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迷宮災厄戦㉕〜蒼氷の王

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #ブックドミネーター

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●絶対零度、氷一片
 他には音の無い世界だ。
 空気はあるが、風は無い。氷はあるが、海は無い。
 空はあるが、太陽は無い。大地はあるが、土も草も無い。
 『彼』の他におよそ生の存在しない世界で、紋章に浮かぶ『彼』が深紅の瞳を開く。

「……まもなく刻限になるか。六番目の猟兵達よ」

 少年の姿をした『彼』――『書架の王』ブックドミネーターは、さして驚く様子もなく懐中時計を手に取る。まるでそれが、あらかじめ組まれていた『予定』ですらあるかのように。
「これも見えているならば、いまひとつ伝えよう。
 ――『歴史』とは、書に刻まれるのみにあらず。
 人の魂が、大地の記憶が。過去を凍らせ、永遠に留め置くのだ。
 お前が望もうと、望まざると。『歴史』には関係が無い」
 それでも私に挑むのならば、覚悟を以て臨むがいい――そこには一人しかいないはずのブックドミネーターは、明らかに『誰か』に向けてそう告げていた。

 恐らくは、『六番目の猟兵』に。

●垣間見えた景色
 その景色を予知した出水宮・カガリは、不自然な寒気を覚えた。
 まるで、予知の視界越しに凍気にでも当てられたような。
 いや、気のせいだろうか。
「……『書架の王』、ブックドミネーター、だな。彼がいる場所への路が、開けたようだ」
 すぐに頭を振って、城門のヤドリガミは猟兵達に見えた事を伝える。
「すごく、すごく、暗くて寒い場所だ。
 敵は、ブックドミネーター1人のようだが……歴史がどう、と言っていた。過去と氷を操る……のだろうか。書に刻まれるのみでもない、と。
 書に刻まれていない……歴史……? 猟兵達個人の、記憶……とか、だろうか……?」
 元から要領を得た説明が得意では無いグリモア猟兵だが、今回は輪を掛けてはっきりとしない。
「視えなかった、のだ。足元に紋章が輝いていたのと、そこに浮いていた事くらい、しか。あとは、敢えて言うならば。こちらの知らない知識を、相当持っている……くらいだろうか」
 浮遊、あるいは飛翔能力はあるかも知れない、とは付け加えたものの。強敵に対して情報が少ない事を詫びながら、カガリは用心を呼びかけた。
「オウガ・オリジンほどではないにしろ。猟書家達の中では、最も強いとされているらしい。嘘では無いだろうと思う。カガリができるのは、彼の元へ送る事だけだが……」
 せめて、その心の壁で在ろうと彼が願うと、城門のグリモアが大型化する。
 黄金の扉の向こうは、絶対零度の世界だ。
「彼の氷に、どうか負けないように。戦いは、ここでは終わらないのだからな」


旭吉
 旭吉(あさきち)です。
 彼だけは書くと心に決めていました。
 『書架の王』ブックドミネーターとの一戦をお送りします。

●状況
 絶対零度の凍結世界。
 宇宙のような暗黒の空に氷原が広がり、障害物はほとんど無いです。
 (少しはあります)
 戦闘に必要な視界は確保されているものとします。

 ブックドミネーターに何かを問うても構いませんが、正しい答えを得られるとは限りません(特に真の目的等)
 『過去』と『氷』による凍結を自在に扱う彼を討ち果たしましょう。
 素手とかかましてくる奴に火傷させてやるくらいの心持ちで。

 今回、旭吉の戦争シナリオはこちら1本のみの予定です。
 その代わり、演出をガンガンに盛っていきたいと思います。
 あんまり派手な怪我はしたくないとか、装備に万が一にも傷を付けたくないとか、そういう方には参加をお勧めできないかもしれません(判定次第では軽傷・無傷で済む場合もあります)
 ご参加の前に、ご一考くださいませ。

 どなたかとご一緒に参加される場合、お相手のIDか【】で括ったチーム名をお願いします。特殊な呼び名などあれば書いて頂けると助かります。

●プレイング受付
 オープニングの公開直後~システム的に受付可能な限り受け付けます。
 (完結スピード重視の方にはお勧めできないと思います)
 できるだけ多く採用する予定でいますが、キャパ的事情により、問題が無いプレイングでも流してしまう事があるかもしれません。
 ご了承ください。

●プレイングボーナス
 このシナリオでのプレイングボーナスは、以下の通りです。
 『敵のユーベルコードへの対処法を編みだす』
 (敵は必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
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第1章 ボス戦 『猟書家『ブックドミネーター』』

POW   :    「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒鵺・瑞樹
○☆
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

俺自身は存在感を消し目立たない様に立ち回る。不完全でも陸奥の攻撃の瞬間まで意識外に置かせるようにする。
一方で陸奥を先んじて攻撃させ、風・俊足の陸奥に対応させたオブリビオンを召喚させる。
物理的足止め系が来ると推測が当たれば、空中を飛ぶ伽羅には意味がないし、俺にとっても遮蔽物ができるだけ。
召喚されたら陸奥は控えさせ、伽羅と俺とで攻撃を仕掛ける。
伽羅の雷撃の中をかいくぐり、マヒ攻撃を乗せたUC菊花を放つ。

敵の攻撃は第六感で感知、見切りで回避。
回避しきれないものは本体で武器受けで受け流し、カウンターを叩き込む。
それでも喰らってしまうものはオーラ防御、激痛耐性で耐える。


アネット・レインフォール
▼静
聞いた通り敵の力は脅威のようだ
だが、本気を出していないようにも思える。

まだ隠し玉があると見るべきか。

…そう言えば、かつての地で似た者と対峙した事があったな。
あれは確か――

▼動
・W
予め念動力で周囲に刀剣を展開し
早業で高速投射&旋回する事で回復対策。

先ず【竜騎兵へ至ル道】で拘束

――見覚えのある光景でも見えたか?
その姿に免じて、此方もヒトの身で挑ませて貰おう

・P
展開済み刀剣は方角を知るセンサーに。
葬剣を無数の鋼糸にし、絡ませて時間稼ぎも。

悪いが…その力は見た事があってな?

間合いを詰め【雷刃六連舞】を叩き込むが
時間凍結対策は、直接触れぬよう鋼糸が残った所を狙う。
数発は態勢崩しに利用も

アドリブ歓迎



●世界を渡る者
 転移した先の世界は、暗くて広くて、静かな世界だった。
 『生』の息遣いが全く感じられない。
 目の前に立つ少年姿の書架の王は、そんな世界に在ってあまりにも異質――
 ――否、『違和感が無さ過ぎて』異質なのか。
 『生』のない絶対零度の世界に、違和感が無い『生』の存在など。
 そしてその異質さが、戦わずしてかの王の力の次元を否応なく見せつけてくる。
(聞いた通り敵の力は脅威のようだ。だが――)
 アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は、瞬時に手持ちの刀剣を周囲に展開させ、その切っ先を少年へ向ける。
「……」
 一方の少年は、武器や魔法を展開する気配はない。開いていた紅い瞳を閉じると、ただ静かに一本の指でアネットを指した。
 それが何を意味する動作なのかはわからない。だが、少年の態度はどう見ても。
(本気を出していないようにも思える。まだ隠し玉があると見るべきか……)
 『氷の翼を持ち』『時間を凍結させる』『ブックドミネーター』。
 その特徴に、名の響きに。懐かしさのようなものを覚える。
 あれは確か――。
「小細工は無駄だ」
 微動だにせず少年が呟いた直後、アネットとは全く異なる方向の氷原が持ち上がった。蒼い氷でできた虎の彫刻のようなものは、密かに少年を狙っていた白虎の精霊『陸奥』の行く手を阻む。
「戻れ陸奥! 行くぞ伽羅!」
 それまで気配を消していた黒鵺・瑞樹(境界渡・f17491)が、蒼氷のオブリビオンの出現と共に打って出る。この世界には遮蔽物がほとんど無い。ならば、この世界の主に遮蔽物を作らせればいい――元暗殺者の刃として、それが瑞樹の至った答えだ。
 主の指示に『陸奥』は一足跳びに前線から退き、入れ替わるように水竜の『伽羅』が中空から雷撃の雨を浴びせる。蒼氷の虎はいくらか避けたが、雷撃に当たれば動きが鈍る。
「蒼氷復活か……その力は見た事があってな」
 虎の様子を見ていたアネットが、展開していた刀剣のひとつである葬剣【逢魔ガ刻】を鋼糸状に変形させると、狙いを定めて少年へと放った。
「『ブックドミネーター』の弱点も知っている。それは――復活の暇を与えず、超火力で倒しきる事だ!」
「動けなければ能力も使えない。そうだろう」
 既にアネットの鋼糸で拘束された状態に加えて、瑞樹が体の自由を奪う麻痺の連撃をユーベルコードで浴びせれば完封できる。
 敵の脅威を十二分に警戒するからこそ、その作戦を選んだのだ。
「――それで届くと思ったか、猟兵よ」
 硝子が割れるような音と共に、拘束が『砕かれる』。これまでの『攻撃を受けた』時間が凍結され、『何も無かった』事になったのだ。
 解き放たれた少年は宙へと飛び、氷の翼を広げる。そこには雷撃で蒼氷の虎への攻撃を続けていた『伽羅』が。
「伽羅! そいつから離れろ!」
 主から指示を受けるより早く、水竜は自ら危機を感じて少年から退避する。瞬間移動にも等しい超速で飛来した少年の手に捕まっていれば、無事では済まなかっただろう。
「安心するがいい。今回、『あれ』は使わないと決めている。素手で、お相手しよう」
 彼が圧倒的な力を持つのは事実だろう。それ故に、猟兵達の力を下に見てしまうのかもしれない。
「その慢心が命取りになると、『もう一度』教えてやる必要があるようだな!」
 再びアネットの鋼糸が乱れ飛ぶのを、少年は器用に飛んで躱す。その進路上に『伽羅』が雷撃を落とせば、急旋回して再び『伽羅』へと狙いが向く。
 その時、『伽羅』が急速に高度を落としていく。雷を放ちながら、まるで墜落するかのような速さで落ちて、落ちて、落ちて――。
「――!」
 少年が意識を取られたのは一瞬のはずだった。その一瞬の間に鋼糸が翼と四肢に絡まり、地上へと引き摺り下ろされ。
「――はっ!」
 『胡』と『黒鵺』を抜き放った瑞樹の瞳が輝きを増すと、その命を削りながら九つの連撃を繰り出した。
 鋼糸と瑞樹の攻撃で万全の体勢でなくなった所へ、アネットが追い討ちをかける。
「捌式・雷刃六連舞――!」
 まずは、その自由を奪う為。氷の翼を完膚なきまでに破壊した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シュネー・グラウエン
○☆
ねえAincel、今日の晩ご飯は何だろう
そんな他愛のない話をしていようか
流星群、天気、ご飯、今の体温と脈拍
言葉は辛辣だけど彼女、或いは彼との会話は飽きないからね

そうやって聞き取れない詠唱に共感することを避けていよう
もし凍結を確認したら、どのような事を考えていたか仲間に伝えよう
手がかりになるかも知れない

Ainsel、バックアップを
『Yes,Master』
こんなやり取りでも楽しいや

味方がいれば支援するように射撃を
単独なら数発打ち込んで敵の出方を窺い
ここぞと言う時にUC発動
撃っていたアサルトウェポンを猟書家へと投げつけて
もう一丁を構えて撃ち尽くす

怖くなったら合言葉
あなたは誰?
『私はあなた』


薄荷・千夜子
◯☆
なんとも読めぬ相手ではありますがかの者を他の地へ渡らせてはならぬことは分かります
ならば…全力で!!

氷が得手であるのなら…!!
結界術・オーラ防御で炎の結界を展開
そして、火炎を操ることで私に有用な相手は火炎術に耐性があるものと思わせられるように
負傷も覚悟の上
しばらくは不利な状況でしょうが火炎の術のみで立ち回り、負傷も激痛耐性で堪え動きは止めず
静かに、張り巡らせるは迷彩纏った仕掛け系
私は、貴方のように強き者ではありません
ですから、知恵を使い、手を駆使し勝利を掴み取るのです…!!
一斉に仕掛けた罠を起動してオブリビオン、ブックドミネーターを捕縛
最後に放つはこの一太刀
毒を付与した仕込み刀を突き立てる



●誰が為に
 足を踏み入れた途端、空間全体が砕けるような音がした。
 しかし世界が崩壊することはなく、そこにはただ『生』のない氷原と暗い空が広がり、中央には輝く紋章の上に無傷の少年が浮かんでいた。
 自分達の前に、既に彼へ挑んだ猟兵がいたにも拘わらず、だ。
「まさか、今の音は……時間凍結?」
(共感、って……そういう、こと)
 薄荷・千夜子(陽花・f17474)が可能性のひとつに思い至る頃、シュネー・グラウエン(雪幻葬送・f25954)は確信していた。

 シュネーは、少年の如何なる感情にも共感しないよう努めるつもりでいた。だが、実際にはシュネーが何を思う間もなくそれは行われた。
 『少年は己以外の他者の共感を必要としていない』のだと、気付いてしまった。
 この世界のように、これまでも、これからも、黒と蒼氷の中で独りで在り続ける。
 ヒトを求めない『書架の王』は、それ故に強いのだと。
「……あなたは、誰」
 どうしようもなく、怖くなった。少年の瞳はこんなにも紅いのに、その視線はこんなにも冷たい。ただ寒いだけではない絶対零度の意味を、理解してしまった。
「誰、誰……」
「シュネーさん? 大丈、」
「あなたは、誰? 応えてAincel」
 尋常でない様子のシュネーに語りかけた千夜子を振り切って、シュネーは傍らのAIへ問う。
『私はあなた』
 AIが応えてシュネーが安堵を得るまで、そう時間はかからなかったはずだ。
 時間にして恐らく数秒のこと。
 その数秒の間に、二人の前の氷原が歪に持ち上がり始めていた。
「ここは私が! 氷が得手であるのなら……!!」
 すかさずシュネーの前に千夜子が躍り出て、二人の周囲に炎を奔らせる。内にいる者を守り、外のものを焼き尽くす、炎の結界だ。
 結界が結ばれると同時、持ち上がっていた氷原は蒼氷のオブリビオンの形を為す。その形は――八つの首を持つ、未だ記憶に新しい強大なドラゴン。
「ヴァルギリ、オス……!?」
『余を……蘇らせ……使役するか……オブリビオン・フォーミュラたる、この余を!!』
「順序を誤るな。慢心故に敗れたのではないか、その娘に。雪辱を果たすがいい」
 召喚された傍から叛逆しそうな蒼氷のヴァルギリオスに、淡々と事実を突きつける少年。八つの首は、今度は千夜子を凝視する。
(あの時は……片足と片腕を、やられたのですよね……)
 恐らくあの少年は、『炎使い』である千夜子の『現在』ではなく。『ヴァルギリオスによって負傷した』千夜子の『過去』から、この敵を選んだのだ。『凍らせた過去』を操る彼の能力、蒼氷復活によって。
『猟兵諸共、消し去ってくれる……余なき世界の簒奪を目論む者……!!』
「シュネーさん! 留まっていては危険です、こちらへ!」
 千夜子が誘えば、シュネーも駆け出す。蒼氷のヴァルギリオスは生前の凶暴さをそのままに、敵味方の区別なく襲撃を始めたのだ。
 あの少年、ブックドミネーターの弱点をあげるとすれば。復活させるオブリビオン自体に制限はないものの、その対象が必ずしも従順とは限らない、という点ではないか。現に今、ブックドミネーター自身も蒼氷のヴァルギリオスによるブレスからの回避や防御に専念しているようだ。
「Aincel、バックアップを」
『Yes,Master』
 短くAIに指示を出すと、シュネーはアサルトウェポンを手に応戦を始める。それらはかつてのオブリビオン・フォーミュラにとっては、取るに足りない程の小さな攻撃で。
「どれくらいあれば、足りる?」
 時間を稼ごうというのだ。
 かつてはこのヴァルギリオスを討つために、千夜子が時を稼ぎ隙を作った。
 今は、シュネーが千夜子のために。
「30……いいえ。10秒で、やってみせます」
 その瞳に決意を込めた答えを聞くと、シュネーは短く「了解」とだけ答えた。

 書架の王だろうと。かつてのオブリビオン・フォーミュラだろうと。
 もう怖くない。
「ねえAincel、今日の晩ご飯は何だろう」
『まだ朝です』
 この手の攻撃は小さくとも。AIの彼女――彼かもしれないが――と、何でもない会話を続けているだけで。いつまでも、どこまでも戦えると思った。
「天気は? 流星群があるんだっけ」
『この世界で見られるかはわかりません』
 会話を遮るように、頭上に光が集まる。
 見た事がなくてもわかる。あれを食らえば唯では済まず、自分はこのままでは避けられない、と。
 だが、あれを引き受けられれば――少なくとも、千夜子は。
「アルジャーノンエフェクト、起動。頼んだよAincel」
 全ての能力を限界を超えて引き出したシュネーは、アサルトウェポンを投げつける。更にアサルトライフルを全弾打ち込み、蒼氷のヴァルギリオスのブレスが降り注ぐのを命がけで阻止して見せたのだ。

 そして、それが為される頃には。
「あの娘にヴァルギリオスは荷が重かろう。見捨てるのか」
「見捨てません。ですから、10秒だけ、時間を頂きました」
「……私は強い、と。忠告したはずだが」
「ええ。私は貴方のように強き者ではありません。ですから、知恵を使い、手を駆使し勝利を掴み取るのです……!!」
 宣言と共に振り抜いたのは、鉄扇の形をした『燎花炎刀』。ひとさし舞うように掲げれば、ここに完成する。
 シュネーが帝竜を相手に作ってくれた、千夜子のための10秒。書架の王を捕らえる罠が。
「逃がす時間は与えません……全力で、止めます!」
 鉄扇から炎の破魔刀を引き抜くと、彼が罠から脱出する前に胸に突き立てた。
 その刃に仕込んだ毒が、彼に膝を付かせるまで。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イージー・ブロークンハート
○☆
こんちわ、書架の王。
目的がアックス&ウィザーズなんだってな。
奇遇だな。オレもなんだ。
あそこには実家があってさ。随分帰ってないし帰る予定もないんだけど。
だからあんたの邪魔をする。せっかく平和になったのに、ひっくり返すマネされちゃ困るんだ。
さあ、命をたやすく擲とう。
素手でお相手しようなんて――世界ひとつ舞台の戦争してんのに、そんなつれないこと言うなよ。
硝子剣で自分の腹を貫き血を与え半分に叩き折る。【覚悟】でもって。
向こうが飛ぶんなら硝子片で宙を【範囲攻撃】だ。
オレはあんたみたいに優れた能力なんかないからさ、泥臭くいくぜ。
攻撃してくるタイミングを【見切り】、残った剣で【捨て身の一撃】。
悪いな。


春乃・結希
○☆
※『with』の破損のみNG。他はいくらボロボロになっても構いません

回避とか防御とか、出来る方法が思いつかないし、しようとも思わない
どんな相手でも絶対に退かない【覚悟】
正面から受け止める【武器受け】
負傷はブレイズキャリバーの焔で補完【激痛耐性】

あなたが素手で戦ってくれて、ほんとに良かった
私、難しい事は良く分からなくて
でも接近戦なら、絶対に負けません

UC発動
あなたの力が『知識』によるものであれば
私は『想い』の力でそれを超えてみせる
幾重にも重ねられた自己暗示
何よりも信じ、誰よりも愛する『with』が側にいる限り
私は最強だから【勇気】

猟兵の予知の事は知ってるんですね
その力は、欲しくないんですか?



●旋風と結晶
 イージー・ブロークンハート(硝子剣士・f24563)が春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)と共に絶対零度の世界へ来た時、書架の王は胸を押さえて氷原に片膝を付いていた。背に負った氷の翼は外敵から自身を守るように覆っており、その表情は判然としない。
「こんちわ。お疲れか? 書架の王」
 まるで親しい友人への挨拶のような気軽さでイージーが声をかけると、書架の王は翼の隙間から紅い瞳を覗かせた。
「……手負いの私を前に、挨拶とは。余裕と自信の表れか、猟兵」
「決意表明ってやつさ。戦いが始まったらそれどころじゃないだろ?」
 それからも、書架の王が仕掛けてこないのを良い事にイージーは続けた。
「目的がアックス&ウィザーズなんだってな。奇遇だな、オレもなんだ。あそこには実家があってさ。随分帰ってないし帰る予定もないんだけど」
 そこまで言うと、イージーは硝子剣を鞘から抜き、その切っ先を書架の王へ向けた。
「だからあんたの邪魔をする。せっかく平和になったのに、ひっくり返すマネされちゃ困るんだ」
「……帝竜を倒した程度で、かの世界の全てのヒトが安寧を得たと思っているのなら。些か思い上がりが過ぎるというものだ、猟兵よ」
「何?」
 硝子の切っ先を向けられたまま、氷の翼を開いて書架の王が立つ。その足元には、胸の傷から滴ったと思しき血溜まりがまだ生々しい。
「ヒトが住まう地上には、以前と変わらずオブリビオンが跋扈している。『それ』には、未だ猟兵の手が及んでいないはずだが。そうだろう、未来見の力を持つ者」
「そう言えば、未来見の臣民……ハビタントを取り戻しに行く、って言ってましたよね」
 『未来見』という単語を聞いた結希が、ひとつだけ気になっていた事を書架の王に尋ねた。
「猟兵の予知の事は知ってるんですよね、その力は、欲しくないんですか?」
「……私のものは、いずれ取り戻す。それが今でないというだけだ」
 それ以上話すことはないとでも言いたげに、少年の肉体に氷の結晶が吹雪いて纏われていく。
「あの世界がまだ平和じゃないって? 教えてくれてありがとよ。ますますあんたを行かせる訳にはいかなくなった」
「あなたが素手で戦ってくれて、ほんとに良かったと思います。私、難しい事は良く分からなくて。でも接近戦なら、絶対に負けません」
「世界ひとつ舞台の戦争してんのに、素手でいいなんてつれないと思うけどな。オレは?」
 二人の願望を他所に、書架の王がいよいよ仕掛けてくる。手負いには有り得ない機動力で一瞬にして距離を詰めると、手刀のように薙ぎ払って二人纏めて弾き飛ばしたのだ。小柄な少年の力とは思えない力に、改めて『書架の王』の実力を思い知る事となった。
「……素手で十分だろう」
「そうですね。他の手段なら、勝ち目が無かったかも知れない」
 結希が縋るように柄を握るのは、相棒であり拠り所である大剣『with』。今の一撃も『with』で受けていなければ、骨や内臓ごとやられていたかもしれない。
「あなたの力が『知識』によるものであれば。私は『想い』の力でそれを超えてみせる。私は『with』を信じてる。私は『with』を愛してる……」
 想いの力は焔となって痛みを忘れさせ、風となって結希を覆う。
 焔と吹雪の旋風がぶつかり合うと、氷原に亀裂が入ってゆく。
「『with』がいる限り――私は、誰にも負けない!!」
 大剣を振り抜けば、まさに嵐。直接刃に触れずとも、生じる鎌鼬が書架の王の肉体へ迫るのを、時間凍結の氷結晶が防いで大幅にダメージを減らしているため決定打にならない。
「氷結晶の吹雪じゃないけど。これも結構……綺麗だろ?」
 その時、書架の王の頭上に血で染まった硝子片が広く散らばった。イージーが己の腹を刺して砕き割った硝子剣の欠片――ユーベルコードだ。
「そっちは胸をやられて。こっちは腹を貫いた。これでフェアってもんだろ……オレもあんたみたいに優れた能力なんかないからさ、泥臭くいくぜ」
「……っ」
 硝子片を避けて飛ぼうとすれば、結希の剣戟に叩き落とされる。結希に集中すれば、ユーベルコードの硝子片を浴びる事になる。両方に耐えるには、あの氷結晶がもたないだろう。
 素手に拘らなければ、この状況であろうと打開していたかもしれないが――イージーと結希は、逃さず全力の攻撃を浴びせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆行動
辿り着きましたよ、ブックドミネーター
貴方の代わりに私達が天上界に向かいます!

念動力を以て私も空を飛び
積み重ねた戦闘経験と五感を研ぎ澄まして攻撃を捌き
重要な臓器はその位置をずらした上で即死だけは避けましょう
そして飛び散った体液を使い反撃開始です

時間凍結氷結晶で全身を覆ってるのに自身は格闘戦を挑めると言うことは
任意に凍結を解除しているのでしょう
それならば既に揮発し、更には念動力により空間に充満した
不可知の猛毒を吸わずにいられますか?

以上を持って【黒竜の邪智】の証明とします
きっと竜の残骸に埋もれるのは貴方に相応しい最後なのかもしれませんね

※他猟兵との連携、アドリブ歓迎


卜二一・クロノ
 神のパーラーメイド×精霊術士、22歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、敵には「神(我、汝、~である、だ、~であろう、~であるか?)」です。

時間の流れを停滞させたり逆転させたりといった技を使う相手には容赦しません。
光陰の矢は、先制攻撃対応のユーベルコードです。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●邪神と竜王
「辿り着きましたよ、ブックドミネーター」
「時の流れを乱すその所業。我は断じて赦さぬ」
 これまで竜と名のつくものを悉く屠ってきた黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)と、時空を守護する神である卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)が彼の元へ辿り着いたのは、必然であったかも知れない。
 ヒトの姿をしているこの『書架の王』が真に竜であるかは、僅かばかり疑念を挟む余地が残ってはいるが。背の氷の翼は、疑いようも無く氷竜のそれであろう。
「時間とは、過去から未来へのみ流れるもの。停滞や、ましてや遡行しての改竄など。生命への冒涜と知れ」
「……神が、生命の冒涜を騙るとは」
 厳しく言及する女神へ向けられる視線が変化したのは、ほんの一瞬。そこに込められた感情が何であったかをトニーが理解する前に、氷結晶の吹雪が世界全体を覆った。
 語るべきものは無い――視界を覆いそうな吹雪は、そのような拒絶にも受け取れた。
「トニーさん。私のタイミングに合わせて貰う事は可能ですか」
「ええ、できる事なら協力するわよ」
 味方に向けて口調を和らげたトニーに、ミコは空を見上げる。
「確かめたい事があります。チャンスは一度だけです。いいですね」

 集中して念動力で浮かび上がり、吹雪の中を飛ぶ。
 例え吹雪であろうと、あの氷の翼を見失うはずは無い。
 いくつもの戦場を潜り抜けてきたミコの経験と五感が、超速で接近する書架の王を捉えた。
 間近に肉迫したかの王は、躊躇う事なくその拳をミコの腹部へ叩き込み――その肉を『文字通り』抉り取った。
「ぐ――、っ!」
「確かに内臓に当てたはずだが……ヒトの形をしているだけか、お前は」
「あなたも、似たようなもの、でしょう」
 抉られた傷から、口の端から、黒い血が零れる。それは、彼女が本来ブラックタールであることの証。

 ――だけではない。

「証明しましょう、ブックドミネーター」
 逃がさないように、腹を抉る腕を捕らえて更に食い込ませる。
「時間凍結氷結晶で全身を覆ってるのに、自身は格闘戦を挑めるということは。
 攻撃の際、任意に凍結を解除しているのでしょう。
 それならば――」
 ニヤリ。
 黒い血を零し続けるミコの口が弧を描く。
「既に揮発し、更には念動力により空間に充満した不可知の猛毒を吸わずにいられますか?」
 彼女の黒い血は、『黒竜の毒血』。かつて彼女が斃した漆黒の九頭大蛇の毒血であり、屠竜の魔女の捨て身に近い切り札でもある。
 竜の毒血は、ただの毒ではない。同じく竜の流れを汲むであろう書架の王にどこまで効果があるかは定かで無いが、ミコの腹から腕を抜こうとしている辺り無毒というわけでは無いのだろう。
「トニーさん!」
「はい! これは――神罰である!」
 地上のトニーから、光の矢が過たず放たれる。輝く軌跡は真っ直ぐ書架の王へと向かい、その肉体を貫こうとした。
「神に屈する程度で……私が天上界を目指すと思うか」
 神罰の矢が、敵のユーベルコードを自ら叛逆させるものなら。
 時間凍結の氷結晶は、その叛逆をも凍結させる。
 さながら竜の鱗の如く、氷結晶は書架の王の絶対の守りとなっていたのだ。
「でしょうね。ですが、私の証明は為されました」
 まだ、ミコのユーベルコードが発動していない。毒血による実証が為された事により生じるのは、これまで彼女に屠られてきた数多の竜の骸とその残骸。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい、第伍の竜よ!」
 竜の骸は時間凍結の氷結晶を封じ、彼の氷の翼にも喰らいつく。翼を維持できなくなれば、彼は地へ落ちるしかない。
 死してなお飢えた竜の骸達の暴食は、存分に彼を苦しめる事だろう。
「多くの竜を従え君臨した竜王。きっと竜の残骸に埋もれるのは、貴方に相応しい最後なのかもしれませんね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

照宮・梨花
○★
大変! 何かゴミ(オブリビオン)が出てきたのだわ!
汚いゴミは超吸収屑取《大尊》で吸い寄せて、強力滅菌銃《カビ殺し》の除菌弾で撃退しましょう
向こうが次々とゴミをバラ撒くなら、こっちも片っ端から片付けるのだわ
こう見えても弟や妹がたくさんいるから散らかされるのには慣れてるの

でも汚れは元から絶たなきゃダメよね
ブックドミネーターさん、どうして貴方はそんなに散らかすの?
【夢の洗濯機】を唱えてエプロンから洗濯乾燥機取り出すわ
ゴミを撒き散らすのは貴方自身が汚れているから
だったら洗濯機の中に閉じ込めて、時間操作されないうちに綺麗になるまで丸洗いするのだわ

万が一氷が飛んできたら折鏡の大盾で防ぐわね



●大掃除
 場所が家であろうが、戦場であろうが。
 相手が弟妹であろうが、書架の王であろうが。
 照宮・梨花(楽園のハウスメイド・f22629)手にある物は変わらず、やるべき事も変わらない。
 そこに汚物<ゴミ>があるのなら――清掃あるのみ!

「ここは……塵ひとつない一面の氷なのだわ。お掃除の必要があるとしたら、貴方ね!」
 先の猟兵の攻撃で、全身に深手を負っていた書架の王を指差す。
「そんなに汚れてしまって、綺麗にしないといけないのだわ。せっかく綺麗なここの氷が汚れてしまうのだわ!」
 その氷を操作しているのは目の前の少年なのだが、さておき。
「……」
 傷付いたローブの隙間から梨花を見つめる紅い視線は険しい。それを見て一層清掃の決意を固めた梨花が数歩進んだ瞬間、彼女の足元の氷原が一斉に持ち上がった。
 持ち上がった氷は見上げるほどの高さになり、八つの首を持つ巨竜へと形を変える。
 記憶に新しいその姿は、帝竜ヴァルギリオス。梨花の大事な掃除道具を破壊した、オブリビオン・フォーミュラだ。
『一度ならず二度までも……貴様から先に滅してくれようか!』
 しかし、蒼氷のヴァルギリオスは何故か梨花よりも少年の方へ怒りが増しているようで。梨花の前にも一度召喚されたような口ぶりだ。
「フォーミュラとして君臨していれば、そのような事もあるのだろう。私を滅すれば、お前も滅するのみだが」
『貴様ごときに幾度も使役される屈辱に比べれば! 道連れに消える方がましだ!!』
 どうみても仲間割れである。少年の険しい視線はこれを予想してのものだったのだろうか。放っておけば勝手に潰し合ってくれそうだが、それ以前に梨花には許せない事があった。
「まあ、大変! ゴミが増えてしまったのだわ。お掃除のコツは散らかさない事、こまめに片付ける事……まずは吸い込まなくっちゃ!」
 以前に戦った時も、ヴァルギリオスのブレスに対して掃除道具の《大尊》で吸い込んだ。その結果として《大尊》は壊れたが、その後しっかり修理できた。
 仲間割れに忙しい今なら、ブレスでなく本体の方を吸い込めるかもしれない。
「ゴミは片っ端からお片付けよ――!」
 《大尊》起動。強烈な吸引が周囲の空気ごと蒼氷のヴァルギリオスを引き寄せる。
『ふ、ざけるな……ッ 猟兵ァァァ!』
「しっかり除菌もするのだわ。《カビ殺し》!」
 ブレスの光が収束する前に、強力滅菌銃《カビ殺し》の銃口を向けて乱射する。梨花もあの頃の梨花ではない。そう何度も大事な道具を壊させはしなかった。
「ねえ、ブックドミネーターさん。貴方はどうして散らかすの? 散らかしてしまうのは、やっぱり貴方自身が汚れているからだと思うのだわ」
「……質問の意味を理解しかねる。よって、回答はできない」
「いいえ。答えられないのは、汚れていると自覚しているからなのだわ。私が、綺麗になるまで丸洗いしてあげる。貴方が綺麗に生まれ変わるまで!」
 梨花のエプロンのポケットから取り出された小さな箱は、一瞬にして巨大化して凶悪的ですらあるその口を開き、少年を飲み込む。取り込んだ対象を徹底的に『洗浄』『乾燥』する夢の洗濯機だ。
「不潔なものは全て洗わないといけないのだわ!」
 スイッチをポン。あとは綺麗な仕上がりを待つだけだ。
 ふんわりと出来上がれば、こんな暗くて寒い空間ともさよならできるに違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

吉備・狐珀
猟兵個人の記憶…
この方を見ていると間違いではないように思えますね
(全てを見られている気がしますー…)

UC【協心戮力】使用
ウカの炎と兄様の炎で作り出すは地獄の業火
書物諸共燃やし尽くす

自身を治癒しようしたら月代、衝撃波や鎧砕くその爪で阻害を
反撃は激痛耐性のオーラを纏った結界で防ぎつつ、何度治癒されようとも攻撃の手も火炎の力も弱めません

これで倒せるなら御の字ですが
本当の目的は詠唱させ口をあけさせること
この火炎の中で口をあければどうなるか
さらに火炎や月代の攻撃に紛れて毒が紛れ込んでいたら?

火傷と毒で詠唱を阻止したら全員で一気に畳み掛けます

私は私の歴史を刻むために歩き続ける
ここで止まりはしません!


月水・輝命
○✩
SPD
全力で行きます。
本体の五鈴鏡を使用しますの。

先制攻撃は、「フェイント」で「残像」を置きつつ「見切り」、防ぎきれないなら「オーラ防御」で防ぎましょう。
……流石に、堪えます、かしら。

いいえ……まだ、ここから。
UC発動。
わたくし達にとって、倒すべき相手ではありますが……お話くらいはできるでしょう。

過去や氷を自在に操るあなたに……「あなたにとって、時とは何か」を。
召喚するのは幾つもの「破魔、浄化」を乗せた七色の弾。
攻撃内容は、それで「範囲攻撃」しつつ、鏡面世界を攻撃したものへ追加攻撃、ですわ。
わたくしは、時とは有限で、でも、積み重なるものだと思うのです。
あなたは、どうなのでしょうか?


マルコ・トリガー
○☆

ボクはね、ヤドリガミになる前の記憶が殆ど無いんだ
だから、知識で君には勝てない
でも、勝てないと分かっていても、君の前に立つしか無いんだ
君は人に仇なす者なんでしょ
ボクは人が作った器物から生まれたヤドリガミだからさ

視界は良好だが隠れられない
なら、先制攻撃は目視での【見切り】と自分の【第六感】を信じて回避に専念だ
体勢を立て直すために【乱れ撃ち】で弾をばら撒きながら一定の距離を取り、追撃に備える
さらに【飛鷹走狗】を撃ちながら、わざと【おびき寄せ】てギリギリで【スライディング】でかわす
多少の怪我に臆する事は無い

ボクって打たれ弱く見える?
素手で殴ってみればわかるかもね?
ボクなりの【覚悟】を見せてあげるよ



●歴史の証明者
 三人のヤドリガミ達が来た時には、書架の王と称されていたはずの少年は明らかに弱っていた。
 背の氷の翼は無残に引き裂かれた片翼となり、残った片翼も飛行機能を残してはいない。足元で光る魔法の紋章は朧気で、今にも消えそうだ。
「弱っているとは言え、書架の王。油断は禁物ですわ」
「むしろ、弱っているからこそ次の行動は明らかです。……回復だけは、させません。回復しようと、何度でも」
 月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)と吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)が、書架の王の回復行動に備える。
 しかし、書架の王に動きはない。こちらから攻めに回れそうですらある。それほど弱っているというのだろうか。
「書架の王。君は人に仇なす者なんでしょ」
 マルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)が尋ねる。彼ら猟書家が猟兵と敵対している事が、何よりの証だろう。
「ボクはね、ヤドリガミになる前の記憶が殆ど無いんだ。
 だから、知識で君には勝てない。本の王である君には尚更だ」
「……」
「でも、勝てないと分かっていても、君の前に立つしか無いんだ。
 ボクは人が作った器物から生まれたヤドリガミだからさ」
 それは、多くのヤドリガミの根幹とも言える概念。
 人の想いが宿った器物から生まれたヤドリガミが、人のために立ち上がる。
 それがヤドリガミとして今を生きる、彼らの意義――!
「月代! 詠唱させてはいけません!」
 狐珀が命じると、月白の仔竜が衝撃波を飛ばす。
 体勢を崩せば更に攻め込み、鋭い爪でフードごと引き裂こうとした。

 ――空間に、氷が砕ける音が響き渡る。

 ばらばらと空間の欠片が崩れ落ち消え失せれば、先程までの消耗した少年の姿はどこにも無く。完全に無傷の状態として全快した書架の王・ブックドミネーターの姿がそこにあった。
「私の零時間詠唱は、時間を凍結させて行うものだ。時を止めても動けるものでない限り、阻害する術はない」
「そんな……!」
「ヤドリガミの意義、聞かせて貰った。お前達はそのように生まれ、そのように在る生物なのだろう。
 私がこのように生まれ、このように在るように」
 書架の王の視線が、マルコへと向けられる。
(――来る!)
 思った瞬間には、始まっていた。
 飛行能力を取り戻した氷の翼が、つららのような結晶を散らしたかと思うと、脇腹に激痛が走る。冷たすぎて、逆に焼かれるような感触だ。
「躱したか」
「ボクって打たれ弱く見える? これでも目だけは自信あるんだよ」
 氷の掌底。ぎりぎりで見切って躱していなければ、腹の臓腑を骨ごと抉っていただろう。
「私の攻撃は終わっていませんよ!」
 マルコと書架の王の間に、炎の旋風が生じる。狐珀のユーベルコードだ。
 勢いを増して地獄の業火と化した旋風は、書架の王を焼き尽くさんと迫る。
「帝竜より……こちらの方が御しやすいか」
 書架の王と目が合ったのは、狐珀――ではなく、隣りにいた輝命。急に視線を合わせられた輝命は驚きながらも、攻撃に備える。

 氷原の氷より生じたるは、青。
 蒼い氷の、青の王。
 輝命の大事な存在を苛んだ、青い結晶の王だ。

「あなたは……あの時の……!」
「書にはない、猟兵個人の記憶……全て、見られているというのでしょうか……」
 輝命と狐珀が驚く間も待ってくれない。意思なき『青の王』は、輝命へ向けて呪詛を放ってくる。触れれば結晶化する恐ろしいものだ。
 今、輝命の手にある五鈴鏡は複製ではない。ひび割れた本体だ。少しでも本体に何かあれば、それだけで『存在』が砕け散ってしまう。
「二人とも、今そっちに――」
「手負いの獣の如き、気の強さ。だが」
 マルコが加勢に加わろうとするが、目の前にいる書架の王から逃れられない。乱れ撃ちで距離を取ろうとしても、竜の鱗のごとく体を覆う氷結晶が全てを弾き落としていく。
「それで、弾切れか。古銃のヤドリガミ」
「……なめてるの?」
 書架の王に見下ろされながら、マルコは全く引かなかった。
「そこまで言うなら、見せてあげるよ。ボクなりの覚悟――ボクの射程に入る意味を」
 見下ろす顔面に熱線銃を構え、ユーベルコードを展開する。鷹が飛び、犬が走るが如く。獲物を逃がさない追尾の熱線だ。
「……!」
 狙われた顔面を防御すべく、氷の翼で顔を覆い書架の王が距離を取る。
 熱線は氷の翼を容赦なく焼いていく。焼かれたならば、回復するはずだ。
(零時間詠唱は、時間を凍結させて行うと言っていました……それでも、詠唱するなら口は開くはず!)
 その瞬間を、狐珀は見逃すまいと思っていた。
「輝命さん、大丈夫ですか」
 蒼氷の像として現れた『青の王』が繰り出す結晶化の呪詛を、残像と五鈴鏡のオーラで凌ぎ続けていた輝命。未だ決定的な反撃には至れていない彼女に狐珀が問うと、輝命は微笑んだ。
「ええ。ですが……倒さなければジリ貧ですわね……」
「仕掛けましょう、書架の王に!」
 傍らに兄の姿のからくり人形を出現させれば、輝命は力強く頷いた。

 時間凍結。時を止めても動けるものでない限り、阻害する術はないと言った。
 ならば、凍結が始まる前に。
「協心戮力――!」
 氷の翼が開いて、唇が僅かに動いた刹那。狐珀の業火が躍る。
 その視界を炎で埋め尽くされた書架の王が次に見たのは、炎に満ちた鏡合わせの世界だった。
『書架の王、ブックドミネーター。わたくし達にとって、倒すべき相手ではありますが……お話くらいはできるでしょう』
「望む答えは何だ、鏡のヤドリガミよ」
『……』
 確かに、このユーベルコードは『術者が望む答えを対象が言うまで続く攻撃』ではあるが。それは、輝命が真に望む会話ではない。
『……わかりません。あなたの答えは、わたくしにはわからない事ですから』
 炎で満ちた部屋に、七色の弾が現れる。
『過去や氷を自在に操るあなたにとって、時とは何ですか』
「知って何とする」
『わたくしは、時とは有限で、でも、積み重なるものだと思うのです。あなたは、どうなのでしょうか?』
 尋ねる問いに、炎が燃える音だけが返る。炎によって鏡が割れないのは、ここが輝命の鏡面世界であること、炎が狐珀の操るものであることが大きいだろう。
 そして、無言の返答には七色の弾が一斉に攻め立てる。しかし、攻撃された所で彼には時間凍結の――
「――!」
 詠唱しようとして、口を覆う。
 炎に含まれた毒だ。零時間詠唱であっても、口は開く。――その時に。
「……同じ手にかかるとは。書架の王も落ちたか」
『ブックドミネーター……?』
「時とは積み重なるもの。ヒトはそれを歴史という。長く生きるヤドリガミならば、知っていることだろう」
 ふいに発せられた答えに、輝命は訝しみながらも頷く。
『……ええ。ですが、積み重なるものであるからこそ。過去を操作したり、何度も止めたりするのはどうなのかと、わたくしは思うのです』
「そのように問われれば、私はこう答えるしかあるまい」

 ――古銃が銃を撃ち、狐像が呪詛を繰り、鏡が鏡像を用いるように。
 ――書架の王は、凍てついた歴史を用いるのだと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年08月21日


挿絵イラスト