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迷宮災厄戦㉒~フェンフェン鳴いてたアレの孫

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #クルセイダー

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●シリアスに決めておりますが……
 白い十字架が数え切れぬほど立ち並ぶ、生い茂る草花さえも純白の草原に、驚愕の声がこだました。
「サー・ジャバウォックが敗れたと……?」
 首より提げたロザリオをシャランッと鳴らし、金髪碧眼の美青年は物憂げな表情に浮かべていた影を余計に深くした。
「……『書架の王』を除けば、我ら猟書家の中で最強と豪語していた彼が負けるとは……。流石信長を、そして我が祖父の秀吉を討ち果たした者たち。猟兵とは侮り難い存在です……」
 気を引き締め直すように十字架を模った槍を握って、青年は天を仰いだ。
「ですが、私は――私こそは選ばれし者! 良いでしょう……これもまた選ばれし者へと与えられた試練なれば! それを乗り越え……猟兵たちの屍を踏み越えて、私はサムライエンパイアへと到ろうではありませんか!」
 高らかに叫ぶ彼こそ、猟書家に名を連ねる『クルセイダー』。選ばれし者を自称する、『エンパイアウォー』で猟兵たちの脳裏に強く刻まれた『あの』豊臣秀吉の孫である……。

●ころなの苦悩
「……いや、そのな? うち、ちょうどその頃は高校受験の勉強の真っ只中で、エンパイアウォーには参加出来てへんかったんやけど……」
 グリモア猟兵の灘杜・ころな(鉄壁スカートのひもろぎJK・f04167)は、翡翠色の瞳に困惑を強く浮かべていた。
「うちの出身のUDCアースのならいざ知らず、サムライエンパイアの秀吉って……『アレ』やろ? 『フェンフェン、フェン!』って鳴いとった……アレやろ?」
 ころなの額には夥しい量の汗が滲んでいた……。
「……アレの……孫? ……アレの……孫……!?」
 ……うん、言いたいことはよく解るが、今重要なのはそこじゃない。
「……コホンッ。気を取り直して、今回の皆へのお願いを説明するでっ。まあ、要は、その秀吉の孫を名乗っとる猟書家・クルセイダーを撃破してほしいんや」
 色々とツッコミどころの多い相手ではあるが、実力は本物だ。『予言に導かれし者』と自身を称するだけはあり、戦域に猟兵たちが踏み込めばそれを直ちに察知し、先制攻撃を仕掛けてくるという。……それこそ、本当にそういう予言があったかのような精度で。
「まずはその先制攻撃を如何にして凌ぐかが重要やね。……初撃を凌げても、その後の攻撃もまた苛烈やから、皆……注意してな?」
 何にせよ、強敵であることには違いないところなは語る。
「それでも……クルセイダーのほんまの狙いはサムライエンパイアや。今回の戦争で倒し切れんと、クルセイダーはサムライエンパイアで大きな戦乱を引き起こすで。折角、皆が頑張って平和にしたあの世界を、また混乱に叩き落とすわけにはいかんのや!」
 少なくとも、無傷のままクルセイダーをサムライエンパイアへ行かせるわけにはいかない。多少なりとも痛手を与えておくことこそ、此度の猟兵たちの使命である。
「もちろん、状況が許せばここで討滅してもええんやで? 皆、気張ってな!」
 大きく腕を振るい、ビシッとポーズを決めた反動で、ころなのプリーツスカートが舞い上がる。UDCアースの学校の制服だというそれは、彼女の魅惑的な太股の大部分を晒しながらも……それより上は、やはり見せてはくれないのだった。


天羽伊吹清
 どうも、天羽伊吹清です。
 そんなわけで、サムライエンパイアの血脈とか遺伝とかの神秘を体現する存在……クルセイダーとの戦いです。
 以下、注意事項を。

 今回のシナリオは『戦争シナリオ』です。一章のみ、一つのフラグメントだけで完結致します。
 また、次の内容をプレイングに盛り込むことにより、判定にボーナスが得られますのでご活用下さい。

『絶対に先制攻撃として放たれる、或いは先制行動として行われる敵のユーベルコードへの対抗策を考え、実行する』

 さらに補足ですが、今回のシナリオは迷宮災厄戦の諸々の事情を鑑み、プレイングの採用数を絞ってなるべく早めに完結させる予定です。
 より早く届いた、より優れたプレイングからリプレイ化していきますので、ご了承下さい。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

荒珠・檬果
UDCアースにも、似た『孫』説あるんですよねぇ…。見たの約二十年前ですが。

さて、先手とられますよね。
こちらは緑玉鳥に乗りつつ、紅紋薙刀でのなぎ払いで応戦しましょう。一撃でも当てればいいんです。
避けるには第六感を使用していきますね。
「七色変換、緑玉鳥と紅紋薙刀(※七色竜珠より変換)」

反撃。私も召喚できるんですよ…二聖を。
武聖は、乱を及ぼそうとするものには容赦ないでしょうね。なぎ払い続けますよ。
文聖は、高速詠唱での広範囲魔法主体ですから、間を詰めるのも難しいでしょう。
二人がいる間は、私は文聖のそばにいましょう。下手に離れると攻撃を受けてしまいます。

万一、私が攻撃を受けたら、即座に撤退しましょう。



「……わぉう……!?」
 白き十字架が立ち並ぶ純白の草原に降り立った途端、荒珠・檬果(アーケードに突っ伏す鳥・f02802)は複雑そうな声を上げた。
「フェン!」
「フェンフェン!」
「「「「「フェンフェン、フェン!」」」」」
 長い睫毛が結構可愛いシャーマンズゴーストの瞳に映ったのは、彼女に向かって真っ直ぐに駆けてくる黒い毛玉の群れ。ぱっと見で猿に見えなくもないが……よく見るとやはり何だか違う謎の生き物。
 エンパイアウォーで猟兵たちの前に立ち塞がった信長の隠し将……豊臣秀吉。それを中型犬くらいの大きさにサイズダウンさせたものが、大挙して押し寄せてきたのである。
「ああ、いえ、先手ですよね。敵の……クルセイダーの」
 そのことは檬果とて理解していたのだが……。
「……想像以上にもっふもふでした……!」
 悔しげに天を仰ぐ檬果。
 ……実は彼女、もっふもふなものに目がないモフリストなのである。思わず秀吉の群れの中に飛び込みたい衝動が沸き上がるが……それをやってしまうと檬果はそこで間違いなくリタイアだ。ぐっと我慢して、檬果は透き通った七つ七色の珠を取り出す。
「七色変換、緑玉鳥と紅紋薙刀」
 七つの珠の内の緑と赤の珠が光を放ち、エメラルド色の羽毛を持った巨鳥と紅の刃を持った薙刀へと変化した。薙刀を手に巨鳥へと跨った檬果は、あわや秀吉の群れに呑み込まれる寸前で空へと舞い上がる。
 檬果を捕らえ損ねた秀吉たちは、「フェンフェン!」と鳴きながら上空へ手を伸ばすが、彼女には届かない。元の秀吉がそうであったように、跳躍力はそれなりのものがあるようだが……流石に鳥が飛翔する高さまでには至らないようだった。
 一息吐いた檬果は、秀吉たちの後方に佇む金髪の美青年の姿を見付ける。十字架を模った槍を手にシャーマンズゴーストの猟兵を睨むその人物こそ、秀吉の孫だという猟書家・クルセイダーに他ならない。
「……UDCアースにも、似た『孫』説あるんですよねぇ……。見たの約20年前ですが」
 秀吉の息子の秀頼は真田幸村によって薩摩方面に逃がされていた……という異説である。そちらで秀頼が娶った側室との間に生まれた子の一人が、寛永14年に島原で勃発した一揆を率いた『彼』であるとされていた。
 ……UDCアースのそれは信憑性に難があると言われているが、サムライエンパイアではまた違っているのだろう。
 不思議な感慨に囚われつつ、檬果は緑玉鳥に高度を下げさせた。それ幸いと躍り掛かってくる小型の秀吉たちを薙刀の紅刃で薙ぎ払い、クルセイダーに向かって疾く翔ける。
 刹那の交錯――紅の薙刀と十字槍が衝突して火花を散らした。その反動も利用して再び高度を上げた緑玉鳥の背の檬果は、金髪の猟書家へ厳かに告げる。
「私も召喚出来るんですよ……二聖を」
「……二聖ですか? ――まさかあの名高き……!」
「――『いでませい!』」
 檬果が薙刀を天へと突き上げた瞬間、晴天の霹靂が驚愕するクルセイダーの眼前に落ちた。跳び退った彼は目を見開く。……片や、三国志演義にて武聖の名を欲しいままとする勇将・『関羽』。片や、中華の歴史上で屈指の思想家にして哲学者たる文聖・『孔子』。それそのものとしか思えぬ存在が白き草原に仁王立ちしていた。
「……武聖は、乱を及ぼそうとする者には容赦ないでしょうね。――薙ぎ払い続けますよ」
 関羽がその代名詞たる青龍偃月刀を頭上で旋回させ、クルセイダーへと突進した。間へ割って入った秀吉たちは、檬果もよくプレイする無双系ゲームの如く吹き飛んでいく。
 ……己の首を断たんと振るわれた関羽の剛刃を、クルセイダーは辛うじて愛槍・『人間無骨』で受け止めた。
「……なんと。意外に本人の武技も冴えているのですね――」
「――召喚者たる猟兵を狙って下さい! さすれば二聖とてあるべき場所へ還りましょう……!」
 檬果の分析を遮り、クルセイダーが秀吉たちへ命じた。毬が弾むように黒毛の異形の小猿たちが檬果の許へと殺到するが……。
「文聖は、高速詠唱での広範囲魔法が主体ですから。間合いを詰めるのも難しいですよ?」
 緑玉鳥を着地させた檬果の傍らには、孔子が居た。荒ぶる術式が稲妻の如く秀吉たちを打ち据え、大地へと崩れ落ちさせる。
 秀吉たちが戦況を打開出来ぬ間に、武聖の猛攻にクルセイダーは段々と傷付いていった。サムライエンパイアに名を馳せようというだけはあり、クルセイダー自身もなかなかの武人であるようだが――流石に関羽には劣る。とうとう跳ね上がった青龍偃月刀の石突きの直撃を受け、地面をゴロゴロと転がった。
 けれど――それが『選ばれし者』を自称する男の矜持に火を点けてしまったらしい。
「――我が異形の祖父たちよ! この数では足りません……もっと! 夜空に光る星の数の如く……!!」
「……これは、まずいですね……」
 クルセイダーによる、小型の秀吉たちの再召喚。……今度の数は……これまでとは比較にならぬくらい、多い……。
(万一、私が攻撃を受けたら――)
 檬果の『二聖召喚』は、檬果自身が傷を受けると強制的に解除されてしまうのだ。しかも、関羽と孔子を喚び出している間、実のところ檬果自身は戦うことが出来ぬ制約を科せられている……。
(――欲張り過ぎないように。機を見て即座に撤退しましょう)
 そう決めて、檬果はゲームで培った観察眼で戦況を事細かに分析していくのであった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイ・リスパー
「猟書家クルセイダー!
治世が訪れたサムライエンパイアには行かせません!」

予言などで未来を予測できるはずがありません。
そんな非科学的なものより、科学のほうが上であることを証明してみせましょう!
……予言とかあったら、お化けとか居そうで怖いですし!

「まずは科学の力、受けてくださいっ!」

上空に待機させている『機動戦艦シェイクスピア』から、対地ロケットランチャーや対地ミサイルを乱射!
相手の予測能力を見極めましょう!

そして、こちらも電脳魔術【ラプラスの悪魔】で敵の動きを予測。

「予言と科学、どちらが上か勝負ですっ!」

相手がこちらの攻撃を予測して動く先を予測して、そこにシェイクスピアの攻撃を撃ち込みます!



 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)とクルセイダーの激突は、凄絶な幕開けとなった。
「猟書家・クルセイダー! 治世が訪れたサムライエンパイアには行かせません!」
 電脳世界の申し子たるアイの前に、無数のホロキーボードとホロディスプレイが展開する。それを介してアイが命令を下したのは、遥か上空――雲と並ぶ高さを飛翔する一隻の戦艦であった。
 その名を『機動戦艦シェイクスピア』。空ばかりでなく、海、海底、宇宙にさえも対応出来る万能なる艦から、この純白の草原へと無数の飛翔体が発射される。
「まずは科学の力、受けて下さいっ!」
 対地ロケットが、ミサイルが狙い定めるのは、アイの視線の先で悠々と佇む金髪の美青年であった。彼……猟書家・クルセイダーは、目線を上空に上げることすらせず、左手に開いた書物の内容を目で追っている。
 そして――アイは戦慄した。
「そんなっ……!?」
 自らに降り注ぐ科学の弾頭を一切見ること無く、クルセイダーは近所を散歩するような足取りでシェイクスピアの猛攻撃を潜り抜けていく。金髪の猟書家が半歩左にずれただけで、ロケットはそのすぐ横を通り過ぎた。祖父とは似ても似つかないスタイリッシュな肢体が屈み込んだ途端、その真上を行き過ぎたミサイルが逆方向から来ていたミサイルと正面衝突し、爆砕する。……その爆発が他のミサイルやロケットを巻き込み、耳の痛くなるような爆音を連鎖させた。
 ……それら全てを後方に置き去りにして、クルセイダーは一歩、また一歩とアイに近付いてくる……。
「嘘です! そんな……あり得ませんっ!」
 恐れ慄くように、アイは自らの細い身体を抱き締めた。……そこでようやく、猟書家の青い瞳が少女猟兵へと向けられる。
「これこそが私の侵略蔵書・『ぱらいそ予言書』の力です。この本の予言に偽りは無く、故に未来を余すところなく知ることが出来る私に通じる攻撃はありません」
「そんなこと、あるはずがないです! 予言などで未来が予測出来るはずがありません……!」
「貴方は既に体験したはずです。私の『ぱらいそ予言書』の正しさを。受け入れて、悔い改めなさい。この選ばれし者に刃を向ける愚かさを……」
 諭しながら迫ってくる予言の猟書家に、アイはいやいやと首を横に振り……叫んだ。
「だって――よ、予言とかが実在するとなったら、お化けとかだって本当に居そうで怖いですし!」
 ……ズッコケ掛かったクルセイダーは、十字槍・『人間無骨』を杖代わりにしてどうにか踏み止まった。
「……サムライエンパイアには普通に妖怪も幽霊も居るではないですか……?」
「あー、あー! 何も聞こえませんーっ!!」
 クルセイダーのもっともなツッコミを、アイは両手で耳を塞いで拒絶する。
 ついでに言えば、カクリヨファンタズムにはサムライエンパイアよりもずっとたくさんのお化けたちが居るのだが……アイの中ではどう解釈されているのだろうか?
「……と、とにかく、予言などという非科学的なものより、科学の方が上であることを証明してみせましょう!」
 息を荒げ、若干涙目になりながら、アイはホロキーボードに指を走らせた。
「『初期パラメータ入力。シミュレーション実行。対象の攻撃軌道、予測完了です』……!」
「なんと……!?」
 動揺中のアイは隙だらけと見て、クルセイダーは十字架を模った黄金槍を繰り出すが――アイはそれを易々と回避してみせた。とても武術の達人とは見えぬアイの神業の如き見切りに、猟書家の青年は目を白黒させる。
 とはいえ、曲がりなりにも猟書家に名を連ねる強者たるクルセイダー。すぐにその不可解な現象の解答に行き付いた。
「貴方は……私に近しい力を持っているのですか!?」
「予言などと一緒にしないで下さい! 私の『ラプラスの悪魔』は、科学的な予測ですっ!」
 アイは、電脳世界へと自らの頭脳を接続し、電脳空間にて行われている膨大な数のクルセイダーとの戦闘シミュレーションの結果をフィードバックしているのだ。それにより、本来なら躱せぬはずのクルセイダーの攻撃を先読みし、避けているのである。
「私と同じ領域に踏み込む猟兵が居るとは……!? ――いいえ、そのようなこと、認めるわけにはいきません! 選ばれし者の力……『ぱらいそ予言書』の方こそが上だと証明しなければ……!!」
「いいでしょう。予言と科学、どちらが上か勝負ですっ!」
 真っ向から相対したクルセイダーとアイ、二人の動きが暫し止まる。
 アイがクルセイダーの次の行動を予測すれば、それを踏まえた予言が『ぱらいそ予言書』に浮かび上がった。その事実に基づき、『ラプラスの悪魔』はアイへ更新したクルセイダーの行動予測を届ける。そこからアイがどのように動くかを『ぱらいそ予言書』はさらに予言し、そうして打たれるだろう猟書家の次の一手を、電脳空間での天文学的な回数に及ぶシミュレーションが導き出して……。
「……うっ……」
「……くっ……」
 アイとクルセイダーの双方に、苦しげな表情が浮かんだ。一瞬の間に数え切れぬ回数の予測が、予言が為され、それを認識する負荷が二人の脳に圧し掛かっていく。
 ……相手の予測を、予言を超えた上でないと、どちらも動けない。逆にカウンターを喰らってしまう……。千日手の様相を呈してきたアイとクルセイダーの戦いは――しかし、徐々にだが天秤を傾かせていたのであった。
「……ま、まさか……選ばれし者であるこの私が……!?」
 ごくごく僅かずつ、クルセイダーの顔の焦燥がアイの方よりも増していく。アイもそのことを察して、口元に不敵な笑みを浮かべ始めた。
「これが、科学の力です……!」
「そんな……何ということですか……!?」
 アイの勝利宣言に、クルセイダーが悲愴な声を上げた。
 アイの『ラプラスの悪魔』とクルセイダーの『ぱらいそ予言書』の力は……互角。そこに差は一切無かった。けれど、アイの頭脳に直接送り込まれる電脳世界でのシミュレーションの結果に対し、侵略蔵書に浮かぶ予言はその都度クルセイダーが読まねばならない。
 そこに絶対的に存在する『認識するまでの速度の差』が、勝負を分けた。
「シェイクスピア――フルバーストですっ!!」
「馬鹿なっ! 選ばれし者である私が――ああぁぁああああああっっ……!!」
 予言を超えた予測によるシェイクスピアからの火器全開攻撃に、選ばれしはずの猟書家が爆炎の中に消えた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギージスレーヴ・メーベルナッハ
…アレの孫がコレか。
(敵のユーベルコードで現れた秀吉の群れを見つつ)
まあ深くは考えまい、問題はこの戦を乗り越える術よ。

ヤークト・ドラッヘに【騎乗】、秀吉の群れに包囲されぬよう駆けながら、搭載火器の【制圧射撃】【砲撃】【誘導弾】を駆使して秀吉の数を減らしてゆく。一撃当てれば良いので攻撃は範囲を優先し放つ。
この間、クルセイダーとはつかず離れずの距離を維持。

ユーベルコード発動の機が巡り次第、黄昏大隊・蹂躙巨艦を発動。
艦からの【砲撃】と余の攻撃で敵群の減った地点へ兵を降下させる。
後は兵達を広く展開させ秀吉達を掃討、クルセイダーに対し半包囲からの総攻撃を仕掛けてゆく。

『三度目の正直』とはいかせぬとも。



「フェンフェン、フェン!」
「フェンフェン、フェン!」
「「「「「フェンフェンフェンフェン、フェンフェン、フェン!」」」」」
 白き十字架を跳び越し、純白の草花を掻き分け、黒い毛並みの猿……に見えなくもないよく解らない生き物たちが押し寄せてくる。
「…………」
 大型バイク・『ヤークト・ドラッヘ』に跨った状態で、ギージスレーヴ・メーベルナッハ(AlleineBataillon・f21866)は天を仰いでポツリと言った。
「……『コレ』の孫が『アレ』か」
 改めて、眼帯に覆われていない左目を『彼』に向けるギージスレーヴ。群れ成して駆けてくる黒い毛玉……秀吉たちの向こうには、それとは似ても似つかぬ金髪碧眼の青年の姿があった。……秀吉の孫であるという猟書家・クルセイダー。先に戦った猟兵たちにより手傷を負わされているものの、纏う覇気は未だ強大である。
「……まあ、深くは考えまい。問題はこの戦を乗り越える術よ」
 気を取り直して、ギージスレーヴはヤークト・ドラッヘのアクセルを吹かした。鋼鉄の騎馬が、白き草原に嘶きを上げる。
 反重力式の推進機構を持つヤークト・ドラッヘは、『重機甲戦闘車』の異名に相応しい雄々しさで秀吉の軍団を轢き倒した。宙を舞った秀吉たちへ誘導ミサイルによる追い打ちさえ掛ける。慌てて距離を開こうとする秀吉たちには連装電磁砲が砲撃を叩き込み、連射機銃による薙ぎ払いが行われた。
「一撃当てれば墜ちるとは、楽なものであるな!」
 そううそぶきつつも、ギージスレーヴの左目は戦場を俯瞰していた。……秀吉たちの数は途轍もなく多い。個々は強くないとはいえ、包囲して一斉に掛かられればギージスレーヴとて危ういだろう。囲まれることだけは絶対に避けるべしと、ヤークト・ドラッヘは巧みな機動を見せる。
 ……そして……。
「……何だと!?」
 祖父たちを隠れ蓑に、クルセイダー自身がギージスレーヴへと肉迫してきていた。猫科の猛獣の如き跳躍から十字槍・『人間無骨』を突き出してきた猟書家に、ギージスレーヴは古風な意匠のマスケット銃を抜いて反撃する。
 ――槍穂と銃弾が火花を散らした。
「案外勇猛な男であるな……!」
「サムライエンパイアに挑もうというのです。それ相応の武技は修めるのが必然でしょう!」
 視線でも火花を散らし合い、ギージスレーヴとクルセイダーがすれ違った。
 孫に続けとばかりに躍り掛かってくる秀吉たちをヤークト・ドラッヘの武装で吹き飛ばし、ギージスレーヴは唇の端を吊り上げる。
「良いだろう……今こそ発動の機と見た! 『ゴッドリヒター出撃! 領域内の敵勢力を徹底的に蹂躙し殲滅せよ! 降下兵団、総員降下開始!』」
「……!? 何ですか……!?」
 突如、純白の草原に黒く大きな影が落ちた。クルセイダーが上を見上げれば――何ということか。鎧を纏った空飛ぶ鯨……そんな風に思わせる飛行戦艦が蒼穹へと召喚されている。……ばかりか、その艦より落下傘を装備した兵士たちが次々に飛び降りてくるのだ。
「我が祖父たちよ、迎撃をお願いします!」
「「「「「フェンフェン、フェンー!」」」」」
 孫の願いを受け、秀吉たちが果敢に落下傘部隊の着地予定地点を目指すが、その黒い群れを上空の戦艦の砲撃が粉砕した。悠々と地上へ降り立った兵士たちは、ある者はアサルトライフルを、またある者はロケットランチャーを構え、なおも迫る秀吉たちへ突貫する。
「行くのだ、黄昏大隊の勇士たちよ! 広域に展開し、まずは秀吉たちの掃討に当たるのである!」
 彼の大隊のシンボルが刻まれた戦旗をなびかせ、ギージスレーヴが朗々と声を上げた。戦乙女に導かれる天上の勇者たちの如く、彼女の指揮する兵士たちは秀吉たちと勇敢に戦い、その息の根を止めていく。
「この私が……選ばれし者である私が、このような所で終わるものですか……!」
 ……されど、ギージスレーヴの精鋭の兵士たちでも、武勇に溢れる猟書家の青年を喰い止めるには力が足りず、その一角においてはギージスレーヴたちの側が押される事態となっていた。
 十字槍で血煙を巻き上げるクルセイダーに、ギージスレーヴは『アーベントロート・アウストロッテナー』を大きく振って声を張り上げる。
「目標、猟書家・クルセイダー! 総攻撃――開始!!」
 秀吉たちを粗方殲滅した黄昏大隊の兵士たちは、まるで巨大な一つの生き物のように形を変え、半月型にクルセイダーを取り囲む。彼らの手にする自動小銃が一斉に火を噴き、炸薬を満載した飛翔体が美貌の猟書家目掛けて降り注いだ。
「『三度目の正直』とは、いかせぬとも……!」
「我が侵略蔵書・『ぱらいそ予言書』は未だ私の敗北を予言してはいません! 選ばれし者は負けないのです……!!」
 ギージスレーヴとクルセイダー、双方の意地がぶつかり合い、戦場を血と火で紅に染め上げた……。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
サムライエンパイアには遺伝子って概念あるのかなぁ
謎は尽きないけれど倒さなければならない敵だしね
皆と協力して敵を倒すよ

物量はすさまじいけど
十字架を利用して一度に攻撃される数を制限して対応
全体の動向は空からドローンで把握しておくよ
ワイヤーガンを十字架に引っ掛けて移動し回避したり
攻撃してきた秀吉の時間を停めて防御したりするよ
これは僕なりのオーラ防御だよ

初撃を凌いだら女神降臨を使用
ガトリングガンの範囲攻撃で反撃
一撃で消えるならガトリングガンには与しやすい相手だね

本体は使い魔のマヒ攻撃で動きを停め
ガトリングガンで攻撃

他の人と協力した方が良い状況なら
援護射撃で敵の攻撃を邪魔したり
攻撃する隙を作ったりするよ


ミニョン・エルシェ
WIZ
数が多いですね!地形の利用、空中戦、視力、第六感、野生の勘、踏みつけ、逃げ足を駆使して回避に専念、回避し切れない場合は敵を盾にする事で被害を最小限に抑えるのです。

反撃は【宿縁招来・松永弾正久秀】で。
私は秀吉にカウンターと空中戦などで対処し、クルセイダーに接近。
久秀公は爆発反応装甲で秀吉たちを爆破して頂き、遠距離から骨喰の魔刀でクルセイダーの骨を砕いて頂きます。
その隙に、クルセイダーを秀吉からの攻撃の盾にしながら砕かれた骨の側に回り込み、簪宗信で捨て身の一撃を加えるのです。

『得物は三左衛門の槍じゃが、羽柴の孫…のう?…似とらんな。』
『時貞公のは風説に過ぎないのです。真実は闇の中、ですが。』



 猟書家・クルセイダーの座する純白の草原は、なかなかの激戦場となっていた。
「いや、もう、本当に物量は凄まじい……!」
 銃型のデバイスより射出したフック付きのワイヤーを、立ち並ぶ十字架の一つへと引っ掛け、高速で巻き戻し。雪崩の如く押し迫った秀吉の群れを危ういところで躱した佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は、汗で頬に貼り付く金髪を払った。
 彼女(精神的には紛う方無き男性の為、彼と呼ぶべきかもしれないが)に同意するように、ミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)はコクコクと頷きながら、白い草花を掻き分けて走っている。
「本当に数が多いですね……!」
 ミニョンの12歳相応の小柄な身体を追い回す黒毛の魔猿の数は、10や20では足りない。晶を追い掛ける個体たちに、やや距離を取って臨機応変に動けるように待機する個体たちの数も考えれば、僅か二人の猟兵に対して過剰とも思える戦力であった。
 ……それは、ここまでの戦いで他の猟兵たちに煮え湯を飲まされてきたクルセイダーの警戒心が、また一段と跳ね上がったことの証明であったのかもしれない。
 そんな戦場の様子を、空中に飛ばしたドローンから届く情報で把握しつつ、晶はドローンとリンクさせたゴーグル越しに顔をしかめる。
「この猛攻がまだ初撃って……嫌になるね!」
 どうしても回避出来るタイミングではなかった秀吉たちの襲撃を、高めたオーラで受け止める晶。彼女の特異なオーラを浴びた秀吉たちは、時が止まったかのように硬直する。その間を駆け抜けた晶は、ミニョンの方の窮地も目撃した。
「反撃する暇が……ありません!」
 秀吉の一体を強引に引っ張って盾としつつ、ミニョンは丸く大きな眼鏡越しに、顔を泣きそうに歪めていた。地形を利用し、視力を凝らし、第六感に野生の勘も駆使して逃げ回っているものの、逃げたその先にもう次の秀吉たちが待ち構えているのである。相手を踏み台にして空中へ舞い、何とかやり過ごしているような有様だ。
 駆使出来るものを最大限に駆使し、被害を最小限にして初撃を凌ぐ――それが晶とミニョンの、クルセイダーからの先制攻撃への対抗策だったが……初撃だけで体力を使い果たしてしまいそうになっていた。
「……無茶かもしれないけど――」
「――こちらも被害を承知で反撃しないと、押し潰されます!」
 両名は意を決し、ユーベルコードを発動させた。
「『小っ恥ずかしいけど、我慢我慢』……!」
 まず、晶の衣装が宵闇の色をした可憐なドレスへと変わる。その手に携行したガトリングガンへ夜の色をしたオーラを纏わせつつ、引鉄を絞った。吐き出された弾丸が嵐の如くなり、秀吉の群れを呑み込んでいく……。
「『信貴山城の梟雄。魔王に仇為す焔の蜘蛛……久秀公、力をお貸し下さい!』」
 次いで、ミニョンの祈るような言葉に、白髪をなびかせた老武将が具現化する。粋な笑いを頬に浮かべ、小さき猟兵の少女の頭を孫にそうするように撫でた。
「『構わぬよ。此の面白き戦、儂にも一枚噛ませよ。のう?』」
 サムライエンパイア……ではなく、UDCアースの日本の歴史の中で、時に信長に仕え、或いは敵対し、最終的にその矜持と共に炎の中に果てたとされる人物――『松永弾正久秀』。サムライエンパイアでの『彼』がどのような生き様を見せたのかは解らないが……少なくとも秀吉たちの反応を見る限り、そちらとの仲は良くなかったのかもしれない。
 文字通り、マシラの如く襲い掛かってきた秀吉たちを、久秀は召喚主たるミニョンを背に庇って迎え撃つ。
 久秀の纏う具足へ、秀吉たちの痛烈な攻撃が突き刺さる――が、その衝撃に反応した久秀の鎧が起爆、爆風がカウンターとなって襲ってきた秀吉たちを根こそぎ吹き飛ばした。……いわゆる『リアクティブ・アーマー』というやつだろう。
 久秀のそれと、晶のガトリングガンの猛射により、秀吉たちの数は見る見ると減っていく。今の内にミニョンとしてはクルセイダーへと肉迫したいところだったが……。
「……肝心の彼は何処ですか!?」
「――あっち! 自分からこっちに向かってきてるよ……!」
 晶が上空のドローンから得た情報をミニョンへ伝える。……一足先にけしかけた晶の使い魔は、クルセイダーの十字槍に刺し貫かれていた。使い魔単独では荷が重い相手だと晶は判断する。
「それにしても……本当に秀吉と似てないね。サムライエンパイアには遺伝子って概念あるのかなぁ……!?」
 チラリと疑問に思いながら発射した晶のガトリングガンの弾は、孫の盾となるべく飛び込んだ秀吉たちに阻まれてクルセイダー自身には届かない。秀吉たちは一撃で消し飛ぶものの、逆を言えば『一撃は確実に止められる』ということである。祖父たちに守られながら、クルセイダーは晶とミニョンたちの方へ歩を進めてきた。
 そのクルセイダーへ、ミニョンは自分の方からも距離を詰める。彼女を見定めた金髪碧眼の猟書家が、十字槍・『人間無骨』の切っ先を向けた――刹那であった。
「――がっっ……!?」
 ミニョンのあからさまな突出こそが罠であった。彼女に気を取られたクルセイダーの死角で空間が歪み、そこから伸びた刀身が彼の胴体左部へ喰い込んでいる。次元を超越して対象の骨を砕くという、久秀の魔刀の一撃であった。
「……得物は三左衛門の槍に似ておるが、羽柴の孫……のう? ……似とらんな」
「時貞公のは風説に過ぎないのです。真実は闇の中――ですが」
 眉間に皺を寄せて唸る久秀へ、ミニョンはそういうものなのだと教え、とうとうクルセイダーを自身の間合いへと捉えた。手に握るは『簪宗信』……『神刺し』の意を持つ馬手差。その研ぎ澄まされた刃を、守りを捨てて猟書家へと突き出す。
 方向は、肋骨を粉砕された左側より。そのせいでクルセイダーの反応は一呼吸分遅れる。孫を庇いに入ろうとする秀吉たちは晶の援護射撃が阻んだ。銃声の中でも掻き消されない、「っぁがぁっ……!?」という獣の如き悲鳴が響き渡る……。
 ――だが。
「……選ばれし者が、猟書家が、この程度で討ち取られるものですか……!!」
「あぅっ……!!」
 まつろわぬ神を屠るとされる刃を腹に埋められてなお、クルセイダーは膝を折らなかった。『人間無骨』の石突きを跳ね上げ、ミニョンの矮躯を弾き飛ばす。
「童……!」
 立ち塞がる黒毛の猿共を爆風で払い除け、久秀がミニョンをどうにか受け止める。彼女への追撃を防ぐべく、晶がもう一体の使い魔に麻痺の術を行使させた。クルセイダーの動きが急速に鈍るが……青い眼光は微塵も弱まらない。
 その眼力を打ち消さんと、晶はガトリングガンを咆哮させた。秀吉たちの数も減っている。盾になった魔猿を掻い潜り、猟書家へと命中した弾丸も少なくないが……骨を砕かれ、腹を抉られ、神経を麻痺され、五体に鉛弾を喰らってもなお、クルセイダーは膝を屈することだけはしなかった。
「……羽柴のような猿というよりは、むしろ鬼の類いじゃな……」
「……なるほどね。言われてみればそうか……」
 久秀の感想に晶も納得してしまう。
 クルセイダーに限らず、猟書家たちは全員が『オウガ』なのだ。その中でも最高位にある個体なのである。骨を砕かれようと、腹を抉られようと、如何なる術で身を縛られようと、銃弾を雨あられに浴びようとも……それで討てる相手ではそもそもないのだ。
 ――悪鬼(オウガ)を殺すには、その首を叩き落とすしかないと相場が決まっているのである。
 ……手負いのオウガを前に、猟兵たちの戦いはさらに熾烈を極めようとしていた……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

須藤・莉亜
「あのフェンフェンの孫ねぇ。あれは面白い血の味してたけど、孫の方はどうかな?」

槍に当たったらダメっぽいし、気をつけないとねぇ。
先ずは殺気を感じ取り動きを見切って回避と、奇剣と深紅を持たせた悪魔の見えざる手と一緒に武器受けで防御しながら戦って行く。

まあ、本番は敵さんの攻撃を食らった後かな。
攻撃を貰った瞬間に、UCで吸血鬼化。溶かされた骨を一気に治し、骨を溶かして少しでも気を抜いたであろう敵さんを全力で吸血。
そうだねぇ、攻撃する前は死んだふりでもしとくのも面白いかな?

あ、吸血鬼化したら十字架が嫌なので、月のお守りをしっかり身に付けるのも忘れずに。



(あの「フェンフェン!」の孫ねぇ。あれは面白い血の味してたけど、孫の方はどうかな?)
「……って、気にしてる暇は、ちょっと……無い、かな……!?」
 かつて、エンパイアウォーの折に秀吉の血を吸ったことがあるというダンピールの須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、当時に思いを馳せる余裕も今は無さそうであった。
「私の『人間無骨』は、今、血に飢えておりますよ……!」
 一見優男染みたクルセイダーの繰り出す十字槍の鋭さに、莉亜の白い頬は若干引き攣っている。
「この槍、当たったらダメっぽいし、気を付けないとねぇ……!」
 グリモア猟兵が予知してくれていた。クルセイダーのこの十字架を模った槍・『人間無骨』は、その刃で貫いた対象の骨を溶かす、脅威の光線を放つことが出来るのだと。
 それを防ぐ為には、とにかく槍自体からの命中を避けるしかない。それ故に、莉亜は自身が契約した透明な悪魔の手に、同じく無色透明な刀と紅の鎖を持たせて対抗しているのだが……。
「……単純に手数が倍なのに、こっちが押し負けてるんだけど……!?」
 先端の十字の刃だけでなく、回転させて反対側の石突きさえも駆使してくるクルセイダーの槍技に、莉亜は悪魔の手に持たせた二つの武装だけでは捌き切れなくなってきていた。彼自身も殺気を鋭敏に感じ取り、体捌きで槍穂を掻い潜る。
 猟書家という肩書、見た目は華奢な体躯に惑わされてはいけない。曲がりなりにも武の世界たるサムライエンパイアへ挑もうという男なのだ。武芸においても並々ならぬ実力は有している……。
 やがて……透明な刀・『奇剣・【極無】』が、紅の鎖・『深紅』が、金色の十字槍にすり抜けられることが増えてきた。莉亜の見切りをもってしても、『人間無骨』が段々とその身体との距離を縮めていく。
 ――そして、ついにその瞬間は訪れた。
「……あっ」
 十字槍の石突きが踊るように動き、透明な刃と紅き鉄鎖を弾き飛ばす。即座に旋回した槍刃が逆風の軌道で莉亜へと襲い掛かり――彼の腹から胸に掛けてを深々と切り裂いた。
 鮮血が、純白の草原を赤々と染める……。
「……Amen」
 槍をさらに旋回させて血振りとしたクルセイダーは、胸の前で十字を切った。掲げた『人間無骨』より迸った光が、莉亜を稲妻の如く打ち据える。……彼の四肢がグニャグニャに折れ曲がって……その身の内から骨が失われていく様を見下ろして、金髪の猟書家は一つ息を吐いた。
「……どうにか討ち取りました。猟兵とは、本当に手強いものですね……」
 暫し残心して、それでも莉亜が立ち上がってこないことを見て取り、クルセイダーは次にこの戦場を訪れる猟兵に備えるべく踵を返した。
 ――その機を、莉亜は待ち構えていたのである。
(『全力で殺してあげるね』)
 普段は紫の莉亜の双眸が、金色に輝いた。途端、瞬時に全身の骨格が再構築され、その勢いも利用して莉亜は跳ね起きる。
 物音にクルセイダーが即刻振り向こうとするが――『原初の血統』に覚醒した莉亜の体動の方が上手を行った。猟書家の青年の背に飛び掛かり、しがみ付き、彼の首筋へ莉亜は牙を突き立てる。
「――っああああぁぁああああああああああああっっっっ!?」
 クルセイダーが、喉も裂けんばかりに悲鳴を上げた。彼の体内に流れる、秀吉より受け継いだという血が、莉亜に猛烈な勢いで吸い上げられていく。自らより零れていく熱と生命に、クルセイダーは……。
「――汚らわしい身を退けなさい、魔性の者がぁっ!!」
「……おっと」
 自らの身を、『人間無骨』で刺し貫いた。主の身体を貫通して襲い掛かってきた十字槍に、莉亜は吸血を中断して跳び離れるしかない。
「……十字架、嫌なんだよね。喰らいたくない」
 うそぶきながら、莉亜はこっそり首飾りの三日月型のペンダントヘッドに触れていた。その『月のお守り』を身に着けていれば、彼は吸血鬼の弱点だと言われるものをことごとく克服出来るのだが……わざわざ敵に教えてやる義理は無い。
 ……どのみち、それが大して優位にならないことも莉亜は自覚していた。
「そういえば、猟書家って根本的に僕の『ある意味同類』だったんだっけ……」
 普通の人間なら余裕で失血死するはずの量の血を吸い取られ、胴体に自ら風穴を開けてなお、クルセイダーは両足で地を踏み締めている。
 彼とてオウガ……悪鬼の類いなのだ。血を奪いたいから死なない。血を奪っても渇きが癒えないから死ねない……そんな鬼である莉亜と、本質的に違わないのだろう。
 ――サムライエンパイアで為すべきことがあるから死なない……死ねないクルセイダーは、紛う方無き鬼であった。
 過呼吸染みた荒い息を吐き、血が滲むほどの握力で十字槍を掴むクルセイダーへ、莉亜は言ってやる。
「言っとくけど、今の僕、強いよ?」
「安心しなさい……私はもっと強いです……!」
 直後――二匹の鬼が、真っ白な草花の中でお互いの牙を突き立て合った……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
猿…かも怪しいけど、あの毛玉からこんなのが生まれるのね…。

敵が必ず先制を仕掛けて来るなら、そこに罠を張って置けば良いわ。
自身に【念動力】の防御膜を展開し、広域に魔術で薄っすらと霧を展開。
小型秀吉の襲撃を見計らい、広域に雷撃魔術【属性攻撃、全力魔法、高速詠唱】を発動。
一撃で消滅するなら、霧で更に広範囲を巻き込む様に拡散された雷撃は逃れられないでしょう?

後は【ブラッディ・フォール】で天使と悪魔携える軍神」の「上杉謙信」の服装(フレミアにアレンジした感じ)に変化。
【毘沙門刀天変地異】で「大地」の「津波」を巻き起こして再召喚されようが敵の預言書も本体も纏めて焼き尽くし、【毘沙門刀連斬】で斬り捨てるわ!



 それは、何となく……あの『帝竜戦役』で戦った帝竜の一体、『ワーム』を思い出す戦術だった。
 フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)を中心として広がっていく、魔術の霧。それが純白の草原を、そこに立ち並ぶ十字架の群れを薄っすらと包み込んでいく……。
 霧は、この戦域に散らばる中型犬ほどの大きさの秀吉たちもその中へと招いていった。秀吉たちも、本能的に猟兵がその霧の中に居ることを察していたのかもしれない。警戒しつつも一体、また一体と霧中へ足を踏み入れていく。
 やがて、霧のど真ん中にフレミアの姿を見付けた秀吉たちが集合し、彼女の小柄で細い肢体へ一斉に飛び掛からんとした――刹那だった。
「引っ掛かったわね」
 ――稲光が周囲の陰影を変え、耳が痛いほどの雷鳴が轟いた。
 フレミアの雷の魔術である。霧という伝導体を介して拡散したそれは、霧の内部に居た秀吉たちを一体も逃さずに打ち据えた。本物の秀吉と比べれば頑健さに難があるこの場の秀吉たちは、雷の槍穂によって次々にその命脈を絶たれていく。
「一撃で消滅するなら、こういう広範囲を巻き込む攻撃からは逃れられないでしょう?」
 ちなみに、フレミア自身は我が身を念動力の防御膜で覆っており、稲妻の影響を受けていなかった。
「敵が必ず先制を仕掛けてくるなら、そこに罠を張っておけば良いわ。こんな戦いも、これまでに何度も経験してきたのだもの。いい加減慣れるわ」
 指を一振り、霧を風の魔術で吹き払ったフレミアは、悠々とその男の前に立つ。……猟書家・クルセイダー。金髪碧眼の美青年ということだったが……ここまでの猟兵たちとの戦いで傷付き、薄汚れた彼は、オウガらしく悪鬼染みた雰囲気を醸し出している。
「……猿……かも怪しいけど、あの毛玉の血脈からこんなのが生まれるのね……」
「ほざきなさい……!」
 色々な意味で生命の神秘を噛み締めるフレミアへ、金色の十字槍・『人間無骨』を手にクルセイダーが駆け出した。対するフレミアは、真紅の大槍・『ドラグ・グングニル』にて迎え撃つ。
 金と紅、二つの槍穂が、稲妻の如き速さと激音で交差した。
「このまま槍の腕前を競うのも悪くないんだけどね……」
 愛用の魔槍をクルクルと踊らせつつ、フレミアの唇は勝利へ向けた旋律を謡い上げる。
「『骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!』」
「……なっ!? その力は……!?」
 クルセイダーが目を剥く前で、フレミアの紅いドレスが変容した。小柄ながらも恵まれたボディラインに密着する新たなドレスは、青を主体に白のラインが入る。その上に纏われた白き陣羽織は、風と彼女自身が放つ覇気によって裾を舞い踊らせていた。周囲には12色12振りの刀が宙に浮き、従者の如く付き従っている……。
 その装束は何処か……あのエンパイアウォーで信長の六魔将に名を連ねた『上杉謙信』のものに似ていた。――否、似ているのではなく……。
「解ります……! 今の貴方から溢れ出るユーベルコードは、謙信のそれそのもの! 骸の海からオブリビオンの力を引き上げて使うなど……『書架の王』のようではありませんか……!!」
「お生憎様。あの偉そうなお子様の力より、わたしの『ブラッディ・フォール』の方が強大よ!」
 戦慄する金髪の猟書家へ、フレミアは大きくスリットが入ったスカートを翻して疾駆した。彼女の足元で地面が波打ち、壁のように持ち上がってクルセイダーへと突き進む。ハッとした秀吉の孫は、またもや祖父たちを召喚してそれを受け止めさせようとするが……『大地』の『津波』とでも称するべきそれは、天変地異と言う他ない。本物の秀吉ならば或いは対抗出来たかもしれないが、それに遠く及ばぬ小型の秀吉たちは、土砂に呑み込まれ、押し潰され、その命を儚く散らしていく。
「くっ……!?」
 なおも進撃してくる土と岩の大海嘯に背を向け、己が両脚を必死で走らせるクルセイダーを、フレミアはその超常的な自然現象の上から見下ろした。ドラグ・グングニルの切っ先を逃げる猟書家へ向け――直後、天より紅蓮の炎が竜巻の如くなってクルセイダーへ喰らい付く。
「ぅぅがぁぁああああああああああああああああっっっっ……!?」
 金髪を焦がし、白い肌を焼け爛れさせ、クルセイダーが絶叫しながら身を悶えさせた。……それでも、大望を胸に抱く青年は、何とか歩みを進めようとする。
「私は……選ばれし者……なの、です……! この、『ぱらいそ予言書』がある限り……負けは……負けは……!!」
 猛火の中にありながら、彼の侵略蔵書だけは燃えはしない。それが希望であるかのようにクルセイダーは繰り返して……。
「――いいえ、終わりよ」
 山の如き大地の津波の頂点から、フレミアは跳躍した。陣羽織とスカートに風を孕ませ、ドラグ・グングニルを引き絞る。
 一足先に、10の刀が流星のように虚空を翔けた。水の刀が猟書家の足を払い、光の刀が彼の青き瞳を灼く。土の刀が右肩を砕けば、火の刀が左腕を切り飛ばした。樹の刀が『人間無骨』を弾き飛ばすと、薬の刀が彼の槍を粉砕する。風の刀がクルセイダーの身体を宙へ浮かせたところに、毒と氷と闇の刀が連続して突き立った。
 血を吐き、痙攣する猟書家の優男へ、フレミアが残る白と黒の刀と共に突貫する。
「予言書も、あなた自身も、まとめて斬り捨ててあげるわ!!」
 刃が肉を、骨を、命を断つ音が三度。真っ白な草原に、猟書家が首より提げていたロザリオがシャランッ……と落ちる。――同時、『ぱらいそ予言書』と呼ばれた侵略蔵書が分解し、それを構成していた紙がまるで雪のように戦場に降った。
 ……一つの骸の前に佇んでいたフレミアは、その内の一枚を何とはなしに摘み取る。内容に目を走らせて……つまらなそうにそれを放り捨てた。
「未来は、こんな紙の上にあるものじゃないわ。――わたしたちが歩いた先、その目の前にあるものでしょう?」
 艶やかな金髪を掻き上げて――幼くも美しき吸血鬼の姫は、輝くような笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月18日


挿絵イラスト