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迷宮災厄戦㉒~右手に書を、左手に槍を

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #クルセイダー

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「どうやら新しく三体の「猟書家」のいる戦場へ攻め込むことが可能になったらしいぜ」
 ……お疲れさん、ありがとうよ。
 忌塚・御門(RAIMEI・f03484)は自らの呼びかけに応えた猟兵たちに告げる。そして、見るものが見ればいつもどおりの陰気な声でこう続けた。
「行ってほしいのは、「猟書家」クルセイダーのところだ。クルセイダーはサムライエンパイアを狙ってる猟書家で……どうやら、「あの」豊臣秀吉の孫、らしいぜ」
 ……豊臣秀吉。昨年の今頃に起こった戦争を知るものならば知っている、謎のフェンフェン鳴く(だけど意思疎通は出来ているらしい)獣のような毛玉のようななにか。どうしてあんな姿をしているのかはちょっとわからないの、だが。姿だけでも人の形をとっている孫がいたとは驚きだ、と御門は言う。
「戦場は白い十字架が立ち並ぶ純白の草原だ。草も何もかも白く塗りつぶされたみてぇに真っ白な、な。十字架やらが戦闘のじゃまになることは無いだろうが、逆に利用できそうなものもねーな。……何より気をつけてほしいのは、クルセイダーは「必ず」「先制攻撃してくる」ってことだ」
 こちらがユーベルコードを用いるより先に敵のユーベルコードが飛んでくる。それは絶対のことだ。
「とはいえ、どんな技で仕掛けるかにも寄るな。クルセイダーの持つ武器は未来の記述が書かれた「ぱらいそ預言書」と、てめえの爺さんである「小型戦闘用」豊臣秀吉たちを呼んで戦わせる能力。それから「体内の骨を溶かす」と言われる槍「人間無骨」だ」
 この戦いは先制攻撃に対処することが勝利への大きな鍵となる。それはどんな技で挑むかにも大きく関係してくるだろう。
「戦場への転送は俺が引き受ける。ついたらすぐに白い草原だ。……にしても、原城に、豊臣秀吉の孫……ねぇ。UDCアースの歴史上にも、該当する人物が居ねぇわけじゃあねーんだが……まあ、そいつは出来過ぎた話か」
 気をつけて行ってきてくれ。御門は最後にそう言って、猟兵たちを送り出すのだった。


遊津
 遊津です。
 こちらはアリスラビリンス、迷宮災厄線のシナリオとなっております。
 一章完結、ボス戦。難易度はやや難となっております。
 敵は猟書家の一人『クルセイダー』。彼は必ず先制攻撃を仕掛けてきます。
 当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
 (※プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する)

 こちらのシナリオはオープニング公開後すぐにプレイング受付を開始いたします。
 MSページを必ず一読の上、ご参加ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木々水・サライ
[アドリブ・絡み歓迎]
──猟書家・クルセイダー。どうもいけ好かない。
ぱらいそ預言書に頼った戦い方をするそうじゃないか。
預言書なんてもんに頼ったって、それは自分の実力じゃあないだろうが。

UC【複数の白黒人形達(マルチプル・モノクローム)】起動。
今回、先制攻撃は受けるしか手立てがない。だから、呼び出すのは5人。
3体は自由自在に動き回って敵を翻弄し、2体は必ず俺のそばにいて盾になってもらう。
隙を伺っては【黒鉄刀】の闇を広げつつ、斬りつけるつもりだ。

……奴の預言書の記述が果たして俺一人に適用なのか、人形達にも適用されるのか。
それによって勝敗が決まる……。

「未来なんてもん、先に見るもんじゃねえだろ」



(猟書家「クルセイダー」……どうにも、いけすかねえ)
 木々水・サライ(《白黒人形》[モノクローム・ドール]・f28416)が「いけすかない」と評するのは、彼が「ぱらいそ預言書」に頼った戦い方をする、というところ。
(預言書なんてもんに頼ったって、それは自分の実力じゃあねぇだろうが……)
「未来なんてもん、先に見るもんじゃねえだろ」
 白い十字架の立ち並ぶ、何もかもが白い草原で。猟書家「クルセイダー」はサライの言葉を聞きつけ、彼を嘲笑うように言葉を紡ぐ。
「すべては、預言書の思し召し。私が徳川から逃げ延び、生きて此処に立っていることこそ、預言書の記述あってのこと」
「チッ……本当にいけすかねえ野郎だな……!」
 サライのユーベルコードが発動する。彼を守るように現れる2体の複製義体、そしてクルセイダーへと突撃を仕掛ける3体の複製義体。
その複製義体の攻撃全てをひらり、ひらりと歩くような速度で躱し、クルセイダーは左手に持つ槍でかれらを薙ぎ払う。
「……預言書の記述が彼ら人形たちには適用されないと、もしもそう思っているのなら、あなたの負けです。人形の主」
 金色の装飾が施された槍を左手一本で軽々と扱いながら、猟書家の男はそれをサライへと――彼を守る2体の複製義体へと向ける。
豪速の槍の一撃がサライの心臓へとまっすぐ突き出され、しかしそれは彼を守った複製義体へと吸い込まれた。めきり、と義体の金属が拉げる音がする。
「チッ……!」
 舌打ちを一つして、サライはクルセイダーへと斬りかかる。彼の身の丈よりも長い刀身から闇が広がり、真っ白な草原を塗りつぶしていくが、その斬撃はクルセイダーの身体には掠ることもない。右手の「ぱらいそ預言書」に目を落としたまま、猟書家の男はサライをまともに見ることさえもしなかった。サライの苛立ちが更にこみ上げてくる。
(くそッ……落ち着け、冷静になれ……!奴の攻撃も俺には当たっちゃいない……!)
 斬りかかるサライの刀はクルセイダーへは当たらない。刃から、闇だけがじわりと水に沁みるように広がっていった。

 そうして幾合、幾十合と槍と刃が振るわれた後だった。
不意に、サライの持つ長刀から広がった闇が、「ぱらいそ預言書」を覆う。それほどにサライの刃「黒鉄刀」から広がった闇は深かった。あたりは一面闇に包まれて、白い草原は真っ暗に、一面に突き立った十字架はもはや影となって見えない。息を呑むクルセイダー。
クルセイダーの視線から、ぱらいそ預言書が引き剥がされる――その一瞬に、サライの持っていた刀がクルセイダーの肩を斬りつけた。血しぶきが上がる。
「ああ、そうか。そういうことか……てめえ、預言書に頼りすぎて、実際の俺の剣筋はまともに見切れてもいねえってわけか……!」
「…………!」
 サライを見るクルセイダーの――猟書家の男は、この時はじめてサライをまともに見た――目に、確かな焦りが浮かんでいた。
再び剣が振るわれれば、広がった闇が預言書に書かれているであろう文面から持ち主の視線を遮る。その隙に、まだまともに動けた複製義体がクルセイダーを強かに殴りつける。その視界を覆い、闇に紛れて猟書家の男を殴りつけ続ける……!
「言っただろ、未来なんてもん、先に見るもんじゃねえってよ」
 サライはもう一度そう言って、暗闇に沈んだ草原でクルセイダーにもう一太刀を浴びせるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒鵺・瑞樹
右手に胡、左手に黒鵺(本体)の二刀流

クルセイダー、通称天草四郎は秀頼のご落胤って噂もあったらしいな。
でもそれ以上に森長可愛用との人間無骨、持ち帰れねぇかな?

UC炎陽、および投げられるだけの柳葉飛刀の投擲。さらに伽羅の雷撃、陸奥の旋風で召喚された秀吉を可能な限り打ち落とす。
全部落とせずとも俺が抜けられるだけの道ができればよい。伽羅と陸奥も十分このぐらいなら戦えるしな。合間を縫ってクルセイダーに迫りマヒ・暗殺の攻撃を仕掛ける。
敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。



(クルセイダー……そういや天草四郎には、秀頼のご落胤って噂もあったらしいな)
 天草四郎。原城、そして秀吉の孫というキーワードから、UDCアースの歴史を知っている者たちが微かにでも頭に浮かべた名前がそれだった。かの大坂の陣のおり、燃え盛る大阪城とともに落命したと言われる豊臣秀頼が生き延び、遠い南の地島原へと落ち延びたという伝説――最も、此処に居る猟書家の男「クルセイダー」が、天草四郎時貞の名前をも持っているのかどうかはわからない。此処に居るのはあくまでUDCアースに存在したと言われるその男を思わせる来歴を持つだけの猟書家。猟書家「クルセイダー」だ。
(……まあ、それ以上に。かの森長可愛用との「人間無骨」……持ち帰れねぇかな?)
 黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)は男が手にする槍を思って下唇をぺろりと舐めた。森長可もまた秀吉同様信長に仕えたと言われる「鬼武蔵」と恐れられた武人の名であり、UDCアースにおいては信長気に入りの小姓・森蘭丸の兄であると伝わっている。
 瑞樹の視線に気づいたのか、クルセイダーが眉を顰める。そして左手に持った人間無骨の石突にて白く染まった地面をとんと突いた。さすれば、そこよりおよそ四百を越えようかという数の小さな「豊臣秀吉」が湧き出でて、フェンフェンと鳴きながら瑞樹へと襲いかかってくる。
 最初の二十は瑞樹の投げた投擲用ナイフ「柳葉飛刀」によって落ちた。小型化された秀吉はその一体一体の力は弱く。ナイフが当たっただけで地に落ち、白い草原を黒い煤のように汚す。
 次の二百は水神の竜「伽羅」と白虎の精霊「陸奥」がそれぞれに雷撃と旋風で撃ち落としていく。そして、次に襲いかかってきた百の秀吉は。
「“緋き炎よ”……!」
 八十と七の金谷子神の錬鉄の炎がそれぞれ小さな秀吉に向かい、燃やして煤へと返す。炎を免れた秀吉をはじめ、未だ百体以上の秀吉がフェンフェンと鳴いて瑞樹に向かってきていたが、それらは伽羅と陸奥に任せて走り抜ける。
 全て落とせずとも。瑞樹一人が走って抜けられるだけの穴が開けば良い。大量の秀吉の間を縫ってクルセイダーに接敵すると、左手の瑞樹本体である「黒鵺」と右手の「胡」で同時に斬りかかった。
 肉を裂く確かな感触と、同時に金属にぶつかった重い手応え。クルセイダーの人間無骨を手にする左腕からはだらだらと血が流れ、白い草原を赤く汚していた。
クルセイダーが人間無骨を振り回す。しかし斬りつけられた手では力が入り切らないのか、その剛槍は本来出せるであろう威力よりも微かに弱い。最初の薙ぎは軌道を読んで躱せた瑞樹だったが、次の突きが躱しきれずに目の前へと迫ってくる。咄嗟に本体を突き出し、受け流して右手の「胡」で突きかかる。クルセイダーの胸元が大きく切り裂かれ、猟書家の男はその場に膝をつく。
更に一撃を繰り出そうとした瑞樹の後ろで、最後の秀吉が伽羅と陸奥によって黒い煤と化した。

成功 🔵​🔵​🔴​

逢坂・理彦
せっかく平和になった故郷にまた暗雲を運ばれることになるなんてね…それならば少しでも故郷の役に立てるよう戦わせてもらうよ。

秀吉ってあれだよねフェンフェンて鳴く…とにかく先ずはそれをなんとかしようか。
【結界】を張っていくらか防げればいいけどそれだけでは無理だろうから【戦闘知識】と【第六感】で【見切】った後は【早業】【なぎ払い】で一掃…!

それじゃあ、今度はこっちから。
UC【狐火・椿】
さぁ、椿のように落ちようか。



「せっかく平和になった故郷に、また暗雲を運ばれることになるなんてね……」
 ――それならば少しでも故郷の役に立てるよう、戦わせてもらうよ。
逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)の前で、猟書家「クルセイダー」は眉一つ動かさず。ただその唇だけを静かに動かして、言った。
『すべては、預言書の思し召し』
 そうして、金色の装飾がなされた左手の十字槍「人間無骨」の石突にてましろな草原をとんと突く。さすればそこから小型の豊臣秀吉がフェンフェンと鳴きながらわらわらと湧き出してくる。その数、三百七十体と言ったところだろうか。
「おっと、まずはそれをなんとかしようか……」
 理彦の張った結界術に阻まれたいくらかの秀吉がフェンフェンと鳴くも、結界の一点を突き、そこから一気に突破した秀吉が雪崩れ込んできた。理彦は自らに纏わりついてこようとする秀吉を、手にした朱い刀身の妖刀「朱月丸」を持って次々に切り捨てていく。十、二十、五十、百、二百、三百、三百七十――集団となれば脅威である秀吉であったが、一体一体は非常に脆い。刃で斬らずとも衝撃で地に落ち、そのまま白い雪原を汚す煤となって消えていく。
「それじゃあ、今度はこっちから――“さあ、椿のように落ちようか”」
 椿の花のように赤い炎がぼう、ぼうっと理彦の手の中に灯る。段々と数を増し、最後には七十を越える焔の群となった。それらを幾つかの塊にまとめると、理彦はクルセイダーへと向けて焔を放つ。
 クルセイダーは十字槍「人間無骨」を振り回し、その炎を蹴散らしていく。しかし、理彦の意のままに操られる炎はその槍をすり抜け、クルセイダーの白い肌を炙っていく。
 炎に巻かれながら、クルセイダーは理彦に突きかかった。その突きを、理彦は朱月丸にて受け止める。ぎりぎりと槍の穂先と刃が軋りを上げ、一度離れてはもう一度噛み合った。
幾合、幾十合と打ち合いを重ねて。その衣を炎に焼かれながら、猟書家の男はそれでもまだ理彦へと挑んでくる。彼にも引けない理由があり、野望がある。けれどそれは理彦の望むそれとは決してわかり合えない。クルセイダーが望むのはサムライエンパイアの世に再びの乱れを招こうとする事であり、理彦にとってそれは故郷が漸く手に入れた安寧を崩されることに他ならないのだから。
 そんなことはわかっている。わかりあえないことがわかりきっている。だからこそ理彦はこの真っ白な戦場へと赴いたのだから。
「ああ、もうそろそろ終わりにしようか」
 理彦の刃が、妖刀朱月丸がクルセイダーの胸を薙ぐ。噴き出した真っ赤な血飛沫を浴びながら、理彦は炎を更に燃え上がらせていく。
 クルセイダーが炎に包まれていく。――けれどまだ彼は生きている。
燃えるその背中に、理彦はもう一太刀を叩き込もうと朱色の刃を閃かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

塩崎・曲人
ハッ、テメェがクルセイダーって奴か
テメェの爺さんには世話になったからな
大渦の海で水泳させられた恨み込みでぶん殴らせて貰うぜオイ

さて、相手は先制で予知能力を起動してくる、と
つまり普通にUCで殴りかかっても余裕で躱されるわけだ
「だが……こういうのはどうよ?」
手持ちの鉄パイプを相手に向かってぶん投げる
更に、そのすぐ後ろに影手裏剣の要領でギャングスタ・ナイフを投擲
コレだとただの奇襲、預言書の予知を見ているあちらさんは鼻クソほじりながらでも対処できる訳だが……
「無事対処できた、その思い込みが罠だとしたら?」
オレのUCは因果を曲げて幸運を呼び込む
無力化されたはずのナイフが『偶然』跳ね返って後ろを襲うぜ



「はッ、テメェがクルセイダーって奴か。あの豊臣秀吉の孫なんだって?」
 十字架の並び立つ真っ白な草原に、ずるずると鉄パイプを引きずりながら塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)が歩いてくる。
猟書家「クルセイダー」は彼を一瞥し、その粗野さを気に入らないと言いたげに眉を顰めた。
「テメェの爺さんには世話になったからな。大渦の海で水泳させられた恨み込みでぶん殴らせてもらうぜオイ」
 ちょうど去年の今頃、サムライエンパイアで勃発した戦争で。クルセイダーの祖父である豊臣秀吉と弥助アレキサンダーを倒すために海を泳いだ記憶を思い出しながら、曲人は引きずってきた鉄パイプを肩に担ぐ。
猟書家の男はそれを見届けると、あとはまるで興味がないと言った様子で開いた書物――「ぱらいそ預言書」に目を落とした。けれどそれはほんとうに曲人に興味がないわけではない。その書は預言書にして、こちらの動きをすべて記したユーベルコードだ。
(さて……相手は予知能力を起動してくる。と……つまり普通にユーベルコードで殴りかかっても余裕で躱されるワケだ?)
「はっ、だったら……こういうのはどうよ!?」
 曲人は肩に担いだ鉄パイプをクルセイダーへと向けて投げつけた。クルセイダーは曲人に一瞥もくれること無く、一歩歩みをすすめる。それだけで鉄パイプはクルセイダーの横をすり抜け、地面に突き立った十字架にぶつかってガシャンと音を立てる。そして、もう一歩。クルセイダーがふるりと頭を振ると、その横を曲人が放ったギャングスタ・ナイフが飛んでいった。
『ぱらいそ預言書はかく語れり。“鉄棒飛来せし後、影手裏剣のごとく小刀が飛来す”。……すべては、預言書の思し召し』
「はッ!そーだろーなぁ!これじゃあただの奇襲だ!預言書の予知を見ているオマエにゃあ、鼻クソほじりながらでも対処できるだろーよ!だがなぁ……――無事に対処できた。その思い込みこそが罠だとしたら?」
 クルセイダーの目が見開かれた。ぱらいそ預言書を持っていた手が震え、その目がもう一度曲人を映す。その瞳の色は驚愕に満ちていた。
『な……ぜ』
猟書家の男の背中。纏った白い布が朱く染まって。その中心には、先程彼が悠々と避けたはずのナイフが突き刺さっている。
――これぞ、曲人の因果を曲げて幸運を呼び込むユーベルコード。完全に無力化されたはずのナイフは、『偶然』地面に大量に突き刺さっていた十字架に跳ね返り、クルセイダーに後ろから突き刺さったのだ。
「さぁなぁ。その預言書が欠陥品だったんじゃあねーの?」
『……そんな筈はありません。すべては、預言書の思し召し……!』
 せせら笑う曲人に、クルセイダーが声を荒げた。
「それじゃあもう一回やってみっか、オイ!」
 再び曲人が、今度は正面から投げたナイフを、クルセイダーは「ぱらいそ預言書」に従って避ける。避けたはずだった。預言書を読む猟書家の男に背を集中する余裕はない。そのがら空きの背中に、もう一度ナイフが跳ね返り、突き刺さる。
「さあ、もう一回やるかよ?」
 曲人は笑いながら、三本目のナイフを手の中で弄ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シル・ウィンディア
せっかく手に入れたエンパイアの平和
それを脅かすだなんて、させないっ!

対UC
う、ふぇんふぇん、かわいい
…でも惑わされないっ!

【空中戦】で【フェイント】を交えた回避で【残像】を囮に撹乱
でも、回避だけじゃ絶対に手詰まりになるから
腰部の精霊電磁砲で【誘導弾】を【一斉発射】!
纏めて【なぎ払い】していくよ

ふぇんふぇんに接敵されたら…
光刃剣と精霊剣を回転させてシールド代わりにして【なぎ払い】だね

しのいだ後は動き回って【残像】で撹乱しつつ
精霊電磁砲で牽制射撃しつつ詠唱開始

使うは十八番のエレメンタル・ファランクス
こっちなら、速度出せるからねっ!!
【高速詠唱】で隙を減らして【魔力溜め】しつつ
【全力魔法】!



「せっかく手に入れたエンパイアの平和……それを脅かすだなんて、させない!」
 シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)の言葉に、白いかんばせの猟書家「クルセイダー」は静かに語る。
『かつて徳川に殺されようとした私の身の上……それを理解しようとは、あなたもなされないのですね』
「だからって、みんなを巻き込んで苦しめようだなんて、見逃せるはずがないよ……!」
『……良いのです。最初から理解されようとは思っておりません』
 白い草原に、クルセイダーは左手に手にした十字槍「人間無骨」の石突を突き立てる。そこから溢れ出てきたのは、小型戦闘用の「豊臣秀吉」。一つ一つは小さく非力だが、その数や四百を僅かに越える程。秀吉たちはフェンフェンと鳴きながら、一斉にシルへと襲いかかってくる。
(う……ふぇんふぇん、かわいい……でも惑わされないっ!)
 ぶんぶんと頭を振って、シルは大空へと飛翔した。同時に、その身にゆっくりと魔力を溜め込み始める。
くるくると空中を飛び回るシルに小型戦闘用秀吉たちは翻弄される。その攻撃は躱され、高速で動くシルの残像に攻撃を仕掛けようとしてはすり抜ける。
シルは腰部に装着した精霊電磁砲から魔力の弾丸を一斉発射し、小型秀吉たちを爆撃する。一体一体の耐久値の脆い小型戦闘用秀吉たちは魔力弾に撃たれて白い草原の煤と消えていった。けれど相手は数に物を言わせ、末端が消えゆくのにも構わず群体となってシルに群がろうとしてくる。シルは精霊剣と光刃剣の二振りを両手に携えると、シールドのように回転させて小型戦闘用秀吉たちを撃ち落としていった。
シルは一度空中のいっとう高い場所で静止する。シルの背後に、白い魔法陣が現れた。
「“闇夜を照らす炎よ”“命育む水よ”“悠久を舞う風よ”“母なる大地よ”……!」
 唇が高速で呪文を紡ぎ出す。使うはシルの十八番。最も使い慣れた呪文。溜め込んでいた魔力に加えた全身全霊の力が、火水風土の四属性の力を撚り交ぜた白い魔力砲へと変換されていく。
「“我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれ”――エレメンタル・ファランクス!!」
 四百を越える光の束が一斉に放たれる。その光線の数はクルセイダーが生み出した秀吉の数とちょうど同じ。けれど秀吉たちは先に多くの数を削られ、そして今また魔力砲撃を浴びて一気に焼き削れていったが――それだけではない。
『があっ……ああ、ぐっ……あああああ……!!』
 四百近い魔力砲撃をその身に浴び。クルセイダーが全身を撃ち抜かれ、焼かれて堪らず声を上げる。
「はあ……はあっ……!」
 落ちるようにしてシルが地上へと降りてくる。流石に猟書家の一角をなす男、まだ、まだ倒し切るには足りない……けれど。シルもまた限界で。全力の魔力砲撃を放ったのだ、これ以上は空中へ翔び上がる力さえも残っていなかった。
「悔しいけどっ……!」
 クルセイダーを一度振り返り、そしてシルは戦場を離脱していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【八藤刀】
サムライエンパイアの大きな戦からやっと一年経ったというのに
新たに戦を持ち込まれるようなことはあってはなりません
御二方も、よろしくお願い致します

初撃の槍は回避を最優先
視力にて攻撃の軌道を読み、見切りと残像にて回避
僅かにでも触れてしまうようならば武器落としにて軌道をずらす
光線が来るようならばオーラ防御を使い、少しでも負傷を減らします
負傷は激痛耐性にて耐える

先制攻撃を凌いだ後、声掛け
私はその場でカウンターの早業の抜刀術『神風』の2回攻撃
見えない斬撃ならば、敵も気を取られるでしょう
その隙で御二方が攻撃を仕掛けられるはず

私達の故郷を、貴方に奪われるわけにはいかないのです


鵠石・藤子
【八藤夜】
何時までも幸せに暮らしました、
…なんてぇのは御伽草子くらいなモンだろうが
今は払える火の粉は払おうぜ
故郷の平穏の為にな!

妖剣解放で速さと衝撃波を得て

未来の記述だか何だか知らねえが、
読む間を与えねぇくらい速ければどうだ?
そして衝撃波、隣の十字架にでも当たりゃ破片なり飛んでくかもしれねぇ
仲間との連携で波状攻撃も狙える
俺の意思だけでない部分を増やせば予想もしづらくなるんじゃねぇか?
初撃は気を逸らせる位でも充分だ

視力を生かして狙い、第六感で戦う
見切りも使って避けてやるぜ

見通しが良いなら、でけぇ男達に隠れながら攻撃に移るのも悪くねぇ
3人も居りゃ切り開ける道もあるだろ?
予想だって3倍必要になるしな


百地・八刀丸
【八藤夜】

平和を満喫しておる我が故郷をむざむざとやらせはせんよ。
さりとて相手も中々の強者と見る。

先ずは奴の攻撃を凌がねばならんとのことじゃな。
ならばワシは愚直に回避を試みよう。
数多の【残像】を用い、奴の十字槍を避けてみせよう。
万一見切られた際は後ろ腰の小太刀二刀にて槍を叩き落とそうぞ。
槍そのものよりも恐るべきはその後の光線ゆえな。
切っ先を我にから反らせばあるいは。

凌いだ後は夜彦殿、藤子殿と三者三方からの攻撃と参ろうか。
我が大太刀の一閃、その身で味わうが良い!
何ァに、ワシの攻撃が避けられたとて、他の二人ともを避けることは出来まい。
どのような予測であろうと、それを超えるは絆の力と言うヤツよ。



「サムライエンパイアの大きな戦からやっと一年経ったと言うのに……」
「……ま、何時までも幸せに暮らしました、……なんてぇのは御伽草子くらいなモンだろうが」
「それでも、新たに戦を持ち込まれるようなことはあってはなりません」
「ああ、今は払える火の粉は払おうぜ。故郷の平穏の為にな!」
「うむ、平和を満喫しておる我が故郷をむざむざとやらせはせんよ」
 苦々しげに言う月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)に、鵠石・藤子(三千世界の花と鳥・f08440)と百地・八刀丸(またの名を七刃斎・f00181)が応える。
 どこまでも十字架の突き立った、真っ白な草原――その十字架が何者かを悼んで立てられているものであっても。彼らサムライエンパイアを故郷とする三人にとって、信長の打倒が成ったかの世界に再び戦乱の種が撒かれることは許せないこと。
 真白の草原に立つ男――猟書家「クルセイダー」が振り向いた。右手に書を――「ぱらいそ預言書」を広げ、左手に十字槍「人間無骨」を手にしたその姿。書から顔を上げ、猟書家の男の目が三人を映す。ややあって、男は再び手にした書に目を落とした。
「……猟書家、と言ったか。流石に中々の強者と見る」
 藤子がその身に妖刀の怨念を纏う。
「未来の記述だが何だか知らねぇがっ、読む間を与えねぇくらい速ければどうだ!?」
 衝撃波を伴った素早い一閃、しかしその刃は大きく一歩を踏み出しただけのクルセイダーに避けられる。その目は預言書を映したまま。衝撃波によって砕けて飛んでくる十字架の破片を首を反らすだけで避けながら、クルセイダーは静かな声で言った。
『……すべては、預言書の思し召し』
 ぶおん、猟書家の左手に持った槍が振り回されて風を切る音を立てる。
薙ぎ払われる槍から、夜彦と八刀丸は大きく飛び退いて回避を試みた。矢継ぎ早に突きかかられるその豪槍を、八刀丸が後腰から小太刀二刀を抜き、両の手にして叩き落さんとする。刃と切っ先がぶつかり合い、ぎりぎりと音を立てた。その槍に僅かなりとでも「当たる」訳にはいかないことを誰もが理解している。
(槍そのものよりも、恐るべきはその後の光線ゆえな……!)
 当たったものの骨を溶かす、その光線。故に槍そのものを己の身で受けるわけにはいかなかった。
 八刀丸とクルセイダーがぎりぎりと互いの刃を軋らせ合う、その横から夜彦の斬撃が飛ぶ。【抜刀術『神風』】――見えない斬撃に、一瞬対応が遅れたクルセイダーの肩口から血が飛沫いた。そして夜彦に気を取られたクルセイダーの隙を付き、八刀丸の後ろに身を潜めていた藤子の刃と衝撃波が猟書家の男を斬り裂く。
「預言書とやらも、全てが頭に入ってるわけじゃあねぇみてぇだな!だったら、読む暇を与えなけりゃあいい……!」
 ひゅんひゅんとその豪槍を取り回し、クルセイダーは再び槍で突きかかってくる。夜彦はそれを刃で受け流す。
「私達の故郷を、貴方に奪われるわけにはいかないのです!」
 再び見えない斬撃がクルセイダーに放たれる。それを躱したクルセイダーの突きが夜彦を掠める。避けきれなかった、放たれる光線を可能な限りその身に纏った気の力で弱める夜彦。それでも襲い来る骨を蝕まれる激痛を、奥歯が軋むほど噛み締めて耐える。まだだ。まだ、夜彦は戦える。
 振り回される槍を八刀丸が大太刀で叩き返す。こちらもぶうんと太刀を振り回し、槍ごと鋭く重い剣撃がクルセイダーに叩き込まれる。その重さに耐えきれなかったのか、クルセイダーが剣圧に下がる。再び八刀丸の影に身を潜めていた藤子の斬撃と衝撃波に斬られ、猟書家の男は左腕からだくだくと血を流す。滴った血が、白い草原を朱く染めた。
「行くぜ、畳み掛けるぞ……!」
 書に手を伸ばしたクルセイダー、その手は届かなかった。伸ばした手ごと誰かの剣に持っていかれる。
「どのような予測であろうと、それを超えるは絆の力と言うヤツよ!」
 八刀丸の豪快な直刀が、夜彦の見えぬ斬撃が、藤子の衝撃波を纏った剣撃が三方から叩き込まれる。八刀丸に鎖骨を叩き割られ、夜彦に胴を薙がれ、衝撃波がクルセイダーの身を刻む。そしてその男の心の臓を貫いたのは、藤子の刃だった。
 槍を手放し、どうとクルセイダーが草原に倒れこんだ。彼の身体から流れ出す赤い液体が、白をじわじわと紅に塗り替えていく。けれど男の体中の血を流しきったとしても、草原の全てを塗り潰すことは出来ないだろう。
 男の手が何かを探すように動いた。
「まだ、預言書が必要かい」
 藤子が言う。クルセイダーは頭を振った。
『いいえ。そこには「この私」の死しか記されておりませんから』
 そう言って男は、げほりと真っ赤な血を吐き出した。
『ああ、苦しい。もう一太刀をいただけませんか』
「……それが、救いになるのでしたら」
 夜彦は刀を取った。もはや目に見えぬ必要はない。
――ただ一刀。それだけで全ては終わった。男は斃れ、草原は静かだ。三人が去れば、もっと静かになるだろう。最初に背を向けたのは、藤子だった。八刀丸がそれに続く。
男の骸が白い花びらのようなものに変わって、風に流されていく。
 最後に夜彦がその場を後にするときには、クルセイダーと呼ばれた猟書家の男のいた痕跡は、もはやその草原を濡らした血と突き立てられた槍とにしか残っていなかった。
金色の装飾が施された、ただ一本の豪槍を墓標にして――無数の十字架に囲まれて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月18日


挿絵イラスト