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迷宮災厄戦⑱-21〜悪い夢を終わらせて

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン #挿絵

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●予知〜それは真っ赤に染まった悪夢。
 お友達が欲しいわ。わたしに良く似ていれば、とても理想的。美しい金髪を持っていればいいな。並べば日に焼けていない白い肌が目立つかもしれない。お揃いの洋服を着てみるのも楽しそう。似た声でお歌も歌える。お庭でお茶会やピクニックも素敵だわ。

 ああ、それは夢だ。いつか見た夢、叶わぬ夢、終わらぬ悪夢、終わらない悪夢。
 わたしは、わたしと似つかないそれにぐさりとナイフを突き立てた。美しい悲鳴と赤い花が周囲に咲いて、それに悲しみが少し癒される。
 これはわたしに似ていない、友達ではない。

 わたしの足元にちらばるのはバラバラにした幾多の屍の山。少年少女、友達じゃないそれ。わたしは切り裂いた誰かの手を取った。整えられていない爪はわたしと似ていない、友達ではない。齧りつけば甘美な血の味が広がる。際限ない飢えが少し満たされる。
 次の部位を取る。美しい金髪、これはわたしとよく似ている。だけどこの足はわたしと似ていない。口に含めばまた少し腹が満たされた。
 でも足りない。空腹は満たされず、どこまでも続く闇の世界、わたしは独りわたしとよく似た部位が積み上がった山の上に座り込んでいる。
 お友達が欲しかった。わたしだけのお友達が。

●グリモアベースにて
「以上が僕が見た予知だ。――戦争も佳境に差し掛かったね。ひとまず、集まってくれてありがとう。出来る事から少しずつこなせば、きっと未来は明るいよ」
 グリモア猟兵アリステル・ブルーはそう告げると、周囲の猟兵たちへ頭を下げた。

「さて、今回の予知は――まぁ、あんな感じなんだ。ここに至るまでのみんなの活躍の影響かな、どうやらオウガ・オリジンが抱いていた『無意識の悪夢』が彼女の現実改変ユーベルコードで具現化しちゃったようなんだ。……予知から察して貰えると思うけど少々、いやかなり、胸糞が悪いかもしれない。苦手な人は立ち去ってもらって構わない、きっと君を必要とするグリモア猟兵がいるよ」
 グリモアベースの賑わいを見回し、グリモア猟兵は申し訳ないねと告げる。残った猟兵たちには改めて礼を告げ、転移先となる舞台について説明をはじめた。

「そこはどこまでも続く『平坦な闇のような国』なんだ。予知の通り、国の中央に正気を失い悪夢に呑まれたオウガ・オリジンがいる。周囲には少年少女のバラバラ死体がある。オウガ・オリジンはその上で死体を切り刻んで、自分に似た部位以外を食べているんだ――彼女は飢えているからね」
 闇ばかりが広がる世界に、時折光の輪が現れる。それが消える頃には、猟兵はその国に立っているだろう。
 悪夢に囚われ正気を失っている『オウガ・オリジン』は猟兵を見た瞬間に『新しい友達候補』だと思い込むのだという。
「友達の基準は『彼女に似ているか』だよ。なんでもいいんだ、説得でも演技してもいい。髪色が一緒だとか、声が似てるとか背丈が似てるとかお茶会が好きとか――最悪ここからコスプレして行ってもいいよ、お揃いの衣装なら用意した!!! 大丈夫、正気を失ってるからあとはハッタリが重要だよ!」
 力強く言い切ったグリモア猟兵は足で足元の木箱を軽く蹴った。金髪のウィッグに、水色の服とエプロンが見える。――サイズも色々あるらしい。どうやって入手したのかという疑問といささか不安を覚えた者もいるかもしれない。大丈夫、君は正気だ。

「オウガ・オリジンは、基本的には君たちを狙ってくるよ。友達になってと言いながら、食べようと狙うだろう。沢山のナイフを操って切り刻む機会を狙うかもしれない。――だけど自分と似ている部分があれば、攻撃の手が鈍るようなんだ。似ていれば似ている程、ね。逆に言うと似ていなければ彼女はその手にしたナイフで躊躇なく君たちの命を狙うよ、足元の屍のようにするために、ね。
 グリモア猟兵は転送ゲートを開いて、猟兵たちを見つめた。
「僕はできれば報告書に『全員帰還』って書きたいな。危険な戦場に送り込む身で申し訳ないんだけど……みんなの無事の帰還を心から祈るよ」
 すっとゲートを手の平で示すと敬意を表するように再度頭を垂れた。
「ゲートの向こうは戦場だ、だから気をつけて。みんなの無事を祈っています」


いつき
 こんばんは、新米MSいつきです。
 暑さが続きますがみなさまお体にお気をつけてお過ごしくださいませ。

●注意
 プレイング次第ですが、OP記載程度のカニバっぽい描写や流血なんかがあるかもしれません。全年齢・健全の範囲に収めめちゃくちゃぼかす予定ですが程度はOPでご判断下さい。胸糞は悪いし爽やかさはないと思います。
 猟兵さんたちは基本的に酷いことはされません。

●今回は、ボス戦1章のみで構成される「戦争シナリオ」となります。
 『戦力=完結数』のため、当シナリオは早期完結を目指します(23日日曜以降複数日に渡り執筆予定です)
 成功、大成功を優先して採用予定です。
 OP公開後は断章の追加やプレイング送信期日などを設定しません。気が向かれましたらすぐにプレイングを送信していただいて構いません。執筆や採用状況についてはマスターページでお知らせ致します。

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●目的
 正気を失っているオウガ・オリジンの撃破。

●プレイングボーナス
 オウガ・オリジンに似た姿で戦う。

 当シナリオでは上記をとても重視します。
 姿だけでなく手法に納得や勢いさえあればガンガン追加されます、
 男性でも、とても似つかぬ姿の方でも「俺の金髪(ウィッグ)よく似てるだろ!」とか「自分はアリスだ!」とかあらゆる技能や手段を用いて主張してください。嘘でもいいです、信じさせてください。
 逆に似せずに挑む場合、オリジンちゃんは猟兵を友達ではないと敵視し全力で倒そうとするでしょう(具体的には苦戦の可能性大。状況次第で不採用の可能性が高いです)
 思いつかない場合はOPで用意された服でコスプレも可能です。相手は正気を失っています、いけます!

●補足
 基本アドリブもりもりなのでNG以外は記載不要です。
 またステシ参照するため、技能のかっこくくりも特に必要はありませんので文字数節約に当てて下さい。
 また舞台は平坦な闇ある国ですが、猟兵さんの周囲は不思議な光があるため視界に不自由はしませんので特に触れなくても大丈夫です。
 お互いに視界は良好。遮蔽物に使えそうなものは大量の屍ですが、利用できる方は好きにご利用くださいませ。

 以上です!
 猟兵の皆様のご無事を祈ります。
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と友達探し』

POW   :    友達ならいつでもいっしょ
戦闘中に食べた【相手の肉体】の量と質に応じて【全身が相手に似た姿に変わり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    あなたもお友達になって
自身が装備する【解体ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    誰とだってお友達になれるわ
自身の装備武器に【切り裂いたものを美味しく食べる魔法】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●補足
 先制攻撃はありません、が、反撃はあります。
 程度はプレイングボーナス次第、です。
ユーノ・エスメラルダ
●戦闘
手には似た手袋をつけ、髪型や服を真似れば…似てる気はします

命まで奪われるのは困りますが…片腕のお肉なら差し上げることはできます
猟兵は、丈夫ですから
それに『聖痕』でも治療できます
【覚悟】と【激痛耐性】で耐えて片腕の肉を渡したら彼女は満たされるのでしょうか
許されるなら、【手をつなぐ】ことで【慰め】ることもできるのかな
自分の腕を代償にUCでもう一人そっくりさんを増やしたら…召喚した子がナイフでオリジンさんをぐさりと
オブリビオンでなければ、ほんとうにお友達になりたかったです…
ごめんなさい



 この戦争がはじまって以来、ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)は『オウガ・オリジン』の姿を幾度も目にしていた。
 記憶にある姿を思い返しならが、いつも結い上げている同じ色の髪を下ろし、手袋をつけ服を真似れば、おそらく似ていると言っても良い姿となった。
 これならば大丈夫だろう。

 転送された先は無限に広がる闇の国だった。
 けれどユーノとオウガ・オリジン二人の姿だけがぽっかりと不思議な光に照らされていた。
 彼女はひとり座りこんでいる。足元に散らばった人体の一部を掴んでは、黒く塗りつぶしたような顔に放り込んでいく。
(さて、どうやって声をかけましょうか)
 彼女が今何を考えているかその姿から判断することはできなかった。けれど唐突に食事の手は止まり、目は見えずともまっすぐに視線が向けられているのを感じた。
「新しいお友達?」
 もしもその瞳が見えたのならば――視線がユーノを品定めしていることがわかっただろう。暫しの後に、彼女は満足したように、お揃いだなと呟いた。
 どうやらユーノはお友達候補だと認められたようだ。
「わたしと似ている、だからお友達……お友達ならいつでもいっしょ、でしょう?」
 声には予兆にあったような覇気はなく、どこか虚ろな響きを帯びている。立ち上がった彼女は夢でもみているような足取りでユーノへ近づいた。
 虚ろな声で「お友達なら食べてもいいでしょう?」と繰り返し口にする。
「……片腕のお肉なら差し上げることはできます。猟兵は、丈夫ですから」
 命まで奪われるのは困るが、少しくらいならば……聖痕で治療ができるだろう。そう考え、覚悟を決めて申し出る。
 オウガ・オリジンは嬉々とした様子でユーノの腕にナイフを通す。柔らかな腕から切り出した肉を口へ放り込むと、ぽたりぽたりと地面に赤い花が咲く。
(これで彼女は満たされるのでしょうか)
 自身と共通点を求めその友を喰らう。その行為で満たされるものはなんなのだろう。
 漏れ出そうな悲鳴を抑え激痛に耐えながら、ユーノは彼女の赤く染まった手を取った。
(……もう誰かを傷つけるのはやめてください。罪を重ねないで……)
 手をつなぐことが慰めになれば良いなと願いながら、自分の腕を代償にユーベルコード【メンタリティ・リペント】を発動し、電脳空間からもう一人のそっくりな少女を召喚する。
 食事に夢中な彼女の背後に立つ少女の手には一本のナイフ。それが振り下ろされるのと「ごめんなさい」とユーノが口にしたのは同時だった。
「どうしてわたしのお友達が、どうして!?」
 突然の痛みに悲鳴をあげて、オウガ・オリジンは叫ぶ。
 あなたはお友達ではなかったのと、混乱した様子で彼女は、どうしてと繰り返す。
「オブリビオンでなければ、ほんとうにお友達になりたかったです……」
 鏡が割れるように砕け散っていくその姿に、ユーノの声は果たして届いただろうか――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
自己中心的な性格……でしたね。無限増殖した時などは、そこが弱点、でしたが
自分と似ていなければ、友達では、ない
これも一種の、自己中心、なのでしょうか

……孤独、ですね

せめて――

ウィッグに衣服。中性的なので、そこそこ似ている?
けれど

私は、友達ではありません

切り刻まれることも、食べられることも、経験している
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】痛みには、慣れている
食べたければ、どうぞ
食べさせる。食べ尽くさせる

友達に、なりましょうか

『未だわたしは此処にいる』

オリジンが、私に似た姿に変わり
私も、似せて
ほぼ、同じ

これで、友達ですね?

聖なる光
【生命力吸収】する光で、包み込む

――孤独ではない、最期を

吸収し、喰らい尽くしに



 どこか遠くで鏡が割れるような音がした。
 同時に、オウガ・オリジンが動揺しているらしいことを、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は見た瞬間に理解した。
 あたりは暗く、どこまでも闇が続く。うず高く積まれた肉体の断片と、その上に座り込むオウガ・オリジン、そしてナイだけが闇に浮くように目立っていた。
 例えば断頭台のある国に突然召喚されたアリス。きっとわけもわからぬままに処刑されただろうアリスたちが味わった「何故?」を今まさに、オウガ・オリジンは体験しているのだ。

「自己中心的な性格……でしたね。無限増殖した時などは、そこが弱点、でしたが」
 ナイはかつて見たオウガ・オリジンの姿を思い返す。
 その性格ゆえに、増殖した自分に対しお互いに苛立ちいがみ合う。そこをナイをはじめとする猟兵たちに上手く利用され撃破されたのだ。
(自分と似ていなければ、友達では、ない。これも一種の、自己中心、なのでしょうか)
 それはとても孤独だとナイは考える。
 友達には様々な関係があるかもしれないけれど、自分と似ていないからと切り捨てるのは、あまりにも寂しいではないか。
 自身の『となり』に立つ人が、自分と似ていなくても満たされることをナイは知っている。

 白い髪を金色のウィッグの中に収め、オウガ・オリジンそっくりな衣装を身に纏えば、中性的な顔立ちに小柄な体格のナイはおそらく彼女と似ていると言える姿になるだろう。
 けれど。
「――あなたは、お友達?」
「私は、友達ではありません」
 向けられた虚ろな言葉を、ナイはばっさり否定する。
 逆上したオウガ・オリジンが、ナイにナイフを向ける事も、その身を喰われることもすべて覚悟の上だった。
 切り刻まれることも、食べられることも、経験している。
「食べたければ、どうぞ」
 痛みには慣れているのだ。食べさせる。食べ尽くさせる。この肉の身はたとえ死しても、本体が、魂が無事である限りヤドリガミであるナイは幾度もよみがえるのだから。
 ユーベルコード【未だわたしは此処にいる】の力で立ち上がったナイは、
「友達に、なりましょうか」
 と声をかける。
 オウガ・オリジンがナイに似た姿に変わり、ナイも彼女の姿に似せれば、それは彼女が求める『自分に似ているか』という条件を満たすだろう。
「これで、友達ですね?」
 ナイはそっと、彼女の手を取った。
「ええ、あなたはわたしと似ている……お友達」
 オウガ・オリジンも、ナイの血で赤く染まった手をそっと重ねた。
 ようやく見つけた、手に入れたとまるで夢を見ているようなうっとりとした口調で彼女は言う。
「――孤独ではない、最期を」
 2人の重ねた手を中心に、光が溢れていく。
 それはナイが体内に抱える聖なる光だ。触れたものの生命力を奪い、消滅させるその光で、オウガ・オリジンを包み込む。
 その生命を吸収し、喰らい尽くす為に。

 彼女が姿を消すとともに、また鏡が割れる音をナイは耳にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ等歓迎です

オウガ・オリジンさん
過去に一体何が…?

思わず
過去の記憶が無い自分と
重なり…

自身は
普段の格好が
オウガ・オリジンさんが
着てるのと
同じ様なデザインと色の
エプロンドレスに
淡い金の長髪ですので
ほぼ普段通りの格好で
ただ
髪のリボン等は
オリジンさんと同じ
宇宙色のリボンで

『お友達…そう呼んで下さる…でしょうか…?』

でも惨状を眼前に

(けど…倒さなきゃ…)

自身の魔鍵
『クイーンオブハートキー』での
精神攻撃主体で
浄化を込めて
属性攻撃
衝撃波・誘導弾
全力魔法等やUCで
極力
苦痛や外傷を
与えない様
精神攻撃魔法で攻撃

敵の攻撃は
第六感、見切り、残像、オーラ防御で
防御・回避

(ごめんなさい…私は…お友達なんかじゃ…)



「オウガ・オリジンさん、過去に一体何が……?」
 予兆ではあんなにも傲慢だったオウガ・オリジンは、今はひとり、友達が欲しいと嘆いている。
 その悲しみに呼応するかのように、アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)が転送された世界はどこまでも続く闇に覆われていた。
 あるべきものがない、少しの寂しさ。
 その姿がなぜだか過去の記憶が無い自身と重なり、胸がチクリと痛んだ。

 アリスの普段の格好は水色のエプロンドレスで、髪は淡い金の長髪だ。それはオウガ・オリジンが身に纏うものとデザインが近い。だから今、アリスが普段と違うのは髪につけたリボンがお揃いの宇宙色のものに変わっただけ。
「お友達……そう呼んで下さる……でしょうか……?」
 当のオウガ・オリジンは散らばった何かを拾い上げ「これはわたしと似ている」と喜び、また別のものを手にしては「これは違う」と嘆いては、黒く塗りつぶされたかのような顔にそれを放り込んでいく。
 その周囲は悪夢のような、惨状だった。
 オウガ・オリジンはふと食事の手を止めると、真っ黒な顔をアリスに向けた。
「猟兵? あなたは……ええ、わたしと似ているわ。だから、お友達ね!」
 無邪気な声でオウガ・オリジンは笑う。
 やっと欲しかったお友達を見つけたのだときゃらきゃらと喜びの声をあげる。
(けど……倒さなきゃ……)
 この悪夢を終わらせるために。

 アリスはハートの細工を施された長大な金の鍵――魔鍵『クイーンオブハートキー』を手にする。
「わたしと遊んでくれるの?」
 アリスの行動を見て、オウガ・オリジンは虚空から血に塗れたナイフを手にする。
「ねぇ、友達ならいつでもいっしょでしょう?」
 駆け寄る彼女に、浄化の力を込めた属性攻撃をうまく誘導し衝撃波も加え吹き飛ばす。死体の山に転がったオウガ・オリジンは、それでもめげずにアリスに向かって立ち上がり向かってくる。
 振り上げられたナイフの動きをアリスは見切り、その刃がとらえたのは残影のみ。続く攻撃も張り巡らせたオーラで的確に防御しかわしていく。
「貴方に憑いた……邪な心魂や因果事象等を……祓ってさしあげます……」
 クイーンオブハートキーを構えユーベルコード【ブロッサムミラージュ・ハートキー】を発動したアリスの金髪には、美しい桜の花々が咲き乱れる。
(これなら、きっと苦痛や外傷を与えないはず……!)
 不思議な桜とアリスが持つオラトリオの力が込められた魔鍵は、オウガ・オリジンの胸元をすっと吸い込まれるようにして貫く。
「ああ、どうして、お友達じゃなかったの……?」
 けれどそれは、オウガ・オリジンの肉体を傷つける決して事はない。彼女の持つ邪な心や魂、精神のみを浄化していくのだ。
 願ったとおりに苦痛を感じる様子はなかったけれど、
(ごめんなさい……私は……お友達なんかじゃ……)
 どうしてと最後まで理由がわからないままに消えゆくオウガ・オリジンを、アリスはひとりで見送ったのだ。
 気がつけば周囲からは死体の山は消え、どこまでも続く闇とアリスが残るのみ。
 悪い夢はこうして終わったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒柳・朔良
これが彼女の望んでいたことの一つなのか
ただ友達が欲しかっただけの小さな少女
そんな彼女が何処ともしれず場所に一人取り残され、狂気に苛まれ正気を失うのは時間の問題だったはずだ
だからこそ、ここで彼女を終わらせてやらねば
それが彼女への救済となるのだから

選択UCで彼女と同じ姿となり、演技で少しでも彼女に似るように努めてみる
ただし目だけはそのままだから、おそらく狙ってくるとしたらそこだろう
攻撃箇所が分かっていれば対処もしやすいというものだ

正気を失っているならば言葉は無用
おそらく何を言っても聞かないだろうからな
だが人は必ず何処かしら違うもの
それすらも分からなくなってしまった彼女にはもはや同情の余地はない



 ああ、どこかでまたわたしが倒された。
 友達が欲しかった。どうして? わたしはお友達が欲しいだけなのに。『わたし』の嘆きが聞こえる。それはわたしの嘆きでもある。
「これも違うわ、お友達じゃない……」
 わたしとは違うそれを口にして、埋まらない空白をうめようとする。 
 そしてまた、光の輪が現れた。
 水に広がる波紋のように闇の中に広がって、そこにまた1人、猟兵が現れた。
 その猟兵はわたしとそっくりな金の髪を持っていた。水色のフリルがかわいいエプロンドレスを身にまとい、その頭には同じ色のリボンが飾られている。
「ああ……! あなたもお友達になって」
 それほど似ているならきっと素敵なお友達になるだろう。わたしは手にしたナイフを空中に展開する。
 こんにちは、とドレスの端をちょこんと摘み挨拶する『彼女』は完璧ではない。あの漆黒の瞳だけが違う、わたしと同じではない。異物は取り除かなくては、完璧なお友達にならないではないか。


「これが彼女の望んでいたことの一つなのか」
 オウガ・オリジンと相対する黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)は、そう零した。
 友達になってとうわ言のよう繰り返すオウガ・オリジンは、とても正気であるようには到底思えなかった。
 この国の闇は深い。もしもこれが彼女の悪夢とリンクしているのならば……『はじまりのアリス』である小さな少女は、どれだけの恐怖と絶望をその身に受けたのだろうか。何処ともしれぬ場所にひとり取り残され、狂気に苛まれ正気を失うのは――時間の問題だったはずだ。
 ひとは孤独には耐えられない、だから群れを作り、家族を作り、社会を作り……孤独から逃れようとするのだから。
 たったひとつの違い――自身の目を狙って飛んでくるナイフを、朔良は小太刀で叩き落とす。
 ユーベルコード【紛い物の偽装】でオウガ・オリジンと同じ姿となり演技を交えて相手をしてみたのが良かったらしい。目だけが違うことでかえって攻撃が集中し、対処がしやすいのである。オウガ・オリジンは自身と朔良の違う部分のみを執拗に狙ってくるが、それ以外の部分への攻撃はとても鈍い。
(正気を失っているならば言葉は無用だ)
 おそらく、彼女へ何を言っても聞かないだろうし、どれだけ心を砕いた言葉であってもきっと届かない。
 人は必ず何処かしら違うものである。
 それすらも分からなくなってしまった彼女にはもはや同情の余地はない。
 ただ友達が欲しかっただけの少女。
 ……けれど今は悪夢に捕らわれ逃れることができない少女。
 朔良はオウガ・オリジンを間合いにおさめると、手にした得物を向ける。
 ここで彼女を終わらせてやることが、彼女への救済となるだろう。すなわち、悪夢からの解放である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニグラクス・サンバッカス
連携OK

似ていると言い張ればいいのね
体格は近いでしょうけど色味が……お揃いの服とウィッグ、リボンも必要かしらね貸してちょうだい
傷痕が目立つから服で隠れないとこは化粧品で誤魔化して、顔のはウィッグで隠しましょ

オリジンにはあなたと私は髪も服も年格好も似てて良い友達になれるんじゃないかしらって言いくるめてみましょ

さぁ、友達というなら遊びましょ?
あなたと私の我慢比べ
あなたは私を食べきれば勝ち
私はあなたを倒せれば勝ち
全力で遊んであげるわよ!

オーラとUCで防御しつつ
高速・多重詠唱で神罰・呪詛・魔法を全力で叩き込むわ
痛いのは慣れてるし、切り刻まれるのも経験済みよ
怯んでなんてやらないわ



「似ていると言い張ればいいのね」
 ニグラクス・サンバッカス(虚勢で彩る・f17506)は思案した。
 体格はおそらく近いのだけれども、色味が合わなかったのだ、残念ながら。ニグラクスの服と髪の色は黒く、かのオウガ・オリジンは金と水色のドレスである。
「……お揃いの服とウィッグ、リボンも必要かしらね。貸してちょうだい」
 木箱からそれらしい衣服を見繕うと、グリモアベースの片隅、不安定な場所ながらも臨時の更衣室として使われている場所で着替え始めた。
 首元や右腕の傷痕はとても目立つから、服で隠れなかった部分は化粧を施し誤魔化し、顔の傷はウィッグの影で上手く隠す。
 鏡で見れば、なかなか上出来である。
 普段の黒を基調とした衣装から一転、フリルのついた水色と白のエプロンドレスがとても新鮮に感じる。普段と違う服装ではあるが、身体にも足元にも不自由さはなく、この様子であればいつもどおりに動くこともできるだろう。

 そのまま光の輪に包まれて転送された先は、闇が続く世界だった。平坦とはよく言ったものだ。広がる闇に濃淡はなくどこまでも広がる黒の中、ぽっかりと浮かび上がるようにオウガ・オリジンは座り込んでいた。
 そこはとても静かで、だからこそ耳につく。周囲に散らばる何かを食べながら、時折虚空の闇を見つめてはどうしてと口にする。
「ねぇ、オウガ・オリジン」
 ニグラクスはその背に声を投げかけた。
「あなたと私は髪も服も年格好も似ているわ。良い友達になれるんじゃないかしら?」
 おそらく正気を失っているであろう相手だ。言いくるめてしまえとばかりにそう声をかければ、オウガ・オリジンはどこか嬉しそうにきゃらきゃらと笑い声をあげた。
「ええ、ええ! わたし達良いお友達になれそうね」
「友達というなら遊びましょ?」
 呼応するかのように立ち上がったオウガ・オリジンはその手にナイフを握っていた。どれだけの血を啜ったのか、それは赤黒く染まっている。
「あなたと私の我慢比べ。あなたは私を食べきれば勝ち、私はあなたを倒せれば勝ち。全力で遊んであげるわよ!」
 宣言したニグラクスはオーラを張り巡らせ、ユーベルコード【ダーク・ヴェンジャンス】を使用する。
 きゃらきゃらと楽しそうに笑うオウガ・オリジンは、まっすぐにニグラクスの首を狙ってくる。が、一撃目はキンと澄んだ音を立てオーラが防ぐ。
(痛いのは慣れてるし、切り刻まれるのも経験済みよ)
 怯んでなんてやらないわ。
 ニグラクスはそのまま高速で詠唱し多重に、幾重にも重ねていく。行使するのは豊穣神の一柱、女神たるニグラクスの呪詛を込めた神罰の魔法だ。
「食らいなさい、これで私の勝ちよ」
 二撃目を狙いナイフを振りかぶるオウガ・オリジンのがら空きのその胴へ、全力で叩き込む。
 吹き飛ばされるオウガ・オリジンはどうしてと言い残し、鏡が割れるように砕け散って消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・セカンドカラー
ダークセイヴァーじゃよく見る光景ねぇ。
ハローマイシスター。なんだか他人の気がしないわね、秘儀で“なかよし”になろうかしら?
元よりアリスコスプレしてる私はカラーリングをオリジンに合わせることでソックリになるでしょう。ワンダーエナジードレスは私のエナジー製なので、イメージのよる早着替えが可能なの。“お友達”になるためにシャーマンの秘儀と化術で完コピ目指しましょ♡
ええ、私達は“お友達”☆とっても“なかよし”よ♪とオリジンの破壊の衝動を秘儀で情熱の炎に焚べて恋心を灯し、魂(ハート)を略奪してメロメロにしてあげるわ♡悪夢も捕食してないないしてあげる♪
さぁ、“なかよし”になりましょ♡

お任せプレ。お好きに。



「ダークセイヴァーじゃよく見る光景ねぇ」
 領主の気まぐれで民の命が奪われるのは、あの世界ではよくある出来事だった。
 理由は何でもいいのだ。単に目の前にいたからなのかもしれないし、機嫌が悪かっただけかもしれない。泣き叫ぶ姿や絶望に染まる顔が見たかった、そんな理不尽極まりない理由とも言えぬ理由だったかもしれない。
 アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)の目の前に広がる光景に、ふとダークセイヴァーを思い出したのだった。
「ハローマイシスター。なんだか他人の気がしないわね」
 秘儀で“なかよし”になろうかしら?
 家族に話しかけるような気軽さで、食事中のオウガ・オリジンに声をかける。

 アリスは元よりアリスコスプレをしてる。
 その上、ピンクを基調にした『ワンダーエナジードレス』はアリス自身のエナジーでできているため、イメージによる早着替えが可能なのである。
(“お友達”になるためにシャーマンの秘儀と化術で完コピ目指しましょ♡)
 ユーベルコード【不可思議な祈祷師の秘儀】と化術を組み合わせ、アリスが浮かべるのはオウガ・オリジンその人のイメージだ。ワンダーエナジードレスのカラーリングをオウガ・オリジンに合わせることで、どこからどうみても彼女とそっくりになるのである。
 完璧なお友達候補の出来上がりだ。

 当のオウガ・オリジンは――もしも表情が見えていたのなら、瞳をぱちくりとでもしていたのではないだろうか。それからきっと唇も弧を描いたことだろう。
 なにせ目の前にはあれほど望んだ完璧な『お友達』がいるのだから。
「あなたならお友達になれるわ! 友達ならいつでもいっしょね」
 友達ならば一緒にいたい、とオウガ・オリジンは願うのだ。
 いつでも一緒にいたいから食べてしまいたい。柔らかな肌を食い破り堪能し腹に収めてしまえば、それはやがて血となり肉となりこの身を満たし同化できる。そうすれば、離れ離れになることもなく、いつまでも一緒にいることができる、と。
「ええ、私達は“お友達”☆ とっても“なかよし”よ♪」
 アリスはオウガ・オリジンの抱く破壊の衝動を逆手に取る。
 『秘儀』を使用し衝動を情熱の炎に焚べて、かわりに恋心を灯しその空っぽで冷えた心を温め満たしていく。
「魂(ハート)を略奪してメロメロにしてあげるわ♡ 悪夢も捕食してないないしてあげる♪」
 ナイフを取り落しすっかり敵意を喪失したオウガ・オリジンに、アリスは優しく抱きつきその耳元で囁いた。
「さぁ、“なかよし”になりましょ♡」
 ここで言う“なかよし”とは、つまりアレである。何があったのか、それは当人たちのみぞ知る事なのだが、それはきっと『彼女』にとってある種の救いだったであろう。
 悪夢は捕食され、かわりに心が満たされたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイリ・ガングール
【同じ金髪と背丈】
 いやさみども、140もないからね。結構似てるんじゃないかな?とか。あとは金髪やで。髪が女の命なら、髪が似通うという事は命が似通うという事じゃ?そういう訳でちょいと鈍ってくれるかね?
 襲い掛かってくるナイフの群れは、天正新谷新道流でさばいていこうか。合戦での戦いも想定しているこの術理、当然迫り来る矢を捌く術も心得てるで。
 宗光で切り、払い、近寄っていて一太刀浴びせるでな。そのナリに傷をつけるのは心苦しいが、死ぬがいいよ



 姿かたちが同じであるということは、果たしてどれほど重要であるのだろうか。
 それも『友達』としての関係性をめぐる中で。もちろん共通の趣味や話題があればその関係をより深めていくことも可能であろうが『同じ』であることは必ずしも必須ではないだろう。
 当のオウガ・オリジンは薄暗闇の中、相変わらず食事を続けていた。
「いやさみども、140もないからね。結構似てるんじゃないかな?とか」
 狐耳をぴこりとさせて、アイリ・ガングール(恋する女・f05028)はそう口にする。声に反応し、オウガ・オリジンは彼女の姿を捉えた。
 アイリは小柄だが、その体つきは豊満で艶めいた容姿をしていた。その背に広がるのは美しく長い金髪だ。さらさらと肩を滑り落ちる髪はよく手入れがされているのがよく分かる。ふさふさの狐の尾が揺れていた。
「あとは金髪やで。髪が女の命なら、髪が似通うという事は命が似通うという事じゃ?」
 そうじゃろと促せば、オウガ・オリジンはどうやら納得したようだ。食事の手を止め、手にしていた肉体の一部をどこかへ放り投げた。今の興味はすべてアイリに向いているようだ。
「ええ、ええ、素敵な金髪ね。ええ、お友達にぴったりだわ! あなたもお友達になって」
 虚ろな響きを帯びた声には確かに喜びが混じり、その喜びに応えるように複製された解体ナイフが無数に宙に展開される。
「そういう訳でちょいと鈍ってくれるかね?」
 名刀『新谷守・宗光』を手にアイリはナイフを迎え撃ち、ユーベルコードを発動させる。
「音に聞け。これは我が治めた道。呪術を以て先を制する剛の太刀。絶えた新谷の血脈を、今ここに血道を以て示さん」
 口上と共に鯉口を切ったアイリは、かつての天正新谷新道流師範の姿となり、その美しき太刀筋で的確にナイフを捌いていく。そも天正新谷新道流は合戦での戦いをも想定しているのだ。当然師範となるまでに極めたアイリは、迫り来る矢を捌く術も心得ているのである。加えてユーベルコードによるスピードと反応速度が爆発的に増大した彼女にとって、オウガ・オリジンの放つナイフなど躱すに容易い。
「そのナリに傷をつけるのは心苦しいが」
 宗光でナイフを切り払い、近寄って刀の間合いにおさめ――その鋭き一閃はオウガ・オリジンをとらえた。
「死ぬがいいよ」
 苦痛と嘆きの悲鳴を残し砕け散ると、跡形も残さずこの世界から消え去った。
 アイリはそれを見届けると刀の血を拭い鞘へ収めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
まずは【選択UC】で「アリス」の亡霊を可能な限り召喚しましょう(できるだけオリジンと外見上似てるのを呼び出す)。
で、私は普段の格好で――まぁ細かいディテールとかは(あの精神状態じゃ)気にしなくていいでしょう。

(で、遭遇後)
本当に、ずっと独りぼっちだったんですね。

たった一人で異世界に飛ばされて、
孤独に苛まれながらさ迷い歩いて、
やっとたどり着いた元の世界に絶望し、
気が付けば「オウガのゆりかご」になっていた。
(攻撃は【(各種)耐性・オーラ防御】で耐える)

だから――

最期くらいは苦痛なしで迎えましょう(【クイックドロウ・零距離射撃・スナイパー・捨て身の一撃・騙し討ち】)。

※アドリブ・連携歓迎



 最後にその世界に降り立ったのは、シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)だった。
 その場所はどこまでも薄暗い闇が広がる世界だった。
「まずは【Ghosts of "Alice"】で「アリス」の亡霊を可能な限り召喚しましょうか」
 周囲を見回したシャルロッテは、ユーベルコードを使用する。それはかつてオウガに惨殺された「アリス」の亡霊を呼ぶものだ。その中でも出来る限り外見が似ている者を選んで呼び出す。小柄でいて、金の髪、フリルのついた水色のエプロンドレスを身に纏う少女たちだ。
 その中にシャルロッテも混じりこんだ。
(まぁ細かいディテールとかは――あの精神状態じゃ気にしなくていいでしょう)
 そう考えたシャルロッテは普段どおりの服装で薄闇の中を歩き始めた。銀髪のツインテールがその動きに合わせて揺れる。
 シャルロッテもまたアリス適合者なのである。

 程なくして、オウガ・オリジンは見つかった。
 バラバラになった死体に囲まれて、ただひとり薄闇の中で座り込んでいる。食事の手を止め、黒く塗りつぶされたような顔はじっと天を見上げていた。
「本当に、ずっと独りぼっちだったんですね」
 シャルロッテの声がやけに大きく響いて、オウガ・オリジンがこちらを向いた。彼女の周りに生者の気配はない。
「あなた達は、私のお友達になってくれるの?」
 その瞳が捉えるのは、シャルロッテをはじめとしたアリス達だ。夢に浮かされたような口調でお友達がたくさんだと嬉しそうな笑いをこぼした。
「わたしなら、誰とだってお友達になれるわ、ねぇそうでしょう?」
 オウガ・オリジンは立ち上がり、どこからか取り出したナイフを手に走り始めた。
「寂しかったでしょうね」
 たった一人で異世界に飛ばされて、孤独に苛まれながらさ迷い歩くのはどれほど辛いことだったろうか。ようやく見つけた扉をくぐり、やっとたどり着いた元の世界に絶望し、気が付けば『オウガのゆりかご』になっていた。それはどれほどの苦痛だったろうか。
 シャルロッテは合図し、アリス達を後ろに下がらせる。彼女たちは戦闘能力を持たない――亡霊となってまで傷つく必要はないからだ。彼女たちはがんばってください!と口々にシャルロッテを応援しその無事を祈ってくれる。
 オウガ・オリジンが振りかぶるナイフの攻撃は、張り巡らせたオーラではじく。
 彼女は悪夢に囚われるほど苦しんだ。
 だから。
「最期くらいは苦痛なしで迎えましょう」
 一撃をわざと受ける。痛みに苦痛が漏れるがそれも覚悟の上だ。耐えきって、オリジンの見せた隙をシャルロッテは見逃さない。 
 銃を構える。ナイフが届くこの零距離からの射撃は、正確にオウガ・オリジンの核を撃ち抜いた。
「なんで……どうしてわたしには友達ができないの」
 悲鳴とともに何かがひび割れる音が耳に届く。見上げれば周囲の闇にも亀裂が走っていた。
 オウガ・オリジンにも亀裂が走り、鏡が割れるように砕け散って消えていく。

 闇が剥がれ落ちては消えていく。どこまでも続いた闇が晴れ、薄暗い世界は次第に光に照らされ、悪夢の残滓が消え去っていく。
 こうしてひとつの悪夢は終わりを告げたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月26日


挿絵イラスト