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迷宮災厄戦㉒〜架刑のパライソ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #クルセイダー

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(「――「ぱらいそ預言書」はかく語れり」)
 音の絶えた白い草原をかすかに震わせていくのは、さざ波の如き光だった。其れは、水面で揺らめくように優しく――けれど、決してその手に掴むことが叶わぬまま、四方に聳える墓標を儚く浮かび上がらせていく。
(「すべては、預言書の思し召し」)
 ああ、俗世の柵から解き放たれ、神々しさに満ちたその光は。それ故にひとの温もりを失い、苦しみも哀しみも無い、凪のような世界に舞い降りていくのだろうか。
(「望むと、望まざるとに関わらず――……」)
 純白の原を形づくる、無数の白き十字架のなかで――白皙の美貌を持つ青年は、手にした分厚い書物を捲りながら、新たな戦乱を呼ぶために動き始める。
 ――選ばれし者を自称する彼こそ、猟書家のひとりである『クルセイダー』。その侵略蔵書の名は。
(「……『ぱらいそ預言書』、すべては。そう、すべては」)
 預言書の、思し召しなのだ――。

 アリスラビリンスの迷宮災厄戦は、猟兵とオブリビオン・フォーミュラであるオウガ・オリジン、そしてオリジンの力を奪った猟書家による三つ巴の戦いとなっている。
「そして今回は……猟書家『クルセイダー』への道が開いたんだよ!」
 両手を勢いよく振り上げて力説する、篝・燈華(幻燈・f10370)曰く――彼は他世界、サムライエンパイアへの侵略を開始しようとしているらしく、このまま放っておくと新たな火種となる恐れがある、とのこと。
「猟書家を倒すごとに、オウガ・オリジンが力を取り戻してしまうのは、皆も知っていると思うんだけど……それでも、何もせずにいられないってひとも居ると思うから。だから、クルセイダーの侵略を阻止したいって願う猟兵さんに、ぜひ向かって欲しいと思うんだよっ」
 そんなクルセイダーが居る国は、白い十字架が立ち並ぶ純白の草原が、何処までも広がっているのだと言う。うつくしくも静かで、けれども時が止まったような寂しい世界。これが、ぱらいそ――楽園なのだとしたら何ともやり切れないけれど、静寂の世界に反して敵の攻撃は苛烈極まるものだ。向こうの先制攻撃は阻止出来ないので、確りと対策を考えてから挑んで欲しいと燈華は言った。
「何でも彼は、豊臣秀吉の孫だとか言う話で……魔軍転生、なんて物騒な言葉も聞こえて来たから、注意してね」
 ――必死の想いで守り抜いた世界があった。だけどもしかしたら、このままでは第二のエンパイアウォーが起きるかも知れないのなら。
「難しい選択を強いられているけど、どうか悔いのないように。……精一杯戦ってきてね!」


柚烏
 柚烏と申します。遅ればせですが、『迷宮災厄戦』のシナリオを運営してみたく思います。戦場は㉒で、猟書家『クルセイダー』とのボス戦になります。

●シナリオについて
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。なお、下記の内容に基づく行動をすると、ボーナスがついて有利になります。

 ※プレイングボーナス……敵のユーベルコードへの対処法を編みだす。
(敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)

●プレイングにつきまして
 シナリオ公開がされたと同時に、プレイングを送って頂いて大丈夫です。『~8月16日一杯』までの受付を目安とし、以降はプレイング数が成功度に達成した時点で締め切りとなります(マスターページの方でもお知らせをします)
 なお、戦争シナリオと言う特性上、シナリオの完結優先で執筆を致します。頂いた全てのプレイングを描写出来るかは、こちらのキャパやタイミング次第となりますので、ご了承頂ければ幸いです(特に内容に問題が無くても、採用せずにお返しと言うことも出て来るかと思います)
 判定もきっちりと行いつつ、プレイングの内容も見て採用を決めたいと思います。特に、技能は羅列するよりも幾つかに絞って、具体的にどう使うかを分かりやすく書いて頂けると、ボーナスに繋がると思います。

 難易度は「やや難」で、厳しめの戦いとなりますが、サムライエンパイアに思い入れがある方などの心情に加えて、戦いの静と動みたいなのを描写していけたらと思っております。それではよろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『猟書家『クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

篝・倫太郎
生まれ故郷、だからな
俺にとってもだけど……
何より、俺の……唯一無二の
だから何もせずに、なんて選択肢は生憎とねぇんだ

先制対応
視力を用いた見切りと残像で回避
必要ならフェイントも交ぜてくし
華焔刀でカウンターも仕掛ける
回避不能時はオーラ防御で防いで
痛みは激痛耐性で凌ぐ

天地繋鎖使用
召喚された秀吉全てと
クルセイダーに指先を向けて対象指定

同時に残る秀吉を生命力吸収を乗せた華焔刀でなぎ払い、範囲攻撃
ダッシュでクルセイダーに接近して
鎧無視攻撃も乗せた華焔刀の一撃を叩き込む

あの世界を再び戦禍に巻き込むことはさせねぇ
その為にもてめぇをこの世界から出すつもりは微塵もねぇんだ

何度蘇っても、その度に還してやるから覚悟しな


水元・芙実
秀吉の忘れ形見、か。
残された者の孤独を癒やすのなら何かに頼るのは分かるわ。
でもそれを理由に自分の行動を規定してあまつさえ世界を乱そうとするなら私が相手になるわ。
この世に定められたものなんて無い、私がこの場で不確定性原理を証明してみせるわ。

そしてその秀吉装はもう既に見切ってる、ハイドロボールを群れの中心に投げつけて纏めて吹き飛ばすわ。
あなたは過去から来ながらも、過去を何一つ顧みてないからこんなに簡単に破られるのよ。

信長と同じ炎の中に帰りなさい、クルセイダー。
その本と共に時代の記録の中に埋め直してあげるわ。それとも火葬は復活できないから嫌だったかしら。
でも今のあなたはただのゾンビと変わりが無いの。


ネーヴェ・ノアイユ
小型の豊臣秀吉様が現れましたら一度空中浮遊にて空へと退避を。空中へも攻撃を行ってくるようであれば氷壁の盾受けにて攻撃を受け止めます。
しかし……。こうも数が多いとあっさり押し切られるでしょうから……。まずはUCを地上へと降らせることで敵の数を削いでいきます。
豊臣秀吉様の数が減少し、氷壁の盾受けで十分対応が出来ると判断したらUCの鋏を作り直します。その際にリボンに魔力溜めしていた魔力を使用。全力魔法にて鋏を作り上げ……。鋭さも硬さも極限まで鍛えたものをクルセイダー様へと放ちますね。

あなた様が向かおうとしている世界には……。私の大切な場所があるのです。だから……。絶対に行かせたりはしません……!



 ――呪的法力に守られた、島国からなる世界があった。其処はどこかの世界と良く似ていて、けれど異なる歴史を辿った世界であり。
「生まれ故郷、だからな」
 そして、其処は――幼い頃に境界を越え、神隠しのようにして異界へ辿り着いた篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)にとっても、確かにそう呼べる場所であったのだ。
(「何より、俺の……」)
 白き十字架が整然と立ち並ぶ、不思議の国のちいさな『世界』を視界に収めつつも、倫太郎のまなうらに映し出されたものは何だったのか。
 ――唯一、無二の。そんなことばは、掠れた吐息と混ざり合って唇から零れ落ち、音の無い草原へ静かに吸い込まれていくように見えたけれど。
「――……ッ!」
 直後、神々しい輝きを纏って次々に舞い降りてくる、黒き獣の群れを睨みつけた倫太郎は、羅刹ならではの膂力を活かして大地を蹴っていた。
『フェン、フェンフェンフェン!』
 魔軍転生の秘術によって召喚された、夥しい数の豊臣秀吉――嘗ての大戦で、隠し将として猟兵たちを翻弄した彼の憑装を、倫太郎はどうにかして見切って反撃に繋げようとする。
「……秀吉。そして、彼の忘れ形見、か」
「はい。そのようですが……その、随分と可愛らしい大きさのようで」
 一方で、猿玉と化し、変幻自在の動きで迫る秀吉たちを、魔氷の壁で押しとどめていたのはネーヴェ・ノアイユ(冷たい魔法使い・f28873)だった。
『フェーン!』
「……成程」
 触れた先から凍り付いては、粉々に砕け散っていく黒玉――その様子を確かめた水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)のほうも、どうやら反撃の糸口を見いだしたようで、彼女の掌では白い炎が妖しく揺らめいている。
「残された者の孤独を癒やす――それで、何かに頼るのは分かるけど」
 ――あるじ死すとも、魔軍転生は死なず、と。十字架の原の向こうで、静かな微笑みを浮かべているクルセイダーの独白によれば、全ては預言書の思し召しであるらしいのだが。
「……でも。それを理由に自分の行動を規定して、あまつさえ世界を乱そうとするなら」
 利発そうな茶の瞳をきゅっと細めた芙実は、ぱらいその名を持つ其れごと塵に還すべく、懐に忍ばせていたハイドロボムを群れの中心目掛けて、一気に投げつけていったのだった。
「私が相手になるわ……!」
「あぁ、あの世界を、再び戦禍に巻き込むことはさせねぇ」
 その狂科学者特製の水爆弾が、衝撃波を生み出して勢いよく弾け飛んでいけば――きらきらと光に舞い踊る雫のなかを、倫太郎の華焔刀が翻り真夏の陽炎を生む。
(「何もせずに、なんて選択肢は生憎とねぇし」)
 ――ああ、もし再度、己の故郷が滅亡の危機を迎えるのだとしたら。黒曜石の角が脈打つような、不吉な予感を振り払うようにして倫太郎が刃を薙ぐと、衝撃波を逃れた秀吉たちが纏めて消滅していって。
「その為にも、てめぇを……この世界から出すつもりは微塵もねぇんだ」
 尚もしぶとく牙を剥くもの達に対しても、歯を食いしばることで苦痛を凌いでいくと、後方から漂ってきたネーヴェの冷気が、火照った倫太郎の頬を優しく冷ましてくれた。
「数百の軍勢が相手となると、気を抜けばあっさりと押し切られるでしょうから……」
 魔法の箒に跨りながら、純白の髪をさらりと揺らす若き魔女は、氷細工のごとく精緻なかんばせを傾けて微かに思案する。
「……降り注ぐ、氷の鋏よ」
 ――けれど、その逡巡も一瞬のこと。ネーヴェの繊手が翻るや否や、魔法で精製された氷の鋏が嵐と化して、再度攻め入ろうとする豊臣秀吉の軍勢を、次々に大地へと縫い止めていったのだった。
「ああ、何故。何故、預言書に従わず……無意味に抗おうとするのです」
 純白の草原に加わっていく、氷の墓標――その中を、一直線に突っ切っていくネーヴェ達を前にして、何処か憐れむようにクルセイダーが呟きを漏らしたが、それを真っ向から跳ね除けたのは芙実だった。
「いいえ、この世に定められたものなんて無い。……私がこの場で、不確定性原理を証明してみせるわ」
 ――例えば、そう。一度放たれた秀吉装を、二度目は見切ることが出来るように。再び顕現していく軍勢が襲い掛かるよりも早く、物質さえも『化かす』幻炎の火種が、質量を熱に変えて一気に膨れ上がっていく。
「あなたは過去から来ながらも、過去を何一つ顧みてないからこんなに簡単に破られるのよ……!」
「……火、それと」
 数で圧倒するが故に、その質量が生む熱も圧倒的なものだった。連鎖する芙実の幻炎が、クルセイダーを呑み込んでいくと同時――上空からはありったけの魔力を解き放ったネーヴェが、鋭さも硬さも極限まで鍛えた氷鋏を精製し、彼の心臓目掛けて放とうとしている。
(「預言書は、この未来を回避する未来は――」)
 ――咄嗟に手元の侵略蔵書を捲ろうとしてみても、その指さえいつしか動きを封じられて。未来に慄くクルセイダーの瞳は決して、倫太郎の生み出した不可視の鎖を捉えることは叶わなかっただろう。
「信長と同じ炎の中に帰りなさい、クルセイダー」
「……何度蘇っても、その度に還してやるから覚悟しな」
 天地繋鎖の戒めが、秀吉装ごとクルセイダーの肉体を貫いていくなかで――荒れ狂う炎が過去を葬れば、華焔の刃は靜かな凪を生むように振り下ろされていった。
「あなた様が向かおうとしている世界には……。私の大切な場所があるのです」
 だから――微かな記憶を手繰り寄せるネーヴェは、未だ見ぬ扉を思い描きながら、凍てつく氷の鋏でパライソを断つ。
「絶対に、行かせたりはしません……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ミニョン・エルシェ
POW
突けば槍、引けば鎌、払えば薙刀。十文字槍の特性を考えて円と直線の動きを警戒し、視力、第六感、野生の勘、逃げ足、地形の利用を総動員して初撃の回避に努めるのです。

益田四郎時貞公。
あなたに攻城戦の経験は、お有りです?
【我城普請・天守顕現】で戦場の十字架を私の城で塗り潰します。
Mi-2:辰星で死霊侍衆によるタンクデサントでクルセイダーに突っ込ませ、城からは
高速誘導弾システムのミサイル斉射で【援護射撃】。
【地形利用】と【拠点防御】、【空中戦】で無敵の私の城を存分に利用し、
トドメは空中からの【捨て身の一撃】で鐵貫で貫くのです。

…あなたは優れた守将でした。ですが。今のあなたに、原城はないのです。


音羽・浄雲
※アドリブ、連携歓迎です。

「太閤の孫を騙り、織田の力を使うとあらばまさしく我が仇」
するりするりと両の手から張り巡らされていくのは迷彩が施された【詭り久秀】。
「こちらの攻撃に先んじ、未来を読むというのならわたくしは攻撃いたしません」
回避を敵が先んじて行うのならば、まずは攻撃ではなく罠を張る。読まれようと読まれまいと、罠が張れれば敵の行動は狭まり、罠が張れなくとも相手は糸にも意識を割かねばならなくなる、そういう意図。
「貴方の未来は152通りに動く手裏剣と、見えぬ糸を同時に捌く未来を教えてくれるでしょうか?」
そして放つのは二種の【音羽手裏剣】。一本一本が意思を持ったかのように敵の首級を挙げんと踊る。


蓮見・津奈子
…物悲しい場所、ですね。
世界を、こんな静寂に葬ろうというなら。
放っては、おけません。

敵の初撃は、どうにか回避を試みますが…避けきれず、槍の穂を受け。光線により骨の全てが溶けてしまうでしょう。
この身が地に伏せれば、かの猟書家も、仕留めたと確信するでしょうか。

…嗚呼。

『この程度で死ねたなら』どれだけ幸せであったでしょうか。
生命として【限界突破】…理より乖離した身は、これでも…生きているのです。

変異・貪食粘泥にて全身を粘泥化。
彼の足元から始まり下半身、胸、腕、頭…全身を包み込みます(【グラップル】)。
そして【怪力】の限りを持って圧搾粉砕、強酸による溶解を試みます。

「人の世の華、摘ませはしません」



 ――突けば槍、引けば鎌、払えば薙刀。そんな言葉が残っているように、十文字槍とは扱い方によって円と直線、どちらの攻撃も行える厄介な武器だ。
(「それに加えて、その銘が真のものであれば――」)
 クルセイダーが持つその槍を、眼鏡越しにじっと睨みつけたミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)は、城址巡りで培った知識を掘り返しながら、鋼の切っ先が向かう先に注意を払っていた。
『人間無骨』――一説によると、その由来は骨が無いかの如く鮮やかに、人間を斬ることが出来るからだと言われていて。
「……猟書家が、よもや鬼武蔵の愛槍を振るうとは」
 白十字の原に、音も無く気配を溶かしている音羽・浄雲(怨讐の忍狐・f02651)もまた、因縁深き相手を前にして、狐の耳をそばだてているようだ。
「だが……太閤の孫を騙り、織田の力を使うとあらばまさしく、我が仇」
 ――嘗て、織田の軍勢によって彼女の里は滅ぼされた。仲間たちの復讐に駆り立てられ、それでも一度は無念を晴らせたと思っていたのに。
(「過去が蘇り、ふたたび戦を呼ぶのであれば」)
 十字槍を操るクルセイダーは恐らく、浄雲の攻撃に先んじて預言書による未来予測を行ってくるだろう。ならば――するり、するりと彼女の十指が、戦場に蜘蛛の糸を張り巡らせようと蠢けば、クルセイダーはその罠ごとミニョンらを薙ぎ払おうと、人間無骨を振りかぶって襲い掛かってきたのだった。
(「……物悲しい場所、ですね」)
 円の軌跡で迫る刃を、持ち前の勘で察知したミニョンが、咄嗟に白十字の突き出た地形に退くことで避けようと動くなかで――蓮見・津奈子(真世エムブリヲ・f29141)の方は、相手の一撃を受けることを初めから覚悟していたらしい。
「あ、……嗚呼」
 ――回避が叶わぬのなら、せめてミニョンへ向かう勢いを削ごうとでも言うように。ずぶりと津奈子の腹を貫いた人間無骨の穂先はそのまま、体内の骨を溶かしていく恐るべき光線を放つ。
「――……、……っ」
 身体中が沸騰し、己を支える軸が失われ――四肢の感覚が失われていくと同時に、立っているのかどうかも分からなくなって。神々しいひかりが体内に満ちていくことだけが確かな中で、津奈子の頬をひとすじの涙がつたっていった。
 ――ああ、この身が肉塊に変わって、地に伏したのなら。かの猟書家も、仕留めたのだと確信してくれるだろうか。
(「そう――『この程度で死ねたなら』、どれだけ」)
 再度、十字槍を構えるクルセイダーの足元で、びちゃりと粘泥が跳ねて彼の法衣に染みを作る。
「どれだけ、幸せであったでしょうか」
「……これ、は?」
 意思を持つようにしてするすると、クルセイダーの全身を駆け上がっていく粘泥は――変異のちからを解放した津奈子、そのものであったらしい。
「生命として、……理より剥離した、この身は。これでも……生きているのです」
 振り払う隙も与えず、胴から腕へと絡まっていきながら。溶解性の粘泥は強酸へと変わり、怪力の限りを以て圧搾粉砕を行おうとクルセイダーに覆いかぶさっていった。
「まだ、だ――未だ、預言書があれば――……!」
「いいえ、終わりです」
 ――この窮地を脱しようと、彼が手にした書物へ視線を巡らせるよりも早く、白き野に凛と響いたのは浄雲の声だった。
「わたくしが罠を張る……其処へ意識を割いて頂けたのなら、もう十分ですから」
 詭り久秀の糸を相手が断ち切る間にも、浄雲は次の手を打っていたらしい。彼女の手にした手裏剣は、そのひとつひとつが命を持つかの如く放たれる、音羽の秘術――付喪神だったのだ。
「……さて。貴方の未来は、152通りに動く手裏剣と、見えぬ糸を同時に捌く未来を教えてくれるでしょうか?」
 ――もし、未来を知ることが出来たとして。それが、悲劇を回避する手段が無いと突きつけられるだけならば、その絶望は如何ほどのものだろう。
「益田四郎時貞公。……あなたに攻城戦の経験は、お有りです?」
 そう、彼を狙うのは浄雲だけではない――機を窺っていたミニョンも同じだ。戦場に立ち並ぶ十字架の群れを、天守顕現による城郭で塗りつぶした少女は、亡霊侍衆の精鋭を従えながらMi-2:辰星――主力戦車を操り、クルセイダーの首級を挙げようと攻め込んでいった。
「あなたは優れた守将でした。……ですが」
 戦車に跨り突撃していく、死霊たちの鬨の声が草原に木霊していくなかで、ミニョンが生み出した巨大城郭からはミサイルの雨が降り注いで援護射撃を行う。
「今のあなたに、原城はないのです」
 ――鐵貫の馬上槍を掲げて、急降下を仕掛けるミニョンの一撃を、クルセイダーは躱すことが出来なかった。
(「世界を、こんな静寂に葬ろうというなら。……放っては、おけません」)
 ――四方から迫る浄雲の手裏剣と、異形と化した津奈子と。尚も猟書家の動きを封じ込めようと蠢く少女の声は、昏い愉悦を湛えながらも、凛と咲き誇るように戦場へと響き渡っていった。
「人の世の華、摘ませはしません」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リル・ルリ
🐟櫻沫

エンパイアは櫻の故郷だ
櫻宵の愛する場所、生まれ育った場所――たくさんの笑顔と桜の咲く帰る場所
君の故郷は僕の故郷も同じだよ
あの平和を、乱させはしない

預言ごと覆してやろう
僕達の未来は、今この瞬間の僕達で紡いで、切り開いて重ねていくものなんだから!

嗚呼、わかってる
君は、君だけは守ってみせる
その刀を届かせるために

大丈夫、僕ならできるよ
2人で色んな危機を乗り越えてきたんだから!
泡沫のオーラで防御を重ねて
歌声に櫻宵への鼓舞をのせて
現れた秀吉達を、過去を否定するように全力で響かせる
「薇の歌」
君を
故郷を傷つける禍など―「何もなかった」のだと
巻き戻してあげる

櫻宵、いくんだ!
守ろう
君は守護の桜龍なんだから


誘名・櫻宵
🌸櫻沫

預言なんて
決められた未来だなんて、御免だわ
エンパイアは私の愛する故郷
私の愛する家族が、守るべき地がある場所
あなたの好きになどさせないわ
平和になったあの地に
あの世界に、禍を降らせる事など赦さない!!

リル、来るわよ
泡沫のオーラに桜花のオーラを重ねて
歌うリルごと身を守るわ
未練がましいこと、その未練ごと斬り薙ぎ払ってあげる
攻撃は見切り、ギリギリまで躱して
隙あればカウンターを
破魔を込めた斬撃に、神罰の雷如き属性を乗せ衝撃波を放つわ
「浄華」と合わせて蹂躙するよう斬って斬って斬って、屠る

あなたの預言など否定する
魔軍の転生などさせないわ
ひとつ残らず、斬り祓う
私は陰陽師であり守護の龍

必ず、守ってみせる!



「……預言なんて」
 整然と立ち並ぶ白き十字架の原に、ふわりと迷い込んだのは――薄墨桜の花びらを従え、艶やかに咲き誇る桜龍だった。
「決められた未来だなんて、御免だわ」
 いつものようにきっぱりと吐き捨てて、悠然と微笑む誘名・櫻宵(貪婪屠櫻・f02768)であったが、桜の彩を映した彼の瞳は、屠るべき敵を捉えてぎらぎらと貪婪な輝きを放っている。
(「それに……エンパイアは、私の、」)
「うん、……櫻の、故郷だ」
 異世界へ侵攻しようとする猟書家――クルセイダーが持つ書に注意を払いながら、続く言葉を呑み込んだ櫻宵のそばで、泡沫のように弾けた声はリル・ルリ(『櫻沫の匣舟』・f10762)のもの。
「櫻宵の愛する場所、生まれ育った場所――たくさんの笑顔と桜の咲く帰る場所」
 きらきらと銀細工を思わせる歌声が、時が止まった世界にいのちを吹き込んでいくと、櫻宵もまた彼に続くようにして、ぬくもり無き大地に決意を落とす。
「そう……私の愛する家族が、守るべき地がある場所。だから、あなたの好きになどさせないわ」
 ふわり――純白の草原に舞い落ちる花びらは、散り際に淡く色づき、刹那の美に震えるようにも見えて。その静寂を遮る侵入者たちに、クルセイダーが形の良い眉を顰めた直後、魔軍転生によって召喚された秀吉の軍勢が、漆黒の渦と化して草原を埋め尽くしていった。
「――リル、来るわよ」
「嗚呼、わかってる」
 フェンフェン、フェンフェンフェン――黒き毛玉の奥で不気味な眼光を放ちつつ、予測のつかない動きで此方へと襲い掛かる秀吉装。けれど櫻宵もリルも、このような危機は幾度となく乗り越えてきたのだ。
「君は、君だけは守ってみせる。……その刀を、届かせるために」
 ――大丈夫、と自分に言い聞かせて、リルの指先が生み出す泡沫のひかりが、桜花の輝きと混じり合って極光のヴェールを織り上げていく。
(「僕ならできるよ。だって」)
 彩無き世界を染め上げる、二人ぶんの盾に守られながら。リルの紡ぐ歌は櫻宵を奮い立たせ、押し寄せる過去を否定するように辺りへ響き渡っていった。
「君を、故郷を傷つける禍など――『何もなかった』」
 ――揺蕩う泡沫は夢、紡ぐ歌は泡沫。薇の歌が時の秒針をゆっくりと巻き戻していくと、黒の軍勢はみるみるうちに姿を消して、草原にはただクルセイダーだけが残される。
「櫻宵、いくんだ!」
「ええ、……あなたの預言など、否定する」
 秀吉装が相殺されたことに気づいた彼が、再度秘術を操る暇も与えぬと言うように、太刀を抜いて駆け出したのは櫻宵だった。未練がましく術に縋る、その未練ごと斬り、薙ぎ払ってやるのだと――十字槍の牽制をぎりぎりで躱しながら、神罰の雷を轟かせた櫻宵の斬撃が、浄華の桜嵐を伴ってクルセイダーを両断する。
「魔軍の転生などさせないわ。必ず、守ってみせる――」
「ああ、守ろう。君は、守護の桜龍なんだから」
 ――君の故郷は、僕の故郷も同じだから。あの平和を、乱させはしないのだと。
 力強く頷いたリルに微笑みを返した櫻宵は、そのまま蹂躙するように斬って斬って斬って、斬って。ひとつ残らず世界の敵を斬り祓って、贄を屠る歓喜に打ち震えていた。
「僕達の未来は、今この瞬間の僕達で紡いで、切り開いて重ねていくものなんだから!」
 彼は陰陽師であり、守護の龍――故に、まやかしの楽園など、認めるわけにはいかないのだ。
「平和になったあの地に、あの世界に……禍を降らせる事など赦さない!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
秀吉の孫?そう…
どう足掻いても過去のシミは過去のシミ
浮き上がってもらっちゃ、キマるものもキマらねぇのよ
アンタも侘び寂びを知る男なら
サムエンキッズの心意気を忘れてもらっちゃ困るねぇ

なんて御託を並べても
あのいら男は容赦なく僕を骨抜きにするんだろう?
困ったもんだね
困ったもんだが

ところがね、僕以外にもこの世界を愛してやまない奴がいんのよ
白肌青目の別嬪たちがさ

さあ、かわいい大蛇たち
色男は好物だろう?
アレは主菜、僕はデザート
好きなだけお食べ

僕はといえば
アリーナ席で転がって
骨粗鬆症の薬と痛み止めをバリバリ噛みながら
かわいいペットの戻りを待つのよ

そしたらまた
安心してお散歩できるあの街に帰ろう
みんなが待ってるよ


薄荷・千夜子
クルセイダー!
我が故郷に再び戦乱の渦に巻き込もうとする者…!
貴方をかの地へと向かわせるわけにはいきません!!

貴方も信長と同じ力を使うのですね
ですが、同じだからこそ私はその術を知っている
『神楽鈴蘭』を構えて破魔の風を纏わせ結界術・オーラ防御を展開
その力、近寄らせません…!!
力を全て風に乗せて全力魔法で吹き飛ばし
畳み掛けるようにUC発動
還るべきところへお還りなさい
鈴蘭の破魔の花弁を辺り一体へ放ち、秀吉とクルセイダー纏めて一斉に攻撃
鈴蘭に込めるは平和の祈り、魔を討ち祓う清浄なる力(破魔・浄化・除霊・全力魔法)
今、穏やかに過ごしている皆を私は必ずや守ってみせます…!!


陽向・理玖
秀吉の孫か…
歴史は結構好きなんだよな
一丁相手してくれよ

龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
衝撃波放ちつつ残像纏いダッシュで距離詰めUC起動しグラップル
間近でフェイントに足払いでなぎ払い
後追い蹴り

その預言書何書いてあんだ?
全部書いてある訳じゃねぇんだろ?
予想を上回る攻撃すりゃ当たるんじゃね?
限界突破
大体あんたの攻撃避けてその後なら当たるだろうし
攻撃よく見て見切り
武器受けで槍の穂先払いカウンター
槍振り回せない自分の間合いに入り
拳の乱れ撃ち

今更幕府転覆とかねぇわ
この世界知り合いも沢山いるしさ
迷惑なんだよ
オブリビオンが何未来語ってやがる
もう見えてんだよ
暗殺用い急所狙い死角から蹴り
還れ
骸の海へ


冴島・類
先の戦、エンパイアで流れた血の数
再利用された人の骸
浮かばれぬ者の声を忘れられない

力を得た、選ばれた、再び乱を始める思し召し?
許しを諳んじるはずのくるすを胸に下げ
尚もそう言うのなら、預言書など燃やしてしまった方が良い

十字の槍の切先の狙いを定めさせぬ為
瓜江と共に残像を見せる足運びを用いたフェイントで、標的をぶれさせる
その上で、放たれた直線軌道を見切り、直撃を避けたい

それが叶えば、反撃に自身はなぎ払いで槍を弾き上げ
二回攻撃、相棒の封を解き風の刃で予言書持つ手を狙い切り裂く
あの本を用いる技を邪魔すれば、他の猟兵達への支援にもなるかもしれない

あの地をもう乱したり、焼いたりさせない
行かせることは容認できぬ



 白の草原を瞬く間に浸食していく、黒の軍勢は豊臣秀吉。フェンフェンと木霊する彼らの鳴き声に、紛れもない殺意を感じて、薄荷・千夜子(陽花・f17474)は手にした神楽鈴をぎゅっと握りしめる。
「……クルセイダー!」
 十字架に抱かれて秀吉装を纏い、穏やかな笑みを湛える猟書家へと、嚆矢の如く千夜子の声が放たれた直後――彼女たち目掛けて無数の秀吉が、蝗害を思わせる勢いで殺到していったのだった。
「貴方も信長と同じ力を使うのですね、ですが――」
 しゃらん、と清浄な鈴蘭の音を辺りに響かせながら、千夜子の編み出す結界術が、破魔の風となって辺りに吹き荒れる。
「……同じだからこそ私は、その術を知っている」
 太陽と風を司る神楽鈴蘭の音色を、空虚な世界の隅々まで行き渡らせるように――ありったけの力を彼女が風に籠めると、押し寄せる毛玉が次々に吹き飛んでいった。
「近寄らせませんよ……! 還るべきところへ、お還りなさい」
「しっかし……秀吉の孫、か」
 ――フェン、フェーンと悲鳴をあげながらも、圧倒的な数で攻め込んでくる豊臣秀吉。彼らとともに、クルセイダー本体が十字槍を構えて斬り込んできたのを陽向・理玖(夏疾風・f22773)が見て取ると、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)も「そう」と頷き、のんびりと煙管の柄を叩く。
「どう足掻いても、過去のシミは過去のシミ。……浮き上がってもらっちゃ、キマるものもキマらねぇのよ」
「でも、まぁ俺、歴史は結構好きなんだよな」
 一丁相手してくれよ、と気安い素振りで声をかけつつも、理玖は手にした龍珠をドライバーにセットして異世界のヒーローに変身した。それと同時に生じる衝撃波が、結界をすり抜けた秀吉を弾き飛ばしていくなかで、クルセイダーの眼前に立ち塞がったのは冴島・類(公孫樹・f13398)だ。
(「先の戦、エンパイアで流れた血の数。……再利用された人の、骸」)
 地獄絵図と呼ぶに相応しい光景が、世界のそこかしこで繰り広げられたことを――其処で耳にした、浮かばれぬ者たちの声を、類は決して忘れたりはしない。
(「なのに」)
 無慈悲なひかりを宿す人間無骨の切っ先を、半身である傀儡と躱しながら、類は狙いを定めさせぬよう、残像を纏って相手を幻惑していく。
「……力を得た、選ばれた、再び乱を始める思し召し?」
 ――許しを諳んじるはずの異教のくるすを胸に下げて、猟書家が口にしたそのことばが、類の辿ってきた道程までも嘲笑うようで。
「尚もそう言うのなら、預言書など燃やしてしまった方が良い」
「本当ほんと、アンタも侘び寂びを知る男なら、サムエンキッズの心意気を忘れてもらっちゃ困るねぇ」
 瞼の裏で弾ける炎を、静かな怒りとともに吐き出したところで、遠くからロカジの合いの手が類へと入れられたのだった。
「……なんて御託を並べても、容赦なく僕らを骨抜きにするんだろう?」
「――ッ」
 放たれた槍の直線軌道を見切って、直撃を避ける――しかし、円と線の軌道を使い分けられるのが十字槍の強みだ。弧を描いて振り回される人間無骨の刃へ、類の反応が僅かに遅れそうになった時、白肌青目の大蛇が鎌首をもたげて、クルセイダーの元へと喰らいついた。
「ところがね、僕以外にもこの世界を愛してやまない奴がいんのよ――さぁ」
 色男は好物だろうなんて囁きながら、七つ首の大蛇を呼び出したロカジが口角を上げる。アレは主菜、僕はデザート――そんな軽い口ぶりが示す通り、彼が使役に払う代償もそれなりにあったのだけれど。
「……好きなだけお食べ」
 それでもロカジは、ごろんと十字架の草原に転がりながら、痛み止めと骨粗鬆症の薬を噛み砕いて身体を襲う痛みに耐える。
(「――あの、本を用いることを阻止出来れば」)
 その一方で――人間無骨の一撃によって、骨を溶かされ身悶えるロカジの大蛇とともに、魔を祓う短刀でクルセイダーの槍に立ち向かう類のほうは、ぱらいそ預言書による予知にも注意を払っていたらしい。
 人間無骨の先制はどうにか自分たちが凌いだものの、猟書家と接近戦を挑む理玖は、此方の動きを察知する相手の能力に、思ったよりも苦しんでいる様子だった。
「……その預言書何書いてあんだ? 全部書いてある訳じゃねぇんだろ?」
 向こうの予想を上回る攻撃を繰り出せれば、とは思うのだが――拳を交えるたびに精度を増す明鏡止水を以てしても、後の先で斬り込んでくるクルセイダーには届かず、次の攻撃に繋げることが出来ずにいる。
「今更幕府転覆とかねぇわ、この世界知り合いも沢山いるしさ。……迷惑なんだよ」
 十字槍でかき切られた、理玖の腕から流れる血が大地に染みを作るのを見て、再び秀吉装を纏っていく猟書家が悠然とした笑みを浮かべた。
 ――島原へ向かい、乱を。彼の唇が歓喜に震える様を認めた類の血潮が、風巻となって相棒の封印を解く。
「あの地をもう乱したり、焼いたりさせない。行かせることは容認できぬ――荒れ狂え、」
 風刃を憑依させた相棒――瓜江が狙いを定めたのは、預言書を持つクルセイダーの手だった。予知を越えた攻撃によって切り裂かれたその手が、虚を突かれて書を手放した瞬間を狙って、理玖が急所目掛け渾身の蹴りを放つ。
「オブリビオンが何未来語ってやがる……もう、見えてんだよ!」
「――っ、まだ、魔軍転生が……!」
 血を吐き出し、空中へと投げ出されたクルセイダーが秀吉を差し向けようと瞳を見開くが――其処へ一斉に押し寄せていったのは、千夜子の神楽鈴が姿を変えた花神鈴嵐の花びらだった。
「我が故郷に、再び戦乱の渦に巻き込もうとする者よ……」
 ――秀吉も彼の孫も、全て呑み込んで骸の海へと押し流していくように。花にこめた平和への祈りは、魔を討ち払う清浄なる力となって、世界を蝕むものへと襲い掛かっていく。
「貴方をかの地へと、向かわせるわけにはいきません!!」
 今、穏やかに過ごしている皆を必ずや守ってみせるのだと。そんな千夜子の決意を耳にしたロカジもまた、クルセイダーに立ち向かうかわいい大蛇へ向かって、そっと声を掛けた。
「安心してお散歩できるあの街に帰ろう。……みんなが待ってるよ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

スティレット・クロワール
預言、預言ね
凪のような世界に身を任せれば楽園たり得るのか

まぁ、どうなるにしても
誰かの言うままっていうのは好きじゃなくてね

私の全ては、私のものなのだからね

未来の記述とはね
ふふ、私も司祭だからね。預言書なんて言われてしまえば気になっちゃうんだよねぇ


薔薇紅茶の時間で、キャンディーを口に
砂糖菓子も用意しつつ

君は私を預言したっていうけれど
——俺と同じ時を生きれると?

回避されようとも、時の流れが違う。届かせてもらうよ?
全力で踏み込み、サーベルで一撃を届けようか

容易く踏み込ませてはくれないだろうからね。UDCのへび君をデコイに行くよ

生憎、その預言書より俺には信じ得るものが——炎がある
その預言、ご遠慮しようか


アンリエット・トレーズ
きれいな――ええ、きれいな場所ですね
静寂で、白くて
アンリエットが住んでいたお部屋のようで懐かしい
こんなに広くはありませんでしたが

刻印の触手を念の為2本ほど使って
野生の勘と怪力で槍の一撃を受けます
受け止められるならそれが一番いいのですけれど
ああ、けれど、大丈夫ですよ
アンリエットの刻印はそんなにヤワではありません
だから離れないで――放しませんから
生み出せる触手の残り全てを束ね
さあ、《十二時の鐘》を鳴らしましょう
あなたのために

アンリエットはあなたの目指す世界出身ではありませんが
あそこで頑張った記憶はありますから
あの地にこの墓標は似合いません
未来が定められているというのであれば
それを覆しましょう




 ――預言書はかく語れり。猟書家のそのことば通り、予め全てのものごとが決められていて、書に記された通りに世界が動いていくのだとしたら。
「……預言、ね。私も司祭だからね、預言書なんて言われてしまえば気になっちゃうんだけど」
 調和のとれた完全な世界は、哀しいほどの静寂に満ちており――眩いまでの白は何色にも染まることは無く、無数の十字架となって大地に突き刺さっている。
「凪のような世界に身を任せれば、楽園たり得るのか……まぁ、」
 お伽噺の王子様のように、うつくしく微笑むスティレット・クロワール(ディミオス・f19491)が、その草原に佇む様子は絵画の一幕のようで、血生臭い現実のことなど忘れてしまいそうになるけれど。
「どうなるにしても……誰かの言うままっていうのは、好きじゃなくてね」
 ――うっすらと細める藍晶石の瞳には、凪とは無縁の謀略の日々を生き抜いてきた、狡猾な獣が潜んで今も牙を研いでいるのだ。
「私の全ては、私のものなのだからね」
(「きれいな――ええ、きれいな」)
 預言書の記述を辿るクルセイダーを横目に、スティレットは悠然とした仕草でお茶会の準備をしていく。そうして薔薇紅茶のかぐわしい匂いが、純白の草原に漂っていけば、辺りの景色に目を奪われていたアンリエット・トレーズ(ガラスの靴・f11616)の耳が、ぴくりと跳ねて歓声があがった。
「まぁ、紅茶と……それに、お菓子も」
「ふふ、まずはゆっくりと」
 魔法のように手のひらへ現れた、可愛らしい砂糖菓子を少女に手渡しながら、スティレットは慣れた手つきで陶器のティーポットを傾けていく。薔薇の花びらが祝福の雨を降らせていくなかで、彼もまたキャンディを口にしていくと、すかさずアンリエットがふたつめの砂糖菓子に手を伸ばすのが見えた。
「静寂で、白くて、きれいな場所。アンリエットが住んでいたお部屋のようで懐かしい」
「……おや、馴染みのある風景だとは」
「こんなに広くは、ありませんでしたが」
 和やかに会話を楽しむふたりの元へ、突如として襲い掛かる人間無骨の一撃は――しかし、その速度を大幅に奪われている。
「未来の記述、とはね。君は、私を預言したっていうけれど――」
 此方がどう動くかを知り得たとして、それを回避できるかどうかはまた別だ。そうはっきりと思い知らせるかの如く、スティレットのサーベルが残照を宿して翻り、相手よりも早くその刃を埋めていった。
「同じ時を、生きれると?」
「ああ……大丈夫、ですよ。アンリエットの刻印は、そんなにヤワではありません」
 そして――例え、敵の一撃を受けることになろうとも。獣の尾に刻まれた刻印から触手を精製したアンリエットは、華奢な体格に見合わぬ怪力を発揮して、人間無骨ごとクルセイダーを羽交い絞めにしていく。
「だから離れないで――放しませんから」
「まぁ、回避されようとも、時の流れが違う。……届かせてもらうよ?」
 ぎり、ぎりぎりと、竜の舌を思わせる触手がクルセイダーの動きを封じ込めていくなか、慈悲の刃を届けるべく、全力で踏み込んでいくのはスティレットだった。
「生憎、その預言書より俺には信じ得るものが――炎がある。その預言、ご遠慮しようか」
 ――引き延ばされた時間で足掻いて、幾ら未来を垣間見ようとも。白蛇のヘルメスがデコイとなって矛先を逸らしてくれるし、残りすべての触手を束ねて止めを刺そうと突き進む、アンリエットも居る。
「アンリエットは、あなたの目指す世界出身ではありませんが……あそこで頑張った記憶はありますから」
 少女が猟書家のために鳴らすのは、魔法の終わりを告げる十二時の鐘。だってあの地には、此処の墓標は似合わないから。
「もしも、未来が定められているというのであれば。それを覆しましょう」
 ――今。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リア・ファル
予言。運命。理不尽なるモノ。

血反吐を吐き、それでも掴みたい明日を
望む未来を願い、想い、紡いだ人々の為に

『イルダーナ』での空中戦。
『ヌァザ』での斬撃。『セブンカラーズ』での射撃。

預言書の記述は、「どの程度先まで読めているのか」
「文章である以上、どの程度、解釈の幅がありそうか」
カウンターにだけ注意しつつ、演算分析を続けていく
(情報収集、時間稼ぎ、学習力)

「ヒトの未来は、予言や運命に決定づけられたりはしない。
此処に無限の可能性を予測演算する!」
UC【慧眼発動】!

把握した予言解釈の幅である行動で、煙幕弾や閃光弾を撃ち込み、
読めていない、記述より先の行動で預言書を攻撃する!
(カウンター、武器落とし)


日下部・舞
「あなたの勝手にはさせない」

味方と連携しながら前に出る
攻撃は夜帷で受けて【怪力】で弾き返す

猟書家の青年
問題は彼ではなく預言書なのかもしれないけど

「私のやることは変わらないから」

味方を【かばう】
突き刺さる槍、放たれる光線

「ああ……!」

左腕の骨が溶けて完全に使い物にならない
激痛は【肌】の機能で痛覚を遮断
【継戦能力】を発揮する

「大丈夫。まだ戦える」

『彼』は故郷と言っていた
立ち上がる理由はそれで十分

剣と槍では間合いが違う
正面からでは私の不利は否めない
それなら、

「起きなさい、夜帷」

呼び声にクランケヴァッフェが目を覚ます
青年と射程内の全ての豊臣秀吉に【深淵】

暗黒物質(ダークマター)は音もなく全てを喰らう


兎乃・零時
アドリブ歓迎

…やべぇのは分かる
あぁ怖い、怖いとも

でも…でもなぁ!
てめぇが狙う世界は友達が居る世界!

なら戦う理由はそれで充分!

恐怖は飲み干し腹決めろ
護った世界を襲うバカ野郎が目の前なんだぞ…!




沢山敵がいるんなら!
光【属性攻撃×範囲攻撃】の魔力放射で回りをぶっ飛ばす!

猿ぶっとばしつつ詠唱だ!
魔術を複数重ね合わせ
速度を限界まで高め!

攻撃は最低限避ければそれでいい!痛みは気合で耐えるんだ!

捨て身で来る奴を想定してるか?してないか?
どっちでもいい
クルセイダーのすぐ傍これたらこっちのもん!
空の果てまでぶっとびやがれぇっ!

【限界突破×全力魔法×零距離射撃】

リミテッドオーバーレイ !
 極 光 一 閃 !



 ――侵略蔵書の頁が音も無く捲れて、猟書家を勝利へと導くための未来を囁く。
(「……予言。運命。理不尽なるモノ」)
 その記述は果たして、どの程度先までの未来を読めているのだろうか――クルセイダーの動向を窺うリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)の眼前では、ヘッドセットが電子の海を展開して周囲の情報を分析していた。
(「だが、それが文章である以上、解釈には幅がある筈。……問題は、その程度だ」)
 十字架の草原を見下ろして、空中から標的へと向かっていくリアの『イルダーナ』を視界に捉えつつ、クルセイダーの先制攻撃を迎え撃ったのは兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)だ。
「……やべぇのは分かる。あぁ怖い、怖いとも」
 フェンフェンと鳴き声をあげる、豊臣秀吉の軍勢が一気に膨れ上がって押し寄せてくるなかで、零時は藍玉の杖をきつく握りしめて魔術の詠唱を行っていった。
「でも……でもなぁ! てめぇが狙う世界は友達が居る世界! なら戦う理由はそれで充分!」
 ――気を抜けば、一瞬で秀吉装に呑み込まれてしまうかも知れない恐怖をねじ伏せて、零時は震えそうになる両足に喝を入れる。そうだ、恐怖は飲み干し腹を決めろと、水色藍玉の瞳が彼方のクルセイダーを捉えて仄かなひかりを宿した。
「護った世界を襲うバカ野郎が目の前なんだぞ……!」
 クリスタリアンの肉体が内包する魔力を、純粋な光へと変えて一気に解き放てば、此方の喉元に迫っていた秀吉たちが纏めて塵と化していって。
「沢山敵がいるんなら!」
「ええ――あなたの勝手にはさせない」
 上空から、戦場の様子をつぶさに伝えていくリアと連携を行いながら、日下部・舞(BansheeII・f25907)が前へ飛び出して、散らしきれなかった群れを片刃の長剣で弾いた。
(「……猟書家の青年。問題は彼ではなく、預言書なのかもしれないけど」)
 ――魔軍転生を行いつつ、自らも十字槍を構えて斬り込んでくるクルセイダーは、書の導きにより戦の勝利を確信しているのだろう。全てが定められているのだと、慈悲深き笑みを湛えた彼が仲間を狙うよりも早く、舞はその前へと躍り出て、機械化した腕で刃を受けた。
「私のやることは、変わらないから。……あ、あ」
 強化された骨格さえも一瞬で蒸発させる人間無骨の光線は、舞の神経まで焼き切ろうと荒れ狂っていく。咄嗟に肌の機能が痛覚を遮断しようと動いたが、だらりと垂れ下がった舞の左腕は、完全に使い物にならなくなっていた。
「おい、無理するなって。気合で耐えるっても限度が……!」
「……大丈夫。まだ、戦える」
 再び攻め込んでくる豊臣秀吉たちを、光の波状攻撃で押しとどめる零時が悲鳴をあげたのが分かったが、舞は顔色ひとつ変えずに――人形のように端正な唇を、きゅっと噛み締める。
(「『彼』は故郷と言っていた。立ち上がる理由はそれで十分」)
 ――そう、猟書家が侵略しようとしている世界を、大切に思っているひとが居るのだ。彼女のように血反吐を吐いても、それでも掴みたい明日が、望む未来があるのだと言うことは、リアにも分かっていた。
「願い、想い……そして、紡いだ人々の為に」
 未来は絶えず揺れ動くもので、そのふり幅を相手が捉え切ることが出来ないのなら――イルダーナの発射する煙幕弾が、十字架の草原を覆い尽くしていく僅かな時間に、彼女たちは反撃の準備を整えていたのだった。
「……起きなさい、夜帷」
 剣と槍の間合いの差を埋めるように――UDCの封印を解いた舞が、深淵のダークマターで辺り一帯の存在を食らい尽くしていくなかで、上空からはヌァザの魔剣を展開したリアが、クルセイダーの持つ預言書ごとその次元を断とうと迫る。
「ヒトの未来は、予言や運命に決定づけられたりはしない。……此処に無限の可能性を予測演算する!」
 ――読めていない、記述より先の行動は、彼女が仮想領域で模擬演算を行った未来に基づくもの。其れは過去が齎した力では無く、未来へと進む意志が生み出すユーベルコードであり。
「捨て身で来る奴を想定してるか? してないか? ……どっちでもいい」
 魔力の結晶であるアクアマリンの涙を、はらはらと零す零時もまた、幾多の魔術を組み合わせながら限界まで高めた速度を以て、クルセイダーの元へと突き進んでいた。
「すぐ傍これたらこっちのもん! 空の果てまでぶっとびやがれぇっ!」
 ――其は壁を越え続けるもの。零距離で放たれるのは、彼が今出来る最高の一撃。でも、今は直ぐに過去へと変わり、零時が目指す高みは果てがないのだ。

             リミテッドオーバーレイ
「その覚悟を此処に示す――極 光 一 閃 !」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト