そうだ、島キャンプに行こう
●サマキャン(1泊2日)
「グリードオーシャンにキャンプ地を見つけた」
なんかすごく大事な話っぽい雰囲気の声でルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)が告げたのは、レジャーのお誘いだった。
で、グリードオーシャンの、どこに?
「エルドワ島と言う島だよ」
そこは、ほぼエルフとドワーフだけが生息している島である。
以前、とある魔女と謎の植物系宇宙人のコンキスタドールが住み着いていて、彼女たちの陰謀でエルフとドワーフの生活が脅かされた事もあったりした。
猟兵の活躍で脅威は去り、エルフもドワーフも平穏な生活を送っている。
「エルフは島の東側にある森の中、ドワーフは島の西側にある鉱山地帯に、それぞれ集落を構えて住み分けているんだ」
互いの文化や食生活の違いで自然とそうなった、昔から――島がグリードオーシャンに落ちてきてからの長い習慣である。
そのくらいの距離感が、彼らには丁度いいのだ。
とは言え、同じ島に住んでいる以上、交流がないわけでもない。
「夏の天候が落ち着いている夏の日を狙って、互いの集落を出て平原で大きな焚き火を囲んで一夜を明かすと言う習慣が――あったそうだ」
あれ? 過去形?
「今年は行わない確定。もう毎年やるの飽きたんだって。まあ気持ちも判る。特にエルフは長寿だからね。顔ぶれも変わらないだろうし」
キャンプと言っても、彼らにとっては遠出でも何でもない。自宅の庭か近所の公園でキャンプする様なものなのだ。
さもありなん。
「彼らがキャンプしないなら島をキャンプ場代わりに使って良いか訊いたら、エルフもドワーフも快く了承してくれたよ」
まあ、流石に全くの無条件ではないよね?
「条件は、島の自然を荒らさない、島のものを無許可で持ち出さない、持ち込んだものは必ず持ち帰る。この3つだ」
あ、なんか普通のキャンプ場っぽいぞ。
薪は島民たちが用意してくれる。
エルフの森では、古木が倒れて周りの木を傷つける前に切り倒す事がある。
そうして切り倒した古木を、力自慢のドワーフがサクッと薪に変えてくれた。
「追加の薪、食材、テント、その他諸々の道具の持ち込みは自由だよ」
向こうも今は夏の気候である。
何ならテント張らずに、着の身着のままで外で寝ても多分大丈夫だろう。
「と言うわけで、キャンプに行こう。私も行く」
魚寝袋の尾がはみ出ている荷物を背負って、ルシルは猟兵達を見回した。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
夏休みしましょう。
グリードオーシャンの島で、1泊2日のサマーキャンプです。
既に猟兵達によってオブリビオンから解放された島です。
このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
●島とお約束
舞台はエルドワ島。
テント張って良いキャンプ地は平原です。
森と鉱山と海があります。
島の自然を荒らさない。
島のものを無許可で持ち出さない。
持ち込んだものは必ず持ち帰る。
食材、テントなどの道具、諸々持ち込みはOK。
未成年者の飲酒喫煙と公序良俗に反する事はいつも通りNGです。
あとルシルもいます。多分ひっそりソロキャンしてます。登場するのはお声掛けがあった所のみになりますが、何かありましたらどうぞ。
プレイングは公開されたらいつでもどうぞ。締切は後程告知します。
なお必要成功度が少な目になっております関係で、今回は再送をお願いする可能性が高くなると思われます。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りを楽しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オズ・ケストナー
リュカ(f02586)と
テントっ
もうはじめてじゃないもの
リュカと一緒にちゃちゃっと設置
ほめられたっ
うんうん、ばっちりだね
昼のねどこ?
ハンモック?
やりたいっ
森の木にしっかり繋いで
でーきたっ
端っこにすわったらハンモックがぐるんと回って
わっ
ぺしょ
うつ伏せで地面に落ちる
だいじょうぶっ
手を借りてぱっと起き上がり
ありがとう、ハンモックってむずかしいねえ
リュカを真似て深く座ればゆらゆらいい心地
大きなハンモックに並んで寝ころび
風がきもちいいねえ…
木漏れ日に目を細めていたら
次に目を開ければ辺りが暗く
リュカ、リュカ
ねちゃってた
みて、星がきれいだよ
ふふ、ばんごはんなににしようか
あ、三角形
空指し
焼きおにぎりもいいなあ
リュカ・エンキアンサス
オズお兄さんf01136と
まずは明るいうちにテントを張る
うん、お兄さんそっち持って。うまいうまい
夜の寝床を決めたら、昼の寝床かな
折角だから、ハンモッグしようか
うん、お兄さんもうまくでき……!?
だ、大丈夫?怪我しなかった?
びっくりした。はい、手
後はハンモッグに揺られておしゃべりしたり
持ってきたお菓子を食べたりして
お兄さん…お兄さん?
あれ、寝ちゃったか
そっとしておこう
(と思って本を広げてたらいつのまにか寝てたり
…わ、本当だ、もうこんな時間
陽が落ちてるのに夕飯の支度何にもしてない
大丈夫かな…って、うん、空?
本当だ、綺麗だね、星
もうちょっとゆっくりしていこうか
……お腹は少し、減ったけど。おにぎりいいね
●夜の寝床と昼の寝床
エルドワ島。
その中央に広がる平原の、少し森側の方で。
2人の猟兵がテントを立てようと広げていた。
「お兄さんそっちの端を持って」
「わかってるよ、リュカっ」
リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)が言い終わる前に、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)はリュカが行って欲しかった所に立っていた。
「もうはじめてじゃないもの」
キトンブルーの瞳に自信を漲らせた笑顔で、オズがテントの端を抑える。
その表情と言葉で、リュカはオズと夜を明かした昔日を思い出した。
「あ、そうか」
それを思い出したことで、リュカはある事に気づく。
「リュカ?」
「ん。オズお兄さんが初めてのテントだったところがさ。この島と同じ世界だったんだなって気が付いて」
どうしたのかと首を傾げたオズに、リュカはテントの骨組みを組みながら返す。
「柱昇ったとこ?」
「そうそう」
エルドワ島――そう呼ばれるこの島は、生存している種族から、元はアックス&ウィザーズと猟兵達が呼ぶ世界から落ちて来た島だと思われている。
そして、リュカが張ったテントでオズが初めて夜を明かしたのも、その世界だった。
あれから、1年半くらい。
変わった事も、変わらない事もある。
例えば――。
「テント、出来た。ばっちりだね」
「うん。うまいうまい。お兄さんのおかげで、早くテントが出来た」
オズがテントの設置を手伝う手際は、リュカが世辞なく褒めるくらいに上達しているのは変わった事で。
「ほめられたっ」
またこうして2人で出かけているのも、リュカに褒められたオズがぱっと嬉しそうに笑うのも――変わらない事だ。
「よし、テント出来たから昼の寝床かな」
テントの中に荷物を置いた所で、他の準備もそこそこに、リュカは夜の寝床の次は昼の寝床と言い出した。
「昼の寝床? リュカ、おねむ? お昼寝する?」
「眠いからと言うか、折角だからハンモックしようかなって」
「ハンモック!」
テントの中に上半身を突っ込んで、ゴソゴソと荷物の中を探るリュカに、オズが好奇心に目を輝かせる。
「わたしもわたしも。やりたいっ」
「そう言うと思って、2つ持ってきた」
テントの中から顔を出したリュカは、ちょっとだけ誇らしげな顔をして、両手に畳んだハンモックを抱えていた。
好奇心の塊の様なオズがそう言い出すだろうと言う事くらい、お見通し。
●森の中で
ハンモック。
樹や柱に両端を結びつける寝具である。最近は、世界によっては足がついていて周りに結ぶものが無くても使える自律式ハンモックと言う類もあるが、リュカが持って来ていたのは何かに結ぶタイプのものだった。
「で、こっちを結んだら反対をこっちの樹に確りと結ぶ。それだけだよ」
「かんたんね!」
丁度良い間隔に樹が並んでいる所で、まずはリュカが腰くらいの高さにハンモックを結んで見せる。
じっと見ていたオズも、リュカに倣って同じくらいの高さにハンモックを結ぶ。
「でーきたっ」
何度か揺すって確り結べたのを確認して、オズは勢い良くハンモックに腰掛ける。
「うん、お兄さんもうまくでき……「わっ」……!?」
自分のハンモックの結び目を確認していたリュカがその声に振り替えると、オズのハンモックがぐるんと回っていた。当然、オズもひっくり返る。
ひっくり返って、顔からべしゃっといった。
「だ、大丈夫? 怪我しなかった?」
「だいじょうぶっ」
心配して手を伸ばすリュカの手を、顔を上げたオズの手が掴む。
「びっくりしたー。ハンモックって難しいねぇ」
「びっくりしたのはこっち」
服に付いた草を払うのも楽しそうなオズに、リュカは小さく溜息を吐きながら、自分のハンモックに深く腰掛ける。
「最初に深く腰掛けて、勢い付けないでそっと足を上げると回らないよ」
「リュカは、ハンモックもくわしいのね」
そっと足を上げてハンモックに収まったリュカに倣って、オズもまずは深くハンモックに腰掛けた。
ゆらゆらと、2つのハンモックが揺れる。
聞こえる音と言えば時折吹く風と、風がサァサァと揺らす木の葉の音と、遠くに聞こえる野鳥の声くらい。
「風がきもちいいねえ……」
「うん」
ゆらゆらと、ハンモックの上でオズもリュカも風に揺られる。
オズは片手を伸ばして風を感じたりしながら、リュカは持ってきた本を読みながら。
2人の間にある簡易テーブルの上のお菓子の袋は、もう空になりそうだ。
小腹も満たされて、一定のリズムで風に揺られる。見上げる木漏れ日の眩しさに、オズは目を細め――。
「お兄さん……お兄さん?」
オズにしては静かになったと思いリュカが首を捻ると、オズは目を閉じて静かに寝息を立てていた。ハンモックからだらんと片手だけ下がってもバランスとって寝ている姿は、なんだか猫っぽい。
「あれ、寝ちゃったか……ま、いいや。そっとしておこう」
小声で呟いて、リュカは読みかけの本に視線を戻す。
だが――。
隣から聞こえる寝息に釣られたか、数ページも読み進める前に、リュカもまどろみの中に落ちていく。
きっと仕方のない事なのだ。
だって其処は、昼の寝床、なのだから。
●見上げる空に輝くは
「リュカ、リュカ」
「んー……」
慌てたようなオズの声とゆさゆさと揺れる振動に、リュカが目を開ける。
「わたしたち、ねちゃってた」
「ああ、うん。お兄さん寝てたね。おはよ――あ、もうこんな時間か」
そこは戦場を渡り歩いていた習性か。
目を覚ましてすぐに、リュカはおおよその時間を把握していた。
「しまったな。陽が落ちてるのに、夕飯の支度、何にもしてないや」
ハンモックから降りながら、リュカは少し困った様に呟いた。
まだランタンもつけてないし、火も熾していない。ここまで暗くなる前にやっておいた方がいい事がすっぽ抜けている。
「大丈夫かな……」
「リュカ、リュカ」
この寝過ごしをどうするかと腕を組んで考え込みだしたリュカの肩を、オズがゆさゆさと揺すって来る。
「お兄さん、どうしたの?」
リュカが振り向くと、オズがパッと手を離して――指さしたのは、真上。
「うん? 空?」
「うん、星がきれいだよ」
オズが指さした樹々の先の空はもう暗く、幾つもの光点が夜空に瞬いていた。
「あそこ、三角形」
「本当だ。綺麗だね、星」
オズが星空の中に三角形を見つけて指先で描く。リュカは目で追うも、オズが指さしているのがどの星なのか、はっきりとはわからない。
それ程に、多くの星が空に輝いていた。
この島には夜でも輝く文明の光は、星の光を妨げる光は、ほとんどない。
「もうちょっとゆっくりしていこうか」
そう言ってハンモックに座り直したのは、リュカの方だった。
幸い、テントは近い。迷う事は無いだろう。迷ったって、別に急ぐ旅ではないのだ。
取り敢えずテントに戻ったら、またあの時の様に珈琲を淹れようか。
「……お腹は少し、減ったけど」
「ふふ、ばんごはんなににしようか?」
リュカの隣に腰掛けて、オズが笑う。
「おにぎり? 焼きおにぎりもいいなあ」
「おにぎりいいね」
さっきの三角の星から連想したのか、おにぎりと言い出したオズにリュカも頷く。
2人はそのまま、しばし――お腹の虫がいい加減にしろと急かすまで、夜の森で星空を見上げていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【梓(f25851)と】
あちこち色んな島で遊び回ってきたけど
本格的なキャンプは今回が初めてかも?
はーい、いっぱい買ってきたよ
お肉各種、野菜各種、キノコ、チーズetc…
更に食後のデザート用の
マシュマロとビスケットのセットもばっちり
すっかりバーベキュー奉行の梓に焼く仕事は任せて
焼きたての食材をはふはふと頬張る
調味料も色々持ってきたから色んな味が楽しめる
王道の塩胡椒や焼き肉のタレも良いけど
俺はやっぱりコレだね
大好きなタバスコをかけまくる
捕れたての魚介類のバーベキューも絶品だろうけど
ここの海の魚は捕っても良いのかな?
あとで島の人達に聞いてみようか
もしOKだったら今日の夕飯は海鮮バーベキューだね
乱獅子・梓
【綾(f02235)と】
そうだな、この島でのテーマは
キャンプを存分に楽しむ、だ!
キャンプといえばテント
そしてキャンプといえば…バーベキューだ!
お手軽なワンタッチタイプのテントを用意
ちゃちゃっとテント設営を済ませたら
バーベキューコンロをセッティング
よし綾、食材を持ってこい!
ドラゴンの焔と零も呼んで皆でバーベキューパーティー
焼けた食材を手早く綾や仔竜達に配給していく
ふっ、どうだ俺の焼き加減はバッチリだろう
どれも美味いが魚介類が欲しくなるな
釣りや素潜りで調達出来ないだろうか
確かに「島の自然を荒らさない」に
該当しないか不安ではあるが…
ま、捕るのはダメでも
あとで海で魚達と一緒に泳いで遊ぶのも悪くないな
●キャンプと言えば
「見事に何もないね」
じりじりとした夏の日差しが降り注ぐ青空を眩しそうに見上げ、灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)はいつもの糸目をいつも以上に目を細めていた。
「あちこち色んな島で遊び回ってきたけど、こんなにキャンプに打って付けなのは今回が初めてかも?」
「そうだな。だから今回はキャンプを存分に、楽しむ!」
荷物の中から一抱え程の袋を取り出しながら、乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)が綾に頷く。
「ってわけで、テント設営するぞ。キャンプと言えばテントだ」
そういって梓が袋の中身を広げると、それは一瞬で傘の様に広がった。
「ほい、設営完了」
自律式のワンタッチテント。
他の世界では、組み立て不要と言う手軽さが人気のアウトドアグッズである。
「文明の利器ってすごいよね」
重し変わりの荷物を中に入れるついでに、綾がテントに入ってみる。
広々とは言えないが、2人分の寝床には充分なスペースだ。テントの生地はやや薄めなのか、外がぼんやりと見えている。それでも容赦なく降り注ぐ日差しが遮られているだけで、中は幾らか涼しさを感じられた。
「ワンタッチは軽すぎるとか言う奴もいるが、ここの環境なら大丈夫だろ」
答える梓の声に、カチャカチャと何かを組み立てる声が混ざる。
テントをお手軽なものにしてでも、他にやりたいことが梓と綾にはあったのだ。
「よし、バーベキューコンロのセッティング出来たぞ!」
「おー! 待ってました!」
梓の声に綾がテントから出れば、ガーデンタイプと呼ばれる蓋つきのバーベキューコンロが組み上がっていた。
キャンプと言えば、テント。
そしてキャンプの一番の楽しみと言えば、バーベキュー!
●バーベキュー奉行御一行
「焔。軽く一息頼むぜ」
『キュー』
梓の声に答えて、赤い仔竜『焔』が口から炎を吐く。
ボワッと上がった炎が、梓が持つ薪に火を付けた。仔竜と言えど、焔は炎竜。この程度ならお手のものだ。
『ガウ』
「ん? 零の出番はまだあとだぞ」
梓がコンロのロストル部に入れた他の薪に火を移していると、その足元で蒼い仔竜が『零』何かを訴える様に鳴き声を上げた。
『ガウー』
「あとで火を消す時に働いてもらうから――飯はちゃんとやるって」
焔だけ働いたことを気にする『零』に笑って告げて、梓はほぼすべての薪に炎が行き渡ったロストル部をコンロに戻す。
(「仔竜を着火と消火道具代わりにする男……」)
梓は結構すごいことしてるのでは、と綾は胸中で呟く。
この島のエルフとドワーフが見たら、腰を抜かすかもしれない。
「よし綾、食材を持ってこい! 焼くぞ!」
「はーい、いっぱい買ってきたよ」
まあそんな事、これから始まるバーベキューの前には些細な事である。
バーベキューコンロの中、3段ある焼き網の1段目には各種のお肉を。
その上の2段目にはナスやトマトに玉ねぎ、トウモロコシなどの夏野菜を並べ、一番上の3段目にはチーズを置く。
「この配置がベストだ。チーズは火に近すぎると焦げるか溶けるが、ここなら溶けても野菜か肉が受け止めてくれるし、野菜も遠火で焼ける」
綾が買ってきた様々な食材を、梓が手際も順序も良く並べてコンロの蓋を閉じる。
「梓はすっかり、バーベキュー奉行だね」
『キュキュ』
『ガウガウ』
肉焼く仕事はお任せする満々な綾の足元で、仔竜たちが同意するように首を縦に振りながら鳴いている。
とは言え、綾も何もしていないわけではない。
アウトドア用の椅子に腰かけ、別の焚き火台で熾した小さな焚き火で、マシュマロを串に刺して炙っていた。
「そろそろ焼けたかな」
表面が薄いきつね色になったマシュマロを、ビスケットで挟んでパクリ。
「おい、それデザートじゃねえのかよ」
スモア食べ始めてる綾に、バーベキュー奉行からのツッコミが入る。
「別腹別腹」
しかし綾は気にした風もなく、2個目のスモアを齧っていた。
だってお肉焼けるまで、少し時間かかるし。
そうこうしてる内に、コンロから香ばしい匂いが漂い始めていた。
「焼けたぞ!」
梓がコンロの蓋を開けると、匂いは一気に辺りに広がる。
「よし、どんどん食え」
肉、野菜、肉、野菜、チーズ。
綾の皿に手際よく乗せて、仔竜達の皿にも肉を乗せてやる。
「おお。肉柔らかー! 野菜あまー!」
綾の皿の上から、肉と野菜がもりもり減っていく。
「ふっ、どうだ。俺の焼き加減はバッチリだろう」
綾の赤いサングラスの向こう。いつもの糸目が僅かに開いているのに気づいて、梓は満足気に頷いていた。
実際、梓の焼き加減は完璧だ。生過ぎず焼き過ぎもせず、簡単に噛み切れる。
『キュー!』
『ガウ!』
仔竜たちの事を考えて味付けは最低限の塩のみ。
塩胡椒や焼き肉のタレはあるので自由に味を足せるのだが、塩味だけでも肉の旨味が良く判るし、溶け落ちたチーズが肉についてカリカリに焼かれている部分もあって、何もつけなくても充分に美味しい。
「焼肉のタレもいいが……ここは醤油で。チーズと醤油、合うんだぜ」
配膳の合間に自分の皿に取った肉に、梓は醤油を数滴落とす。
「それも良さそうだけど、俺はやっぱりコレだね」
一方、綾が手に取ったのは赤い液体が入った小さな小瓶。
その中身――タバスコを、綾は肉に赤味が付くほどにかけまくる。
いつもの事なのか、梓は特に何も言わずに、仔竜たちにおかわりを配っていた。
●夏空と黒と白
ピスピスと、小さな寝息が2つ聞こえる。
肉で満腹になった仔竜たちは、テントの脇で丸まって寝ていた。
「肉も野菜も美味かったね」
「当然だ。俺が焼いたんだからな」
綾と梓も、片づけもそこそこに椅子に座ってまったりしている。
「だが、次は魚介も食べたくないか?」
「あ、いいね。捕れたての魚介類のバーベキューも絶品だよね!」
だと言うのに、2人の話題は夜のバーベキューに移っていた。
「でもそんなの買って来てないよ? 戻る?」
綾がそんな提案を口にするが、それも風情が無いと言うものだ。
「海はあるんだから、釣りや素潜りで調達出来ればいいんだがな」
「ここの海の魚は捕っても良いのかな?」
自然と、2人の視線が海岸線に向けられる。
島の自然を荒らさない――事前に聞かされていた条件のひとつに、海での釣りも含まれていなければ、だが。
『薪は足りていますかな?』
そこに折よく、森のエルフが追加の薪を手に様子を見に来た。
渡りに船と訊いてみれば、食べる分くらいなら構わないとの事。
『ただしここはグリードオーシャン。気性の荒い魚もいるので、気を付けて』
エルフの言い残した言葉に、綾と梓は思わず顔を見合わせる。
「やってみる?」
「だな。不安ではあるが……ダメでも海で魚達と一緒に泳いで遊ぶのも悪くないしな」
釣れるかどうかは別にしても、取り敢えず海に行ってみるのも良いだろう。
「そうだね。ここ、静かで良いけど暑いし」
綾のそんな言葉に、梓が道具を準備する手を止める。
流石にいつものファー付きのコートこそ着ていないけれど、綾の恰好の色合いはいつもとあまり変わらない――要するに黒づくめ。
「お前、黒い服以外持ってないの?」
「? ――何で?」
何故急に梓がそんな事を訊いてきたのか判らず、綾は首を傾げていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵