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迷宮災厄戦⑱-4〜バーガンディの紅茶

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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●はじまりのとくべつな日!
 扉を開くとそこは美しい花に満たされた国だった。
 淡い金の髪を揺らすオウガ・オリジンはただ花が美しいその場所に立つ。
「猟書家どもの巫山戯た牢獄から逃げ出せた記念……ユーベルコードを奪われた記念……」
 ぶつぶつと呟く。黒に覆われたその顔は全てを飲み込む闇であるが故に表情は分からねど、吐く息は怒りを帯びていた。
「嗚呼、怒りで腸が煮えくり返る! はじまりのアリスたるこのわたしが! 怒りで腹を空かせるとは!」
 なんとも不快なで愉快な事だ!
「嗚呼、そうだ、腹が減った記念。それが良い。食前茶会としよう! 唸れわたしのユーベルコード!」
 はじまりのアリスが空に向かって叫ぶ。
 次の瞬間。アリスの手には紅茶のカップが握られていた。
 美しい花畑の中に現れる机。真っ白のテーブルクロスの上に音もたてず並ぶ無限のカップとティーポット。なみなみ揺れる淡いオレンジ色。
「アリスの柔らかい肉万歳! 猟兵どもの肉にも乾杯!」
 紅茶から漂う温もりにどこから来たのか蝶々がひらひらと飛んできて、その湯気の上を通った途端にどろりと溶けた。
「はははは! 愉快だ! 今日のブレンドは明日にはない。昨日にもない美味だ。このわたしにふさわしいスパイスといえよう」
 オウガ・オリジンは手にした紅茶を楽し気に花の地面にぶちまける。ぐしゃりと花が腐り落ち、ぐちゃぐちゃとした体を持つオウガが泡立ち生まれる。
「このわたし女王様の命令だ! 毒入り紅茶を楽しめ! わたしははじまりのアリス! 毒の上に君臨するものでもある!」

●グリモアベース
「……なんとも物騒なお茶会への招待状が『来る』のでございます」
 集まった猟兵達の前にグリモア猟兵を前に金綠・シャトワヤンス(ケットシーの女給探偵・f22844)が恭しく礼をする。
「オウガ・オリジンへの道が開けましたのです。わたくしが予知致しましたのは『お茶会』を開いております……しかし」
 オウガ・オリジン、『はじまりのアリス』にして『はじまりのオウガ』である彼女が開く茶会は現実改変ユーベルコードで造り上げたもの。
「ユーベルコードが一つ『紅茶の時間』を彼女は恐るべき速度で実行し、皆様はまずそれに対処しなくてはなりません」
 紅茶を給仕している間、戦場にいる紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にするユーベルコード。
「問題は彼女が入れる紅茶は『毒入り』であることにてございます。口にしても良き効果があるとは思えません」
 自分の見た予知では『毒入り紅茶』に触れた生き物はどろどろと溶け、その残骸からオウガが生まれる程の毒だったとグリモア猟兵は説明する。
「なんともずるいことにオウガ・オリジン自身には紅茶の毒は効かないのです」
 毒入り紅茶を楽しまなければ行動速度が大幅に低下し、オウガ・オリジンのなすがままに『彼女の食事』へとなりかねないとグリモア猟兵は苦々しい顔を見せる。
「ですが。毒入りの紅茶を楽しむという言葉は必ずしも『紅茶を飲むことのみ』が正解だとは示していない、とわたくしは考えます」
 既にここグリモアベースで毒入り紅茶振る舞われることを猟兵は知っている。
 オウガ・オリジンにが毒を出すのであれば愉快なことをすると彼女にぶちまけてもきっとそれは楽しみ。
 いっそのこと、オウガ・オリジンに先に飲ませてみれば?彼女を楽しませるのも楽しんでいる。
「皆様それぞれに考えがあるとは存じます。現実を改変するオウガ・オリジンに対抗するのは皆様の無限の発想だと信じております」
 給仕される毒入り紅茶を『楽しむ』方法は無限の想像力の中から生まれるだろう。
 そう付け足しお茶会が開かれている国へと転送ゲートが開かれた。


硅孔雀
 迷宮災厄戦です。
 硅孔雀です。
 今の時期は水出しもお薦めな紅茶のお話。

●構成
 ボス戦:『オウガ・オリジン』と紅茶の時間×1体。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 対応する戦場は⑱-4『オウガ・オリジン』と紅茶の時間です。

●プレイングボーナス
 ユーベルコード「毒入り紅茶の時間」に対応する。

 敵は必ずユーベルコードを使用し、先制攻撃に相当するスピードで猟兵に紅茶の給仕を行います。
 この紅茶を楽しまないとペナルティとして行動速度が大幅に減少し(5分の1)全ての行動に失敗すると判定します。
 毒入り紅茶を『楽しむ』方法については完璧な正解はありません。
 皆様の自由な発想、行動でこれは!と思ったものにはばんばんボーナスが乗ります。

●戦場情報
 美しい花畑が広がるお茶会広場です。
 戦場に転送された時点で猟兵の皆様は椅子に座り、目の前に紅茶のカップが置かれています。指定があればオウガ・オリジン自らが傍まで来て紅茶を給仕してくれます。
 紅茶の色や香り、味は彼女の気まぐれブレンド。様々な種類があり指定可能です。現実にないものも現実改編で無限に生み出せます。

●特記事項
 ・対オウガ・オリジンとの戦闘より、皆様がどう毒入り紅茶を「楽しむ」のかを重視したシナリオ運営になります。がちがちに戦闘!よりは毒入り紅茶への対処を中心としたお茶会?シナリオになるよう描写を行います。
 ・難易度はやや難。プレイングの判定もそれに準じて行います。
 ・進行の都合上、少人数での運営となる可能性が高いです。
 ・特定の方と行動したい、アドリブしてもいいよ等についての表記は、文字数節約用としてMSページに記載されています。確認して頂けますと幸いです。

 それでは皆様のプレイングお待ちしています!
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と紅茶の時間』

POW   :    女王様のご命令
【クイーンのトランプ】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    毒入り紅茶の時間
【毒入りの紅茶】を給仕している間、戦場にいる毒入りの紅茶を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ   :    毒の上に君臨するもの
【ぶちまけた毒入りの紅茶】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から毒を帯びたオウガを出現させ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

卜一・アンリ
(事前に【早業】で摘んだ花弁を隠し持ち)
遊戯をしましょう、オウガ・オリジン。

貴女は毒の入った紅茶を二つ、入っていない紅茶を一つ出す。
私は出された三つの紅茶の中から一つを選んでそれを飲む。
飲んだ紅茶に毒が入っていたら貴女の勝ち、入っていなかったら私の勝ち。
せっかくのお茶会ですもの、『楽しむ』としましょう?

オリジンが誘いにのって紅茶を出したら
持っていた花弁に息を吹きかけて紅茶の上に。
花弁が溶けない、つまり毒の無い紅茶を口に含む。

貴女の負けね。罰げぇむよ。

【指定UC】の【零距離射撃】。
ま、毒入りだったらイカサマとして撃つのだけれど。
言いがかりで殺されるなんてこの世界らしいでしょう?
【アドリブ歓迎】



●一杯目
 卜一・アンリ(今も帰らぬ大正桜のアリス・f23623)は花畑が広がるお茶会広場、椅子に座っていた。
 足元に揺れている花へと視線を落とし、風が吹く。
 その時だった。
『よく来たな、新鮮な肉の猟兵!』
「……!」
 一瞬にして広がる底知れない冷えた空気。可愛らしい少女とも妖艶な女ともとれるオウガ・オリジンの声は楽しげだ。
 オウガ・オリジンが瞬時にユーベルコードを展開させ、紅茶の入ったティーポットは彼女の手に握られる。
「遊戯をしましょう、オウガ・オリジン」
『ほう。茶会で芸か。面白い。言ってみよ卜一・アンリ』
 カップに触れながらトーはオウガ・オリジンの昏い顔をまっすぐと見つめ口を開く。
「貴女は毒の入った紅茶を二つ、入っていない紅茶を一つ出す。私は出された三つの紅茶の中から一つを選んでそれを飲む。飲んだ紅茶に毒が入っていたら貴女の勝ち、入っていなかったら私の勝ち」
 オウガ・オリジンのその闇色の貌は黒一色のまま。
「せっかくのお茶会ですもの、『楽しむ』としましょう?」
 かちゃん。
 トーの言葉と同時にカップが机の上に増える。オリジンは誘いにのった。
『面白い! 面白いぞ猟兵卜一・アンリ! 飛び切り痺れるスパイスティーで迎えよう!』

 紅茶が注ぎ終えられたカップが並ぶ方に手を差し出しトーは、息を吹きかける。
 ふわりふわりと紅茶の上から注がれるのは花弁。
 トーが最初にこのお茶会会場に着いた時に素早く摘まんだそれは虹色に色彩を変えながら水面へと触れる。
『……ん?』
「折角これから楽しい遊戯をするんですもの。花を添えるのも一興だと思ってね」
 トーが涼し気にオウガ・オリジンへと答えると不快な笑い声が返ってきた。
『あはは! いいぞ、いいぞ! 折角の茶会だ、アリスの柔らかな肉を香らせよう!』
 足元が僅かに揺れ、
「っ、これは!」
 オウガ・オリジンがティーポットを手に持ち笑い転げると、呼応するかのように花弁が雨の様に降り注ぐ。
(……ふざけているのね。でも!)
 トーの狙いは『そのまま』の状態で机の上に有る。
「まあ綺麗。それじゃあアリスに乾杯」
 カップの淵をなぞり──こくり。花の雨の中、アリスとアリスのお茶会が始まる。

「──貴女の負けね」

 罰げぇむよ、とトーが高らかに宣言する前にユーベルコード:黄金の雨のアリス(アリス・ザ・レインメーカー)が【悪魔憑きの拳銃】から放たれる。
 乾いた音が鳴り響き、オウガ・オリジンが銃弾の勢いそのままに宙に放り上げられる。
『グハァ! き、貴様!』
「ごちそうさま。花の匂いも相まって素敵な味がしたわよ」
 トーのカップの中には赤い花弁が一つ。
 毒で溶けて『いない』紅茶であることを誇るようかに咲き誇るそれをもうひと口とトーは口にし、貫かれる痛みに苦しむオウガ・オリジンへと視線を向ける。
「あら。随分素直に毒無しを用意したのね。ま、毒入りだったらイカサマとして撃つのだけれど」
『肉の分際で、このわたしに!』
 銃口がオウガ・オリジンの急所へ正確に向けられる。

「言いがかりで殺されるなんてこの世界らしいでしょう?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

真多々来・センリ

随分素敵なお茶会ですね
後輩ながらアリスとして、お招きいただき光栄です
折角なので…私の『おともだち』も、一緒にいいですか?
UCでツギハギのぬいぐるみ達を呼び出し、内の一体兎のぬいぐるみを膝の上に乗せて
小さめのティーカップを手に取り、ぬいぐるみに向けて飲ませてあげて
本当か嘘かわからない、おままごとのお茶会をして楽しみます

この子? ええ、大切なおともだちです。可愛らしいでしょう?
とても美味しいって喜んでいますよ
他の子にもいいですか?
この子たちはとってもお利巧なので、自分でカップを取れますし
少し零しても、お口が無くなってもちゃんと飲み干してくれますよ
…さ。はじまりのアリスも一杯、いかがでしょうか?



●二杯目
「随分素敵なお茶会ですね。後輩ながらアリスとして、お招きいただき光栄です」
 ピンクの髪を揺らし真多々来・センリ(手繰る者・f20118)がお茶会の主催者たるオウガ・オリジンに優雅に礼をする。
『嗚呼、嗚呼素晴らしい肉の匂い! 歓迎しようぞ真多々来・センリ』
 見えない顔に瞳があるならそれはきっと捕食者のそれだ。
 考えながら真多々来は机の上を見渡す。
(……あった)
 空の小さなティーカップへと手を伸ばし、
「折角なので……私の『おともだち』も、一緒にいいですか?」
『友達?』
「ええ。とても素敵な、私の友達です」
 ふわりと風が揺れ、かさりと二人のアリスの近くにある椅子から音がする。
 ツギハギが目立つぬいぐるみが一つ、二つ……沢山!
 可愛らしい兎のぬいぐるみを真多々来は膝の上に乗せ、ティーカップを掲げぬいぐるみに飲ませる。
「兎さん、おいしいお茶ですよ。……ね、可愛らしいでしょう?」
 こくりこくりとぬいぐるみが『動かされ』れば、お茶会の広間にオウガ・オリジンの不遜で下品な笑い声が響き渡たる。
『はじまりのアリスたる私と肉(アリス)と! 客が増えるか!』
 大げさにスカートの裾を摘まみ、ぬいぐるみへと挨拶をするオウガ・オリジンの姿形は少女(アリス)そのもの。
「とても美味しいって喜んでいますよ……他の子にもいいですか?」
 ああと返事したアリスのオウガ・オリジンが次々と増えた客へと紅茶を注ぐ。
 ポットから滴る最後の一滴──ゴールデンドロップが真多々来の目の前の青いカップに波紋を立てる。
『さあさ沢山の紅茶を飲んで楽しもうではないか。手伝ってやろうか?』
 真多々来は小さく首を振る。
「大丈夫です。この子たちはとってもお利巧なので、自分でカップを取れますし」
 かちゃん。かちゃん。
 ツギハギのぬいぐるみ達が自分達のカップに手を伸ばしとる。
 オウガ・オリジンは気が付いていない。『お友達』の中に詰まっている正体を。
「少し零しても、お口が無くなってもちゃんと飲み干してくれますよ」
 がちゃん。がちゃん。カップが割れる。
 紅茶が零れ、溶けだす音をぬいぐるみ達が踏み潰す。
『な……そいつら、は……っ!』
 オウガ・オリジン、その闇色の頬を掠めたのは割れたカップの破片。
 真多々来は紅茶の香りを楽しんでいる──動いていない。
「私のお友達ったら。ふふ、大丈夫。『お友達』はまだまだいるの」
 肩に、頭に、『お友達』が生まれる。
 ツギハギのぬいぐるみが紅茶の毒で溶けようとも、ボタンの瞳はオウガ・オリジンを睨んでいるのだ。
(増えてくれる。そう、お友達達。わたしの心に──オウガ・オリジンへの猜疑心や恐怖心が生まれる程に!)
 ユーベルコード:リアライズ・バロック。
 真多々来が感じた恐怖・猜疑心から生まれたバロックレギオン(お友達)は、オウガ・オリジンが招いてしまった客人。
『やめろ! 嗚呼、嗚呼、痛い!』
 お友達をオウガ・オリジンがいくら払おうと真多々来がオウガ・オリジンが対峙する限り、バロックレギオンの攻撃は止まない。
 
 バロックレギオンの集団に彼方此方を刺され、噛まれ、抉られ絶叫する哀れな『●●●のアリス』を椅子に腰かけた真多々来は見下ろす。
「本当か嘘かわからない、おままごとのお茶会は始まったばかりよ」

「……さ。はじまりのアリスも一杯、いかがでしょうか?」
 花に満ちあふれた空間に似つかわしくない絶叫が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネーヴェ・ノアイユ
給仕をしていらっしゃるオリジン様へと何か香りの良い紅茶でオススメのものがありましたらそれをいただけませんか……?と、お声を掛けて。

出された紅茶……。飲むと大変なことになる毒物なのですよね……。ですが香りは本当にとても良い……。ですね。こうして……。香りを楽しんでいるだけなら……。なんだか癒されます。
ですが……。此度はオリジン様討伐のために赴いてますので……。テーブルの下にてUCで短剣を制作し、右手で隠し持っておきます。
オリジン様が飲んでいない様子を気にして来られたら……。警戒されぬよう香りを楽しんでいると告げて会話を楽しむフリをしましょう。
あとは……。攻撃の機会が訪れましたら短剣にて一刺しを。



 ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)が椅子に座っている間、オウガ・オリジンは手にしたティーポットを楽し気に手の中で揺らす。
『今日は新鮮な肉の猟兵が多く来ておる。嗚呼、肉を貪る前に爽やかな風味の茶葉を揃えていてな』
 その声色はどこか楽しく、絶対的な捕食者たるプライドで満ちている。
(良い匂い、でも、これを飲めば……)
 毒入り紅茶を楽しまなければ、新鮮な肉というのは己になってしまうかもしれない。
 楽しげに給仕をしているオウガ・オリジンを横目にネーヴェは考える。
(此度はオリジン様討伐のために赴いてますので……頂くわけにはいかないでしょう)
 その思考を隠すかのように、あくまでも招かれた客人として声をかける。
「もしよろしければ。何か香りの良い紅茶でオススメのものがありましたら、是非それを頂きたいのです」
 暫しの沈黙が二人の間に流れ、オウガ・オリジンが指をぱちんと鳴らす。
『ああいいとも猟兵ネーヴェ・ノアイユ!』
 音が響き、ネーヴェの目の前に置かれた青いカップに紅茶が注がれていた。

『毒林檎を齧った姫の肉がスパイスの紅茶だ。良い匂いであろう』
 青い水面に、ぽこぽこと泡が立つ。
 自分の知っている紅茶とはかけ離れたそれを前にネーヴェが考える。
(これは……飲むと大変なことになる毒物なのですよね……)
 でも。
 ネーヴェの鼻腔をくすぐる紅茶の匂いは詰み立てのみずみずしい果物の甘美が香り。
(香りは、本当にとても良い……)
 カップの中の濃い赤褐色の水色の水面を眺めながら、ネーヴェは心の底からそう思う。
(ですが……此度はオリジン様討伐のために赴いてますので……)
 ほんの少しネージュはカップを見た後、左手でカップを持ち上げ紅茶の香りを楽しむ。
「いい香りです。林檎の爽やかで、それで、蜜の甘さも伝わってきます……」
 ネージュの口から紡がれる言の葉に満足げにオウガ・オリジンは嗤う。
『どうしたどうした? 死へと誘うはじまりのアリスがいれた紅茶であるぞ?』
 毒入り紅茶を楽しまなければ、ネージュはこの場で餌食となる。
 緊迫した空気に包まれる中、青い瞳でゆっくりとネージュは周囲を見渡す。
「こんなに素敵な香りの紅茶は初めてでして。どうしたらこの素敵な紅茶が出来たのか香りに胸を膨らませながら考えていたのです」
 それは、あくまでも会話を楽しむフリ。
 テーブルの下に隠されたそれを、突き立てるまでのお話。
『おお、このわたしの素晴らしさを聞きたいのか! ああ、どこにある、茶葉は……!』
 かたんと音がして、ネージュの近くへと寄ったオウガ・オリジンが茶葉の入ったキャニスター缶を並べる。
『これは血肉を干し、これは涙を集め』「ありがとうございます」
 ヒュっと風を切る音。その次に。
『グギャッ!』
「攻撃の機会がここまで簡単に訪れるとは……思いませんでした」
 ユーベルコード:ice create(アイスクリエイト)で作られた短剣が、オウガ・オリジンの顎から脳天へと突き刺さる。
 オウガ・オリジンの血とも、ヘドロともいえる黒いそれが紅茶に混じる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
せっかくなのでお茶請けを用意しましょうか。
この紅茶を使って美味しい紅茶アップルパイなんてどうです?とっておきのりんごで作るのです。
あ、一緒に作ります?

バレなければ【浄化】と【破魔】の魔法で毒を中和。真核・ユニゾンを紅茶で煮込んでアップルパイを作ります。【料理】には自信があるのです。
料理中も持ち前の【コミュ力】で楽しくトークを。
会話を楽しみながら毒入り紅茶の料理を作る。これも毒入り紅茶を楽しむですよね。

完成なのです!
お先に、どうぞなのです。
とっておきのりんごなので楽しんでほしいのです。

オウガ・オリジンが飲み込んだら【Lux desire】を体内から攻撃力重視で放ちます。【だまし討ち】なのです。



 七那原・望(封印されし果実・f04836)の目の前に置かれたカップに紅茶が注がれようとした時。
「せっかくなのでお茶請けを用意しましょうか」
『ん? どうした猟兵七那原・望。わたしの茶会になにか不満か?』
 いえいえと首を振った後、こてりと首を傾げ七那原はにこりとほほ笑む。
「折角はじまりのアリスさんにご招待されたお茶会です。おいしいお菓子があればもっと楽しくなります」
『……ほう。それは中々よきアイデア!』
 して何を作る?と尋ねられ、七那原はオウガ・オリジンの持つティーポットを指さす。
「この紅茶を使って美味しい紅茶アップルパイなんてどうです? とっておきのりんごで作るのです」
 いつの間にか七那原は輝く林檎【真核・ユニゾン】が幾つも抱えられていた。
「林檎を紅茶でことこと煮込んで、サクサクのパイ生地に包むのです」

 ──あ、一緒に作ります?
 ──勿論だとも!ミートパイの前にいいお茶請けになろう!

 無限の想像力を操るオウガ・オリジンのユーベルコード、その力はお茶会の会場にキッチンをすぐに作りました。
 私が林檎を煮詰めるので、アリスさんはパイシートをカットしてくださいと七那原が頼めばオウガ・オリジンは素直に従う。
(ご自分の力に自信があるのでしょう……しかし、私は料理に自信があるのです!)
 お鍋に砂糖とレモン、オウガ・オリジン特性のお茶に切った【真核・ユニゾン】を入れてカラメル色になるまでじっくり煮込む。
 時折浄化と破魔の魔力を込めると、紅茶の湯気の匂いが僅かながら変わる。
「アリス様、いつもお茶会ではお菓子をお茶請けに?」
『ははは! 命乞いをしてきたアリスの生肉が一番。しかしまあ、涙で塩辛いのも時には飽きる』
「でしたらきっとできたパイは気に入ると思いますよ」
『そうか、ならばきっとこの後食む肉も美味かろう』
「腹八分目にしないといけませんよ」
 料理中に、あえて明るく話しかけた七那原の手で『紅茶アップルパイ』は完成する。

「完成なのです!」
 オウガ・オリジンに借りたミトンを使いオーブンからきつね色が美しい紅茶アップルパイが取り出された。
「ふふ。お先に、どうぞなのです。とっておきのりんごなので楽しんでほしいのです」
 丁寧にナイフで切り分けられたそれをうやうやしくテーブルの上に置く七那原。
 闇色の顔の、口元に椅子に座ったアリスが口に含み、飲み込み──嗚呼、美味い!と感嘆した。
 その時である。
「とても、とても美味しいでしょう──数多の奇跡を引き起こす勝利の果実の味は」
『ん……っ、ぎゃああああ! はら、はらがあああああ!!』
 余りのおいしさにお腹を押さえるオウガ・オリジン。という訳ではなく。
「今までアリスを食べてきたオウガ・オリジンさん。お味はいかがですか?」
 ユーベルコード:Lux desire(ルクス・デザイア)、真核・ユニゾンから放たれる膨大な光の奔流がオウガ・オリジンを腹から焼き尽くす。
「さぞかし刺激的な味になりましょう。毒入り紅茶、楽しませて頂きました」
『おのれ……おの、が、がぁ、がは!』
 光の奔流は闇色をかき消すかのようにオウガ・オリジンの全てを焼き尽くし。

 はじまりのアリスの終わりは光の中に消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月20日


挿絵イラスト