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極寒の地に眠りし花嫁達を

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「アックス&ウイザードの世界に女の敵が現れたわよ」
 エリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)がそう言って小さく溜息を一つ。
「アックス&ウイザードの極北の地にね、何でも昔ハーレムを作ろうと花嫁達を集めていた男性貴族のオブリビオンがいるみたい」
 彼は、自分の好みの人物を魅了し、花嫁としハーレムを作っていたらしい。
 最も、そのやり方はあまりにも横暴だった様だが。
「魅了されて婚約したっていうのは、一応同意を得ているとも言えるかも知れないけれど。でも彼は、自分が花嫁にした女性に飽きれば、婚約破棄という名の処刑を行っていたそうなの。・・・・・・まっ、悪魔の所業よね」
 そう・・・・・・この地に現れた彼のオブリビオンは、正しく『悪魔』を従えている。
「要するにその魅了の術をこの男は悪魔と契約することで手に入れた訳よ。つまりこのオブリビオン……ネームレス(名無し)は、悪魔を従えてこの地を支配しているって事ね」
 だからね、と微笑むエリス。
「皆には、このネームレスと彼の率いる悪魔達を倒して欲しいのよ。今はまだ、極北の地の支配だけですんでいるけれど、そのまま南下してきて、アックス&ウイザードに住む人達に迷惑を掛けさせる訳にはいかないからね」
 後・・・・・・とエリスが童女の様に愛らしい笑顔を浮かべる。
「ネームレスを倒すことが出来たら、その先には樹氷の世界が広がっているわ。物思いに耽ったり、皆で樹氷を眺めながらお喋りとかを楽しんだり出来るから、ネームレスを倒したら、是非氷の世界を楽しんでね」
 そう告げて笑顔を絶やさぬエリスに見送られ、猟兵達は静かにその場を後にした。


 ――そこは、一面が凍り付き雪がちらつく美しい銀の世界。
 猟兵達が見て、そして感じたのはそれだった。
 本来であれば、少々寒いが此処であれば美しい景色を眺めたりして思い思いに楽しむことが出来ただろう。
 だが今そこには、悪魔達が跳梁跋扈していた。
「オオオオオ・・・・・・!」
 雄叫びを上げ、その場に姿を現している無数の山羊の頭部と脚部、そして鳥の翼を持つ三叉槍を握りしめる悪魔達。
 彼等がこの美しい樹氷の世界を汚している。
 そして此処を喰らい尽くせば、彼等は間違いなく人里におり、そして暴虐の限りを尽くすだろう。
 そんなことをさせるわけにはいかない。
 そう思い・・・・・・猟兵達は目前の悪魔の群れに敢然と立ち向かった。


長野聖夜
 ――悪魔と契約せし貴族に鉄槌を。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけで、今回は皆さんに悪魔退治をして頂きます。
 尚、第3章では、樹氷の世界を堪能することが出来ます。
 この第3章に関しましては、もしいらっしゃったらですが、エリスをお誘い頂くことも可能です。
 もし、気が向きましたらお気軽にお声掛け下さい。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 集団戦 『レッサーデーモン』

POW   :    悪魔の三叉槍
【手にした三叉槍】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    金縛りの呪言
【手で複雑な印を結んで】から【呪いの言葉】を放ち、【相手を金縛り状態にさせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    呪いの鎖
【投げつけた三叉槍】が命中した対象を爆破し、更に互いを【呪われた漆黒の鎖】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

彩瑠・姫桜
ハーレム…ね(嫌そうに眉根を寄せ)
男の人ってそういうの好きなのかしらね?
魅了させての婚約に、婚約破棄が処刑とか…本当、胸がムカムカするわ
エリスさんの言うように悪魔の所業でもあるし、本当、自分勝手もいい所よ、まったく
その趣味の悪い貴族も悪魔も、その罪ごとまとめて串刺しにしてあげるわ

半獣半人って、いかにも悪魔らしいわよね
敵の動きを観察
攻撃の癖や隙を【情報収集】して【第六感】で弱点のあたりをつけるわ
隙が生じるタイミングを見計らって【咎力封じ】を仕掛けるわね
最初に【拘束ロープ】で縛り上げ、うまくいったら【手枷】【猿轡】を放つわ
動きを止められたらドラゴンランスで【串刺し】にするわね

*共闘・アドリブ大歓迎


ボアネル・ゼブダイ
「欲望のために人々を蹂躙し、その尊厳すら踏みにじるか、どの世界もオブリビオン共は救いがたい外道ばかりだな」

従順たる悪意を発動させインプ達を召喚
レッサーデーモン達を攪乱しつつ、攻撃目標を散らせる
呪いの鎖を喰らわないように三つ叉槍を見切りで交わし、炎属性の憎悪する薔薇でカウンターか爆破での範囲攻撃を行う
敵の動きを注視してコ・イ・ヌールの刀身を伸ばし、囲まれないように中距離から相手を攻める
呪いの鎖で繋がれてしまった場合は、追撃を喰らう前に鎖を相手ごと怪力で振り回し、地面に叩き付け素早く撃破を行う

共に戦う猟兵がいれば積極的に連携を取り、お互いを補いながら戦う

(他メンバーとの絡みやアドリブ大歓迎です)


フォーネリアス・スカーレット
 女の敵か。知らんな、騙される女が阿呆なだけだろう。だが、オブリビオンが居るなら殺しに行かねばな。
 基本的には三又槍が主体か。特に投擲は面倒だ。丸盾をしっかり構えて弾こう。そこにフックロープを投擲しこっちから接近。首をリニアブレードで刎ねて殺す。
 剣の一本や二本失っても問題は無い。三又槍の突きを炎剣ごと投げ捨てる勢いで弾き、手首に固定したパイルバンカーで心臓を貫いて殺す。
 金縛りか、面倒だ。しかしキーは言葉か。シンプルに耳栓、いや、戦場で音が聞こえないのは不味い。いや、より大きな音でかき消せばいい。そう、このチェーンブレードの稼働音で。
 殺す。ただの一人も逃がしはしない。全員殺す。


ウィリアム・バークリー
ああ、学園で習った通りの典型的な悪魔ですね、こいつら。容赦する必要は無さそうです。

トリニティ・エンハンスの力で、攻撃力を底上げ。ルーンソードで急所を突いて、一体ずつ確実に仕留めるようにします。
下級の悪魔が相手とは言え、一人でどうにか出来るとはぼくも思っていません。味方の猟兵と行動を共にし、フォローし合って悪魔を討滅していきます。仲間の猟兵には「優しさ」を振りまいて、爪弾きにされないように。

敵の数が減ってきたら、全力魔法の属性攻撃(炎)をルーンソードに乗せて繰り出します。
寒冷環境に適応しているなら、炎には弱いはず。その心臓を焼いてあげます!

傷ついた方はいますか? 生まれながらの光で癒やしますよ。


アルバ・ファルチェ
悪魔の力まで借りて、魅了してまで手に入れた女の子をぞんざいに扱うなんて許せないよね。
女の子は道具でも玩具でもないんだよ。

集団戦では【おびき寄せ】【挑発】なんかで敵を引き付ける役目をおうよ。
【戦闘知識】【地形の利用】で囲まれたり背後を取られないよう気をつけながら、【かばう】【武器/盾受け】【オーラ防御】【見切り】で敵の攻撃を捌く。

ドラゴンランスのコルノには【槍投げ】【援護射撃】【串刺し】【空中戦】なんかを駆使して攻撃のフォローをして貰う。

僕自身も隙あらば【カウンター】で【武器落とし】【鎧砕き】を試みるね。

守るのが本懐だけど、それだけじゃない所も見せてあげる。


荒谷・つかさ
女の敵だけで済んでればいいんだけどね。
下手すればパートナーの片割れを引き裂いている可能性もあるわけだし。
……何にせよ、見過ごしてはおけないわ。

右手に「零式・改二」、左手に「刃噛剣」を装備し、敵の群れへ突撃。
「怪力」技能で自在に大剣を振るい「武器受け」技能で適切に敵の攻撃を捌いて切り伏せていく。
考えなしの突撃と見せかけて、本当の目的は敵をなるべく多く半径22m以内へと納める事。
上手い具合に囲まれたら、満を持して【荒谷流乱闘術奥義・明王乱舞】を発動。
何処からともなく現れた二振りの刀、そして無数の丸太と共に悪魔の群れを蹂躙して回るわ。

悪魔だから何?
こちとら東洋の悪魔「鬼」よ。
舐めないで頂戴。


フローリエ・オミネ
この寒さは一体何?
宇宙と同じくらい、体が冷たいです。
こんな所に連れてこられた女の人達が可哀想。

そして、悪魔達も……さあ、わたくしがあたたかくして差し上げますわ

まずはバトル・インテリジェンスで全体的な能力を底上げします
わたくしは余り戦闘が得意ではありませんが
その分を補うとしましょう

そしてウィザード・ミサイルで敵を攻撃します
矢をばらまき敵に炎を燃え広がらせ、あたためましょう

……ふふ、あなた方に敬語を使うのも惜しいわね

あたたかくなったかしら?
そう……まだならば、矢を全部纏めて一体に放つわ
これできっと、熱くもなれるわね。

ネームレスの元へ、早く行かなければ。
あなた方に構っている暇はないのよ。


美星・アイナ
本の中でしか見たことの無い樹氷の世界
こんな絶景を荒らさせる訳には行かないわ

ペンダントに触れてシフトする人格は空の蒼を纏う青玉の姫
『あんた達には用がないの、此処で消えなさい』

レガリアスシューズ起動しフィギュアスケートの【パフォーマンス】を織り込みつつ
【2回攻撃】の蹴撃、大鎌形態の黒剣で【なぎ払い】

【歌唱】する様にユーベルコード詠唱
錬成した青玉の矢の雨の【一斉発射】に合わせて黒剣で【傷口をえぐる】
相手の攻撃は可能な限り【見切り】
回避不可の場合は【激痛耐性】で耐える

魅了させて侍らせて
飽きたら命奪って次のお相手探し?

腐れ野郎、さっさと来な
骨の髄まで叩き潰してやるよ(激昂)

※アドリブ、他猟兵との連携可




「ハーレム……ね。男の人ってそういうの好きなのかしらね?」
 そう呟き嫌そうに眉を顰めるのは、彩瑠・姫桜。
 姫桜の言葉にいや、とボアネル・ゼブダイが軽く頭を振る。
「全ての者がそうと言うことは無いだろうな。そもそも俺が愛しているのは、花(ラフレシア)や、鳥(チスイコウモリ)、美しい音楽(ハードロック)だ!」
「……まあ、要するにボアネルさんは女の敵じゃ無いって事ね」
 溜息を一つつき、誰にともなく天を仰いだのは荒谷・つかさ。
(まあ、ボアネルさんはさておき。下手すればパートナーの片割れを引き裂いている可能性もあるのよね、ネームレスは。……それを見過ごしてはおけないわ)
「魅了させての婚約に、婚約破棄が処刑とか…本当、胸がムカムカするわ」
「姫桜ちゃんの言う通りだね。悪魔の力まで借りて、魅了してまで手に入れた女の子をぞんざいに扱うなんて絶対に許せないよね。少なくとも僕だったらそんなことはしないな」
女の子は道具でも玩具でもないんだよ、と内心で呟きながら姫桜に返すのは、アルバ・ファルチェ。
 飄々とした口調ではあるが、その声音に怒りが含まれている様に姫桜が感じられるのは、アルバが沢山の女性達に等しく抱いている愛情故だろうか。
 それはそれでまた姫桜にとっては、眉を顰めさせる理由かも知れないが。
「さあ、知らんな。騙される女が阿呆なだけだろう、まあ、オブリビオンである以上、私はただ殺すだけだ」
 フォーネリアス・スカーレットの断定に、姫桜が別の理由で眉根を更に寄せるが、そうですね、と苦笑しながら溜息をつき応じたのはウィリアム・バークリーだった。
「少なくとも、学園で習った通りの典型的な悪魔ですしね、こいつら。容赦する必要は無さそうです」
「いやいや、そこはもう少し情緒と言うかね? もう少し考えるべきと言うか……」
「あの……アルバ? それは少し話が逸れてしまっていると思いますが……」
 アルバの呟きに溜息をつきつつ仲裁に入るは、フローリエ・オミネ。
 フローリエが周囲の凍てつく様な冷たさに微かに眉を顰めている事にボアネルが気がつき、軽く天を仰いでいる。
「この面子……大丈夫なのだろうか?」
「……まあ、大丈夫よ」
 呟くボアネルに軽く米神を解しながら返したつかさの声音には妙な確信が含まれていて。
「ぼくは、初めての戦いなのですが……本当に大丈夫なのでしょうか? いやまあ、不安と言うわけでは無いのですが」
 ウィリアムの言葉に大丈夫でしょう、と答えたのはフローリエ。
 まあねぇ、と同意したのは姫桜。
「エリスさんの言うように悪魔の所業だものね。この場にいるあなた達がその自分勝手を見過ごせないってのは分かるし」
「興味が無い。ただ、オブリビオンが関わっているのであれば、殺すだけだ」
「……まあ、その気持ちは分からないでも無いな。欲望の為に人々を蹂躙し、その尊厳すら踏みにじるオブリビオンが救いがたい外道ってのは確かだろうからね」
 フォーネリアスの呟きに何かを感じ取ったボアネルがそっと息を一つつきながら、そう答得た時。
 下級悪魔達の群れが姿を現す。
 その様子を見ながら、フローリエは想う。
 ――この寒さは一体何?
 それがなんなのかは分からないけれども。
 ――宇宙と同じくらい、体が冷たいです。
 だから……。
 こんな所に連れてこられた女の人達が可哀想ですわね。
 そして……悪魔達も。

 ……故に。

「わたくしが暖かくして差し上げますわ」
 フローリエの言の葉に応じる様に。
 悪魔の群れが進軍を開始した。


「本の中でしか見たことの無い樹氷の世界……」
 少し遅れてこの世界に現れ、今眼下に広がる光景に目を奪われながら、美星・アイナはほぅ、と息を一つ付く。
 その瞳は、今眼下に広がある悪魔達の群れに汚されようとしている、この場所へと向けられていた。
「こんな絶景を荒らさせる訳には行かないわ」
「そうだね、君の言うとおりだよ、アイナちゃん」
 やって来た悪魔達が三叉槍を投擲する態勢を取ったのを見て取りながら、きっ、と相手をにらみつつその意志を口に出すアイナに同感だとばかりに答えたのはアルバ。
 放たれた無数の三叉槍を盾で弾きながら不敵な笑みを崩さない。
「ほらほら、君達の相手は僕だよ、僕。君達の三叉槍程度じゃ、僕を倒すこと何て出来ない、出来ない」
 軽薄な調子で叫び、掛かってこいとばかりに、まるで手招きをする様に盾を弄るその姿は、悪魔達の注意を引きつけるに足りた。
 投げつけた三叉槍を手元に引き寄せて一斉に接近してくる悪魔達の群れを見ながら、アルバの横で左翼に陣取り、淡々と無尽の鞘から取り出した剣闘士の丸盾を構えてそれらの攻撃を弾いていたフォーネリアスが無感動に息をつき、また右翼ではボアネルが敵の弾道を見切って刀身を異常な程に伸ばしたコ・イ・ヌアールで切り落としながら、左手で不可思議な印を結んでいた。
『暗く深き闇に蠢く邪悪で矮小なる者共よ、我が元に集い、我が意に従え!』
 叫びと共に、ボアネルの周囲に全部で105体のインプが手に手に武器を持って姿を現す。
「皆様、援護致します」
 フローリエが告げながらAI搭載型戦術ドローンをウィリアム達の周囲に召喚。
「これなら楽にあの群れの弱点を見定められるわね。感謝は一応しておくわ」
 ボアネルに庇われていた姫桜が軽く礼を述べながら、悪魔達の群れの一点を示す。
「台風の中心は、あそこよ」
「行くのだ、インプ達よ!」
 姫桜が指さしたその一点に向けて、フローリエからの援護を受けたインプ達にボアネルが命じると、105体のインプ達が一斉に突進を開始、仲間達が力尽きることも辞せずに、姫桜が指さしたその場所へ、上空から一斉に襲いかかった。
 思わぬ奇襲に本来であれば狡猾な筈の悪魔達が千々に乱れ、そして分散する。
「……頃合いね。ウィリアム、アイナは、私に着いてきて」
「はい、宜しくお願いします、つかささん」
「あなた……いや、あんた達には用がないの、さっさと消えなさい」
 右手に零式・改二を、左手に歯噛剣を構えたつかさが、踵を返しいちばん戦い慣れていないとウィリアムと、ペンダントを握りしめ、空の蒼を纏いし蒼玉の姫へと人格を豹変させたアイナが頷き、3人は内側からインプ達に掻き乱され、最も突出させられた数十体の悪魔達に当たるを幸い、次々に蹴散らしていく。
「馴れ合いをする必要は無い。殺す、オブリビオンはただただ殺す」
「そうね……あなた達には敬語を使う価値も無さそうだわ」
 つかさ達が斬り込み、敵を次々に屠っていく様を横目にしながら軽く頭を振ってD社製巻き上げ機構付きフックロープを解き放つは、フォーネリアス。
 そのまま深紅の眼光で鋭く怯む悪魔達を憎悪を込めて睨み付けながら、巻き上げ機能を使って一気に群れに肉薄、その怨念を乗せたリニアブレードを横凪に振るう。
 電磁加速された居合刀が吸い込まれる様に悪魔の首に触れ、その首を削ぎ落した。
 同時に、上空から全部で70本の火矢が降り注ぐ。
 否……火矢、というのは些か語弊があろう。
 何故ならその矢の先端に宿るは……全てを焼き払う炎の魔力なのだから。
「ネームレスの元へ、早く行かなければ。あなた方に構っている暇はないのよ」
 そう呟きながらフォーネリアスの援護をするフローリエと、何よりもフォーネリアス自身の手で左翼に散った悪魔達の群は敗走の気配を濃厚に漂わせた。
 一方、ウィリアムとアイナを引き連れ接敵したつかさも又、双刀を駆使して次々に敵を屠っている。
 歯噛剣の背に付いたギザギザでその三叉槍を絡め取り、時には零式・改二で力尽くで押し潰す様に斬り捨てて。
 仮に討ち漏らしがあったとしても、その時には、レガリアスシューズを起動させ、まるでフィギュアスケートで白鳥の湖を舞う様に踊りながら悪魔達を蹴り上げ、更に大鎌形態へと変化したDeathBladeで悪魔達を薙ぎ払い、そして敵へと突きつけ歌う様に告げていた。
『悲しみの雫達よ、蒼穹に集え!汝らの振り積むその想い、我が冷たく蒼い雨に変えて闇に放とう……!』
 と。
 それと同時にアイナの構えたDeathBladeの先端から幾千もの青玉の矢が解き放たれ、一体の悪魔に無数に突き刺さり、時にはその敵を磔にしてしまう。
『さあ、蒼の雨の中で貴様の罪を数えな!』
「これは……凄いですね」
 感嘆しながらウィリアムが、炎の魔力で自らの身体能力を向上させて、ルーンソードに炎を這わせて目前の悪魔を叩き斬っている。
 その隣には、最初の一矢を全て自分達の代わりに受けきった上で追随する様に戦場に躍り込んだアルバもいた。
「まっ、守るのは性分だからね。でも……それだけじゃないんだよ?」
 ボアネルのインプ達によって翼と十字の意匠を施された白銀の盾、Scudo di Orgoglioでその攻撃を受け流し、時にそれで殴り返しながら笑うアルバ。
 彼の周囲では、もふもふ毛玉の犬っぽい外見を持つ小ドラゴンが一鳴きして小さな翼を羽撃たかせてその鋭い角で悪魔を貫いている。
 それにウインクをしながら、ねっ、と笑うアルバに、そうですね、と頷き返すウィリアム。
 アルバの支援もあり、常に一対一の状況を作り上げることの出来たウィリアムは、炎の魔力で強化した自らの身体で、確実に一体、また一体と悪魔達の屍を作り上げていた。
 確実に、そして堅実に。
 それが、未だ戦い慣れぬ彼にとっては最善の戦い方だ。
「……あっ、そうでした。もし傷を負った方がいらっしゃったら言って下さいね。生まれながらの光で癒やしますから」
「背中は任せてってことね。頼りにしているわ」
 ウィリアムのそれにアイナが答えた丁度その時、初撃で悪魔達に動揺を与えたボアネルは105本の炎の魔法の薔薇を展開した。
「最初の奇襲は成功したわ。けれども、放っておけば統制を取り戻して襲いかかってくるわよね」
「ああ、その通りだ、姫桜。だから私は……」
 姫桜に答えながらボアネルが天空に手を掲げる。
 その様にええと頷き返しながらつかさ達が現在叩いている悪魔達の群れの更に奥のインプ達に引っかき回され隙だらけの悪魔達の群れを『拘束ロープ』で締め上げた。
「準備は出来ているわ」
「ああ……爆ぜろ」
 姫桜の言葉に頷いたボアネルが105本の薔薇を遠隔操作し、フローリエに身体強化されたインプ達から漸く解放され、増援に向かおうとしていた悪魔達の群れに向けて射出。
 花弁と化した薔薇達が空を深紅に染め上げる。
 それは……悪魔達を爆破する、美しき花についた棘の群れ。
 その群れが驟雨の如き速度で悪魔達に迫って突き刺さり、連鎖爆発を起こす。
 それによって焼き払われた悪魔達は数知れず。
「さて……行くわよ」
 手枷と猿轡を同時に放ち、尚まだ迫ってきている悪魔達を次々に捕縛しながら姫桜は駆け、自らのドラゴンランスを腰だめに構える。
「慄け咎人、今宵はお前が串刺しよ!」
 かつて母がよく口にしていたとされるそれを言の葉に乗せ、ボアネルが撃ち漏らした悪魔を串刺しにする姫桜。
「姫桜さん、無事ですか?!」
 丁度その時、つかさを先頭に最初の悪魔の群れを突破してきたウィリアムに呼びかけられ、一瞬だが目を逸らす。
「この程度の相手じゃ私はどうもならないわよ。それよりもあなた達の方は?」
「当然無事だよ。姫桜ちゃん達が敵を抑えてくれていたお陰だね」
 そう言うアルバの余裕の笑みに頬を微かに上気させてプイッ、と横を向く姫桜。
 その瞳は、左翼に散開していた敵の首を一つ残らず撥ね落としたフォーネリアスとその支援を行っていたフローリエに向けられていた。
「話は終わったか?」
「ええ。と、フォーネリアスさんは傷は大丈夫ですか?」
 ウィリアムの問いかけにフォーネリアスは淡々と自分の体を確認する。
「問題ない。剣の一本や二本くれてやるつもりだったが、どうやらその必要も無かった様だ」
 最もそれは、フォーネリアスのユーベルコードの力でもある。
 敢えて1対多数という不利な状況を作り出し身体能力を劇的に強化すれば、フローリエが上空から炎の矢を降り注がせているだけで、問題なく小規模の群れ程度なら殲滅できる。
 それは偏に、【オブリビオンへの憎悪】故だ。
 その事実に少しだけフローリエが憂いげに眉を潜めながら、静かに正面のレッサーデーモン達を見据えていた。
「後はこの群れだけ……ですわね」
「そうだ。この先にあいつがいる。魅了させて侍らせて、飽きたら命奪って次のお相手探しをする腐れ野郎が」
 全身から氷の女王の如き苛烈さを秘め、それを敵への殺意と冷徹なる意志を籠めてアイナが独りごちる。
「ボアネルさん達がかなり数を減らしてくれているとは言えまだまだ敵は沢山います。これにはどう対処しますか?」
「そうね……それは簡単よ」
 腕を組みながらのウィリアムの問いに答えたのはつかさだ。
「私の周り……半径22m以内に出来る限り敵を集めて。……次で終わらせるわ」
「良いだろう」
「それならば、私達が道を切り開きますわ」
「じゃあ、つかさちゃんの背中は僕が、『盾の騎士の血にかけて、護ってみせるよ』」
 ボアネルが周囲に105本の薔薇を召喚し、フローリエが70本の炎の矢を召喚しながら強い決意と共に一つ頷き、アルバがにっこりと無邪気な笑みを浮かべてScudo di Orgoglioを構えた。


「フローリエは上空からだな」
「本当は私、戦いはあまり得意では無いのですが……お任せ下さいませ、ボアネル」
 ボアネルの言葉に頷きながら、フローリエがその手に炎の魔力による矢を展開し、天に掲げる。
 同時にボアネルは105本の薔薇を自分の周囲に展開し、ピッ、とコ・イ・ヌールを敵の群れへと突きつけた。
 瞬間、刀身が伸びたコ・イ・ヌールに率いられる様に直線上に105本の薔薇が飛び、フローリエが解き放ち、天からシャワーの様に降り注ぐ炎の矢と重なり合って炎を燃え上がらせる。
「……あたたかくなったかしら?」
 何処か艶然とした笑みを浮かべたフローリエの言葉通り、その炎に囲まれて動けなくなった悪魔達は数知れず。
 それでも幾何かの悪魔達は、その炎の効果範囲から左右に分かれて逃げ、辛うじて難を免れていた。
 彼等は、自分達が生き残ることに一縷の望みを託し逃げ出したのだが……。
『殺す、必ず殺す。全部、まとめて、一匹残らず殺し尽くす』
 その望みを断ち切る様にフォーネリアスが左に逃げた者達の中に突っ込み攪乱。
 逃げられぬと悟った悪魔達の一部は手で複雑な印を結んで、呪いの声音を告げて自分達を金縛りにしようとするがそれに反応したフォーネリアスは対艦チェーンブレードを敵に向かって振るい、耳障りな振動音を生み出してその呪いの言葉を掻き消し、続けざまに、炎剣フレイムテイルや、リニアブレードを振るって次々に首を撥ね、また帯電式パイルバンカーで杭を解き放ち、確実に悪魔達の心臓を貫き止めを刺していく。
 淡々と自分達を殺すフォーネリアスに恐れをなしたか、恐怖に憑かれたかの様に走り出す三叉槍を放つ悪魔達。
 だが……。
「そうはさせないわよ」
 悪魔達の攻撃を裁く様に、姫桜が拘束ロープを使って一息にその悪魔達を縛り上げ、更に拘束具でその身を締め上げ、猿轡を背後に回って無理矢理噛ませて悪魔達を拘束しながら、ドラゴンランスを掲げて数体を纏めて串刺しにし、悪魔達の恐怖を煽り、そのまま中央に追い立てる様に攻撃を仕掛けていく。
 一方、右へと逃げた悪魔達は……。
「さっさと帰りな! アンタ達の居場所は此処じゃ無い!」
 叫びつつレガリアスシューズで流麗なダンスを踊る様に大地を駆けるアイナがDeathBladeの大鎌形態で敵を薙ぎ払っていた。
 アイナは続けざまに舞台を演じるオペラ歌手の様にそれを口ずさむ。

 ――罪を穿つ青玉の雨(ペネトレーション・サファイアレイン)。

 そう呼ばれしユーベルコードを。
 かのユーベルコードによって生み出された蒼穹の如き幾千もの青玉の矢は悪魔達に突き刺さり、或いは此方への悪魔達の移動を食い止める様に地面を射貫く。
「ウィリアム!」
「ええ、承知しました」
 アイナに応じたウィリアムは、ルーンソードの先端で空中に魔法陣を描き出しながら、学園で学んだ魔法を詠唱する。
 それは、高度な炎の攻撃魔法。
 ……ウィリアムの全力魔法だ。
『……Fire!』
 詠唱と共に魔法陣を完成させたウィリアムが駄目押しとばかりに叫ぶと同時に魔法陣の中央より生まれ出でたのは、竜を象った巨大な炎。
 魔法陣から飛び出した炎の竜が悪魔達を飲み込み、恐慌に襲われた悪魔達は先程自分達が逃れた筈の炎の渦の方へと走り出す。
「さて……僕達の下準備は終わりました。後はお願いします、つかささん」
 成功するという確信を得ながらも、祈る様にウィリアムが呟いた。


 ――ボアネルとフローリエの炎に取り込まれ、それに焼かれた悪魔達、或いはその炎の檻から逃げられなくなった悪魔達は、二刀を軽々と振るうつかさと正面から対峙していた。
「ほらほら、どうしたんだい? 君達の力はこの程度のものなのかな?」
 アルバがつかさの背中を守り、背面からの奇襲を避けさせる様にScudo di Orgoglioと周囲を飛び回るCornoの本体、Corno di Lanciaで悪魔達の攻撃を捌き、或いはカウンターでその腹部を貫き、挑発と陽動を行い、今までで最大の数の悪魔達を自分達のいる場所へと引きつける。
「盾の誓いは伊達じゃ無いって訳ね」
「当然だよ、つかさちゃん。しかも君みたいな女の子の為なら尚更さ」
 アルバの飄々とした口説きは華麗にスルーし、つかさはその場で深呼吸。
「良い具合に暖まってきたわね。……今だわ」
 そう告げながら、敵の攻撃を受け止めるために十字に構えていた零式・改二と、その攻撃を背のギザギザで受け止めていた刃噛剣事だらりと両手を地面に垂らして自然体に。
 全身の筋肉を弛緩させ、窮地に陥っていた悪魔達が食いつきそうな餌を垂らす。
 案の定、悪魔達はつかさの本当の狙いに気がつかずに雪崩打つ様に一斉に襲いかかった。
「今だよ、つかさちゃん!」
 アルバが悪魔達の攻撃を捌きながら叫ぶと共につかさが会心の笑みを浮かべる。
『巻き込まれるのが嫌ならば、近づかないことよ……乱闘術奥義! 明王乱舞、ご覧あれ!』
 つかさの叫びと共に何処からともなく二振りの刀が姿を現す。
 一刀は、風の精霊の宿し、圧縮空気を纏う事で光を歪曲させ、不可視状態となっていた太刀。
 銘は、風迅刀。
 もう一刀は……母から譲り受けし大切な一振り。
 そして、この悪魔達を屠るに相応しき銘を持つ刃。
 ――大悪魔斬【暁】。
 その二振りと共に現れたのは、無数の……。
「ま……丸太?」
 アルバがパチクリと瞬きをする間につかさの手にあった二刀と、現れた二振り、計
四振りの刀と無数の丸太が、全方位に向けて光線の様に放たれる。
 それはさながら、刀と丸太による舞踏。
 否……蹂躙だった。
「……悪魔だから、何?」
 冷たい風が周囲を駆け巡り、全ての悪魔達が一匹残らず消えたこの大地の中央で。
「こちとら東洋の悪魔……『鬼』よ」
 軽く髪を掻き、手に持つ二振りの刃を納刀しながら。
「舐めないで頂戴」
 そう、つかさは静かに呟いた。


「お見事です」
 残っていた悪魔達が一人残らず消えた所で戦場の中心部にやってきたウィリアムが賞賛の声を掛ける。
「見事に策が嵌まった様だな」
「ええ……皆のお陰でね」
 ボアネルの言葉に礼を述べると、何故か姫桜が恥ずかしそうに目を逸らした。
「照れているのかな、姫桜ちゃんは?」
「……何でも無いわ」
 アルバの言葉に姫桜が顔を微かに上気させながら否定した。
 フォーネリアスは周囲の状況など興味が無い、と言わんばかりに悪魔達の死骸を踏み拉き、前進を始めている。
(さて、さっさと決着を付けに行くか)
 彼女にとって、大事なのはオブリビオン達に対する『復讐』
 であるならば、手段など選んではいられないだろう。
「これで……ネームレスの元に行けるのですね」
「ああ、そうだな」
 フローリエの呟きにアイナが頷く。
「さっさと来な、腐れ外道。骨の髄まで叩き潰してやるよ」
 それは、猟兵達の宣戦布告だった。
  

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『墜ちた貴族』

POW   :    愛さえあれば
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【自身を慕い戦ってくれる墜ちた婚約者達を杖】から排出する。失敗すると被害は2倍。
SPD   :    婚約破棄
【一方的な婚約破棄宣言と冤罪】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【召喚した領民達による物理的断罪劇】で攻撃する。
WIZ   :    真実の愛
【真実の愛】に覚醒して【対象を花嫁姿に変えると共に自身は花婿姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花巻・里香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――樹氷の大地、その場所で。
「やれやれ……一人残らずあの子達を殺すとは、あなた方は薄情者だ」
 呟きながら現れたのは、姿を現したのは、何処か古風にも思える漆黒の衣服と紫のマントに身を包んだ美しき青年。
 その周囲をヴェールの様に舞う白きオーラは、けれども邪気に満ち満ちていて。
「まさか、私がかつて愛した者達を一人残らず皆殺しにするとは。本当に、本当に薄情者だ」
 最も……と呟き、その口元に邪笑を浮かべて。
「まあ……あの子達は最後まで役に立ってくれたから良しとしましょう。私が抱く真実の愛の為には、私が愛するに足らなかったあの子達が存在すること……それ自体が罪であり、婚約破棄する正当な理由なのですから。最低でも私が抱き、そして求める真実の愛の為にその身を捧げる程度の罰を受けるのは当然でしょう」
 さて……と、愉快そうに息をつく男。
「あなた方は、私に愛されたいのですか? 良いでしょう。私は博愛主義者です。あなた方の全てを愛して差し上げますよ。今でも尚、私の寵愛を受けているあの子達と同じ様に、私の中で、永遠にね」
 そう告げてバサリ、とネームレスはマントを翻した。
 さあ、猟兵達よ。
 今こそ、ネームレスとの戦いの時だ。
 検討を、祈る。
ボアネル・ゼブダイ
「そうか、先の者達は貴様の支配から逃れ、神の御許へと旅立ち、憩うことが出来たのだな」

オブリビオンはどの世界でもヘドが出るほどの外道だな、この世界に住まう者達のためにも早急に駆除せねばなるまい

闇夜の眷属を相手に発動、それと同時に人工血液セットからの吸血で血呪解放も発動
上昇させるのは防御力だ
愛さえあればを警戒し相手が脱力状態ならば黒剣グルーラングで攻撃、反撃をしてくるのであれば防御か見切り、召喚した巨大蝙蝠達で敵にカウンターを与える
共闘する猟兵達がいれば協力し、敵の撃破を目指す

「貴様の愛は毛ほどの価値もなければ、私達も興味はない。己の罪深さを自覚し、永久凍土の遙か下へと魂すら残さず消え去るがいい」


斬断・彩萌
や、ないわー。どんだけナルシ決めてんの?そこまでいくといっそギャグじゃん、う~寒すぎて鳥肌出ちった。顔が良くてもこゆタイプはマジで無いわ~死んで(しっしって追いやるジェスチャー)

★POW
師匠に仕込まれた【スナイパー】の技術を活かし、遠距離から二丁拳銃で【2回攻撃】。遮蔽物があれば隠れながら、無かったら身を低くしながらお貴族サマを撃つわ。
『サイコキネシス』を封じた弾丸で射抜いたら、素早く接近。その【傷口をえぐる】ようにOracleを突き立てる。返り血を浴びたって構わない……女の敵さん、痛い目をみる気分は如何?

反撃にはTraitorで【武器受け】。ごめんね、あとでちゃんとメンテすっから!


美星・アイナ
何が真実の愛よ
それは只の自己中、独り善がりだ

ここは彼女の出番だ、とペンダントに触れ
シフトする人格は邪を祓う焔を纏う赤水晶の姫
『我の焔が灼き尽くすのは貴様の全て、花嫁達の血涙、焔に変え断罪せん!』

レガリアスシューズを起動
【地形の利用】を駆使して大きく動きつつ伸ばした鋼糸を
二の腕と二の脚、首元に巻き付け

同時にユーベルコード詠唱し赤水晶の欠片を【一斉発射】
その間に後方に回り込み剣形態の黒剣で【2回攻撃】の【なぎ払い】を叩き込み
欠片を錬成した炎熱の大鎌で深々と【傷口をえぐる】

あの悪魔達は花嫁達の変わり果てた姿
でもこれできっと彼女達も安心して眠れる筈ね

『おやすみなさい』

※アドリブ、他猟兵との連携歓迎


ウィリアム・バークリー
なるほど、オブリビオンかどうか以前に、清々しいまでに下衆です。
討滅のし甲斐がありますよ。

トリニティ・エンハンスの炎魔法で自己強化して、スチームエンジンをルーンソードに追加。
戦闘準備よし。

脱力状態だから確実に攻撃無効化じゃないですよね。
その状態のネームレスに炎の「属性攻撃」の「全力魔法」!
召喚した領民も、もうオブリビオンでしょう。躊躇はしません。討滅することこそが、彼らへの救いとなる。
「属性攻撃」でなぎ払います。
真実の愛とか止めてくださいよね。気持ち悪い。ぼくを花嫁にとか、絶対拒絶です。
それでも花婿になったら、隠し技のルーンスラッシュで焼き切りますよ。


犠牲になった花嫁さんたちが救われますように。


ラティナ・ドラッケンリット
「遅れてすまない。状況は把握した。私は前衛でいかせてもらう」
ここは寒いな
まあ、体を動かしていれば温まるだろう
まず【ダッシュ】で接近戦の間合いに踏み込む
断山戦斧『しゅとれん』を地面に突き立て
鞘から屠竜刀『まかろん』を抜き
【先制攻撃】【見切り】【武器受け】【武器落とし】【なぎ払い】【勇気】【覚悟】【戦闘知識】【フェイント】【破魔】を駆使して
手数で脱力状態になる隙を与えない
距離を取られたら穿竜槍『たると』を槍に変身させて手にする
脱力しようがない状況を作れたら
断山戦斧『しゅとれん』を地面から引き抜き
【捨て身の一撃】【怪力】を込めて『グラウンドクラッシャー』を叩き込む
「その隙は見逃せないな」


フローリエ・オミネ
あなたは、わたくしを愛してくださるの?
その愛の形は、真っ当な物なの?

けれども、わたくしは平等な愛は嫌いなの
だから――たっぷりと、害(あい)して差し上げるわ

バトル・インテリジェンスで自他共に戦闘能力を底上げ
敵の「真実の愛」にも対抗出来るように。

基本はウィザード・ミサイルで集中攻撃
まとめて身体を貫いたり、全方向から放ち逃げ場を無くしたり

そうね、わたくしはサポート役なの
歩くのが苦手でも、浮くことならできる

それに、腕に着いたストール、これは拘束具なのよ
あなたのユーベルコード、封じましょう

……綺麗、まるであなたが花嫁のようだわ

あなたが博愛主義ならば、わたくしは博害主義
これもまた愛の形よ

さあ、堕ちよ。


アルバ・ファルチェ
薄情者?お前に言われたくないな、外道が。

真実の愛なんてどの口が語る。
お前がやってるのは子供の人形遊びだろ。

それに巻き込まれた女の子達はホントに可愛そうだ。

彼女達に代わって、僕が、僕達がお前を裁く!

そんな感じに【挑発】出来ないかな?
命をなんとも思ってない輩には足りないかもしれないけど、挑発が有効だろうとそうじゃなかろうと僕がやる事は1つ。

皆を守る、ただそれだけ。

だから攻撃を【かばう】し、【盾や武器で受ける】し、【見切る】。

ただ、今回は腹に据えかねてるからね…攻勢にも出るよ。
コルノには頼らない。
僕が、僕自身の意志で、力で剣を振るうよ。

…お前のようなヤツの愛なんて、例えお前が女であってもお断りだ。


彩瑠・姫桜
愛した者達って…っ!
信じられない、何が真実の愛よ、博愛主義者よ!
そんな馬鹿げた愛なんてこちらから願い下げよ!
絶対に許さないわ

すごく腹立たしいけれど感情的になりすぎるのも問題よね
できるだけ気持ちを落ち着かせた上で敵の動きを【情報収集】し
引き続き【咎力封じ】を使うわ
【拘束ロープ】【手枷】【猿轡】の順で放ち、動きを封じるわね

ある程度動きを封じる事ができたら
ドラゴンランス1つを投げて【串刺し】にし
もう一つのドラゴンランスを両手で構えて【傷口をえぐる】ように攻撃するわね

犠牲になった花嫁達の苦しみはこんなものじゃ足りないくらいよ
自分のしてきた罪の重さを感じながら骸の海に沈みなさい…!

*共闘・アドリブ大歓迎


フォーネリアス・スカーレット
「知らん。オブリビオンは殺す。貴様も当然殺す」
 婚約と言う言葉を随分と好き勝手に使う物だ。知った事ではないが。炎剣と丸盾を構えてふざけた召喚UCを潰していく。領民? 婚約者? 知らん。全員死ね。
 千撃ちと地獄焼き、武器を落としたと見せかけて掌底からの手首固定バンカーの楔打ち。決断的に手を潰して行く。
「お前の真実などその程度だ」
 そして僅かでも恐れを、隙を作り出したらフックロープ投擲で拘束。炎剣二刀乱舞、電磁二刀十字居合、六連掌底楔打ち。仕上げはチェーンブレードでバラバラにする。
「オブリビオンは殺す。それだけが真実だ」


荒谷・つかさ
あの悪魔達は拐われた彼女達の成れの果て、と。
だったら、これで良かったのよ。
ああなっては最早魂を解放するのが、最良の救いなのだから。

あとはあんたを殺すだけ。
覚悟なさい。

「早業」「残像」技能を活用し、攻撃をかわしながら拳の届く距離まで接近。
【螺旋鬼神拳】の射程まで捉えたならば「気合い」の籠った「螺旋鬼神拳ッ!」の叫びと共に、

「怪力」「鎧砕き」技能を乗せた「ただの鉄拳」で思い切りぶん殴るわ。

ユーベルコードを反射するには脱力する必要があるんでしょ?
ならその間は殴り放題よね。
とばかりに掛け声だけの鉄拳を顔面狙いで叩き込み続けるわ。
たまらず脱力を解いたら、今後こそ【螺旋鬼神拳】をぶちこむわよ。




「そうか、先の者達は貴様の支配から逃れ、神の御許へと旅立ち、憩うことが出来たのだな」
 ネームレスの言葉を聞き、何処か安堵の息をつきながら静かにそう告げ、ボアネル・ゼブダイが黒剣グルーラングを青眼に構える。
「あの私の愛を受け入れるに足らない存在だったあの子達が私の支配を脱し憩うことが出来た? 何を身勝手な事を仰っているのですか? 全ての者は私の真実の愛を受け入れる事で永遠に幸福を享受できる。そんな極当たり前の事が、貴方方には理解できない、と?」
 ネームレスの呟きに眦を釣り上げ、怒りの眼差しを叩き付けるのは美星・アイナ。
「何が真実の愛よ……! 何処まで身勝手で、自己中で、独善的なのよ……!」
 激高と共にその胸に輝くペンダントに触れ、全身に炎を纏わせ、くるりとその場で舞う様にスカートを翻すアイナ。
 その姿は、まるで邪を祓う焔を纏う赤水晶の姫の様で。
『我の焔が灼き尽くすのは貴様の全て、花嫁達の血涙、焔に変え断罪せん!』
 叫びと共にレガリアスシューズを起動させ、周囲の地形を飛び回りながら、一気に肉薄し、中列から、KillingWireを射出。
 ネームレスが周囲に展開されていた白きオーラで迎撃しようとしたその時……。
「や、ないわー。どんだけナルシ決めてんの? そこまでいくといっそギャグじゃん」
 告げながら、しっしっと追い払うジャスチャーを示しながら、ぶるり、と寒さに身を震わせる様に肩を上下させる、斬断・彩萌。
「これはこれは愚かな事を。貴女の様な美しい方こそ、私の愛を受け入れるに相応しい」
 傲慢さを絵に描いた様な邪笑を浮かべて求愛ともとれる好色な視線を向けてくるネームレスに心底嫌そうにしかめ面をする彩萌。
「う~寒すぎて鳥肌出ちった。顔が良くてもこゆタイプはマジで無いわ~死んで」
 肌が寒気で粟立つ感触に嫌気を覚えながらExecutioner、Traitorの二丁を構えて引き金を引く。
 圧縮されたサイキックエナジーの籠められた弾丸が二丁の先端から射出され、銃弾がその身を捕らえようとした時、自身の全ての魔力を解除し反射を試みようとするネームレス。
 だがその時……ビキニアーマー姿の影が一瞬でその間合いを詰めた。
「遅れてすまない。状況は把握した。私は前衛でいかせてもらう」
 それは、断山戦斧『しゅとれん』を構え、そのまま地面に叩き付け、その大地を砕いて、完全な脱力状態になるのを防いだラティナ・ドラッケンリット。
 そのまま背に背負っていた屠竜刀『まかろん』を抜くと同時に大上段から振り下ろす。
 竜をも屠る巨大な刃を咄嗟にマントで躱すネームレスだったが、次の瞬間、彩瑠・姫桜の放った拘束ロープがギリギリとネームレスの足を捕らえて締め上げていた。
「おや? このロープは……余程、私の真実の愛を受け入れたい、と……?
「ふざけたこと言ってんじゃないわよ! 何が真実の愛よ、博愛主義者よ! そんな馬鹿げた愛なんてこちらから願い下げよ!」
 怒気を交えた姫桜の叫びと共に、彩萌が先程放った二対の弾丸がネームレスの腹部と肩を撃ち抜いていた。
「……これも貴方方の愛情表現ですか? 随分と過激な表現ですね」
「……寒いな。恐らくこの地の気温故、だろうが……まあ、動いていれば体も暖まるだろう」
「知らん、興味も無い。オブリビオンは殺す。オブリビオンである貴様も当然殺す。ただ、それだけだ」
 ネームレスの言葉に軽く首を傾げたラティナを一瞥したフォーネリアス・スカーレットが炎剣フレイムテイルと剣闘士の丸盾を構えながら加速しながら横凪に刃を振るう。
 振るわれた刃がネームレスを捕らえて一太刀を浴びせると同時に、無尽の鞘から取り出された合計95本の魔法の短剣がネームレスを射貫くべく次々に迫っていく。
 その本数の多さに思わず顔を青ざめさせたネームレスが咄嗟にまだ傷を負っていない左足をバネにして空中へと飛び出しながら、まるで何かを宣言するかの様にフォーネリアスを指差した。
「この様な歪んだ愛情表現では、私の愛を受け入れることは出来ません。貴女との婚約を破棄し、今、此処であの私の愛を受け入れなかった彼女達と同じ罰を受けて頂きます」
 宣言と同時に、ゆらり、とその指から、陽炎の様に薄い無数の領民達を召喚。
 まるで幽鬼の様な表情の領民達が手に手に武器を持ち、この場の猟兵達全員に襲いかかる。
『血の香りに狂う忌まわしき半身よ・・・人の理を外れた悍ましき吸血鬼の力よ・・・我が正義を示すためにその呪われた力を解放せよ!』
 高らかに告げながらボアネルが人工血液セットから吸血を行い、自らの守備を固めて亡者達の猛攻を凌ぐと共に、その周囲に支援型のドローンが浮遊し、その亡霊達の攻撃を次々に牽制していた。
「あなたは、わたくしを愛してくださるの?」
 そう歌う様に問いかけるは、フローリエ・オミエ。
 態勢を建て直し、優雅に一礼をしながらネームレスが口元を綻ばせる。
「貴女がそれを望むのであれば、私は幾らでも貴女を愛して差し上げましょう。私は、博愛主義でございますから」 
 その呟きに口元に何処か妖艶な笑みを閃かせるフローリエ。
「その愛の形は、真っ当な物なの?」
「当然です。私の愛は、真実の愛。それを受け入れることが出来ず、そして私にその命を捧げられぬ者達は愚者であり、その愚者を何の躊躇いも無く殺すことの出来た貴方方は薄情者と言えるでしょう」
「薄情者? お前に言われたくないな、外道が」
 フローリエの前に立ち、左手に【騎士の誇り】と共にある白銀の盾Scudo di Orgoglioを、右手にバスタードソードを構え、飄々と、しかしまるで一本の矢の様に鋭い怒りをその身から迸らせるアルバ・ファルチェの挑発。
 ネームレスがその柳眉な眉を僅かに顰める。
「外道? 私の何処が外道だというのです? 私はただ、全ての人々を愛していただけ。その私の愛を受け入れることが出来なかった者達には、私の使命の為に得た力を維持する為の糧になって頂いただけのこと。真に罪深きは、私の愛を受け入れることの出来なかった者、或いは、私が愛し続けるに足らなかった者達だと言うのに。どうしてこの真実の愛に満たされた私が非難されなければならないのでしょうか?」
「真実の愛なんてどの口が語る。お前がやっているのは愛じゃない。ただの子供の人形遊びだろ。そんなお前の我儘に力尽くで従わされ、そして巻き込まれた女の子達の方が……そしてそんな風に女の子を扱ったお前の何処が外道で無いと言う!?」
「やれやれ……貴方の様な者には、私の博愛主義を理解出来ないのですね。それでしたら、断罪するしかありません」
 諦めた様にふっ、と片手を振り下ろし、再びかつて領民であったであろう者達を召喚するネームレス。
 その様子を見ながら、それまで攻撃の機会を伺い、アルバの背後で庇われていたウィリアム・バークリーがスチームエンジンを付けて強化したルーンソードの先端で、空中に魔法陣を描いている。
「……オブリビオンである以前に清々しい迄に下衆ですね。此処まで話が通じない身勝手な方でしたら、ぼくも何の躊躇いもなく、これを使えます」
「ウィリアム様、そういうことでしたら私に合わせて下さいませ」
 魔法学園で学んだ最大級の炎の攻撃魔法を展開するウィリアムにフローリエが呼びかけながらその両手に80本の炎の魔力を帯びた全てを焼き尽くす矢を召喚。
「実はねわたくし、平等な愛は嫌いなの」
 同時に鈴の鳴る様な声でゆっくりと……。
「だから――たっぷりと、害(あい)して差し上げるわ」
 そう、言の葉を紡ぎ出すと共に80本の炎の矢を、上空から降り注がせる。
「……FIRE!」
 合わせる様に、ウィリアムが展開した魔法陣から炎龍を呼び出し突進させた。
 上空からの無数の矢と炎龍の渦がネームレスを飲み込み、その身を焼き払う。
「今ですわ、皆様……!」
 フローリエの呼びかけと同時に、アルバの背後からすっ、と疾風の如き速度で走る一体の『鬼』
(あの悪魔達は拐われた彼女達の成れの果て、と。だったら、これで良かったのよ)
 アルバ達とネームレスのやり取りを思い起こしながら、飛び出した鬼、荒谷・つかさはそう思う。
 そう……ネームレスのいう状態になってしまったのであれば……最早魂を解放するのが、最良の救いなのだから。
 ――故に。
「あとはあんたを殺すだけ。覚悟なさい」
 残像が出るほどの速度で大地を疾駆し、無数の住民達による物理的攻撃を躱しながら、つかさが一気に肉薄し、気合いを籠めて叫ぶ。
「螺旋鬼神拳ッ!」
 ネームレスの鳩尾に向けて放たれたその拳は、その衣服を貫通する程の怪力が乗せられており、あまりにも鋭い殴打に喀血するネームレス。
 それは、飛び出したつかさによって生み出された大きな、大きな隙。
 そこに……。
『古き血で繋がれた眷属達よ、混沌の扉を抜け、我の前に立つ愚かな敵を喰らい尽くせ!』
『地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え・・・行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん!さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!』
「その隙は見逃せないな」
 ボアネルが黒剣グルーラングを振るいながら、鋭く大きな牙を持つ巨大蝙蝠の群れを召喚して、袈裟懸けに斬り裂き、その全身に深い切り傷を残し、更にアイナが一斉に21個の赤水晶の欠片型の炎を放ってその身を焼き、そして捨て身でネームレスの懐に潜り込んだラティナが断山戦斧『しゅとれん』でネームレスの左肩から脇腹に掛けてを斬り裂む。
 凄まじい地響きが周囲を包み、大地に突き刺さった断山戦斧『しゅとれん』を中心に周囲の地形が凹み、ネームレスの身動きを取れぬ様にしていた。
「か……はっ……!」
 呼吸するのもやっとなのだろう、口から青い血を吐き出しながら荒く肩で息をついているネームレス。
「この位でお前が彼女達にやってきたことが許されるわけが無いよ」
 だから……と先程召喚された領民達の群れの攻撃を盾で受け止め、或いは、第二波に備えて攻撃の準備を整えるウィリアム達を庇いながら、アルバが宣言する。
「僕が、僕達がお前を裁く!」

 ――と。


『面倒だ、纏めて燃えて死ね』
 傷を負い、よろよろと立ち上がるネームレスへと炎剣フレイムテイルを突き立てるフォーネリアス。
 人であれば心臓である部分を貫かれたネームレスの表情に恐慌が過ぎる。
「この……この……! 私の愛を解せぬ愚か者どもめ……! 私の愛は真実だ!」
 焦燥を隠せぬ表情のままに弾ける様に指をフォーネリアスに突きつけながら喚き散らすネームレス。
 その指先から放たれた魔力は、フォーネリアスの姿を花嫁姿へと変え、フォーネリアスの炎剣フレイムテイルを取り落とさせ、又、ネームレスの姿を花婿姿へと変貌させるが、フォーネリアスは無感動。
 いや……若干ではあるが、『復讐』出来る事への愉悦に満ちていたかも知れない。
『恐れたな。お前は終わりだ、死ね』
 ネームレスの死への【恐怖】を感じ取り落とした炎剣フレイムテイルには目もくれずに掌底をその胸へと叩き付けると同時に、帯電式パイルバンカーから杭を高速で撃ち出してその腹部を貫き、更に無尽の鞘から、新しい炎剣フレイムテイルを二本取り出して乱舞を舞う。
 1つ、2つ、3つ、4つ……最早いくつ数えたのかも分からない程の切り傷がネームレスを苛み、続けざまにリニアブレードを二刀抜いて、十文字に居合い切り。
 横一文字に放たれたリニアブレードと、縦一文字に放たれた二刀の刃をネームレスに食い込ませたままに、六連続で掌底を繰り出し、各部にある急所を殴りつけて軽い脳しんとうを起こさせたところでフォーネリアスは対艦チェーンブレードでギザギザにその身を切り刻む。
「ば……馬鹿な私がこれ程までに追い詰められると……?!」
「お前の真実などその程度だ」
「そうだね~、恋に恋しちゃっている自分の自己愛を真実の愛と勘違いしている的な?」
 フォーネリアスの対艦チェーンブレードと、先程自らが放ったサイキックエナジーの籠められた弾丸で撃ち抜かれ、深手を負っている腹部へと刀身を伸ばしたOracleで貫く彩萌。
 そのまま、グリグリとOracleの先端を捻り込み、その傷口を容赦なく広げていく。
「ぎゃ……ギャァァァァァ?!」
 捻り込まれた刃に絶叫を上げるネームレスの返り血を浴びながらも、一切構うこと無く残忍な笑みを浮かべる彩萌。
「……女の敵さん、痛い目をみる気分は如何? まっ、その様子じゃあ、聞くまでも無さそうだけどね☆」
「こ……小娘が……!」
 忌々しげに睨付けながらがっ、と彩萌の首へと手を伸ばし、その首を跳ね飛ばそうと魔力を放とうとするネームレス。
 だが……。
『僕の前では誰も傷つけさせないよ』
 告げたアルバが23個の翼と十字の意匠『Ali e Croci』を生み出し、それを念力操作して、彩萌への魔力を受け止め、又同時に幾度目になるか分からない召喚された領民達からのフローリエ達の攻撃を次々受け止めながら、誓いを籠めて息をつく。
「僕の役割は、一つ」
 ――このScudo di Orgoglioに刻まれし、【盾の誇り】に掛けて皆を守ること。
「でも……お前には腹を据えかねているからね……!」
 相手が女性であれば、アルバは大体口説いている。
 けれどもそれは、ネームレスの様に愛を強要するためじゃない。
 あくまでも、女の子達を大切に思っているが故、だ。
 だから……許せない。
 許せる筈が、無い。
 こんな……女の子達の心を弄び、自分の玩具としてしか見ていないネームレスを。
 想いと共に逆袈裟にバスタードソードを振り下ろすアルバ。
 彩萌に捻り込まれた刃から逃れたネームレスが白いオーラを盾状に展開しようと呪文を詠唱しようとするが……。
「モガッ?!」
「そんな腐った言葉を吐く口を開くんじゃないわよ、ネームレス!」
 怒気と共に姫桜が召喚した猿轡を口に噛まされてその詠唱を阻害され、アルバの斬撃がネームレスを切り払った。
「モ……モガガッ……?!」
 鮮血を飛散させながら必死に猿轡による拘束から逃れようとするネームレスの背後に回り込み、アイナが剣形態のDeathBladeを振るう。
「さっさと死ね、この腐れ外道!」
 叫びながら背中を切り裂くと同時に、21個の赤水晶の欠片型の炎を召喚して、鎌へと変貌させたDeathBladeに纏わせた。
 炎熱によって灼熱を起こせる程の力を得た鎌が、ウィリアム、フリーリエによって焼け焦げていたその体を切裂き、その火傷を深めていくことで傷口を拡大。
「今の内よ!」
「分かりました、アイナさん!」
 アイナの叫びにウィリアムが応じ自らに炎の魔力を同化させて自らの力に上乗せすると同時に、風の精霊達を呼び出す。
 その精霊達の魔力を蓄えたルーンソード『スプラッシュ』でネームレスに斬りかかった。
『断ち切れ、『スプラッシュ』!』
「小賢しい……その様なもので……!」
 猿轡の拘束から漸く逃れたネームレスがその攻撃に抗するべく自然体を作って力を抜いてその攻撃を弾き返そうとするが……その時には、フローリエが放ったストールがその腕を締め上げていた。
「な……これは……?!」
 動揺するネームレスに対して妖艶に微笑むフローリエ。
「わたくしの腕に巻き付いているストール、実はこれ、拘束具、なのよ。だから……
あなたのそのユーベルコード、封じましょう」
 フローリエに一時的にその身を拘束されたネームレスの一方的な婚約破棄を宣言した時に突きつけていた左指を切り裂き、今までの様に住民達の召喚が不可能となるネームレス。
「こ……これでは……!」
(かつての住民達もオブリビオンになっていました……。こうやって眠らせるのも又、一つの戦い方の筈です……!)
 確実に追い詰められて焦りの色を益々濃くしながら、後退して距離を取ろうとするネームレスの事を呼びかけながら、ウィリアムは内心でそう思い、微かに乱れかけた心を落ち着かせる。
「その動揺……逃がしはしないわよ!」
「その隙を見逃すことは出来ないな」
 すかさず姫桜がドラゴンランスを投擲し、ラティナが穿竜槍『たると』……それは、ドラッケンリット家に代々伝わる槍に変形する小竜だ……を槍へと変形させて、つかさと共に戦場を駆け抜け、ボアネルがコ・イ・ヌールを伸張させた。
 何処までも伸びていくボアネルのコ・イ・ヌールがネームレスの右腕を貫き、投擲された姫桜のドラゴンランスがネームレスの腹部を串刺しにする。
「もう逃げられないぞ」
 続けざまにラティナの穿竜槍『たると』がまだ傷の浅い左足を貫き、その場にネームレスを縫い止め、つかさがネームレスの至近で両の拳を握りしめた。
「くっ……こうなれば……!」
 既に動くこともままならないネームレスが完全な脱力状態になるべく痛みを堪えながら全身から力を抜いたその時、つかさがしてやったりと言った笑み。
「ユーベルコードを反射するには脱力する必要があるんでしょ? ならその間は殴り放題よね。螺旋鬼神拳っ!」
 ユーベルコードの名こそ叫んでいれど、実際はただの鉄拳を残像が生み出すほどの速度で連打しているにすぎないつかさのそれは、まるでボクシングのジャブの様だったが、怪力を乗せたその連撃は、瞬く間にネームレスの全身に紫色の痣を作りだす。
「が……グェェェェェェ……!」
 まるで潰れた蛙の様な声を上げるネームレスを見て、頃合いと感じたか腰を深くつかさが落とす間に、一陣の風が強襲。
 それは、両手でドラゴンランスを構えた姫桜。
「慄け咎人! 犠牲になった花嫁達の苦しみを、自分のしてきた罪の重さを感じながら、骸の海に沈みなさい…!」
 叫びと共に放たれたドラゴンランスが心臓に当たる部分を深々と串刺しに。
 そして……。
『抉り込むように……そこよ!』
 力を完全に蓄えたつかさが超高速且つ重い一撃を籠めた【正拳突き】を繰り出した。
 その一撃は、ネームレスの鳩尾に完全に決まり、そのままネームレスが吹っ飛ばされ、姫桜によって背中迄突き通っていたドラゴンランスが近くの樹に突き刺さり、その身をその場に縫い止める。
 その様はまるで、十字架に磔にされた罪人の様。
「なぜ……ナ……ゼ……?」
 周囲に様々なものを吐瀉し、全身から青い血を流して地面に血の池を作り上げながら、熱に浮かされた表情のネームレスがただ壊れた機械の様に何故、なぜ、ナゼと繰り返し続ける。
「オブリビオンは殺す。それだけが真実だ」
 無表情のままにその場に接近し、炎剣フレイムテイルを初めとする一連の連撃を行うユーベルコード『恐れ喰らい』を放ったフォーネリアスはにべもない。
「……お前のようなヤツの愛なんて、例えお前が女であってもお断りだ」
 フォーネリアスの対艦チェーンブレードで細切れにされつつあるネームレスの胸にバスタードソードを突き刺しながら、アルバがそう答えれば。
「あなたが博愛主義ならば、わたくしは博害主義。これもまた愛の形よ」
『地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え……行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん!さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!』
 フローリエの放った80本の炎の魔力を籠めた矢とアイナの放った21個の赤水晶の欠片が舞う様に炎の渦を作り出してネームレスを飲み込み、その全身を焼き尽くし……。
「アンタみたいな奴は、これで終わりだよ」
 ExecutionerとTraitorの二丁から彩萌が撃ち出したサイキックエナジーによって作られた特別な弾丸がネームレスの眉間と瞳を撃ち抜き。
「貴様の愛は毛ほどの価値もなければ、私達も興味はない。己の罪深さを自覚し、永久凍土の遙か下へと魂すら残さず消え去るがいい」
 ボアネルの召喚した鋭く大きな牙を持つ巨大蝙蝠の群れと黒剣グルーラングによる一太刀が、ネームレスの首を跳ね飛ばした。


「これで終わり……ですね」
「ええ……そうね」
 首を跳ね飛ばされ消えていくネームレスの姿を見届けたウィリアムがそっと息を一つつきながら誰にとも無く呟くのに、つかさが静かに頷き返して天を仰ぐ。
 気のせいだろうか。先程までずっと淀んでいる様にしか感じられなかった空気が、夕焼けに覆われながら弛緩していく様に感じられた。
「……まるで、この地を覆っていた呪いが浄化されていっている様な感じだな」
「ああ……そうだな」
 ラティナの呟きに、ボアネルが同感だ、とばかりに頷き返している。
「……これであいつに不条理に殺された花嫁達も救われたのかしらね」
「姫桜ちゃん……。そうだね、きっとその通りだ」
 そっと瞑目して呟く姫桜にアルバが静かに頷きかけ、それから彩萌とラティナを振り返った。
「彩萌ちゃんにラティナちゃん、僕達と一緒に戦ってくれてありがとう。所で、一緒にお茶でもどうかな?」
「私? さ~て、どうしよっかな?」
「何、礼を言うのは私の方だ。戦いに参戦するのに遅れてしまい、すまなかった」
 小首を傾げて冗談とも本気ともつかぬ口調で呟く彩萌と、淡々と戦士の礼を取るラティナにこりゃ、脈なしかな、と飄々とした笑顔で考えこむアルバ。
 フォーネリアスは興味など無いとばかりに軽く肩を竦めていた。
(……墜ちたわね、ネームレス)
 フローリエが内心で呟きながら、ネームレスによって蹂躙された人々に静かに黙祷と祈りを捧げている。
 其々の表情を見せる猟兵達の前に姿を現したのは、樹氷の世界。
「これが……エリスちゃんが言っていた樹氷の世界の本当の姿なのよね」
 戦いが終わり、人格が戻ったアイナの何処か感心する様な呟きに、そうね、と姫桜が頷き返す。
 目前に現れた樹氷の世界は、黄昏時の陽に照らされ、とても美しく煌めいていた。
「この勝ち取った世界をどうするのも私達次第、か」
「ああ……そうだな」
 つかさの言葉にボアネルが答える間に、ウィリアムが小さく十字を切る。
「犠牲になった花嫁さん達……きっと救われますよね」
「そうね。あの悪魔達は花嫁達の変わり果てた姿だった。だからきっと彼女達も安心して眠れる筈ね」
 ウィリアムの祈りと共に告げられたそれにアイナが軽く頷き返し、静かに呟いた。
『おやすみなさい』

 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『樹氷の世界』

POW   :    仲間たちと共に樹氷を眺める

SPD   :    氷の世界を写真におさめたり、描いたりする

WIZ   :    物思いに耽る

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――戦いが終わり、静かに黄昏時の夕日に照らされ美しく煌めく銀の世界。
 それは、猟兵達が勝ち取った穏やかな静謐と大自然の美しさの反映された、樹氷の世界。
 黄昏時の光に照らし出されるその世界は、眺めているだけでも美しく戦いに疲れた猟兵達の心を癒してくれる。
 勿論、それだけでは無い。
 目の前に映し出された幻想的な光景を見て、郷愁に誘われる者や、或いはその風景を写真に収め思い出として残したいと思う者もいるだろう。
 取り戻された平穏な大地で何をするのか?
 それは……勝者である猟兵達が享受できる特権であり、この戦いでの、何よりの報酬だった。
ウィリアム・バークリー
忌むべきオブリビオンは滅びました。彼が召喚していた『領民』たちが実際にこの地に住まっていたなら、やがてはここにも人の営みが帰ってくるでしょう。

夕日に照らされた樹氷が綺麗です。
例えそれが、生命を拒絶する峻厳な気候の賜物だとしても。
そんな場所でも、人はやがて住まい、生き、一年を重ねていく。

手袋を外して樹氷に両掌を押しつけ、流れ込む冷気から氷の精霊を感じて。
『永劫の氷原を吹き抜ける冷たき王妃の息吹よ、我が身との契約に応じ、凍てつくその御手を我に貸し与え給え』
精霊との契約に精神を集中。手が凍傷になりそうになっても気付かないほどに。

得るものの多い旅でした。皆さん、どうぞお元気で。ご縁があればまたいつか。


ボアネル・ゼブダイ
まずは、聖者としてあのオブリビオンに殺された人々のために祈ろうか
特に大きな樹氷を墓標と定め、招き入れる歌声で精霊達による鎮魂歌を無念の内に散っていったであろう死者達のために捧げる

「神の祝福によって、彼の者達に安らぎを与え。永遠たる神の愛が、彼らの魂を守り導かんことを・・・」

それが終わったならば、食糧袋から温かい食事を出して、それを食べながら樹氷とどこまでも続く美しい銀世界をしばし楽しもう
食べ物は牛肉と醤油の山形風芋煮だ
魔法陣のおかげで温かいまま出せるのはありがたいことだ
エリスや他の猟兵にも進めようか、それだけの数はある

「自然が作り出す造形は、どの世界であっても変わらずに美しいものだな・・・」


美星・アイナ
ようやくケリも着けられたし
エリスちゃんも呼んで樹氷見物と行きましょうか

カラビナポーチからデジカメを取り出し
樹氷が壊れない様に少し距離を置いてシャッターを切って

今まで本の中でしか見た事がなかったけど
実物の樹氷ってこんなに綺麗なのね
天気や気温、幾つもの要素が噛み合って生まれる物だから
同じ物は二度見られない
だからこそ人は憧れるのかもね

幾度目かのシャッターを切った後脳裏に浮かぶのは
ネームレスの悪意の犠牲となった花嫁達
こんな静かで綺麗な優しい場所なら安心して彼女達も眠れる筈

デジカメをしまった後一つ深呼吸
祈りを乗せて歌い始めるのは
憧れのアーティストが歌ってた弔いの歌
次に生を受けた時は皆幸せになれます様にと


彩瑠・姫桜
エリスさん(f10648)をお誘い
*他の方々との絡み・アドリブ大歓迎

綺麗ね
(手袋はめた手を息で温めるようにしながらも
見渡す限りの銀世界に目を細め)

さっきは怒りで寒さなんて忘れてたけど
今は、この世界の美しさに寒さを忘れてしまうわね
……この風景、家族や親友にも見せたかったわ
せめて写真、かしらね
(可能ならば、まずは一枚…と。銀世界をスマホで撮影)

エリスさんも、綺麗ね
…って、べつに、お世辞とかじゃないわよ?そういうの嫌いだしね
でも、この銀世界とエリスさんが凄く似合っていて
なんというか、絵葉書になりそうだなって思ったのよね
折角なので一枚撮ってもいいかしら?

あ、よかったら私とも一緒に写ってくれると嬉しいわ


フローリエ・オミネ
エリス、宜しければわたくしと一緒に樹氷を眺めない?

不思議なものね
氷はわたくしの居場所には無いはずのものなのに、何故かとても親近感を感じるの

この見た目のせいなのかしら……


静かな世界
宇宙(そら)とは違う、冷たくも包み込むような優しさを持っている
これが、地上――

歩くこともままならぬこの身体で無理に歩を進めれば
慣れぬ地面の感触に、すぐよろけてしまうでしょう

でも、大丈夫
転びそうになったら宙に浮けば良い
宙にいることが、わたくしの常なのだから

……エリス、あなたの翼はとても綺麗
そのような翼があれば、自由が叶うことでしょうね

わたくしはそれが羨ましくて堪らないの

嗚呼、寒くてたまらないのに、故郷よりはずっと、――


アルバ・ファルチェ
戦闘中はちょっとチャラけちゃったけど、最後は真面目に。

使い捨てにされた可哀想な女性たち。
力尽くで従わされた女性たち。
彼女たちのために静かに祈ろうかな。
これでもクレリックだしね。

…あー、出来れば真面目な姿は見られたくないから1人だと嬉しいな。
ほら、急に真面目なとこ見られても照れるでしょ?
(※絡み、アドリブOKです)

ロザリオを手に犠牲者には安らかな眠りが訪れる事を、まだ無事な人達には心身の傷が癒えて幸福が訪れる事を祈る。

氷は美しいけど冷たくて、だけどいつか溶けて暖かい春はやって来るはずだから。

女性たちに、そんな穏やかで暖かな春が訪れますように。

…僕には祈るくらいか出来ないけど、力になればいいな。




 黄昏時の仄明るい夕暮れの光に照らし出される流れる様に美しい銀髪の男……。
 ボアネル・ゼブダイが静謐な空気の中で小さく祈りの言葉を捧げた先にあるは、夕日に照らし出され、一際強く逞しい命の輝きを思わせる巨大な大木。
 その大木を前にして十字を切りながら、静かに祈る。
『十字架の血に救いあれば、 来たれ。十字架の血にて、清めたまえ。弱き我も御力を得て、 この身の汚れを皆、拭われん』
 その祈りは鎮魂の祈りであり、紡がれたそれと共にその場に召喚されたのは、光輝く精霊達。
 黄昏時の光に照らし出され、まるで蛍の様に一際強い輝きを示すかの者達が、一斉に合唱した。
 ……失われた人々への弔いの鎮魂歌を。
 その歌に瞼を閉じてその身を浸し、ネームレスによって奪われた生命達への弔いとしたボアネルが、歌を背に祈りの言葉を口にする。
「神の祝福によって、彼の者達に安らぎを与え。永遠たる神の愛が、彼らの魂を守り導かんことを……」
 ――黙祷。
 失われていった人々への鎮魂の祈りを束の間捧げ、花嫁達への手向けとしたボアネルがさて、と一つ息をつく。
「そろそろ、潮時だろうな。折角だ。エリスや皆にもお裾分けするか」
 この美しい景色を眺めながら鞄に入れておいた食事を摂るのは風情があるし、また、それだけの量も十分確保している。
 そう思いながら、ボアネルがそっと周囲にいる猟兵達へと視線を向けた時……彼の目は、自然とこの土地に当たり前の様に溶け込んでいる氷の精霊達へと声を掛け、その言葉に耳を傾ける、ウィリアム・バークリーが留まったのであった。


(忌むべきオブリビオンは滅びました)
 周囲の景色に目を留めながら、同時にこの周囲に宿る氷の精霊達の声に耳を傾けていたウィリアムは内心で小さくそう呟く。
「もし、彼が召喚していた『領民』たちが実際にこの地に住まっていたなら、やがてはここにも人の営みが帰ってくるでしょう」
 そう呟くウィリアムの想いは先程の戦いでネームレスに利用された、かつて彼の領民達であったであろう、オブリビオンに対してであろうか。
 或いは、彼に利用されること無くかつてこの地に住んでいたであろう人々への無念の想いを感じ取り、その無念を晴らしたという確信があった故に発せられたものなのだろうか?
 何かがざわめくのを感じながら、ウィリアムは柔和な笑みを浮かべた。
「夕日に照らされた樹氷が綺麗です」
 例えそれが、生命を拒絶する峻厳な気候の賜物だとしても。
 人が住むにはあまりにも過酷なその環境であったとしても、人々は住まい、生き、一年、又一年とその時を重ねていく。
 流れゆく時の流れ、そしてその中を歩む人が生きる営みに思いを馳せながらウィリアムは、この戦いの間ずっと身に着けていた手袋を外し、先程、ボアネルがこの地で利用され、果てていった人々への墓標と見定めし樹氷に覆われし大樹へと両の掌を押しつけた。
 それはまるで、その両の掌よりウィリアムの全身に流れ込む冷気から、その冷気の中に住まう氷の精霊達を感じ取る様で。
 全てを凍てつかせる氷の女王を思わせるその息吹と、またその中から微かに感じ取れる感謝の念……それはきっと、この地がネームレスによって支配された時に生まれ落ちた人々の無念の思いを、氷の精霊達が感じ取ったもの……に小さく頷き、ウィリアムがかの精霊達に囁きかける様に言の葉を紡ぐ。
『永劫の氷原を吹き抜ける冷たき王妃の息吹よ、我が身との契約に応じ、凍てつくその御手を我に貸し与え給え』
 冷たく、そして全てを凍てつかせんとばかりに降り掛かってくるそれに、手が凍傷になりそうになるのだが、ウィリアムはそれにも気付かず、この土地に住まう精霊達へと契約の祈りを呼びかける。
 ……そんなウィリアムの耳に、微かに聞こえたのは、歌。
 暖かく優しく全てを包み込むかの様に発せられたその歌は……凍てついた精霊達の心を、ゆっくりと解きほぐしてくれるかの様で。
(この暖かさは……)
 ボアネルによって召喚された光の精霊達の弔いの歌である事に気がつくこと無く、凍てつき、敵愾心を剥き出しにしていた氷の精霊達の芯へと触れる、ウィリアム。
 その微かな自我を確かに感じ取り、そこから発せられる思念に一つ頷くと……不意に、ウィリアムの手を通じて、何かが流れ込んでくるかの様な想いを感じた。
(これがぼくの……)
 新しい、力。
 この地に住まう氷の精霊達との、契約。
 その力は、祈りを捧げればきっと吹雪を起こし、或いはウィリアムの目前へとやって来る敵達を撃ち倒す力となるだろう。
 或いは、その氷の冷たさの奥にある優しさを応用すれば、人々を癒し助けとなる力になるかも知れない。
 いずれにせよ、契約を成したこの氷の精霊達にどの様な指向性を持たせるのか、それは、ウィリアムの手に委ねられた。
「……ありがとうございます。この力、今後の戦いに役立てていってみせます」
 誓いの様に告げるウィリアムの肩にぽん、と軽く手が置かれる。
 ウィリアムが振り向けば、そこにはボアネルが微笑み、自身の背中に背負う荷物を指差していた。
「ウィリアム、来れも何かの縁だ。……どうだろうか?」
「ふふ、良いですね。ですが……それでしたら、アルバさんもお誘いしませんか?」
 微笑んでウィリアムが指差した先にいたのは、ボアネルと同じ様に鎮魂の祈りを捧げているアルバ・ファルチェであった。


(戦いの時はちょっとチャラけちゃったけれど、今、この瞬間位は真面目にね)
 静かに瞑目し、透き通る蒼硝子のロザリオ、Rosario a Lacrimaを優しくその両手で抱いて祈りを捧げるアルバ。
 透き通った蒼硝子の向こうでは、最初の戦いで殺すことにより、その魂を解放された使い捨てにされた女性達の涙が輝いているのだろうか。
 それとも、ネームレスに力尽くで従わされていた全ての女性達の想いが雫となって煌めいているのだろうか。
(もう戦いは終わりました……ですから、どうか安らかに。……Amen)
 夕暮れの光にロザリオが照らし出されて、内なる自分の思いと自分の姿を照らし出してくれているな、と思ったその時。
「祈りを、捧げているのだな?」
 微かに背に影がさすと同時にした、ふんわりと優しく暖かい匂いに鼻腔をくすぐられる。
 光を微かに遮った相手とその匂いが少々気になって、くるりとアルバが其方を見てみれば、そこにはボアネルとウィリアムが夕日を背にして立っていた。
 逆光でボアネル達の表情は判然としないが、少なくともからかっている様には感じられない。
 ……けれども、何となく照れくささに見舞われて、思わず微苦笑を一つ。
「……出来れば真面目な姿はあまり見られたくなかったのですが……」
「そうでしたか。すみません」
 ぺこり、と生真面目に一礼して謝罪の意を示すウィリアム恐縮して軽く頭を振るアルバ。
「いや、私はほら、戦いではちょっとチャラけちゃったじゃないですか? だからこう、急に真面目なとこ見られても照れてしまうというか、そんな感じでして……」
「なるほど、それでその口調なのだな。それはそれで良いと思うぞ」
 どちらが地なのかと問われれば恐らく両方と答えるけれど、何となく真面目に祈りを捧げる気持ちに引っ張られて敬語で答えるアルバにボアネルが頷きを一つ。
「時々ですよ、時々。そういう口調で話をしたいな、って思うことありませんか?」
「ぼくはいつもこんな感じですから。ああでも、アルバさんの気持ちも何となく分かります」
 アルバがそう告げるのにウィリアムが答えるとアルバ達は誰から共無く穏やかに笑い合う。
 冷たくも何処か温もりを感じる風がアルバ達を撫でる様に駆け抜けていった。
「アルバ、実は私も先程まで祈りを捧げていたんだ。折角だ、共に祈りを捧げても構わないか?」
「ええ、勿論。きっとそうした方が、彼女達も浮かばれるでしょうから」
 問いかけるボアネルに頷き駆けたアルバが、風に身を委ねながらそっとRosario a Lacrimaを手で握りしめる。
 蒼水晶の輝きが夕日に翳され、ロザリオの中を流れる透明な涙の雫を映し出す。
(どうか、犠牲者の皆に安らかな眠りが訪れます様に)
 そして……まだ、無事な人々には、心身の癒しと幸福が訪れます様に。
 目を瞑りながら祈りを捧げるアルバは思う。
 
 ――氷は美しいけど冷たくて、だけどいつか溶けて暖かい春はやって来る筈。
 
 ……だから。

 ――女性達に、そんな穏やかで暖かな春が訪れますように。
 そんな自分の想いが、この祈りと瞼の奥で何故か少しだけ溜まる涙の雫と共に、力になって欲しい、とアルバは心から祈らずにはいられなかった。


「……そう言えば、さっきの匂いは何だい? とても良い香りだったけれども」
 祈りの時を終え、死者への手向けを胸に抱いたまま先程自らの鼻腔をくすぐった物の正体について問いかけると、ボアネルがこれだ、と魔方陣が内部に記された食糧袋からそれ……牛肉と醤油の山形風芋煮を取り出す。
「この景色だ。折角だし皆で一緒にこの景色を楽しみながら食べようかと思ってな」
「僕も誘われていまして。アルバさんも一緒にどうですか?」
 ウィリアムの問いかけに、それも良いね、と柔らかく微笑み頷くアルバ。
「でも、こんなに美味しそうな物を景色と一緒に僕達だけで満喫するのは勿体ないね。折角だし、あの子達も誘わない?」
 そう言って、アルバが指差した先。
 風に乗って歌声が聞こえたその先には、美星・アイナ、彩瑠・姫桜、フローリエ・オミネ達がエリス・シルフィードと共にこの世界を楽しむ姿があった。
「ああ、勿論だ。皆にお裾分けできるだけの量は持ってきている」
 ボアネルの言葉にそれなら、とにっこり笑って頷くアルバ。
「行こうか、ボアネルくん、ウィリアムくん」
「ああ、そうだな」
「はい、行きましょう」
 アルバに促され、夕日を背にウィリアム達はアイナ達のいる所へと近付いていった。
 

 アルバ達が祈りを捧げていた丁度その頃……。
(漸く、戦いが終わったわね……)
 そんな感慨に浸りながら、アイナはそっと肩の力を抜いていた。
 まるでお伽噺に出てくる悪戯好きな妖精、フェアリーの様にからかう様に木々が微かにざわめきを上げる風がアイナの髪をくすぐっていく。
(……って、フェアリーはいるけれどね)
 種族としてのフェアリー達の事を思い出し、何となく微笑するアイナ。
「まあ、私はオラトリオだけれどね」
「エリスはフェアリーに会ったことは無いの?」
 戦いが終わり、呼ばれたエリスの笑顔に微笑み返してアイナが問いかけると、エリスがどうかしらね、と悪戯っぽく笑う。
「……それにしても、綺麗ね」
 彼女を間に挟んでいた姫桜が手袋を嵌めた手を息で温めるようにしながら目を細めてキョロキョロと周囲を見回し、感嘆の声を一つ漏らすのに、アイナ達もまたそうね、と笑顔で頷き返した。
「こういう銀世界は、姫桜さんは初めてなの?」
「えっ……ええ……まあ、ね……」
 物珍しそうな姫桜にエリスが問いかけると姫桜が恥ずかしそうに顔を赤らめ微かに目を逸らしながら肯定の意を示す。
「あら? エリスは初めてじゃ無いの?」
 アイナの問いに実はね、とクスクス笑うエリス。
「私の故郷もこの世界じゃ無いけれど北方にあってね。こういう景色と気温は慣れているの」
「あっ……それでそんな格好でも寒くないのね?」
 問いかける姫桜に、まあね、と遙かに姫桜達よりも薄着のエリスが頷いた。
「でも、やっぱり全然私の故郷とは違うわね。この厳しい環境の中を逞しく生き抜いてきた大自然達の光景は……アイナさん達の言う通り、凄く綺麗だわ」
「ふふ……そうね。こんな景色、思い出に残しておかないと勿体ないわよね」
 アイナが誘って良かったと微笑みながらカラビナポーチからカメラを取り出す。
「私は、こういう景色、今まで本でしか見たことが無かったのだけれど、実物の樹氷ってこんなに綺麗なのね。……やっぱり、天気や気温、幾つもの要素が噛み合って生まれる物だから、かしら」
「そうね。私の故郷にも自然の美しさはあるけれど、此処の美しさとは別だから……そういうのが多分、そういうことなのよね」
「そうね。同じ物は二度見られない、か……」
 エリスの呟きに思うところがあったのだろう、アイナが感慨深げに一つ頷きながら、周囲の景色を写真に収めている。
 姫桜も又、パシャリ、とスマホのカメラでその景色を撮影しながら、改めてほぅ、と息を一つつく。
「さっきは怒りで寒さなんて忘れてたけど、今は、この世界の美しさに寒さを忘れてしまうわね」
 白い吐息が口から漏れたが、この樹氷の世界の中では、冬によく見るこの吐息の白さにも全く異質な何かを孕んでいる様に感じられるのは、この樹氷の世界の澄み渡った空気が、戦いの時に姫桜の中でずっと澱んでいた感情を解してくれたからだろうか。
「そうね。この美しさや、空気の美味しさ……普段とは違う何かを大自然は沢山持っている。だからこそ、人は憧れるのかもね」
 ほぅ、と同様に白い息を吐くアイナに頷き、少しだけ目を細める姫桜。
「……この風景、家族や親友にも見せたかったわ」
 姫桜の誰にともなく告げるそれに、エリスが大丈夫よ、と太鼓判を押す様に天使の微笑みを浮かべた。
「きっと、その写真の風景を見せたら、姫桜さんのご家族も喜んでくれるわよ」
 薄い胸を反らすエリスにアイナがほっこり笑う。
 そうして、写真に周囲の光景を収めている内に、アイナの脳裏に不意に彼女たちの事が過ぎる。
 そう……ネームレスの犠牲となった人々の事が。
(こんな静かで綺麗な優しい場所なら安心して彼女達も眠れる筈よね)
 そんな事を思いながら、デジカメで周囲をアイナが撮り続ける間に。
 姫桜がクイクイ、とエリスの袖を引っ張った。
「どうかしたの?」
 キョトン、と愛らしく小首を傾げるエリスの様子に姫桜が改めて周囲とエリスとを交互に見てから囁きかける。
「……エリスさんも、綺麗ね」
「えっ? 私も?」
 まるで酢でも飲んだ様な顔つきになり瞬きをするエリス。
 その一瞬の間に何を言われたのか理解したのか、落ち着かない様子で顔を赤らめ、どこかアタフタした表情で両手をバタつかせた。
「わ……私、綺麗とかじゃないわよ?! まっ、まあお世辞でもそう言って貰えるのはその……えと……」
 テンパっているエリスにち、違うわよ、と突っ込む姫桜。
 本音を言った筈なのだが……こういう反応を返されてしまうと、此方も何だか恥ずかしくなってきてしまう。
「……べ、べつに、お世辞とかじゃ、無いわよ?」
 声が上擦っているのを感じて深呼吸を一つ。
 弾む様な胸の鼓動を落ち着かせて改めて語りかける。
「そういうの、嫌いだしね」
「そ……そうなのね……綺麗……私がね……」
 漸く落ち着いたか、自らの鼓動を確かめる様に自分の胸に手を置いているエリスにそうよ、と姫桜が続けたけれども……。
「この銀世界とエリスさんが凄く似合っていて、その……なんというか……」
 何を言いたいのか上手く整理が付かずに言葉を探し、少しの間を置いてから、うん、そうね、と一人納得する姫桜。
「絵葉書になりそうだなって思ったのよね」
「……この風景と私が絵葉書……」
 キュッ、と軽く胸の前で手を強く握る様にするエリス。
 そんな言われ方をしたのが初めてだったのだろう、頬が赤らんでいたけれど、とても嬉しそうなはにかみを浮かべている。
 そのはにかみを見て、だから……と姫桜がお願いした。
「折角なので一枚撮ってもいいかしら?」
「ええ、勿論良いわよ。可愛い姫桜ちゃんのお願いだものね」
「ちょ……か、可愛いって……」
 笑顔を浮かべるエリスに思わず頬を赤らめ、プイッ、と照れ隠しにそっぽを向く姫桜。
「……よかったら私とも一緒に写ってくれると嬉しいわ」
 そっぽを向く姫桜に口元に微笑を浮かべながら頷くエリス。
 それまで周囲の風景に気を取られていたアイナがそんな姫桜とエリスの様子に、それなら、と姫桜の方へと手を向けた。
「私が2人一緒に撮ってあげるわ。姫桜ちゃん、スマホ貸してくれるかしら?」
「……ありがとう、ね」
 アイナの提案に姫桜がスマホを彼女に手渡し、エリスと共に樹氷の世界の一景色に溶け込む様なはにかみを浮かべる。
 カシャリ、とアイナが姫桜のスマホのシャッターを切る音がして、姫桜達の樹氷の世界での思い出は確かに姫桜のスマホに写真として刻み込まれた。


「フフ……写真って良いものね」
 姫桜達のその様子を後ろから付いて見て回って微笑んだフローリエが誰にとも無く一人ごちる。
 それから、姫桜とアイナに挟まれていたエリスの背を、トントン、と叩いた。
「ねぇ、エリス宜しければわたくしとも一緒に樹氷を眺めない?」
「ええ、良いわよ」
 フローリエの穏やかな話し方から、少し二人っきりで落ち着いて話したいと言う想いを感じ取ったエリスが頷きかけ、そっと姫桜とアイナの輪から抜け出す。
 歩調を少し抑えることで付かず離れずの程良い距離を取るエリスにフローリエが微かに目を見張る。
「……こういう距離感を掴むの、上手なのね」
「まあね」
 軽く微笑むエリスに微笑みを返し、フローリエは彼女の隣でゆっくりと樹氷の世界を見て回る。
「……不思議なものね」
 暫し樹氷の世界を堪能した所でほぅ、と白い息と共に何かを告白するかの様に息をつくフローリエ。
 エリスに静謐で続きを促され、フローリエが鈴の鳴る様な声で吟じる。
「氷はわたくしの居場所には無いはずのものなのに、何故かとても親近感を感じるの。この見た目のせいなのかしら……」
 ――静寂。
 お互いに決して居心地が悪いわけでは無いそれに包まれて2人は姫桜とアイナの語り合いに耳を傾けていたが、暫くしてエリスはそうね、と呟きを一つ。
「私には、分からないわね。でも……そのフローリエさんの親近感の理由が分かる人は、この世界の何処かにいるかも知れないわ」
「フフ……そうかしらね?」
 興味深げに紫の瞳で見つめるフローリエにきっとね、と天使の笑みを零すエリス。
「それならば、その人に会える時を楽しみにしているわ」
「もう会っているかも知れないけれどね」
 エリスの答えにフローリエが口元を綻ばせた時。
 不意に、フローリエ達の頬を風が優しく撫でていった。
 それはまるで、何かを教えてくれているかの様で。
(この風と言うのも、きちんと感じたことは無かったわね)
 風、雪、氷、静謐……。
 ――此処に在るそれらは全て、人の手によって作られた物では無い。
「静かな世界、ね。宇宙(そら)とは違う、冷たくも包み込むような優しさを持っている」
「……そっか。フローリエさんの出身ってスペースシップワールド、だったわね」
「ええ。だから、こういう世界と交わったことが無いの。そう……これが、地上――なのね」
 そこまで告げた所で軽く頭を振るフローリエ。
 微かに顔色を白くしていたのにエリスが気がつき、静かに歌を奏でているのに耳を傾けている内に、歩き続けていたことで調子を崩した体に活力が戻るのを感じた。
「ありがとう」
「歩くの、慣れていないの?」
「ええ。わたくしはずっと宇宙(そら)にいたから……」
 エリスの心配にそっと頷きかけ、静かに目を瞑るフローリエ。
(もし、歩くこともままならぬこの身体で無理に歩を進めれば、わたくしは……)
 ――慣れぬ地面の感触に、すぐよろけてしまうでしょう。
 口にした呟きは演技とも本音とも見て取れる。
「でも、大丈夫」
「えっ?」
「転びそうになったら宙に浮けば良い」
(宙にいることが、わたくしの常なのだから)
 そう微笑むフローリエに首を傾げるエリスに優しく答えながら、そう思う。

 ――静寂。

 その沈黙を破ったのは、フローリエだった。
「……エリス、あなたの翼はとても綺麗」
「……えっ……ええっ?!」
 翼を褒められ頬を赤らめ、慌てふためくエリスにフローリエがクスリと笑う。
(さっきもだったけれど……エリス、褒められるのに慣れていないのね……)
 姫桜とのやり取りでもそんな話をしていたわね、と少し胸の中が暖かくなった。
(でも、わたくしがあなたの翼が綺麗だと思うその理由は……)
「そのような翼があれば、自由が叶うことでしょうね」
「そうかも知れないわね」
「わたくしはそれが羨ましくて堪らないの」
 それは、恨みや憎しみとは違う、羨望という想い。
 自分が得られぬ者を得ることが出来る者が……フローリエには羨ましい。
 こう、思わず声に出してそう告げてしまう程に。
 エリスはパチクリと目を瞬かせていたが……程なくしてそっと微笑んだ。
「フローリエさんは、宙に浮かべる……飛べるのよね?」
「……ええ、そうね」
 フローリエの解に、エリスがそれなら、と頷きを一つ。
「きっと、宙に浮くことで……そうやって飛ぶことでしか得る事の出来ない者もあると私は思うわ。そんなフローリエさんが私には羨ましい。だから……お相子」
「お相子……そうね、お相子なのかも知れないわね」
 エリスの言葉に、フローリエが頷きを一つ返しながら、空を見上げる。 
 嗚呼、寒くてたまらないのに、故郷よりはずっと、――

 フローリエの想いの先は……。


 ――歌が、聞こえた。
「あら……?」
 その歌に気がついたフローリエが瞬きを一つして、歌声の主を探す。
 それは……アイナ。
 姫桜と共に思い出に残る風景を撮影していたアイナの歌う、弔いの歌。
 次に生を受けた時は皆幸せになれます様にとの祈りの乗せられたその歌が、アイナが憧れていたアーティストが歌った弔いの歌だとは、エリス達は知らない。
「姫桜、アイナ、フローリエ、エリス」
 その歌に気がつき近付いてきたボアネルが食料袋から牛肉と醤油の山形風芋煮を取り出しながら、問いかけている。
「殺されてしまった人達の事を偲びながら、皆でこの景色を楽しみつつ、ボアネルくんが持ってきた料理を一緒に食べないかい?」
「……良いんじゃないかしら? 私は特に反対する理由が無いわ」
 アルバの問いに姫桜がそう返すと、それでは食事にしましょうか、とウィリアムが微笑む。
「こういうのも良いものですわね……」
「ええ。やっぱり景色を眺めながらの食事は、皆でした方が楽しいものね」
 フローリエが再び微笑を浮かべ、アイナが同意とばかりに頷きかける。
「それじゃあ……頂きます」
『頂きます』
 エリスの言葉に姫桜達の頂きますが唱和して、其々に感謝の意を捧げながら、牛肉と醤油の山形風芋煮をつつきながら、景色を眺める。
「自然が作り出す造形は、どの世界であっても変わらずに美しいものだな……」
 黄昏時の光に反射するその風景に見とれながら、ボアネルが静かに呟いた。


 皆で風景を楽しみ食事を囲んで束の間の平和を堪能した猟兵達は、再び、其々の想いと共に新たな戦場へと向かっていく。
 もしも、彼等の縁が繋がれば。
 再び邂逅し共に戦うこともあるだろう。
 だからこそ、この物語は、食後、仲間達との別れの間際、得るものの多い旅としてこの戦いの記憶を心に刻んだウィリアムが残したこの言葉で締めさせて貰おう。

 ――皆さん、どうぞお元気で。ご縁があればまたいつか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月07日


挿絵イラスト