「うむ。汝らには引き続きアリスラビリンスの戦争案件にあたってもらう」
グリモア猟兵、ロア・メギドレクス(f00398)は頷いた。
「――既にフォーミュラたるオウガ・オリジンとの戦いが始まっていることは汝らも既に知っておろう」
ロアは手元の端末を操作し、モニターへと映像を映し出す。
「見よ。……オウガ・オリジンの現実改変型能力によって展開された自己領域だ」
それは――鏡によって構成された迷宮であった。
「いわば鏡のラビリンス、であるな。この迷宮こそがオウガ・オリジンそのものなのだ。しかし、汝らのいかなるユーベルコードを用いたとしても、この迷宮そのものに直接攻撃を仕掛けて破壊することは不可能だ」
続けてロアは端末を操作し、新たな情報をモニターへと映し出す。
「だが、斃す方法はある。――この鏡の迷宮へと汝らが侵入したとき、オウガ・オリジンはそれを感知し、汝らの複製を作り出して差し向けてくるのだ」
――既に猟兵たちが越えてきた戦場のひとつである、『過ぎ去りし日の闘技場』に似ているかもしれない。
しかし、それとは決定的が存在しているのだ。ロアは説明を続ける。
「汝らに差し向けられる複製体は、この世界を構成する鏡に映し出された汝らをベースにして生成される。であるが故に――オリジナルである汝らとは、まったくもって反対の存在として生まれてくるのだ」
猟兵たちを迎え撃つ複製体たちは、複製元の猟兵たちと同じ能力をもつ。しかし、『姿が左右対称』で『性格が正反対』なのである。
右利きであれば左利きで現れるだろうし、正義と愛を掲げる正しき戦士や聖女であれば邪悪の限りを尽くす悪辣なヴィランとして現れるのだ。
「なにぶん、オブリビオンフォーミュラの能力によって生み出されるものである故な、容易く攻略できる相手ではあるまい。だが、付け入る隙はあるはずだ。……そして、これらを撃破することによって、そこからこの迷宮を構成するオウガ・オリジン本体へとダメージをフィードバックさせることができるのだ。それを繰り返すことによって、この迷宮を粉砕し、オウガ・オリジンを撃滅せしめることが可能である」
すなわち。
「汝らのすべきことはいたってシンプルだ。迷宮に侵入し、現れる敵――汝らの複製体を撃破せよ」
――説明は、以上だ。
「では、よいな。万全を期して挑め。そして必ず勝ってこい。汝らの戦いひとつひとつが、この世界とアリスたちを救う礎となるのだ!」
ロアはグリモアを掲げ、そして輝かせる。
かくして、猟兵たちは戦場へと送られるのであった。
無限宇宙人 カノー星人
ごきげんよう、イェーガー。お世話になっております。カノー星人です。
引き続き戦争シナリオとなっております。お楽しみください。
☆このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
☆このシナリオには下記のプレイングボーナス要項が存在します。
プレイングボーナス……「鏡写しの私」を攻略する。
第1章 冒険
『「鏡写しの私」と戦う』
|
POW : 「姿が左右対称」「性格が正反対」だけならば、戦闘力は同じ筈。真正面から戦う
SPD : 「姿が左右対称」である事を利用して、攻略の糸口を見つけ出す
WIZ : 「性格が正反対」である事を利用して、攻略の糸口を見つけ出す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メフィス・フェイスレス
大食いなら小食なんて無難な事にはならないわよね
食人衝動を抑える気がない私
欲望のままに振る舞うことこそ?
容易く剥がれるような薄皮だろうと取り繕いもしない奴なんて
どっちにしろ醜悪なら私はヒトらしい在り方を選ぶわ
私が私を倒そうとするなら【鋸】を使ってくる
私なら「微塵」の爆炎に紛れて死角から奇襲する振りをして正面から襲う
ならコイツは「飢渇」を正面から襲ってくる振りをして、背後から奇襲ってところかしら
振り向かないまま隆起する砲身で突き上げて迎え撃つ
そして炎に怯ませた隙をつき首を斬り飛ばす
デッドマンといえど体は頭で動かすもの
切り離してしまえば体は動かせなくなる
切り飛ばした首を念入りに焼き尽くしてやる
「――“大食いなら小食”……なんて、無難な事にはならないわよね」
メフィス・フェイスレス(f27547)は、迷宮の通路を進む。
鏡の迷宮へと足を踏み入れた彼女は、出現するであろう自分の複製体を待ち受けていた。
「まァ、そうだねェ。――どのあたりが反対か、身をもって試してみるかい?きししし!きっしししし!」
待ち人、来たるか。前進するメフィスの前に、その進路を塞ぐように佇む人影が見える。
――もはや言うまでもないだろう。そこに在ったのは、薄らと笑みを浮かべたメフィスの鏡像であった。
「……食人衝動を抑える気がない私、ってところかしらね」
メフィスは睨むように視線を向ける。
「……くは」
鏡像のメフィスは、嘲笑うように口の端をゆがめた。
「私はお前で、お前は私。……なあ、案外さァ。私の方が本当の“私”なんじゃねえの?」
「欲望のままに振る舞うことこそ?」
メフィスは吐き捨てる。
目の前に立つ鏡像の彼女は、あふれ出る殺気と欲求を僅かばかりも隠すことなくメフィスへと視線をそそいでいた。
「いつかは限界がくるさ。――なあ、どう飾ったって“私”はこうじゃねえか。いつだって腹が減って腹が減って腹が減って腹が減って腹が減って腹が減って仕方ねえ。そうやって気取ったところで、醜いだけのほんとの自分を薄皮一枚の下手な偽装で隠してるだけ――そうだろう?」
「容易く剥がれるような薄皮だろうと取り繕いもしない奴なんて。どっちにしろ醜悪なら……私はヒトらしい在り方を選ぶわ」
「はッ!気取っちゃってさ。分かり合えないね!」
だん、ッ。
鏡を蹴立てるようにして、鏡像のメフィスが跳んだ。
「……!」
――メフィスは思考する。
以前に“闘技場”で戦った“昨日の自分”とやり合った時と同じ要領だ。――相手は、自分自身。その反対にあるもの。
であれば。
(私が“私”を倒そうと思うなら――『鋸』を使う。……そして、『微塵』の爆炎に紛れて死角から奇襲――と見せかけた上で、正面から仕掛ける)
『自分自身で自分自身を殺すのならば、どうするか』。――だが、今回の敵はその反対に在る。
(なら……反対に?)
「死ッねエ!」
鏡像のメフィスは身体の一部をタール状に融かした。その身体は『飢渇に喘ぐ』。
(――逆説的に考えれば)
メフィスは正面から襲い掛かってくる敵の気配を見据えながら――思考を続ける。
(――私なら、正面から仕掛ける。……なら、コイツは)
一瞬の判断。メフィスは血肉を変異させ、その背に背骨から変化させた“砲身”を現出させる。――【竜骨咆吼/スパイン・ロアー】。
「はははははッ!殺ッ――」
「ああ、そうだろうな。――お前は、“背後から奇襲をかける”」
振り返りもせず、メフィスは背中に隆起させた砲身から熱を吐き出した。――その刹那。素早い身のこなしで反転し、正面から背後へと回り込んでいた鏡像のメフィスが、自らその中へ飛び込むように熱線を浴びる。
「グア……ッ!!な、に……!?」
「これ以上喋るな」
ひゅ、ッ。風切りの音。――尾刃。メフィスは伸ばした尾を刃とし、炎に怯んだ鏡像へと向けて放った。
「がッ……ぐ、!テメ……!くそ!くそ、くそ!忘れんな……忘れんな!!私は、お前だ!!」
「黙れ」
追撃の尾刃が更に閃いた。その軌道は鋭く、鏡像のメフィスの首を刈り取る。
「二度と私の前に現れるな」
そして、再び背中の砲身が火を噴いた。
鏡の床に転げた鏡像の首を、首を失った身体めがけてメフィスは熱戦を浴びせ、念入りに焼き払う。
そうして――鏡像のメフィスがその痕跡も残さぬほどに滅却されるまでは、そう多くの時間は要さなかった。
戦いはここに決着する。
メフィスは鏡像の残滓を一瞥することもなく、迷宮の奥へと向けて足を進めるのであった。
成功
🔵🔵🔴
富波・壱子
最初から戦闘用の冷徹な人格で参加
武装は刀と拳銃を選択
標的は性格の反転した自分……なるほど。任務了解
これより作戦行動を開始します
私と逆に、愛想良く正々堂々戦おうとするはずなので、挨拶しようとしたところへ問答無用の【先制攻撃】
私と逆に、落ち着きが無くすぐパニックになるはずなので、こちらの攻撃に怯んだところへすぐさま【2回攻撃】で追撃
私と逆に、反撃しようにも人を傷つけることを躊躇うはずなので、その隙を突いて【カウンター】
私と逆に、痛みへの耐性も低いはずなので、泣き喚いているところにトドメの【零距離射撃】
戦うだけが『私』なのですから、反転したのなら戦えない『私』になるのが道理でしょう。躊躇なく殺します
「――任務了解。これより作戦行動を開始します」
富波・壱子(f01342)は鏡の迷宮へと足を踏み入れる。
今回の作戦の内容は至ってシンプルだ。――迷宮内に現れる、自分自身の『鏡像』を、斃せ。
「標的は、反転した自分……」
壱子は静かに迷宮を進む。
多重人格者であるところの富波・壱子という女は、状況によって人格を使い分ける。――特に、こうした戦場においては、戦闘に適合した冷徹な戦士としての人格を表出させているのだ。
「――あっ!きーましーたねーっ!」
そして――迷宮を進んだ先で、彼女へと能天気な声を浴びせかけたものこそ、彼女の姿を模倣した鏡像であった。
「よーこそ戦場へ、私!待ってたんですよ~。会えるのたのしみにしてたんです~」
彼女を迎えたその鏡像は、実に能天気であった。
冷徹きわまりない戦闘用人格であるところの壱子の反転した存在であれば、そのような在り方で顕現することもまあ、不思議ではないだろう。
「それじゃあですね~ え~っと~」
「うるさい」
壱子は先制してホルスターから銃を引き抜いた。即座に引き金を引く。Bang!螺旋を描く弾頭が鏡像の壱子を襲う。
「きゃーっ!?なんですかいきなり!!ちょっと私!!あなた正々堂々と戦おうってつもりは……」
「ないですね」
「ぴーっ!」
続けて壱子は踏み込みながら剣を引き抜いた。カイナ。鋭く刃が閃き、鏡像の壱子を襲う。
「わあ!」
「……人を傷つけるのは、怖いでしょう。私はそうではありませんから」
壱子は躊躇なく踏み込み、更に追撃をかける。銃声が連続し、刃が幾度となく閃いた。――防戦一方。鏡像の壱子は悲鳴をあげながら逃げ回る。
「戦うだけが『私』なのですから、反転したのなら戦えない『私』になるのが道理です。違いますか?」
壱子は鋭く目を細めながら、鏡像の壱子の急所をめがけて刺突を繰り出す。それがとどめの一撃となる――はずだった。
「――もー……“私”ったら!そこまで甘く見てたんですか!!」
金属音。
鏡像の壱子が、刃を跳ね上げてそれを弾いたのだ。
「ぷんぷんです!私もー怒りましたよ。いいですか、“私”」
鏡像の壱子は床を蹴立てた。同時にホルスターの銃を抜き放ちながら、壱子へと迫る。
「――ここは、オウガ・オリジンの領域ですよ」
銃声。至近の間合いへと詰めながら、鏡像の壱子は囁いた。
「私はあなただけど、同時にオウガ・オリジンの一部でもあるんです。――『無抵抗にやられる』と、本気で思ってたなら――甘すぎですよ!!」
閃く刃。壱子は咄嗟に身を反らし、髪の一房を浅く切られるにとどめる。
鏡像は、壱子と同等の戦闘能力を持つ存在である。
たしかに、戦闘に特化した在り方で生きる兵士としての壱子の人格を反転させた人格であれば戦闘向きではないだろう。だが、それは決して『戦えない』ものとしては顕現しない。
なぜならば、それはオウガ・オリジンの一部でもあるからだ。
「……!」
壱子は後退し、間合いを開きながら態勢を立て直す。そして短く息を吐いた。
「楽な仕事とはいかない……ということですね」
「慢心は死を呼び込みますよ!それから私はおこってまーす!!あなたと違って感情的なのでー!!すっごくおこってまーす!」
鏡像の壱子は更に前進。連続する銃声とともに弾頭が壱子を襲う。
「なら、甘く見たことは詫びましょう」
頬や肩口を銃弾が掠める。壱子はその中に立ちながら、再び銃を構えた。
「ですが、これ以上は――」
壱子の瞳孔が細まった。――わずかに身体を反らし、弾丸を躱す。同時にトリガー。大口径の銃弾が、咆哮と共に飛んだ。
「もう、あなたには何もさせない」
【イニシャルインタラプト】。――放たれた弾頭は、鏡像の壱子の手を撃ち抜いた。
「ぎゃ……ッ!」
「これで終わりです」
壱子は床面を踏み切って更に前進した。――至近距離へと間合いを詰めながら、再び銃口を掲げる。そして、トリガー。零距離から放たれる銃弾が、鏡像の中心を抉り、そして破壊した。
「あ――は、は……ざんねぇん……」
鏡が割れるように、破片を撒き散らして鏡像の壱子が砕け散る。
かくして、ここに決着はついた。
ホルスターへと銃を収め、壱子は振り返ることなく前へと進む。
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
お任せプレイング。お好きなように。
汝が為したいように為すがよい。
うん、性女な私を反転させたらねんねな聖女になるわよねぇ。おっと、神罰で浄化されそう、結界術結界術。
つーか、性知識も反転してなくなってるのか。よし、触手×男の娘×男の娘の
【何言ってんだこいつ? 頭大丈夫か?】な腐語りで、【未来で快楽堕ちして私のフォロワーになった『反転した私』】を召喚するわ☆
後は2人がかりでシャーマンとして心通わせて“なかよし”になるだけよ♡大丈夫、怖くないわ、だってほら未来から来たあなたとっても幸せそうでしょ♪
情熱の炎で料理しながら破壊の衝動をエナジーとして捕食、ハートを略奪してメロメロにしてあげるわ♡
「まあ……来たのですね、わたし」
アリス・セカンドカラー(f05202)が対峙した彼女の鏡像は、きらきらと後光めいた光を背負いながら微笑んでいた。
実に聖女然とした姿である。その微笑みときらきらの前には、いかなる邪悪も存在を許されまい。
「うお……」
あんまりにもきらきらした姿で慈愛の笑みを浮かべながらアリスへと微笑みかける鏡像の姿に、アリスはあんまり出したことのないタイプのうめき声を漏らしてしまった。
「……いけないいけない。落ち着いて。……うん、うん。そうね。そうよね……うん。“性女”な私を反転させたらネンネな聖女になるわよねぇ」
「そうですよ、“わたし”。あなたの穢れと罪、このまま捨て置くわけにはまいりません……。さあ、“わたし”。まずはわたしの光でその邪悪な性根を浄化しましょう……しかる後、わたしと一緒に72時間耐久よいこの道徳童話シリーズの読み聞かせをきくのです」
「おっと……そうはいかないわよ。結界術結界術……」
アリスは慌ただしく虚空に魔法円を描き、防壁を構築する。このまま攻め込まれてはいかに多くの戦いを潜り抜けてきたアリスであれど、無事では済まされまい。なんてったって相手はアリス自身の鏡像。ほとんど同等の戦闘能力を保持しているのだ。
「まあ、抵抗するのですね……そうはいきません。この、結界を、解いて…………まず、神罰を…………!」
想定通り鏡像のアリスは結界を破壊すべく術式干渉を開始した。パーン!ハンマーでガラスを叩くような音が響き渡る。我ながらすごい念動力だ。あまり長くはもたないだろう。早く何とかしなくては、アリスは72時間耐久道徳童話よみきかせ大会の犠牲者となり、花を愛で星を愛しあまねく自然と生命を慈しむ可憐な乙女にされてしまうだろう。そうなってしまってはアイデンティティの損失だ。
「……でもどうしようかしら。具体的に……」
短い思案。――結界を破って鏡像のアリスが神罰を下しにくるまではもはや猶予は残されてはいまい。アリスは考える。
その時――アリスに落ちる天啓。圧倒的閃き……!
「ねえ、“わたし”」
さっそくアリスは行動に移る。にっこりと、一見邪念のないように見えなくもない可憐な微笑みとともに、アリスは鏡像へと笑いかけた。
「なんですか、“わたし”」
「あのね、聞いてもらいたいことがあるの」
「その話なら神罰を執行したあとで――」
「男の娘に興味はない?」
「は?」
いきなり何言いだすんだこいつ、と、鏡像のアリスは思った。
「あなたもわたしならわかるはずよ。――ねえ、男の娘×男の娘っていいと思わない?」
「あなた――突然なにを言うんです!そんな倒錯的な……!!だいたい、男性同士のカップリングなんて俺様系スパダリ攻めが至高と決まっています!ましてや男の娘だなんて、そんな男性向けコンテンツ……!!」
「えっそっちなの」
「たしかにわんこっぽい感じのカワイイ系の男の子が攻めに回る展開もいいですが――男の娘×男の娘だなんて、いけません!それは我々淑女が触れるべきでない男性向けコンテンツですよ!本当に何言ってるんですか?頭大丈夫です?」
地雷!鏡像のアリスは声をあげて抗議する!――しかし、これはこれで計画通り。その『何言ってんだこいつ? 頭大丈夫か?』が、彼女の励起するユーべルコードのキーなのだ。
「――いいえ、“わたし”……男の娘×男の娘も、いいものですよ」
ふわり。――空に浮かび上がる影。それは、本体であるアリスと鏡像のアリスとはまた別の存在である3人目のアリスであった。
【不可思議四次元殺法/ディメイションアタック】によって、ここに呼ばれたのである。
「……誰です!?」
「わたしです……わたしは未来のあなたです……」
「ええ……」
鏡像のアリスは困惑した。
きらきらと後光を背負いながら降臨した未来の鏡像アリスは、微笑みながら鏡像アリスへと手を差し伸べる。
「さあ……あらそいはやめましょう。“わたし”たちで“なかよし”するのです……」
「それ(全年齢向けコンテンツでは不適切な表現)のことですよね?」
「“なかよし”よ」
ここで本来のアリスが加わった。その手には決して青少年には見せることのできない男の娘ジャンルの薄い本が握られている。
「ヒッ こないでください」
「大丈夫♡ 痛みは一瞬よ♡ 怖くないわ……だってほら、未来から来たあなただって、とっても幸せそうでしょ♪」
「はい♡」
「ヒッ」
困惑する鏡像のアリスは怯えながらじりじりと後退した。しかし、そんな彼女をアリスと“なかよし”済の未来鏡像アリスは二人がかりで追い詰める。
「それじゃ、メロメロにしてあげるわ♡」
「いやーーーーーーっ!!!!」
逃げた先は壁際である。――鏡像のアリスは、もはや逃れられる運命にはない。
そして迷宮に鏡像のアリスの悲鳴が満ちたのであった。
成功
🔵🔵🔴
グウェンドリン・グレンジャー
へー、性格、正反対、の、私
(目の前にいるもう一人の自分をぼーっと見つめて)
ということ、は、笑ったり、泣いたり、出来るわけ、だ
へ~~~~~(感じるのは一抹の羨望)
って、ことは
性格、正反対でも、戦闘に関わる力……は、同じ、って、わけだ
ねえねえ、自分の、戦う力の、源、その力……が、求める『リソース』、分かって、る?
分かってる、なら、泣いたり、笑ったりできる、フツーの私……には、耐えられない、ん、じゃない?
ヒトの、血肉、食べず、には、いられない、その、刻印と、体内の、クランケヴァッフェの、力
……と、揺さぶり
怪力、脚の筋力。それと、念動力で、一気に接近
すれ違いざま、Raven's Roar
はぁ(溜め息)
「あーグっちゃーん!きちゃったんだねー!」
「グっちゃん……?」
グウェンドリン・グレンジャー(f00712)の目の前に現れた鏡像のグウェンは、にこやかに手を振った。
「待ってたんだよ~!ずっと会いたかったんだ~!」
鏡像のグウェンはにこにこしながらグウェンへと駆け寄る。
「……へー」
――これが、もう一人の自分。
グウェンは茫洋としながらその姿を見た。
「……ということ、は、笑ったり、泣いたり、出来るわけ、だ」
「なに言ってるのさー!当たり前じゃん?」
「……へー…………」
屈託なく笑う鏡像のグウェンへと彼女が向けるのは、一抹の羨望。失った人間性への憧れだ。
「じゃやろっか!」
「……うん」
2人のグウェンは同時に翼を広げた。――人外の証。黒翼のクランケヴァッフェ。
「戦闘に関わる力……は、同じ、って、わけだ」
「そーだよ、グっちゃん。ねぇ、私が勝ったらさ。あなたの人生、もらっていいよね?」
「……」
鏡像のグウェンは口の端を吊り上げる。
わずかな沈黙を、置いて。
「ねえねえ、自分の、戦う力の、源、その力……が、求める『リソース』、分かって、る?」
「……何の話?」
グウェンは鏡像へと対峙しながら、静かに口を開く。
「分かってる、なら、泣いたり、笑ったりできる、フツーの私……には、耐えられない、ん、じゃない?」
「……」
「ヒトの、血肉、食べず、には、いられない、その、刻印と、体内の、クランケヴァッフェの、力」
「それは――」
鏡像のグウェンは――
「ぜんぜん」
――嗤った。
黒翼が襲い掛かる。
「……!」
「――グっちゃんはさー、繊細過ぎなんだよね?」
鏡像のグウェンは躊躇なく翼を広げ、加速しながら前進する。グウェンはあわせて飛び立ち、それを迎撃した。
「グっちゃんさ、そういうところ気にするでしょ?――私は逆」
羽撃くように鏡像のグウェンは翼を叩きつける。クランケヴァッフェがぶつかり合い、2人のグウェンは撃ち合う衝撃で互いに後退する。
「あなた、は……」
――鏡像のグウェンは、感情をもちながらも人間性をもたないものとしてここに在る。
迷いなく悩みなく、他者を傷つけ喰らうことに抵抗なく、人の情をもちながら怪物であることに疑問をもたぬ存在であった。
「ねえ。そんなに悩んで生きてたって苦しいだけでしょ。あとは私が生きてあげるからさあ――死んでよ」
「私、は……」
牙が襲う。翼が交錯する。2人のグウェンは激しくぶつかり合った。
「私の方がじょうずに生きてあげるからさあ!」
「く、っ……!」
鏡像のグウェンが、グウェンドリンを打ち据える。クランケヴァッフェの牙に身を削られ、苦悶の声が漏れた。
「あっははははは!あはははは!とどめだよ――終わらせてあげるね。あなたのその苦しいだけの人生をさ!」
そして鏡像は嗤い――立ち上がるグウェンが、それを迎え撃つ。
「……!」
交錯。
2人のグウェンがすれ違うその一瞬。
「私は……死なない」
【Raven's Roar】。グウェンの翼が、鏡像を穿った。――彼女の方が、僅かに速かったのである。
『自分の方が勝っている』――と、鏡像のグウェンは驕ったのだ。それ故に生じた隙が、グウェンに勝機をもたらした。
「がふッ」
鏡像のグウェンが、爆ぜるように砕ける。
「……さよなら、“わたし”」
グウェンはそれを一瞥することもなく、静かに床面へと降り立つ。
「……はぁ」
最期に吐き出したため息一つ。そして、グウェンは迷宮を進む。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
【血反吐】
反対のあたし、ねぇ。まあ想像つかないわけじゃないけど。
…あたしと同じ能力って話だけど、なんか正直あんまり怖くないのよねぇ…
射撃能力は互角。…なら、そこからモノを言うのは仕込みの数。〇目潰し・足止め・吹き飛ばし・捕縛・残像etc。実力を発揮できないように丁寧にゴリ押ししましょ。
あたしの反対ってことは「不意討ち騙し討ちに耐性のない」「他者との連携を前提とした」「小技が苦手」で「火力偏重」な戦闘能力ってことだもの。
むしろ「あたしと同じようによく見える」分、余計にハマりやすいんじゃないかしらぁ?
…随分と、ころころ表情変わるのねぇ。
ホント羨ましいわぁ――「人生楽しそう」で。
「反対のあたし、ねぇ」
「ええ。あたしよ。待ってたわァ」
ティオレンシア・シーディア(f04145)は、鏡の迷宮にて自らの鏡像に対峙する。
「ふぅん……なるほどねぇ。たしかによく似てるわぁ」
ティオレンシアは眼前に立つ鏡像の自分を見る。
――利き腕が逆であるが故に、ホルスターの位置が逆、という程度か。鏡写しの自分自身は、掛け値なしに彼女と瓜二つだった。
しかし。
「あたしと同じ能力って話だけど、なんか正直あんまり怖くないのよねぇ……」
ティオレンシアは短く息を吐き出しながら、ホルスターに指を這わせる。
「あらァ――。それは『慢心』っていうんじゃないかしらァ、“あたし”?」
――鏡像のティオレンシアは口の端をつり上げる。同時に銃を抜き放ち、トリガーを引いた。45口径弾頭がティオレンシアを襲う!
「……ッ」
ティオレンシアは咄嗟に躱す。弾丸は肩口を掠めた。ティオレンシアは即座に応戦する。敵の銃口の狙う先、その軌道から逃れるように回避動作を取りながら銃を引き抜いた。
「あっははは――反撃する時間なんかあげないわよォ!」
鏡像のティオレンシアは素早く弾倉交換。リボルバーが再び火を噴く――!
「あっははははははは!逃げられないわァ!」
続けてティオレンシアへと襲い来る弾丸――その弾頭に刻まれる《イス/イサ》。即ち停滞を意味するルーン魔術刻印!
「そっちも使えるのねぇ?」
「当たり前よォ。あたしはあなた。あなたにできることはなんだってできるわァ!」
防戦。ティオレンシアは鏡像が撃ち込む術式射撃から逃れる。鏡像は激しく哄笑しながら引き金を引き続けた。《イス/イサ》のルーン刻印弾頭が冷気を撒き散らしながらティオレンシアへと襲い掛かる。逃れきれぬ追撃と空間に満ちる冷気が、ティオレンシアの体力をじわじわと奪い、そして苛烈に攻め立てた。
「……ふ、っ」
雪崩めいてティオレンシアを攻め立てるルーン刻印弾丸の嵐の中、しかしてティオレンシアは嗤った。
「笑ってられるのも、それが最後……」
鏡像のティオレンシアが、それを見下ろしながら笑う。
「あたしと同じくらい強い、にしてはぁ……手数が足りてないわよぉ、“あたし”?」
鏡像のティオレンシアが浮かべたその笑みは、すなわち優位に立ち勝利を確信した者の慢心だ。――そうであると同時に、ティオレンシアにとっては付け入るための絶好の隙でもあった。
ティオレンシアはその一瞬の隙の中でポケットからグレネードを引きずり出した。そして、素早く投擲する。鏡像のティオレンシアは、放り投げられたグレネードを咄嗟に撃ち抜いた。――雷管が衝撃に反応し、そして一機に点火する。炸裂する閃光と轟音。スタングレネードだ。激しい光と音が鏡像の視覚と聴覚を激しく揺さぶる!
「なに……ッ!?」
鏡像のティオレンシアは視覚と聴覚を閃光と轟音に塗りつぶされる。
「攻め手が単調すぎるし――殺気も丸出し。それにルーン詠唱もちょっと雑じゃない?火力で圧し潰せば勝てる……なんて、思ってたのかしらぁ?」
「く……ッ!」
ティオレンシアは更に床を蹴って鏡像へと間合いを詰めながら、更に握った銃把の感触を確かめた。
敵の五感が復帰するよりも早く攻め切る。ティオレンシアはリボルバーの弾倉から薬莢を落とし、素早く弾丸を嵌めこんだ。そこに刻まれたルーン魔術刻印は《イス/イサ》。《ソーン/スリサズ》。《ニイド》。いずれも束縛や遅滞を意味する――銃声三度。意趣返しめいて、ティオレンシアは術式刻印弾頭を鏡像へと撃ち込んだ。
「これは――!」
鏡像のティオレンシアが焦り、声を上げる。――抑え込まれた!鏡像のティオレンシアを縛り付けるのは、三重に編まれた遅滞の停止のルーンだ。
「ええ。これ以上はもう何もさせてあげないわよぉ。――ゴリ押しさせてもらうわねぇ?」
遅滞のルーンは鏡像のティオレンシアを縛り、その動きを制限する。ティオレンシアはそこへ更に惜しみなく術式刻印弾頭を叩き込んだ。
「ぐあ……ッ!“あたし”……ッ!なん、て、汚いマネを……」
先ほどまでの哄笑とは打って変わって苦悶に呻く鏡像のティオレンシアが、ぎり、と歯噛みしながらティオレンシアを睨めつける。
「……随分と、ころころ表情が変わるのねぇ」
だが、ティオレンシアはその視線を受け流し、改めてもう一度45口径オブシディアンの弾倉へと弾丸を再装填した。
「ホント羨ましいわぁ――『人生楽しそう』で」
【射殺/クー・デ・グラ】。
その決着は静かだった。――最後に一度だけ長く伸びる銃声と、鏡の砕ける音。
断末魔を残すことさえなく、鏡像のティオレンシアは倒れ、そしてその躯体が砕け散った。
「それじゃ、さようならぁ」
ティオレンシアはホルスターへと銃を戻し――かくして、ここにまたひとつの戦いは終わる。
成功
🔵🔵🔴
ミスト・ペルメオス
【WIZ】
成る程、これはこれで興味深い…。
…だが不快なのは同意だな。まあ、
お前を倒せば済むことだ。
愛機たる機械鎧を駆って参戦。
デバイス等を介して念動力を活用、機体をフルコントロール。
鏡写しな今回の「敵」に対しても冷静に戦闘を行う。
戦闘力は同等、しかし「写し」の性格が正反対ならば…。
スラスターを駆使して迷宮内部を飛び回り駆け回り、射撃戦を主体に立ち回る。
閉所ゆえ機動力を十全には活かせない、接近戦ならば容易に墜とせる…、
そう思わせて距離を詰めてくるよう誘導し、【シュラウド・サクリファイス】発動。
捉えてみせれば、至近距離での撃ち合いに移行。やられる前にやってみせる…ッ!
※他の方との共闘等、歓迎です
『行け、我が鎧装……緋色の凶鳥・《ヴァーミリオン・バード》!』
「あれが……鏡の私……?」
鏡の迷宮において、2人は交錯した。
ミスト・ペルメオス(f05377)は漆黒の躯体、鎧装ブラックバードを駆って戦場を翔ける鎧装騎兵である。
――であるが故に、彼の目の前に現れた鏡像のミストもまた当然のように鎧装を駆り、ミストのマシンへと攻撃を仕掛けてきた。
「赤いブラックバード……?……鏡に映った私を模したのなら、どうして色が……」
ミストはマシンの操縦席でトリガーを引く。――ブラックバードの視覚センサーが捉えた敵機の姿は、赤くリペイントされたブラックバードそのものであった。ミストは僅かな驚きに戸惑いながらも迎撃する。可変速ビームキャノン。熱線が赤いブラックバードを掠めた。
『どうしてだと?ククク……愚問だな』
通信回線越しに届く声。鏡像のミストが笑う。
『カッコいいからだ……』
「カッコいいから……」
ミストは絶句した。
『そう……この迷宮で実体化した我は、貴様がここに現れる今この時を待ちわびていた。貴様に勝利し、我がヴァーミリオン・バードの強さを証明するためにな』
「なに……!」
『フッ――そして、貴様を待つ間に色を塗り替えていたのだ』
通信回線越しに鏡像のミストは嗤った。そして、素早く機体を操りながら機体を加速させる!
「……見栄えをそんなに気にしているのか……?これが私の鏡像……。成る程、これはこれで興味深い…」
『そんな風に関心などしている余裕があるのか、貴様に。――翔けろ、我が深紅の翼!』
鏡像のミストが操縦席でコンソールを叩きながら、レバーを押し込んだ。赤いブラックバード――ヴァーミリオン・バードが、翼に付随する推進機を巧みに操りながらミストへと距離を詰める。そのマニピュレーターには赤く刀身を光らせるビームブレードが握られていた。
『さあ――落ちろ!貴様のその姿、実に不快だ!』
「……不快だ、というのは同意見だな!」
加速するヴァーミリオン・バード。しかしミストもまた同時にマシンへと指示を下していた。瞬間移動のようにわずかな時間で敵の索敵範囲から逃れる機動。ビームブレードの斬撃を躱しながら、ブラックバードは敵機の死角へと回り込む。
『ちッ!逃がすか!』
それを追うように鏡像のミストはヴァーミリオン・バードの機体を反転させ、そして更にブースターの出力を上昇させた。
「これで――!」
『いいや、勝つのは我だ!』
ブラックバードはビームアサルトライフルの照準を向け、接近するヴァーミリオン・バードを迎え撃つ。しかし、ヴァーミリオン・バードは巧みに致命傷を避けながら一気に加速し、間合いを詰めにかかる!
『どうやら――接近戦においては、我がヴァーミリオン・バードの方に分があるようだな!』
――ビームブレードの間合いまで詰められた。交錯の刹那、ヴァーミリオン・バードが光の刃を振りかざす。
『これで、とどめだ!』
「……ああ、そうくると思っていた!接近戦なら自分の方が勝っていると――この間合いなら容易に墜とせると、そう思ったんだろう!」
しかし、その瞬間である。
ミストが思念波を放った。――サイキッカーとしての能力を発揮したのである。デバイスによって強化・増幅された念動力が、ブラックバードを通して放射される。
『なに……!?このプレッシャー……どうしたというのだ!?』
思念波は物理的な干渉力をもってヴァーミリオン・バードの躯体へと押し寄せる。強力な念動力がマシンの駆動系を麻痺させ、その動きを止めさせたのだ。――【シュラウド・サクリファイス】。サイキックエナジーの応用による拘束技術であった。
「……マシンでの戦闘機動ばかりにこだわったのが、お前の敗因だ」
『く……ッ!ここまできて……!』
動きを鈍らせたヴァーミリオン・バードへと向けて、ミストは照準を合わせる。
それを迎撃すべく鏡像のミストはヴァーミリオン・バードの可変速ビームキャノンをブラックバードへと向けるが――
「遅い――!」
それよりも早く、ブラックバードはビームアサルトライフルの引き金を引いた。
『お、おのれ、ブラックバード……!ぐあああああああああああああッ!』
光条がヴァーミリオン・バードの装甲を貫き、機関部へと致命的なダメージを与える。そしてビームの熱が内燃機関へと引火し、その躯体は瞬く間に燃え上がり爆発――ヴァーミリオン・バードの躯体は、炎に包まれ、そして灰燼へと帰したのである。
ミストは操縦桿を押し込み、機体を反転させて爆風から逃れた。
――かくして、2機の鎧装騎兵による決闘はブラックバードの勝利で幕を閉じる。
この鏡の迷宮における戦いは、既に終局へ向かいつつあった。
成功
🔵🔵🔴
ヴィクティム・ウィンターミュート
温い思考してんじゃねーよ
正々堂々、公明正大、慈悲深く、曲がったことが大嫌い
そんなところだろう、俺の『正反対』は
だからお前は、どうしようもなく弱い
身体能力、メイジの素質、サイキック
才能が無ければ努力する時間も無い
教えてくれる奴だっていない
お前は戦士になれないから、『Arsene』になるしかなかった
他人を欺き、惑わし、陥れ、悉くを奪う
無数の手札でイカサマした勝ってきたのに、それが出来なくなったお前に価値は無い
性格だけ変わってるなら、隙はそこにある
──奪い取れ、『Hyena』
この両腕は、お前から戦う力を奪う
お前は他人から奪うことでしか生きていけなかった
今更正義面するなよ、何も出来ないくせに
「こんにちは!やあ、よく来たね、Arsene。僕はArsene。ニューロマンサー・アーセンだ!」
「……」
ヴィクティム・ウィンターミュート(f01172)が相対したのは、白い歯を眩しく輝かせるヒロイックなスマイルと明るいサムズアップで彼を出迎える鏡像のヴィクティムであった。
「Arsene。君のことはよく知っているよ。僕は君だからね。……辛かっただろう、今まで」
そして、鏡像のヴィクティムは慈しむような微笑みとともに手を伸ばした。
「これからは僕が、君を――」
「――黙りな」
ヴィクティムは鋭く鏡像を睨めつける。
「温い思考してんじゃねーよ。……だいいち、お前に憐れまれるほど俺は落ちぶれちゃいねえ」
「……」
「俺は、弱い」
ヴィクティム・ウィンターミュートは、静かに言葉を零す。
「だからこそ、他人を欺き、惑わし、陥れ、悉くを奪う――無数の手札でイカサマして勝ってきた」
「それ以上はいけない、Arsene。君は立派だ。正々堂々と立つべきだ。この僕のように」
「黙れ」
ヴィクティムの身の裡で、虚無が疼く。
「……お前は、どうしようもなく弱い」
「そうして自分に呪詛をかけるのはやめるんだ、Arsene」
「違う。事実だ」
ヴィクティムは網膜加工型の電脳ゴーグルに敵に姿を捉えると、そのスペックを分析する。同時に彼は戦闘態勢へと移行しつつあった。甲状腺および神経系から分泌される成分がヴィクティムの脳と身体を構成する筋肉を活性化させてゆく。
「随分と立派な立ち方をしているようだが――どの道、お前は俺だ」
――戦うために必要だった、強靭な身体能力。それは彼の中にあったか。
否。ない。
――戦うために必要だった、術式を繰るメイジとしての素質。それは彼の中にあったか。
否。ない。
――ならば、サイキックは。あるいは戦いに活かせる特別な才覚は。そうでなくとも、光るものは。
否。
なかった。
努力するための時間すらなく、彼に技術を伝承する師も彼にはなかった。
「お前は戦士になれないから、『Arsene』になるしかなかった」
「自分をさげすむのはやめるんだ、Arsene。君はもう立派な戦士じゃないか」
「まやかしが俺を語るな」
「……相容れないね。Arsene」
「当たり前だ」
そして、2人のArseneが対峙する。
――わずかな沈黙を置いて、2人は跳ねた。
「はッ!」
「あああッ!」
鏡像はヴィクティムと同一の戦闘能力を持つ。――であるが故に、扱う力も同一のものだ。すなわち鏡像のArseneもまた、虚無を繰る。
「――苦しかっただろう。つらかっただろう。僕は君を憐れむ」
「……その言葉、『正義の味方』気取りで言ってるんだろうがな」
虚無の力同士がぶつかり合い、黒が爆ぜる。ヴィクティムはその最中、ヒラドリウスの視界の先に敵の姿を捉える。
「そりゃ――『傲慢』っつうんだ」
【Forbidden Program『Hyena』】。
ヴィクティムの両腕が黒く染まる。両腕に纏わった黒はやがて全身へと広がりながら、その姿を変じた。――曰く。『強奪の反逆者』。
「――!」
「──奪い取れ、『Hyena』」
ヴィクティムの両腕が鏡像のArseneを掴む。――鏡像が内包する力は、彼がもつものと同一の虚無である。であるが故に、『奪う』ことは、容易い。
「ぐあ……ッ!Arsene……!!」
「わかるだろ――これが俺だ。そしてお前だ」
ぎり。――歯噛みする音。自らの鏡像を、憎悪すら乗せた双眸で睨みながらヴィクティムは吐き捨てる。
「お前は他人から奪うことでしか生きていけなかった」
「ち、がう……それだけ、じゃ……ない……――はず……だ……」
力を奪われてゆく鏡像のヴィクティムは、呻きながら手を伸ばす。
「今更正義面するなよ、何も出来ないくせに」
しかして、ヴィクティムは応えない。ヴィクティムは、拒絶するように両腕へと力を込めた。
「Aresen……」
「――バズ・オフ」
そして――捩じ切るように。握りつぶすように。ヴィクティムは、自らの鏡像を砕いた。
鏡の破片が爆ぜ散るように、鏡像の欠片が散らばって、消える。
――かくして、残るのはヴィクティムただ一人であった。
「……」
ヴィクティムは短く息を吐き出し、そして纏う漆黒を払う。
そうして――短く呼吸を整えてから、振り返ることもなく、歩きだした。
成功
🔵🔵🔴
リオネル・エコーズ
宿敵を骸の海へ還す決意
家までの帰り道を見つけて家族にただいまっていう願い
自分の都合で感情を操った人達への償い
正反対の俺はそういうのを全部諦めた俺かな?
…って、そっちの俺暗すぎない?
左右対称以外は外見同じだから違和感がマジでヤバい
…あとちょっと腹が立つかな
俺は諦めないし立ち止まらない
飛ぶ事も笑う事も止めない
俺は今よりもっと強くなって絶対に彼女を還す
家に帰る
償い方は…まだ模索中だけどそれも諦めない
同じ流星を放つなら空中戦って事で飛んで躱そう
諦めた俺の放つ流星は怖くない
寧ろ星より速く飛んでやるって思いで全力飛行
あっちの俺を捉え次第、遠慮なくUCぶっ放そう
俺は君とは違う
この世界も、自分の夢も守るよ
「……あー……来ちゃったのか…………やだなあ」
「……うわっ、そっちの俺、暗すぎない?」
リオネル・エコーズ(f04185)はぎょっとした。
鏡の迷宮の奥で巡り合ったリオネルの鏡像は、ひどく暗くじめじめとした風情であった。体育すわりをして壁際でうつむく鏡像のリオネルは、じっとりとした双眸をリオネルへと向けた。
「えーっと……俺の正反対、っていうことは……いろいろ、“諦めた”俺……かな?」
リオネルは微妙な表情を浮かべながら、体育すわりしたままの鏡像を見下ろす。
「……そう。だめ。俺はもうどこへも行けない……どこにも帰れない…………」
「うっ……」
見ているだけで憂鬱が感染しかねない陰鬱な空気。リオネルは自分の似姿ながらちょっとヒいた。
「……だから、お前もどこにも行かせない」
そうして――鏡像のリオネルは、ゆっくりと立ち上がる。
ぎょろり、と開いた恨めし気な視線が、リオネルを捉えた。
「お前は、俺と一緒にここでずっと立ち止まる……」
「……」
向けられるのは敵意。
リオネルは、その視線を真正面から受け止めながら、まっすぐに視線を返す。
「……ちょっと、腹が立つかな」
「……」
対峙する2人のリオネルが、ゆっくりと間合いを縮める。
「……俺は諦めないし、立ち止まらない」
「……だめだ。諦めろ。そこで、止まれ」
「嫌だ。跳ぶことも、笑うことも止めない」
「止めろ。……俺は、お前をどこにも行かせない」
呪詛めいた暗い視線がリオネルを射抜く。――しかし、リオネルは怯むことなく胸を張り、そして言葉を続けてみせる。
「君の言葉なんかで俺を止められると思うな。――俺は今よりもっと強くなって、絶対に“彼女”を還す」
「無理だ」
「無理じゃない。家にも帰る」
「帰れない」
「いいや、帰る。それから――」
「――償うことなんか、できない」
「……」
リオネルの表情が僅かに曇る。――しかし、短い呼吸を一つ置き、リオネルはもう一度口を開く。
「償い方は……まだ、模索中だけど。それも……諦めない」
「……無理だ。無駄だ。考えるだけ無為だ。囚われ続けたままのくせに。どこにも行けていないくせに」
「違う。……俺は、なにひとつ諦めてなんかいない」
「――嘘だ」
鏡像のリオネルは、その背で翼を開いた。そして地上より飛び立ち、宙を舞う。
「嘘じゃない。――俺は、君とは違う」
それを追うように、リオネルは床面を蹴立てて飛び立った。鏡の迷宮の中で、2人のリオネルが飛び交う。
「なら…………証明してみろ」
鏡像のリオネルは指先に魔鍵を握り、そして指揮棒めいて振るう。空間にこじ開ける穴。空に開かれる門。門を通じて降る無数の星々――!
「ああ、そうさせてもらうよ。……何もかも諦めたような君がなにをしようとも、俺は恐れない」
しかし、リオネルは恐れることなく飛び込んだ。降り注ぐ星の群れ――羽を掠めながらも、リオネルはまっすぐに進み、そして鏡像のリオネルを視界に捉えながらその姿へと追いすがる。
「俺は……諦めない。立ち止まらない。君じゃ、俺の足を引っ張ることはできない」
「……!」
リオネルは術式を繰る。――空に開く門。門を越えて降る光。【極光の星/メテオール・レイン】。虹めいて七彩に煌めく流星の雨が、戦場に交錯した。
「こ、れは――」
「俺は、君とは違う」
――ユーベルコードを用いた戦闘とは、即ちユーベルコード出力がものを言う。
そして、ユーベルコードとは基本的に使用者の意志力を反映してその出力を上昇させるものだ。――そうした観点で見れば、すべてを諦めた鏡像のリオネルよりも、進み続ける、と高らかに宣言するリオネルがユーベルコード出力で上回っているのは当然の帰結であった。
であるが故に。
「……ああ」
ユーベルコードがぶつかり合ったその結果、勝利を収めたのはリオネルであった。
極彩色の流星が流れ、そして爆ぜてゆく。その虹色の炎は、鏡像のリオネルを灼き尽くしながら燃え尽きた。
「そうか――そうだな……俺が、勝つ、わけが……」
爆ぜる流星。炎の中に、鏡像のリオネルは砕け散りその存在を霧散させ消滅する。
そして、星の雨が途切れた。
動くもののいなくなった鏡の迷宮の中で、リオネルは翼をしまいながらゆっくりと床面に降り立つ。
「この世界も、自分の夢も守るよ。……だから、君は眠っているといい」
リオネルは静かに瞑目し、そして短く息を吐き出した。
『――ああああああああああああああああああああああああああ!』
その時である。
鏡の迷宮の中に、濁った悲鳴が響き渡った。
『おのれ……おのれ猟兵ども!おのれ……この、わたしの……わたしの鏡迷宮を……おおおおおおおおおおおッ!!」
それは――この迷宮を構成していたオブリビオンフォーミュラ、オウガ・オリジンの断末魔である。
発生させた複製体たちが撃退されたことで彼女自身へとダメージが返り、そして、その許容量が限界を超えたのだ。
かくして、鏡の迷宮は崩壊を始める。
これで、オウガ・オリジンにひとつの死が刻まれたのである。
猟兵たちは崩れ落ちる鏡の迷宮を見下ろしてから、次なる戦いに向かうべくグリモアベースへと帰投するのであった。
成功
🔵🔵🔴