迷宮災厄戦㉕〜氷を統べる書架の王
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アリスラビリンス『迷宮災厄戦(ラビリンス・オウガ・ウォー)』も佳境へと入っている。
すでに、猟兵達はオウガ・オリジンとも交戦を開始しており、猟書家も数人が倒れている。
だが、まだ時間凍結城にいるそいつは、健在だ。
「来たな、『六番目の猟兵達』よ」
城に到達した猟兵達はその城内、玉座の間において、背に氷の翼を生やすその男性……書架の王『ブックドミネーター』と相まみえる。
「改めて、群竜大陸での戦い、見事だった」
氷の座椅子に座って拍手していたそいつは、ゆっくりと立ち上がった。
このアリスラビリンスにいながらも、ブックドミネーターはアックス&ウィザーズのことを知っている。
猟兵達も質問したいとこは山ほどあるが、彼はのらりくらりとそれらの問いを躱して。
「アックス&ウィザーズの知られざる大陸、天上界……」
ブックドミネーターが言うには、そこはヴァルギリオスに封印された美しき天の牢獄とのこと。
そこに自らの求める答えがあると確信し、彼は自ら攻め込もうとしている。
「さて、オウガ・オリジンでなく、私の元に来たということは、だ」
他の猟書家と違い、全ての書を司るブックドミネーター。
敢えてここに姿を現した猟兵達は、彼の侵攻を食い止めるべくここにいるということを示している。
「ならば、私も全力で抗わせてもらおう」
氷から作り出される鳥や魚、獣。そして、自らの体を凍り付かせ、力を高めるブックドミネーター。おそらく、無制限に体力を回復する力もあるはず。倒すなら一気に仕掛けねば、勝機はない。
「ゆめゆめ油断せぬ事だ。私は強いぞ」
凍てつくような鋭い視線を向け、ブックドミネーターは刹那の間に猟兵達へと近づいてくるのである……。
なちゅい
猟兵の皆様、こんにちは。なちゅいです。
当シナリオを目にしていただき、ありがとうございます。
アリスラビリンス、戦争シナリオへの参加を願います。
『迷宮災厄戦』、及び戦争マップについては以下のURLのページをご参照くださいませ。
(https://tw6.jp/html/world/event/014war/014_setumei.htm)
こちらのシナリオは1章構成、猟書家『ブックドミネーター』とのボス戦です。
絶対零度の凍結世界で、ブックドミネーターと戦います。
敵は必ずユーベルコードで先制攻撃を仕掛けてきますが、その先制攻撃ユーベルコードに対処する方法を講じて頂くことでプレイングボーナスが付きます。
●執筆予定について
今回の戦争は、依頼の総本数が命運を分けると現状把握しております。
その為、4~5人ほど集まった地点で執筆予定を組みます。1依頼当たり、6名様程度の執筆を想定しております。
(目安は規定人数が揃ったタイミングから1日以内の執筆を目指します)
当シナリオのご参加が10人を超えても全員執筆は目指しますが、できれば、別シナリオに協力していただけると幸いです。
(どうしても該当依頼に参加したいという方は大歓迎です。それはそれですごく嬉しいです……!)
シナリオの運営状況はマイページ、またはツイッターでお知らせいたします。
それでは、行ってらっしゃいませ。
第1章 ボス戦
『猟書家『ブックドミネーター』』
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POW : 「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : 時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。
イラスト:108
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
(18日20時追記)
19日0時までに追加参加者がない場合、執筆を開始します。
なお、現状クリアーには届きませんので、参加受付は続行いたします。
卜二一・クロノ
神のパーラーメイド×精霊術士、22歳の女です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、敵には「神(我、汝、~である、だ、~であろう、~であるか?)」です。
時間の流れを停滞させたり逆転させたりといった技を使う相手には容赦しません。
光陰の矢は、先制攻撃対応のユーベルコードです。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
WIZだから治療をしてくるのね。
ならその時間を活かしてこちらは詠唱を。
そして相手の行動が変わる瞬間をとらえてユーベルコード【ブルーインフェルノ】
詠唱に応じて威力が上がるプラズマで焼き払ってあげるわ。
「貴方の治癒と私の攻撃、どちらが重いか試してあげるわ!」
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アリスラビリンス、時間凍結城。
この地へと現れたのは、2人の猟兵。
「時を凍らせる……時を乱す存在を、私は赦さない」
時間の干渉を受けない極寒の地を故郷に持つ黒い瞳に黒い髪の女性、卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)にとって、すでに幾度か相まみえている相手。
それでもなお、トニーには存在していることが許されないのか、こうしてまた氷の翼を生やす青髪の青年の姿をした書架の王の元へとやってくる。
「来たな、『六番目の猟兵達』よ」
だが、ブックドミネーターはその全てのトニーとの出会いを覚えてはいない。
彼はこの生において、アックス&ウィザーズへの侵攻の糸口をつかみ取ろうとしている。それ以外は些細なことなのかもしれない。
「私も全力で抗わせてもらおう」
全身、時間凍結氷結晶で覆っていく相手に、希望の宝珠のヤドリガミであるヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は皮肉めいた笑みを浮かべつつ。
「全てを焼き尽くす星界の炎よ……」
敵の出方を注視しながら、詠唱を始めていたのだった。
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全身を時間凍結氷結晶で覆っていく書架の王ブックドミネーター。
「……素手でお相手しよう」
この場はユーベルコードを使い、猟書家として氷を操る敵は素早く飛翔し、トニーへと襲い来る。
だが、すでにトニーも対策済み。
相手がユーベルコードを使って特攻してくるなら、トニーもユーベルコードで対して。
「これは神罰ね」
一度その神罰がブックドミネーターへと命中すれば、敵のユーベルコードは……ブックドミネーターの体を覆っていた時間凍結氷結晶は形を変えていく。
「ぐっ、これは……」
気づけば、光陰の矢へと変形し、彼自身の胸部を穿っていた。
「ならば、一度態勢を立て直そう」
ブックドミネーターは時間凍結によって、零時間詠唱を自分だけに聞かせることで胸部の傷を塞いでしまう。
(「治療してくるのは想定内よ」)
ヴィオレッタはその時間を活かし、詠唱を続ける。
「この程度なら問題ない。傷すら残らないよ」
程なくして、敵が視線をヴィオレッタへと向けてくると、彼女はすぐさま攻撃を開始する。
「……ブルー・インフェルノ!」
たっぷり詠唱時間は確保したヴィオレッタは、蒼炎属性の電離プラズマを放射する。
「貴方の治癒と私の攻撃、どちらが重いか試してあげるわ!」
空中を書ける青い閃光。傷を塞いだブックドミネーターは氷を纏わせた槍を突き出そうとしていたのだが。
「その挑戦、受けてやろうではないか」
敢えて再び詠唱する敵。しばらく、ヴィオレッタのブルー・インフェルノを受けるブックドミネーターの時間凍結がせめぎ合う。
だが、詠唱時間充分のヴィオレッタの一撃が一気にブックドミネーターの体を貫き、焼き払っていく。
「……やるではないか」
だが、強大な力を持つ敵を倒しきるには至らない。
ほぼ全力を使ったヴィオレッタを、改めて槍を手にしたブックドミネーターが素早く突き刺して傷つけていくと、彼はさらにトニーへと攻め入る。
トニーも再び神罰を与えようとするが、今度は敵もさらりと躱して。
「それはもう見切ったよ」
再び時間凍結氷結晶で全身を覆ったブックドミネーターは加速し、その前にトニーを槍で穿つ。
「ううっ……」
「さすが、書架の王と言ったところかしら……?」
有効打こそ与えながらも、トニー、ヴィオレッタもまた傷を負い、戦線を離脱するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ヴォルクルス・ブラックエッジ
コンビ名:獅子と鴉
レオンハルト(f23015)と
相方のUCが発動した後で攻撃開始<先制対策
「…行くぞ、相棒」<左手をかざす
『あいよ!オイラ達の本気、アイツに見せてやろうぜ!』<槍変化
その後、黒剣と竜槍を手に突撃
-戦友が作った隙、無駄にはしない!<突撃時の心の声
2回攻撃、生命力吸収、呪詛、鎧無視攻撃で一点集中攻撃で傷を作り
(UC以外の)敵の反撃にはそれぞれの【~耐性】とオーラ防御で耐える
第六感と戦闘知識を駆使し、危険な攻撃が来る前に傷を串刺してUC発動
『喰らえ!オイラの全開パワー!!』
ファング『…テメェの面見た時、少し思い出したんだよ。
オイラが創られた理由がな!-竜を討つモノ!それがオイラだ!』
レオンハルト・ヴァイスレーベ
コンビ名:鴉と獅子
ヴォルクルス(f22576)と
戦闘前にリミッター解除
敵の先制攻撃からかばう感じでUCを使用
他の攻撃に対しては、
オーラ防御や武器受けからのカウンターを駆使しつつ守りに徹する
(人を惹きつける様な、澄んだ鈴の音の声で)
「ボクが皆の盾になります!その間に奴を-!」
あくまで盾役なので、攻撃は相方や他の猟兵に一任
(防御時、誓いの剣と希望の灯光とを眼前に翳しつつ吼える)
「-あの日ボクは剣に誓った!故国を取り戻すと!
そして、この剣(希望の灯光)から力を授かった!
-猟兵として世界を救う。それがボクの歩む道!」
UCが解除され、動けるようになったら
己を鼓舞し勇気を奮い立たせて捨て身の一撃
天星・零
【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡】をし、戦況、地形、弱点死角を把握し、敵の行動を予測し柔軟に対応
防御は【オーラ防御】で霊力の壁を作って防御
先制は上記技能を駆使しいつ使われてもいい様に把握しておき、十の死の感電死、毒死、凍死の骸などで状態異常を狙う
万が一の為【第六感】も働かせる
遠距離は十の死とグレイヴ・ロウで戦況により対応
近接はØ
『あまり、争い事は好きではないんです。出来れば貴方とも争いたくはないんですがね。』
指定UCを発動し強化、回復効果のプラス効果を反転する霧を戦場全体に
零時間を使ってもダメージ、POWの効果が残っていれば弱体効果にもなる
アリステル・ブルー
彼が噂に聞く王様か。自分を治療するという事は一撃で決めなきゃまずいね…
まずは回避に専念。そうだね…もし必要なら仲間の盾になってもいいよ、それが勝利に繋がるのならば!
オーラを纏って敵を良く観察し情報を集め、第六感を信じてダッシュも使って攻撃を見切る
躱せなかったものは黒の細剣で受け、氷結激痛耐性で耐えるよ
大丈夫。僕たちはまだ立てる、戦えるって鼓舞しながら!
ここで負ける訳にはいかないんだ
使い魔を呼ぶね
さぁユール、反撃の時間だよ!
友の援護に期待しながら、旅の記録を手に、本に込められた全ての力を使うよ
僕の全部をUCの詠唱に乗せる
高速で詠唱するそれを多重に重ねて
どうか青い鳥が幸運を運びますようにと祈って
露木・鬼燈
格闘戦だけなら格上相手でもどーとでもなる。
でも時間凍結氷結晶?
あれは厄介だね。
きっと触れないほうがいいやつなのです。
さて…どうしたものだろうね。
まずは生体装甲を展開して備えよう。
リアクティブアーマーとして炸裂させれば1回は何とかなるはず。
いい手が思いつくまでは回避に専念し、動きを学習して見切る。
衝撃波を撃ち出して攻撃を逸らすなんてのもいいかもね。
んー、攻撃は通らないか。
手詰まりな時は賭けに出ることも必要ってね。
オブリビオンは穢れ、ならあの結晶も穢れとして祓える。
イケルイケル!
<隠忍の見えざる手>で生成した念動手を一本に収束。
破魔と浄化の力で染め上げ右手に重ねる。
後はカウンターでぶん殴るっぽい!
卜二一・クロノ
アドリブ連携歓迎
この圧倒的な力量差。
認めよう。格の違いは認めよう。
だが、我は一人ではない。
時間操作者一掃の大願は故郷の他の者が受け継ごうし、
この者を放逐することもこの場の誰かが行おう。
我はその為の礎になることとて吝かではない。
咎人よ、目的があるならば語るがいい。
命を懸けるは、破れし時に意志を継ぐ者がいてこそなし得るもの。
目的が共感に能うならば、余人が受け継ぐこともあろう。
心情通り、守りを捨てて、【カウンター】による【捨て身の一撃】で一矢報います。
その際は「神罰・時間操作の代償」を使用。
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時間凍結城、王座の間で繰り広げられるブックドミネーターとの交戦はすぐに、第2ラウンドがスタートする。
2人が退いた直後、新たな5人の猟兵が駆けつけてきたからだ。
「彼が噂に聞く王様か」
赤茶色の髪をポニーテールとしたアリステル・ブルー(人狼のクレリック・f27826)は先程の戦いを見て、ブックドミネーターが自らを治療する能力を持つことを再確認して。
「一撃で決めなきゃまずいね……」
アリステルの言葉に、金髪に中性的な顔をした少年、天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)も小さく頷く。
「格闘戦だけなら格上相手でもどーとでもなる。でも、時間凍結氷結晶? あれは厄介だね」
橙の髪の額から1本の小さな黒い角を生やす露木・鬼燈(竜喰・f01316)もまた、敵の能力にきっと触れない方がいいやつだと難色を示して。
「さて……どうしたものだろうね」
しかしながら、ブックドミネーターは攻略の為の思考の暇さえ、猟兵達に与えてはくれない。
「新たな猟兵か」
彼は再び全身を時間凍結氷結晶で覆って。
「ゆめゆめ油断せぬ事だ。私は強いぞ」
飛び出してくる敵に対し、チーム【獅子と鴉】としてコンビを組む男性2人が対する。
敵の攻撃を防ぐべく【リミッターを解除】して身構えるのは、『白獅子』を紋章として掲げる聖騎士、レオンハルト・ヴァイスレーベ(白獅子の聖騎士・f23015)。
そして、迎撃に当たるのは、全身を漆黒の鎧で身を包むヴォルクルス・ブラックエッジ(黒鴉の黒竜騎士・f22576)だ。
「……行くぞ、相棒」
『あいよ! オイラ達の本気、アイツに見せてやろうぜ!』
ヴォルクルスが左手を翳すと相棒であるミニ竜ファングが『聖銀の槍』に変身した。
左手にその槍を、そして右手に黒剣『ブラッドサッカー』を握り、ヴォルクルスは攻め来る敵へと突撃していくのである。
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時間凍結氷結晶でその身を覆い、氷の翼を羽ばたかせて飛翔してくるブックドミネーター。
一気に加速し、槍で穿とうとしてくるそいつの前に、レオンハルトが【オーラ防御】を展開して立ち塞がる。
「ボクが皆の盾になります! その間に奴を――!」
ユーベルコード【無敵城塞】によって全身を超防御モードへと変えた彼は、人を惹きつける澄んだ鈴の音のような声で後続の仲間達へと呼び掛けた。
「私を抑えられると思ってか?」
鼻で笑いながらも、ブックドミネーターはレオンハルトの護りを貫かんと槍を突き出す。
対し、『誓いの剣』と『希望の灯光』をレオンハルトは眼前に翳す。
交錯する槍と剣。その瞬間、レオンハルトは敵の槍を【誓いの剣で受け止める】。
(「――戦友が作った隙、無駄にはしない!」)
その瞬間、ヴォルクルスが攻撃に出て、黒剣と槍による【2回攻撃】を繰り出す。
【呪詛】と【生命力吸収】の力を籠め、【相手の護りを崩して】できる限りダメージを与えるべく、胸部を狙った一点集中攻撃。
レオンハルトが相手の攻撃を抑える中、ヴォルクルスはブックドミネーターへと風穴を穿つ。
「まだだよ」
だが、敵の飛翔能力は高く、レオンハルトのガードが間に合わぬ速さでヴォルクルスの鎧に全てが凍り付く斬撃を浴びせかける。
ヴォルクルスとて、初撃で倒せるとは思ってはいない。
【氷結耐性】と【オーラ防御】でその攻撃を凌ぎ、次なる攻撃のタイミングを計る。
そこで、鬼燈も前に出て、『生体積層装甲』を展開しつつ自ら敵の初撃を防ぎに向かう。
まずは敵の攻撃を回避しながらも、1度はリアクティブアーマーとして炸裂させ、相手の槍が命中するのを防ぐ。
飛翔し、攻め来るその槍は凍気を伴い、直接触れずとも耐性が無ければそれだけで凍ってしまいかねない。
ブックドミネーターの槍を避けながらも、鬼燈は試しにと『魔剣オルトリンデ』から【衝撃波】を撃ち出すのだが、敵は蒼氷復活も合わせて使い、空中に現したサメのオブリビオンを盾とし、直接の被害を防ぐ。
「んー、攻撃は通らないか」
サメは空中で瞬時に散り散りの氷と化すが、ブックドミネーターに当たらないのでは意味がないと、鬼燈は攻め手に欠けると考えていたようだ。
一撃で即死級の大ダメージを与えねば、相手は【時間凍結】ですぐ回復してしまう。
アリステルもまた前に出ていた。
仲間が態勢を整える間などは彼がブックドミネーターの引き付けに当たって。
「……これが勝利に繋がるのならば!」
盾にならんとするメンバーは多いが、アリステルもまた【オーラ】を纏い、敵の攻撃の回避に専念する。
ただ避けるだけでなく、アリステルは敵をよく観察して攻撃のクセ、パターンなどの情報を集める。
状況によっては敵をギリギリまで引き付け、【第六感】を信じて【ダッシュ】で攻撃を見切る。
(「間に合わない……!」)
それでもなお追いすがって槍を突き出すブックドミネーター。
凍てつく空気を纏って特攻してくる敵の槍を、アリステルは『黒の細剣』で受け止めて。
「大丈夫。僕たちはまだ立てる、戦える」
アリステルは自らを、仲間を鼓舞しながら戦い続ける。
例えここで勝利しても戦争はなお続く。ここで負けるわけにはいかないのだ。
零も仲間が作ってくれる隙を使い、【戦闘知識】、【世界知識】、【情報収集】、【追跡】といった戦闘に関する技能をフルで駆使し、この時間凍結城という戦場、ブックドミネーターの死角、弱点までも把握に努める。
「あまり、争い事は好きではないんです。出来れば貴方とも争いたくはないんですがね」
二重人格である零だが、今は主人格である零が前に出て、咄嗟の防御だけは怠らぬよう【オーラ】で霊力の壁を展開する。
仲間達が攻撃を引き付けてくれるのは非常にありがたい。それだけ、零が攻めるきっかけが生まれる。
城の床から十字架の墓石を現して敵の攻撃を防ぐ零は、操る骸によってさまざまな状態異常へとブックドミネーターを苛もうとする。
「それで私が倒せるとは思うまいな?」
全ての異常が効いていないはずはないが、相手もそれを悟らせない。いや、こちらに聞こえていないだけで、【時間凍結】を使って回復も行っているのかもしれない。
「この圧倒的な力量差。認めよう。格の違いは認めよう」
効果的な攻めができぬ状況の中、現れたのは、一度下がったはずの卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)だ。
すでに一度、相手の攻撃に膝をついていたトニー。しかし……。
「我は1人ではない」
時間操作者一掃の大願は故郷の他の者が受け継ぐだろうし、ブックドミネーターの討伐にしてもこの場の誰かが行うだろうと考える。
「我はその為の礎になることとて吝かではない」
何かを狙い、トニーは仲間と激しい戦いを繰り広げるブックドミネーターの前へとその身をさらしていくのである。
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激しい攻防を続ける猟兵とブックドミネーターだが、徐々に猟兵側が押されている。
衝撃波を撃ちだして敵の攻撃を逸らすなど、鬼燈も相手の攻撃をやり過ごしてはいたが、徐々にこちらの攻撃パターンが無くなってきていることを感じていて。
(「手詰まりな時は賭けに出ることも必要ってね」)
攻め手に欠けると考えるメンバー達の中、鬼燈が考えていたが、それより少し早くトニーが動き出す。
「咎人よ、目的があるならば語るがいい」
命を懸けるのは、破れし時に意志を継ぐ者がいてこそ、なし得るもの。
そう告げながら、トニーは身を投げ出すように前に出る。
仲間達が盾とならんとするが、トニーはそれを制して。
「目的が共感に能うならば、余人が受け継ぐこともあろう」
「その意気やよし。六番目の猟兵よ」
飛翔を続けるブックドミネーターは、トニー目がけて特攻する。
刹那の後、交錯する両者。
確実な致命傷を与えたのはやはりブックドミネーター。
しかし、深手を負うトニーは【カウンター】による【捨て身の一撃】をロッド状にした時間の精霊『ウロボロス』で叩きつけていた。
打撃のダメージなど、敵にとって大したことは無いが、トニーはそのタイミング、【神罰・時間操作の代償】によって敵に時間操作による副作用を与えていたのだ。
「なに……!?」
加速し、時を止めていた中、動き続けていたブックドミネーター。その反動は自らの時を減速、停止する形で現れる。
まだ時間凍結結晶を纏ったままの敵だが、鬼燈はオブリビオンが穢れであり、それらの結晶もまた穢れとして使えると判断して。
「イケルイケル!」
鬼燈は【隠忍の見えざる手】で生成した念動手を1本に収束させ、さらに【破魔】と【浄化】の力で染め上げて己の右手に重ねる。
一方、なんとかトニーのユーベルコードに抗おうとするブックドミネーターだが、その動きは先ほどまでと比べれば明らかに遅い。
「全力で殴るっぽい!」
鬼燈はその槍を躱し、【カウンター】として渾身の力で敵の体を殴りつける。
「ううっ……!」
大きく吹っ飛ぶ敵を追うアリステルは『青い鳥の使い魔ユール』を呼んで。
「さぁユール、反撃の時間だよ!」
風と蒼炎を纏ったユールは一声鳴く。
友の援護に期待しながらも、手にする『旅の記録』に籠められた全ての力を使い、アリステルは【高速詠唱】を幾重にも重ねて。
「どうか青い鳥が幸運を運びますように……」
その強い願いはユールに力を与え、一直線に……ブックドミネーターの元へと飛び、その身体を貫く。
「ぐはっ……!」
血を吐くブックドミネーターだが、まだ仕留め切れてはいない。
倒さねば猟兵側がジリ損となるのは必至。そう思いきや、零がいつの間にか戦場である王座の間に濃霧を放っていて。
「回復などさせません」
零が展開する濃霧は、回復強化を負傷弱体へと反転させる効果を持つ。
近距離に迫った零は虚空から片手刃程の刃物『Ø』を取り出し、敵の体を切りつけていく。
「終わらせは、しない……!」
強引に自らの枷を解き、槍を振るって迎撃しようとするブックドミネーター。
そこで、無敵城塞を解いたレオンハルトが吠える。
「――あの日、ボクは剣に誓った! 故国を取り戻すと!」
「そして、この剣から力を授かった!」
【カウンター】として、『希望の灯光』を振りかざす。
「――猟兵として世界を救う。それがボクの歩む道!」
己を拳、結希を奮い立たせ、レオンハルトも両手の剣で【捨て身の一撃】を浴びせかける。
噴き出す赤い血すらもコマ送りの様に見える中、【第六感】と【戦闘知識】で好機を察したヴォルクルスが攻め入る。
『喰らえ! オイラの全開パワー!!』
ヴォルクルスが無言なまま、槍となったファングのみが叫び、仲間のつけた傷を【串刺し】にする。
『……テメェの面見た時、少し思い出したんだよ。オイラが創られた理由がな!』
それだけではない。ヴォルクルスはファングを竜の姿へと戻して。
『――竜を討つモノ! それがオイラだ!』
猛り吠えるファングがなおも猛撃を叩き込み、ブックドミネーターへと乱撃を浴びせかけ、トドメの業火を浴びせかけた。
さすがのブックドミネーターも、回復なしにこれだけの攻撃を浴びれば一溜りもなく。
「まあいい、次こそは……」
残された命を数えながら、書架の王はこの場から消えていく。
その消滅を確認した猟兵達は、まだ続く戦いに備え、ブックドミネーター討伐に多少の感慨を抱きながらもグリモアベースへと帰還していくのである。
大成功
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