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迷宮災厄戦㉕〜氷界に君臨せしは「書架の王」

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #ブックドミネーター

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「迷宮災厄戦への参戦に感謝します。リムは戦況を報告します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、リミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は不思議の国を表した地図を広げると、淡々とした口調で語りだした。
「開戦から半月目にして情勢に大きな動きがありました。既知の戦場のほぼ全てが解放されたことで『書架の王』を含む4名の猟書家が同時に姿を現したのです」
 既に戦闘が始まっていた『サー・ジャバウォック』『レディ・ハンプティ』と合わせ、発見された猟書家はこれで6名。最後の1人となる『鉤爪の男』とオブリビオン・フォーミュラ『オウガ・オリジン』発見も間近であり、この戦争の役者が出揃いつつある。
「今回、皆様にお願いしたいのはアックス&ウィザーズを狙う、猟書家達の主――『書架の王』ブックドミネーターの討伐です」
 帝竜ヴァルギリオスに封印されし「天上界」なる知られざる大陸への到達を目指す、猟書家の中でも最も謎多く、そして強大なる者。その力は全ての猟書家を上回り、オウガ・オリジンに次いで今戦争最強クラスの敵と言っていいだろう。

「ブックドミネーターの脅威となる能力は3つ。氷からオブリビオンを作す能力と、時間凍結能力。そして『書架の王』の名にふさわしい膨大な知識量です」
 かの王はその膨大な知識量を活かして、今戦っている相手に最も脅威となりうるオブリビオンを蒼氷から復活させる。知識量そのものをパワーソースとして自らの戦闘力を増強し、時間凍結の力を防具としてその身を覆うことも可能だ。
「これだけでも驚異的な力ですが、たとえダメージを与えても時間凍結からの『零時間詠唱』で瞬時に傷を治癒されてしまうため、撃破は極めて困難となります」
 総じて攻防共に隙のない、王の名に相応しい強敵と言えるだろう。知識量に裏打ちされた戦術眼と時間停止により先手を取るのも絶望的で、否応なく後手での対処を迫られる。
「それでも、彼を倒せば……あるは完全には倒せなくとも戦力を削ぐことができれば、アックス&ウィザーズに侵攻する猟書家の勢力を弱めることができるはずです」
 かの世界のオブリビオン・フォーミュラ「帝竜ヴァルギリオス」が討伐されたのは、まだたった3ヶ月前のこと。熱戦冷めやらぬうちから「書架の王」襲来という息吐く間もない事態に、群竜大陸の領主でもあるリミティアは危機感を覚えていた。

「――しかし、ブックドミネーターを含む猟書家勢力の戦力低下は、彼らに力を奪われていたオウガ・オリジンの戦力強化も意味します」
 すでに猟兵との戦いで数名の猟書家の力が減じた結果、オウガ・オリジンは力を取り戻し始めている。現時点でも「書架の王」を超える強敵だが、もし完全に力を取り戻せば、過去に交戦したオブリビオン・フォーミュラさえも凌駕する圧倒的存在と化すだろう。
「それを踏まえたうえで、ブックドミネーター討伐戦に参加されるかどうかは、皆様の判断にお任せします。リムはグリモア猟兵の1人として、全力で使命を果たすのみです」
 そう言ってリミティアは掌にグリモアを浮かべると、アリスラビリンスへの道を開く。舞台は絶対零度の凍結世界――全てが凍り付いた極寒の地で、書架の王が猟兵を待つ。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 迷宮災厄戦も大きな山場を迎えつつあります。今回の依頼は猟書家を率いる書架の王『ブックドミネーター』の撃破が目的となります。

 このシナリオでは下記のプレイングボーナスに基づいた行動を取ると判定が有利になります。

 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。

 全猟書家の頂点に立つブックドミネーターは、オウガ・オリジンを除けば本戦争最強でしょう。膨大な知識量に裏打ちされた戦闘力とオブリビオンを作り出す能力は凶悪です。
 また【時間凍結】が発動した場合、零時間詠唱によって戦闘中に与えたダメージを回復されてしまいます(指定能力値にWIZが選択された場合、この先制治療をいかに妨害するかというプレイングによってボーナスが入る、という扱いとします)。
 戦場となる「絶対零度の凍結世界」は、極めて寒冷ですが猟兵なら戦闘に支障はありません。障害となりうる物や地形も少ないため敵との正面戦闘になります。

 またブックドミネーターを含む猟書家戦力の変化はオウガ・オリジンの戦力にも影響し、戦後の各世界にも影響します。詳しくは戦争ページをご確認ください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『猟書家『ブックドミネーター』』

POW   :    「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
全身を【時間凍結氷結晶】で覆い、自身の【所有する知識】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    蒼氷復活
いま戦っている対象に有効な【オブリビオン】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    時間凍結
【自分以外には聞き取れない「零時間詠唱」】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:108

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セルマ・エンフィールド
あれ、ですか。
「侵略蔵書」はないとのことでしたが、なにか特別な一冊はお持ちのようで。

素手と言っても最高速度も戦闘力増強も尋常ではない、『視力』に自信はありますが、目で認識してからでは遅すぎますね。『第六感』を頼みにギリギリのところで避け、避けきれないものはフィンブルヴェトで『武器受け』します。

武器で受ければ武器は使い物にならなくなるでしょうし私も勢いを殺せず吹き飛ばされるでしょうが、痛みを『激痛耐性』で耐え、あちらが追撃しようとするところをデリンジャーを『クイックドロウ』、【砕氷弾】による『カウンター』を。
ここはあなたの本拠地なのでしょうが……寒冷地の戦闘であれば、遅れは取りません。



「――来たか、『六番目の猟兵』達よ」
 全てが制止した絶対零度の凍結世界で、ただ1人猟兵達を待っていたのは蒼い髪の青年。
 紅に染まった眼差しは鋭く、そして深い叡智の輝きをたたえている。彼こそが今回の戦争の裏の元凶とも言える、猟書家達の首魁――『書架の王』ブックドミネーター。
「名乗るまでもなく、私が誰であるかは既に把握しているだろう。戦場にて相見えた以上は、ここで語らうことも無い」
 詠唱もなく足元から浮かび上がった魔法陣が彼の身体を宙に舞い上がらせ、氷の結晶が翼のように全身を覆う。絶対零度の気温よりもなお冷たい殺気が猟兵達に浴びせられる。
「……あれは使わない。素手でお相手しよう」
 その宣言が『書架の王』と猟兵達の戦いの火蓋を切る合図となった。

「あれ、ですか。『侵略蔵書』はないとのことでしたが、なにか特別な一冊はお持ちのようで」
 意味深な言葉を発したブックドミネーターを地上より睨みつけるのはセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)。この戦いでは使わない理由があるのか、それとも使えないのか――考察を巡らせる暇もなく、敵は拳を固めてまっすぐ此方に接近してくる。
 いかに得物が素手と言っても最高速度も戦闘力増強も尋常ではない。『書架の王』の名に相応しい知識量に比例した自己強化は、まるで巨大なドラゴンと対峙しているような迫力を感じさせる。
(視力に自信はありますが、目で認識してからでは遅すぎますね)
 セルマは第六感を頼みにして敵の攻撃のタイミングを見切り、ギリギリのところで身を翻す。氷結晶を纏って轟と振るわれた左手は凍てついた大地のみを抉り――直後、追撃の右手が、彼女の避ける位置を知っていたかのように襲い掛かる。

「……!」
 咄嗟に愛銃「フィンブルヴェト」の銃身を掲げて攻撃を受け止めるセルマ。だが速度・膂力ともに途方もないブックドミネーターの拳には、ガードの上からでも彼女を吹き飛ばすのに十分過ぎる威力があった。
「時には直感に頼ることも重要だ。だが常に考えることを放棄してはならない」
 勢いを殺し切れずに吹き飛んでいく少女を、書架の王はまんじりともせずに見ていた。
 ただの一撃で盾にされたフィンブルヴェトの銃身は飴細工のようにひしゃげ、セルマ本人も骨か臓腑をやられたか、口元から血が溢れている。負傷度を見てとったブックドミネーターはしかし油断することなく、さらなる追撃を叩き込むために飛翔する。

(フィンブルヴェトは使い物になりませんか……)
 衝撃で朦朧とする意識を繋ぎ止め、全身に走る激痛に耐えてセルマは思考を働かせる。
 正面からはブックドミネーター。吹き飛ばされた後の体勢からではもう回避はできない。直撃を貰えば今度こそ致命傷――しかしまだ打つ手が失われたわけではない。
「まだ、です。撃ち砕きます」
 敵が拳を振るう間際、抜き放たれたのは一丁のデリンジャー。スカートに隠していた武器を抜き出し、銃口を向ける、その一瞬の動作がブックドミネーターの速さを上回った。

「ここはあなたの本拠地なのでしょうが……寒冷地の戦闘であれば、遅れは取りません」
 標的が攻撃動作から回避機動に移る間もなく、撃ち出されるカウンターの【砕氷弾】。
 それは周囲の気温が低いほど威力が上昇する、この氷獄の地においては何よりも強力な弾丸。不安定な姿勢、負傷の痛み、クイックドロウに生じる照準のブレ――そんなものはものともせずに、絶対零度の射手の一撃は過たず標的を捉えた。
「……ッ!!」
 時間凍結の氷結晶が破壊され、撃ち抜かれるブックドミネーター。
 冷たい身体から真っ赤な血潮が溢れ、冷徹な表情が苦痛に歪んだ。

「……やはり油断はできないか」
 痛烈な反撃を受けた書架の王は警戒を一層強めた様子でセルマから大きく距離を取る。
 猟書家達の王と言えどもその存在は無敵という訳ではない――砕かれた氷晶と刻まれた銃創が、それを物語っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

朱酉・逢真
強いなァ。つゥか“あれ”ってなんだい。まだなんか隠し玉があンのかい? やァまいっちまうな。俺は弱ぇンだ。真っ向から戦うなんざむりだぜ。だから弱者の戦い方をしよう。
眷属《鳥・獣・虫》どもを束で喚びだす。場が埋まるくらいにな。全身を覆ってこたァ戦場の時間を止めるわけじゃねぇんだろう。こっちもトリのナリで蝶まき散らしながら全力飛び回る。時間稼ぎだよ。肺を腐らす瘴気・死ねば死ぬほど増える肉食蝶・猛毒の鱗粉・この世すべての病毒を媒介する眷属の群れ。呼吸するならそこから、しねえなら結晶のすきまから、なんなら結晶ごと沁み渡らせて腐らせてやるさ。弱者の武器は毒と数さ。俺の継続毒はキッツいぜ。



「強いなァ。つゥか"あれ"ってなんだい。まだなんか隠し玉があンのかい?」
 交戦早々に絶大な戦闘力を示したブックドミネーターを見て、飄々とした笑みを浮かべながら問いかけるのは朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)。無論、答えが返ってくると期待したものではなく、案の定送られたのは氷よりも冷たい敵意の眼差しのみ。
「秘策であれば尚の事、敵である貴様に語るはずもないだろう。だが安心しろ、私は全力を以て貴様達『六番目の猟兵』を屠る――それだけは保証しよう」
「やァまいっちまうな。俺は弱ぇンだ。真っ向から戦うなんざむりだぜ」
 常人ならば心臓が止まるような殺気で刺されてなお、彼の笑みは崩れない。冗談めかして肩をすくめると、揺れた衣服の裾からぽとぽとと何かがこぼれ落ちる。それは病毒に戯ぶ神たる逢真の眷属、疫病を媒介する何種類もの蟲達だった。

「だから弱者の戦い方をしよう」
 逢真がぱんと柏手を打つと、蟲に続いて同じく眷属である鳥や獣が、どこからともなく束になって現れる。その数たるや氷と冷気に覆われていた戦場を埋め尽くさんばかりだ。
 あらゆる書を司るブックドミネーターは、その知識からこれらの生物が猛毒の保有種か、致命的な病を媒介する種であることを見抜いた。いかに超常の存在のオブリビオンといえど、病毒の神から直々にこれだけの眷属を送られて健常でいられる保証はない。
「抵抗せんと楽だぜ」
 眷属共を率いる逢真自身も【冥愛の妃蝶】にて真の姿を現し、朱色の鳥の姿となって空へ羽ばたく。毒々しい瘴気を纏ったその翼からは無数の肉食蝶がまき散らされ、敵の肉を啄もうと襲い掛かった。

「個の力で敵わなければ群れと毒で、か。確かに弱者の戦い方だな」
 戦場に満ちた逢真の眷属に取り囲まれながら、ブックドミネーターは落ち着き払ったまま腕を振るう。所有する知識量に比例して強化された拳、その拳圧だけで周囲にいた虫けらが粉微塵に吹き飛ぶ。
「だが、あまりにも隔絶した力の差があれば、それも通用しない」
 彼の全身を覆う時間凍結氷結晶は、不壊の鎧となって獣の牙も鳥の嘴も通さない。翼のように広げた結晶で飛翔すれば、凄まじい衝撃波が生じて肉食蝶の群れを吹き飛ばした。

「どうした。仮にも神とあろうものが、これしきの小細工で終わりではあるまい」
 眷属を蹴散らしながら朱色の鳥に迫るブックドミネーター。逢真も次々と新たな肉食蝶を喚び出して放つものの殆ど歯牙にかけられていないうえ、飛翔速度も敵のほうが速い。
 このまま捕まってしまえば終わり――しかし逃げ回る逢真の表情に焦りはなかった。8つの紅い目で敵を見つめ返しながら、カカカと嗤うように嘴を開く。
「ああそうさ。時間稼ぎだよ」
「何……、っ」
 その時、接近するブックドミネーターの顔色がかすかに変わる。感じたのは胸にわだかまる違和感。最初はほんの少しの息苦しさ程度だったそれは、自覚してからすぐに深刻な苦痛となった。

「随分景気よく蹴散らしてくれたもんだ。おかげで毒が"増える"のも早かったな」
 逢真が放った【冥愛の妃蝶】は、ただ散らされればそれで終わりの肉食蝶ではない。死ねばその骸から新たな蝶が増え、さらに猛毒の鱗粉をまき散らす。それはいつの間にか戦場を満たしていた病毒神の瘴気と共に、じわじわと書架の王を蝕んでいたのだ。
「呼吸するならそこから、しねえなら結晶のすきまから、なんなら結晶ごと沁み渡らせて腐らせてやるさ」
 朱ノ鳥の瘴毒は吸い込んだ者の肺を腐らせ、死に至らしめる。気付かぬうちに大量にそれを摂取してしまっていたブックドミネーターは、胸を押さえながらよろめき――空中でバランスを崩した隙を逃さず、この世すべての病毒を媒介する眷属の群れが襲い掛かる。

「弱者の武器は毒と数さ。俺の継続毒はキッツいぜ」
 これまでのようには捌き切れず、病毒の眷属に這い回られるブックドミネーターを悠々と見下ろして、逢真は告げる。凍土の上空にて羽ばたくその紅き威容は、凶星のごとし。
 畏るべき神の毒はじわじわと徐々に、しかし確実に猟書家の王を蝕んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天星・零
【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡】をし、戦況、地形、弱点死角を把握し、敵の行動を予測し柔軟に対応

※防御は【オーラ防御】で霊力の壁を作って威力軽減、防御

先制は上記技能を駆使しいつ使われてもいい様に把握しておき、10の死の感電死、毒死、凍死の骸などで状態異常を狙う
万が一の為【第六感】も働かせる

遠距離は十の死とグレイヴ・ロウで戦況により対応
近接はØ

『回復ならいくらでも。なんならお手伝いしますよ?まぁ、それは貴方にとっては毒か呪いの様なものかもしれませんがね』

指定UCを発動し強化、回復効果のプラス効果を反転する霧を戦場全体に
零時間を使ってもダメージ、POWの効果が残っていれば弱体効果にもなる



「無傷で勝ちを拾えるような、甘い者達でもない、か……分かっていた事だが」
 銃撃と毒で負傷したブックドミネーターは高度を下げると、体調を確かめながら独り言つ。けして油断していた訳ではない、ただ猟兵達の力が彼の予測を上回っただけのこと。
 だが彼とてまだ力の全てを出し尽くしたわけではない。すうと呼吸を整えて魔力を高めると足元に展開された魔法陣が輝きを増し、【時間凍結】のユーベルコードが発動する。
「――――」
 凍える時の中で紡がれた詠唱を聞き取ることができたのは本人だけだった。
 零時間詠唱により発動した治癒魔法が銃創を塞ぎ、体内の毒を解いていく。

「高い戦闘力だけでなく回復もできるとは、王と呼ばれるだけのことはありますね」
 そこに間髪入れず挑みかかったのは、それまで戦況、地形、弱点死角の把握に努め、敵の行動を予測していた天星・零(零と夢幻、真実と虚構・f02413)だった。優しげな笑みの裏に冷たさをたたえながら、彼は「十の死」の骸を操り、回復中の敵を奇襲する。
「死霊術師か」
 "感電死"と"毒死"そして"凍死"の骸がそれぞれ電撃と猛毒と冷気を放つのを見たブックドミネーターは、素早く身を翻す。状態異常狙いの攻撃を躱しながら距離を詰めてくるのを見た零も、虚空から「Ø」の刃を引き出して近接戦の構えを取った。

「貴様自身も死霊に近いようだな。今の私と同じようなものか」
「あまり一緒にされたくはないですね」
 唸りを上げて迫る拳を、刃にて受け流す零。たとえ手負いでもブックドミネーターの膂力と速度は凄まじく、第六感を限界まで働かせてもなお完全には捌ききれない。咄嗟に張った霊力の壁が威力を軽減してくれなければ、一撃でも耐えられたか怪しいところだ。
「僕一人では厳しいですね。でも……」
 血を吐きながら攻撃を凌いだ直後、十の死が襲い掛かる。凍結はまだしも毒や感電なら書架の王にも通じる――それは先刻、別の猟兵の毒が彼奴を蝕んだことからも明らかだ。

「狙いは私の力を削ぐ事か……煩わしいな」
 ブックドミネーターは一旦距離を取ると、再び零時間詠唱で受けた状態異常を治そうとする。しかしその動きを読んでいた零は、すかさず【噂綴・壱「永眠街」】を発動した。
「その街はとある夜に濃い霧に包まれて皆死んでしまったんだって……」
 物語るような呪文と共に放たれた真っ白い濃霧が、またたく間に戦場ごとブックドミネーターを包み込み――直後、書架の王の口から、詠唱ではなく苦しげな呻き声が漏れた。

「貴様、何をした……?」
 ブックドミネーターは確かに治癒の魔法を唱えたはずだった。しかし発動した【時間凍結】は彼の傷を癒やすどころか逆に悪化させ、一度は塞いだ筈の傷口が再び開いている。
「回復ならいくらでも。なんならお手伝いしますよ? まぁ、それは貴方にとっては毒か呪いの様なものかもしれませんがね」
 零はそんな敵の有様を見てにこやかに嗤う。彼がもたらした「永眠街」の霧は回復を負傷に、強化を弱体に逆転させる呪いの霧。なまじ強力な治癒効果が仇となって、書架の王は自らの傷を抉る羽目になった。

(零時間を使ってもダメージ、強化の効果が残っていれば弱体効果にもなる)
 敵の動きが鈍った隙を逃さず「グレイヴ・ロウ」を放つ零。凍った地面を破って突き出してきた十字架の墓石が、ブックドミネーターの腹を抉るようにズドンと叩き込まれた。
「ぐ……ッ!!」
 その身を覆う氷結晶は反転効果により脆くも崩れ去り、治癒の逆転と腹の鈍痛に敵が膝を突く。治癒により戦いを降り出しに戻すことを許さず、戦況は猟兵優位で進んでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

故無・屍
将を射る為に馬どもを相手取ってる暇はねェ。
将に手が届くってんなら手っ取り早く潰すだけだ。

相手のUCによって強化された一撃に対し
第六感、見切り、早業、野生の勘、限界突破、リミッター解除、咄嗟の一撃、カウンターの技能を用いて
反撃する形でUCを発動、
相手の使ったUCそのものを断ち切り無効化ないし弱体化を狙う。


その後は上記技能に加え怪力、2回攻撃、捨て身の一撃、体制崩しなどの技能を駆使し
戦闘を展開。

力で勝てねェんなら、その力を断ち切るだけだ。
…手加減を見せてくれた所で悪ィがな、
こっちは凶器を使わせて貰うぜ。

…『あれ』とやらを使わねェのは俺らを嘗めてかかってんのか…、
それとも今は使えない理由があんのか?



「将を射る為に馬どもを相手取ってる暇はねェ。将に手が届くってんなら手っ取り早く潰すだけだ」
 その他の猟書家達をさて置いて、首魁である『書架の王』の戦場に足を踏み入れた故無・屍(ロスト・エクウェス・f29031)。強気な宣言をする彼に対して、ブックドミネーターは笑いもせず冷徹な視線を向ける。
「手っ取り早く、か。そうそう上手くいくとは思わないことだな」
 その全身を新たな時間停止氷結晶が覆っていき、小柄な体がふわりと宙に舞い上がる。
 屍は最も"殺し慣れた"剣である「レグルス」を構え、迎撃のために全神経を集中した。

「……『あれ』とやらを使わねェのは俺らを嘗めてかかってんのか……、それとも今は使えない理由があんのか?」
「さてな。答えてやる義理はないし、貴様達の相手をするには素手でも十分だ」
 氷のように冷徹なブックドミネーターの表情からは、いかなる情報も読み取れない。
 書架の王は氷晶の翼を羽ばたかせれば急加速し、瞬く間に屍との距離を詰めてくる。
 目で追うにはあまりにも速い飛翔と攻撃の速度。ユーベルコードにより強化された先制の一撃に対して、屍は第六感と野生の勘を研ぎ澄ませることで辛うじて反応する。
「力で勝てねェんなら、その力を断ち切るだけだ」
 その手に握り締めた直剣の白い刀身が、使い手の寿命を啜って黒く染まる。体内に埋め込まれた強化装置「殺戮機関」のリミッターを解除し、心身を蝕まれながらも限界を超えた動きでカウンターの一撃を放つ――その技の名は【暗黒剣・罪喰い】。

「……目に見えない存在だろうと、触れられない影だろうと。万能の神だろうと。そこに『在る』んなら、斬れない道理はねェんだよ」

 レグルスの刀身を染めた事象破壊エネルギーが、暗黒の剣閃となって書架の王を薙ぐ。
 拳が屍を捉えるよりも一瞬速く届いたその一撃は、対象の肉体ではなく、対象が纏うユーベルコードの力そのものを"断ち切った"。
「これは……」
 溶けるように消え去る氷結晶の鎧と翼。強化を無効化されたブックドミネーターは反動により体勢を崩し、振り下ろされた拳は空を切った。晒された隙を見逃すことなく、屍はエネルギーの霧散した直剣を構え直すと、間髪入れずに追撃を仕掛けた。

「……手加減を見せてくれた所で悪ィがな、こっちは凶器を使わせて貰うぜ」
 まだ男が"故無き屍"となる以前、その刃はここではない別の世界にて、数多の『バケモノ』を殺してきた。戦場は変われども生業は変わることなく、己の身も顧みず振るわれる剣は絶対零度の世界で『バケモノ』を抉る。
「……構わない。貴様達の剣に討たれるなら、私もそこまでだったということだ……ッ」
 鬼気迫る気魄に圧されながらも、ブックドミネーターは引き裂くように左手を振るう。
 強化は解除されていても、その暴威は今だ凄まじく。爪で抉られた屍の身体から血飛沫が上がる――だが彼は、剣を握る手の力を決して緩めない。

「……そうかよ。だったら俺は、俺の仕事をするだけだ」
 突き立てた剣を、体ごとぶつかっていくように渾身の力で押し込み、強引に敵の体勢を崩す。その刹那に抜き放つのは奇妙に湾曲した黒刃の大剣――「アビス・チェルナム」。
 かつての世界で誰かから受け継いだその剣は、流麗な剣閃の軌跡を描いて、敵の身体を袈裟懸けに斬り裂いた。
「ッ……!!」
 顔をしかめて後退する書架の王。仕立ての良さそうな衣服に血の染みが広がっていく。
 屍はそれを見て手応えを感じるでも喜ぶでもなく、ただ再び剣を構える。世界の命運なぞいざ知らず、ただ眼前の『バケモノ』を斬るという意志のみが彼を衝き動かしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

尾守・夜野
「ふぅ…ちょうどいい温度ね
私暑いの嫌いなの」

視線の先ではきっと…我々の宿敵たる輝ける炎の神が
まだ滅してないから再現だけで別物でしょうが
「あら?随分と…舐めた真似をされるのね」
かの神は焼いて周囲の物を取り込み下僕に作り替えるのを得意としていたけれど元が氷なら氷像にして取り込むとかかしら?
ならなってあげない
黒纏やパーツで埋めてる箇所で受け流し攻撃は決して金属の物には触らせない
受けて凍ったパーツはパージ
刻印から替えパーツはすぐ補充するわ
落ちたパーツが取り込まれそうになったり書架の王近くにある時にUC起動
一気に反撃に出るわ

私はそうね
宿敵に対し畏敬の念(壊したい衝動)を抱いてるの
偽物用意されたら…ね?



「ふぅ……ちょうどいい温度ね。私暑いの嫌いなの」
 口元に微笑をたたえながらそう嘯くのは尾守・夜野(墓守・f05352)。元の肉体は男性だが、故あって現在は女性人格が表に出ている多重人格者の"彼女"は、絶対零度の氷結世界で寒がりもせず、むしろ涼しげな表情で佇んでいた。
「『六番目の猟兵』達……この手のみで相手をするには、やはり余りある存在か」
 対する『書架の王』ブックドミネーターの表情は険しい。傷口を押さえていた手を放せば、掌はべっとりと血で染まる。いかに猟書家を率いる王と言えど、群竜大陸の帝竜をはじめ、これまでに数々の強敵を打ち破ってきた猟兵は容易ならざる相手であった。

「ならば汝等の歩んできた『歴史』を、過ぎ去りし『過去』を汝等にぶつけよう」
 ブックドミネーターがそう唱えると、戦場を覆う蒼き氷の中から紅蓮の炎が立ち上る。
 対峙した敵に最も有効な『過去』――すなわちオブリビオンを召喚し操る【蒼氷復活】。その力にて出現したのは紛れもない、夜野の宿敵たる輝ける炎の神であった。
「あら? 随分と……舐めた真似をされるのね」
 視線の先で煌々と燃え盛る宿敵を見た彼女は、すうと眼を細めて不快感を露わにする。
 かの炎神はいまだ滅されてはおらず、ここに居るのはあくまで力のみを再現された別物だろう。だが、だとしても――否、だからこそ、その所業は夜野の神経を逆撫でた。

「さあ、貴様はこれとどう戦う」
 ブックドミネーターの指図の下、宿縁の相手に襲い掛かる炎の神。蒼氷によって再現された故だろうか、近付くにつれて夜野が感じるのは熱気ではなく骨に沁みる寒気だった。
「かの神は焼いて周囲の物を取り込み下僕に作り替えるのを得意としていたけれど、元が氷なら氷像にして取り込むとかかしら?」
 宿敵であるがゆえに、相手の能力や行動についてはある程度の予想が立てられる。炎神の狙いは氷結によって自らの眷属を増やし、最終的には夜野本人を取り込むことだろう。

「ならなってあげない」
 襲い掛かる炎の攻撃を、夜野は着用している「黒纏」と、刻印(ドライバー)の力で身体に埋め込んだUDC由来の「謎のパーツ」の部位で受け流す。最も下僕化のリスクが高い金属製の物――例えば剣や銃器には決して触らせないように。
『――――!!!』
 まるで怪物の唸り声のような音を立てて轟々と燃え盛る神の炎。それに包まれたパーツはたちまち凍り付いて動かなくなるが、夜野は凍ったパーツを即座にパージして、刻印から替えのパーツを補充することで対応する。

「異形を取り込み己の欠損を補うか。面白い戦い方をするものだが、スペアが無尽蔵にあるわけでも無いだろう」
 そんな夜野と宿敵の戦いの模様を、ブックドミネーターは後方にて観察していた。彼の指摘した通り、いつまでもこの防戦一方が尽きればいつかは替えのパーツもなくなる。あるいはパーツを炎神に取り込まれても、敵の戦力が増えて厄介なことになるだろう。
「頭数が足りないわね……ならやむを得ないかしら……さあ、束の間の外よ」
 夜野は一瞬だけ物憂げな表情を見せたのち【還元式混沌創造】を起動。戦場のあちこちに散らばった凍ったパーツがひとりでに動き出し、混じり合い、異形としか言いようのない奇怪なキメラ群を形作っていく。

「一気に反撃に出るわ。制御は任せたわよ【私】」
 表層に出ていない別人格達の意思によって統率されたキメラ達は、夜野の号令の下で一斉に牙を剥く。皮肉にもその光景は宿敵がやろうとしていた事と似通っていたが――だからこそかの神には有効な奇策となる。
「――――!??」
 多数のキメラに喰らいつかれ、身動きを封じられる炎の神。その隙に夜野は愛馬「スレイプニール」に跨り敵の本体へ。ブックドミネーターは冷静に迎え撃つ構えを取るが――その背後に転がっていた一本の腕の「パーツ」が、突然キメラ化して奇襲を仕掛けた。

「これは……ッ、そうか、防戦に徹していたのは、伏兵を忍ばせるためか……」
 スペア込みで大盤振る舞いしたパーツの全てが、今や怪物化して炎の神と書架の王を襲う。その機に乗じて敵の懐に肉迫した夜野は、整ったかんばせに剣呑な微笑を浮かべて。
「私はそうね。宿敵に対し畏敬の念を抱いてるの」
 ここで言う"畏敬の念"とは彼女の場合、"壊したい"という衝動と紙一重のものだ。いつの日かこの手で、あの輝ける炎に永劫の滅びを。そう焦がれ続けていたというのに――。
「偽物用意されたら……ね?」
 これでは壊しても何の意味もない。だったらあなたが壊れなさいと言わんばかりに、振り下ろされる「怨剣村斬丸」。深い呪詛の滲んだ刃が、『過去』を弄ぶものを断ち斬る。

「ッ……喚ぶべきものを、誤ったかもしれんな……」
 痛手を負ったブックドミネーターが後退すると、炎の神も陽炎のように消えていく。
 真の対峙を愉しみに待つとでも言いたげに、揺らめく火の粉を夜野の前に遺して。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐伯・晶
時間凍結、厄介な能力だね
でも同系統の能力を持つ者もいるんだよ
先制治癒は氷結耐性で時間凍結に耐えて
マヒ攻撃で詠唱を妨害
時間を止め返された経験はあるのかな

相手も時間停止系の能力は効果が薄いだろうから
すぐに動けるようになるんだろうね
ガトリングガンでの攻撃に切り替えるよ

とはいえ絶対に対応してくるだろうから
隙をみて本命のワイヤーガンを使用
UDC組織謹製の対オブビリオンワイヤー
そう簡単には千切れないよ

時間凍結は凄いけど
純粋な物理的事象への対応力は限られるんだよね
そしてどんなに硬い装甲つけてても締め付けは防げないよ
関節まで覆ってたら動けないからね

蒼氷復活を使うなら
複製創造+式神創造でミラーマッチしてて貰おう



「少々傷を負いすぎた……このままでは不味いか」
 猟兵達から受けた負傷の度合いを確かめ、ブックドミネーターは微かに顔をしかめる。
 いかに強大と言えどもその身は不死でも不滅でもない。『六番目の猟兵』の手強さをよく知る彼は慢心することなく、仕切り直しのために【時間凍結】を発動する。
「どうやら長期戦となりそうだ。こちらも相応の構えで挑まなければな」
 凍れる時の中で紡がれる"零時間詠唱"が、書架の王の傷を癒やしていく。その呪文を聞く者は彼の他におらず、妨害を仕掛けられる者もいない――筈だった。

「時間凍結、厄介な能力だね。でも同系統の能力を持つ者もいるんだよ」
 涼やかな少女の声が氷結世界に響くと共に、雷に打たれた様な衝撃が書架の王を貫く。
 それを放ったのは佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。停滞と静謐を司る邪神と融合した彼女は、その権能により時間凍結に耐え、逆にこちらから時間停止を仕掛けたのだ。
「時間を止め返された経験はあるのかな」
「――――!」
 予期せぬ妨害を受けたブックドミネーターの体はマヒしたように動かなくなり、それ以上詠唱を紡ぐ事ができなくなる。治癒魔法は中断され、それ以上傷が癒えることも無い。

(相手も時間停止系の能力は効果が薄いだろうから。すぐに動けるようになるんだろうね)
 回復阻止と共に稼ぎ出した僅かな時間を使って、晶は携行型ガトリングガンを構える。
 トリガーを引けば轟音と共に放たれる無数の弾丸。邪神の物質創造力を利用した弾薬補給により、魔力が尽きない限りその弾幕が途切れることは無い。
「邪神の力か……やはり油断ならんな」
 だがブックドミネーターとて裏をかかれてばかりの器ではない。ものの数秒で硬直状態から抜け出した彼は、氷結晶で形作った翼を羽ばたかせて弾幕から身を躱す。手負いなれどもその動きは機敏で、何百の銃弾だろうとただ撃ちまくるだけでは捉えるのは至難だ。

「やっぱり対応してくるよね」
 晶もこの程度で仕留められると思ったわけではない。ガトリングの銃撃はあくまで敵の牽制になればよし、重要なのはそこから本命の一射に繋げるタイミングを見極めること。
 飛翔するブックドミネーターの動きをじっと観察し、方向転換のために減速する僅かな隙――秒にも満たない一瞬を狙って、彼女は【試製電撃索発射銃】を抜き放つ。
「何……ッ、これ、は……電流か……っ」
 発射されたワイヤーは狙い過たず絡みつくと、強烈な電撃を流して標的を麻痺させる。
 ブックドミネーターは苦痛に顔をしかめながら拘束を振りほどこうとするが、UDC組織謹製の対オブビリオンワイヤーは、そう簡単には千切れない。

「時間凍結は凄いけど、純粋な物理的事象への対応力は限られるんだよね」
 時を止めたところでワイヤーが脆くなるわけではなく、拘束をすり抜けられるわけでもない。自らも時間を止める力の使い手である晶だからこそ把握している能力の落とし穴。
「そしてどんなに硬い装甲つけてても締め付けは防げないよ。関節まで覆ってたら動けないからね」
「大した洞察力だ……同系統の能力者がいたとは、私も運のない……」
 どう足掻いてもすぐには拘束を脱せないと悟ったブックドミネーターは、自らの代わりに【蒼氷復活】させたオブリビオンを戦わせようとするが、それにも晶は【複製創造】と【式神創造】のあわせ技で精巧な敵のコピーを作り出し、ミラーマッチに持ち込む。

「しばらく付き合って貰うよ」
 膠着状態が長く続けば続くほど、晶はワイヤーの締め付けと電撃で敵にダメージを与え続けることができる。時間凍結が全く効果を発揮できない現状、"時間"は彼女の味方だ。
 復活させたオブリビオンも当てにできず、やっとのことで拘束から逃れるまでの間に、ブックドミネーターは多大な消耗を余儀なくされたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガルディエ・ワールレイド
帝竜戦没でもヤバイ戦場が多々有ったアックス&ウィザーズだが、それを思い出す光景だな。
一応、あの戦争での絶対零度地帯よりはマシか……。

◆武装
《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアの二刀流。

◆先制対策
自分が《空中戦》を行う時の経験も踏まえて、超高速で攻撃してくる敵の機動を《見切り》、《武器受け》で防御。とにかく致命傷だけは避けるぜ。

◆反撃
空から来る敵を【砕魂の咆哮】で迎撃して動きを止め、そこへ近接攻撃で追撃するぜ。
魂を攻撃することで、敵の動きと判断力を鈍らせてから追撃をかける方針だ。
膨大な知識を持つ奴が頭を働かせてるとヤバそうだからな。長所を潰させて貰うぜ。



「帝竜戦没でもヤバイ戦場が多々有ったアックス&ウィザーズだが、それを思い出す光景だな」
 ブックドミネーターの拠点たる凍結世界に足を踏み入れたガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)は、打倒帝竜のために駆け抜けた群竜大陸の戦いを振り返る。
 彼の地では生息する竜やモンスターだけではなく、自然界ではあり得ないような異常環境も猟兵達の脅威となったが、今回の不思議の国での戦いもそれに負けていないだろう。
「一応、あの戦争での絶対零度地帯よりはマシか……」
 特殊な毛皮や何らかの対抗策がなければ活動すらままならないような超低温に比べれば、ここの寒さは"普通に戦える"だけで快適とさえ言える。熱の通った手でしっかりと得物を握り締め、黒竜の騎士は真っ向から書架の王と対峙する。

「彼の地での戦いにおいて戦功著しかった者の1人か。その力量、確かめさせて貰おう」
 群竜大陸での戦いを知っているかのような口ぶりでそう語ると、ブックドミネーターは時間凍結氷結晶で全身を覆い、魔法陣を描いて空に舞い上がる。書を司る者としての知識を戦闘力に反映した自己強化は、彼の力を徒手空拳でも帝竜に匹敵する域にまで高める。
「随分と上から物を言う奴だな。言われなくても力なら見せてやるよ」
 超高速で接近してくる書架の王を、ガルディエは射殺すような鋭い眼光で見据える。空中での戦いなら彼にも経験がある――自分が飛ぶ時の心得を踏まえて敵の機動を見切り、左右に構えた「魔槍斧ジレイザ」と「魔剣レギア」で攻撃を受け止めんとする。

「ぐ……ッ!」
 交差させた武器と拳が激突した瞬間、破城槌にでも打たれたような衝撃がガルディエの身体を突き抜ける。身の丈は彼よりも小柄ながら、想像を絶する速度と膂力。これほどの威力を体感したのは帝竜との戦い以来かもしれない。
「……止められたか」
 一方のブックドミネーターも、自身の会心の一撃を正面から防がれた事には少なからぬ驚嘆を示していた。無傷で凌がせはしなかったものの、拳打のダメージは致命傷からは遠い。直接の衝撃を受け止めた槍斧と剣も、それを保持する両腕も、まだ折れてはいない。

「……どうした、こんなものか?」
 血を吐きながら射殺さんばかりに睨めつける黒竜騎士の眼光。今だ闘志尽きぬその姿に最大級の警戒を抱いたブックドミネーターは、全速力での離脱の後、再び上空からの急降下攻撃を仕掛ける。今度は降下時の加速も重ねて、確実に標的を仕留めるつもりだ。
 だがガルディエもみすみす同じ攻撃にやられはしない。すうと大きく息を吸い込んで、空から来る敵に狙いをつけて――万感の激情と意思を込めた【破魂の咆哮】で迎え撃つ。
「オオオオオオォォォォォ――――ッ!!!!!」
 絶対零度の氷結世界を揺るがさんばかりの咆哮。そこに籠められた竜の意思は、常に冷徹であったブックドミネーターの魂をも震わせ、ほんの一瞬ながら攻撃の手を竦ませた。

「咆哮に耐えねば竜の前に立つ資格は無い。テメェにそれが有るか?」
 たとえ秒にも満たぬ刹那でも、動きが止まれば、それを見逃すガルディエではない。
 魂を直接揺さぶれれる衝撃から敵が立ち直る前に、得意の近接戦闘で追撃を叩き込む。
「ぐぉ……ッ」
 片手とは思えぬ膂力で突き出される魔槍斧ジレイザの矛先が、氷結晶の隙間を抜けて腹を抉る。対応策を考えようとする書架の王だが、動揺冷めやらぬ状態で判断力にも支障が出ている。

「膨大な知識を持つ奴が頭を働かせてるとヤバそうだからな。長所を潰させて貰うぜ」
 敵が本領を発揮できない間に一気呵成に攻め立てる。柄を捻って槍斧の傷を広げながら、間髪入れずに渾身の力で振り下ろすは魔剣レギア――紅い魔力のフィールドを纏った刀身が、大上段からブックドミネーターを袈裟懸けに斬り伏せる。
「ッ……成程、帝竜達も敗れる訳だ……これほどの力とはな……!」
 痛手を負った書架の王にできたのは、彼の竜騎士の間合いから後退する事だけだった。
 帝竜戦役を制した猟兵の実力を見定めようとした代償は、どうやら高く付いたようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジュリア・ホワイト
猟書家の王……成程、強大な気配だ
「だが、その程度で怯むボクではないさ!ヒーロー・オーヴァードライブ、正義を執行する!」

まずは相手の詠唱妨害から、か
零時間詠唱とはまた、謎の多い概念だけど……
自身の耳で聞いているのは間違いない
『詠唱』の意味を狂わせてしまえば術を無効化できるはずだ
手持ちのホイッスルを全力で吹き続ける事で相手が詠唱を耳で聞き取るのを妨害するよ
轟音渦巻く駅のホームで確実に意思疎通を図る為のホイッスルだ、非常に五月蝿いだろう?

そして笛を吹きながら全火器を総動員、リミッター解除!
笛を吹く息が続くこの短時間で勝負を決める!



「猟書家の王……成程、強大な気配だ」
 これまでに対峙した猟書家とも一線を画する存在感に、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は肌が粟立つのを感じた。『書架の王』ブックドミネーター――書を司る者を称するその実力は、オウガ・オリジンに次いで本戦争の双璧と言えるだろう。
「だが、その程度で怯むボクではないさ! ヒーロー・オーヴァードライブ、正義を執行する!」
 凍結した大地を溶かさんばかりの熱い蒸気を噴き上げ、意気軒昂に名乗りを上げ。
 鋼鉄の機関車から生まれた正義のヒーローは、絶対零度にも負けず悪と対峙する。

「正義……ヒーロー、か。口にすれば陳腐な言葉だが、貴様にはそれを貫く力があるのだろう」
 故に私も油断はしない、とブックドミネーターは【時間凍結】を発動する。遮二無二先制攻撃を仕掛けるよりも、まずはダメージを回復して万全の迎撃体勢を整えるつもりだ。
(まずは相手の詠唱妨害から、か。零時間詠唱とはまた、謎の多い概念だけど……自身の耳で聞いているのは間違いない)
 時が凍りつく間際、ジュリアは首から下げていた銀のホイッスルを口にくわえると、思いっきり吹き鳴らす。魔力を帯びた警笛が高らかに響き、氷結世界の静寂を切り裂いた。

(『詠唱』の意味を狂わせてしまえば術を無効化できるはずだ)
 唱えている本人にも聞き取れないほどの大音量で敵の詠唱を妨害する。ごり押しとも言える大変シンプルな対抗策だが、それを成立させるだけの要素をジュリアは持っていた。
 使っているのはただの笛ではない、轟音渦巻く駅のホームで確実に意思疎通を図る為のホイッスル。それを並外れたバイタリティ相応の肺活量を持つ彼女が吹くのだ。戦場でなければ間違いなく苦情が飛んでくるほどの五月蝿さの中で、満足に詠唱ができるものか。
「喧しい……ッ」
 これにはさしものブックドミネーターも、不快感も露わに眉をひそめながら耳を塞ぐ。
 まさかこんな方法で零時間詠唱を打ち破られるとは思いもよらなかっただろう――奇しくも敵の動揺を誘えたのが、ジュリアにとってはまたとない好機になった。

(今だ! 全火器を総動員、リミッター解除!)
 銀のホイッスルを吹き続けながら、装備している全ての武装を同時に構えるジュリア。
 白いパワードスーツ型のマルチウェポンプラットフォーム"プラチナハート"にマウントされた、携行式4連詠唱ロケットランチャー『ML106』と内蔵機関砲。両手には高圧放水銃と精霊銃『No.4』を構え、さらにその背後では彼女の本体である蒸気機関車『D110ブラックタイガー号』の車載主砲『アクセルホワイト』がエネルギーチャージを開始する。
(笛を吹く息が続くこの短時間で勝負を決める!)
 この1度きりのチャンスに全てを賭ける覚悟の【ラスト・ワンエフォート】で、ありったけの出力を注ぎ込み――耳を塞ぐブックドミネーターをロックオンした瞬間、ジュリアは全火器のトリガーを引いた。

「―――――!!!!」
 けたたましいホイッスルの音さえかき消すような銃声と爆音、そして怒涛の勢いで押し寄せる砲火の嵐。ジュリア渾身の一斉射撃は、過たずブックドミネーターを呑み込んだ。
 水圧と精霊と鉛の弾幕が氷結晶の防壁を穿ち、ロケット弾の爆発が至近距離で炸裂する。体勢を崩したところに叩き込まれるのは、目も眩む程の特大ビームキャノンの閃光。

「これが……ヒーローの力さ!」
 竜の息吹もかくやという、圧倒的な破壊力により吹き飛ばされた書架の王と、変わり果てた戦場の地形を見届けると、ジュリアは会心の笑みを浮かべて高らかに宣言し――そして、限界を超えたユーベルコードの反動により、ふっつりと意識を失うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
魔槍による連撃や魔力弾連射で、敵の攻撃に対する反応を見極め。
敵が回復を過信した隙を見て、クラウ・ソラスの光刃を突き立て、内部で刃を伸ばして肉体内を蹂躙して固定。
刃が肉体内に残った状態では幾ら回復しようと意味が無いわ。

それでも、わたし一人なら引き抜いて逃れるでしょうけど…頼れるパートナーがいるのよ♪

【ブラッド・オブリビオン】で「黒皇竜ディオバルス」を召喚。

貴方の故郷を蹂躙しようとする輩よ。相手にとって不足はないしね。

わたしは全力で光刃を操作して回復を封じるから、黒皇竜は【黒皇竜の一撃】や【インフェルノ】で攻撃。
最後は全魔力を纏った魔槍の一撃と【カタストロフィ・ノヴァ】の同時攻撃で消し飛ばすわ!



「やってくれるな、『六番目の猟兵』達よ……」
 猟兵の猛攻により重症を負った『書架の王』ブックドミネーターは、後退しながら【時間凍結】の零時間詠唱を紡ぎ、ダメージを癒そうとする。しかしそこに真紅の魔槍を構えて、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)が追撃を仕掛ける。
「そう簡単にはやらせないわよ」
「新手が来たか。だが……」
 鋭く突き放たれる魔槍「ドラグ・グングニル」の連撃と、同時に連射される魔力弾の弾幕。手数を重視したフレミアの攻勢に対して、しかし書架の王は焦ることなく冷静にそれを見極め、僅かな隙を付いてユーベルコードを紡ぎ、傷を回復させていく。

「疾く、鋭い。だが軽いな。この程度の負傷であればすぐに治癒できる」
 勝ち誇るではなく淡々と、事実を確認するように告げるブックドミネーター。だが、それを指摘されたフレミアの表情にも焦りや怒りはない。敵がフレミアの動きを観察していたように、彼女も敵の攻撃に対する反応を見極めていたのだ。
「だったら、これはどうかしら……ね!」
 敵が己の回復能力を過信した隙を見て、抜き放ったのは「念動魔剣クラウ・ソラス」。
 その刀身に実体はなく、使い手の念と魔力によって刃を発生させる。これまで槍と魔力弾のみを印象付けられてきた書架の王は反応が遅れ、光の刃が深々と突き立てられた。

「ぐ……ッ、これは……!」
 ブックドミネーターに突き刺さったクラウ・ソラスは、フレミアの意思によって刀身の形状・長さを自在に変化させる。伸びる光刃に内部から肉体を蹂躙されては、さしもの書架の王の口からも苦痛の声が漏れた。
「刃が肉体内に残った状態では幾ら回復しようと意味が無いわ」
 艶めくような強気の笑みを口元に浮かべるフレミア。確かにこの状態で零時間詠唱を紡いでも、光刃という体内の異物が治癒を阻害する。敵は【時間凍結】を発動させる前にまず、このクラウ・ソラスを引き抜いて離脱する必要に迫られた。

「それでも、わたし一人なら引き抜いて逃れるでしょうけど……頼れるパートナーがいるのよ♪」
「パートナー、だと……?」
 その時、にっこりと微笑むフレミアと訝しむ書架の王の頭上から、巨大な影がかかる。
 漆黒の鱗に覆われた雄々しき巨躯。全身凶器の如き牙と爪と尾。大空を力強く飛翔する翼――その名は『黒皇竜ディオバルス』。かつてフレミアと熾烈な戦いを繰り広げ、現在は【ブラッド・オブリビオン】により召喚された、アックス&ウィザーズの魔竜である。
「貴方の故郷を蹂躙しようとする輩よ。相手にとって不足はないしね」
「我ら竜が敗れ去った後の世界を狙うか……小賢しい空き巣には仕置きが必要だな」
 フレミアの呼びかけに応じた誇り高き黒皇竜は、燃えるような瞳で傲然と書架の王を睨みつけ――口元から炎をほとばしらせながら、尾による【黒皇竜の一撃】を叩きつけた。

「敗残のオブリビオンが、この私に牙を剥くとは……ッ」
「我らは断じて貴様に敗れた訳ではない。履き違えるな!」
 大地が陥没するほどの凄まじい衝撃がブックドミネーターの身体を揺らした直後、怒りの籠もった【インフェルノ】のブレスが焼き焦がす。黒皇竜が猛攻を繰り広げる中、フレミアはしっかりとクラウ・ソラスの刃に意識を集中させ、全力で敵の回復を封じ込める。
「どうかしら。これがかの地を支配していた竜達の力よ」
「聞きしに勝るとは、この事だな……!」
 【時間凍結】の余地も与えられず、じりじりと追い込まれていくブックドミネーター。
 それを見たフレミアとディオバルスは無言で頷きあうと、トドメとばかりにそれぞれが持つ渾身の一撃を敵に叩きつけた。

「消し飛びなさい……!」
「滅び去れッ!!」

 全魔力を纏った魔槍の一撃と、極大規模の【カタストロフィ・ノヴァ】の大爆発が、書架の王を吹き飛ばす。その破壊力たるや、絶対零度の凍結世界が溶け落ちかねないほど。
 吸血姫と黒皇竜、強壮なる2人の同時攻撃を叩き込まれたブックドミネーターは、悲鳴を上げる余裕さえなく、彼方へと吹き飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
(真の姿に変身)
同様にあらゆる書物と記録を格納する大書架を管理する身、お前の横暴を許すわけにはいかない。

『天照』を使う。書架の王周辺の時間の揺らぎを観測し、零時間詠唱の音波を解析、すぐに逆位相で打ち消す音波を出すプログラムを予め『早業』で作成しておく。俺たちと同じく聞こえなければ、回復できないはずだ。

UC発動、この書は俺自身が生み出した空想の書にして全智の書。
魔導書にはこう記そう。『書架の王の時間凍結は打ち破られ、猟兵から受けた傷からおびただしい鮮血が流れ出していた。もはや再起不可能だった』と。

『境界術式』展開。魔導書たちよ、炎の魔弾によって『全力魔法』で対象を『蹂躙』、鏖殺せよ!



「天上界への道は遠いか……分かってはいたが『六番目の猟兵』達の力がこれほどとは」
 ボロボロになった衣服の埃を払い、血塗れの姿でどうにか身体を起こす『書架の王』ブックドミネーター。アックス&ウィザーズにある"知られざる大陸"へと到達し、求める答えを得ようとする彼の計画は、猟兵達の奮戦によって予定を大きく狂わされていた。
 そこに姿を現したのは、青い髪と金の瞳を持つ精悍な印象の青年。真の姿に変身した彼――アイン・セラフィナイト(全智の蒐集者・f15171)は、毅然とした態度で告げる。
「同様にあらゆる書物と記録を格納する大書架を管理する身、お前の横暴を許すわけにはいかない」
 叡智の書架の管理人にして、世界を解き明かす探求者にして、真実の情報を蒐集する観測者。彼とブックドミネーターの有り様には皮肉にも似通うところがあった。だからこそ、己の生き様にかけて、彼はこの悪しき書架の王を討ち果たすことを誓う。

「汝も書と叡智の重要さを知る者か。ならば分かるだろう、私が止まる筈はないと」
 求める答に辿り着く為ならば、自らも戦場にて血を流すことも厭わない。ブックドミネーターは傲然とした振る舞いで魔法陣を描き上げ【時間凍結】を再び発動させんとする。
 だが、その行動を予測していたアインは時空間管理デバイス『天照』で書架の王周辺の時間の揺らぎを観測し、零時間詠唱の音波を検知できるプログラムを予め作成していた。
 このプログラムの役割はそれだけではなく、検知した音波に対応する逆位相の音波を発生させ、ノイズ・キャンセリングのように音を打ち消すシステムも組み込まれていた。
「―――?」
 凍える時の中で詠唱を紡いだブックドミネーターは、口にしたはずの呪文が聞こえてこなかったのに困惑する。「なぜだ」という呟きさえも『天照』に打ち消され、戦場にはただ静寂だけが満ちる。

「俺たちと同じく聞こえなければ、回復できないはずだ」
 叡智の書架の管理者は、時空間を操る力にも備えは怠らない。敵の回復を見事に阻止したアインは、すかさずユーベルコード【全智ノ書『汝ノ名ヲ此処ニ記ス』】を発動する。
「記そう、キミの総てを。そして……否定しよう、キミの総てを」
 彼の手元に現れるのは一冊の魔導書。書を司る者であるブックドミネーターすら、その書物の存在は知らない。それは確かに書の形をしてはいても、より高次元に属する全知の端末なのだ。

「何だ……その書は?」
「この書は俺自身が生み出した空想の書にして全智の書」
 広げられた書物のページには、ブックドミネーターにまつわる全情報が記されている。
 対象が保有する能力から、未来に辿る結末まで――アインは指先に魔力を集めて、書の内容を一部書き換え、このように書き記す。

『書架の王の時間凍結は打ち破られ、猟兵から受けた傷からおびただしい鮮血が流れ出していた。もはや再起不可能だった』

 ――全知の端末に書き込まれた新たな情報は、現実の物質世界に編纂・改変を起こす。
 たった今記された内容のとおりに、ブックドミネーターの身体からは鮮血が溢れ、急に力が抜けてしまったようにガクリとその場に崩れ落ちる。
「私の現在を……未来を、書き換えたというのか……!」
 何をされたのか分かっていたとしても、もはやどうにもならない。敵が膝を屈した隙を突いてアインは『境界術式:叡智ノ書架』を展開。次元の壁を超えて千を超える数の魔書が姿を現し、魔力の籠もったページを一斉に開く。

「魔導書たちよ、炎の魔弾によって『全力魔法』で対象を『蹂躙』、鏖殺せよ!」
 指揮者の如きアインの号令一下、書より放たれた魔弾の嵐は過たず書架の王を捉える。
 その莫大な熱量は凍結世界の永久凍土を溶かし、氷結晶の翼を焼き、肉体を焦がした。
「ぐおぉ……ッ!!」
 全知ノ書に記されたとおりの結末に向かって、書架の王は劣勢へと追いやられていく。
 だが――再起不能と記されようと、その瞳から輝きは今だに失われてはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
まさかこんな所で夢が叶うなんてね…
僕に有効なオブリビオンなんてあれしかない
ダイウルゴスだよダイウルゴス
わあ本物だ…かっこいいな
僕喜んでダイウルゴス文明になるよ

…と、【落ち着き】だ
完全にダイウルゴスになる前にUC【模範解答】を発動
【動物と話す】でダイウルゴスを説得する

この人きみの故郷を侵略するんだって
僕の味方になった方がいいよね
恐怖と優しさによる【精神攻撃】でダイウルゴスに強烈な【催眠術】をかけダイウルゴス文明を乗っ取る

書架の王さん
勉強のしすぎは良くない
お陰で僕の怖さがより深く伝わってしまう
そう
きみも既に鵜飼章文明の一部だ

彼にも催眠術と精神攻撃をかけ【言いくるめ】で時を止めるね
行けっダイウルゴス



「まさかこんな所で夢が叶うなんてね……僕に有効なオブリビオンなんてあれしかない」
 絶対零度の氷結世界にやって来た鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、何かを期待するようなキラキラとした眼差しでブックドミネーターを見つめる。氷からオブリビオンを作り出す『書架の王』の恐るべき力のひとつ【蒼氷復活】――どうやら彼は敵がそれを使ってくるのを望んでいるようだ。
「些か奇妙な輩が来たものだな……」
 願いに応えてというわけでは無いだろうが、ブックドミネーターは自らが保有する書の知識から、章に有効なオブリビオンを選ぶ。世界を覆う蒼氷より出現するのは、天を衝く程に巨大な漆黒のドラゴン――それはより小さな無数のドラゴンにより構成されていた。

「ダイウルゴスだよダイウルゴス。わあ本物だ……かっこいいな」
 帝竜戦役にて猟兵らと雌雄を争った帝竜が一体『ダイウルゴス』。自らをひとつの文明と称し、あらゆる存在を"ダイウルゴス化"する【文明侵略衝撃波(フロンティア・ライン)】を操る、恐るべきドラゴンロードである――が、それを見た章はまるで憧れのアイドルにでも出会ったかのように、ただただ漆黒の威容に見惚れていた。
「僕喜んでダイウルゴス文明になるよ」
「賛成93、反対6、棄権1……我等ダイウルゴス文明は、汝の参入を歓迎する」
 嬉々として敵に寝返るようなことを言う彼に対するダイウルゴスの対応は即時だった。
 不可視の衝撃波が凍結世界の戦場を包みこみ――細胞の一つ一つが喜びに打ち震えるような感覚と共に、章の肉体は徐々にドラゴンのそれと化していく。

(……と、落ち着こう)
 精神までもが完全にダイウルゴスとなる前に、章は最後に残っていた理性で【模範解答】を発動する。彼の作戦は敵に取り込まれてからが本題――獣相手にも通用する話術と詭弁を以て、ダイウルゴスを逆にこちら側に寝返らせることだ。
「この人きみの故郷を侵略するんだって。僕の味方になった方がいいよね」
「何……それは事実か?」
 フロンティア・ラインを受けたことで【ダイウルゴス会議】への参加権を得た章は、巧みに相手の恐怖や危機感を煽り立て、優しい理屈を交えて議員らの精神を揺さぶり、強烈な催眠術をかけて会議を掌握する。列席するドラゴンらを傀儡にしてしまえば、『帝竜ダイウルゴス』はもはや彼の意のままだ。

「……ダイウルゴスめ。新参者に主導権を取られるとは、合議制の脆さが出ているぞ」
 巨大な帝竜の首がこちらを向いたのを見て、ブックドミネーターは小さく舌打ちする。
 確かにダイウルゴスのフロンティア・ラインは、章に抵抗する意思がないという意味で有効だった。しかしその後まさかダイウルゴスが乗っ取られるのは予想外だったようだ。
「こういう得体の知れぬ輩も『六番目の猟兵』の中には居るということか……」
 頼るものが自分以外に居なくなった書架の王は、やむなく素手で迎え撃つ構えを取る。
 ダイウルゴスが寝返ったとはいえまだ戦いの行方は分からない。単独でも生身でも、彼の力は恐らく帝竜とひけを取らないだろう。

「書架の王さん、勉強のしすぎは良くない」
 しかし章は既に勝利を確信している様子で、乗っ取ったダイウルゴスの上から告げる。
 寂しげな笑みと共に語られる言葉はたった今帝竜を籠絡したのと同様に、書架の王の精神さえも蝕んでいく。
「お陰で僕の怖さがより深く伝わってしまう」
「……私が、貴様を恐れているだと?」
 叡智に富み、思慮深いブックドミネーターには、目の前に立つ男の異常性が理解できていた。彼の肉体は確かに人間だが、その精神性はヒトではない――万物に優しく、万物に冷たい、情が欠けた酷薄な精神構造を、思考することで"人間らしく"覆い隠した魔物。
 でなければ文明侵略を嬉々として受け容れながら己を保つなどできようか。好奇と想像力に満ちた異常な精神性を、確かにブックドミネーターは警戒し、そして恐れてもいた。

「そう。きみも既に鵜飼章文明の一部だ」

 ほんの些細でも恐れを抱いた時点で、既に章の術中に嵌っていたのだとはつゆ知らず。
 見事に彼に言いくるめられた書架の王の時は止まり、凍りついたように動けなくなる。
「行けっダイウルゴス」
 その機を逃さず襲い掛かるは、ダイウルゴス文明改め鵜飼章文明の手足となった帝竜。
 咆哮と共に漆黒の巨体より繰り出される一撃が、小さな書架の王の身体を薙ぎ払った。

「がは―――ッ!!」
 衝撃に吹き飛ばされ、血反吐を吐きながら永久凍土の上を転がるブックドミネーター。
 敗北の痛みに加え、勝手に鵜飼章文明の一員にされた屈辱感が、彼の心を蝕んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

清川・シャル
シャルが初めてエンパイア以外の世界に行ったのがアックス&ウィザーズの世界でした
あの世界はドラゴンがいて楽しいです、財宝も沢山です
治めている人もいます
阻止しなきゃですね

全力魔法で多重障壁を展開、備えます
Amanecerを召喚、集中力を削ぐ催眠術を含むモスキート音を発して、鼓膜破壊攻撃を行います
同時に目潰しと串刺しの熱光線を発射です
氷には炎を。召喚魔法地獄の炎
溶けてしまうがいいです
その炎を纏わせたそーちゃんを奮います
呪詛を帯びたなぎ払い攻撃です
UC起動
敵攻撃には激痛耐性、氷結耐性、第六感、見切りにカウンターで対応します



「シャルが初めてエンパイア以外の世界に行ったのがアックス&ウィザーズの世界でした」
 故郷を離れ、別の世界へと渡ったときの記憶を、清川・シャル(無銘・f01440)は忘れていない。豊かな自然と命の活力、そして冒険に満ち溢れた、武器と魔法と竜の世界。 
「あの世界はドラゴンがいて楽しいです、財宝も沢山です。治めている人もいます。阻止しなきゃですね」
 皆と共に戦い、勝ち取ったものを、ここで再び侵略の手に晒させるわけにはいかない。
 決然とした表情で書架の王を見据える少女の周囲で、多重展開された魔法障壁が万華鏡のように煌めいた。

「彼の地での戦いぶりは実に見事だった。しかし私もここで退くつもりはない」
 全身に開いた傷口を塞ぐように、ブックドミネーターの身体を氷の結晶が覆っていく。
 武器は素手のみ。だがそれだけで十分だと言わんばかりの気迫と闘気を漲らせ、稲妻の如き疾さで一気に距離を詰めてくる。知識量に応じて強化されたその戦闘力は凄まじい。
「退けないのは私も同じです」
 展開した障壁だけでは足りないと見たシャルは「Amanecer」のインカム、スピーカーとアンプ群を召喚。催眠効果を含むモスキート音を発して、鼓膜破壊と集中力低下を狙う。
 同時にスピーカーからは音だけではなく熱光線を発射。絶対零度を貫く灼熱の閃光にて、あわよくば敵を串刺しにし、そうでなくとも目を潰す算段だ。

「小癪な真似をする……」
 静謐の凍土に響き渡る騒音は、ブックドミネーターにとっては酷く耳障りなもの。完全に耳を潰されはしなかったものの、大きく集中を乱されたところに熱光線が襲い掛かる。
 咄嗟に空中で身を翻して回避するが、余計な機動を取った分だけ先制攻撃の威力は削がれる。視界も覚束ないまま繰り出された拳は障壁に受け止められ、そのうちの何枚かをガラスのように砕いたものの――シャル本人まで届いた衝撃は大きく威力を削がれていた。

「氷には炎を」
 紙一重の距離で敵の拳が止まった直後、シャルは地獄の炎を召喚して反撃へと転じる。
 罪人の穢れを灼き清める灼熱の業火は、永久凍土を溶かしながら一気に燃え広がり、氷結晶の鎧と翼を纏ったブックドミネーターに襲い掛かる。
「溶けてしまうがいいです」
「さて。逆に凍てつくのは貴様かもしれんぞ」
 ここで一旦後退するという選択肢もブックドミネーターにはあった。しかし彼は敢えて火中へと踏み込み、地獄の炎に焼かれながら再度拳を振るう。氷結晶を纏った王の拳が、今度こそ少女の身体に突き刺さった。

「……っ!」
 痛みや氷結には耐性があるものの、それでも無視できないほどの痛苦がシャルを襲う。
 一方のブックドミネーターも無傷ではない。炎を突き抜けたことで氷結晶の鎧の一部は溶け、本人も露出した身体のあちこちに火傷を負っている。
「痛み分け、という所か」
「いいえ、まだです」
 涼し気な表情を崩さない書架の王を、羅刹の少女はきっと睨みつけて。召喚した地獄の炎を、今度は愛用するピンクの鬼金棒「そーちゃん」に纏わせて、大きく振りかぶった。
 母の得意技であったという【鬼神斬】の構え。今だ闘志尽きぬその姿を目の当たりにした書架の王は、先んじて再び拳を叩き込もうとするが――刹那の見切りでシャルが勝る。

「地獄まで吹き飛ぶのです」
 窮地に研ぎ澄まされた第六感に導かれるまま、半身となって拳を躱し。直後に奮われた鬼金棒のカウンターが、業火と呪詛を帯びてブックドミネーターの身体に叩き込まれる。
「が――――ッ!!!」
 羅刹の膂力を最大限に活かした、単純で重い渾身のフルスイング。これにはさしもの書架の王も堪らず、砕けた氷と血潮を散らしながら戦場の彼方へと吹き飛ばされていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
時間停止中の妨害に呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱、全力魔法】で捕縛…。
更に縛鎖を通じて全力で【呪詛】を敵へ付与…ただし、表向き呪いを悟られない様隠蔽しつつ徐々に弱体化…。

縛鎖での捕縛の間に【九尾化・魔剣の巫女媛】封印解放…!
【呪詛】を纏った無限の魔剣による連続斉射を掛けつつ、凶太刀と神太刀の二刀で強化した凶太刀の高速化で接近…。
同様に強化した神太刀の神殺し…再生封じの力とここまで敵に蓄積した呪いとそれによる弱体化を使い敵の回復を無効化…。
後は二刀で一気に敵を斬り仕留めるよ…!

貴方の治癒はあくまで傷の治癒…呪いの解呪まではできない…。
更にここまで蓄積した呪いと弱体化で貴方の力を封じた…ここで討つ…!



「流石に……堪えるな。何とか傷を癒やさなければ……」
 痛烈な一打を喰らったブックドミネーターは、すぐには立ち上がれない程に消耗していた。激戦の中で猟兵達から付けられた傷は、彼の体力と生命力を着実に削り続けている。
 このままでは拙いと【時間凍結】を発動し、零時間詠唱にて治癒魔法を紡ごうとするが――そうはさせじと言うように、黒く染まった鎖が彼の身体に絡みつく。
「回復はさせない……」
 それは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が放った呪力の縛鎖。彼女が持てる全力の呪力を注いで織り上げた呪鎖は、たとえ時間を停められようと決して拘束を緩めはしない。

「休む暇もないな」
 新手の到来を察したブックドミネーターは、躰に力を込めて強引に鎖を引き千切るが、それまでの僅かな間に璃奈は【九尾化・魔剣の巫女媛】を発動し戦闘態勢を整えていた。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
 詠唱を唱え終えた後、そこに立っていたのは莫大な呪力を纏った九尾の妖狐。解き放たれたその力を彼女は無限の魔剣として顕現させ、書架の王目掛けて連続斉射を仕掛けた。
 ブックドミネーターはさっと氷翼を翻して魔剣の弾幕を躱し、距離を取ろうと高度を上げるが、巫女媛の封印開放により飛行能力を得ていた璃奈も敵を追って空に舞い上がる。

「逃がさないよ……」
 璃奈の左右の手にあるのは二本の妖刀。右手の「九尾乃凶太刀」は使い手に音速を超える速さを与え、左手の「九尾乃神太刀」は不死や再生力を封じ滅ぼす強大な呪力を宿す。
 さらに魔剣の巫女媛となった璃奈がそれぞれの魔剣・妖刀の力を強化することで、彼女は稲妻をも凌駕するスピードと、絶大な神殺しの力を共に得ることになる。
「逃げるつもりはない。貴様達とはいずれ雌雄を決する必要があるからな」
 二刀による凄まじい速度での連撃を繰り出す璃奈に対し、ブックドミネーターは徒手空拳を以て応じる。手負いなれどその実力は今だ侮りがたく、互角以上の力で刃を捌きながら、再び時間凍結を発動する隙を窺っていた。

(何だ……? 先程から違和感が……)
 だが、戦闘を続ける中でブックドミネーターは自身の身体に異変を感じていた。最初は微かなしこり程度だったそれは徐々に無視できない不調となり、やがて刀を弾く動作にも鈍りが現れ始める。それを見た璃奈はより苛烈に敵を攻め立てながら静かに呟く。
「ようやく効いてきたみたいだね……」
「この不調は、貴様の呪いか……!」
 時間凍結を阻止するために最初に放たれた呪力の縛鎖。あの時、璃奈は鎖を通じて敵に呪いを掛けていたのだ。それも表向きは呪いを悟られぬよう、徐々に相手を弱体化させる遅効性の呪いを。

「貴方の治癒はあくまで傷の治癒……呪いの解呪まではできない……」
 隠蔽された呪いは時間をかけて牙を剥き、今や書架の王に往時のような戦闘力は無い。
 この機を逃さず璃奈が振るった神太刀の一閃が、敵の身体に一筋の刀傷を刻みつける。
「ぐぁ……ッ!」
 神太刀に宿る神殺し――再生封じの力と、ここまでに蓄積された弱体化の呪いがひとつとなり、ブックドミネーターの回復能力は完全に無効化される。苦悶の声を上げた敵に体勢を立て直す暇を与えまいと、魔剣の巫女媛は一気呵成に攻め掛かった。

「ここまで蓄積した呪いと弱体化で貴方の力を封じた……ここで討つ……!」
 アックス&ウィザーズには渡らせないという強い意志が、璃奈の瞳の奥で炎のように燃え上がる。その気魄に応えるように、凶太刀と神太刀からは激しい呪力がほとばしる。
「やってくれるな……っ、ぐあぁぁ……ッ!!」
 目にも留まらぬ神殺しの連撃が、ブックドミネーターを斬り刻む。耐えうる術を奪われた猟書家の首魁は、苦悶に満ちた表情を浮かべながら、地上へと落下していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルナ・ステラ
終戦後の世界に難敵の襲来なんて...
阻止しないと!

零時間詠唱での回復をどうにかしないと、他の猟兵さんが頑張った分も台無しになってしまいそうです。

回復を逆の効果にできないでしょうか?
ユル(180度の方向転換)のカードなら...

星屑の様々な射撃で攻撃し星屑での攻撃を主だと思わせて、カードの攻撃を同時進行【2回攻撃】で星屑の攻撃より目立たないように行なっていきます。
カードを一撃でも与えれれば!
(もし妨害前に攻撃がきた場合、リボンの【オーラ防御】で耐えて、妨害成功までの時間を稼ぎます!)

カードの効果で回復を妨害できて少しでも隙ができれば【高速詠唱】でUCを発動します!
—太陽の剣で氷をも貫きます!



「終戦後の世界に難敵の襲来なんて……阻止しないと!」
 他世界侵略を企む猟書家達の計画を止めるために、ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)は戦地に赴く。全てが氷に閉ざされた絶対零度の氷結世界にて、彼女を待ちうけていたのは猟書家の首魁――『書架の王』ブックドミネーター。
(零時間詠唱での回復をどうにかしないと、他の猟兵さんが頑張った分も台無しになってしまいそうです)
 見たところ敵はかなりの深手を負っていて、万全時と比べれば戦闘力も落ちているようだが、まだ油断はできない。ひとたび【時間凍結】を発動されてしまえば、ここまでの奮戦の結果が全て、元の木阿弥に戻りかねないのだ。

(回復を逆の効果にできないでしょうか? ユルのカードなら……)
 ルナは一計を案じて敵の前に飛び出すと、杖のように掲げた魔法の箒「ファイアボルト」から「ティンクルスターダストショット」を放つ。様々な色に煌めく星屑の弾幕を、ブックドミネーターは氷結晶の翼を羽ばたかせて避けた。
「星属性の魔術師か。美しい魔法だが、この程度で私を止められると思わぬことだ」
 何度も傷付けられた翼でも、機動力の高さは今だに健在。流星雨のように戦場に散りばめられた星屑の大半は回避されてしまうが、ルナはまだ慌てない。見た目にも派手な星屑の攻撃は注意を引くための囮、本命はその影に紛れさせた「マジックルーンカード」だ。

(カードを一撃でも与えれれば!)
 "180度の方向転換"を意味するユルのカードが命中すれば、今の戦況はまさに逆転する。
 当たらないのを承知で射撃を続けるルナの様子に何かを感じ取ったか、ブックドミネーターは星屑の雨をくぐり抜けながら接近すると、おもむろに拳を振り下ろした。
「何を狙っているかは知らないが……先に仕留める」
「……!」
 頭に結んだ「ミルキーウェイリボン」から咄嗟に魔力を引き出し、オーラの防壁を張るルナ。だがそれでも防ぎ切れなかった衝撃は、彼女の身体をボールのように吹き飛ばす。

「今のうちだな」
 星屑の攻撃が止んだのを確認すると、ブックドミネーターは【時間凍結】を発動する。
 凍りついた時の中で紡がれる、彼のみに聞き取れる零時間詠唱は、これまでに蓄積されたダメージを急速に治療していく――はずだった。
「……何故だ? 傷が回復しない……ぐぅッ?!」
 術者の傷を癒やすはずの呪文は逆に傷を悪化させ、書架の王の表情が怪訝から苦痛へと変わる。見れば、彼の衣服の目立たない箇所に、一枚のルーンカードが張り付いている。

「けほっ、こほっ……上手くいきました!」
 負傷の痛みを堪えて立ち上がったルナが、苦悶する敵を見てぎゅっと拳を握る。攻撃を受けたあの一瞬、彼女は敵の隙をついてユルのカードを付与するのに成功していたのだ。
 ルーンの効果により回復の妨害に成功した、この隙を逃すわけにはいかない。彼女は素早く呪文を唱えると、残されたありったけの魔力を使ってユーベルコードを発動する。

「天体の力を授かりし剣よ敵を貫ぬいてください!」

 顕現するのは【十天の剣】。宇宙に浮かぶ十大天体がひとつ――太陽の属性を宿した数百本の剣が、複雑な幾何学模様を描きながら飛翔する。灼熱の光を帯びた切っ先が向かう先は、この凍結世界の主であるブックドミネーターだ。
「――太陽の剣で氷をも貫きます!」
 標的を包囲して一斉に襲い掛かる剣の嵐に、為す術なく貫かれるブックドミネーター。
 凍土をも溶かす灼熱の刃は、書架の王の冷たい身体も焼き焦がし。苦痛に満ちた呻き声が戦場に木霊した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナギ・ヌドゥー
この男がオウガ・オリジンの力を奪った張本人……
見逃して他世界に放つのは危険過ぎる。
アックス&ウィザーズで捉えられる保証はない、ここで雌雄を決するのみ。

武器・冥き殺戮衝動の波動で周囲に【呪詛・殺気】による暗黒オーラの結界を張る【結界術】
敵を蝕み【継続ダメージ】を与える呪いの波動だ
いかなるオブリビオンとて攻撃してくれば呪詛の影響を受ける
攻撃を【オーラ防御】で受けながらじわじわと蝕んでやろう

書架の王、アンタにもこの死の衝動を受けて貰うぞ!
UC「殺鬼影身」発動
【殺気】を纏った【残像】を無数に飛ばすと同時に分身に【切り込み】させる
全ては本物の殺意
だが実体は一人のみ、これを瞬時に見切れるかい?


キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

どちらかを倒せばどちらかが力を増す、か…
厄介な敵だが、放置する事も出来んな

デゼス・ポアを飛ばし、全装備を使ってオブリビオンを攻撃
一斉射撃や毒攻撃、串刺しなどを使い、全力で足止めを行い、デゼス・ポアが放つ刃で召喚したオブリビオンを喰らう

その牙が強ければ強い程、私の爪は鋭くなる…
さぁ、『狂乱の声を上げろ、デゼス・ポア』

UCを発動
デゼス・ポアが喰らった残滓を全身に纏い、残ったオブリビオンを倒したら、そのままブックドミネーターに肉薄し、呪詛を込めた鉤爪で一気に切り裂く

時間凍結か…フン、ならばお前一人だけで永遠にこの世界で止まっていろ
過去から這い出し、世界を蹂躙するお前が進める未来はない



「この男がオウガ・オリジンの力を奪った張本人……」
「どちらかを倒せばどちらかが力を増す、か……」
 凍結世界で『書架の王』と対峙しながら、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)とキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は呟く。猟書家の首魁をここで討てば他世界の脅威は薄らぐが、それは力を奪われていたオウガ・オリジンの復権も意味する。
「厄介な敵だが、放置する事も出来んな」
「見逃して他世界に放つのは危険過ぎる」
 相反する脅威を天秤にかけた上で、2人はブックドミネーターと戦うことを選択した。
 書を司る者の名に違わず、多くの秘密と知識を持つ彼を野放しにすることはできない。

「アックス&ウィザーズで捉えられる保証はない、ここで雌雄を決するのみ」
「いいだろう。ならば私も全力を以て、かの地への血路を切り開くだけだ」
 冥き殺戮衝動の波動を纏ったナギの宣言に対し、書架の王もまた冷徹な表情で応じた。
 ふわりと浮かんだ蒼氷が砕け、その中から異形の怪物が姿を現す。今戦っている敵にとって最も脅威となるオブリビオンを作り出すブックドミネーターの秘儀【蒼氷復活】だ。
「『過去』に勝利し続けられる者はいない。貴様達はここで私の礎となれ」
「それでも戦い続けるのが、私達猟兵だ」
 キリカは襲ってくるオブリビオンに向けて呪いの人形「デゼス・ポア」を飛ばし、自らは手持ちの全装備を使って敵の足止めに徹する。両手の自動小銃と機関拳銃が銃声を轟かせ、随伴する浮遊砲台がビームを放つ――だがそれでも敵の動きは僅かに鈍っただけだ。

『おオオォォォぉぉぉッ!!!』
 聞くも悍ましい咆哮を上げて一斉射撃を弾き返し、爪牙を振るう異形のオブリビオン。
 その前にさっと立ちはだかったのはナギだった。抑えきれない殺戮衝動が具現化した暗黒のオーラが、呪詛と殺気の結界となってオブリビオンの攻撃を阻む。
「敵を蝕みダメージを与える呪いの波動だ」
『グオォッ!?』
 冥き波動と接触した牙は猛毒に汚染されたように変色し、異形の口から悲鳴が漏れる。
 いかなるオブリビオンとて攻撃してくればこの呪詛の影響を受けるのは免れない。攻防が一体となった殺戮衝動の波動で、ナギはじわじわと敵を蝕んでいく。

「その牙が強ければ強い程、私の爪は鋭くなる……」
 敵の動きが止まったのを見逃さず、キリカの操る呪いの人形がオブリビオンに近付く。
 ケタケタと狂ったように哄笑するデゼス・ポアの躯体から放たれた錆びついた刃は、耐え難いほどの苦痛と共に異形を切り刻み、そして喰らう。
「さぁ、『狂乱の声を上げろ、デゼス・ポア』」
 人形が喰らったオブリビオンの残滓を全身に纏い、キリカは【呪詛の獣】を発動する。
 その姿はデゼス・ポアとほぼ一体化したような外見となり、フリル付きのドレスに顔を覆うオペラマスク、そして袖から覗く鋭い鉤爪が、彼女を美しくも危険な獣として彩る。

「さあ、行くぞ」
 キリカは残っているオブリビオンに飛びかかり、両手の鉤爪で引き裂く。蒼氷復活されたオブリビオンの残滓から形作られた爪だ、その鋭さは同格の敵を屠るのに不足はない。
 攻めを担当するのが彼女なら、護りは引き続きナギが担当する。逆襲しようとするオブリビオンの前に立ちはだかり、暗黒のオーラで攻撃を受け止める――そして呪いに侵された哀れな敵を、呪詛の獣が確実に仕留めていくという連携だ。

「書架の王、アンタにもこの死の衝動を受けて貰うぞ!」
 創造されたオブリビオンの群れをあらかた撃破したところで、ナギは【殺鬼影身】を発動。漲る殺戮衝動より生みだされるのは、殺人鬼としての彼の本能を具現化した分身だ。
 姿かたちも本物と瓜二つのそれは、書架の王に向かって一目散に襲い掛かり――それと同時に彼は殺気を纏った残像を無数に飛ばす。
「これは……っ」
 どれが本命かブックドミネーターは見極めようとするが、残像と分身は外見はおろか放つ気配さえほぼ同じ。まるで死神の大群に襲い掛かられるような錯覚すら感じるほどに。

「全ては本物の殺意。だが実体は一人のみ、これを瞬時に見切れるかい?」
 酷薄な笑みを浮かべるナギの宣告から間を置かず。残像の中に紛れて肉迫した殺鬼影身は、今だ見極めに窮する標的へと、その手に握り締めた「歪な怨刃」を振り下ろす。肉が引き裂かれる音と血飛沫の音が戦場に響き、分身はその手応えに心地よさそうに嗤った。
「ぐぅ、ッ」
 苦痛に顔を歪め、刃の間合いから後退するブックドミネーター。だが、残像に紛れて距離を詰めていたのは分身だけではなくもう1人――異形の残滓を纏った呪詛の獣がいた。

「時間凍結か……フン、ならばお前一人だけで永遠にこの世界で止まっていろ」
 時を操作するかの者の能力を、キリカはさぞ下らないとでも言いたげに吐き捨てて。
 その直後、幾多のオブリビオンの血に染まった鉤爪が、書架の王の身体を引き裂く。
「過去から這い出し、世界を蹂躙するお前が進める未来はない」
「……ッ!!!」
 あふれ出す血飛沫が蒼氷の大地を紅く染めていく。立て続けの連撃を受けて失血量が限界に達したか、ブックドミネーターは自らが作った血溜まりの中にガクリと膝を付いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒玻璃・ミコ
※美少女形態

◆行動
辿り着きましたよ、ブックドミネーター
訳知り顔が気に入りません、一発殴らせなさい!

全身を覆って居るのに自身は格闘戦を挑めると言うことは
任意に選択しているのでしょう
ならば積み重ねた戦闘経験と五感を研ぎ澄まし念動力を以て私も空を飛び
重要な臓器はその位置をずらした上で即死だけは避けましょう
人の身に擬態するのは慣れたもの、敢えて攻撃を誘導してでも、です

第一波を凌いだならば反撃開始です
すれ違いざまに【黄衣の王命】による神風を放ち王命を告げます

此度は『汝、留まるなかれ』

私は脳内麻薬を過剰分泌させて心身共に準備万端
時と生命は流れるもの、貴方の好きにはさせません

※他猟兵との連携、アドリブ歓迎


九重・玄音
書架の王、つまるところ知識の番人ということかしら。
それなら知識ですら触れられない力で滅ぼす。

・POW
相手のUC発動を見届けてから、アーマード・ベルセルクに騎乗。拠点防御でその場に機体を固定するわ。
エネミーリムーバーとオプティカル・リアクターを接続。オーラ防御と氷結耐性、機体の防御力を信じて狙撃準備。

時間凍結、だったかしら。冷たい停滞の中から、私はあなたを救いたいと思ったのよ。

私が殺めたいと思っているのはオウガ・オリジンのみ。あなたは勝手に滅んでもらわないといけないの。だから、その無敵要塞からあなたの肉体だけを掬いだす。
執念と無関心を、エネルギーに!

【アドリブ・絡み歓迎】



「辿り着きましたよ、ブックドミネーター。訳知り顔が気に入りません、一発殴らせなさい!」
 黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)が今回の依頼に参戦した動機と目的は、おそらく参加者の中で最もシンプルだった。黒いスライム形態から白髪の美少女に変身した彼女は、氷界に君臨する『書架の王』ブックドミネーターにびしりと指を突きつける。
「書架の王、つまるところ知識の番人ということかしら。それなら知識ですら触れられない力で滅ぼす」
 一方の九重・玄音(アルターエリミネーター・f19572)は冷静に、相手の能力とそれを出し抜く戦術を練っている。対照的なテンションの2人だが目的とするのは同じ、ならば強大な敵を倒すために一時の共闘を結ぶのもなんら不思議なことでは無かった。

「殴られる程度なら事によっては許してやっても構わんが。まだここで滅ぼされるわけにはいかんな」
 血溜まりの中から立ち上がったブックドミネーターは、出血で紅く染まった身体を蒼氷の結晶で覆い、凄まじい魔力を漲らせる。深手を負っていながらも表情は冷徹なままだ。
 敵のユーベルコード発動を見届けると、玄音は四脚の中型兵装「アーマード・ベルセルク」とドッキングし、拠点防御形態としてその場に機体と自らを固定する。
「時間凍結、だったかしら。冷たい停滞の中から、私はあなたを救いたいと思ったのよ」
 滅ぼすのではなく、救う、と言い換えて。エネルギーを光子に変換する「オプティカル・リアクター」を光子砲「エネミーリムーバー」に接続し、チャージを行いながら狙撃準備に入る。

「生憎と私は救いを求めてはいない。そして万物はいずれ過去となり、停滞するのだ」
 ブックドミネーターは淡々とそう語ると氷の翼で飛翔し、上空からの急降下攻撃を仕掛ける。玄音の準備が完了する前に、最大威力の先制攻撃で跡形もなく粉砕するつもりだ。
「汝にも死という永遠の停滞を与えよう」
「そうはさせません!」
 ブックドミネーターと玄音を結ぶ一直線上に割り込んだのはミコ。念動力を以て自らも空へ飛び上がった彼女は、味方を庇うように大きく腕を広げて敵の前に立ちはだかった。

(時間凍結の氷結晶は全身を覆って居るのに自身は格闘戦を挑めると言うことは、任意に選択しているのでしょう)
 感情的に見せかけた裏で冷静な思考を巡らせて、ミコは積み重ねた戦闘経験と五感を研ぎ澄ませる。篭手のように氷結晶で覆われた拳が、どのような軌道を描くか見切る為に。
「邪魔をするのならまずは貴様からだ」
 轟と唸りを上げて振り下ろされた右拳が華奢な身体を貫き、少女は血の代わりに真っ黒な体液を撒き散らしながら落下していく。書架の王の加速はそこで留まることはなく、玄音の元まで一気に降り立つなり空いた左拳を叩き込んだ。

(耐えられる、はず……っ)
 機体の防御力と展開したオーラの障壁、着用した防具の耐寒性能を信じて、玄音は狙撃体勢を崩さなかった。障壁に突き刺さった氷の拳はオーラを吹き飛ばし、アーマード・ベルセルクの装甲を一撃で中破させたが――駆動部とリアクターは辛うじて生きていた。
 ミコが身を挺して書架の王の速度を少しでも殺していなければ、被害はより深刻なものだっただろう。しかしまだ彼女が動けず、窮地に立たされていることに変わりはない。
「一撃では砕けないか。ならばもう一度……」
 チャージ完了まであと僅か。しかしその僅かの猶予を許さず敵は再び拳を振りかぶる。
 だが、その時。拳に貫かれ倒れたはずのミコが、ぱっと起き上がると高らかに叫んだ。

「いあいあはすたあ…………あいあいはすたあ!」

 其は"屠竜の魔女"ミコの主たる"黄衣の王"の化身を降臨させる祝詞。
 蒼氷の世界に音もなく顕れた黄衣のカミは、激しい神風を迸らせる。

「なに……ッ?!」
 確かに仕留めた筈だった。書架の王の知識では、与えた傷は人間には致命傷となるもの。ただ1つ彼が誤解していたのは、ミコの外見はあくまで擬態に過ぎないということだ。
 人の身に擬態するのは慣れたもの。攻撃を受ける直前、ミコは重要な臓器の位置をずらすことで死を免れていた。敢えて敵の前に立ちふさがったのも、味方を守るついでというのもあるが、敵の攻撃位置を誘導する狙いが大きい――かくして敵の第一波を凌いだ彼女は、反撃の機を窺っていたというわけだ。

「汝、留まるなかれ」
 黄衣の王の神風を浴びたブックドミネーターに、ミコは【黄衣の王命】を告げる。
 立ち止まりさえしなければいいだけの簡単なルールのようにも思えるが、彼女がその王命に含んだ意図はただ単純な肉体の動作だけに限らない。
「時と生命は流れるもの、貴方の好きにはさせません」
「これは―――ッ!!」
 書架の王が誇る力のひとつ、時間凍結能力の禁止。この王命を破った者には容赦のない裁きが下るだろう。ダメージを負う覚悟がなければユーベルコードを解除するしかない。

「……やむを得ないか」
 現状の自らの状態を鑑み、これ以上のダメージを嫌ったブックドミネーターは、已む無く全身を覆う氷結晶の時間凍結を解除する。それを見たミコはにやりと愉しげな笑みを浮かべ、拳を振りかぶると一目散に飛び掛かった。
「さっき殴られたぶんもお返しです!」
 身体をぶち抜かれた時に脳内麻薬を過剰分泌させて準備は万端。リミッターの外れた腕力で振り抜かれた拳は、氷結晶の護りを粉砕し、ムカつく野郎の顔面に突き刺さった。

「が、ッ!!」
 当初の宣言通りに一発ぶん殴られたブックドミネーターがふっ飛ばされた先。そこは玄音のエネミーリムーバーの射線上。味方の援護もあって遂に狙撃準備を完了させた"アリス"の少女は、照準を合わせながら静かに告げる。
「私が殺めたいと思っているのはオウガ・オリジンのみ。あなたは勝手に滅んでもらわないといけないの。だから、その無敵要塞からあなたの肉体だけを掬いだす」
 オウガ・オリジンへの執念と、それ以外の者への無関心をエネルギーにして、放つは【救済:摘出魔術】。肉体を傷付けず、その中に宿る害をなす存在のみを撃ち抜く狙撃。

「あなたの心を、見せて」

 エネミーリムーバーの砲身より放たれた光子の奔流は、狙い過たず書架の王を貫いた。
 閃光が突き抜けていった後の身体に、新たな傷はひとつもなく。だが、それ以上に深刻で致命的な"救い"が、あるいは"滅び"が、かの者の心を灼いた。
「お、おぉぉぉ……ッ!!!!」
 喉の奥から絞り出すような呻き声を上げて、よろよろと地上に墜ちていく書架の王。
 汝、留まるなかれ――冷たく停滞した氷の世界に君臨していた王者は、その先にある"死"という結末へと、運命の秒針を進めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
いつも音楽が鳴り響き、司会者としてニュッと姿を現した。

【黒柳カビパンの部屋】の始まり。書架の王が見えない力で逆らえずソファに座ると「ようこそ、いらっしゃいました!」と迎えられ、ゲストとして招かれてしまった。
書架の王が初対面の黒柳カビパンに抱いた感情は『うぜぇ』

そして始まるマシンガントーク。会話の主導権を掴んだまま離さない。
書架の王はうぜぇ→戸惑い→困惑等、ツッコミ所満載なトークに感情を翻弄される。詠唱という感情を頭の中から排除した。

「ねぇ…私たちの勝ちにしない?貴方もお強いけど、結局最後に勝つのはこっちだし」
後半の黒柳カビパン煽る。書架の王は今までくらった事のない精神的ダメージが身体に走った。



 ルールル・ルルル・ルールルー――。

 お茶の間で聞いたことがあるような無いような気がするBGMが、凍結世界に鳴り渡る。
 『書架の王』ブックドミネーターが落下した場所。そこはカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)が主催する【黒柳カビパンの部屋】の真っ只中だった。
「何なのだ、ここは……?」
 困惑しながらも見えない力に抗えず、凍土の上にでーんと置かれたソファに座ってしまうブックドミネーター。待ってましたとばかりに「ようこそ、いらっしゃいました!」と、カビパンはとてもいい笑顔で彼を迎えた。

「本日はゲストをお招きしております。今話題沸騰中、絶対零度の凍結世界にお住まいの書架の王ブックドミネーターさんです。沸騰中なのに絶対零度って面白いですねぷぷぷ」
 いつの間にかゲストということにされてしまったブックドミネーター。彼が初対面の黒柳カビパンに抱いた感情は『うぜぇ』だった。何ならすぐに張り倒してしまいたかったが、現状負ったダメージを考えれば少しでも休息する時間が欲しいという事情もあった。

「しかし寒いですねここ。こんなところにいたら心まで寒くなりませんか? ここはひとつゲストさんの小粋なジョークで場を暖めていただきましょう」
「は? いや、私はそういうのは……」
「できない? あらあら、そうなんですか。では仕方ありませんねぇ。ええ無理強いはできませんし、ええ。聞いてみたかったんですけどねぇ書架の王の爆笑ジョーク」
 だが、ソファに身体を休ませながら【時間凍結】で傷を治療しようと思っても、カビパンのマシンガントークがそれを妨げる。相手に口をはさむ間を与えずに喋りまくりつつ、合間合間に無茶振りやウザ絡みが無視できないレベルで入ってくる。降霊術によってその身に宿した伝説級のトーク力が、ブックドミネーターの集中を乱しまくっていた。

「ではここはあたくしのナウなヤングにバカウケなギャグで場をあっためておきましょう。あんまり面白すぎて氷が溶けてしまったらごめんなさいね?」
 それからもカビパンは会話の主導権を掴んだまま離さない。ブックドミネーターの感情はうぜぇ→戸惑い→困惑等に次々と移り変わり、ツッコミ所満載なトークに翻弄される。
「あーたご存知かしら? 隣の家に塀ができたんですって」
「…………」
「ちょっと、そこは"へぇー"って言うところでしょう。まったく分かってませんわねぇ」
 うぜぇ。これほどまでにシンプルな感情が脳内を占めるのは初めての経験だった。あまりのウザさに書架の王は詠唱という思考を頭の中から排除し、なぜ自分はこんな所に来てしまったのかという後悔に苛まれていた。

「ねぇ……私たちの勝ちにしない? 貴方もお強いけど、結局最後に勝つのはこっちだし」
 番組も後半に入って、ここぞとばかりに黒柳カビパン煽る。もう既に色んな意味で参っていたブックドミネーターの全身に、今までくらった事のない精神的ダメージが走った。
 さっさと席を立ってしまいたかったがそれも出来ない。カビパンから放たれる得体の知れない強烈なプレッシャーに圧されていたのもあるし、今更ここで逃げればそれこそメチャクチャに煽られてメンタルをへし折られるのは目に見えていたから。
(……早く終わってしまえこんな番組……!!)
 書架の王はただそれだけを願い、かつて味わった事のない類の地獄に耐えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

卜二一・クロノ
 神のパーラーメイド×精霊術士、22歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、異性の前では「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「時を乱す存在を、私は赦さない」
 絶対零度の凍結世界に降り立つ、一柱の神。時空の守護神たる卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)は凛然とした態度で『書架の王』ブックドミネーターにそう告げた。
 時空を凍結させ、オブリビオンという『過去』を現世に蘇らせるかの王の力は、正しき時の流れを乱すもの。猟兵としてはまだ経験の浅い彼女ではあったが、その様な存在を見過ごす事は出来ず。この依頼の他でも、既に幾度となくこの強敵に挑み続けていた。

「時の流れを乱す者には、厳罰をもって処するのみ」
「たとえ神であろうとも、私を裁くことはできない」
 厳格な態度を取るクロノに対し、ブックドミネーターもまた厳かに言葉を返すと、傷ついた全身を氷で覆う。時間凍結能力の具現でもあるかの氷結晶によって書架の王の力は増幅され、その身は重力の軛より解き放たれふわりと空に舞い上がる。
「汝が時の摂理を守るというのなら、私はその摂理さえこの拳で砕いてみせよう」
 氷結晶を纏った拳をぐっと握り締め、蒼い閃光の如き速さで空を翔ける。またたく間に両者の距離はゼロとなり、クロノが避ける間もなく先制の一打がその身に叩き込まれる。

「去ね、時の神よ」
 手応えはあった。拳に纏った蒼氷は鮮血で紅く染まり、骨を砕き臓腑を潰す感触が伝わってくる。ごほっ、と口から大量の血を吐いて、クロノの身体はふらりと糸が切れたようによろめき――しかし地に倒れ伏す間際で、ぐっと両足に力を込めて踏みとどまる。
「……捉えた」
「なんだと?」
 冷徹であった書架の王の表情が変わる。人であれば致命傷であろうダメージを負っても、クロノの眼はまだ死んではいなかった。それは彼女が不老不死の神だからというだけでなく、時の守護神としての使命を、存在意義を果たさんとする意思の力が成せること。

「時の流れを停滞させる力――これは神罰ね」
 囁くような声量でクロノが呟くと、血に染まった蒼氷が溶けるように消え去り【神罰・光陰の矢】が発動する。それは我が身を捉えた敵のユーベルコードを自らの力に変えて放つ、因果応報の裁きを体現した神のユーベルコード。
「……ッ!!」
 至近距離より射られた光陰の矢は、蒼氷の解除によって露わになったブックドミネーターの急所――これまでに猟兵達から受けてきた負傷箇所を貫き、彼に苦悶を上げさせた。

「言ったはずだ。我は汝を赦さないと」
 口調を神としての厳かなものに変え、クロノは改めて宣言する。多少の負傷を厭わず、神罰を下さんとする覚悟から放たれた光陰の矢は、敵を刺し貫いたまま抜けなくなる。
 苦痛を与え続ける神の鏃に顔をしかめながら、書架の王はやむなく後退するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──ハッ、訳知り顔なのが気に食わねえな
何もかも見透かしたみてえな、スカしたツラだ
必ず滅ぼす

俺を最も知るオブリビオンは、『アイツら』しかいねえ
──『冬寂』
独りか?それとも全員揃い踏みか

どっちでも関係ねぇ
ニューロン【ハッキング】、サイバネオーバーロード
強化された身体能力と知覚で【見切り】、攻撃を紙一重で避ける
避けながらカウンターを準備、Jackpotの形見、銃を"左手"で構える
覚醒めろ起源、究極の魔弾
人数分の寿命を消費し、撃ち込む──『停滞』と『鎮静』

さて、書架の王
今撃ったのは銃だけじゃないぜ
右腕のクロスボウ、それも混ぜておいた──お前へのプレゼントだ
炸薬入りのエクスプロシブ・ボルトだ…受け取れ



「……これが『六番目の猟兵』達の力か。群竜大陸での戦いもそうだったが、よく研鑽され、強者との戦いに慣れている」
 凍結世界にて激戦が繰り広げられる中、ブックドミネーターは自らの深刻な負傷を確かめて独り言ちる。戦況はすでに彼の劣勢であったが、その表情に焦りはなく、敵である猟兵達の実力を冷静に評価する余裕さえあった。
「これは私の未来見の臣民(ハビタント)を取り戻すのも骨が折れそうだ」
「──ハッ、訳知り顔なのが気に食わねえな。何もかも見透かしたみてえな、スカしたツラだ」
 そんな『書架の王』の態度に嫌悪と不快を示すのはヴィクティム・ウィンターミュート(End of Winter・f01172)。この手の輩はただ鼻持ちならないだけでなく、事実厄介なのがタチが悪い――知識と情報とは力だ。電脳魔術士である彼はそれを熟知している。

「必ず滅ぼす」
「やってみるがいい」
 刺し殺すような視線を向けるヴィクティムに、ブックドミネーターは淡々と応じながらその力を行使する。書を司る者としての膨大な知識から、敵対者に最も有効なオブリビオンを召喚する【蒼氷復活】――蒼き氷が作り出すのは、青年に見覚えのあるヒトの形。
(俺を最も知るオブリビオンは、『アイツら』しかいねえ)
 それはヴィクティムの宿敵であり、かつての仲間(チューマ)達。あるいは彼の人生のおいて最も荒々しく躍動していた日々を共に駆け抜けた間柄であり、彼の魂に刻まれた終わらない冬の象徴、過ぎ去りし残冬。
「──『冬寂』。独りか? それとも全員揃い踏みか」
 どっちでも関係ねぇ。と、吐き捨てるようにそう呟いた青年は、蒼氷を纏った敵が襲い掛かってくる前に自らのニューロンをクラックした。全サイバネの機能をオーバーロードし、身体能力と知覚能力を強化――持てる限界以上の力で敵の攻撃を捌き切るつもりだ。

「よう、Jackpot」
 銃口を向ける黒髪の少年に皮肉げに声をかける。返事は銃声だった。霊視によるあらゆるステルスの看破と未来予知レベルの超精密射撃――よく知った手口を紙一重で避ける。
 間を置かず追撃が来る。目にも留まらぬ神速で踏み込んできたのは、パンクな装束に身を包んだ紫髪の女。概念すらもバラバラに『解体』する超高速の拳が、真っ向から迫る。
「Gremlinも、相変わらずだな」
 拳圧にさえ触れないよう、全身の神経と筋肉を酷使して躱す。互いによく知る間柄だっただけに、どう動くのかも、その脅威も、よく知っている。それは向こうにしても同じ。
 些細な動きのクセまで把握した『冬寂』の戦士達の猛攻に、ヴィクティムは徐々に逃げ場を失っていく。

「かつての仲間に命を狙われる気分はどうだ?」
 戦いを眺めるブックドミネーターの酷薄な問いに、ヴィクティムは何も答えなかった。
 その表情はまるで凍りついたように冷徹なまま。紙一重の回避を続けながら、以前とある依頼で持ち帰った、Jackpotの形見の銃を左手で構える。
「覚醒めろ起源、究極の魔弾」
 弾倉に込めるのは己の命。対峙する人数分に必要な夥しい量の寿命を消費して、発動するのは『停滞』と『鎮静』の起源。視線の先にいる黒髪の英雄が、過去と成り果てさえしなければ、本来目覚めさせていたはずの力であった。

「俺の生命も、停まってしまえたらな」
 虚無感に満ちた呟きと共にトリガーが引かれ――【そして、全ては魔弾が黙らせた】。
 魔弾を撃ち込まれた2人の『冬寂』は、即座に『停滞』し『鎮静』し、消え去っていく。
 あまりにも静かで、呆気のない幕引き。その様子を見ていたはずのブックドミネーターでさえ、一瞬何が起こったのか理解できないほど。
「……Arsene」
 冬寂の魔弾と解拳の使い手は、最期の瞬間にヴィクティムのハンドルを呼び――。
 それきり静かに、何も遺すことなく、氷結の世界から骸の海へと還っていった。

「さて、書架の王。今撃ったのは銃だけじゃないぜ」
「……なに?」
 『冬寂』の消滅を見届けてから、ヴィクティムは静かに告げる。見ればいつの間にか彼の右腕の義肢からクロスボウが展開され、書架の王の胸に一本のボルトが刺さっている。
「それも混ぜておいた──お前へのプレゼントだ」
 左手で銃を撃つと同時に、『冬寂』だけでなく此方にも狙いを付けていたというのか。
 青年の冷たく、酷薄な笑みに、思わずブックドミネーターが背筋に寒気を覚えた直後――胸に突き刺さった一撃が炸裂する。

「炸薬入りのエクスプロシブ・ボルトだ……受け取れ」

「が―――ッ!!!!」
 体内で爆ぜたボルトは標的の肉や臓器をズタズタに抉り、深刻なダメージを与える。
 苦悶に絶叫するブックドミネーターの胸元は大きく抉られ、見るも無残な傷跡が、そこにははっきりと刻まれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
A&Wに隠された謎、そして第六の猟兵…
多くを知るが故に『知識』の価値を知る貴方はお答えすることはないのでしょう
その一端を知る資格示すため、そしてA&Wの人々の安寧の為
その力、削がせていただきます

時間凍結への対処手段無い以上回避一択
自己●ハッキングで演算速度を●限界突破
センサーの●情報収集で相手の飛翔格闘戦速度計測
偏差射撃行う●スナイパーの要領で収納スペース内の投光器の●目潰しで迎撃
光の時間を止めても眩いだけ
攻撃正確性を削ぎ回避

姑息と思いますか、私もです
ですが、この一時凌ぎこそが…!

格闘戦の為の可動域や視界確保の為、結晶が無い箇所●見切り
相手に背向けた状態でUCで●だまし討ち
隙間から切り刻み



「アックス&ウィザーズに隠された謎、そして第六の猟兵……多くを知るが故に『知識』の価値を知る貴方はお答えすることはないのでしょう」
 手負いの『書架の王』を前にして、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はそう語りかける。今だ猟兵達も知らない数々の謎や秘密――その真実を知るであろう猟書家の首魁は、たとえ追い詰められてもそれを明かすつもりはないようだった。
「その一端を知る資格示すため、そしてアックス&ウィザーズの人々の安寧の為。その力、削がせていただきます」
「いいだろう。彼の地にて眠る答を得るために、私も全力でお相手しよう」
 ここを命の賭け時と定めたブックドミネーターは、全身を時間凍結の力を帯びた氷結晶で覆い、同じく氷の翼を羽ばたかせて飛翔する。その膨大な知識量に比例した戦闘力は、たとえ素手であっても恐るべき実力を発揮する。

(時間凍結への対処手段が無い以上、回避一択)
 トリテレイアは即座に判断を下すと、己の電脳をハッキングし演算速度を引き上げる。
 全身に搭載されたマルチセンサーから得る情報を、限界を超えた演算力で解析し、敵の飛翔と格闘戦の速度を計測する。
「この一撃、貴様は凌げるか」
「凌いでみせます……!」
 蒼い閃光の如き機動とその未来位置を読み切り、物資収納スペースに用意しておいた投光器を作動。高速飛翔体を狙撃する偏差射撃の要領で照射された光は、過たずブックドミネーターの眼を灼いた。

「くっ、目を……」
 いかな時間凍結能力とて、光を停めたところで眩しいだけだ。視界を眩まされた書架の王の攻撃は正確性を欠き、その機に乗じてトリテレイアは脚部スラスターを全力稼働。凍土の上を滑るように駆けて、破壊と停止をもたらす氷拳を紙一重のところで回避する。
「……なかなかやる。だが大きな口を叩いた割には、拍子抜けだな」
「姑息と思いますか、私もです」
 初手を凌いだとはいえ戦況が劇的に好転したわけでは無い。投光器での目潰しはしょせん不意を突いた一時凌ぎに過ぎず、敵はすぐに空中から追撃の構えを取る。速度と機動性において優位に立つ書架の王は、皮肉を投げかけながら騎士の背後を取った。

「ですが、この一時凌ぎこそが……!」
 投光器の射界とメインカメラの視界の外から迫る書架の王。追撃の猛打が機体を粉砕せんとする間際、トリテレイアは【収納式ワイヤーアンカー・駆動出力最大】を起動した。
 敵に向けられた背面装甲が開き、その中から複数本のワイヤーアンカーが射出される。思いもよらぬ隠し武装でのだまし討ち、これを予測するのは書を司る者にも困難だった。
「なんだと……っ」
 稼働時間を代償にして最大出力で駆動するワイヤーは、熱伝導と高速振動により灼熱を纏った極細の刃と化す。その斬閃は背を向けていても狙いは正確のまま、標的の肉体を切り裂いた。

「騎士かと思えば、とんだ魔物だったか」
 そう呟くブックドミネーターの口調に皮肉の色はなく、それは自らの予測を超えた敵手への称賛に近い。彼我が交錯する一瞬の内に、トリテレイアは敵の氷結晶に覆われていない箇所――格闘戦の為の可動域や視界確保の部位を見切り、その隙間を切り刻んでいた。
「どう仰られようと、これが私の戦いです」
「成程。認めよう、貴様の力と覚悟を」
 結晶の隙間から流れ出した血潮で全身をさらに紅く染めながら、書架の王は告げる。
 目的を達成する為ならば時に手段を選ばぬ鋼の騎士道。それは確かにかの者の力を大きく削いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ
猟書家の頂点と言うだけあって、流石、一筋縄ではいかないようだな。
……だが、この程度を越えられずして何が猟兵か!

零時間なのは詠唱だけであって、治療が零時間で終わるわけではないのだろう?
ならば強化された視力で治療されかかっている傷を逐一把握し、『華燭之典』で全て狙い撃つ!
弾丸は誘導弾。属性は傷口を広げるための烈風、傷を焼いて回復を阻害するための延焼、そして治療されても異物を内部に残すための礫と毒だ。
これだけ仕込めば最悪でも現状維持、良くすれば更なるダメージを与えることが出来るはず。

他の者が折角負傷させたのだ。易々と治されてはたまらないな!

※アドリブ&絡み歓迎


夜霞・刃櫻
【アドリブ・連係歓迎】WIZ
ファー!?
またボスキャラっすかー!?
勘弁してほしいでやんす!!

UC【夜霞の爆窃】で幽霊蒸気機関車と爆窃団の幽霊を召喚します
召喚の際に汽笛を鳴らして騒音で詠唱を聞くのを妨害します
攻撃を蒸気機関車に乗って防ぎつつ、「爆撃」「焼却」「継続ダメージ」でひたすら敵を燃やします
爆撃の音、焼ける音でひたすら聞くのを妨害すれば、誰かがきっと倒してくれるそうに違いない
トドメ刺しても良いけど三下のやることですかね?

環境については「環境耐性」「氷結耐性」で凌ぎます

一通りやかましくしたら「逃げ足」を用いて蒸気機関車で逃亡
戦略的撤退っすからね!(土下座しつつ



「ファー!? またボスキャラっすかー!? 勘弁してほしいでやんす!!」
 猟書家との戦いを経て、その首魁であるブックドミネーターと相見えた夜霞・刃櫻(虚ろい易い兇刃・f28223)は、自分だけでは手に余ると言わんばかりに悲鳴を上げる。
 数々の猟兵との激戦を重ねながらも、今だ健在である実力と生命力。余裕ということは無い筈だが、それを表に出さぬ冷徹な表情と眼差しからは、揺らがぬ闘志が感じられる。
「猟書家の頂点と言うだけあって、流石、一筋縄ではいかないようだな」
 騒がしい刃櫻とは対照的に、シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は冷静に敵の強大さを見定める。規格外の力を誇るオウガ・オリジンを除けば、かの者こそがこの戦争で最強――迷宮災厄戦を引き起こした元凶とも言える存在を討つのは容易ではない。

「……だが、この程度を越えられずして何が猟兵か!」
「その意気や良し。私も汝等の実力を過小評価するつもりは無い」
 毅然とした様子で(一部様子の違う者もいるが)立ちはだかる『六番目の猟兵』達に、ブックドミネーターは冷然と応じる。自らが求める答へと到達するために、彼もここが正念場であると見定めているようだ。
「必ずやこの逆境を突破し、かの美しき天の牢獄に辿り着いてみせよう」
 男の唇が微かに動く――だが音は聞こえない。【時間凍結】の発動と同時に紡がれた零時間詠唱は、誰にも聞き取られることなくブックドミネーターの負傷を回復させていく。
 このままでは戦闘で蓄積させたダメージを元の木阿弥にされる。猟兵達はこれ以上の治癒を阻止すべく、それぞれの武器とユーベルコードを頼みに行動を開始した。

「零時間なのは詠唱だけであって、治療が零時間で終わるわけではないのだろう?」
 治癒魔法の発動と実際の回復にはタイムラグがある。ならばとシェーラは並み外れて強化された視力を以て治療されかかっている傷を逐一把握すると、愛用の精霊銃を構える。
 【彩色銃技・華燭之典】。目にも留まらぬ銃捌きとマズルフラッシュから放たれる数百もの弾丸が、回復途中のブックドミネーターに浴びせられた。
「遠慮するな。馳走してやろう!」
 確実に目標を狙撃するため、使用する弾丸は誘導弾。付与する精霊の属性は傷口を広げるための烈風、傷を焼いて回復を阻害するための延焼、そして治療されても異物を内部に残すための礫と毒。徹底的に敵の治療行為を妨げる属性のオンパレードだ。

(これだけ仕込めば最悪でも現状維持、良くすれば更なるダメージを与えることが出来るはず)
 そんなシェーラの目論見と違わず【華燭之典】の弾幕を受けたブックドミネーターの表情はそれまでの冷然とした様子からは一転、煩わしげな敵意と苦痛の色に染まっていた。
「ッ……!!」
 治りかけた傷口を抉る精霊弾は、既に負傷のピークに達している書架の王にとっては非常に厄介なものだった。やむを得ず零時間詠唱の重ね掛けで治療を促進させようとするが――そんな彼の思考を切り裂くように、けたたましい騒音が絶対零度の世界に鳴り響く。

「パンクでロックにミッション・スタートっす!」
 それは刃櫻が【夜霞の爆窃】により召喚した幽霊蒸気機関車が汽笛を鳴らす音だった。
 彼女がひょいと車内に乗り込むと、入れ替わりに物騒な重火器で武装した爆窃団の幽霊が姿を現し、ブックドミネーター目掛けて一斉攻撃を開始する。
「ひたすら燃やすでやんすよ!」
「ちぃ……っ、面倒な……っ」
 闇雲に撃ちまくられる銃撃や爆撃の精度はさほど高いものではない。だが凍土の静寂を破る爆音、撒き散らされた燃料が燃え上がる炎の音は、詠唱の音さえかき消してしまう。
 自分自身ですら正確に呪文を聞き取れない状況下では、いくら零時間詠唱を紡いでも無意味だ。時間凍結の破綻を悟り、ブックドミネーターは忌々しげに刃櫻を睨みつける。

(ひたすら聞くのを妨害すれば、誰かがきっと倒してくれるそうに違いない)
 共に戦う味方への期待を込めて、刃櫻はひたすら爆窃団に妨害を行わせながら自らは機関車の中に隠れておく。もし攻撃されても車両を盾にして逃げようという魂胆である。
「トドメ刺しても良いけど三下のやることですかね?」
「いいだろう、任せておけ」
 ある意味首尾一貫した三下ムーブをかます少女に肩をすくめながら、シェーラがさらなる銃撃を敵に叩き込む。騒音により零時間詠唱が封じられているということは、当てた攻撃が治療と相殺されないということ。ダメージを稼いでおくなら今が格好の攻め時だ。

「他の者が折角負傷させたのだ。易々と治されてはたまらないな!」
 風と炎と石と毒の軌跡を描いて、ブックドミネーターの身体に突き刺さる精霊の弾丸。
 より深く治り辛い傷を与える事に特化した銃撃は、標的の生命力を着実に削いでいく。
「このままでは……拙いか……」
 書架の王は苦々しげに顔をしかめながら、銃撃と騒音から逃れるように後退していく。無理をしてこの場に踏みとどまっても、戦況は不利になるばかりだと判断したのだろう。

「なんとか退いてくれたっすね……今のうちでやんす!」
 敵が後退するのを見ると刃櫻はほっとした表情を浮かべ、すぐに蒸気機関車で逃亡を図る。寒冷な環境には耐性があるとはいえ、こんなヤバいところに長居するのはゴメンだ。
「戦略的撤退っすからね!」
 そんな言い訳を口にしつつ、まだ残っている味方には綺麗なフォームで土下座して。
 決着を他の猟兵の誰かに託して、三下少女は絶対零度の凍結世界を脱出するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メイスン・ドットハック
【SPD】【絆】
氷でオブリビオン再現とは厄介じゃのー
僕は近距離戦が苦手じゃけーのー

先制対策
予め自身にエィミーのホログラムアバターを張っておき、遠距離得意なオブリビオンが向かうようにしておく
エィミーには自身のホログラムを付与して、近距離タイプの蒼氷を向かわせる
エィミーの姿のまま電脳魔術によるミサイルやレーザー砲ユニットで応戦して迎撃する

先制後はUC発動でオブリビオンの残骸を吸収して、蒼氷を焼き尽くす火炎放射装置を生み出して召喚を阻止
待機させておいた二足歩行戦車から誘爆するミサイル・榴弾を打ち込んで派手に爆発を誘い、ブックドミネーターにダメージを与える

氷より炎の方が勢いがあるのー

アドリブ絡みOK


エィミー・ロストリンク
【SPD】【絆】
すごい氷の世界だねー
わたしは近づいて倒すスタイルだからあんまり得意じゃないかなー?

先制対策
メイスンが生み出したホログラム幻影でメイスンの姿形をして、近距離得意なオブリビオンを迎撃する
ロード・プラチナの宝冠の力で超硬装甲を生み出して防御しながら、垓王牙チェーンソーの回転炎刃で溶かすように氷オブリビオンを斬っていく
ブックドミネーターに妙な動きをさせないように、時々オルトロスの牽制射撃も忘れずに行う

先制後はUC発動をして絆律鍵ロスト・リンク
垓王牙チェーンソーをオルトロスに接続して、火炎溶岩弾を生成・発射して、昏睡するまで書架の王に撃ちまくる

氷だろうと溶かすよー!

アドリブ絡みOK



「すごい氷の世界だねー」
「氷でオブリビオン再現とは厄介じゃのー」
 何もかもが凍てついた蒼氷の世界を見渡すエィミー・ロストリンク(再臨せし絆の乙女・f26184)と、その氷を利用した敵の【蒼氷復活】を警戒するメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)。義姉妹の絆を結んだふたりの少女達は、並び立って『書架の王』ブックドミネーターと対峙する。
「『六番目の猟兵』達の力は侮りがたい。だが私には『過去』が味方についている」
 深手を負った男がすっと手を動かすと、蒼氷が重なりあって異形の姿を形作る。書を司る者としての膨大な知識から敵に有効なオブリビオンを召喚する、死霊術師やフォーミュラにも似た恐るべき御業が、再び猟兵達に牙を剥こうとしていた。

「僕は近距離戦が苦手じゃけーのー」
「わたしは近づいて倒すスタイルだからあんまり得意じゃないかなー?」
 メイスンとエィミー、ふたりが得意とする戦闘のレンジはそれぞれ異なっていた。それを見極めた書架の王は、メイスンの方に近接戦闘型のオブリビオンを、エィミーの方に遠距離攻撃型のオブリビオンを差し向け、有利な盤面を作ろうとする。
『オオオォォォォォォォッ!!』
 狒々を数段凶悪にしたような筋骨隆々とした怪物が、咆哮と共にメイスンに飛び掛かり。エィミーが援護に行けないよう、後方からは狙撃銃を持った怪人が照準を合わせる。
 それぞれの弱点を的確に突く先制攻撃。召喚されたオブリビオンの実力もけして低くはなく、不利な対面を強いられた姉妹は苦戦を余儀なくされる――そのはずだった。

「効かないよっ!」
 "メイスン"の被った「ロード・プラチナの宝冠」が輝き、その身体が金属に覆われる。
 それは帝竜の権能にて生み出された超硬装甲――白金の護りが怪物の拳を受け止める。
 直後、彼女は帝竜ガイオウガの素材より作り出した「垓王牙チェーンソー」を振るい、眼の前までやって来たオブリビオンを灼熱の回転刃で切り裂いた。
『グオオォォッ!?!』
「何、それは……」
 近接戦闘は苦手だと踏んでいた相手からの思わぬ反撃を受け、悲鳴を上げる怪物。それを見たブックドミネーターは何かに気付いた様子で、他方の"エィミー"に視線を向ける。

「自分が撃ち返されないと思っている奴ほど、いい的はないのー」
 "エィミー"は虚空に浮かび上がらせたホログラフに指を滑らせ、電脳魔術により精製したミサイルを発射。誘導機能を備えたそれは後方に居る遠距離型オブリビオンの元へまっすぐに飛んでいき、爆炎と衝撃を巻き起こした。
『―――!!!』
 こちらも反撃を予期していなかったのだろう、爆発の中で怪人の表情が強ばるのが見えた。その動揺を突いて"エィミー"はさらに浮遊追尾型電脳レーザー砲ユニットを起動。高出力の荷電粒子砲が、狙い過たず遠距離型オブリビオンの身体を貫いた。

「その戦法、その装備……やはり貴様達、入れ替わっているな」
「今更気付いてももう遅いのー」
 違和感の正体に気付いたブックドミネーターに"エィミー"がふっと知的な笑みを返す。
 彼女と"メイスン"は予め電脳魔術によるホログラムアバターを使って、互いの外見を入れ替えていたのだ。敵から見た"エィミー"はメイスンで、"メイスン"はエィミーだった。
 当然、幻影で姿形を変えたところで本来の戦闘スタイルは変わらない。優位な盤面を作ろうと近距離、遠距離それぞれのオブリビオンを放った書架の王の采配は、現実には真逆の結果となり、メイスンもエィミーも各々の得意距離で戦えたというわけだ。

「このような策に私が嵌るとは……」
「悔しがってもダメだよ!」
 誤った盤面を立て直そうと自らも前線に出ようとする書架の王。だがその動きを警戒していたエィミーはガトリングガン型メガリス「オルトロス」で弾幕を張り、牽制を行う。
 遠距離型の援護を早々に失い、取り残された近距離型のオブリビオンだけでは、この局面を打開するのは不可能だった。灼熱のチェーンソーに切り刻まれ、怪物は灰燼に帰す。

「相手に有利なオブリビオンを出す能力は理にかなってはいたのー。それじゃ僕らも有利な物を出すとしようかのー」
 【彼を知り己を知れば百戦して殆うからず】。"エイミー"のアバターを脱ぎ捨てたメイスンは、倒したオブリビオンの残骸を吸収して電脳魔術により火炎放射装置を生み出す。それは敵が放つユーベルコードを解析して創造された、対『書架の王』用の特攻兵器だ。
「皆、力を貸して!」
 メイスンの動きに呼応してエィミーも【失われた絆を繋ぐ姫君】を発動。剣型メガリス「絆律鍵ロスト・リンク」の力によって垓王牙チェーンソーとオルトロス、二つのメガリスを接続して、その効果・威力・射程を何倍にも引き上げる。

「氷より炎の方が勢いがあるのー」
「氷だろうと溶かすよー!」

 電脳兵器より放射される火炎と、メガリスから撃ち出される火炎溶岩弾。極寒の凍結世界をも溶かし尽くすような灼熱業火の弾幕が、ブックドミネーターに一斉に襲い掛かる。
「―――ッ!!!」
 敵は咄嗟に【蒼氷復活】にて盾となるオブリビオンを創出しようとするが、特攻効果を持った火炎と垓王牙の力で生成された溶岩弾の前では、そんなものは飴細工にすら劣る。
 一瞬にて焼き尽くされた蒼氷ごと、書架の王は業火に包まれ、骨の髄まで焼き焦がされていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カタリナ・エスペランサ
時間の凍結か、オブリビオンらしい力だ
ならその能力の全て、全身全霊で打ち砕くとしようか!

アタシに有効な敵となるとこの速度対策が要だろうね
召喚されたのは触れるだけでも致命打になる類と見た
《第六感+戦闘知識》の組み合わせで敵の動きを《見切り》、《属性攻撃+オーラ防御》の炎風を障壁代わりに纏って先制攻撃に対処
攻撃はダガーの《投擲》と羽の《弾幕》や《衝撃波》に守護貫く黒雷と調律の紅雷を纏わせ《属性攻撃+貫通攻撃+目立たない+ハッキング》の《範囲攻撃》、直接接触を避けながら派手な攻撃で敵全てを巻き込むようにして反撃の布石を打つ
掠るだけで十分、紅雷での刻印をマーカー代わりに【選択UC】の最大火力を叩き込む!



「時間の凍結か、オブリビオンらしい力だ」
 時を停滞させ過去を蘇らせる、ブックドミネーターの力を目の当たりにしたカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は不敵に笑う。猟書家を率いるかの『書架の王』の力は、ともすればオブリビオン・フォーミュラにも迫ろう。
「ならその能力の全て、全身全霊で打ち砕くとしようか!」
 高らかに力強く謳い上げながら翼を広げれば、その身は軽やかに空を翔ける。
 閃風の舞手の通り名にふさわしく、その飛翔は疾風か、あるいは閃光の如し。

「その自信……群竜大陸での戦いを制した貴様達ならば、慢心では無いのだろう」
 『六番目の猟兵』達、と彼自身が称した者達の実力を、ブックドミネーターは認める。
 認めざるを得まい。オブリビオン・フォーミュラより力を奪い、命を賭して打って出た計画はすでに破綻し掛かっており、自らも絶体絶命の窮地に立たされているとあれば。
「この戦い、もはや私が生き延びる可能性は低いだろう。だが、万に一つの勝機もあれば、賭けてみるのも悪くはない」
 冷然なる書架の王は満身創痍の身を奮い立たせると【蒼氷復活】を発動。
 蒼き氷を纏い現世に蘇った『過去』の異形は、咆哮と共に猟兵に牙を剥く。

(アタシに有効な敵となるとこの速度対策が要だろうね)
 カタリナは空を翔けながら敵の攻め手を見定める。顕れたオブリビオンは彼女と対峙した記憶にない相手だが、培われた戦闘知識と第六感からその特性を推測する事は可能だ。
(召喚されたのは触れるだけでも致命打になる類と見た)
 それは外見だけならドラゴンに類似し、書架の王が纏うものとよく似た氷の結晶で鱗ように全身を覆っている。あの氷鱗にも時間凍結の力が宿っているのなら、迂闊に触れればこちらの時を停められてしまうだろう。
『オオオォォォォォォォォ――――ッ!!!!』
 そして戦場を揺るがす咆哮と共に、開かれた顎より放たれるは絶対零度のブレス。カタリナは炎と風のオーラを障壁代わりに身に纏うことで、凍結を防ぎつつこれに対処する。

「貴様の『未来』と私の『過去』、勝利を掴むのはどちらだろうな」
「そんなの、聞かれるまでもないさ!」
 蒼氷の竜の苛烈な攻撃に晒されながら、カタリナの意志は微塵も揺らぐ事はなく。抜き放ったダガーと自らの翼に黒と紅の雷を纏わせると、大きく羽ばたいて反撃を仕掛ける。
 敵陣に降り注ぐ、短剣と羽弾の豪雨。竜は蒼氷の鱗にて防御の構えを取るが、守護を貫く黒雷を付与された攻撃は時間凍結の異能さえも貫通し、オブリビオンに突き刺さった。
 守りを固めるのは得策ではない。そう瞬時に判断したブックドミネーターは氷翼を羽ばたかせ、貫通効果のある黒雷を特に警戒しながら身を躱す。
「……ッ」
 だが、これまでに蓄積した疲労とダメージが彼の動きを鈍らせた。貫通の黒雷こそ避けたものの、その陰で目立たぬように放たれた追撃の紅雷が、書架の王を僅かに掠める。

「掠るだけで十分」
 派手な攻撃に紛れ込ませた調律の紅雷こそカタリナが打った反撃の布石。ブックドミネーターの身体に紅雷の印が刻まれたのを見ると、身に宿した魔神の権能を限定解放する。
 未来を導き、過去と停滞を打倒する魔神"暁の主"。その権能を以てして放つは、彼女のユーベルコードの中でも最大火力を誇る一撃――【世界の不完全証明】。
「これは……ッ!!」
 カタリナの中から人ならざる存在の気配が強まるのと同時、自らの周囲の空間が歪んでいくのをブックドミネーターは感じた。紅雷での刻印をマーカー代わりにして、魔神の力が擬似的かつ局所的な重力崩壊を引き起こしているのだ。

「"見るがいい、思い知れ、そして戦慄せよ! 是こそ此世の脆弱たる証左である!!"」

 厳かにそして高らかに。閃風の舞手にして暁の主は破壊を司る第六の神権を行使する。
 光さえも逃れられぬ重力の井戸に引きずられ、書架の王が纏う氷の結晶や翼が剥がれ落ち、無明の虚空に吸い込まれていく。それは蒼氷復活されたオブリビオンもまた同様に。
「――――ッ!!!」
 それでもブックドミネーターは残された力を振り絞って引力に抗い、カタリナに迫る。
 敵と己の血で染まった拳を握り締め。傲然と高みに立つ暁の主へ叩きつけようと――。

「――なんてね?」
「見事だ……!」
 ――その拳は、あと半歩の差で届くことはなく。魔神ではなく人としての表情で微笑んだカタリナの目前で、ブックドミネーターは圧潰する空間の内に引きずり込まれていく。
 最期の瞬間、彼は口元を微かに笑うように歪めてみせ。言葉少なに自らを打ち破った猟兵達の健闘を讃えると、暗黒の中に消え去った。


 かくして『書架の王』ブックドミネーターの野望は挫かれ、その魂は骸の海へと還る。
 猟兵達は迷宮災厄戦の勝利にまた一歩近付くと共に、猟書家による他世界侵略の企てにも、大きな楔を撃ち込んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月21日


挿絵イラスト