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迷宮災厄戦㉔～feat.エメラルド

作者：ゆうきつかさ

●アリスラビリンス
「ぐぬぬ、猟書家どもめ。わたしから現実改変ユーベルコードの力を奪って、好き勝手にしおって！　だが、わたしに力が戻り始めたという事は、猟書家の誰かが命を落としたという事か。ならば、こちらも都合がいい。取り戻した現実改変ユーベルコードの力を使うとするか。まずは邪魔な猟兵達を蹴散らし、その後に猟書家どもを血祭りにあげてやる……！」
　『オウガ・オリジン』が邪悪な笑みを浮かべ、現実改変ユーベルコードの力と、無限の想像力でプリンセス・エメラルドに変身した。
「私はプリンセス・エメラルド。クリスタリアンの最長老であり、侵略蔵書『帝国継承規約』を持つ者……」
　それは外見だけでなく、口調や思考も完全にオリジナルそのものだった。

●ガジルからの依頼
「みんなに頼みたい事があるんだよ」
　ガジル・コリアンダー（キマイラのスカイダンサー・f00907）が真剣な表情を浮かべ、今回の依頼を説明した。
　今回の目的は、『オウガ・オリジン』を倒す事。
　ただし、オウガ・オリジンは宝石だけで構成された国におり、猟書家のひとりであるプリンセス・エメラルドの変身しているようだ。
　プリンセス・エメラルドに変身している間は、本人そのもの、
　彼女と同じ外見と口調と思考を持ち、侵略蔵書『帝国継承規約』と、対象を透明化する能力で猟兵達に戦いを挑んでくるようだ。
　そう言った事を踏まえた上で、オウガ・オリジンを倒す事が今回の目的である。

第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』エメラルド』

POW   :    プリンセス・エメラルド号 自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。 SPD   :    侵略蔵書「帝国継承規約」 自身の身長の2倍の【皇帝乗騎（インペリアル・ヴィークル）】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。 WIZ   :    クリスタライズ・オリジナル 自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100ｍ以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。 イラスト：鶸 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●宝石だけで構成された国
　そこはまるで、宝石箱。
　花や木も草も、すべて宝石。
　それがキラキラと輝き、まるでプリンセス・エメラルドを讃えているようだった。
　その場所でエメラルドは優雅に踊り、美しい歌声を響かせていた。
「まるで御伽噺のエルファバ。緑の魔女かしら。御機嫌よう、とっても綺麗なエメラルドね！」
　安寧・肆号（4番目の人形・f18025）が、丁寧に挨拶をした。
「あらあら、これは、これは、遠路遥々ご苦労様。わざわざ、こんな場所まで来るなんて……。でも、残念。実に残念なお知らせです。あなた達の命は、ここまで……。あなた達に明日は来ません。……ですが、何も悲しむ事はありませんよ。これほど、あなた達にとって、相応しい死に場所なんてありませんから……」
　エメラルドが御機嫌な様子で、さらりと答えを返した。
　それは『オウガ・オリジン』が変身した姿であったが、そう錯覚してしまう程の完全再現。
　そのため、変身したというより、まるで双子。
　外見だけでなく、中身まで再現されているような感じであった。
「これは、また……変身してはならんもになってしまったのー」
　メイスン・ドットハック（ウィザード級ハッカー（引き籠り）・f03092）が、O-Ⅶ型機動強襲用二足歩行戦車「KIYOMORI」に搭乗したまま、深い溜息を漏らした。
　オウガ・オリジンが、どのような意図で、エメラルドの姿に変身したのか分からない。
　だが、何の考えもなしに、わざわざエメラルドの姿になった訳では無いだろう。
「一体、何を恐れているんですか？　ひょっとして、この姿でスターシップワールドを滅ぼすと思っているのですか？　でしたら、心配ありません。あなた達に明日はないのですから……。自分がいなくなった後の世界を心配する必要なんてないでしょう？」
　エメラルドが猟兵達を見つめて、クスクスと笑った。
「どうやら、思考まで同じようですね。そうなると、アリスラビリンスだけでなく、私の故郷にまで魔手を伸ばしてくる可能性も高いという事……。そんな事になれば、それこそ取り返しのつかない事態になってしまいます。二つの世界の安寧の為、何としてもここで討たねばなりませんね」
　トリテレイア・ゼロナイン（紛い物の機械騎士・f04141）が機械飛竜に飛び乗り、警戒心をあらわにした。
「何も恐れる事はありません。あなた達は、ここで終わりなのですから……。それでも、無駄な抵抗をするのであれば、容赦はしません。障害は排除する。ただ、それだけです」
　エメラルドが猟兵達を見つめ、不気味な笑みを浮かべた。
「うわっ……。この時点で、嫌な予感しかしねえ。……たくっ！　わざわざプリンセスに変身するなんて、どんな嫌がらせだよ」
　雪・兼光（ブラスターガンナー・f14765）が、ゲンナリとした表情を浮かべた。
　以前の依頼で本物のエメラルドと戦った事があるためか、その時の事が蘇って、嫌な汗が溢れ出した。
「つまりオウガ・オリジンであり、プリンセス・エメラルドでもあるという訳か。どちらにせよ、敵ならば倒そう」
　テリブル・カトラリー（女人型ウォーマシン・f04808）が、覚悟を決めた様子でエメラルドの前に陣取った。
「随分と強気のようですね。……ですが、そんな事をしても、ただ死に急ぐだけ。わざわざ自分の首に紐を巻いて、『殺してくれ！』と叫んでいるようなモノです。もちろん、その願いは叶えて上げますが、そう急かさないでください。こちらにも準備がありますので……」
　エメラルドが含みのある笑みを浮かべ、侵略蔵書『帝国継承規約』をめくり、自らの身長の2倍ほどの大きさがある皇帝乗騎（インペリアル・ヴィークル）を召喚して飛び乗った。
　それと同時にインペリアル・ヴィークルが猟兵達を威嚇するようにして、ケモノのような咆哮を響かせた。
「これまた物騒なモノを召喚したようじゃのー」
　すぐさま、メイスンが電脳魔術によるホログラムアバターを出しながら、「KIYOMORI」のAI制御で未来予測及び分析をしつつ、自身は電脳魔術で皇帝乗騎のハッキングを行い、解析及び行動の阻害を行った。
　その影響でインペリアル・ヴィークルが落ち着かない様子で、ソワソワとし始めた。
「一体、何が起こっているの！　普段なら、こんな事はないのに……」
　エメラルドが信じられない様子で、インペリアル・ヴィークルを必死に撫でた。
　しかし、インペリアル・ヴィークルは酷く興奮しており、エメラルドの命令をまったく聞こうとしなかった。
「いくぜ、ぷり……いや、オウガ・オリジン！」
　その隙をつくようにして、兼光が第六感と見切りで警戒しつつ、エメラルド達を狙い撃った。
「ちょっと、待って！」
　エメラルドが慌てた様子で悲鳴を上げたが、兼光は決して退こうとしない。
　それどころか、ありったけの弾丸を、エルラルドめがけてブチ込んだ。
「ひょっとして、言う事を聞かなくなっているのか？　滅んだ皇帝の武器に頼るけー、こんな事になるんじゃー」
　それに合わせて、メイスンが【迷宮主の領域に踏み込みし権能（オーバー・ジェネシス・ダンジョンロード）】を発動させ、皇帝乗騎のハッキングデータを元にして、アメジストの力で創造した自身の劣化コピーに指示を出し、エンジン系を暴走させた。
「えっ？　あ、ちょっ！」
　その影響で、皇帝乗騎が暴れ馬の如く荒れ狂い、エメラルドが激しく揺れ、振り落とされそうになっていた。
　それでも、皇帝乗騎はまったく気にせず、狂ったように何度も飛び跳ねた。
「さっきまでの威勢は、どうした！　俺達の人生を終わらせるんじゃなかったのか！」
　兼光が旅行鞄で身を守りつつ、近距離から零距離攻撃を仕掛け、クイックドロウで熱線銃（ブラスター）を乱れ撃った。
　それと同時に、メイスンがエメラルドを狙って、ミサイルや榴弾による集中爆撃を仕掛けた。
「きゃあ！」
　そのため、エメラルドは成す術もなく、皇帝乗騎から振り落とされ、キラキラと輝く岩場の陰で、一人悲しくリバースした。
　そんなエメラルドの気持ちを無視して、皇帝乗騎が狂ったように飛び跳ねながら、宝石の森に消えていった。
「い、今のはナシで……。次からが本番です」
　エメラルドが口元を拭いながら、それを誤魔化すようにして指をパチンと鳴らした。
　その呼びかけに応えるようにして、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号が、上空に姿をあらわした。
「……これは私のサイキックエナジーを糧にして動く船。命乞いをするのであれば、今しかありませんよ？　そうすれば、苦しまずに殺して差し上げましょう。……と言うか、死んでください。私の黒歴史と共に！」
　エメラルドが先程の出来事を黒歴史ボックスに放り込み、すべてを無かった事にするため、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号に指示を出した。
　その指示に従って、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号から、エメラルド色の破壊光線が雨の如く降り注いだ。
　それは猟兵だけでなく、エメラルドを除いた、ありとあらゆるものに降り注いだ。
「ほんの少しだけでいい。耐えてみせろ！」
　即座に、テリブルが超重金属のシールドに武器改造で、反射コーティングを施し、エメラルド色の破壊光線を弾き、そのまま滑り込むようにして巨大な宝石の後ろに身を隠し、森羅万象断（ザンカントウ）を発動させた。
　次の瞬間、無敵の浮遊騎乗アームドフォートと、無敵斬艦刀を想像から創造し、エメラルドに攻撃を仕掛ける準備を整えた。
「ならば、この装備の出番ですね」
　その間に、トリテレイアが機械飛竜に騎乗したまま、砲撃の射線を見切り、砲火をかわしつつ、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号の直上に飛翔した。
　それに合わせて、テリブルが騎乗アームドフォートの腹で光線を弾き、回転と怪力で振り回した斬艦刀の刀身を伸ばし、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号を薙ぎ払い、エメラルドに衝突させた。
「ぐぎゃ！」
　その途端、エメラルドが間の抜けた声を上げ、前のめりに倒れ込んだ。
「……」
　それと同時に、トリテレイアが【航宙戦対応型合体ロボット『ブローディア』転送（コーリング・ブローディア）】を発動させ、合体操作型の騎士型ロボを召喚して騎乗した。
「ま、まだ、死ぬ訳には……」
　エメラルドが自らのサイキックエナジーを糧に、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号を操り、ブローディアごとトリテレイアを狙い撃とうとした。
　だが、トリテレイアに迷いはなかった。
　重質量大型シールドを構えたまま、砲台を足場代わりにして飛び上がり、戦艦を勢いよく踏みつけて着地した。
　次の瞬間、宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号から、エメラルド色の破壊光線が放たれたが、即座に重質量大型シールドで防ぎ、儀礼用長剣・警護用（対光線兵器反射コーティング処理採用）で串刺しにするようにして、戦艦動力部に繋がる大穴を開け、格納銃器で乱れ撃った。
「対艦砲展開、目標、オウガ・オリジン……発射！」
　その間に、テリブルが無敵の騎乗アームドフォートを変形させ、エメラルドを狙って砲撃を行った。
　それと同時に、トリテレイアがブローディアから飛び降り、爆発した宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号の黒煙を纏うようにしながら、儀礼用長剣・警護用をエメラルドめがけて振り下ろした。
「こ、このままでは……！」
　その事に危機感を覚えたエメラルドが、傷ついた身体を庇いながら、自分自身を透明化させた。
「……無駄よ」
　すぐさま、肆号がワルツカードの弾幕を一斉に放ち、第六感を研ぎ澄ませて、エメラルドの居場所を特定すると、【「薔薇は赤い」（ローゼス・アー・レッド）】でペンキを掛けた。
　そのペンキは独特なニオイを発しており、エメラルドが何処に隠れても分かるほどだった。
　その上、地面に落ちたペンキから、赤いペンキがかかった白バラが咲き乱れた。
「そろそろ覚悟が出来た頃かしら。まあ、覚悟が出来ていなくても、関係がないのだけれど……。悪い魔女は、魔女狩で終わりを迎えるのよ」
　次の瞬間、肆号が白バラの花道を一気に駆け抜け、革命剣で力任せにエメラルドを串刺しにした。
「くっ！　ぐわあああああああああああああああああああああ！」
　エメラルドが醜く表情を歪ませ、断末魔を響かせた。
　それはエメラルドであり、オウガ・オリジンであり、その両方。
　ふたつの存在が混ざり合うようにしながら、弾け飛ぶようにして消滅した。
　そんな中、宝石の森に消えた皇帝乗騎の嘶きが響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2020年08月20日