迷宮災厄戦⑱-8〜食事はゲテモノほど美味いんだよ!
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「ああ、腹が減った。アリス! アリスはまだか!」
申し訳ございませんオリジン様、現在戦時中につきアリスの供給はストップ中です。
「ああ、そう言えばそうか……ならばあの国を作るぞ! 最高の料理を持ってこい!」
はい、かしこまりました。最高のシェフを手配いたします。
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「あなたのメルでございます。皆様のご活躍でついにこの世界のオブリビオン・フォーミュラ、オウガ・オリジンへの道が開かれました」
そう言ってメルが猟兵たちに配るのは巨大な芋虫……の形をしたチョコレートだ。小さい脚や透けた内臓までリアルに再現されていて、嫌な意味でも出来が良い。
「さて、このオウガ・オリジンですが、今までのフォーミュラとは比較にならないほど多様な戦術を持っている一方、精神的にはかなり不安定で子供じみたところがあります。それ故、自身の心境に合わせた不思議の国をいくつも生み出しているみたいですね」
強大な力に幼稚な心、ある意味では単なる悪党よりよほど恐ろしい存在である。
「で、今回皆様に向かっていただきますのは、『美食嫌い厨房』という世界です。ここはオウガ・オリジンがお腹が減ったけどアリスがいない時に作る世界だそうで。食事一つの為に世界を作るとは何ともダイナミックというか……私も予知を見ながら思わず合いの手を入れてしまいました」
会話っぽくなったのは偶然ですが、と付け加えるメル。
「というわけで皆様にはこの世界へ行き、オウガ・オリジンに食事を提供していただきたいのです。彼女の食の好みは『見た目は美しいが有害な食事』だそうで、例えば光の反射が美しい剣山のパイとか、香り立つアーモンド臭が溜まらない青酸カリクリームケーキとかそんなのが大好物だそうです……つまり、さっき渡した芋虫チョコの真逆ですね」
見た目は一般的な美しさを重視するが、中身は有害なほど良い、ということらしい。
「そして彼女の嫌いなものは『安全でおいしい料理』だそうで。そう言うものを食べると絶叫してのたうち回り、大幅に弱体化してしまうそうです……攻撃のチャンスですね?」
つまり、オウガ・オリジンに見た目も味も完璧な料理を食べさせて弱体化させ、その隙に倒してしまえと、そういうことなのだろう。
「食材と調理器具は揃っているようなので、現地で料理することが可能です。食材は普通のものからちょっと手に入りにくいようなものまで何でもあります。またオウガ・オリジンは好みは別として味覚は完璧なので、食べた料理に味から火加減から完璧に評価したうえでダメージを受けてくれます。あ、ちなみに食べる時は顔の黒い所に直接放り込むそうで」
なお、現在飢餓状態のため見た目が美しければ何でも、何度でも食べてくれるらしい。
「注意としまして彼女は腐ってもオブリビオン・フォーミュラ。食事による弱体化なしで戦えば勝ち目はまずないでしょう。必ず何か食べさせてから戦いを挑んでください。彼女は飢餓感に応じた巨大化能力や竈を操っての炎で攻撃してくるうえ、非戦闘中は一切の攻撃を遮断してしまいます。食事をさせて、戦闘に持ち込む。この手順は遵守してくださいますようお願いいたします。それでは、行ってらっしゃいませ」
そう言ってメルは深々と一礼し、猟兵たちを送り出すのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。まさかラスボス戦でコメディ系フレームが来るとは思いませんでした。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『おいしい料理を作ってオウガ・オリジンに食べさせる』
オウガ・オリジンは有害な料理を好むため、一般的に栄養豊富でおいしい料理を食べさせる程相手を弱体化できます。食材は現地に何でもありますので好きに使ってください。
見た目に関しても綺麗なものを好むため、そちらにもこだわった方がよいでしょう。
また、忘れがちですが戦闘依頼ですので、弱体化した後はきっちり戦闘してください。コメディ調ではありますが『やや難』依頼ですので、やるべきことをしっかりやらないと苦戦、失敗判定になる確率が高まります。
それでは、おいしいプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』と美食嫌い厨房』
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POW : ハングリー・バースト
【飢餓感と、自分を敬わない者達への怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : 女王は常に独り食す
非戦闘行為に没頭している間、自身の【肉体】が【虚無を映す漆黒の液体で覆われ】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : 炎なくして食事なし
レベル×1個の【美食嫌い厨房にある、無数のかまどから】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:飴茶屋
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、それでは頑張ってみましょうかぁ。
[料理]の心得は有りますから、機材等も一通り有るなら問題有りません。
栄養と見た目の両方ということで「ローストビーフ」をお作りしましょう。
牛肉は常温のもも肉を使用、塩胡椒と大蒜で下味をつけますねぇ。
火加減・焼き加減もしっかりと、アルミホイルで包んで焼けばフライパンで作れますぅ。
ソースは赤ワインとバター、醤油で如何でしょう?
盛付けにも気を付け、プチトマトやマッシュポテト等と一緒に。
弱体化出来ましたら【処檻】を使いましょう。
元が強力な方ですから『相手の強さ』に比例する此方は有効ですし、『巨大化』する程『重力』の影響は受け易くなりますので。
空腹を満たすためだけに作られた世界『美食嫌い厨房』。その世界に設えられた豪華なテーブルに、少女の形をした異形がついていた。
「腹が減った! 料理はまだか!」
子どものように喚く彼女こそオウガ・オリジン。アリスラビリンスのオブリビオン・フォーミュラである。
そしてこの世界には最高級の食材と、最新鋭の調理器具がごまんと用意されていた。それを知りながら自分で何かを作ろうとしないのが、彼女の彼女たる所以なのだろう。
「成程、それでは頑張ってみましょうかぁ」
彼女のその性質を最大限利用すべく、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はそれらを使い料理に取り掛かった。
まずはメインの食材を選定。色々あって目移りしそうだが、食べさせる相手の特性と自身の目的を考え、ここは常温のもも肉をチョイスした。
「栄養と見た目の両方ということで「ローストビーフ」をお作りしましょう」
メニューが決まれば次は調理だ。るこるはまず塩胡椒と大蒜で肉に下味をつけ、それをフライパンで外面に焼き色が付くほどに焼いた。
それをアルミホイルで包み、そのまましばらく置く。こうすることで余熱で仲間でしっかり火が通るというわけだ。
その間にソースづくり。赤ワインとバターと醤油で濃い味のソースを作っておく。
火が通った肉を適度な大きさに切り、ソースをかける。赤みの強いソースは肉と合わせて鮮やかな色合い……あるいは血を連想する、いかにもオウガ・オリジン好みの美しさだ。プチトマトとマッシュポテトも添え、彩も完璧。
「お待たせいたしましたぁ」
豪華なテーブルにそれが運ばれると、オウガ・オリジンはだれが何のためにそれを作って持ってきたかなど考えることなく、フォークを突き刺して自らの口……もとい顔の闇に放り込んだ。
「柔らかい肉にじっくりと火が通っているな。だが決して固くなるほどではなく、最低限必要な熱だけを確実に伝え、生肉としての柔らかさも損なっていない。それでいて縁の部分は香ばしさと歯ごたえを感じる程に焼き込まれているのも特徴だ。ソースは赤ワインをベースか。濃い味付けがシンプルな肉の味を潰さず引き立たせている。トマトの赤とポテトの白も見た目が華やかになるな。うむ……」
舌や歯があるのかすら疑わしいにも拘わらず長々と評価を並べるオウガ・オリジン。そして。
「ぐぎゃー!」
椅子から転げ落ち思い切りのたうち回った。事前の説明にあった通りではあるが、やはりどこか釈然としない光景だ。
ともあれ攻撃のチャンスには違いない。
「大いなる豊饒の女神の名に於いて、仇なす者達に厳格なる裁きを」
るこるは【豊乳女神の加護・処檻】、転げまわるオウガ・オリジンを超重力空間で抑え込んだ。
「ま、まさかお前……敵か!? おのれ、騙したな!」
何も聞かずに食べたのは自分だろう、という正論など知らぬ気に、オウガ・オリジンが自身の体を巨大化させていく。だがその体に、彼女を包む超重力空間に生えた棘が突き刺さった。その数は、極太の棘が七本。
「おのれ……ここまで来てまだわたしを愚弄するか!」
その棘に何か感じるものがあるのか、より怒りを募らせ力を増すオウガ・オリジン。だがこの檻は捕らわれた者が強いほどにその威力を増していく。オウガ・オリジンが怒り、強くなるほど巨体は重力に潰され、七本の棘は彼女に深く突き刺さり戒めた。それはまるで、ほんの一月前までの彼女の境遇を再現するようで。
「こんなにおいしいのに……難儀な方ですねぇ」
その光景を見ながら、るこるは自分の作ったローストビーフを一枚摘まむのであった。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
「相手は『オウガ・オリジン』。アリスラビリンス世界の平和を少しでも取り戻すため、こちらも全力を出して戦わなければいけませんね。」
【料理】の技能を使い、肉じゃがを作ります。味付けはしっかりおふくろの味です。
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡めた【サンダーランス】で『オウガ・オリジン』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】【火炎耐性】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等はお任せします。
シホ・エーデルワイス
様々な死に方がありますが
餓死はかなり苦しいと聞きました
安全で美味しければダメージを受けるというのはちょっとショックですが
せめてお腹一杯になるよう腕を振るいましょう
【供宴】で七面鳥の丸焼きを料理
みじん切りした人参、玉ねぎ、椎茸ともち米を
ニンニク、ハーブ、蜂蜜、塩や醤油等の調味料をすり込んだ七面鳥に詰め込み
オーブンで焼く
刺激的な味を好むとの事なので調味料は少し多め
更にアートのセンスも取り入れ
芸術的な美しさになるよう配色も工夫し
付け合わせの人参、じゃが芋、ブロッコリーを猟奇的な怪物にカットして一緒に焼き
盛り付け
皮がパリッと焼けたら完成
食べてもらえたらデザートに
甘いチョコ属性攻撃の誘導弾を召し上がれ
「様々な死に方がありますが、餓死はかなり苦しいと聞きました。安全で美味しけれダメージを受けるというのはちょっとショックですが、せめてお腹一杯になるよう腕を振るいましょう」
シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は飢餓状態だというオウガ・オリジンを思い、そう呟く。例えこれから戦って倒す相手でも、相手の意に染まない料理だとしても、極限の苦悶の一つである飢餓だけでも和らげられたら。そう思い厨房へと向かっていた。
「捧げるものシホ。感謝を込めておもてなし致します」
シホは【供宴】を使い、自身の料理の力を大きく高める。その力で作るのは、七面鳥の丸焼きだ。
もちろんただ焼くだけではない。人参をみじん切りにし、小さく目に切った椎茸、玉ねぎにもち米を中に詰める、スタッフィングという中身もしっかり入れてある。
ニンニク、ハーブ、蜂蜜、塩や醤油を肉によくすり込み下味も。ダメージを与えるために作っている料理とはいえ、少しでも相手の好みに寄せたいという思いから、味付けは濃いめ、ちょっと刺激が強すぎるくらいがちょうどいい。
あとはこれをオーブンに入れじっくりと焼き、その間に盛り付けと付け合わせの用意だ。
そしてもう一人、ここで料理を作る猟兵が。
「相手は『オウガ・オリジン』。アリスラビリンス世界の平和を少しでも取り戻すため、こちらも全力を出して戦わなければいけませんね」
戦いを念頭に料理へ向かうのは火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)。彼女は料理ももちろんだが、戦いの用意にも抜かりはない。
肉じゃがは少し甘く作ったおふくろの味。その間にも武器を揃え、魔法を準備し、いつでも先頭に入れるよう整える。
やがて二人の料理が出来上がり、オウガ・オリジンの待つテーブルへとはこばれた。
先に出されるのはシホの七面鳥。大きな丸焼きの周りには人参、じゃが芋、ブロッコリーが猟奇的な怪物の形にカットされ、まるで七面鳥を獲物として囲んでいるかのような華やかな色合いだ。
オウガ・オリジンはたまらず七面鳥をナイフで切り裂き、その肉を中身諸共顔の闇へと放り込む。
「おお、皮はパリっと焼けているのに、肉は硬くならず柔らかいままよく焼けている。ソースは蜂蜜などもあるが主体となるのは塩辛い味だな。少し痺れるくらいの強さがこの猟奇的な見た目と相まってちょうどいい」
なかなかの絶賛である。次は明の肉じゃがだ。
「こちらは……色は地味だな。わたしの好みじゃない。だがなぜだろう、ここでしか食べられない味という感じだ。あえて味付けのバランスを極端にし、具材も大ぶりかつ多少揃わない形に切った店では決して出せない味……ふむ」
じっくりと賞味し、そう評価を下す。そして。
「げぶぅっ!?」
思いっきり吹っ飛んだ。その勢いで彼女の纏っていた漆黒の液体がはがれ、無防備な姿を二人の前に曝す。
「我、求めるは、新たな雷撃の力」
倒れたところに明の【サンダーランス】が容赦なく突き刺さる。440発の雷の矢が、これでもかとオウガ・オリジンを貫き、その場に縫い留める。
「お、おのれ、またしても……!」
オウガ・オリジンが怒りに燃えた声を上げると、その怒りが形になったかのように、さっきまで調理に使われていた竈が大量に炎を噴き出した。
「残念、それは残像です」
明の姿が炎に飲み込まれた、と思えば一瞬にして別の場所に現れる明。その場も強い熱に炙られるが、それを耐えながら雷の矢の第二射を放つ。
「少しでもダメージを与えて次の方に」
「デザートも召し上がれ、お客様」
その後を継ぎ、シホが放つのは『チョコ』を属性にした誘導弾。チョコ属性とは……と思いきや、それは存外に硬く、当たれば砕けて徹甲弾になり、さらには溶けて傷口に沁みる……と意外なほどに殺傷力のある弾になっていた。
「どうせなら……『チョコ』でも持ってくればいいのに!」
不思議の国には似つかわしくない隠語を吐きながら、オウガ・オリジンは転げまわる。人を狂わす毒も彼女にとってはご馳走か。しかしその言葉を黙らせるかのように、チョコ弾はオウガ・オリジンの顔に向かって吸い込まれていく。
「うぎゃー!!」
甘い弾丸が、自分で料理を作らない甘ったれフォーミュラにたっぷりとご馳走されるのであった。
成功
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ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
POW
守護霊の【ドーピング】でメイド達と融合し
戦闘力と【料理】の技術を高め
【早業】の包丁捌きでキャベツ・人参・玉葱・ソーセージを切り
水・コンソメと共に鍋に入れ
美味しくなぁれと【祈り】を籠めて中火で煮て
塩胡椒で味を調えれば
具だくさんの野菜スープ完成♪
消化に優しく満腹感も得られます。料理は愛情!
さあ、召し上がれ♥
彼女が巨大化したら『欲望解放』で音速を超え
局部から体内に侵入し
全身を使って【慰め・生命力吸収】
快楽の【呪詛・マヒ攻撃】で飢えと怒りを緩和し
縮んできたら体内から脱出。
飢餓の苦しみから解放する為に私の楽園に導く
愛でお腹は膨れないと言いますが
現実は愛の前に歪む。
私が貴女を救済しますわ
多数の食材と調理器具を前に、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は一度瞑目する。そうして呼び出すのは、かつて救済し、今ともにある守護霊の中でもとりわけ家事に優れた者……メイドの霊たちだ。
「これより業務に移ります」
一人のメイドの口調を借りて宣言し、その高い料理技能をいかんなく発揮し始めるドゥルール。まずは食材を刻むところからだが、その早業は戦闘にも転用できそうな程。キャベツ、人参、玉葱、ソーセージと、いくつもの具材が精密に切り分けられていく。その大きさはやや小さく、気をつけないと切っている最中に潰れてしまいそうなくらいのサイズだが、高めた技能で形を崩すことなく同じ大きさに切り揃えられていた。
食材を切り終えたら水、コンソメと共に鍋に入れ中火でゆっくり煮たてていく。その時には「美味しくなぁれ」と祈りを込めるのも忘れない。もちろんこれもただのおまじないではない。呪詛の転用、プラスの願いを込めた『お呪い』だ。
最後に塩胡椒で味を調えて、具だくさんの野菜スープの完成である。
「消化に優しく満腹感も得られます。料理は愛情! さあ、召し上がれ♥」
作るだけでなく差し出すところまでがメイドの仕事と言わんばかりに、丁寧にトレイに乗せてスープをオウガ・オリジンの前へ運ぶドゥルール。
オウガ・オリジンはそのスープを大きめのさじですくい、顔の闇の中へと流し込んだ。
「ふむ、見た目は地味だけどとても食べやすいな。具材が小さく食べ応えは確かにないが、一方あまり噛まずとも飲み込める。極度の飢餓状態の時はこの方が体に負担は来ないだろう。また具材にばらつきがなく安心して食べられる。大きさが精密に揃った料理は機械的に作った印象を持たれやすいが、火入れや仕上げまでの丁寧さから食べる相手を思って作っていることが伝わってくる……」
その丁寧な仕事ぶりを絶賛するオウガ・オリジン。そして。
「ぐふぅっ!」
猛毒でも食べたかのように思い切りせき込んだ。やはり褒めておいてそれはどうなんだというリアクションだが、これが最大級の賛辞なのだとでも思うしかないだろう。
「こ、こんなものをわたしに食べさせるとは……許さん!」
怒りに任せ巨大化し、ドゥルールを踏み潰さんと片足を上げるオウガ・オリジン。だがこの瞬間こそ、ドゥルールの待っていた時でもあった。
「ありのままの私を見せてあげる!」
【欲望解放】の力で月下香の花弁だけを纏った姿になり、オウガ・オリジンの足元へと高速で突っ込んでいくドゥルール。巨大な体は足元が見えづらく、さらにはひらひらしたスカートが邪魔になって下半身回りは完全に死角だ。そのままドゥルールは上へと光速飛翔し、スカートの中、さらにはその奥へと身を躍らせた。
「く、くるな……わたしに構うな!」
自身の中を覗かれることに嫌悪感を剥き出しにしつつ、体をよじるオウガ・オリジン。だが怒りと飢餓に比例し膨れ上がるはずのその体が、少しずつ縮み始めていた。
「あなたのお腹を私が満たしてあげます」
オウガ・オリジンの内部へ入り込んだドゥルールは、そこから直接感覚と感情を麻痺させる呪詛を流し込み、飢餓と怒りを麻痺させた。代わりに快楽を与え、自身の楽園へ導ければと、ドゥルールはオウガ・オリジンの体を満たし続ける。
いられるギリギリまでスカートの中に潜り込み、オウガ・オリジンが元のサイズに戻ると同時に彼女から離れるドゥルール。
「愛でお腹は膨れないと言いますが、現実は愛の前に歪む。私が貴女を救済しますわ」
現実すら改変する力を持つオウガ・オリジンがその言葉をどのような感情で聞いていたか、膝をつき肩を上下させるその様子からは窺い知ることは出来なかった。
大成功
🔵🔵🔵
備傘・剱
これは、またうってつけの奴が来たな
ならば、俺が一食、食わせてやろう
調理開始、発動、だ!
材料があるのならば、極上の味と香り、そして、誰もが目を見張る美味い料理を作ってやる
知ってるか?酒場にはよ、予算ってのがあって、作れる料理には限りってもんだあるんだ、今日は其のリミッターを完全に取っ払ってやるよ
食器、飲み物、雰囲気に演出、美味い料理ってのは、料理中の姿を含めて美味いといわせなきゃな
出来上がったものを給仕して、じっくりと味わってもらおう
食事後のお茶も忘れずに、な
さて、腹も満たされたのなら、次は戦いだ
爆発に合わせて、暗殺を仕掛けた後、衝撃波、呪殺弾、誘導弾を正面から叩き込むぜ
アドリブ、好きにしてくれ
初志・貫鉄
即興共闘歓迎
POW
腹ペコなら、料理人なら腕を振るわねぇわけにはいかねぇぜ!
料理は、薔薇水に浮かぶ白玉と果物のデザート
果物は種と皮を除いた真っ白なライチ、丸くくり抜いたメロンとマンゴーは凍らせて食感の変化と、噛んだ時に匂いが開く仕様に
白玉は、通常品と甘さを控えたこしあん入りを潜ませる
薔薇のお酒を薄甘く仕立てたシロップに少量混ぜ、ガラスの器に注ぎ入れる
食材を全て入れ、最後にバラの花びらを浮かべ完成
礼儀作法で恭しく運び、覇気を体内で練り隠し、力溜めしながら接近&給仕
白玉の中に驚きを潜ませてありますと、嘘はつかず有害物質はそこにあると匂わせる
弱体化した瞬間にリミッター解除し限界突破、UCを打ち込む
すっかり料理漬けとなり飢え以外の者でふらふらとなったオウガ・オリジン。その彼女の前に、二人の男猟兵が現れた。
「これは、またうってつけの奴が来たな。ならば、俺が一食、食わせてやろう」
「腹ペコなら、料理人なら腕を振るわねぇわけにはいかねぇぜ!」
備傘・剱(絶路・f01759)と初志・貫鉄(拳食合一の功徳奉士・f26667)。彼ら二人にはこの戦場において圧倒的なアドバンテージと専門性があった。即ち、彼らは『プロ』なのだ。
「知ってるか? 酒場にはよ、予算ってのがあって、作れる料理には限りってもんだあるんだ、今日は其のリミッターを完全に取っ払ってやるよ」
キマイラフューチャーで酒場を営む劔。もちろん料理の知識や腕前は一級だ。だが経営する、というのはただ好きに料理を作っていればいいというわけではない。彼の言う通り様々な制限や限界があり、その中で経営を成り立たせていかなければならない。好きだけでやっていける程甘くはないのだ。
だが今、この世界にはそれがない。材料は文字通りに無制限。原価も0、何でもいくらでも作りたい放題だ。
「調理開始、発動、だ!」
ユーベルコードの力も借り、劔の全力がいかんなく発揮された。
そして貫鉄もまた、ヒーローズアースを拠点に各世界を巡って軽食屋台を運営している。儲けるためにやっている店ではないが、それだからこそ決して楽な経営ではない。その店の経営理念にも合致し、かつ経費の心配のない今回の依頼は彼にとってまさに本領発揮の場。飢えた我がまま少女に食事を供するため、貫鉄は早速材料を選びにかかった。
そして二人の男の料理が繰り広げられる。劔は野趣あふれる串焼きのバーベキューだ。使う肉は上物の各部位を惜しげもなく大振りに切り、それを鉄串で刺して焼いていく。もちろん肉を常温に戻したり、ソースに漬け込んでおくなどの下ごしらえも万全だ。
「食器、飲み物、雰囲気に演出、美味い料理ってのは、料理中の姿を含めて美味いといわせなきゃな」
その言葉通り、オウガ・オリジンの作テーブルから見える位置で肉を焼き、時に焼きものの時には鉄板に酒を垂らし炎を上げるパフォーマンスも行う。見た目も華やかな不思議の国の焼肉パーティーを料理を待つオウガ・オリジンに見せつけ、その期待を増幅させた。
一方貫鉄が作るのはデザートだ。種と皮を覗いたライチに、凍らせたメロンとマンゴー。温度の違うフルーツを用意しているのは、味と食感に変化をつけるためだ。白玉も用意するが、なぜか二つに分けて作り、後でそれらをまとめている。
シロップは薄甘く仕立て、僅かに薔薇の酒を入れて大人の香りを断たせる。
煌びやかなガラスの器にそれらを全て入れ、最後にバラの花びらを浮かべればできあがり。少女とレディの間に送る、薔薇のデザートの完成だ。
「さあ、じっくりと味わいな。食後のお茶も用意してあるぜ」
先に運ばれるのは劔のバーベキュー。それをオウガ・オリジンは一本掴み、串諸共丸ごと顔に放り込む。
「おお……これは肉の表面はしっかり焼かれているのに、中には肉汁が閉じ込められている。一串の中に複数の部位を入れ、まずは味つけは薄いながら肉の味が出ている赤身に、柔らかく食べやすいランプ。そしてその先には脂の溶けるような霜降りが……! 味に飽きないように茶や飯類も添えられ、時に野菜や焼きフルーツも挟まり変化もつけられている……」
串を全て顔に放り込んだ所で、貫鉄がデザートを恭しく給仕する。
「白玉の中に驚きを潜ませてあります」
「ほう……? なるほど、ライチの水水しい甘酸っぱさはもちろんだが、凍らせたメロンとマンゴーはまるで肉のように歯ごたえがあり、噛むほどに味が花開く。して、この白玉は……なるほど、一部の中に餡を仕込んであるのか。あえて全てに入れないことで味の変化と探す楽しみをつけているわけだな。そしてこのシロップ。薔薇の色と香りも良い、が……なるほど、少し酒が入っているか。中身を全て平らげた後、シロップを飲んでディジェスティフを気取れというわけだな。ふふ……」
シロップまでも飲み干し、オウガ・オリジンは器を置いた。いかにも食事を堪能したという様子の彼女は。
爆発した。
「さて、腹も満たされたのなら、次は戦いだ」
「倶利伽羅の剣撃、調伏の慈悲、我が身を通し、我と立ち塞がる者に教えを賜らん」
上空高く打ち上げられたオウガ・オリジンに、劔が素早く飛び掛かって短刀で急所を刺す。さらにはハンマーでの強打からの衝撃波に、誘導性のある呪詛の弾と苛烈な攻撃のフルコースが提供された。
落下してくるその先には、給仕の時から体内で覇気を練っていた貫鉄が【不動明王尊火焔撃】の構えを取って待ち構えている。そして落下してきたオリジンがちょうど貫鉄の真正面に来た時、地面を揺るがす強烈な震脚と共に繰り出された限界突破の拳が、オウガ・オリジンの腹を轟音と共に撃ちぬいた。
そのまま横方向に一直線に飛ばされたオウガ・オリジンは、そこにあった竈に綺麗にはまる。そして次の瞬間、その竈が噴火するように業炎を上げ燃え上がり、それが鎮火した後には何も残ってはいなかった。
「「またのお越しを」」
店主二人の声に送られ、腹ぺこ少女は骸の海へと帰っていったのであった。
大成功
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