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迷宮災厄戦㉑〜蒸気魔王の娘

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #レディ・ハンプティ

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●おうさまとへいしたちぜんぶでも
 魔導列車が走り回り、蒸気建築に埋め尽くされた大都会のような国。
 アリスラビリンスの中のそんな奇妙な国のベンチで貴婦人のような出で立ちの黒服の女が物憂げに溜息を吐く。
『あらあら、わたくしも難しそうね』
 吐息と共に背中の金属パイプから蒸気を吐き出す彼女の名は『レディ・ハンプティ』。猟書家を滅ぼさんとする猟兵達の勢いはすさまじい。
 しかし、彼女にも夢がある。
『魔女の肚から造り出されたわたくし、父様を想いしたためたこの『蒸気獣の悦び』。父様の無念を果たす為にわたくしは諸王国連合に父様の災魔を『蒸気獣』に変えて放ち、その被害を以てわたくしでも新たに災魔を産めるようになりたいのです。だから――』
 最期まで諦めない。乳房の下の口も敵を喰らわんとわなないている。
『どうか、どうか見守っていてくださいね、アウルム・アンティーカ父様……!』

「皆ちょっといいかな。猟書家の一人『レディ・ハンプティ』の居場所が分かったから倒して来て欲しいんだ」
 唐突にクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)が猟兵達に切り出す。彼女の語るのはアルダワ魔法学園の世界を侵略せんとする猟書家についての予知だ。
「彼女がいるのは魔導と蒸気建築に埋め尽くされた大都会のような国。そこで猟兵達を迎え撃とうとしているみたいだ。他の世界を侵略しようとしているだけあってか当然強敵、向こうの先制攻撃への対策を練っていかないと厳しい戦いになるだろうね」
 そしてクーナは猟書家『レディ・ハンプティ』についての説明に移る。
「戦場は魔導列車の線路のある広場、周囲には蒸気建築が並んでるけど特に危ないものはないようだよ。それで攻撃は基本的に力業。接近戦で乳房の下の口で噛みついて丸呑みにしてきたり、肩の蒸気機関から噴き出す蒸気を纏って速度と反応性を増大させてくる。それから侵略蔵書の力で黄金色の蒸気機関で武装させた災魔の幽霊を大量に乗せた魔導列車を召喚してくるみたいだよ……どうにも大魔王第一形態のアウルム・アンティーカの面影があるよね」
 予知でもちょっと見えたけども本当に娘なのかな、とクーナは首を傾げる。
「それからレディ・ハンプティが狙っているのはアルダワ魔法学園の西にある諸王国連合、世界の要のあの地に蒸気獣というのを解き放って滅茶苦茶にしようとしているみたいだ。何とかしてここで食い止めておきたいよね」
 どうか頼んだよ、そう締めくくりケットシーの猟兵はグリモアを輝かせ、蒸気建築立ち並ぶ国へと猟兵達を転送するのであった。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 猟書家二番手、あの大魔王に娘がいたとは驚きですね。

 このシナリオは蒸気建築に埋め尽くされた大都会のような国の猟書家『レディ・ハンプティ』と戦うシナリオとなります。
 相手は必ず先制攻撃を行ってくるため、そのユーベルコードへの対処が重要となります。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『レディ・ハンプティ』』

POW   :    乳房の下の口で喰らう
【乳房の下の口での噛みつきと丸呑み】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    アンティーカ・フォーマル
【肩の蒸気機関から吹き出す蒸気を纏う】事で【武装楽団形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    侵略蔵書「蒸気獣の悦び」
【黄金色の蒸気機関】で武装した【災魔】の幽霊をレベル×5体乗せた【魔導列車】を召喚する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

蝶ヶ崎・羊
お初にお目にかかります
ワタシは羊。貴方の企みを止める者です
貴方のような方をアルダワの世界に行かせることはさせません!

先制UCには【オーラ防御】の纏ったヒアデス・グリモワールで【武器受け】し、そのまま【奪い喰らう貪欲な牡牛】で奪います
『貴方の災魔…お借りします』
奪えればそのまま災魔を操り【重量攻撃/鎧無視攻撃】を頼みます

ワタシはグリモワールの雷の【全力魔法】を【多重詠唱】で攻撃力を上げて敵に落とします
『ワタシは私自身の居場所を守りたい…ですので、貴方の野望は叶えさせません!』


黒柳・朔良
生憎私も彼女の父といわれるアウルム・アンティーカとは相見えたことはない
しかし、かの魔王と同じようにようやく平和となった世界に再び戦乱を巻き起こそうとしているのは明白
それは決して許されることではない

他の猟書家達と同様に、彼女もまた先制攻撃をしてくるか
普段の私の闇に紛れる戦法が使えないのは痛手だが、考えがないわけではない
彼女のPOWのUCは至近距離でしか発動しないもの
私に注意を引きつけておいて「鴉丸」で攻撃を受け止めた後に本命となる選択UCを発動、カウンターを狙い思い切り地面にたたきつけるぞ
まさか足元直下を狙われるとは彼女も思うまい
影は『影』(わたし)自身でもあることを思い知るといい



 その不思議な国とは少々変わった街並みで、ベンチに腰掛けた猟書家の女は静かに本を読み進めていた。
 そんな淑女然とした猟書家の前に、二人の猟兵が現れる。
「お初にお目にかかります。ワタシは羊、貴方の企みを止める者です」
 紳士的な所作で礼をする彼、蝶ヶ崎・羊(罪歌の歌箱・f01975)はミレナリィドール。アルダワ魔法学園の片隅の古書店に居を構える彼はあくまで穏やかに、けれど有無を言わせぬ強さを言葉に込めてアルダワのある世界を狙う猟書家を食い止めると告げる。
 黒柳・朔良(「影の一族」の末裔・f27206)も生憎この猟書家の求めるアウルム・アンティーカとは相見えたことはない。
 しかしその存在が世界を混乱を招いた事は知っている。ようやく平和となった世界に再び戦乱を巻き起こそうとしている事が明白であるならば。
(「それは決して許されることではない」)
 故に彼女はこの猟書家を仕留めんと、黒の小太刀『鴉丸』を構え猟書家に殺意を向ける。
「ワタシは私自身の居場所を守りたい……ですので、貴方の野望は叶えさせません!」
『まあ、怖い事。けれどこの胸の昂りは止められません』
 羊の言葉に猟書家は微笑みながら、その侵略蔵書『蒸気獣の悦び』の力を解放する。すると線路の上に突如魔導列車が召喚される。
 乗客はすべて黄金色の蒸気機関で武装された災魔の幽霊、蒸気機関を唸らせている列車にレディ・ハンプティは淑女らしく軽やかに飛び乗ると、猟兵達に向かって発車させる。
 線路を真っすぐ走る列車を羊と朔良は左右に分かれ回避。そしてそれと同時に列車より飛び降りてきた小悪魔のような災魔の群が蒸気を吹き出しつつ襲い掛かってくる。
 蒸気機関から噴き出しているのはセピア色の花園の世界に居たオウガが放っていた瘴気の蒸気ではない。しかしその攻撃はオーラを纏った牡牛の表紙の魔導書で防いで尚非常に重い。
 ――物理的にかなり強化されている、そう羊は判断し怒涛のように押し寄せてくる災魔の幽霊達に牽制の雷の魔法を放つとユーベルコードを起動する。
「そんな興味をそそられる技を魅せられたら、お借りしたくなるではないですか」
 牽制を無視して突っ込んできた白黒の魚のようなスライムの突撃を魔導書で受ければほんの一瞬青年の影が羊によぎり、そして直後魔導列車がもう一台召喚される。
 相手のユーベルコードを防ぐ事で魔導書に記録し自分で使用する事の出来る【奪い喰らう貪欲な牡牛】――力量差から乗車している災魔の数こそは少ないが、それでもコントロールできるそれらを猟書家の魔導列車に一斉に突撃させる。
 それを迎え撃つ為に猟書家の列車内から大量の災魔が飛び出し迎え撃つがそこまでが羊の狙い。
「――貴方のような方をアルダワの世界に行かせることはさせません!」
 十分に魔力を高めた全力の雷の魔法、飛び出した災魔達に空より強烈な雷が降り注いだ。

 一方、朔良は魔導列車に猟書家を追い飛び込んでいた。
 見かけは淑女であろうと他の猟書家と同様に力は強大。故に向こうの業はこちらよりも圧倒的に早い。
 朔良の普段の戦法は闇に紛れ仕掛けるそれを使う事ができないのは痛手ではある。しかし当然ながら対抗策を考えていないわけでもない。
 外に新たな魔導列車が出現し、迎撃の為に多くの災魔が飛び出したことも幸い、朔良は何とか猟書家に追いつく事に成功。
『まあ、しつこい方は嫌われましてよ』
 そう言うと猟書家はその乳房の下の口を大きく開くと朔良を喰らわんと襲い掛かる
 黒の小刀で喰らいつきを防がんとするが、至近距離で効果を発揮するその乳房の下の口の圧力は凄まじく、押し切られそうになる。
 しかし丁度そのタイミング、魔導列車に雷が降り注ぎ客室内に電撃が走る。
 その一瞬の隙を突き体を入れ替え何とか口撃を回避し猟書家の裏を取る事に成功する。
「本命は私ではなく貴様の影にある。果たして避けることは出来るかな?」
 そして瞬間朔良がユーベルコードを起動、レディ・ハンプティの足元の影から影人形が出現しその足首を掴む。
 完全に不意を突かれた猟書家は足の感触に気付くとすぐに逃れようとしたが、怪力を誇る影人形はがっちりと掴んだまま離さない。
 その上猟書家の胴体に開く口の位置は胴体、そこからの至近距離でなければ届かないためこの状態では反撃不可能。
 そして影人形は思い切り猟書家の足首を掴んだまま列車の床へと叩きつけ、めり込ませる。
 魔導列車は頑丈なようでその衝撃にもびくともしていないが、立ち上がるレディ・ハンプティの口からは赤い血が零れていた。
『……成程、影も貴女自身なのですね』
 猟書家の言葉に、朔良は表情を変えず再び斬り込もうとするが、他の客室より武装した災魔の群が現れ両者の間に割り込んでくる。
 影人形を操り災魔を掴み振り回し、鴉丸で切り払いながら一旦仕切り直す為に朔良は列車の窓より外へと飛び出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フィーナ・シェフィールド
アドリブ連携歓迎です。

せっかく平穏になったのに、アルダワへの侵攻なんてさせません!
ここで絶対、止めますよ!

魔導列車は飛べませんよね…?
列車が召喚されると同時に、翼を広げて空中に舞い上がり、列車の攻撃を回避。そこから飛び出してくる災魔の幽霊は、シュッツエンゲルを周囲に展開して受け流します。

「舞い踊れ、彼岸桜!」
攻撃を防御しつつ、モーントシャインを彼岸桜の花びらに変え、レディごと災魔を取り囲むように振り撒きます。

「心に響け、わたしの歌!」
空を飛んだまま花びらを操作しながら、インストルメントを演奏して歌い始めます。
花びらの触れた所から、破魔の歌声を直接響かせることで、悪しき魂を浄化していきますよ!



 落雷を受けたことにより停止していた魔導列車が再び蒸気を各所より吹き出し再発進する。
 しかし列車が止まった瞬間、一つの影が空へと舞いあがっていた。
「せっかく平穏になったのに、アルダワへの侵攻なんてさせません!」
 翼を広げ大空より列車を見下ろすのはオラトリオのフィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)。彼女を追い黄金色の蒸気機関を装着した飛行能力を持つ災魔の幽霊達が飛び上がる。
 だがその数は少ない。飛行能力を持つ時点で数が限られている事と、その上雷で数を減らしているからだ。
 その数ではフィーナの周囲を舞うオーラのバリアを纏う数十のプレートに受け流され突破できない。
「ここで絶対、止めますよ!」
 内心列車が空へと飛んでくる可能性も考えていたが、少なくとも今の状態ではそれもないだろう。
 それでも地上を走っているからその真上を取り続けるのは少々厳しいものもあるけれども。
「わたしの想い、舞い散る花となって、貴方に届け! 舞い踊れ、彼岸桜!」
 その言葉と共に月光のような優しい輝きのオーラが赤き彼岸桜の淡色の花弁へと変化し魔導列車と、その周囲の災魔へと降り注ぐ。
 花弁の嵐が災魔達を取り囲むドームのような結界を形成すると、フィーナはキーボードとギターを一体化させた特製の楽器を構え歌う。
「心に響け、わたしの歌!」
 オリジナルデバイスの旋律に重なるオラトリオの歌声は破魔の歌声、そして彼岸桜の花弁は触れた相手にその歌声を直に響かせる媒介で召喚されているのは災魔の幽霊。
 花弁に触れた霊達、そして魔導列車に破魔の歌声が響き、災魔達は次々に消失していく。
 列車内の災魔も随分数を減らし隙が生じる。走り続ける後部車輛、そして運転席付近にそれぞれ二人ずつ猟兵が飛び込んでいくのをフィーナは見下ろしながら、走行を続ける魔導列車の上空より災魔達の魂を浄化する為に歌声をより高らかに響かせていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

父親想いの娘だね…
…だが…貴様の願いとやらは…ここで討ち砕いてやろう…
来い…私は処刑人だ!

[存在感]で敵を惹き付けて
攻撃範囲に入らないよう[ダッシュとジャンプ]で
敵から逃げつつ国中を走り回ろう

袋小路になっている場所に逃げ込み、敵を誘い込もう
敵が噛み付き攻撃の瞬間を[見切り]、壁を背にして鉄塊剣を抜き
[オーラ防御と激痛耐性]を身に纏いながら鉄塊剣を突き出し
乳房の下の口の中目掛け[鎧無視・貫通攻撃で串刺し]にしてやろう

そして【聖処女殺し】を発動し武器を変形
[傷口をえぐり]ながら変形した鉄塊剣を無理矢理[怪力]で引っ張り
腹腸諸共引き摺り出してやろう…!!!

愛し父君の元へ逝くがいい…!


氷川・権兵衛
【POW】
何と見事な...見事な恵体だ!いや、狩りに専念せねば...だが、しかし...何とも大きな...
私の【激痛耐性】【環境耐性】【呪詛耐性】【狂気耐性】や狂獣化血清の【ドーピング】で、彼女の噛みつきに無理やり耐えられないだろうか?オブリビオンの研究者として、奴の身体構造に興味が尽きない...だからそう、意図的に丸呑みされようと思う。意識が残っているなら、UCの発動は可能だろう。
巨大化し、彼女の腹を食い破る...生還してやろうではないか。【医術】で彼女の柔い部分を食いちぎり、【継戦能力】で力尽きるまで戦ってやろう。
失敗した場合も撤退はしない。男には、引いてはいかぬ戦いがあるのでな...



 桜の花弁舞い散る中、走行中の後部車輛に飛び乗ったのは煤汚れた白衣の人狼と黒きペストマスクを被った女。
 前の車両へと走る二人はそれ程時間もかけず猟書家を発見する。
『あらあら、もういらしたの』
 猟書家レディ・ハンプティは平然とした口調で二人に応対する。
「何と見事な……」
 煤汚れた白衣の人狼、氷川・権兵衛(生物学者・f20923)は猟書家に感嘆の声を漏らす。
 魔導蒸気機械の特徴の強い大魔王たる存在の娘、その肩の魔導蒸気機関、そして魔女より産み出されたとされるその肉体が、医師でもある彼の琴線に触れたのかもしれない。
「……見事な恵体だ!」
 違った。というか視線は肩ではなくその間に注がれていた。
 胴体にある口を上から覆い隠すそれはまあ、仕方ないのではないだろうか。
「いや、狩りに専念せねば……」
 だがしかし、何とも大きなとか未練たらたらにぶつぶつ呟く権兵衛だけれども、眼前に居るのは間違いなく凶悪な猟書家だ。油断などできるはずもない。
(「父親想いの娘だね……」)
 地獄の蒼炎纏うブレイズキャリバーの女、仇死原・アンナ(炎獄の執行人・f09978)の頭に過るのは自身の義父。
 ――この猟書家の父への想いはとても強い。それこそ世界を滅茶苦茶にしてしまっても何の罪悪感もないだろうくらいに。
 だが。
「……貴様の願いとやらは……ここで討ち砕いてやろう……」
 拷問具をモチーフとした鉄塊剣を構え、アンナは真っ向からレディ・ハンプティのヴェールの下の瞳を見据え、
「来い……私は処刑人だ!」
『言われずとも!』
 義父にそう育てられた在り方を宣言したあんなに、レディ・ハンプティがその胴の口を大きく開き突撃する。それを即座にバックステップで回避するが、アンナを喰らい損ねた猟書家の胴体にぱっくりと開いた口が座席の一つを噛み砕く。
 胸を隠すように張り出している牙は鋭く、当然咬合力も恐ろしいものだろう。それこそ猟兵であっても食い千切られてもおかしくない。
 頑丈そうな座席をいとも容易く噛み砕いたそれはまともに受けてしまえば大ダメージは免れないだろう。
 そして更にレディ・ハンプティは優雅にステップを踏むとアンナに向かい跳躍。丁度その胸――の下の口で真上から狼の顔面に齧り付く角度で落下する。
 けれどそこに権兵衛が割り込んでくる。アンナの存在感に気配を隠し、飛び掛かってくるタイミングを計っていたのだ。
 人狼の男のオブリビオン研究者としての知的好奇心、そして狂獣化血清により齎された凶暴性はそんな危険などお構いなし。喰らいついてきたその胸の下の口の中に逆に飛び込んでいく。
 流石のハンプティも驚いたような表情になるが、その表情はさらに驚愕の色に染まる。
 人狼に少し遅れアンナがその鉄塊剣を突き出してきたのだ。一旦距離を取ったが列車内はそこまで広くもなく逃げるスペースも少ない。権兵衛の行動に合わせ即座に攻め手に切り替えた彼女の行動に、レディ・ハンプティは一瞬乳房の下の口を噛み合わせるタイミングを見失う。
 その間に鉄塊剣、そして権兵衛の膝より上が胴に開いた口の中へと突っ込まれる。
 中は異空間のように拡張されているようで外から見た淑女の体よりも広い、鉄塊剣も口内の肉に突き刺さっているな、と冷静な部分で思考する権兵衛だが次の瞬間乳房の下の口の牙のような歯が噛み合わされ、足に激痛が走る。
 大量の血が流れ出る感覚はあるが致命的な血管だけは避けている、持ち前の激痛への耐性と投薬の興奮作用これなら暫くは意識を保てるだろう。
 ならば十分。さあ、反撃の時間だ。
「……さあ逃げ惑え、餓王の御前であるぞ」
 狼煙の言葉と共にユーベルコードを起動。見る見るうちに権兵衛の身体が膨れ上がり巨大なケルベロスの怪物へと変化する。
 膨れ上がる筋肉が足を貫いた牙を押し返し、逆にその三つの頭が猟書家の口内、とても柔らかい肉に牙を突き立て内側から食い破っていく。
 その激痛と口の中で膨れ上がっていく不快感に、レディ・ハンプティは思わず胸の下の口から権兵衛を吐き出す。
 ――けれども鉄塊剣は吐き出されない。
「愛し父君の元へ逝くがいい……!」
 アンナのユーベルコード、鉄塊剣の刀身に地獄の炎が広がるとそれが四方に花開くように変形、吐き出そうとする口の中にしっかりと食い込んだからだ。
 だけれどもアンナはレディ・ハンプティの腹に足を当て、その鉄塊剣を怪力で引きぬかんとする。肉に食い込むよう変形した鉄塊剣が乳房の下の口を滅茶苦茶に痛めつけながら引っぱられ、そして大量の血飛沫と猟書家の叫びと共に外へと再び生まれ出でた。
 だが、猟書家は倒れない。もう一手必要だろう。
 権兵衛は膝をついている。わざと飛び込んだ代償はかなりのもの、普通なら意識を失う程の血を流しているけれども理性をなくした琥珀色の瞳のケルベロスは再び立ち上がる。
 男には退いてはならない戦いがある。理性を失ってもなお、権兵衛は力尽きるまで戦う覚悟を決めていたのだから。
 ――根本的に何かが違う意味のような気もするが、気にしない。
 アンナもまだ闘志は消えていない。この猟書家を打ち倒す為に彼女は再び鉄塊剣を構え、窓から吹き込む桜の花弁が舞い踊る中、二人はレディ・ハンプティへと突撃するのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御魂・神治
共闘・アドリブ〇

残念やけどワイの好みちゃうわ、別嬪やけどな

先制対処:
ダメージは【オーラ防御・結界術】で軽減、【戦闘知識】で回避しつつ
出現した列車は『天将』で【ハッキング】、機構の制御を改竄、自爆を狙う
せやけど時間はかかるやろな
【破魔】の『爆龍符』の【爆撃】や
『森羅』『天地』の【乱れ撃ち】で幽霊を【除霊】
幽霊の数が減るまで守りに徹する

反撃:
隙をついて【二回攻撃】で奴の肩の蒸気機関を狙う、力の源やろそれ
仕上げは胸下の口目掛けて陽と火複合の【属性攻撃】のUC【破魔爆散『涅槃』】をぶち込む

‎瘴気に満たされたアンタはさぞかしよく燃えるやろて
生ゴミは燃えるゴミの日に!
腐った中身を無様にぶちまけて往ね!


中村・裕美
「……なんであれ……敬える親がいるなら……いいことだとは思う。……だからといって……アルダワに再び戦乱を起こす理由にはならないけど」

先制攻撃はドラゴンランスで【武器受け】しつつ、相手の蒸気機関に電脳魔術で【ハッキング】【防具改造】を仕掛けて、蒸気機関のバランスを崩してまともに稼動できなくさせる
「……楽器って……調律が大事でしょ?」
あとはUCで自己強化して敵を【串刺し】にする。代償は各種【耐性】で耐える。
「……色々聞いてみたいこともあったけど……悠長にはしてられないの。……残念ね……さようなら」
父親のこと、他の魔王と違うのか、大好きエピソード等色々あるが、話せる時間がないのが残念



 一方、前方の車両に飛び乗った二人の猟兵は先頭車両へと向かっていた。
 魔導列車内の災魔の幽霊はかなりの数が外へと飛び出していたが、幾何かは中に残っている。
 そんな幽霊達に角材型のハンドガンで銃弾をばらまき、さらに爆龍符の爆風で除霊しながら御魂・神治(除霊(物理)・f28925)は進んでいく。
「しっかしけったいな数やな。こんなモン都会のど真ん中でバラ撒こうとか親の教育どうなっとるん?」
「……なんであれ……敬える親がいるなら……いいことだとは思う」
 神治の悪態にぼそぼそと返す中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は接近戦担当、銃弾と符を掻い潜り飛び込んできた災魔の攻撃を黒槍で受け流しつつ反撃の刺突、串刺しにしたまま槍を振るい列車の外へと投げ飛ばしていく。
 彼女としては敬える親、親娘としてのエピソードや他の魔王との違いなど直接聞いてみたい事もあるのだけれども、その余裕は少しなさそうだ。
 二人の目標は先頭車両の運転席。乗車した直後、神治は人工式神の天将によるハッキングをに試みたのだけれども遠隔での制御系の改竄は非常に困難、完了までの時間も非常にかかる。
 そう判断し、二人は運転席から直に制御を奪おうとしているのだ。
 先頭車両から迎撃に飛び出してきた黄金の蒸気機関を装備した災魔に、神治が陰陽の力を宿す弾丸をぶち込み成仏させる。
 残った蒸気機関から放出される蒸気は少し厭な臭いがするが、有毒ではないようだ。
 無人となった運転席に飛び込み即座にハッキングを開始する。狙い目は動力部、暴走させて列車を自爆させられれば、攻撃手段の一つを奪われた猟書家にも隙が生じるはず。
「……なにこれ。切り離されている?」
 その過程で他の車両の様子に注意を向けていた裕美は、後方車両の連結が次々に切り離されている事に気がつく。
 どうやら災魔を操り切り離させているようだ。
 そしてその分断は先頭の客室車両の後方へと差し掛かって、振り向いた二人が目にしたのは血みどろ姿の淑女。
 既に他の猟兵と交戦していた様子の彼女、胸の下から血を流しながら神治と裕美へと敵意の視線を向ける。
 その表情は凄絶、見るものが見れば魅了されたかもしれないほど。
 これだけの傷を負いそれでも闘志を燃やす猟書家だ。それ程父への思慕が強いのなら大魔王を討ち果たした猟兵達、そしてアルダワの世界に対する負の情念も強いのだろう。
「……だからといって……アルダワに再び戦乱を起こす理由にはならないけど」
 だけどそれとこれとは話は別。裕美も再び黒槍を構えレディ・ハンプティを見据える。
「残念やけどワイの好みちゃうわ、別嬪やけどな」
 そして神治も首を振りつつ二丁拳銃を構える。
 それを合図に、レディ・ハンプティの肩の蒸気機関から蒸気が噴き出しパイプから奏でられる旋律と共に彼女の周囲に纏わりつく。
 その蒸気は瘴気ではない、けれど纏ったものの寿命を代償に武装楽団形態に変化させて肉体の速度を活性化させるようで、傷だらけの体にも拘わらず恐ろしい速度で裕美に突っ込み蹴りを放つ。
 その攻撃を予測していた裕美は黒き竜の槍でその蹴りをいなし位置を入れ替えつつ、即座に蒸気機関にハッキングを仕掛ける。
「……楽器って……調律が大事でしょ?」
 破壊は不要、そのバランスを崩してしまえばいい。それのみを目的とした彼女の狙いは抵抗する猟書家自身の負傷もあり成功。旋律に不協和音が混じり猟書家の動きががくんと乱れる。
 そこに裕美と同時に後方車両側に回り込んだ神治の二丁拳銃から放たれた弾丸が両肩の蒸気機関に命中、奏でられる旋律の不協和音が悪化しとうとう武装楽団形態が崩れてしまう。
 その一瞬、エナジードリンクを飲み干した裕美がユーベルコードを起動、邪竜を宿し全身から血を流しながらその翼で力強く羽搏き突進、レディ・ハンプティの胸を串刺しにして運転席に押し込むと、
「――最後は爆発オチでもかまへんやろ?」
 神治のユーベルコード、白のコートから無数の護符が一斉にばらまかれ、幾何学模様を描きながらレディ・ハンプティ、そして運転席を包囲。
「‎瘴気に満たされたアンタはさぞかしよく燃えるやろて。生ゴミは燃えるゴミの日に……腐った中身を無様にぶちまけて往ね!」
 瞬間、魔導列車の外にまで展開した陽と火の属性を宿す護符の群は一斉に猟書家の胴に開いた口に殺到。着弾と同時に連鎖するように派手に炸裂する。
「……色々聞いてみたいこともあったけど……悠長にはしてられないの。……残念ね……さようなら」
 それだけ言い残した裕美は神治を掴み猟書家の悲鳴を置き去りにして窓の外へと飛び出し、黒竜の翼を力強く羽搏かせ飛翔する。
 直後、列車は蒸気建築の壁に衝突、そして大爆発を引き起こした。
 レディ・ハンプティが先頭車両に訪れた時点で改竄は完了、できるだけ加速して壁に衝突するように神治が操作していたのだ。
 後方車両が切り離されているからその爆発に巻き込まれたのはレディ・ハンプティだけ、他の猟兵が巻き込まれる心配もない。
 そして少しして、爆炎の中すっかり黒焦げになった魔導列車が姿を薄れさせていく。術者の死によりユーベルコードの効果が消失しているのだ。
 邪竜を宿した代償を堪えていた裕美はユーベルコードを解除、近くにあったベンチに腰掛け深く息を吐いた。
 父想うオブリビオン、どんなエピソードがあったのか知る術はもうないのだろうけども、少しだけそれに想いを馳せながら。

 そして猟書家レディ・ハンプティを討ち果たした猟兵達はグリモアベースへと帰還したのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月21日


挿絵イラスト