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迷宮災厄戦㉕〜書架の王は絶対零度の地に降臨す

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #ブックドミネーター

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●アリスラビリンス・絶対零度の凍結世界
 ――全てが凍り付き、時間と動きを止める世界にて。

 そろそろ、刻限か。
 ……見ているな、「六番目の猟兵」達よ。
 いずれ、私の未来見の臣民(ハビタント)も取り戻しに行くが、今はその時ではない。
 私には他に、命を賭ける場所があるのだ。

 群竜大陸での戦いぶりは、実に見事だった。
 だが、「アックス&ウィザーズ」にはまだ、知られざる大陸がある。
 其の大陸の名は「天上界」。
 ヴァルギリオスに封印されし、美しき天の牢獄に、私の求める答がある。その為ならば、私自らが出ることも吝かではない。

 私に「侵略蔵書」は無い。書を司る者である私は、全ての書の力を扱える。
 ゆめゆめ油断せぬ事だ。私は強く、オウガ・オリジンは更に強い。何を守り誰と戦うか、常に考え続けるが良い。

 戦場で会おう、六番目の猟兵達よ。

 ――書を統べる王は、全てが凍り付いた城の謁見の間にてひとり佇む。
 ――群竜大陸の覇者、「六番目の猟兵達」との邂逅を期待するかのように。

●書架の王「ブックドミネーター」を撃破せよ!
「……けっ、まーた透かした野郎が現れやがって」
 グリモア猟兵森宮・陽太の表情は、軽口とは裏腹に、真剣そのもの。
 軽口を聞きとがめたか、あるいは単純に興味を持ったか。
 集まってきた猟兵を前に、陽太は軽口を封印して真面目に話し始める。
「聞いての通りだ、自分を全ての書を司る者と称している「ブックドミネーター」がとうとうその姿を見せやがった。至急向かってほしいんだが、頼めるか?」
 真剣な声音とともに頭を下げる陽太に、猟兵達は其々の想いを胸に頷いた。

「皆に向かってもらうのは、全部が凍り付いている城の謁見の間だ」
 まるで時間ごと凍り付いているような城の、広い広い謁見の間。
 そこに書架の王「ブックドミネーター」は、ひとり佇んで待っている。
「一見普通の少年に見えるが……正直隙がねえ相手だ」
 時間凍結氷結晶を身に纏って、己が知識と高速飛翔能力を武器とし。
 或いは蒼氷を用いて、猟兵に有効と思われるオウガやオブリビオンを召喚し。
 書架の王以外、聞き取ることすら叶わぬ程呪句の詠唱を以て己をも治療する。
 ――全ての書の知識と時間凍結を駆使する、強敵だ。
「すべての書を統べるというだけあってよ、俺らより遥かに強い存在だ。俺らに先んじて攻撃も仕掛けてくるんだが、無警戒だとそのまま叩き出されるだけだぜ」
 逆に言えば、先んじる攻撃に己が技量と知略、勇気をもって対応すれば、光明は見えてくるという事だ。
「大変だとは思うが、みんななら何とかしてくれるだろ? だから頼むぜ」
 緊張感を和らげる為か、あえて軽口を叩きながら、陽太は猟兵達に再度頭を下げた。

「撃破するかどうかは賛否あるだろうがよ、俺は今回、接敵すること自体に意味がある気がしているぜ」
 陽太の言に思うところがある猟兵が、同意するかのように頷いている。
 何しろ、書架の王は「予兆」で気になる情報を零しているのだ。

 ――六番目の猟兵。
 ――未来見の臣民(ハビタント)。
 ――美しき天の牢獄「天上界」。

 これらは全て、猟兵達が決して無視できない言の葉の欠片であることは、疑いない。
「まだまだアックス&ウィザーズには隠された何かがあるってこった。今回の邂逅がその手掛かりをつかむ一端になるかもしれねえ。だから頼むぜ」
 改めて軽口交じりで願いつつ、陽太は愛用の二槍で濃紺と淡紅の転送ゲートを描き、猟兵たちを送り出した。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 書架の王「ブックドミネーター」への道が開きました。
 猟兵の皆様、美しき天の牢獄への手がかりを求める書架の王の撃破をお願い致します。

 有力敵につき、やや厳しく判定致します。
 それ相応の準備を整えた上での挑戦をお待ちしております。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「迷宮災厄戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

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 状況は全てオープニングの通り。
 今回は冒頭の追記はありません。

 なお、戦場は絶対零度の凍結世界に佇む城の謁見の間ですが、大きな立ち回りをしても十分な広さと高さがございますので、思う侭に戦って下さいませ。

●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する】とプレイングボーナスが付与されます。
「ブックドミネーター」は必ず先制攻撃してきますので、如何に防御し、反撃につなげるかが勝敗を分けるでしょう。

 なお、書架の王「ブックドミネーター」は他の猟書家を統べる存在ですが、今回の戦争ルール上「猟書家」と同等の扱いを致しております。
 そのため、フラグメント名が『猟書家「ブックドミネーター」』となっておりますが、これは誤りではございませんので、誤解なきようお願い申し上げます。

●プレイング受付期間
 オープニング公開直後から受付開始。
 締め切りはマスターページ及びTwitterにて告知致します。

●【重要】プレイングの採用について
 本シナリオに送っていただいたプレイングは、可能な限り多く採用していきたいと考えております。
 しかし、やむを得ず採用数を絞ることになった場合は、判定が成功以上になった方の中から【迷宮災厄戦シナリオの参加数が少ない方】を優先して採用させていただきます。
 一人でも多く有力敵戦の経験を積んで頂きたいための措置ですので、ご了承の上、プレイングをお送りいただけると幸いです。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『ブックドミネーター』』

POW   :    「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

卜二一・クロノ
 神のパーラーメイド×精霊術士、22歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、敵には「神(我、汝、~である、だ、~であろう、~であるか?)」です。

時間の流れを停滞させたり逆転させたりといった技を使う相手には容赦しません。
光陰の矢は、先制攻撃対応のユーベルコードです。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●時の守り手の敵は、時を停滞せし者
 ――時と空間の全てが凍り付いた、謁見の間にて。
 駆け出しの猟兵たる卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)は、静かに佇む猟書家「ブックドミネーター」を前に憤怒を滾らせていた。
「時の守り手として、汝を討つ」
 時空の守護神たるトニーは、時を凍らせ操る能力を持つ相手には容赦しない。
 それはたとえ、はるか格上のオブリビオン――書架の王であっても同じだ。
「時の守り手と称するなら、それ相応の力を見せるが良い」
 ブックドミネーターは全身を触れたものの時間すら凍結させるような氷の結晶で覆い、己が持つすべての書の知識を拳にこめ、マッハを超える飛翔能力を以て、一気にトニーとの間を詰め、拳を突き出す。
 神であってもまだ駆け出しとも言えるトニーが、その拳の一撃を躱すことは、見切る目も察する感も持たぬ以上は叶わない。
 ――ドゴッ!
 重く鈍い音と共にトニーの腹に拳が吸い込まれ、身体をくの字に折りながら頽れる。
 だが、それこそがトニーの狙い。
 地に頽れながらも、トニーが手にしたのは淡く輝く光陰の矢。
 それは極めて細く短く、儚い印象を与えるけど。
「その程度の矢で私を……ん?」
 訝しむブックドミネーターの全身から突然時間凍結大結晶が薄れ、トニーが手にする矢が逆に凍り付いたかのように輝き始めた。

 ――これは神罰ね。

 トニーの何気ない一言と共に放たれた光陰の矢は、トニーとの間を詰めたような飛翔能力と同等の速度を以て、狙い違わずブックドミネーターの急所を射抜く。
 それはブックドミネーターの残る時間凍結大結晶と飛翔能力の全てを奪い、逆にブックドミネーターを傷つける力と化し、急所を深く抉っていた。
「ぐっ……時を守りし者と称するだけのことはあるか」
 ブックドミネーターはトニーを蹴り飛ばしながら矢を抜き、最小限の痛手に抑える。
 そのままトニーは、グリモア猟兵が緊急展開したゲートに吸い込まれ、姿を消した。

 ――彼女がもっと己が力を高め、鍛えれば、時を凍らせる私の脅威となり得るか。

 トニーを見送ったブックドミネーターの声には、トニーへの最大の賛辞も含まれていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

天星・零
【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡】をし、戦況、地形、弱点死角を把握し、敵の行動を予測し柔軟に対応

※防御は【オーラ防御】で霊力の壁を作って威力軽減、防御

先制は上記技能を駆使しいつ使われてもいい様に把握しておき、10の死の感電死、毒死、凍死の骸などで状態異常を狙う
万が一の為【第六感】も働かせる

遠距離は十の死とグレイヴ・ロウで戦況により対応
近接はØ

『さて、僕も一つのお話をしましょう。これはあくまでも噂の綴。どうか、楽しんでください』

指定UCを発動し強化、回復効果のプラス効果を反転する霧を戦場全体に
零時間を使ってもダメージ、POWの効果が残っていれば弱体効果にもなる



●綴りし噂は、全ての書を統べる者をも呑み込んで
 先に対峙した猟兵から受けた急所への傷を、時を凍らせ詠唱時間をゼロにすることで癒す、猟書家「ブックドミネーター」。
 傷がほぼ癒えかけた時、謁見の間に新たに足を踏み入れる気配を察し、顔を上げる。
 ブックドミネーターが新たに目にした猟兵の名は、天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)。
 その金と葡萄酒色の瞳は、温和な光の奥底に冷徹な何かを湛えていた。
「……見た目通りの人ではないな」
 零の纏いし気配に何かを感じとったか。
 ブックドミネーターは咄嗟に生成した氷の結晶で零を――零の背から飛び出そうとした何かを撃ち抜く。
 ――それは、感電や毒、圧潰などによる十の死を準えた、骸。
 その見た目に軽く顔をしかめるブックドミネーターの周囲に床を突き破って十字架が現れ、彼の動きを妨げる。
 慌てず十字架を氷結晶で破壊するが、その間に新たに呼び出され接近した骸がブックドミネーターの腕を軽く傷つけるとともに電気ショックを与え、傷口を凍らせていた。

「さて、僕も一つのお話をしましょう」
 骸に攻撃を任せていた零が、突然口を開く。
「これはあくまでも噂の綴。どうか、楽しんでください」
 温和な空気を纏ったまま、零が語り出すのは、とある街の噂話。

「その街は、とある夜に濃い霧に包まれて皆死んでしまったんだって……」

 穏やかに語る零の言の葉を再現するかのように、謁見の間全体に霧が発生し、徐々にその濃さを増すと、ブックドミネーターの視界から零の姿が覆い隠され、完全に視認できなくなる。
 お互いが霧に紛れている間に、ブックドミネーターは十の死の骸が新たに蓄積した傷を癒そうと再び時間を凍結させた。
 だが、たとえ零時間詠唱でも、声を耳に届かせるためには口を開かねばならない。
 ブックドミネーターは口から息を吸い込み、周囲の濃霧をわずかに体内に取り入れた。
 刹那、ブックドミネーターの目の前が突然歪む。
 ――くらり。
 さらに強烈な眠気にまで襲われ、瞼が落ち視界が閉ざされ思わず膝をついた。
「これは……」
 濃霧の正体を察したブックドミネーターが、眠気に抗いながらもわずかに呻く。
 ――それは、街に足を踏み入れた者に永遠の眠りを齎す、死の霧。
 強烈な眠気に抗いながらも、ブックドミネーターは己の耳にのみ癒しの声を届かせ、振り払おうとするが。
 なぜか、癒しの声が届けば届く程――己が身体が霧に蝕まれてゆく気がする。
「何だこれは……ぐあっ………!」
 死の霧に歪められた癒しの声は、それを唯一耳にできるブックドミネーターの身を激痛に苛み、蝕んでいた。

 もともとブックドミネーターの行動に繊細な注意を払っていた零は、「回復時に己の時間が相対的に止められている」ことを察していた。
 ゆえに、永遠の眠りに誘われる噂話を綴ることで回復行動を阻害し、逆に己が肉体を痛めつけるように仕向けたのだ。

 己が回復行動で自滅するブックドミネーターを、零はただ、冷徹な眼差しで霧ごと射抜くように見つめていた。 

成功 🔵​🔵​🔴​

黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆行動
辿り着きましたよ、ブックドミネーター
全てを知ったか如く語る傲慢、打ち砕いてみせます

念動力を以て私も空を飛び
積み重ねた戦闘経験と五感を研ぎ澄まして攻撃を捌き
重要な臓器はその位置をずらした上で即死だけは避けましょう
第一波を凌いだら反撃開始です

時間凍結氷結晶で全身を覆ってるのは痛いぐらい理解しました
ですが覆って居るのはその身だけであり魂まではかないませんよね?
ならば逃げ惑いながらも
この地形を凍結させる力…生命力を略奪して構築した
【黒竜の道楽】を以てその傲慢を喰らいましょう

正直なところ貴方の思惑は判りません
ですが、今を生き選び続けているのは私達なのですよ

※他猟兵との連携、アドリブ歓迎



●黒竜は全てを知りし者の傲慢を喰らって
 回復効果を反転させる死の霧と眠気を振り払い、立ち上がった書架の王「ブックドミネーター」の背に、黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)が近づいていた。
「辿り着きましたよ、ブックドミネーター」
 竜ではなく少女の姿で現れたミコに、ブックドミネーターは何も答えぬまま振り返る。
「全てを知ったか如く語る傲慢、打ち砕いて見せます」
「傲慢か。ならばその身で私が傲慢でないことを知るが良い」
 ブックドミネーターは時間凍結氷結晶を己が手から生み出し、瞬時に全身に纏った。

 時間凍結氷結晶で全身を鎧い、飛翔能力を得て宙に浮くブックドミネーターに対し、ミコも念動力で己の身体を浮かべ対抗。
 積み上げてきた己の経験と五感を研ぎ澄まし、ブックドミネーターの手から立て続けに撃ち出される氷結晶の弾丸を避けるも、移動力の圧倒的な差は埋めようがなく。
 ミコはあっさりとブックドミネーターに距離を詰められ、胴に氷結晶を叩き込まれ、一時的に時間を止められる。
 立て続けにブックドミネーターは左拳をミコの心臓に叩き込み、直接凍らせようとするが、それはミコが心臓そのものをずらして避けた。
 時間凍結氷結晶で全身を覆っているのは痛い程理解できたが、それでもミコは隙を探し、思案し、口を開く。
「時間凍結氷結晶で覆っているのはその身だけで在り、魂まではかないませんよね?」
「六番目の猟兵よ、私にその質問に答える理由はない」
 ミコの仮説を一刀両断するブックドミネーターは新たな氷結晶の弾丸を撃ち出すが、ミコも二度同じ轍は踏まぬようひたすら逃げ惑いながら、凍結する力――生命力を奪いつつ術式を完成させる時間を稼ぐ。
 十分な時間を稼いだところで、ミコは印を組み術式を発動。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい、第零の竜よ!」
 その力ある呪に呼応するように、空間が動いた。

 ――ブックドミネーターの影から。
 ――ミコの影から。
 ――謁見の間の玉座や調度品の影から。

 ありとあらゆる「影」から、屠竜の魔女の魔力が籠められた黒竜の影がずるりと音を立てながら這い出し、一斉にブックドミネーターに殺到する。
 ブックドミネーターも影を全て振り払おうとするが、氷結晶の弾丸で撃ち抜いても、マッハを超える飛翔能力をもってしても、全方位から這い出す七千を超える影の全てを避けきるのは難しく。
 やがて、黒竜の影の一部がブックドミネーターを捕らえ、その傲慢を喰らう。
 ――ぐしゃ、ぐしゃ。
 行儀悪くがっつくような咀嚼音を立てながら己の「傲慢」を喰らう影を、ブックドミネーターは至近距離から氷結晶で撃ち抜き、動きを止めた。
「成程……傲慢と称されても無理はないか」
 己が「傲慢」を喰らわれたにも関わらず、なお自己分析しながら悠然と構えるブックドミネーターに、ミコは己の誤解を悟りながらも想いをぶつける。
「正直なところ、貴方の思惑は判りません。ですが、今を生き選び続けているのは私達なのですよ」
 ミコの言に一つ頷いたブックドミネーターは、冷静に告げた。
「六番目の猟兵よ、ならば考え続けよ」

 ――何を守り、誰と戦うのか、常に。

 ブックドミネーターの言葉を背に受けながら、ミコは後の猟兵に託し、撤退した。

成功 🔵​🔵​🔴​

シン・コーエン
「あれは使わない」か、余裕だな書架の王よ。
まあ、挑む身とあれば全力で向き合おう。
と、村正を抜いて正眼の構え。

強大な戦闘力と高速飛翔能力を持つ相手には落ち着いて構え、【第六感】で予測し、【見切り】で軌道と攻撃を把握し、【残像】を殴らせるようにして躱す。
相手の高速飛翔による衝撃波は【身体から発する衝撃波とオーラ防御】で相殺する。
何度か【2回攻撃】で反撃するが躱されるのは織り込み済。

相手が止めを刺しに来た時は、【2回攻撃の1回目・風の属性攻撃・念動力・衝撃波・武器受け・オーラ防御】で受け止め、【2回攻撃の2回目】にUC使用し、灼星剣を宿した右拳による【限界突破した鎧無視攻撃】で書架の王の心臓を貫く!



●戦を尊ぶ戦人は、余裕見せる相手にも全力で
 黒竜の影を操る少女が撤退した後に、ぽつりと言の葉を置く書架の王「ブックドミネーター」。
「……六番目の猟兵に『あれ』は使わない」
「『あれは使わない』か。余裕だな書架の王よ」
 転送されるなり聞こえてきたそれを聞き咎めたか、軽く声を荒げたシン・コーエン(灼閃・f13886)だが、それは自分たちが侮られているからではないと気づき、冷静さを取り戻す。
『あれ』が何を意味するかは、シンにはわからない。
 もっとも、ブックドミネーターも、『あれ』が何なのかを口にするつもりはないようで、己が全身を時間凍結氷結晶で覆う。
「余裕だと思うのであれば、私に挑むがいい」
「まあ、挑む身とあれば全力で向き合おう」
 シンは美しき刃紋が印象的な村正の銘が刻まれた刀を抜き、両手で正眼に構え、ブックドミネーターを待ち受ける。

 オウガ・オリジンの力を奪った猟書家に「侵略蔵書」を与え、アリスラビリンス以外の世界へ導こうとする『書架の王』。
 加えて全ての書を司る故に得た知識を利用して強大な戦闘力を身に付け、なおかつマッハを超える高速飛翔能力を得て、猟兵たちを翻弄する。
 ――それは、ブックドミネーターの持つ力の、ほんの一端。
 明らかに圧倒的な実力差がある相手に対して、しかしシンは落ち着いて構え、ブックドミネーターが動くのを待つ。
 時間凍結氷結晶を纏ったブックドミネーターの突撃を、シンは己の勘と鍛え上げた目で軌道を見切り、残像を殴らせるように置いて回避。
「少しは経験を積んでいるようか」
 ブックドミネーターはそう嘯きながらも、すれ違いざまに一気に加速し衝撃波を発生させ、そのままシンに叩きつけるが、シンも身体から発した衝撃波と赤のオーラで的確に相殺したため、怪我ひとつ負っていない。
 もっとも、シンも攻撃された都度反撃し村正で斬ろうとするのだが、わずかにローブを掠めたり、瞬時に加速した勢いで回避され、なかなか肉体にまで刃を届かせられていない。
 シンの周囲を回るような軌道を描きつつ高速飛翔を繰り返すブックドミネーターに翻弄され、シンの足は次第にその動きを鈍らせていた。

「未来視ができない六番目の猟兵に、これ以上の用はない」
 消えろ、と急接近したブックドミネーターが、時間凍結氷結晶を纏った拳でシンを殴りつけようとするが、拳はシンが高速で振り下ろした村正から発した衝撃波に威力を弱められ、さらに赤のオーラと念動力に絡め取られて止められた。
「ほう、少しは……」
 やる、と続けようとしたブックドミネーターが、その言葉を呑み込んだ。
 なぜなら、赤く光り輝く灼星剣を宿したシンの右の拳が、超高速で心の臓を穿とうと狙いを定めていたからだ。
「これが狙いか」
 至近距離から放たれようとしている拳から激しい戦意を感じ取ったブックドミネーターは、分厚く氷結晶を纏わせたままの右拳で心臓をかばうが。
「ああ、その通り!」
 超高速で振り抜かれたシンの限界を超えた全力の一撃は、その右拳をわずかに逸らし、心の臓の真横を撃ち抜いていた。

 ――ズブッ!!

「ぐが……っ」
 心臓への直撃こそ避けたものの、シンの拳で胸を穿たれ背後に軽くよろめくブックドミネーターの顔に初めて焦りが浮かんだのを、シンは見逃さなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・奏
瞬兄さん(f06558)と参加。

母さんが他の猟書家をぶちのめしにいったので、瞬兄さんと2人で来ました。
流石書架の王、強者のオーラが半端ないです。でも、屈する訳にはいきませんので。

今回の敵は兄さんが近接メインになるので、傍らでしっかり護ります。兄さんをすぐカバー出来るように【拠点防御】【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】で危ない時は【かばう】。敵の回復量を越えるダメージを叩き出す為に【二回攻撃】で疾風の矢を撃ち込みます。更に【シールドバッシュ】で押し込み、【怪力】【グラップル】で足払い。兄さんの近接戦闘を徹底的にサポート。たとえ強大な敵であろうと、絆の力で越えて見せます!1


神城・瞬
義妹の奏(f03210)と参加。

母さんが他の猟書家の対応にいったので、奏と2人で来ました。任されたからには頑張りませんと。

遠距離タイプの僕には近距離で攻撃するタイプが来るでしょう。まず最初の一撃には【オーラ防御】と【第六感】で出来るだけダメージを軽減。後は月光の狩人にサポートと牽制を頼みながら、杖の攻撃に【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】【吹き飛ばし】で近接攻撃に対応。隙を見て本体に【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】で攻撃を当てることを狙い、更に月光の狩人で追撃。打てる手は打たせて貰います。



●絆で結ばれし兄妹は、如何なる困難も絆で乗り越えて
 真宮・奏(絢爛の星・f03210)と神城・瞬(清光の月・f06558)のきょうだいが絶対零度の氷に覆われた謁見の間に足を踏み入れると、書架の王「ブックドミネーター」は心臓に手を当て蹲っていた。
「っ……」
 心臓の真横に穿たれた穴を己が耳にのみ届く呪の詠唱を以て塞ぐも、六番目の猟兵達に確実に積み重ねられた傷が完全に癒える様子はない。
 だが、致命的な傷を塞いで立ち上がるブックドミネーターから漂う気配は、まさに全ての書を知り、全ての猟書家を統べるに相応しい風格そのもの。
 それは無言の圧となり、奏を、そして瞬の足を止めていた。
「流石書架の王、強者のオーラが半端ないです……」
 背に冷や汗を流しながら、奏が思わず1歩後ずさろうとするが、背後の瞬にぶつかり気を取り直す。
「でも、屈する訳にはいきませんので」
「ええ、母さんに任されたからには頑張りませんと」
 奏がエレメンタル・シールドを構えるとともに、瞬も六花の杖を眼前にかざし、戦闘態勢をとる。
「魔術師か……蒼氷よ、美しき十字を携えし者となり、その権能を存分に振るうが良い」
 2人を目にしたブックドミネーターは、静かに召喚呪文を詠唱。
 その声に惹かれ周囲から集まった無数の蒼氷の粒が、ヒトの形により集まり、色づく。
 色づき露わとなった姿を見て、瞬も、そして奏も、驚愕とともにその目を大きく見開いた。
「クルセイダー……!」
「そんな!?」
 2人の目の前に現れたそれは、見覚えのある美しき十文字槍「人間無骨」を手にし、侵略蔵書を抱える金髪の少年。

 ――先日遭遇した猟書家「クルセイダー」だった。

 瞬は「遠距離タイプ」の攻撃を得意とする魔術師。ゆえに「近接型」のオブリビオンをけしかけられる、と考えるのはごく自然だろう。事実、クルセイダーは十文字槍を主体に戦う近接型だから、ここで召喚されてもおかしくはない。
 しかし、魔術師に対しては、魔術の準備中に物量で一気に押しつぶす作戦も、また有効。
 ブックドミネーターは杖を携え、見た目も華奢な瞬を魔術師と見て、近接と物量の双方を兼ね備えた猟書家をあえて召喚したのだ。
「さあ、己が課題を乗り越えて見せるがよい、六番目の猟兵よ」
 静かに宣告するブックドミネーターの覇権を宿す赤の瞳は、ただ静かに瞬と奏を見据えていた。

「お祖父さま、お願いします」
 召喚されたクルセイダーは、十文字槍を一振りし、500を超える小型戦闘用豊臣秀吉の群れを召喚。
「「「フェンフェンフェーン!!」」」
 クルセイダーが十文字槍で瞬を指差すと、小型戦闘用豊臣秀吉の群れはバウンドしながら一気に瞬との間を詰める。
(「近接攻撃主体で来られることは予想していましたが、まさか物量でも攻められるとは!」)
 ――しかも召喚されたオブリビオンは、まさに先日相対した猟書家。
 予測手を上回る現状に思考が止まり棒立ちになる瞬に、小型戦闘用豊臣秀吉の群れが殺到した。
「瞬兄さん!」
 奏を無視して瞬に殺到し押し倒そうとする群れを、奏が割り込んでエレメンタル・シールドで受け止めるが、全ては受けられない。瞬の頼みの月光の狩人も、思考の外を突かれたためか未だ召喚されていない。
「ぐっ……!!」
 瞬は群れの体当たりを銀のオーラを集中させて受け止め、六花の杖を振りかざしながら飛びつこうとする個体を片っ端から叩き、吹き飛ばしながら振り払うが、数が多すぎて間に合わない。
 さらに接近したクルセイダーが十文字槍の鋭い刺突を以て瞬を狙えば、瞬の焦りはさらに深くなる。

 ――やはり、範囲魔術を用意して来るべきだったのか?

 予測に基づき、己が得意分野をあえて封印したことを悔やむ、瞬。
 しかし……。
「瞬兄さん、落ち着いて下さい」
 エレメンタル・シールドで群れを片っ端から弾き飛ばし、いつも通りの仕事をこなす奏の声を耳にした瞬は、浅くなっていた呼吸を確りと整え、六花の杖でクルセイダーの槍をさばきながら思考する。
 目の前のクルセイダーが繰り出す槍さばきは、先日相対したそれと全く同じ。
 召喚主たるブックドミネーターは猟書家より強いかもしれないが、召喚主が強いからと言って召喚された個体が元のクルセイダーより強くなるとは限らないのではないか?

 ――ならば、過去の経験と、現在の手札を以て対峙すれば、十分痛打は与えられるはずだ。

 奏が稼いだ時間で、瞬はクリアになった思考を取り戻し、月光の狩人――胸に1と刻印された87体の戦闘用狩猟鷲を召喚。
「さあ、獲物はそこですよ!! 容赦は不要です!!」
 瞬は召喚した狩猟鷲を合体させず、片っ端から小型戦闘用豊臣秀吉の群れを啄ませる。
 数こそ大幅に劣るが、一撃受ければ消滅する小型戦闘用個体に対してはそれで十分。
「「フェーン……」」
 謁見の間の閉ざされた空間に、消滅する個体のもの哀しい悲鳴がこだました。
「風よ、奔れ!」
 奏も435本の風属性の魔法の矢を生み出し、一斉に小型戦闘用個体とクルセイダー、そしてブックドミネーターに撃ち込む。
 ――零時間で回復をされるのであれば、回復量を上回るダメージを与えればいい。
 一見力技に見えるその答えに辿り着いた奏が放った風の矢は、真正面の小型戦闘用個体を一気に蹴散らし、さらにクルセイダーとブックドミネーターの目を潰すように降り注ぐ。
「くぅっ!」
「そこです!!」
 たまらず腕で目をかばったクルセイダーに、87体全てが合体し「87」の刻印を宿した狩猟鷲が高速で迫り、嘴で胸を一気に穿った。
「がっ……見事なり!」
 胸に大穴を開けられ、致命傷を受けたクルセイダーは、そのまま無数の蒼氷の粒と化し消滅。
 同じく矢を腕で受け止めたブックドミネーターは、その傷を零時間詠唱で塞ぎ、癒すが、矢を目くらましに接近した奏の気配を察し咄嗟に後ろに飛び退く。
 だが、奏は飛び退く気配を察してさらに大きく踏み込み、一気にエレメンタル・シールドを叩きつけた。
 ――ドガッ!!
「ぐっ……!!」
 真正面から痛打を浴び、大きくよろめくブックドミネーター。
「たとえ強大な敵であろうと、絆の力で越えて見せます!!」
 義兄のサポートに徹すると決めた奏は、ひたすらブックドミネーターの視線を、動きを妨害するかのようにエレメンタル・シールドを叩きつけ、足払いをかけて行動そのものを阻害。
「奏、ありがとう。打てる手は打たせて貰います……銀の弾よ、鷲よ、彼の王を穿て!」
 ブックドミネーターが体勢を立て直す前に、瞬の銀の誘導弾がブックドミネーターの全身を絡め取り、さらに87の刻印を持つ狩猟鷲が強襲、その嘴で右腕を深くえぐり取る。
 ――ザシュッ!!
「ぐぅ……っ!」
 嘴に鋭くえぐり取られ、血が垂れ落ちる右腕を左手でかばいながら、ブックドミネーターは鋭い痛みに顔をしかめていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サギリ・スズノネ
つまりー、お兄さんは本の王様って奴なのです?
すげーのですよ!

書物も知識もずっと増えて行くものなのです
お兄さんはこれから先ももっと強くなるのですね

サギリ、ちょっとワクワクしてきたのですよ!
お兄さんが時間を止めるなら、サギリがその時を動かしてやるのです!

氷を溶かすなら、やっぱり炎なのです!
まずは火ノ神楽で、氷結耐性を込めた炎の鈴を複数出現させ、自分の周りを固めます

相手の攻撃を見切りつつ、攻撃が来る方角を調整し、そちら側の炎の鈴を合体させ強化
相手の攻撃を受け止めてみます

やり過ごせたら反撃なのです!
鈴ノ小鳥符を視界を邪魔する目的で顔を狙って放ち
残った炎の鈴をバラバラに動かし残像を見せつつぶけるのです!



●鈴の音に願う少女は、金の炎に願いを託して
「お兄さんは本の王様って奴なのです? すげーのですよ!」
 ややがさつな口調で、それでも素直な印象を漏らすサギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう・f14676)の目は、キラキラと輝いていた。
「倒すべき敵を前に素直だな、六番目の猟兵」
 サギリを目にした書架の王「ブックドミネーター」の口から洩れる飾り気のない言の葉に、サギリは「はい!」と元気よく答えつつ。
「書物も知識もずっと増えて行くものなのです!」
「この世界だけでなく、他の世界には私が知らぬ書がまだある……楽しみだ」
「はい、お兄さんはこれから先ももっと強くなるのですね」
 ちょっとワクワクしてきたのですよ! と微笑むサギリの目の前で、ブックドミネーターの右腕の傷がみるみるうちに癒えていく。
 サギリには、ブックドミネーターの口が何らかの呪を諳んじたことは認識できなかったが、ある事実には気が付いていた。
(「時間が止められていたですね……それなら動かしてやるだけですよ」)
 零時間詠唱による回復を目の当たりにしたサギリの胸に、ある決意が宿っていた。

「私が新たな書を探す前に倒せるか、六番目の猟兵よ」
 ブックドミネーターが零時間詠唱で傷を癒した右の拳に氷の結晶を纏わせながら、床を滑るようにサギリに接近。
(「氷を融かすなら、やっぱり炎なのです!」)
 サギリも氷の結晶の軌道を見切りながら、神楽鈴を手に取り、鳴らす。
「鈴を鳴らして舞いましょう」
 ――シャン。
 神楽鈴のかすかな鈴の音とともに、78個の金の鈴――否、鈴の形をした金の炎がサギリの周囲を舞い始めた。
 ブックドミネーターも拳の氷の結晶から小さな弾丸を生み出し、散弾銃を撃つように発射。
 氷の結晶の軌道上に揺蕩う炎の鈴が一斉に寄り集まり、氷の結晶からサギリを守るように合体。氷の散弾を融かしながら受け止める。
 もしひとつだけだったら氷の散弾を複数受け止めた時点で消し飛ばされていたかもしれないが、合体により強化された炎の鈴は吹き飛ばされず、確りとサギリを守った。

(「やり過ごせたので反撃なのです!」)
 炎の鈴の影でサギリが取り出したのは、小鳥と鈴が描かれた鈴ノ小鳥符。
 サギリの手から離れた符は、己が意思でブックドミネーターの視界を遮るように舞い踊る――否、舞い狂う。
「忌々しい鳥だ」
 ブックドミネーターが手で符を払っている間に、サギリは残った炎の鈴を再度かき集め、符の舞に紛れ込ませる。
 符と共に舞い狂う炎の大きさを不規則に強めたり弱めたりして幻惑すると、ブックドミネーターの視線が明らかに揺らぎ始めた。
「くっ……目が……」
 符と炎による残像に幻惑されたブックドミネーターは、視線を目まぐるしく動かしているにもかかわらず、サギリを捕らえられない。
「お兄さんが時間を止めるなら、サギリがその時を動かしてやるのです!」
 サギリは残った炎の鈴を一斉にブックドミネーターにぶつけるように殺到させた。

 ――ゴウッ!

 あっという間にブックドミネーターの全身を包み込んだ金の炎は、一瞬高らかに燃え上がるが、直ぐ鎮火してしまう。
 だが……。
「これも、六番目の猟兵の力か」
 一瞬でローブの一部と顔を焼かれたブックドミネーターの声音からは、書を統べる王たる余裕が失われていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ケルスティン・フレデリクション
…なんだか、ふしぎなふんいきのひと。
…なんだか、こわい。
でも、がんばらなきゃ。
…グリモアりょうへいは、あなたのものじゃないよ。
…だいじなちからなの。


かいふくしちゃう。きずが…!
なら、たくさんこうげきしなきゃ、いけない?
こおりには、ほのお。
【属性攻撃】【範囲攻撃】【全力魔法】
ほのおの魔法を使うよ。
炎で敵を包囲するように、攻撃するね。
【ひかりのしらべ】で攻撃。
きらきら、こおりのきらきらにも、まけない。

敵の攻撃には【オーラ防御】と【激痛耐性】
いたいのは、いやだけど…たくさん、たくさんがんばらなきゃいけないから…!
【アドリブ、連携OK】



●虚空で奏でるひかりのしらべは、氷のきらきらをも打ち消して
 金の鈴型の炎に翻弄される書架の王「ブックドミネーター」を遠巻きに見つつ、ケルスティン・フレデリクション(始まりノオト・f23272)は軽い震えを隠せない。
(「……なんだか、ふしぎなふんいきのひと」)
 雰囲気こそ、王と称する威厳そのものなのだが。
 ――それにしては、冷たい。
 さらに近づくと、ケルスティンの身体の震えはさらに大きくなる。
 ――なんだか、こわい。
(「でも、がんばらなきゃ」)
 絶対零度の恐怖に、心が折れそうになるけれど、ここで頑張らねばアックス&ウィザーズに新たな戦乱が巻き起こるから。
 だから、ケルスティンは覚悟を決めてブックドミネーターの前に出て、言葉をふり絞る。
「グリモアりょうへいは、あなたのものじゃないよ。……だいじなちからなの」
 ケルスティン自身もグリモア猟兵。決してグリモアも、グリモア猟兵の力も渡すわけにはいかない。
 だが、ブックドミネーターには、ケルスティンが振り絞った言の葉は何一つ感銘を与えない。
「私が今、求めるのは天上界」

 ――妨げとなるなら、排除する。

 排除を宣言したブックドミネーターの火傷が、ケルスティンが瞬きひとつする間に癒える。
(「かいふくしちゃう、きずが……!」)
 時間を止めて詠唱時間を実質ゼロにしたからか、ケルスティンの耳に回復の呪は全く届かない。
 しかも時間を「凍結された」感覚は全くないから、ケルスティンの手札では回復を阻止することはできそうにない。
 ――ならば。
(「たくさんこうげきしなきゃ、いけない?」)
 ――回復量を上回る攻撃をすれば、いずれ傷は累積していくのだろうか?
 心を決めたケルスティンは、手になじむ小さな精霊銃「きらめき」を取り出す。
 氷を扱う相手には、炎。
「きらめき」から撃ち出されたのは、無数の炎の煌めき。
 それはきらきらと無数の赤い星の流星群のように降り注ぎ、ブックドミネーターを包囲する。
「氷には炎、悪くはないが」
 手に纏わせた氷結晶で炎の煌めきを払うブックドミネーターに、ケルスティンは指を向ける。
「ぴかぴか、くるくる、ふわふわ」
 ケルスティンの指に導かれ、天井を貫くようにブックドミネーターに差し込んだ上空からの光は、炎の煌めきをより一層輝かせて。
 炎と光がブックドミネーターのローブに、懐中時計に、肌に触れると、一気に燃え上がる。
「詠唱が止められないなら、回復速度を上回る攻撃か……悪くはない」
 ――それは、先の猟兵達が取った戦術と同じではあるのだけど。
「きらきら、こおりのきらきらにも、まけない!」
 ケルスティンの炎と光による複合攻撃は、可憐ながら苛烈の一言。
 炎の煌めきは降り注ぐ光の強さをさらに増し。
 降り注ぐ光は、炎の煌めきをより際立たせて。
 ――炎と光、お互いが共鳴し、天井知らずに増幅する。
 徐々に威力を増す炎と氷に、ブックドミネーターもさすがに端麗な顔を苦痛にしかめ、振り払おうとするも振り払えない。
「いたいのは、いやだけど、たくさん、たくさんがんばらなきゃいけないから……!!」
「く……!!」
 ケルスティンの覚悟が、一瞬ながらブックドミネーターの絶対零度の威厳を上回り、その時ごとブックドミネーターの全身を焼き尽くしてゆく。

 ――回復量を上回る猛攻は、確実にブックドミネーターの身体を蝕みつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四王天・燦
魔物娘大好きだからA&W再乱は嫌ではない―
彼に帝竜様を継ぐ実力があればね

召喚されるは晴明様
効率ガン無視で正面から勝ちたくなる

ドミネーターには時限爆弾カウントダウンを即時起爆モードで投擲、遅れたお中元で牽制だ

晴明様との術比べに興じる
神鳴でチェーンソーを武器受けし、稲荷符の破魔範囲攻撃で陰の術を祓うぜ
各種属性攻撃で様々な術をぶつけ合いたい

陰の術から幕引きを謀る
弱った亡者を式神使いの術で支配し、晴明様とドミに纏わりつかせる
僅かの足止めで充分だ

神鳴とアークウィンドに破魔と呪詛の力を武器改造で付与
殺戮剣舞―封印第二段階解除にて発動
亡者も晴明様もドミネーターも陰陽風雷の剣戟にて斬り刻む!

礼して後は任せるよ



●妖狐の符術士が望みしは、書架の王より陰陽師との戦い
 魔物娘が大好きな四王天・燦(月夜の翼・f04448)にとって、アックス&ウィザーズが再度戦乱の渦に叩き込まれるのは嫌ではない。
(「ただし……ブックドミネーターに帝竜様を継ぐ実力があればね」)
 彼が帝竜の座に座るだけの器か否かを見極めるべく、燦はあえてブックドミネーターの前に身を晒した。

 燦を猟兵と見たブックドミネーターの先んじた行動は、蒼氷復活。
「蒼氷よ、彼の者の望みし相手を映し出せ」
 ブックドミネーターの言の葉に応え集まった蒼氷の粒が燦の目の前で寄り集まり、オブリビオンへと変化。
 それは、水晶の翼を背負い、両手にチェーンソーを携えた、青みがかった白髪の男。
 かつて燦がサムライエンパイアの鳥取城天守閣で相まみえた、己が生に倦んだ男。
 ――その名は陰陽師「安倍晴明」。
「晴明様……!」
 燦の顔がぱっと明るくなる。
 あの時も、晴明は術比べに応じてくれた。
 今回も、効率ガン無視で正面から挑み、勝ちたい!
 ゆえに、まず燦が行ったのは――晴明とブックドミネーターの分断。
「じゃ、遅れたお中元をあげるから、邪魔しないでね!」
 燦が晴明とブックドミネーターの間に投げつけたのは、箱型時限爆弾・カウントダウン。
 それは床に転がるなり大爆発し、ブックドミネーターと晴明との間を濃い煙で隔てた。

「それでは、こちらから参りましょう」
 晴明は両の手のチェーンソーを振るい接近しつつ、一瞬で無数の亡者を召喚。
「晴明様、今回もお手合わせ、お願いします!」
 チェーンソーの振り下ろしに即応した燦は、右手の神鳴でチェーンソーを受け流しつつ、左手に持った四王稲荷符を数枚、地面に大きな五芒星を描くように投げつけた。
 直後、床に落ちた符がお互いを光の帯でつなぐように発光、晴明の施した陰の術を祓うと、召喚された亡者たちの動きが目に見えて鈍り始める。
 その後も燦が様々な属性の符を晴明に放てば、晴明も闇や影を封じた符で応戦し。
 隙を見て燦が式神使いの術を封じた新たな符を弱った亡者に放ち、貼りつけて支配。
 支配権を燦に奪われた亡者は、晴明と煙を振り払おうと躍起になっているブックドミネーターに纏わりついた。
「死者すら操るとは……これはこれは」
「くっ……」
 晴明が感心する一方、ブックドミネーターの顔には嫌悪感が浮かんでいた。

 亡者を足止めに利用している間に、燦が神鳴とアークウィンドに破魔と呪詛を宿すと、神鳴の紅の電撃に優しい光が纏いつき、アークウインドの周囲を渦巻く風に柔らかなオーラが含まれる。
 しかし、これから燦が二刀を以てふたりに披露する剣舞は――殺戮剣舞。
「速く・重く・鋭く。四王天・燦の荒ぶる剣戟が、肉体の限界を凌駕する!」
 ――ヒュンッ!
 二刀流による殺戮剣舞を披露しながら、燦は晴明とブックドミネーターを巻き込みながら、残る亡者を浄化しつつ徹底的に斬り刻む。
「肉体の枷を無理やり破壊しながら舞う剣舞とは……無茶苦茶だ!」
 斬り刻まれるブックドミネーターが指摘する通り、燦が一太刀振るうたびに燦の四肢の筋繊維が千切られ、関節が外れ、激痛が苛むが。
「まだまだ行ける……動けアタシの体ァ!」
 それでも気迫で強引に動き続け、徹底的に敵という敵を斬り刻み続けた。
「見事……!」
 やがて、命脈を断たれた晴明が元の蒼氷に戻り、砕け散る。
 それを見届けながら燦は刃を納め、全身の痛みをこらえつつ大きく頭を下げるが、地獄の筋肉痛も加わり、もはや指一本動かせない。
 動けない燦の周りを、突然光るゲートが取り囲み、何処へと連れ去る。
 ――自力での撤退が困難と判断したグリモア猟兵の手で、連れ戻されたのだ。

「六番目の猟兵……本当に面白い存在だ」
 緊急転送で姿を消した燦に負わされた傷の重さに膝をつきながら、ブックドミネーターは己をここまで追い詰めた燦に、素直な賛辞を送っていた。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・日明
【アドリブ連携歓迎】
時間凍結を応用した治療……単純な力押しでは倒すことは不可能ですか。
ならばどうしたものか……

敵の攻撃を【見切り】で可能な限り回避しつつ戦場の地形や障害物を【情報収集】で把握します。
被弾しても【激痛耐性】で無理やり体を動かしましょう。
攻撃が一段落したところで【指定UC】を発動し【砲撃】、【制圧射撃】と見せかけて【地形破壊】で敵の真上から戦場のあらゆるものを壊して瓦礫にしたものが落ちてくる【地形を利用】した攻撃で【継続ダメージ】を与えられるよう【破壊工作】を仕掛けます。
うまくいけば治癒よりも瓦礫の重量などによるダメージが上回る状況に持ち込んで消耗を狙えるハズですが……さて。



●夜明けの先導者が導くは、骸の海への道筋
 終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)が目にした書架の王「ブックドミネーター」の全身が斬り刻まれた姿は、一言で表すなら「無惨」そのものだった。
 ――おそらく、先に対峙した猟兵にやられたのだろう。
 日明の目の前で、ブックドミネーターの傷が瞬時にいくつか癒えるが、全ての傷が癒える様子はない
 回復しきれない程傷が累積しているということは、あと少しで撃破もかなうだろう。
 ――だが、それでも。
 日明の脳裏に、遥かに格上の書架の王に勝つ道筋は浮かんでいなかった。
(「時間凍結を応用した治療……単純な力押しでは倒すことは不可能ですか」)
 ならばどうしたものか、思案する日明の視線がふと天井を向いたその時。
(「……おや?」)
 天啓がひらめいたかのように、日明は目を細めた。

 癒しきれない傷が累積しているとはいえ、ブックドミネーターの戦意は未だ萎えていない。
「ここまでよく戦った、六番目の猟兵達よ。……だがここまでだ」
 ブックドミネーターが拳に纏わせた氷結晶の先端から散弾の如く氷を撃ち出されるのを、日明は可能な限り見切って躱し、被弾しても歯を食いしばり激痛に耐え、謁見の間全体の構造と障害物を観察し、把握。
 散弾が途切れた一瞬で、日明は295体の小型の戦闘用脳波制御による無線式遠隔操作端末――アストラル・ビットを召喚しつつ、自身はライフルスピアを天井に向け、一撃。
「ターゲット補足、ビットパージ。オールレンジ攻撃開始」
 さらにアストラル・ピットからもレーザーを絶え間なく射出させ、謁見の間の空間そのものを制圧するかのような射撃を敢行。
 一見するとブックドミネーターの動きを制圧するかのようなその射撃の最終目標は、絶対零度の氷に覆われた謁見の間の天井。
 ――結果、レーザーは全て天井に吸い込まれ、ブックドミネーターは無傷。
「この程度か」
 失望したかのように嘆息するブックドミネーターが大粒の氷結晶を撃ち出し、日明の胴を撃ち抜こうとした瞬間。

 ――ゴゴゴゴゴゴゴ……。

 不気味な地鳴りと共に、床は小刻みに揺れ。
 壁や天井にひびがはいり、天井からはパラパラと細かい氷の粒が降り注ぎ始める。
「これは!」
 ブックドミネーターが書から得た知識で事を察し、氷結晶の翼を生成し虚空に逃れようとしたその時。

 ――ドゴゴゴッ!!
 ――ガンッ、ガンッ!!
 ――ゴオオオオオ……

 295体のビットとライフルスピアによる制圧射撃に耐えかねて天井が崩れ、落下する瓦礫が不規則にブックドミネーターを襲う。
 翼を、四肢を、胴を、頭を瓦礫で穿たれ、あえなくブックドミネーターは墜落。
 ――日明の狙いは、「制圧射撃と見せかけた、戦場の破壊」だったのだ。
(「うまくいけば治癒よりも瓦礫の重量などによるダメージが上回る状況に持ち込んで消耗を狙えるハズですが……」)
 しかし、上空から断続的に降り注ぐ瓦礫を避けきれなかったブックドミネーターは、瓦礫に埋もれたまま起き上がってこなかった。

 ――鋭く尖った瓦礫が、ブックドミネーターの心の臓を貫いていたからだ。

「六番目の猟兵よ、望みは何か、目的は何か」
 瓦礫の下から日明に呼びかけるブックドミネーターの声は、もはや風前の灯。
「これからも考え続けるが良い。誰と戦い、何を守るかを……」

 ――その選択の行く末を、私は骸の海から眺めていよう。

 その言葉を最後に、ブックドミネーターの赤の瞳は閉じられ、その身体は跡形もなく消滅する。
 後に残ったのは、絶対零度に包まれた謁見の間の残骸のみ。
「状況は終わりました。帰りましょう」
 日明はアストラル・ビットを戻すと、グリモアベースに戦果を報告するため、主のいなくなった謁見の間を後にした。

 ――書架の王「ブックドミネーター」撃破。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月22日


挿絵イラスト