5

迷宮災厄戦⑱-3〜酷暑に脳が蕩けちゃった系情熱ダンス

作者：蒼汁の人

『オウガ・オリジン』が現実改変ユーベルコードで作り上げた、「踊らない奴を殺す国」。ここでは多くの愉快な仲間達が召喚されており強制的に踊らさせられていた。
　ただでさえ酷暑で辛いというのに、身体を密着させる程に寄り添い魂を燃やすかのように激しい情熱的なダンスは否応なく体力を奪いさっていく。また１人愉快な仲間が腰を抜かし踊れなくなると、「踊らない奴を殺す国」を満たす特殊なガスが命を搾りとっていく。
『ああ、前菜にもなりはしない！　『アリス』は『アリス』はまだか！』
　干からびた愉快な仲間を放り捨てると、荒ぶるオウガ・オリジンは新たなる犠牲者と踊り始めるのであった。

●
「UDCアースでは酷暑が続いてますが、アリスラビリンスでは関係ないなと思っていた時期が私にもありました……」
　いきなり訳のわからないことを話始めるアリス・セカンドカラー（不可思議な腐敗の魔少女・f05202）。水を張ったバケツに足を突っ込み、流れ出る汗をタオルで拭い、扇風機代わりに魔術の風を浴びている。
「踊り続けないと死ぬっていう特殊なガスで満たされた「踊らない奴を殺す国」ってとこなんだけど、なんかめちゃめちゃ暑いのよね。立ってるだけでも汗だらだらなのに、踊らないとイケないとか。それも要求されるのは魂を燃やすような情熱的なダンスよ」
　オウガ・オリジンが関わっていない場所でならボンダンスでも構わないのだが、オウガ・オリジンとの戦いにおいては相手がしかけてくる情熱的なダンスに半ば強制的につきあわされることになるだろう。
「ただでさえ暑いのに身体を密着して激しい踊るとか、大変だと思うけど頑張ってね。あ、出発前にアイスでも食べていく？」

第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と死のダンス』

POW   :    イマジナリー・ダンスパートナー 無敵の【ダンスパートナー】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。 SPD   :    無様なる転倒を晒せ 【かかとを打ち鳴らすことで】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。 WIZ   :    罰は天より降る 攻撃が命中した対象に【踊ることの出来ない超重量の『鉛の靴』】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【空から降り注ぐギロチンの刃】による追加攻撃を与え続ける。 イラスト：飴茶屋 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「暑い……」
　燦々と降り注ぐ太陽の光。むわっと立ち籠める熱気。愉快な仲間達の気化した汗が屋外にも関わらずうっすらと靄を作っている。風の１つでも吹けば多少マシになるであろうがそよとも吹く気配はない。
「暑い……」
　なぜこのような過酷な屋外ステージにしたのだろうか？　冷房の効いた屋内ステージではいけなかったのだろうか？　諸々の疑念はあるがそのようなものは早々に吹き飛んでいた。
「この状態で踊り続けねば死に至るとはどのような拷問なのじゃ？」
　鍋島・小百合子（朱舞の女丈夫・f04799）は流れ落ちる汗を拭いながら思わずそう呟いていた。
「心頭滅却すれば火もまた涼し……その言葉に適う舞を披露しようかの」
　小百合子は巫女装束に素早く着替えると祭祀扇を片手に舞始める。一見緩やかに見えるその舞は、巧みな足捌きの妙もあり湖面に映る鏡像の如く実体を捉えさせない。小百合子に密着しようと迫るオリジンが掴むのは残像のみだ。
　舞の所作で優雅にくるりと手首を返して祭祀扇を振るえばたちまちの内に衝撃波が発生してオリジンを打ち据える。思い通りにならないことに苛立ったオリジンは小百合子の舞を邪魔しようと『鉛の靴』を付与しようとする。
「無用な鉛の靴などでわらわの舞を邪魔するでないわ！」
　だが、今更そのようなものを喰らう小百合子ではない。オリジンはここまででも小百合子に触れられなかったというのに、苛立ち大振りになった攻撃なぞなおさら通る筈もなかった。
「『我が舞うは自然の暴利…荒れ狂え！』」
　小百合子の舞がより神聖を増していく。静謐さを湛えた凛とした空気が、これまでそよとも吹かなかった風を巻き起こす。神に捧げし御神楽に共に奏でる死の宴、神降双演舞はここになり、その呼びかけに応えた風の精が熱気ごとオリジンを吹き飛ばす強風を呼び起こすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　おいおいどうなってだこりゃぁ、ラブ様は創作ダンスを踊りながら愉快な仲間に近づきがっと肩を組んで聞いて見た。暑い場所でオウガ・オリジンがいるってーから来てみれば、肝心の相手はいないは爽やかな風は吹いてるは聞いてた話とだいぶ違うじゃねぇか。来る場所を間違えたかととも思ったがそんな転送事故を起こされたとは思いたくねぇ、なら事情を知ってそうなヤツに聞くのが一番だ。
　ラブ様が誰かだって？　ラヴ・フェイタリティ（怪奇！地下世界の落ちものメインヒロイン！・f17338）ってんだよろしくな。それでどうなってんだ？　ふんふん、先に来た猟兵が強風を起こして吹っ飛ばしたと。なるほど、こいつは都合がいい。準備に時間がかけられる。
　ああ、踊りながら戦う……それは難しい注文だ。スカイダンサーでもなきゃ相手にすらならねぇだろうな。だがラヴ様はここにいる。もちろん、勝つために。分かるかよ、つまりは勝つためのプランがあるってことだ。ラブ様スマイルを見せると愉快な仲間は刻々と頷いた。
　そのプランは何かだと？　そいつは──隕石だ。例えそこがキマフュだろうとSSWだろうとカクリヨだろうと、隕石は平等に降る。まあ少数点以下にゼロがちょいと並びはするが、隕石が降ってきてテメエにぶち当たりラヴ様が勝つ確率はゼロじゃねぇ。ゼロじゃねぇ以上ラヴ様が賭けるには十分だ。
　もちろんただ運に任せるわけじゃねぇ、ラブ様には奇跡の力ユーベルコードがある。分かるかよ、確率を上げる手段があるってことだ。創作ダンスを踊ることで運命力をあげるんだ。ラブ様１人じゃ微々たるもんかもしれないが、お前達の力も加算すれば運命も必然となると思わないか？
　おっと、オリジン様のお帰りだ。円を囲むように踊っていた愉快な仲間達がざっと割れオリジンを中心へと誘いこむ。そこはオリジンの為の特設ステージだ、自分中心の奴がこれに乗らない筈はねぇ。
　さあいくぜ、唸れヒロインパワー！　再生力が続く限り、ひたすら踊る！　攻撃なんて必要ねぇ、隕石が当たれば一撃で勝つんだからな！

大成功 🔵​🔵​🔵​

「あぁんっ……暑いですわ……」
　モアナ・ティアレ（海花姫・f26952）は抜群のスタイルを魅せつけながら、吐息混じりに色っぽくつぶやいた。身を包むサンバの衣装は布面積が少なく惜しげもなく肌を晒している。セイレーン、美しき水の精霊たるモアナのその姿は多くの者の目を惹きつけてやまないだろう。
　その美しき精霊が腰をくねらせお尻を振りながら踊っている。そのリズムに合わせて豊かな胸も弾み踊る。その姿に見惚れない者は極少数派であろう。その少数派であるオウガ・オリジンは自らの想像で生み出したダンスパートナーと踊っている。
　オリジン達のダンスがソロパートに入った隙きを突き、モアナはダンスパートナーに近付くとその腕を取りむにっと胸を押し付けた。しかし、ダンスパートナーもさるもの、モアナのその動きに即座に対応してくる。
「無敵のダンスパートナーが普通、誘惑されるはずないですわ♪」
　動かれる前にオリジンにモアナがそう微笑めば、オリジンも邪魔をするわけにはいかない。ここで強引に奪い返せばダンスパートナーが誘惑に負ける可能性を自ら認めたことになるからだ。
　モアナの情熱的で妖艶な、抜群のスタイルと美貌をいかしたお色気ダンス。ダンスパートナーを誘惑しているように見せかけて、その実オリジンに見せつけている。シルエットのような黒い顔からは表情は窺い知れないが、その雰囲気からオリジンがモアナの胸を注視しているのは感じ取れた。時折振り付けに混ぜる形でオリジンは自分の胸をペタペタと確かめている。
　オリジンのそんな姿を認めたモアナがダンスパートナーの首に腕を回す。
『あ』
　その瞬間にダンスパートナーは消え失せた。奪われるくらいならいっそと思ったのか、或いは水精霊の誘惑はオリジンすら魅了したのか。モアナがオリジンに近付き色っぽく微笑みながらその手を取れば特に抵抗はない。どうやら後者のようだ。
「ごちそうさまですわ♪」
　モアナはオリジンと情熱的に踊りその生命力を吸収するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ダンスバトルだね。ＵＤＣアースのダンスアクションゲームで鍛えたダンスを見せてあげるよ」
　アリス・フォーサイス（好奇心豊かな情報妖精・f01022）は動画撮影用ドローンを展開しながら自信満々に言い放った。筐体に映るキャラの振り付けに合わせて踊るそのゲームの最高難易度でフルコンボを達成できるその実力が自信を裏付けていた。
　そして、グッドナイス・ブレイヴァー。動画撮影用ドローンにより生配信することで、その視聴者からの応援を力に変えるユーベルコードだ。優勢でも劣勢でもアリスの動きは洗練されていく。なによりオリジンは動画映えという概念がないらしく、その踊りは超絶技巧でありながらどこか古臭いものであった。負ける道理はないように思われた。
「躍りを止めると負けのサドンデスなんでしょ？　常に強化され続けるぼくに勝てるかな」
　更にアリスはオリジンを煽り自らに注意を向けることで愉快な仲間達が避難する隙を作り出していた。これでオリジンのユーベルコードに愉快な仲間達が巻き込まれることは無いだろう。
　そして、その時は訪れた。オリジンの攻撃によりアリスに鉛の靴が装着される。そのあまりの重さに思わず転ぶアリス。だが、アリスにとってはこれも“お話をより美味しくするためのスパイス”でしかない。
　難易度アップの演出と共に鉛の靴をアップし、そのままカメラを上に向け空に浮かぶギロチンを移す。途端に熱をあげる視聴者からの応援が、アリスの衣装をより最適化していく。鉛の靴すらもアリスの踊りを彩るダンスシューズへとパワーアップしていた。こうなればもはや空から降り注ぐギロチンも、アリスにとってはただのステージギミックでしかない。
　そんなアリスに気を取られたオリジンをギロチンが貫き血の花が咲く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「暑さに耐えつつのダンス、ですかぁ。難しいですが、何とかやってみますねぇ」
　そんなことを言いつつもその身を玄武岩質のマグマに変異していく夢ヶ枝・るこる（豊饒の使徒・夢・f10980）。如何に気温が高いといってもそれは人間の体温を基準とした暑さだ、マグマの熱とは比べるまでもない。40度超えなど涼しいものだった。
「『大いなる豊饒の女神、その象徴せし欠片の一つを我が身へ』」
　そして、その変異を可能とするユーベルコード万華は変異したモノの特性すらも使用可能であった。ダンスの振り付けで腕を振る度に飛沫が飛び、脚を踏み込む度に噴火の如くマグマが噴射される。
　さらにそれだけでは終わらない。るこるは浮遊砲台と浮遊戦輪も展開しており、それらがダンスのリズムに合わせて砲撃の雨を降らせ戦輪が空を走る。
　イマジナリー・ダンスパートナーはオリジンを守ることで精一杯だ。如何に無敵のダンスパートナーといえども、自然災害までは想定していない。オリジンの無敵のイメージに罅が入る。ダンスパートナーの四肢が戦輪に斬り裂かれ、砲撃の雨に消えていくそして、守る者がいなくなったオリジンを噴石が飲み込んでいくのだった。
　こうして、オリジンは消滅した。オリジンの消滅に伴い特殊なガスも晴れていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2020年08月23日