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夏の終わりにまた会いましょう

#UDCアース #感染型UDC #宿敵撃破

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#UDCアース
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#感染型UDC
#宿敵撃破


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●過去に繋がる鉄塔
 カナカナ、カナカナ。
 ヒグレオシミの鳴き声が聞こえる、夏の終わりの夕暮れ。
 田んぼ道の外れにぽつんと立っている鉄塔の下で、私と親友の遥は並んで立っていた。

「じゃあ、かけるよ」
 私はスマートフォンを取り出し、アドレス帳を呼び出す。
 かける先は忘れもしない「あの子」の番号だ。
 トゥルルル。トゥルルル。
 電子音が鳴る。
 本来なら、もう決して繋がるはずのない番号。
 私達は息を飲み、電話が「かみさま」に繋がるのを待った。
『もしもし。御用件はなんでしょうか?』
「!」
 聞き覚えのない少女の声がスピーカーから流れ、私は思わず携帯を取り落としそうになった。
 この声の主が「かみさま」だろうか?
「繋がった……! 友梨香! は、早く願いを言え!」
 遥の声で私は我に帰った私は、震える声で要件を告げる。
「ま、舞に会わせて下さい……! 2ヶ月前に亡くなったあの子に……!」
 私が願いを口にすると、電話がぶつりと切れた。
 数秒後。
 ボウ……ボウ……。
 紫色に光る蝶が集まり、水色のリボンを腕に巻いた少女が目の前に現れた。
 私達と同じぐらいの年だろうか。この子が、神様……!
「あなたたちも、大切な人を亡くしたのね。でも、ダメなの。過去には戻れないんだよ?」
 しかし、少女は寂しそうに言った。
 バサバサ。バサバサ。
 鉄塔の上にいつの間にか集まっていた『鳥』たちが羽音を立てて舞い降りてきて――。
「一緒に逝こう? わたしが、連れて行ってあげる」
「「ユリカチャン、ハルカチャン、マタアエテウレシイワ」」
 舞の声で話す不気味な鳥と目が合った私達は、悲鳴を上げて逃げ出したのだった。

●グリモアベース
「過去に戻ってやり直したい。もう会えないはずの人に、一目でいいからもう一度会いたい。そんな風に思ったことはないか?」
 青白い顔をした少女、守田緋姫子はグリモアベースに集まった猟兵達に尋ねた。
「不躾な質問だったな。では本題に入ろう。UDCアースの中学生の間で、『過去に戻り、失敗をやり直すことができる儀式がある』。『死者と再会することができる鉄塔がある』。そんな噂が流行っているようだ。
 よくある都市伝説だが……厄介なことに、この『過去に繋がる鉄塔』の噂は半ば真実になりかかっている。『感染型UDC』を召喚する儀式としてな」
 感染型UDC。
 それは、それを見た人間、それを噂話やSNSで広めた人間、その広まった噂を知った人間などの「精神エネルギー」を餌として成長、眷属を産み出すタイプのUDC(オブリビオン)だ。
「出現したUDCはわざと目撃者を逃がした。第一発見者たちに自分の噂を広めさせるつもりなのだろう。
 UDCアースは通信技術が発達した世界だ。放置すればあっという間に世界中がUDCだらけになってしまう。早急に対処が必要だ」
 今ならまだ間に合う。眷属を生み出している感染型UDCの本体――水色のリボンの少女さえ倒せば、都市伝説のエネルギーは霧散し、眷属達も消滅させることができる。
「残念ながら、感染源のUDCが根城にしている場所は予知ではよく分からなかった。どこかの鉄塔というのは分かっているのだが……。
 そこで、第一発見者の中学生ニ人組を保護して、場所を聞いてほしい。
 彼女達は眷属である邪神の使いたちに追い立ててられているから、まずは眷属達を始末する必要があるだろう」
 第一発見者の少女達はすでに「感染」している。UDCパンデミックを最小限に食い止める為には、どのみち保護は必須だ。
「第一発見者達を保護した後は、感染型UDCの出現した場所に向かってくれ。鉄塔はUDCの影響で何か怪奇現象が発生するかもしれないから、気をつけてな」
 緋姫子はぺこりと頭を下げ、グリモアを輝かせた。


大熊猫
 こんにちは。大熊猫です。今回は二本目のUDCアース依頼となります。第一発見者の少女達を保護し、都市伝説が広まり切る前に感染型UDCを撃破しましょう。

●章構成
 一章 第一発見者の少女達を保護しつつ、感染型UDCが生み出した眷属たちを殲滅しましょう。
 地形:人通りの少ない田んぼ道。

 二章 鉄塔に潜むUDCが死者の幻影を呼び出したり、過去の失敗の幻影を見せたりして猟兵に精神攻撃を仕掛けてきます。幻に対処しましょう。
 ※フラグメントの選択肢は指針程度に。

 三章 感染型UDCとのボス戦です。

●プレイングボーナス(二章のみ)
 UDCの見せる過去、または故人の幻を乗り越える。

●文字数省略用記号
 アドリブ歓迎→☆、連携歓迎→★、何でも歓迎→◎(☆★と同じ)、ソロ描写希望→▲。

●合わせプレイングについて
 グループ参加の場合は、迷子防止の為プレイング冒頭にグループ名をご記載下さい。3名以上の場合はどなたか合計人数をご記載頂けると助かります。

●プレイング受付
 OP公開~システム的に締め切るまで。
 ※各章に状況補足の為の断章を追記いたします。

 以上です。皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:yuga

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●逃避行
「話が違うじゃんか! なんであんなバケモノが出てくるんだよ!」
「あたしだって分かんないよ!」
 友梨香と遥は人通りの少ない畦道を全力で走っていた。
「ユリカチャン、ハルカチャン、ドウシテニゲルノニゲルノ?」
 執拗に二人を追いかけてくる鳥の化け物達は明らかにこの世の存在ではなかった。
 なぜこんなことになったのかは分からないが、今はとにかく逃げるしかない。
「うるせー! 舞の声でしゃべるんじゃねえ! バケモノ!」
 気丈にも友梨香は怪鳥に向かって抗議の叫びを上げたがーー。
 ギッギッギッギッギ。
 化け物たちが笑い声を上げたかと思うと、二人の逃げ道を塞ぐようにさらに大量の怪鳥が集まってきた。
「嘘、だろ......?」
 邪神の使いたちが合唱する。
「「フタリトモ、ツレテイッテアゲル」」
蛇塚・レモン

技能適宜活用

最初からクライマックスだよっ!(UC発動)
2人とも、耳を塞いで伏せてっ!

金色の巫女が上空から飛来しエントリー
不意を突いた先制攻撃、右手の蛇腹剣を横薙ぎにブン回す!
ライムの魂魄が宿った刃は炎の衝撃波の弾幕を放つ
のどかな田園に爆音が轟き、翼怪共を爆撃、焼却、恐怖を刻む!

左手の矛先神楽鈴が不動の呪詛の音色を響かせる
すると翼怪共の身動きを封じ、その恐怖と狂気の声を掻き消す!

少女2人を庇うように上空から降り立つ
あたいは通りすがりの猟兵!
あいつらは噂で人間を誘き寄せて殺す、世界の敵だよっ!
2人は噂に騙されたんだよっ!

オーラ防御で2人を守りつつ逃走
全方位に武器を振るい、敵を衝撃波で吹き飛ばす!



●舞い降りた巫女
「もうダメ、食べられちゃう……」
 怪物に囲まれた二人の表情が絶望に染まったその時。
「最初からクライマックスだよっ! 二人とも、耳を塞いで伏せてっ!」
 眩い輝きと共に、空から元気な女性の声が降ってきた。
 二人が空を見上げた先には、鞭のようにしなる長い蛇腹剣を振り上げた黄金の巫女、蛇塚・レモンの姿があった!
 ブォンブォンブォン!
 レモンは空から二人に向かって落下しながら、蛇腹剣クサナギをぶんぶん振り回しす。
 豪快に剣を振り回しているようでいて、その動きはどこか優美な神楽の剣舞を想起させた。
 ジャララララララッ!
 蛇腹剣の刃が擦れる音が響く。
 レモンが剣を振るうたび、激情の炎蛇神たる妹ライムの魂魄を宿したレモンの刃から、炎の衝撃波の嵐が乱れ飛ぶ!
「友梨香ッ!」
 危険を察知し、咄嗟に親友を引きずり倒す遥。
 ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン!
 その直後、のどかな田園に爆音が轟いた。
「ギィエエエエ~!」
 爆撃を受けた怪物達は、友梨香と遥のかつての親友とは似ても似つかぬ悍ましい声を上げ、消滅していった。
 先制攻撃で空に群がっていた怪物達の数体を葬ったレモンは、二人の前にシュタッと着地した。
「あたいは通りすがりの猟兵! あいつらは『嘲笑う翼怪』。噂で人間を誘き寄せて殺す、世界の敵だよっ! 二人は噂に騙されたんだよっ!」
「な、なんですって!?」
「なんだって!?」
 レモンの言葉に衝撃を受ける二人。だが、今はショックに打ちひしがれている場合ではない。
「とりあえずこの場を切り抜けるよっ! かかってこい、翼怪!」
 右手でヒュンヒュンとクサナギの刃を揺らしながら、レモンは敵と対峙した!
「タスケテ……! タベナイデ……! イヤダイヤダイヤダ!」
「ウワーン! ママ! ママァ――……!」
 レモンを敵と認識した翼怪たちは不気味な声で大合唱を始めた。
『断末魔模倣』。翼怪達がかつて喰らった子供たちの断末魔を模倣し、恐怖を呼び起こす悍ましいユーベルコードである。
「やだ、何、この声……!」
「き、気持ち悪い……!」
 忌まわしき呪詛が、辺りに響く。
 猟兵であるレモンならばともかく、一般人である二人がこの呪詛に晒されれば精神崩壊すら起こしかねない。
「二人共、あたいの側にっ!」
 レモンは二人を抱き寄せると、二人をすっぽりと包むようにオーラの障壁を展開した。
 バチチチチッ!
 レモンの黄金の霊波動の障壁は翼怪達の呪詛を受け止め、内側の三人の身を守り切った!
「今度はこっちの番だよっ!」
 呪いを扱えるのは邪神の使いだけではない。呪詛には呪詛で対抗する……!
 シャンシャンシャンシャン。
 再びレモンが神楽を舞う。
 レモンの左手に握られた矛先神楽鈴が不動の呪詛の音色を響かせると、邪神の使いたちの忌まわしきユーベルコードが掻き消され、逆に翼怪達の動きが封じられていく!
「ギィイイイイイイ!?」
「今だっ!」
 すかさずレモンは全方位に刃を振るう。クサナギから矢の雨の如く放たれた激情の炎は、三人を囲んでいた翼怪達をまとめて吹き飛ばした!
「ギィァヤァアアアアアア!」
 これで第一波はあらかた始末したが、ゆらゆらと周囲の空間が揺らいでいることにレモンは気づいた。
 UDCの顕現はまだ終わっていないようだ。
「一旦ここから離れるよっ! あたいについてきて!」
 レモンは二人と共に駆け出した。
 都市伝説と二人の恐怖によって生まれた精神エネルギーが霧散するまでの間、翼怪達は何度でも召喚される。
 猟兵達の戦いは、まだ始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

外邨・蛍嘉


さて、厄介な奴らだね。でも、若い子たちが命散らして良いはずもなし。
外邨家と呪詛は切っても切り離せない。だからこそ、私とクルワはここにいるんだ。
UC発動。さあ、おいでクルワ!

私は藤色蛇の目傘、クルワは妖刀を武器にする。
二人を守るために『藤流し』を地面に刺して、地形も利用した簡易的な結界も張っておこうかね。

「ケイカ。息を合わせマス」
もちろんさ、クルワ。久々に暴れるんだろう?
「モチロン。守るためにも全力デス」
…クルワって、『鬼』にしては守る方にいくよね。助かるんだけどさ。
まあ、十五からの付き合いだ。息を合わせるのはお手のもの!

※クルワは髪が水みたいになっています。



●闇の末裔
 バサバサ。バサバサ。
 不吉な鳥の群れが、夕闇の中から滲み出る。茜色の空が、急速に昏くなっていく。
 もっと、もっと恐怖が必要だ。
 あの贄たちをもっと追い立てて恐怖を伝播させなければ、器の少女は邪神として完成しない。
「ニガサナイ」
 騙された少女達の恐怖を喰らって新たに召喚された嘲笑う翼怪たちは、猟兵に連れられて逃亡した少女達を追おうと闇色の翼を広げて飛び立った。だが――。
「ギィッ!?」
 翼怪たちは空中で見えない壁のような何かに阻まれ、それ以上進めなかった。
 これは結界だ。誰かが、翼怪たちを足止めするべくこの地に封印を施している――。
「ここは通さないよ」
 怪物達を制止したのは年配の女性だった。藤色の蛇の目傘を差し、雪の結晶の模様をあしらった着物に身を包んだその女性の佇まいは、茶道教室にでも迷い込んだのかと思われるほどの優雅さを湛えていた。
 だが、その腰には一振りの刀が携えられている。それは彼女が紛れもなく戦いに生きる者であることを示していた。
 彼女の名は外邨・蛍嘉。滅びた忍の一族の末裔である。
「さて、厄介な奴らだね。でも、若い子たちが命散らして良いはずもなし」
 翼怪たちを閉じ込めている結界も彼女の仕業だ。
 蛍嘉は碁盤の目のように整えられた畦道の四方に棒手裏剣で基点を作り、立方体状の結界を作り出している。
 悠長に儀式をする暇はなかったから極めて簡素なものだが、4、5分ならば保つだろう。それだけあれば、蛍嘉がこの場の翼怪たちを殲滅するには十分だ。
「外邨家と呪詛は切っても切り離せない。だからこそ、私とクルワはここにいるんだ」
 蛍嘉がひゅんと蛇の目傘を振ると、傘は刀へと姿を変えた。
「さあ、おいでクルワ!」
 蛍嘉が叫んで腰に差していた妖刀を宙へと放ると、彼女の内からずるりと人影が飛び出し、刀を掴んで着地した。
「ケイカ。息を合わせマス」
 もう一人の蛍嘉は妖刀を鞘から抜きながら、蛍嘉へと語りかけた。
 もう一人の蛍嘉の名は、正しくは『クルワ』という。
 その身は人であるはずもなく、水のように流体化した髪を持つ『雨剣鬼』である。
 ――蛍嘉に宿る血筋には忍以外にもう一つの顔がある。
 外邨とは、その魂の中に鬼を封じる一族なのだ。
「もちろんさ、クルワ。久々に暴れるんだろう?」
 蛍嘉は傘が転じた刀を構え、クルワへと笑いかけた。
「モチロン。守るためにも全力デス」
「……クルワって、『鬼』にしては守る方にいくよね。助かるんだけどさ」
 普通、鬼というのは血も涙もないものなのでは?
 クルワが逃げた中学生二人の身を案じていることに蛍嘉は苦笑した。

「ジャマを、スルな!」
 翼怪たちは二人に向かって弾丸の如き速さで一斉に飛び掛かってきた。
 ドドドドドドドドッ!
 邪神の加護を受け、闇の塊となった翼怪たちの動きを捉えることは常人はもちろん、UDC組織の戦闘員ですら困難だろう。この数の翼怪たちに襲われては、人の身など鉤爪と嘴に引き裂かれて果てるのが必定である。
 ザシュッ!
 しかし、真っ二つに断ち割られたのは翼怪たちの方であった。
 蛍嘉とクルワは只人ならざる猟兵。
 その戦闘力は邪神の使い魔など遥かに凌駕する!
 蛍嘉とクルワは一瞬目を合わせると、闇を纏うUDCの群れの中へ躊躇なく飛びこんだ。
「ギィイイイイイッ!?」
 闇の中で幾重にも剣閃が走る。その度に切り裂かれた翼怪の体が虚空に溶け、結界の内に充満していた闇が少しずつ晴れていく。
「まあ、十五からの付き合いだ。息を合わせるのはお手のもの!」
 魂で繋がった二人は互いに背中を庇い、翼怪たちを次々と切り伏せていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅葱・シアラ
フェルト(f01031)と共に
感染型UDC……彼女の正体は、まさか……
確かめなきゃ……私が、やるべきだから……
フェルト、力を貸してください!

会いたい想いを踏みにじる都市伝説
これを、彼女が産み出したの……?
発見者の女の子を助けて、この怪異を滅しましょう!
私達は……世界を救う猟兵、会いたい想いは決して踏みにじらせない!

私が前に出て牽制、殲滅します!
フェルトは発見者の女の子の保護と、援護を!
「エレメンタル・ファンタジア」発動!
【浄化の光属性】と【竜巻】を融合!

相手の子供の悲鳴すらもかき消す浄化の竜巻!
嘲笑う怪異すら地に伏せ、その光で浄化を!
【高速詠唱】にて何より早く、何度も発動!
姫には近付かせない!


フェルト・フィルファーデン
◎シア様(f04820)と

シア様、落ち着いて。まだ確定したわけじゃ……
そうね、今はこの子達を助けましょう。そのためにも、アナタ達には消えてもらうわ!

シア様、前に出るのはいいけれど、無茶しないでね?
ええ、任せて。わたしは少女達の保護を最優先に、シア様を援護しましょう。この子達も、シア様にも傷一つ付けさせはしない……!

UC発動。さあ、眠りに落ちて。わたしの思うがままに動きなさい。あとは、同士討ちさせて数を確実に減らしていく。
少女達やシア様、わたしを狙うならその身を盾にして【庇わせる。必要なら騎士人形の盾も使い守るわ。
用が済んだらシア様の竜巻に巻き込ませましょう。

(水色の、リボン……まさかね。)



●妖精の騎士とお人形の妖精
 ギイギイ。ギイギイ。バササ。バササ。
 再び出現した翼怪たちに「ひっ」と一瞬怯えた声を上げた友梨香は遥と身を寄せ合った。
 すでに最初のUDCの発生地点からはかなり遠ざかっているにも関わらず、翼怪たちは際限なく召喚されてくる。
 一度「感染」してしまった以上、もはや場所は関係ないのだろう。なんとか少女たちの恐怖によって生まれたエネルギーが散るまで翼怪たちを蹴散らし続けるしかない。
「ユリカチャン、ハルカチャン、イッショニイコウヨ。ワタシタチガアンナイシテアゲル!」
 その悍ましい姿にはふさわしくない可憐な声を上げながら、少女たちへと翼怪たちは飛び掛かる。
 しかし、一陣の風と共に二人の小さな猟兵がひらりと戦場に躍り出た。
 水色の髪と紫の翅を持つ妖精の騎士、浅葱・シアラとプラチナブロンドの髪と金の翅を持つ妖精の姫フェルト・フィルファーデン。二人は人形のように小さな体と美しき翅を持つフェアリーだった。
(うわあ、妖精さんだー!)
 中学生たちは密かにリアル妖精の姿に感動していたのだが、当の妖精たちには残念ながらファンサービスをする余裕などなかった。
 彼女たちには、戦いと同等、あるいはそれ以上に重要な用事があったのだ。
「感染型UDC……彼女の正体は、まさか……確かめなきゃ……私が、やるべきだから……フェルト、力を貸してください!」
 シアラには確かめなければならないことがある。
 それは、グリモアベースで聞いた、都市伝説の核となる感染型UDCの姿だ。
 腕に水色のリボンを付けた、中学生ぐらいの歳頃の日本人の少女。
 その特徴は、シアラが夢にうなされるほど気にしていた、ある少女の姿を思い起こさせるのである。
「会いたい想いを踏みにじる都市伝説……これを、彼女が産み出したの……?」
「シア様、落ち着いて。まだ確定したわけじゃ……」
 フェルトは焦燥に駆られるシアラをなだめた。
(でもやっぱり、冷静ではいられないわよね)
 フェルトはシアラの様子が気になって気になってついてきたのだ。シアラが冷静になれないのならば、自分がこの子をフォローしてあげなければ。
「フェルト、私は大丈夫です。あの女の子を助けて、この怪異を滅しましょう! 私達は……世界を救う猟兵、会いたい想いは決して踏みにじらせない!」
「そうね、今はこの子達を助けましょう。そのためにも、アナタ達には消えてもらうわ!」
 あれこれ考えるのは後だ。まずは少女達を守る為に目の前の化け物たちを倒さなくては。
「私が前に出て牽制、殲滅します! フェルトは発見者の女の子の保護と、援護を!」
 勇ましくフェルトに呼びかけ、シアラはどんどんと前に出ていく。
「ええ、任せて。わたしは少女達の保護を最優先に、シア様を援護しましょう。この子達も、シア様にも傷一つ付けさせはしない……!」
(やっぱり、今日のシア様は変だわ)
 普段ならフェアリーの天敵(少なくともフェルトとシアラはそう思っている)であるカラスに似たUDCに対してもちょっとぐらい怯えた様子を見せるだろうに、その様子がまるでないのだ。
 それはまるで、戦いに没頭することで不安を忘れようとしているようで――。
「エレメンタル・ファンタジア!」
 白く光り輝く竜巻が、翼怪たちへと襲い掛かる。シアラが放った魔法は光属性と竜巻を融合した「浄化の竜巻」だ。
 高速詠唱の達人たるシアラは、制御は困難とされるエレメンタル・ファンタジアの奔流を無詠唱でいともたやすく操っていた。
「ギィアアアアアアアア!」
 その速さと輝きの前に、翼怪たちは反撃する暇もなく、光に呑まれて消えていった。その悍ましい断末魔の叫びのユーベルコードも、轟轟と唸る竜巻の前にはかき消されるのみだ。
「さあ、眠りに落ちて。わたしの思うがままに動きなさい」
 自信の不安は押し隠しつつ、微笑みながらフェルトもユーベルコードを解き放ち、電脳ウイルスを周囲に散布していく。
 ぎゅるん。
 フェルトのウイルスに侵された翼怪たちは首をねじり、向きを変えて同胞に向かって襲い掛かった。フェルトのウイルスに意識を掌握された翼怪たちは同士討ちを始めたのだ。
「姫には近付かせない!」
 ゴオオオオオオオ!
 そうしている間にも、シアラは浄化の竜巻を連続発動し、翼怪たちをまとめて光の渦に巻き込んで消し飛ばしていく。
 数分後、あらかたの翼怪たちを退治したフェルトは用が済んだ翼怪たちもシアラの竜巻に自ら飛びこませて始末した。これで一段落だ。
 二人は顔を見合わせて安堵の溜息をつく。幸いなことに二人も、中学生たちも無傷だ。
「すごい! 『リョウヘイ』ってのは妖精もいるんだな! フィギアみてー!」
「可愛い! 妖精さんたち、お名前聞かせて!」
 怪異の群れが全滅すると、すぐに中学生たちが二人の元に駆け付けてきた。
「ありがとう。でも油断しないで」
「またすぐに次が来るよ」
 二人は友梨香と遥に警告しつつ、警戒を続ける。
(水色の、リボン……まさかね)
 守りたかったものは全て守れたはずなのに、フェルトの胸の内で不安はどんどんと膨らんでいったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御園・桜花


「貴方達はその声をお持ちだった方の、何方でもないでしょうに」

UC「桜吹雪」
全敵を切り刻む
敵の攻撃は第六感や見切りで直撃回避
呪詛・狂気耐性で凌ぐ

戦闘後は友梨香と遥慰め今までの犠牲者と舞、翼怪のために鎮魂歌歌う
「貴女達は、お友達に会いたかったのでしょうか」
「あれは貴方達のお友達…舞さんではありません。それを騙った怪です。だから…貴女達は、舞さんのことを、忘れないであげて下さいね」
「舞さんは貴女達と、もう一緒にご飯を食べたりショッピングは出来ないけれど。貴女達の夢の中、想いの中で、何度でも会うことが出来るはずです。あの怪を怖がって、舞さんのことを忘れたら…彼女は2度も死ぬことになってしまうから」


日輪・黒玉


鳥ですか
あまり狩った経験はありませんが……誇り高き人狼に狩れぬ獣などおりません

……その耳触りな声は不快です
なにより、緋姫子さんの予知された事件で犠牲がでるというのも気分が悪い
故に……黒玉は貴様ら如きに負けたりはしません

人通りは少なく、敵の数は多い
ならば遠慮することはありません
呼び出した残像と共に敵の群れ目掛けて【ダッシュ】
物理的な攻撃は【ジャンプ】や【スライディング】で避けつつ、群れへと飛び込んだら敵を【踏み付け】で踏み台にして縦横無尽に駆け回りながら、一気に仕留めていきましょう


鉛・鐵斗

●心情
噂はこえーな。
感染型だかなんだか知らねーけど、他人の後悔や想いを悪用するとか、どんだけ悪趣味なんだよ。

●行動:SPD
保護を優先すんぜ!
戒鎖を被害者の周囲に出現させ、防護&退路を拓く!

あの子らには鎖の外側に出ねーように走ってもらいてぇな。
出たら守りきれねーからな!

んで、同時に【戒鎖の呪縛】を発動させる。それで強化も削げると思う。
俺自身は退路に侵入しようとする敵さんを傘でぶん殴っとく。

逢魔が時は俺らの時間だ。気を付けて帰んな!



●想い出の中で
「ハルカチャン、ユリカチャン、イッショニイコウヨ」
「ナンデニゲルノ?」
「ツレテイッテアゲル」
 バサバサ。バサバサ。逃げた少女達を追い、嘲笑う翼怪たちが集まってくる。これまでよりも数が多い。恐らくは、残りの精神エネルギーを全て費やして最後の勝負に出たのだろう。
「貴方達はその声をお持ちだった方の、何方でもないでしょうに」
 桜の精、御園・桜花は少女達を庇うように翼怪たちの前に立った。
「噂はこえーな。感染型だかなんだか知らねーけど、他人の後悔や想いを悪用するとか、どんだけ悪趣味なんだよ」
 桜花の隣に立つ、学生服を着た青年の名は鉛・鐵斗。歳の頃は友梨香や遥より少し上ぐらいだろうか。見た目は人間そっくりであるが、彼も人の理から外れた「幽霊」である。
「鳥ですか。あまり狩った経験はありませんが……誇り高き人狼に狩れぬ獣などおりません」
 重心を低くし、翼怪たちを睨み付ける人狼族の少女、日輪・黒玉。
 三人の猟兵たちはUDCに引導を渡すべく並び立った。
「ジャマシナイデ! ドイテ!」
「ワタシタチハ、トモダチナノヨ!」
「……その耳触りな声は不快です。なにより、緋姫子さんの予知された事件で犠牲がでるというのも気分が悪い。故に……黒玉は貴様ら如きに負けたりはしません」
 黒玉の身が深く沈みこみ、爆発するような勢いで翼怪たちへと迫る。
 表情はいつもの仏頂面のままであるが、その胸中にはいつも以上にやる気がみなぎっていた。
「ギィ! ギィ!」
「ヤツザキ! ヤツザキ!」
 ニタリと大きな口に笑みを浮かべ、一斉に黒玉へと襲い掛かる翼怪たち。
 邪神の加護を受け、闇のオーラに包まれた翼怪たちは一瞬にして黒玉を取り囲み、前後左右から逃げ場のない集中攻撃を仕掛けた。
 しかし、翼怪たちの攻撃は空しく空を切る。
 翼怪たちが攻撃を仕掛けたのは、黒玉の残像だったのだ。
「本性を現しましたね」
 ドカッ!
 呆れたように呟きながら、黒玉は手近な位置にいた翼怪にスピードの乗った蹴りをお見舞いした。
 シュバッ!
 さらに、黒玉は左右に激しく動いて多数の残像と共に翼怪たちに突撃を仕掛ける。
 ドカカカカカッ!
 スライディングで群れの攻撃をかいくぐった黒玉は、翼怪を踏み台にしながら、四肢をフルに使って翼怪たちを撃墜し、疾風の如き勢いで徐々に空へと駆け上がっていく。
「すげー……バトルマンガみてー」
 空を縦横無尽に駆ける黒玉に感激したのか、呆然と呟く遥。
「おい、見惚れている場合じゃないぞ、こっちだ!」
 中学生たちに駆け寄った鐵斗は避難を促し、翼怪たちから離れた場所に移動させた。すかさず無数の鎖を具現化し、二人の周囲に鎖でバリケードを作り上げる。
「ここから動くなよ! 出たら守りきれねーからな!」
「「はいっ!」」
 元気よく返事をした二人の声が微妙にうわずっているのは、鐵斗が彼女達より少し年上の美丈夫であることと無関係ではないだろう。
 二人の安全を確保した鐵斗は、戒めの鎖に呪いを込め、攻撃命令を下した。
 ジャララララララッ!
 凄まじい速度で放たれた百を超える数の鎖が翼怪たちを打ち据える。
「ギィいいいい!」
 蛇のようにうねる鎖は翼怪たちの翼を貫き、身を縛り上げ、次々と自由を奪っていく。
「ほころび届け、桜よ桜」
 桜花の声が戦場に響き、桜吹雪が舞う。
 全てを切り刻む美しき花びらの刃は、鐵斗の鎖に自由を奪われた翼怪たちを紙のように引き裂き、骸の海へと還していった。
「キィアアアアアアアア!」
 最後の一体にまで追い込まれた翼怪は、せめて一人だけでも道連れにしようと思ったのか、けたたましい叫びと共に中学生たちの方へと突っ込んだ!
「そちらに行きました!」
 鐵斗に声をかける桜花。
「通すかよ!」
 翼怪の射線に入った鐵斗は傘を叩きつけ、翼怪を叩き墜とした。
「ふう」
 最後の一体が葬られた時、ようやく二人の周囲に溜まっていた精神エネルギーは枯渇し、翼怪の召喚は収まったのだった。

「―――♪―――♪」
 切なげなメロディーが夕暮れの畦道に響いている。
 戦闘が終わった後、桜花は鎮魂歌を歌っていた。
 翼怪の犠牲者や中学生たちが呼ぼうとしていた舞という名の少女、そして自ら葬った翼怪たちの為だ。
「逢魔が時は俺らの時間だ。気を付けて帰んな!」
 鐵斗が二人を送り出した後、少し歩いてから振り向いた遥がこう口にした。
「あの鳥……やっぱり舞のニセモノですよね?」
 直感で翼怪たちは舞の偽物と看破していた彼女だったが、やはり気にはなっていたのだろう。
「あれは貴方達のお友達……舞さんではありません。それを騙った怪です。だから……貴女達は、舞さんのことを、忘れないであげて下さいね」
 少女の問いに桜花が答えた。
 そう、あれは故人本人ではない。
『嘲笑う翼怪』はUDCに殺された犠牲者……特に子供の声を真似るだけの怪物だ。
「貴女達は、お友達に会いたかったのでしょうか」
 桜花は静かに少女達へと聞き返した。
「はい。舞は二か月前に私達の前からいなくなったんです……せめて一言、お別れを言いたくて……」
 そこまで言って、友梨香は顔を伏せた。
 桜花は穏やかに二人を諭す。
「舞さんは貴女達と、もう一緒にご飯を食べたりショッピングは出来ないけれど。貴女達の夢の中、想いの中で、何度でも会うことが出来るはずです。あの怪を怖がって、舞さんのことを忘れたら……彼女は二度も死ぬことになってしまうから」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『逢魔ヶ時でまちあわせしましょう』

POW   :    大切な人の名前を叫び、誰が来るか周囲を見渡す

SPD   :    素早く何度も繰り返して名前を呟き、罠へ誘き寄せる

WIZ   :    想いを込めて大切な人の名前を告げ、気配を探る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●過去に繋がる鉄塔
 猟兵たちは第一発見者の少女たちを見送った後、都市伝説の舞台となっている『過去に繋がる鉄塔』へと向かった。
 猟兵たちは鉄塔に近づいた途端、強烈な違和感を感じた。
 夕闇の中から滲み出るように、過去の幻が猟兵たちを包んだ......。
外邨・蛍嘉

過去:故郷が滅んだ8/25

…ああ、そうだよ。私もとっくの昔に死んでるんだ。突然現れたオブリビオンに、腹を食われてね。傷跡、残ってるよ。
…何年そのまま漂ったのかは、わからないけど。
その過去はもう変えられない。受け入れるしかないんだよ!

というか、クルワ。悪霊になる前に、別に逃げてもよかったんだよ?
「それはできかねマス、ケイカ。アナタの兄との約束『ケイカを守る』の反古になるのデス」
律儀だね…。というか、そんな約束してたんだ。
「私が儀式の時、選ばなかった方の望みを聞いただけデス。…これでも一度、破ってることになりマス」
ああ、なるほど…。
「だから、今度こそ、守り通しマス。世界と共に」



●8月25日
 鉄塔にいたはずの蛍嘉は、気が付くとどこか別の場所に立っていた。
「これは……」
 見覚えのある光景、なんて生易しいものではない。
 それは、忘れもしない運命の日。
『故郷が滅ぼされ、蛍嘉がオブリビオンに殺された時の夏の日』の惨劇が蛍嘉の目の前で繰り広げられていた。
 故郷が滅びた時、自分は奇跡的に生き残った、ではない。
 蛍嘉もあの日、確かにオブリビオンに命を奪われたのだ。
「――――――」
 一言も声を発さず、蛍嘉は滅びていく故郷を、殺されていく一族の姿を見つめている。
 今ここにいる自身の身もすでに滅びたはずのものであることを強く意識したせいか、いつの間にか蛍嘉の体は半透明になっていた。
 グチャグチャ。ベチャベチャ。
 怨敵に腹部を貫かれ、はらわたを喰われているかつての自分の姿を遠くから黙って見ていると、いたたまれなくなったのかクルワが心配そうに声をかけてきた。
「ケイカ…………」
 蛍嘉は大丈夫、と首を縦に振り、口を開いた。
「……ああ、そうだよ。私もとっくの昔に死んでるんだ。突然現れたオブリビオンに、腹を食われてね。傷跡、残ってるよ」
 
 外邨家の最後の当主は双子だった。オブリビオンに滅ぼされ、一族と共に消えるはずだった当代の双子の妹は、何の因果か、消えゆく定めも、自らオブリビオンとなる運命も逃れ、無念の抱いたままこの世を彷徨う霊魂となったのだ。
 自らの魂に封じていた鬼、クルワと共に……。

 ――さあ、過去を変えましょう。強く願えば、故郷を救える。貴女も人間に戻れるのよ。
 どこからか、少女の声が聞こえた。

 しかし、蛍嘉は瞳を閉じて静かに首を左右に振る。
「……何年そのまま漂ったのかは、わからないけど。その過去はもう変えられない。受け入れるしかないんだよ!」
「悪霊・外邨・蛍嘉」。蛍嘉はその肩書を背負い、猟兵として生きていく。無惨な過去を見せつけられても、そのことに迷いは無い。
 過去は変えられない。蛍嘉がハッキリと誘惑を否定すると、少女の声はそれっきり聞こえなくなった。
「というか、クルワ。悪霊になる前に、別に逃げてもよかったんだよ?」
「それはできかねマス、ケイカ。アナタの兄との約束『ケイカを守る』の反古になるのデス」
「律儀だね……。というか、そんな約束してたんだ」
 クルワの言葉に蛍嘉は目を丸くした。
 最後の当主であった兄がそんな約束をクルワと交わしていたとは初耳だ。
「私が儀式の時、選ばなかった方の望みを聞いただけデス。……これでも一度、破ってることになりマス」
(ああ、なるほど……)
 確かに、自分は一度殺されている。自分を守る約束をした者としては、致命的な契約違反だ。
 クルワはそれをずっと、気に病んでいたのか。
「だから、今度こそ、守り通しマス。世界と共に」
「生真面目な鬼もいたものだね……。まるで騎士様だよ」
 ならば、この相棒の想いに応え、世界を守る仕事を続けるとしよう。
「その為には、さっさとここを出ないとね!」
 蛍嘉は気合と共に妖刀を一閃し、幻の世界を切り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鉛・鐵斗
☆▲
●幻
ここ、さっきの鉄塔じゃねぇな
足場と鉄柵だけの簡素な展望台……俺が死んだ廃鉄塔?
そこに居るのは俺と……

「チカ」

……親友の『チカラ』。男だけど細っこくて、いつも俺の後ろをくっついて歩いてた。

もう一人、誰かいる。ソイツは展望台を降りようとするチカに、金属バットを振りかぶる。
あぁ、思い出した。あの日俺はチカを逃がそうと庇って、頭を殴られて落とされたんだ。

●行動:再演
今は力がある。
アイツを殺せば俺は死なない。またいつかチカと馬鹿やって笑いあえる日が来るんだろう。けど、幻は幻。
「これが現実だ」
俺はまた落ちるぜ。
今は空中浮遊できるし、俺が落ちた後、本物のチカがどうなったか思い出さなきゃいけねぇから。



●バースデイ
「ここ、さっきの鉄塔じゃねぇな」
 いつの間にか鉄塔の上に立っていた鐵斗は周囲を見渡しながら呟いた。
 さっきまで自分が見上げていた送電用の鉄塔とは明らかに形が違う。これはまるで……。
「足場と鉄柵だけの簡素な展望台……俺が死んだ廃鉄塔?」
 空も暗くなっている。茜色だった空は闇に染まり、ざあざあと雨が降っていた。
 思わず持っていた傘を差そうとすると、ふいに後ろから名を呼ばれた。
 鐵斗が驚いて振り向くと、そこにいたのは……。
「チカ」
 鐵斗は少年の名を呼んだ。
(……親友の『チカラ』。男だけど細っこくて、いつも俺の後ろをくっついて歩いてた)
 少しずつ、生前の記憶が輪郭を取り戻していく。
 自分が死んだのは確か自分の誕生日。そして、自分が鉄塔から落ちたのは――。
「――――」
「――――」
 鐵斗は他愛のない話をしている懐かしき親友の声を聞きながら、辺りの気配を探る。
 もう一人、誰かいる。ソイツは展望台を降りようとするチカに、金属バットを振りかぶろうとしていた。

 あぁ、思い出した。あの日俺はチカを逃がそうと庇って、頭を殴られて落とされたんだ。
 そして死んでしまい、いつの間にか幽霊になっていた。
 ――さあ、過去を変えましょう。そうすれば、貴方の後悔も消える。
 また、親友と一緒に楽しい時間を過ごせるのよ。
 どこからか、そんな声が聞こえた。
 そう、俺には一つの後悔がある。それは親友を置いていってしまったことだ。
 あの時はただの高校生だったけれど、今は力がある。
 金属バットをふりかぶっているアイツを今殺せば俺は死なない。
 またいつかチカと馬鹿やって笑いあえる日が来るんだろう。
 けど、幻は幻。これはUDCが見せる偽りの希望に過ぎない。
 ならば、俺が取るべき行動は決まっている。
 俺が選んだ行動は過去の「再演」。
 以前と同じように親友と襲撃者の間に割って入り、チカの代わりに金属バットを頭に喰らった。
「これが現実だ」

 そうして、鐵斗は再び鉄塔から滑り落ちた。
 救済を拒まれ、ソラがひび割れていく。
 壊れていく幻の世界を真っ逆さまに落下しながら、鐵斗は本物のチカがどうなったのかを必死に思い出そうとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日輪・黒玉


森の中、ですか。どこか見覚えがありますが……

家族と喧嘩し、家を飛び出した日
切っ掛けは些細なことだったち思う
ただ、今よりももっと子供だった自分にとっては、素直に非を認めるのは我慢なりませんでした

飛び出し、辿り着いた森の中で迷子になって、夜を迎えて……獣に襲われたのです
小さな子供だった私はただ逃げ惑うしかなく……ええ、とても弱かった
そう、これはただの過去
私はもうあの時ほど弱くはありませんし…………まぁ、己の非を認められる程度には成長しましたし、これからもっと大人として成長していくでしょう
このような幻に足踏みするつもりは毛頭ありません




そういえば、あの時は家族に助けられ、こっぴどく叱られましたね……



●過ちを乗り越えて
「森の中、ですか。どこか見覚えがありますが……」
 鉄塔に近づいた瞬間霧に包まれた黒玉は、気が付くと高い木々が立ち並ぶ森の中にいた。
 日は沈み、辺りはすっかり闇と静寂に包まれている。
「森の中に閉じ込めるユーベルコード……でしょうか」
 出口を探してうろうろしてみるが、いくら進んでも景色は変わらなかった。
 歩き疲れた黒玉は少し休憩しようと、手ごろな岩に腰かけた。
 その時、ふと自分の手に目をやった黒玉は自分の体に起きていた変化に気が付いた。
 やけに手が小さい……。まるで幼い子供のようだ。
「体が、縮んでる……?」
 この森の木が高かったのではない。自分の体の方が子供の頃に戻っていたから、木を高く感じたのだ。
「これは……」
 グルルルル……。
 その時、森の奥から、戦車ほどもあろうかという巨大な猪が姿を現した。
 その姿を見た私はハッとした。その巨大な獣には見覚えがあったのだ。
 この獣と出会ったのは確か――。

 ――パパもお兄ちゃんも大嫌い! 私、誇り高いから謝らない! これからは一人で生きていくんだから! さよなら!
 あれは、家族と喧嘩し、家を飛び出した日だ。
 切っ掛けは些細なことだったと思う。
 ただ、今よりももっと子供だった自分にとっては、素直に非を認めるのは我慢ならなかった。
 家を飛び出し、辿り着いた森の中で迷子になって、夜を迎えて……この猪に襲われたのだ。
「この異様なまでの大きさも……私の過去の恐怖の再現だからですか」
 いくら何でも、ここまで大きな猪ではなかったはずだ。サイズ感が適当なのは私のイメージを再現したものだからなのだろう。
「小さな子供だった私はただ逃げ惑うしかなく……ええ、とても弱かった」
 黒玉はしみじみと振り返りながら、構えを取る。
 その時、獣が唸り声を上げた。その四肢に力が籠り、猪は目にも止まらぬ速さで黒玉に突進してきた。
 巨大な体躯に加え、凄まじきスピード。かよわい少女であった頃の自分ならば、引き裂かれるは必定だ。
 しかし、これは過去の幻に過ぎない。
 黒玉は猪の動きを容易く見切り、月面宙返りで頭の上を飛び越えながら流星のような蹴りをお見舞いした。
「フゴォオオッ!」
 猪は地面に倒れ伏し、それきり動かなくなった。
「私はもうあの時ほど弱くはありませんし……まぁ、己の非を認められる程度には成長しましたし、これからもっと大人として成長していくでしょう。このような幻に足踏みするつもりは毛頭ありません」
 本来の姿を取り戻した誇り高き人狼の少女は、消えていく猪を見下ろしながら呟いた。
「そういえば、あの時は家族に助けられ、こっぴどく叱られましたね……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅葱・シアラ
フェルト(f01031)と共に

鉄塔へとやって来れば、気が付けば私は、過去の世界へと
そこは女の子の部屋
現代の一般女子中学生らしい部屋

そして私を呼ぶ声
「シアラ!もう、ボーッとして。
私の話聞いてた?」
彼女は親友の友華

栗色のポニーテールの彼女と遊んでる最中だった

思い出した私は、夢中になって時間も忘れて遊びました
これは過去……?

ううん、現実かもしれない

だって、現実に帰れば、今を見てしまえば、きっと分かってしまう
だって、彼女は……今目の前にいる親友は……!
「私が救えなかった」
気付いてしまったから

ここにいてしまおう、そう思ったとき、私を呼ぶ声

フェルト……。
そうですね、私が友華を助けなきゃ……
今、戻ります……


フェルト・フィルファーデン
◎シア様(f04820)と
(気付けばそこはかつての故郷。わたしの国。民が、騎士が、爺やに婆やがわたしを暖かく出迎える)

ふふっ……とっても懐かしい光景ね?今でも時々夢で見るわ。
――そして、敵の見せる幻でも。

虚構の剣よ。わたしに幻を断ち切る力を。
ええ、今は幻に構っているほど暇じゃないのよ!


急いでシア様の元へ。
どんな幻を見せられているのかわからないけれど……きっと声は届くはず!
お願い、思い出してシア様!あなたがこれまで戦ってきた理由を!あなたは強い人よ。世界を救う騎士なのだから!
だからお願い、幻なんかに負けないで!


大丈夫よ。たとえこの先、何が待ち受けていたとしても、わたしがあなたを、絶対に守るから。



●シアラと友華
 鉄塔へとやって来たはずの私は、気が付けば、過去の世界へとやってきていました。
 そこは、女の子の部屋。動物のぬいぐるみやファッション誌、勉強机などが置かれた現代の一般女子中学生らしい部屋です。
「シアラ! もう、ボーッとして。私の話聞いてた?」
 友人の声に、私は振り向きました。
 彼女は親友の「友華」。彼女は人間だから、フェアリーの私にとっては大きな友人です。
 栗色のポニーテールを揺らし、友華はぷくっとむくれています。
 そうだ、私は彼女と遊んでる最中でした。
「さあさあ、飛んで飛んで! 私が写真撮ってあげるから! はい、チーズ」
 友華はスマートフォンを構え、私に合図をしました。
「うん、綺麗に撮れてる! これ、待ち受けにしていい?」
 いいよ、と私は笑顔で返事をしました。
「今度は一緒に動画撮ろう? スタンド、買っといたんだ♪」
 彼女の携帯から流れるポップなミュージックに合わせて、私はふわふわと空で踊ります。
 友華も水色のリボンをたなびかせ、私と一緒に踊りました。
 私は、夢中になって、時間も忘れて友華と遊びました。

 しかし、心のどこかで、私が囁くのです。
 何か、私にはやらなければいけないことがあった、ような。
 世界を守る為に、これ以上犠牲者を出さない為に、『感染型UDC』を――。
「これは過去……?」
 私が今見ているのは、UDCの見せる幻なのでしょうか。
「ううん、現実かもしれない」
 私は心に鍵をかけて、友華と夢中で遊び続けます。
 だって、現実に帰れば、今を見てしまえば、きっと分かってしまう。
 だって、彼女は……今目の前にいる親友は……!
「シアラ。ずっとここにいてくれるよね? 私と一緒に……」
 微笑みを浮かべる友華の瞳はいつの間にか真っ赤に染まっていました。

●在りし日の故国
 いつの間にか、わたしはシア様とはぐれ、見覚えのある国にいた。
 気付けばそこはかつての故郷。わたしの国。民が、騎士が、爺やに婆やがわたしを暖かく出迎える。
 ――フェルト様、国一番の機織職人からお誕生日のお祝いが届いておりますよ。見たこともないほど素晴らしいドレスです!
 ――フェルト様。お茶の時間にいたしましょう。美味しい紅茶とふわふわのシフォンケーキを用意してございます。
 ――フェルト様。わたし、大きくなったら騎士になるの。騎士になって、姫様やこの国を守るの!
 ここは妖精の国。多くの人が笑っている、わたしの大切な故郷だ。
「ふふっ……とっても懐かしい光景ね? 今でも時々夢で見るわ。――そして、敵の見せる幻でも」
 そう、これは幻。わたしの国がまだあった頃の懐かしい思い出だ。
 でも今は――もう無いのだ。
「虚構の剣よ。わたしに幻を断ち切る力を。ええ、今は幻に構っているほど暇じゃないのよ!」
 わたしはあらゆる虚構を断ち切る虚ろの剣を抜いた。
 今は懐かしい記憶を彷徨っている場合ではない。
 わたしはシア様を――あの心優しい騎士を守らなければいけないのだ。
「……消えて」
 わたしが剣を一閃すると、幻の王国はガラスのような音を立てて崩れ去った。

●夢の終わり
「私が救えなかった」
 気付いてしまったから。
 つう、と熱い雫が私の頬を伝います。
「シアラ、私達ずっと一緒よ。時計の針を止めてこの夢を見続けましょう」
 友華は赤い瞳で私に柔らかな笑顔を向けました。
 そうだね。ここにいてしまおう、そう思ったとき、声が聞こえました。
 ――お願い、思い出してシア様! あなたがこれまで戦ってきた理由を! あなたは強い人よ。世界を救う騎士なのだから! だからお願い、幻なんかに負けないで!
「フェルト……」
 心に直接響いてくる声は、姫の声。騎士となり、私が守ると誓った大切な人の声です。
「そうですね、私が友華を助けなきゃ……今、戻ります……」
 夢幻の光蝶が、私の体を包んでいく。光だけが広がっていく。
 ――シアラ、行ってしまうのね。貴女はこの夢から覚めてしまうのね。

 私は友華の部屋から弾き出され、元の鉄塔の前に戻っていました。
「フェルト……!」
 胸に飛び込んできた私を、フェルトはそっと抱き締めました。
「大丈夫よ。たとえこの先、何が待ち受けていたとしても、わたしがあなたを、絶対に守るから」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蛇塚・レモン


レモンは既に過去を克服した
蛇神様に生贄として差し出した初恋の相手
今はその悲恋を乗り越え、新しい恋を満喫中だ
……彼は女癖悪すぎるが

腹違いの妹のライムとも和解した
村の掟に背いて自由を求めた代償は、ライムへの人柱の強要だった
そしてライムは、蛇神オブリビオンとして姉に立ち塞がった
レモンは妹を救うべく、数多の仲間の力を借りて奔走
後に、自身の白い勾玉に其の魂を封ずることに成功した
そして、今ではともに戦う猟兵として手を取り合っている

ならば、レモンが願うのは、あの女子高生たちの親友だ
彼女達は力がない
だから誰かが代わりに2人の声を届けなくては
舞さんの声を2人に届けなくては

それがシャーマンたるレモンの務めなのだ



●舞の霊との邂逅
 蛇塚・レモンはすでに過去を克服している。
 一つ。蛇神様に生贄として差し出した初恋の相手。今はその悲恋を乗り越え、新しい恋を満喫中だ。……彼の女癖が悪すぎるのはさておき。
 二つ。腹違いの妹のライムとも和解できた。
 かつて、レモンは村の掟に背いて自由を求めた。だがその代償は、妹ライムが支払うことになり、ライムは蛇神の人柱となることを強要された。そしてライムは、八岐大蛇のオブリビオンとして姉に立ち塞がった。レモンは妹を救うべく、七色の仲間と共に奔走し――。
 見事、骸の海の因果から妹を解き放ち、自身の白い勾玉に其の魂を封ずることに成功した。
 そして、今ではレモンとライムはともに戦う猟兵として手を取り合っている。
 そんなレモンが邂逅を望む相手とは――。
「あたいが望む相手は、『城崎舞』さんだよっ!」
 城崎舞。
 感染型UDCの第一発見である友梨香と遥が会いたいと願った、二か月前に亡くなった少女。彼女の遺体は今も見つかっておらず、二人は最期に言葉を交わすことも叶わなかったという。だから、誰かが代わりにあの二人の声を届けなくては。舞さんの声を二人に届けなくては。それがシャーマンたるレモンの務めなのだ。
 レモンが強く念じると、夕暮れの鉄塔の影からセーラー服姿の少女が姿を現した。
 絹のように長い黒髪に、人形のように整った顔立ち。今は半透明になっているが、生前は相当な美少女だったのだろう。
「貴女が、城崎舞さん?」
 レモンの問いかけに、こくり、と少女は頷いた。
 レモンは少女の気配を慎重に探る。
 どうやら、この少女は幻ではなく、本物の舞の霊魂のようだ。
「あたいは蛇塚レモン。シャーマンだよっ! 舞さん、友梨香さんと遙さん、知ってるよね?」
 レモンは舞の霊魂に事情を説明した。
 二人がこの鉄塔の都市伝説を実行して彼女に逢おうとしたこと。失敗して怪物が呼び出されてしまったこと。今は正義の味方(UDC組織)が二人を警護してくれていること。舞はレモンの言葉を静かに聞いていた。
「二人のことは心配しなくていいよ! 怪物……UDCはあたいたちが倒すからっ!
 貴女を呼んだのは、貴女の言葉をあの二人に届けたいと思ったからなんだ。舞さん、あの二人に、最期に何か伝えたいことはない?」
「――」
 レモンの問いかけに、舞はためらいがちに口を開いた。
「このスカタン共。もう危ない真似はしないで。するな、と言ってもするのよね、貴女達は。ともかく八十年ぐらいはこっちに来るな、とお伝えください」
「!?」
 レモンは舞の辛辣な物言いに目を丸くした。
「ありがとう」、とか「ごめんね」、とかじゃないんだ。思ったよりツンデレな子だった。
「わかった。確かに二人に伝えとくよっ!」
 レモンはニカッと笑った。
 舞の霊はレモンにぺこりと頭を下げる。
「あの二人のこと、よろしくお願いします」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花


名を呼ぶほどの相手と言われて困ってしまった
今まで会った影朧やオブリビオンへの想いはある
だが彼等は告げる名前を持たず消えていくことが殆どだった

普段名を呼ぶ相手と言えば
パーラーのお客さん
店員仲間
そして大家の業突く婆ぁ

誰を呼ぶのが1番相手に害が少ないか考えて
ひっそり業突く婆ぁの名を呼んだ

縁もゆかりもないさ迷い子を店子にして
言葉を教え算術を教え常識を教え
手も足も口も良く出る婆ぁで
恐ろしいほど金に意地汚くて
この前も3時間ほど正座させられた
時間を間違えたのは婆ぁなのに
それでも
矛盾に満ちた愛すべき意地っ張り婆ぁ
此の仕事が終わったら
大判焼きでも買って帰ろうと思う

「生きてる方は駄目だったでしょうか」
首を傾げた



●親愛なる婆ぁへ
 桜花の心の中に、声が響く。
 ――さあ、会いたい人の名を呼びなさい。時を超えてもう一度会わせてあげる。
 桜花は名を呼ぶほどの相手と言われて困ってしまった。
 今まで会った影朧やオブリビオンへの想いはある。だが彼等は告げる名前を持たず消えていくことが殆どだった。
 普段名を呼ぶ相手と言えば、パーラーのお客さん。店員仲間。そして大家の業突く婆ぁか。
 故人ならばともかく、まさか生きている異世界の人間本人をここに召喚したり呪ったりするような真似はさすがにできないだろうけれど、誰の名を呼ぶのが一番相手に害が少ないか考えて、桜花はひっそり業突く婆ぁの名を呼んだ。
「生きてる方は駄目だったでしょうか」
 桜花が首を傾げていると――。
 夕日を反射して輝く鉄塔の向こうから、腰の曲がったおばあさんが姿を現した。
 この老婆こそ、行く当てのなかった桜花を帝都で拾ってくれた大家の遣り手婆ぁである。
 ――おまえ、引き算もろくにできないのかい! 今日の勘定が2円合わないじゃないか!
 出現するなり、老婆は桜花にくどくどと説教を始めた。
 熱くなり、ステッキを振り上げ、ぺちぺちと桜花の頭を叩いてくる老婆の説教を、桜花はただ黙って聞いていた。
 彼女は縁もゆかりもないさ迷い子であった桜花を店子にして、言葉を教え、算術を教え、常識を教えてくれた桜花の恩人だ。
 手も足も口も良く出る婆ぁで恐ろしいほど金に意地汚くて、この前も閉店時刻より30分ほど前に閉店してしまい、3時間ほど正座させられた。時間を間違えたのは婆ぁなのに。
 それでも、矛盾に満ちた愛すべき意地っ張り婆ぁだ。
 自分に害意がないから、この婆ぁならここで名前を呼んでもきっと大丈夫だろう。そう思って名を呼んだのだ。
 ――今日はこのぐらいで勘弁してやろうかね。
 業突く婆ぁはたっぷり30分ほど桜花に説教すると、しかめっつらをしたまま陽炎のように揺らぎ、消えた。
 此の仕事が終わったら、お土産に大判焼きでも買って帰ろうと思う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
何でも歓迎◎
過去:オブリビオンの屋敷での実験の日々
「俺の過去は…本当の名前も生まれた場所も知らない。苦しみのあの日々だけ…」

グッと握りしめ【勇気】を振り絞る。

「今の俺ならなんとかできるのかもしれない…だけど‥‥俺は未来に生きていきたい!!」

二本の刀『ヴァジュラ』を引き抜くぜ

『過去に縛られて歩みを止めるわけにゃいかねぇ…この名をくれた剣士に恥じぬように!!人の未来を切り開くために!!』

今の俺には武器も力もある…けどそれは過去を変えるためじゃない…未来を切り開くためのものだ!!過去の幻が、亡霊が、邪魔をするんじゃねぇ!!



●未来を切り拓く刃
「第十八番実験、雷撃の呪詛の妖刀「■■」、測定開始」
 血液に直接電流を流されたような痛みが全身に走り、脳に火花が散った。
「第六十番実験、腐食の呪詛の妖刀「■■」、測定開始」
 焼けるように全身が痛む。なのに、手足が腐り落ちたかのように感覚がない。
「第百七番実験、蟲毒の呪詛の妖刀――」
 斬られた瞬間、口から紫色の血を吐いた。内臓がねじ切れそうな痛みに、発狂しそうになる。
 人里離れた隠れ屋敷で繰り返される拷問めいたオブリビオンの実験の記憶。
 それが、ガイ・レックウが辿れる、猟兵となる以前の過去の全てだった。
「俺の過去は…本当の名前も生まれた場所も知らない。苦しみのあの日々だけ……」
 ガイは鎖で体を縛り付けられ、オブリビオン共に切り刻まれている過去の己の姿を遠くから見つめていた。
 ――現在(いま)の自分が、この刀であのオブリビオン達を一人残らず切り裂けば、過去を変えられるのだろうか?
 できる、できないで言うならば恐らく可能だ。幾多の闘争を乗り越え、力を付けた自分ならば、過去の自分を救出してこの屋敷から脱出することなど容易いだろう。
 そうすれば、今もこの身を苛む呪詛は消え、戦いしか知らぬ自分も穏やかな人生を歩めるのかもしれない。
 ――辛い過去ね。そんな過去、その刀で変えてしまえばいいわ。あなたにはきっとできるはずよ。
 ふと、そんな声が聞こえた。
 ガイは刀の柄をグッと握りしめ、勇気を振り絞る。
「今の俺ならなんとかできるのかもしれない……だけど‥‥俺は未来に生きていきたい!!」
 ガイは二本の刀『ヴァジュラ』を引き抜き、過去の己の前に立った。
「過去に縛られて歩みを止めるわけにゃいかねぇ……この名をくれた剣士に恥じぬように!! 人の未来を切り開くために!!」
 ガイは吠え、妖刀の力を解放する。過去の己を救う為ではなく、この幻の世界を破壊し、前に進む為に。
「今の俺には武器も力もある……けどそれは過去を変えるためじゃない……未来を切り開くためのものだ!! 過去の幻が、亡霊が、邪魔をするんじゃねぇ!!」
 決意と共に、ガイの刀が十字に閃く。
 二本のヴァジュラから斬撃と共に竜の獄炎が放たれ、幻の世界は跡形もなく消滅した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『皆咲・友華』

POW   :    過去には戻れないんだよ?
【紫光蝶の突撃】が命中した対象の【背中】から棘を生やし、対象がこれまで話した【迷いや後悔】に応じた追加ダメージを与える。
SPD   :    私から逃してあげないよ
【水色のリボン】【紫光蝶】【スマホからの停止信号】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    綺麗でしょう?私の紫光蝶
対象のユーベルコードを防御すると、それを【スマホに記録し、紫光蝶へ投影することで】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:詩草

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は浅葱・シアラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●皆咲友華
 猟兵たちは感染型UDCによって引き起こされた怪奇現象を乗り越え、無事に鉄塔へと帰還した。
「ーー来るわ。皆さん、気をつけて下さい」
 その場に残っていた第一発見者たちの友人の霊が猟兵たちに警告した。
 鉄塔の上から、紫色に光る蝶たちと共に制服姿の少女が舞い降りる。
 彼女こそが感染型UDCの発生源。放置すれば世界を眷属で覆い尽くすであろう、忌まわしき邪神の使徒だ。
 ーーみんな、私が連れて行ってあげる。
 一人も逃がさないわ。
 少女の赤い瞳が不気味に光った。
蛇塚・レモン


舞さんっ!
危ないから下がっててっ!

少女に問う

2ヶ月前に舞さんは亡くなった
そしてさっきの翼怪達は最期に喰らった人の声を真似る性質があるんだよ
つまり――
……舞さんへ翼怪達をけしかけて殺したのは、あなたでしょっ?

返答の内容問わずUCで先制攻撃+咄嗟の一撃
いくら過去に戻れなくても、故人を偲ぶ人間の心は間違ってないっ!
あなたを『救う』のは他の猟兵がやるはず
その前に、あなたの犯した罪に神罰を下すっ!

UCによる神楽(ダンス)からの飽和攻撃(範囲攻撃+貫通攻撃+念動力+鎧無視攻撃+乱れ打ち+弾幕)で敵の防御を貫きスマホを破壊
更に不幸の呪詛で敵を自滅に追い込む

トドメはオーラガンの呪殺弾+衝撃波でなぎ払うよっ!



●蛇神の巫女VS邪神の使徒
「舞さんっ! 危ないから下がっててっ!」
 決着を見届けるべくその場に残っていた舞の霊に警告しつつ、レモンは感染型UDCの少女の前に進み出た。
 戦う前に、この少女には問わねばならないことがある。

 友梨香と遥が呼び出そうとしていた城崎舞さんは2ヶ月前に亡くなった。
 そして、嘲笑う翼怪達は最期に喰らった人の声を真似る性質がある。
 翼怪たちは舞の声で遥や友梨香たちを追い立てていた。
 それはつまり――。

「……舞さんへ翼怪達をけしかけて殺したのは、あなたでしょっ?」
「ふふふ。正解よ」
 UDCの少女は愉しげに笑う。それは、悪戯を親に言い当てられた幼子のような無邪気な笑顔だった。
「やっぱり!」
 レモンは神楽鈴をかき鳴らす。すると、レモンの背後に彼女を守護する蛇神「オロチヒメ」と妹ライムの姿が浮かび上がった。
「蛇神様っ! ライムっ! お願い、一緒に踊ってっ!」
 三人は激しく神楽舞を踊り、神楽鈴も激しく揺れる。鈴の音色に合わせ、複雑な軌道を描いて曲射するレーザーの嵐が乱れ飛んだ。
 千にも届こうかという数の呪いの光の雨に対し、少女は――。
「私の紫光蝶を見せてあげる」
 少女が右腕を軽く振り上げると、紫色に輝く光の蝶が乱舞した。
 紫光蝶はレモンたちの霊光をその身で受け止め、相殺して花と散っていく。
「いくら過去に戻れなくても、故人を偲ぶ人間の心は間違ってないっ! あなたを『救う』のは他の猟兵がやるはず。その前に、あなたの犯した罪に神罰を下すっ!」
 なおもレモンは勢いを緩めず、蛇神、ライムと共にレーザーを乱射する。
 幾度も曲がるレーザーはUDCの背後にも回り込み、全方位から神罰の光を浴びせかけた。しかし、際限なく出現する紫光蝶の群れはUDCの少女をレーザーから守り続け、攻撃は未だ届かない。
「貴女の技、私も使わせてもらうね」
 レモンの弾幕を防ぎながら、少女は素早くスマホを操作した。
 少女はスマートフォンに敵のユーベルコードを記録することで、それを借用することができるのだ。だが――。
「あれ? 記録できてない?」
 専用アプリがエラーを吐き出し、少女は首をひねった。
 レモンの『憑装・蛇塚ミツオロチ神楽』のレーザーは敵のユーベルコードを無効化する性質を持つ。紫光蝶の壁によって攻撃自体は防がれているが、自分の攻撃を相手にコピーされることはなんとか防いでいたのだ。
「隙ありだよっ!」
 少女がスマートフォンに気を取られている一瞬の隙を突き、レモンはさらに激しく舞い、レーザーを放つ。狙うは少女のスマホ。あれが彼女の能力の要に違いない!
「ちょっ! やばっ!」
 視界を覆い尽くすほどのレーザーの嵐はついに、少女の紫光蝶の防壁を貫き、本体まで届いた。
「きゃあ――!」
 悲鳴を上げながらUDCの少女は吹き飛び、鉄塔に叩きつけられた。
「やった……!?」
「ふふ、油断したわ」
 ヒビの入ったスマホを手で遊びながら起き上がり、なおも少女は笑う。さすがは邪神の使徒というべきか。眷属とは桁違いのタフさだ。
「さあ、今度はこちらの番よ」
 少女は悠然と笑い、紫光蝶をレモンへと放とうとしたが――。
 ガラガラガラガラッ!
 その時、凄まじい音を立てて鉄塔が崩壊した。
 レモンのレーザーに込められていた呪詛がUDCの少女に不幸を呼び寄せたのだ。
「え?」
 突然の事態に、思わず上を見上げる少女。
「今だっ!」
 レモンはブレスレットから呪いを込めた弾丸を発射し、隙だらけの少女に向かって発射した。
「きゃああああっ!」
 呪殺弾の直撃を受けて身動きが取れなかった少女は、そのまま鉄塔の崩壊に巻き込まれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鉛・鐵斗

イイ夢見せてくれてあんがとさん。お陰で気分は最悪だ!

●心情
連れてってあげる……ねぇ。
ぶっちゃけ、余計なお世話なんだよ。
あの中学生みたいにアンタに縋る奴もいるだろうけど、過去は過去だ。
過ぎた事を悔いたり想ったりしながら前に進まなきゃなんねぇのがヒトっつーもんなんだからよ。
邪魔すんのはナシだぜ?

●戦闘:SPD
物理的に殴るのは避けてぇ。……UDCとは言え、女子だし。
【金縛り】で動きを封じつつ、霊障とか呪詛を用いて戦う。
防御する場合は傘を開いて盾に使うぜ。

それにしても、ひらひら鬱陶しいな!


日輪・黒玉


……見た目だけ取り繕った所でその性根は隠しきれていませんよ
貴女のような邪な輩と問答するつもりはありません、すべて狩り尽くすのみ
黒玉は誇り高き人狼ですので

水色のリボンはただ見るままに【ダッシュ】で加速し避ければいいでしょう
紫光蝶は動きに注視しつつ、【スライディング】なども含めた動きで掻い潜ります
スマホからの信号はつまりスマホを相手に向けるということ、その動きに注視しつつ、タイミングを合わせて【ジャンプ】で横に跳んで狙いを外します

一度すべてを隠しきった所で最大加速
一気に死角へ回り込んで蹴りを見舞って差し上げましょう

……貴女の動きはもう覚えました
狩るまで決して逃がしませんよ



●前に進む為に
「よくもやってくれたわね!」
 瓦礫と化した鉄塔の下から、邪神の使徒が這い上がる。ダメージは見て取れるが、まだまだ余力を残しているようだ。
「イイ夢見せてくれてあんがとさん。お陰で気分は最悪だ!」
 過去の幻の中、自らの手で死に様を再現することになった鐵斗は、悪態を吐きつつ、UDCの少女の前に立った。
 可愛らしい姿をしているが、彼女もオブリビオンだ。放置することはできない。
「そう? なら、私がいいところに連れて行ってあげる」
 少女は紫色に輝く蝶を撒き散らしながら飛翔し、鐵斗への攻撃を開始した。
 しゅるしゅるしゅるしゅる。
 彼女の腕に巻き付いていた水色のリボンがほどけて伸び、鐵斗へと襲い掛かる。
「連れてってあげる……ねぇ。ぶっちゃけ、余計なお世話なんだよ。あの中学生みたいにアンタに縋る奴もいるだろうけど、過去は過去だ。過ぎた事を悔いたり想ったりしながら前に進まなきゃなんねぇのがヒトっつーもんなんだからよ。邪魔すんのはナシだぜ?」
 一度は死した身だが、鐵斗はまだあの世とやらに行くつもりはない。
 幽霊だろうが、こうして今もここに生きていて、やりたいことも色々ある。
 邪神による救済なんていらない!
 蛇のようにうねりながら襲い掛かるリボンへと鐵斗は手をかざし、霊障――破壊の念動力を発動した。霊障はコンクリートの床を抉り、瓦礫を吹き飛ばしながら直進し、リボンを弾き返す。
「まだ、まだよ」
 リボンを防いだと思った刹那、左右から迂回するように紫光蝶の群れが飛来した。UDCはリボンと同時に蝶による攻撃を放っていたのだ。
 鐵斗は今度は傘を開き、盾にして蝶の攻撃を受け止めた。
 ギシギシギシギシ!
 衝突と共に紫の蝶が炸裂し、骨がへし折れそうな程激しく傘が揺れるが、なんとか攻撃を防ぎ切った。
「それにしても、ひらひら鬱陶しいな!」
「やるわね! でも、こっちにはもう一手あるのよ!」
 少女は二段攻撃を凌がれたことに驚きつつも、スマートフォンを取り出し、鐵斗へと向けた。
「さあ、止まりなさ――」
 ビシィ!
 しかし、動きが止まったのは鐵斗ではなく少女の方だった。
 少女の奥の手の「停止信号」より先に、鐵斗の呪詛による金縛りが先に発動したのだ。
「ぬぎぎぎぎぎ!」
 歯を食いしばり、金縛りから脱出しようとするUDCの少女。
(さて、ここからどうするか。物理的に殴るのは避けてぇ。……UDCとは言え、女子だし)
 さっさと次の手を打たないと脱出されてしまう。鐵斗が次の手を思案していると――。
「このチャンス、逃しません」
 風を切り、静かなる狼が鐵斗の隣を通過した。

●ウルフ・ガール
 鐵斗の金縛りを受けて身動きのとれないUDCを狙い、黒玉は疾風のように飛び掛かった。
 ドガァッ!
 中学生女子の腹に飛び蹴り。さらに空中でくるりと回転してローリングソバット。
 嵐のような二連蹴りが炸裂し、感染型UDCの少女を勢いよく吹き飛ばす。
 同じ女性であり、歳も近い故か、黒玉の攻撃にはまるで遠慮がなかった。まさに獣である。
「かはっ……! 痛いわね! 許さないんだから!」
 ようやく金縛りを破ったUDCの少女は黒玉に向けて水色のリボンを飛ばした。
 シュルルルルルッ!
 黒玉を捕縛せんと伸びるリボンを振り切らんと、黒玉はチーターもかくやという速度で大地を駆け抜けた。
 だが、攻撃はリボンだけではない。地上を高速移動する黒玉を捉えるべく、紫光蝶の群れが辺りを乱れ飛んだ。
「! 逃げ場の無い360度包囲攻撃ですか」
「そうよ! 死になさい!」
 黒玉の命を終わらせんと、光の蝶が殺到する。
 黒玉は前方に加速すると、スライディングで蝶の真下スレスレをすり抜けた。
「すばしっこいヤツね! これはどう!?」
 少女はスマートフォンを向け、黒玉へと停止信号を放つ!
 しかし、黒玉は全力で足に力を籠め、少女の視界から一瞬で消え失せた。
「ど、どこ!?」
(ここです)
 黒玉がいるのは電柱の上だった。驚異的な脚力で空に逃げていたのだ。
 ドンドンドンドン!
 その時、突然鉄塔の瓦礫が音を立てて砕け散り、UDCの注意は完全にそちらを向いた。
「そっち!? いや、違う!」
 これは、鐵斗の仕業だろう。霊障で敵の注意を引き付けてくれたのだ。
「名前もまだ伺っていませんが、感謝します」
 今なら、全力で不意討ちを叩き込める。黒玉は空を蹴り、最高速度でUDCの少女へと急降下した。
 頭上の死角からの渾身の一撃。
 黒玉のミサイルのような飛び蹴りの直撃を額に受けたUDCの少女は、紙人形のように吹き飛ばされていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ガイ・レックウ

【POW】で判定
『過去には戻れないのはわかってるからな…未来を掴むためにお前を倒すぜ!!』
【オーラ防御】のオーラを纏い、【フェイント】を混ぜながら接近するぜ
【残像】で揺さぶり、【見切り】ながら【武器受け】でガードする
【怪力】での【なぎ払い】と【鎧砕き】の【二回攻撃】で連続して攻め立てる

『迷いも後悔も死んだ後でできる!!焼き尽くせ!我が炎!!』

ユーベルコード【紅蓮開放『ヴリトラ』】を発動し、炎で攻撃するぜ



●炎熱の妖剣士
「なぜ、救いを拒むの?」
 ゆらりと起き上がったUDCの少女はぽつりと呟く。
 大人しく受け入れれば、一緒に連れていってあげるのに。
 ずっと、止まった時の中で平穏に過ごせるのに。
「過去には戻れないのはわかってるからな……未来を掴むためにお前を倒すぜ!!」
 ガイは二本の刀を抜き、UDCの少女と対峙する。
 両手に握られた二振りの刀の名は共に『ヴァジュラ』。
 同じ銘を与えられた一対の妖刀と退魔刀は、邪悪なる神の使徒を討ち滅ぼすべく唸りを上げる。
「なら、殺してあげる。さあ行きなさい、私の紫光蝶!」
 少女の殺気が膨れ上がり、死を呼ぶ紫の蝶の群れがガイへと襲い掛かる。
 ガイは闘気を鎧のように纏うと、ゆらゆらと左右に揺れながら、滑るように少女へと近づいていった。
「!?」
 少女の目にはガイが何人もいるように見えていた。ガイの歩法は敵を幻惑し、数多の残像を見せるのだ。
「全部、殺しちゃうんだから!」
 さらに数を増した紫光蝶の群れは、残像も本体もお構いなしに全てのガイへと殺到する。
 ガイは、二本の刀から発する炎と雷で紫光蝶の群れを焼き払いながら前進していった。
「破ッ!」
 斬撃がUDCの少女へと迫る。岩をも砕かん勢いで振るわれた打ち下ろしの一撃を少女は身を捻って回避した。
「まだだ!」
 だが、ガイの得物は二刀。態勢を崩した少女に対し、首を刎ねんと二撃目の薙ぎ払いを放つ。
「舞え! 紫光蝶!」
 少女は輝く蝶の群れを目晦ましとしてガイに放ち、側転で二撃目も躱し切った。
 ズズン、と少女の後ろにあった電柱が切り崩れる。
 チ、と舌打ちし、すぐさまガイが追い討ちをかけようとした時、肩と背に激痛が走った。
「ぐっ!?」
 少女が目晦ましに放った蝶が一匹、ガイの肩を掠めていたのだ。。
 たちまちガイの背中に一本の棘が生え、その心を侵食していく。
 ――本当に、過去を変えることに未練はないの?
 ――戻れるのなら、戻りたいと思いはしないの?
 それは、妖剣士の一抹の未練。「過去には戻れない」と「過去に戻りたくない」はイコールではないのだ。
 ガイの心の奥底にある僅かな願望に根差そうと、UDCの棘はその触腕を伸ばしていく。
 だが――。
「迷いも後悔も死んだ後でできる!! 焼き尽くせ! 我が炎!!」
 ガイの妖刀から発せられた炎は己の身すらも焦がし、突き刺さった棘を跡形もなく焼失させた。
「紅蓮開放『ヴリトラ』!」
 妖気の炎が渦巻き、竜の姿を象る。
「ほ、炎の竜!? 私の身を守りなさい、紫光蝶!」
 慌てて自分の周囲に紫光蝶を呼び寄せ、盾にする少女だったが、地獄の炎の前には蝶など障子も同然だ。
紅蓮の竜の顎は紫光蝶を一瞬で燃やし尽くし、少女もまた紅蓮の炎に包まれたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

外邨・蛍嘉
出てきたね、使徒。
さぁて、いこうかクルワ。
「ええ、ケイカ」
私たちがやるのは、あれを弱らせることさ。
「ケイカ?」
いや、ね。これは『歩き巫女』としての勘なんだけど。因縁ある人がいる気がしてね…その人が最後かなってね。
「ナルホド。わかりマシタ」
本当に物わかりのいい鬼だね…。

停止信号は避けるのが難しそうだけど、他は見える分には避けられそうだね。
でも、当たらないことに越したことはない。
「では、その四角い薄い板(スマホ)とやらを叩き落としマショウ」
そうだね、それを狙おうか。…どうやら、他の助けになれそうだしね。
ああ、本当に。過去には…戻れないもんさ。



●歩き巫女、蛍嘉
「さぁて、いこうかクルワ」
 刀に変化させた傘を構え、蛍嘉は隣に立つ雨剣鬼クルワへと声をかけた。
「ええ、ケイカ」
 年若い少女の姿をしていても、あのUDCは世界の敵だ。世界を守護する猟兵として、蛍嘉とクルワは彼女を倒さなくてはならないのだが――。
「私たちがやるのは、あれを弱らせることさ」
「ケイカ?」
「いや、ね。これは『歩き巫女』としての勘なんだけど。因縁ある人がいる気がしてね……」
 オブリビオンの中には特定の猟兵と縁深い者もいる。今回の討伐に加わっている猟兵の中には、この感染型UDCの少女の縁者がいるのではないか……。蛍嘉はなんとなくそんな気がするのだ。もしそうならば、最後の決着はその者の手に委ねられるべきだろう。
「ナルホド。わかりマシタ」
 クルワはあっさりと承諾した。本当に物わかりのいい鬼だ。

「はあ、はあ、はあ……」
 UDCの少女は肩で息をしている。連戦に次ぐ連戦でさすがに体力を消耗したようだ。だが、その赤い瞳はまだ諦めてはいない。戦いはまだ終わらないのだ。
「私たちが相手だよ」
 蛍嘉とクルワは刀を構え、じりじりと少女に迫る。
「今度は二人がかり? でも、私は負けないんだから!」
 少女は蛍嘉とクルワに向かって水色のリボンを伸ばす。鞭のようにしなりながら迫り来る無数のリボンを、蛍嘉とクルワは手にした刀で斬り払った。
 だが、少女の攻撃はリボンだけではない。同時に飛ばしていた紫色に輝く蝶の群れが二人へと襲い掛かる。蛍嘉は全速力で蝶を振り切り、少女へと迫った。
「こっちが本命よ!」
 少女はスマートフォンを取り出し、蛍嘉へと向けた。
 スマートフォンから放たれる「停止信号」。稲妻の速さで放たれる電気信号はさすがに体術での回避は困難だ。
「さあ、止まりなさい!」
 少女の指がスマートフォンの画面に触れる。あとは指をスライドさせるだけだったが、その刹那――。
「では、その四角い薄い板を叩き落としマショウ」
 少女の注意が蛍嘉へと向いた一瞬の隙を突き、蝶の群れをかいくぐって接近していたクルワが妖刀を振り上げた。狙うは少女のスマートフォン。
 バシッ!
 下から掬い上げたクルワの一撃は少女の手を打ち、スマートフォンを叩き落としていた。
「くっ……! 私のスマホを……」
 蛍嘉は宙を舞うスマートフォンの待ち受け画面に映っていた二人の少女の姿を見て目を細めた。やはり、自分の勘は正しかったのだ。
「ああ、本当に。過去には……戻れないもんさ」

成功 🔵​🔵​🔴​

浅葱・シアラ
フェルト(f01031)と共に

目の前にいるその少女は
私をここまで幸せにしてくれた最高の親友

それなのに私は……貴女を守れなかった、友華……

彼女の紫光蝶の突撃を避けずに受けます
この蝶も私が彼女に贈ったもの……

大切な人を守れず、こうして世界を脅かす存在にしてしまって、何が世界を救う猟兵で、世界を守る騎士ですか……

結局私に騎士の資格なんてない……
そう口にする度に背中の棘は私を刺していく

でも、覚悟はできている
これを失っても、私は、友華をそこから救う
騎士として、最後の役目

騎士の証の剣と騎士の誇りを全て代償に、強力な魔法剣で彼女を貫きます

ごめんね、フェルト……

(宿敵主なので最後のトドメを貰えると嬉しいです)


フェルト・フィルファーデン
◎シア様(f04820)と
友華様……
(こんなの絶対ダメ……親友同士で殺し合いなんて!)
……例えシア様の親友でも、これ以上好きにはさせない。
ええ、わたしがお相手するわ。大丈夫よシア様。あなたはわたしが……えっ?

し、シア様!?止めて!!そんなことしないで!あなたはわたしを救ってくれた大切な騎士よ!あなたのおかげで、わたしは……ねえ、シア様ったら!!
――聞こえて、いない?そんなに、追い詰められていたの?
そんなに無理していたの?そんなに、傷ついて、いたの……?


……ごめんね、シア様。わたしは結局、何も救えない。
あなたの親友も、あなたの体も、心も……


騎士人形よ、シア様を助けて。……わたしじゃ、ダメだから。



●騎士ごっこはもうお終い
「友華……」
 シアラは変わり果てた姿の親友の名を呼んだ。
 目の前にいる少女はシアラをここまで幸せにしてくれた最高の親友だ。
 だが、彼女は既にこの世にあってはならないもの。
 目の前に立っている深く傷ついた少女は、世界を滅ぼす為に行動する「感染型UDC」皆咲・友華だ。
「それなのに私は……貴女を守れなかった、友華……」
 許されるのなら、今すぐ妖精の歌を聴かせて彼女の傷を癒してあげたい。
 彼女の胸元に飛び込み、再会を喜び合いたい。
 だが、それはもはや叶わぬ願いだった。
 シアラは、今も空の上から戦いの様子を見ている少女の霊に一瞬目をやる。
 彼女は友華に命を奪われた犠牲者だ。もしここで友華を見逃せば、彼女だけでなく、他にも多くの人が犠牲になってしまうだろう。
「大切な人を守れず、こうして世界を脅かす存在にしてしまって、何が世界を救う猟兵で、世界を守る騎士ですか……」
 世界を救う猟兵である浅葱・シアラは、たとえどんなに親しい存在でも、「感染型UDC」皆咲・友華を倒さねばならないのだ――。
「貴女も私の邪魔をしにきたのね」
 ひらひらと、紫光蝶が飛ぶ。
 シアラが贈った紫光蝶が、シアラを殺す為に乱れ舞う。
 その赤い瞳に、親友であるシアラを攻撃することへの迷いは感じられなかった。UDCと化した彼女はもうとっくに正気を失ってしまっているのだろう。
 シアラは俯いたまま、友華の攻撃を無防備に受け続けた。
「結局私に騎士の資格なんてない……」
 そう口にする度に背中の棘はシアラを刺していく。この棘は迷いや後悔をカタチにしたもの。今のシアラには効果覿面だった。
「シア様……!」
 血に染まっていくシアラの姿を見て、ついに傍らで見守っていたフェルトが悲鳴を上げた。
「友華様……」
(こんなの絶対ダメ……親友同士で殺し合いなんて!)
 キィン!
 繰り返される紫光蝶の突撃をフェルトの騎士人形の盾が受け止める。
「……例えシア様の親友でも、これ以上好きにはさせない」
 もう見ていられない。騎士人形と共に割って入ったフェルトは決然と宣言した。
「金色の妖精……。貴女もシアラのお友達ね。……シアラ? 誰だっけ……」
 UDCの少女は首をひねる。
 その言葉に、フェルトは胸が締めつけられるような想いがした。
 けれど、フェルトの位置からは一番辛いはずのシアラが今どんな表情をしているか、伺うことはできなかった。
「わたしがお相手するわ。大丈夫よシア様。あなたはわたしが……えっ?」
 ここからは自分が戦う。フェルトはその決意を口にした。
 だが、シアラはフェルトをそっと押しのけ、剣を構えた。
「……いいえ、覚悟はできているわ。たとえ『これ』を失っても、私は、友華をあそこから救う。それが騎士として、最後の役目……」
 そう、覚悟はできている。大切にしていたものを全て失っても、私は、友華をそこから救う。あの子にこれ以上、誰かを殺させるわけにはいかない。
 シアラの剣から、眩い光が溢れ出す。彼女が何をしようとしているのか悟ったフェルトは血相を変えた。
「し、シア様!? 止めて!! そんなことしないで! あなたはわたしを救ってくれた大切な騎士よ! あなたのおかげで、わたしは……ねえ、シア様ったら!!」
 しかし、シアラは聞く耳持たず、その剣はどんどんと輝きを増していく。
「――聞こえて、いない? そんなに、追い詰められていたの? そんなに無理していたの? そんなに、傷ついて、いたの……?」
 フェルトは大急ぎで騎士人形にユーベルコードをかけて巨大化させるが、もう間に合わない。
「ごめんね、フェルト……もう、騎士ではいられない……誰も守れない……救えない……だから、せめて、あの敵を討たせて……」
 シアラの目に涙が滲み、膨大な光が剣へと収束する。
 騎士の証たる剣と、騎士の誇りを捨てることと引き換えに放ったシアラの一撃は、友華の心臓を刺し貫き、骸の海と友華の因果をも断ち切った。
「シア様……!」
 シアラの剣が砕け、光が溢れる。友華の体が薄れ、消えていく。
 ひび割れたスマートフォンだけを遺し――皆咲・友華は完全に消滅した。
 
 こうして、猟兵たちの活躍により『やり直しの鉄塔』の都市伝説は幕を閉じ、世界はUDCパンデミックの危機から救われた。もう二度と、『かみさま』が鉄塔に姿を現すことはなかったのである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月13日
宿敵 『皆咲・友華』 を撃破!


挿絵イラスト