけてくれ。現地までの転送は私が受け持とう……準備が出来たら、声をかけて欲しい」
 武運を祈る。男は最後に短く、そう告げた。


遊津
 遊津です。
 こちらはアリスラビリンス、迷宮災厄線のシナリオとなっております。
 一章完結、集団戦。難易度はやや難となっております。
 こちらはオウガ・オリジンの生み出した「悪夢獣」との集団戦という形になります。
 オウガ・オリジンはまともに戦える状態ではなく、また、言葉をかわす・救出するようなこともできません。オウガ・オリジンに対するプレイングは必要ありません。悪夢獣に対して専念して構いません。
 当シナリオには以下のプレイングボーナスがあります。
 (※プレイングボーナス……鮮血にまみれながら、悪夢獣と戦う。)

 こちらのシナリオのプレイング受付は8/23(日)朝8:31以降となります。
 (時間帯によってはMSページ上部に受付募集中の文字が無いことがございますが、時間を過ぎていればプレイングを送ってくださって結構です)
 MSページを必ず一読の上、ご参加ください。
 また、判定の上で成功数が上限に達した以降のタイミングで、プレイング受付の締切を行う可能性がこざいます、予めご了承ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
75




第1章 集団戦 『『オウガ・オリジン』と悪夢のアサイラム』

POW   :    ナイトメア・パレード
【巨大な馬型悪夢獣の】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【一角獣型悪夢獣】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    悪夢の群狼
【狼型悪夢獣の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    忠実なる兎は血を求む
【オウガ・オリジンに敵意】を向けた対象に、【鋭い前歯と刃の耳を持つ兎型悪夢獣】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マリエラ・レイクベア
私の理想とする騎士なら、
オウガ・オリジンの心を救う事もできたのでしょうか?

……今、考えるのは止しましょう。
『創造武器』ドラゴンランス:初期技能・串刺し
突進してきた馬型悪夢獣に、早業で現像したランスで迎え撃ちます。もう、止まれませんよ?

相手の勢いを利用し、ランスを突き刺して怪力で受け止める
串刺しにした悪夢獣を、怪力で持ち上げ頭上に掲げ、滴る血を浴びます

悲しい過去があれば、許す事のできない過去だってある。
…彼女を止めねばこの世界は滅んでしまう。

追撃にきた一角獣型悪夢獣に、掲げていた馬型悪夢獣を投擲
重量攻撃。気勢を挫いた所に、大斧を叩きつけます

未熟な私にできるのは、目を逸らさず、戦う事だけですから!



 かつて幼い頃に出会った、憧れの騎士。
あのひとのようになりたくて、戦いの道へ足を踏み入れたけれど。
私が理想とする、騎士。私がそうであったならば――
(……オウガ・オリジンの心を救うことも、できたのでしょうか?)
 マリエラ・レイクベア(駆けだしマリー・f26774)は。自らの両手首から溢れ出す鮮血に塗れたオウガ・オリジンの姿を見てそう思う。そして、己の思考を頭を振って否定する。
(……今、考えるのは止しましょう)
 暗く、陰鬱なる病院の廊下。そこに足を踏み入れたマリエラの存在を感知して、とめどなく湧き出す鮮血が形を取りつつある。
血の海から顔を出した馬型悪夢獣が高い嘶きを上げた。
マリエラは己の幻想から、一本の槍を創造する。それは竜を駆って戦う雄々しき騎士の槍。
自身へと突進してくる馬型悪夢獣、その胸の真ん中へとランスを突き入れた。突進の勢いで槍は深々と悪夢獣の体内に埋まり、その巨体を縫い止める。馬の脚ががくがくと空中で藻掻いた。
ランスを持ち上げ、高々と掲げれば赤い血が槍を伝って滴り落ち、マリエラの灰色の髪を真っ赤に濡らしていく。白い頬を赤く染め、マリエラは唇を噛んだ。
(……悲しい過去があれば、許す事の出来ない過去だってある)
 許してはいけない、現在もある。
――どうあれ、彼女を止めねばこのアリスラビリンスという世界は滅んでしまう。
それだけは。それだけはどうしても避けたい、避けねばならない事だった。
だから、マリエラはランスを大きく振り回す。馬型悪夢獣の追撃役として血潮の中から産声を上げ、こちらへ駆け出していた一角獣型悪夢獣へと、ランスに射抜かれ深々と突き刺さっていた馬型悪夢獣を投げつける。重いそれをぶつけられて、一角獣の足取りが鈍った。
それを、マリエラは見逃さない。今マリエラの手の中にあるのは、幻想から生み出されたランスではなく――幻のように現れ幻のように消える、実体を持った幻――湖幻の大斧。
 一角獣型悪夢獣の首を大斧が跳ね飛ばす。次いで来る二体目の悪夢獣に叩きつけた大斧から、その体と同じ色の血飛沫が上がる。質量を持ってしまった血の塊が、斧の一撃で崩壊し、破裂し、内側のものを周囲に撒き散らす。鮮血から生まれた悪夢獣にはらわたというものはなく、ただ中にはいっぱいの血が詰まっているだけだ。
それを頭から浴び、全身を赤く濡らしながら、彼女は斧を振るい続ける。跳ね飛ばされた悪夢獣の首が病棟の扉に当たってガシャンと鉄格子を揺らす。
「未熟な私にできるのは、目を逸らさず、戦う事だけですから……!」
 その言葉通りに、マリエラは突撃してくる悪夢獣から目を逸らさず――大斧を振り上げた。ごとり、また鮮血の獣がその頭を叩き割られる。

成功 🔵​🔵​🔴​

シル・ウィンディア
いろいろ思う所はあっても…
今は、これを何とかすることが先決だね

うーん、飛ぶのは難しそうだから、この戦法、かな

向かってくる敵集団に対して
腰部の精霊電磁砲の【誘導弾】を【一斉発射】して
まずはお掃除だね
接敵した敵には…
光刃剣と精霊剣の二刀流での【二回攻撃】で対応

敵の攻撃は
動きを【見切り】最小限の動きで回避するけど…
こっちの方がいいかな?
【高速詠唱】で【オーラ防御】を【多重詠唱】で展開して衝撃を和らげたりするよ

飛べないのはつらいけど、それならやりようがあるっ!

うーん、いつもの砲撃系や射撃系なきつそうだね…
よし、ここはっ!
【高速詠唱】で隙を減らして
低空飛行で選択UC

敵陣に突撃して【なぎ払う】よ



 ――「アリス」が絶望の果てに、「オウガ」へと変貌する。
「はじまりのオウガ」たるオウガ・オリジンもまた、かつては「はじまりのアリス」であったならば。
如何にして絶望の淵に沈んだのか。
アリスである前はどこかの世界の「アサイラム」に捕らわれていたのか。
この陰鬱な閉鎖病棟が「彼女」の心象風景だとでも言うのならば。
「はじまりのアリス」は何故、アリスラビリンス――この世界に呼び寄せられた「はじまり」だったのか。
……思うところは、たくさんある。けれど。
「今は、これを何とかすることのほうが、先決だね……!」
 シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は苦しみ悶えるオウガ・オリジンの両手首、泉のごとく湧き出でる鮮血から生まれだす悪夢獣たちを見据えて言う。
本来空中戦を得意とするシルだったが、この狭い――天井も低い病棟の廊下では縦横無尽に飛び回るには難しいと判断する。
腰部に固定された精霊電磁砲から、向かってくる馬型悪夢獣に向けて魔力砲弾を一斉に掃射する。悪夢獣が高く嘶いた。
「まずは、お掃除だねっ!」
 馴染んだ剣――精霊剣と光刃剣の二振りを両手に、向かってくる鮮血の馬に斬りかかる。鼻先を素早く二回。斬りつければそこから赤い飛沫が噴き出してシルの身体を汚した。
それでもなお馬型悪夢獣は怯むこと無くシルへと突進を仕掛けてくる。シル自身よりずっと重い馬の体躯が彼女の身体を後方へと退がらせる――ここで退くわけには、力負けするわけには、いかない。床をしっかりと両の足で踏みしめ、彼女は耐える。既に馬型悪夢獣の後ろには、新たに生み出された一角獣型の悪夢獣がこちらに向かって来ようとしていた。
幾つも幾つも展開させた魔力防護が重圧に耐えきれずにはち切れ、そのたびに新たに緩衝材のように展開することでダメージを最小限に抑える。
光刃剣が馬型悪夢獣の目を潰し、精霊剣がその首を刎ねる。ばしゃり、水をたっぷりと限界まで詰め込んだ水風船が破裂するように中から赤いものが爆ぜる。それは、血だ。オウガ・オリジンの両手首から今も溢れ続けている鮮血にほかならない。首を失ってもまだ駆けようとする馬の脚を、斬り裂くことで漸く沈黙させる。そうしている間にも――後続の一角獣型悪夢獣はシルへと押し寄せてくる。
(いつもみたいに飛べないのはつらいけど――それならそれで、やりようがあるっ!)
 どうと倒れ伏した馬型悪夢獣の胴体に脚をかけ、床を蹴った。天井に届かない程度の低空飛行で、シルの唇は素早く力ある言葉を詠唱し始める。
「“火の精霊よ”“我が身に纏いて”“全てを焼き尽くす力となれ”……!」
 紅蓮の炎の精霊がシルに寄り添うように纏わりつく。それは不死鳥のようにシルの背中で羽ばたいて、赤い翼を拡げているようだ。
 血の赤と炎の赤、その色が交差する。この体にも確かに流れている赤は今は倒すべき敵で、原初の本能ならば恐怖する赤は今はこの身に馴染んで寄り添う。
シルは炎の翼を羽ばたかせ、一角獣型悪夢獣の群れの中に飛び込んだ。赤く色づいた精霊剣と真白く光る光刃剣とを振るいながら、獣たちを薙ぎ払っていく。
「さあ、どんどん行くよ……!」
 紅蓮の赤が悪夢獣たちを焼き払っていく。じゅうっ、と音を立てて、血が沸騰する音がした。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

かつてオウガ・オリジンに……或いはその前身の存在に、何があったかは分かりませんが、今はそれを追求している場合でもないのは確か
今は兎に角戦うのみですが……血に溺れないように、心を強く持つ必要がありますね

【禍つ影の領域】で周囲を暗闇に変更した上で、その闇が敵を蝕む事で能力を弱体化
此方は『暗視』で視界を確保し、『闇に紛れる』『忍び足』で『目立たない』ように移動

敵の死角から鎖で動きを封じた上で接近して黒剣で『暗殺』。更に『部位破壊』と『傷口をえぐる』事で敵の出血を広げて、その血を浴びていく

敵からの攻撃は『オーラ防御』で防ぎ、受けた分は『生命力吸収』で此方の体力を回復



 アリスラビリンスに招かれるアリスがいた場所が、「アサイラム」と呼ばれていて。
それがアリスと呼ばれる存在を閉じ込める場所であるのならば。
この暗く陰鬱に鎖された病院が、「はじまりのオウガ」であると同時に「はじまりのアリス」であったオウガ・オリジンにとっての「アサイラム」であったのか。
かつてオウガ・オリジンに、或いはその前身であった存在に何があったのかはわからない。けれど今はそれを追求している場合ではない。
 クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は、そう自分に言い聞かせ、呼吸を整える。
「今は兎に角戦うのみですが……」
(――血に溺れないように、心を強く持つ必要がありますね)
 ダンピールであり、グールドライバー。血に強い縁を持つその血統と扱う力の影響から抱く吸血衝動を、今は解き放ってはならない。心に強く戒める。
 今もまだその両手首から鮮血を溢れさせ続けるオウガ・オリジンは、赤く濡れた両腕で自らの頬を掻き毟る。滝のように流れる赤い液体から、刃のように鋭利な耳を持つ兎型の鮮血の獣――悪夢獣がわらわらと湧き出していた。それらは体色と同じ紅の目を一斉にクロスへと向ける。
「“霧よ”“世界を包め”……」
 暗い病院の廊下が黒い霧に包まれ、更に暗闇と化す。そこはクロスだけが変わりなく世界を見ることの出来る領域。兎型悪夢獣はみな一様にクロスを見失い、戸惑うようにあたりを見回している。それだけではなく、かれらの能力は著しく減衰している筈だ。
 素早く音無く、広がる闇に紛れて兎型悪夢獣の群れに近づくと、クロスは鎖を彼らに向かって放つ。呪われた力を持つその鎖は、ジャラジャラと音を立てながら獣たちに蛇のように躍りかかる。その音を聞きつけ、危機を察知して逃げ惑う兎型悪夢獣たちだったが、
暗闇の世界では思うように逃げることも叶わず、次々と鎖に絡め取られていった。縛り上げられた獣をクロスは手にした黒剣の形状を大鎌に変化させ、一気にかれらの首を刈り取る。
 血でいっぱいに膨れ上がった水風船が針で突かれて弾けるように、兎型悪夢獣の切り取られた首からはびしゃびしゃと血が間欠泉のように勢いよく、天井まで吹き上がってだらだらとクロスの頭から真っ赤に濡らしていくが、この領域でまともに視界が利くのはクロスのみ。血に汚れた姿は、誰に見られることもない。
「ああ、駄目ですよ……」
 鎖から逃れた兎型悪夢獣がその鋭利な前歯でクロスに齧りつくが、彼はその手を伸ばして兎の頭を掴む。そのまま短剣に形を変えた黒剣で首を切り裂けば、溢れ出した血がクロスの手を伝う。
――ああ、血が。駄目だ、酔ってはならない。
「此方のほうが、難しい試練だったかも知れないな……」
 クロスはそう呟くと、そのまま悪夢獣たちの命を次々と刈り取ってゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

テリブル・カトラリー
『戦争腕・停滞』
周囲の敵の行動速度を低下させ、馬の頭を掴み、義手黒剣を突き刺し持ちあげる。武器改造、流動黒剣をハンマーの形状に変化、怪力でハンマーと手に持った悪夢獣を振るい、重量攻撃。なぎ払い、地に伏した悪夢獣にハンマーを叩きつける。

オリジンの鮮血で造られた悪夢獣。その血はオウガの力そのものか。
生命力吸収。黒剣で悪夢獣の鮮血を喰らわせる。
…アリスがオウガとなった、相応の経緯があるのだろう。
だが、どんな経緯があろうと、手を緩める理由にはならん。

黒剣の形を解き、液体に戻す。鮮血を呑み増幅した流動黒剣を操り、黒い激流で残る悪夢獣達を絡め取り、押し潰す。
ここで手間取っていては、戦争は終わらない。



 がしゃん、がしゃん。病院にしては狭い、暗い廊下を、テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は進んでゆく。
 視界の先にはオウガ・オリジンが手首から鮮血を溢れさせながら苦しみ悶えている。泉のように広がった血溜まりから湧き出してきたのは馬型悪夢獣。生まれた場所と同じ鮮血の毛色をした獣はテリブルを認めると、高く嘶いて突進してきた。蹄が廊下の床を叩く音が響く。
テリブルは無造作に片手を突き出した。その手は馬型悪夢獣の頭を鷲掴みにする。そのまま押し切ろうとする獣だったが、次第にその動きが鈍っていく。テリブルのユーベルコード【戦争腕・停滞(ウォーアーム・ステイシス)】の力によるものだった。馬型悪夢獣の動きは十分の位置にまで低下し、テリブルの腕によって容易く抑えられた。彼女のもう片方の手は義手であり、同時に剣でもある。ぞぶり、馬の頭部に黒剣が突き刺さり、テリブルはそれを高らかに持ち上げる。
 液体型の黒剣「ゲルニカ」がぬらりと光り、ハンマーの形へと変わっていく。掴まれたままの馬型悪夢獣が振り回され、テリブルの豪腕によってハンマーが振るわれ、廊下に叩きつけられた悪夢獣の頭を割る勢いでハンマーが叩き込まれる。
 悪夢獣の体はオウガ・オリジンの鮮血から生まれたもの。その体にはまるで水風船のように、たっぷりと血が詰まっている。ハンマーがぶち込まれた血袋は爆ぜ、その中身をびしゃびしゃと撒き散らした。悪夢獣の中に埋まったままのハンマーが鮮血を啜る。
(オリジンの鮮血で作られた、悪夢獣。――その血は、オウガの力そのものか)
 テリブルがオウガ・オリジンを一瞥する。未だオウガ・オリジンは苦しみに身悶えるままで、互いの視線は交わらない、どころかオウガ・オリジンの方はテリブルのことを認識できてすらいないようだった。
(……アリスがオウガとなった、相応の経緯があるのだろう)
 他の元アリスであったオウガ達が絶望の淵に沈んでそうなったように、この「はじまりのオウガ」にして「はじまりのアリス」たる存在にも。相応の絶望を経験した過去があったのかも知れない。
(だが。どんな経緯があろうと――手を緩める理由には、ならん)
 未だオウガ・オリジンが流し続ける鮮血の中からは次の悪夢獣……一角獣型のそれらが次々と湧き出してきている。テリブルは冷徹な目でそれを一瞥すると、ハンマーの形をしていた黒剣の変形を解除し。液体形状へと戻した。鮮血を啜ってその体積を増した流動黒剣がずるりと蠢き、漣立ち、そして激流となる。漆黒の激流が一角獣型悪夢獣達の群れの足元を掬い、絡め取り、そして押し潰していった。
「ここで手間取っていては、戦争は終わらない」
 ただ一言、そう言って。テリブルはその流動黒剣を操り、悪夢獣たちを更に激流の中に飲み込んでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メフィス・フェイスレス
アレにとって病院は束縛の象徴…
自由を求めた末にああも歪んだ存在になったっていうの?
強大なだけのクソガキって感じだったけど
朧気に背景が見えてきたわね……それだけだけど
悪いけど同情しているような猶予はないのよ

群れ相手なら死角を無くすためにも出血箇所は多い方が良い
全身から骨刃を生やしつつ自身の体表を切り裂き噴き出した「血潮」に塗れる

「飢渇」を投げて馬と一角獣の顔に纏わり付かせ、
視界を塞ぎ突進を妨害し病院の「闇に紛れ」て回避
群れに突っ込み、UCの火炎に紛れながら骨刃で群れを片っ端から切り裂き返り血を浴びる
目に付いた奴に喰らい付いて噛み千切り、返り血を浴びつつ「吸血」でUCで失った分の血液を補給していく



 暗く陰鬱な、埃っぽい病院の廊下。オウガ・オリジンは両手首から泉のように血を溢れさせながら苦しみ悶え、自らの頬を掻き毟っている。
(アレにとって、病院は束縛の象徴――自由を求めた末にああも歪んだ存在になったっていうの?)
 メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)はそんなオウガ・オリジンの姿を前にして思う。
(強大なだけのクソガキ、って感じだったけど、朧気に背景が見えてきたわね……)
 ――「はじまりのオウガ」にして、「はじまりのアリス」。
かつてアリスであったのならば。オウガへと堕ちた数多のアリスがそうであったように、この「はじまりのアリス」も果てしない絶望の淵へ沈んで、「はじまりのオウガ」となったのか。余りにも多彩にして多種のユーベルコードを操り、現実改変さえ容易くしてのける強大な力と、自分自身同士ですら啀み合う性格の悪さ、アリスを断頭台へ召喚してその肉と血を食らわんとする所業。そんな「オウガ・オリジン」という存在の、激戦の中で現れ出でたこの「無意識の悪夢」たちはそれだけではない過去を想起させるものだった。
しかし。……しかし。
「それだけだけど。悪いけど、同情しているような猶予はないのよ」
 そう、同情や憐憫の感情を向けるには、あまりに遅すぎて――もはや、残された刻限も少ない。オウガ・オリジンを斃さなければ、アリスラビリンスという世界そのものが足掻く暇さえ与えられずに滅びるのだ。
 めきり、めきりとメフィスの体内から骨の刃がその肉と皮とを切り裂きながら生えてくる。噴き出した血潮がメフィスの体中と、病院の床を赤く汚す。廊下の向こうではオウガ・オリジンの鮮血の泉から湧き出した悪夢獣たちがずぶずぶとその体を現実へと現し始めていた。
 馬型悪夢獣がメフィスへと突進してくるのと、メフィスが自身の飢餓衝動を真っ黒なタール状の液体として己の内側から引きずり出したのはほぼ同時。タール状の液体「飢渇」は馬型悪夢獣、そしてその後詰めとして迫っていた一角獣型悪夢獣の顔面へと纏わりつき、その視界を塞ぐ。視界を奪われた馬型悪夢獣はメフィスの横を走り抜けていった。
 自身の体中を赤く染める彼女自身の血液を紅蓮の炎と変じさせながら、メフィスは悪夢獣の群れの中へ突き進んでいく。体内から突き出た骨の刃が次々と悪夢獣たちを斬り裂き、メフィスの身体を更に赤黒い血液に塗れさせながら、纏う紅蓮の炎が獣たちを焼いて、血が焦げる匂いが辺りに立ち込めた。
そのままメフィスは悪夢獣に食らいつき、齧りつく。肉を噛みちぎればさらに鮮血が吹き出した。その血を浴び、啜り、メフィスは失ったぶんの血液を自らのうちに取り込み、回復していく……
 鮮血から生まれ落ちた悪夢獣たちの中には血液が水風船のようにたっぷりと詰まっている。メフィスは飢餓衝動を満足させるまで、悪夢獣たち、その血肉を喰らい続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

卜一・アンリ
えぇ、でしょうね。
私や他の「アリス」がそうだったのなら
「はじまりのアリス」もそうだったのでしょう。

UC【黄金の雨のアリス】の拳銃【クイックドロウ】【乱れ撃ち】で応戦。
悪夢獣の攻撃については基本は【逃げ足】で回避しつつ、
襲い掛かるタイミングを【見切り】【地形の利用】ができたら
院内の長椅子やドアを蹴り飛ばし、敵に叩きつけ【吹き飛ばし】
気勢を削いだ瞬間を【カウンター】【零距離射撃】。

返り血も浴びるでしょうけど、今回は服の染みは気にしてられないわね。
ここも獣の血で模様替えといきましょう。

悪夢から目を醒ます時間よ、「アリス」。
貴女の死をもって終わりにしましょう。
【アドリブ歓迎】



「……えぇ、そうね。そうでしょうね」
 かつり、暗い病院に硬い靴音を立てながら、卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は己から溢れ出る鮮血に塗れて悶えるオウガ・オリジンを睨んだ。
「私や他の「アリス」がそうだったのなら。……「はじまりのアリス」もそうだったのでしょう」
 アンリはかつてアリスだった。このアリスラビリンスという世界に招かれ、アリスとして不思議の国を転々とし、そして自分の扉を見つけて桜舞い散る世界へと帰還を果たした。
不思議の国を旅していたときは記憶はなかったけれど、自分の扉を見つけ、そして帰るときにはすべてを思い出していた。
アリスラビリンスという世界に生まれ落ちた人間はいない。人間はみな、異なる世界の「アサイラム」から召喚されて記憶を失い「アリス」となる。アサイラムとは、まさにこの病院のようにアリスとなるべき人間たちを閉じ込める場所。
だから、オウガ・オリジン――「はじまりのアリス」がアリスとなる前のことは、アンリには想像に難くなかったし。想像などせずとも、目の前の光景がそれをまざまざと突きつけている。
「はじめましょうか。終わりを」
 オウガ・オリジンの両手首から溢れ出して出来た鮮血の泉から、同じ紅色の狼型悪夢獣の群れが湧き出してくる。ぐるる、唸りを上げるそれらを見据え。アンリは悪魔を宿す回転式拳銃の引き金を引いた。【黄金の雨のアリス(アリス・ザ・レインメーカー)】、無数に弾倉内に召喚される弾丸は、狙わずとも狼型悪夢獣を次々と撃ち抜いていく。その弾丸を掻い潜って爪を伸ばし牙を立ててくる狼たちを、院内に設置された長椅子を蹴飛ばして吹き飛ばす。
「今回は、服の染みは気にしていられないわね――ここも獣の血で模様替えといきましょう」
 弾倉は永遠に回り続ける、アンリが望む限りいつまでも、いつまでもその中に弾丸が召喚されるからだ。故にリロードの暇を気にすることなく、アンリは悪夢獣たちを撃ち抜いていく。その弾丸の雨の中を一足飛びに駆け、超超至近距離まで肉薄してきた狼の牙を銃口で受け止め、その大きく空いた口の中に弾丸を三発撃ち込む。喉を撃ち抜かれた悪夢獣は後頭部から激しく血を噴き出し、そのまま崩れ落ちた勢いで返り血がアンリの白いかんばせを汚す。
 ――斃れた悪夢獣は生まれてきた鮮血へと還るように廊下にペンキをぶちまけたような量の血痕と化し。床一面を染めた赤がアンリのブーツを浸し、そのドレスの裾に跳ねる。
 やがて、悪夢獣達が一匹残らず消え失せた時には、病院は天井から床まで悪夢獣達の血が滴り、赤くない場所などないほどになっていた。
アンリの目の前では、息も絶え絶えなオウガ・オリジンが未だ両手首から鮮血を垂れ流しながら、己の顔を掻き毟っている。もうその鮮血から悪夢獣が生まれる気配はない、何もしなくてもこのオウガ・オリジンは斃れるだろう、けれど。
アンリはそれに向かって、ゆっくりと銃口を向けた。
「悪夢から目を醒ます時間よ、「アリス」。……貴女の死を持って終わりにしましょう」
 真紅に塗り替えられた病院に、銃弾の音が響いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月25日


挿絵イラスト