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精霊達の音楽祭

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「アルダワ魔法学園の世界において、オブリビオンの活動が予知されました」
 グリモアベースにて、冷山・霊音(人間の戦巫女・f00468)は集まった猟兵達を見回していた。
 それは学園地下に伸びるとある迷宮のこと。
 その内部の奥深くにいたオブリビオンが地上を目指して逆侵攻を開始するのだという。
 軍勢と言っても良い数での侵攻だ。放置しておけば、学園施設にまで侵入されてしまう可能性は高い。
「そこで皆さんには、迷宮に赴いて頂き──敵の侵攻を阻止。撃破してほしいのです」

「迷宮は自然の景色といった見目になっています」
 霊音によるとそこは岩場や清水が流れている場所、または草原になっている場所など、美しい自然が広がる様相になっているという。
 判っている範囲で霊音は地図を書いた。
 凡そ一本道になっているその迷宮は、細道と広場のようになっているところが交互に現れる造りだ。
「細道で迎え撃ってもいいでしょうし、広場で陣取っていてもいいかと思います」
 狭さを活かすか、大きな空間を取るか。適宜戦い方に応じて敵の進行を食い止めてください、と言った。
 軍勢の大半を占めるのは、ポルターガイスト。その侵攻を退けることができれば、首領格のオブリビオンと戦う機会が得られるはずだ。
「集団戦も首領格との戦いも、楽ではないでしょう。全力での討伐をお願いします」
 それから、と霊音は続ける。
「この迷宮には美しい精霊達が住んでいるといいます。音楽を好む精霊のようで、時折集まっては可愛らしい歌声や演奏を見せてくれるとか」
 この日は丁度、広場の一角を取って精霊による音楽祭が行われるのだという。
 可愛らしくも美しい音楽に満ちる、そんな場になりそうだ。音楽祭が行われれば、精霊は猟兵達にも盛り上げてもらいたがるはず。
「それも、オブリビオンに侵攻を許してしまえば叶わなくなります。そんな音楽祭の為にも、確実な撃破が望まれますので──」
 言って、霊音はグリモアを輝かせた。
「行きましょう。迷宮の戦場へ」


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 アルダワ魔法学園の世界でのオブリビオン討伐となります。

●現場状況
 自然の景色の様相を持った迷宮。
 細道と広場が交互に広がっており、どちらでも敵を撃退できます。

●リプレイ
 一章は集団戦、二章でボス戦となることと思います。
 三章では精霊達の音楽祭に参加できます。猟兵達も歌やダンス、演奏で盛り上げると言ったお祭りになるかと思います。
 二章や三章からでもご参加頂ければ幸いです。
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第1章 集団戦 『ポルターガイスト』

POW   :    パイロキネシス
【自然発火の能力を持つ念力】が命中した対象を燃やす。放たれた【青白い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    テレキネシス
【念動力で操った家具の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    ラップ現象
対象のユーベルコードに対し【対象の集中を阻害する騒音】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●精霊達の迷宮
 高くに漂う光は、精霊だろうか。
 少し冷えた空気に、ぽわりと暗がりの空間を照らす淡い耀き達。
 どこかから水のせせらぐ音が聞こえる、洞窟の渓流のような景色の中で……その光は未だ数少なく見えた。
 おそらくは、迷宮内からやってくる気配を感じて隠れてしまっているのだろう。
 それは──音楽を楽しむには少しばかりそぐわない眺め。
 浮遊する家具に、刃、小物。
 自然の景色には不似合いな物が、群れをなしてやってきていた。
 侵攻してくるそれはポルターガイストの化身達。なにかに命令されているのだろう、ただ盲目的に前進する姿は──美しい自然すら、破壊せんばかりに。
ワズラ・ウルスラグナ
軍勢での逆侵攻か。
仕掛けて来た者は余程の強敵と見える。
ならば逆逆侵攻を仕掛けて戦いを挑ませて貰おう。

その前に軍勢の相手だ。俺に前哨戦など無い、全力で薙ぎ払うぞ。
事前に地獄の炎を武器改造・防具改造の技能で全身に纏っておく。元々火炎耐性は有るが、パイロキネシス対策だ。
家具も纏った獄焔とブレイズフレイムで燃やし尽す。
遠距離攻撃が多い相手と見てやや突っ込む形を取るが、囲まれぬ様に気を払う。

仲間が俺の視界に入らない状況なら、戦獄龍狂嵐で蹂躙する。
ラップ現象で打ち消されたなら理性が戻って戦況を整え易くなるだろう。ブレイズフレイムと併用したい。

仲間が居るなら戦獄龍終極を用いる。
巨体を活かして盾にもなろう。


アドニード・プラネタリア
先手必勝♪

ユーベルで(全力魔法)を込めて。
数に圧倒されてね♪

攻撃技能(生命力吸収,2回攻撃,衝撃波,敵を盾にする,範囲攻撃,破魔)のレベルは10以上だよ!
覚悟ゎいいかな?

防御技能(残像,敵を盾にする,盾受け,見切り)のレベルも10以上!
当てにくいよ?

これらの技能を重視して戦闘を行います。


フローライト・ルチレイテッド
愛を忘れた騒霊達に!
愛と歌を届けにきたよ!
【視力】【野生の勘】【聞き耳】【第六感】を駆使してポルターガイスト達を探して、
発見し次第
【歌唱】【楽器演奏】【パフォーマンス】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】【催眠術】【言いくるめ】等駆使して【Cross the sky~スピード狂の愛天使】を発動します。
何かの影響も考えて、【封印を解く】も込めておきます。
そんなことをしているよりも、もっともっと楽しいことがあるはずだよ!
悲しい世界だって、楽しくできるはずなんだ!

攻撃等には【パフォーマンス】【野生の勘】【見切り】等で対応します。



 清流の水音。
 頬を撫でるひんやりとした風の音。
 遠くで精霊が囀り、光の残滓を零すきらきらとした響き。
 自然に祝福された迷宮は空気が澄んでいて、聞こえる音はそれだけで美しい音楽のようでもあった。
 けれどそれもほんの一瞬前までのこと。
 超常の力で軋む造物。甲高い声の如き怪音──深奥からいでる敵意の群れが、そこに確実に近づいてきていた。
「そろそろ、現れそうだね」
 敵の姿が見える前から、気配も音も感じ取って少年は目を向ける。
 フローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)。絹のような銀色の髪を揺らして、灯火の如き金瞳で真っ直ぐを見据えていた。
 その容貌に宿す表情は、不安よりも楽観。
 そして不敵というよりも、ただ前向きな色。
 “蛍灯”──蛍石色のダブルネックギターを開放弦で軽く鳴らすと、前進。広場から細道へ繋がる前後の、最速で見敵できる場所まで奔った。
 見えてくるのは宙を舞う椅子や本、蝋に包丁。
 そしてどこか薄ぼんやりした少女の霊気──ポルターガイスト達。
 進軍する凶器に、しかしフローライトは怯まない。
 そしてそれは、ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)も同じだ。
「軍勢での逆侵攻か」
 呟くその体から地獄の焔が揺らめく。
 薄暗がりの窟内を眩いほどに照らして止まないそれは、ワズラの全身を纏って尚余りある程に滾っていた。
 それは戦いの備えであると同時に、ワズラの戦意の顕れ。
 迷宮の奥からあの数を従えて攻め上がる。それだけで、仕掛けてきた者が余程の強敵であることは判っていた。
 だからこそ、戦欲の炎は燃える。
「ならば逆逆侵攻を仕掛けて戦いを挑ませて貰おう。俺には前哨戦など無い。全力で薙ぎ払わせて貰うぞ」
 ぼう、と目を焼くような閃火が瞬く。翔けたワズラがブレイズフレイム──苛烈な紅蓮を撃ち出していた。
 広場から細道へと吸い込まれる焔は、濁流のようにうねって加速。最前にいた個体の椅子や皿、凶器となるものを纏めて焼き尽くしてしまう。
 自然、敵の初手が一瞬遅れる。
 そこへフローライトがコードを押さえてイントロを奏で始めていた。
「さあ、愛を忘れた騒霊達に! 愛と歌を届けにきたよ!」
 弦が震えると、まるで真空管アンプを通したような艷やかな歪みの音色が響く。フローライトはそれを伴奏にして歌を乗せていた。
 ──急加速飛び込んでいく! 飛ばせ! Cross the sky!
 ──君は そうさ天使! 走れ! Cross the sky!
 ──愛を届けるんだ!
 “Cross the sky~スピード狂の愛天使”。名に違わぬ速度感を持つ一曲は、意志の籠もった旋律でポルターガイスト達の耳朶を打つ。
 ギターの速弾きが音の弾丸となり。
 気迫ある歌声が何にも遮られず心を届けた。
 それは何かに従えられている彼女らへの、強烈なメッセージ。
「そんなことをしているよりも、もっともっと楽しいことがあるはずだよ!」
 悲しい世界だって、楽しくできるはずなんだ、と。
 思いを載せて伝えた愛と音を、全て丸まま受け取る化身達ではなかったろう。
 それでもその心の一端が何かに触れたかのように、敵の前線は動きを淀ませ、進軍は統制を欠き始めていた。
 その正面にひょい、ひょいと跳んで立つ影がある。
 アドニード・プラネタリア(天文得業生・f03082)。
 敵に隙があるのなら、それを逃すはずもなく。その手に握ったロッドに明滅する焔を籠め始めていた。
「先手必勝♪ 攻撃の手は、譲らないからね?」
 翠の瞳を細ませて、笑んでみせる表情は悪戯に。茜色の髪が一層朱に染まるほど、杖先の炎を増幅させている。
 宙へと昇って円形に広がるそれは、無数に分裂して形をとっていた。
 敵の軍勢すら凌駕するほどの数になった──百にも迫る魔法矢。ぱちりぱちりと鏃から火の粉を爆ぜさせて、焔の壁のように浮遊している。
「覚悟ゎいいかな? 数に、圧倒されてね♪」
 瞬間、アドニードがえいっと軽くロッドを突き出すだけでその全てが射出された。
 燃え盛る衝撃の雨。
 ポルターガイストは前進を止めてはいなかったが、それでも矢をくぐるのは不可能。
 真正面から貫かれた個体は焼失するように消え去り、その背後にいたものも手や足を穿たれて炎に蝕まれる。
 最前線より後ろの個体には難を逃れているものもいたが──それでもこちらから視認できる敵の多くは大なり小なり、凶器を破壊されていた。
 だからその個体が迫って来ても、アドニードは焦らない。数の減じた家具での攻撃を、残像にだけ被弾させることでしかと回避していく。
「僕には、当てにくいよ?」
 声音には少々尊大な性格を表すも、実力の伴った自信であるのもまた事実。言葉の通りに次々避けきって、無傷で一度後退していた。
 後は、ワズラが引き受ける。
 迷宮はその風景に違わず、淡い闇と区別がつかぬほどに天井が高い。だがその暗部にまで届くのではないかと、仰いでしまうほどの巨影がそこに現れていた。
 それこそが巨龍と化したワズラ。
 紅焔だけでなく剛腕と獣脚、そして全身に嵐を渦巻かせて。炎風宿すその姿は畏れさえ抱かせる。
 戦獄龍狂嵐(タイラント・ティフォニクス)。
 ──いざ、本能の儘に。
 闇を突きぬける咆哮と共に、ワズラは腕を大振りに振り下ろした。
 地鳴りと共に襲うそれはまるで形を持った災害。薙ぎ払う爆風が複数のポルターガイストを散り散りに消し飛ばし、跡形も残さない。
 後続の敵がワズラへ無数の凶器を当ててくる。だが耐久力を得たその体には傷も刻まれず、元より痛みを感じる理性すら介在しない。
 直後には家具も刃も何もかも、飛んでくる物は打ち落とし、近づくポルターガイスト本体も炎弾で砕いていった。
 遠方から響くラップ音により、ワズラはようやくその変身を解かれる。けれどそれも理性を取り戻し、戦況を把握するには丁度良い機会だった。
 見れば二十以上の個体が消え、敵の前線は壊滅状態だ。
 視認できるのは後続の敵と、残党といえる数体。
 それは確かな戦果。
 ならば尚更ワズラが止まるわけもなく。
「殲滅を続けるとしよう」
「じゃあ、もうワンコーラス行くよ!」
 フローライトはパワーコードを唸らせて、アレンジを加えた大サビを歌い上げている。
 それが敵の動きを止めると、アドニードは空中に矢を番えていた。
「一網打尽だよ♪」
 放たれるそれは炎の線を描いて敵を討っていく。
 そこへ業風のように吹き付けるのはワズラの猛炎。
 体躯が戻ろうと、その炎は尚熱く。至近の一体を虚空に散らせば、敵の前線の残りもいなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティル・ライハ
へぇ、迷宮内が自然で溢れてるってスゲェな!綺麗だし、俺の世界に似てて気持ち良いし!
……よし、じゃ頑張るか。

ぽるたーがいすと、なぁ。ゴーストみてぇな物か?
俺は広場に陣取って、飛んでる物を対象にナイフを[投擲]して攻撃する。2本を[2回攻撃]の要領で使えば、そこそこ落とせるだろ。
……ソッチは見りゃ[UC]で避けれるだろうけど、念力ってのがコワイから……そいつは[第六感]とかで察知するしかねぇだろうな。

『SPD ナイフによるテレキネシスに対しての攻撃』


茲乃摘・七曜
心情
精霊の音楽祭でしたか…台無しにされないためにも頑張りましょう

指針
仲間の援護を主軸に行動
※広場で戦う猟兵と行動
「ラップ現象…?でしたか…?…えぇ、そちらを主軸に対応しましょう

戦闘
自身の【歌唱】で歌う
※Angels Bitが空いていれば輪唱
ラップ現象の騒音を逆位相の音波でかき消すように準備
「息をしているかはわかりませんが、口を開ける表情が変わる…音を出すような前兆がないか気を付けてみておきましょう

対テレキネシス
範囲内にいる場合、Angels Bitsからの衝撃波で家具の軌跡をずらし回避
※自身より仲間を優先、被弾時は【激痛耐性】で耐え援護を続ける
「可能な限り共に戦う皆さんの安全も確保したいですね


ヴァルダ・イシルドゥア
智を尊び、学を愛するものたちの学び舎
みなが一様に目を輝かせ乍ら勉学に励んでいる

そんなひとびとの……いいえ、生徒たちの
そして、精霊たちの貌を
不安と恐怖に曇らせてしまうことのないように
私は武器をとりましょう
それが、私のおつとめなのですから

不安はある
戦うことへの恐怖も
でも、

広場で敵を迎え撃つ猟兵たちと行動を共に
囲まれて背後を取られることのないよう、出来る限り壁や遮蔽物を背にして戦う
ドラゴニックエンドを主軸に
負傷度の高い個体を優先して攻撃し各個撃破を目指す
頽れそうな仲間がいる場合、生まれながらの光で回復を

参りましょう、アナリオン
私は、逃げないと決めたのです

……ただのひとりも、通すわけにはまいりません!


アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)と一緒に行動

ユエちゃん音楽好きだし、精霊の音楽祭なんて興味津々なんじゃないかな?
精霊のためにも、ユエちゃんのためにも早いとこオブリビオンを退治しなきゃね。

選ぶのは広場。

守る範囲は広くなるけど動きが阻害されるよりはいいかな。

範囲で攻撃してくるなら、範囲内に居る仲間の前に複製した盾を飛ばして【かばう】からの【盾受け】。

あとはいつものように【戦闘知識】を生かして囲まれないよう注意しながら【挑発】して【おびき寄せ】て持ち物で【受け】たり【見切っ】たり【防御】したり【耐えて】みせたり。
コルノの【援護射撃】も含めて【時間を稼げ】ばユエちゃんや他の仲間が敵を倒しやすくならないかな。


月守・ユエ
アルバさん(f03401)と一緒!

折角の音楽祭を邪魔しようとするなんて許さないよ!
ましてや精霊さんの音楽祭!
絶対台無しになんてさせないんだからーっ
全部やっつけるーっ!

とはいえ、敵も複数いるから
序盤は「狩猟女神ノ戦歌」を歌っていこうか!
「物騒な物で綺麗な自然を損なう奴らをぶっ飛ばそう」
頭上に月の幻影が輝き
歌に応じ猟兵達へ鼓舞の戦歌を送る

攻撃の隙見つければ
「オルタナティブ・ダブル」
”月影”と人格交代
高速詠唱で呪詛と殺気を織り交ぜ
戦を愉しむ狂気の感情を聲に込めて【死刻曲】を歌い放つ
昏い月の輝き帯びた黒き音響刃を放つ
「ユエが音楽祭楽しみにしてるなら
早く終わらせないとー!
アルバさん、ガンガンいくぞ~!」



 岩肌に冷やされた涼風が、瑞々しい草花を小さく踊らせる。
 澄んだ水の流れは耳に優しく、せせらぎの音はまるで揺れる植物とリズムを合わせているかのようだった。
 そんな景色を、ティル・ライハ(好奇心の末・f04613)は少しばかり眺める。
「しっかし、迷宮内が自然で溢れてるってスゲェな! 綺麗だし、俺の世界に似てて気持ち良いし──」
 想起するのは、故郷とその世界。何よりも美しい景色を誇るそれを思い出させるのだから、この光景に一瞬目を奪われるのも自然なことだったろう。
 だから、響いてくる異音にすぐ視線を戻している。
 一度は静まったかに思えた洞窟を、再び騒々しさが満たしていた。
 後方から命令を受けたのだろうか、ポルターガイスト達が後続の個体で一層纏まって、一気呵成の進軍。集団で広場へとなだれ込んできているのだ。
 どこか機械的な意志を思わせる侵攻。
 道中の自然を蹂躙することを厭うことはないだろう。
 だからこそ、こつりと一つ靴音を響かせて。月守・ユエ(月ノ歌葬曲・f05601)は真っ直ぐそれに立ちはだかっている。
「折角の音楽祭を邪魔するなんて──ましてや精霊さんの音楽祭なのに!」
 美しい瞳色で見上げるのは、そこに漂う淡い光を見ようと思ってのこと。
 けれど先刻までいた精霊は全てその姿を隠していた。
 恐怖もあるし、悲しみもあろう。
 自然に棲まう彼らは歌を風に響かせて、木の実や石から可愛らしい楽器を作り出す。音を響かせるものも、場所も、全部が自然と一緒なのだ。
 なのにそれを守る力がない。
 だからそれが傷つけられたら一層、哀しみに暮れるしかないだろう。
 そんな姿は見たくない。
 同時にユエは、単純に音楽が好きで、そんなお祭りを邪魔させたくないから。
「──許さないよ。絶対台無しになんてさせないんだからーっ!」
「そうだね。精霊の為にも」
 ユエちゃんのためにも、と。
 優しい視線を送るのはアルバ・ファルチェ(紫蒼の盾・f03401)。
 穏和な瞳をユエに向けながら、その心に内在するのは強い意志でもある。ユエの音楽を愛する心を知っている──だからそれを護りたいんだと。
 視線を奪われてしまうような端正な顔を、涼やかに前に向ける。その仕草にもまた伊達男の風情を残していたけれど、携える盾は何よりも堅固。
 ポルターガイスト達は攻撃できる距離に入ると、凶器を一斉に放とうとしていた。アルバは迷うこと無くその面前に出ると、正面に向けた盾を光らせる。
 周囲の方が暗くなったかと思うような、目を惹く美しい耀き。
 瞬間、ディーラーがカードを広げるように手で空を撫で、盾を空中に複製していた。
 Molti Scudi(シュゴノイシ)。
 一瞬で広範囲に広がった二十を超える盾の群は、飛び交う椅子や皿、蝋に刃の全てを受け止めていく。
 甲高い金属音に、木材がひしゃげる音。陶器の割れる音が響く。それを余さず盾の壁で阻むアルバは、自身も無傷のままに守り手を全うしていた。
「ユエちゃん。敵の攻撃は僕が引きつけておくから」
「ありがとう、アルバさん。それじゃあ……僕はまず、歌わせてもらうね」
 ユエは笑み返して、一つ深めに呼吸した。
 皆を見て、改めてにこりと微笑むと──唇から歌声を紡ぐ。
 空気を一変させるかのような鮮麗な声だった。心を昂ぶらせるメロディに、剣戟を想起させるリズム。頭上に輝く月の幻影が魂を照らす、それは戦う者のための歌。
 狩猟女神ノ戦歌(ルーナ・プレリュード)。
 ──嘆きの大地に、戦場に降り立つ我らに、勝利の光を。
 歌が空間を彩るほど、猟兵達の戦闘力が増強される。
 勇烈な力を得たティルは、そのまま壁沿いに奔っていた。アルバが広げる盾の脇をくぐり、射線とは別の方向から敵を見る形だ。
 無論、こちらから敵が窺える以上、敵からもこちらは見える。だからティルを攻撃してくるポルターガイストもゼロではなかった、が。
 飛んでくる革張りの本が空中でナイフに撃ち落とされる。ティル自身が正確な投擲で敵の攻撃を防いでいたのだ。
「そうそう当たりはしねぇよ」
 続いて飛来する皿も、投げた刃で方向をずらした。
 連続で凶器が飛んできても、ティルもまた二本のナイフを扱っている。間断なく敵の攻撃に合わせることで、ほぼ全ての攻撃を逸らしていた。
 敵の隙を見つければ、本体にナイフを投げ放つ。透明度を持つ霊体ではあったけれど、貫通したナイフは確かに深い傷を負わせていた。
「ぽるたーがいすと、ってのはゴーストみてぇな物らしいが──ナイフは効くんだな」
 ならば躊躇う理由もなく。
 ティルは連続で刃を投げ、一体一体を確実に撃破していった。
 と、その途中で攻撃を止めたのは第六感が危険を告げたからだ。素早く飛び退くと、その足元を青白い炎が焼いていく。
 敵のパイロキネシス。
「こればっかりはナイフじゃ撃ち落とせねぇか」
 それでも、長く自然の世界で暮らした感覚が、敵の攻撃を読んでいく。焔が燻る音も鋭敏に感じ取って、うまく距離を保つことで対応していた。
 勿論、複数体で攻撃されれば簡単には避けられない。だが敵がこちらに迫ろうとしてくればくるほど、こちらの攻撃だって当てやすくなる。
「もらうぜ」
 その先頭の一体へ、すかさず投擲。高速のナイフは違わず突き刺さり、その個体を四散させていく。

 ポルターガイスト達は進軍が足止めされたことに、何かを感じたろうか。
 或いはそれも命令に則った単純な判断かもしれない。凶器を操るのを中断した一部の個体が、耳障りな騒音を上げ始めていた。
 衝撃音のようでもあり、ノイズのようでもある。少なくともそれが精神を侵し、こちらの判断力を阻害するものであることに違いはなかったろう。
 ラップ現象。
 音楽を識らぬ霊体達の、唯一の唄。
 歪んだ音律は、尋常の人間ならば耐えることは出来まい。苦悶にうずくまるか、心を乱されて平静を失うか、倒れるか。
 それは猟兵ですら苦痛に苛む程のものだろう──けれど。
 それが効果を現す直前に響いた別の音があった。
『──』
 騒音の中でも耳に届くのは、不可解なことではない。その音は逆位相の音波でラップ音を相殺していたのだ。
 それは淑やかな声音で詠われる歌。
 声の主は、茲乃摘・七曜(魔術人形の騙り部・f00724)。
 黒百合のあしらわれたワイドブリムで目元を隠して、見えるのは黒彩の唇に白い肌。モノトーンの印象の中で、ドレスもイヤリングもまた何ものにも染まらぬ漆黒だった。
 穏やかに、静やかに。
 唄う旋律までどこか色彩を抑えている、ミレナリィドールの淑女。
 歌声が輪唱となって響くのは、宙に蒸気機関拡声器──Angels Bitを浮遊させているからだ。それが七曜の歌を拡声させる効果も生んで、ラップ音を飲み込んでしまっていた。
 雑音をかき消して、歌に塗り替える。
 土砂を清らかなせせらぎで押し返して、全てを透明にしてしまうように。
 こともなげにそんな芸当をこなしてしまう、その表情すら帽子に潜んで覗うことは出来なかったけれど──声音がどこまでも淀みないことだけは確かだった。
 ラップ音の気勢が弱まると、七曜は仲間に声を向ける。
「あの、ラップ現象……? でしたか……? あちらは私が対応しておきますので。皆さんはどうぞ、ご心配なく継戦を」
 はい、と。それにこくりと頷く少女の姿があった。
 躊躇いがちだけれど真っ直ぐに。
 陽のような橙の瞳で前を見ている、ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)。
 濃藍の仔竜を傍らに、敵陣に相対していた。
 たん、と地を蹴った足取りもその表情も、儚げな部分はあった。
 竜駆る騎士は、まだまだ歴戦の徒ではなく……敵に対して完全な勇猛果敢ではいられない。森から出た少女は確かに、自然の枠から外れた存在に対する怖さもあった。
 敵は容赦なくヴァルダに目を向け、凶器を揺らめかせ始めてもいる。だから立ち止まってしまえばきっと、手も震えるかも知れない。
 それでもここには護るべきものがいる。
 智を尊び、学を愛するものたちの学び舎。
(「一様に目を輝かせ乍ら勉学に励んでいる、そんなひとびとの……。いいえ、生徒たちの。そして精霊たちの貌を──」)
 決して、不安と恐怖に曇らせてしまうことのないように。
「私は武器をとりましょう」
 ──それが、私のおつとめなのですから。
 ヴァルダは、ポルターガイストが凶器を弾丸のように放っても立ち止まっていない。
 飛来したそれをすんでで避けて尚奔る。横に逸れて、壁を背にして囲わせず、守りを意識しながらも敵へ接近していく。
 不安はある。戦うことへの恐怖もきっと──でも。
「参りましょう、アナリオン。私は、逃げないと決めたのです」
 キュウとちいさな、しかし確かな鳴き声が聞こえた。
 ずっと共にある兄のような存在。その仔竜は瞬間、まるで太陽のような光を纏った。
 眩しくて暖かな光。優しい心地。それを感じさせながら、アナリオンは優美な竜槍へと変化していた。
 手に握るその存在が、それを心強いと思う気持ちが、騎士の証。
「……ただのひとりも、通すわけにはまいりません!」
 光の流線を描いて、ヴァルダは槍を突き出した。その瞬間、確かにヴァルダは勇壮だったことだろう。霊体を貫いた槍は、複数体を一息に撃破する。同時に輝きを湛えた竜の形に戻り、更に数体をなぎ倒していった。
 背後が無理なら両側からと、ポルターガイスト達はヴァルダを凶器の攻撃で挟み撃とうとする。が、それはヴァルダまで届かない。
 スフォルツァートの声音が響いていた。
 七曜が歌唱に混ぜる、子音を強めた印象的なパッセージ。それがAngels Bitsを通して衝撃波となり、家具を吹き飛ばしていたのだ。
「可能な限り、安全は確保させて頂きます」
「ありがとう、ございます……っ!」
 ヴァルダは即時に反撃に出て、両側にいた敵を穿っていく。
 敵が再びラップ音に集中してこようとすれば、七曜は既にその前兆を感じ取っていた。
 身じろぎに表情の微細な変化。それを見逃さず、先んじて歌を朗々と反響させて打ち消していく。
「精霊の音楽祭でしたか……台無しにされないためにも、頑張りましょう」
 改めて呟くその声音までどこか穏やかに。
 歌と矛が、確実に敵を押し戻し始めていく。

 ポルターガイストは数を大きく減らしつつあった。
 広場を満たすほどであった軍勢も、今や勢いに陰りが見え始めている。
 道の奥、最後方には未だ多くの敵が残っているようだったが──全体で言えば既に半数以下。形勢の逆転が起こりつつあった。
 敵陣も看過はせず、ばらばらに動くことでこちらを乱そうとしている。
 けれどそんな陽動がアルバに通じることはない。
「進軍したいなら、僕を斃さない限りは不可能だよ」
 挑発して誘き寄せる行動も、圧倒的な防御力を誇る壁があるだけ説得力が強い。元より深い思考を持ちえない敵達は、数の減った凶器をその盾に無駄撃ちするばかりだった。
 アルバは隣に目を向ける。
「ユエちゃん」
「うんっ、今がチャンスだねっ」
 黒髪をふんわり揺らして、ユエは頷く。
 敵の勢いが弱まって、その攻撃の手も消費された今が猛追の好機。
 ──だから、後は任せるよ?
 ユエがそっと心の声で触れるのは、もうひとりの人格“月影”。
 上弦が下弦になるように。湖面の月が空の月と取って代わるように。ユエの代わりに表に顕れた月影は、愉快げに笑みを見せていた。
「ふふっ、とっても楽しそうな戦場だね♪」
 戦いの渦中にあって、魅力的な表情に宿すのはそれを愉しむ心ばかり。
 月の狩人か、宵の死神か。月影は生と死の行き交うその風景にこそ生き生きとしたものを浮かべる。
 その狂気の感情を聲に込めて、詠うのは死を創造する歌だった。
 死刻曲(キミニシヲキザム)。
 ──サヨウナラ、愛すべき生命よ。
 冷え冷えとしながら、どこか惹き込まれずには居られない。そんなリズムの旋律を、耳を惹く特徴的な声で織りなしていく。
 その声音は、昏い月の輝きを帯びた音の刃を生んで放っていた。
 まるで歌そのものが魂を切り刻むかのように。刃はポルターガイストをいともたやすく両断して散らせていく。
 純粋なまでの心で楽しみながら、しかし月影は別の目的も知っていた。
「ユエが音楽祭楽しみにしてるから、早く終わらせないとー! アルバさん、ガンガンいくぞ~!」
「うん。そうだね、休まずに行こう」
 ユエのためを思えば、早期決着はアルバもまた望むところ。
 この間にも飛んでくる家具を的確に防御しながら、傍らに目線を遣っていた。
「さあコルノ、手伝ってくれるかな」
 小さな鳴き声を聞かせながら飛ぶのは、柔らかな毛並みの可愛らしい小竜だ。
 今も宙を舞う凶器が雨のようだったけれど、コルノはこぶりな翼をぱたつかせて、空中を泳ぐように翔け始めていた。
 途中で薄っすらとした光のヴェールに包まれるのは、ドラゴンランスとしての姿に変わるから。
 飛んでくる椅子を叩き落とし、本を突き破る。どこまでも真っ直ぐの軌道を見せるコルノは、アルバの意をしっかりと体現するように、そのままポルターガイストの一体を貫いてみせた。
 敵がコルノに対応しようとする頃には、月影が歌を重ねてその個体を切り裂いていく。
 広場の敵が数えられるほどになれば、ティルも深くまで攻めて行けた。
 パイロキネシスの前兆が見えようと退くことなく──スピード・サバイバルを存分に行使して全ての攻撃を避けきってみせる。
「もう、無駄だぜ」
 それは家具も例外ではなく、前進しながら右左。軌道をずらすことで掠めさせもしなかった。同時にナイフを放って敵を串刺しにして、広場を静寂に近づける。
 残った敵が捨て身で前進してこようと、惑わないのが七曜。衝撃波で払いのけることでまともな侵攻さえ許さない。
「後少しです。このまま、攻撃をお願いできますでしょうか」
「はい……!」
 壁に追いやられた敵を討つのはヴァルダ。
 直進して放った槍が、狙い違わずポルターガイストを穿ち、広場に攻め込んだ敵の全てを消滅させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アノルルイ・ブラエニオン
ポルターガイスト?
音を妨げるではないか! 私の天敵だ

それでも、音楽祭とくれば私が行かないわけにはいかんなぁ
押し通る!

●対応
敵がテレキネシスを使うタイミングを【見切り】、防御態勢をとった上で攻撃範囲に巻き込まれる

その後、敵が集まっている所に突撃し、語る

「家具は乱れ飛び
家屋はひとりでに鳴る
世界の理 乱す者!
その名はポルターガイスト!
騒音の霊 ここに在り!」

語る事でユーベルコードを再現、テレキネシスで攻撃する
攻撃後は【ダッシュ】で離脱


劉・碧
これはまた、集団でのご来訪か
こんなに多いお客さんは中々お目にかかれないが、俺が怯む理由にしちゃならないなァ
軍勢、しかもポルターガイストときたらテレキネシスかね
家具を念動力で動かすとは器用なもんだ
ぶつけてくるなら躱して見せよう

さて俺も一端の猟兵並みに戦おうじゃないか
ダガーや斧は投擲したり力任せに脳天に振り下ろす
それが無くなれば素手攻撃に切り替える
俺、ダガーと斧以外は武器なぁんも持ってないんだけど…拳も脚も武器になるんだぜ
よっと間合いを詰めて【凶拳八極】を叩き込んでやろう
なぁにちょっと痛いだけですぐに意識も飛ぶだろうよ
※共闘・アドリブ等あればお任せします



 ふわり、ふわり。
 隠れていたはずの仄かな光がひとつ、ふたつ。ゆっくり宙を舞っていた。
 小さな人の形をした耀き……精霊。
 僅かに静けさが戻ったことを嬉しがっているようでもあり──どこか、猟兵達に声援を送っているようでもあったろうか。
 それは迷宮に元の環境が戻りつつある証拠だった。
 けれど──道の奥からは尚、ポルターガイストが迫りくる。
 残った勢力の全てなのだろう、一層守りを捨てて侵攻してきていた。先刻よりは少数だがそれでも軍勢には違いない。
「最後まで、集団でのご来訪だな」
 漆黒の髪をそよ風に流して、劉・碧(夜来香・f11172)は見つめる。
 端正な容貌を少しも崩すこと無く、足は既に前へ。待つまでも無いとばかり、細道の方向へと歩んでいる。
「こんなに多いお客さんは中々お目にかかれないが……怯む理由にゃならないからなァ」
「勿論さ! 音を妨げるだなんて、私の天敵だけれどね──」
 アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)も朗々とした声音で続いて前進する。
 赤が目を惹く派手な服装を揺らして、リュートをぽろんと鳴らしながら。
 音楽祭とくれば、吟遊詩人が行かないわけにはいかないのだから。
「──押し通る!」
 アクセサリーをちゃらりと鳴らして突撃。アノルルイはポルターガイストがテレキネシスを行使するその直前に、その只中へと入り込んだ。
 自然に語らう詩人そのもののように。物語を彩る弦音を鳴らしながら、霊体達に聞かせるのは伸びやかな声だった。
 ──家具は乱れ飛び、家屋はひとりでに鳴る。
 ──世界の理 乱す者!
 ──その名はポルターガイスト!
 ──騒音の霊 ここに在り!
 吟遊詩人は言の葉を紡ぐ(バーズ・テイル)。響き渡った声音は、岩肌に跳ねて残響を聞かせるばかりではない。
 飛んできた家具が宙に一度停止していた。
 ポルターガイストがそれらを操る力を、アノルルイが再現していたのだ。
 一瞬前とは逆に、放射状に飛んだ凶器が敵陣を襲う。反撃もままならぬ敵達は、複数体が自分の武器で息絶えていった。
 アノルルイ自身はすぐに飛び退いて離脱している。
「やはり、雄大な自然の中で吟ずるのはいいものだな! 精霊と語らうのもまた興味深そうだ」
「ま、そのためにも早めに勝負をつけるかね」
 入れ替わりに、碧が疾駆していた。
 半数以上の敵が散ったとは言え、未だポルターガイストは複数残っている。凶器を携えた個体は即座にそれを放ってきていたが──碧の攻撃には幾分、遅れる。
 ダガーの投擲。空を裂く衝撃が敵の一体を穿っていた。
 飛んでくる家具は、敵数が少なければこそ弾道を読むのも難しくはない。うまく体をずらすことで掠めるにとどめ、碧は尚前進していた。
「お次はこいつだ」
 連続で投げ放つのは斧。縦に回転した刃が違わず霊体に喰い込んで、その生命を刈り取っていく。
「やあ、見事なものだ。唄にできそうな戦いぶりじゃないか」
「持ってる武器で戦ってるだけさ。一端の猟兵並みにな」
 アノルルイに応えながらも、碧は既に手持ちの武器が無かった。
 だが、それで下がるわけはない。
「しっかし、家具を念動力で動かすとは器用なもんだ」 
 呟きながら椅子と皿をかいくぐり、間合いをゼロに詰めている。
 力を込めるのは、自らの肉体だ。
「拳も脚も、武器になるんだぜ」
 まるで陽炎のように空気が揺らぐ。碧は掌に濃密な気を巡らせていた。
「なぁに、ちょっと痛いだけですぐに意識も飛ぶだろうよ」 
 刹那、繰り出したのは凄まじいほどの掌打。
 ──凶拳八極(キョウケンハッキョク)。
 風も追いつかぬ速度で命中したそれは、衝撃を霊体の全身に広げて爆発的なダメージを齎す。
 真正面から貫かれたポルターガイストは、飛散するように消えてなくなった。
 訪れたのは静寂だ。
 碧は一度だけ息をついて肩を鳴らす。
「一応、片付いたか」
「そのようだね。尤も、一番の敵が残っているようだけれど」
 アノルルイが目を向ける道の奥に、一体の敵がいた。
 それはポルターガイストではなく、彼女らに機械的な意志を与えていたもの。
 すた、すた、と。
 静かに歩み出るその影が、逆侵攻を指揮する元凶だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『邪を祓う巫女』ヴェルぺ』

POW   :    封印の儀
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【式符から生まれた式神】が出現してそれを180秒封じる。
SPD   :    呪返の儀
対象のユーベルコードに対し【鏡から全く同じユーベルコード】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    結界の儀
全身を【殺生石と呼ばれる大岩】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクネウス・ウィギンシティです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●破邪の静謐
 それは魔導蒸気文明の生み出した機械人形だった。
 邪を払うものとして造られた彼女は、嘗て人を助ける存在でもあったろう。
 だが長い戦いの中で過去の存在となり──骸の海を経たその命はもう、オブリビオンでしかありえない。
「邪を払い、全てを静謐に帰させましょう」
 迷宮の上に居を構える人々の生命も、迷宮に入ってくる者も。最後には、手下として使った霊体達さえ。
 全てを消し去って邪のない安寧を保つ。それが機械人形に残された意志だった。
「……歌も、音楽も。全部、邪です」
 ぽつりと呟きながら。
ヴァルダ・イシルドゥア
浮遊霊の多くが象っていた『ヒトガタ』に
私は武器を振るうことを躊躇いかけた
幼げな姿が、まるで自分を責めているような気がして

父さま、母さま……、

竜槍を確りと握り込み己を律する
少女のかたちが放つは紛れもない殺意
……誰も、連れて行かせない

私にはそれを為すためのちからがある
彼女が全ての生命を『邪』と称するならば
私は照らそう、数多の生命の奔流を

『汝、誰が為に祈りを捧げんとする』!

それさえも忘れてしまったというならば
最早……あなたこそが『邪』そのものなのでしょう

前衛にて賢者の影を主軸に攻撃
傷付いた仲間に攻撃が向いた場合出来る限り庇えるように
生まれ乍らの光を交えて仲間の生存を優先

ここは、一歩も通しません……!


アノルルイ・ブラエニオン
こいつ……!
音楽を完全に否定するのか!
これまで出会ったオブリビオンとは違うようだな
(※比較対照がキマイラフューチャーのエルフ)

ええい! 私は耳が確かでない観客が一番嫌いだ
こいつのためになど弾かんぞ
だが音楽の力を知らしめてやろう!

【楽器演奏】【歌唱】【パフォーマンス】【鼓舞】を活用
【サウンド・オブ・パワー】を使用
味方の戦意を高揚させ続ける
聞け! 我が怒りを!

・歌詞
すでに死を経験していながら
いまだ死の前に立つものよ
半壊した心臓を掲げ
美しき世界へと踏み入らんとするものよ
知れよ! 世界の理を!
時は未来に向かって進む
過去に安らえ お前の時は
すでに過ぎ去った!

「音楽は善きものだああああああああああ!!!」


アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)と行動。

歌や音楽まで邪、ね。
それらで邪を払う事もあるだろうに…オブリビオンになってしまった存在はやはり悲しい存在だね。

ユーベルコードを封じる力があるみたいだけど、僕はそれに頼った戦い方はしないからね…培った技能で対抗してみせる。

【おびき寄せ】で式神も僕に引き付けられないかな?
あとはコルノの【援護射撃】や【武器落とし】で式符を破ってしまったり落としたりとか…。
挑戦してみるだけはしてみようかな。
ダメだったとしても普通の攻撃を【かばう】とか【武器/盾受け】【見切り】【オーラ防御】で防ぐ役割はちゃんと果たしてみせるよ。
僕は『盾の騎士』だからね、守るのは本懐だ。


月守・ユエ
アルバくん(f03401)と一緒
アドリブ可

…確かに歌と音楽も時には沢山影響を及ぼす術

だけど
歌は、音は
言葉にできない心の本音を伝える為の大切な導だ

時に邪を齎すかもしれない
でも、僕はそれすらも誰かの導になるのだと信じてる
君も嘗ては誰かの為に生まれてきたはずなのに

オブリビオンになると
その存在理由も否定してしまうの?

――なら
せめて嘗ての存在理由が穢されないよう
君を綺麗に葬ってあげる

オルタナティブ・ダブル
月影、過去に終止符を打つ為の【死刻曲】を
呪詛、殺気を込め
歌の音響刃を一秒でも早く捧ぐ

コミュ力で仲間との連携

周囲を見て回復が必要な時
ユエの出番

優しさ、祈りを込め
【月灯ノ抱擁】を歌う

さぁ
僕らの音
その身に刻め


茲乃摘・七曜
心情
全てが邪ですか…ならばより明確に意識を逸らせない程に歌い上げましょう

指針
敵の術の阻害や敵の意識を引き付けることによる仲間の援護
「特に殺生石を割れる方の援護を致しましょう

戦闘
三重の輪唱で【属性攻撃】【範囲攻撃】を静寂を願う災魔の気を引くように激しく歌い上げる
※タランテラのようなクラッシック調の歌で
攻撃は火焔の矢、氷結の矢等で行い災魔の周囲で温度差、湿度差を起こし鏡の動作不全を狙う
「鏡を割るのは難しくても曇らせるのは何とかならないでしょうか…?

隠し札
二挺拳銃を伏せ札にしておき
『流転』で封印の儀で出現した仲間に向かう式神の阻害を行う
「どれだけ式神がいるかは不明ですが…攻勢維持の為、頑張りましょう


フローライト・ルチレイテッド
「よろしい、ならば戦争です!ロックは反抗するもの!カモン、バックバンド!!」
【範囲攻撃】を用いてUC【Crazy Wonder Wonderland】を使用して、周囲の霊体の残滓を、片っ端からロックバンド化した上で全員で演奏し、UC【Evolution World】を発動します。
【鼓舞】【歌唱】【楽器演奏】【パフォーマンス】【存在感】【誘惑】【範囲攻撃】を駆使し、兎に角派手に演奏して味方を鼓舞します。

攻撃には【野生の勘】【第六感】【見切り】で反応しつつ、【パフォーマンス】で飛んだり跳ねたりしてかわそうとします。
「さあ、拳を突き上げて進め、新世界へ!!」


ティル・ライハ
ん?ん?? イイヤツなのか?ワルイヤツなのか??
元々イイヤツっぽいのが、こう、すげぇ残念だよな…。
でも、音楽はいいぞ、うん。俺は参加したことねぇけど、収穫祭とかで皆でワイワイやる音楽は、イイモノだと思うしな。
んー、それが分からないのは、キカイでも残念だよ

ッつー事で、破壊すっか。……攻撃方法がわかんねぇけど、UC回避が上手そうだから、通常通りにナイフ攻撃でいくか。
皆が戦ってる隙に背後から「目立たない」ように「忍び足」で近付いて「2回攻撃」。バレたら「逃げ足」で離れて再挑戦だな

『SPD 背後からの奇襲狙いで2回攻撃』


劉・碧
あァ、魔導蒸気文明の端くれっていうのはセンスが無いのか?
それとも合理主義か何かかな?
俺は歌も音楽も大好きだけどねェ
娯楽で結構じゃあないか
何の楽しみもなく生きるよりは何倍もマシってものだと思うが…
なぁに?俺の話は聞いてないって?
そっかァ、じゃあ俺たちに壊されても文句言えないよな、な?
仕方ない──狂拳凶脚でその願いごとぶち壊してやるとするか
あァ…それにしてもアンタみたいな可愛らしい人形が、歌も音楽も受け付けないなんて、それは全く寂しいことだ
できればその理由が知りたかったが、今となっては聞くことすらも叶わない…オブリビオンなんてそんなものだよなァ


ワズラ・ウルスラグナ
静謐か。
オブリビオンならば分かるだろうに。
過去になってさえ静かにして居られない者共が居る事を。

安寧や休息は俺も好きだ。次の戦いへの英気を養える。
だから、躯の海に沈むのは御免だな。
悪いが邪な理由で抗わせて貰う。

戦獄龍終極を用い、その状態で他のユーベルコードを使用する。
封じられれば別の技を、打ち消されようと次の手を。
培って来た技能も用いて暴れよう。
我が身、我が経験こそ武具なれば。ユーベルコードだけで戦っているなどと思ってくれるな。
大岩になるのならばそれで善し。何時までも地獄の業火で焼いてやる。好きな時に燃え尽きろ。

過去に還り、躯の海を波立たせぬ様努めると良い。
それが恐らくはお前の望む安寧だ。



 ぴちゃりと雫が落ちる。
 それが大きく聞こえるくらい、薄闇に静けさが降りていた。淡い光達は離れて、岩清水の音までがどこか遠くにあるよう。
 或いはそれは、命も音も全てを否定する機械人形がいるからか。
 『邪を祓う巫女』ヴェルぺ。
 その使命を遂行しようと一歩一歩、迫り来る。
「全てが、邪ですか……」
 その静寂へ、七曜は艷やかな声を落としていた。
 幅広の鍔だから判る程度に小首を傾げて、呟く相づちは決して賛同の意ではない。泰然としながらも上品さを併せた立ち居は、まるで舞台に上った歌い手のよう。
 霊体の全てを従えて世界へ反抗する、そんな強大な存在に対し──一歩も下がらない。
 だからこそ、ヴェルぺも退かずに頷いてきた。
「……そうです。だから、全てを静謐に沈めるのです」
「静謐、か」
 と、言葉を零すのはワズラ。
 その黒龍こそ抗することを厭わずに。爪で地を咬むように一歩前へ出ると、僅かにだけ視線を巡らせてみせる。
「オブリビオンならば分かるだろうに。過去になってさえ静かにして居られない者共が居る事を」
「……もちろんです」
 機械人形はそれを認める。けれど声の調子は全く変わらず、すぐに続けた。
「それもまた、邪でしょう。最期には祓われるべきです」
 その敵意は文字通りに機械的。全ての方向に向いて、全てを傷つける針の塊のようだ。
 ワズラはふむと頷く。
「静寂を崩すものは全てを否定する、というわけか?」
「……ならば、より明確に、意識を逸らせない程に歌い上げましょう」
 七曜は帽子に一度だけ手を添えていた。
 それはまるでカンタータの合図──事実、直後には闇の中を染め上げるように、声音を場に満たし始めている。
 激しくも、どこか踊るようなリズムを伴う美しき舞曲。三重の輪唱で拍を追うメロディは、軽やかさまで含みながらアレグロで音の流線を描いていた。
 その歌声にすぐに魅了された、というわけではないだろう。
 けれどそれは確かにヴェルぺの注意を引きつけて、視線を外させない。
 その一瞬。
 ワズラは戦獄龍終極(マキシマル・アトモスト)──封印を解くことで獄炎を巨大化。自身の体躯までもを三倍に変貌させていた。
 風鳴りの如き咆哮。暴嵐の如き風圧。黒龍は剛烈なる力で腕を振るい、焔を叩きつけていく。
 灼熱に見舞われながらも、ヴェルぺは斃れず防御態勢に移ろうとしていた。
 が、ワズラも易々と許しはしない。
 次手に放つのは戦獄龍焔珠(イグニス・アンダル)。無数の弾丸のように赫炎を撃ち出すことで連続の衝撃を加え、自由を許さなかった。
 その渦中で機械人形が目論んだのは、受け切ることより鏡で反射すること。
 だがそこへ突如白煙が爆発する。
 七曜が火焔の矢と氷結の矢を放ち、ぶつけて蒸気へと爆ぜさせたのだ。
 その衝撃は鏡を破壊するまでには至らない──だが、表面を曇らせ一時的に動作不全に陥れるだけの効果はあった。
「さあ、今が好機です」
「熱き炎をもって応えよう」
 ゆらりと昏い空間に光が立ち昇ったのは、ワズラの持つ巨剣が紅炎を纏っていたから。
 ヴェルぺはどこか、悲しんでみせるかのように見上げている。
「私はただ、安寧を作ろうとしているのです。それを止めようとする心が、判りません」
「安寧や休息は俺も好きだ。──次の戦いへの英気を養えるからな」
 ワズラは手を止めずに返した。
 それが戦いを求む戦獄龍の唯一の、答え。
「だから、躯の海に沈むのは御免だな。悪いが邪な理由で抗わせて貰う」
 刹那、縦一閃。
 紅蓮の斬撃が、機械人形の体に鋭い傷跡を刻んでいく。
 その痛みよりも、金属の焼ける音を不愉快に思うかのようにヴェルぺは目を細めた。
「祓ってみせます」
 猟兵という存在もまた正しく邪なのだと認識し──その排除に心を注ぐように。彼女は鏡を携えたまま式符も構えてみせている。
 ヴァルダはその姿に真っ直ぐ視線を注いでいた。
 今まで戦っていた相手のことが、頭によぎる。
 浮遊霊の多くが象っていた『ヒトガタ』。それに武器を振るうことを、あの時躊躇いかけていたことを。
 あの幼げな姿が、まるで自分を責めているような気がして。
 目の前にいる存在もまた、人とたがいの無いものだから。
(「父さま、母さま……」)
 無垢な金の髪が敵の霊力に揺れて、肌が粟立つようだ。
 だからヴァルダは、竜槍を確りと握り込んで己を律していた。
 その少女のかたちが放つものは、紛れもない殺意だから。
「……誰も、連れて行かせない」
 自分にはそれを為すためのちからがある。
 ぎゅっと足を踏みしめて。その瞳で前を見て。
 奔り出すと共に、ヴァルダは槍を突き出して賢者の影を飛ばしていた。それは歪んでしまった存在に問い糾す、真実の詰問。
「『汝、誰が為に祈りを捧げんとする』!」
「──」
 機械人形は一瞬、口を噤んだ。
 真実を答えねば、影からは逃れられない。
 それでも、嘗て人々の為に邪を払ってきた人形は、今は人々をも“祓う”側になってしまっている。抱えた自己矛盾は如何な言葉すら、真実の力を持ちえない。
 影に縛られるように動きを止めたヴェルぺに、ヴァルダは少しだけ哀しい気持ちも抱いた。
 答えるべき言葉。
 何時か共に歩んだ存在。
「それさえも忘れてしまったというならば。最早……あなたこそが『邪』そのものなのでしょう」
 ならばこの手を止めず、討たねばならない。
 放つ一撃は、ヴェルぺの腹部を貫いて。ひしゃげた金属音を大きく響かせた。

 闇の彼方にまで反響する、剣戟の残滓。
 その音が耳に聞こえることが、身を蝕む痛みよりも苦しいというように。ヴェルぺは少しだけ顔をしかめて、声を返していた。
「私の存在が邪であるかどうかは判りません。けれど、目の前に邪があるのならばそれを祓うのが私の役目なのです」
 それを阻害する者も。
 この世に響く音の全ても。
 邪な物が存在しないほうが、全てものが幸福になるのだから、と。
「幸福、ねぇ……?」
 ティルはずっと、その言葉にも彼女自身にも首を傾げないではいられなかった。
 動機と行いも、あまりにも歪に映ったから。
 彼女は“イイヤツ”なのか、“ワルイヤツ”なのか。
「少なくとも、元々イイヤツっぽいのが、こう、すげぇ残念だよな……」
「何より、音楽を完全に否定することが問題だろう……!」
 と、大股に一歩出て見せるのは、アノルルイ。
 吟遊詩人の身にとってはそれこそが何よりも由々しき事。今まで出会ったオブリビオンとの差異を感じて、小さく呻きを零していた。
 確かに、とティルも頷きを見せる。
「音楽はいいぞ、うん。俺は参加したことねぇけど、収穫祭とかで皆でワイワイやる音楽は、イイモノだと思うしな」
「……心が動くことが、邪を生むのです。ならばそれは安寧を、邪魔するものでしょう」
 機械人形はあくまで応えるばかり。
 だからアノルルイは、堪忍袋の緒が切れたというように。大きく首を振ってリュートを構えてみせた。
「ええい! もうそこまでだ! 私は耳が確かでない観客が一番嫌いだ。だからお前のためになど弾いてはやらないが──」
 それでも音楽の力を知らしめることだけはやらなければならない、と。
「聞け! 我が怒りを!」
 かき鳴らすように弦を響かせて、唄い上げるのは勇壮なまでの歌だった。
  すでに死を経験していながら
  いまだ死の前に立つものよ
  半壊した心臓を掲げ
  美しき世界へと踏み入らんとするものよ
  知れよ! 世界の理を!
  時は未来に向かって進む
  過去に安らえ お前の時は
  すでに過ぎ去った!
 高らかに岩場に跳ね返る旋律は、弦音と共に大きく唸って仲間へ届く。
 それは心を鼓舞して高揚させるように。聴くものを自然に前へと駆り立てるように。猟兵達の力を只管高めて止まなかった。
「音楽は善きものだああああああああああ!!」
 魂からの叫びも相まって、その声と音色はヴェルぺの攻撃よりも疾く全員へ行き届く。
 何よりも、実証を以て音楽の力を示す。
 その意志こそが、仲間を奮い立たせて。皆が再度の攻勢を始める中、疾駆するティルもまた迅風の速度を発揮して、ヴェルぺの横合いにまで到達していた。
 敵の能力を観察すればこそ、正面からあたりに行くのは得策ではない。そう素早く判断した上で、死角を狙う作戦に移っていたのだ。
 スピードは尚落ちず、ティルは一息の間に敵の背後を取る。
 気配を殺し、音を立てずに動くことで──機械人形が振り向くのも一瞬だけ遅れた。
「少しの差だったな。まあ、先手はもらった」
 ティルはそこへ既にナイフを振るっている。
 速度のままの、風が形を持ったかのような斬閃。回避の挙動すら取らせずに、その首元に深い裂傷を刻みこんだ。
 今この瞬間にも、アノルルイの歌声が皆の心を昂ぶらせ、活力を宿らせる。
 その反転像のように、ヴェルぺは静かな声音に寂寞の色を籠めていた。
「善きものだと思えばこそ、いつか悪きものだと思う気持ちも生まれるはずです」
 光に影が生まれるように。
 ならば始めから、それは無いほうがいいのだと。
「──別段、楽しいとだけ思っときゃいいと思うがな」
 と、そう肩をすくめるのは碧だった。
「少なくとも、俺は歌も音楽も大好きだけどねェ。娯楽で結構じゃあないか。何の楽しみもなく生きるよりは何倍もマシってものだと思うが……」
 魔導蒸気文明の端くれっていうのはセンスが無いのか、と、首を傾けて長髪を微かに揺らしてみせる。
「それとも合理主義か何かかな?」
「……ただ、不浄なるものを、失わせたいだけです」
 ヴェルぺが返すのは一方的な言葉だ。
「楽しいと思えば、楽しくないという気持ちもまた生まれるかも知れません。ならば娯楽もまた、邪の種であるはずです」
「つまりは、どうあっても俺たちの言葉は認めねェってことか?」
 碧が柔く息をつく。
 するとそこに一瞬、ハウリング交じりの低いノイズが聞こえた。
 フローライトがピックアップに軽く触れて、今まさに演奏の呼吸を取っていたのだ。
 ずんと足元に響くようなリズムは、六弦で拍をとるリフの助走。
 すっと息を吸い込んだフローライトは、揚々と窟内に声を劈かせた。
「よろしい、ならば戦争です! ロックは反抗するもの!」
 イントロを演奏してみせると、大気に波紋が生まれたように空気の色が変わる。
 スピード感のあるセブンスコードが鳴ると、地面から薄っすらとした光が立ち昇っていた。
「カモン、バックバンド!!」
 集まっていくその半透明は、周囲に散った霊体の残滓。
 それに楽器を持った姿を取らせると自身の側へ。ドラム、ベース、コーラスを加えて曲を彩るバックバンドに仕立て上げていた。
「行くぞ!」
 フローライト達は、リズムのフィルインを機に唄い出す。
『歌おうぜ 俺達は世界を塗り替えていく 拳を掲げしラストは歓声の中 EvolutionNewWorld! Oh、NewWorld!』
 Evolution World。
 強く、明るく、そして巧みに。
 エネルギーに満ちた声音で唄うその曲は、聴くものを新しい世界に誘いながら。沸々と湧き上がる力を与えて戦いを助ける応援歌でもあった。
 仲間を強化する音律は、碧の洗練された肉体にもさらなる膂力としなやかさを与える。
 一足飛びに敵へ距離を詰めた碧は、既にその拳を握り込んでいた。
「まァ、あくまでこっちを倒そうってんなら──こっちも倒すだけ。壊された所で文句言えないよな?」
 だからその願いごとぶち壊してやる、と。
 放ったのは、風が圧縮されてしまうほどの高速の一撃だった。
 狂拳凶脚(キョウケンキョウキャク)。荒ぶる打撃は、機械人形がそれを認識する時間すらなく肩口を破壊する。
 一切の間を作らず、碧はその場で横に廻転していた。
 狂拳に次ぐ、凶脚。
 嵐が生まれたかと思うような風を伴って、その蹴撃は破損箇所へ直撃。強烈な衝撃でヴェルぺの体を吹き飛ばしていた。
 金属片を散らしながら彼女は岩に叩きつけられ、鈍い音を響かせる。

 ほんの少しの、音の合間。
 座り込んでいた機械人形は、猟兵が演奏し唄うその隙間にぽつりと声を零す。
「音は確かに、力を持っているようです。私は今それを、実感しています」
 喉元の破損が生む、雑音交じりの声音。
 それを認めてみせながら、しかし過去から蘇った人形は目的意識を変えることはなかった。
「だからこそ──それは武器になる、争いの道具になる。あらゆる物に影響を及ぼす……ならば歌も音楽も、邪なものではないですか」
「そう、かな」
 アルバは小さな声を返す。
 紫水晶のような瞳を一度瞼で隠してしまうのは、傷ついたヴェルぺの姿と、その存在自身を痛ましく思ったからだろうか。
 けれど静音な声音にも、肯定の心はない。
「歌や音楽は、強い力を持っているけれど。それらで邪を祓うことだって、あるだろうに──」
「……、この世に邪なものがなければ、それも必要のないことであるはずです」
 立ち上がったヴェルぺは指に式符を挟んでいた。
「世界に影響を与えすぎる力で、仮に新しく邪が生まれてしまうならば。存在しないほうがきっと、いい」
 間違っていないでしょう、と。
 殺意だけを確信の裏付けにして、機械人形は霊力を蓄える。
 だからユエは、それに頷くことができるわけがなかった。
「……確かに、歌も音楽も時には沢山影響を及ぼす術だよ」
 そっと胸に手を当てて、僅かにだけ目を伏せて。
 聞かせる言葉は心の吐露のようでもあった。
「だけど、歌は、音は。言葉にできない心の本音を伝える為の大切な導だ」
 月の無い世界に月が顕れたような。向けたのはそんな印象を抱かせる鮮麗な瞳だ。
「時に邪を齎すかもしれない。でも、僕はそれすらも誰かの導になるのだと信じてる」
「……」
 ユエは真っ直ぐに踏み寄る。
「君も嘗ては誰かの為に生まれてきたはずなのに。オブリビオンになるとその存在理由も否定してしまうの?」
「私は──」
 ヴェルぺは秒にも満たない時間だけ、視線を彷徨わせていた。
 ずっと昔には、誰かと共に歩む未来が見えていたかも知れないから。
 けれど今そこに映るのは、骸の海越しの濁った視界。
 だからその一瞬はきっと、ただの過去の残滓。
 未来を拒み未来に拒まれたその存在は、すぐ後には霊力を脈打たせて式神を顕現させている。
「あなたの言葉も、音楽も、同じです。消えれば全てが無に帰する、ただの邪なのです……」
「……それが、骸の海に落ちてしまった君の答えなんだね」
 ユエは心を自身の奥に沈めながら、変わってしまった人形に言葉を贈る。
「──なら、せめて嘗ての存在理由が穢されないように。君を綺麗に葬ってあげる」
 月影、と。
 ユエが意識の水底に呼びかけることで人格は入れ替わった。
 ──過去に終止符を打つ為の歌を。
 代わりに内奥へ沈みゆく人格が残した言葉に、月影は頷いて。その声音に深い呪詛を溶け込ませていた。
『──』
 紡ぐ歌声は、零下の月夜の如く冴えていて、血塗れの刃のように容赦ない。
 音を昇り、降りる旋律は神秘的な美しささえ感じさせる。だが鋭利な殺意を籠めたそれは、命に訣れを告げさせて死の証を刻み込む唄。
 宙が波打つと、月光纏う音響刃が出現して、飛来。瞬く間にヴェルぺを通り抜け、その片腕を斬り飛ばしていた。
 よろめく機械人形は、それでも式神を一斉にけしかけてくる。
 が、獰猛な命を与えられた鳥獣達の動きが、一瞬止まった。
 視界に鮮やかな閃光が映ったからだ。
 それは、アルバがオーラを操って作り出した誘引の光。
 こっちへ来なよ、と。平素は人を惹き付けて止まないその麗しさが、異形の存在すら魅惑してしまうかのように。
 誘き寄せる笑みが、式神の矛先を確かにアルバ自身へ向けさせていた。
「いい感じだね、そのまま僕から離れないことだよ」
 迫りくる軍勢にも、アルバが下がることはない。侵攻を盾で受けきりながら敵をその場に押し止める。
 すると空中を踊る月影の音刃が横合いから鳥獣達を切り捨てていた。
「ありがとう」
「うんっ。ボクはこのまま音を捧げていくから──」
 ──最期まで手加減無く、死を与えてあげよう?
 月影が言えば、アルバは頷いて向き直った。
 ヴェルぺは残る片腕に新たな式符を握っている。だからアルバがそれ以上の攻撃を、重ねさせない。
「コルノ、あれを貫いて!」
 声とほぼ同時に、コルノはアルバの肩から飛び立っている。
 飛行する軌道を軸にして、くるりと体を横に廻すのは回転力をつけるためだ。羽で加速して風に渦を巻かせながら、その角だけは前に向けて。
 瞬間、敵に接触したコルノは、正確に手元を穿ってその式符を打ち落としていた。
 同時に音の刃が猶予を与えず飛びかかる。袈裟に命中した月光の流線は、機械人形の上半身を抉って破片を飛散させた。

 金属が軋んで、歪曲した高音が聞こえる。
 ヴェルぺは立ち居を保ちながら、既に足取りも覚束なかった。
 顔には苦痛の色さえある。
 けれど彼女が嘆くのは、唯一の目的を放たせぬ事ただそれだけ。
「歌に、音……邪なものを祓えず……終わってしまうのですか」
「最期まで、それを気にするんだな」
 碧は呟く。気勢を弱めたわけではなく、ただ疑問を掛けるように。
「アンタみたいな可愛らしい人形が、歌も音楽も受け付けないなんて、それは全く寂しいことだ。なんでそうなったのか、理由を全部聞いてみたいが──」
 碧はそこでいや、と首を小さく振った。
 その全てを知ることは、きっと叶わぬことなのだろうと判っているからだ。
「オブリビオンなんてそんなものだよなァ」
「……そう思うと、やはり、悲しい存在だね」
 歌も音楽も、その良さを識ること無く。
 未来にも目を向けられず終わっていく少女。
 そうでなければいいのにと。アルバは単純にそう思う。
 けれどそれが世界の敵ならば──碧はもう止まらず疾走していた。
 全ての力を乗せた拳、そして蹴撃。まるで爆発のような衝撃を齎す二撃はヴェルぺを大きく後退させて地に膝をつかせる。
「……物理攻撃ならば、動きを封じてしまえば……」
 ヴェルぺは呟きながら式符を撒いて、式神へと変貌させていた。
 だがそれが猟兵を襲う前に、空を裂く弾丸がある。
「攻勢維持の為です。撃ち落とさせて頂きますね」
 獣の形を取った群れにも、まるで惑わぬ黒色の声音。
 くるりと廻した二挺拳銃を手にとって、銃口を真っ直ぐに向けている七曜だ。
 愚者の名を冠するその銃は、今の今まで伏せていた隠し札。マズルフラッシュを焚かせてばらまく弾丸は魔導の効力を籠めたものだった。
「どれだけ式神がいるかは不明ですが……」
 言いながら、両手で操るそれの手数が不足することはない。
 雨のように飛んだ弾は、魔導回路による封印術式を実行。宙に無数の漆黒を奔らせて、式神の一切の動き封じ込んでいた。
 ヴェルぺは、微かに目を見開いて惑う。
 直後にはそれを鏡に映し、一部でも再現しようとするが──それを防ぐのがアルバ。
 二者の間に割り込むことで鏡像を消し、不完全な状態で吐き出された魔力をしかと盾でいなしていた。
「やらせないよ」
 何より『盾の騎士』だからこそ──守るのは本懐だ。
 この間にフローライトは尚演奏の熱気を増していた。
 三連符が激しく舞い踊るギターのアルペジオ、シャウトを交えたパワフルな歌唱。存在感のある音像をそのまま攻撃に転化するように、ヴェルぺを衝撃波で薙いでいく。
 ヴェルぺがそれを跳ね返そうとすれば、素早く勘付いてジャンプ。演奏を続けながらパフォーマンスを披露するように、避けてみせた。
「さあ、拳を突き上げて進め、新世界へ!!」
「うむ、待っているのは未来ばかりだ、過去の存在よ!」
 アノルルイも楽器を鳴らし、そこにハーモニー、そして語りも加えるように洋々たる声を響かせてみせる。
 ヴェルぺはただ俯いて、結界によって見を守ろうとしていた。
「私は……不浄のものに、負けるわけには……」
「不浄か。歌も音楽も、最後までその良さがわからないのは、キカイでも残念だよ」
 その背後に聞こえたのはティルの声だった。
 高速で走り込んでの接近。ヴェルぺは既に体を硬化させ始めていたが──ティルの刃が喰い込む方が疾い。
 一文字に奔ったナイフの一撃が足元を切り裂いて、大きく転倒させた。
 脚が砕け、腕は斬られて、その機械人形は満身創痍だった。それでも横たわった体を動かして、音の全てを反射して跳ね返してくる。
 それがせめてもの、抵抗だったのかも知れない。
 死に向かいながらも、自身の思う邪を祓うことを決して止めないと訴えるように。
 だからこそ、ヴァルダはそれを甘んじて受けるに終わらなかった。
「あなたが全ての生命を『邪』と称するならば──」
 私は照らそう、数多の生命の奔流を。
 闇に陽が昇るような、暖かく眩い光がきらめいた。
 それはヴァルダの生まれ乍らの光。無辜の命を貫こうとする理不尽を、包み込んで癒やす心の力。
 輝きが仲間の傷を癒やしていくと、同時。
 月影はユエに表を譲って意識の奥に下がっていた。
 それは戦闘狂の自身の代わりに、皆を鼓舞できるユエの出番だと確信したが為。
 呪詛の代わりに優しさを。
 殺意の代わりに祈りを込めて──ユエは慈愛の声音で唄った。
 ──君の心が、体が痛むのならば……。
 ──その痛みが消えるまで僕は君の為に歌いたい。
 夜空のような光が、魂を優しく抱きしめる。
 月灯ノ抱擁(キミノイタミガキエルマデ)──痛みを癒すことを願う声音は、流麗で純粋。それでいて、柔らかく美しく。そっと撫でるような心地を与えていた。
 皆が癒えれば、月影もまた声音を聞かせる。
 ──さぁ、僕らの音、その身に刻め。
 月の表と裏が歌を暗闇に駆け抜けさせるほどに、仲間は生命に満ち、機械人形の魂は切り裂かれる。
 過去に消えゆこうとする命を、見据える豪炎があった。
 焔を纏う巨龍、ワズラ。
 敵へ最後に見舞うのもまた、全霊の炎でしかありえない。
「過去に還り、躯の海を波立たせぬ様努めると良い。それが恐らくはお前の望む安寧だ」
 体を引き裂いて放射された地獄の焔は、全てを飲み込む。
 時間の止まった存在を、正しき輪廻へ導くように。ワズラの一撃が機械人形を焼き尽くし、灰燼に散らせていった。
 あとに残ったのは静寂。
 否、戦いの残響が消えていくと、清流の音が聞こえる。
 せせらぎを背景に、草花がそよぐ。
 きらきらと踊るのは精霊だ。
 自然の音達。それは消え去ることなく、邪と祓われてしまうことなく──優しく皆を包むように、洞窟内を満たしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『精霊音楽祭』

POW   :    楽器で演奏するなど

SPD   :    ダンスを踊るなど

WIZ   :    歌を披露するなど

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●精霊音楽祭
 水が流れ草が踊り、風が頬を撫でる。
 自然に祝福された迷宮は、平和を取り戻していた。
 オブリビオンの存在が無くなったそこは、歩み、立ち止まるごとに憩いの気分を運んでくれる爽やかな大地。
 暗がりも精霊達が戻ってくれば明るくなって。
 ひんやりした空気も、音の祭りにはきっと丁度いい。
 だから可憐な精霊もやんちゃな精霊も、皆が猟兵達に感謝のさえずりと踊りを見せて、音楽祭の準備に入っていた。

 ころころと鳴り始めるのは小さな石琴だろうか。
 きゅうきゅうと響くのは可愛らしい草笛に違いない。
 精霊達が音楽祭を始めようとする広場に、魔法学園の生徒達も少しばかり集まりだしていた。
 迷宮の平和が戻ったことに加え、音楽の祭りが行われることも小さな噂になっていたのだ。
 会場となる大きな広場は、不揃いだけれど沢山の人が座れる切り株の椅子がある。天井は高くて、円形の壁は音を綺麗に反響する。
 そこは自然のコンサートホール。
 そんな舞台だから、精霊達も学生の姿が見えて張り切っているよう。
 猟兵達の周りをひらひら舞って、ぜひ一緒に盛り上げてほしいのだと意思表示した。
 歌を唄うのなら、自分達は優しい声でコーラスし、楽器を演奏し、光の舞いで舞台を彩ろう。
 踊るというなら、そこに音楽を加えて自分達もまた踊ろう、と。
 とにかく楽しく奏で、唄い、踊るのが精霊の音楽祭なのだから。『一緒に楽しもう?』と、そう言ってくれるかのように。
 精霊達はふわりと浮いて、猟兵達を舞台へ招いていく。
 今は観客のほとんどが精霊。けれど少しずつ、学生達も増え始めていきそうだ。
 精霊達と一緒に盛り上がってもいいし、それを眺めて憩うのもいいだろう。
 だから音の祭りを──さあ、どう楽しもうか。
劉・碧
歌も音楽も踊りもあるなんて、やっぱりこの世界は最高だ
俺としては体が三つ欲しいくらいには全てを愛おしく思っているんだが、生憎ここには一つの体しかねェんだから仕方ない
ここは音色で愉楽を共にしようじゃないか
楽器はなんでも良いんだが、あるなら二胡を弾こう
これでも結構練習してるから、聴ける程度には上手いと思うよォ
誰かと共演しても楽しそうだ
あァ、楽しいなァ
みんなも楽しそうで、俺としては上等な時間だと言っていいくらい楽しい時間だ
なァに?俺も踊れって?仕方ねェなぁ
そうは言いつつも楽しいことだったら断る気も無いんだけどさァ

※共演・アドリブ等あればお任せします


逢坂・宵
精霊ですか
僕は精霊術師なもので、こういう催しには大変興味があります
専門は星ですから、分野は違うのですが……
どのような音楽祭なのかと、胸が高鳴りますね

歌やダンスは恥ずかしながら不得手でしてね
そのかわりに、横笛をひとつ、演奏させていただきましょう
僕とて音楽は人並み程度に嗜みますから

演目は……そうですね、この世界でみなさんに馴染みのある曲を教えていただき
それを演奏してみましょうか
やはり、演奏するにはみなさんが馴染んでいる曲の方がいいですから
うまく演奏出来ると良いのですが


フローライト・ルチレイテッド
継続で【Crasy Wonder Wonderland】でバンド隊を連れてステージへー。

UC【Peace】使いコーラス隊もつけて、同曲を。バラード調のロック曲ですね。
【歌唱】【楽器演奏】【パフォーマンス】【優しさ】でゴー。

さあ ひそやかに祈るように瞳閉じておくれよ
もう疲れたろ 争う事 憎み合うことも全て
冷えた指で触る そっと見つめてる
見えぬ闇を抱いて そっと俯いた
「どこへ行くの」蒼い空で許し合う術も知らず
星が燃える前に そっと舞い降りて
闇を照らしてゆく ずっと「永遠さ」
争う痛みに救いはない
殺しは悲しいだけ
もう一度 君に会えるなら
今度は上手に笑うから
憎しみの火が消えたなら
平和はきっと叶うから


茲乃摘・七曜
心情
折角ですから唄いましょうか

指針
他属性演出を混ぜ込んだ鎮魂歌
※過去の記憶がない分、在りし日の存在は大切に
「ただ、大々的に歌われるのは嫌がりそうですから密やかに籠めましょう

行動
『流転』風の七属性演出を伴いつつAngels Bitsでの輪唱
※拳銃は使わずビットから魔力弾を飛ばす

氷雪を月光で照らし突風で巻き上げつつ粉砕し
※一度、闇色のベールで覆い隠し
ダイヤモンドダストを陽光で照らし暖かく溶かし
降り注ぐ雨を生み出した新緑の壁へと振りかける
※日の巡り、天気の巡り、自然の巡り等を思わせる感じで過去が足元にあるということを自身の中での葬送にする
「過去を刻み 今が流れ 未来が紡がれる。礎はいつまでも尊き道標


ティル・ライハ
おー、終わったんだな、良かった良かった!
……でも俺、音楽に直に触れたこと無ぇからな…。
でも、ただ見てるだけってのもウズウズするし。。。

出来るかどうか不安なトコあるけど、一緒に踊ってみるか。
大丈夫大丈夫、身軽に動くのは得意だし!って違うか?

『SPD 周りの精霊や生徒達を見習って踊ってみる』


アルバ・ファルチェ
ユエちゃん(f05601)と一緒に行動。
アドリブや色んな人との絡みは大歓迎。

音楽祭、せっかくだから一緒に盛り上げよ!

僕、少しだけど楽器の扱いも出来るから歌に合わせて演奏を。
皆の素敵な歌声を邪魔しないように盛り上げて行こう!

見てるだけの子…精霊でも人でも、そんな子が居たら、声をかけるよ…『一緒に楽しもう』って。
無理強いはしないけど、こんな機会だからさたまには違った自分になってみるのも良いんじゃない?

演奏でも歌でも、ダンスだってお付き合いするよ。

コルノも一緒にダンスを披露するかな?

人も精霊も、ドラゴンだって関係なく楽しんだ者勝ち。

だからもっともっと楽しんでいこう!


月守・ユエ
アルバくん(f03401)と行動
アドリブ、他の人との絡み大歓迎!

音楽祭だ~っ
皆で楽しもうね!

僕、普段は【月灯】という名でネットやライブができる場所で各地で音楽活動してるの!
シンフォニックデバイス「Lunary」を使用し歌を披露

歌唱とコミュ力を活かして皆で音楽を楽しむの
もちろん、精霊さん達とも音楽を紡げたら嬉しい!

アルバくんが見ているだけの子に声をかけているのを見れば
手拍子だけでも一緒にどう?と自分も声をかける

自分が披露する曲は戦場でも歌った
月灯ノ抱擁
傷つく者を癒す月灯りのように優しく
生ける者の心を包み込む歌
ケルト音楽風のバラードで澄み渡った聲を響かせる
命を愛する月の歌…
優しさを皆に届ける――


ヴァルダ・イシルドゥア
ラスベルトさま(f02822)と
旅路の中、母に習った竪琴を
両親と仔竜以外に披露したことは無く
精霊たちや傍の同胞に聞いてもらえることが面映くて

でも
爪弾き始めたなら、胸に満ちるあたたかな
嬉しさのほうが勝って、そっと竪琴に唄を乗せ

奏でるは旧き詩
天駆ける星の旅路
月に、海に、大地に焦がれ
そらを泳ぐ星の旅人の物語
星はどこまでも自由で、彼方まで飛んでいける

幸いあれ、幸いあれと
願いを、祈りを
唄と音色に乗せて

ふたつの、精霊たちの声が重なる
はじめてのことなのに
ああ、どこか懐かしい

奏で終えてしまうのが惜しくて
恐る恐る傍を覗き込む
楽しんで貰えただろうかと

微笑む眼と視線が重なったなら
私もまた、胸を満たす幸いに眼を細めた


アノルルイ・ブラエニオン
悦びの時だ!
分かち合おう! 音楽をその手段として!
ここは精霊が息づく、命に溢れる場所だ
だから自然に抱かれて生きている悦びを歌いたい

参加できる部分を設けたい
観客に、特定の所で合いの手を入れてもらうよう説明してから歌うぞ

・歌詞※()内は観客の合いの手
冷たい夜は明け
金色の日が登る

水は渇きを癒やし
風は優しく頬を撫でて
火からは温もりを受け取り
地は私達に居場所をくれる

変化に富んだ刺激的な
しかし時には優しくて穏やかな

世界――

そこに生きている
私達がいる

命を(命を)
与え いただき
私達は生きる

命を(命を)
過去から 受け継ぎ
未来へ繋げる

(何度か繰り返す)

称え続けよう
この美しい世界に息づく
(最後は皆で!)
命を


ラスベルト・ロスローリエン
星の君(f00048)と共に

お招きに預かり光栄の至り。
皆々の前で詩歌を口ずさむなど面映ゆいが……
君の傍らであれば良い吟声を紡げそうだ。

これに始まるは遥か上古の詩。
永劫の夜を越え星の大海に漕ぎ出した我らが祖先の旅路。
この唄を歌い終われるよう――精霊達よ。我らに恩寵を与え給え。

時に朗々と、時に切々と。
麗しき竪琴の音に導かれるがまま歌声をホールに響かせる。
精霊達の優調和する合唱、星の輝きを再現したかのような光の円舞。
そして同胞の少女が奏でる竪琴の妙なる音色。
数多の旋律が織り成す歌曲の何と麗しい事か。

こわごわと覗き込む瞳の色に気付けば静かに微笑みかけよう。
それが百万の言葉より確かな答えになると信じて。



 ちいさな石の打音。微風のような笛の音。
 リズムのような雫の後ろで、さらさらと花が揺れる。
 舞台に細かな音の粒が響いていた。
 それは音楽祭の開会を表す、精霊達の伴奏だ。
 舞台が始まる前の序奏として楽器を奏でながら──精霊達は訪れるものを歓迎するように宙を巡る。そしてようこそと言うようにさえずりを聞かせていた。
 それに誘われて、新たな精霊も次々に広場へやってくる。
 そこかしこできゅるきゅると音が聞こえる。誰よりも精霊が音楽祭を心待ちにしていたのだろう。その話し声はとても楽しげなものだった。
「こうしてみると、戦いも終わったって感じがするな!」
 ティルは明るい調子でそんな景色を見上げている。
 隠れていた時の彼らとは違う。生き生きと光を瞬かせる様子に気持ちが伝わってくるようで、こちらまでどこか嬉しくなる光景だった。
「良かった良かった!」
「それにしても、中々大きな催しのようですね」
 頷いて舞台を見つめるのは逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)だ。
 星のよく見える空のような黒髪を、自然の景色に映えさせながら……その瞳で精霊達の舞いを観察している。
 元より精霊術師の身である宵には、彼らの開く催しに興味があった。
「音楽は僕の専門と分野が違いますが……どのような祭りになるのでしょうかね」
 柔和で静やか。そんな宵の心も、今は胸が高まる気持ちがあった。
 祭りは程なく始まる。
 精霊達が出演者に合図をするように、音の調子を変えて舞台を飾り立てていた。
 さあ、一緒に奏でよう?
 嬉しそうに言ってみせるように。
 穏やかなコーラスに、ぽろんぽろんと蔓の弦で期待感を演出。高く飛ぶ仕草は舞台へ招く言葉の代わり。
 碧はそれを見上げて、ははっと笑みを浮かべていた。
 精霊の見せるデモンストレーションに、声も喜色だ。
「歌に音楽に踊り。全部あるなんて、やっぱりこの世界は最高だ」
「音楽祭の始まりだ~っ! 皆で楽しもうね!」
 ユエが屈託のない笑みを見せると皆も頷く。
 精霊と音楽の祭典の、始まりだ。

 最初に舞台に上がったのは碧であった。
 漂う精霊達を眺めると、金緑石の瞳が光を映して柔く煌めく。生来持ち合わせている華やかな空気が、舞台によく合っていた。
「さて」
 と、碧が準備するのは二胡。
 舞台中央の切り株の椅子に座ると、優美なシルエットの弓を手にとっている。
 即ち楽器での演奏を選んだのだった。本当は歌も楽器も踊りも、全てを愛おしく思っている。けれど体が一つしか無いのだから仕方がないという苦肉の選択だった。
「ま、この音色で愉楽を共にしようじゃないか。これでも結構練習してるからな」
 呟くと、精霊達の静かな伴奏の中で弾き始めた。
 川の清流のような音色が響く。
 二胡は途切れ目の少ない、なだらかな音の上下が美しい楽器。
 碧はそれを存分に活かすように滑らかな旋律を聴かせ、ヴィブラート交じりのメロディを奏でてみせていた。
 それに加わる精霊の舞いはゆったりとして和やかだ。
 どこか心が癒やされるような、それでいて楽しさも併せ持つような、静けさに終始しない一曲となっていた。
「どうだい、聴ける程度には上手いだろォ?」
 演奏が終わりを迎えると、精霊は肯定するようにくるくると舞って感謝を伝える。
 見れば観客席側でも多くの精霊が鑑賞していた。ふわふわと揺れ動く光はどこか、ごきげんな様相にも見える。
 と、それに交じって奥ゆかしい拍手を見せるのは七曜だ。僅かに垣間見える表情は、舞台を讃える微笑だった。
「巧みな演奏でしたね」
「うん。みんなも喜んでるみたい」
 アルバも言って見回す。
 それは精霊に限った話ではない。やってきた学生達もまた、良い演奏を耳にして平素の戦いの疲れを癒やしているようだった。
 碧は一度舞台から降りる。
「じゃァ、次は誰だ?」
「僕、でしょうか」
 宵が言うのは、その周りを精霊達がひらひらと跳んでいるからだ。
 宵は先刻から広場の一角で勉強をしていた。せっかくならこの世界で馴染みのある曲を演奏してみたいと思ったからだ。
 そこで学生や精霊に、古歌を教えてもらっていた。童謡のようなもので知っているものも多いだろうという一曲である。
 その準備も済んだということで、精霊達は宵を舞台に誘ったのだった。
 宵が手にとったのは横笛。きらりと自然光を反射する美しい一本だ。
「うまく演奏出来ると良いのですが」
 呟きながらも、音楽自体は人並み程度に嗜んでいる宵だ。
 歌やダンスに関しては不得手を自認するけれど──次の瞬間生んだ音色は皆の心を惹き付けるものだった。
 空に伸びるような長音。
 まるで頬を撫でて過ぎていく風のような、心地よいメロディが響き渡っていた。
 戯れるような高音が鳴った後、木漏れ日に照らされた葉が舞い落ちるような、きらきらとした音階の降下が現れる。
 するとまた、その葉が水面に流れていくように綺麗な長音に繋がるのだ。
 古歌だからだろうか、聴いたことの無いものにも仄かに郷愁を感じさせる。精霊も親しみを込めた穏やかな振り付けを取っていた。
 楽しいだけじゃない、安らぐような心地。そんな音律と共に暫し曲は続く。
「こちらも楽しい気分にさせていただけました」
 それが終わると、宵は舞台から降りる。すると学生達からもまた歓声や拍手が上がったのだった。

「それじゃあ、引き続き皆を楽しませて、癒してみせましょうか」
 チューニングを整えて、宵と入れ替わりに舞台へ上がったのはフローライトだった。
 精霊達も興味を抱いて見下ろすのは、フローライトが一人ではないから。
 引き連れているのはバンド隊。霊体の残滓から生まれ変わらせたそれを自身の仲間として、今も控えさせていた。
 どどん、と低く反響するのはバスドラムの調整。
 ベースのアンプもクリーミーな歪みに変えて、バンド隊は楽器をバラードに適したセッティングにしている。
「さあ、始めますよ。コーラス隊もカモン!」
 そしてジャン、とフローライトがギターを鳴らすと、光と共に召喚された姿があった。
 天使のコーラス隊。
 ロックな衣装を身に纏った皆々が、フローライトの片側に位置すると……ハーモニーを響かせて、始まるイントロを補助していた。
 曲はバラード調のロック。
 激しさよりも美しさを表に出し、幾分ゆったりしたドラムとベースを下地に進んでいく一曲だ。
 そこに加える歌声も荒々しさを抑えたもの。
 フローライトは軽く息を吸って、ブレスを含んだ声音を聴かせていた。

 さあ ひそやかに祈るように瞳閉じておくれよ
 もう疲れたろ 争う事 憎み合うことも全て
 冷えた指で触る そっと見つめてる
 見えぬ闇を抱いて そっと俯いた
 「どこへ行くの」蒼い空で許し合う術も知らず
 星が燃える前に そっと舞い降りて
 闇を照らしてゆく ずっと「永遠さ」
 争う痛みに救いはない
 殺しは悲しいだけ
 もう一度 君に会えるなら
 今度は上手に笑うから
 憎しみの火が消えたなら
 平和はきっと叶うから

 Peace(ピース)。
 それは平和を唄い、祈りを代弁する願いの歌だ。
 パフォーマンスも、速弾きと言うよりはスローなメロディでギターを啼かせるもの。自然と耳を傾けてしまいそうになる声と演奏、そして言葉が皆の注目を集めていた。
 精霊は普段触れない類の音楽だからだろうか、心地よさげにリズムに乗りつつ、好奇心も含んでその演奏を見つめている。
 学生達も心に重ね合わさる部分があるのだろう、染み入るように耳を傾けている者が多くいた。
 ギターの演奏で終奏を彩ると、大きな拍手が鳴る。
 歓声も上がる中、フローライトは舞台を降りて軽く水分補給した。息をついて皆に顔を向ける。
「皆さんもどんどん、歌ってください」
「では、折角ですから。私も唄いましょうか」
 応えてロングドレスの裾を靡かすのは、黒色の麗人──七曜だ。

「清らかな舞台ですね」
 こつりこつりと歩みながら、七曜はゆっくりと見渡す。
 そこは岩場から出来ているが、所々が草の絨毯となっていて柔らかく、花々に飾られている。光を反射する清水が照明のように煌めいて明媚なほどだった。
 そして舞台に上がると、漂う精霊達もまた鮮やかだ。
 彼らは色とりどりの光を湛えていて、色彩豊か。だからこそ、そっと歩み入る七曜の姿が好対照を為すようで美しさを感じさせる。
 七曜は、そこに更に優美さを加える歌を唄った。
『──』
 凪のような静けさから始まるそれは鎮魂歌だ。
 色彩を抑えた歌い出しは短時間だけ、厳かでもあったろう。
 七曜は過去の記憶が無く、それに寂寞を覚えることも皆無ではない。だからこそ在りし日の存在を大切にしたいという思いは強く、その感情を少なからず籠めたのだ。
 ただ、七曜はそれを全面に出しはしなかった。
 感情は密やかに籠めればいい。
 鎮魂歌は過去を唄うと同時に、未来へ向かうための歌でもある。
 だから──七曜はそこに無限の色彩を乗せ始めていた。
『──♪』
 旋律が華やぐ。
 七曜はAngels Bitsに声音を輪唱させると、同時に魔力弾を撃ち出させて属性の力を行使。そこに鮮やかな氷雪を生み出していた。
 きらりと輝く氷晶。冴えた風。
 それを次に眩く照らし出すのは月光だ。光の演舞となった雪は直後、風の力で巻き上げられて粉砕され、光の残滓を踊らせた。
 見ているものを圧倒してしまうような演出。
 精霊までもが視線を奪われる中、七曜は一度その全てを闇色のベールで覆い隠した。
 一転、静謐の風合いを帯びた声音と世界に、しかしすぐに煌めきが射し込む。
 ダイヤモンドダストが辺りを取り巻くと、それを陽光が暖かく照らして溶かしていた。
 降り注ぐ雨となった雫は、いつしか萌え始めていた新緑の壁に吸い込まれていく。
『過去を刻み 今が流れ 未来が紡がれる。礎はいつまでも尊き道標──』
 日の巡り。
 天気の巡り。
 そして自然の巡り。
 景色の中で唄うそれは、時間の流れも感じさせる歌。
 聴くものを確かに魅了しながら──七曜自身にとっては還らぬ流れを自覚する歌だ。
 全てが未来へと巡る中で、過去は足元にある。それを表すことで、自分の中で葬送を詠っていた。
 最後は静かな旋律に戻って、その曲は終わりを迎える。
 学生達も精霊達もその歌の世界に大いに盛り上がっていた。
 だから、良かった、と。七曜は帽子に隠れた表情をほんの少しだけ和らげていた。

 穏やかな音色にバンド、美しい歌を経て広場は和やかな空気に包まれている。
 精霊達は、自身らが思っていた以上の音楽祭になっているからだろう、嬉しくて飛び回っているものもいた。
 学生の数も増えて、次はどんな音楽が聴けるのだろうかと心待ちにしている。
 そんな中に立ち上がったのがアノルルイであった。
 民族色漂う弦音を一つ鳴らすと、七曜に代わって舞台へ。
 平和を取り戻したその風景を喜ばしげに、そして誇らしげに見つめて、高らかに呼び掛けている。
「さあ皆、悦びの時だ!」
 声は生命力と、エネルギーに満ち満ちたように。
 ここは精霊が息づく命の溢れる場所。だからこそ──自然に抱かれて生きている悦びを歌いたかった。
「分かち合おう! 音楽をその手段として!」
 活力を与えるように、観客達の視線を集める。アノルルイは彼らが十分に盛り上がる準備のできた所でその歌を唄い始めた。

 冷たい夜は明け
 金色の日が登る

 水は渇きを癒やし
 風は優しく頬を撫でて
 火からは温もりを受け取り
 地は私達に居場所をくれる

 その歌は、自身を取り巻く世界への祝福から始まる。
 メロディアスでありながら語るような口ぶりも併せ持つ旋律は、詩に語られることの共感を呼ぶ役割を、十分に果たしていた。
 そしてそこから、曲は一気に生き生きとした雰囲気を含み始める。

 変化に富んだ刺激的な
 しかし時には優しくて穏やかな

 世界──

 そこに生きている
 私達がいる

 旋律に合わせ、アノルルイは観客に視線を送っていた。さらに身振りと演奏によって、皆が声を出しやすいように誘う。
 この曲は客が参加し、合いの手を入れる機会を設けた曲でもある。
 その助走を十二分にとったアノルルイは、皆と息を合わせてそのフレーズに入った。

 命を(命を)
 与え いただき
 私達は生きる

 命を(命を)
 過去から 受け継ぎ
 未来へ繋げる

 アノルルイが歌えば、それを追いかけるように観客達がリフレインする。
 精霊達も交じってハーモニーを奏でたそのメロディは、主題の一つでもある。
 だからこの場に集った皆が自然の中でそれを歌えることが、アノルルイは嬉しかった。

 称え続けよう
 この美しい世界に息づく
 命を

 一番最後のワードは、全員で声を出し合って。合唱で幕を閉じたその曲もまた、大きな喝采を生んだのだった。

 溌剌とした空気が、広場に満ちてくる。
 アノルルイ達の歌が盛り上がるに連れて、観客達も段々と立ち見になったり、その場でリズムに体を揺らし始めていた。
 アルバはそんな皆の時間を一層楽しいものにするように、ずっと楽器で音を添えてきていた。
 弦楽器や笛の演奏には、小さなハープでぽろんぽろんと叙情を加え。
 バンドや歌には、声を邪魔しないようにギターを合わせてみせながら。
 観客の中には、最初はただただ音を聞いているだけだったけれど、その音色によって少しずつ笑顔を見せ始めているものもいた。
 そんな光景を間近に見てきたアルバは、実感するように呟く。
「皆がどんどん楽しみ始めてるみたいで、楽しいね」
「うんっ。これが音楽の良さだよねっ」
 ユエもこくりと首を縦に振る。
 知っている人同士でも、知らないもの同士でも。そこに綺麗な歌や音楽があると、楽しい気持ちの受け渡しができる。
 言葉だけじゃ、簡単には出来ないこと。
 音楽の力というものはこういうものなんだと、改めてユエには実感できる。
「皆がもっと、楽しんでくれたらいいなぁ」
「そうだね。折角賑やかな曲なんだから」
 アルバは舞台を見上げる。
 歌が一段落した舞台では、その熱気を受け継ぐように精霊達が器楽を奏でている。
 小気味いいテンポのやんちゃな曲で、精霊の童心やいたずら心が伝わってくる音楽だ。
 だから観客の中には既にダンスを始めているものもいるが……同様に、曲に乗ることに遠慮してしまっているものもいた。
 一緒にはしゃいでみたいけど、何となく勇気がない──そんな引っ込み思案な心達。
 きっと少しのきっかけさえあれば、変わるだろう。だからアルバは彼らへ歩んで、声を掛けていた。
 一緒に楽しもう? と。
「無理強いはしないけど、こんな機会だからさ。たまには違った自分になってみるのも良いんじゃない?」
「例えば歌わなくても……手拍子だけでも一緒にどう?」
 ユエもそう言って、微笑みかける。
「うん……そうだね。ちょっと、やってみようかな」
 彼らは、幾人かがリズムに合わせて拍子を取り始める。
 するとそれが皮切りになったように、徐々に盛り上がりも伝搬。座っているだけだったものも踊りに加わり始めていた。
 アルバとユエは少し、笑みを交わす。
 それからアルバは猟兵達にも目を向けた。
「どうせなら僕らも、踊れる人で踊ってみようか?」
「踊り? 仕方ねェなぁ」
 頷く碧は、言葉尻だけは少し腰が重そうだったけれど──楽しそうであればこそ、断る気も元々無い。
 自然なのに洗練されたステップを踏み始めて。舞台に上がって踊りの輪の中に加わっていっていた。
「確かに、楽しそうだな……」
 と、そんな様子を見つめるのはティルだ。
 育った環境故に、こういった規模の音楽に直に触れたことが無く、何となく参加しあぐねていたのだが──。
「……流石に、ただ見てるだけってのもウズウズしてきたな」
 元より、子供達の中ではムードメーカーとも言える存在だったティルだ。そこに何か盛り上がりがあるのなら元来、気にならないではない。
 見れば精霊達も楽しく舞っている。ならば自分が踊らぬ理由もないか、と。
「出来るかどうか不安なトコあるけど──俺も一緒に踊るぜ!」
 決めればもう迷いはない。
 軽やかに跳んで舞台に上がると、早速皆と共に舞いを始めた。
 賑やかな音楽に、決まった踊りの作法はない。楽しく回るものも居れば派手に跳ねるものもいる。
 精霊もまた同じで、宙を上下しては廻転し、それぞれの動きをしていた。
「なるほどな。身軽に動くのなら俺だって得意だ!」
 人だけでなく、精霊の舞いにも倣うように。ティルは地を蹴るとくるりと翻っている。
 石柱を足がかりにしてさらに高く跳躍すると──空中で廻転。精霊と共演するかのような演舞をみせていた。
 ひらりと着地し、拍手に迎えられると、学生達と共にまた踊り始める。
 リズムに合わせて近づき、すれ違い、離れる。振り付けは難しいものではなかったけれど、皆と動きを合わせると湧き上がる楽しさがあった。
「へへっ、中々いい感じだ!」
「あァ、楽しいなァ」
 碧は少し訥々とした声を零す。
 皆が楽しく、音楽を味わう。碧にとってそれは上等な時間だと言っていい。
 けれどまだまだ終わらない。
 そこに加わったアルバが、コルノを連れてきていたのだ。
「さあ、コルノも踊ろう!」
 きゅうと鳴き声を返すコルノは、毛並みをふわふわもふもふと揺らして、皆と戯れ始めた。
 そう、人も精霊も、ドラゴンだって関係なく楽しんだ者勝ちなのだ。
 アルバの肩を跳んで学生達と舞いつつ、ちいさな翼を羽ばたかせて上方へ。精霊と螺旋を描く軌道を取って空中を泳いでみせている。
 そしてまた、エクステを揺らしてダンスするアルバの下に戻り、触れ合っていた。
「それじゃあ僕は唄うね!」
 演奏と踊りに歌声を贈るのはユエだ。
 遊び心に溢れる器楽に対して、こちらもまた弾む旋律を合わせるように。るんるんと体が動き出してしまいそうなメロディラインを、即興で加えていっていた。
『──♪』
 歌によって曲が彩飾されれば、皆も一層愉しさに足取りを軽くする。
 そうして皆が沢山楽しんだ後は──精霊がユエの傍に舞い降りてきていた。その歌声をもっと聴かせてほしいとでもいうように。
 うん、と頷いたユエは舞台の真ん中へと歩み出ていく。

 ダンスによって快い気持ちに包まれた観客達は──ユエがどんな歌を披露してくれるのかと眼差しを注いでいた。
 ユエはそれにあたたかな微笑を返す。
 底抜けに楽しい思いをしたあとは、その心を癒やそう。
 そんな思いも交えて、マイクに唇を寄せていた。
 そのマイクはシンフォニックデバイス“Lunary”。【月灯】の名で各地で歌い手として活動するときにも使う大切な道具だ。
 少し浮き立った観客がいるのも、歌い人としてのユエを知る人もいるからか。改めて舞台に立ったユエには、既に歓声も聞こえていたのだった。
 そんな空気の中で、ユエはそっと唄い出す。
『──』
 深い夜の空が顕れたかと思うような、美しい聲が耳に触れた。
 唄うのは月灯ノ抱擁──情緒ある旋律が心を惹く、ケルト音楽風のバラード。
 始まりから、それは優しさに溢れていた。
 音が動くと、月灯りが淡く揺れ動くような心地を与える。メロディが進むほどに、それが溶け込むように魂にふれた。
 それは生ける者の心を包み込みこんでくれる、命を愛する月の歌。
 冷たいというより穏やかで、鋭いというよりも澄み渡った歌声で──願いを表す詩を紡ぐ。
 高音では明瞭に、低音ではふんわりと。
 音の一つ一つで寄り添ってくれるユエの歌声は、聴くものを虜にして止まなかった。
 曲が終わると、歌の優美さと癒やされた心地で、観客も一瞬静まってしまう程。精霊達が歌を賛美するように舞うと、学生達もはっとするように歓声と大きな拍手を送ったのだった。
 と、精霊のちいさな声がそこに交じる。
 それはまるでユエと一緒に歌ってみたいというようだ。
「もちろんっ。一緒に歌おう?」
 すると光の羽ではばたいた精霊達は、小鳥のような可愛らしい声音を聞かせる。ユエはそれにメロディを乗せて、一緒にハーモニーを形づくった。
 視線を合わせたアルバもまた、ユエと頷き合ってハープを弾く。優しい歌の後に興を添えるように──響宴は暫し続いた。

 音楽祭は終演に近づいていた。
 精霊達は名残惜しそうにしながら、それでも猟兵に感謝を表している。そしてもう少しだけ聴きたいと音楽を欲している。
 だからヴァルダは舞台へ歩み横に向いていた。
「ラスベルトさま──参りましょう?」
「ああ、行くとしよう」
 その視線の先で頷くのは、ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)。
 灰色の髪に、裾を浮かせた長いローブ。三角帽子の下からは大きな緑玉の瞳。
 長命の森の民と言えど、見目は年齢並みとは言えないが──口振りと身振りは飄々と、少しばかりの老成の色を湛えているようでもある。
 そんな表情のまま、ラスベルトは舞台に昇り見渡していた。
「星の君。──このような舞台にお招きに預かり光栄の至りだよ」
「私こそ、とても嬉しく思います。花の君」
 ヴァルダは改めて伝えると、膝を落として少しだけ優雅に会釈してみせる。
 緊張、と云うよりも面映い気持ちがあった。
 その手に携えた竪琴は、旅路の中で母に習ったもの。両親と仔竜以外に披露したことはなくて──それを精霊や傍の同胞に聞いてもらえるのだから。
 歳は離れた間柄ながら、ラスベルトもまた少女と共通した心を持っていた。
「皆々の前で詩歌を口ずさむなど面映ゆいものだが──」
 ただ、言いながら飽くまで飄然とした調子を見せている。
 それはヴァルダに視線を戻したからだ。
「君の傍らであれば良い吟声を紡げそうだ」
「ええ、きっと」
 ヴァルダも首を縦に振ってみせる。
 それでも始めは少しだけ、仕草がためらいがちでもあった。
 けれど切り株に座って、自然の匂いの中で爪弾き始めると──胸に満ちるあたたかな嬉しさのほうが勝って、唄を編み始める。
 弦をはじいてゆっくりと聴かせるのは、美しさと共に深く永い遍歴を思わせる……そんな音楽だった。
 ラスベルトの声音が洋々と響く。
 ──これに始まるは遥か上古の詩。
 ──永劫の夜を越え星の大海に漕ぎ出した我らが祖先の旅路。
 この唄を歌い終われるよう──精霊達よ。我らに恩寵を与え給え。
 それがはじまりの合図。
『──』
 ヴァルダの竪琴と唄に合わせ、ラスベルトも歌声を響かせ始めた。
 時に朗々と、時に切々と唄い奏でるのは旧き詩。
 天駆ける星の旅路。
 月に、海に、大地に焦がれ、そらを泳ぐ星の旅人の物語。
 せせらぎを思わせる麗しい竪琴の音に、導かれてラスベルトが紡ぐのは風のような声。
 悠久を思わせながら、同時に時の流れが圧縮されたかのような錯覚を与えるほど、それは耳に、心に馴染んでいく。
 それにいざなわれたように、精霊達もまた声を添え始めていた。
 煌めく彩りが加わってヴァルダの歌も美しさを増す。
 星はどこまでも自由で、彼方まで飛んでいける。
 幸いあれ、幸いあれと。願いを、祈りを声と音色に乗せるようにして。
 精霊達も徐々に合唱へと移っていた。
 その調和、星の輝きを再現したかのような光の円舞。そして同胞の少女が奏でる竪琴の妙なる音色──ラスベルトは、数多の旋律が織り成す歌曲の何と麗しい事かと感嘆する思いだった。
 ヴァルダもまた自分達と、そして精霊達の声が重なるとその感覚に目を閉じる。
(「はじめてのことなのに──ああ、どこか懐かしい」)
 何かにいだかれているかのような感覚。
 楽しくて、少しあたたかい。
 だからヴァルダは、奏で終えてしまうのが惜しくて恐る恐る傍を覗き込んだ。楽しんで貰えただろうかと。
 それに気づいたラスベルトは、静かに微笑みかける。
 それが百万の言葉より確かな答え。
 視線が重なったヴァルダは、自分もまた胸を満たす幸いに眼を細めた。
 終わってしまうのは寂しいけれど、この音楽を、終わりまでしっかりと演奏することもまた経験したい。
 精霊達はそれもまた祝福するように、綺麗な声を響かせる。
 音楽祭は終わりに向かっていく。最後までその音色は、歌は、とても美しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月04日


挿絵イラスト