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迷宮災厄戦⑱-2〜深き嘆きの底で~

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #オブリビオン・フォーミュラ #オウガ・オリジン

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「ついに来たな……オウガ・オリジンが」
 真剣な表情で一人一人の顔を見つめ、テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)はそう語り掛ける。
 テオによればついにオウガ・オリジンへの道が開かれたという。
 ついに迷宮災厄戦は最終局面を迎え、猟兵一人一人のより一層の奮闘が求められるだろう。

「奴はどうやら現実改変ユーベルコード……とやらで、様々な国を作り出しているようだな」
 未だ猟書家たちに力を奪われているものの、オウガ・オリジンは不思議の国を作り変えるだけの力――現実改変ユーベルコードを有しているのだという。
 そうしてオウガ・オリジンによって作り変えられた国が今回の戦場……その中でも、今回猟兵たちに挑んで欲しいのは――「涙の海の国」と呼ばれる国だそうだ。

「涙の海の国……そこは、触れるだけで自然に涙が溢れ、過去の悲しい思い出が次々と蘇るという海で満たされているようだ。戦う際にはその海に触れることは避けられない……皆には心を強く持ってもらう必要がありそうだな」
 触れるだけで過去の悲しい記憶を呼び覚ますという不思議な海。
 そんな海に満たされたその不思議な国で、オウガ・オリジン待ち受けているという――その「涙の海」の中で。
 当然猟兵たちもまた、海に触れることを避けることは出来ない――故に必要となるのは、その過去の記憶を思い出した上で克服し、戦い続けることだろう。
 同様にオウガ・オリジンに対し、「涙の海」により隙が生まれることを期待するのは良い手段とは言えないだろう。
 何故ならば彼女こそ、鬼畜と名高い女――戯れに配下すら殺す彼女は、涙の一つも流すことは無いのだから。

「皆、気を付けてくれ」
 そう言いながら赤きグリモア猟兵は送り出す。
 心を強く持てと、そう励ましながら。


きみはる
●ご挨拶
 お世話になります、きみはるです。
 ついにオウガ・オリジンが登場しましたね。
 戦争の勝利を目指し、頑張りましょう。

●依頼について
 オウガ・オリジンは涙の海から出てくることはありません。
 故に猟兵たちも、海水に触れることは避けられません。
 そこで涙の海の効果により、悲しい過去の記憶を呼び覚まし、どう克服するかが鍵となるでしょう。
 その為、プレイングボーナスは下記の通りです。

 プレイングボーナス……過去の悲しみを克服しつつ戦う。

 涙の海の国には小さな島や顔を出している岩場など、足場も多少ある為、無理に海中で戦わなくても良いこととします。
 重ね重ね記載させて頂きますが、戦いの中で海水に触れることは避けられません。
 むしろせっかくの依頼ですので、がっつり思い出しましょう。

●プレイング募集について
 OP公開~締まるまでをプレイング募集期間とさせて頂いております。比較的少な目人数での完結となりますことをご承知おき下さい。

 それでは、皆様の設定を掘り下げられるプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『オウガ・オリジン』と嘆きの海』

POW   :    嘆きの海の魚達
命中した【魚型オウガ】の【牙】が【無数の毒針】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    満たされざる無理難題
対象への質問と共に、【砕けた鏡】から【『鏡の国の女王』】を召喚する。満足な答えを得るまで、『鏡の国の女王』は対象を【拷問具】で攻撃する。
WIZ   :    アリスのラビリンス
戦場全体に、【不思議の国】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:飴茶屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私/私たち のほほん
対応武器:漆黒風

過去の悲しみ。…ちょうどこの時期なんですよねー、私たち四人が『死んだ』のは。
(※誕生日=四人の命日)
腹部の傷跡は、共通の致命傷…塞がっているというのに痛い…。
故郷も滅んで、ただ霊体で見ているしかなかったあの頃。
夏ですので、ええ…見てましたよ、身体がどうなったのかも。

ですが…集まって一人の悪霊となり、元世界を見失って。猟兵にもなり…今、私たちはここにいるのですよー。
こうなったのには理由がある。また『正しく終わるその時』まで、私たちは戦いますよ。
ですから…邪魔です。退きなさい、オリジン…!




「過去の悲しみ……ですか」
 その瞳をゆっくりと細め、馬県・義透(多重人格者の悪霊・f28057)は一人静かに言葉をこぼす。
 義透が進むのは、不思議の国全体に広がる海の中に作られた迷路の中――海を固めて作られたような不思議な迷路を進むのに対し、どうやら呼吸の心配は無さそうな様子。
 しかし唯々歩いているだけにも関わらず脳裏をかき回す記憶の洪水が……まるで水族館のように海中が透けて見える不思議な床も、壁もやはり海水で出来ているのだと、そう理解させる。
 これこそがグリモアベースで聞いた「涙の海」の効果なのだと、否応無しに思い知らされるのだ。

「……ちょうどこの時期なんですよねー、私たち四人が“死んだ”のは」
 彼が思い出すのは、己が悪霊と化す前――それぞれの四人として、死んだ日のこと。
 あの日も、こんな蒸し暑く……憎たらしいほどに青々と澄んだ空の日であった。
 四人仲良く、致命傷は腹部に負った傷。
 悪霊へと堕ち、この身体を手に入れて――もうそんな傷など、欠片も傷跡には残っていないというのに……どうしてこうも、はらわたをかき回されるかのように痛み続けるのか。

「ええ……見てましたよ、身体がどうなったのかも」
 故郷も滅んでいく様を、霊体として見ていたかつての日々。
 目をそらすことも、その場を去ることも出来ず……見ることしか出来なかったあの頃。
 腐り落ち、蛆が沸き、骨と化すまで見守り続けたあの時。
 短編映画のように次々と一繋ぎに見せつけられるあの日の光景がフラッシュバックし、義透の心をかき乱す。
 それは常人であれば、狂いそうになる“己が死”という記憶。

「ですが……集まって一人の悪霊となり、元世界を見失って。猟兵にもなり……今、私たちはここにいるのですよー」
 だが、どんなに心を乱そうとも、馬県・義透は涙を流さない。
 例え悪霊へと堕ちようとも、例え己が世界を見失おうとも……それでも今、生きているのだから。
「こうなったのには理由がある……だから、また“正しく終われるその時”まで、私たちは戦いますよ……」
 その全てを受け入れて尚、生き足掻いているのだから。

「ですから……邪魔です。退きなさい、オリジン!」
 虚無の瞳でこちらを嘲る少女を見つめ……気高き悪霊は猛る。
 再び迎える終わりの日まで、終わることの出来る……その日まで。
 呪い殺してでも、戦い続けるのだと、足掻き続けるのだと――そう決めたのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

エンティ・シェア
悲しい、事なんて
悲しいと、思うことなんて
僕にはその資格すら無いのに

ああ、ごめんなさい、ごめんなさい
皆、僕が殺してしまった
命じられるままに、何も考えずに
苦しかったでしょう、恐ろしかったでしょう
僕は、逃げません
貴方達の無念を、僕で、晴らせばいい
でも、その前に
僕のけじめを付けに行くことだけは、許してください

いつか、僕を――ください
やくそく、ですよ

―水の中で流れる涙なんて、何の意味が?
溢れてくる悲しみを全て、色隠しで消費します
魚の牙がどれだけ食い込もうと構わない
毒なんて、痛みなんて、耐えればいい
耐えるべきだ。僕は、強いてきた側なんだから

殺してあげます、オウガ・オリジン
どうぞいい声で、啼いてくださいね?




(悲しい、事なんて……悲しいと、思うことなんて、僕にはその資格すら無いのに)
 その赤毛からひたひたと雫を垂らし、エンティ・シェア(欠片・f00526)はそう瞳を瞑る。
 彼が沈んでいるのは――「涙の海」と呼ばれる海の中。
 周囲には獲物を狙うかのように、オウガ・オリジンにより放たれた魚型オウガが周囲をゆっくりと回遊していた。
 今は戦闘の最中……悲しんでいる暇など無い。
 だが、それどころか悲しむ資格すら無いのだと、エンティはそう己を卑下するのだ。

(ああ、ごめんなさい、ごめんなさい。皆、僕が殺してしまった……命じられるままに、何も考えずに)
 零れ落ちるように、止まらぬ謝罪の言葉。
 その言葉を吐き出すのは、“私”でも“俺”でも無く……“僕”。
(苦しかったでしょう、恐ろしかったでしょう)
 そんな彼に――普段の冷淡さなど微塵も感じられない。
 次々と己が胸中からあふれ出す後悔の念に――悲しき記憶の海に溺れるばかり。
 だが、同時に彼は……“僕”は――過去に溺れ続けるだけの弱い男では無いのだ。

(僕は、逃げません……貴方達の無念を、僕で、晴らせばいい。でも、その前に……僕のけじめを付けに行くことだけは、許してください)
 開いた瞳に呼応するかのように、周囲を回遊しこちらの様子を伺っていた魚型オウガは牙を剥く。
 食い込む牙は――獲物を嬲り殺すかのように、無数の毒針へと変化する。
 本来であれば避けねばならぬほどの、後の戦闘に尾を引く痛撃。
 しかし今は……この肩を突き刺すこの痛みすら、全身を引き裂くように体中を駆け巡る痛みすら、心地良い。
 まるで己が望む罰を――与えてくれているかのようで。

(いつか、僕を――ください。やくそく、ですよ)
 その声にならぬ願いは、もう届かない。
 それでも、そう胸中で伝えずには……願わずには、いられないのだ。

 エンティは、溢れる感情を……海中へと溶け出す涙と決別する。
 それは感傷でしか無く、欠片の意味も無いのだから。
 その全ての感情を代償に――敵を討つ刃と変えるのだ。

(殺してあげます、オウガ・オリジン……どうぞいい声で、啼いてくださいね?)
 己が感情を――心の色を代償に、エンティ・シェアは牙を研ぐ。
 己が傷を顧みず、唯々眼前のオウガを切り捨てる為に。
 深淵のような表情でこちらを覗く――悪の根源を、討つ為に。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティア・メル
海はぼくの故郷みたいなものだから
浸る事になんの恐怖も感じない

眸から水がでてくる
胸が潰れそうなくらい苦しい
これが攻撃?

そんなものは偽りだと
支配下に置く力が生んだぼくの夢
全部ぜんぶ幻で
友達なんて
本物なんて
最初から何ひとつなかった

知らない
こんな出来事、知らない
痛くて
呼吸の仕方すらわからなくて
喉を引っ掻いたら赤が滲む

ソーダ水なのに血が出るんだった
おかしいね

うん、すっごくおかしい
ぼくは泣かないし泣けない
涙なんて出ない器に設定してるんだから
悲しみも記憶も忘れちゃえばいい
この器を自分自身で支配し直せばいい

んふふーありがとう
おかしな体験をさせてくれた君に
感謝の花の歌を

んに?何に感謝したんだっけ
わすれちゃったや




「海はぼくの故郷みたいなものだから……浸る事になんの恐怖も感じないのに」
 海水で出来た迷宮を進みながら、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)は一人そう言葉を零す。
 セイレーンであるティアは別段海の中を移動したとて、何ら問題は無いのだが……結果として通ることとなったこの迷宮もまた、「涙の海」で出来ていることには違い無いらしい。

「眸から水がでてくる……胸が潰れそうなくらい苦しい、これが攻撃?」
 止めどなく溢れる涙が、胸を締め付けるように心を揺さぶる記憶の数々が……これがグリモアベースで聞いたオウガ・オリジンにより改変された世界の影響なのだと、そう身を以って理解するのだ。
「そんなものは偽りだと、支配下に置く力が生んだぼくの夢……全部ぜんぶ幻で、友達なんて、本物なんて……最初から何ひとつなかった」
 次々と脳裏に浮き上がる映像。
 しかしそれは、偽りなのだと……ティアはそう確信する。

「知らない……こんな出来事、知らない」 
 見せつけられる――心をかき乱される映像の数々は、ティアの知らない記憶。
 深く考えようとする度に、酷くこめかみが痛む。
 これはきっと夢なのだと、そうとしか思えないのだと。
 そう決めつけることでしか、心の平衡を保てない。

「苦しい……」
 身体がまるで呼吸の仕方を忘れたかように息苦しい。
 隙間風のような微かな呼吸音だけが小さく木霊する。
 思わず掻きむしる喉から――紅の雫が滴る。
 自分の身体はソーダ水で出来ているのに、血が出るなんて。
 そんなことが酷く面白くて、喉が揺れる。

「うん、すっごくおかしい……ぼくは泣かないし泣けない。涙なんて出ない器に設定してるんだから、悲しみも記憶も忘れちゃえばいい……この器を自分自身で支配し直せばいい」
 少女は嗤う――壊れかけの玩具のように。
 もう目じりから溢れる涙は無く……喉から垂れた紅は、無色透明へと姿を変える。
 そしてその少女を覗き込む深淵に塗りつぶされた少女の顔も、同じように肩を揺らして嗤うのだ。

「んふふーありがとう。おかしな体験をさせてくれた君に……感謝の花の歌を」
 感謝の印に――心を込めた歌声を。。
 全てを切り裂く――沙羅双樹の花束を。
 花弁舞い散り、紅が辺りを幾ばくか汚しても。
 しかし汚しきれぬほどの涙の海は、海中で揺蕩う少女の顔のように――すべてを飲み込む深淵のような紺色は濁らぬまま。

「んに? 何に感謝したんだっけ……わすれちゃったや」
 少女は狂う――どこまでも。
 二人で狂い、二人で嗤い、沈んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

鬼桐・相馬
【POW】
前日まで当たり前のように一緒にいた存在達が忽然と消えた日の衝撃と絶望、悲しみを今も忘れることはない
捜し回っても耳に入るのは施設に響く静かな低音と自らの靴音のみ

あれは夢で嘘で
俺自身含めた全てが虚構なのではないかと今もふと思う
残ったのは俺とこの[冥府の槍]だけだ

あの出来事がなければ俺は猟兵にはなっていなかっただろう
大事な存在が増えた今、悲しみは別のものも生み出すことに気付いた

毒針は[激痛耐性]で耐えつつ正気に戻る手段に
海中だろうと傷口から溢れた冥府の炎で[焼却]する
[戦闘知識と野生の勘]で敵の攻撃を捉え動きを[見切り、槍で武器受け]し隙を伺う
その後[ジャンプ]で一気に間合いを詰めUC発動




(この記憶は……)
 海中へと飛び込んだ瞬間――視界全てを白く塗りつぶすかのように脳裏を埋めつくす記憶。
 それはつい前日まで当然のように共にいた者たちが消えたあの日――思い出すのは、足元の大地ごと崩れ地獄の底へ落ちていくかのような衝撃と絶望。
 悲しみなどと一言では言い表せない。
 探し回っても、歩き回っても……耳に入るのは、静かに空気を震わせる低音と己が靴音のみ。
 一途の望みをかけ歩き続け……しかしゆっくりと心をすり潰すかのような時間だけが過ぎていくのみ。

 皆を失った――胸の中にぽっかりと穴が開いたかのような喪失感は、未だ消えない。
 消えることすら……無いのかもしれない。

(あれは夢で……嘘で)
 その全てが――自分すらも虚構だったのではないかと、ふと思う時がある。
 取り残されたのは――自分自身と手に握るこの槍だけ。
 全てが嘘だったらよかったのに……そう思わずにはいられない。
 だが……。

(あの出来事がなければ俺は猟兵にはなっていなかっただろう)
 同時に思うのは、あの日が無ければ……あの全てを奪われた日が無ければ、自分は決して猟兵になどなっていなかっただろうということ。
 猟兵として過ごした日々――この手ですくい上げることの出来た命の数々と、増え続ける大切な存在。
 今なら――悲しみは別のものも生み出すこともあるのだと、そう言える気がするのだ。

(痛い、な……)
 言葉の通り身を引き裂く痛みと共に、意識が戻る。
 口内に広がる鉄の味が、これが現実なのだと教えてくれるのだ。
(邪魔だ……)
 傷口から吹き上がる冥府の炎が、水中であることなど厭わずにオウガを焼く。
 身体を動かす度に猛毒により駆け巡る激痛は、常人であれば意識を失うほど。
 しかし今の相馬には――不快な幻覚から意識を守ってくれるような、適度な痛みだ。

 むしって捨てれば次々と飛び掛かる怪魚の群れを、容易く屠った先で相馬は探す。
 この醜悪な世界を作り出した――悪の権化を。

(失せろ)
 海中で揺蕩うエプロンドレスに全力で突き刺すは冥府の槍。
 相馬の胸中で渦巻くどす黒い感情に呼応するかのように、全身の傷口から溢れ出る……矛先から燃え上がる冥府の炎が、こちらを嗤う虚無の顔を持つ少女を焼き尽くすのだ。

 声にならない悲鳴が海を揺らし辺りに木霊した。、

成功 🔵​🔵​🔴​

アニー・ピュニシオン
過去の悲しい記憶が出ても
私じゃない他人の記憶みたいな感じで
どれもパッとしないけれど

アリス適合者としてこの世界に呼ばれた時に
はじめて友達がたくさん出来たの
とっても嬉しかったわっ

でも、皆いなくなってしまったのよ
同じアリスどうしの殺しあいで

誰に恨みを晴らせば良いかと考えたのだけれど
やっぱり私達を呼ぶ原因となった あなたよね?

貴女さえいなければ、と
ずっと、この記憶を引きづって生きてきたわ
この逆恨みを果たせば、少しは晴れるのかしら?

……一応、感謝もしているわ
この世界に呼んでくれなければ
きっと、私は友達なんて一人も出来なかっただろうし

だから未練が残らない様に全力で決着をつけるわ
無敵の蒼鎧で貴女に癒えぬ傷を




「私じゃない他人の記憶みたいな感じで……どれもパッとしないけれど」
 無敵の戦闘鎧を纏いし少女――アニー・ピュニシオン(小さな継ぎ接ぎの国・f20021)は怪魚を屠る。
 衝撃と共に舞い上がるは、「涙の海」の雫。
 そうして涙の雨が降り注いだのならば――アニーの脳裏に次々と映像が浮かぶのだ。

 投げつけられる本。
 ひっくり返されるおもちゃ箱。
 暴れる少女を見つめて尚、優しい微笑みを崩さない男性と女性の姿。

 穏やかと言えるかは分からないが、紛れも無く平和な光景。
 おそらくそれは……自分の扉の先――元居た世界の光景。
 しかし記憶を失っているアニーにとってみれば、どこか他人の記憶のように感じてしまう光景。

「これこれっ! これはとっても嬉しかったわっ!」
 映画のように次々と変わっていく映像の数々。
 そうして変わりゆく映像がついに、彼女にとっても記憶に新しい映像へと変わる。
 それはこの世界に呼ばれた時の映像――初めて出来たたくさんの友達。
 しかしその映像は直ぐに……アリス同士の凄惨な映像へと変わっていく。

「誰に恨みを晴らせば良いかと考えたのだけれど……やっぱり私達を呼ぶ原因となった あなたよね?」
 思い出させられる不快な光景――悲しい記憶。
 その悲しみと共に沸き上がるは、理不尽に対する怒り。
 この感情をぶつける相手がいるとするならば……涙を浮かべる己を嬉しそうに嗤う眼前の少女以外にいないだろう。

「貴女さえいなければ、と……ずっと、この記憶を引きづって生きてきたわ。この逆恨みを果たせば、少しは晴れるのかしら?」
 剣を振るえば怪魚は砕け散り、波は吹き上がる。
 そうして力を振るえば、少しはこの心は晴れるだろうか。
 問いに対し、少女は嗤うばかり――その身を槍で貫こうとも……嗤うばかりだ。

「一応、感謝もしているわ。この世界に呼んでくれなければ……きっと、私は友達なんて一人も出来なかっただろうし」
 何も映さぬ塗りつぶされた顔を見つめ……アニーはぽつりと、感謝の言葉を述べる。
 この世界での経験は……猟兵になってからの経験は、決して悪いものだけでは無かった。
 故にこの悪にすら、感謝の言葉を述べるのだ――決別と共に。

「だから未練が残らない様に全力で決着をつけるわ……無敵の蒼鎧で貴女に癒えぬ傷を」
 少女は武器を振るう――光の刃を。
 無敵の鎧をその身に纏い……巨悪を討つ為に。

成功 🔵​🔵​🔴​

キーシクス・ジェンダート
オウガ・オリジン。貴様が、この世界の…!!
海に触れるのは避けられない。ならいっそ飛び込むか

海の水に触れる
思い出す あの時の記憶
……あのこが、息子が家を出て行った日を
「俺はあんたの代わりじゃない、母さんの器じゃない」
「どうして、なんで俺のことは助けてくれないの!?」
「あんたなんて大嫌いだ!!!」
苦しそうな声が響く…俺はあの子に何もしてやれなかった。争いも何もかも言い訳だ。

だから 止まるわけにはいかない
湧き上がる悲しみもオウガの狂気も「狂気耐性」
で飲み込んで

帰るんだ 何がなんでも、あの子、シェルシアの元に!UC発動、詠唱の代わりに「全力魔法」と「衝撃波」を詰め込んで、周囲の水ごと敵を吹き飛ばす




「オウガ・オリジン……貴様が、この世界の!!」
 海水からこちらを覗き込む虚無の顔を持つ少女――オウガ・オリジンを睨み、キーシクス・ジェンダート(翡翠の魔人・f20914)は吼える。

 絶望の始まり。
 諸悪の根源。
 世界を改変する者。

 この戦争の原因であるオブリビオン・フォーミュラをその視界に捉え、キーシクスは己の猛る心を抑えられない。
 傷を負いながらも未だに優雅に揺蕩う彼女を滅ぼす為には、敵への肉薄は必須。
 故にキーシクスは敵のテリトリーへと……涙の海で出来た迷宮へと飛び込むのだ。

「……っ!」
 海水に触れた瞬間キーシクスの視界を埋めつくすのは……息子が出て行ったあの日。
 憎しみと悲しみが混在したあの瞳に睨みつけられたあの日。
 苦しそうな声で泣き叫ぶ息子を見つめることしか出来なかったあの日。
 あの日の出来事が鮮明に……あの日聞かされた声が、鮮烈に脳内を支配する。

(俺はあんたの代わりじゃない、母さんの器じゃない)
(どうして、なんで俺のことは助けてくれないの!?)
(あんたなんて大嫌いだ!!!)

 脳裏に響くのは、突き放すような言葉。
 それでいて縋りつくような悲痛な声。

 言葉の真意は痛いほど理解していた。
 それでも自分には……あの子には、何もしてやれなかった。
 だけど……嫌、だからこそ。

「……止まるわけにはいかない」
 自分は、私は、俺は……止まるわけにはいかないのだ。
 背後から喉を締め付けるような記憶を振り払い……心の臓を突き刺すような沸き上がる悲しみを抑え込んで。
 叫び出したい泣き言を飲み込んで、前へと進まなければならないのだ。

「帰るんだ……何がなんでも、あの子、シェルシアの元に!」
 必ず、息子のもとへと帰るのだと。
 必ず、「自分の扉」を見つけてみせるのだと。
 その為に、貴様を殺すのだと――そう、キーシクスは吼えるのだ。

 決意と共に掌中から放たれるのは翠色の刃――マラーチェ・イムベル。
 圧縮された空気が衝撃波と成り、退魔の光が海水ごと周囲を吹き飛ばす。
 刃の嵐は強固なはずの迷宮を雫と換え――嗤う少女を打ち砕くのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト