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迷宮災厄戦⑱-21〜パッチワーク・マイ・フレンド

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●平坦な闇
 どこまでも続く平坦な闇。
 それがこの国の光景であった。その不思議の国の中心に一人小高い丘のような場所にて存在するのはオウガ・オリジン。
 顔のない顔に一心不乱に何かを抑えては何か飲み込むような咀嚼音が聞こえてくる。
「……―――はぁ。これもあれもみんなお友達。よかった。わたしはひとりじゃないみたい」
 心底ホッとしたのも束の間、すぐに襲ってくるのは寂しさ。
 暗闇の中で一人でいるのは心細い。どうしても寂しくなってしまって、また丘の上で何かをごそごそとやり始める。
「あ……わぁ! よかった。またお友達!」
 そう言って手にしているのは、肉塊の一部。血が滴るのは二の腕の一部だろうか、それすらも分からぬほどに細かく切り分けられていた。

 そう、オウガ・オリジンが座す、この国の中心……そこは今、少年少女のバラバラ死体がうず高く積み上げられた丘であったのだ。
 そこからオウガ・オリジンはお友達を探すと称して、自分に似た部位以外を食べているのだ。

「わたしによく似ている貴方はわたしのお友達。でも似ていない部分は切り取ってしまいましょう? ねぇ? お友達だったらなんでもお揃いがいいもの。わたしと一緒。あなたは一緒。わたしにそっくり。わたしはあなたにそっくり」
 また咀嚼する音。
「あなたはとっても、わたしの肩とそっくり。あなたはわたしの膝とそっくり。あなたはわたしの髪とそっくり。あなたはわたしのおなかとそっくり。あなたはわたしのわたしのわたしの―――」
 延々と続くパッチワーク。
 似ている部分はお友達。似ていない部分は―――。

●迷宮災厄戦
 グリモアベースへと集まってきた猟兵達に頭を下げて出迎えるのは、ナイアルテ・ブーゾヴァ(フラスコチャイルドのゴッドハンド・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。激しい戦いの影響からか、オウガ・オリジンの中に眠っていた『無意識の悪夢』が現実改変ユーベルコードによって具現化してしまったのです」
 現実改変ユーベルコード。
 それはオウガ・オリジンが持つ凄まじき力であり、猟書家が奪った力。その力は猟書家との戦いによって、徐々にだが再びオウガ・オリジンの元へと戻りつつあるのだという。
 その一端が、今回の予知に関連しているのだろう。

「はい、みなさんが今回向かって頂く不思議の国……名前は特に存在していないようなので、便宜上『平坦な闇』のような国とさせていただきます」
 その『平坦な闇』が延々と続く国の中央にオウガ・オリジンは存在しており、小高く積み上げられた少年少女のバラバラ死体の上に座り、死体を切り刻んでいるのだという。
 それは悍ましき光景であることに違いはなく、何故、そのような凶行に及んでいるのか、理由はわからない。
 少年少女たちは既に死んでいる故に、これ以上の被害は出ないであろう。
 だが、その死体の山でオウガ・オリジンは切り刻むだけでなく……。

「自分に似た部位以外を食べているのです。自分に似た部位は、食べずにそのまま……何の意味があるのかわかりません」
 常人には理解できない行動であることは間違いない。
 だが、その理解できぬ行動にオウガ・オリジンを打ち倒す光明がある。
 ナイアルテが頷く。
 自分に似た部位は食べない、ということは、自分に似たものには危害を加えない、ということだ。
「そのとおりです。彼女はオウガ・オリジンに似ている部分を持つ者には奥撃の手が鈍るのです。また、皆さんは光の輪より現れて、新しい友達候補としてオウガ・オリジンに認識されています」

 また、オウガ・オリジンに似ているか似ていないかの判断基準は『彼女に似ているか』である。
「私たち猟兵を友達候補と思い込むほどに、オウガ・オリジンはすでに正気を失っています。それが彼女を苛む悪夢なのでしょう。これを利用し、オウガ・オリジンの凶行を止め、打倒して頂きたいのです」
 怖気も走る光景がこれより猟兵たちを待ち受けることだろう。
 それは予知を見たナイアルテが一番よく知っている。だが、だからこそオウガ・オリジンの凶行を止めねばならないと強く思っているのだ。

「オウガ・オリジンに姿を似せる、というのは発想の転換や、アイデアが必要となるでしょう。オウガ・オリジンはすでに皆さんも姿を見たことがあると思います。服装、背丈、髪の色、肌の色……どんな些細なものでも、試してみる価値はあるかと思います」
 どうか、お願いします、とナイアルテは頭を下げて見送る。
 転移していく猟兵たちを見送り、あの凄惨たる惨状を猟兵たちが見るのかと思うと、胸が締め付けられる。

 だが、それでも。
 彼等しかあの凶行を止められる者はいない。今は猟兵達の心が強く保たれることを信じるしかないのだった―――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『迷宮災厄戦』の戦争シナリオとなります。

 平坦な闇が続く国の中心にて積み上げられた少年少女のバラバラ死体の上に座すオウガ・オリジンを打倒しましょう。

 ※このシナリオには特別なプレイングボーナスがあります。これに基づく行動をすると有利になります。

 プレイングボーナス……オウガ・オリジンに似た姿で戦う。

 それでは、迷宮災厄戦を戦い抜く皆さんのキャラクターの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と友達探し』

POW   :    友達ならいつでもいっしょ
戦闘中に食べた【相手の肉体】の量と質に応じて【全身が相手に似た姿に変わり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    あなたもお友達になって
自身が装備する【解体ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    誰とだってお友達になれるわ
自身の装備武器に【切り裂いたものを美味しく食べる魔法】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユーノ・エスメラルダ
●対策
手袋で手とか似た感じにして…服装と髪型を合わせたら、ちょっと似てる気がします

●心情
こんな方法しか知らないというのは、悲しいことだと思います…
お友達というものは【手をつなぐ】ことができて辛いことを【慰め】あったり、楽しいことを分け合ったり
違いがあるから同じものを見ても違っていて、それが楽しくて…

●戦闘
敵の攻撃は全ては防ぎきれないでしょう…ですが、猟兵はざっくり斬られても簡単には死にはしません
そうなる【覚悟】と【激痛耐性】もあるつもりです
防げた分はUCで同じことをやりかえします

彼女がオブリビオンである以上は倒さなければなりません
ごめんなさい…少しでも何か救えることがあると良いのですが…



 友達とは一体いつからなるものなのだろうか。
 近すぎては離れていき、離れていては近づけない。明確に此処から此処が友達、という線引がない以上、それを知らぬ者は友達という言葉すら認識できないままに人と人との距離を測れないだろう。
 それ故に『友達』という言葉の響きだけがとても眩しいもののように思えて、手を伸ばしたくなる。
 涙が溢れてしまいそうになるほどに焦がれるものでありながら、それを知ることができずに徒に他者を傷つけ続ける。

 平坦な闇が続く不思議の国の中心に、少年少女のバラバラ死体の山が気づかれている。その丘のような上に一人座すはオウガ・オリジン。
「友達ってなぁに。友達っていいもの? ああ、お友達が欲しいの。たくさん欲しいけれど、たくさんはそんなにいないものでしょう?」
 己と似通った部分以外は避けて、バラバラ死体を切り分けては、その顔のない顔へと押し込んでいく。咀嚼音だけが闇の中に吸い込まれていく。
 そんな平坦な闇の中に光の輪が現れ、そこより舞い降りるのは一人の猟兵―――ユーノ・エスメラルダ(深窓のお日様・f10751)の姿だった。

 手袋をし、服装と髪型をオウガ・オリジンに寄せた姿で現れれば、その姿は確かにオウガ・オリジンと似通っていた。背丈も似ていたかも知れないし、なにより金色の髪にオウガ・オリジンの顔がまばゆく輝くような表情に変わったような気がした。
「わぁ……! お友達! わたしとそっくりなお友達。ねえ、あなたはわたしのお友達なんでしょう? そうなんでしょう?」
 顔のない顔であるのに、そう感じるほどにユーノの心は悲しみに包まれた。
「こんな方法しか知らないというのは、悲しいことだと思います……」
 見下ろす先にあるのは、オウガ・オリジンがバラバラに刻んだ少年少女たちの遺体。こんなふうに似ている部分しか友達だと認識できないオウガ・オリジンに憐憫の情がこみ上げてくる。

「お友達というものは……手を繋ぐことができて、辛いことを慰め合ったり、楽しいことを分け合ったり……」
 ユーノの言葉にオウガ・オリジンは首をかしげる。
 髪の色はそっくりだけれど、よく見たらお顔が一緒じゃない。それは違う者そういうかのように、手にした解体ナイフが宙に舞い上がる。複製されたナイフの切っ先がユーノの顔を一様に狙う。
 放たれたナイフの雨がユーノを襲う。あまりにも膨大な数の解体ナイフ。複製されたものとは言え、それはユーベルコードによって全てが制御され、常にユーノの顔ばかり狙ってくる。

「あなたはお友達だけれど、そのお顔だけお友達じゃないわ。だから、そのお顔だけくり抜いてわたしといっしょになりましょう。そうしたのなら、本当にお友達よ」
 無邪気に笑う声が響く。
 悪夢の影響からか、あの悪辣たる自己中心的な性格は、むしろ一層無邪気さに後押しされた残虐さでもって、その正気がすでにどこにもないことを教えていた。
 頬を掠めるナイフの痛み。
 鋭い痛み。けれど、ユーノはもう覚悟していた。ざっくりと頬が割かれてしまっても、彼女は痛みに涙することさえしない。

 電脳魔術による鏡の盾がユーノの前に生み出される。
「違いがあるから同じものを見ても違っていて、それが楽しくて……」
 それは、不思議な鏡の盾(フシギナカガミノタテ)であった。複製された解体ナイフが次々と盾に受け止められ、コピーされていく。
 次々と電脳魔術によって鏡の盾から溢れるように噴き出す解体ナイフの数々。けれど、そのナイフはオウガ・オリジンの顔を狙わなかった。

 狙いは全て、放たれ続ける解体ナイフのみ。
 相殺するように互いにぶつかっては消えていく。それは彼女がオウガ・オリジンに感じた憐憫のためか。
 悲しいと思うことは止めたほうがいい。無いほうがいい。誰だってそうだ。哀しみに暮れることよりも、楽しさに笑っていたほうがいい。
 それは目の前のオウガ・オリジンであっても……そう思うのだ。けれど、ユーノとオウガ・オリジンは決定的に違う存在である。
 オブリビオンと猟兵は互いに滅ぼし合う。そうしなければ、世界は滅んでしまうから。だから、ユーノは頬の傷の痛みではない、胸の奥から溢れる痛みに涙する。

「ごめんなさい……」
 その先の言葉をユーノは紡ぐことができなかった。
 少しでもなにか救えることがあればいい。そんなふうに思ってしまった。あのオウガ・オリジンは確かに救いを求めている。
 それが悪夢によって正気を失っているからこその反応であったとしても、その寂しさを少しでも紛らわせられたらと思うのは、偽善であろうか。欺瞞であると誹られるだろうか。

 だが、それがなんだというのだ。
 ユーノが感じたオウガ・オリジンへの感情。それを偽善と呼ぶことはできない。欺瞞でもない。そこにあったのは、誰かの憂いに寄り添う心だ。
「せめて、鏡写しのままに」
 鏡の盾から放たれる解体ナイフの群れが、オウガ・オリジンを飲み込んでいく。
 同じであることにこだわった彼女が、同じユーベルコードを放つユーノを前にどんな意味を見出すかわからない。

 けれど、同じものである、ということを救いにするのであれば、この鏡の盾こそが、ユーノにできるただ一つの救いであったのかもしれない―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋月・透乃
おおー、闇の国で死体を積んでお食事中とは、漸く大ボスっぽい雰囲気でてきたのかな?
いやまあ正直今まで私が戦ってきたオウガ・オリジンは凄い強い感じではなかったからねぇ。
残虐なだけでなく強いと良いね!

敵に似た姿になるには……あいつの見た目は顔以外はいかにもなアリスって感じだし、UDCアースのコスプレ屋とかで似たような服やかつらを買って着ていけばいいのかな。
あと顔にも黒子が付けてるような黒い布を付けよう。
身長と体型はどうしようもないからそのままだねー。

転送されたらすぐに重戦斧【緋月】ですぐに被刃滅墜衝の構えを取るよ。コスプレがちゃんとできていれば全然似ていない武器に向かって攻撃が来ると思うからね!



 平坦な闇の中に解体ナイフの雨が降り注ぐ。
 それは鏡の盾によって模倣され、猟兵より放たれたユーベルコードであった。この平坦な闇の中央に在って、オウガ・オリジンは未だに孤独を抱えたままであった。
 解体ナイフが雨のように降り注いだ傷は痛むけれど、それ以上の痛みが心のなかに走っている気がした。
 治らない痛み。孤独という痛み。誰もが耐えられるわけではない痛みが、オウガ・オリジンの悪夢よりにじみ出てくる。
「あの子はお友達じゃなかった。似ていただけでお友達じゃなかった。けれど、似ている部分ばかりだったからやっぱりお友達?」
 オウガ・オリジンはバラバラ死体の丘の上に立つ。
 見下ろす先にあるのは自分と似たパーツばかり。わあ、と顔のない顔が喜ぶような気配がした。
 似てる部分だけ見て、それだけで喜んでしまう狂気。似ていない分は食べていい。だって友達ではないのだから。

「おおー、闇の国で死体を積んでお食事中とは、漸く大ボスっぽい雰囲気出てきたかな?」
 闇の中に生まれる光の輪。
 底より現れるのは、お友達候補―――猟兵である、緋月・透乃(もぐもぐ好戦娘・f02760)の姿であった。
 彼女は顔を覆う黒子の前垂れのようなもので顔を隠し、不思議の国のアリスと同じようなエプロンドレスを身につけていた。
 顔と服装はなんとかオウガ・オリジンに寄せることはできたが、その身長と体型だけはどうしようもなかった。

 故に、戦いは避けられない。きっとそこまで『お友達』として認識されないであろうことは透乃にはわかっていた。
 故に重戦斧『緋月』を構える。その構えは被刃滅墜衝(ヒジンメッツイショウ)。
「お友達じゃない? お友達? わたしとそっくりな顔とお洋服。素敵なお洋服。綺麗ね綺麗ね、でもね、もっと綺麗にできる方法をわたしは知っているの」
 オウガ・オリジンの顔のない顔が笑った気がした。
 自分と同じ顔。自分と同じ服装。きっとわたしと仲良くなりたくて、そうしてやってきてくれたのだ。
 なんて素晴らしい子なのだろう。これは腕によりをかけておもてなししなければならない。
 そんなふうにオウガ・オリジンはすでに狂った思考回路のまま戦斧を構える透乃を見やる。その体、身長、どれもがオウガ・オリジンとは似ても似つかない部分である。

「その大きな身長を縮めましょう。大丈夫。斬ってつなげてしまえばいいの。簡単よ? わたし上手なのだから、心配しないで。余った部分はすっかりわたしが食べてあげるから」
 次の瞬間、凄まじい速度で透乃の太ももにかぶりつこうとするオウガ・オリジンの顔がすぐそこにあった。
 ぞわりと泡立つ背中。その踏み込みをまったく目視できなかった。構えた戦斧がオウガ・オリジンの顔のない顔を強かに打ち据え、間合いを取る。
「あっぶ、ない―――けど、いいね!今まで私が戦ってきたオウガ・オリジンはすごい強い感じではなかったからねぇ! 残虐なだけでなく強いとは……いいね! すごくいいね!」
 どれだけの強敵であっても、戦うことができればいい。戦いこそが自分の楽しみである。ならば、今のオウガ・オリジンは彼女にとって好ましいものであった。

 戦える。思う存分。
「あら、その斧、ケーキを取り分けるにはあんまりにも大きいものだわ。それは要らないわ、要らないわ、捨てましょう、そうしましょう?」 
 彼女の重戦斧『緋月』を執拗に狙ってくるオウガ・オリジン。けれど、それは透乃にとって、はあまりにも単調なものであった。
 スピードとパワーはあっても駆け引きがない。
 戦いというものに相手は興味が無いのだと知った瞬間、透乃はすかさず、戦斧でもってオウガ・オリジンの足を払い、大振りな反撃の一撃を見舞う。そえこそが、被刃滅墜衝である。
 防御の構えからカウンターを放つ一撃。
 その一撃は、オウガ・オリジンの体を容易くバラバラ死体の山へと吹き飛ばす。

「戦いの基本もなにもない……なんだ、ちょっとがっかり」
 あのパワーもスピードも、戦う技術がないのであれば、宝の持ち腐れだ。それにあの一撃を受ければ、立ち上がってくるには時間がかかるだろう。
 興が削がれた。そんな気持ちになって透乃は新たに生み出された光の輪を見やり、あとは後続の猟兵に任せようと判断したのだ。
「残念だけれど、私はあんたのお友達じゃないみたい。好敵手になれればなんて思ったけれど、そうでもないみたいだから」
 だから、さようなら。
 その言葉はきっとオウガ・オリジンには届かなかったかも知れないけれど―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「中々すごい光景だねぇ、これは。」
さて、オリジンちゃーん。遊びましょー。

UCを発動し、強化魔法を使う蝙蝠達を召喚。
んでもって、僕はオリジンちゃんに似た姿の少女に変身する。
あ、顔はわかんないし、僕の顔を幼くした感じにしとこうか。
…スカートって落ち着かないなぁ…。

蝙蝠達の魔法で強化しながら、悪魔の見えざる手と一緒に敵さんを攻撃。
ナイフは動きを見切り回避するのと、武器受けで防御。
蝙蝠の魔法のおかげで空も飛べるし、飛んで避けるのもあり。

敵さんに近づけたら、強化された驚かせ力を駆使して隙を作り、吸血するのも忘れずに。
透明な状態で頭にへばりついてたMorteが急に出て来たらびっくりするんじゃないかな。



 平坦な闇が広がる国の中央には、少年少女のバラバラ死体が山のように盛り上がって放置されていた。
 その中から這い出してくるのは、猟兵の一撃を受けたオウガ・オリジンだった。彼女にとって今、猟兵は『お友達候補』にしか見えていない。
 それは迷宮災厄戦の激戦故か、にじみ出た無意識の悪夢がオウガ・オリジンの正気を奪っていた。それは悪辣たる自己中心的な性格すらも凌駕するほどの圧倒的な悪夢。目の前にいる猟兵はお友達。
 似た部分があれば、手が緩まる。けれど、似ていな部分は食べていい部分。
 光の輪が平坦な闇の中に浮かび、そこから再び『お友達候補』が現れる。
「ああ、またお友達。とってもうれしいわ、歓迎するわ、新しいお友達! あなたはわたし、わたしはあなた。ねえ、あなたはどんな味がお好き?」

 その言葉は、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)の目の前に広がる平坦な闇の中にったバラバラ死体と共に彼の視覚と聴覚へと飛び込んできた。
 平坦な闇の中心に積み上げられた死体を見れば、常人であるのならば吐き気を催すものであったことだろう。
 だが、莉亜は違った。
「中々すごい光景だねぇ、これは……さて、オリジンちゃーん。遊びましょー」
 ユーベルコード、眷属召喚【魔蝙蝠】(ケンゾクショウカン・マコウモリ)によって強化魔法を持つ蝙蝠が召喚され、彼の周囲を飛び回る。
 その力で持って彼は今、オウガ・オリジンと似た姿の少女に変身するのだ。唯一難点であったのが、顔である。
 オウガ・オリジンは顔のない顔をしているがゆえに、どうあがいても似せることができようはずもなかった。
 また、そのような顔になる前の顔も判然としないまま、莉亜の顔をそのまま幼くしたような少女の顔へと変わる。

「……スカートって落ち着かないなぁ」
 すーすーするし。そんな感想をつぶやいた瞬間、莉亜の顔目掛けて解体ナイフが飛ぶ。悪魔の見えざる手が、既のところでそのナイフをつかみ止めた。
「スカートって良いものよ。ふんわりと広がって可愛らしいし、なにより、くるりとまわって傘のように広がる光景なんて、素晴らしいものでしょう? あなたのお召し物、わたしとそっくり。ねえ、その顔だけ交換しましょう? だいじょうぶ、わたしくり抜くのとっても上手なの。メロンだって綺麗に果肉だけくり抜くの。上手だって褒められたの。ねえそうしましょう。顔だけ違うから、わたしといっしょになりましょう友達だものね」

 次々と降りかかる解体ナイフの雨。それは次々に複製され、莉亜の顔面を執拗に狙い続ける。
 だが、あまりにも顔ばかりを狙うが故に、その攻撃の動線はあまりにもあからさまだった。強大な力をもってはいるが、それを全て活かしきるだけの技術がないのだ。
 それは正気を失っているがゆえの、単調なる攻撃。
 その尽くを見えざる手が叩き落とし、空を舞い躱していく。
「そんなに単調なこうげきばっかりだと、できることもできないよ、オリジンちゃん」
 くるりと宙に舞い上がる莉亜の体に宿る驚かせ力が増加し、透明な状態で頭に張り付いていた血を分け与えた特別な眷属の姿、驚かせるために突飛な評定をした顔が、オウガ・オリジンの眼前に突如現れるのだ。

「わあ!? なあに、これ!?」
 驚きを隠せずに、その場に尻餅をつくオウガ・オリジン。その様子に莉亜は我慢できずにその首筋へと噛みつき吸血する。
 じゅう、と喉が焼ける音がした。美味しくない。想像を絶する苦さ、酸っぱさ、あらゆるこの世の不快な味を煮詰めたような味。驚かせるつもりが此方が逆に驚かされるほどの、血の味。
「―――っ、なんだ、この味……」
 想像を絶する。
 飲み込んだことを後悔するような、苦み走った顔をして莉亜は離脱する。まさかここまでの味だとは思わなかったのだ。
 呆然としたように莉亜の姿を追うオウガ・オリジン。
 もう、解体ナイフの雨は襲ってこなかった。あの味、あの顔のない顔……そのどれもが莉亜にとって忘れがたいものとなったのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

姫川・芙美子
UCで強化された【化術】でオリジンそっくりな姿に変化します。私も東洋妖怪、人の心を惑わす術は心得ています。何より、命を懸けて戦った事のある相手です。鏡像出来ない訳がありません。
さぁ、「わたし」が来ましたよお友達。

友達として「オウガの無意識」に内心を聞いてみましょう。対話は正義の絶対条件です。
話が通じなければ、後は戦争しかありません。
強化された【逃げ足】でナイフの攻撃を回避します。【化術】の応用で、敵の攻撃がオリジンの姿を無残に切り刻んだ様な残像を見せて【恐怖を与え】動揺を誘います。
その隙を狙って「鬼手」の鉤爪による【怪力】で切り裂きます。

彼女は「悪」なのでしょうか。少し不安になってきます。



「来たりて来やれ 手の鳴る方へ」
 それは誰かが自分を遊びに誘う声なのだと、オウガ・オリジンは即座に理解した。遊ぼうって言ってくれているのであれば、それはきっとお友達なのである。
 お友達であるから、遊ぼうっていってくれているのだ。ならば、オウガ・オリジンは、顔のない顔の奥を歪ませながら、手の鳴る方へ駆けていく。
 平坦な闇。
 それがこの国の特徴だった。その中央にオウガ・オリジンは居た。その中央、少年少女のバラバラ死体が積み上げられた丘の上からオウガ・オリジンは駆けていく。

「あら、ごめんなさい。踏ん付けちゃった。でも許してくれるわよね、あなたはわたしのお友達なのだから」
 バラバラの肉塊を踏みつけても、そんなふうに、にこやかささえ感じさせる声色でオウガ・オリジンは鳴らされる手の方角へと駆けていく。
 そこにあったのは悪意ではなかった。
 悪意のない無邪気さ。何が罪で何が罰なのか、それすらも理解できないほどに正気を失ったオウガ・オリジンにとって、それは異様なる光景ではなく、ただの日常にすぎなかったのだ。

「さあ、『わたし』が来ましたよお友達」
 そんなオウガ・オリジンの目の前に立つのは、鏡像の如き姿をしたオウガ・オリジンそのもの。
 姫川・芙美子(鬼子・f28908)であった。彼女のユーベルコード、鬼事(オニゴッコ)によって、さらなる高みへと昇華された化術によって、オウガ・オリジンと瓜二つの姿に变化せしめたのだ。
 それは彼女がこれまで命懸けで戦ってきたオウガ・オリジンという存在であれば、なおのこと鏡像の如き姿へと化ける。それができないわけがないのだ。
「わあ、なんて素敵な人なんでしょう! お友達、お友達! わたしとあなたはもお友達ね、きっとそうなのだわ。あなたもそう思うでしょう? 鏡の中わたしのようなわたし!」

 あまりにも無邪気な声。
 それはまったくうり二つな姿に感激しているからだろう。手にした解体ナイフがするりと手の内から抜け落ちようとして、次の瞬間―――。
「なら、次は喉を取り替えましょう? ね? 声も一緒がいいわ。お友達だもの。全部一緒がいいわよね? いいに決まってるわ。だってお友達なんだから。お友達はみんなみんな同じがいいのか。違うところなんていらないの。姿も、形も、声も、何もかも一緒にしましょう? ね?それがいいわ、ほんとうにそれがいい。そうしましょうそうしましょう!」
 芙美子の喉元を切り裂かんと振るわれる解体ナイフ。
 空を切るナイフの切っ先。それは確実に喉を切り裂き、その喉を取り出そうとしていた動きだった。

 ぞわりと背筋が泡立つ。
 正気じゃない。それはわかっていたことであったが、改めて様々と見せつけられる狂気。対話を、と芙美子は思っていた。
 オウガの無意識。その心の内側にあるものがなんであるのか。
 彼女はそれが知りたかった。対話は正義の絶対条件だ。だからこそ、まずは言葉をかわそうと思ったのだ。
「話が―――通じない……!」
 どれだけお友達という言葉を弄そうとも、その根底にあるのは、世界の中心が己であるという自己中心的なもの。
 悪辣なる性格は、悪夢によって灌がれているような気さえしたものの、正気を失っているだけで、その根底は何も変わっていない。

 次々と複製され、雨のように降り注ぐ解体ナイフがオウガ・オリジンの鏡像たる芙美子の体を切り刻む。
 それはオウガ・オリジンにとっては悪夢そのもの。
 鏡像たる自身を刻む光景は、オウガ・オリジンをさらなる発狂へと導く。けれど、それは彼女の化術による残像であった。
「ごめんなさい! ごめんなさい! わたし、そんなつもりじゃなかったの。わたしが狙ったのは喉だけだったの! こんなことになるなんて思ってもいなかったの。違うのわざとじゃないのほんとうよ、ほんとうなの!」
 取り返しのつかないことをしてしまった。
 そんなふうにオウガ・オリジンが顔を覆う。何も見たくない、何も知りたくない。自分がしたことすらも何もかも。

 自分に不都合なことを見たくない、聞きたくない、言いたくない。
 それがオウガ・オリジン。どれだけ正気を失ったとしても、それが変わることがない。むしろ、それは無邪気さ、無知から来る子供の癇癪そのものであった。
「―――あなたが振るったナイフですよ」
 それは背後より放たれた鬼手の鉤爪の一撃。背中を切り裂き、血が噴出する。
 残像だけでも、ここまで取り乱すオウガ・オリジン。

 彼女はもう、オウガ・オリジンを絶対悪と見ることが難しいように思えてきている自分に一番驚愕していた。
「彼女は『悪』なのでしょうか……少し不安になって……」
 これが罪に対する罰。
 そういうかのように痛みに喘ぎ、芙美子から遠ざかっていく背中を見つめ、つぶやいた。
 ただ無知なる子供なのではないか。そんなふうに思えてきてしまう。それが悪夢に苛まれたオウガ・オリジンが見せた一時の幻影でしかないのだとしても、たしかに芙美子の瞳には、哀れなる存在にしか見えないのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
痛ましい光景です
切り刻まれる遺体にとっても、満ち足りることはないオリジンにとっても

解決する方法が刃というのが無情ですが
…世界の為、躊躇いはありません

現状では似ている箇所は皆無
なのでオリジンの声と挙動を●情報収集しUCで己に反映
自己●ハッキングでスピーカー音声調整

声はオリジン、首の傾げ方など一挙手一投足の仕草は鏡映し
常人では嫌悪感が湧くこの状態で声を掛け

お友達を探しているのですか?
なら、声が同じ私とお友達になりましょう

貴女の御友達を紹介してくれますか?

剣を抜き放ち、死体を探す為背を向けたオリジンへだまし討ち

…御伽噺の悪役そのものの所業
無力さが
どんな結末の救いが良いかすら思いつかぬ己が嫌になります



 傷みが走る。 
 背に負った傷は鉤爪の一撃。よた、よた、とオウガ・オリジンはその足を少年少女のバラバラ死体の丘へと向ける。
 平坦な闇がどこまでも続く国。
 その国にあって、オウガ・オリジンが求めたのは『お友達』であった。欲しいと願ったものは何でも手に入る。
 自分は世界の中心であるのだから、それが当然であるとオウガ・オリジンは思っていた。だから、お友達とは、全て己と同じものである。
 姿も形も何もかもがいっしょだからこそ、『お友達』なのだ。
「お友達……わたし、お友達が欲しいの。ずっとずっと欲しいのに、手に入らないから。ねえ、あなたは私のお友達―――?」
 オウガ・オリジンの眼前に光の輪が広がる。
 そこから現れたのは機械騎士。彼女の思い描く『お友達』とは似ても似つかない姿。

 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、その光景を目の当たりにした。
 おびただしい数の死体。それが積み上げられた山の上にオウガ・オリジンはざして、此方を見上げていた。
 その顔のない顔の奥にどのような感情があるのかさえトリテレイアには想像することもできなかった。
「痛ましい光景です。切り刻まれる遺体にとっても、満ち足りることのないオリジンにとっても……」
 その電脳が導き出した答えはシンプルな一つの答えであった。

 トリテレイアの機械の体を少女の体に置き換えることなど不可能であった。
 かと言って服装を似せる、というのもまた無理な話である。彼は他の猟兵たちと違って、変幻自在たる姿を持つ身ではなかった。
 故に取れる選択肢はそう多くはなかったが、彼の電脳に迷いというノイズは存在しなかった。
「お友達を探しているのですか?」
 その声はオウガ・オリジンをハッとさせた。
 声が聞こえる。声! お友達の声! 見上げるオウガ・オリジンの顔のない顔が明るくなったような気さえした。
「ええ! ええ! お友達を探しているのよ! あなたはわたしと同じ声なのね? その鎧の中にいるのかしら? 恥ずかしがり屋さんなのかしら? ええ、ええ、でも大丈夫よ。わたしはお友達だから、何お心配しないでいいわ! 此処にはわたしと同じ、わたしとおともだちがいっぱいいるのだから! たまには恥ずかしがり屋さんでもいいわ!」

 それはトリテレイアが覆面の機械騎士/機械仕掛けの騎士の振舞い(マスクド・マシンナイト)によって得た、これまでのオウガ・オリジンの声や挙動のデータを集積し生み出したスピーカー音声である。
 その声色はオウガ・オリジンそのものであり、例え本物のオウガ・オリジンであっても自分の声と同じであると疑うことはなかっただろう。
 例えば、これが正気を喪わないオウガ・オリジンであれば看破されたことだろう。だが、滲む無意識の悪夢に苛まれたオウガ・オリジンは違う。
「うれしいわ! わたしと瓜二つの声なんて! ああ、その鎧の中の貴方も見てみたいわ! きっとわたしとおなじなんだわ、そうなんだわ!」
「ええ、なら、声が同じ私とお友達になりましょう……貴女のお友達を紹介してくれますか?」

 トリテレイアのスピーカーから流れる言葉にオウガ・オリジンは頷く。
 顔のない顔であったとしても、それは無邪気な子供そのものの挙動であったことにトリテレイアは、彼の電脳が人のものであったのなら戸惑ったことだろう。
 だが、彼は機械騎士である。その電脳が、そんな感情のゆらぎを生むことはない。ましてや、これから自身が行おうとすることに対しての、罪悪であるとか、後ろめたさであるとか、そんな感情は、波を立てない。

「ああ、今日はお友達のみんながいっぱいだわ、幸せだわ! これからもきっと幸せなことが―――」
 鈍い音がした。
 オウガ・オリジンが自分の胸元から生える鈍い色をした剣を見下ろす。
 え―――?
 と、不可解なものを見るような声がトリテレイアの集音装置に響く。背を向けたオウガ・オリジンの背に放った剣の一撃。
 それは騎士として有るまじき不意打ち。だが、それしかトリテレイアには選択肢がなかったのだ。

 あ、と短い声がして、剣から抜け落ち、死体の山から転げ落ちていくオウガ・オリジンの姿をトリテレイアのアイセンサーが見つめていた。
「……御伽噺の悪役そのものの所業……」
 それは自身が選択したことだった。これが最適解であると。オウガ・オリジンに痛手を負わせたことは確実である。戦果である。
 だが、無力さが電脳を埋め尽くしていく。感情はない、ゆらぐことはない。けれど、その電脳が映し出す幻視の如き幻影はなんだ。

「どんな結末の救いが良いかすら思いつかぬ己が」
 機械騎士は間違えない。
 この選択は間違っていない。取れる最善を取ったはずなのに、電脳ではないどこかが否定を告げる。己への嫌悪を、はじき出す。

 それでも、この身は歩み続けなければならない。遺骸の山をこれ以上高くしないたいめには―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンジール・スケアクロウ
※アドリブ連携歓迎

〈狂気耐性〉
ねえねえ“アリス”。そんなに食べるなら、“仲間”じゃないお肉にした方が良いよ
ボクが仲間じゃない、動かないお野菜を食べるみたいに。

通じないなら、やっぱりまずはお近づきかな?
UCで鎧を創造、見た目は“アリス”と同じ格好!麦わらで出来た金髪がサラリ!
しゃがみ歩きで背丈を調節だ。顔の黒さも同じ!

ごめんねアリス。口の悪くないキミに乱暴はしたくないけれど。
曲剣はキミのやっている事を【ユルサナイ】から、これを振るわなくちゃ!
心を突き刺す曲剣の〈精神攻撃〉能力…その狂気の鎧を必ず突き破るだろう!

お友達とのお約束!同じ友達だけじゃなく、同じ“アリス”は食べちゃダメ!



 遺骸の山を転がり落ちていくオウガ・オリジンは混乱の中にあった。
 お友達なのに、お友達なのに、背中から刺された。傷みはあった。体の痛み。痛いと感じるのは正常な証。
 けれど、心は不思議と傷まなかった。なんでかわからないけれど、そうであるのが当然であると思ってしまったから。
「なんでかしら。傷つけられたら怒ってしまうはずなのに、気持ちが沈んだままなのだわ。寂しいって思っている……お友達が傍にいないからかしら。ええ、ええ、きっとそうね。お友達を探さなきゃ」
 そう言ってオウガ・オリジンは転げ落ちた先で体を起こす。平坦な闇の中に光の輪が広がり、そこより飛来するは、騎士鎧を身に着けた案山子の姿であった。

 アンジール・スケアクロウ(黒騎士かかしのアンジール・f19392)はその毛糸で出来た顔の白糸で紡がれたミシン目の口を歪ませて声を発した。
「ねえねえ“アリス”。そんなに食べるなら、“仲間”じゃないお肉にしたほうがいいよ」
 顔のない顔に肉塊を運んでいた手がぴたりと止まる。
 オウガ・オリジンはアンジールの姿を認めて、首を傾げた。
「お友達じゃないから食べったっていいでしょう? 仲間ってなにかしら、アリスってなにかしら? お友達じゃないから食べているのに?」
 不思議なかかしさん、とオウガ・オリジンはおかしそうに笑って肉塊を放り投げた。
 アンジールの赤いボタンの瞳が上下した。

「ボクが仲間じゃない、動かないお野菜を食べるみたいに。そんなふうに、できないかな?」
 できないのだろう。アンジールは、己の言葉を他人事のように聞いていた。やっぱり、という気持ちがあった。同時にもしかしたら、という気持ちもあったのだ。
 ユーベルコード、アリスナイト・イマジネイションによって生み出されるのは無敵の戦闘鎧。
 それはアンジールの思い描く創造の力。それは“アリス”―――オウガ・オリジンとそっくりな同じ格好をしたアンジールだった。
 麦わらで出来た金髪が音を立てる。しゃがみ歩きで背丈を調節し、顔のない顔でさえ、毛糸そのものでごまかす。

「ほら、顔だって同じさ。お近づきになるには、やっぱり見た目から同じでないとね。そう思うだろう“アリス”」
 アンジールは常にオウガ・オリジンをアリスと呼称する。
 はじまりのアリスであり、はじまりのオウガであるオウガ・オリジンはたしかにそういう意味ではアリスであったのだろう。
「ええ、そうね。見た目が同じなのはお友達の証拠だもの。でも、どうしてあなたの髪は麦わらのなのかしら? お顔は毛糸なのかしら。わたしはわたしがお友達だから、みんなおんなじがいいの。取り繕ったものはいらないの。本当のことだけがほしいから、みんなおなじなのがよかったの」

 その言葉は筆舌に尽くしがたいものだった。
 オウガ・オリジンを苛む悪夢が、一体如何なるものであるのか伺い知れることない。どれほどの悪夢であれば、ここまで正気を失うのだろう。
 けれど、アンジールは困ったように笑ってから謝った。
「ごめんねアリス。口の悪くないキミに乱暴したくないけれど。曲剣はキミのやっていることを『ユルサナイ』から、これを振るわなくちゃ!」
 真っ黒な曲剣が振りかぶられる。
 それは剣と呼ぶにはあまりにも禍々しい形をしていた。おおよそ騎士が持つものでないように思えた。
 けれど、アンジールにとってはそれが自身の剣だった。大農場護るために、アリスを護るために、振るわれる剣の形はこれでいいのだ。

「許さないのね、いいわ。許さないのは素敵なことだもの。一思いにふるってしまえば、あとは心が楽だもの。一切合切に容赦なんて必要ないのだわ」
 その顔のない顔へと振るわれる黒い曲剣。
 その切っ先が狂気を捉える。
 嫌な感触がした。案山子の腕に伝わる奇妙な感触。心を突き刺す刃であるからこそ、その感触はおかしかった。
 鈍い、何か、ぶよぶよとしたものに剣が突き立てられたような感触。幕を破るような感触がして、何かが弾けた。

「約束。約束。お友達とはゆびきりげんまんしましょう。約束を破ったらどうなるのでしょう」
 オウガ・オリジンの体が揺れる。ぐらりと屍の丘より落ちていく。
 アンジールは曲剣の切っ先から抜け落ちていくオウガ・オリジンに約束する。
「お友達との約束! 同じ友達だけじゃなく、同じ“アリス”は食べちゃダメ!」
 それは彼の切実なる願いであった。
 食べられてしまうアリス。
 あんな顔をもう見たくない。たったそれだけを約束してくれるのなら、アンジールは、ずっとともだちでいたいとすら思ったのだ。

 けれど、同時にそれは果たされない約束であることも、アンジールは予感していたのだった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
これがオリジンの悪夢か
過去に何があったんだろうね
何があったとしても許される光景では無いけれど

女神降臨を使用
よく似たエプロンドレスとリボンを付けた姿に変身
髪色も近いし似た姿になれると思うよ

解体ナイフの攻撃はナイフの時間を停めて防ごう

石から創った使い魔でオリジンの体を石化
自分も邪神の施しで同じ部位を石に変え
お揃いだねと話しかけてみよう
話に乗ってきたら他の部分も石に変えていくよ

僕はは動こうと思えば動けるけど
相手はただの石像になるから動けなくなるね

動きを停めたら強化した力で
思い切り抱締めて砕こうとするよ
なんとなく寂しそうだったしね

力があっても独りは寂しいのかなぁ

どうなのでしょう
私には理解できませんの



「これがオリジンの悪夢か。過去に何が在ったんだろうね」
 それは佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の小さな呟きであった。光の輪より召喚されるように舞い降りた平坦な闇の国は、小高い丘のように積み上げられた少年少女のバラバラ死体を一面に広げていた。
 これがにじみ出たオウガ・オリジンの無意識の悪夢であるというのならば、必ず過程が存在するはずだ。因果とはそういうものだ。
 結果しかないことはない。必ずことの起こりがあるはずだ。だからこそ、この悪夢は、平坦な闇に広がる遺骸の数々は、何か理由があるはずなのだ。
「何があったとしても許される光景ではないけれど……」

 よく似たエプロンドレスとリボンを付けた姿に変身した晶の前によたよたと歩いてくるオウガ・オリジンの姿があった。
 まるで光の輪に導かれるようにして、歩いてきたとしか思えない風体だった。
 背中には大きく傷つけられた痕。胸にはう流れたような剣の傷跡が残っている。それはきっと先行した猟兵たちがつけたものであろう。
「ああ、お友達。やっぱり、光の輪のしたにはお友達がいるんだわ。わたし、わかっていたの。知っていたの。お友達がやってきてくれるって。その髪、そのお洋服素敵だわ、私と同じだもの」
 手にした解体ナイフが煌めく。
 でも、とオウガ・オリジンが心底残念そうにつぶやいた瞬間、晶の顔目掛けてナイフが放たれた。

 その一撃を邪神の神気によって止め、躱す。
「そのお顔だけが一緒じゃない。お友達なら、一緒にしないと。そうじゃないとお友達じゃない。一緒じゃない。一緒がいいの。あなたもそうでしょう? お友達だもの」
 だが、次の瞬間オウガ・オリジンの身体が止まる。片足が石化している。何故、と見下ろすオウガ・オリジンの足元には石化の力を持った使い魔が噛みつき、その身体を石化させていっていた。

「これで僕も同じだ。お揃いだね」
 ユーベルコード、邪神の施し(リビング・スタチュー)によって片足が石化する。晶自身の体の一部を石化し、肉体改造によって一時的にであるが戦闘力が増強されるのだ。
「ああ、残念だわ。これでお揃いだけれど、お顔が、お顔だけがおそろいじゃないの。ねえ、これ、とっても嬉しいのだけれど、どうしてもお顔が気になるの。えぐってあげるから、こちらに近づいて、お友達」
 解体ナイフを振るう手すらも石化される。そんなオウガ・オリジンに近づく晶。両手を広げて抱きしめる。

「―――なんとなく。力があっても独りは寂しいのかなぁ……」
 思いっきり抱きしめる。砕けるような音がする。そのまま砕けて霧散してしまえば、抱える寂しさもなくなるのではないかと思った。
 けれど、次の瞬間、晶は突き放された。
 自力で石化した足を割砕いて、晶の抱擁から逃れたオウガ・オリジンが遺骸の山を転げ落ちていく。

 それを見下ろす晶と邪神。
「どうなのでしょう。私には理解できませんの」
 晶の内で邪神が言葉を紡ぐ。
 人と邪神。立場も違えば存在も違う。その言葉は、やはり晶を少し寂しい気持ちにさせたかもしれない。無理解。理解の極地ではなく背中合わせに有るもの。どれだけ近づこうとしても、その先に理解は存在しない。
 晶の疑問は、オウガ・オリジンが抱える寂しさの原因は、きっとこの場にいた誰もが理解できないものであったことだろう。

 それでも、寂しさだけは理解できる。
 一人で生きていかなければならない孤独。だれに寄り添うことも、寄り添われることのない人生。
 それはだれもが耐えられるものではない。
 きっといつか、自分の首を真綿で締めていくような、そんな力。それが孤独。
「なんとなく、寂しそう、か―――」
 理解有る者がいないという寂しさ。
 それは一抹の泡のようなものであったかもしれないけれど、たしかに晶の心に浮かび上がっては、弾けて消えていったのであった―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨

オリジンの姿…か。
えーっと確かこんな感じだったけ?
あー寧々の『化術』でエプロンドレスが似合う金髪ロリータに変身…笑うなよ寧々…。おねがい見ないで…orz
(注:魔封の帯で口元隠したまま。何でって?それはね…。)


しくしくしく…化術で可能な限りそっくりに化けてオリジンのとこに行きます…爆笑してる寧々は髪の中に隠しておく。あとで泣かす絶対に…。

やあ、こんにちわ。そっくりって?
本当にそう思う。でも似ていないとこもあるよ。どこってそれはね…
(魔封の帯の『封印をを解く』)この口元さー。
UCブラックガイストで『捕食』して『生命吸収』だ。
食われるのはお前の方だー(注:やけくそ)食われる前に食う



 転げ落ちていくのは何も体だけではない。
 心も転げ落ちていく気がした。オブリビオンである以上、オウガ・オリジンも本能的に理解していたのかもしれない。
 あの『お友達候補』は敵であると。猟兵であると、決して相容れない存在であるとわかっていた。
 けれど、滲み出す無自覚の悪夢が、それを許さない。繰り返されるお友達からの攻撃は、オウガ・オリジンを確かに追い詰めていた。
 その片腕片足は石化によって砕けている。背中には鉤爪の一撃と剣の一撃。そのどれもが彼女を苦しめたかも知れない。
 けれど、目の前にまた一つ光の輪が現れる。
「ああ、また! またお友達だわ! 本当に素敵なこと! いっぱいお友達がいる! うれしいわ!」
 片足のまま這いずるように光の輪の元へとオウガ・オリジンは遺骸の山を往く。

「オリジンの姿……か。えーっと確かこんな感じだったっけ?」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は喋る寧々の化術によってエプロンドレスが似合う金髪の少女の姿に変身していた。
 赤い瞳はそのままに、けれど口元も変わらず。それ以外の全ては正しくオウガ・オリジンに似通っていたものだった。
 けれど、名捨の心は晴れない。
 なぜなら、寧々がカエルのままげこげこ笑い転げているからだ。そんなに変かな、変なのか!? と名捨は戦いのためとは言え、少女の姿に变化していることに羞恥を覚える。
「お願い見ないで……」
 それでもやらなければならないことがあるのだから、事を成さなければ、この羞恥の如き一種のプレイは終わらない。

 ああ、なんだか涙が出てきそう。別にそんなに悲しいわけではないけれど、別な意味で色んなものを失っているような気さえしたのだ。
「やあ、こんにちわ」
 名捨は声をオウガ・オリジンに声を掛ける。
 満身創痍であると言ってもいいだろう。オウガ・オリジンは、その声に顔のない顔を輝かせるような雰囲気を醸し出しながら、名捨に近づく。
「こんにちは、素敵なあなた! 素敵なお友達。やっぱり、そうだと思ったの。お友達だって。ここに来てくれるのはみんなお友達だって、わたし知っているのよ。あなたはお友達。でも、その赤い目はダメ。一緒にしなきゃ。くり抜いてさしあげるから。それ以外はそっくりなんだから、もったいないわ」
 その言葉は矢継ぎ早に名捨に放たれる。
 正気ではない。そう聞いていた。実際に対峙してみてわかる。完全に破綻している。常識が通じる相手ではない。

 似ている、という判断基準すらも曖昧そのものである。
 名捨の口元を覆う黒い布にすら気が付かず、ひたすらにその赤い瞳を、と解体ナイフで振るう。
 その瞳をえぐろうとする度に名捨は身を翻す。スピードもパワーもない。満身創痍であるのだから、それも当然かも知れない。
「でも似ていないところもあるよ」
 それは名捨から告げた言葉だった。その言葉にオウガ・オリジンはショックを受けたようだった。
 なんでそんな悲しいことを言うの?

 そんな声が聞こえてきそうなほどに、オウガ・オリジンの手が止まる。解体ナイフの切っ先が、だらりと地面へと落ちる。
「どこ? どこが似ていない? 今すぐえぐり取ってあげるから! ねえ! どこなの!」
 鬼気迫る勢いで名捨へと掴みかかるオウガ・オリジン。
 その様子に名捨は覆われた口元を捲くりあげる。そこに在ったのは、ブラッド・ガイストの殺戮捕食の大口。
「どこって、この口元さー……」
 その捕食の大口が一気にオウガ・オリジンの生命力をこそぎ落とす。食われる前に食う。それが名捨の選んだ選択だった。

 ぐらりと、オウガ・オリジンの体が傾ぐ。もう殆どの生命力は残っていないだろう。放っておいても、そのうち消滅する。
 遺骸の山たる斜面を転げ落ちていく姿を見下ろし、名捨は变化を解く。
 寧々は後で絶対に泣かす。
 そんなことを思いながら、平坦な闇の国を後にする。もうどうしようもないほどに堕ちるところまで堕ちてしまったオウガ・オリジンの最期を見る気はしない。
 それがせめてもの慰めであるように―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セレシェイラ・フロレセール
これがオウガ・オリジンの闇、か……

魔力を込めた桜の硝子ペンで綴る言葉は『友達』
キミが主人公の物語を創造しよう
金色の髪には大きなリボン
水色のワンピースと白のエプロン
白いタイツとストラップシューズ
あどけない外見の女の子
そして、キミが今までに紡いだ物語を繋ぎ合わせる
今この瞬間もキミの物語だね

友達、そうだね
わたし達は友達だ
だって、ほらこんなに姿がそっくりなのだから
わたしはわたしの意思で『友達』を止める

一番得意な風の魔法を重ねて詠唱しよう
纏った風で更に反応速度を上げる
反応しきれなかったナイフは風で払いのけて
風と次いで詠唱した氷の魔法をキミへ

いまだ未完のキミの物語、わたしはなるべく穏やかな終わりを結びたい



 その世界は平坦な闇がどこまでも続く世界であった。
 唯一平坦ではないのは、少年少女のバラバラ死体が積み重なる丘の如き中心部のみ。その麓に転げ落ちてくるのは、オウガ・オリジンであった。
 片腕片足は石化と共に砕け落ち、その背中には裂傷と刀傷。震える手先が何とか体を起こそうとしているのは、すでに生命力の殆どを食われてしまったからだろう。
 その瞳が捉えるのは光の輪。
「よかった、まだ、まだお友達がいる。あそこまでいけば、お友達がいる」
 這いずるように光の輪の下へとオウガ・オリジンがろくに動かぬ体を引きずっていく。

「ここがオウガ・オリジンの闇、か……」
 セレシェイラ・フロレセール(桜綴・f25838)が光の輪より現れた、底に在ったのはオウガ・オリジンの満身創痍たる姿であった。
 もうすでに力尽きようとしているオウガ・オリジン。
 それにとどめを刺すのは容易であったことだろう。けれど、セレシェイラは、そのために転移したのではない。

 その手にした桜色の硝子ペンが宙に綴る言葉は『友達』。
 幻桜(イルシオン)の如き儚さでもって綴られるは、今まさにオウガ・オリジンが消えゆく生命であるからか。
「キミが主人公の物語を創造しよう」
 金色の髪、大きなリボン、水色のワンピースと白のエプロン。白いタイツとストラップシューズ。あどけない外見の女の子がオウガ・オリジンの目の前に現れる。
 それはセレシェイラがユーベルコードによって変じた姿であるが、光の輪の下に立つ姿を見たオウガ・オリジンには関係なかった。

「お友達! なんて、素敵なお友達なんでしょう! ああ、でも、でも、でもでも、わたし、今、わたしは!」
 そう、片腕片足を失った姿を恥じるようにオウガ・オリジンは砕けた手足を隠すように蹲った。
 見られたくない。こんな姿お友達に見られたくない。
 みっともないし、恥ずかしい。
「友達、そうだね。わたし達は友達だ。だって、ほらこんなに姿がそっくりなのだから」
 両手を広げるようにしてセレシェイラは、その姿でひらりと舞う花弁のようにスカートを翻すように回転する。
 その姿に見惚れるようにオウガ・オリジンの顔のない顔が歪む気がした。
 あれが友達。自分が欲したもの。自分自身そのもの。

「いや。そんな、いやなの。わたし、今とっても恥ずかしいのよ。そっくりだって言ってくれて嬉しいのだけれど、嬉しいのだけれど、わたし、今―――」
 セレシェイラは頭を振る。
 それ以上は言わなくていいと言うように。たおやかに微笑んで、セレシェイラは硝子ペンで宙に言葉を紡ぐ。

「わたしはわたしの意志で『友達』を止める。今、キミに必要なのは友達以上に物語さ。そう、キミが今まで紡いだ物語をつなぎ合わせる……今、この瞬間もキミの物語だね」
 風の魔法がセレシェイラの手の中で渦巻く。違う、違うと絶叫するようにオウガ・オリジンから複製した解体ナイフが宙を舞う。
 けれど、どれ一つとしてセレシェイラに当たることはなかった。風の魔法だからか、それとも最早残っていない力のせいか……あり得ないことなのかもしれないが、お友達を傷つけたくないという思いがあったからか。
 そのどれもが正解であって不正解であったことだろう。

「……いまだ未完のキミの物語」
 氷の魔法が紡ぐ。
 花は散る。どうあっても花は芽吹いては散っていく。次なる季節のために力を蓄えるために花弁は散りゆく。
 それは生命の煌きにも似たものであったかもしれないけれど、今はオウガ・オリジンの物語を綴るための魔法。
 氷がオウガ・オリジン体を覆っていく。残された片腕がセレシェイラへと伸ばされる。
「わたし、ともだちが、ともだちに、ともだちを―――」
 その言葉は最後まで紡がれることはなかった。緩やかに、けれど、氷雪が何もかも飲み込むようにオウガ・オリジンの体を霧散させていく。

 伸ばされた指先を、最期に残された小指をセレシェイラは同じ小指で絡めた。
「わたしはなるべく穏やかな終わりを―――結びたい」
 指切りはしなかった。
 自然と崩壊し、崩れていく最期の一片。そこに彼女が願った穏やかさがあったかはわからない。知っているのは、オウガ・オリジンだけであったことだろう。

 それはにじみ出る無意識の悪夢が見せた、泡沫の如き出来事であったのかもしれない。
 けれど、セレシェイラの心の中で結ばれる『キミの物語』は今此処に結ばれたのだ―――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月23日


挿絵イラスト