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迷宮災厄戦㉔〜光輝照煌、翠緑なる永遠よ

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #プリンセス・エメラルド #BBA

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「いやぁ……最長老と認めているのにプリンセスを自称するのって、ルゥナさん的には正直どうかと思うんだよねぇ」
 迷宮災厄戦の会議室内で開口一番、ルゥナはそう身も蓋も無く口火を切った。ともあれ、気を取り直して説明を始めてゆく。
「猟書家はサー・ジャバウォックとレディ・ハンプティに続いて三人目……スペースシップワールドへの侵攻を狙う、翠緑なる永遠。それが今回の相手となるねぇ」
 プリンセス・エメラルドが陣取るのはアリスラビリンスの一角に存在する、宝石に覆われた国だ。眩いばかりの輝きの中、麗しき猟書家は猟兵たちを待ち受けている。
「他の猟書家と既に戦闘した子も多いだろうけど、改めて説明しようか。敵は此方の行動に先んじて、必ず先手を取ってくる。それが攻撃で在れ、強化で在れ、それを防ぐ手段は残念ながらないねぇ……だからこそ、それに対する対処が肝心になるよ?」
 攻撃で在れば、それをどう凌いで反撃に繋げられるか。強化で在れば、どのようにその欠点を突くか。妨害であれば、如何にして早急に体勢を立て直すか。後の先で何を行うかが、この戦いの鍵を握るだろう。
「相手の能力としては侵略蔵書『帝国継承規約』による権能と、様々な物を透明化する異能を駆使してくるみたいだね。直接戦闘という点ではジャバウォックには一歩劣るだろうけど、絡め手交じりの戦術は決して侮れないだろうねぇ」
 だが、猟書家とは既に二人分の交戦機会を得ている。そこから得られた知見や情報は此度の戦いにも生かせるはずだ。決して勝てぬ相手ではない。
「ただ、猟書家の戦力減少はフォーミュラであるオウガ・オリジンの戦力増加にも繋がるのが悩ましい所だねぇ……かと言って目の前の脅威も放置できないし、悩ましい所だよ」
 最終的には全部を叩き潰せるのが最上だが、そうもいかぬのが此度の戦争。よくよく頭を使わねばならぬ。とは言え、まずは目の前の戦いに集中すべきだろう。
「取り合えず、あのプリンセスを偽りの玉座から引きずり降ろしてやるとしましょうかねぇ!」
 そう話を締めくくると、ルゥナは仲間たちを送り出すのであった。


 ――輝きが世界を満たす。星の様に、宙船の様に、栄華のように。

 ――不朽、不滅、不変。人々は宝石の数々に、永遠なる光を見る。

 ――羨望、憧憬、嫉妬。焦がれる想いを一身に受け、輝石は煌めきを増すだろう。

 ――そしてそれをさも当然の様に浴びながら、翠緑の姫君は玉座に君臨するのだ。


月見月
 どうも皆さま、月見月でございます。
 戦争シナリオ第三弾、対猟書家戦となります。
 という訳で、それでは以下補足です。

●勝利条件
 猟書家『プリンセス・エメラルド』の討伐。

=============================
●プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
=============================

●戦場
 煌めきと輝きに満ちた、宝石で出来た国です。眩いばかりの光に包まれており、地面や建造物、木や草と言った植物に至るまで宝石によって構成されています。視界が眩むようなことはありませんが、隠密などを狙う場合には一工夫必要かもしれません。

●採用について
 出来る限り採用する予定ですが、執筆速度やスケジュールの関係でやむを得ず流してしまう場合がございます。全採用は確約できませんので、その点ご了承頂けますと幸いです。

 どうぞよろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『猟書家『プリンセス・エメラルド』』

POW   :    プリンセス・エメラルド号
自身の【サイキックエナジー】を代償に、【宇宙戦艦プリンセス・エメラルド号】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【エメラルド色の破壊光線を放つ多数の砲】で戦う。
SPD   :    侵略蔵書「帝国継承規約」
自身の身長の2倍の【皇帝乗騎(インペリアル・ヴィークル)】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    クリスタライズ・オリジナル
自身と自身の装備、【敵に被害を与えうる、半径100m以内の】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ナーシャ・シャワーズ
私はな、プリンセス。
宇宙怪獣を相手にするより、お前さんのような悪党と戦ってる方が性に合ってるんだ。

うおっと、私も宇宙バイク乗りだが、そんなにでかいのは使ったことがないなぁ。
しかし、大きい分扱いは難しかろう。宝石を踏み荒らしながら、ワイヤーガンを用いた空中機動についてこられるか?

ははっ、キラキラ光っちゃって。どれほどの価値があるかな?
輝く星に紛れて、ソウル・ガンを発射……
おっと、宝石に反射してあらぬ方向に飛んでいっちまったぜ。

……なんてな。私は攻撃をかわしながらお前さんの魂を探っていた。
ソウル・ガンはその魂をどこまでも追い続ける……
いや、待ち受けるといった方が正しかったかな?
頭上に注意、ってね。



●海賊対簒奪者、宝玉の星海にて対峙せん
「あらあら……一番手は私の同郷ですか。こんな場所まで足など運ばずに、辺境でクェーサービーストと遊んでいればよいモノを」
「私はな、プリンセス。生憎と物言わぬ宇宙怪獣を相手にするより、お前さんのような悪党と戦ってる方が性に合ってるんだ。それも、火事場泥棒の相手なんて得意中の得意でね?」
 宝玉の輝きによって照らし出された、光輝の国。その中心で悠然と待ち受けていた猟書家の前へ、まず真っ先に姿を見せたのはナーシャ・シャワーズ(復活の宇宙海賊【スペースパイレーツ】・f00252)であった。左腕に装着されたソウル銃を構えながら傲岸不遜な物言いを放つ海賊に対し、翠緑は酷薄な笑みを浮かべる。
「火事場泥棒などと。『帝国継承規約』はこの手に在り、私はその条件を既に満たしている……それにほら、御覧なさい。銀河皇帝の所有物ですら、既に我が手中に収まっているのですよ?」
 そう言って翠緑が指を鳴らすと、傍らに巨大な鋼鉄が召喚される。それは彼の銀河皇帝が直々に座乗した荘厳なる鉄騎であった。金色に輝くそれは宇宙バイクと言うには余りにも美しく、一種の芸術品じみている。そも、黄金は宝石と共に永久不変の象徴でもあるのだ、ある種当然とも言えるだろう。
 翠緑はそれに跨ると、ガオンと一つ重低音を響かせた。
「それでは早速、乗り心地を試させて貰おうかしらね」
「うおっと! 私も宇宙バイク乗りだが、そんなにでかいのは使ったことがないなぁ。加えて流石は皇帝の所有物、派手さも中々のもんだ」
 しかし、ナーシャに臆する様子はなかった。彼女もまた愛用の宇宙バイクへと跨るや、対抗するかのように大きくエンジンを唸らせる。
「しかし、大きい分扱いは難しかろう。それも察するにそこまで乗り慣れていないマシンか。幾ら得物が良くたって、最終的にモノを言うのは乗り手の腕ってもんだ。海戦仕込みの空中機動に、お姫様が着いて来れるか?」
「あら、これでも……伊達に歳は重ねていないのよ」
 言葉の応酬は其れにて一区切り。後は速度と剣弾によって語り合う時間だ。一瞬先んじて飛び出したナーシャを、翠緑が追いかける形で戦闘の火蓋が切って落とされる。
(流石に馬力はあちらの方が上か……技量も決して低くない。乗騎の癖に慣れられる前に押し切るのが最善か。となると、少しばかり絡め手を使わせて貰おう)
 ナーシャは器用に片手でハンドルを操作しつつ、もう一方の手で腕輪に内蔵されたワイヤーを発射。それを宝石へ食い込ませて巻き取る事により、鋭角的な軌道で相手を翻弄してゆく。
「ちょこまかと鬱陶しい……生き汚い海賊らしい、姑息な技術ですわね」
「ははっ、そう言ってくれるなって。見ろよ、砕けた宝石が星みたいにキラキラ光っちゃって。あの一欠片だけで、どれほどの価値があるかな?」
 翠緑の挑発もどこ吹く風。ナーシャは縦横無尽に戦場を駆け抜けつつ、流れるような動作で左腕を敵手へと差し向けた。此度放たれるのはワイヤーではない。己が魂を弾丸と化す、彼女の代名詞たる一撃。宝石に紛れての攻撃を狙う……が。
「見え透いた子供騙し。だから……姑息と言うのです」
「おっと、宝石に反射してあらぬ方向に飛んでいっちまったぜ」
 翠緑はそれを軽々と避けて見せた。詰まらなさそうに眼で追うと、それは宝石にぶつかり見当違いな場所へと跳ね返ってゆく。相手の侮蔑にナーシャは肩を竦める。だが、瞳に宿る眼光だけは、決して戯けてなどいなかった。
「……なんてな。私は攻撃をかわしながらお前さんの魂を探っていた。ソウル・ガンは狙った魂をどこまでも追い続ける……いや、待ち受けるといった方が正しかったかな?」
「なにを……いえ、まさか!?」
 翠緑が気付いた時には時すでに遅し。ハッと上を見た瞬間、大きく迂回軌道を取って回り込んでいた弾丸が直撃する。その衝撃に堪らずエメラルドは乗騎より叩き落とされた。
「――頭上に注意、ってね」
 その姿を見下ろしながら、ナーシャはヒュウと小さく口笛を吹くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

須藤・莉亜
「おねーさんは血が流れてるのかな?…おねーさんであってるよね?」
オバさんって呼んだ方が良かった?

さて、先ずは暴食外套に血をあげて、半径100m以内の味方以外のなんかヤバそうなもんを、限界を超えて全て食らってもらおうか。
これでちっとは動きやすくなるでしょ。

僕は棒立ち。敵さんが痺れを切らして攻撃してきた瞬間に、UCを発動。
食らった負傷を回復しつつ、奪った生命力で自身を強化しながら敵さんに取り付く事にしようか。見えなくても触れないわけじゃあないもんね。
僕の周囲全ての生命力を奪う勢いで吸いまくってあげよう。
あ、もちろん吸血するのも忘れずに。血が吸えなくても、腕の2、3本くらいは噛み砕いとかないとね。



●翠玉砕くは飢えたる不死者
「これは些か、驕りが過ぎたと言えるでしょうね。たかが海賊風情に一撃を喰らうとは」
 翠緑は埃を払いつつ立ち上がる。小さく嘆息しながらもまだまだ余力があるのだろう、その所作は優美なものだ。そんな猟書家の前へ、新たな猟兵が姿を見せる。
「直撃を受けても、滴の一つさえ零れない。おねーさんには血が流れてるのかな? ……その前に、おねーさんであってるよね?」
 どこか緊張感のない、緩々とした声音。相手の全身を隅々まで眺めつつ、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はそう小首を傾げた。対して、翠緑も律儀にその問い掛けに応じた。
「流体包有物……鉱物の中は時たま、成長途中で液体を内部に取り込むことがありますの。尤も、私もそうであるとは言いませんけれど。知りたければ自力で私の肌へ牙を突きたてる事ね。あと、こちらからも一つ……」
 最後の問いはどういう意味かしら? 翠緑の浮かべる表情は穏やかな微笑である。だが、そこから滲み出る気迫は溶岩にも似ていた。しかし莉亜はそれに気付かぬのか、はたまた気付いた上で敢えてなのか、躊躇うことなく答えを口にする。
「いや……オバさんって呼んだ方が良かった?」
 瞬間、何かが砕け散ったような音が戦場に響き渡った……気がした。翠緑は笑みを浮かべたまま、すぅっと己の姿を周囲と同化させてゆく。
「長き年月の中、同じ様な問いをした者は数多く『居ました』。ええ、ですがもう、一人も残っていません。その意味がお分かりですね?」
 どうやら、問答はこれにて打ち切りのようだ。相手が仕掛けて来ると悟った莉亜もまた、攻撃を凌ぐべく行動を開始する。
「……グラさん。血を分けてあげるから、周囲百メール以内のヤバそうなもの、限界を超えて全部食べちゃってくれない? それなら、ちっとは動きやすくなるでしょ」
 翠緑の透明化能力は己と装備、加えて敵に被害を与えうる何かを一つ。であれば、それを無くしてしまえばよい。身に纏っていた外套が主の鮮血に応えて顎を開くや、周囲に転がる宝石の破片を片端から飲み込んでゆく。一方、当の莉亜は何をするまでも無く棒立ちで佇んでいる。
 これは耐久勝負だ。翠緑の奇襲が通るか、それを凌いだ青年の反撃が叩き込まれるか。ジリジリとした緊張感が戦場に張り詰めてゆき、そして……。
 ――カツン。
  と、小さな音が鳴った。ハッとそちらへ構えを取るが、敵の姿はない。在るのは煌めく欠片が一つ、地面へ転がっているだけだ。
「っ、今の音はまさか囮……!?」
「全て飲み込まれる前に一粒だけ拾っておきました。単純だけれど、効果的でしょう?」
 気付いた時にはもう遅い。視覚から姿を現した翠緑が、籠手に包まれた指先で貫手を叩き込まんと襲い掛かってくる。槍の穂先も斯くやという鋭突が莉亜の肌へ吸い込まれる……。
「だけど、それなら……下手な小細工を弄しない方が良かったかもね?」
 寸前、闇の如き黒々としたオーラがそれを食い止めた。力が急速に抜けてゆく感覚に、一瞬だけ翠緑の動きが鈍る。その隙を見逃さず、青年はがっちりと相手の身体を掴んで捕らえた。物音がした瞬間、彼は既に己が異能を発動させていたのだ。ぐるりと、金色の瞳が姫君を真正面から見据える。
「幾ら見えなくても、触れないわけじゃあないもんね。それじゃあ、周囲の生命力を丸ごと奪い尽くす勢いで吸いまくってあげよう」
「っ、力が……放しなさい!?」
 翠緑が攻撃を加えてくるも、傷は奪い取った活力によって瞬く間に塞がれてゆく。そこでふと、莉亜は思い出したかのように顎を開いた。
「あ、そうそう。忘れないうちに吸血もしておこうか。血が吸えなくても、腕の二、三本くらいは噛み砕いとかないとね」
 そうして、不死者は相手の手首へ噛みつく。凄まじい咬合力によって犬歯を基点に圧力が掛かり、ピシリと一筋ヒビが入ったところで……。
「っ、それ以上は許しません!」
 強引に拘束を振りほどかれてしまった。肩で息をする翠緑の前で、莉亜はもごもごと口を動かす。
「残念……あともうちょっとで確かめられたんだけどね」
 二ッと歯を剥く青年の口内から覗くのは、翡翠色の小さな欠片。その煌めきを姫君は憎々し気に睨みつけるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セルマ・エンフィールド
その銀河皇帝も滅びた。いえ、私たちが滅ぼした。
あなたが銀河帝国を再び興すというなら、あなたもそうするだけです。

皇帝乗騎……まずは軌道や速度を見極めましょうか。
ほぼ透明な建造物ですが、障害物としてなら機能します。それらを壁や盾にするように立ち回り敵に速度を活かさせないように。

あの乗騎は生命力も共有している、エメラルド製の建造物に体当たりなどの無茶はしたくないでしょう。

そのうちに痺れを切らし建造物が破壊されるかあるいは私が追いつめられるかでしょうが、そのころには乗騎の性能をある程度見切っている。
手持ちで最速の弾丸【凍風一陣】と『スナイパー』の技術で騎乗しているプリンセス・エメラルドを撃ち抜きます。



●煌めくは結晶、撃ち砕くは氷晶
「私の身体に傷をつけるとは。銀河皇帝と同じ、永遠であるべき肉体をよくも……!」
「……ですが、その銀河皇帝も滅びた。いえ、私たちがこの手で滅ぼした。諸行無常、永久に続くモノなどこの世界にはありません」
 手首につけられた傷跡へ視線を落としながら、優美な言動を揺るがせる翠緑。其れとは対照的に、投げかけられる言葉は氷を思わせる冷徹な声音だ。視線を上げた先に居たのは、愛銃を携えたセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)である。
「……ええ、それを否定するつもりはありません。ですが何事も、新しく創り出すことは出来ましょう」
「飽くまでもあなたが銀河帝国を再び興すというなら、私もかつてと同じようにそうするだけです。二度目が在り得るというのは、こちらも変わらないのですから」
 反駁する翠緑の言葉を、セルマは切って捨てた。既に空前は否定されている。ならば絶後もまた在り得ぬ、と。狙撃手の冷たい物言いに、姫君は苛立たし気に腕を振る。
「大言壮語ですね。私は彼の皇帝と同じ轍は踏みません。再び帝国を打倒できると謳うのであれば……これくらい、凌ぎ切って下さいましね?」
 傍らに馳せ参じたのは皇帝乗騎である。大気を震わせる重低音はさながらパイプオルガンの調べが如く。翠緑はそれに飛び乗るや、セルマ目掛けて突撃を敢行してきた。
「駆け回る獲物に対し、馬鹿正直に付き合う猟師はいません。進路を狭め、退路を断ち、動きを封じる……詰まり、足を奪うのが定石です」
「この宙翔ける黄金を獣風情と一緒にしますか。精々、御自分が狩られぬよう足掻いて御覧なさい?」
 狙撃手は地を蹴るや、周囲に点在する建築物へと飛び込んでゆく。宝石で出来た、荘厳なる宮殿の数々。それらはセルマにとって格好の逃げ場だ。皇帝乗騎は直線での加速力や速度に優れる一方、小回りではやや劣っている。
(あの乗騎は猟書家と生命力も共有している、建造物に体当たりなどの無茶はしたくないでしょう。とは言え、業を煮やして優先度を変えてくれば話は別ですね)
 速度と質量、それらによって生み出される衝撃力は相当なものだ。建造物破壊による損傷と猟兵の駆逐を天秤に掛け、後者を選んだ場合には躊躇なく最短直線距離で迫ってくるだろう。
(痺れを切らしてそれを選ぶか、それとも私が追い詰められるか……今できるのは、その瞬間を出来る限り先延ばしにすることだけ)
 段々荒々しくなってゆく翠緑の操縦技術と、それに伴い砕け飛び散ってゆく宝玉の欠片たち。鋭利な切片に全身を切られながら懸命に駆け回るも、人の足と機械の回転輪の差は如何ともしがたく、とうとうセルマは猟書家の攻撃圏内へと捉えられてしまう。
「追いかけっこも此処までですわね。まぁ、よく持った方と言えるでしょう。ですが最早これまで……獣どころか地虫の如く、踏み潰して差し上げましょう」
 凶悪なる破壊力を纏いながら迫る黄金の鉄騎。対してセルマは踏み出した足を軸として、くるりと身体を反転させた。やぶれかぶれの抵抗か? 否、狙撃手は獲物の能力を把握し、かつ読み易い軌道を描く瞬間を待っていたのだ。
「『将を射んとする者はまず馬を射よ』とはよく言いますが、そんな猶予はありません。それに銃口より放たれる弾丸とて……音を置き去りにするものですから」
 肩付け、頬付け、構え、見出し。電光石火の早業で射撃姿勢を取るや、セルマは瞬時に引き金を引く。スコープ越しに見えた、眩き相貌。最速の弾丸は凍気を纏って飛翔しながら、狙い違わず目標へと吸い込まれてゆき……。
「無駄弾を……が、ああっ!?」
 その貫通力を以て、シート上から翠緑を引き剥がした。操作の乱れた皇帝乗騎がセルマのすぐ横を紙一重で走り抜けてゆく。地面へ転がった敵手へ、少女は目元より流れ落ちる血を拭いながら口を開いた。
「皇帝の遺産。どうやらあなたには過ぎた物のようですね」
「……流れ弾が当たった程度で、良くそこまで驕れるものです」
 顔を抑えながら立ち上がる姫君。指の間からは、氷粒と共に緑の煌めきが零れ落ちてゆく。そこから覗く瞳には、どろりとした憎悪の光が見えるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御魂・神治
共闘・アドリブ可

先制対処:
攻撃は【オーラ防御】で防御、【戦闘知識・第六感】で回避
召喚ウィーグルは『天将』の【ハッキング・鍵開け】で制御系を改竄、乗っ取りを狙う
乗っ取り完了するまで辛抱や

反撃:
乗っ取りが成功したら奴を【結界術】で機体に拘束
婆ちゃん、免許返納な!
『天将』の【ハッキング】操作でそこらの宝石に衝突事故させまくる
宝石の柱を『天誅』で撃ち抜いて倒しぶつけたりもする
そして【リミッター解除】のUC【五行霊弾『万物』】を地面に撃つ、属性は【土】
地面隆起で岩山のトゲを生やし、形成タイミングに合わせて突き刺す様にぶつける
エメラルドは衝撃に弱いんや、そこは「変わる」べきやったな婆ちゃん



●将を射んと欲すれば先ず馬を射よ
「しかし……誰も彼も、この皇帝乗騎を恐れているようですわね。私を狙ってくるのには思うところもありますが、それなら相応に対策も取れるというもの」
 遠くへと独走していった皇帝乗騎を呼び戻しつつ、猟書家は再びそれに跨りエンジンを吹かす。彼女は二度に渡ってこの黄金を駆り猟兵と相対しているが、そのどちらも乗り手を狙う事で攻略されてきた。憎々しい事だが、逆に狙いさえ分かれば防ぐ事も容易いとも言える。
「ほうほう、そりゃええことやなぁ。ただ、あんま同じことやっても婆ちゃんが飽きてまうやろうし、となればわいは別の方法を試してみるとしましょか」
 だが、そんな翠緑の考えをおちょくるかのように、剽軽な伊勢弁が戦場に響いた。姿を見せたのは、御魂・神治(除霊(物理)・f28925)である。内容は元より、自分を示す代名詞が気に障ったのだろう。ガオン、と一際大きくエンジンが唸りを上げた。
「それは興味深いですね。ならばその方法とやらを教えて下さいませんか。この『プリンセス』エメラルドに、ね?」
「ははは、戦う前から手の内を教えるアホはおらんやろ婆ちゃん。それにこの後ですぐ分かるんや。年寄りなんやさかい、もちっと気を長くしなきゃ血管が切れてまうで?」
 カラカラと笑う神治に対し、翠緑の返答はなかった。言葉の代わりに叩き込まれたのは、瞬時に最高速度まで加速した皇帝乗騎による蹂躙突撃である。その破壊力は凄まじく、除霊師は轢き潰されるどころかフロントカウルへ押し付けられる様にへばりつく有様だった。だらりと、衝撃で青年の口元を鮮血が伝ってゆく。
「かっは……冗談が通じんお人やな。咄嗟に障壁を張っとらんかったら、そのままお陀仏してたやろが」
「私としてはそのつもりだったのですけれどね。さぁ、これでもまだ打つ手はありますか?」
「勿論や。寧ろこうなったのもある意味で結果オーライやしな……という訳で頼んだで、『天将』!」
 冷ややかに嘲笑ってくる姫君に、神治は口の端を拭いながらそう叫び返す。すると彼の懐より青白い光が飛び出した。小さな女性の姿を取ったそれは、支援AI型人工式神『天将』である。除霊師の作戦、その正体はこの『天将』による皇帝乗騎へのハッキングだったのだ。
「どう取り付くかが問題やったけど、そっちから近づいてくれたんで助かったわ。さぁ、あとは乗っ取り完了するまでの辛抱や!」
「くっ、先ほどの物言いはまさか、この為に敢えて……!」
「いや、あれは全部本心やぞ?」
 神治を振り落とすべく、翠緑は無言で黄金の鉄騎を我武者羅に暴れさせ始める。加速からの急制動、高速スピン、ウィリー。絶叫マシン顔負けの挙動を繰り返すも、除霊師はハッキング完了まで文字通り死んでも離すまいとしがみつき続ける。
 業を煮やした相手はとうとう乗騎が損傷するのも構わず、猟兵の息の根を止めるべく宝石の壁へと突っ込んでゆき……。
「残念やけど、時間切れや。壁にぶつかるのは一人でやってな!」
「何を……っ、操縦が効かない上に、脱出まで!?」
 衝突の寸前、神治は皇帝乗騎より飛び降りた。それが示す事はただ一つ、ハッキングの完了である。翠緑も無意味な衝突を回避しようとするが、座席にがっちりと固定されてしまい、そのまま一切の減速なく玉壁へと突っ込んでゆく。元々の耐久力のお陰でそのまま走り続けるも、当然かなりの損傷を受けてしまった。
「危ない運転やなぁ。それじゃあこっからは試験といこか。これを避けられなかったら婆ちゃん、免許返納な!」
 体勢を立て直した神治は間髪入れず狙撃銃を構えるや、周囲の柱を次々と撃ち抜いて倒壊させてゆく。無論、倒す先は皇帝乗騎の進路上。頭上から降り注ぐ鉱物が更なるダメージを蓄積させる。そうして頃合いを見計らうと、青年は仕上げに取り掛かった。
「上ばかり見てたらあかんな。運転中に見るのは前や!」
 彼は得物を拳銃に持ち替え、地面へと弾丸を打ち込む。ただの鉛玉ではない、地の霊力を籠めた五行霊弾『万物』である。それは大地を隆起させると、鋭いトゲを生やした岩山と化す。当然、今の翠緑と皇帝乗騎にそれを避ける術はなく……。
「皇帝の遺産を、こうも虚仮にして……!?」
「その前に自分の心配をするべきやぞ……エメラルドはな、衝撃に弱いんや」
 ――そこは『変わる』べきやったな、婆ちゃん。
 そうして、無数のトゲに貫かれた黄金は翠緑を乗せたまま高々と宙を舞い、そのまま地面へと叩きつけられるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レムリア・ザラタン
ほう、クリスタリアンの…
私が見た文献では聡明な人物だと記されていたが、銀河皇帝に成り代わるつもりとはな
元の気質かオブリビオン化によるものか
いずれにしろその力、ここで削がせてもらう

GMLSから低濃度の煙幕弾を発射
動く際の空気の流れを読み透明化の攻撃を回避、避けきれぬ物はバリア防御
グラビティアンカーで敵を殴り飛ばして一旦距離を開ける

さすがに厄介な能力だ
…と、貴女の同族と相対した人間も思ったのだろう
だからこそこの装備がある

アンチサイキック、及び対クリスタライズ装備のウォーマシン隊を出撃
効果対象を絞れず正式採用落ちした装備…そのぶん効果は折り紙付きだ
能力を封じ、各機と本体と私自身の一斉攻撃で叩き伏せる



●煌めく星玉よ、輝く宙船よ
「こうも、虚仮にされるとは……些か以上に腹が立ちますわね、ええ」
 地面へ激突した皇帝乗騎の中から、翠緑の姫君が這い出してくる。ヴィークル、乗り手共に相応の損傷を受けてはいるが未だに健在。流石は皇帝の遺産と玉座簒奪を狙う猟書家と言った所だろう。
「ほう、貴女がクリスタリアンの……私が見た文献では聡明な人物だと記されていたが、よもや本当に銀河皇帝に成り代わるつもりとはな。百聞は一見に如かずとはまさにこの事か」
 敵の狙いと大まかな素性については戦闘前に聞き及んではいた。だが黄金と翠緑、二つの動かざる証拠を目にして、戦場へと転送されてきたレムリア・ザラタン(Stargazer・f28070)は微かな驚きを覚える。朧気にではあるが、最古老の宝晶人について聞き及んではいた。だが、こうして対面するとまた違った印象を受けた。
「拾い上げた情報も飽くまで伝聞という事か。それが元の気質かオブリビオン化によるものか分からんが……いずれにしろその力、ここで削がせてもらう」
「勝手な想像を生み出して、それと異なれば非難するなど見当違いも甚だしいものです。ただ私はそう在った、だからこそ己に相応しい地位へ在らんとするだけ。永久不変、それが揺らぐことは在り得ませんわ?」
 皇帝乗騎は先の戦闘で受けたハッキングにより再起動中。ならばと、翠緑はジワリとその身体を周囲へと溶け込ませた。レムリアは宙船由来のセンサー群で周囲を瞬時に走査するも、影も形も捉えられない。
「なるほど、こうも見事に気取らせないとは。オリジナルと銘打つだけあって、汎用のクリスタライズとは効果、範囲共に一線を画すようだな……だが、しかし」
 小気味の良い音を立てながら、呼び出した多連装型のミサイル発射装置より複数の煙幕弾が発射される。それらは四方八方へ散るや、たちまち霧の如き靄がうっすらと戦場に満ちてゆく。
(姿は見えずとも、何も異空間に身を隠した訳でもない。質量は残ったまま、ならば大気の揺らぎまで消し去る事は出来ないはず)
 三百六十度全周へ電子の目を張り巡らせながら、レムリアは敵の動きを警戒し続ける。先んじて見つけられぬ以上、後の先を取るより他に対抗機会は存在しない。そうしてジッと辛抱強く待った果てに……斜め後方、丁度死角となる場所で白きヴェールに乱れが生じた。
「そこか……いや、これはっ」
 まずは回避を、その後に反撃へ。そう判断したレムリアが半歩身を退くも、続いて響いたのは硬質な破砕音。それが透明化された柱が倒れ砕け散った音だと気づいた時には、既に翠緑は別方向より肉薄してきていた。
「仕掛けは余りにも単純だけれど、それだけに対処も難しいものですよ?」
「くっ、さすがに厄介な能力だ」
 咄嗟にバリアを展開するも、拳打による強烈な衝撃は壁越しでもダメージを与えてくる。返す刀で重力錨を叩き込むが、相手は悠々と飛び退ってそれを回避した。再び姿を消す間際に見せた笑みには、嘲りの色が見て取れる。だが、レムリアに臆する様子はない。
「……と、かつて貴女の同族と相対した人間たちも思ったのだろう。しかしだからこそ、この装備がある。ウォーマシン隊、全機発艦用意――存分に本懐を遂げてきたまえ」
 彼女の号令が下された瞬間、戦場に巨大な艦影が現れた。ザラタン級『改装空母』3番艦"レムリア"……つまりは彼女の本体そのものである。続いてカタパルトより次々と出撃を始めたのは無数の戦機たちだ。飽和攻撃によって炙り出そうと言うのか、そう訝しむ翠緑へ宙船は淡々とした声音で口を開く。
「アンチサイキック、及び対クリスタライズ戦仕様のウォーマシンさ。効果対象を絞れない上、コストや運用性の問題で正式採用落ちした装備……そのぶん効果は折り紙付きだ」
 戦機たちが機体各部に装着した特殊装置を起動させた瞬間、異能や精神集中を搔き乱すジャミング波が放射される。戦場全体へと広がったそれにより、翠緑の姿を強制的に浮かび上がらせていった。
「よもや、この様な骨董品をわざわざ持ち出して……っ!?」
「年代物なのはお互い様だろう? ……目標の補足完了、照準固定。全機、兵装使用自由」
 ――撃て。
 驚愕に目を剥く翠緑へ幾つもの銃口が向けられたかと思うや、それらが一斉に火を噴いた。それは正しく軍勢による蹂躙。質量弾、熱線、光学、火薬。ありとあらゆる種別の火力が叩き込まれ、着弾地点ごと翠緑を破壊の渦へと飲み込んでゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

フェルト・ユメノアール
悪いけどボクは宝石よりみんなの笑顔の方が好きなんだ
だからキミをスペースシップワールドに行かせる訳にはいかないね

相手は透明になる能力を持っている、普通に戦ったんじゃ姿を捉えられない
なら……ボクは『ワンダースモーク』を周囲にばら撒き、煙幕を作り出して視界を奪う
これで状況は五分、でもお楽しみはこれからだ!

ボクは手札からスペルカード、【グランギニョルの夜】を発動!
闇属性の「SP」ユニット2体をデッキから召喚する!
ボクは【SPアクロバット】と【SPキャンドール・フラン】を選択
蝙蝠と幽霊、この二人なら視界に縛られず行動が可能
フランにはボクの護衛をお願いして、アクロバットでエメラルドを攻撃する!



●姫君と踊るは宮廷道化
「こうも、虚仮にされるとは……些か以上に腹が立ちますわね、ええ」
 空母と戦機部隊による一斉射。それによる爆炎と黒煙の中から、翠緑の姫君が飛び出してきた。宝玉の肌も優美な装いも煤に塗れ、その姿は些かみすぼらしく思える。
「いずれ銀河帝国を継承する私の玉体には、何物も越えられぬ価値があります。それを傷つけるなど、万死に値する愚行です」
「果たして、それはどうかな? 悪いけど、ボクは宝石よりみんなの笑顔の方が好きなんだ。そっちのほうが、遥かに煌めいて見えるからね」
 苛立たし気に吐き捨てられた言葉を拾ったのは、戦場へと降り立ったフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)であった。戯画化された装束に派手なパステルカラー。それらは彼女がいったい何者であるのかを如実に表現している。
「道化師、ですのね。普段なら愉快な見世物として傍へ置いても良いのですが、いまの私は虫の居所が良くありません。ましてや、冗談すらも詰まらないとは」
「いいや、こればっかりは本気だよ。だから、キミをスペースシップワールドに行かせる訳にはいかないね」
 その立場故、翠緑は凡そ全てのモノを格下に見ていた。その中でも取り分け底辺と断じている道化師にこうも真っ向から反論されては、最早嘲笑うどころではないようだ。明らかな敵意を滲ませつつ、猟書家はその場から一歩飛び退く。
「王の怒りを買った道化の末路は打ち首のみ。見られる事が生業なら、せいぜい醜態を観察して差し上げましょう」
 そう言い終わらぬうちに、翠緑の姿は宝石の輝きの中へと溶けていった。一方的な視認と攻撃、それによって立場を分からせようという魂胆か。しかし、その程度で臆していては道化師など務まらない。
「それならどうぞ一つ、ボクのステージをご覧あれってね……相手は透明になる能力を持っている、普通に戦ったんじゃ姿を捉えられない。なら、まずはこうしようか!」
 フェルトが取り出したのは幾つもの丸い球。それを方々へと投擲するや、内部より色とりどりの煙が吹き上がってゆく。本来はステージ演出用の小道具だが、こうして数を揃えてやれ濃密な煙幕に早変わりである。
「煙でこちらの動きを察知しようと……? しかし、これではそちらの視界も効きませんわよ」
「確かにその通りだね。でも、これで状況は五分。さぁ、お楽しみはこれからだ!」
 どこからともなく投げかけられる翠緑の指摘など、端から織り込み済みだ。彼女は腕部装着型ディスクへセットされていた山札よりカードを引き抜くや、それを頭上高らかに掲げる。
「ボクは手札からスペルカード、【グランギニョルの夜】を発動! この効果により、闇属性の『SP』ユニット2体をデッキから召喚する! 現れろ、ボクのスマイルパペットたち!」
 するとフェルトの周囲にどこからともなくカーテンが降りたと思うや、その内部より可愛らしい人形が飛び出してくる。一体は色鮮やか蝙蝠、もう一体は蝋燭を携えた幽霊少女だ。
「はっ、何をするかと思えばとことん道化ですわね。ここに来てぬいぐるみなど呼び出すとは。お人形劇でも見せてくれるのですか?」
「おっと、早とちりはいけないよ。ボクが選んだのは【SPアクロバット】と【SPキャンドール・フラン】、詰まり蝙蝠と幽霊だ。アクロバットは超音波で、フランは亡霊特有の第六感で……この煙の中からキミを見つけ出す。特殊効果発動、パペットサーチ!」
 召喚者の意志に応じ、スマイルパペットたちは煙幕の中へと飛び込んでゆく。その歩みに一切の迷いがないのに対し、翠緑はどこから来るとも分からぬ相手を警戒して、ただ周囲へ視線を走らせることしか出来ない。
「馬鹿な、この様な戯けた遊技に私が翻弄されるなど……っ!」
「仕事がダメとは言わないけどね。遊びだからこそ、全力で本気になれる事もあるのさ……これで決めるよ。ダイレクトアタックだ!」
 だが既に、人形たちは翠緑の居場所を突き止めていた。頭上からは蝙蝠の翼が急降下を仕掛け、地上では四方八方から亡霊の群れが襲い掛かる。相手を視認できぬ不自由さを今度は自分が味わいながら、猟書家は連携攻撃によって吹き飛ばされてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ダビング・レコーズ
銀河帝国は既に存在しない
故に貴方は消滅しなければならない

【POW・アドリブ連携歓迎】

軌道予測し回避が必要な攻撃のみを確実に回避
急速反転やエアブレーキ等マニューバを駆使
非直撃弾はEMフィールドとスヴェルで防御
被弾するにしても逸らし弾く事で損傷を軽減
回避と防御に専念し戦艦に接近
甲板へ取り付き砲塔の死角に入り帝機システムを起動し出力完全解放

この艦はプリンセス・エメラルドの力が変換されたもの
リソースの大部分が消費されている今こそ本体を直接叩く好機です
以後はいかなる損傷も無視
進路を妨害する砲塔を破壊しながら目標が座すであろう艦橋を目指します
艦橋装甲をメタルステークで破砕し突入
ルナティクスで切断処理します



●再演、かつての戦いを此処に
「道化師に操られた玩具風情が……よくも、ここまでおちょくってくれましたわね。こうも傷を重ねるなどと、帝位継承の条件を満たせなくなったらどうするのですか」
 人形たちを送還した道化師が離脱すると同時に、戦場へ立ち込めていた煙幕も薄らいでゆく。よろよろと立ち上がった翠緑の姫君にとって受けたダメージは勿論痛いが、それ以上に弄ばれたという精神的屈辱の方が大きいようである。苛立ち交じりにそう吐き捨てる彼女へ応えたのは、機械的な電子音。
「その心配は不要です。銀河帝国は既に存在せず、翻って皇帝として座すべき玉座もまた在りません……故に帝位を狙うのであれば、貴方もまた消滅しなければならない」
 重々しい足音を響かせながら、戦場へと降り立ったのはダビング・レコーズ(RS01・f12341)であった。他の猟兵たちと同じように、戦機もまた帝位簒奪の狙いを切って捨てる。しかし取り分け、彼の声音には鋼じみた冷徹さが滲んでいる様にも思えた。
「ある意味当然ですけれども、やって来る猟兵も同郷が多いですね……それほどまでに恐ろしいですか、銀河帝国の再興が?」
「……それを否定する事は出来ません。しかし故にこそ、当機はいま再び立ち向かわねばならない。かつて破れ、そして勝利したモノとして」
 ダビングの最も古い記録。それは己が個体識別名と『銀河帝国を迎撃せよ』という命令の二つである。大破寸前にまで及んだかつての敗北と、猟兵として挑み打倒を成し遂げた銀河帝国攻略戦。それらを経ても尚、彼の中に在る命令は未だ有効であった。
「そうですか。ならば、我らが故郷の代名詞たる存在にてお相手して差し上げましょう。見上げなさい、皇帝の御座艦にも劣らぬ我が船を!」
 頭上へ手を掲げると、翠緑の全身より膨大な量の念動力が吹き上がり始める。それらは虚空へと収束するや、確かな質量を持って実像を形作ってゆく。そうして顕現したのは、透き通るような緑色によって構成された一隻の艦。猟書家の名を冠せし、武威と荘厳さを兼ね備えた宇宙戦艦である。スピーカーを通して、内部へと乗り込んだ翠緑の声が響く。
『さぁ、この火力と弾幕を超えるだけの実力が果たしてあるのかしら?』
「無論です。対艦戦闘はウォーマシンの真骨頂、戦闘経験も十二分に積んでいます」
『なら……試して御覧なさいっ!』
 刹那、無数の砲塔が旋廻し狙いを定めたと思うや、間髪入れずに砲撃を放ってくる。幾条にも伸びて降り注ぎくるエメラルド色の輝き。ダビングもまたバーニアを吹かすや、青白い光を曳きながら猛然と吶喊を開始した。
(砲口角度より弾道を計算。敵艦への最短軌道を算出、リアルタイムにて順次経路を更新……多少の損傷は織り込み済みです。いまはただ、取り付くことのみを最優先に!)
 相手は確実な直撃弾を戦機へ叩き込むべく、砲塔群を小刻みに動かしながら進路を狭めんと狙ってくる。ダビングは刻々と変化する射線の把握に努めつつ、針の穴の如き進路へと身体をねじ込んでゆく。空気抵抗を利用した速度の緩急、推力偏向による急速反転。どうしても避けられぬ砲撃は、電磁障壁と実体複層盾による二重の防御で受け流して凌ぎ切る。
(彼我の相対距離が残り百メートルを切りました。このまま……!)
「鬱陶しい上に頑丈な蠅ですね。そろそろ実の程を弁えるべきでしょう」
 だが着艦の直前はどうしても軌道が読まれ易くなってしまう。差し向けられた砲塔が破壊の輝きを解き放ち、ダビングを迎え撃つ。対して、防御兵装と自前の装甲を頼りに突破を図る戦機。果たして、閃光が晴れた時……。
「損害程度、中破。ですが取り付きさえすればこちらのものです……プラズマリアクター強制トゥルードライブ開始、イグニション。目標、艦橋中枢部!」
『耐えきったのですか、あの熱量を!?』
 装甲は焼けつき、関節部より白煙を上げながらも、ダビングは敵艦へと辿り着くことに成功していた。そのまま動力炉を限界稼働させるや、障害となる砲塔を破壊しながら一直線に翠緑の座す場所へと突き進んでゆく。最早こうなってしまえば、戦艦の火力とて十全に発揮は出来まい。
「っ、これはいけませんね。退避を……!」
「逃しません。メタルステーク、ルナティクス、出力最大……その輝き、更にカッティングさせて頂きます!」
 慌てて退艦しようとしても時既に遅し。艦橋へと飛び掛かったダビングは射突槍で装甲を穿ちぬくや、間髪入れずに荷電粒子刃による斬撃を叩き込んだ。青白い輝きが残像を残したかと思うと、一拍の間をおいて相手の左手に嵌められた籠手がバラリと落下してゆく。手首から先は切断を免れたようだが、それでも焼き入れられた傷跡からは蒸気が吹き上がっていた。
「お、のれぇ……!?」
「当機は任務を必ず果たします。これまでも、そしてこれからも」
 一度艦を消滅させ、その隙に距離を取る翠緑。戦機はその姿をしっかりとアイカメラに捉え続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勘解由小路・津雲
最長老、プリンセスだけで足りず、皇帝の肩書も求めるか。強欲な姫様だことよ。

【作戦】WIZを想定
 敵は見えなくなるだけで、なくなるわけではない。ならば、可視化する手段はあるはず。
先ず準備として、ひそかに自分を傷つけ、血を流し、【御神水】に混ぜる。それから赤い水を周囲にばらまき、【念動力】で幕として展開。血の結界というわけだ。これで攻撃してきたらギリギリ見えるはず。

 だがこのままでは範囲が狭く、敵は取らえられないだろう。そこで【エレメンタル・ファンタジア】で血属性の霧を一瞬だけ発生させる。霧が晴れれば、後には血染めのプリンセス(自称)が浮かび上がるはず。そこに錫杖を【投擲】、冷却して打ち砕く。



●我が身に流れし血潮の熱よ
「が、ごほっ!? 私の宇宙戦艦までも突破してくるとは。サイキックエナジーが回復するまで休息したいところですが……当然、そうは甘くはありませんね」
「弱った相手は手を緩めずに叩く。卑怯かもしれんが、これも戦場における鉄則だからな。それにあれほど強大な精神力を操る相手に、真正面から挑むなどこちらとしても御免被る」
 まるで水に溶ける氷砂糖の如く、虚空へと消えてゆく巨大なる宇宙戦艦。地面へと降り立ち肩で息をする翠緑の姫君を待ち構えていたのは、狩衣に身を包んだ勘解由小路・津雲(明鏡止水の陰陽師・f07917)であった。
「にしても、最長老、プリンセスだけで飽き足りず、皇帝の肩書までも求めるか。随分と強欲な姫様だことよ」
「そうかしらね。高貴なる者には自ずと相応しき尊称が着いてくる、ただそれだけの話でしょう? 私が私であるがまま、この『帝国継承規約』の条件を満たしたように。ですが私が如何に永久不変とは言え、流石にこの連戦には気疲れを覚えますし……」
 少しばかり、ゆっくりさせて頂きましょうか。そう言うと翠緑は己の身体を背景に透過させ、姿を完全に消し去っていた。透明化に代償はあるとはいえ、それは肉体的な疲労である。少しでも時間を稼ぎ、精神力回復に当てようという魂胆なのだろう。
(さて、それではこちらもどうするべきか。攻撃を察知できぬというのは論外ではあるし、みすみす敵の回復を許す道理も無い……となれば)
 暫し思案した後、陰陽師は霊符の端で密かに指先を薄く切ると、流れ落ちた鮮血を持参した瓢箪へと注いでゆく。紅は内部に満ちる御神水と混ざり合うや、血に混じった霊力と反応し小さく細波立ち始めた。
「これにて準備は完了。さて、まずは初撃の奇襲を確実に防ぐことへ重点を置くとしようか」
 陰陽師が紅水を周囲へばら撒くや、術者の意志に従いそれらは周囲に薄い膜を形成してゆく。イメージとしてはシャボン玉で出来た垂れ幕とでも言うべきか。感覚も津雲と共有されており、接触する何かがあればすぐさま察知できるようになっていた。
(敵は見えなくなるだけで、なにも存在そのものが無くなるわけではない。ならば、可視化する瞬間が必ずあるはず。攻撃の瞬間など、その最たるものだろうよ)
 幾ら精神力を回復するためとはいえ、透過し続ければその時間に比例して体力を消耗してゆく。故に何処かのタイミングで痺れを切らし、あちらから仕掛けて来るのは間違いない。問題はその瞬間をいち早く察知し、反応出来るか否か。
(だが、奴は自身に加えてもう一つ『何か』を透明化させているはず。それにだけは注意しなければならないが)
 これまでの戦闘から相手の手管は判明済み。なればと陰陽師は己の感覚と研ぎ澄ませ、来たるべき一瞬を待ち続ける。張り詰めた緊張感がジリジリと神経を焼き焦がす時間、その果てに……パシャリと、小さく波打つ音が戦場に響いた。
「多少は知恵を働かせた様ですけれど、所詮はその場を凌ぐための苦肉の策……っぅ!?」
「アンタ、自分で言っていただろう。子供騙しの仕掛けだってな。なら、そう二度も三度も通じるとは思わないことだ」
 だが、初めに水幕へと接触したのは透明化させられた宝石の欠片であった。先にそれを囮として投げ入れ注意を惹き、その隙に本命の一撃を叩き込むという、単純だが効果的な戦術。相手はこれまでにも幾度も成功させてきた策を再び使用し、死角から横薙ぎの蹴撃を放ってくる。
 しかし、今度ばかりはそれも通用しなかった。陰陽師は上半身を逸らす様に退くや、必中軌道の一撃を辛くも避ける。水幕が術者と感覚を共有しているというのは先にも述べた通り。ならばその大きさや勢いなどから、陽動かそうでないかを瞬時に把握することが出来たのだ。
「ちぃっ!? ですが、操れる水の量などたかが知れています。いずれは対処しきれなくなるはず!」
「ああ、そうだな。確かにこのままだとこちらも不便だ。だが要するに、居場所さえ分かればそれで良いんだろう?」
 なら、こうするとしよう。再び距離を取って透明化した翠緑を追いかけるでもなく、津雲は水幕を解いて掌へと集める。玉の様に収束させた紅水へ念と共に霊力を注ぎ込むや、それは内部から膨れ上がり、一瞬にして弾け飛ぶ。液体は鮮やかな赤き霧と化し、戦場へと満ちていった。
「同じような技を使用した者もいましたが、やはり量そのものが足りませんね。これでは霧もすぐに晴れてしまいますよ?」
「だが、こいつは色付きの水だって事を忘れてやしないか。ほら……丸見えだぜ、自称プリンセス?」
 津雲の狙いは霧そのものではなく、敵の姿を炙り出すことに在った。宝石が煌めく中、ある一か所にだけ人型の紅がぽっかりと浮かび上がっている。こうなればもう、透明化は意味を成さない。敵の位置を把握するや、津雲はその場所目掛けてありったけの霊力を籠めた錫杖を投擲する。
「宝石は確かに硬く、変化はしない。だが存外、衝撃には脆いぞ……特に冷却されていれば猶更だ」
「そんな、この様な事が……!?」
 狙い違わず錫杖は翠緑を穿つや、霊力を冷気へと変換し解き放つ。それは相手を凍てつかせると同時に、硬度を失った表層部分を粉々に打ち砕いてゆくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

落浜・語
最長老でプリンセス、とは。まぁ、そこはどうでもいいとして。
さて、どうやって対応したものか。

透明になられても、音なんかは消えないわけか。それならば。【オーラ防御】で身を守りつつ、視覚には頼らず【聞き耳】と【第六感】である程度の場所を絞り、仔龍の雷【属性攻撃】や深相円環を【投擲】し【念動力】で操作することでけん制。特に円環はペリドットでできてる。この環境にはうまい事なじんで【暗殺】とまではいかなくとも、視認はしずらくなりそうだよな?
疲れてきたのか?足元がお留守だぞ?
UC『人形行列』でもって召喚した人形の炎、爆破【属性攻撃】で広【範囲攻撃】を。
なんの為のけん制って、人形の爆破域に留め置くためだ。



●立ち昇る焔に、翠緑は一際輝いて
「クリスタリアンの最長老にして、いずれ銀河皇帝となるこのプリンセス・エメラルドに対して、どこまで無礼を働けば気が済むのでしょうか……!」
 度重なる戦闘によって、翠緑の姫君にも着実にダメージが蓄積し始めていた。滑らかであった体は所々が罅割れ砕け、纏う装束や武具にも欠けが見受けられる。そんな憎々し気な相手を前に、続けて戦いを挑むべく姿を見せた落浜・語(ヤドリガミの天狗連・f03558)はふと小首を傾げた。
「最長老でプリンセス、とは。まるで『最古参の前座』みたいな表現だな」
「……貴方も自殺志願者の一人だと判断しても宜しいのかしら?」
「いやまぁ、そこはどうでもいいとして。あんたも随分と厄介な能力を持ってるもんだ。はてさて、どうやって対応したものか」
 怒気を孕んだ視線を向けられるも、噺家は小さく肩を竦めて受け流す。まるで困ったと言った様な口ぶりだが、相手もそれを素直に信じるほど間抜けではない。寧ろ何か裏があるのではないかと、訝し気に目を細めていた。
「言葉の真偽はどうあれ、一先ずは見に徹させて頂きましょうか。ええ、本当に策が無いと判断できれば、そのまま仕留めれば良いだけの話です」
 そう言って、猟書家は宝石の輝きに紛れて姿を眩ませてゆく。対する語は薄く苦笑を浮かべながらも、持ちうる手札にて対抗すべく思考を巡らせ始めた。
(半分本音なんだがなぁ。ま、透明になられても音なんかは消えないみたいだし……それなら、やりようもあるってもんさ)
 周囲へ魔力による障壁を展開しつつ、噺家は円環を取り出して投擲する。音も無く飛翔する刃は使い手の意志に呼応し、落下することなく周囲を旋回し始めた。加えて、胸元より顔を覗かせた鈍色の仔龍はきょろりと周囲を一瞥しつつ、口内に雷撃の吐息を準備し始める。そしてその中心に佇む語はと言うと、己の聴覚へと意識を集中させていた。
(周囲へ不規則に攻撃を放って牽制しつつ、相手の発するであろう音を探る。言ってしまえばそれだけなんだが、さてどこまで通用するやら。円環はペリドット製だし、暗殺とまではいかなくとも周囲に馴染んで視認しづらくなれば御の字かね?)
 更にクイと指先の感覚だけを頼りに、複数体の文楽人形を操作して周囲を歩かせ始める。理由を知らぬものが見れば異様な光景ではあるが、姿を隠した翠緑はそれもまた索敵の為であると判断した。
(円刃や龍の吐息でこちらの行動を抑制しつつ、あの妙な人形を障害物として展開。それらを避けようとした私に音を発させ、位置を探るのが狙い、と。侮られたものですね。あんな穴だらけの警戒網で捉えようだなどと)
 相手の手の内を見届けた翠緑は円環や人形を避けつつ、音も無く語へと接近してゆく。もし透明化していなければ、まるで舞踏の如き優美さを見ることが出来ただろう。そうして猟兵を射程圏内へと捉えるや、籠手に包まれた右手を引き絞り……。
 ――カツン。
 と、身動ぎによって零れ落ちた体の破片が小さく音を立ててしまった。それを切っ掛けとし、猟兵と猟書家はほぼ同時に動く。
「っ、随分と近くまで来ていたもんだな!」
「今更気付いたところで、遅きに失しておりましょう!」
 翠緑の放った貫手を魔力障壁で辛くも逸らし、返す刀で放たれた仔龍の吐息は念動力によって弾き返された。互いに手足の届き得る距離だったが、姫君は一撃離脱に徹すべく距離を取ろうと試みる。当然、語はこの好機を逃すつもりなどなかった。
「そうすぐに逃げないでくれよ。もう少し遊んでいけ!」
 複雑な軌道を描く深相円環が翠緑へ纏わりつき、再び透明化しようとする動きを抑制する。相手も邪魔なそれを叩き落さんとするが、かと思えば今度は足元へ人形が縋りついてきた。
「なんだ、疲れてきたのか? 足元がお留守だぞ? 年寄りなんだし、無茶しない方が良いんじゃないのか?」
「ふ、ふふっ。そちらこそ攻撃手段が小さな円刃に仔龍の吐息、それに邪魔なだけの人形。幾ら何でも貧弱過ぎではありませんか?」
「ああ、やっぱりそういう認識か。なら、ひとつ忠告しておくぜ……その文楽人形、あんまり足蹴にしない方が良いぞ」
 何を妙な事を。そう嘲笑いつつ、翠緑はわざと文楽人形を蹴り飛ばす。そのまま身を低くして円環を躱しつつ再び透明化しようとするが、その目論見が叶うことは無かった。
「そいつら、全部火薬入りなんだが……って、聞こえちゃいないか。ま、自業自得だな」
 何故ならば、炸裂した紅蓮の炎に全身が一瞬で飲み込まれたからである。さしもの最長老も、人形が腹に爆弾を抱えているとは想像できなかったようだ。語はしてやったりと笑みを浮かべつつ、爆発に巻き込まれぬようその場から速やかに離脱するのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナギ・ヌドゥー
永遠に不変な存在……なんと歪な事か
どんな命も滅ぶ時が一番美しいのになぁ……

武器・冥き殺戮衝動の波動にて周囲に【殺気・呪詛】の結界を張る【結界術】
敵を蝕み【継続ダメージ】を与える呪いの波動だ
例え見えなくてもこの結界に触れるモノは【第六感】にて感知可能
音や体温を消せないなら尚更感知し易い
呪獣ソウルトーチャーには自身の死角を守らせる
この布陣で奴の攻撃を【見切り】位置を掴もう

位置を掴めた瞬間にUC「禍ツ屍蝕」発動
穿て、ソウルトーチャー!
コイツの屍肉腫は如何なる物も腐蝕させる
それが例え不滅のエメラルドでもな……



●滅びの刹那に永遠の美を見る
「は、ははは……よもや、人形に爆弾を仕込んで起爆するなど。品が無い事この上ないですね。仮にも美術品を使い捨てるとは」
 戦場一帯を飲み込んだ焔はそう間を置かずに鎮火してゆき、その中から翠緑の姫君が姿を見せる。此処は全てが宝石で出来た国、延焼する物が無かったのだろう。己のダメージは元より、美しい人形を敢えて破壊する戦法に怒りを覚えているようであった。
「これら宝石に劣るとも、価値ある物は永遠不変でなければいけません。その筆頭である私を傷つけるなど、猟兵には敬意というものがないのでしょうか」
「永遠に不変な存在……? なんと歪な事か。どんな命も滅ぶ時こそが一番美しいのになぁ……どうやらオレとアンタじゃ価値観が合わなさそうだ」
 価値ある物は永遠に変わらずあるべきだと叫ぶ翠緑に対し、否と反論の声が上がる。滅びの刹那こそが美であると首をかしげるのは、ナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)であった。戦闘の残り香に当てられたのだろうか、既に普段の慇懃な態度は消え果て、獰猛な野獣の如き本性が顕わとなっている。
「終わりがあるからこそ惜しみ、悲しみ、故に美しさを見出す。永劫失われぬものに、どうして価値が生まれようか」
「詭弁ですね。まぁ、獣風情では私の深謀遠慮など理解できなくて当然でしょうね。言葉を以て教えて差し上げる義理もございませんし……獣は獣らしく、痛みで以て躾て差し上げましょうか」
 交わした言葉こそ短いが、それで見切りをつけたのだろうか。翠緑は視線を投げ掛けられる事すら拒むかのように姿を消してゆく。視覚は元より、相手は鉱物で出来た体だ。匂いから辿るのも望み薄であろう。だが、ナギとしてはそんな消極的な策に頼る気は毛頭なかった。
「姿を消している間は体力を消耗し続けているのだろう。なら別にわざわざこちらが追う必要もあるまい。少しばかりそれを後押ししてやるだけで事足りる」
 全身よりぶわりと放たれるは、それまで青年の裡に抑え込まれていた殺戮衝動そのもの。ナギは無差別に放射されるそれへ指向性を付与する事により、一種の結界を形成してゆく。その領域の役目は護りや探査ではない。踏み込んだものを無差別に蝕む呪いである。
「例え見えなくても、この結界に触れるモノは何であれ感知可能。音や体温を消せないなら、尚更感知し易い。念には念を入れ、ソウルトーチャーに死角も守らせようか」
 こうなれば後は我慢比べである。傲然と佇むナギに対し、翠緑側がどう攻め込むか。だがその布陣の特性上、今まで使用してきた宝石欠片による陽動は効果が乏しいはず。ならばと猟書家が選んだ策は、相手をその場から引き剥がす事であった。
「この場へ留まりたければ、どうぞご自由に。ただし、その場合にはぺしゃんこですけれどね?」
「これは……柱をこちらへ向けて倒壊させたのか。全く、野蛮なのは一体どっちだ……!」
 透明化されており目視こそ出来ないものの、ナギは風切り音や宝石同士の擦れる音から敵が何をしたのかを瞬時に察する。正確な倒壊範囲が分からぬ為、必要以上に距離を取らざるを得なかったが、そのせいで結界の効果範囲外へと追いやられてしまう。途端に、その瞬間を狙っていた翠緑が音も無く襲い掛かってきた。
「回避直後であれば、その屍で出来た獣とも連携できませんでしょう。これにて仕舞いです」
「敵を前にべらべらと良く舌が廻るな。齢を重ねているくせに、口は禍の元だと知らないのか」
 だが、声の聞こえる方向から相手の大まかな位置を把握すると、ナギは体内へ埋め込まれた光学兵器を起動させ、掌より光線を放つ。目的は攻撃ではない、閃光による目潰しだ。
「っ、無駄な足掻きを……!」
「無駄かどうか、その身で判断すると良い。永遠を騙る愚か者は此処だ! 穿て、ソウルトーチャー!」
 相手の狙いが逸れた一瞬の隙を突き、青年は呪獣へと命令を下した。悍ましき肉塊は指示に従い尾を鞭の如く振るうや、先端の突起を翠緑の太腿へと突き立てる。突起は尾本体から切り離されると、途端にうぞうぞと蠢き浸食を開始してゆく。
「コイツは呪われた咎人の屍肉で出来ていてな。その屍肉腫は如何なる物も腐蝕させる呪いを孕んでいる。それが例え、不滅のエメラルドでもな……」
「なんてものを……仕方がありません、背に腹は代えられませんか」
 翠緑は歯噛みしつつも、意を決して己が太腿へと手刀を叩き込んだ。表層を削り取る様に抉る事で、屍肉腫による浸食を取り除く。尤も、その代償は決して小さくはない。
「攻撃の結果ならいざ知れず、自らの手で身を削らせるとは……どうやら、本気で私を怒らせたいようですね」
 爛々と輝く猟書家の双眼。そこには紅玉が如き烈火の怒りが滲んでいるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペイン・フィン
今回の、自分の手は、単純明快
"避けて""当てる"だよ

情報収集、世界知識、戦闘知識をベースに、聞き耳、第六感、視力の感覚強化で行動予測
限界突破、ドーピング、リミッター解除、封印を解くで身体能力を限界まで引き上げて
残像、見切り、逃げ足、早業で集中回避

ここまでやっても、攻撃は、喰らうだろうね
それでも、問題ない
……コードが使える時間が稼げれば、ね

コードを使用
呼び出すのは拷問具の兄姉
膝砕き"クランツ"とスタンガン"ニコラ・ライト"
乗機は"ニコラ"が止めて、エメラルドには"クランツ"が食らいつく

……生憎と、あの宇宙へ行かせるわけにはいかない
戦争が終わったあの世界で、再び戦いが発生するのは嫌だから、ね



●罪を定め、罰を与えし者は
「……貴方達は理解しているのでしょうか。永遠不滅であるべき私を、銀河皇帝と同じ価値を持つこの玉体を傷つけるという、その罪の重さを」
 言葉面だけを見れば慇懃に、しかしてその声音には抑えきれぬ怒りを滲ませて。翠緑の姫君はギリと奥歯を鳴らしている。二桁に届こうかと言う交戦は、永遠不変を謳う存在へ着実に傷を刻み込んでいた。美しかった肌は罅割れ、衣服は煤け、大腿部なぞ表層が抉り取られている。
「罪、ね……帝位を簒奪して銀河帝国を蘇らせ、再び戦乱を巻き起こそうとする。それ以上の罪を、生憎と自分は知らない、よ」
 その行為の数々を非難する相手へ、冷めた視線を投げかけるのはペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)であった。かつて銀河帝国戦へと身を投じ、彼の巨大軍事力が齎した被害を直接見ている身としては、翠緑の言葉には戯言以上の重みを感じられない。だがそれはきっと相手も同じなのだろう。青年の言葉に、猟書家は首を振る。
「戦乱などと。変わらぬ統治、終わらぬ繁栄……安寧を受け入れられぬ愚か者が無軌道に暴れる、ただそれだけの事です。従いさえすれば、争いなど起きません」
「……なるほど。確信した、よ。あなたは、統治者に向いていない。他人を束縛し、生かさず殺さず苛む意味を、理解できないあなたでは、ね」
 翠緑の考えは上に立つ者の視点だ。より正確に言えば、民衆を顧みぬ暴君や圧政者の思想である。群としてはある種、理想なのかもしれない。しかし、そうした個を殺す在り方を認める事などペインには出来ようはずも無かった。指潰しとしての昏き百年、人の尊厳を奪う日々を識るが故に。
「そうですか。まぁ、理解して頂けるなどと、端から期待などしておりません。私が帝位に向いていないかどうか、これを見てから判断すると良いでしょう」
 尤も、その時には既に死んでおられるでしょうが。そう言って翠緑が呼び出したのは、金色に照り輝きし皇帝乗騎である。既にハッキングからの再起動を終え、機体各所の自己修復もある程度まで完了しているらしい。銀河皇帝の遺産へと跨りながら、姫君はニッコリと笑みを浮かべた。
「さぁ。私の罪とやら、裁けるとお思いなら精々試して御覧なさい?」
 刹那、一瞬にして最高速度へと到達した皇帝乗騎の機影が視界一杯に広がる。大質量と速度を掛け合わせた、強烈な衝撃力を帯びた蹂躙走破。紙一重でそれを躱せたのは、ペインが回避に長けた猟兵であったからに他ならない。
(直撃どころか、掠っただけでも、大ダメージは免れないだろう、ね……となると自分が取るべき手は、単純明快。徹底的な"避けて""当てる"だよ)
 皇帝乗騎の速度、加速力、耐久性は確かに驚異的だ。しかし、ここは本来の戦場たる宇宙空間ではなく残酷なる童話迷宮。重力や慣性の影響で、その機動はどうしても大味にならざるを得ない。相手のスピードに慣れるまでの時間を少しでも短縮すべく、ペインは持てる技能や手札を総動員して身体能力の強化を行ってゆく。
(ただ、これだけやっても、彼我の戦力差はまだ大きい……一撃か、二撃か。間違いなく無傷では済まないだろうね)
 だが、それでもなお人の身と鉄騎の能力差は如何ともしがたい。加えて相手もただ突撃を繰り返すだけではなく、スピンやドリフトなどを織り交ぜて緩急つけた挙動にて翻弄してくる。開戦当初よりも明らかに運転技術が向上しているようだ。
「そろそろ、避け続けるのもお疲れかしらね?」
「っ!?」
 果たして、突撃を回避した後の隙を狙われ、スピンによって足元を払われてしまう。そのままペインを轢き潰すべく、翠緑はウィリーの体勢から前輪を振り下ろそうとする……が。
「残念、だけど……ここからは、こちらが"当てる"時間だよ」
 前輪が地面に触れることは無かった。ペインと皇帝乗騎の間へつっかえ棒の如く膝砕きが挟まり、圧殺を防いだのである。膝砕きはそのまま前輪タイヤをがっちりと挟み込むや、ギリギリと締め上げてゆく。一度こうなってしまえば、最早まともに走れはしないだろう。
「ただ、こういう機械って大抵は後輪駆動だったよ、ね? 強引に動かれるのも困るし……ショートさせてしまうのが、手っ取り早いかな」
 ペインは皇帝乗騎の下から抜け出すや、虚空へと手を伸ばす。手中へ収まりしは紫電を放つ電磁警棒。それを機関部の隙間へ差し込めば、たちまち白煙を上げてエンジン出力が低下してゆく。
「馬鹿な……銀河皇帝の遺産が、こうも易々と無力化されるなど!?」
 前輪への圧力と機関部に注がれる電流、それが臨界を突破した途端、皇帝乗騎は内部から火を噴いて爆発した。翠緑は咄嗟に離脱するが、如何な自己修復機能と言えどこれで暫くは走れないだろう。
「……生憎と、貴女もこのヴィークルも、あの宇宙へ行かせるわけにはいかない。戦争が終わった星の海で、再び戦いが発生するのは嫌だから、ね」
 その炎に照らされながら、ペインは己が言葉を確かに実行して見せるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メイスン・ドットハック
【WIZ】
原初のクリスタリンに会えるとはのー
じゃけど、エメラルド? アメジストより優れていると言いたいのかのー?(怒

先制対策
半径100m以内に電脳魔術で作り出したホログラムアバターを大量展開し、的を絞らせない
一体しか狙いを定められないようなので、実体替わりに電脳浮遊機雷も混ぜ込んでおく
自身は熱探知のサーモグラフで敵の位置を把握し、100m近辺からは距離を取る

先制後
UCで電磁属性の竜巻を引き起こし、宝石を磁力で巻き上げて威力を上げてから、敵を巻き込むように叩きつけていく
位置は熱探知で反応がある所を狙い、範囲も大きくして逃がすことがないようにする

宝石の嵐で砕けるなら本望じゃろー?

アドリブ絡みOK



●傲岸なる翠緑、先進たる紫紺
「はぁ、はっ……やはり、皇帝と帝国が一度敗れ去っていることで、権威にケチがついているでしょうか。こうまで怖れを抱かぬなど……私が帝位につきましたら、統治方法も考える必要もありますわね」
 内部から火を噴いたヴィークルより飛び降り、荒く息を吐く翠緑の姫君。自己修復機能によって走行可能になるまで、暫し時間が必要となるだろう。彼女は銀河皇帝という絶対的存在の権威が通じぬ状況に、苛立ちを隠せぬようだ。
 そんな相手の感情へ対抗するかの如く、また別ベクトルの怒りを帯びた声が戦場に響く。
「たまさか、故郷ではなくこんな場所で原初のクリスタリンに会えるとはのー。じゃけど、エメラルド? それは暗にアメジストよりも優れていると言いたいのかのー?」
 心なしか青みがかった肌を紅潮させつつ、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は眉根を顰めて相手の前に仁王立っていた。やはりクリスタリアンにも、構成される鉱物の種類によって対抗意識などがあるのだろうか。そんな若人の叫びに、最長老は薄く笑みを浮かべた。
「あら、当然でしょう? かの高名なプリニウスの『博物誌』では金剛、真珠に次ぐ第三位の宝石とされていたそうですし……文字通り、格が違いますの」
「あー、なるほど。これが猟書家らしい喧嘩の売り方って訳かのー。よし、売られたからには買うちゃるしかないの」
 相手も相応に鬱憤が溜まっていたのだろう。売り言葉に買い言葉とは正にこの事である。メイスンの怒気に対し翠緑は大仰に肩を竦めるや、すうっと身体を背景に透過させてゆく。
「あらあら、怖い怖い。あんまり恐ろしいから、少しばかり姿を隠すとしましょう」
 そう言い終わるや否や、忽ち相手の姿は影も形も無くなってしまう。猟兵側を幾度も苦しめてきた完全透過能力。とは言え、同じクリスタリアンであるメイスンにとっては馴染み深い異能でもある。故にそれに対する対策もまた、講じるのは容易かった。
「極論を言ってしまえば、周りから見えなくなってしまうだけじゃからのー。絡繰りさえ分かってしまえば呆気ないものじゃが、その前に自分の身も守っておかんとの」
 取り急ぎ、メイスンが選んだ手は電脳魔術によるホログラムアバターの大量展開、つまりはデコイの散布である。自動演算で動き回るそれらは、ぱっと見で本体と見分けがつかない。更に実体代わりの浮遊機雷を混ぜ込めば、迎撃も兼ねた陣地の完成である。
(でまぁ、この異能……姿が見えないだけで、熱やら物音やらまで隠せる訳じゃないからの。サーモグラフで覗いてやれば、実は一発で見つけられる訳で……少しばかり世知辛いが、これも技術の勝利じゃの)
 すちゃりと電脳ゴーグルを掛けて熱探知モードを起動させれば、デコイ群の間を動き回る相手の姿が浮かび上がる。強大な猟書家相手に何とも呆気ないが、これも年齢や脳の柔軟さの差かもしれない。
(歳を取ると新しい物事を覚えるのが大変と聞くしの……下手に何かを透過されないよう、距離を取っておくかのー)
 相手に気取られぬようデコイに紛れながら、そろそろと後ろ向きに後退し始めるメイスン。だが視線の先に居た翠緑は、突如として彼女の方へ視線を向けてきた。そこには明確に敵意が感じ取れる。
(異能の効果範囲から逃れようとしたのを察知したのかの!? 何とも勘の鋭い事じゃの……!)
 猛然と向かってくる相手によって、疑念は確信へと変わる。足止め代わりに浮遊機雷を次々と起爆させながら、少女は本命の一手を撃つ為に準備を開始した。
「電脳魔術でもこいつは一際厄介じゃけーのー……制御を誤れば、僕ごと巻き添えじゃしな」
 メイスンの周囲に発生し始めるは膨大な磁力。それらが指向性を与えられ渦を巻き始めるや、瞬く間に広範囲を巻き込む電磁竜巻へと変貌する。竜巻は周囲の宝石へ磁力を纏わせるや、強烈な引力と反発によって頭上高くへと巻き上げていった。
「ほれ、これだけ範囲が広ければ避けられないじゃろ?」
「っぅ! 私の旗艦、いえ、せめて皇帝乗騎が稼働可能であれば、この程度の竜巻など容易く耐え切れたものを……!」
 翠緑と紫紺の彼我距離は余りにも遠い。相手が接近してくるのを待つ義理も無く、メイスンは電磁竜巻を操り敵へと叩きつけた。大小様々な宝石を内包した竜巻内部は、シュレッダーやミキサーも斯くやと言う惨状を呈している。
「お待ちなさい、エメラルドは衝撃に弱く……!?」
「皇帝になりたいって話だしのー。なら、宝石の嵐で豪勢に砕けるのなら本望じゃろー?」
 悪態の叫びも嵐に呑まれ消えてゆき……メイスンは心なしか上機嫌に、その様子を悠々と眺めるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
スペースシップワールドを狙うならわたしの敵ね
プリンセス・エメラルド、その永遠、海賊ヘスティアが頂くわ


対艦戦ね、申し訳ないけど向こうの世界で散々やったんだから!
スモークミサイルによる煙幕【迷彩】からのダミーバルーン【残像】による攻撃の分散
艦の形状…そして見える砲塔からして…『情報収集』による弾道の予測
ついでにアベルの『ハッキング』で砲撃のタイミングや砲塔の動きまで把握させてもらおうかしら?

後はこれを突破するだけね
ティターニアを全開【空中戦】に、攻撃を得た情報等を元に『見切り』くぐり抜ける!

後は艦橋にこの対艦ミサイルの一撃を叩き込む!【爆撃】



●接舷白兵こそ海賊の誉れ
「よもや、美しき宝石を利用され噛みつかれるとは……ですが、私も伊達や酔狂で最長老と呼ばれてはおりません。この程度で我が永遠が崩れ去る等と思われるのは、少しばかり心外ですね」
 口ではそう言いながらも、翠緑の姫君がこれまで受けたダメージは決して軽くはない。直近の戦闘でさえ砕けた宝石混じりの竜巻に飲み込まれたのだ。全身を打ちのめされた結果、内部が罅割れ透明な身体に濁りが生じている。それでも砕け散らないのは、永い年月に裏打ちされた精神力の成せる業か。
「此処まで追い詰められても、野望を諦めないとはね。飽くまでもスペースシップワールドを狙うならわたしの敵よ……プリンセス・エメラルド。その永遠、この海賊ヘスティアが頂くわ」
 そんな翠緑を建物の上より見下ろす人影が在る。何者かと頭上へ向けた視線の先では、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が敢然と腕組みをしながら仁王立っていた。これまでの言動からも分かる通り、この猟書家のプライドは非常に高い。故に敵に頭上を取られるということは耐えがたいのだろう。眉根へ深々と皺を刻みながら、頭上へと手を掲げる。
「また海賊ですか。一人目と同じく、なんと野蛮で不敬なことでしょう。先程は皇帝乗騎で相手をして差し上げましたが、最早それすらも手緩い。私の最大火力でお相手致します」
 体力は兎も角、消耗したサイキックエナジーは既に回復を終えている。翠緑は放出したエナジーを練り上げ、己が旗艦である宇宙戦艦『プリンセス・エメラルド』号を上空へと出現させた。其れへと乗り込み今度は逆にヘスティアを見下ろしながら、翠緑は高らかに宣言する。
『さぁ、たかが生身の海賊が此処まで至れるかどうか。死を恐れぬなら試して御覧なさい?』
「わざわざ頭上を取る為だけに戦艦を呼び出すとか、見た目に似合わず随分と大人げないわね。それで、対艦戦ね。良いわよ、申し訳ないけど向こうの世界で散々やったんだから!」
 途端に無数の砲塔が仰角を調整するや、一斉に砲撃を開始してきた。戦場はたちまち緑一色に染め上げられ、光線の熱で足場にしていた建造物がどろりと溶け落ちてゆく。
 ヘスティアはジェットパック『ティターニア』による柔軟な軌道で攻撃を躱しながら、煙幕弾を手当たり次第にばら撒いて相手の命中精度を下げる。また、同時に自身と同サイズのダミーバルーンを展開する事により、狙いを更に分散させていった。
「っと、手持ちは全部吐き出したけど、この砲撃密度じゃ焼け石に水ね。なら、艦の形状や見える砲塔の情報を入力して……アベル、弾道予測頼んだわよ。どうせなら、敵艦までのルートも案内して頂戴!」
『承知しました、お嬢様。少々厳しい経路となりますが、問題ございませんか?』
「構わないわ、気にせずやっちゃって!」
 執事の様な口調の支援AI端末、ティンクル・アベル。その電子頭脳は敵艦砲塔の最大仰角や砲撃間隔、光線照射時間といった情報を元に、主へと進むべき道を提示する。それはか細い糸の如き道筋だが、海賊に必要なのは一にも二にも度胸だ。怯えてなどいられない。
 四方八方、行く手を阻むように降り注ぐ緑の光柱を紙一重で避け、目まぐるしく更新されてゆくルートに従ってぐんぐんと高度を上げてゆく。しかし、距離が縮まるほどに発射から着弾までの時間は当然短くなり、回避の難易度もまた上昇する。
『お嬢様。二秒後に斜め左方向より砲撃、照射五秒間。七秒後に直上と右下から、同じく五秒間の照射が来ます』
「的確にこっちの進路を塞いでくるわね……って、ちょっと待って! このタイミングで発射間隔をずらしてきたわよ!?」
 相手も砲撃パターンを読まれることは想定していたのだろう。一定距離まで接近した瞬間、攻撃ルーチンが切り替わったのだ。初撃は何とか回避するものの、急制動を掛けた瞬間を狙って第二射が解き放たれる。
「こ、んのおおおっ!」
 ジェットパックを最大出力で吹かし、限界まで身を捻るヘスティア。真横を通り過ぎる砲撃との隙間は正に紙一重。ジリジリと全身が高熱に焼かれるも、裂帛の気合で以て痛みに耐え切った。
 緑の閃光が消え去ると、敵艦の艦橋はもう目前。ここまで近づいてしまえば、砲身の長さが逆に仇となって攻撃を届かせることは不可能である。
『そんな……ウォーマシンなら兎も角、只人の身で砲撃に焼かれないなんて!?』
「幾ら何でも、海賊を舐め過ぎたわね。それじゃあそのツケ、たっぷりと払って貰うわよ! 紅蓮に染め上げなさい、レッドキャップ!」
 目を剥く翠緑の顔面へと、ヘスティアは火器群の照準を合わせる。すると赤いフードを被った犬型のドローンが少女の後ろから姿を見せるや、口腔内より大型対艦ミサイルを発射。艦橋部を猟書家ごと木っ端微塵に吹き飛ばしてゆくのであった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

吉備・狐珀
翠緑なる永遠…残念ですが永遠とはいかないようですね

UC【神使招来】使用
プリンセス・エメラルドが此方に危害を加えるものと共に姿を消したら、神経を研ぎ澄まし第六感を働かせつつ、物音や気配を探る。
相手が慎重になって音を出さないのなら出させてやればいい
あらゆるものが宝石で出来ていて吹き飛ばすには丁度よさそうな物がここにはありますから
月代に衝撃波を放ってもらい上空含め全方向に放ち宝石を吹き飛ばす
何も無い所から跳ね返る音がすればそこにいるということ

姿を確認したらウケの弓矢を一斉発射しウカの援護射撃をしつつ、ウカのもつ神剣で反撃といきましょうか。
エメラルドは衝撃に弱いそうですが…貴女はどうなのでしょうね



●星の如き輝きに抱かれて
 対艦ミサイルの一撃によって艦橋が吹き飛ばされ、ぐらりと船体を傾かせる宇宙戦艦。船体の大半こそ無事ではあるが、操縦者たるプリンセス・エメラルドが吹き飛ばされてしまえばその時点で航行は不可能だ。
 そんな動力を失い送還されてゆく船から、緑の輝きが地面へと落下してゆく。それは攻撃を受けた翠緑の姫君であった。どうやら爆発の衝撃をもろに受けたのか、意識が混濁しているらしい。
「っ、お、おおっ!」
 あわや地面へ激突するという寸前、意識を取り戻した翠緑は身を翻して何とか受け身を取る事に成功する。ふらふらと立ち上がる様子からは、蓄積されたダメージの大きさが見て取れた。
「おのれ。海賊風情が私の身体のみならず、船まで傷つけるなど。どこまで侮辱する気なのでしょうか……!」
「――随分とお疲れの様に見えますね。翠緑なる永遠……その二つ名とは裏腹な傷だらけの姿。残念ですが、どうやら望んだ通りの永遠とはいかないようですね」
 そんな一部始終を見届けている者がいた。猟書家が掛けられた声にハッと振り向き臨戦態勢を取ると、そこには冷ややかな面持ちの吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)が、黒白二頭の狐を従えて佇んでいた。体裁を取り繕う余力程度は辛うじてまだ残っていたのだろう、翠緑は埃を払いつつ胸を張る。
「ええ、業腹ですが劣勢であることは認めます。しかし、似た様な苦境は長き半生の中で幾度となくありました。ですが、今もこうして私は立っている。それが何よりの答えでしょう?」
 それが虚勢なのか、それとも本心からの言葉なのか。いまの狐珀では明確な判断を下すことは出来ない。しかし、どちらにせよやるべき事は一つしかないのだ。彼我の距離感を慎重に測りつつ、狐像の少女は秘かに霊力を練り上げ始める。
「そうであるはずだった銀河皇帝も、最終的には骸の海へと還りました。自分だけは二の轍を踏まないなど、些か傲慢が過ぎませんか?」
「私は帝位を継ぐ者。それが謙虚では格好がつきませんもの……とは言え、まだこの身は其処へと至らぬ身。なら用心深いくらいが丁度良いでしょうね」
 狐珀が仕掛ける機を伺っているのを察知したのか、会話の途中から翠緑はゆっくりと自らの姿を背景と同化させていった。言葉を言い終わる頃には既に跡形もない。試しに数瞬前まで立っていた場所へ近寄ってみても、ただ指先が空を切るのみ。
「件の透明化能力ですか。体力も消耗しているというのに、敢えてこの手を選ぶとは。せめてもの矜持ということなのでしょうか?」
 そう呟きを漏らしつつ、狐珀は瞳を閉じて神経を研ぎ澄ましながら相手の気配や発する物音を探ってゆく。だが迂闊に手掛かりを発するほど、相手も間抜けではないのだろう。暫し耳をそばだてても、呼吸音一つ感じ取れなかった。
「なるほど、この局面で選択するだけはありますね。それはそれで厄介ですが……相手が慎重になって音を出さないのならば、こちらから出させてやればいい」
 狐珀は目を開くと、そっと周囲を見渡す。敵の姿を探しているのではない。彼女が確かめているのは周囲に立ち並ぶ宝石製の建造物である。
「幸い、あらゆる物が適度な硬度と脆さを備えていて、吹き飛ばすにはうってつけの物が此処にはありますしね。月代ならば威力的にも丁度良さそうです」
 小さく喉を鳴らしながら、名前を呼ばれた仔龍が姿を見せた。その身体を愛おしそうに一撫ですると、月代を中空へと飛び上がらせる。そうして仔龍は大きく息を吸い込んだと思うや、周囲の建物目掛けて次々と衝撃波を放ち始めた。壁や柱は粉々に砕け散り、まるで星空の如く周囲へと飛び散ってゆく。
(姿は見えずとも、相手がこの場に居る事だけは確かです。ならば、物が当たれば当然跳ね返るはず……これだけの欠片を避け切る事は、いくら猟書家とは言え難しいでしょう)
 狐珀の狙い、それは周囲へ建築物の残骸をばら撒くことにより、反発よ反響によって敵の居場所を炙り出す事だった。ある意味、ソナーやレーダーと考えれば近しいか。果たして、何もないはずの空間で欠片が不自然に跳ね返り、甲高い音を響かせる。
「……見つけました。ウケは弓矢を一斉発射して援護を、ウカはその隙に接近して反撃と行きましょう。逃げられても手間ですし、月代も衝撃波の継続をお願いしますね?」
 敵が見つかれば後は早かった。狐たちは瞬時に人の形を取るや、白は弓の雨を降らせて牽制を行い、黒は神剣を携えて前へ前へと踏み込んでゆく。そのうえ仔龍が建物を壊し続けるとあってはもはや身を隠す意味もないと、翠緑は異能を解いた。
「見かけとは裏腹に、よくも躊躇なく人の国を好き勝手壊せるものですねっ!」
「それが必要とあらば、幾らでも。さて、エメラルドは衝撃に弱いそうですが……貴女の場合はどうなのでしょうね」
 相手を攻撃圏内へと捉え振り下ろされる神剣と、翠緑の籠手に包まれた手刀が交錯する。金属同士のぶつかり合う凄まじい音が戦場へと響き渡り、そして……。
「な、私の、右手が……っ!?」
 切り口も鮮やかに、すっぱりと。右手首から先が籠手ごと斬り飛ばされるや、流星の如く高らかに宙を舞うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
宙船の世界で最も新しき種族が一人として輝かしき民の姫君への拝謁の機会、光栄の至り

ですが人々の安寧の為、立ち塞がらせて頂きます

機械馬に騎乗しセンサーで●情報収集
砲門の向き●見切り回避運動
発射寸前砲門に●破壊工作で爆薬仕込んだランス●投擲
装甲吹き飛ばし

馬で戦艦に挑むなど…
ですが、騎士として挑みたいのです!

大地●踏みつけ跳躍
機械馬のスラスタ●ハッキング限界突破
戦艦内侵入

●世界知識でSSW戦艦構造把握済み
コアマシン破壊し脱出
消耗した姫君の前に

お伝えします
『姫様』とお呼びしていたやもしれぬ貴女に

不朽にして不滅
その一つは『善を希求するヒトの意志』
それがある限り、貴女に栄華が訪れることはありません

剣を一閃



●鋼の騎士よ、永劫悪逆の姫を討て
「が、ぁ……おのれ、おのれおのれおのれおのれぇええええええッ!」
 戦場に溶岩の如き怨嗟と憎悪が響き渡る。罅が入るのはまだ許そう。身体を削られるのも必要な代償だと割り切れる。だが、己が右手を切り落とされるという、明確な欠損。それは自らを永劫不変と自負する翠緑の姫君にとって、何よりも受け入れられぬ『変化』であった。余りの嚇怒に、それまで辛うじて保たれていた優雅さが剥がれ落ちてゆく。
「……痛々しき姿、誠に同情致します。されど深窓から離れ戦場へと足を運ばれたのは御身自身。故に対等たる敵手としてこうして馳せ参じさせて頂きました」
 そんな相手の荒々しさとは対照的に、静々とした足取りで猟書家の前へ一領の大鎧が歩み出てくる。何者かと睨みつけてくる相手の視線を真正面から受け止めつつ、外見に似合わぬ慇懃な所作でその者は深々と一礼した。
「私の名はトリテレイア・ゼロナイン。かつて栄えし銀河帝国宙に身を置き、今はただ騎士の路を征く者。宙船の世界で最も新しき種族が一人として輝かしき民の姫君への拝謁の機会を賜り、光栄の至り」
 元が武典及び要人警護用として鍛造された出自故か、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の言動は堂に入っていると言える。しかし姫君はそれで幾らか怒気を収めたとは言え、接する態度は冷ややかだ。
「……それは迂遠な皮肉でしょうか? こうも薄汚れ、欠けたる身に首を垂れるなど」
「いいえ。永き時を生きた先達として、そして高貴なる身分の方として。抱く敬意に偽りはありません……ただ」
 鋼騎士はそう言って頭を上げると、巨なる盾と雄々しき馬上槍を取り出だし構える。名乗りを上げ、礼を通した。ならば、その次に待つものはただ一つ。姫君もそれを察してか、ジリと半身を退いて油断なく戦意を張り巡らせてゆく。
「悪逆を討ち弱気を助くことこそ、騎士の本懐。人々の安寧の為、立ち塞がらせて頂きます!」
「鉄の人形風情が、よくもその様な大言壮語を。ですが、その無謀な度胸だけは認め……褒美に騎士道らしい困難を与えて差し上げましょう」
 相手に対する皮肉も兼ねた、絶対的暴力による蹂躙。頭上へと召喚された宇宙戦艦は姫君が乗り込むや、まるで悪竜が首をもたげるかの如く無数の砲口を差し向けてくる。対してトリテレイアは呼び出した機械馬へと跨り、その威容を真っすぐに見返した。
「機械仕掛けとは言え、馬で戦艦に挑むなど……傍から見れば、正気の沙汰ではないでしょう。ですが私は、飽くまで騎士として挑みたいのです!」
『物狂いもここまでくれば清々しいですね。ですがこの艦を、たかが風車の巨人風情と同じに考えない事です』
 刹那、巨獣の足踏みも斯くやという衝撃が地面を震わせた。砲塔群による一斉射が同時に地面を穿ったのである。鋼騎士は機馬を駆り辛くも直撃を躱すも、緑光の柱は彼を狙って間断なく降り注いでゆく。
(手が加えられているとは言え、見慣れた戦艦のセオリーからそこまで外れている訳ではないようです。ならば、その性能もおおよそは導き出せるはず……!)
 朧げな帝国軍時代の情報と猟兵としての記憶、その二つを総動員しトリテレイアは相手の性能を暴き出さんと試みていた。照射時間、発射間隔、旋廻速度と仰角。電子頭脳を最大稼働させそれらを導き出すや、か細い安全な進路を駆け抜ける。
(ですが、避けてばかりではいずれ追い詰められます……ならば、ここは!)
 彼は頭上を一瞥し砲撃直前の砲塔を見つけるや、砲口目掛けて手にしていた馬上槍を投擲した。爆薬仕込みの槍は砲身内部に溜め込まれていた熱量と溶け合い、凄まじい爆発を巻き起こす。
『十二番砲塔が誘爆……装甲に穴が!?』
「如何な強固な要塞とて、時には蟻の一穴で崩れ去るものですっ!」
 間髪入れずに鋼騎士は機馬のスラスターを全力で吹かせつつ、地を蹴って跳躍。月へ旅したアストルフォが如く宙を舞うや、破損した装甲の隙間より敵艦内部へと突入した。
 こうなってしまえば、戦艦の発揮できる火力などたかが知れている。トリテレイアは艦内の迎撃装置を持ち前の頑強さで跳ね除けつつ、艦中枢へ到達するとコアマシンを躊躇なく破壊。そのまま元来た道を舞い戻り、甲板上へと飛び出した。
「これで良し。完全な停止とまでは参りませんが、機能低下は避けれないはずです」
「……よもや、私自身ではなくコアマシンを狙うとは。機械らしい合理性ですこと」
 背後から掛けられた声にハッと振り向くと、そこには姫君が佇んでいた。これまで船に取り付いた猟兵たちは皆、猟書家本体へと攻撃を仕掛けている。故に彼女は自身の座す艦橋部の護りを固めていたのだが、此度は逆にそれが裏目に出たらしかった。
「ねぇ、聞かせて下さらないかしら。貴方は騎士なのか、それとも戦機なのかをね」
 徐々に傾き始める艦の上で、姫君はそう問いを投げ掛ける。対して、鋼騎士はそっと小さく首を振った。
「今の私はまだ、その問いに答える言葉を持ちません。ですが代わりに、一つお伝えします。『姫様』とお呼びしていたやもしれぬ、貴女に」
 そう言いつつ、トリテレイアは鞘より長剣を抜き放つ。ゆっくりと相手へと近づきながら、彼は言葉の続きを紡いでゆく。
「不朽にして不滅。その一つは『善を希求するヒトの意志』です。それがある限り、残念ながら貴女に栄華が訪れることはありません。それこそ、永遠に」
「……全く。容赦のない『騎士』様ですね」
 トリテレイアが間合いに入った瞬間、瞬時に蹴撃を放ってくる姫君。彼は敢えてそれを受け止めながら、手にした剣を一閃する。
「ええ……まだまだ、道半ばですゆえ」
 そうして何よりも堅き切っ先は、煌めく翠緑の胸元へ確かな傷跡を刻み込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィーナ・ステラガーデン
【PW】
宇宙戦艦ってのと戦うのなんて一年ぶりかしら?

先制攻撃として宇宙戦艦を出されている対策として戦艦を4人で打ち破るわ!
私の役割は仲間が懐に入る為の露払いとしてでかい花火を連発するわ!
杖に乗りながら破壊光線を回避しつつ
【高速詠唱、多重詠唱】を用いて遠距離からUC連打にてあわよくば砲台を狙って
難しいようなら爆発にて仲間の接近の目隠しとするわ!
仲間を近づかせることに全力を注ぐので出し惜しみはしないし、最終的に私が砲弾の爆風でぶっ飛ばされても
仲間が接近していたのなら私の勝ちよ!ボロボロになりながらもふんぞり返って笑ってやるわ!

(アレンジアドリブ大歓迎!)


アリシア・マクリントック
【PW】
宇宙戦艦とはまた無茶な……!それならまずは懐に潜り込む!そうすれば主砲や副砲では狙えないはず……!
そして『宇宙戦艦』なら重力下ではそうそう動けないでしょう。扉よ開け!ティターニアアーマー!これでもまだこちらの方が遥かに小さいですが……力ずくです!ひっくり返すとまでは行かなくても、引き倒すぐらいはやってみせます!これで一部の砲は無力化できるでしょう。
そうしたら次は……皆さんの攻撃で歪んだ装甲を引き剥がしてやります!そしてそのまま内部へ一撃!

戦艦を無力化したらアーマーを降りて剣で勝負です!


ユーノ・ディエール
【PW】
銀河に再び戦乱をなどと……見逃すとお思いで?
宇宙戦艦で先制を仕掛ける……ならば!
こちらも同じくです! アルナージュ、機関全速!
艦首回転衝角を唸らせながら吶喊!
すると見せかけ囮になりましょう
一発くらい耐えてやります
念動フィールド最大出力! わざと目立たせて敵の矛先をこちらへ
その間に皆さんの攻撃を届ける!

ハッキングで遠隔操作した艦艇に敵をおびき寄せたら
その状況、地形を利用しUCで切り込みます!
ドレスめいた戦装束に二頭の竜(ワーム)で敵の放火を潜り抜け
精神干渉波でアルナージュに敵の意識を向けさせつつ
本命はあなた――姫気取りの時代の遺物を衝撃波で消し飛ばす!
帝国を破った力、侮らないで貰いたい!


チトセ・シロガネ
【PW】
皇帝にケンカした以来ネ。戦艦ぶった斬るのは……。
あの時とは一味違うボクをお見せするネ!

戦艦の破壊光線は少し厄介ネ。
みんながかく乱している間は雷鼓ユニットを展開、念動力を込めたオーラ防御で艦砲を受け止めつつ、エネルギーを捕食して電力を確保。

アリシアが戦艦を受け止めたのを確認したらEZファントムのリミッター解除、UC【星砕乃型】を発動させ、全電力をプラズマの刃に変換、属性攻撃と鎧砕きで戦艦を圧し折ってやるネ。



●永遠など無く、刹那に翠緑は砕け散る
 猟書家『プリンセス・エメラルド』。永遠不変を謳う翠緑の姫君ではあったが、今やその二つ名が虚しく思えるほどの傷を全身に負っていた。十を超える戦闘によって全身には無数の罅が走り、透き通っていた肢体は所々が不透明に濁っている。極めつけに右手は手首から先が切り落とされ、胸元には深々と刻まれた真一文字の傷。
 頼みとした宇宙戦艦さえ、損傷の程度は控えめに見積もっても中破相当。更にコアマシンの破壊により出力が大幅に低下しており、もはやいつ墜落してもおかしくないと言える。
『…………まだです。まだ、終わりません。終わらせて、なるものですか』
 だが、どれだけの損傷を受けても尚、未だ健在であることもまた事実だ。悠久の時を経て溜め込まれた膨大な量のサイキックエナジー。翠緑は万が一の為に温存しておいた余力すらも開放し、己が艦へと注ぎ込んでゆく。崩壊しかかった船体を強引に纏め上げるその強大さに、決着をつけるべく姿を見せた【Planet Watch】の面々も思わず息を呑んだ。
「宇宙戦艦を独力で維持するなんてまた無茶な……! でも、それを可能とする実力があるからこそ、帝位へと手を伸ばせたのでしょうか」
「それくらいして貰わなきゃ拍子抜けってものよ! そう言えば、宇宙戦艦と戦うのなんて一年ぶりかしら? 私達だって成長しているんだし、相手にとって不足なしね!」
 余りにも力任せな手段にアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)が目を見開く一方、なればこそとフィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)は威勢よく気炎を吐いている。如何な強大な敵とて、仲間と肩を並べて挑めば恐るるに足りなかった。
「改めてそう言われれば、こっちも皇帝とケンカした以来ネ。戦艦をぶった斬るのは……あの時とは一味違うボクをお見せするネ!」
「帝国を再建し、銀河に再び戦乱をなどと……みすみす見逃すとお思いで? そんな身に過ぎた野望、此処で終わりにして見せます!」
 それに銀河皇帝ならば、既に先の大戦で一度滅ぼしているのだ。ならば二度目を、それもまだ帝位につく前の僭称者風情を相手に為せぬ道理も無し。チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)やユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)の戦意は、臆するどころか更に煌々と燃え上がってゆく。だが翠緑にとって、猟兵たちのそんな態度は不遜以外の何物でもないのだろう。軋みを上げながらも、砲塔群が強引に四人へと狙いを定め始める。
『私はあの黄金と……敗北者とは違います。同じ失敗は決して繰り返しません。必ずやより巧みに、一切の瑕疵なく、全てを支配して見せる……っ!』
「おや、それまでの優雅さが微塵も感じられない物言いですね。最長老などではなく、まるで駄々を捏ねる子供の様です」
『っ……まずはその増上慢からへし折り、身の程を弁えるよう教育して差し上げましょう!』
 ユーノの挑発的な物言いにとうとう怒りの許容値が限界を越えたのだろう。翠緑の激情を体現するかの如く砲口へ緑の輝きが集まるや、強烈な破壊の渦と化して解き放たれるのであった。

「さて、こちらの思惑通り乗ってきましたね。宇宙戦艦で先制を仕掛けてくる……ならば、こちらも同じくです!」
 直撃は勿論、生身であれば掠っただけでも致命傷となりかねない戦艦の全力斉射。それに対しまず真っ先に反応したのは、攻撃の切っ掛けとなったユーノである。単身では到底抗し得ぬ暴威に対し、彼女の取った選択はある意味で単純明快だった。即ち、敵が戦艦を持ち出すのであれば、こちらも艦を以て対抗すればよい、と。
「アルナージュ、機関全速! 艦首回転衝角、最大回転……目標、敵旗艦『プリンセス・エメラルド』号ッ!」
 空間を歪曲させ、まるで地を割る様に出現したのは結晶人が駆りし万能航空巡洋艦『アルナージュ』であった。サイズこそ戦艦にやや劣るものの三連装衝撃砲や離発艦カタパルト、反重力推進器を備えており、正しく万能の名に相応しい一隻である。そしてその中でも取り分け目を惹く艦首回転衝角、詰まりはドリルを唸らせて猛然と突撃を敢行してゆく。
『見た目だけの虚仮脅しを! 奇をてらった装備が在るとはいえ元は巡洋艦、耐久性能は艦種相応でしょうに!』
 目下、四人の中で最大の脅威と化したユーノへと必然的に敵の火線が集中する。如何な万能船とは言え、敵の大火力が直撃すれば大損害は免れない……しかし、その時点で既に彼女は己が目的を達成していた。
「良し! 狙い通り、相手の照準をこちらに集められた……進路そのまま、念動フィールド最大出力! 一発くらいなら耐えてやります!」
 結晶人の目論見、それは攻撃ではなく陽動にある。防御機構を全力稼働させて砲撃の第一斉射を受け止めている間に、仲間たちが攻撃する隙を生み出さんとしていたのだ。自らの艦影で射線を切りつつ、回転衝角と念動力場という二重の護りによって真っ向から対抗してゆくユーノ。
『馬鹿な真似を……攻撃個所を集中してあげれば、どれだけ護りを固めても脆いモノです』
 だが猛烈な敵の集中砲撃によって防御が抜かれ、前面装甲が撃ち貫かれてしまう。即轟沈とまでは至らぬものの、被弾個所からは濛々と煙が吹き上がり、俄かに機関出力が低下し始める。
「っ!? せめて皆さんが敵艦へ取り付くまでは、耐え切らねば……!」
「一人で無理する必要なんてないわよ! 露払いをするのなら、私だって参加させて貰うわ! 攻撃の派手さだったら、こっちだって負けてないんだからね!」
 そんな仲間への圧力を僅かでも減らすべく、猛然と飛び出してゆくのはフィーナであった。魔女は大粒の紅玉をはめ込んだ杖に跨ると、護衛する戦闘機の如くアルナージュの周囲をぐるりと旋回してゆく。その軌跡に沿って幾つもの閃光が零れ落ちたかと思うや、数瞬の間をおいて眩い閃光と膨大な熱量を開放していった。
「チャフ、それともフレア? なんて言うかは分からないけど、機械が狙いをつける方法なんて早々変わってないはずよね? だったら、こういうドでかい花火は効果覿面でしょ!」
 眩い閃光は目視及び光学による照準を狂わせ、撒き散らされた熱量はデコイとして赤外線誘導すらも捻じ曲げる。あらぬ方向へと向いた砲口が放つ緑光は、虚しく空を焼き焦がすのみ。そうして相手から掛けられる負担が減れば、自ずと攻撃へと転じる余裕が生まれるというものだ。
「遠慮なくバカスカ撃ってくれちゃってるわね! ならこっちだって出し惜しみは無しよ! まずはそっちに近づけなきゃ、同じ土俵に立てないもの!」
 欺瞞と撹乱から一転、ミサイルの如く撃ち出された全力の魔法が敵戦艦へと迫り行く。その大半は敵の砲撃によって相殺されてしまったものの、着弾した一発が紅蓮の炎を撒き散らして砲塔の一つを吹き飛ばす。余りの衝撃にほんの僅かではあるが、ぐらりと船体が揺らぎ沈み込む。
『っ! 砲撃戦を重視して、近接防御を怠ったツケですか……!』
「今ので相手の狙いが狂ったみたいね! 体勢を立て直されたら元も子もないし、今の内に接近してちょうだい!」
 この好機を逃すなと、フィーナは侵攻の機を伺っていた仲間たちへと発破をかける。そこは気心の知れた仲間同士、すぐさまアリシアが阿吽の呼吸で反応するや頭上目掛けて飛び出してゆく。
「フィーナさん、ユーノさん、ありがとうございます! 相手は不慣れな重力下での戦闘です、きっと通常通りの機動は出来ないでしょう。なら、こちらは小回りを活かして突破するのが一番ですね!」
 敵艦は頭上遥か彼方。辿り着くにはユーノの巡洋艦やフィーナの杖の様な移動方法を使わねば、道中で撃ち落されてしまうだろう。だが心配無用、アリシアにはその為の手段を既に身に帯びていた。
「扉よ開け、ティターニアアーマー! これでもまだこちらの方が遥かに小さいですが……これなら、主砲や副砲では狙えないはず。問題ありません、足りなければ力ずくですっ! さぁ、行きましょうチトセさん!」
「分かったネ。砲撃に関してモ、ボクの場合は寧ろ望むところヨ? いざとなったら、盾になってあげるから、安心するネ!」
 アリシアはベルトに封じられた特殊強化装甲を装着したと思うや、更にその上へと拡張アーマーを展開。一瞬にして全高六メートルを超す巨躯へと変身する。そうしてチトセと共にブースターを噴かせながら飛翔、脇目も振らず敵艦目掛けて吶喊し始めた。
『敵ながら大した連携、と褒めておきましょうか。ですが狙いを搔き乱されているとは言え、些かこちらの砲塔数を侮ってはいませんか? 乱数照準、短間隔断続斉射、撃ぇっ!』
 だが相手は砲撃の精度と照射時間を切り捨て、速射と手数の増強を選択する。光線と言うよりも光弾とでも形容すべき攻撃だが、チトセにとっては逆にそれが好都合と言えた。
「通常出力だと受け止めるだけでもちょっと辛いケド、これなら楽で良いネ。艦へ取り付くまでの道中、たっぷりと電力を確保させて貰うヨ!」
『なんと悪食な……!? 通常出力に戻す、いや、それでも元の木阿弥ですか……!』
 彼女の首へ巻かれた流体マフラー、その電磁力場を制御する為の円盤型ビット。電脳存在はそれを己の前面へと展開するや、敵の砲撃を受け止め吸収。電気エネルギーへと変換して己の裡に溜め込んでゆく。仲間への攻撃を防ぎつつ、己の継戦能力の強化も行えるとなれば一石二鳥だ。翠緑は歯噛みするものの、どう対処すべきか暫し判断に迷ってしまう。時間にして僅か数秒、だがそれだけあれば彼女たちには十分であった。
「良し、取り付けました! お二人が安全に近づけるよう、ひっくり返すとまでは行かなくても、引き倒すぐらいはやってみせます!」
 着地の衝撃で装甲を凹ませながら敵甲板へと辿り着くや、アリシアは流れる様に手近な砲塔へと組み付いた。彼女は巨大な根元部分をがっちりと抱え込み、アーマーによる強化支援を全力で生かしながら台座部分より引きずり出さんとする。コードや固定装置の引き千切られる音が響いたと思った瞬間、轟音を立てて砲塔が甲板を転がり落ちていった。
「ユーノ、こっちネー! アルナージュの方は大丈夫カ?」
「航行能力に問題はありませんでしたので、システムを切り替えて遠隔操作で航行させています。主戦場は既にこちらですが、こうれなれ存在自体が牽制となってくれるでしょう」
 そうして手当たり次第に砲塔を破壊してゆくアリシアによって、敵の砲撃密度は見る間に減少してゆく。その隙に乗じてチトセが誘導を行い、巡洋艦から離脱したユーノが突入組と合流を果たす。加えて撹乱に徹していたフィーナもまた、続いて艦へと降り立つべく接近してきていた。
「ふっふーん! 私たちに掛かればいくら強力な戦艦だってこんなものね!」
「ええ、そうですね。ですがある意味、ここからが本番です。気を引き締めないと、逆に返り討ちにされる危険が……」
 砲塔を破壊していたアリシアも一旦手を止め、仲間へ微笑と共に視線を向ける……が、故にこそ彼女は見落としてしまった。すぐ傍で沈黙していた破壊途中の砲塔が、各所より緑色の輝きを漏れ出させていたことに。
「っ!? 此処まで詰められたんですもの、そう簡単にちゃぶ台はひっくり返させないっての! 爆発には爆発をぶつけて相殺してやるわ!」
 先んじてそれに気付くことが出来たフィーナは、一目で敵が何を狙っているのかを見抜く。そして同時に、それが成るまでの時間が余りにも短いと悟った瞬間、彼女は覚悟を決めた。
「ごめん、ちょっと手荒くいくわよ!」
「え、ちょっと、フィーナさ……きゃぁっ!?」
 フィーナは着地時の勢いを利用してアリシアへと体当たりをかますや、突き飛ばす様にその場から離れさせる。そうして地面へ足を着けると同時に杖を構え、瞬時に砲塔へと火球を叩き込む。だがそれが着弾する寸前、砲塔もまた内部より緑色の炎を撒き散らしながら自壊した。紅蓮と翠緑、二つの炎がぶつかり合い、その余波に魔女の姿が飲み込まれてゆく。
「これはまさか……半壊状態の砲塔へ過剰なエネルギーを注ぎ込み、自爆させたのですか!?」
『ご明察よ。艦をこの手で破壊するのは業腹ですが、撃てない砲など無用の長物。こうして一人潰せたのであれば、安いモノでしょう?』
 その現象を目の当たりにしたユーノもまた、翠緑が一体何をしたのかを理解する。相手は過剰供給したサイキックエナジーを内部で暴走させ、砲塔そのものを一個の爆弾へと変じさせたのだ。それに気づいたフィーナは己の魔法で相殺しようとしたのだが、押し負けてしまった様である。
「っ、フィーナ、大丈夫ネ!? まだ戦えそうカ!?」
「はっ、このくらいへっちゃらよ……と言いたいところだけど、流石にちょっとばかり厳しいわね……」
 すぐさま爆炎の中へ飛び込んだチトセが、フィーナを抱きかかえて転がり出てきた。流石は焔に長けた魔法使いと言うべきか、持ち前の耐火能力によってダメージは命に関わるレベルにまでは至っていない。しかしそれでも、深手である事には違いなかった。
「そんな、私を庇って……!?」
「気にしないで。私がぶっ飛ばされたって、皆がこの船に取り付いた時点で目的は達成できてるんだから……でも、そうね」
 思わず目じりに涙を浮かべ顔を歪めるアリシアへ、フィーナは心配するなと語り掛ける。だがそれでも動揺する令嬢へ、ならばと言葉を続けた。
「アイツをふんぞり返って笑ってやりたいから……ぐうの音が出せないくらい、ぶっ飛ばしてやりなさい。それを見られれば、こんな傷なんてへっちゃらよ!」
「……うん。任せてくださいっ!」
 これ以上、この場で足を止めているのは仲間の挺身を無駄にする事に他ならない。アリシアは涙を拭って猟書家の座す艦橋部を睨みつけると、万感の想いを籠めて拳を握り締めた。
「待っててください……今、そこから引きずり出して見せます!」
『仇討ちとは、また無駄な感情ですわね。それが命取りになると身を以て知りなさい』
 サイキックエナジーを弾丸と化し、迎撃の弾幕を形成してくる翠緑。だがアリシアはアーマーが損壊するのも構わず猛然と突進するや、艦橋の装甲へと拳を叩き込んだ。そのまま内部構造を掴み、強引に鋼板ごと引き剥がして内部への道を作り出す。
「アーマーの役目は此処まで。後は剣での勝負です!」
「よくぞここまで……と言いたいところですが、先走りましたわね。単身で私に勝てるとお思いですか?」
 護拳部の大きなレイピアで突きかかるアリシアに対し、翠緑はサイキックエナジーで刃を生み出すと片手にも関わらず対等以上に切り結んでゆく。一対一で在れば、確かに令嬢は一歩劣らざるを得ないだろう。しかし、彼女には頼もしき仲間が居る事を忘れてはならない。
「私がただ船を駆ることしか能がないと思っているのであれば、それは大きな間違いですね……寧ろ、ここからが本領の見せ所です!」
 両者の間へと割って入ったのはユーノであった。だが、その装いは先程とは大きく異なっている。纏う装束は凛々しくも可憐さを湛えるドレスアーマーとでも形容すべきか。だが何よりも目を惹くのは、付き従えし二頭の龍……即ち。
「モンゴリアンデスワーム……!? なぜ、そんなものを侍らせているのです!」
「彼らは虚無の申し子と偽りを呑み干す者……ただの非常食と侮っては痛い目を見ますよ」
 スペースシップワールドの住民にとっては馴染み深い、宇宙適応した環形動物。非常時の食料としても重宝される存在だが、成体ともなればその戦闘力は決して甘くみて良いものではない。両手に二振りの太刀を構えて斬りかかる主を、精神干渉波を放つことによって援護してゆく。
「そちらが扱える武器は最早サイキックエナジー程度しか残っていないはず。集中を乱されるのは、例えそれがどれだけ微弱であろうと無視できぬものでしょう! このまま一気に押し切らせて貰います!」
「侮るべきでないのはそちらの方です! たかが一人増えた程度で、まるで既に勝利したかの如き物言い、を……!?」
 翠緑は最後まで言葉を言い切ることが出来なかった。何故ならば、ぐらりと艦全体が大きく傾き始めたからである。そこで彼女はハタと気づく。猟兵は四人乗りこんで来ていたはず。ならば残る一人はいったい何をしているのか。咄嗟に艦橋から外へと視線を向けるや、空色に輝く剣を甲板へ突き立てているチトセの姿が飛び込んできた。
「ふむふむ、装甲の厚さや骨組みの強度は大まか把握出来たネ。うん、これなら問題なくやれそうネ」
「貴様……! そんなところでいったい何をするつもりですか!?」
 眼前の猟兵と切り結びながらも、嫌な予感を覚えた翠緑は荒々しく誰何の叫びを上げる。対して、電脳存在は極めて端的に問いへと答えて見せた。
「何って、さっき言ったとおりヨ? ……皇帝とケンカした以来ネ、戦艦ぶった斬るのは」
「なっ、止め……!?」
 止めろと言われて、それに従う義理などありはしない。チトセは肩へ担ぐように得物を掲げるや、流体の刀身へと電力を注ぎ込んでゆく。それらは勿論、先ほど浴びせられた砲撃を変換したものだ。幾条もの稲妻を取り込んだ刃は、艦橋すらも越え天を突かんばかりの長さへと変貌する。
「受けた攻撃を利用して、逆に相手を倒す。実に皮肉が効いているとは思わないカ? ……EZファントム、リミッター解除! さぁ、星すら砕く斬撃、見せてやるネ!」
 斯くして、裂帛の気合と共に大斬撃が振り下ろされた。刃が触れた瞬間、装甲版から火花が舞い散り閃光が迸る。だが、抵抗もそう長くは続かない。ゆっくりと、だがバターを切るが如く着実に刀身が翡翠色の装甲へめり込むや、トドメとばかりにチトセは更なる力を籠める。
「これで……一刀、両断ッッッ!」
 瞬間、『プリンセス・エメラルド』号の船体が真っ二つにへし折れた。そんな状態では最早飛行どころではなく、前後に裂けた船体が落下を始める。当然、艦橋内の翠緑もまともに立ってなどいられず、思わず体勢を崩してしまう。
「そんな、艦が……私の名を冠した、宇宙戦艦が!?」
「いつまでも姫気取りな旧時代の遺物はこれにて轟沈……であれば、あとはあなたさえ撃ち滅ぼせばこの戦いも決着する!」
 一方、猟兵側はこの事態も想定の内である。故にユーノは動ずることなく次の一手を打つことが出来た。即ち、翠緑の姫君に幕を引く一撃を。最大威力の衝撃波を叩き込むべく、己が精神力を束ねてゆく結晶人。
「っ、舐めるな! このクリスタリアンの最長老を、オウガ・オリジンを欺きし猟書家の一角を……銀河帝国が皇帝の正式なる継承者をッ!」
 だが、相手も然る者だ。残ったサイキックエナジーをありったけ搔き集め、翠緑は刹那に先んじて逆に眼前の敵を打ち倒さんと試みる。だが、その目論見が叶う事は永遠になかった。
「させ、ません……私たちは勝つんです。勝って、フィーナさんに胸を張って報告するんですっ!」
 何故ならば、アリシアが更に先の先を取って剣を振るい、猟書家の機先を潰したからである。なけなしの精神力はそれによって雲散霧消し、攻撃は愚か防御にすら動けぬ致命的な間隙が生じてしまう。ほんの一瞬、石火の差。永劫に埋まらぬその断絶が、翠緑の結末を決定づけた。
「そん、な……馬鹿なことがあって……!」
「この場に居る誰もが、真正面より銀河皇帝へと挑んでいます。主の居ぬ玉座を簒奪せんとしていたあなたと違ってね! 帝国を破った猟兵の力、侮らないで貰いたいっ!」
 最早、邪魔するものは何もない。ユーノは臨界ギリギリまで収束させた精神力を、今こそ解き放つ。荒れ狂う暴風、解放されし爆轟、はたまた龍姫士の鉄槌か。その威力は艦橋内部のみに留まらず、外壁すらも打ち砕きながら猟書家を飲み込んでゆき、そして……。
「わ、たくし、は……えいえいん、ふ、へんの……――――」
 天高く打ち上げられた翠緑の玉体は遂に限界を迎え、粉々に粉砕された。百に分かれ、千に割れ、万に散りゆく様は、まるで夜空に広がる星々を想わせて。猟兵たちへと降り注いでゆく煌めきは、彼らの勝利をこれ以上ないほどはっきりと示している。
「ふ、ふふ……ははははははっ! やった、やったわ、やったわね! 猟書家『プリンセル・エメラルド』をぶっとばしてやったわ! 間違いなく、私達の完・全・勝・利よっ!」
「猟書家も討ち果たせて、艦も真っ二つにしてやったし、ボクとしても大満足な結果ネ!」
 一足先にチトセの手を借りて艦より離脱していたフィーナが、天高く拳を掲げて快哉を上げる。信じて後を託した仲間たちが成し遂げてくれたのだ、その喜びもまた一入だろう。彼女が見つめる先では、沈みゆく艦より離脱してきたアリシアとユーノの姿が見えた。あれだけの激戦を経たのだ、当然ながら無傷ではない。だがその表情には確かな誇らしさが浮かんでいる。
「フィーナさん! 頼み通り、ぐうの音が出せないくらいぶっ飛ばしてやりました!」
「戦争の趨勢はまだまだ油断なりませんが……ええ、まずはこの一勝を言祝ぎましょうか」
 地上へと降り立った令嬢は魔女へと勢いよく抱き着き、結晶人は電脳存在と健闘を称え合う様に拳をぶつけ合う。その姿はまるで、四者四様の輝きを放つ宝石の様で……。

 ――斯くして猟書家の一角、銀河帝国が帝位の簒奪を狙いし『プリンセス・エメラルド』は此処に討ち果たされたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト