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雪に花散る流狼刀

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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 幽世の空は荒れていた。
 季節を無視した凍てつく風は、吹雪を伴い轟々と。
 そして、降り注ぐは雪だけに非ず――。
 ドスッ、ドスドスドスドスッ!
 短刀、打刀、ドスに太刀、人殺しの道具たる刀剣たちが雨あられと降り注ぐ。
 ある妖怪は逃げ惑いある妖怪は貫かれ、阿鼻叫喚の幽世なれど真の恐怖はその後に……。
 スチャッ。
 まるで誘惑されるように大地に突き刺さった刀を抜いた妖怪が、剣客かくやと振りかぶり、逃げる仲間の背へと刃を突き立てる。
 断末魔の悲鳴が響き、積もる雪へと血の花が咲く。
 刀剣紛れる猛吹雪の中、落ちた刀に魅いられた妖怪達が次の獲物はと闊歩して、ついにこの世は殺戮の、破滅の世へと突き進む。

「興味深い……実に興味深い……」
 グリモアベースに黒い陰陽服を着た妖狐の男が1人、八本の尾を揺らしながらそう呟くと、次の瞬間グリモアベースの背景が吹雪吹き荒れる幽世の雪原へと変化する。
「妖怪たちの世界、カクリヨ……今、その世界が滅亡の危機にあるようです」
 その男――陰陽師・五行が言うには、幽世の世界が奇怪な猛吹雪に見舞われていると言う。なんともその吹雪は雪や雹に紛れて刀や剣が飛んで来て現地の妖怪たちに危害を与えていると言うのだ。
「問題はそれだけではありません、飛んできた刀剣は周囲の妖怪たちを魅了し、それら刀剣を拾った者を殺戮者に変えてしまうのです」
 このままでは、幽世は刀剣による殺戮の世界へと変わってしまうだろう。まさに、世界が滅亡の危機にあると言って良い。
「まずは刀剣の吹雪の原因を突き止め、この嵐を止めて下さい」
 無論、探索中に刀を拾った妖怪たちに襲われる可能性もあるが、彼等は事件の黒幕さえ倒せれば元の温厚な妖怪に戻るらしいので、気絶させたりして無力化すると良いだろう。
「この事件には黒幕がいます。もちろん、黒幕に辿り着くまでに黒幕の配下もいるようですが……」
 五行が言うには、今の時点で黒幕やその配下がどんな者達かまでは視えなかった、と言う。この辺りは実際に調査を進める上で見極めるしかないだろう。
「さて、皆様がこの事件を解決する為にどのような物語を紡ぐのか……それは皆様の行動次第となります。興味深い、実に興味深い……」


相原あきと
 マスターの相原あきとと申します。
 普通のシナリオとなります。

●プレイング受付について
 第一章はOP公開後より受付、第二章と第三章は断章公開後より受付となります。

●第一章
 刀剣嵐舞な猛吹雪。
 刀や剣が混じった猛吹雪が吹き荒れています。寒いです。
 吹雪の原因を足を使って地道に突き止める、または強引に天候自体を変える、など、お好きにプレイングをかけてくれて構いません。

●第二章
 集団戦です。敵は刀を持っています。

●第三章
 ボス戦です。敵は刀を持っています。
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第1章 冒険 『お願い、お天道様』

POW   :    力技で荒れる天気を鎮める

SPD   :    科学知識を用いて荒れる天気を鎮める

WIZ   :    魔術を利用し荒れる天気を鎮める

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宴・段三郎
妖刀降りし、あぽかりぷすへる…その妖刀、刀鍛冶 宴段三郎地国が全部頂戴するのじゃ

【行動】
妖刀を降らす雲。わしの作品の『夜』のぱくりじゃー、盗作じゃー、おのれぇ〜

とりあえず
妖刀には妖刀をぶつけるのじゃ

使用する妖刀は
号 『酔月』
号 『火雷毒王』
号 『化生炉』
なのじゃ

まず酔月でわしの半径100メートルに降り注ぐ刀を全て迎撃する。

更に『火雷毒王』の切っ先を荒れ狂う天に向け、【範囲攻撃】、【衝撃波】、【吹き飛ばし】、【制圧射撃】であの雲を吹き飛ばすのじゃ。いわゆる超強力なそにっくぶーむ…?なるものをぶちこむのじゃ。

最後は化生炉で地面の妖刀を全て原料にし、対親玉の為に一振りの極悪な妖刀を鍛えるのじゃ


水無月・ゆえと
刀が降ってくるなんて、尋常じゃない天気だね…
こんな物騒な世界にした原因を突き止めて、元の幽世に戻すよ
……どんな刀があるのか剣士としてはとても興味が沸くけども

原因についての情報が無いし、まずは情報集めが肝要だよね
【コール・ラビットバトラー】で兎達を呼び出し周囲に何か気になる物はないか【情報収集】してもらうよ
現地に人がいるなら聞くのもありだね
何かしら気になることが出てきたら、そこを頼りに探索を進めるよ
向かって来る障害は【流水鞘】の【盾受け】でいなすか
【シールドバッシュ】で気絶させよう
他に情報を集めてる猟兵がいたら、情報を共有したいかな

※アドリブ/連携歓迎


リリスフィア・スターライト
アドリブに他の猟兵達との連携可。

猛吹雪の上に刀剣が降ってくるなんて凄い天気だね。
噂に聞く妖刀みたいで興味はあるけれど
うっかり魅了されるわけにもいかないね。
吹雪に刀剣が飛んできている先に黒幕がいそうだし、
そこを目指して突き進むよ。
目には目を嵐には嵐をかな。
全力魔法による天体破局で、巨大な竜巻を巻き起こして、
猛吹雪を相殺しつつ刀剣も吹き飛ばすよ。
もし刀剣が近くに落ちてきても目もくれずに先に進むね。
天体破局で降りかかる刀剣に対処しきれない場合は、
自分の剣で刀剣を切り払って防御に専念するよ。

「人為的な雪吹なら、こっちだって対処のしようがあるよ!」




 幽世にて妖怪を魅了する刀混じりの吹雪が吹き荒れる中、即座にこの世界の異変を解決しようとやってきたのは3人の猟兵達であった。
 その中でも特に、現地の妖怪達に使い魔(うさぎ)を使って話を聞き出したのは水無月・ゆえとであり、戻ってきた執事服やメイド服を着た兎達の話にコクコクと頷くと。
「どうやら吹雪がひどい場所と軽い場所があるみたいだよ」
 ほかの仲間2人にそう伝える。
「この世界のどこもかしこもが猛吹雪だと思っておったが、確かにそうではなさそうじゃな」
「そうだよね、この村とか吹雪っていうより風が強い雪の日って感じだし」
 ゆえとの言葉に同行する宴・段三郎とリリスフィア・スターライトが同意する。
 事実、情報収集を行ったこの妖怪達の村は、吹雪というには雪の勢いは弱い。もちろん油断しているとどこからか刀などが飛んできて地面に突き刺さったりはするのだが……。
「なら、次は吹雪が強い方に行こうか?」
 ゆえとの言葉に2人が頷き、3人は集めた情報から吹雪が強烈だと言われた方角の1つへと向かうのだった。

 数時間後。
 轟々と風が音を立て、冷たい雪が頬に吹き付け……いや、叩きつけてくる場所まで3人はやってきていた。
 ここから先はさらに吹雪が強くなるだろう事が、自分たちへ吹き付ける向かい風から否応なしに解ってしまう。
「さて、行くかのう」
 そう言って段三郎が一歩足を踏み出した瞬間。
 ドスドスドスッ!
 段三郎の脇をかすめて吹雪の中から刀とナイフと短剣が飛んできて足元へと突き刺さる。
 3人は突き刺さった刀剣を無言で見つめ、再び視線を吹雪の向こうへ。
「本当、猛吹雪の上に刀剣が降ってくるなんて凄い天気だね」
 リリスフィアがだからどうしたと言わんばかりに段三郎の肩をポンと叩きつつ吹雪に向かって歩き出せば、段三郎もフッと刺さった刀剣を一瞥し、空を睨むと。
「妖刀を降らす雲……事件の事を聞いた際に思ったが、やはり……わしの作品の『夜』のぱくりじゃ! おのれぇ~!盗作じゃー!」
 鍛冶師である己が作刀に似た力を持つ事に憤慨しつつ、段三郎は懐から大盃を取り出す。
「それは?」
 ゆえとの問いに段三郎はにぃと笑みを浮かべ。
「妖刀には妖刀をぶつけるのじゃ」
 言うと同時、大盃……いや、段三郎が打った大盃型妖刀『酔月』に溜まった水面に小さな月が映しだされ、発光。波紋のように広がっていく光の波に、触れた刀剣が吹雪の中でバキバキと弾かれる音が響く。
「それも妖刀なの?」
「わしが打った当別製じゃがのぅ」
 妖刀に興味があるのか聞いてくるリリスフィアに、少し得意になって少しだけ年相応の表情で答える段三郎だった。
 吹雪の中を進んでいく3人、飛んでくる刀剣に関しては対応できたが、純粋な吹雪の冷たさと叩きつけられる雪の痛さは我慢するしかなく……そんな中、月に住む東宝妖怪たる玉兎の一族らしく、ピンと伸びていたゆえとの兎耳がピクリと反応する。
 吹雪で視界が悪い中、ザッと2人の仲間の前に出るといささか短い刀身を持つ愛刀『蒼影兎』を抜くと……キラリ、吹雪の中から迫る何かを察して刀を振るう。
 キンッ!
 それはロングソードを手にした少年――雪ん子だった。だが、その目に焦点はなく、明らかに操られているかのようで――ドスッ!
 ゆえとの判断は素早く、刀を持つ手と逆の手で鞘を握ると雪ん子の鳩尾へと一突き。
 剣に操られた雪ん子の少年が白目をむいて倒れこむ。
 その少年をリリスフィアがとっさに受け止め、ゆっくりと雪の地面へとおろす。
「魅了されるって聞いていたけど……こうなっちゃうんだね」
 雪ん子の少年の手からポロリとロングソードが零れ落ち、地面に転がる。
 転がった剣を念のためだと段三郎が叩き折り、リリスフィアが少年から離すように蹴り飛ばす。
 納刀したゆえとが寝かした少年の息を確認し、立ち上がると。
「こんな物騒な世界にした原因を突き止めて、元の幽世に戻すよ。だから、少しの間ここで待っていて」
 雪ん子であるならこの吹雪の中でも問題は無いだろう、3人は少年をひとまずこのまま寝かしておき先へ進む事にする。
「この先に先に黒幕がいそうだし、刀剣には目もくれずに突き進もう」
 リリスフィアの言葉に頷き、3人は吹雪の中へと中へと進んでいくのであった。

「そろそろじゃな」
 吹雪の強さがかなり強烈となり、ほぼ中心地点に来ただろうと推測し段三郎が歩を止める。
 残り2人も同じく立ち止まり、事前に打ち合わせておいた通り準備に取り掛かる。
「では一度『酔月』を解除するのじゃ」
「それじゃあこっちの出番だね」
 リリスフィアが魔力を集中し、あるイメージで発動するよう練っていく。
「目には目を! 嵐には嵐を!」
 解き放たれた魔力が渦を巻き、リリスフィアの前で巨大な竜巻へと変化。やがて竜巻は天を破壊するかのように吹雪も強風も巻き込み飲み込んでいく。
 だが、天候たる吹雪は飲まれても、それに混じった刀剣たちの全てまで竜巻で巻き取れる事は無く、逆に弾かれるように猛スピードで飛んでくる数本もあり――。
 ガギンッ! キキンッ!
 飛んできた刀剣を刀で弾き、流水鞘で受け流す。
 ゆえとだった。
 弾き飛んでくる刀剣の中には普段見ないようなレアな剣や古風な刀のような物も混じっていたが。
「(どんな刀があるのか剣士としてはとても興味が沸くけども……今は!)」
 一心不乱に竜巻を制御するリリスフィアと、最後の決め手を発動させようとしている段三郎を必死に1人で守るゆえと。
「待たせた、準備が整ったのじゃ」
 段三郎が大型のレールガン(これも段三郎作の妖刀の一つで『火雷毒王』という)を構え叫ぶ。
 狙いはリリスティアが御する吹雪を全て巻き込んだ竜巻。
「この超強力なのを……ぶちこむのじゃ」
 『火雷毒王』から射出された刀身が一条の光となり竜巻を貫く。
 瞬間、竜巻も雲も吹雪も吹き飛ばし、円が広がるように青空が顔を見せ――この一帯の刀剣を交えた吹雪は、3人の猟兵によって吹き散らされたのだった。

「刀が降ってくるなんて、尋常じゃない天気だったけど……何か原因あったのかな?」
「ん、なんじゃ、この反応は」
 ゆえとの問いと段三郎の疑問の声がほぼ同時に上がる。
 段三郎は吹雪が消え大地に振ってきて転がったままな刀剣たちを、『化生炉』を使って取り込んでいたのだが、取り込めない何かがある事に気づいて声を上げたのだった。
「取り込めない物?」
「こっちじゃ」
 段三郎の案内で雪原を歩けば、やがて大地に突き刺さる大太刀が見えてくる。瞬間、3人の表情に再び緊張が走る。
 猟兵たる3人にはわかるのだ、あの大太刀がほかの刀剣類と違ってまだ死んでいないのが、だ。
「見て! 吹雪が!」
 ゆえとが大太刀を指差し指摘する。わずかだが大太刀から雪を纏った風が吹き始め、大太刀を中心に渦巻き始めていた。瞬間、一気に駆け出したのはリリスフィアだ。
 駆け抜け、一閃。
 大太刀を通り過ぎ剣を納刀――バキンッ、と大太刀が真っ二つとなる。
「人為的な雪吹なら、こっちだって対処のしようがあるよ!」
 折られた大太刀は力をなくしたのか、ただの折れた刀となっていた。
 3人は顔を見合わせ頷く、情報収集で吹雪が強い場所が1か所だけではなかった理由はコレにあるようだ。
「つまり、ほかの場所でも……」
「だろうね」
 ゆえとの言葉にリリスフィアが頷き、そして段三郎は少し面白そうにまだ晴れぬ遠く別の空を見つめ。
「妖刀降りし、かくりよの……その妖刀、刀鍛冶、宴段三郎地国が全部頂戴するのじゃ」
 不適に言い捨てるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヴィクトリア・アイニッヒ
幽世の世は、とかく脆く崩れやすい世界ではありますが…刃混じりの風雪とは。
今回の一件も、また随分と物騒ですね。

ともあれ、このまま放置は出来ません。
この異変の黒幕を突き止め、平和な世を取り戻す。
その為に、この力を尽くしましょう。

さて、黒幕に対する調査ですが。
…この吹雪が、黒幕の手による物であれば。吹雪の中心点、風上にの方角にいるはずです。
周囲を観察し、風の流れを読み、風上へと歩みを進めます(情報収集)
降り注ぐ風雪は聖気の壁で防ぎ(オーラ防御)、襲い来る刀剣を持った妖怪は【神威の光剣】で牽制に留めます。

…しかし、妖怪を魅了する刃とは。
本当に、今回の件は厄介ですね。気を緩めずに、進まねば…。



『キシャーッ! キシャーッ!』
 奇声を上げて襲い掛かってくるのは3匹の河童、しかもその手には逆手にドス、正気を失い狂気に操られた3匹の妖怪が襲い掛かるはたった1人の聖女、ヴィクトリア・アイニッヒだった。
「(……しかし、妖怪を魅了する刃とは)」
 通常のオブリビオン相手なら遠慮なく刃を振れるところだが、今回ばかりは操られている相手、言うなれば刃を持った一般人を相手にするようなものだ、ゆえに――。
「主の威光よ、悪意を祓い給え!――神威の光剣よ!」
 放たれた光の剣は河童が持つドスをはじき飛ばし、その衣服を大地に縫い付け相手の動きを封じる。
 そうやって1体ずつ河童を縫い付け、3体全てを無力化するヴィクトリア。
「ふぅ……本当に、今回の件は厄介ですね。気を緩めずに、進まねば……」
 額に浮かんだ戦いの汗を拭い先に進もうとするも、その頃には吹雪の寒さで汗が引く。
 だが、降り注ぐ風雪を即座に聖気の壁で防ぎ、ヴィクトリアは吹雪が吹き付けてくる方角をキッと見据え、着実に一歩一歩進んでいく。
「(……この吹雪が、黒幕の手による物であれば。吹雪の中心点、風上の方角にいるはずです)」
 風を読み、周囲の警戒を怠らず、風上へ、風上へ……。
 時折吹雪に紛れて飛んでくる刃物は、愛用の斧槍【L'orgoglio del sole】を振るって防ぐと。
「幽世の世は、とかく脆く崩れやすい世界ではありますが……刃混じりの風雪とは」
 呟くも、すでに吹雪の中心まであと少し。
 比例して吹き付けてくる風の強さも半端無く。
「くっ」
 斧槍を大地に突き刺し固定、強風に耐え――その時だ、目の前の吹雪の中に何か長い物が突き刺さっているようなシルエットが浮かぶ。
「あれは……なら」
 一気にオーラを全開に、全力で風に向かって突き進む。
 瞬間、突風に紛れてヴィクトリアに向かって飛んでくる小刀、風の勢いから計算すると突き刺した斧槍を抜いている暇は無く、考える間も無く腰に手を伸ばし護身用の短めのメイスを引き抜くままに小刀をはじく。
 そして――。
 先ほどシルエットだけ見えた場所に一気に飛び込むと、雪原に突き刺さった大太刀に向かって光の剣を飛ばし。

 突き刺さっていた大太刀を砕くと同時、この地域に吹き荒れていた刀剣混じりの吹雪が止んだ。
 1人、ヴィクトリアは折れた大太刀を拾い上げるが、手にすると同時に大太刀はボロボロと塵となって崩れ去る。
 だが、晴れたのはあくまでこの地域のみ、遠くに見えるほかの地方は未だ吹雪呼ぶ雲に覆われているようだった。
「ともあれ、このまま放置は出来ません。この異変の黒幕を突き止め平和な世を取り戻す。その為に、この力を尽くしましょう」
 手を払うと斧槍を引き抜き、ヴィクトリアは歩き出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

涼風・穹
無防備に刀剣混じりの猛吹雪の中にいれば出血か雪で濡れそうなので《贋作者》で傘という名のライオットシールドを模造して傘を差します

まずは刀剣類の平均的な重さ、飛んでくる方向及び速度と高度、合わせて吹雪の風速を確認
そこから重力加速度を加味して数式を組み上げてどちらからどの程度の距離を飛んできたのか計算を…出来れば格好も付くのですがそこまでの能力はありませんのでまあ何となくで
取り合えず刀剣がただ風で運ばれているだけなのかやどの程度の高さや方向から飛んできているのかを大まかに確認
もし一定以上の高さに刀剣が飛んでいないなら宇宙バイクでそれ以上に高く飛んで、無理そうなら徒歩で刀剣が飛んでくる方向へ向かいます


田抜・ユウナ
●妖怪たち
これは……あまりによろしくない
妖刀に憑かれた人(子供は特に)が悲劇を起こす光景は、自分の過去とダブる
被害者を出す前に、《戦闘知識》に基づいた当身で出来るだけ素早く気絶させる
刀は片っ端から叩き折る
基本的に対処は、徒手空拳の古武術で

●吹雪
「……まったく。ずいぶん、ムカつくお祭りをやってるわね」
低く唸って、背中の妖刀に付けてある〈妖刀封じの刀緒『斬鎖』〉を一時的に解く。蜘蛛の巣のように薄く広く広げ、触れた物は問答無用で妖力を封じ、分解、霧散させてやる。
メインの目的は飛んでくる刀剣への対処だけど、吹雪を制御してるっていう妖刀も捕らえたいところ。妖力の流れを読んで、チャンスをうかがう



 古風な民家が点在する村の広場も、今は積雪に覆われ白一色に。
 さらに吹雪が荒れ狂い視界も悪い中、時折ぬるい刃に光が反射する。
 ザッ、ズザザッ、ブンッ! ドガッ!
 蹴られたのか投げられたのか、刀を持った豆腐頭の妖怪が家壁に叩きつけられる。
 だが、豆腐妖怪は衝撃で屋根から落ちてきた雪を振り払い、何事もなかったように立ち上がり、自らを吹っ飛ばした相手――刀を背負った十五・六の少女に向かって再び刀を構える。
「これは……あまりによろしくないね」
 少女、田抜・ユウナが妖刀に操られ再び自身に襲い掛かってくる豆腐妖怪の刀を回避しつつ呟く。
 そう、彼はもともとこの村の村人だ。それが今回の事件により振ってきた刀を拾ったばかりに、憑りつかれたように狂人と化してしまったのだ。
 ブンッ!
 豆腐男の振るった大振りを、バク転で後ろに飛びつつ避け、再び刀を構える隙をついて一気に距離を詰め腹に重たい一撃を叩き込むユウナ。
 体をくの字に曲げて苦しむ豆腐妖怪だが、その姿を見て家の扉の前でこちらを見る豆腐頭の子供が叫ぶ。
「父ちゃんっ!」
「っ!」
 チラとそちらを見てユウナが顔をゆがめる。
 たぶんこの豆腐妖怪の子供なのだろう、さすがに常時と違う父親の様子に異変は感じているだろうが、さりとて父親を殴られてそれを喜ぶ子供もいない。事情も説明したいが、さすがに戦いながらそれをするわけにもいかず……。結果、子供の顔がちらつきユウナの判断を鈍らせていた。
「アアアアアッ!」
 再び襲い掛かってきた豆腐妖怪の刀を逆に懐に飛び込み、その刀を持つ腕自体を殴って刃を受け流す。
 豆腐妖怪は殴られた勢いのまま回転しバランスを崩して転がるも、瞬間、強めの吹雪がユウナの追撃を止め――。
 ザクッ。
 後ろで何かが地面に刺さる音。
 ハッとして振り向けば、子供の目の前の地面に1本の包丁が突き刺さっていた。
 豆腐の子供は一瞬の間の後、ふらりと引き寄せられるように包丁に手を伸ばし……。
「いけないっ!!」
 ユウナが叫ぶが距離がある。どうあがいても間に合わない。
 一瞬、ユウナの脳裏に過去がフラッシュバックする。
 妖刀に憑かれた事による悲劇、妖刀に来るわされる光景。
 手を伸ばすも届かず、子供の手が包丁に……。
 その時だ。

 ドスンッ!

 子供の手と包丁の間を遮るように、長方形の盾――ライオットシールドが空から降ってきて突き刺さる。
 さらに。
「こっちの坊主は任せときな」
 同じく空から宇宙バイクに乗って降りてきた涼風・穹の言葉に、ユウナはコクリと頷き。
「はああああっ!」
 古武術の握りを作り、全速力で豆腐妖怪に突っ込み、急所の一つである巨闕を一撃で突き貫く。
「グッ……ハ……」
 どうと倒れる豆腐妖怪、その手からこぼれ落ちた妖刀を叩き折るユウナ。
 とりあえず、あとは子供ともども家の中へ避難してもらい、戸締りをしっかりさせればこの村は問題無いだろう。

「ありがとう、乗せてくれて」
「ああ、気にすんな。すでに何人かこの刀剣吹雪を止めるために運んだしな」
 宇宙バイク【スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ】に二人乗りしつつ、前に乗る穹に礼を言うユウナ。
 バイクは空をかけ、吹雪の中さらに上へ上へと上昇し続けていた。途中、何度か刀剣が飛んできたが穹がユーベルコードで作成したというライオットシールド型の傘が盾となり壁となり被害を防いでくれていた。
 やがて……。
「うわぁ」
「よしっ、ここまでくれば安全だ」
 宇宙バイクは雲の上へと出る。そこは風こそ強いが吹雪も飛んでくる刀剣類も無い。
「さ、あとは吹雪の中心へ向かうだけだ」
 穹はそう言って宇宙バイクを飛ばす。ユウナが聞けば、すでに何人かこうやって猟兵達を運び、いくつかの刀剣吹雪を止めたという。そして、残っている吹雪はこの眼下のものが最後だとも。
「それにしても、よく中心がわかるわね」
「そりゃあまぁ、飛んでくる刀剣類の平均的な重さ、方向、速度、高度、それに吹雪の風速と、さらに重力加速度を差し引いて逆算すれば、ある程度はわかるってもんさ」
「へぇ~」
 ユウナの相槌ちに、本当はそんな計算ではなく「なんとなく」で……つまり猟兵としての勘だけで進んでいる事を飲み込む事にする穹。
「(まあ、刀剣がどの程度の高さや方向から飛んできているのか、大まかに計算してないってわけでもないしな、うん)」
 そして……。
「中心だな」
「だね」
 台風と違い「目」があるわけではないが、明らかに眼下の一段と暗くなっている雲の下が中心だろう事は、ここまでくると流石に邪悪な気配というかオーラによって2人ともなんとなく察する事ができる。
 問題は、ここが中心なら雲の中やその下の吹雪は一番強く、また飛んでくる刀剣の数も半端では無いだろうという事だ。ライオットシールドを前に下降するにしても、相当な危険は伴うだろう。
「さて、どうするか……」
「ここは私に任せて、その代わり」
 ユウナの説明に、穹は「無茶な」と驚くも。
「それしかねーか……わかった、下で待ってるぜ。俺だけならそっちより先に降りる事はできるはずだ」
「それじゃあ……行ってくる」
 そう言い放つとユウナは宇宙バイクから飛び降りたのだった。

 コンマ秒であっという間に雲の中へ入ったユウナは、目を閉じて集中する。
 周囲に漂う妖気を読みながら、手を背後へ。
 ユウナは低く唸ると背中の妖刀に付けてある【妖刀封じの刀緒『斬鎖』】を一時的に解き、それを蜘蛛の巣のように薄く遠くまで広げると、斬鎖に触れた飛び交う刀剣たちの妖力を問答無用で片っ端から封じていく。
「(やっぱり……)」
 目を閉じたままユウナが呟く、封じた刀剣たちはやがて風に乗り分解していくのが妖力の無散と共に感じられたのだ。
 数秒もせず、今度は広げた斬鎖が地面にまで到達、そこに突き刺さる1本の大太刀に接触する。
「(ぐっ、強い……けど……!)」
 ほかの刀剣たちと違い一時的に反発を感じるが、すぐに斬鎖が飲み込み無散させる。
 落下するユウナの目にも、地面に突き刺さった大太刀が真っ二つになり、それが分解される様が見て取れた。
 だが、そう安堵するも束の間、目の前に迫りくるは白い大地。
 瞬後、赤き宇宙バイクが視界の端に移り、激突寸前のユウナをキャッチ――しかし、さすがに勢いを全ては殺せず、宇宙バイクともどもユウナも運転していた穹も大地へと投げ出される。
「ふぅ……やれやれだ」
「下が雪なのは助かったかも」
 怪我がない事を確認し立ち上がる2人。
 すでに吹雪は止み、空は再び青さを取り戻しつつあった。
「これで吹雪は全部止めたが……あとは他の仲間と合流して情報を付き合わせるか」
 穹がいう。
 そう、事件はこれで終わったわけではない、この刀剣吹雪を巻き起こした黒幕がいるはずなのだ。
「……まったく。ずいぶん、ムカつくお祭りをやってくれたわね。でも、次はこっちの番よ!」
 まだ見ぬ黒幕を見据え、ユウナは掌に拳をパシンとぶつけ気持ちを昂らせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『『剣客』雪だるま』

POW   :    雪だるま式に増える
自身が戦闘で瀕死になると【仲間】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    抜けば玉散る氷の刃
【その手でどうやって持つんだかわかんない刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    雪合戦
レベル×5本の【氷】属性の【雪玉】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 刀剣紛れる猛吹雪が止み、世界に平穏が戻り始める。
 だが、未だ暑き太陽の熱は戻らず、風は冬の寒さを運ぶ。
 吹雪の原因だった結界の大太刀を次々に破壊した猟兵達だが、地図と照らし合わせてみれば、配置された刀剣に規則性を読み取る事ができた。
 それはまるで円を何重にも描くように配置されており、つまりその中心こそ――。
 ズシン、ズシン、ズシン……。
 猟兵達の相談を打ち破るように重たい何かが地を踏む音が響き渡る。
 見れば吹雪が止んだ雪原の向こうから、重たい音を立てて何かが列を成してやってくるではないか。
 ズシン、ズシン、ズシン……。
 それは足で歩くのでなく、胴体ごと飛び跳ねて進む行列だった。
 頭には浪人笠を被り、まるで昔話の笠地蔵の列がごとき――いや、彼等は石の象ではなかった。白い体躯に石や枝で作られた目鼻と口、そう、こちらに向かって列を成して進んでくるは、浪人笠を被った雪だるま達であった。
 どうやら、ヤツラはこの事件の黒幕が放った配下たちのようだ。
紬雁・紅葉
まあ、冬将軍の手勢?
悪戯笑みの後
冗談はさておき…御鎮めします

羅刹紋を顕わに戦笑み
先制UC発動
雷属性を攻撃力に
氷属性を防御力に
付与
地形を利用し氷の魔力を増幅

九曜、巴、鳳翔を適宜使い分け

残像忍び足で正面からゆるゆると接敵

射程に入り次第破魔雷火属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるか見切り
躱せるなら残像などで躱し
さもなくば破魔衝撃波オーラ防御武器受け等で防ぐ
何れもカウンター破魔雷火属性衝撃波UCを以て範囲ごと薙ぎ払う

窮地の仲間は積極的にかばう

雪やこんこ
霰やこんこ
玉散る刃は願下げ
剣呑達磨に朝陽はやれぬ
比良坂転げて

去り罷りませ♪

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


リリスフィア・スターライト
他の猟兵達との連携にアドリブ可。
強気で接近戦が得意な人格のリリスで挑むわ。

次の相手は雪だるまの剣客ね…
何だか可愛く見えなくもない相手だけど、
そんな事も言っていられないわね。
雪だるまなら炎が苦手のはず。
囲まれないように動き回って、
UC華炎連斬による炎を纏った剣で応戦するわ。
雪だるまの氷の刃を見切って回避しつつ
炎と斬撃のコンビネーションで
片っ端から斬り裂いて燃やしてあげるわ。
新たな雪だるまを召喚されないよう確実に止めを刺すわよ。
雪だるまの雪玉による遠距離攻撃も炎の剣で弾き返してやるわ。
生憎だけれど、ここで遊んでいる時間はないわ。
速く片付けて黒幕に辿り着かないといけないのよ!


ヴィクトリア・アイニッヒ
あら、丸々として中々に可愛らしい。
…ですが、その外見に惑わされてはいけません。
この雪だるまは、恐らくこの異変の要因が放った尖兵。
これを討ち取れば、黒幕への道が拓けるはず…!

しかし、この数は中々に厄介。
それに放たれる雪玉の数は…まさしく、驟雨の如くと言えましょうか。
この厄介な敵の力を突破する、その為には…。

UC【神威の光剣Ⅱ】を使用。
この剣は、遍く世界を照らし給う、太陽の力を具現化した物。
いくら雪玉を生み出し、この世を氷雪で覆おうと…太陽の熱の前に、氷雪が解けぬ道理などありません。

「主よ。生命を狂わす魔性の雪を溶かす力を……!」

※アドリブ歓迎です


水無月・ゆえと
刀剣吹雪の次は雪だるまかぁ…
余計に寒く感じるけど、良く分からない者を相手にするよりは分かりやすくて良いね

寒さ対策に[雪華乃纏]をしっかり身に着け耐性をつけて戦いに臨もう
敵の数が多いと長期戦になるかもしれないし[うさぎ印のお菓子袋]のお菓子も食べて元気をつけておこうかな
跳ねて移動しているところを見る限り、急旋回は苦手そうだよね
ここは[蒼影兎]の幻影を駆使しながら距離をつめていこう
避けられないような攻撃は[流水鞘]で受け流して進むよ
十分近づいたら【空壁跳兎】で空を蹴って敵をひとっ飛び
背後から斬撃をお見舞いするよ
「飛び跳ねるなら、もっと綺麗に飛ばないとね!」

アドリブ/連携◎




 雪原に丸い跡を一列に残しつつ近づいてくる笠を被った剣客雪だるま達。
 黒幕がいるであろう方角から来たという事は……。
「あら、丸々として中々に可愛らしい」
「たしかに可愛く見えなくもない相手だけど……」
 猟兵達の中からヴィクトリア・アイニッヒが思わず呟けば、ついつい同意してしまうはリリスフィア・スターライト。
 お互いの声が聞こえ、ふと顔を合わせる2人。
「……ですが、その外見に惑わされてはいけませんよね」
「ん、可愛いなんて言っていられない」
 そう言うとヴィクトリアは神官騎士団時代から愛用する長柄の斧槍を、リリスフィア――いや、剣士用人格リリスは愛用の魔法剣を構える。
「それにしても、思ったより数が多いよねぇ」
 ならばこそと長期戦も鑑み水無月・ゆえとが【うさぎ印のお菓子袋】に入った和菓子をハムりと食べつつ雪だるま達を見据える、その数は後から後からやってきて今や数十体の域だった。
 そんなゆえとの横にスッと立ち並ぶは羅刹の戦巫女、紬雁・紅葉。
「手勢を全力でこちらにあてがう程、あちらが追い詰められている……そうとも取れますね」
 ゆえとの言葉に同意しつつ、剣神の鬼巫女たる証【羅刹紋ムラクモ】を顕わに彼女は笑みを浮かべ。
「それでは、こちらも相応の準備をさせて頂きましょうか」
 言うと同時、紅葉は「弐の式……弐の式……弐の――」と呟きながら自身の幾つもの武器に次々と属性を付与していく。刃や鏃に雷の鮮烈さを、柄や衣に氷の守りを、さらに雪原に漂う同属性の力をオーラのように纏い守りの力を増幅していく。
 そんな紅葉の様子を見てゆえともゴクリと菓子を飲み込むと、一般的な刀に比べ少々短い愛刀の柄に片手を添えつつ、首に巻かれた花があしらわれた白いマフラー【雪華乃纏】を空いてる方の手で僅かに緩め戦闘態勢へ。
「では、そろそろ参りましょうか」
「向こうもこっちに気づいたみたいだしね」
 2人の様子を見てヴィクトリアが聞けば、敵を注視していたリリスフィアも敵の様子が変わった事を伝え。
 ゆえとはゴクリと唾を飲み込み、足元を確認するよう踏みしめるといつでも行けると言うように頷く。
 ブンッと属性の付与された薙刀【円】一振りし腰為に紅葉が構えると、悪戯っぽく微笑むみ。
「準備は万全、それでは冬将軍の手勢たちを……皆で御鎮め致しましょう」
 そう宣言するのだった。


 猟兵達に気づいた雪だるまの剣客達が、氷の刀を手にしてピョンピョンと跳ねながら向かってくる。だが、ただ跳ねてくるわけでなく跳ねると同時に数百~千個近い氷の雪玉が雨あられと降らせてくるのだ。
 物としては球であり鋭い矢とは別物だが、堅い氷の雪玉は鉄球に近く、掠っただけでもかなりのダメージとなる。
「この雪玉の数は中々に厄介ですね……まさしく、驟雨の如くと言えましょうか」
 回避仕切れぬ雪玉は、自身の斧槍を回転さえ弾きながらヴィクトリアが言えば、同じく剣で弾きつつリリスフィアが。
「雪だるまの剣客だって言ってたのに、ぜんぜん近寄ってこないじゃないのよ!」
 接近戦が得意なリリスフィアが苛立たしげに叫ぶも、雪玉を回避しつつ仲間たちに目をやったゆえとが気が付く。
「あれ? 紅葉さんは?」
 ゆえとの言う通り紅葉の姿が無い。
「いえ、あそこです!」
 ヴィクトリアがあっと声を上げ戦場の前方を指指す。
 見れば雪玉飛び交う戦場を、ゆるゆると時に姿を増やし、雪玉をすり抜け、残像を残して進んでいく紅葉がいた。
「奇しき名たる魂を振りて畏みお越し起こし申す……来たれ! ≪雷身雷翔・電≫」
 紅葉の全身を雷が覆い、薙刀の刃へと事前に纏わせた雷の光が更に増幅、横薙ぎに振るうと同時に最前線に並んでいた剣客雪だるま数体を薙ぎ払う。
 突如猟兵に接敵された雪だるま達に動揺が走り、僅かに雪玉の投擲に穴が出来る。
 その隙に一気に雪原を走り渡るはリリスフィア、投擲が続く雪玉を強引に切り抜け、紅葉が薙ぎ払った雪だるま達に追い打ちとばかりに炎を纏った剣で斬りつける。
『ギ、ガ……!』
 炎に溶け半壊する雪だるま達。
「まだです! トドメを刺さないと!」
 強引に突っ込んでいったリリスフィアを追うよう走ってきたヴィクトリアが叫ぶ。
「わかってる! 新たな雪だるまを召喚されないように……」
 剣を振り切った体勢のままリリスフィアは答えると。
「雪だるまなら炎が苦手のはず……この距離なら外さない! 焼き払い斬り裂いてあげるわ!!!」
 振り切った体勢からの豪快に切り返し、返す炎の刃で同類を召喚しようとしていた雪だるま達に追撃の爆炎を叩き込む。トドメを刺されどろどろに溶けて消える雪だるま達。
「みんな! アレを見てっ!!」
 先行した紅葉たちを見て、幻影を纏いつつ雪玉の雨を突破して来たゆえとが何かに気が付き、剣客雪だるま達の一部を指差す。紅葉とリリスフィアによって敵前衛の数が減ったからか、そこには後ろへ逃げろとピョコピョコ撤退していく一部の雪だるま達がいた。
「あれは……大太刀?」
 ゆえとが見つけた一団はすでに他の雪だるま達に紛れて見えなくなったが、ヴィクトリアの目には後衛に逃げた雪だるま達が何か細長い物を担いでいたのを見逃さなかった。
「刀剣乱舞の原因……あの大太刀を設置してたのも、やっぱこいつらだったって事だね」
 リリスフィアの言葉に皆が頷き、猟兵達の間にこいつらを見逃すわけにはいかない、という緊張が――。
 ピキピキピキ!
 猟兵達の気炎が上がると同時、周囲の剣客雪だるま達に伝搬する氷の音。
 それは雪だるま達が氷の刀を生み出す音だった。
 そして……。
 ズザザザザッ!
 雪だるま達が一斉に抜刀、氷刀を構え猟兵達をじりじりと取り囲もうと動き始めるのだった。


 突っ込んでくる2体の剣客雪だるま、それらが狙うは強気に1人攻め込んでくるリリスフィアだ。
『ギギガッ!』
 大上段から大きく振り下ろしてくる1体目の氷刀をギリギリまで引きつけ軌道を見切ると、リリスフィアはその場で回転するよう回避すると、回転の勢いを殺さず迫る2体目の雪だるまへ一気に踏み込み、2体目の懐に飛び込みつつ炎の斬撃を叩き込む。
『ギッ、ガッ……!』
 炎の軌跡によって上下に断たれた2体目の雪だるまが胴体を残して頭を転がす。
 その瞬間、断たれた2体目の向こう、その影に隠れて迫っていた3体目の氷の刃が目前に迫る。
 キンッ!
 だが、リリスフィアに迫る刃は直前で弾かれる。目の前には白いマフラーをたなびかせるゆえと。
「大丈夫?」
「ええ、でも……ありがと、助かったわ」
 リリスフィアが素直に感謝を伝えと「う、うん、良かった」と25歳とは思えぬ子供っぽい反応を見せるゆえと。実際、月に住む玉兎を祖先に持つ一族たるゆえとは一族の中ではまだまだ子供なのだ。
「それにしても、よくここまで来れたわね」
 ゆえとと背中合わせになり、連携し複数の雪だるま達を捌きながらリリスフィアが聞く。自分で言うのも何だが自分は1人で孤立するほど敵陣に突っ込んでいたはずだが……。
「えっと、それは……」
 どう説明しようか迷うゆえとに、隙有りっとばかりに雪だるま達が殺到。四方から一気に刀で突かれるも、響き渡るは4本の氷刀が激突する高い音のみ。
『ギ、ガガ?』
 ゆえとを見失った雪だるま達が疑問符を浮かべるも、全てを見ていたリリスフィアは納得する。
「へぇ、その兎耳は伊達じゃないってわけね」
 関心の声と同時、1体の雪だるまの背後へ着地したゆえとが【蒼影兎】で一閃、残像が残るほどのスピードで斬り裂く。背後に回られた剣客雪だるまは何が起こったか解らぬまま消滅する。
「ただの兎じゃないよ? オレのうちは月の兎だから」
 そう言って再び【空壁跳兎】を使って跳躍すると、さらに空中で何もない空間を蹴って別の雪だるまの背後へ着地するゆえと。
「やっぱり急旋回は苦手そうだね」
 慌ててジャンプし180度振り返ろうとする雪だるまを、遠慮なく斬り捨てるゆえと。
「飛び跳ねるなら、もっと綺麗に飛ばないとね!」
 言葉だけを残し、次の瞬間には再び跳ねてリリスフィアのそばに着地する。
「空からなら邪魔は入らないだろうし、フォローはあなたに任せていい?」
 そう言うとリリスフィアは豪快に剣を振るいつつ、囲まれないよう縦横無尽に動き出す。
「ちょ、ちょっと待って! フォローはするけど早すぎだよ!」
 その後を邪魔の入らない空中を伝って慌ててゆえとが追っていくのだった。

「この雪だるま達は、恐らくこの異変の要因たる何者かが放った尖兵……ならば、これを討ち取れば黒幕への道が拓けるはず……!」
 そう言いながら紅葉と背を預けながら斧槍を振るうはヴィクトリア。
「だとしても、少々数が多すぎますね」
 紅葉の言う通り、剣客雪だるま達の数は多い、もともと数十体はいたが、トドメを刺し逃すと自身らと同じスペックの剣客雪だるまを召喚し続けはじめる奴らは、文字通り雪だるま式に増えつつあった。
「一つ、これを打開するアイディアがあるのですが……」
 ヴィクトリアの言葉に戦いながら耳を貸す紅葉。そして――。
「悪くないです。ヴィクトリアさんの策に乗らせて頂きましょう」
「でも、自分で言っておいて何ですが、それまでの間……」
「はい、それまでの間は私が全て引き受けます」
 紅葉が迷わず断言しヴィクトリアを見て頷く。ヴィクトリアはそんな紅葉を少しだけ見つめ、わずかな間の後、自身の覚悟を決めると。
「わかりました……それでは、少しの間、お願いします」
 斧槍をズンッと雪原に突き刺し、懐からチャラリと鎖のついた聖印を取り出すと、それを両手で握り両膝をついて祈り始めるヴィクトリア。
 周囲の雪だるま達が何が起こるのかと警戒するが、ヴィクトリアがただ祈って微動だにしない事に気が付くと、チラチラとお互いを見てから再び氷の刀を構え――。
 ピクリ、その全てがヴィクトリアではなく紅葉の方へと視線を戻す。
 なぜなら、紅葉が突如雪にまつわる歌を口ずさみ始めたから。
 ザッ、ザザッ!
 歌いだした紅葉を警戒して刀を構える雪だるま達。
 次の瞬間。
 ズザンッ!
「玉散る刃は願下げ♪」
 途中から歌詞を替え歌に。
 ズザンッ!
「剣呑達磨に朝陽はやれぬ♪」
 ズザンッ、ザンッ! バシュッ!
 即席で変えた歌を歌いながら、踊るように舞うように、雷と炎を纏った九曜を片手に次々に雪だるまを切り捨てていく紅葉。
 さすがの自体に剣客雪だるま達が連携しつつ紅葉に斬りかかるも、その姿は霞と消えて。
「比良坂転げて――」
 残像を残しながら羅刹の刃が雪だるまをまた1体袈裟斬りに。
「――去り罷りませ♪」
 笑みを絶やさず、しかし纏うオーラは鬼気せまり、舞い殺す戦巫女に単純な表情たる雪だるま達が、確かにその時、戦慄を覚えたのだった。


「生憎だけど、あなた達と雪合戦して遊んでいる時間は無いわ!」
 リリスフィアが炎剣を振るい飛んでくる雪玉をまとめて蒸発させ、さらにブンッと炎の尾を引かせながら剣を振るい周囲の雪だるま達を牽制し、背後で祈りを捧げるヴィクトリアを見もせず声をかける。
「まだなの!?」
 その問いに返事は無い。
 紅葉が1人善戦しているのをゆえとが気が付き、慌てて2人で戻ってみればヴィクトリアが何かをやろうと祈りを捧げていたのだ。それ以降、リリスフィアもゆえともヴィクトリアを守るよう雪だるま達と交戦していた。
「くっ!?」
 同時に刀を振るってくる2体の剣撃を【蒼影兎】で受け、もう片方は【流水鞘】で受け流し、その2体を空中に飛び上がると同時に回し蹴りで吹き飛ばしつつ。
「行かせない!」
 更に空を蹴りヴィクトリアに迫る3体目を迎撃するゆえと。
 だが、いかんせん雪だるま達の包囲が縮まって来ており、一心不乱に祈るヴィクトリアの背後に氷の刃が――。
 ズドンッ!
 ヴィクトリアの背後に迫っていた敵の頭を一本の矢が貫通し、ドサリと倒れる雪だるま。
「させませんよ」
 それは和弓【鳳翔】を構える紅葉、投げ捨てた剣が落ちている。咄嗟に武器を持ち替えたのだ。
 そして……。
 ヴィクトリアが握る両手の隙間から光条が漏れ始める。それは握った信仰の証――太陽の紋章が輝き出したのだ。
「我らが前に立ちふさがりし、冷たき悪意を打破するために……ラ・スパーダ・ディ・マエスタ・ドゥエ! 主よ、生命を狂わす魔性の雪を浄化せし力を、今、ここに!!!」
 瞬間、ヴィクトリアの握った紋章が爆発的に光を放ち、彼女を中心に幾何学模様を描き複雑に飛翔する光の剣が無数に出現する。
『ギッ、ガァァッ!』
 光に照らされ蒸気を上げだす周囲の雪だるま達。
「……この剣は、遍く世界を照らし給う太陽の力を具現化した物です」
 ヴィクトリアが呟く、だがそれを聞く雪だるまは周りにいない。光の剣に照らされ一気に蒸発したのだ。
「いくらこの世を氷雪で覆おうと……太陽の熱の前に、氷雪が解けぬ道理などありません」

「半分以上は浄化できたでしょうか」
 ふぅ、と力が抜けその場に座り込むヴィクトリア。
「そうですね、でも、これで終わりではありませんよ」
 そう言って手を差し伸べるは紅葉。
 まだ剣客雪だるま達は残っている、だが、それよりも――。
「刀剣吹雪の次は雪だるまで……この後は何が出てくるのかな?」
 疲れたようにゆえとが言うと。
「何だっていいわよ。さっさと片付けて、皆で帰りましょう。大丈夫、私たちならやれるわ!」
 リリスフィアの力強い言葉に、3人は頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宴・段三郎
雪だるまじゃ…雪だるまが刀持っておる…

【行動】
とりあえず寒いのイヤなので身体をあっためるのじゃ

使用する妖刀は
号 『焱灰鐚』

その名の通りエンパイアの名を冠する妖刀じゃ
この妖刀でわし以外の近くにいるもの全部蒸発させるのじゃ

この妖刀がどれくらい熱いかというと、びっぐばんなるものが5回分の熱量なのじゃ。作ったわしもようわからん。

とりあえずわしの周りの雪が全部溶けるのがわかれば熱いということはわかろう

奴等をこの焱灰鐚で【範囲攻撃】、熱線による【衝撃波】、【焼却】で蒸発させるのじゃ

飽きたら刀を一振りこさえて闘うのじゃ、わしのゆーべるこぉど『鍛治仕事』で「すごいやべぇ妖刀」を作り、切り倒すのじゃ


田抜・ユウナ
オブリビオンでなければ「あら可愛い」とでも言うところだけど
……今の私はすこぶる機嫌が悪い
雑魚に手間取ってる暇はないと、飛び込んでいく

「――田抜流、群狼の極意」
常に敵全体の動きを《戦闘知識》《視力》で捉えるよう心掛け、専守防衛
回避に専念しながら、攻撃に最適なタイミングを計る

攻撃方法は、【レプリカクラフト】で作った焼夷地雷
仲間を巻き込まず、なおかつ出来るだけ多数の雪だるまを灼けるような攻撃範囲を《見切り》、ここぞって所で地雷原を作り出し一網打尽にしてやるわ

《逃げ足》で爆風から逃れたら、乱れた髪をかき上げながら先に進む


涼風・穹
……歩く雪だるまの行列…
まるで昔話の一場面みたいだな
……ただまあ昔話って考え方によってはかなりえげつないものも多いけどな…

あの雪だるまも妖怪だとすれば身体は雪とは限らないのかもしれないけど、取り合えず熱で攻めてみるとするか…

一部の世紀末な方々やヴィランに人気のアイテム、火炎放射器を《贋作者》で模造して炎で攻撃します
汚物は消毒だー(お約束)

もし雪だるま達の数が猟兵の数と比べてあまりに多かったりして苦戦するなら『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』で飛んで上空から《贋作者》謹製の火炎瓶を雪だるま達へばら撒いたり、雪だるま達の頭上を飛び越えて背後に回り込んでから攻撃したりと攪乱しておきます


斬断・彩萌
刀剣混じりの雪なんてゾっとしないわね
幾ら止んだとはいえこの空気――嫌な予感がする

この配置は……ああやっぱり、中心には何かしらいるだろうと思ったの
あんたたちは雑魚っぽいし、早く大ボス出してきなさいよね

UC翠炎で雪だるまたちを一網打尽にひっとらえる
その上から消えない炎で攻撃よ!
脱出する者がいたらTraitorで攻撃、近づいてくるようならOracleで反撃

昔話に、傘地蔵なんてのがあったけど……あなた達はちょっと違うみたい?
大丈夫、もう寒くはないわ
あたたかいカクリヨの日常に還りなさい
そんでもってあんたらを支配してる奴は、私達が絶対にとっちめてあげる!

アドリブ歓迎




「雪だるまじゃ……雪だるまが刀持っておる……じゃが」
 どうやって刀を握っているのかのぅ? と、宴・段三郎がふと思った言葉を口にするも、それについて語れる者は誰もいない。敢えていうなら妖怪だから、だろうか。
「とはいえ、歩く雪だるまの行列は、まるで昔話の一場面みたいだな」
「なによ? かわいいとでも言いたいの?」
 涼風・穹の例え話に対し、吹雪を解決した時からやけに機嫌が悪い田抜・ユウナが突っかかる。
「いや、俺はただ、昔話って考え方によってはかなりえげつないものも多いよなって……いや、やっぱ何でもねーわ」
 吹雪の時から一緒に行動していたせいか、これ以上言ってもと穹の方がさっさと白旗を上げる。
「それじゃあ、私たちもさっさと行くわよ」
 すでに半数の猟兵達が雪だるま達への突撃を開始しており、ユウナ達は一歩で遅れた形となっており、それがまたユウナの機嫌を悪くしているのだ。こちらも負けてられない、とばかりにユウナが走り出そうとするが。
「ちょっと待って!」
「何よ」
 それを止めたのは斬断・彩萌、伊達の眼鏡を光らせすでに乱戦に突入した戦場を指差し。
「あの配置は……ほら、やっぱり、敵の列が乱れて左右に別れだした……」
 彩萌の言葉通り、少し経つと味方が突撃した部分で乱戦が始まり、それに対応する中央の雪だるま達と、その乱戦から離れていくように左右に展開を開始する雪だるま達が見て取れる。
「鶴翼の陣?……に、変わろうとしている?」
 養父の元で武術を学ぶユウナが、兵法も知っておいた方が良いと教えられ覚えていた陣の名を呟く。
「左右に散って中央に攻めてきた敵を挟撃するつもりのようだな」
 同じく敵の意図を読んだ穹が言うと、その通りとばかりに彩萌が頷く。もっとも彩萌的には陣の名前が云々は怪しいところではあるのだが……まあ、敵が左右に散っていく事が伝わったのでOKだろう。
「では、わしらも二手に分かれて左右それぞれの雪だるまをまずは討つという事じゃな」
 寒いのか【焱灰鐚】という炎の妖刀を抱えながら段三郎が言うと。
「わかったわ。行くわよ!」
「俺かよ!? いや、行くけどさ」
 目だけで付いてこいと勝手に合図し、ユウナがさっさと右側の雪だるま達に走り出す。
「ふむ、ではわしらは――」
「ええ、左に行きましょうか」


 重たい銃声が響き、雪だるまの笠を貫き雪の頭がゴロリと穴をあけて転がり落ちる。
 叛逆者の名を冠す二丁拳銃の片割れ【Traitor】の大きな反動を受け止めつつ、彩萌は左側の雪だるま達の中で、さらに広がっていこうとする雪だるまを狙って倒しつつ、一緒に付いてきて少年をチラりと見て。
「ねえ、キミの方は大丈夫なの?」
 少年、段三郎は一緒にこの左側にやってきたものの刀を抱きしめたまま、ひょいひょいと雪だるまの攻撃を回避するだけで、今のところ攻撃らしい攻撃をしていない。
「うむ、ちょっと寒いのがイヤだから身体をあっためてただけなのじゃ……それに」
 段三郎は抱いていた刀を胸から離すと、鞘と柄に手を乗せる。
「そろそろ温まってきたし……ふむ、大丈夫じゃ」
「え、何が?」
「少々大雑把な妖刀ゆえ、わしから少し離れておいてくれぬか?」
 もとより離脱者を優先的に狩っていた彩萌だ、言われるまでもと離脱しようとする雪だるまを狙い、段三郎を置いてそちらへ向かう。
「さて、ぬしらに聞く耳があるか解らぬが、せっかくなので教えてやるのじゃ。この妖刀の名は【焱灰鐚】、その名の通りエンパイアの名を冠する妖刀じゃ。そしてこの妖刀の威力じゃが……」
 その時だった、雪だるまの1体が氷の刀を振りかぶって段三郎へ振り下ろす。
 カチッ。
 妖刀の鞘を持つ手の親指で鍔を押し上げ、数センチの刃をのぞかせる。瞬後、段三郎を中心に圧倒的な熱量が波紋のように広がり、一人になった段三郎を仕留めようと飛び掛からんとしていた雪だるま達がビクリと硬直する。
「ほう、下手に近づけば一瞬で蒸発する事を察したか……じゃが、この妖刀がどれくらい熱いかについては、理解できておらぬらしい」
 段三郎はゆっくり鞘から刀身を抜き放ち。
「なんせ、びっぐばんなるものが5回分の熱量なのじゃ……まあ、作ったわしもようわからんのじゃがな」
 そう言って周囲を見渡せば、襲い掛かろうとしていた雪だるま達はどれも融解し、さらに段三郎の周囲だけ雪原が元の草原へと戻っていた。
「わしの周りの雪が全部溶けるのがわかれば熱いということはわかろう……と、言っても、すでに聞いておるだるまは1体もおらぬようじゃな」
 やれやれ、と言うように段三郎は再び危険な妖刀を鞘に納めるのだった。

「ヒャッハー! 汚物は消毒だー!」
 ユーベルコード≪贋作者≫で模造した火炎放射器で舌を出しつつお約束な行動をテンション高く行うは穹。
 そんな穹をジト目で見つつ。
「あなたは楽しそうね」
「お前さんは逆なようだな……だが、戦場じゃあ冷静でいた方が良いんじゃないか?」
「………………」
 穹に正論を言われユウナは少し黙り。
「――田抜流、群狼の極意」
 キンッと襲ってくる雪だるま達の氷刀をしっかり目で見て見極め紙一重で回避し、するすると間を抜けるように通り過ぎる。
「悪かったわ。ちょっと、嫌な事を思い出して……でも、もう大丈夫、気にしないで」
「気にしないって。どんな事情があるのかも知らねーしな」
 ユウナがすり抜け回避した雪だるま達が一直線となっており、まとめて火炎放射器を吹き放ちつつ穹が言葉を続ける。
「で、こっちの右側に俺を連れてきた理由をそろそろ教えてくれねーか? ま、見当付かねーわけじゃないが……」
「本当に?」
 こちらに冷静をと説きつつも、どこか緊張感がない穹に言われユウナがわざと疑問を投げる。
「ソレ、さっきから戦場を走り回りながらなんか仕掛けてんだろ?」
「なら、あなたに一緒に来てもらった意味もわかるよね?」
 フッとお互い笑みを浮かべるユウナと穹。
 ユウナは剣客雪だるま達の攻撃を回避し、専守防衛に努めながらも戦場の各地に【レプリカクラフト】で作った焼夷地雷を配置して回っていたのだ。そして、すでに配置は終わり、自分たちが会話をしている間にジリジリと雪だるま達はこちらを包囲し近づいてきている。
 そして、雪だるま達が一斉に飛び掛かって来る気配を察知し、穹に合図を出す。
「今よ!」
「来いっ! スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ!!」
 穹が手を上げると同時、上空から愛用の宇宙バイクが飛来し穹をひっかけ、さらに穹は下に手を伸ばし。
「掴まれ!」
 その手をユウナが掴み、2人を連れ宇宙バイクが一気に上空へ飛び立つ。
 眼下では跳躍し一斉に襲い掛かってきた雪だるま達が、目的の対象がいなくなりお互いに頭をぶつけている姿が見え。
「一網打尽にしてやる! 起爆!!」
 ユウナが言うと同時、雪だるま達の足元が、大地が一斉に爆発する。
 バラバラと大地混じりの雪が舞い、その土埃を見下ろしつつグッと拳を握るユウナ。
 そして上空から戦場を眺めた穹は、中央もほぼ終幕が近く、任せた左翼も雪だるま達が壊滅しているのを確認。
 だが――。
「ん、あれは……」


 ズンッズンッズンッズンッ!
 慌てるように急ぐように、剣客雪だるま達の一段が戦場を離脱する。
 彼らは他の雪だるま達と違い、ある物を担いでいた。
 それは大太刀、黒幕から配置し直してくるよう言われ持ってきた刀剣乱舞の陣を発動する鍵だった。
 邪魔する者は排除する予定だったが、排除できないなら逃げるしかない。
 表現的には矛盾するが、雪だるま達の頬を汗が流れる。
 しかし――。
 轟ッ!
 逃げる剣客雪だるま達の眼前を塞ぐように、上空から炎が放たれ壁を作る。
『ガッ!? ギギッ!?』
 つんのめりながら歩を止める雪だるま達。
「雪だるまも妖怪だとすれば身体は雪とは限らないって思ったが、やっぱ熱いのは嫌っぽいな」
「誰が逃げて良いって言ったかな?」
 上空からスタッと穹とユウナの2人が降り立つ。ユウナこそ無手だが、穹の手には先ほど炎の壁を作った火炎放射器が握られており――。
「ヒャッハーッ!」
 お約束な奇声を上げつつ穹が雪だるま達に火炎放射をぶっ放す。
 吹きあがる火炎。
 その炎の中から数体の雪だるまが飛び出す。方向はもちろん2人と逆側だ。
 そんな事をすれば戦場に逆戻りだが、全面の炎に飛び込むのは自殺行為だった。
『ギッ! ギッ! ギッ!』
 急げ急げと飛び跳ねる雪だるま達だったが、最後尾(今は先頭)の雪だるま達が足を止めた事で、再びつんのめる。
 なんで足を止めるんだ、と戦闘の雪だるま達を見れば、戻ろうとした雪だるま達の前に立ちふさがるは白い着物を着た少年、段三郎と、茶色い髪を縦ロールにした彩萌の2人。
「逃げていく輩がおると思って追ってみたが……あっちの2人の方が早かったようじゃな」
「この程度なら私がやるけど、いいよね?」
 彩萌が笑顔で段三郎に言うと、どうぞ、とばかりに段三郎が一歩下がる。
『ギッ?』
 たった1人で相手をするつもり……? それなら……と剣客雪だるま達はお互い顔を見合わせてから、それぞれの手に氷の刀を出現させ。
「手は出さぬが……刀は抜くのじゃ」
 そう段三郎が呟くと、右側の雪だるま達との戦闘時には持っていなかった、異様な刀を抜き放つ。それは対剣客雪だるま仕様に≪鍛冶仕事≫で作り上げた雪だるま特攻の妖刀であり、それから放たれる妖気に雪だるま達は一概に身を震わせ動きを止める。
 焦る雪だるま達だが、そんな彼らに上から視認できない不可視の糸が舞い降りる。
「昔話に、傘地蔵なんてのがあったけど……あなた達はちょっと違うみたいね」
『ギッ! ガッ!?』
 動きが取れない事に気が付き身をよじる雪だるま達。
 彩萌はその様子に、しかし変わること無く言葉を続け。
「大丈夫、もう寒くはないわ。あたたかいカクリヨの日常に還りなさい――≪翠炎(ヤーデ・フランメ)≫」
 スッと雪だるま達に伸ばした彩萌の指先から、透き通る翠緑の炎が不可視の糸を伝い最初の雪だるまを包み、さらに糸を伝って翠緑の炎が2体目、3体目と次々に伝播、やがて彩萌たちの前にいた剣客雪だるま達全てが透き通る翠緑の火柱を上げ倒れていく。
「終わったみたいね」
 炎が舞い起す火炎風に乱れた髪をかき上げながら、ユウナがやってくる。その後ろでは倒し漏れがいないか穹が確認しながら歩いてくる。
「うむ、足止め感謝じゃ」
 段三郎がそう言いつつユウナ達と合流する。
 そして、最後の一団にトドメを刺した彩萌は、1人スタスタと炎を上げる雪だるま達の合間を抜け、担ぐことができず大地に転がった大太刀の元まで行くと、背精力を実体化させた剣【Oracle】を振り上げる。
「あんたらを支配してる奴は、私達が絶対にとっちめてあげる……約束するわ」
 ブンッ、バキッ!
 彼らの役目を終わらせるよう、大太刀を一瞬で断ち折ったのだった。


 黒幕から放たれた剣客雪だるま達は全滅した。
 猟兵達は再び事件の元凶がいるであろう、目的の中心部を目指す。
「もう、あの雪だるま達は出てこないよね?」
 これ以上雑魚に手間取るのはまっぴらだとユウナが呟けば、「あれだけ倒したんだし」と穹が肯定する。
「ええ、次は大ボスよね……それにしても刀剣混じりの雪に、刀を持った雪だるま、次はもっと本格的な……正直、嫌な予感がするわ」
 彩萌の言葉に、向かう皆が侍や剣士が……と黒幕を推測する。
「ふむ、間違ってはおらぬじゃろうが……なんというか……」
 そんな中、段三郎だけが何か『ただそれだけではない』、そんな違和感を感じるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『流浪の刀剣士』

POW   :    無双の構え
【天の構え】【陰の構え】【金の構え】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    一刀
【刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    一閃
【刀から衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天帝峰・クーラカンリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 結界の配置から黒幕の居場所は解っていた。
 何重も円状に配置された刀剣たち、つまり、その中心こそが――。
「やあ、せっかくの嵐を止めちゃったのはキミ達かい?」
 そこには1人の少年が立っており、猟兵達を見るとにこやかにそう言った。
「まぁいいさ、嵐はもう一度作れば良いんだしね……だけど、その前にキミ達さ」
 少年の背後には狼の尾がゆらゆらと、その頭からは同じく狼のだろう耳が生えている。
「僕は一振りの刀だった頃、幾人も幾人も人を斬った……妖刀なんて呼ばれもしたけど、僕の望みは叶わなかった。だけどさ、この世界に来てやっと夢が叶ったんだ」
 少年は無邪気に笑みを浮かべると、まるで大好きな甘味を貰った子供のようにその言葉を口に乗せる。
「僕はさ……誰かの手で、じゃなく。僕自身の手で、たくさんの人を斬りたかったんだ!」
 カクリヨの世へ降り立ち、雪狼に憑り憑いた邪悪な妖刀は、楽しそうに猟兵達へと殺気を叩きつけたのだった。
涼風・穹
その雪狼の身体は借り物で本体はその刀なのか…
だとすれば雪狼の身体を傷付ける訳にもいかないし厄介だな…
というような事を流浪の刀剣士に辛うじて聞こえる程度の声量で呟きます
もしそれで調子に乗って攻撃してくるなら全力の《空斬裂破》でカウンターを叩き込みます

剣術の腕前の差で不利なら距離を取って『フック付きワイヤー』を飛ばして流浪の刀剣士の手足や刀に絡ませて動きを阻害させたりというようなやり方も試してみます

卑怯?
詭道も兵法だし生き延びる為にあらゆる手段を駆使するのは当然だろう
いつも格上かつ何をするかも分からないUDCと戦わされる探索者からすれば相手が常に正面から仕掛けてきてくれると思う方がどうかしてるぜ…




 叩きつけられた殺気は心を底冷えさせる恐ろしさと刃のように鋭い敵意に満ちており、グリモア猟兵が予知した幽世を終わらす刃の嵐とは、もしや自分たちが止めた実物の刀剣混じりの嵐ではなく、このオブリビオンの殺気――つまりはたった1人のオブリビオンにて引き起こされる可能性があるのでは、と思ってしまう。
 それゆえか、オブリビオンの妖刀使いに相対する猟兵の数は多けれど、即座に飛び掛かろうとする者はいなかった。
 妖刀使いがどんな戦い方をするか解らないが、楽な相手でない事は確かだろう。
「損な役回りってのはわかっちゃいるが……」
 そんな中、不用心に前に出るは青髪に赤いバンダナを巻いた青年、涼風・穹だった。
 こういう場合、不利を承知でも誰かがソレをやらねばならい。
「なら、俺がやるっきゃないだろう」
 誰に問うわけでもなく呟くと、腰に下げた愛刀【風牙】を引き抜く。
『一斉にかかってこないでいいの?』
 たった1人で向かってくる無謀さをあざ笑うよう、妖刀使いが穹を笑う。
 その言葉に他の猟兵達が、ともにココまで辿り着いた仲間たちが武器に手を伸ばし並び立とうとするも。
 スッ……と、穹は刀を持たない方の手で仲間たちを制すると。
「いい。それともたった1人と戦って不覚を取るのは怖いかよ? それなら多勢に無勢だったからって理由を付けられるよう仲間たちに一緒に戦ってくれって俺から言う事だって出来るが?」
『言うね……いいよ、まずは1対1だ』
 そう言って妖刀使いが刀を構えると同時、穹は地を蹴り敵の眼前へと飛び込むのだった。

 それは経った十数秒にも満たない斬り合いだったが、剣術の腕の差は歴然、最初の一刀こそ勢いがあったがすぐに穹は劣勢になり、防戦一方となっていた。
 ガチンッ!
 妖刀を風牙で受け鍔迫り合いとなる。ぎりぎりと押し込まれながらも『ほら、どうしたのさ?』と刃と顔を近づけて言ってくる妖刀使いに、穹は冷や汗を流しながらも笑みを浮かべ、相手にだけ聞こえるよう言葉を紡ぐ。
「やはり雪狼の身体は借り物で、本体はその刀のようだな……」
『だから何?』
「厄介だって言ってんだよ。雪狼の身体を傷付ける訳にもいかねーからな」
 悔しそうに言う穹を、妖刀使いが鍔を押し込み吹き飛ばす。
 ズザザーと雪原を滑るもなんとか再び刀を構える穹。
『甘いよ、そんな事言ってるとすぐに死んじゃうよ?』
 口角を上げ笑いながら穹に突っ込んでくる妖刀使い。
 だが、完全に穹を格下と見て大きく振りかぶってくる今、それこそ穹が待ち得たチャンスだった。
「≪空斬裂破≫!」
 妖刀が穹を袈裟懸けに斬り裂くと同時、穹の闘気を籠めた風牙の一撃が妖刀使いの腹を薙ぎ払う。
「何っ!?」
 血を吐きつつ驚愕するは穹、薙ぎ払ったと思った刃は空を切り、ぎりぎり妖刀使いの腹に届いていなかったのだ。もっと言うなら、妖刀使いは刃が届く位置にいなかった、穹に向かって飛び込んでは来たが、最後の一歩を踏み込まず、通常なら届かない位置から妖刀を振るったのだ。離れた位置から敵を斬る――≪一閃≫、妖刀が得意とする技の1つだった。
『悪いね、何か仕掛けてきそうだったからさ』
 それは長年、別の世界で人斬り達の手を渡り歩き、様々な修羅場をくぐってきた妖刀ならではの戦いの勘、それがあと一歩を踏み止まり、その場からの攻撃に切り替えたのだ。
「ははっ……」
『それじゃあ次の相手は――』
 グサッ!
 妖刀使いの背に何かが突き刺さる。
『え?』
 それはワイヤーに繋がっているフックの先端だった。それが死角から飛んできて妖刀使いの背に突き刺さったのだ。
 慌てて背に手を伸ばしフックを取る妖刀使い、誰が投げたかとワイヤーを辿れば、それは穹の刀を持たない方の手に……。
「卑怯……とか言うなよ?」
 かなりの重傷だろう、その場に倒れ込んだまま虚ろな目を妖刀使いに向け穹が呟く。
「詭道も兵法だし……い、生き延びる為にあらゆる手段を駆使するのは……当然だろう? 相手が常に正面から仕掛けてきてくれると思う方が……どうか、してる、ぜ……」
 己が必殺の一撃すら届かないと悟り、それでもなお奥の手を切り札とし一矢報いる。
 その積み重ねが次に戦う者たちへの援護となると、猟兵たる穹はわかっているのだ。
 意識を失った穹にフックを投げつけ。
『くそっ!』
 その時、初めて妖刀使いの顔が余裕以外の表情へと歪んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴェンティア・モーヴェマーレ(サポート)
サポプレ

▼アドリブや他の方との絡みモリモリの盛り大ジョブです

▼性格
いつも笑顔でほわほわのぽやんで楽観的な元気っ子

▼口調
なのでス、でショウ、なのですカ?
等、文章の語尾や途中に1、2文字カタカナが入る
挿入箇所はお任せ
『~な気持ち』が口癖
敵に対しても「さん」付けする

▼武器、アイテム
戦闘時以外は動物の形をとっている子達が多く
会話や意思の疎通もします
動物達の方がしっかりしてる説があるやも…
(踏ん反り返る動物達)

▼得意
情報収集
ハッキング
支援

▼好き
家事全般
動物

▼戦闘
後衛に居る事が多く
後方から援護射撃やオーラ防御での防衛サポを好む

▼NG
過度なエロ
(尚、羞恥心がぶっ飛んでるので恥ずかしがると言うことは無いでス)


ユージィーン・ダイオード(サポート)
『目標確認。これより殲滅(ターミネイト)を開始する。』
『状況終了(ゲームオーバー)通常モードに移行する。』
〇性格
自称:くそ真面目の男
鉄面皮の無表情キャラ。
本人は笑ったつもりでも周りからムスッと怒っているように畏れられる系。
子供や動物好きだけど好かれない。
推理のできない鉄面皮脳筋。

〇行動
戦闘:武装を展開し、武器の使い捨てながら【一斉発射】と【制圧射撃】の【爆撃】で殲滅する火力バカ。


アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」

楽観的で感情豊か、夢見る乙女な性格の少女
年相応に無邪気であり、根本が人でない故に残酷

神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も一応遵守しようとするが、それはそれとして楽しそう、面白そうで物事を判断し、それを優先して行動する

バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ

戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、捕食等の野性味溢れる攻撃スタイル
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる


姫神・咲夜(サポート)
 桜の精の死霊術士×悪魔召喚士、女性です。
 普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 片思いの人には「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

清楚で女流階級風の口調で、お淑やかな性格です。
基本的に平和的な解決を望みますが
戦わざるを得ない時は果敢に戦いに向かう勇敢さを持っています。

 あとはおまかせです。よろしくおねがいします!




 このカクリヨの世界に刀剣混じりの吹雪をまき散らせし元凶、雪狼に憑りついた妖刀は、雪狼の体を乗っ取り人狼化したソレに己を持たせ、かつて叶わなかった『自らの手による殺戮』を行おうとしていた。
 当初余裕ぶっていたその敵――妖刀使いも、猟兵の思わぬ反撃に顔を歪ませ、そして……。
『いいよ、わかったよ。確かにきみ達全員に一斉にかかって来られたら面倒みたいだ』
 苛立ちの混じった溜息と共に、妖刀使いが妖刀を右手だけで持つと、左手を前に出す。
『無双流――』
 言うと同時、左手にピキピキピキと冷気が集まり、氷で出来た大太刀が握られる。
『――金の構え』
 瞬後、氷の大太刀を中心に突風が吹き荒れ、空は暗い雲が覆い、そして……このカクリヨの世界に再び刀剣混じりの吹雪が巻き起こり始める。
 陰陽道は五行説に基づけば、金とは金属を表すもの。さらに自身が乗っ取った雪狼は吹雪の中現れるとされる妖怪だ、それが司るは水と冬、妖刀自身の力に雪狼の力を合わせ、この刀剣混じりの吹雪を作り出したのだ。
 猟兵達を強化された状態異常の凍傷と刀傷が襲い掛かる。
『さあ、これでまとめて僕へ攻撃してこられないよね?』
 再び余裕を取り戻し、笑みを浮かべる妖刀使い。
 だが――。
 タタタタタタタッ!
 突如発砲されたアサルトライフルの連射に妖刀と氷の大太刀で急所を守るオブリビオン。
「目標を確認、これより殲滅(ターミネイト)を開始する」
 それはサングラスの奥に赤いサイバーアイを光らせた革ジャン姿のサイボーグ男、ユージィーン・ダイオードだった。左手に撃ち放ったアサルトライフルを構え、右手に持ったビームキャノンを妖刀使いの返事も待たずに乱射してくる。
『なっ、くるの早過ぎじゃない!?』
 刀剣の吹雪を放ってすぐだ、さすがに足止めにすらならない奴(猟兵)がいるとは思わなかった。
 だが、何かしら相性の問題であのサングラスに効果がなかっただけだろう……妖刀使いはそう思い、意識を遠慮なく射撃してくるユージィーンに向け――た、瞬間、視界の端に桃色を基調とした豪華絢爛な着物が翻るのを捉える。
『え!?』
 驚きつつそちらへ大太刀を振るう。
 だが、その一撃は――。
「そんな大振り、簡単には当たりませんよ」
 袖で口を隠し上品に微笑むように、桜の着物を翻し接近してきていた猟兵――姫神・咲夜が回避する。
『2人も!?』
 驚きと悔しさが入り混じった言葉を吐き捨て、妖刀使いが距離を詰めてきた咲夜へ斬りかかる。
 だが、わずかに冷静さを失っている妖刀使いの呼吸を、咲夜は決して見逃さない。
 ≪見切りの極意≫を使い、妖刀と大太刀の2刀による連撃をひらりひらりと躱していく。それでも相手は百人斬りに近い妖刀使いだ、ついには避けきれない一撃まで咲夜を追い詰め――。
 そこで疑問が頭をよぎる。咲夜は、追い詰められたと言うのに焦りも恐怖もせず、お淑やかに口元に笑みを浮かべたのだ。
『何を企んで……』
「どうして、私たちがたった2人だけだと?」
『っ!?』
 その時には、妖刀使いの背後に深紅の瞳を凶暴に輝かせ、その手に自らの火属性を付与して燃え上がらせたアウル・トールフォレストが迫っており、妖刀使いはぎりぎり振り向き、その紅い瞳と目が合うと同時、無防備な背中に炎を纏った一撃を叩き込まれる。
「あっはは! 熱くなってきた!」
 妖刀使いを殴り飛ばしたアウルが笑う。
 ユーベルコード≪侵緑、渾然なる紅蓮に従え(ワイルドファイア・カオスフワワ)≫、代償は大きいが火属性を纏い全ての能力を6倍にするこの力は、単体でオブリビオンとやり合えるほど強力なものだった。
 そのままアウルは倒れた妖刀使いに向かって跳躍、上空から手を燃える手刀に変え突き刺す。が、それは転がりギリギリ回避され、しかしアウルの追撃は終わらず2手目、3手目と妖刀使いが防戦一方となる。
 足止めどころか即座に攻撃に転じた猟兵3人、それを可能としたのは実は3人がある人物のすぐ近くにいたという幸運に他ならない。
「皆さん、頑張ってくだサーイ! とっても応援してる気持ち♪ 元気にナレーなれー!」
 3人がもと居た場所で応援するは、リヴェンティア・モーヴェマーレ。さらにその前には応援団のようにハムスターの3匹、響ちゃん、夾ちゃん、架羅くん達が、リヴェンティアの左右にはチンチラの藍らん、ハリネズミの由希くん、フェレットの壱くんと、相棒たる動物たちが彼女と同じくポンポンをもって一生懸命に応援――ユーベルコード≪応援ファイト♪(ゲンキガデルオマジナイ)≫を発動させていたのだ。
 この応援があったからこそ、刀剣混じりの吹雪による刀傷も凍傷も気にせず、3人は即座に妖刀使いへと攻撃に転じられたのだ。
「ふぅ、応援するのも大変デス」
 ポンポンを持つ手で額の汗をぬぐうリヴェンティアだが、それを見た周囲の小動物たちがポンポンで応援する動作をしながら、視線とキューキューという非難の声で、リヴェンティアに休むのはダメだと指摘する。
「あわわ、ダイジョウブですよ、やります、ちゃんと応援しますデス」
 果たして小動物たちを使役しているのやら、使役されているのやら……。

 4対1の戦いも数十秒が経つ頃には、妖刀使いは焦りもなくなり冷静に対処を始めていた。
『なんの事は無い、きみ達4人の連携はもう飽きたよ』
「そうかな? 楽しいのはこれからじゃない?」
 そう言って突いてくるアウルの炎爪を妖刀で受け流すと、ユージィーンの援護射撃を回避するのと同時にバックステップ、猟兵達と距離を置く妖刀使い。
『後ろの1人が回復と支援、中間距離からの攻撃が男の人で、前衛2人は攻守ってわけだ』
 妖刀使いの指摘に、さすがに言い返さない4人。もとより突貫パーティーだ、わかりやすい役割分担だったからこそ突貫でもこれだけの連携が出来たとも言う。
『役割さえ解れば……殺り易い順に、殺るだけさ』
 そう言って地を蹴り、妖刀使いは一瞬で間を詰める。
 次の瞬間、妖刀使いはサイボーグ男、ユージィーンの目の前で刀を振り下すモーションへと入っていた。
「(緊急回避――不可能(インポッシブル)、反撃――時間無(ノータイム)、負傷度――最小を選択)」
 サイバーアイが演算した結果を表示し。
 ズザンッ!
 妖刀使いの一撃がユージィーンを叩っ斬り、よろめいたユージィーンをさらに回し蹴りでリヴェンティアにぶつけるよう吹き飛ばす。
 咄嗟にユージィーンを受け止めるリヴェンティア、応援が止み凍傷と刀傷の痛みがアウルと咲夜に復活し、妖刀使いはそのままリヴェンティアの元へ向かおうとして――そこで違和感に気が付く。
 自身とリヴェンティア達の間に、先ほどまでいなかった『何か』が立ち塞がっていたのだ。
 誰だ……と口を開く前、その何かが口を開く。
「我ガ名ハ悪魔『アスモデウス』、召喚ニヨリ顕現シ、代償ニヨリ汝ニ裁キヲ降ス者」
 悪魔と自称したソレが発する威圧感に、妖刀使いが二の足を踏む。急に現れたこいつはいったい……いや、召喚と言っていたが、いったい誰が……。
「ふふふっ」
 その淑女然とした笑い声に、妖刀使いが咲夜に振り向く。
 果たしてその推測は正しかった。咲夜の手にはいつの間にか【白桜の魔杖】が握られ、その足元には六芒星の魔法陣が輝いていた。
「敢えて言うのでしたら、私の役目を見誤ったせい……でしょうか?」
 ギリッと奥歯を噛み締める妖刀使い。
「我、司リシは獄炎ナリ」
 背後で悪魔が冷徹に告げ、次の瞬間、妖刀使い中心に炎の柱が立ち昇る。
『グアアアアアッ!』
 炎に包まれ叫ぶオブリビオン、その隙にリヴェンティアはユージィーンの傷を見ようとするも、「大丈夫だ」と本人に止められる。咄嗟に自身の強力型機械腕のレフトアームを犠牲にし致命ダメージを避けたらしい。
「それより、やりたい事がある……支えてくれ」
「ええ、うん、ワカッタんだよ!」
 ユージィーンが大丈夫そうでホッとするのも束の間、妖刀使いの炎柱が内側からの吹雪によって吹き散らされる。
『よくも……』
 しかし猟兵達の攻撃は終わらない。
 ギュルルルル!
 炎柱によって雪が解け大地が見えた妖刀使いの足元から、急激な芽吹きのように幾つもの蔦が生え足元から妖刀使いを絡めだす。
「暖かくなったから、勝手に動き出しちゃって」
 ふふっと笑うアウル、それはアウルの体表に勝手に自生している蔓植物だった。アウルの足元から地に潜り妖刀使いの足元から現れオブリビオンを拘束したのだ。
『ふん、こんな植物程度……≪一閃≫』
 妖刀から放たれる衝撃波で蔦を切り刻もうとする妖刀使いだが。
『何っ!?』
 発動しない自身のユーベルコード。見れば妖刀本体に鼬のような狐のような何かが纏わりついていた。それは魔法陣が腹に描かれた管狐達。リヴェンティアが放った敵のユーベルコードを封じる事が可能な特別な子たちだった。
「―特殊兵装の使用を解禁。ティガーⅠ、ティガーⅡ……火力支援を要請する」
 身動きの取れなくなった妖刀使いに、死刑宣告のようにユージィーンが告げる。
 ユージィーンの周囲に浮遊砲台が現れ、さらに視認不可の遠距離にて想像から想像された列車砲が起動。
「殲滅せよ――咆哮凶虎(ティガーロア)」
 言葉と同時、一斉に吹き荒れる浮遊砲台、そして天空の吹雪を巻き起こす暗い雲を一瞬で吹き飛ばし、超長距離からの列車砲が妖刀使いへと直撃する。
 轟音と衝撃破が猟兵達を襲い、列車砲の一撃によって直撃した妖刀使いを中心に爆煙と土煙が巻き起こった。
 怪我を無理して大技を放ち倒れようとするユージィーンをリヴェンティアが支え、さらに≪侵緑、渾然なる紅蓮に従え≫の代償で昏睡状態に入ったアウルと、アスモデウスとの交渉で代価とした生命力を持っていかれフラフラとなった咲夜を、リヴェンティアの仲間たち(小動物たち)が必死になって引っ張って来る。
「とりあえず、皆無事ソウでなによりデス。安堵の気持ち」
 そんなリヴェンティアにユージィーンがサムズアップし。
「……状況……終了」
 そう鉄面皮のまま告げたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

紬雁・紅葉
羅刹紋を顕わに戦笑み
先制UC発動
ふふ…初々しき哉、童
人斬りの及ばぬ地、魅せようぞ

天羽々斬を鞘祓い十握刃を顕現

残像忍び足で正面からゆるゆると接敵

射程に入り次第破魔雷火属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるか見切り
躱せるなら残像などで躱し
さもなくば破魔衝撃波オーラ防御武器受けUC等で防ぐ
何れもカウンター破魔雷火属性衝撃波UCを以て範囲ごと薙ぎ払う

窮地の仲間は積極的にかばい援護射撃

なるほど斬るは我等の本性
刀なれば人斬るは本能
なれど其処に留まるは数打ちの性根

山を断ち川を流し雲を割り野を薙ぐ剣の精髄、見るが良い童!

去り罷りませぃ!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


宴・段三郎
やはりか、やはりじゃったか

【行動】
わしはあの妖刀を救うぞ。
邪悪だからこそ妖刀は妖刀なのじゃ。しかしあのやや子は今
狼と混ざり過ぎて自分の性質をも歪めておる。このままだと自分が刀であったことさえ忘れるじゃろう

一振りの刀を救うというのは刀鍛冶名利に尽きる。わしゃあ奴を救うぞ

使用する妖刀は
号 『宿蟲』
号 『化生炉』
号 『戎』
号 『無声慟哭』
そして死体 『至り極めし者』

まずは至り極めし者の死体に宿蟲を埋め込み、奴と闘わせるのじゃ。武器は戎と無声慟哭を死体に持たせる

「らいこう殿、お任せ致すのじゃ」


その後化生炉を使い。奴と子狼を剣撃で切り離し、天地開闢で奴にヤドリガミとして新たな生を与える所存じゃ


リリスフィア・スターライト
真の姿で挑むよ

いかにも妖刀らしい理由だね
それなら遠慮なく全力で戦って叩き折らせてもらうよ
歯止めのきかない凶器はここで断たないとね
UC全翼天開で高速飛翔して翻弄するよ
変則的に動き回って相手が怯んだり隙をみせたなら懐に飛び込んで
勢いに任せて剣をぶつけ刀ごと叩き折るよ
反撃が来たら飛翔して回避してまた斬りかかる一撃離脱の戦法を取るね
動きを見切られて防がれても力任せに押し切るよ
追い詰めたのなら呼びかけて元の雪狼に戻ってもらうよ
狼が刀に使われるなんておかしいからね
思う存分戦えた満足したのなら大人しく成仏してもらうね

戦いが終わったら雪狼の無事を確かめるよ
ついでに毛並みも見てモフモフできないかと思うかな


水無月・ゆえと
やっと元凶までたどり着いたね
まさか、刀が相手とは思わなかったなぁ…
場所が違えばとても頼もしい刀だった、のかもしれないけど、ここには必要ない物
元の場所にお引き取り願うよっ

相手が刀として斬り合うなら、
こちらも小細工無しの真っ向勝負
真の姿(人型の兎姿)になって[蒼影兎]の幻影を放ち、切り結びにいくよ

「斬りたいなら、思う存分、付き合ってあげるよっ!」

【指定UC】で周囲の状況や少年の動きに合わせて攻撃を避けたり、いなして体力を削っていこう
動きが鈍くなったところで刀を攻撃するね
避けられない時は[流水鞘]で防御するよ

他の猟兵と協力できそうなら、回避に専念して攻撃を引き付けるね

アドリブ/連携◎


ヴィクトリア・アイニッヒ
己の夢を叶える。それは尊い事でしょう。
しかし、その為に他者を害するのであれば話は別。

…貴方は只の邪悪。
その悪意、主に代わりて必ずや討ち果たします!

祈りを捧げ、UC『陽光よ、悪意を切り裂け』を発動。
同時に目の前の雪狼に取り憑く悪意のみを灼く事を主に誓い、真の姿を解放。
太陽の威光宿すこの姿。身体から溢れる聖気を乗せた斧槍であれば…!

敵の攻撃は聖気で作った障壁で弾き(オーラ防御)、正面突破。
一直線に敵の懐を潜り込み、斧槍の刃を突き入れます。
…この刃は、『悪意』のみを斬る刃。
呪われた妖刀の意思のみを攻撃し、取り憑かれた者に傷をつける事はありません。

邪悪なる意思よ、光に還りなさい!

※アドリブ歓迎です。


斬断・彩萌
恐ろしいことを考えてたのね
だからこそこのカクリヨに召ばれたのかしら?
剣でやりあいたいというなら、お相手しましょう。Oracle、準備OK?
(神霊剣を打刀程度の長さに伸ばし、構える)

あんたの息遣いも、考えも…剣戟の中に見えるものがある。
どうしてあなたがそう思い至ったのか、その夢を叶えてどうするのか、
そんなこと知った事じゃないけど…
斬り合いましょう、思う存分!

自分が傷つくことも厭わずに一点集中突破
相手の痛みは私の痛み
だって彼が抱える思いは、きっと剣士であるなら誰でも思うことだと思うから。
ねぇOracle、あんたもいつかは私を操りたいと思う?
ふふ、いつかね…でも今は駄目よ、今は目の前の敵を屠るのみ!


田抜・ユウナ
背中の妖刀がざわめくけれど、頑なに無視
「抜かないのかって? ……私はね、″それ″をさせないために戦ってるのよ」
故に、同類である眼前の敵は看過できない

戦闘は徒手空拳
敵刃を受ける強度はないから、攻撃の起こりを見切って回避。刃を返すより速くカウンターを叩き込む

リーチでも不利な分、条件はシビアだ
ちょっとでも近すぎれば斬られ、遠すぎれば手が届かないようなギリギリの距離感、タイミングで
ーー田抜流歩法、蛇の道
ぬらりと斬撃をすり抜けながら、貫手。指先で一撃必殺、急所を打つ。

憑かれてる子には悪いけど容赦はせずに、一刻も速い決着を




 ――少しだけ時間を巻き戻す。

 それは雪狼に憑いた妖刀……妖刀使いが刀剣混じりの吹雪を発動させ、猟兵達を足止めした時だった。
 このカクリヨを破滅せんとした刀剣嵐舞だ、黒幕の妖刀使いが使えてもおかしくはない。もちろん猟兵には刀剣類を触っての魅了は効かないようだが、それでも凍傷と刀傷による足止めとダメージは彼らが止めた吹雪より威力が大きいようだった。
 ゆえに、この吹雪に対しそれぞれで対処するとりは……との判断は至って効率的であり――。
「皆さん、私の後ろへ!」
 ヴィクトリア・アイニッヒが声をかけると、今までの活躍を知る仲間たちが無言の信頼で背後へ回り。
「我らが主の聖なる威光、今こそ我に太陽の祝福を!」
 祈りと共にヴィクトリアが信奉する神の力が全身へと流れ込む。それは太陽の威光、その力は純真なる信仰心に比例し純粋な悪を灼滅する光となって、バサリッ!
 ヴィクトリアの背に純白の翼がひるがえったのだ。
 これこそ、太陽を神体とするヴィクトリアの真の姿!
 妖刀使いが放ってくる吹雪はヴィクトリアが放つ陽光の力に打ち消され、混じり飛んでくる刀剣はヴィクトリアが聖気を乗せた斧槍で弾き飛ばす。
「私が全てを防ぎます、皆さんは今のうちに準備を」
 斧槍を回転させ刀剣を防ぎつつヴィクトリアが背後の仲間たちに声をかける。
「ありがとうヴィクトリアさん」
「ええ、助かるわ」
 水無月・ゆえと斬断・彩萌が武器を確認しつつ礼を言い。
「また吹雪が来るのも予想外だったけど、オレとしては刀が相手とは思わなかったよ」
「そうね……でも、だからこそあんな恐ろしいことを考えられるのかも、ううん、だからこそカクリヨに辿り着いた……そうとも言えるわね」
 ゆえとの言葉に彩萌が繋げる。
「それが業なれば、御鎮めするも私たちの御役目。例えそれが……根源すら散らす事になろうとも」
 羅刹紋も顕わに紬雁・紅葉は戦笑みと、【天羽々斬】を鞘祓い真なる刃【十握刃】を顕現させ。
「人斬りの及ばぬ地、魅せようぞ」
 有無を言わさぬその様子に、他の仲間たちも一気に飛び出す覚悟を決め――。
「皆、待ってくれんか!」
 その時だった、大きな声で皆を止めたのは宴・段三郎だった。
 気勢を削がれ不機嫌を顕わにする者、戸惑う者、冷静な者、さまざまだが誰もが十歳に満たぬこの小さな鍛冶師の次の言葉を待つ、それほど、どこか決死の覚悟を込もった声だったからだ。
「すまぬ……だが、どうしても言わせてほしいのじゃ。わしは……わしは、あの妖刀を救ってやりたい!」
 ざわりっ――その瞬間、疑念や敵意を段三郎に向ける者も……。
「そうじゃな、そう思う者がおっても仕方ない……いや、そう思う方が普通じゃろう。あれは邪悪じゃ、むろん、邪悪だからこそ妖刀は妖刀なのじゃが……。しかし、わしにはわかるのじゃ、あのやや子は今、未練の炎で心を燃やし、自らの性質をも歪めておる。このままでは……頼む、この通りじゃ――」
 段三郎が小さな体をさらに小さくするように雪原の上で頭を下げる。
 わずかな沈黙、だが、それを破ったのは田抜・ユウナの怒声だった。
「本気で言ってるんじゃないよね」
 段三郎の胸を掴み引き上げ、憎悪の燃える瞳でその目を見据える。
「私には妖刀に憑かれ望んでもいない殺しをさせられている雪狼の気持ちが痛いほどわかる! このカクリヨの狼の方を助けるならいざ知らず、妖刀の方を救いたいだって!? ふざけんじゃないよ!」
「ふざけてなんかおらぬ……わしは、本気で妖刀を……」
 ドサッ!
 段三郎から手を放し、地面に捨てると見下ろすようにユウナが言う。
「あんただって、この世界の村や妖怪たちがどんな目に遭ったか見なかったわけじゃないでしょう。これ以上被害を出す前に、容赦せず一刻も速い決着をつけるべき……それぐらい解らないわけじゃないでしょうが」
 ユウナの言葉には重みがあった、妖刀に苦しめられる事の辛さが、どのようなものか知っているから。
「段三郎さん、歯止めのきかない凶器はここで断たないといけないんだ」
「それにオレたちの世界、この幽世のためにも、あの妖刀には元の場所にお引き取り願うしか……」
 リリスフィアが、そしてこの世界の住人たるゆえとが、諭すように段三郎に告げる。
 しかし、それでも段三郎は仲間たちを、ユウナを見上げて真っすぐな瞳で。
「わかっておる! それもわかったうえで言っておるのじゃ! それでも、わしにはやや子が本当にしたかった事があれではないと何となくわかるのじゃ……今は、もう忘れてしまっているかもしれぬし、このままではあれは、もう、自分が刀であったことさえ忘れるじゃろう……しかし、まだ間に合う、鍛冶師としての、妖刀を打ってきたわしの勘がそう言っておるのじゃ、頼む、この通り――」
 8歳の少年が雪に額をこすりつける。土下座。
 オブリビオンは倒すべき敵だ、まして、あの妖刀はこの幽世を滅ぼそうとするほどの、だ。
 だが――。
「やってみたらいいわ」
 最初に折れたのはある意味で一番戦闘意欲が高かった、紅葉だった。
「出来なければ……結末は変わらないのだから」
 優しいような冷たいような、どこか幼子を慈しむようにも割り切っているようにも見える眼差しで紅葉が言う。
「そうね、結果的に事件が解決するなら、どっちでもいいんじゃない?」
 軽い調子で同意したのは彩萌だ。深い考えは無く、本当にどっちでもよさげに……。
 2人の様子にわずかに顔を綻ばせ、リリスフィアとゆえとを見上げる段三郎。
「はぁ……雪狼を助ける事が優先だからね、だいたい狼が刀に使われるなんておかしいから」
「そうだ、よね。うん、オレもこの世界を、妖怪を助けること優先っていうなら、協力するよ」
 溜息混じりに同意するリリスフィアと、実は段三郎の行動に昔見た冒険ファンタジーの優しい騎士の姿を重ねてみていたゆえとが協力を申し出る。
「私は賛成ですよ」
 皆を今も1人で守り続けていたヴィクトリアが背を向けたまま段三郎に言う。
「それに私の刃は『悪意』のみを斬る刃、暴走した妖刀の意思のみを攻撃し開放する事ができるかもしれません。それに……例え敵であろうと救おうとするその気持ちを、私は無碍にできません」
 少しだけ振り返り段三郎にウィンクするヴィクトリア、真の姿となっているからこその余裕だった。
 そして……。
 皆の視線がユウナに集まる。
 ユウナはガシガシと頭を掻くと。
「まるで私だけ悪者みたいじゃない」
 言うと段三郎の手を掴んでスッと立たせ。
「私は妖刀を許さない、眼前に同類がいるなら看過しない。それでも、救うっていうならやってみればいい」
 救うことに協力はしない、だが、邪魔もしない、それがぎりぎりの……。
「みんな……すまない、ありがとう……」
「泣くんじゃない、それは――」
「うむ、目的を達成してから、じゃな」
 ユウナに言われ段三郎が気合を入れ直し、今度こそ仲間たちと同じく妖刀使いの方を見つめ。
「わしは、あの妖刀を救うぞ」


 刀剣混じりの吹雪を物ともせず敵へと突っ込んだ猟兵達が必殺の一撃を叩き込み、轟音と共に妖刀使いが立っていた場所に土煙があがっていた。
 すでに先の一撃で空を覆う吹雪の暗い雲は吹き飛び天には青空が見え始め、妖刀使いと激戦を繰り広げた仲間たちは負傷や代償で下がるのと入れ替わり、ユウナ達が前に出る。
 やがて土煙も風に流され、そこには先の一撃で出来たクレーターと、その中心に1本、真っ二つに割れた氷の大太刀が横たわっていた。
「やったの……かな?」
 ゆえとがクレーターを覗き込みつつ敵の姿を探してみるも、そこには消え去る大太刀以外何も無く……。
『ッ!』
 瞬後、殺気がすぐ近くに生まれ――。
 ガキンッ!
 ゆえとの背後で刃を受ける音、振り向けば紅葉が上空から斬りかかってきた妖刀使いの刀を受け切っていた。
『まずは1人、そう思ったんだけどね』
「その程度で……ふふ、初々しき哉、童」
 刃をぶつけて紅葉と距離をとる妖刀使い、その姿は袖や袴の一部がボロボロになっており、決してノーダメージでは無い事をものがたっていた。
「あの猟兵達の攻撃を……どうやって」
 思わず口に出たゆえとの疑問に、妖刀使いは、ふんっ、と鼻を鳴らすと。
『≪陰の構え≫、防御に特化した無双流の構えだよ。あまり使う事は無いのだけど……ね』
「童、つまりは戦いに支障は無い、と」
『ああ、もちろんさ』
 防御の構えを解き、スタンダードに妖刀を正眼に構える妖刀使い。
「それならば良し」
 次の瞬間、言葉と残像だけをその場に残し、紅葉が妖刀使いの眼前にゆるゆると接敵、自然体から繰り出した下段からの十握刃を妖刀使いが半歩下がり回避、そのまま紅葉の首を狙った突き――を今度は紅葉がオーラを集中させ僅かに避けつつ後ろに回転、最低限の傷が赤く一筋首を斬り裂くも軽度、そのまま回転を生かして十握刃に属性を付与させつつ一気に薙ぎ払うも、妖刀使いは跳躍、回避されると知るや否や紅葉はさらに2回転、3回転とし連続で薙ぎ払う。
 キッ、キンッキンッ!
 上空で十握刃を妖刀で打ち払い、そのまま宙返りしつつ戦場を把握、着地と同時に後衛で何かしようとしている段三郎に向かって地を滑るように一息で跳び込んで行くも。
「させません」
 聖なるオーラで段三郎を守るよう斧槍を持ったヴィクトリアが立ち塞がる。
 ガキンッ!
 むろん、ただ守るだけでなく即座に妖刀を弾き、たたらを踏んだ妖刀使いへ更に距離を詰めつつ【L'orgoglio del sole】の槍部分で突き入れる。
 だが、今度はさきの紅葉と同じく妖刀使いが槍の穂先を巻き込むよう回転して紙一重で回避、そのまま後ろ回し蹴りをヴィクトリアの顔に向かって叩きつけるも、真の姿を開放した事で生まれた翼でその蹴りをガードするヴィクトリア。そうやってヴィクトリアがわずかに稼いだ時間のおかげで、段三郎の準備は完了し――。
「らいこう殿、お任せ致すのじゃ」
 らいこう――それは段三郎の持つ【至り極めし者】という剣豪の死体に、寄生型妖刀たる【宿蟲】を埋め込む事で動き出す反魂にも近い御業だった。らいこうは左右に多くの釣針返しが付いた刀身を持つ妖刀【戎】と、刀のみを破壊し吸収する妖刀【無声慟哭】を持ち、二刀流にて妖刀使いに襲い掛かる。
「(救うためにも……まずは制圧せねばならぬ、頼むぞ、らいこう殿)」
 妖刀使いはらいこうの二刀を打ち払い、返す刀でその両太ももを斬り裂くも、死をも恐れぬ元より死に体――らいこうの猛撃は勢いを減らさず妖刀使いが防戦に回れば、一気にリリスフィアとゆえとも戦線に突入、多少の事なら数と力に任せてリリスティアが押し切れば、危険を察した妖刀使いがらいこうの刃をしゃがんで回避しつつもリリスフィアの足を払い、さらに死角にいたゆえとに向かって立ち上がり様に突きを放つも、ゆえとは咄嗟に【流水鞘】で受け流し、もう片方の手に持つ【蒼影兎】で懐に飛び込むよう斬りかかる。
 ガキッ!
 妖刀使いも懐に飛び込まれ、ほぼゼロ距離からの取り回しが効く短刀に近い【蒼影兎】での攻撃に、防御に使ったのは妖刀の柄、その隙を逃さず突貫してきたリリスフィアの刃を刀身で受け――るも、さすがに2人がかりの力に妖刀使いが吹っ飛び、そのままバク中しつつ着地、その瞬間を狙ったかのように飛び込んできた紅葉、ヴィクトリア、らいこうの刃を、ほぼ捨て身で錐揉みしつつ逆に突っ込み、回転しながら刃を振るって3人を斬りつけると、そのままの勢いでリリスフィアとゆえとに突撃し2人を蹴り飛ばすが――。
『がはっ!?』
 体中細かい傷だらけとなった妖刀使いが血を吐く、誰かの刃が肺に届いたのだ。思わず片膝を付き口を腕で拭うも、スッと自分の前に立つ気配に。
 ズバッ!
 立ち上がり際に眼前を薙ぐも、それを読んでいたか彩萌が一歩下がり刃は空を斬る。
 距離を取ったまま僅かに間を置きこちらを見つめてくる彩萌に。
『なんで来ない、僕と殺り合おうよ? その為に……きみ達は来たんだろう』
 妖刀使いの挑発に、はぁ……と溜息し、彩萌の伊達眼鏡が光の加減で一瞬見えなくなるも、次に顔を上げればその眼鏡奥の瞳は衝動を写すように変わっており。
「いいわよ。やりあいたいというのなら、全力で私もお相手しましょう。【Oracle】――準備OK?」
 言うと同時、彩萌の持つ神霊剣【Oracle】が打刀と同程度の長さに伸び。
「斬り合いましょう、思う存分!」
『そうだ! そうだよ! 僕が望んだ斬り合いだ!!』
 地を蹴る両者が振り抜いた刃が、幾度と火花を散らし――。
 
 ……。
 ……――。
 初めての意識は、真っ暗な景色だった。
 やがて昼夜が解るようになると、そこが小さなお堂の中だと知った。
 それ以外には何も無く、あと有るとすれば自分が祈らなければならないという使命感。
 漠然と、ただ、使命感に付き動かされ祈る、祈り続ける。
 だが、どれだけ経った頃か、お堂の扉が開き1人の人間が入ってきた。
『チッ、俺様とした事が獲物を落とすたぁ……ん?』
「はははっ、どうやら人斬りの神様は俺様を見捨ててねーよーだ」
「おい、なかなか悪くねぇ……さぁ、追っ手を皆殺しにしてやろうじゃねーか」
 入ってきた人間が自分を掴み外の世界へ連れ出した。
 それから自分は……僕は……――。
 ……。

『はははっ、この程度かい?』
 仲間が援護に来る数秒の間、1対1で戦い続け最後に左腕をやられた彩萌は、負傷した左腕から血を流しつつも右手で【Oracle】を構え、妖刀使いを睨み付ける。
「あんたの息遣いも……考えも、剣戟の中に見えるものがある」
『はぁ?』
「どうしてあなたがそう思い至ったのか、本当にソレが、あなたの叶えたい夢だったのか……もね」
 彩萌の言葉に不思議そうに顔を歪める妖刀使い。
『何を言ってるか意味が解らない……でも、まるで僕の事を知った風に言うのは、我慢ならないね』
「ふふっ、そうね……私もよ、あなたの事なんて、知った事じゃない」
 来るっ! 彩萌から放たれた殺気に妖刀使いが反応、彩萌が来るのに合わせて飛び込むも、彩萌は眼鏡の奥で笑うと妖刀使いから離れるように後ろに跳ぶ。
『えっ!?』
「息遣いも、把握したって言ったでしょ?」
 離れ他の猟兵達に紛れつつ彩萌が最後に言い放ち、同時、妖刀使いは横から来る衝撃に錐揉みして吹っ飛ばされる。
『ぐはっ!?』
 妖刀使いが慌てて飛び起きれば、すでに先ほど横から殴り飛ばした相手――ユウナが、すでに眼前に迫っており。
「はっ! やっ! はあっ!!」
 立て続けに顔面への拳、バランスを崩した所を上で蹴り上げ、顎が仰け反りそうになったタミングで跳び膝蹴りをぶちかますユウナ。
『く……そっ! い、≪陰の構え≫……』
 アーチ状に蹴り飛ばされつつ妖刀使いが守りの構えを発動、空気に溶け込むようにその気配が消えていき……。
『はぁ……はぁ……はぁ……』
 気がつけば少し離れた位置で妖刀使いが肩で息をしていた。
「はあああっ!」
 他の仲間達が気がつくより早く、ほんの僅かな気配を逃さす誰より早く距離を詰めたのは、妖刀使いが誰より距離を取りたかっただろうユウナその人だった。
 ユウナが飛び込んでくるのを把握し、即座に息を止め妖刀で迎え撃つ。ユウナは、相手は徒手空拳の無手だった。獲物を持つこちらが有利なのは自明の理。
 だが――。
 ブンッ、ブブンッ!
 紙一重で、それこそユウナの髪の一房は斬れど肉は斬れず、ぬらりと斬撃をすり抜けてくる。近ければ斬り、遠ければユウナの拳は届かない、絶妙よりもシビアな距離感を維持しつつ。
「(――田抜流歩法、蛇の道)」
 次の瞬間、確実に妖刀使いの懐まで入り込んだユウナが、貫手にして指先に必殺の力を込め、急所たる心臓――の右上、肺の部分を打ち抜く。
 ドッ!
 重たい音の後、ゆるく妖刀使いが宙を舞い雪原に倒れ伏す。
『ごはっ!』
 倒れたまま血を吐く妖刀使い、その肺は先ほど誰ぞの刃が届いた箇所、そこへの追撃は想像以上に負担が大きかった。
「あんたがそんな見た目だからって手は抜かない。妖刀は破壊するって決めてるから」
 打ち抜いた構えのまま無慈悲に言い放つユウナ。
 妖刀使いはよろりと立ち上がると……。
『人斬りを楽しめるとか……そんな場合じゃないみたいだ。わかったよ、楽しむのはきみ達以外で賄う事にするから』
 妖刀に吹雪とは違う風が逆巻く。漏れ出す風の刃が雪原に斬撃の跡を作り始める。
 それは仲間の1人が危険を承知で突貫し、その手の内を暴いた業だった。
 そう、遠距離でも相手を斬り裂く斬撃――≪一閃≫を妖刀使いは発動させたのだった。


『はあっ! はあっ! はあああああっ!!!』
 一振りで三撃の飛ぶ斬撃を、二振り目で五つの斬撃を飛ばし、さらには妖刀を構えたまま気合いを入れれば、幾筋もの斬撃が空を斬って猟兵達へと襲い来る。
「これなら吹雪の方がマシだったかも……」
「これでは攻撃に転じる暇がありませんね」
 飛び来る斬撃を避けながらゆえとが、斧槍を回転させ斬撃を打ち払いつつヴィクトリアが言う。
 ――誰かがダメージを覚悟で強硬突破し隙を作る。
 誰もが思いつくも、他に妙案は無いかと再考する中。
「私がやる」 
 再考せずに即断したのはリリスフィアだった。
「覚悟は?」
「無論っ」
 紅葉の短い問いに頷き答え、「それに――」と。
「それに、勝算が無いわけじゃないしね」
 言うと同時、リリスフィアは真の姿を解放!
 純白のゴスロリドレスで可憐に身を包み、髪色は白とも淡い茶とも言えぬ薄く輝くように変化、さらにその身を支えるには小ぶりだが、天使のような白い翼が生える。
「まだまだ! ここからは私の全てをぶつけるから!」
 カッ! と魔力が全身を覆い、小ぶりな天使の翼の上下に複数の光り輝く翼が広がる。
「≪全翼天開(スフィア・ドライブ)≫!!!」
 圧倒的な魔力がリリスフィアに渦巻き、少しだけ身をかがめると――ドンッ!
 空気を蹴るよう高スピードで飛翔、妖刀使いからの飛ぶ斬撃を空中で変則的に動き回避しながら、敵へと突っ込もうとする。
『来るなっ! 僕は! 自分の手で斬り殺すのを止めてまで、きみ達を殺そうと思っているって言うのに!!』
「いかにも自分本位で妖刀らしい。その子は兎も角、あなたの事は遠慮なく! 全力で! 叩き折らせてもらうよ!!」
『来るなって言ってるだろう!』
 更に空中のリリスフィアに向かって斬撃の嵐をぶつける妖刀使い。
 そのコンマ秒の、刹那の時間、妖刀使いが斬撃の弾幕を空中に向けた数瞬。
「斬りたいなら、思う存分、付き合ってあげるよっ!」
 唐突に間近でかけられる声。
『(ありえない!?)』
 そう、戦った猟兵達の力量技量はだいたい把握した。今、ほんの僅かに弾幕が薄くなった合間に、ここまで距離を詰められるスピードを持つ猟兵は、一人としていなかったはずなのだ……なのに。
「どうしたのさ、斬りあうんだよね?」
 人斬りの刀として九十九年の修羅場を潜ってきた勘から、とっさに≪一閃≫をキャンセルし、横に向かって刀を薙ぐ。
 ギンッ!
 間一髪、自身の首を狙ってきた刀を受け止める。
 そして見た、すぐ傍で喋っていたのは兎だった。いや、正確には人型の兎だ。二足歩行し、手に刀を持ち、しかし顔は兎で……。
 だが、ソレが誰か推測するより早く、自身の首を狙った刀がゆえとが使っていた残像を残すほどに軽く、長さに特徴のある【蒼影兎】と把握、とにかくこの兎人がゆえとだろうと結びつける。
「こっちも忘れないで!」
 上空から高速飛翔しつつ切り込んでくるリリスフィアを必死に後ろに飛んで回避――しつつ2人に向かって飛ぶ斬撃を放つも、死に体で放った斬撃は簡単にかわされてしまう。
「それがあなたの真の姿?」
「まあね、月に住む玉兎がオレのご先祖様でさ……ん、なに?」
「ううん、なんでもない」
 ゆえとの真の姿に毛並みを触りたいと思いつつ、さすがに飲み込むリリスフィア。もっともゆえとはそれに気がつかずに。
「余計なお世話かもって思ったけど、1人より2人の方が良いと思って」
「ん、うん、そうだね。その通り」
 再び気を引き締めるリリスフィア。
『ちっ!』
 妖刀使いが再び≪一閃≫を乱れ打ちし弾幕を張ろうとするも――、次の瞬間には兎人が地を蹴り、天使が空を駆ける。

 ポタ……ポタタ……。
 猟兵達の猛攻に、妖刀使いは自身が所有権を持つこの身体がもう限界に近い事を悟る。
『(なら……僕は……)』
 妖刀使いが静かに構えを取る。
 その異様さに猟兵達の誰もが踏み込まずに警戒を高め、気がつけば妖刀使いの開いている方の手に、氷で出来たもう一本の刀が――妖刀の姿を鏡に写したかのような刀が握られていた。
『無双流≪天の構え≫』
 そこから感じるは今までの身を守る構えでも、小細工を労する構えでも無く、ただ相手を斬り伏せる……決死の覚悟。
「らいこう殿!」
 段三郎が指示を出しらいこうを突撃させ――。
『奥義……≪一刀≫』
 らいこうが両手に持つ二刀を振り下ろすと同時、妖刀使いが一歩踏み出す形に構えを変え、次の瞬間にはらいこうは切り倒されていた。
 無駄口を叩くわけでもなく、じり、じり、と構えたまま少しずつ猟兵達に向かってすり足で近づいてくる妖刀使い。
「(相手の痛みは私の痛み……だって彼が抱える思いは――)」
 近づいてくる重圧に、背に冷や汗がつたるのを感じながら彩萌が妖刀使い、いやかの妖刀に思いを被せる。
「(あの思いは……きっと剣士であるなら誰でも思うことだと思うから)」
 ぐっと【Oracle】の柄を片手で握ると。
「私が行く!」
 続けとばかりに声を張り上げ彩萌が雪原を走る。
『奥義――』
「はあああっ!」
 ざっくりと腹を切り裂かれ、痛みより先に熱さを錯覚する、それでも自らが傷つくことも厭わず彩萌が狙うはただ一点、妖刀を振るったその腕を空いている手で抱え込むと【Oracle】で斬りつける。
 ドサリッ……。
 熱さが痛みに変わり、その場で斬られた腹を抱えるようにうずくまる彩萌。
 だが、彼女の決死は妖刀使いの左手を縦に切り裂き。
 ガランッ。
 氷で出来た妖刀が地に転がる。
「その覚悟、無駄にはせぬ」
 紅葉が十握刃を構え妖刀使いに斬りかかる。
 妖刀使いは構えこそ崩されたが、その奥義に関しては二刀の必要は無いらしく、振れれば両断との速度と威力で振り抜いてくる。
 その必殺の妖刀を紙一重で躱しつつ。
「なるほど斬るは我等の本性、刀なれば人斬るは本能」
 祝詞を唄うよう。
「なれど其処に留まるは数打ちの性根」
 神楽を舞うよう。
「山を断ち川を流し雲を割り野を薙ぐ剣の精髄、見るが良い童!――≪九曜八剱・大蛇断(クヨウヤツルギ・オロチダチ)≫!!!」
 致命こそ妖刀を持って防ぐも、肩も横腹も足も無遠慮に紅葉の刃が切り裂く。
「去り罷りませぃ!」
『ま、まだ、まだ僕は!!!』
 ≪一刀≫の最大威力で紅葉の十握刃を弾き飛ばす。
 だが、妖刀使いはもう立っているのもやっとのように見える。限界だからこその脱力、自然体。自然体ゆえの呼び動作の無い攻撃。
 それを防いだのはヴィクトリアだ。斧槍【L'orgoglio del sole】でガッシと受け止め。
「己の夢を叶える。それは尊い事でしょう。しかし、その為に他者を害するのであれば話は別。貴方はもはや邪悪に堕ちた存在……その悪意、主に代わりて討ち果たします!」
 カッ、と鍔迫り合いし接触している部分が光り輝く。
「邪悪なる意思よ、光に還りなさい!」
 光がヴィクトリアから妖刀使いへと移り、やがて妖刀へと収束する。
 輝く妖刀となりつつも、それでも妖刀使いは必死に自我を保ちつつ、再び刀を振り上げ――。
「もうやめよう、それ以上やっても……」
 背後から兎人――ゆえとが振り上げた右手を掴む。
 キンッ!
 そうして振り上げたままになった妖刀を、リリスフィアが雪狼の少年の手からはじき飛ばす。
「思う存分戦えたなら、彼を返して貰うよ」
 妖刀が手から離れ、ぐったりと倒れ込む雪狼の少年の身体を、翼で包み込むようリリスフィアが抱きとめる。
『嫌だ……僕は……まだ……だったら、なんの為に……』
 猟兵達の返り血がべっとりついたまま、くるくると宙を舞って雪原に突き刺さる妖刀が未練がましく言葉をつらね……。
 その前には1人の少女。
 少女が背負うソレはかたかたとざわめく。それは同族を助けようとする避難の声か、それとも敗北せし同族を喰らいたいと渇望する歓喜の声か。
「抜かないのかって? ……私はね、〝それ〟をさせないために戦ってるのよ」
 そう言うと、ユウナは手刀を一閃、人斬りを夢見た妖刀を断ち切ったのだった。


「その子は大丈夫そうでしょうか?」
 ヴィクトリアが雪狼の様子を心配すれば。
「なんとかね」
 憑かれていた雪狼を撫でつつ、リリスフィアが笑みを浮かべて。
 ヴィクトリアがホッと安堵すれば、同じく横で見ていた紅葉も安心し「なら、あっちの方が問題ね」と段三郎の方を見つめる。
 そこでは雪狼から切り離され、骸魂へ戻りそのまま消滅する妖刀を、必死に引き留めようとする段三郎がいた。
「一振りの刀を救うというのは、刀鍛冶名利に尽きるというもの!」
 あらゆる物質を鍛刀する妖刀【化生炉】を使い消滅寸前の魂を鍛え留め、自身のユーベルコードでその魂をヤドリガミとせんと必死に【化生炉】を振るう。
「わしゃあ奴を救うぞ、必ずじゃ……頼む、天地開闢!」
 真っ二つに折れ、消滅せんとする妖刀を媒介にユーベルコードを発動する。
 果たしてそこに生まれしは……――。
 その様子に背を向けて一人佇むユウナの元へ、元の姿に戻ったゆえとが近寄り。
「場所が違えばとても頼もしい刀だった、のかもしれないけど……あれは、ここには必要ない物だったと、オレは思う」
 段三郎の方をちらりと見つつゆえとが言うと、ユウナは「何?」と少し不機嫌そうに。
「お礼を言っておきたくて……ありがとう、オレの、オレたちの世界を、この幽世を救ってくれて」
 ゆえとの笑顔に毒気を抜かれ。
「別に……当たり前の事をしただけよ。私も……あなた達もね」
 そんなユウナ達の様子や他の仲間たちを、木にもたれかかったまま遠巻きに見ながら、重傷を負った彩萌は手に触れる傍らの【Oracle】に語り掛ける。
「ねぇ【Oracle】、あんたもいつかは私を操りたいと思う?」
 戦いながら敵とシンクロし垣間見た気がした景色は何だったのだろう。そう思いながら、触れる手を通して神託の名を冠する剣が何かを言って来た気がして――。
「ふふ、いつかね……でも今は駄目よ、今はまだ、屠るべき敵がいる限り……ね」
 使う者と使われる物、それとも使う物と使われる者、か。
 彩萌は仲間たちから溶けゆく雪原へと目を向ける。
 そこには白い雪の上に赤い血が点々と散り、まるでそれが深紅の花弁のように見えた。
 ふと、世界の滅びは回避され、この幽世に再び平和が戻ってきたのだと、そう噛み締めるように思うのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年09月26日


挿絵イラスト