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迷宮災厄戦㉒〜すべては、預言書の思し召し〜

#アリスラビリンス #戦争 #迷宮災厄戦 #猟書家 #クルセイダー

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●選ばれし者
「ぱらいそ預言書」はかく語れり。
 あるじ死すとも、魔軍転生は死なず。
 選ばれし者に宿るなり。 
「すべては、預言書の思し召し」
 月夜の下に雪色の草原、突き立つは白亜の十字。中心で金の十文字を掲げ、白の僧衣を身に纏い、分厚い装丁の本を一瞥する。天が見せるは穢れ無き降霊場、予言は洗礼の言葉を相違の男に騙る。
 望むと、望まざるとに関わらず。
 魔軍将は選ばれし者に集うなり。
「すべては、預言書の思し召し」
 サムライエンパイアでの乱を思い描き、十字を切れば、真白の月夜に、祖父の身体が茫と浮かび上がる。魔軍将による蹂躙を、天国は尚騙る。

●グリモアベース
「皆のお陰で迷宮災厄戦は終盤じゃ。今回も猟書家の居る所に皆を送る事になる……少しの間じゃが、一息入れる様にしといたから、世界と経緯について、話しょうるから(していますから)、その間にんびりしといて。皆の尽力に、感謝するよ」
 海神・鎮(ヤドリガミ・f01026)は頭を下げ、資料を配る。
 周囲を見渡せば労い用の飲食物が変わらず、卓に並べられている。好きに食べて良いと、それから希望の飲み物を猟兵に注いでいき。ひとしきり配り終えた後、アリス・ラビリンスについて、掻い摘まんで説明していく。言っている通り、既に知っている猟兵は聞き流して良さそうだ。
「さて、アリスラビリンスについてじゃが、小さな世界が連なって出来とる世界でな、オウガってオブリビオンが支配しとる。人肉を好んどって、アサイラムって世界から迷い込んだアリスを食べようとしょうる。現地民は愉快な仲間達や、時計ウサギじゃな。住んどる所を綺麗に整えるんじゃけど、それも支配者のオウガが美しい地獄に変えとるってのが現状じゃ」
 茶を一口含んで、資料を捲り、今回の戦争の概要を話していく。
「此処に少し前から暗躍しとった、猟書家って勢力が暗躍しとって、オブリビオン・フォーミュラじゃったオウガ・オリジンを書架牢獄に拘束、世界改変ユーベルコードを盗み出した後、オウガ・オリジンが此処を脱獄して、開戦って流れじゃな」
 もう少し短く出来るだろうかと、他愛の無い話題を振りながら、本題に入る。
「今回案内する先は、猟書家、クルセイダーの居る白色の墓標じゃ。クルセイダーの初手は皆より早え。ユーベルコードは資料に纏めとるから、対処方法を考えておいてな」
 クルセイダーは侵略蔵書ぱらいそ預言書の予言、黄金の十文字槍人間無骨による中距離熱線撃、不完全な魔軍転生による秀吉の軍勢を召喚し戦う。
 クルセイダーの目論見は他の猟書家と同様、フォーミュラに成り代わり、侵略蔵書の力によって、世界に再び混乱を催す事だ。
「強敵には間違い無えよ。やり方は皆に任せる。信頼しとるよ」
 最後に鎮は丁寧に深く頭を下げ、皆を送る準備をし始めた。



●挨拶
 紫と申します。
 今回は続けて戦争シナリオ、迷宮災厄戦㉒〜クルセイダー〜です。
 遅延の無いように尽力致しますので、どうか宜しくお願い致します。

●シナリオについて
・目的:猟書家、クルセイダーの撃破となります。
・ギミック:敵UCによる先制攻撃です。何かしらの対策を考えてみて下さい。
・ステージ補足:時間帯は月夜。無数の白の十字架が突き立てられた白の草原。十字架が有るだけで、そのままでは遮蔽物とするには心許ない感じです。

●猟書家:クルセイダー使用UC
・POW【十字槍「人間無骨」】
 【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

・SPD【侵略蔵書「ぱらいそ預言書」】
 【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。

・WIZ【『魔軍転生』秀吉装】
 レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

●最後に
 遅れの無いよう尽力致します。
 既存の戦争シナリオ共々、なるべく懸命に運営致します。
 宜しくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『猟書家『クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

政木・朱鞠
やれやれ、何とも胡散臭い猟書家さんね、過去から抜け出た簒奪者が未来の預言を説くとは何とも滑稽極まれりってね。
亡者の役者をどんなに揃えても乱世が再び拗れて民が泣くだけじゃん、咎だらけの茶番劇はここで終幕だよ…お覚悟よろしくって?

戦闘【WIZ】
敵の先手確定なのは痛いね、私のチビ分身達がどれだけ召喚されたチビ秀吉公達に対応できるか未知数だけど『忍法・火煙写身の術』で攻撃を相殺受けしたいね。
弐の太刀までの隙が出来たなら近接のチャンスは逃さず、拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かないダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎


村崎・ゆかり
ぱらいそ……楽園か。オブリビオンの楽園なんて想像したくもないわね。
アヤメ、出れる? 「式神使い」で大丈夫ならいいけど。動けるなら、分身の術であのフェンフェン鳴く生き物を消していって。
無理なら自分で対処か。
戦場に仮想の一線を引き、そこを越えてきた猿から薙刀の「衝撃波」で討滅していくわ。

猿の波が途切れた隙に、巫覡載霊の舞。
「全力魔法」で強化した「衝撃波」と「なぎ払い」を使いながら猿の群を突っ切って、クルサード――四郎時貞に切っ先を届かせる。

そっちも長物使いね。相手にとって不足は無いわ。
あたしの『紫揚羽』は『人間無骨』のように神格化はされていないけれど、共に戦場を駆けたあたしの相棒。負ける気は無い!


ステラ・エヴァンズ
彼の地は私にとっても思い入れの深い地…そう簡単にまた人々の安寧を脅かされてはたまりません

結界術にて自身の四方上下に結界を貼ります
炎と呪詛を練り込んだ特製の結界と致しましょう
取り囲むように攻撃してきてもその炎と呪詛で解けぬ炎熱地獄でもおみまいしましょうか

死んだ後まで何度も利用されると言うのも公にとっては不本意でしょうけれど

星廻を発動し内部より範囲攻撃の衝撃波を放って結界を四散
触れないようにしていた者にも攻撃が行くようにしましょう
天津星に雷を纏わせ、後は敵将目掛けて一直線
槍には触れぬよう見切り回避しながら踏み込んでその心臓を貫きたいものですが

貴方の仰る主とは、随分と数多の命を軽んずるお方なのですね


ルムル・ベリアクス

預言書……面白いです。それの言う神意と、わたしの信じる悪魔の意思……。あなたとわたし、どちらの信仰が勝つか試しましょう。
魔軍に対しては、フォーチュンカードの【投擲】【乱れ撃ち】で遠距離攻撃し、一撃で消滅するという弱点を突き倒します。
攻撃を凌いだら、次はわたしの番。魔軍には魔軍を。味方を上手く扱えるのはどちらでしょう?UCでカードを媒介に悪魔の軍団を召喚。地上と空中から攻め込みます。
悪魔の火と硫黄の鎧は、近づくだけで敵を苦しめるでしょう。悪魔の放つ炎で魔軍を焼き払い、鋭い牙や爪でクルセイダーに一斉攻撃をかけ、葬ります。
わたし自身は必要に応じて【オーラ防御】で守りつつ、カードの投擲で応戦します。


森長・可子
なあオマエ。“ぱらいそ”に行けなくて、化けて出たのかい。そんならもっかい送り返してやるよ。次は行けるかも知れないぜ?
ところで見てくれよ、俺の槍。奇遇だがよ、コイツも『人間無骨』って名前なのさ。
てめえの墓標にゃ、お誂え向きだろう?

先制攻撃はどうせ避けられやしねえ。
敢えて前に出て食らってやる。同じ名前の槍、どんだけ痛えかこの身で味わってやんよ。寧ろ自分から当たりに行き微妙に直撃をズラして、【激痛耐性】で痩せ我慢はするがね。

骨が溶ける? 構いやしねえ。例え俺の身体中の骨が消えちまおうと、身体の原型残ってンなら戦えンだよ。さあ、今度はこっちの人間無骨も味わえよ。てめえの骨を【貫通】しちまう突き味だ。


緋翠・華乃音
俺は世界の興亡に興味は無い。
けれど猟書家の撃破が今回のオーダーなら、それは完遂してみせるさ。


“必ず先手を打たれる”ことが分かっているのなら、それに対応した行動を取るだけ。
最適解ではない行動を選択するつもりはない。

そして、“先手を打つ”というのは攻撃が“必ず当たる”のと同義ではない。
導き出される最適解――即ち、回避。

防御しても下手に喰らえば追撃で戦闘不能になるのは目に見えている。
だったら躱すことに全力を傾けるだけだ。

初撃さえ躱せば追撃は来ないし、槍の軌道は無限じゃない。
振り上げや引き絞り、攻撃には必ず予備動作が必要となる。
ならば見切れない道理は無い。

回避したならば反撃。
月夜の草原に星空を顕そう。


九重・玄音
ごめんなさいね。私、その時戦争に参加してなかったの。
だからあなたのこと全然知らないわ。ただ、知らぬまま滅べ。

・SPD
指定UC発動のためにエネミーリムーバーを接続させてレーザー放射、暴走状態のヒュージ・カーゴを相手にぶつける。けど、これは相手の預言書で回避される……ここまでが想定。

カーゴの中にあらかじめアーマード・ベルセルクを格納させておく。
ベルセルクの遠隔操縦し、重心をずらしたり放射の出力を変えたりして方向を操作。
何度回避されようとも、轢かれるまで時速オーバーのカーゴを止めないわ。

パンシャンドラムに轢かれるように、未来すら制御できないものにあなたは殺されるのよ。

【アドリブ・絡み歓迎】


月舘・夜彦
【SPD】
猟書家が他の世界を狙っているという話は聞いていましたが
サムライエンパイアには秀吉の孫、ですか
浅からぬ縁があるにせよ、その地を踏み入れる前に私達が倒します
――御覚悟を

預言書の力は未来を読む力
予測しているからこそ、避けられるのでしょう
ならば、抜刀術『神風』
見えぬ刃を彼は如何に躱すか

一刀に、2回攻撃の早業にてその隙無く更に仕掛ける
読んだ後に予想して攻撃をするのならば
より早く、より隙を作らせない

その後は駆け出して敵に接近、接近戦に持ち込む
2回攻撃を基本とし、なぎ払いにてより広い範囲で刃を振るい
距離を取らせず攻めていく

戦には知識も必要となりましょう
それでも実戦が物を言う
書物の全てが答えではない


シーザー・ゴールドマン
◎【POW】
ふむ、サムライエンパイアでは天草四郎は秀吉の孫かね。
UDCでもそういう説があるにはあったか。
……失礼、君には関係ないことだったね。
ぱらいそ預言書か。何処の神の言葉を預かったのかは知らないがそれが実現することはないだろう。私がいるからね。

先制対策
十字槍による攻撃を戦闘経験(戦闘知識)と第六感で見切って回避します。その際、分身(残像)を残してそれに光線を放たさせることで「初撃を外す」という条件を満たさせます。

君のUCは強力だがそれ故に制約もある。もうそれは私には効かないよ。

槍を回避して懐に踏み込み、態勢を崩させて渾身の一撃を放ちます。
(カーリーの鏖殺)


フェルト・ユメノアール
みんなの笑顔は奪わせない!
何度転生してきたってボクたちが骸の海に送り返すよ!

あの数の秀吉を相手にしてたらキリがない
何とかクルセイダーを狙わないと……!

近くの秀吉を優先して『トリックスター投擲』で迎撃
倒す事は考えない、逃げ回りながら『ワンダースモーク』で視界を遮って、反撃までの時間を稼ぐ
そして、タイミングを見計らってUCを発動!

現れろ!【SPウィングウィッチ】!
さっきワンダースモークを使って視界を塞いだ隙にウィングウィッチを召喚していたのさ!
これまでの行動は全て、秀吉たちの注意をボクに引き付けウィッチが奇襲する隙を作る為の策
秀吉たちや十字架の影を伝ってクルセイダーの死角に回ったウィッチで攻撃だ!



●魔軍転生・秀吉装
「ぱらいそ預言書はかく語れり」
 世界の守護者、猟兵の進軍に淀みなく。
 多数にて魔軍将の霊場を訪れる。
「すべては、預言書の思し召し」
 望むと、望まざるとに関わらず。
 交戦は避けられぬ。魔軍将の力、今此処で試すべし。
「島原で乱を起こす前に、力を示して頂きましょう」
「フェン、フェンフェーン!」
「……ご不満ですか? 千載一遇の機会でも有りましょう?」
 金十字の描かれた黒い装丁、雪原の如き真白の世界に不釣り合いなそれに、茫洋とした蒼白の光球を漂わせ、突き立てられた白亜の十字から、僧衣の青年が祖父と呼ぶ、襤褸布を纏った小さな怪物霊が、見る見る内に白雪色の降霊場を埋め尽くす。その軍勢総数、大凡四千四百。
「彼等には時間の猶予も、逃走の場も与えません」
 小さな身体の鋭い鉤爪を数度動かし、怪物は、その非力さに思わず、拳を強く握り締める。数は戦において重要だが、雌雄を決する一因でしかない。
「フェン。フェンフェン」
 暫し目を閉じ、クルセイダーの思惑とは別に、秀吉軍は意思を一つとする。例え、非力な身体が、あの時の様に、力を扱えずとも。

●八方会敵
「やれやれ、何とも胡散臭い、猟書家さん……ねっ」
 転送先すら、預言書が見通した様だ。猟兵達は既に、大凡4千程度にも及ぶ、小さな怪物霊の軍勢に包囲されており、悪態を付いた張本人は霊体の海に姿を隠す。政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は状況打開の為に、手早く印を結び、真言を紡ぐ。
「ナウマク・サマンダボダナン・キリカ・ソワカ。言霊にて煙火に暫しの魂魄を与えん……疾く攻めよ!」
 山吹色の羽衣を囲むように煙火が周囲に燻り、次第に赤々とした陽炎を形作る。襲来する秀吉軍が、目眩ましに歩を止める中、人の頭程の小さな分身を、陽炎が型作り、煙の中に入り込んだ小型怪物の霊を焼き尽くす。僅か四百と五の軍勢は、それでも、僅かに包囲網を退けた。
「アヤメ、出れる?」
「お任せ下さい。ご命令は?」
「……悔しいけど専守防衛よ。数が数だから、好きなだけ持って行きなさい」
「燃費悪いですよー……なんて、巫山戯てる余裕も有りませんね……お覚悟を」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)は、内心で舌打ちをしながら、転送前に呼び出していた自らの式であるアヤメに、繋いだ霊力経路の制限を緩め流し込む。自身は煙火に退いた軍の一角に向け、愛用の霊符を操作し、面に一筋の仮想の境界を作り出す。煙が晴れ、敵軍が朱鞠の狐火を越える度、風切りの音と共に紫刃が流麗な軌道を描き、燐光を伴う霊力の鎌鼬が容赦なく、突出した敵軍を薙ぎ倒す。
 同時に、従者である黒装束の式神が、八十五の影の分身体を生じさせ、即座に同数の苦無を敵陣目掛けて乱れ撃つ。高速で迫る苦無を避けた個体には、俊足の追撃を試み、外れた苦無が足場に霊体浄化の毒を撒き散らす。
「ほんっと、容赦なく持って行くわね!」
「もう一度申し上げますが、お覚悟願います!」
「お似合いさんね、私も混ぜてっと!」
 火で出来た小さな分身体への直撃を避ける様、鋲の張り巡らされた鉄鎖が、影を縫うように振るわれ、霊体へと絡み付き、霊体に創傷を作る。締め付けに棘が創傷を抉り、秀吉の魂を容赦無く食い荒らす。
「そっちの子は同業みたいだし、親近感が沸くね」
 苦境の合間に、朱鞠はアヤメに笑いかけながら、鋲付きの鉄鎖を自在に振るい、敵軍の魂を食らう。
「預言書……面白いです。この様な事も可能とは」
 事前の占術結果、四枚の啓示を思い出しながら、ルムル・ベリアクス(鳥仮面のタロティスト・f23552)は実際に起こった出来事に慌てた様子も無く、七十八の狂気のアルカナを、魔力によって投擲する。アルカナに打たれた秀吉が、何かに苦しむ様に藻掻き、消滅し、放たれたアルカナはルムルの手元に戻る事無く宙空を舞い、半自動で敵軍を追跡する。
「魔軍には魔軍を。あなたの預言(意思)とわたしの悪魔(意思)。どちらの信仰が勝つか、試しましょう」
 王国を無神へと至らせよ。世は栄え、善良に飽き、物の価値すら捨て去り、リリスの誘惑に貪欲に応え、醜悪な行為に快楽を得る。残酷な所業に心は動かず、他人の言葉を拒絶し、愚鈍な蝿となるが良い。全てが贄と理解せよ。彼の者の業火のみが、人の有り様を根底へと至らせる故に。
「異界の門よ、開け」
 呪言と共に展開される邪悪の樹のスプレッドが啓示を開く。
 血液を思わせる赤黒い妖光が、小径を下へ下へと辿り、最下の位置に至れば、異次元の穴が開く。門と呼ばれたそれから、硫黄の鎧を纏った八十一の悪魔が、大翼を広げ、月夜の空に舞い降りた。
 軍団統括。地上戦力に守護を、空中戦力に攻勢と攪乱を願い出る。オブリビオンのみが感じる硫黄臭を纏わせながら、宙空から急襲する悪魔、40が敵陣中央に火をくべる。雪色の草に、業火が灯り、応戦すれば、鎧から流出した硫黄が熱され、敵軍の身体を焼滅させる。身体ごとの急降下が一度当たれば消滅し、躱した先には硫黄による着火、火計が待ち受け、近付かなければと油断すれば、小規模爆発の熱と衝撃が、軍勢を魂ごと吹き飛ばす。
「フェン……フェンフェフェン」
 秀吉達は、混乱はせずとも、この事態にどう対処するべきか、対応を迫られて行く。
 依然数の有利はあれど、趨勢は傾き始めている。
 包囲した敵軍勢は一人が破魔毒で周囲に防御を敷き、他の物が軍勢増加、近接、中距離による援護によって防衛網を固め、八方を包囲されながらも、今や数の徹底的不利を覆し、計略による僅かな隙を生み出しながら、小さな陣を築く迄に至った。総数五百に満たない小規模軍の抵抗は、見事だと賞賛して良いだろう。

●転機
「みんなの笑顔は奪わせない! 何度転生してきたって、ボクたちが骸の海に送り返すよ!」
 円盤型のデバイス、ソリッドディスクを白黒ボーダーの袖に装着し、道化師少女、フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は、決意の言葉を口にする。淀み始めた秀吉の軍勢に、装飾の施された黄金色のダガーを、悪魔と他の猟兵が起こした混乱に乗じて計八本、懐から一挙動で投げ付ける。命中率を考えない乱打に、秀吉は眉を顰めるかの様に訝しむ。近くに居る忍装束の女と違い罠も無いのに、さして気にした様子も無く、更に投擲を繰り返す。掻い潜るのは容易く、数で包囲すれば大した脅威も無い筈だ。
「余所見ですねー」
 黒装束の女がすかさず、苦無を投擲する。攪乱役としては適任であり、それが狙いであると、秀吉軍は悪魔によって穴の出来た場所へ向かうフェルトを、数の暴威によって仕留める事とした。矢先にフェルトの唇が釣り上がる。
「ladies and gentlemen!」
袖から滑らせた小さな五色玉を投げ付けると、虹色の煙が秀吉達の視界を覆う。視界を失った所へ、投げ付けと同時に跳躍したフェルトが、短剣を絶え間無く、雨のように投擲する。そうして別の軍を引き付ければ、予め八方に撒いた煙玉を、ナイフによって起動する。小気味の良い破裂音と共に、再び道化師は行方を眩まし、視界を失った秀吉を、悪魔の業火が焼き尽くす。そうしてクルセイダーへの突破口が少しずつ開け、フェルトは後方を包囲させながら、機敏に安全地帯を飛び回る。転機だった。
「空いたわね。防衛戦は終わり! 行くわよ、アヤメ」
「お供致します」
 フェルトの攪乱、悪魔の攻勢、未だ踏み越えれぬ陣地に、心理、陣形共に穴が空く。微かに見えたクルセイダーの姿。踏み込み、紫刃を振るい、防衛戦を踏み越える。
「……彼の地は私にとっても、思い入れの深い地……そう簡単にまた、人々の安寧を脅かされてはたまりません」
 ステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)は徐々に安定化して行く陣地に、青い大刀を突き立てる。悪魔の守護の元とは何とも奇妙な光景だと、穏やかな微笑みを零しながら、遠い異界の存在に語り掛ける。
 神の口付け、波濤の抱擁。双子は黄昏。堕天と反逆を謳う我等を許し給え。願わくば、我等に守護を、我が敵に曙の灼き熱を。そして、偉大な御身に、幸福のあらんことを。
「清め給え、祓い給え……幸い給え。」
 焔の呪詛と清浄の守護、両面性を閉じ込めた四方結界。白金色の焔と、金色の焔が、四方結界を取り囲み、蛇龍の様に怨敵を求め、荒れ狂う。
「死んだ後まで、何度も利用されると言うのも、公にとっては不本意でしょうけれど」
 突き立てた大刀、禍津星を引き抜き、刀身に雷光を纏わせる。冗談から斜めに払い、進軍方向を合わせ、身体を敵陣へ入れる。無音の踏み込みに目を見張る軍勢。包囲結界に不運にも衝突した彼等が、浄化と呪文の螺旋焔に食われ、締め上げられる。
 触れぬ様に距離を取れば道が開き、捻じ込まれる硫黄の悪魔、苦無と紫刃、果ては鋲付きの鉄鎖と焔の分身に、硬質な札が乱れ飛び、軍勢の挙動を見抜き、風穴を開けていく。天秤が僅かに傾けば、その侵略は猛火の如し。猟書家への道が開く。

●月夜の晩に目が眩む
 月夜の下、遙か上空でシーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、この地での振る舞いを暫し考え、赤いスーツの襟を正す。
「目眩ましと洒落込もうか」
 クルセイダーの影を捉え、纏ったオドを放出し、推進力として、爆発的な加速を生み出せば、静謐な月夜に、深紅の流星が一筋、流れて落ちる。
「……お待ちしておりました」
「ほう、私の行動もお見通しかな?」
 黒の装丁の本を浮かせ、クルセイダーは切れ長の黄金瞳を覗き込む。
「ぱらいそ預言書はかく語りき」
 地獄の君主、赤き金星の主は受肉して降臨せり。
 其方を黄金の剣で阻むものなり。
「ぱらいそ預言書か、何処の神の言葉を預かったのかは知らないが、確かに優秀だ。島原が起こる事は無いけどね。所で……」、
 無言で繰り出される黄金装飾の十文字に、シーザーの身体が貫かれ、骨肉一切を消し去る熱線が体内で荒れ狂う。
「サムライエンパイアでは天草四郎時貞は秀吉の孫かね? UDCアースでも、そう言う説があるにはあったか」
 何事も無かったかのように、背後から偉丈夫の声が届く。刺し貫いたのは深紅の影、俄にオドを纏わせ作り出された、僅かに質量を持つ残像体。
「異なる世界の歴史に興味は有りません」
 焦ることも無く、片足を軸に身体を捻り、反転させ、勢いの侭、声のする方へ横殴る。
「そこに同様なる存在が居たとして」
 目端に黄金色の光剣の切り上げ、勢いに逆らって無理矢理、支え手で引き込めば、別方向から首を跳ねる光剣が迫り、身を翻して跳躍、距離を取る。
「恵まれた生涯を送る事が出来たとは、思えませんね」
 死んだ男の様に瞳は無感情と、微かな憂いを残す。与えられた名前と違い、熱情も奉仕家としての心も宿さない。無気力に生かされる屍の様だ。
「……失礼、確かに、君には関係ないことだったね。コードは強力だが、私に、二度目は無いよ」
「であれば、兵法をもって、害為す悪魔を討ち滅ぼすのみ。最早流れぬ血ではありますが、豊臣の名に恥じぬ立ち会いを。すべては、預言書の思し召し」 

●陣地維持
 進軍を始めた味方の道を作りながら、ルムルと朱鞠は陣地の維持を図る。悪魔の軍勢、取り分け空中戦力を先鋒の護衛とし、地上戦力にて円陣を作る。内側に朱鞠の小さな分身体を配置し、朱鞠は悪魔と同様に近接戦の間合いを維持、悪魔の硫黄と分身の炎に巻かれた個体を二之手で鉄鎖を振るい、棘で抉る。重量武器でありながら、しなやかに鍛えられた身体の手は淀むことは無く、意思を持つ鉄の茨の様に、有機的な動作を実現させながら、瞬足で敵の自由を奪い、行動不能に陥らせる。
 ルムルの軍勢は配置を揺らがせる事無く、纏った炎で草原を燃やし、燃やした軍勢と、漏れ出る硫黄を燃料に、炎の円陣を描く。中に居るのは最早二人、退かない限り拡大する必要は無く、広がるならば軍勢の消失によって、自ずと陣地は広がっていく。悪魔の援護に、七十八のアルカナタロットを進軍先と同様に躍り舞わせ、敵の数を着実に減らして行く。

●結界四散
「我、今此処に星鳥に至り、忌まわしき血を凌駕する……有難う御座いました。遠き双子の片割れよ」
 ステラは言葉の共に、白き衣を身に纏い、顕現させた白翼を数度はためかせ。四方結界に礼を言いながら、内部より鎌鼬を発生させ、結界を砕く。構成が崩れ、双焔の欠片が周囲に飛散し、触れないようにしていた軍勢の身体を残り火が焦熱する。
「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ 形無し故に焼けず、塗らせず、傷付かず。一時、我を守り賜え。」
 軍勢を切り落とし、ゆかりが手早く印を結ぶ。呼ぶは陽炎、月光の神格。存在の多重化、動く度に残像の様な軌跡を空間に残留させる。紫刃の切っ先に残る全霊力を込め、残った軍勢ごと思い切り横に薙ぐ。
「私の紫揚羽は貴方の得物みたいに神格化はされてないけど、共に戦場を駆けた相棒、負ける気は無いわ!」
「同じく、負ける気は致しません。」 
 
●スマイル・パペットの影使い
「ふむ、宣言通り、中々に楽しめたよ」
 数十に及んだ剣戟の果て、体術の癖と型を記憶し、読み切ったシーザーは最後に繰り出された槍撃の力の方向を見切り、いなし、懐に入り込む。不要になったとばかりに光剣を投げ捨てながら、それすら囮だと言わんばかりに笑みを深めながら、思考の空白に零距離から、僅かな運動量で片腕に力を伝え、クルセイダーの身体を吹き飛ばす。
「私の勝ちだ。趨勢も傾いている。手助けは無用だろうが……まあ、秀吉公の数をもう少し減らしておこう」
 シーザーが振り向くと、クルセイダーは立ち上がり、、背中に十字槍を突き立てようと、距離を詰め、そこへ多重化した幾重もの紫の衝撃波が放たれ、人間無骨にて切り払う。
「今こそ、ボクはフィールドに居た、このゲストを紹介するよ! カモン! 漆黒の魔女、スマイルパペット・ウィングウィッチ!」
 フリルを遇った魔女の装束を着込んだ天使の童女。それがクルセイダーの影から、とぷりと現れて、振り向く影に微笑み掛ける。影を操作し、クルセイダーを影の蛇が締め上げる。五体の骨肉がみしみしと悲鳴を上げ、思わず顔を顰めた。
「フィールドに召喚されたウィングウィッチは、影魔法の使い手だよ。影に潜って、影を伝い、指定した対象を何処までも追跡するんだ。こっちに気を取られて戦場の確認が疎かになってたね!」
 ソリッドディスクでたった一枚輝くユニットカード。サモナーズ・ロードとフェルトが呼称するカードデッキは、魔力を専用デバイスを通して供給化することでこの世に実体化する召喚魔法。
「今だよ!」
「貴方の仰る主とは、随分と数多の命を軽んずるお方なのですね」
 示し合わせた様なタイミングで、ステラが縛られた影目掛け、薙刀で心臓を狙うが、寸での所で逸らされ、僅かに身体に穴を開け、雷光による痛撃を与えるのみだ。
「漸く道が開いたぜ……。なあお前、”ぱらいそ”に行けなくて、化けて出たのかい」

●人の骨等、無きが如し
 影の呪縛を引き千切るクルセイダーに、包囲網を抜けてきた森長・可子(血染めの十文字槍・f21640)が、肩に羽織った白の着物をはためかせ、細身の十文字槍を両手で担いで歩み寄る。
「奇遇だがよ。コイツも人間無骨って名前なのさ」
 好戦的に方唇を釣り上げ、歯を見せて笑う。
「もっかい送り返してやるよ。てめえの墓標にゃ、お誂え向きだろ?」
「随分と……出来過ぎた偶然ですが、十字架が必要なのは、貴方です」
 影の束縛を引き千切ると、召喚された童女が慌てた様子で影に潜る。すらと赤の槍を指先で滑らせ、中段に構えれば、速度が落ちたとは言え、尚早い黄金の人間無骨の刺突が、可子の脇腹を捉え穂先がめり込み、熱線が肋骨数本を焼き尽くす。
「遅え……名前負けしてんぜ。俺達が使う得物はァ! ”人の骨など無きが如し” だろうが、なァ?!」
 骨の一部を溶かされながらら、戦の高揚に赤瞳を大きく開き、獰猛な呵々大笑。痛みなど無いかの様な戦狂い特有の表情変化が、激痛に耐える気炎であるなどと、考えられる人間は限られるだろう。
 そうして、吐かれた息を吸い上げ、脇腹の肉を締め上げ、行動を縫い止める。機能性のみを追求され、自らが手を施した人間無骨の機能を解放。あらゆる装甲を貫通する振動刃が、紅蓮の焔に身を包み、敵の腹を貫通し、肉を炎熱で灼き焦がす。

●アクセラレーション
「ええ、ごめんなさいね。貴方のこと、何も知らないわ……ただ知らぬまま、滅べ」
 九重・玄音(アルターエリミネーター・f19572)がその瞳へ無慈悲に答えを投げ掛けながら、スコープ越しに緑眼を捉え、光子砲によるレーザー砲撃を開始する。腕は尚炎に巻かれ、瑠璃の炎は全身に燃え広がりながら、苦悶の声は一つもあげず、男の顔色は何一つ変わらない。エネルギー供給の安定、出力の充填を確認し、トリガーを引く。光粒子の収束から射出による独特の発射音と共に、灼熱色の熱線が、敵に向かって一直線に放たれたが、直線的過ぎる攻撃は、預言書に見通され、少々身体の位置を変えるだけで対応される。表情を変えず、走らせた車輪付きコンテナはユーベルコードによって際限なく加速し、クルセイダーへと突進するが、やはり見通され、命中する事は無い。そのまま草原を過ぎ去る筈のコンテナの中身を開き、収納していた四脚兵装をカーゴにドッキングさせ、暴走状態を強化。際限の無い暴走状態に陥らせながら、角度を換え、重心をずらし、あらゆる方向から、あらゆるタイミングからの鏖殺を試みる。
「パンジャンドラムに轢かれるように、未来すら制御出来ないものに、あなたは翻弄されるのよ」
際限なく加速して行くコンテナはやがて未来が記述される速度を上回り、焔に包まれたクルセイダーの身体に、痛撃を与えた。

●夜会
「彼の地と浅からぬ因縁があるにせよ、踏み入る前に倒します。御覚悟を」
 月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は宵色の衣を揺らし、刃圏に立ち上がった敵を捉えながら、一振りの柄へ、緩やかに手を掛ける。剣閃を悟らせぬよう、腰も落とさぬ無形から、油断無く相手を見据え、本に目を落とした瞬間を狙い、音無しの瞬動で身を入れる。連なって無駄なく、緩く掛けられた掌が柄を握り、澄んだ神速の一刀が放たれる。軌道は横。神速域の抜刀の技は、敵に刃の軌道を悟らせない。可視の刃が不可視の斬断現象として軌跡を残すのみ。抜かれた事実など無かったかのように、閃いた夜の祈りは、静かな夜闇へその身を返す。
「……見事な太刀筋です」
「戦には知識も必要となりましょう。それでも実戦が物を言う」
 見えずとも、未来の記述を読めば軌道は見える。仕掛けに寸分の狂いは無く、また音無しは完全に、拍子の無い斬撃だった。刀身が消え、斬撃軌道すら夜の闇に消える剣撃は、クルセイダーの腕部を、浅からず傷付ける。一度ならば避けもする。瞬時に二撃となれば、知っていようと、こうなるのも自明の理。
「然し負けては……いられませんね」
 力を込めるような物言いの後、夜彦の剣撃を十文字槍が捌く。預言書の記述を頼りにしつつ、見えぬ軌道を彼の癖から割り出し、猛撃を防ぐ。種は恐ろしい程簡単だが、それ故に避けるも捌くも難しい。
「俺は世界の興亡に興味は無い。ただ、受けた仕事は、完遂してみせるさ」
 乱戦の最中、示し合わせた様に緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)が気配無く忍び寄る。先手を取られようと、刃の近くならば重量兵器を振り回す事は難しい。それでも一部が当たれば熱線放射されると仮定するならば、五体の腕を奪うべきだ。
「月夜の草原に星空を顕そう」
 異理の血統、瑠璃の瞳が、同じ色彩の蝶の群れを呼び寄せる。逃れ様の無い距離から、ひらひらと両腕を覆い、燐光が星空にも似た焔を宿す。
「――灼き尽くせ」
 蝶は魂を還す象徴。魂を運び終わった翅は、燃え散って星屑になり、人を優しく守りながら、転生の時を待つ。星色棺は猟書家の魂を逃がさず、蓋を閉じる。苦悶の声一つもあげず、死人の緑眼が猟兵を尚、見つめる。

●終幕
 幾重もの攻防を過ぎ、シーザーは最後に指を鳴らす。秀吉軍の一切を掃討し、蝶の炎に包まれたクルセイダーに、最早戦う体力は残って居らず。先程雌雄を決したことを、何より猟書家自身が理解している。シーザーはその様子に一つ頷き、深紅のオドを一瞬で高め、掌中に集中させる。
「まあ、今度は天国に行けると良いね」
 さして興味も終着も無く、頭を掴み、膨大な赤のオドの奔流を叩き込む。先程の続きは、これによる追撃での幕引きだ。奔流に飲まれ、残るパライソ預言書を、半端に正気を保っていた可子が灼き尽くし、残っていた同じ銘のそれを拾い上げ、武器として使えるかどうかを確かめた。
 フェルトの読んだゲストが猟兵達の影からひょっこりと顔を出し、もう終わったのかと周囲を見遣り、安堵の溜息を吐く。コミカルな仕草にフェルトが思わず吹き出して、もう帰って良いと、カードを他の仲間の元に返してやる。
 クルセイダーとの一幕は、焦熱を残しながら、是にて、月夜の元に幕を引く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年08月19日


挿絵イラスト