迷宮災厄戦⑱-1〜with a magic broom
その国には地上という無粋なものはなく、ただただ純粋な青空が広がる。
水色から深い青、そんなキャンパスに描きこまれた白は柔らかそうに見える雲。
そんな光景のなか、ふわりと水色のエプロンドレスをなびかせ浮遊する金髪の少女。
軽快なステップを踏む靴と両手は星空。
少女の周囲をぴょんぴょんと飛び回るオウガやトランプは星の煌きを残し、青空に映るは天の川。
川を横切るように、空を自由自在に飛び回る魔法の箒たち。
その一本を表情なき少女は難なく捕まえ、へし折った。ばきん、と木屑が漂う――。
「嗚呼、いまいましい、忌々しい。美しい空も、涼やかな風も、わたしを満たすことはできない。
柔らかい肉と熱い血を持つアリスを喰らっても、満ちるのは腹ぐらいなもの。
どこからきたかも分からぬ馬の骨どもめ、ふざけた猟書家も、泥足で世界へと踏みこむ猟兵も、全て、全て、許すことなどできぬ……!!」
良いか、箒どもよ!!!
表情なき少女――オウガ・オリジンの恐ろしい声が『空飛ぶほうきが密集してできた国』へと響き渡る。
「今からやってくる者はすべからく敵である。そしてわたしの血肉となり、お前たちの力となろう。
わたしみずから始末してくれる。肉片を、血飛沫を、かき集めるがよい」
●
「はじまりのアリスにしてはじまりのオウガ――とうとうオウガ・オリジンへの道が開いたわね!」
慌ただしく入ってくる猟兵たちを迎えたのはポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)であった。
「早速だけれど、オウガ・オリジンへの撃破へと向かってちょうだい。
皆さんがこれから行くのは、『空飛ぶほうきが密集してできた国』よ」
その名の通り、地面がなく、箒が飛び交っている世界だ。今からいくこの国の一端は青空が広がる場所である。
「とは言っても雲はあるわね。
空中戦となるから皆さんには自分に合う箒を見つけて、オウガ・オリジンへと挑んで欲しいの。箒たちは、オウガ・オリジンに怯えていたり同調していたり、反骨精神を持っていたりと性格が様々ね」
飛び交う箒たちの一本を捕まえて、言うことを聞かせれば、箒にまたがって空中戦ができるようだ。無理に使おうとすれば上手く進むことはできないだろう。
「自前の飛行能力を使うのも可能だけれども、空に漂う魔力が阻害してくるわ。戦闘となれば不利となるだろうから注意してね。
――オウガ・オリジンは可愛らしい姿だけれども、中身は凶悪。どうか油断なくね。
それじゃ、検討を祈って! いってらっしゃい!」
そう言ってポノは猟兵たちを、アリスラビリンス世界へと送り出した。
ねこあじ
ねこあじです。
多岐にわたるオウガ・オリジン戦、魔法の箒編です。
ちょっと楽しそうな感じですね。
オウガ・オリジンは普通に飛んでいます。
オウガ・オリジンの必ずの先制攻撃はありません。
プレイングボーナスは「空飛ぶほうきをうまく使う」こととなります。
プレイングが来ていたら、17日(月曜)夜9時くらいにシステム的に閉まる感じです。
採用はなるべく頑張るの方針。
それでは、楽しいプレイングお待ちしています。
第1章 ボス戦
『『オウガ・オリジン』と魔法の箒』
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POW : ファイア・オブ・ハート
【ハートのトランプ】が命中した対象を燃やす。放たれた【ハートの女王の姿をした】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : ファンタズム・メイジ
【空飛ぶほうきを駆る魔法使いのオウガ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 箒どもよ、わたしに従え
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【魔法の箒】で包囲攻撃する。
イラスト:飴茶屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
ふんふん、空飛ぶ箒の国。楽しそうにゃん。先ずは形から入っていくにゃあ。僕は【子猫の魔法使い】に変身し、暴走中毒な魔法の箒を呼ぶにゃん。
にゃはは、妖精の翅で滑空は兎も角飛行は苦手にゃんだよね。それに子猫だし。ということでレッツ暴走♪。
子猫の身体能力にサーフィンやダンスで鍛えたバランス感覚等で暴走飛行を乗りこなし、鼓舞する様にミュージックエナジーを流して箒達と複雑に絡み合う飛行を楽しむにゃん。
髭感知で危機を見切り、呪いのオーラ防御を纏った肉球バッシュ弾くにゃよ。
隙を見て反撃の巨大肉球魔法弾で箒達諸共堕としていくにゃん。
元よりコレは気絶攻撃、不殺魔法タイプだけど場所が空なら。
「ふんふん、ここが空飛ぶ箒の国」
しぐさでもふんふんと、レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)は猫そのものの動きで国の匂いや清涼な風の香りを肺一杯に。
周囲ではひゅんひゅんと数多の魔法の箒が飛んでいて、フェアリーの翅を懸命に動かしたレフティはぽふんと近くの雲に飛び乗った。
平和な国ならばこの雲たちと魔法の箒とで遊ぶのも楽しそうだけれども――、
「我が箒を以て、私は空を翔け「魔法」を織り成す」
そう唱えたレフティは『子猫の魔法使い』となり、その小さな肉球の手には呼んだばかりの大きな魔法の箒。
風を纏う魔法の箒は、今のところ大人しくレフティの手元におさまっている。
箒に乗ってみればふわふわとした空気のクッション。意外と乗り心地が良いものだった。
「ふにゃ、行けるかにゃん?」
雲を蹴り、ふよんと浮いた魔法の箒は然し唐突に加速した。
ばびゅんと空を切り、真上の空へと突っこむが如く飛んでいく。次に錐のように螺旋を描きながらぐるんと大きく旋回した箒は、下降していった。
「にゃはははは、レッツ暴走にゃ~♪」
レフティの楽しそうな心は、世界に伝わって根源的な力を呼び起こす。
リンリン、リリン――跳ねて遊ぶ子猫の首鈴のように、錐揉み飛行はヒュンヒュンと風を鳴らし、弧を描く刹那の滞空にリュートのような広がりを見せる音が奏でられた。
暴走する箒と風を乗りこなし、レフティのミュージックエナジーが楽しく世界と響き合う。オウガ・オリジンの作った国は難なく猟兵を迎え入れていく。
「ははは、何とも軽快で心地よく、楽しげな音楽であるな」
イフェイオンの六つ星花を手に、オウガ・オリジンが言う。言葉は軽く、けれども恨みつらみを幾重にもしたような声。
「箒どもよ、音を返してやるがよい」
わたしに従え、とオウガ・オリジンの傲慢な声に応じ、ひゅんひゅんと飛び交っていた魔法の箒たちが『カカカン!』と打ち合い、レフティを威嚇する。
パンッ! と箒が箒を打ち払い、弾き飛ばされた箒がレフティへと迫る。
「にゃ!」
空の微かな魔力の変化を察知した見かわしのヒゲが揺れ、レフティは箒の柄をぐんっと押してひらりと回避した。
「にゃ!?」
けれども猟兵に味方したアウェーな魔法の箒に、空飛ぶ箒たちの猛攻が襲う。穂先が跳ねあがったところを、降下してきた敵の箒がばしんと叩き払った。
大きく旋回するも子猫の身体を活かして、バランスを保つレフティ。
「にゃっ!」
先柄を軸に振り下ろされた穂先を肉球バッシュで弾く。
パンパンと猫じゃらしを相手にするかのように箒たちを払っていったレフティは、箒が重なり狭かった場を広々としたものへと変えていった。
徐々に、オウガ・オリジンの元へと近付きながら――。
(「我が魔法を以て、集いし魔力よ。「星」をも堕とす肉球となれ」)
小さな子猫の手を振るえば、魔力でできた超巨大肉球が顕現しオウガ・オリジンを叩いた。
トランプカードを一枚翳し、攻撃をいなすオウガ・オリジン。魔力の猫爪が掠ったのか、金髪が一房落ちた。
「小さな小さな喰らうところも無さそうな仔ネコチャン、ダンスの余興を頼もうか」
箒が鋭く払われトランプカードが舞うなか、レフティは空を翔ける。
成功
🔵🔵🔴
月夜・玲
ふーん、結構性格荒々しいんだオリジン
見た目と大違いだね
ま、空中戦なんてなかなか経験出来る事もないしね
さて、行ってみようか
●
箒を見て怯えてそうな箒を選び捕まえる
大丈夫、私があのこわーい顔無しさんをやっつけてやるからさ
ほんの少しだけ力を貸してくれない?
って感じで交渉してみよっか
自由な空を取り戻そうよ?
空飛ぶ箒に乗って戦闘開始
どんどん加速しながらオリジンを目指す
箒くん、細かい制御は任せたよ
私は攻撃に努めるから
Key of ChaosとBlue Birdを抜刀
【神器複製】を起動
半分をオウガに向けて足止めをさせて箒に加速を指示
加速した勢いを乗せて『念動力』でオリジンへ射出
射出後は急速離脱
それじゃーねー
トランプカードや取り巻きのオウガを遊ばせるオウガ・オリジンは腕を組み、殺気を放っている。
「ふーん、結構性格荒々しいんだ……オウガ・オリジン」
ふかっとした白い雲に伏せ、風の流れに身を任せる月夜・玲(頂の探究者・f01605)はオウガ・オリジンを見上げた。
「見た目と大違いだね」
花とお菓子が好きそうなふわふわとした少女の姿でありながら、敵の言動は鬼畜そのものである。
ひゅんひゅんと飛び交う空飛ぶ箒たちは玲に気付いているのか、気付いていない振りをしているのか、それともオウガから玲を隠しているのか――オウガ・オリジンは国への侵入者に今だ気付かない。
(「ま、空中戦なんてなかなか経験出来る事もないしね」)
ふかふかとした不安定な雲の上で、玲は周囲を見回した。
「ん? そこの……空飛ぶ箒くん?」
自身が乗っている雲下に何かが隠れているようで、穂先が微かに見える。
玲が声を掛ければ、雲にべったりとくっついたまま転がるようにして箒がその姿を見せた。
さげ緒となる部分に水玉模様のリボンを付けた箒だ。
「君、オウガ・オリジンが怖いのかな?」
玲が声を掛ければ、ささっと隠れる箒。ちょっとだけ考えたのち玲はふかふかとした雲に手を突っ込み、向こう側にある箒の柄に触れた。びくっと震えた。
「大丈夫、大丈夫。私があのこわーい顔無しさんをやっつけてやるからさ、ほんの少しだけ力を貸してくれない?」
掌を広げて、柄に添うように。箒はぶるぶると震えていた。
「ここは君たちが自由に飛べる空の国なんだよね? 自由な空を取り戻したいって思わない?」
――。
「きっとみんな心の中では怯えてる。怖いと思うのは自然なこと。その怖さを糧に思いっきり空を飛んでみて。八つ当たりみたいに――そうしたら私が一撃を喰らわせてやるよ」
ぶるぶると震えていた箒は、玲の言葉に何かを決心したのか、ぴたりと彼女の掌にくっついてきた。
ぐっと握れば浮上してくる空飛ぶ箒。雲の塊を散らし、風を纏い空気を繰る箒は、玲が座りやすいように空気のクッションを作ってくれた。
「良い子だ。さあ、行ってみようか」
バンッ! と唐突な加速に今まで乗っていた雲が霧散し、風を切って空飛ぶ箒と玲が浮上する。
「箒くん、細かい制御は任せたよ」
一時のバディに声掛ける玲。
私は攻撃に努めるから――Key of ChaosとBlue Bird――System[Imitation sacred treasure]を利用した二振りを抜き神器複製を起動させれば、混沌を齎す鍵にして剣たちが一斉にオウガ・オリジンへと向かって行った。
「来たか、猟兵!」
オウガ・オリジンの声に応じてロケットの如き突進を見せるは、空飛ぶほうきを駆る魔法使いのオウガ。
『はじまりのアリス、汝の願い、叶えてやろうぞ!』
魔法使いのオウガがステッキを振るえば、青空を切り裂き夜が駆けた。
パンッと穂先を跳ね上げ、馬のような動きで空飛ぶ箒が敵の攻撃を避ける。
「いい感じ」
玲が励ますように言い、還りつく為の力を振るう。生まれた夜を還し、そのままBlue Birdの数振りが魔法使いのオウガを追い、こちらへと向かって来るのを阻害する。
風を切る空飛ぶ箒の加速に乗り、玲は残る全ての兵器を射出した。
「ギャアッ!」
苛烈な悲鳴を上げるオウガ・オリジン。刃は畏れなのか、飛び退こうとしたが勢いに乗った刃は即座に敵を斬り裂く。
『ギャギャギャ!』
ウサギがケタケタと嗤い、鬼の子が飛び回る。数刃が弾かれるもバラバラと芳香の強い黄木蓮が散り空に漂った。
「オ・ノ・レ……ッ!」
怒りの声がオウガ・オリジンの顔無き部分から発するも、その時には玲も空飛ぶ箒も急速離脱した後だ。
「それじゃーねー」
玲の軽やかな声が落ち、ふわり、手を振ったように風が吹いた。
大成功
🔵🔵🔵
ネーヴェ・ノアイユ
あれが……。オリジン様……。私達アリスの始まりにして……。オウガのはじまり……。
元より空中浮遊には多少の心得がありますが……。ここはその心得のみでなく箒様にもご助力を願いましょう。
見つけた箒は雪のように白い箒様。箒様……。あなた様に怯えることなき自由な空を約束します。ですから……。此度の戦いにどうかご助力を。
箒様のご助力を得られましたら空へと飛び立つオリジン様の元へ。
飛んでくる攻撃から自身の身と箒様を氷壁の盾受けにてかばうようにしつつ……。リボンに魔力溜めしていた魔力と全力魔法によるとっておきの一撃を叩き込みにいきます。
せめて……。この一撃にて動きだけでも鈍らせることが出来れば……!
「あれが……。オウガ・オリジン様……」
星空のリボンで柔らかな金の髪を飾り、質感の柔らかなエプロンドレスからその四肢を揺蕩わせるオウガ・オリジン――その姿は儚き少女のように見えた。
そう、ネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)のように。
「私達アリスの始まりにして……。オウガのはじまり……」
その謎めいた連鎖に、ネーヴェは小さな手をきゅっと握りしめた。
ふわり、ふわりと、不思議な魔力で浮遊するしかない空の世界において、ネーヴェは幾分か自在に移動できるようだ。白いふかふかな雲に降り立つ。大きなリボンが揺れた。
(「元より空中浮遊には多少の心得がありますが……」)
けれども確かに感じた阻害。重く鉛のように魔の空気が纏わりつく。
(「ここはその心得のみでなく箒様にもご助力を願いましょう」)
ふかふかとした白い雲。そこに同化するように、埋もれ隠れる箒は雪のように白かった。さげ緒は真っ白な――否、銀が織りこまれた、雪原のようなリボン。
そうっと近付いてネーヴェが添うように座れば、氷と雪をモチーフに取り入れたアリスクロスの裾が広がった。優しい心を顕現したかのような氷の結晶と、淡雪のような柔らかな服だ。
「箒様……。雪のように白く無垢な、箒様。どうかご助力願えませんか……」
あわやかな雪が降り落ちてくる――優しく、その身に積もる――そんなネーヴェの声は白き箒の興味を惹いた。
「あなた様に怯えることなき自由な空を約束します」
ですから……と指先を柄に添えるネーヴェ。
「此度の戦いにどうかご助力を」
真摯な言葉が響いたのだろう、僅かに浮上した白き箒はネーヴェの手におさまった。
「ありがとうございます」
ネーヴェは微笑み礼を言った。
そのまま更に浮いた箒に乗れば、風纏う空飛ぶ箒は空気のクッションを作ってくれる。
「箒様、お優しいのですね……」
空を飛ぶオウガ・オリジンは既に猟兵たちの存在に気付き、箒たちへ号令を掛けていた。
「箒どもよ、わたしに従え――泥足で国へと踏み入った猟兵たちをなぎ払え!」
幾何学模様を描き複雑に飛翔する箒たちは、柄を軸に穂先で鋭い攻撃を仕掛けてくる。
「大丈夫です、箒様――お任せを」
飛んできた攻撃に向かってネーヴェが魔力を放てば分厚い氷壁が形成された。
続いて、トンッと柄先で氷壁を倒して向かってきた箒を抑えた白き箒は、滑るようにして再浮上し旋回する。
「束ねるは妬み。放つは憎悪」
大きなリボンが蓄えていた魔力が放出される。元々低い空の温度が更に下がった。
「万象奪う力となれ。総て凍てつく猛吹雪」
ネーヴェの詠唱に、猛吹雪がオウガ・オリジンへと放たれる。
オウガ・オリジンの纏う花がパキンッと凍り付き砕け散った。
(「せめて……。この一撃にて動きだけでも鈍らせることが出来れば……!」)
魔力を叩きこむネーヴェ。
轟! と激しい氷雪がオウガ・オリジンへと吹きつける。
「嗚呼、寒い、寒い、サムイ……!」
無い顔から白い息は吐き出されることもなく、けれども忌々しい声が放たれた。
「凍てつく国では温かな紅茶が必要だが――その前に」
『ゲ、ゲ、ギェギェ!』
ざくざくと滞空し始めた氷の粒上を駆けるオウガのウサギ。箒が動き、氷粒を掃き集める。
ここまでだ。
ネーヴェの放つ猛吹雪が散開する。キンと冷えた空は確かにオウガ・オリジンの動きを鈍らせていた。
冬の星空のように燦々と、氷結の魔力が内包したオウガ・オリジンの四肢は痛みを伴い輝く。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
協力して頂く為の箒、彼等を説得して手伝って頂きましょう
視力にて箒達を確認、怯えていたりオリジンに対して敵意があったり
動きを見て手伝って頂けそうな者を情報収集
その箒に話し掛けてみましょう
コミュ力を活用して挨拶
貴方達の仲間がまるで小さな枝のように折られていく
そうして命を容易く奪う者を私は決して許しません
人であれ、物であれ
意思があり、あれを許せないと思う心が在るのならば
どうか貴方の力を貸してください
貴方とならば私は今以上に戦えると信じております
協力して頂けたなら、そのままオリジンへ
トランプはなぎ払いと衝撃波を与えて一掃
倫太郎殿の援護、そして箒殿で敵に急接近
狙うは刹那
早業抜刀術『静風』の一閃
篝・倫太郎
【華禱】
口説くつか協力して貰う箒は
オリジンの指示に従って無さそうなのか怯えてるっぽいやつ
口説くのは夜彦の方が上手いから、俺も頑張ろっと
野生の勘と第六感で目星をつけて説得
力でねじ伏せて好き勝手してるあれを倒しに来たんだ
少しの間、手ぇ貸してくれ
別にお前らをどうこうするつもりはねぇからさ
使えそうなら誘惑と催眠術も使ってく
箒の協力を得たら戦闘開始
拘束術使用
射程内に入った敵は鎖での先制攻撃と拘束
トランプは吹き飛ばしと衝撃波を乗せた華焔刀のなぎ払いで対応
刃先返して2回攻撃
夜彦には絶対に命中させない
敵の攻撃は空中戦を用いた見切りと残像で回避
いっちょ頼むぜ!仮初の相棒!
はじまりがあるなら、おわりはあるべきだろ
アリスラビリンスへ――訪れた国は『空飛ぶほうきが密集してできた国』。
大地はなく、風は緩やか。青空広がるこの一画では白い雲がゆったりと流れ、数多の箒が飛んでいる。
「空中浮遊っつか、宇宙みたいっつーか」
体幹が定まらず、どうしたものかと篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は周囲を見回した。咄嗟に箒を掴もうにも体勢を崩すのがオチだ。
その時。
「倫太郎殿」
若干下の方から月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)の呼ぶ声。
「白い雲は掴むことが出来るようですよ」
そう言った夜彦は雲を掴んでいて引き寄せる最中で。
ふかふかな白い雲へと降り立った。不思議とここだけ重力があるような気がする。
「えぇ……すっげぇメルヘン」
一体どんな顔をすればよいのやら。倫太郎もまたふかふかな雲に。メルヘンだ――もう一度、心の中で呟いた。
遥か頭上では猟兵たちと一戦交えるオウガ・オリジンの姿。箒たちは協力していたり、遠ざかっていったりと様々だ。
「さて、夜彦。どの箒をスカウトする?」
「そうですね……怯えていたり、オリジンに対して敵意があるもの――」
言葉後半は呟くように、飛び交う箒たちを注視する夜彦。
すると何かを――誰かを探している空飛ぶ箒を見つけた――同時にあちらもこちらに気付いたのか、何やら警戒するように旋回している。
オウガ・オリジンやオウガたちの注意をひかないよう、夜彦と倫太郎は旋回する箒たちに向かって手を振った。一瞬ぴたりと止まった箒はゆっくりと降りてくる。
「警戒されてるな」
倫太郎の声に頷きを返した夜彦は、箒を見上げて「こんにちは」と挨拶をした。
「箒殿、ご安心ください。私達はオウガ・オリジンを倒しに来たのです」
警戒していても近付いてくるのは、逆を言えば何か思うところがあるのだ。夜彦は端的に己の立ち位置を述べた。
「ですが、オウガ・オリジンは空を飛び回っている――箒殿の助力を願いたい。貴方達の仲間がまるで小さな枝のように折られていく。そうして命を容易く奪う者を私は決して許しません」
自身の目線まで降りてきた空飛ぶ箒へ夜彦は声を掛け続ける。
――反応はあるのか、ないのか、分かりづらいが『物』とはそういうものである。けれども柄に括られた赤いリボンはじっとこちらを見つめているかのよう。
この空飛ぶ箒もまた、共に戦うものを探し飛び回っていたのかもしれない。箒の見定めようとする意思を夜彦は感じ取った。
「人であれ、物であれ。意思があり、あれを許せないと思う心が在るのならば、どうか貴方の力を貸してください」
現実改変ユーベルコードにより作り変えられた国。元は何処かの国の箒であったかもしれない空飛ぶ箒たち。
「貴方とならば私は今以上に戦えると信じております」
夜彦が両の掌を差し出せば、パシン! と、やや勢いよくおさまる空飛ぶ箒。彼らもまた戦うものであった。ヤドリガミである夜彦の声に甚く感じ、通じるものがあったのだろう。
そんな熱いつわものたちの空気を感じ取り、「おぉ」と感嘆の息を吐く倫太郎。
「さっすが夜彦――鮮やかな口説き……俺も頑張ろっと」
呟き、周囲を見回した倫太郎は、同じ赤いリボンを括り微動だにしていない空飛ぶ箒を見つけた。何やら羨ましそうにつわものたちを見ている、ような、気がする。勘である。
「なあ、ちょっと――そう、あんただよ」
手招きすれば、倫太郎をやっぱり警戒しつつ『すすす……』と寄ってくる空飛ぶ箒。オウガと猟兵、愉快な仲間と、意外と見分けが付いていないのかもしれない。
あのさ、と招いていた手を内緒話するように口元に翳せば、更に近寄ってくる空飛ぶ箒。気さくな兄ちゃんなしぐさをする倫太郎の懐へは、結構人見知りな箒も入りやすい様子。
「力でねじ伏せて好き勝手してる『あれ』を倒しに来たんだ。少しの間、手ぇ貸してくれると嬉しい」
別にお前らをどうこうするつもりはねぇからさ。
そう言えば、ばっさばっさと自身を振りながら空飛ぶ箒が倫太郎の手へと落ちた。
風を纏う空飛ぶ箒は空気のクッションを作って乗り心地良くしてくれた。ふかふかな雲を蹴り、浮上する二人と二本。
「一気に仕掛けましょう」
夜彦の声に、ぎゅんっと箒たちは加速した。
「縛めをくれてやる!」
射程内へと入ったオウガ・オリジンへ災いを縛る見えない鎖を放ち、攻撃をしかける倫太郎。
ぎしりと強張ったオウガ・オリジンが、手の内のトランプカードをはらはらと舞い落としてくる。微かに聴こえるのはLight、light♪ と口ずさむ少女の声。
「真っ黒な兎が言いました♪ 進言します女王様、ここは火炙りの刑でーす♪」
カードが通りすがりの箒に触れると、ぼうっと箒は燃え盛る。仰け反り一瞬退避する箒たち。
「――はっはははは行くがよい燃え盛れ! わたしは、今、ウェルダンを食べたい気分だ!!」
がらりと変わるオウガ・オリジンの声。ハートのトランプがばら撒かれ、ハートの女王の姿をした炎が空を翔けた。
跨る箒は東雲よりも少し心許ないものであったけれども――夜彦の動きを汲んでくれる働きをする。抜き放った夜禱を振るえば、撒かれたトランプが吹き飛ぶ。一閃ののち夜彦は刀を納めた。
それを見たオウガ・オリジンは対象を僅かに変えた。
第二陣、投擲され真っ直ぐに向かってくるハートのトランプ。
「いっちょ頼むぜ! 仮初の相棒!」
空飛ぶ箒に跨り、倫太郎が華焔刀を振るった。彼の呼吸を捉えたかのように箒が前傾し、なぎ払いを補助する。一刀から放たれた風圧がトランプカードを吹き飛ばし、焔を巻く。刃を返しての払いが炎を掻き消した。刃先も長柄も石突も、華焔刀は倫太郎の一部となり的確にカードを弾く。間合い全てが彼の領域であった。
「頼むぜ、夜彦!」
禍焔を狩り取り、道を作る倫太郎が声を張った。
「お任せを。行きましょう、箒殿」
鷹の如き鋭い加速。
――狙うは、刹那――呼吸を止めれば、思わぬ力が入る。浅く、浅くの呼気に対し流れ薙ぐ一閃は深い。
オウガ・オリジンの朧な星空を斬り裂き、猟兵の攻撃により内包されていた氷粒が刃の軌跡を描く。
「ギャアッッ!! 痛いッ! 痛いィィィッ!!」
オウガ・オリジンが悲鳴を上げ、鮮血を流す変わりに細い黄花弁を撒き散らす。
「わたしを誰だと思っている! 嗚呼、嗚呼、こんな輩に力を削がれるとは――」
「はじまりがあるなら、おわりはあるべきだろ」
『はじまりのアリス』『はじまりのオウガ』へと向けた冷々たる倫太郎の声。
ぎしり、ぎしりと。様々なものを屠り続けてきたオウガ・オリジンの四肢を見えない鎖が拘束し続ける。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
箒星・仄々
意思持つ魔法の箒さん!
不思議の国らしいですね
オリジンさんを倒し
箒さん達を護り抜きましょう
楽し気な曲奏で
警戒心を解きほぐします
箒さんの動きや飛行に合わせるように演奏
ふふ音楽に合わせて踊ってくれるみたいで
素敵です
皆さんを護りたいことをお伝えし
助力を請います
箒さんに乗ったら青空の彼方へ!
包囲攻撃に対しては
風の矢を一点に打ち込み竜巻を生じ
箒さん達やトランプ、オウガメイジを吹き飛ばし
道を拓きます
オリジンさんへ三魔力の矢
オリジンさん
オウガたる貴方にお伝えしても詮無い事ですが…
自分の事ばかり求めては
いつまでも満たされる事はありませんよ
他者と共にあるのが自然なのですから
どうぞ骸の海へお還り下さい
終幕
鎮魂の調べ
アリスラビリンスの世界、転移した先は『空飛ぶほうきが密集してできた国』で、唐突に重力を失った不思議な感覚に、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は少し落ち着きなく尻尾を振った。
一面青の空。ゆったりと流れる雲と飛び交う空飛ぶ箒。
「おっと……これは」
空中浮遊のような宇宙遊泳のような。空を蹴っても先へと進むのは難しく、バランスを崩してくるんくるんと空中で回る仄々。
「ちょっと楽しい気もしますね――ではなくって」
うっかりと丸くなってしまいそうであったが、ここを訪れた目的は別にある。ボタンを押して蒸気機関式竪琴へと展開していく懐中時計の音も、仄々にとっては演奏開始の合図。ピンと張った弦を弾いた。包容ある温かな弦の音は猫の手の動きに応じて、軽快なリズムを奏で上げた。
仄々は一本の箒を定めて、動きに合わせた音楽を。
疾走感ある曲は時に躍動的に弾んでいて、周囲の空飛ぶ箒たちは音色に合わせてびゅんびゅんと加速し始めた。――オウガ・オリジンを恐れていた箒も楽しそうに。
「ふふ、音楽に合わせて踊ってくれるみたいで素敵ですね」
仄々の尻尾も楽しそうに動き、再びくるんと回ればふかふかな白い雲が背に当たった。どうやら重力のある雲のようで、仄々はそこに立ちようやく安定感を得た。
「不思議の国の、意思持つ魔法の箒さん! オウガ・オリジンを倒すための助力を願えませんか?」
ポロン、ポロン。
軽やかなリズムに声を乗せれば、箒たちの意識が集中するのを仄々は感じ取った。それは嫌なものではなかった。
きっと、箒たちが話せるのならこう言ったことだろう。
楽しい気持ちを思い出させてくれてありがとう、と。
空飛ぶ箒は風を纏い、作った小さな空気のクッションに仄々を座らせて青空を飛行する。
「嗚呼、何たることか。今、この戦場にそのような高揚など要らぬだろう――箒どもよ、わたしに従え!!」
空飛ぶ箒たちを従えたオウガ・オリジンが周囲の猟兵たちを、仄々を攻撃する。
向かってくる箒たちに、仄々は大きな風の一矢を放った。
敵陣へと入った矢は螺旋を描いて一気に解け、鋭い竜巻となる――風の勢いに弾かれ、または巻き込まれて彼方へと放られていくオウガと箒たち。
「なに!?」
発生した竜巻から届かぬ場所へとオウガ・オリジンは回避するが、首魁へと続く空は拓けていた。
「さあ、ちょっと派手にいきますよ~」
430本の炎、水、風の魔力の矢が一気に放たれ、そして三魔力を織り上げたとっておきの矢がオウガ・オリジンの胴を射貫いた。
流れる鮮血のように、青へと流れる深淵。風穴ができた敵胴から闇が染みだしたのだ。
「オウガ・オリジンさん。オウガたる貴方にお伝えしても詮無い事ですが……」
オウガ・オリジンへと話しかける仄々の周囲で風が渦巻き、声を届ける。
「自分の事ばかり求めては、いつまでも満たされる事はありませんよ。他者と共にあるのが自然なのですから――」
ポロン、と竪琴を奏でれば、先程楽しさを思い出した箒たちが空を旋回した。
「どうぞ、早々に骸の海へお還り下さい」
「ここは、わ た し の 世 界 だ ぞ !? わたしがいなくてどうするというのだ……!」
やはり、栓無き事。
返ってきた声に仄々は吐息を漏らすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カイリ・タチバナ
アドリブ歓迎。
こんな世界もあるのな!
さて、俺様に合う箒…ヤンキーな俺様に合うのは、反骨精神ばっちりなやつだろ!
(ヤンキーヤドリガミ)
おっす!俺様と一緒に、オウガ・オリジンに抗ってみねぇか?
反骨とはすなわち、自分の矜持を折らずに保ち続けるやつさ!
俺様、そういうところ好きなんだぜ。
あ、ところで名前なんていうんだ?俺様はカイリだぜ(礼儀正しいヤンキー)
神罰つきの錬成カミヤドリで、俺様たちの周り防衛してっと。
お前さん(箒)は思うままに飛べ。頼んだ俺様の方が合わせる番なんだよ、こういうのは!
ははは、荒くれ漁の応用だわな!
目標見つけたら、複製した銛を発射するだけだしな!
アリスラビリンスへ――訪れた国は『空飛ぶほうきが密集してできた国』。
大地はなく、風は緩やか。青空広がるこの一画では白い雲がゆったりと流れ、数多の箒が飛んでいた。
重力のある日常からこの国へと入った感覚は、どこか海のようだとカイリ・タチバナ(銛に宿りし守神・f27462)は思った。
「こんな世界もあるのな! ああ、でもちっと心許ないな」
空を蹴っても海中ほどの応えはなく、体幹は定まらない。何となく、メルヘンな白い雲に手を伸ばしてみれば吸い寄せられた――この雲は『重力』があるようだ。ふかふかな雲に降り立つカイリ。
「かと言ってこの雲で突き進めるワケじゃねぇしなぁ――ん?」
どうしたものかと周囲を飛ぶ箒たちを見ていると、カイリを中心に旋回している箒が一本。何やら国にやってきた新しい客人を警戒しているようだ。カイリはその箒に向かって手を振った。
「おーっす! ちょっといいか?」
カイリの声に、警戒しつつ近寄ってくる空飛ぶ箒。オウガと猟兵、愉快な仲間と、意外と見分けが付いていないのかもしれない。
「なぁお前さん。俺様と一緒に、オウガ・オリジンに抗ってみねぇか?」
警戒していても近付いてくるのは、逆を言えば何か思うところがあるのだ。ストレートに誘ってみるカイリ。
さげ緒には黒のリボン――だがその結び目は複雑で硬く、箒の個性を表しているようだ。カイリはニッと笑んだ。
「反骨とはすなわち、自分の矜持を折らずに保ち続けるやつさ! 俺様、そういうところ好きなんだぜ! なに、同道願えればあのオウガ・オリジンに一泡吹かせてやるよ」
カイリが片手を翳せばハイタッチのような構えとなり、空飛ぶ箒はぱしんと柄で彼の掌へと勢いよく収まった。
「お、よしよしやる気だな。しばらく頼むぜ、相棒。
……あ、ところでお前さん、名前はなんていうんだ? 俺様はカイリだぜ」
本体を銛とするヤドリガミであるからこそ、通じるものがあるのだろう。伝わってくる、何か。
「――コクジュ、黒鷲か。良い名だな」
新たなトランプカードを飛ばし、猟兵たちと一戦を交えるオウガ・オリジン。周囲には箒の残骸が漂いはじめ、どこか慌てたように箒は残骸を掃き集めていた。
「嗚呼、目障りだ。お前たちが血肉で出来ていれば良いものを」
『わたしたちの『アリス』、あなたのために新鮮な血肉を捕らえましょう』
どこからともなく現われ、うやうやしくそう言ったのは空飛ぶほうきを駆る魔法使いのオウガだ。
数多のオウガたちは錐の如き螺旋を描いて急旋回。猟兵たちを狙い散開していく。
魔女のオウガが真っ直ぐに目に付いた敵――カイリへと向かってきた。
猛禽類のように突如としてマントを広げての威嚇に、カイリを乗せた黒鷲もまた一回転し回避する。過っていく魔女のオウガであったが、また直ぐに戻ってくるだろう。
カイリは錬成カミヤドリによって複製した68本の銛の穂先を外空へと向けた。
「黒鷲。お前さんは思うままに飛べ。頼んだ俺様の方が合わせる番なんだよ、こういうのっ、は!」
言葉後半は一本の銛を魔法使いのオウガへと放ちながらのもの。彼の鋭い呼気に応じて黒鷲もまた加速し、追ってくる敵をぐんと引き離した。前を行く銛が敵陣を割り開き、果てなき青空を黒槍が裂いていくように。
「ははは、荒くれ漁の応用だわな! ――行くぜ!」
オウガ・オリジンに上空から迫るカイリと黒鷲。彼らの高速飛行に遅れて気付くオウガ・オリジン。
一人と一本を守っていた銛が空を裂いて首魁へと降り注ぐ。重量級の雨だ。
「ギャアアァァーッ!」
耳を劈くは世界を引き裂く悲鳴。
纏う花が散り、裂け目から深淵の闇が空に滲む――それはオウガ・オリジンから染み出していて、徐々に徐々に拡がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
城島・冬青
【橙翠】
アヤネさん
私はこの子に決めました(箒を捕まえて)
え?震えてる?
そうですね
オウガ・オリジンに怯えてるようです
大丈夫!何とかなりますって
コミュ力と鼓舞で怯える箒を宥める
君はいつも通り空を飛んでくれればいいよ
向かってくる攻撃は全部私が叩き落とす
大丈夫
私達は今まで色んな世界を助けてきたんだよ
今度も負けないから
一緒に立ち向かおう
この世界を守るんだよ
飛んでくるトランプを衝撃波で弾き返す
無理ならギリギリまで引きつけて残像で回避!燃えないから真っ直ぐ飛んでいいよ
ダッシュで加速しオウガ・オリジンの死角から攻撃していく
アヤネさん
合わせていきましょう
2人でタイミングを合わせUC発動
スカシバちゃんやっちゃって
アヤネ・ラグランジェ
【橙翠】
かわいい世界
かわいいっぽい敵
でも表情とやる事がかわいくないネ
オリジンとやらに引導を渡そう
箒達に話しかける
オリジンなんかの言う事を聞いてもいい事はないネ
折られるのが関の山
僕らに協力してくれればオリジンをこの世界から追い出してあげる
どうかな?
申し出を受けてくれた箒に礼を言って乗せてもらう
ソヨゴの子は怯えるような?
PhantomPainを構えて空中戦と行こうか
敵の数が多くても触手で捕まえて寄せ付けない
オリジンに直接攻撃可能になったら
よし本体狙おう
とソヨゴに声をかける
タイミングを合わせてUC発動
オリジンの動きを止めてやる
果てなき青空にふよふよと浮かぶ白い雲は、風が吹けば少しずつ移動していく。
「空中浮遊というか、宇宙遊泳にも似ている感じだネ」
落っこちやしないかと下と思われる先を見つめながら、ちょっと心許ない声でアヤネ・ラグランジェ(十二の結び目を解き放つ者・f00432)が言った。
「こう、先に進みたいんだけど進めないもどかしさ……あっ、アヤネさん。この雲、掴めますよ」
空を蹴っても蹴り応えがない。どうやって動こうかと考えていた城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)が、ふと目前へと迫った雲に手をやればむぎゅっと掴むことができた。
――すると体が雲に引き寄せられていく。
「わー、ふかふかだー」
「メルヘンな……この雲、重力が……あるような?」
ふかふかな雲に降り立って足踏みしてみるアヤネ。
「めるへんですね~」
「うん。かわいい世界、かわいいっぽい敵――でもやる事がかわいくないネ」
果ての空で飛行し、猟兵たちと戦いを繰り広げる『はじまりのアリス』にして『はじまりのオウガ』。
重なるダメージに四肢から夜空にも見える深淵が青空に滲み広がっていた。
「オウガ・オリジンとやらに引導を渡そう」
アヤネの言葉に「はい!」と力強く頷いた冬青は、すぐに辺りを見回し始める。
「そのためには空飛ぶ箒を見つけないとですね」
そう言って、弾みをつけて跳ぶ冬青。行き過ぎようとしていた空飛ぶ箒を捕まえる。
「アヤネさん、私はこの子に決めm――」
空飛ぶ箒も急には止まれない。若干ドップラー効果を起こしながら、冬青が遠ざかった。たぶん後半は「決めました」と言っていた。鉄棒の要領で体を振った冬青がすぐに戻ってくる。
「……ソヨゴ、その子、震えてるよ」
「え? ――そうですね。オウガ・オリジンに怯えてるみたいです」
冬青はふるふるぶるぶると振動している箒をぎゅっと両手で掴んで拘束もとい抱きしめた。箒は負けじとぐるぐる自転し、擦れ合った部分が熱くなった。
空飛ぶ箒たちは、オウガもオウガ・オリジンも猟兵も見分けがついていないのかもしれない。冬青に捕まった箒を中心に心配そうに旋回する箒たち。
そんな彼らへとアヤネは声を掛ける。
「オリジンなんかの言う事を聞いても、いい事はないと思わない? 折られるのが関の山だネ」
アヤネの言葉に震える箒たち。
箒は箒。例え個性があれど、オウガ・オリジンの扱い方はぞんざいだ。箒の残骸が漂っている場所もある。
「僕らに協力してくれればオリジンをこの世界から追い出してあげるけれども――どうかな?」
言って、空へと手を差し出す――すると、アヤネの手へぽとんと一本の箒が落ちてきた。夕焼け色のリボンを括った箒だった。
「協力してくれるの? 勇敢だネ」
ありがとう、とアヤネ。
冬青も、観念したのか大人しくなった箒の青のリボンを整えてやりながら優しく話しかける。
「君はいつも通り空を飛んでくれればいいよ。向かってくる攻撃は全部私が叩き落とすから」
大丈夫、と、安心させる声。
「私達は今まで色んな世界を、アリスラビリンスでもたくさんの国を助けてきたんだよ。今度も負けないから、一緒に立ち向かおう」
芯があり、揺るぎのない冬青の言葉は確かに信頼に足るもの。箒は震えを止めてじっとしている。
「一緒に、この世界を守るんだよ」
「なんと生意気な、忌々しい猟兵どもめ!」
金の髪を振り乱し、吼えるオウガ・オリジン。続く猟兵たちの攻撃に、オウガ・オリジンの体からは闇が染みだしていて青空を穢していく。
薄明の如き空を女王の姿を模した炎が駆けた――その中心にはハートのトランプ。
冬青が抜刀した花髑髏を振るえば、衝撃波が起こり炎を弾き飛ばす。
「大丈夫! 燃えないから真っ直ぐ飛んでいいよ!」
炎の残滓すらなく遠くへ散らす衝撃波を放ちながら冬青が箒を鼓舞した。穂先が跳ね加速する。
猛禽類の如き翔けを見せ、あっという間に肉迫した冬青がオウガ・オリジンを斬る。その斬線を描くのはひと時の相棒だ。
「グッ――箒どもよ、わたしに従え! わたしを守れ!!」
オウガ・オリジンの怒気に、怯え、慌てたように箒たちが従う。
Phantom Painを構えて飛行するアヤネにも、オウガ・オリジンの魔の手に圧された箒たちが攻撃してくる。
「ちょっと大人しくしていてネ」
ウロボロスが突撃してきた箒を捕まえ、戦意を失ったところで解放する。空道を拓くようにアヤネは箒と共に空を翔けた。
「ソヨゴ!」
「はいっ!」
アサルトライフルで撃ちながら、アヤネは詠唱する。
「UDC形式名称『ウロボロス』術式起動。かの者の自由を――奪え」
新たに、複数の蛇に似た異界の触手がアヤネの影から放たれオウガ・オリジンを拘束する――手応えはヒトのような――否、覚えのあるモノではない。
「……深淵のよう……」
アヤネは呟く。
貌は無く、四肢は虚ろ。煌きは何かの残滓か。
そこへ突き刺さるのはオオスカシバの鋭い吸収管だ。
「スカシバちゃん、やっちゃって!」
オオスカシバへと変形した刀の魔力。花弁のようにひらひらと舞う魔力は数多で、冬青の声に応じ吸血蛾たちはオウガ・オリジンへと集う。
「ウザ!! ウザイウザいうざい……ッ!!」
夜の手からトランプが出現するも、すかさずアヤネのウロボロスが拘束し、カードを振り落とす。
「貌は見えないけれど、やっぱりかわいくないネ」
オウガ・オリジンの表情――深淵の向こうは悪鬼のように歪んでいることだろう。
アヤネが銃弾を撃ち込み、冬青が胴を斬り払う。
エプロンドレスが裂け、『少女』の内包する闇が世界へと染みだした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
司・千尋
連携、アドリブ可
空飛ぶ箒で戦う日がくるとは…
さて、どの箒にしようかな!
ある程度近付く必要があるから
逆らえる根性ある箒が良いんだけど
…は!
今、目?があったお前!
お前根性ありそうだな
乗せてくれないか?
よろしく頼むぜ相棒!
攻防は基本的に『翠色冷光』を使用
弾道をある程度操作して追尾させ敵の攻撃も撃ち落とす
敵が範囲外の時は『翠色冷光』の範囲に入るよう位置調整
確実に当てられるように死角や攻撃の隙を狙う
敵の攻撃は細かく分割した鳥威を複数展開し防ぐ
割れてもすぐ次を展開
オーラ防御も鳥威に重ねて使用し耐久力を強化
回避や『翠色冷光』で迎撃する時間を稼ぐ
間に合わない時は双睛を使用
無理なら防御
空飛ぶのって結構楽しいな
真月・真白
連携アドリブ歓迎
●箒を勇気づける
貴方がたは本来何者にも縛られず自由にこの空を謳歌していたはず
どうか勇気を灯して、共に立ち向かってくれませんか?
●戦闘
基本は箒を信じ、彼(?)のスペックに身を委ねて、振り落とされないようにしがみ付いて、ハートのトランプを回避する
「僕も貴方も、炎だけは御免ですからね!」
敵に肉薄できそうなタイミングで回避不可能なレベルのトランプ大量放出が来たら本を開いてUC詠唱
「再演するはSSW!惑星ZX045衛星軌道戦のウォーマシン! 大気圏突入に耐えたその装甲には貴女の炎は通じません!」
かつて銀河帝国と戦った偉大なウォーマシンを模した蒼炎が突撃します
大地はなく、風は緩やか。青空広がるこの一画では白い雲がゆったりと流れ、数多の箒が飛んでいる――戦場でなかったのなら果てなき長閑な国であっただろう。
重力のある日常からこの国へと入れば、身を包む違和感。
「水中よりも心許ない感じだな」
と、司・千尋(ヤドリガミの人形遣い・f01891)が言う。ふわふわとした浮遊感は体幹も定まらない。彼の言葉を聞いた真月・真白(真っ白な頁・f10636)は少しばかり躊躇いの表情に。
「……水中ですか」
水が苦手なのだろう。
「ああ、海で泳いだり、宇宙遊泳の感覚に似てると思わないか?」
「どちらかといえば、宇宙遊泳の方がしっくりきますね」
空を蹴っても思うようには進まない――吹く風にも若干流され進めていない。
千尋が思わずといったように漂ってきた白い雲を掴んだ。するとどうだろう、引き寄せられるようにして雲に乗ることができた。
雲はふかふかだった。
「ここだけ重力がある感じでしょうか」
さすが不思議の世界、と神妙な表情で近くの雲に立った真白が呟く。
二人が見上げれば、オウガ・オリジンと猟兵たちの戦いが繰り広げられているのが分かった。周囲の空は色が違う。
「やはり空飛ぶ箒を味方につけないとだめだな――さて、どの箒をスカウトしようか」
ある程度近付く必要もある。根性ある箒が良いんだけど、と、空飛ぶ箒たちを観察するように千尋が周囲を見回した。
箒たちはさげ緒にリボンを括っていて、色はもちろんのこと結び目も長さも個としての判別ができる。
「……――はっ! 今、目? があったお前!」
灰色のリボンを複雑に編んだ箒と、意識が合った千尋が声を張った。「え?」というような動作をする箒。
「お前根性ありそうだな。乗せてくれないか? オウガ・オリジンに一泡吹かせてやろうぜ」
「貴方がたは本来何者にも縛られず自由にこの空を謳歌していたはず――どうか勇気を灯して、共に立ち向かってくれませんか?」
真白もまた箒たちに声を掛け、共に戦うものを募った。
ヤドリガミである彼らの声は、器物である箒たちに伝う何かがあったのだろう。
魂があり、感情があり、それらに色があるのならぽつりぽつりと灯っていくのが見えたはず。――既に敷かれた戦線は『感情』の温床となっていて、きっかけは、ほんの少しの先の未来を見せた声。
おずおずとした動きで真白へと近寄ってくる空飛ぶ箒。蝶々結びにされたオレンジ色のリボンがゆらゆらと揺れていて、差し伸べた真白の手にポトンと箒は落ちてきた。
俺も、と千尋が手を翳せば、灰色リボンの箒はパシンッと勢いよく柄を寄せ彼の掌へと収まった。ニッと千尋は笑む。
「よろしく頼むぜ相棒!」
「なんと生意気な、忌々しい猟兵どもめ!」
金の髪を振り乱し、吼えるそのオウガ・オリジンの姿は貌があったのならば悪鬼といえるもの。
重なる猟兵たちの攻撃に、オウガ・オリジンの体からは鮮血のかわりに闇が染みだしていて青空を穢していた。強張った動きでハートのトランプカードをばら撒き、時進む薄明の如き空を女王の姿を模した炎が駆けた。
鳥威を細やかに展開し、炎を防ぐ千尋。第一陣から更に投擲されたトランプの第二陣にも再び鳥威を幾重と放つ。
数多の炎が猟兵たちを狙い駆けるなか、空飛ぶ箒に振り落とされないようにしがみ付きハートのトランプを回避するのは真白だ。
「僕も貴方も、炎だけは御免ですからね!」
白紙の歴史書であった彼の言葉は、必死そのものだ。箒もまた焼けてしまえば終いで、死地への旅も同道となることだろう。
パンッ! と炎が近くで弾けて、箒が回転すれば真白の視界もまた回る。
千尋の鳥威と青い光弾が空道を拓くように放たれていた。
彼我の距離が消える――その時、真白の目に映ったのはトランプの束を持つ『少女』の手。
「飛んで火にいる何とやらだな――ウェルダンに焼いてやろう!!」
バッと大量のトランプが空へと放たれた瞬間、真白は歴史書を開く。
「再演するはスペースシップワールド! 惑星ZX045衛星軌道戦のウォーマシン! 大気圏突入に耐えたその装甲には貴女の炎は通じません!」
彼が自身に記述した歴史記録がアリスラビリンスに顕現する。蒼炎が再演せし戦いの『年代記』――かつての銀河帝国と戦った偉大なウォーマシンを模し、敵の炎とぶつかり合った。接触した赤炎と蒼炎が弾け、空を揺るがす轟音。
展開する盾のように拡がった蒼炎が薄明を、炎躯がオウガ・オリジンを灼く。
「千尋さん!」
熱波から逃れるように前線から緊急離脱する真白が呼ぶ――応じたのは彗星の如く空翔ける光。
「消えろ」
千尋の翠色冷光は空に輝く青の明星のように。オウガ・オリジンへと墜ちていき、貫く。
「――ッギャアアアァァーーーーッッ!!」
世界を裂く悲鳴を上げたオウガ・オリジンが弾けた。内包していた闇もまた空に霧散していく。
その身の内に巣食っていた猟兵の氷粒も空中に漂い、周囲の熱気に溶けていった。
「……倒せましたね」
ほうっと安堵の息を吐いてそう言った真白に千尋は頷いた。
仲間の猟兵が音を紡ぐ、鎮魂の調べ。その奏でに乗ってくるくると回る空飛ぶ箒たち。
オウガ・オリジンに怯えたり、怒ったり。戦いの色に染められた空だったが、猟兵たちの呼び掛けや数多の音色に箒たちは思い出したことがある。
箒の感情が伝ってくるのか、それとも――。
気ままに飛行する箒に乗って千尋が呟いた。
「空を飛ぶのって、結構楽しいな」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵