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迷宮災厄戦⑱-21〜繋ぐ手と、喰べる手と

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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 歌が好きなあの子も、走るのが得意なあの子も、優しく笑うあの子も――皆、違う。
 わたしと違うものはいらない。
 わたしと似ているもの、同じものだけ、ここにいてもいい『お友達』。
「違う、違う。こっちは……嗚呼、これも」
 少女は虚ろに嗤いながら、無数の四肢や首の山に手を伸ばす。
 真っ黒な手が掴むのは『自身と色の違う髪』。彼女がそれをひょいと引き上げれば、山の中から胴から下の無い塊が飛び出した。
 塊は僅かな灯りに照らされ、振り子のように数度揺れる。生臭い匂いに少女の肚がくうと鳴った瞬間――彼女は、それを自身の真っ黒い顔へと放り込んだ。

 ごきゅ、がきゅと怪物のような咀嚼音を響かせて、『オウガ・オリジン』はあっという間に塊――『人の首』を平らげてしまう。
 そうして死体の山に腰を下ろすと、彼女は闇の中に向かって手を伸ばした。
「もっと、『お友達』を――」

 ぼうっ、と少女の見つめる虚空へ、光の輪が広がる。
 彼女はそこから落ちてくる影を見つめ、そして――『新しいお友達』に相応しいか見極めるべく、ナイフを握ってゆらりと立ち上がった。



「皆、『迷宮災厄戦』への出撃本当にお疲れ様。さて……皆にはアリスラビリンスを救う為、かの世界を脅かす『オウガ・オリジン』の元へ向かってもらいたいんだ」
 やや大きめのモニターを起動させながら、ネルウェザ・イェルドット(彼の娘・f21838)は早速詳細を語り始める。
「オウガ・オリジンの居場所は『彼女自身が作り出した、彼女の夢を具現化した国』。これだけ聞けば幼い子供の夢らしく、賑やかで愛らしい国かと思うかもしれないけれど……実際はこんな感じだね」
 猟兵へ向けられたモニターが映し出すのは、その画面に猟兵の姿が反射するほど暗く、黒く、そして動きのない光景。その中心がだんだんと拡大されていけば、小さな灯りに照らされたひとりの少女の姿が鮮明に映った。

 少女は山――よく見れば手や足、そして子供の生首に見えるものが積み重なった山の上で、ひとり不気味に笑っている。ネルウェザがその少女を『オウガ・オリジン』であると説明するとほぼ同時、画面の中で少女の手がゆらりと動いた。
 少女はひとつの首を掴みあげ、そして真っ黒な顔へと放り込む。嫌な音が数秒響き、ごくりと飲み込むような音を最後にそれが途絶えれば、少女がそれを『食べた』のだと察せた。

「……オウガ・オリジンはこの真っ暗闇の不思議の国で、人体を切り刻んでは喰らっている。少女の夢にしては不気味で残酷だよねぇ」
 ネルウェザは苦い顔で映像を止め、話を続ける。
「とはいえ、これは彼女にとっても『悪夢』だ。このオウガ・オリジンは能力こそ一切衰えていないものの、悪夢を具現化したことによって正気を失った状態……らしい。上手く『お友達』のふりをしてあげれば、動きを鈍らせることも可能だろう」

 その条件はひとつ、とネルウェザはモニターの画面を数度なぞる。
 ぽんと現れた明るい画面には、愛らしいエプロンドレスの少女――それこそオウガ・オリジンと同じような衣装のイメージが映った。
「オウガ・オリジンの『友達』である条件はただひとつ、『彼女に似ているかどうか』だ。こんなふうに衣装を似せるでもよし、彼女の性格や声を真似るでもよし……とにかく、オウガ・オリジンに似ていることをアピールして近づけば、彼女が全力で襲ってくる可能性は低いはずだよ」

 だから、とネルウェザはモニターを仕舞い、そして何処からとも無く先程映っていたものと同じエプロンドレスを数着取り出した。
「いっそコスプレもあり……だと思って衣装も用意している。欲しい人はご自由にねぇ」

 ネルウェザは一旦衣装を隣に浮かせ、そしてグリモアを浮かべる。
 くるくる回る金色の光を強めつつ、彼女は猟兵の方へ向き直った。
「それでは転送を開始するよ。皆、健闘を祈る」


みかろっと
 こんにちは、みかろっとと申します。
 今回はアリスラビリンスの不思議の国にて『オウガ・オリジン』との戦いです。
 こちらはボス戦一章のみ、戦争シナリオとなります。

 敵はオウガ・オリジンひとりです。
 彼女は悪夢で正気を失っているため、自身の元へ来る猟兵を『お友達候補』として迎えます。しかし自分と違うところに気づいたり、明らかに殺意・敵意を向けたりすると『友達ではない』と認識して全力で切り刻みに来るようです。
 そのため、変身や変装、演技などを利用して『オウガ・オリジンに似ている』姿をすることが有利となります。自前の衣装、もしくはオープニングで出した衣装でコスプレしてもOKです。

 皆様のプレイングお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と友達探し』

POW   :    友達ならいつでもいっしょ
戦闘中に食べた【相手の肉体】の量と質に応じて【全身が相手に似た姿に変わり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    あなたもお友達になって
自身が装備する【解体ナイフ】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    誰とだってお友達になれるわ
自身の装備武器に【切り裂いたものを美味しく食べる魔法】を搭載し、破壊力を増加する。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

備傘・剱
…友達、ね
物騒な友情もあったもんだ

化術を使って、姿かたちを似せるとするか
声は…、裏声を使って、似せてみよう
ま、数舜、だませれば、御の字ってな

で、俺は、敵対行動はとらない
敵対行動をとるのは、こいつが殺した奴らだな
傀儡子、発動

殺したと思ったやつらが、武器を持って襲い掛かってくるんだ
ま、似ても似つかぬ奴だからな
刻まれても、壊されても、立ち上がり、敵意を向けてくる奴らに、刻まれ続けな
ようこそ、悪夢の国へってやつだぜ

…ちゃんと、俺自身にも、襲い掛からせるぜ
いくら正気を失っていたとしても、野生の勘ってやつは、働くからな
俺は、立派な「お友達」ってやつを演じ続けてあげる、ってな

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



 闇の中、少女の視線の先で現れた光の輪。
 その中心からすとんと人影が落ちれば、オウガ・オリジンは漆黒の顔を歪に綻ばせてそちらへ踏み出した。
「……嗚呼……新しい、わたしの『お友達』――」
 死体を踏み潰し、血塗れのナイフを片手に握って。彼女はゆっくり、ゆっくりと足を動かしていく。
 その様相は『友を求める幼気な少女』にしてはあまりにも不気味で、狂っていた。

 ――物騒な友情もあったもんだ。
 浮かんだ言葉をそっと飲んで、備傘・剱(絶路・f01759)はオウガ・オリジンの方を向く。光の輪の残滓に照らされた彼の姿は――オウガ・オリジンを鏡に映したような、エプロンドレスの愛らしい少女のものであった。
 化術で造ったその姿に、オウガ・オリジンは一瞬目を瞬きつつも嬉しそうに駆け寄る。彼女は握りしめていたナイフをエプロンのポケットへ仕舞うと、剱の目の前でぴたりと足を止めた。
「ようこそ、わたしの国へ。わたしと、わたしの友達だけの場所へ……歓迎しよう」
 そう告げ、オウガ・オリジンがドレスをつまんで笑う。
 剱は少し喉元に触れ、小さく声色を調整してから会釈を返した。

 数舜、騙せれば御の字。
 剱はオウガ・オリジンと同じように、小さくドレスをつまんで広げて口を開く。
「ああ、有難う。とても素敵な国だ」
 そう剱が発したのは、男の喉から出た高音。それは澄んだ少女の声と呼ぶにはやや低く響いたものの、しかし――狂い虚ろなオウガ・オリジンにとって、彼を友達ではないと判断するに至る問題ではなかった。
「本当にわたしと同じ……アリス達とは違う、わたしの欲していた『友達』……!」
 嬉しそうに、嬉しそうに。オウガ・オリジンは剱の手をぎゅっと握って胸の前に寄せ、そして足元に転がる肉塊をぐちゃりと踏み潰す。

 油断しきったオウガ・オリジンへ、致命傷を与えるならば今だ。だが剱は武器をとることも、敵意を露わにすることもなく、彼女に手を引かれるまま屍の山へと歩いていった。

「……こいつを殺すのは、こいつが殺した奴らだからな」
 微かにそんな声を響かせて――剱はそって足元、積み重なる少年少女達の死体へと力を伝わせる。オウガ・オリジンがその中の腕のひとつを拾い上げ、まるでケーキのひと切れを差し出すかのように剱の方へ向けた、その時。
 腕が、思い切り少女の頬を叩いた。
「なっ……!?」
 ――ユーベルコード『傀儡子』。
 死体は次々もとの人間らしい形をとり、刃や鈍器を握って立ち上がる。
 オウガ・オリジンは『お友達』である剱を――彼があの人形達の主であることなど疑いもせずに――自身の後ろへ押しのけて、屍の人形達を睨んでナイフを取り出した。

 オウガ・オリジンは躊躇いなく人形を切り刻む。
 彼女は自身に似ても似つかぬ彼等を友達にする気はない。
 寧ろ、良い機会だ。魔法のナイフで極上のディナーへ変え、新しい『お友達』と美味しく食べてしまおう。そう企んでにたりと笑い、ナイフを振り回していく。

 ざくり、ぞぶりと肉の裂ける音を響かせ、濃さを増す死臭に狂喜の声を上げるオウガ・オリジン。彼女の背で剱がそっと視線を数度動かせば、人形は不意に身体を傾けてナイフを躱し、少女の腹へと重い一撃を叩き込んだ。
「……ッ!!」
 ごぼ、と空気の塊を吐くオウガ・オリジンへ、続く人形が一撃、もう一撃。
 彼女の反撃が人形を刻み、壊し、動きを止めようとも。人形達は剱が力を送れば幾度でも立ち上がり、武器を取り、そしてオウガ・オリジンに襲いかかる。
 だがいつまでも彼女のみを標的にしていては、幾ら正気でないとはいえ何れは気づかれてしまうだろう。そう判断した剱の視線の先――時折、人形達が主たる剱にもその刃を向ければ。
 オウガ・オリジンは剱が『自分と同じもの』であることを信じて疑わなくなっていた。

 何度も立ち上がってくる人形達にオウガ・オリジンが苛立ちを露わにするにつれ、彼女の思考は鈍く単純になっていく。対する人形は剱の操作どおりの的確な一撃を繰り出し続け、オウガ・オリジンの身体へ傷を刻んでいった。

 ――ようこそ、悪夢の国へ。
 彼女の言葉を返すように、剱はそっと胸の内でそう告げる。
 人形が一度、大きく振りかぶった武器を剱の方へと向ければ――オウガ・オリジンは舌打ちを響かせながらそれを受け止め、そして屍の山の奥へと吹き飛ばされていくのであった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

白紙・謡
この世界を言葉を尽くして記したなら
どんな物語ができるのでしょう
悪夢であると仰るならば――
わるいゆめは、いつかは醒めるものでございます

『やわらかな金糸に烟るお顔は乙女の秘密
青空のふわふわエプロンドレスを纏ったちいさな姿を
星空のリボンで飾ったなら
最も尊いお友達にご挨拶――ご機嫌よう、わたし』

愛用の万年筆で描くのはオウガ・オリジンと瓜二つの姿
わたくし本人ではなく、『彼女』をオウガ・オリジンの前に

「ねえ『わたし』、あちらに生きた猟兵を見つけたの」
「食べにいきましょう」

誘ってわたくしの方へ誘導し、わざと見つかります
わたくしに気を取られ
オウガ・オリジンが『彼女』に対し無防備なところを
攻撃して頂きましょう



 暗闇、死臭、虚ろな少女の狂った声。
 ぼんやりとした薄明かりの下、オウガ・オリジンは怨嗟を吐きながらナイフを取る。
 動かぬ肉塊を何度も何度も切り刻み、顔に放り込んでは呑み込んでいく。

 ――この世界を言葉を尽くして記したなら、どんな物語ができるのでしょう。
 椿が彩る万年筆を片手に、白紙・謡(しるし・f23149)は心の内でそう零す。
 それは少女の夢にしては凄惨で、あまりにも残酷な世界。少なくとも眠れない子供に読み聞かせるような、優しくやわらかな物語を紡ぐには暗すぎる――まさに、悪い夢の中の世界だった。

 だが、それが『悪夢』であるというのならば。
 はじまりのアリスが見る、ひとつの夢であるならば。
「……わるいゆめは、いつかは醒めるものでございます」
 闇の中、謡の声が淡い光のように響き、融けていく。
 オウガ・オリジンがゆっくりと顔を上げ、その音の源を探す中――謡は万年筆の先を黒の空へと向けた。

『やわらかな金糸に烟るお顔は乙女の秘密
 青空のふわふわエプロンドレスを纏ったちいさな姿を
 星空のリボンで飾ったなら』

 それは、彼女の万年筆がすらりすらりと滑り描く文字の群れ。
 おいで、おいでと手招くように、謡は続く一文を空へ並べた。

『最も尊いお友達にご挨拶――ご機嫌よう、わたし』

 文字はユーベルコードの力を伝わせ、ちいさな人のかたちを創っていく。
 金の髪に黒い顔、彼女が文字に描いたとおりの少女――オウガ・オリジンと瓜二つの『彼女』は、ふわりと屍の山に降り立った。

「……誰?」
 オウガ・オリジンが気配に気づき、そちらへ視線を動かせば。
 山の上の『彼女』はオウガ・オリジンへ手を伸ばし、小さな鈴を揺らしたような声で云った。
「ご機嫌よう、わたし。とっても素敵な国ね」
 ――髪に服、そして声まで。何もかも、自分と同じ。
 少女は縋るように、躊躇いなく目の前に伸ばされた手をとって。
「……わたしと同じ……嗚呼、今度こそ。今度こそ、わたしの『お友達』……!」
 嬉しそうな声を上げ、足元の肉塊をひとつ拾い上げる。
 オウガ・オリジンはお気に入りのお菓子でも分け与えるかのように、死臭漂うそれを差し出した。

 しかし、瓜二つの少女は「それよりも」と屍の山の影を指差す。
「ねえ『わたし』、あちらに生きた猟兵を見つけたの」
「……本当?」
 オウガ・オリジンの手が一瞬、ぴくりと強張る。
 警戒した様子で彼女が訝しげに少女の指の先を見つめる中、山の影――身を潜めていた謡が、小さく声を上げて更に奥へと逃げ込んだ。
 そして、山の向こうで何かが落ちて倒れる音が続く。
 そちらを指差し「ね、本当よ」と少女がオウガ・オリジンに笑い掛ければ、握る手の緊張がふっと解れたのを感じた。
「食べに行きましょう」

 二人は確りと手を繋いだまま、血生臭い暗闇の中を進んでいく。
 重なる足音が屍の山の裏まで続けば、そこには。
「きゃっ……」
 逃げる中で足元の死体に躓き、立ち上がれずに蹲る少女――を、演じる謡の姿があった。

「ふ、ふふ、あははははっ!! 新しいお友達に、最高の食事まで! 嗚呼、なんて、なんて最高な日……!!」
 オウガ・オリジンは先程とは一変、鼠を追い詰めた猫の如くゆったりとした歩みで謡の方へ近づいていく。その姿に謡が縮こまって震えて見せると、少女の笑い声はより一層高さを増した。

 当然、彼女は自身をそこへ導いた『瓜二つの少女』を疑うはずもない。
 故に、少女にとって――その姿は、あまりにも無防備だった。

 ――どすっ。
「……、え」
 謡の首を刎ね、ふたり仲良くその血肉を食べようとしていたオウガ・オリジン。
 彼女が纏う白いエプロンが、中心から鮮やかな赤に染まっていく。
 振り向けば、オウガ・オリジンは少女が握るナイフにその胸を貫かれていた。

 少女はずるりとナイフを引き抜くと、蹲っていた謡へそっと手を貸す。
 謡が小さく息をつき、少女が何も言わぬまま暗闇に溶けて消えいく様子を、オウガ・オリジンは首を横に振りながら眺めていた。
「なん、で……なんで、わたしの、お友達が……」
 悲痛な声で叫ぶと同時、オウガ・オリジンは黒い顔の端から血を吐き出し後退る。
 その痛みが、絶望が、嘗て自身がアリス達へ与えたものに似ていることなど、きっと気づいてはいないだろう。

 薄明かりの中、謡の姿がゆっくりと闇の中へ消えれば――オウガ・オリジンは溢れる感情のままに屍を何度も踏み潰しながら、血溜まりの上に小さく透明な雫を落とすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
借りたエプロンドレスを【変装】の技能で、できる限り『オウガ・オリジン』の姿に近づけます。
「一人で食べても美味しくはないでしょう。」「美味しそうに食べる所を見せてほしいですね。」
近寄れたら【WIZ】で攻撃です。
攻撃は【高速詠唱】で【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【全力魔法】の【サンダーランス】で、『オウガ・オリジン』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「少しはあなたの殺した相手の痛みを受けなさい。」「少しでも、ダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


シエナ・リーレイ
■アドリブ絡み可
オウガさんも『お友達』を探していたのね!とシエナは喜びに打ち震えます。

オウガの本当の目的を知ったシエナは感激しました
何故なら彼女の目的がシエナの目的と同じだったからです
シエナは他の猟兵から勧められた衣装を身に纏うと意気揚々と悪夢の国へと赴きます

『お友達』になりましょう!とシエナは声を掛けます。

始めから気分の高揚しきったシエナはオウガに親愛と好意を向け、オウガの『お友達』の断片をユーベルで人型の『お友達』にすると肉塊の海の中、仲良く遊びお腹が減れば肉体を共に食べます

シエナとオウガの違いは髪色と『お友達』の選り好みをしない事と『お友達』候補へ無意識の内に凶行に及んでしまう事だけです



 闇の中にふたつ、空色のスカートがふわりと揺れる。
 ひとりはらんらんと跳ねるように、ひとりはかの災厄になりきるように。重なって不規則なリズムを刻むその足音は、オウガ・オリジンの居る屍の山の前でぴたりと停止した。
 オウガ・オリジンはそちらを見遣り、そしてか細い声を響かせる。
「……今度こそ、お友達……? わたしと同じ、わたしと違わない、お友達……?」
 問う声が繰り返されれば、影のひとつ――エプロンドレスをその身に纏った灰髪の少女が、ととんと数歩オウガ・オリジンの元へ駆け寄って口を開く。
「……本当に、オウガさんも『お友達』を探していたのね! とシエナは喜びに打ち震えます!」
 嬉しそうに、嬉しそうにそう言って、シエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は更に一歩屍の山を登る。オウガ・オリジンがその勢いにやや後退るように腰を引く中、彼女は狂喜に笑んだまま手を差し伸べた。
「オウガさん、『お友達』になりましょう! とシエナはあなたへの好意を示します!」

「……」
 しかし、オウガ・オリジンは彼女の手を取ろうとしない。それはシエナの髪色が彼女と違うこと、瞳が爛々と輝いていることだけが理由ではなかった。
 あちこちを切り裂かれたエプロンドレス、その中心からぼたぼたと落ちる鮮血――『お友達』だと確信した筈の者達が与えた『裏切り』の痕。オウガ・オリジンは満身創痍の身で、それを警戒してナイフを握りしめていた。
「もう、騙されない……わたしと本当に同じ『お友達』しか、いらない……!!」
 ふるふると首を横に振るオウガ・オリジン。シエナが再び全力の親愛と好意を向けようとした瞬間、静かに佇んでいたもうひとつの影がそっと一歩踏み出した。

 こちらはオウガ・オリジンと瓜二つ、衣装だけでなく『金の髪』と『真っ黒な顔』まで見事に再現した姿。それをよく見せるように正面から歩み寄り、火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は足元の屍を指して言う。
「こんなにあるのに、一人で食べても美味しくはないでしょう。大丈夫です。『わたし』は『わたし』が美味しそうに食べる姿が見たいんです」
 敵意を見せぬよう空の両手をぱっと広げれば、オウガ・オリジンはナイフを握る手を僅かに緩める。

 完全な油断と隙まで、あとひと押し――そう明が思考を巡らせかけると同時、シエナが足元の屍をひとつ拾って声を上げた。
「これがオウガさんの好きなおやつなんですね、と――」
 シエナはその小さな肉塊を、口の中に放り込んで。
「――シエナは『お友達』と同じように、美味しくいただきます!」
「!!」

 オウガ・オリジンのナイフが、すとんと屍の上に落ちる。
 ああ、同じだ。
 わたしと同じ服を着て、わたしと同じものを「美味しい」と喜んで食べる。
 同じだ。
 ――『お友達』だ。
「嗚呼、良かった……今度こそ、今度こそ『わたしのお友達』!」

「ほら、仲良く遊んでお腹いっぱい食べましょう! とシエナは特製のおまじないをかけます!」
 声を弾ませ、オウガ・オリジンの手をとって。シエナはふわりとユーベルコードを起動すると、周囲に転がり重なる少年少女の死体へ『お友達』作りのおまじないをかけていく。
 その途端、ばらばらになっていた四肢や首、胴がもとの人の形をとって立ち上がった。
 闇の中、薄明かりの下で屍の人形とくるくる踊り、シエナとオウガ・オリジンが楽しげに笑う。純粋な喜びに踵を鳴らす彼女達に、警戒の二文字など一切頭に浮かんでいなかった。

 そんな、油断しきったオウガ・オリジンの頭上が――きらり、とひとつ光る。
「我、求めるは、新たな雷撃の力――『サンダーランス』」
 人形達の影で静かに魔力を溜めていた明が、ふいにそう紡げば。

 閃光が突如虚空を割き、らんらんと歌っていたオウガ・オリジンの喉を貫いた。
「な、――ッ」
 一瞬遅れて轟音が鳴り響いた直後、シエナとオウガ・オリジンの手が解けて離れる。
 すると、踊っていたシエナの白い指先が引き寄せられるようにオウガ・オリジンの真っ黒な顔へするりと伸び、そこへ小さな粒を放り込んだ。
 オウガ・オリジンはそれが『魔法のお薬』――シエナ特製の『毒薬』であることなど知る由もなく、ごくりとそのまま飲み込んでしまう。
 途端にがくりとその場に倒れ込むオウガ・オリジンを、シエナはしたり顔で眺めているのかと思えば。
「……どうしたの? とシエナは突然倒れた『お友達』を見つめます……」
 きょとん、としたまま、シエナはオウガ・オリジンの側でしゃがみ込む。
 それは演技でも、巫山戯ているでもなく――『無意識』の凶行だったのだ。
「この……、この、裏切り者……ッ!!!!!」

 唸るように怨嗟を吐き、蹲るオウガ・オリジン。シエナがこてりと首を傾げる中、再び魔力を練った明がそちらへゆっくりと近づいていく。
 こつ、こつと明の足音が響く中、オウガ・オリジンはぶるぶると体を震わせて。
「嫌だ、いやだ……なんで、何故このわたしが、こんな目に!!」
 その言葉に、思考に――いま自分が踏み潰している『犠牲者』への罪悪感や懺悔などは微塵も含まれていない。それどころか悪あがきにそれを手元のナイフでぐちゃぐちゃと刻み続け、近づく明に向かって放り投げようとまでしていた。

 明はその背に凄まじい数の雷槍を浮かべ、オウガ・オリジンを見下ろして云う。
「少しは、あなたの殺した相手の痛みを受けなさい。これは……報いです」

 ぱち、と小さな稲妻がオウガ・オリジンの黒い顔を照らす。
 明がユーベルコードで創り出したそれらを放てば、途端に深い暗闇が眩い白に包まれた。

 甲高い悲鳴が断末魔に変わり、轟音が地を激しく揺らす。
 骸の海へ還る『お友達』をシエナが少し残念そうに見届ける中、明は足元の屍達を弔うように数秒目を瞑り、そして静かに帰路へつくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月22日


挿絵イラスト