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迷宮災厄戦㉒〜REMEMBER 1638〜

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #クルセイダー

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 白い十字架が所狭しと立ち並ぶことで遠目から見て純白の草原と化したその地で、青年は腰掛け、静かに十字架を模した豪華な装丁が成された巨大な本の頁をめくっていた。
 「ぱらいそ預言書」はかく語れり。
 あるじ死すとも、魔軍転生は死なず。選ばれし者に宿るなり。
「かつて徳川が私を恐れ、殺そうとしたのは、私が選ばれし者だったから。……ですが私は逃げ延び、『魔軍転生』を得た。すべては、預言書の思し召し」
 「ぱらいそ預言書」はかく語れり。
 望むと、望まざるとに関わらず。魔軍将は選ばれし者に集うなり。
「オウガ・オリジンから奪った力があれば、私は魔軍転生で万の軍勢を『憑装』できます。祖父の秀吉を含め、信長が揃えた見事な『魔軍将』を、私の軍に用いましょう」
 目指すは無論、祖父の生地、サムライエンパイア。
「まずは、魔空安土城の堕ちた島原で、乱を起こしましょう」
 そう言って、今は「クルセイダー」と名乗る青年は立ち上がる。口元に薄い笑みを浮かべながら。
「すべては、預言書の思し召し……」

 その頃、ルウ・アイゼルネ(マイペースな仲介役・f11945)は集まった猟兵達と最終確認を行なっていた。
「これより皆様に行ってもらう場所には猟書家『クルセイダー』の姿が確認されております」
 侵略蔵書「ぱらいそ預言書」と「人間無骨」という銘がついた、人の骨のみを溶かす光線を纏った十文字槍で戦うその青年は、秀吉の孫を名乗っているという。
「フェンフェンしか言ってなかった毛玉野郎からどうやってあんな美青年が産まれたのか甚だ疑問ではありますが、本人がそうだと主張してるならそうなのでしょう。……現に彼の周りには秀吉と同じ見た目をした黒い毛玉達が確認されています」
 かつて秀吉の力を借りた織田信長と戦った者なら引っかかる物があっただろう。その疑念を肯定するかのようにルウは頷いた。
「『シャドウクローニング』。織田信長が使っていた小さい豊臣秀吉達を一斉に襲い掛からせる技です。おそらくクルセイダーも同様の技を使ってくるものだと予想されます」
 他人には上手くできなくとも、自分自身には出来るのかもしれない。原城の拙い憑装から舐めてかかるのは非常に危険であろう。
「また、彼の持っている『ぱらいそ預言書』には私達が次に何をしてくるか……が現在進行形で書き記されていく特異な点が確認されています」
 そのため、現地に到着した瞬間にクルセイダーからの先制攻撃が飛んでくることが予想される。
「上手く避けなければ秀吉にぶん殴られるか体の骨のみを溶かされて無防備な状態になるので、必死に、避けてください」
 また、初撃を無事に避けたとしても予言書を読むことでこちらの動きを察知し、避けてくるクルセイダーに一鞘当てなければならない。
 ……やらなきゃいけないことはたくさんである。
「それでは、説明は以上でございます。皆様の検討、お祈りしております」
 そう言ってルウは再び激戦地へと猟兵達を導いた。


平岡祐樹
 お疲れ様です、平岡祐樹です。

 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。
 このシナリオには、プレイングボーナス「敵の先制攻撃ユーベルコードへの対処法を編みだす」がございます。これに基づく行動をとると有利に行動することが出来ます。
 また今回「猟書家『クルセイダー』」は「必ず」先制攻撃をして参ります。そのためユーベルコードに頼らない対策が必要となりますので、その点を注意して出撃してください。
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第1章 ボス戦 『猟書家『クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携OK


孫……?
まあ、機械と生身で子供が出来たりする猟兵が言えた話じゃないか。

さて、槍に預言書か。
まず槍の一撃は斧で防ぐよ。
預言書片手に持った槍なら両手で斧を持てば力負けはしないだろうし、
そのまま吹き飛ばして距離を取ろうか。

体内の骨を溶かす光線はそれだけなら致命傷にはならないから、
その後即座に追撃できない距離を確保できれば十分。

光線を食らったら全身から放電して閃光で目潰しして、
追撃を妨害しつつ預言書を読めなくするよ。
閃光は先読みできても眩しい光の中じゃそれ以降は読めないだろうし。

後は【耐性進化】を発動。
全身を体外の骨である外骨格で覆って体を動かせるようにしたら、
思いっきりぶん殴るよ。



「孫……? まあ、機械と生身で子供が出来たりする猟兵が言えた話じゃないか」
 謎どころかむしろ常識の範疇だった、とペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は突き出された十文字槍を昔からの相棒である手斧の刃でしっかりと受け止めた。
「預言書片手に持った槍程度であたしに勝てると思った?」
「いいえ、勝てるわけがないでしょう。すべては、預言書の思し召し……」
 ペトの挑発にクルセイダーは涼しい顔で答える。まるで手傷を与えるのではなく、防御させることが目的だったかのような口ぶりを不気味に思い、ペトは力を込めて弾き飛ばすことで距離を取りにかかった。
「ですが、これを受けてもまだその余裕を保てますか?」
 その瞬間、槍の穂先からペトに向けて白い光線が放たれ、斧と右腕が飲み込まれた。
 すると支えを失ったかのように、右腕から力が抜け、変な方向へ曲がり出した。
 筋肉は残っているため腕だった肉を無理矢理動かすことは出来るが、激痛がないのに自由にならないという現状にペトは目を丸くした。
「人間無骨の光はあらゆる骨を溶かす神秘の光。ただの肉塊になる前に投降することをお勧めします。すべては、預言書の思し召し……」
 古龍の「骨」の斧を使わなくて良かった、と内心焦りつつペトは全身から電気を放つ。
「でもそれだけなら致命傷にはならないから……その後即座に追撃できない距離を確保できれば十分!」
 放電の過程で生じた凄まじい閃光は辺りを覆い尽し、予言書でその行動を知っていたクルセイダーは速やかに腕で目を覆い隠した。
 しかしその行為は追撃出来ず、予言書も読めずの無い無い尽くしであった。
 その隙をついて自分の足で距離を取ったペトは放電を維持しながら息を吐く。
「閃光は先読みできても、あの眩しい光の中じゃそれ以降は読めないだろうしねぇ」
 自身の特質である、肉体の性質と形状を自在に変形させる能力を使って右腕を再生させたペトは全身を外骨格で覆いながら一足跳びにクルセイダーへ再び迫る。
「22、23、24」
 予言書に書かれた通りの時間を数え終わり、クルセイダーは目隠しを外す。しかしその目と鼻の先には白く硬い骨の拳があった。
 閃光が落ち着くタイミング……それは放電するペトの全身が完全に外骨格に覆われ、光を通さなくなったことを意味していたのだ。
「予言の内容を読むだけじゃなくて、なんでそうする必要があるのかまで確認すべきだったね」
 ペトの親切なアドバイスは、巻き込まれた十字架を砕きながら転がるクルセイダーの耳には届いたのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月代・十六夜
初撃は槍か分身か。まぁこれに関してはどうしようもねぇし【五感】を集中して回避に徹するしかねぇな。
最悪【身代わりの護符】でダメージ肩代わりも【覚悟】して動けなくなることだけは避ける方向で。
とはいえ事前に読まれている以上完全に避けられはしない。
なーのーで、事前に体の各所に光の属性結晶を仕込んでおいて、相手の攻撃で砕いてもらって起爆。即席の閃光弾だ!
輝いてる瞬間は流石に預言も読めんだろ、追加で煙玉を投げて更に視界を封じさせてもらう。
「その預言書貰っていくぜ!」とこれ見よがしに警戒させる【フェイント】から十文字槍の方を【虚張盗勢】で奪ってそのまま【カウンター】でずんばらりだ!



「なぜそのような行動に至るのか、予言書を読み込まなければならない。ああ、これもまた預言書の思し召しですか……」
 自分の浅慮を悔い、天に祈りを捧ぐクルセイダーの姿を月代・十六夜(韋駄天足・f10620)はストレッチをしながら眺めていた。
「初撃は槍か分身か。まぁこれに関してはどうしようもねぇし……回避に徹するしかねぇな」
 とはいえ事前に読まれている以上完全に避けられはしないだろう。
 最悪、身代わりの護符を盾にしてでも動けなくなることだけは避ける方針で十六夜は飛び跳ねた。
 十六夜に関する記述を読み終えた様子のクルセイダーが本を閉じる。そして十文字槍を構えると直線的に突っ込んできた。
「お、どうくるかね!」
 十六夜は左に体を動かしてから右に大きく跳ぶ。しかしクルセイダーはフェイントをかけてくることを理解していたかの如く初めから右へ突きを放っていた。
 身代わりの護符が服の中で千切れる中、十六夜の体から凄まじい光が放たれる。今の一撃によって光の属性結晶が割れたのだ。
「どうだ即席の閃光弾の味は! 輝いてる瞬間は流石に預言も読めんだろ!」
 両手で槍を持っていた以上、ペトの時と違い目を庇うことは出来ないはずである。そこへさらに煙玉も追加していく。光に目が慣れても煙が晴れなければ、予言書どころか十六夜の姿すら視認することは出来ないだろう。
 それに乗じて、十六夜はシーフらしくクルセイダーの懐へと飛び込んでいった。
「その預言書貰っていくぜ!」
 わざと声に出すことでクルセイダーの注意を予言書に向かわせる。しかし実際に狙うのは十文字槍「人間無骨」。
『ーーー盗ったっ!!』
 手の中に握られた棒の感触に確信し、十六夜はクルセイダーが反射的に伸ばしてきたであろう手か腕をダガーで素早く切り払ってから煙幕の中から飛び出す。
 そして晴れた視界の中で映ったのは……何の変哲もない白くて大きな十字架だった。
「あなたが狙ったのは予言書ではなく、人間無骨……。すべては預言書の思し召し、あなたの狙いはしっかり記されておりましたよ」
 そう言って手の甲に浮かんだ血を舐めとったクルセイダーは見せつけるように予言書の表紙を見せつける。その足元には十文字槍が転がっていた。
「煙幕の中ですり替えたってのか? あー、予言書マジで面倒くせぇなあ!」
 そう叫んで十六夜は拾得物を苛立たしげに投げ捨てた。

成功 🔵​🔵​🔴​

明石・鷲穂
鹿糸/f00815

うちの山羊ってペットみたいに言うなぁ。
ま、いいか!気をつけてくれよ。
それにしても美人だなあ。隔世遺伝か?

連れの雌鷹、穂鷹を放って常時動物会話。敵の動きを警戒してもらうぞ。
先制攻撃のUCに対しては、敵に向かって殺戮刃物を投擲。回避されたところで、後ろから穂鷹に襲いかかってもらうぞ。
隙をついたとこで鹿糸に足止めしてもらって、凍りついたところでUC発動。
神器の金剛杵を解放して三鈷杵に。捨て身の一撃で、怪力を込めてぶち込もう。

鹿糸の言う通り、今は徳川の平世だからなあ。
…思い出した。ぱらいそって浄土のことか。
浄土に行けるといいな。


氏神・鹿糸
鷲穂/f02320
あら、お孫さんなの?
可愛らしいしっぽがそっくりね。
うちは山羊がいるけれど…貴方はお猿さんなのかしら?

自身の周りには[オーラ防御]を展開。
先制攻撃に対しては、魔法の豆の木に[全力魔法]を注いで周囲に張り巡らせるわ。
視界を遮り、彼らが木に触れたのを感知したら霊障を放って迎撃。

鷲穂と連携して、隙が見えたら敵に水[属性攻撃]。
UCを発動して、亡霊の冷気で氷の檻にして動きを封じるわ。
それじゃあ、うちの山羊にお任せするわね。

何だか、つい不思議な国にまで来てしまったけど。
平和になったエンパイアに、魔王の野望なんていらないのよ。
もう邪魔をしないでね。



「あら、お孫さんなの? 可愛らしいしっぽがそっくりね。うちは山羊がいるけれど……貴方はお猿さんなのかしら?」
「『うちの山羊』ってペットみたいに言うなぁ……」
「あら、気分悪くさせちゃったかしら。ごめんなさいね」
「ま、いいけど! 気をつけてくれよ。それにしても美人だなあ。隔世遺伝か?」
 氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)と明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)が遠くから話しかけてくるのを無視し、クルセイダーは十文字槍を拾い上げる。
 打てども返ってこない反応に、鹿糸はつまらなさそうに口を尖らせる。そんな中、鷲穂は視界の端で黒い何かが動いたことを見逃さなかった。
「穂鷹!」
 連れの雌鷹を放ち、鷲穂自身も刃物を投擲する。すると刃物が突き刺さった十字架の影に隠れていた大量の小さな豊臣秀吉達が飛び出してきた。
「フェンフェーン!」
「あら懐かしい子が出てきたわね。でも、ちょっと小さいかしら」
 穂鷹にがっちり掴まれて何度も啄まれるチビ秀吉の姿を視認した鹿糸は魔法の豆の木に魔力を注ぎ込み、急成長させる。
 周囲に張り巡らされた豆の木は敵味方関係なく視界を遮り、巨大な壁と化す。
 乗り越えようと秀吉が木に触れてきたのを感知すれば、鹿糸が霊障を放って迎撃する。苦しそうな鳴き声が幹越しに響いてくる中、穂鷹の甲高い声が響いてきた。
 その内容に血相を変えた鷲穂が鹿糸を抱き上げて走れば、豆の木を槍で貫いてきたクルセイダーが先程までいた場所に突っ込んできた。
 クルセイダーは走ってきた足を止めると槍をその場で軽く一振りしてから息を吐いた。
「まずはこの厄介な木を樵らせていただきました。……次は覚悟してください」
「……そういや、その大事そうに抱えている予言書。ぱらいそ予言書だったか、俺達の次にやる動きが書かれているんだったか?」
「そうですね。すべては予言書の思し召し、あなたがお相手を引っ張るのではなく持ち上げて逃げ出すこともしっかり記されておりましたよ」
 揶揄うこともなく、ただ淡々と事実のみを伝える口ぶりに鹿糸は顔を赤らめることはなく、頬に手を当ててため息をついた。
「つい不思議な国にまで来てしまったけど、平和になったエンパイアに、魔王の野望なんていらないのよ。もう邪魔をしないでね」
「そうそう鹿糸の言う通り、今は徳川の平世だからなあ」
「いいえ、徳川の治世は天から選ばれし者がいない故の仮初の物。……私の凱旋をかの地は待ちわびているのです。すべては予言書の思し召し」
 そう告げると共に、クルセイダーが切り開いた道から秀吉達が流れ込んでくる。彼らを追い返すべく、鹿糸は大量の水を叩き込んだ。
「うわ、普通に泳いできてるぞ」
 しかし秀吉達は流されるどころか逆に嬉々として泳ぎ、突っ切ろうとしてきている。その威力を知っている鷲穂が目を丸くする中、鹿糸は感心しながら首を傾げた。
「あらそう? なら……『水に偲ぶは―過去の花』」
 鷲穂から下ろされた鹿糸の隣に容姿が瓜二つな霊が浮かび上がる。その手を取った鹿糸は背筋が凍るような不敵な笑みを浮かべた。
『残滓・忍冬』
 亡霊の冷気が毛並みにしたたる水を氷の檻に変えて動きを封じる。秀吉達が氷に飲み込まれたり、豆の木や地面にくっついて動けなくなって悲鳴を上げる中、その動きも読んでいたクルセイダーは体を一切濡らさないまま槍片手に遠回りで仕掛けていた。
「それじゃあ、あとはうちの山羊にお任せするわね」
 鹿糸に向けて放たれた穂先を間に割って入った鷲穂が金剛杵で受け止める。
「なあ、『ぱらいそ』ってどんな意味だったか知ってるか? 聞いた覚えはあるんだが、思い出せないんだ」
「私が言わなくとも、あなたは思い出せるでしょう」
「……それも予言書の思し召し、ってやつか!?」
 互いに打ち合い擦り合っていた金剛杵と十文字槍が離れ、再びぶつかり合う。しかし鷲穂の動きが分かっているクルセイダーが事を優勢に進め出した。
 骨を溶かす必要はないと思ったのか、光線を発しないまま鷲穂の法衣や山羊の下半身に切り傷が増えていく中、穂鷹ぎ甲高い声を上げて急降下を仕掛けてきた。
 クルセイダーへ叩きつけられた鉤爪は不意をつけたが深く入らなかったのか、クルセイダーの頭からは血は流れず、苛立たしげに手で払いにかかる。
『破戒も破戒―殺生致す』
 その隙をついて鷲穂は金剛杵の封印を解放させ、三鈷杵に変形させる。そのタイミングでクルセイダーの言う通り、頭の片隅にあった疑問が解けた。
「……そうだ思い出した。ぱらいそって浄土のことだったか」
 鷲穂は自身の体重と怪力で強引にクルセイダーの構えた防御体勢を押し切ると、捨て身で突っ込んでフォークのような三叉の刃を腹部に叩きつける。
「……あんたは浄土に行けるといいな」
 破戒僧として悪行を為しているが故か、鷲穂の呟きには実感が伴っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

達磨寺・賢安
・ふぅん、クルセイダー……僕が通ってた学校の教科書に島原を拠点とした似たような人がいたかな。後、時代劇映画で死者を配下にするキャラもいたね。
いずれにせよ、相手にとって不足なし。挑ませてもらうよ。

・預言書を読むことで未来を予測して回避か。なら、僕の攻撃やカウンターはしばらく通用しないってことか。けど、「読むことで未来を知る」のなら、読む暇を与えなければ活路はある。さあ、僕の「第六感」と「見切り」、そして【クロックアップ・スピード】で感じて動かす未来と君が預言書から読み取る未来。どっちが「早(速)い」か勝負だ。

・僕との攻防が千日手になればそれも予想内。だって、戦友達がそこを狙ってくれるからね!





「ふぅん、クルセイダー……僕が通ってた学校の教科書に島原を拠点とした似たような人がいたかな。後、時代劇映画で死者を配下にするキャラもいたね」
 達磨寺・賢安(象の悪魔・f28515)はクルセイダーの見た目から数年前に頭に叩き入れた知識と偶然再放送で見た時代劇映画を思い返していた。
「いずれにせよ、相手にとって不足なし。挑ませてもらうよ」
 賢安の体からミシリと嫌な音が立ち、きっちり締められていたボタンが弾け飛んだのを皮切りにその体躯が大きくなり始めた。
 その肌色は黒ずみ灰色となり、口から長い牙が顔を出す。そして耳は向きを変えながら大きく広がり、鼻が顔から離れるように伸びていく。
「仏門の者が異形の者に。それもよりにもよって仇敵である象の姿ですか」
 クルセイダーがそう感想を漏らす中、二足歩行の象と化した賢安はゆっくりと視線を向けた。
「しかしそれはきっと御仏の思し召し。超えられぬ壁をお与えにならないでしょうから」
「では僕らも試練の一環と?」
「ええ。すべては預言書の思し召し。あなた方がここに来ることは記されておりました故」
 クルセイダーはぱらいそ預言書の表紙を誇らしげに見せつけた。
「預言書を読むことで未来を予測して回避か。なら、僕の攻撃やカウンターはしばらく通用しないってことか……けれども『読むことで未来を知る』のなら、読む暇を与えなければ活路はあるはずだよね」
 そう言って賢安は両足を前後に広げて構えを取る。
「さあ、僕の第六感と見切り、そして【クロックアップ・スピード】で感じて動かす未来と君が預言書から読み取る未来。どっちが早いか勝負だ」
 短くなった爪を鳴らした瞬間、賢安の巨体が消える。クルセイダーが両手で十文字槍を構えれば柄に向かって、急接近した賢安の掌底が叩き込まれた。
 自分よりも重い相手の一撃を真正面から受け止めたクルセイダーが弾き返し、体勢を立て直した時にはすでに賢安の姿は無い。
 しかしクルセイダーは慌てることなく流れるように開いた預言書の中身を一瞥して振り返ると後ろに跳ぶ。すると先程までクルセイダーがいた所にストンプが落とされた。
 そこへ人間無骨の光線が放たれたが、足跡だけを残して賢安は消えていた。
 そんな攻防を何十回も繰り返し、どちらも決定打を放てない千日手になりつつあっても賢安は焦っていなかった。
 なぜならクルセイダーと違い、賢安の後ろには頼れる仲間が控えているから。
 相手を疲弊させられればこちらの勝ちだと、賢安は疲れた様子を見せないクルセイダーを真剣な眼差しで睨みつけた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

月舘・夜彦
彼の祖父が秀吉とは俄かには信じがたいものです
ですが向かう先のサムライエンパイアにて戦を起こそうとするのならば
此処で食い止めるのが私の役割

命中すればただの怪我では済まないと見て初撃は回避を最優先
槍は視力により攻撃の軌道を読み、残像と見切りにて回避
敵の動きから躱すだけでは困難となれば刀で槍の柄を狙い
武器落としにて軌道を変えて対処
負傷は激痛耐性にて耐える

召喚された敵は集中している所へ移動し、早業の抜刀術『陣風』
2回攻撃となぎ払い併せて一掃
道が拓けたのならば、そのまま駆け足でクルセイダーへ接近
召喚時と同じく2回攻撃による手数重視で接近戦に持ち込む

敵の攻撃は初撃同様、残像・見切りにより回避してカウンター



「彼の祖父が秀吉とは俄かには信じがたいものです。……ですが向かう先のサムライエンパイアにて戦を起こそうとするのならば、此処で食い止めるのが私の役割」
 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)はそう決意を固めつつ、腰に差した得物に手をかけた。
 しかし他の猟兵達の戦い振りを見て、あの槍から放たれる光線が命中すればただの怪我では済まないことは分かっている。
 そのため夜彦は初撃から打ち合おうとはせず、回避を最優先としクルセイダーから距離を取っていた。
「私の人間無骨は他人の温かさに反応して光線を発します。故に戦いたくないのは当然の判断でしょう」
 賢安との打ち合いを終えて汗を拭ったクルセイダーは槍を構えて、夜彦の集中が切れるタイミングを数えていた。そして定められた時を経た瞬間に一気に距離を詰める。
「……2秒ほど遅れましたか。少しでもずれれば最高の結果は得られない。これも預言書の思し召しですか」
 しかし僅かなズレで集中力を復活させた夜彦はその足取りからクルセイダーが突き出す角度を察知し、残像を残すことでその一撃を空振らせた。
「預言書の中身などどうでもいい。『全て、斬り捨てるのみ』!」
 それから先程までとは一転して一気に距離を詰めると刀で槍の柄を狙い、武器落としを狙う。
 クルセイダーは両腕で防御の構えを取ることでそれを防ぐ。しかし今の今まで攻撃をしてこなかった鬱憤を晴らすかのような斬撃の雨霰の前に攻撃に戻るタイミングを見出せない。
 だが夜彦も夜彦で攻撃し続けなければ間違いなく反撃の光線がくる状況に手を抜くことは出来ない。
 しかしそもそも手を緩める気は無い。この手を止めた瞬間にあの世界が危機に瀕すると言うのであれば……絶対に斬る。
 手に襲い続ける衝撃を耐えかねたクルセイダーが相討ち覚悟で攻撃の構えを取り、光線を放つ。
 苦し紛れに至近距離から放たれたそれを月彦は体を捻って避ける。しかしそもそも本体の器物を破壊されない限り再生する仮初の肉体に光線が当たったとしても、戦局は変わることがあったのだろうか。
「預言書を読めなければ、ただの人か」
 そう言い捨て、月彦は丸見えになった肩口に向けて目にも止まらぬ連撃を叩き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒城・魅夜
攻撃を「オーラ防御」で受け流しながら
適切な瞬間を「第六感」で「見切り」
「覚悟」を持ってあえてこの身に傷を受けましょう
ふふ、これはあなた自身の攻撃の結果であって私の攻撃ではありませんから
あなたの予知の対象ではありません
たとえ傷から流れる血が霧となったとしてもね

あなたの予知は記述を「読む」ことが条件
しかしあなたの視覚は既にぼやけ、まともに読むことはできません
この血の霧に包まれたものは五感を鈍らせるのですからね
そして最後はあなたを体内から我が鎖が引き裂きます

秀吉はオブリビオンにしては珍しく仲間との絆を尊ぶものでした
だからと言って褒め称えはしませんが
本にばかり頼っていたあなたよりはマシでしたね



 肩口に出来た大きな切り傷を手で覆い隠そうとするクルセイダーの姿を黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は鎖を構えながら眺めていた。
「信心深いのは良いですが、それに頼り切りというのは感心出来ませんね」
「いいえ、ぱらいそ予言書はあらゆる事柄に精通しております。あなたも、私に攻撃されるのを待っている。……そうでしょう?」
 答えになっていない答えに魅夜は肯定も否定もせず、息を吐く。
「それも書かれているのですか。でしたら、覚悟を持って傷をつけられに参りましょう」
 そう告げて、魅夜は鎖を展開してクルセイダーの体に向けてあらゆる角度から攻撃を仕掛けていく。
 拘束されても不味いことになると分かっているからか、クルセイダーは懸命に槍を振り回す。そのため、その射線へ魅夜が飛び込んできたのに気付いてもとっさにその手を止めることは出来なかった。
「ふふ、これはあくまでもあなた自身の攻撃の結果であって私の攻撃ではありませんから、あなたの予知の対象ではないでしょう?」
 深々と抉られ、絶え間なく傷から流れる血は地面に落ちるのではなく、霧となって宙を漂い出す。
 自然ではあり得ないその挙動に怪訝な表情を浮かべたクルセイダーは確認のためか、預言書の頁を開く。
 やはり血のこと、自ら傷つけられたがった理由は書かれていなかったか、と魅夜は内心確信を持ちながら、怪我などしていないかの如き余裕の笑みを浮かべていた。
「あなたの予知は記述を『読む』ことが条件。しかしあなたの視覚は既にぼやけ、まともに読むことはできないでしょう」
 その言葉を証明するかのようにクルセイダーは目を凝らしながら顔を本に近づける。なぜだとは言ってこないが、きっと頭の中では疑問符が浮かんでは消えていることだろう。
「この血の霧に包まれたものは五感を鈍らせるのですからね。そして最後は……」
 魅夜が指を鳴らした瞬間、クルセイダーの体内から血飛沫と共に鎖が飛び出してきた。
 体中を貫く痛みにクルセイダーが喘ぐ中、魅夜は哀れみの視線を送った。
「秀吉はオブリビオンにしては珍しく、仲間との絆を尊ぶものでした。だからと言って褒め称えはしませんが……本にばかり頼っていたあなたよりはマシでしたね」
 言いたいことは言い終わったと、魅夜が背を向けた途端にクルセイダーの喉から声にならない息が漏れ、肉が潰れるような音が響く。
 それでもクルセイダーは最期までぱらいそ預言書を手離そうとはしなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト