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虚燭の婚礼、偽翼の誓い

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 娘は今日も花畑の手入れに勤しんでいた。
 痩せた不毛の土地にいつ咲くとも知れないその花の、芽吹きの時を待ち続け、来る日も来る日も種を蒔く。
 ――二十歳を迎えたばかりの彼女は、子供の頃に両親を亡くし、以来、唯一の肉親である兄と、ずっと二人だけで生きてきた。
 この花畑は、その両親が唯一遺した、彼女にとっての大切な場所。だから娘は希望を諦めず、毎日欠かさず畑の手入れをし続けてきた。
「よう。いつも精が出るな、ハンナ」
 不意に一人の青年が話し掛けてくる。にこやかな笑みを携えながら、親しげに接してくる彼に、ハンナと呼ばれた女性も同じように笑って言葉を返す。
「ええ、だってここはパパとママとの思い出の場所だもの。ところでセドリック、今日は何の用かしら?」
 セドリックはハンナの兄の友人で、小さい頃から彼女のことを気に掛けていた。この日もいつものようにハンナの様子を見に来たのだが、今回は少し様子が異なるようだ。
 やがてセドリックの表情から笑みが消え、真剣な面持ちになって間を置いた後、覚悟を決めたように重い口を開く。
「……ハンナは、いつまでこんな生活に耐えているつもりなんだ」
 彼らが暮らすこの村も、他と同様オブリビオンによる圧政を強いられている。
 一年前、支配に耐え切れなくなった村人たちは、領主のオブリビオンに反抗を試みた。だが結果は言うまでもなく、無残に命を落とした者たちは、領主に従う尖兵となって、見せしめ代わりに村を苦しめているといった皮肉な状況に陥っている。
「俺たちの我慢はもう限界だ。今度こそ、あの天使を騙る女を俺たちは……!」
 村を恐怖と絶望に陥れ、村人たちが救いを乞えば、救済という名の刃を振るって生命を奪い取る。あの女は自分が人々を救っていると陶酔し、悦に浸っているだけなんだ――。
 セドリックは小刻みに身体を震わせながら、拳を強く握って怒りを滲ませる。
「そんなこと言ったって……領主様には誰も敵わない。もしまた歯向かえば、次は貴方がお兄ちゃんみたいにされちゃうわ!」
 逆らうなんて無謀な行為だと、ハンナは瞳を潤ませながらセドリックに訴える。
 けれども彼の決意は揺るぎなく、もう後戻りができないほどに自身を追い詰めている。
「済まない、ハンナ。俺達にはこうするしか道は残されていないんだ。でも、もし万が一無事に帰って来れたなら……」
 セドリックはハンナの身体を抱き締めて、そして彼女の耳元で、そっと一言囁いた。
「――その時は、俺と結婚してくれないか」
 交わした誓いの約束は、まるで別れの挨拶でもあって。
 男は秘めた想いを告げた後、黙って彼女の前から立ち去っていく。残った女性の悲痛な叫びは、彼の耳にはもう届かない――。

「それで彼女――ハンナは村人たちが事を起こすより先に一人で領主の許に向かい、赦しを乞おうとしているわ」
 ノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)が予知で視た世界。
 ダークセイヴァーで圧政を敷くオブリビオンに対し、村人たちが決起する。
 ところがその前に、一人の女性が領主に会おうとしているのだという。
「彼女はきっと、領主に自分の生命を捧げることで、村を救おうと考えているようね」
 その結果、ハンナは領主によって安息の死を与えられ、代わりに魔剣で創造された彼女の偽物が、後の生活をする――つまりは、セドリックと結婚することになる。
「そうして全てが丸く収まって、めでたしめでたし……というわけにはいかないわよね」
 そんな押し付けられたような偽りの結婚生活が、上手くいくとは到底思えない。
 何よりも、救済と称して村人たちを支配する、オブリビオンの卑劣な行為に猟兵たちは憤りを隠せない。
「今から急いで駆け付けたとしても、彼女を救出できるかどうかは、五分と五分、ね」
 こちらが向かう頃には領主はハンナを館の中に迎え入れている。ただし彼女をすぐに殺してしまうことはなさそうだ。
 館は教会のような造りになっていて、ハンナが救いを求めに来たことで、警備は手薄になって開かれている。その僅かな時間の隙を突き、猟兵たちは館に乗り込むことになる。
 館に入るとまずは護衛の隷属戦士が待ち受けている。彼らは領主に救済されることなく殺された村人たちで、今では領主に操られる亡者のような存在だ。
 護衛を倒して二階に上がれば、領主の部屋に辿り着く。後は領主を撃破して、ハンナを救出すれば万事解決ということになる。

「ちなみに無事に終わったら、二人の『約束』が果たされるかもしれないわ。その時は、村に残って手伝っていくのも悪くはなさそうね」
 村が解放されただけでなく、若い二人の門出も祝福すれば、村にとっても新たな始まりの日の記念になるだろう。
 その為にも村を支配するオブリビオンを討ち倒し、平和な日々を取り戻すこと。
 ノエマが祈るように手を翳し、グリモアが黄昏色の光を放って猟兵たちを送り出す。
 村に希望の花が咲くことを、信じて心の中で願いつつ――。


朱乃天
 お世話になっております。朱乃天(あけの・そら)です。
 今回は村を支配しているオブリビオンの館に乗り込んで、敵の撃破を目指して頂きます。

●戦場について
 領主館は教会のような造りになっていて、ハンナが救いを求めに来たことによって警備は手薄になっています。
 1階の礼拝堂には朱殷の隷属戦士が待ち受けていて、領主は2階の部屋にいます。
 隷属戦士は安息の死を与えられることなく、領主に殺された村人たちの成れの果てですが、その中にはハンナの兄も含まれているようです。

●物語の流れ
 第一章と第二章では、それぞれ集団戦とボス戦で敵と戦います。
 第三章では、支配から解放された村で結婚式が執り行われます。
 皆様は様々なお手伝いをしながら、式を華やかに盛り上げて下さい。
 ノエマもプレイングでお誘い下されば、結婚式への参加に対応させて頂きます。

 もしも同行者様がいらっしゃる場合は、お相手の【名前】【ID】もしくは【グループ名】の記入をお願いします。
 また、シナリオへのご参加は、どの章からでも全く問題ありませんので、どうぞお気兼ねなくご参加下さいませ。

 それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしています。
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第1章 集団戦 『朱殷の隷属戦士』

POW   :    慟哭のフレイル
【闇の力と血が染付いたフレイル】が命中した対象に対し、高威力高命中の【血から滲み出る、心に直接響く犠牲者の慟哭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    血濡れの盾刃
【表面に棘を備えた盾を前面に構えての突進】による素早い一撃を放つ。また、【盾以外の武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    裏切りの弾丸
【マスケット銃より放った魔を封じる銀の弾丸】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シーザー・ゴールドマン
【POW】
ふむ、セドリック君のフラグかと思えばハンナ君の方か
今日はハッピーエンドを見たい気分なのでね。助けに向かうとしよう
戦術
ハンナ君を助ける為には時間がない速度重視だね。
『ソドムの終焉』により、射程範囲に入った敵、全てを光撃。
至近まで接近した敵に対してはオーラセイバーを振るって戦います。
その剣筋は鋭く流麗。
([2回攻撃][鎧無視攻撃][怪力][見切り])
防御面は[見切り]と[オーラ防御]に期待。

ハンナの兄を認識できれば
「哀れなものだが――妹を助ける事で君への手向けとさせて貰うよ」


ルーチェ・アズロ
気骨があるし大馬鹿だな
身に余る事は余る。子供んころ解かんなかったのかね
あたしが子供だけど、やれねーことはやんねえ

死が救済。この世界じゃしっくりくるね
支配者の完全な傀儡になっちまえばいい
何も考える必要はねえ
だがなあ

ちいと趣味が悪すぎたな

前に立ち【怪力】【なぎ払い】で範囲攻撃
【傷口をえぐる】で追加ダメージ狙い
損傷はある程度【生命力吸収2】で回復を狙う

【絶望の福音】で相手の速攻や身軽になることを予見
動きに合わせられるように動く

「よう、そこの。ハンナの兄貴か?
この襲撃が終われば妹は幸せになれんだ
もうここで迷う必要はねえんじゃねえの?」

相手が明らかな隙をみせるなら大剣で両断
あの世への道、迷うんじゃねえぞ


エン・アウァールス
▼アドリブ歓迎

▼戦闘
応援を呼ばせない+警戒態勢を取られないように、迅速に奴隷戦士の撃破を行う。敵の【盾攻撃】及び【マスケット銃の銃撃】に対して鋼糸を使用、近場の【敵を盾にして】回避。【毒使い】を生かし、棒状の毒手裏剣を【投擲】。敵の目を狙う。

▼心情
(無謀だね、どちらも。
でも 一一 幸運だ。
気づいてくれたヒトがいるからね。)

やあ。お邪魔するよ。
…へえ。その鎧、良い強度をしてるね?
自慢の鋸はお休みかな。

…あれ、キミ。領主さんの所に行ったっていう子と、同じ瞳の色なんだね。惜しむらくは、酷く濁ってしまっているってところかな。

…うん。惜しい。
綺麗な色をしていただろうに。



 村を外れて暫く進んだ先に小高い丘がある。
 丘を登って見下ろせば、村が一望できるほどに見晴らしが良く。
 そして丘の上には、教会らしき豪奢な建物が、村を監視しているかのように聳え立つ。

 そこは村を支配している領主の住み処である館。中では今回の事件の元凶である領主のオブリビオンが、救いを求める迷いし者を待っている。
「気骨があるし大馬鹿だな。身に余る事は余る。子供んころ解かんなかったのかね」
 血気に逸る村人たちを救おうと、領主の館に単身向かった娘もまた無謀だと。
 ルーチェ・アズロ(血錆の絆と呪い・f00219)は幼い少女の身でありながら、既に達観しているような人生観には、まるでこの世の地獄を見てきたような凄惨な過去が窺える。
(「無謀だね、どちらも。でも――幸運だ。気づいてくれたヒトがいるからね」)
 勇気と無謀は紙一重だと。エン・アウァールス(蟷螂・f04426)は二人の若者の行動を危惧しながらも、同時に思い浮かべたのはこの事態を予知した少女のことだ。
 後は自分たちが彼らを救う役目を果たすのみだと、エンは武器を持つ手に力を込める。
「ふむ。死の運命に囚われたのは、セドリック君ではなくハンナ君の方か」
 高価な真紅のスーツに身を包み、神秘的な美貌を兼ね備えた偉丈夫のダンピール。
 シーザー・ゴールドマン(ダンピールのフォースナイト・f00256)は事前に聞いた事件の概要を思い返して、現状において何を最優先すべきが状況分析し、既に館の中に入ったハンナを救出する為、速度重視で先陣を切って乗り込んでいく。
「今日はハッピーエンドを見たい気分なのでね。早々に助けに向かわせてもらう」
 扉を勢いよく開けたシーザーは、金色の瞳を鋭く光らせ内部をぐるりと見渡した。
 教会内部は礼拝堂のようになっており、その荘厳な造りには不似合いな、血塗れの鎧姿の戦士数体を視界に捉え、態勢を整えながら奇襲を掛ける。
 突然の侵入者の出現に、待機していた隷属戦士が鎧の音を激しく鳴らし、慌ただしく謎の侵入者であるシーザーたちに向かって襲い掛かってくる。
「邪魔だな。それに――遅い」
 シーザーが裡に秘めたる魔力を解き放ち、それはまばゆく輝く閃光となって、迫る隷属戦士たちを矢のように射る。
「グッ……!?」
 思わぬ攻撃を浴びて隷属戦士が一瞬怯む。だが相手が領主に歯向かう侵入者とあらば、全力で排除するのみだとすぐさま反撃に出る。
 朱殷の戦士は盾に隠していた銃を抜き、エンに銃口を向けて引き金を引く。
「させないよ」
 敵の狙いを察したエンは、咄嗟に鋼糸を伸ばし、別の隷属戦士に糸を絡めて引き寄せ、盾代わりにして、飛んで向かってくる弾丸をソレで受け止め、事なきを得る。
「……へえ。その鎧、良い強度をしてるね? だったら自慢の鋸はお休みかな」
 弾丸は鎧を貫通せずに、戦士の肉体にダメージを与えるまでには及ばなかったようだ。
 それならと、エンは唯一露出している目の部分に狙いをつけて、手裏剣に毒を仕込んで投擲すれば。刃が隷属戦士の目を掠め、ふらつきながらやがて毒が回って倒れ込む。
「死が救済。この世界じゃしっくりくるね。支配者の完全な傀儡になっちまえばいい。何も考える必要はねえ。……だがなあ」
 片やルーチェは別の隷属戦士と対峙しながら、互いに出方を窺っている。
 戦士の持つ血濡れの盾には、鋭利な棘が付けられている。隷属戦士は棘付きの盾を前面に構えた姿勢を取って、ルーチェに狙いを定めて突進してくる。
 しかしルーチェは先の未来が見えるが如く、相手の僅かな動作で次の一手を読む能力に長けている。タンッと地面を蹴って飛び跳ねて、少女の小柄な体躯が宙を舞う。
「――ちいと趣味が悪すぎたな」
 隷属戦士の盾の刃を回避して、再び地面に足を付けた時。血錆に塗れた大剣が、戦士の頭上に振り下ろされて――黒き憎悪を籠めた一閃が、敵の身体を真っ二つに断って偽りの生を終わらせる。
「アンタがハンナの兄貴かどうかわかんねえけど――あの世への道、迷うんじゃねえぞ」
 全身に鎧を纏った隷属戦士の姿だけでは、中身の人間までは分からない。それでもこの館の全ての戦士を倒してゆけば、ハンナの兄もその中に含まれているはずだ。
「哀れなものだが――妹を助けることで、手向けとさせて貰うよ」
 せめてその魂が、安らかに眠れるようにと祈るシーザーは、仲間と共に残りの隷属戦士の撃破を目指し、領主打倒を胸に誓う――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルルティア・サーゲイト
 さて、この世界ではおふざけは程々にじゃのう。今回はシリアスで行くぞ(なお最初からはいてない模様。シリアスとは一体)
 とにかくとっとと領主とやらの元に駆け付けるのが肝要じゃろう。凶鳥の翼で柵やら壁やらはひらりと飛び越え、敵は斬り捨てて駆け抜ける。回り道などせぬ。邪魔をする物は斬り捨て、遠くにいる奴は無視して一気に進行するのじゃ。
「邪魔じゃ退けぃッ!」
 まー、別にスニークするつもりはないので敵を引き付けるじゃろうがそれで他の潜入狙いの陽動にでもなれば重畳じゃろう。罠があったら踏み潰し、雑魚が湧けば殴って通るのが脳筋道よ!


フェルト・ユメノアール
みんなを苦しめた挙句、救済と称して死を与えるだなんて非道、ボクは認めない!
二人の為、笑顔の為、偽りの安息を語る領主をブッ飛ばしちゃうよ!

敵が数で来るなら正面から戦うのは得策じゃないね
だったら……ボクは手札から可愛いアシスタントを召喚するよ!
現れろ!【SPキャンドール・フラン】!
フランくんには炎攻撃と亡霊で援護と敵の妨害をお願いして
ボクは『トリックスター』で敵に切り込んでいく
敵は重装備だし、『地形の利用』で礼拝堂の椅子の影に身を隠して相手の攻撃を交わしつつ接近
懐に入り込んでしまえばボクの攻撃の方が早いよ!
鎧の隙間とかスリット部分を狙って『カウンター』攻撃
無事に敵を倒せたらフランくんとハイタッチ


ミスト・ペルメオス
(SPD)

こんなことが、あっていいものか…ッ!

礼拝堂に突入と同時、アームドフォートや熱線銃を撃ちかけることで先制攻撃を図る。
その後は相対した隷属戦士の動作に注意を払い、その突進攻撃に合わせて【ハイマニューバ】起動。
敵の突進を喰らわないよう、位置取りに注意しつつ高速機動戦に応じる。

基本的には距離を保ちつつ、また敵の正面に立つことを避けながらの射撃に徹する。
敵は重装備に身を包んでいるものの、遠距離攻撃の手段に欠けると推測。
攻撃を重ねることで相手の装備を破損させ、弱体化させて仕留める、のを理想とする。
自前の念動力も最大限に使い、身体能力の補強や感覚の強化、武器の制御などに活かす。



 村を支配している領主の館に、猟兵たちが奇襲を掛ける。
 館の中では、領主の配下である隷属戦士が、猟兵たちを進ませまいと迎え撃つ。
「さて、ここではおふざけは程々にじゃのう。とっとと領主とやらの元に駆け付けるのが肝要じゃ」
 ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)が花魁風の着物ドレスを翻し、軽やかな身のこなしで館の中に飛び込んでいく。
「邪魔じゃ退けぃッ!」
 加速しながら突進してくるルルティアを、先へ通すわけにはいかぬと複数体の隷属戦士が壁を作って猟兵たちの行く手を阻もうとする。
 しかしルルティアは、むしろ望むところと、不敵な笑みを浮かべて身の丈以上の巨大な鎌を取り出して、隷属戦士の群れの真っ只中に向かって斬りかかる。
「――踊れ踊れや無数の影と、残影舞踏陣!」
 小柄な体躯のルルティアが、自身の手足のように巨大な鎌を振り回す。
 フリルのミニスカートがふわりと捲れ、健康的な太腿が露わになるのもお構いなしに。
 遠心力で加速を増して放った凶鳥の翼の一撃が、立ちはだかる隷属戦士を斬り伏せる。
「この戦いは時間との勝負です。一刻も早く、目の前の敵を片付けましょう」
 ミスト・ペルメオス(新米猟兵・f05377)が熱線銃を構えて狙いを定め、後方位置から大立ち回りを演じるルルティアを援護射撃する。
 適度に距離を保ちつつ、意識を集中させて眠れる力を解き放つ。
(「――行くぞッ」)
 ミストの機械鎧が光を纏い、内部に組み込まれた高度な戦術プログラムが展開される。
 それはスペースノイドである彼が、宇宙空間内でも高速機動戦を実行できるように作成されたモノ。ミストはそのプログラムに自身の全てを委ねることで、戦闘力を高めることを可能にさせたのだ。
 放つビームは正確無比に鎧の継ぎ目部分の撃ち抜いて。確実に敵の力を削いでいく。
 しかし隷属戦士も反撃に出て、マスケット銃を撃ってくるのだが。ミストが青い瞳に力を込めると、向かってくる弾丸の軌道を推測して見切り、そして熱線銃のトリガーを引き――その弾丸までもを撃ち落とし、銀の欠片が砕け散る。
「敵が数で来るなら正面から戦うだけでは得策じゃないね。だったらボクは……!」
 フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は礼拝堂の地形を利用しながら椅子の影に隠れるように身を潜め、相手の攻撃をやり過ごしながら不意打ちを狙う。
「ボクの可愛いアシスタントを紹介するよ! 現れろ! SPキャンドール・フラン!」
 魔法のカードを扱うフェルトが、手札の中から召喚したのは、亡者を操る少女の霊だ。
 フェルトが椅子の影から立ち上がり、派手に装飾されたダガーを片手に、フランと一緒に接近しながら切り込んでいく。
 最初にフランが亡者の配下を呼び出すと、蝋燭の炎が浮かび上がって虚空に灯る。
 それは死者の身である隷属戦士を弔う火の如く、血塗れになった鎧ごと、その肉体を呑み込むように灼き焦がす。
 次いでフェルトが距離を詰めるが、隷属戦士は彼女を返り討ちにしようと闇の力と血が染みついたフレイルを叩きつけてくる。
 だがフェルトは道化師姿の通りの素軽い体捌きで、この攻撃をくるりと躱して一気に敵の懐へと潜り込む。
「懐に入り込んでしまえば――ボクの攻撃の方が早いよ!」
 流れるような動作で振るう刃の一閃が、鎧の隙間の首の動脈を抉って裂いて――真っ赤な血を噴き上げながら隷属戦士が崩れ落ちていく。
 力尽き、物言わぬ只の骸に戻った、横たわる隷属戦士に、フェルトは一瞬目を閉じ心の中で祈りを捧げ。再び目を開き、フランと顔を見合わせながら次の敵へと狙いを向ける。
「みんなを苦しめた挙句、救済と称して死を与えるだなんて非道、ボクは認めない!
 ――二人の為、笑顔の為、偽りの安息を語る領主をブッ飛ばしちゃうよ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アマータ・プリムス
婚姻は人生の絶頂であるべきだと当機は思います。お二人の幸せな未来のため、少しばかり尽力させていただきましょう

例え相手が殺された者たちのなれの果てだとしても容赦はしません
むしろ早急に解放して差し上げましょう

UCを【フェイント】を織り交ぜながら【範囲攻撃】で使用
戦士たちの拘束を狙う
他の猟兵がいるなら攻撃しやすいように位置を操作

拘束に成功したらトランクから【武器改造】で爆破【属性攻撃】のミサイルを発射して掃討

遠距離からの攻撃には拘束した【敵を盾にする】で対応

「どうか安らかにお休みなさいませ」

※アドリブ、連携歓迎


ノワール・コルネイユ
底抜けに優しいお人よしなのか、恐ろしく自分勝手なのか
…良く分からん女だな
手前が死ねば本末転倒だろうが

警備が手薄なのはありがたいところだ
それなら一気に乗り込んで、派手に蹴散らす
時は一刻を争うんだ。加減も小細工も必要ないだろう

乗り込んだら敵の中心に飛び込み
手近な奴から切り伏せる
ユーベルコードを攻撃力重視で発動
【2回攻撃】を駆使して火力の高い攻撃を叩き込み
一体に構う時間を少なくしよう

囲まれた時は【第六感】を頼りに対処し回避行動を取る
多くの敵の気を惹ければその場に踏みとどまるが
周囲の猟兵に意識が分散している様であれば
内側から食い破ってやる

赦しを請うつもりはないし、感謝も求めはしないさ
せめて静かに眠れ


雨糸・咲
オブリビオンの住処に礼拝堂とはまた、皮肉に感じますね
過去から生まれた者が未来ある人々へ「救済」などと、戯言を…

向かい来る戦士達が嘗て人であったのだとしても、
今生きている人々の為、攻撃は迷い無く
けれど…せめて
安らかに眠って下さいと、祈りましょう

哀しい過去は消えないけれど
村の人達の未来に希望の光が差しますように

(アドリブ・他の方との絡み歓迎
 戦闘でも可能なら連携できれば嬉しいです)


落ち着いた所作・言動で、
あまり感情を激しく表に出すタイプではありません
戦闘には毅然とした態度で臨みます



 館が教会の形を模しているのは、救いを求めてくる者の為。
 人間は神に畏れを抱き、神の前では誰もが跪き、罪を嘆いて赦しを乞う。
 そうして彼らは絶対的な恐怖に縛られながら、絶望的な日々を余儀なく過ごす。
「オブリビオンの住処に礼拝堂とはまた、皮肉に感じますね。過去から生まれた者が未来ある人々へ『救済』などと、戯言を……」
 この礼拝堂が村人たちの心を支配する、恐怖の対象だとしたら……。
 そこまでオブリビオンは計算しているのだろうかと。雨糸・咲(希旻・f01982)は表情にこそ出さないものの、敵の狡猾さには物静かな彼女でさえも怒りを覚えるほどである。
 とは言え今は、目の前の隷属戦士を倒すことの方が先決だ。
 咲は胸に燻る怒りを押し殺し、毅然と振る舞いながら朱殷の死兵を迎え撃つ。
 猟兵たちに襲い掛かる隷属戦士は、領主によって殺された村人たちの成れの果て。
 到底敵う相手でないと知りながら、反旗を翻した代償に、彼らは血染めの鎧と武具と、新たな『生命』を受け取って、護りたかった村を恐怖に陥れている。
「彼らが嘗ては人だったとしても、今を生きている人々の為……手を下すことには迷いはありません」
 咲の両腕から葡萄の蔓が伸び、緩く波打つ群青の髪を靡かせながら舞うように、隷属戦士の四肢に巻きつけ絡め取り、相手の動きを抑え込む。
 そこへノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)が音を立てることなく疾走し、右手に長剣、左手には短剣と、銀に輝く対なる二本の剣を携えながら斬りかかる。
 一刻を争う状況ならば、加減も小細工すらも必要ない。それなら火力重視で押し切るだけだと、ノワールの身体に流れる吸血鬼の血が、彼女に本能的にそう告げている。
「捉えた獲物を逃しはしない……!」
 ノワールの左手から繰り出される短剣が、死兵の喉を鋭く噛み切るように裂く。そして立て続けに今度は右手の長剣を、力任せに振り下ろして隷属戦士の首を刎ね飛ばす。
 飛び散る血飛沫は、犯した罪の贖いだとでも言いたげに。床に広がる鮮血を映したような赤い瞳で、ノワールは隷属戦士の死に逝く様を見届ける。
「赦しを請うつもりはないし、感謝も求めはしないさ。せめて静かに眠れ」
 また一体、相手の数を減らした猟兵たちが、更に手数を重ねて攻め立てる。その力の差は歴然として、遂に隷属戦士は後一体を残すのみまで追い詰められていく。

「例え相手が殺された者たちの成れの果てだとしても、容赦はしません。早急に解放して差し上げましょう」
 正統派のクラシカルなメイド服に身を包んだアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)が、死兵に最期を告げるが如く、淡々と言葉を紡いで歩み寄る。
 隷属戦士はオブリビオンの尖兵として、領主の命に従うだけの言わば操り人形だ。
 残りが一体のみになろうと、架せられた使命を全うすべく、或いは領主に奪われてしまった心の嘆きのぶつけるように、血と怨嗟に塗れたフレイルを振り翳す。
 だが対するアマータは、一歩も動かず立ったまま、敵の攻撃を躱そうとはしない。
 そして嘆きの鉄球が、直撃するかと思えたその直後――アマータは、指先から伸ばした糸で、死兵の骸を引っ張り上げて盾にして、この一撃を防ぐのだった。
 渾身の攻撃を外してしまった隷属戦士に、僅かな隙が生じるその瞬間を、アマータは見逃さない。
 眼鏡のつるを指で押し上げ、ピンクの瞳が妖しく光る。高速演算から導き出された情報が、この戦いの勝負の流れを引き寄せる。
「――観劇の最中はお静かに。カーテンコールはまだ先です」
 機械仕掛けの身体であるアマータの、指先から放った鋼糸が、隷属戦士を逃さず捉えて締め上げる。
 力を加える毎に糸は死兵の体躯に食い込んで、その都度もがき苦しむが――最期は魂が抜け落ちてしまったかのように、膝を突き、倒れて伏した身体が二度と起き上がることはなくなった。
「どうか安らかにお休みなさいませ――」
 アマータは糸を収納させたその指で、スカートの裾を抓んで一礼をする。
 後はこの館の中にいるであろうハンナを救出し、幸せな未来の為に尽力するだけだ。
「彼女が底抜けに優しいお人よしなのか、恐ろしく自分勝手なだけなのか。何れにしても手前が死んでしまったら、本末転倒だろうしな」
 だから放っておけないのかもしれないと、ノワールもまた、ハンナをオブリビオンから取り戻そうと再び闘争心を滾らせる。
「……哀しい過去は消えないけれど、村の人達の未来に希望の光が差しますように」
 全ての隷属戦士を倒しても、死んだ村人たちは戻らない。それでも領主を討ち取って、村に平和を取り戻すことができたなら――咲は僅かな希望を信じて願い、心の中で静かに祈る。

 猟兵たちは2階に続く階段を急いで駆け上がり、領主の待つ部屋の扉に手を掛ける。
 この戦いで全てを終わらせて、村に希望の花を咲かせる為に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『救済の代行者・プレアグレイス』

POW   :    黒死天使
【漆黒の翼】に覚醒して【黒死天使】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    鏡像の魔剣・反射
対象のユーベルコードを防御すると、それを【魔剣の刃に映しとり】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    鏡像の魔剣・投影
【魔剣の刃に姿が映った対象の偽物】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリーヴァルディ・カーライルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 教会の二階に上がって通路を進めば、一つの部屋に突き当たる。
 そこは村を支配している領主の部屋だ。
 中は色とりどりの華美なステンドグラスが装飾されていて。部屋の一番奥には、巨大な十字架が掲げられている。
 そしてその十字架には、一人の娘が気を失った状態で磔にされていた。
「……村人たちの命を救う為、更には愛する人の未来を守る為、自分を犠牲に捧げるなんて……貴女の崇高なる精神は、私が確かに受け取りました」
 十字架の前には、天使のような白い翼を背に生やし、黒衣を纏った少女が憐れむように娘を見つめて語り掛けている。
「本来ならば、謀反を起こした者は罰しなければなりません。でも貴女の優しい心に免じて特別に――貴女の安らかなる死を以て、彼らの罪を赦しましょう」
 白い翼の少女の手には、禍々しい剣が握られている。
 その剣は、刃に映った人物と、瓜二つの存在を創り出すことができる鏡像の魔剣。
 本物には安息の死を与え、新たに創った偽物が、本物に成り代わって生活をする。
「後は新たに産まれた『貴女』自身が、彼の心を慰めてくれるでしょう。そうして貴女の願い通りに全てが収まって、めでたし、めでたし……ね」
 娘に向かって優しく微笑みかける少女だが、発する言葉は歪んだ狂気を孕ませる。

 彼女――プレアグレイスは、『救済の代行者』を騙るオブリビオンだ。
 この世界に絶望した者を、救済することを至上の喜びとする異端の存在。
 だが彼女が行う救済は、他人の為などでは決してない。
 全ては自己満足の為、そして人々を自分の意思に従わせることに他ならない。
 嗚呼――この深い絶望の闇に閉ざされた地に、真の救世主が現れることなど、果たしてないのだろうか――。
シーザー・ゴールドマン
【POW】
『救済の代行者』か。なかなか冗談が上手いじゃないか。
ハハハ、もし本気なら良いことを教えてあげよう。
君の死が何よりの彼等の救済だ。
私達がその救済の手伝いをしてあげようじゃないか。
何、御礼はいらないよ。
戦術
『シドンの栄華』を発動。破壊の魔力を重視して攻撃力を上昇
その状態でオーラセイバーを振るって戦います
その剣筋は剛柔千変万化
(2回攻撃、鎧無視攻撃、怪力、見切り、フェイント、カウンター、先制攻撃)
防御面はオーラ防御、見切り、各種耐性に期待
「君に死と言う名の救済を与えよう。先ほど、それは彼等にとっての救済と言ったが君にとってもそうなのだろう?今まで散々やってきたことだ。違うとは言うまいね?」


ルーチェ・アズロ
アドリブ歓迎

【生命力吸収】で持久力を増す
【怪力】で一撃を重く
【傷口をえぐる】で追加ダメージ
を狙う

よう領主様
テメエの領民が謀反起こす理由も考えられねえ腐れ脳みその
本来死人の領主様

そんなだからテメエは過去なんだよ
前に進む頭を持たねえから過去なんだ

もっぺん死ね

(復讐相手であるこの世界の敵相手で狂戦士さアップ中

UCで代償を受けながら哄笑
「っはははは!思い通りになんぞさせねえよ!このクソババア!」

「此処が終わりだ!解るだろ終わった奴!」

「救いは――上から与えられるもんじゃねえ!」

後はこの眠り姫持って変えるか
めでたしで終わるだけの物語は知らねえし気味わりい
白も黒も灰色も、この後全部がこいつらの人生だろ



「……何やら騒がしくなってきましたね。勇敢で無謀な村人たちが、貴女を迎えに来たのでしょうか、ねえ?」
 プレアグレイスは変わらぬ笑みを携えたまま、気絶しているハンナに向かって問いかける。勿論、答えが返って来ないことは分かり切っていて、もし意識があったらどう反応するのかと、少女は揶揄うようにくすりと笑う。

 ――その時、派手に扉を開ける音が室内に響き渡る。

 プレアグレイスは扉に背を向けたまま、僅かに首だけ動かし扉の方に視線を送る。
 そこには部屋に駆け込んでくる複数の人影がいた。彼らは年齢、性別のみならず、人種も様々で。明らかに村人たちではない、異質な空気を漂わせる集団が、突然そこに現れたのだ。
「『救済の代行者』か。なかなか冗談が上手いじゃないか」
 真紅のスーツに身を包んだシーザー・ゴールドマン(ダンピールのフォースナイト・f00256)が、挑発めいた言葉で相手の意識を引き付けようとする。
「よう領主様。テメエの領民が謀反起こす理由も考えられねえ、腐れ脳みその本来死人の領主様。そんなだからテメエは過去なんだよ。前に進む頭を持たねえから過去なんだ」
 長身のシーザーの隣では、彼の身長の半分ほどの小柄な少女、ルーチェ・アズロ(血錆の絆と呪い・f00219)が攻撃的な言葉を浴びせてオブリビオンを煽る。
「私が『過去』ですか? 面白いことを言いますね。……ならそういう貴方たちは、一体何者なのでしょう」
 ルーチェの言葉にプレアグレイスはピクリと反応し、振り返ると同時に、手にした魔剣を猟兵たちに突き付ける。
「一つ良いことを教えてあげよう。彼らを救済したいなら、君が死ぬことだ。私達はその救済の手伝いをする為に来た。何、御礼はいらないよ」
 シーザーの口元が微かに吊り上がり、その神秘的な美貌から、不敵な笑みを覗かせる。
 そして光で形成された剣を握り締め、破壊の魔力を注ぐと光が一層まばゆく耀いて、剣の威力を強化する。
 更にルーチェも何かを呟きながら念じると、『過去』への復讐心を糧に力を増幅させるが、その代償として、彼女自身も呪縛に囚われてしまう。
「ふぅ……最高で最低の気分だ。お前――もっぺん死ねよ」
 狂戦士と化したルーチェが正面からプレアグレイス目掛けて飛び掛かる。しかし彼女が攻撃するより先に、オブリビオンも力を解放させてその本性を曝け出す。
 清廉な白い翼が闇に染まって黒ずんで、黒死天使に変身したプレアグレイスが、覚醒させた力を振るって猟兵たちに迫り来る。
 黒い翼を羽搏かせ、滑空しながらルーチェに接近。振り抜く魔剣は幼い少女の肩を掠めて、裂かれた服から血が滲む。
 プレアグレイスは尚も手を緩めずルーチェに斬り掛かろうとする。だがそこへ割って入ったシーザーが、光の剣で魔剣を受け止め、すぐさま返す刃で黒死天使を薙ぎ払う。
「先ほど、死は彼らにとっての救済と言ったが、君にとってもそうなのだろう? 今まで散々やってきたことだ。違うとは言うまいね?」
 過去より出でし異形の存在に、死を齎すことこそ救いだと。
 己の身体に吸血鬼の血を持つ紳士は、自信に満ち溢れた顔で黒死天使を直視する。
「っはははは! 思い通りになんぞさせねえよ! このクソババア!」
 ルーチェがその身を蝕む呪いも愉しむように哄笑し、怨敵のオブリビオンに突進しながら血錆を纏った剣を薙ぐ。
 小柄な少女と思えぬ膂力で放った一撃は、彼女がこれまで抱く憎悪の重さが籠められていて。後ろへ飛び退り、回避しようとする黒死天使を僅かに捕らえ、敵の脾腹に斬撃痕を刻み込む。
 それでもルーチェはまだ物足りないとでも言いたげに、憎悪の炎が灯った瞳で黒死天使を激しく睨む。
「終わった奴が、人を救うだと? 救いは――上から与えられるもんじゃねえ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルルティア・サーゲイト
「そうはさせるか!」
 扉なり壁なり床なりをブチ抜いて派手にエントリーを決めるぞ!
「貴様の許しなど乞う必要無し! 我等猟兵、貴様を赦す気など欠片もありはせぬ!」
 さて、救出等はどうせ誰かがやるじゃろうから任せて妾は一直線にオブリビオンをブチのめしに行くぞ! 正面から、力強く!
「その飾った気位が気に入らぬ。結局の所弱者を虐げ搾取しているだけの奴がふざけた戯言を抜かしよって! 貴様のような奴は強引な力押しで無様に倒されるのがお似合いじゃよ!」
 細工をしようと思えばできぬ妾ではない。しかし、ここはしない。純粋なゴリ押しじゃ。コレで押し切られるのが一番悔しがるタイプじゃろうからのう!


エン・アウァールス
▼アドリブ歓迎

▼戦闘
【見切り】を使い、相手の動きを観察・回避する。「本体は無視」して「魔剣」を狙う。遠距離から【咎力封じ】、及び棒手裏剣・糸を使い、魔剣に写し取る隙を与えないように立ち回る。

▼心情
…嘘つきだね、キミは。
本当は、反乱を見逃すつもりは無いんじゃないのかい。

それに。
一思いに手打ちにするとして、何故その子は磔にされているんだろうね。
「密告」した、咎人だからかな?

死が救済であることは、否定しないよ。
ただ、キミはヒトの命を奪いたいだけだろう?仮にも領主を名乗る者が、悪戯に民を害しているようだし。

だから、ね。
その場所から降りてくれるかな、
一一 簒奪者さん。



 ハンナを救いに現れたのは、愛しい彼でも村人たちでもない。
 彼らはそれぞれ異なる世界から、オブリビオンを倒す為に集った未来の守護者。
「貴様の許しなど乞う必要無し! 我等猟兵、貴様を赦す気など欠片もありはせぬ!」
 ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)が颯爽と啖呵を切りながら、正面から一直線に駆けてオブリビオンに突撃をする。
「貴方たちが只者でないことだけは分かります。ですがどれだけ強くても、私を倒せる者など存在するはずありません」
 猟兵たちが攻撃を繰り出そうとも、プレアグレイスは変わらず笑みを絶やさない。
「その飾った気位が気に入らぬ。結局の所、弱者を虐げ搾取しているだけの奴がふざけた戯言を抜かしよって!」
 如何にも余裕綽々として、澄ました態度が余計に虫が好かないと。
 だからといってルルティアは、ただ怒りに任せて小細工なしの真っ向勝負を挑んだわけではない。
 こういう手合いは、純粋な力押しで押し切られるのが一番悔しがるだろうから。そしてその為には、こちらも粘り強く戦い続ける必要がある。
 ルルティアが身の丈以上の大鎌を、力任せに振り下ろす。それに対してプレアグレイスは、鎌の軌道に魔剣を重ね、刃を走らせ受け流し、両者譲らず火花を散らす。
「そもそも本当は、反乱を見逃すつもりも無いんじゃないのかい」
 エン・アウァールス(蟷螂・f04426)は敵の狡猾な性格からして、おそらく村人たちにも相応の仕打ちが待っているのではないかと危惧をする。
「それに、どうしてその子も磔にされる必要があるんだろうね」
 幾度も疑問の言葉を投げ掛けながら、エンは相手の心や動きに変化がないか、見極めようと目を凝らす。
「死が救済であることは否定しないよ。ただ、キミはヒトの命を奪いたいだけだろう?」
 だから救済者を名乗るだなんて烏滸がましい。むしろ簒奪者の方が似合っていると。
 その一言に少女の顔が一瞬だけ強張った、そうした僅かな変化をエンは見逃さない。
 高貴さ漂う鬼人衣から、拘束具を放ってプレアグレイスを束縛しようと試みる。しかし黒死天使は、エンが動揺を誘っているのを察したか、鏡像の魔剣を薙いで拘束具を撥ね返し、同時にそれを刃に映し取り、今度はその拘束具をエンに向かって投げ飛ばす。
「……っ!? 流石にそう簡単には乗ってくれないね。でも――」
 エンは咄嗟に身を躱し、映し取られた拘束具の捕縛を回避する。
 これも全ては『彼女』を援護する為の策――彼が相手の注意を引き付ける、その隙を狙って豪奢な着物ドレスを纏った少女が巨大な鎌を振り回す。
「喰らって吹っ飛べ! 獅王凌破刃!」
 遠心力の加速で威力を増した、ルルティアの渾身の一撃が黒死天使に見事に炸裂。
 攻撃をまともに受けたプレアグレイスは衝撃で吹き飛ばされてしまい、身体を壁に打ち付けて、装飾された華美なステンドグラスが派手に砕け散る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アマータ・プリムス
この様な茶番、当機は絶対に許しませんよ。初手から全力でいきます。

トランクからネロを呼びだしそのままUCを発動
ネロに当機を操らせ運動性能を向上
箒も共にトランクから取り出す
【フェイント】を織り交ぜながら接近しながら箒の柄から仕込み刀を引きぬき、斬【属性攻撃】で斬りつけます

UCを写し取られたとしても相手には人形がいませんしネロを奪われてもこちらが操作権を奪い返しましょう

剣戟を繰り返し狙うは魔剣の破壊
【学習力】で同じ個所を狙い続け武器の破壊を狙います

「これでもう偽りの救済は行えません。貴女の起こす悲劇は閉幕です」
魔剣の破壊に成功したら指先の鋼糸でトランクと接続
重火器の最大火力で吹き飛ばします

※連携歓迎


ノワール・コルネイユ
紛い物の救済なんぞ、誰が必要とするものか
貴様の欺瞞、その全てを此処で剥ぎ取ってやる

敵とは正面から相対して気を惹きつつ
ユーベルコードを発動し相手の拘束を狙おう

【見切り】【第六感】にて敵の動きと攻撃の気配を見定め
隙を窺って手足を狙って鎖を放つ
拘束が甘ければ【2回攻撃】で素早く再攻撃
さぁ、どちらが先に折れるか勝負と行こうじゃないか

拘束を可能な限り長く維持し
仲間が攻撃する機会を充分に得られたら
相手を拘束したまま振り回して壁や床に叩きつける
地べたに這い蹲る気分を教えてやるぞ外道
簡単に気を失うなよ

痛みを振り撒いておきながら、口では救済を騙る…
それを欺瞞だと言わずして何だと言うんだ。この阿呆め

(アドリブ歓迎



 ――死ぬことでしか赦されないのなら、救いは一体何処にあると言うのだろう。

 歪んだ救いの思想を抱くオブリビオンに、猟兵たちは抑え切れない怒りをぶつけるように手数を重ねて攻め立てる。
「この様な茶番、当機は絶対に許しませんよ。全力でいきます」
 その身は機械仕掛けの人形であるアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)は、表情こそ変わらぬものの、発する言葉はオブリビオンに対する怒りの心を滲ませる。
 大きな銀のトランクに、念を込めると開いて中から喚び出したのは、どこか彼女と似た雰囲気を持つ一体の人形と、見た目は何の変哲もない一本の箒であった。
「当機も人形、故にこういったこともできるのです。加減はできませんのでお覚悟を」
 アマータはその人形を『ネロ』と呼び、『彼』に自身の機体(カラダ)を操らせることで戦闘力を向上させて、強敵たるオブリビオンと渡り合う。
 敵に向かってアマータが箒を振り回して突撃するが、その攻撃はフェイントで。穂先を取り外し、柄から仕込み刀を引き抜いて、相手の魔剣に対抗するかのように刃を振るって斬りつける。
 仕込み刀の一撃からプレアグレイスが紙一重の差で身を躱す。ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)は鋭い視線で隙を窺いながら、黒死天使の動きを捉えると。それを待っていたかのように力を発動させて、伸ばした鎖の束を投げ飛ばす。
「紛い物の救済なんぞ、誰が必要とするものか。貴様の欺瞞、その全てを此処で剥ぎ取ってやる」
 血に塗れ、血の渇きを求めるように漆黒と銀の鎖が放たれて、天使を騙る異形を拘束せんと、蛇の如くにプレアグレイスに迫り来る。
「この程度の攻撃で、私を欺いたとでも思っているなら……おめでたいものですね」
 だがプレアグレイスは、躱したままの態勢から魔剣を構え、盾代わりすることによってノワールの怨嗟の鎖を映し取ろうとする算段だ。
「魔剣の力は使わせません。貴女の起こす悲劇は閉幕です」
 その時――アマータが指先から鋼糸を伸ばし、トランクに接続させて信号送信。自動操作で開くと中からミサイル発射され、最大火力の兵器が黒死天使を狙い撃つ。
 プレアグレイスは飛来してくるミサイルを、反射的に魔剣で斬り落とす。しかし爆発までは防ぎ切れずに視界を失って、直後にノワールの放った鎖に捕縛され、四肢を絡め取られて拘束されてしまう。
「地べたに這い蹲る気分を教えてやるぞ外道。簡単に気を失うなよ」
 自身の身体に宿る吸血鬼としての本能が、破壊衝動を好むのか。敵を拘束したまま、ノワールは鎖を大きく振り回し、黒死天使を激しく床に叩きつける。
 ――地に落とされて跪き、よろめきながらも起き上がろうとするオブリビオンの堕天使を、ノワールは赤く冷たい瞳で一瞥し、見下すように言い放つ。
「痛みを振り撒いておきながら、口では救済を騙る……それを欺瞞だと言わずして何だと言うんだ。この阿呆め」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
ハハハ、流石に手強いね。それではギアを上げていこうか
【真の姿ver1:特に変わらない。黄金の瞳が輝き、身に纏う真紅のオーラが濃ゆくなるくらい】
戦術
千変万化の剣術でオーラセイバーを振るい戦います。
(2回攻撃、鎧無視攻撃、怪力、見切り、フェイント、カウンター、先制攻撃)
防御面はオーラ防御、見切り、各種耐性に期待
※『ラハブの割断』を使うのは必殺のタイミングに一度のみ
何度も使えば反射される危険も高まるので
「それでは、さようなら」
※戦闘を楽しみながらも十字架に貼り付けにされた娘に被害が行かないように戦いながら場所を誘導します。


雨糸・咲
あれがプレアグレイス…
少女の姿をしていても、子供の可愛らしさなど欠片もありませんね
…いえ
その傲慢な残酷さは、或る意味子供らしいと言えなくもないですけれど

貴方には、人々を罰する権利も
ありもしない彼らの罪を許す権利もありません
「救済」を謳うには、貴方は――穢れ過ぎている

私は、自分が清いとは思いません
ですから、救済などと大それたことも言いません
為すべきことを為す、ただそれだけなのです

敵の挙動をよく観察して手を読み
【フェイント】で隙を作って【全力魔法】で攻撃を試みます

攻撃には、オペラツィオン・マカブルで応じましょう
コノハナさん、お願い!

※アドリブ・他の方との絡み歓迎
 戦闘でも可能なら協力を


フェルト・ユメノアール
キミの言葉、すごく薄っぺらい
……みんながまた好きな人と笑顔で暮らす事のできる
そんな当たり前な日常をキミから取り返す!

ボクは手札から最高の相棒を召喚するよ
ショウマストゴーオン!
変幻自在の魔術師よ!その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ!
カモン!【SPクラウンジェスター】!
まずはクラウンジェスターと一緒に『トリックスターを投擲』して攻撃
敵が攻撃を仕掛けてきたら曲芸のような動きの『フェイント』で回避&後退
その隙に攻撃を受けていない方が即座に敵に接近&『カウンター』攻撃
みたいな感じで前衛後衛をその場で入れ替えながら敵を翻弄していく

いくら姿や力を真似てもキミには笑顔が無い
それじゃあ、ボクたちには勝てないよ!


ミスト・ペルメオス
(SPD)

傲慢で、独善的で。…全くどうしようもないな。

補助デバイスにより可能な限り戦闘区域や敵の情報を収集しつつ現場に向かう。
領主の部屋に足を踏み入れるかどうか、のタイミングでアームドフォートと熱線銃による先制射撃を試みる。
その後【ハイマニューバ】起動、高速戦闘による射撃戦を仕掛ける。
念動力、最大。身体や武装の制御、敵の動作の見切り、オーラ防御など様々に活用。
アームドフォートと熱線銃による射撃を主軸として戦い、バスタードソード(型の近接装備)は基本的には使わない。
使うとすれば防御の際にオーラ防御と併用するか、目くらましとブラフを兼ねて念動力で飛ばすか、ぐらいを想定。

※他の方との共闘等、歓迎です



 猟兵たちはオブリビオンの魔剣の力を発揮させないよう、それぞれが策を講じてこの戦いに臨む。その甲斐あって、プレアグレイスは本来の力を活かし切れずにここまで苦戦を強いられている。
「……これほどまで私に抗おうとは。どうやら貴方たちには、死すらも生温そうですね」
 魔剣の力に敢然と立ち向かい、悉くそれを打ち砕いていく猟兵たちの強さに、さしものプレアグレイスも脅威を感じたか。先程までの余裕はなくなり笑みは失せ、漆黒の翼を大きく広げて猟兵たちを威圧する。
「キミの言葉、すごく薄っぺらい……みんながまた好きな人と笑顔で暮らす事のできる。そんな当たり前な日常をキミから取り返す!」
 フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)はオブリビオンの放つ気迫に臆することなく気炎を上げて、懐から魔法のカードを取り出し召喚術を行使する。
「変幻自在の魔術師よ! その歓声に答え、鮮やかに舞台を彩れ! カモン! SPクラウンジェスター!」
 フェルトの声に応じて魔法のカードが眩しく輝き、光と共に王冠を被った道化師がそこに顕れる。それはフェルトにとって最高の相棒であり、最強の手札を切った以上、何としてでもこの戦いに勝たなければならない。
「少女の姿をしていても、子供の可愛らしさなど欠片もありませんね。……いえ、その傲慢な残酷さは、或る意味子供らしいと言えなくもないですけれど」
 雨糸・咲(希旻・f01982)の胡桃色の静かな瞳が、黒死天使の姿を映す。
 彼女を見つめる咲は表情険しく、秘めた決意を吐露するように淡々と言葉を紡ぎ出す。
「貴方には、人々を罰する権利も、ありもしない彼らの罪を許す権利もありません」
 静かな口調だが、その一言一句に込める思いは、何より強く、揺るぎがない。
「『救済』を謳うには、貴方は――穢れ過ぎている」
 黒死天使の歪んだ心に、楔を打つかのような鋭い一言に。プレアグレイスは憤慨し、それならどちらが正しいか、力で示してもらいましょうか、と――魔剣に自身の姿を映して分身体を作成し、二体が同時に猟兵たちに襲い掛かる。
「傲慢で、独善的で。……全くどうしようもないな」
 救いがないのは天使を騙る彼女の方だと、ミスト・ペルメオス(新米猟兵・f05377)は呆れたように呟きながら、アームドフォートを構えて黒死天使に砲口を向ける。
(「――行くぞッ」)
 ミストが意識を集中させると、纏った機械鎧に青い光の線が走ってアームドフォートと連結し、高速機動戦にも対応可能な高度の戦術プログラムによって、内在している戦闘力を引き上げる。
「ハハハ、流石に手強いね。それでは――ギアを上げていこうか」
 領主クラスとなれば、やはり一筋縄ではいかない相手だと。シーザーは敵の強さを称賛しつつ、ならば自分も真の姿で戦うべきかと――魔力を高めて解き放ち、眠れる力を覚醒させる。
 シーザーの真の姿の第一段階――見た目は特に変化はないが、黄金の瞳は輝きを増し、纏う真紅のオーラが色濃く映る。
「……実に清々しい、良い気分だ。さあ、宴の続きを楽しもうではないか」
 彼が手にしたオーラセイバーも、オーラと同化するかのように赤い光を帯びている。
 後は心行くまで存分に――振る舞う姿はあくまで紳士的なシーザーではあるが、不敵に口元歪める顔付きは、彼の内なる狂気のその一端を覗かせる。

「どこまでも刃向かう心算なのですね。良いでしょう……ならばこの場で死になさい」
 プレアグレイスが分身体を引き連れながら迫り来る。だが分身体の方は魔剣を所持していない為、猟兵たちにとっては狙いをつけやすい。
 フェルトは曲芸師のような軽業で、相手の攻撃を躱しながらクラウンジェスターと一緒に応戦。敵の魔剣をダガーで受け流し、返す刀で黒死天使を斬りつける。
「いくら姿や力を真似てもキミには笑顔が無い。それじゃあボクたちには勝てないよ!」
 天使のような微笑みも、心のない紛い物だと言い切るフェルト。
 彼女に続いて今度はミストが。彼の青い瞳はプレアグレイスの軌道を捉え、照準合わせてターゲットをロックオン。
「あなたの動きは、既に見切っています」
 射程範囲の限界まで引き付けながら、ミストのアームドフォートが火を噴くと――黒死天使は急いで回避しようとするが間に合わず、プレアグレイスの黒い片翼を、高出力の光の束が撃ち抜いた。
「私は、自分が清いとは思いません。ですから、救済などと大それたことも言いません。為すべきことを為す、ただそれだけなのです」
 咲が毅然と振る舞いながら黒死天使を迎え撃つ。
 だが彼女は両手をだらりと下げて脱力させて、避けることもせず、その体勢はまるで攻撃を受け入れようとしているとしか見えない。
 そして分身体の天使の両手が咲に伸び、彼女の生命を摘み取ろうとした瞬間――。
「コノハナさん、お願い!」
 分身体の両手が掴んだものは、咲ではなくて紳士な蛙の縫いぐるみに変化して。分身体は蛙の口に吸収されて呑み込まれるように消えてしまう。
「……馬鹿な。人間如きが私を裁くなど、そんなことが赦されるはずは……!!」
 分身体を失って、片翼をもがれた黒死天使に、暴君と化したダンピールの紳士が裁きの刃を振り翳す。
「お嬢さん、残念ながらこれが現実だ。それでは――さようなら」
 最期を告げるシーザーの、言葉と共に全てを断ち斬る『ラハブの割断』が、慈悲を乞うかのように蹲るプレアグレイスの首を刎ね、救いの天使を騙った少女の身体は、灰と化し――儚い最期を遂げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ささやかな華やぎ』

POW   :    料理をいただく

SPD   :    会場作りを手伝う

WIZ   :    様子に想いを馳せる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


※第3章の冒頭部分は後日追記しますので、プレイングの受付は冒頭部分追加後から開始させて頂きます。何卒ご了承下さいませ。

 『救済の代行者』を名乗るオブリビオンは猟兵たちの手で討ち取られ、村人たちに真の意味での『救い』が訪れる。
 圧政から解放された村人たちは大いに喜び、猟兵たちは村を救ってくれた英雄として祝福される。斯くして村が歓喜に沸くその一方で、村人たちは犠牲となった者の死を悼み、安らかなれと祈りを捧ぐ。

「……漸くこれで、お兄ちゃんも眠れることができるのね」
 村の外れにある墓地で、ハンナは一年前に命を落とした兄を偲んで静かに冥福を祈る。
「ああ……アイツもやっと浮かばれるだろう。本当に、良かったな……」
 セドリックも一年前の悲劇を思い返しつつ、積もり積もった感情が、胸に押し寄せ目から涙が落ちそうになる。零れる思いを堪えるように空を見上げると、ハンナが彼の背中を抱き締めて、思いの全てを受け止める。
 背中に感じる彼女の優しい温もりに、セドリックは心癒されながら、腰に回したハンナの手に自分の手を重ね合わせると。思いの丈を込め、約束の言葉を口にする。
「――俺と、結婚してくれないか」
 セドリックの告白に、ハンナの瞳が薄ら滲む。そして彼の背中に顔を埋めて、涙に濡れる唇が、『はい』と紡いだ二文字によって、遂に二人の誓いが交わされた――。

 村を支配していたオブリビオンがいなくなった今、村は新たな始まりの日を迎えることになる。
 更にはそれだけでなく、オブリビオンに立ち向かった二人の若い男女が、新たに夫婦の契りを交わす。そうした二人の結婚式は、村にとっても大きな希望となるだろう。
 この華やかな祝いの席には猟兵たちも参加して、彼らの為に何ができるのか、それぞれ思い思いに考える。
 平和を取り戻したこの村に、希望の花を咲かせる為に――。
ルルティア・サーゲイト
 では、妾も一つ得意の舞を披露しよう。まあ、この一つしか出来ぬがその分この技には見応えはある筈じゃ。
「天武に捧ぐ、桜花の舞。とくとご覧あれ」
 携えた大鎌を中空でゆらり、と振るう。当然、そこには何もなくただ空を斬るのみ。流れる動きで二度、三度と大鎌を振るう。
 その刃先から桜の花弁が散り、全てを魅了するように舞う。
「天武」
 そして、円を描く動きから垂直に飛び上り(見えそう)真下に大鎌を振り下ろして桜を散らせるのが本来の動きじゃが、ちと婚礼には縁起が悪い。なので今回はアレンジして、
「桜花陣ッ!」
 着地と共に上に振り上げて桜の花弁を空に向けて打ち上げる。ブーケトスのイメージかのう。


シーザー・ゴールドマン
【POW】
主役はセドリック君とハンナ君、そして圧政を乗り越えた村人たちだからね。
料理と酒を楽しんでおくよ。
ノエマ君も誘っておこう「君が予知したことで実現した光景だからね」
~~~~~~~~~~~~
「ふむ、ただ飯食いというのも悪いな。
 それでは、二人の門出を祝して」
『シドンの栄華』の「創造の魔力」と[衝撃波][全力魔法]を組み合わせて大輪の花火(の様な何か)を日が暮れた頃、空に出現させて二人と村の門出を祝します。


アマータ・プリムス
物語の締めはハッピーエンドであるべきですね
主役はお二人、当機はせっせと裏方作業です

【世界知識】でこの周辺の結婚式に出るものを把握し【料理】しましょう
ここはメイドとしての腕の見せ所。人手が足りなくなればUCで当機に【変装】させたアウリスを呼び出し人手を倍に
村人の皆様の分も作りきってしまいましょう

料理を作り終えたら結婚式の準備を最後まで手伝います
飾りつけから配膳まで全て
それが当機の最後の仕事ですから

いざ結婚式が始まる時は申し訳ないですがお暇させていただきます
これからのお二人の人生を祝福しながら当機は【目立たない】ように村を去ります
幸せな気分で鼻歌を口ずさみながら
「ご結婚おめでとうございます」


フェルト・ユメノアール
悪い領主も倒したし、これで一先ずは一件落着かな?
失ったものは取り戻せないけど
これからを良くしていく為にボクも出来る限りお手伝いしちゃうよ!

結婚式の雑用と司会進行をお手伝い
式が始まったら二人を誘導して

多くの障害を乗り越え、二人は今、新たな門出を迎えました!
この幸せが末永く続くよう
皆様、盛大な拍手でお出迎えください!
と口上を述べつつお出迎え、拍手に合わせて帽子の内から花火を打ち上げ『パフォーマンス』
その後は【SPクラウンジェスター】と一緒にマジックや曲芸を披露したり
道化師としてみんなを笑顔にするよ

最後は
また困った事があったらいつでも呼んで!
ボクたちが力になるから!
と二人に伝え、笑顔で別れるよ



 斯くして一つの村が未来を守護する英雄たちに救われて、二人の若い男女が結ばれる。
 村ではこれから二人の為に結婚式が執り行われようとしている最中で、村人たちはその準備の為に慌ただしく動いているが。皆が皆、笑顔を浮かべて、村全体が活気に満ち溢れているのが肌で感じて伝わってくる。
「――物語の締めはハッピーエンドであるべきですね。主役はお二人、当機はせっせと裏方作業です」
 アマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)は結婚式を手伝って支えるべく、裏方に回って料理作りに勤しんでいた。
 清楚なメイド服と相俟って、アマータが調理をしている姿は自然と様になる。
 この地方で振る舞われる料理の下調べも万全で、ここから先は彼女の腕の見せ所。
 慣れた手つきで料理の腕を存分に振るって、予備機の『アウリス』も呼んで人手を増やし、メイド姿の一人と一体が、手際よく村人たちの分の料理を作り上げていく。
 そして調理がひと段落したと思えば、今度は休む間もなく式場となる教会の飾りつけをして、更には料理の配膳までも全てをこなし、それが当機の最後の仕事ですから、と――アマータはさも当然といった様子で、一通りの作業を終わらせた。

 そうして式がいよいよ執り行われ、ハンナとセドリックは花嫁衣装とタキシードに身を包み、この日生まれた新たな夫婦の誓いが交わされる。
 村の為にも何かお手伝いを、とフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は儀式を終えた二人が教会から出てくるところを待ち構え、彼らを広場に誘導し、高らかに声を上げて宴の司会を進行し始める。
「多くの障害を乗り越え、二人は今、新たな門出を迎えました! この幸せが末永く続くよう、皆様、盛大な拍手でお出迎えください!」
 フェルトが口上を述べながら、観客の村人たちにも拍手を求め、村中に響くその音は次第に手拍子となってリズムを刻む。
 道化師姿の少女はリズムに合わせて踊り出し、ジェスターハットを脱ぐと中から色とりどりの花火が打ち上がり、夜に包まれた世界を明るい炎の花で彩った。
 続いてフェルトは魔法のカードを使って王冠を被った道化師を召喚。突然現れたソレに村人たちは驚くが、フェルトが一緒になってマジックや曲芸を披露すると、会場中から興奮と歓喜の声が沸き起こる。
 村人たちの喜ぶ笑顔を取り戻せたことに、フェルトは道化師としての役目を無事に果たせたと、誇らしく思って自然と顔が綻んだ。
「ふむ、ただ飯食らいというのも良くないな。それでは私も、二人の門出を祝して、一つお見せしよう」
 折角の祝いの席で料理を戴くだけでは忍びない。とシーザー・ゴールドマン(ダンピールのフォースナイト・f00256)も夫婦になった二人の為に、自分のできることはこれくらいだと言いながら、両手に力を注いで魔力を籠める。
 創造の魔力を宿したその手を、空に掲げて全力で衝撃波を放つ。すると魔力の奔流が、上空で大きく爆ぜて、栄華を願う炎の花が空一面に咲き誇る。
 これから新たな道を歩む二人と村の門出にと、シーザーが微笑みを浮かべながらハンナとセドリックに視線を向ける。そして後の主役は彼らだからと、自身は奥に下がって料理と酒の席を愉しむのであった。

「では、妾も一つ舞いを披露しよう。まあ、この一つしか出来ぬが、その分この技には見応えはある筈じゃ」
 宴はますます盛り上がりを見せ、ルルティア・サーゲイト(はかなき凶殲姫・f03155)も二人を祝福しようと得意の舞いを演舞する。
「天武に捧ぐ、桜花の舞。とくとご覧あれ」
 凛然とした立ち振る舞いから、携えた大鎌を、高く掲げてゆらりと振るって空を斬る。
 ルルティアは更に流れるような動きで、二度、三度と鎌を振り続け。その刃先から、桜の花弁が零れて、風に運ばれ全てを魅了するかのように空に舞う。
 ダークセイヴァーでは見たことない、異世界の煌びやかな舞いに村人たちは心惹きつけられて、彼女の一挙手一投足に注目しながら息を飲む。
「天武――」
 そしてルルティアは、一拍間を置いた後、華美な着物ドレスを翻し、大きく円を描いて垂直に高く飛び上がり、村人たちも空を見上げて彼女の姿を追う。
 本来ならばこの後、真下に鎌を振り下ろして花を散らせるのだが、婚礼には縁起が悪いと特別仕様に切り替えて。
「――桜花陣ッ!」
 空中で一回転しながら地面に着地する。と同時に、ルルティアが鎌を空に向かって打ち上げ、宙に旋回する大鎌が、薄紅色の彩を描いて花火のようにぱっと咲く。
 色鮮やかに咲き乱れる桜の花の大輪は、ブーケトスをイメージしたかのように美しく。
 幻想的で華麗な彼女の舞いに、新郎新婦と村人たちは大いに感動し、拍手喝采して称賛の声を送るのだった。

 三者三様による花火の競演が終わった後は料理が振る舞われ、猟兵たちも一緒にご馳走することになる。
「また困ったことがあったらいつでも来るよ! ボクたちが力になるから!」
 フェルトがハンナとセドリックに駆け寄り声を掛け、二人にそれだけ伝えると、笑顔で手を振りながら別れて村を出る。
 一方、シーザーは料理に舌鼓を打ちながら、ノエマ・アーベント(黄昏刻のカーネリア・f00927)と一緒に酒を飲み交わす。
「歓びに満ちた酒は実に美味い。まさに祝福の味と言ったところだな」
 グラスを揺らして口付けし、含んだ甘美な液体を、舌で転がすように味わうシーザー。
 片やノエマは黙したまま淡々と飲みながら、活気に満ちた村の景色を静かに見つめる。
「感慨深いかね。君が予知したことで実現した光景だからね」
「でも、実行したのは貴方たちだから。こうして平和を取り戻せたのは、皆のおかげよ」
 労いの言葉を掛けるシーザーに、ノエマはありがとうと小さく頷いた後、彼を含めた猟兵たち全員に、感謝の言葉を口にした。

 ――村が結婚式で賑わいを見せる中、アマータはその様子を見届けることなく、一足先に村を立ち去っていた。
 トランクに思い出詰め込み、新たな旅に出るかのように村を後にして。
 足取り軽く幸せ気分で、鼻歌を口遊みながら二人の笑顔を思い浮かべると。不意に立ち止まって振り返り、想いを乗せて祝いの言葉を囁いた。
「――ご結婚、おめでとうございます」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーチェ・アズロ
WIZ

適当な壁にでもよっかかって、村の幸せそうな様子を見る

本当の英雄は、最初に行動を起こした奴らだ
勝てない戦いは馬鹿だと思う
けど、許せないことを許せないということは
勝てないのに声を上げたことは
命をかけたことは
あたしには無い、英雄の資格だ

あたしはただ、アイツラをぶっ殺したいだけ
その結果、こういう幸せが訪れるなら悪くない

ま。またアイツラがやってきたら飛んでくるよ
あたしは復讐できる
あんたらは幸せに暮らせる
悪くないんじゃねーの?

……結婚、ね
あたしまだ7歳だし、まあ7,8年は先か
こんなのを貰いたいなんて物好きがいれば、だがね

……おめでとうな。もう血に泣くんじゃねえぞ
泣かせる奴らは、全部斬るからな
じゃあな


雨糸・咲
失ったものは決して少なくないのでしょうけれど
解放に湧く村は、息を吹き返したようで

あぁ、良かった…本当に良かったです

ハンナさんとセドリックさんの晴れの日が素晴らしいものになるよう、
私も会場の準備をお手伝いしましょう

ふふ、こう見えても猟兵ですもの
力仕事だってお任せ下さいね

…実は私、結婚式というものを見るのが初めてなんです
でもね
嘗て、私がまだ人の姿をしていない時に
大事にして下さったご夫婦がいたのですよ
だから、「夫婦」が素敵なのは知っています

髪に挿していた白菊の飾りを取り、勇敢な花嫁の手へ

この花は本物ではないけれど
いつかお二人の気持ちが芽吹き、蕾となって花開きますように

※アドリブ、他の方との絡み大歓迎


エン・アウァールス
▼アドリブ歓迎
【WIZ】様子に想いを馳せる

会場を見渡せる建物の屋根に陣取り、結婚式を見守る。
こっそりと酒瓶を拝借し、会場を抜け出しハンナの兄が眠る墓へ。暮石に酒をかけてやる。

飲むと良い、キミにもおすそ分けだ。エンの故郷のやり方で申し訳ないけれどね。
…聞こえるかい、鐘の音だ。

ノエマ(f00927)と
①【誰とも会話していない】
屋根から降りて話しかけ、結婚式について会話する。

折角の結婚式だけれど。
…どうも、あの輪の中には入りづらくてね。キミはどうだい、こういう催しは好き?

②【既に誰かと会話している】
会話に割り込まず、ノエマが視線に気づいたならば笑い返す。手を振って屋根から降り、その後は墓地へ。



 オブリビオンの支配によって、村は様々なものを失った。
 だが村人たちを苦しめていた偽りの救済者はもういない。
 圧政から解放された村は息を吹き返し、漸く心の底から笑える幸せを、噛み締めながら村人たちは宴の準備に精を出す。
 雨糸・咲(希旻・f01982)は活気が戻る村の姿に安堵して、二人の晴れの日が素晴らしいものになるように、式の準備を手伝うのであった。
「……実は私、結婚式というものを見るのが初めてなんです」
 ヤドリガミとして生まれた咲にとっては、結婚は未知の世界の領域で、恋というものすらよく知らない。それでも彼女は知っている、『夫婦』がどれだけ素敵で尊いか。
 咲がまだ人の容を成していない『モノ』だった頃、彼女はとある夫婦に大事にされてきた。もしも自分がヒトだったなら、触れて話をすることだってできるのに。
 ――募る想いはやがて叶って、彼女はヒトの生を得た。だがその時にはもう、大切な主はこの世を去ってしまい、今も悔しい気持ちばかりが先に立つ。
 そんな夫婦のことを思い浮かべると、吹き抜ける風に群青の髪が靡いて波を打つ。咲はその髪に挿していた白菊の飾りを取って、花嫁衣装を纏ったハンナにそっと手渡した。
「この花は本物ではないけれど、いつかお二人の気持ちが芽吹き、蕾となって花開きますように――」
 村を守った勇敢なる花嫁に、未来が幸せなものであるよう願いを込めて。

 ――ハンナの両親が、彼女に残した花畑。
 嘗ては四季折々の花が咲き、その当時の光景が、ハンナの心に今も焼き付いている。
 そしてこれからは、新たな夫婦で協力し、思い出の花畑に本物の花を咲かせることも、いつの日かきっと訪れるだろう――。

 幸せに湧く村の様子を、ルーチェ・アズロ(血錆の絆と呪い・f00219)は人から避けるように離れた位置から、壁に寄りかかって傍観していた。
 あの『救済者』を倒して村を救ったのが自分たちであるのは間違いない。しかし本当に英雄と呼べるのは、最初に行動を起こした者たちだ。
 勝てないと分かっている戦いを挑むのは、愚かで馬鹿だとしか思えない。けれども許せないことを許せないと声を上げ、勝てる見込みがないのに命を賭けるのは――。
「あたしには無い、英雄の資格だ」
 ただアイツらを、『過去』の化け物たちを殺したかっただけ。
 その結果、こういう幸せが訪れるなら、それも悪くはないと。
 憎悪が渦巻く心の中にも、ルーチェは幽かな充実感を覚えつつ。
「ま。またアイツラがやってきたら飛んでくるよ。あたしは復讐できる、あんたらは幸せに暮らせる。悪くないんじゃねーの?」
 視界に映る新郎新婦に向けて独り言ち、二人の幸せそうな笑顔にルーチェは、結婚とは何たるかを考える。
 まだ7歳でしかない幼い身である少女にとっては、当分先の話でしかなくて。そもそもこんな自分を貰いたいなんて物好きがいるのだろうかと自虐する。
「……何はともあれ、おめでとうな。もう血に泣くんじゃねえぞ。泣かせる奴らは、全部斬るからな」
 じゃあな、とだけ言い残し、ルーチェは結婚式を見届け終えると、父親の形見でもある巨大な剣を担いで村を立ち去った。
 束の間の休息の時を終え、少女は復讐心に駆られるようにその足で、また新たな戦場へと旅立つのだろう――。

 この祝いの場で猟兵たちもそれぞれに過ごす中、エン・アウァールス(蟷螂・f04426)も結婚式を見守っていたのだが。ふと思い立ったように会場を抜け出して、酒とグラスを手に村の外れの墓地へ向かう。
 エンはハンナの兄が眠る墓の前に立ち、酒をグラスに注いで墓前に添えた。
「飲むと良い、キミにもおすそ分けだ」
 もしも彼が生きていたのなら、この結婚を大いに喜んでくれたことだろう。
 それでも今は空の彼方の世界から、大切な妹の幸せを祝福してくれているに違いない。
 だからどうせなら、一緒に美味しい酒を飲み交わした方が良い。エンも別のグラスに酒を入れ、宴で賑わう村人たちの声を背に、静かに勝利の美酒を味わっていた。
「あら、どうやら先客がいたようね」
 するとすぐ近くから聞こえてくる声がする。エンがくるりと後ろを振り向くと、そこにやってきたのはノエマであった。
「……どうもあの輪の中には入りづらくてね。キミはどうだい、こういう催しは好き?」
 このような華やかな場所は慣れていないせいか、静かに過ごしているのがエンにとっては性に合うようだ。ノエマも感情を表に出すことはないものの、それでも偶にはこうした空気も悪くはないと、黄昏色の瞳は祝福ムードに溢れる村の景色を映し出していた。
「それに折角だから、亡くなった人たちにもお祈りをしていこうかと思ったの」
 彼女自身は生命を断つ為だけに造られた『モノ』。けれども死を悼む心は持っている。
 ハンナの兄の墓前で手を組みながら、ノエマが祈りを捧げていると――村の教会から、荘厳たる音色が響き渡る。
「……聞こえるかい、鐘の音だ」
 新たな夫婦の門出を祝う幸せの音。心洗われるような澄んだ鐘の音色に、二人は暫しの間、黙して耳を傾けた。
 勇敢な若き夫婦とこの村の、歩む未来に幸あれと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月09日
宿敵 『救済の代行者・プレアグレイス』 を撃破!


挿絵イラスト